本発明の第1の態様に係る表面保護層を有する感光体は、導電性支持体に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層が積層された表面保護層を有する感光体であって、前記表面保護層は、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層と、炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層とから成る2層構造を有する構成を採る。
この構成によれば、第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
本発明の第2の態様に係る表面保護層を有する感光体は、導電性支持体に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層が積層された表面保護層を有する感光体であって、前記表面保護層は、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層と、水素ガスで希釈した炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層とから成る2層構造を有する構成を採る。
この構成によれば、第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
また、第2の表面保護層を水素希釈炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成したので、表面保護層の電気抵抗が低下する事態を確実に回避することができる。これにより、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができるので、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第3の態様に係る画像形成装置は、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層と、炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層とから成る2層構造を有する表面保護層を有する感光体と、前記感光体上に非磁性トナーにより現像を行う現像手段と、前記感光体に対して帯電を行う帯電手段と、を具備する構成を採る。
この構成によれば、感光体における第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
本発明の第4の態様に係る画像形成装置は、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層と、水素ガスで希釈した炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層とから成る2層構造を有する表面保護層を有する感光体と、前記感光体上に非磁性トナーにより現像を行う現像手段と、前記感光体に対して帯電を行う帯電手段と、を具備する構成を採る。
この構成によれば、感光体における第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
また、感光体における第2の表面保護層を水素希釈炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成したので、表面保護層の電気抵抗が低下する事態を確実に回避することができる。これにより、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができるので、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第5の態様は、第3又は第4の態様に係る画像形成装置において、前記帯電手段は、接触帯電法又は非接触帯電法により前記感光体に対して帯電を行う構成を採る。
この構成によれば、接触帯電法又は非接触帯電法により上記感光体の表面を帯電させることができる。
本発明の第6の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法は、表面保護層を有する感光体の製造方法であって、導電性支持体に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した感光体に表面保護層を形成する際、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層を形成し、炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層を形成するものである。
この方法によれば、第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
本発明の第7の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法は、表面保護層を有する感光体の製造方法であって、導電性支持体に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した感光体に表面保護層を形成する際、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層を形成し、水素ガスで希釈した炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層を形成するものである。
この方法によれば、第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
また、第2の表面保護層を水素希釈炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成したので、表面保護層の電気抵抗が低下する事態を確実に回避することができる。これにより、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができるので、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第8の態様は、第6又は第7の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際、前記導電性支持体にDCの負のバイアス電圧を印加するものである。
この方法によれば、導電性支持体にDCの負のバイアス電圧が印加されるので、第1の表面保護層及び第2の表面保護層を構成するイオンを確実に導電性支持体に引き付けることができる。
本発明の第9の態様は、第8の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第1の表面保護層を形成する際、前記導電性支持体にDCの負の第1のバイアス電圧を印加し、前記第2の表面保護層を形成する際、前記導電性支持体に前記第1のバイアス電圧よりも小さい第2のバイアス電圧を印加するものである。
この方法によれば、第1のバイアス電圧をイオン注入が行われる電圧値に設定することで、第1の表面保護層を、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成することができる。一方、第1のバイアス電圧よりも小さい第2のバイアス電圧を印加することで、第2の表面保護層を、イオン注入層を伴わない堆積層の非晶質カーボンで形成することができる。
本発明の第10の態様は、第6又は第7の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際、前記導電性支持体に負のパルスバイアス電圧とパルス高周波電圧とを重畳した電圧を印加するものである。
この方法によれば、導電性支持体に負のパルスバイアス電圧とパルス高周波電圧とを重畳した電圧が印加されるので、第1の表面保護層及び第2の表面保護層を構成するイオンを確実に導電性支持体に引き付けることができる。
本発明の第11の態様は、第10の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第1の表面保護層を形成する際、前記導電性支持体に負の第1のパルスバイアス電圧とパルス高周波電圧とを重畳した電圧を印加し、前記第2の表面保護層を形成する際、前記導電性支持体に前記第1のパルスバイアス電圧よりも小さい第2のパルスバイアス電圧とパルス高周波電圧とを重畳した電圧を印加するものである。
この方法によれば、第1のパルスバイアス電圧をイオン注入が行われる電圧値に設定することで、第1の表面保護層を、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成することができる。一方、第1のパルスバイアス電圧よりも小さい第2のパルスバイアス電圧を印加することで、第2の表面保護層を、イオン注入層を伴わない堆積層の非晶質カーボンで形成することができる。
本発明の第12の態様は、第6又は第7の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第2の表面保護層は、前記第1の表面保護層の形成時におけるプラズマのイオンエネルギーよりも低いイオンエネルギーにて形成されるものである。
この方法によれば、第2の表面保護層が、第1の表面保護層の形成時におけるプラズマのイオンエネルギーよりも低いイオンエネルギーにて形成される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第13の態様は、第12の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際のガス圧を制御することで前記イオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際のガス圧を制御することでイオンエネルギーの高低を変化させる。このため、ガス圧を制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第14の態様は、第13の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第2の表面保護層を形成する際のガス圧を、前記第1の表面保護層を形成する際のガス圧よりも高く設定することでイオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、第2の表面保護層を形成する際のガス圧が、第1の表面保護層を形成する際のガス圧よりも高く設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第15の態様は、第12の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧を制御することで前記イオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧を制御することでイオンエネルギーの高低を変化させる。このため、表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧を制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第16の態様は、第15の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第2の表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧を、前記第1の表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧より小さく設定することでイオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、第2の表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧が、第1の表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧より小さく設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第17の態様は、第12の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅を制御することで前記イオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅を制御することでイオンエネルギーの高低を変化させる。このため、表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅を制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第18の態様は、第17の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第2の表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅を、前記第1の表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅より大きく設定することでイオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、第2の表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅が、第1の表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅より大きく設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第19の態様は、第12の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅を制御することで前記イオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅を制御することでイオンエネルギーの高低を変化させる。このため、表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅を制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第20の態様は、第19の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第2の表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅を、前記第1の表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅より大きく設定することでイオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、第2の表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅が、第1の表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅より大きく設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第21の態様は、第6又は第7の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第2の表面保護層は、前記第1の表面保護層の形成時におけるプラズマの電子温度よりも低い電子温度にて形成されるものである。
この方法によれば、第2の表面保護層は、第1の表面保護層の形成時におけるプラズマの電子温度よりも低い電子温度にて形成される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第22の態様は、第21の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際に重畳して印加されるパルス高周波電圧とパルスバイアス電圧との印加タイミングを制御することで前記電子温度の高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際に重畳して印加されるパルス高周波電圧とパルスバイアス電圧との印加タイミングを制御することで電子温度の高低を変化させる。このため、表面保護層を形成する際に重畳して印加されるパルス高周波電圧とパルスバイアス電圧との印加タイミングを制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第23の態様は、第22の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際、前記パルス高周波電圧の印加を停止した後、パルスバイアス電圧が印加されるまでの遅延時間を制御することで前記電子温度の高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際、パルス高周波電圧の印加を停止した後、パルスバイアス電圧が印加されるまでの遅延時間を制御することで前記電子温度の高低を変化させる。このため、表面保護層を形成する際、パルス高周波電圧の印加を停止した後、パルスバイアス電圧が印加されるまでの遅延時間を制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第24の態様は、第23の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第2の表面保護層を形成する際における前記遅延時間を、前記第1の表面保護層を形成する際における前記遅延時間よりも短く設定することで前記電子温度の高低を変化させるものである。
この方法によれば、第2の表面保護層を形成する際における遅延時間が、第1の表面保護層を形成する際における遅延時間よりも短く設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第25の態様は、第23の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第2の表面保護層を形成する際における前記遅延時間を、前記第1の表面保護層を形成する際における前記遅延時間よりも長く設定することで前記電子温度の高低を変化させるものである。
この方法によれば、第2の表面保護層を形成する際における遅延時間が、第1の表面保護層を形成する際における遅延時間よりも長く設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第26の態様は、第6から第21のいずれかの態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第1の表面保護層を形成する前に、水素ガスのエッチングにより前記感光体の表面をクリーニングするものである。
この方法によれば、第1の表面保護層を形成する前に、水素ガスのエッチングにより感光体の表面がクリーニングされるので、感光体の表面上の異物等を除去することでき、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性をより一層向上させることができる。
本発明の第27に係る表面保護層を有する感光体は、導電性支持体に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層が積層された表面保護層を有する感光体であって、前記表面保護層は、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層と、炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層と、この第2の表面保護層より電気抵抗を高く設定した絶縁層の非晶質カーボンで形成される第3の表面保護層とから成る3層構造を有する構成を採る。
この構成によれば、第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
また、第2の表面保護層よりも電気抵抗を高く設定した第3の表面保護層を設けたので、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができ、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第28に係る表面保護層を有する感光体は、導電性支持体に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層が積層された表面保護層を有する感光体であって、前記表面保護層は、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層と、水素ガスで希釈した炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層と、この第2の表面保護層より電気抵抗を高く設定した絶縁層の非晶質カーボンで形成される第3の表面保護層とから成る3層構造を有する構成を採る。
この構成によれば、第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
また、第2の表面保護層を水素希釈炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成したので、表面保護層の電気抵抗が低下する事態を確実に回避することができる。これにより、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができるので、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
さらに、第2の表面保護層よりも電気抵抗を高く設定した第3の表面保護層を設けたので、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができ、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第29の態様は、第27又は第28の態様に係る表面保護層を有する感光体において、前記第3の表面保護層は、前記第2の表面保護層の表面を酸化することによって得られる絶縁層の非晶質カーボンで形成される構成を採る。
この構成によれば、第3の表面保護層は、第2の表面保護層の表面を酸化することによって得られる絶縁層の非晶質カーボンで形成される。第2の表面保護層を酸化することによって電気抵抗が高く設定されるので、感光体の表面の電気抵抗を高く維持することができ、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第30の態様は、第29の態様に係る表面保護層を有する感光体において、前記第3の表面保護層は、前記第2の表面保護層の表面に対して空気中における熱処理を施すことで得られる絶縁層である構成を採る。
この構成によれば、第3の表面保護層を、第2の表面保護層の表面に対して空気中における熱処理を施すことにより得る。このため、炉などの加熱装置に放置しておくだけで第3の表面保護層を形成することができる。
本発明の第31の態様は、第29の態様に係る表面保護層を有する感光体において、前記第3の表面保護層は、前記第2の表面保護層の表面に対して酸素ガスを用いたプラズマCVD処理を行うことで得られる絶縁層である構成を採る。
この構成によれば、第3の表面保護層を、第2の表面保護層の表面に対して酸素ガスを用いたプラズマCVD処理を行うことで得る。第1の表面保護層及び第2の表面保護層をプラズマCVD処理により形成することで、同一の成膜装置を用いて容易に第3の表面保護層を形成することができる。
本発明の第32の態様に係る画像形成装置は、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層と、炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層と、この第2の表面保護層より電気抵抗を高く設定した絶縁層の非晶質カーボンで形成される第3の表面保護層とから成る3層構造の表面保護層を有する感光体と、前記感光体上に非磁性トナーにより現像を行う現像手段と、前記感光体に対して帯電を行う帯電手段と、を具備する構成を採る。
この構成によれば、感光体における第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
また、第2の表面保護層よりも電気抵抗を高く設定した第3の表面保護層を設けたので、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができ、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第33の態様に係る画像形成装置は、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層と、水素ガスで希釈した炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層と、この第2の表面保護層より電気抵抗を高く設定した絶縁層の非晶質カーボンで形成される第3の表面保護層とから成る3層構造の表面保護層を有する感光体と、前記感光体上に非磁性トナーにより現像を行う現像手段と、前記感光体に対して帯電を行う帯電手段と、を具備する構成を採る。
この構成によれば、第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
また、第2の表面保護層を水素希釈炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成したので、表面保護層の電気抵抗が低下する事態を確実に回避することができる。これにより、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができるので、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
さらに、第2の表面保護層よりも電気抵抗を高く設定した第3の表面保護層を設けたので、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができ、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第34の態様は、第32又は第33の態様に係る画像形成装置において、前記帯電手段は、接触帯電法又は非接触帯電法により前記感光体に対して帯電を行う構成を採る。
この構成によれば、接触帯電法又は非接触帯電法により上記感光体の表面を帯電させることができる。
本発明の第35の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法は、表面保護層を有する感光体の製造方法であって、導電性支持体に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した感光体に表面保護層を形成する際、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層を形成し、炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層を形成し、次いで、第2の表面保護層より電気抵抗を高く設定した絶縁層の非晶質カーボンで形成される第3の表面保護層を形成するものである。
この方法によれば、第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
また、第2の表面保護層よりも電気抵抗を高く設定した第3の表面保護層を設けたので、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができ、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第36の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法は、表面保護層を有する感光体の製造方法であって、導電性支持体に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した感光体に表面保護層を形成する際、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成される第1の表面保護層を形成し、水素ガスで希釈した炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成される第2の表面保護層を形成し、次いで、第2の表面保護層より電気抵抗を高く設定した絶縁層の非晶質カーボンで形成される第3の表面保護層を形成するものである。
この方法によれば、第1の表面保護層を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
また、第2の表面保護層を水素希釈炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成したので、表面保護層の電気抵抗が低下する事態を確実に回避することができる。これにより、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができるので、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
さらに、第2の表面保護層よりも電気抵抗を高く設定した第3の表面保護層を設けたので、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができ、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第37の態様は、第35又は第36の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第2の表面保護層の表面を酸化することによって得られる絶縁層の非晶質カーボンで前記第3の表面保護層を形成するものである。
この方法によれば、第3の表面保護層は、第2の表面保護層の表面を酸化することによって得られる絶縁層の非晶質カーボンで形成される。第2の表面保護層を酸化することによって電気抵抗が高く設定されるので、感光体の表面の電気抵抗を高く維持することができ、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
本発明の第38の態様は、第37の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第3の表面保護層は、前記第2の表面保護層の表面に対して空気中における熱処理を施すことで得られる絶縁層であるものである。
この方法によれば、第3の表面保護層を、第2の表面保護層の表面に対して空気中における熱処理を施すことにより得る。このため、炉などの加熱装置に放置しておくだけで第3の表面保護層を形成することができる。
本発明の第39の態様は、第37の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第3の表面保護層は、前記第2の表面保護層の表面に対して酸素ガスを用いたプラズマCVD処理を行うことで得られる絶縁層であるものである。
この方法によれば、第3の表面保護層を、第2の表面保護層の表面に対して酸素ガスを用いたプラズマCVD処理を行うことで得る。第1の表面保護層及び第2の表面保護層をプラズマCVD処理により形成することで、同一の成膜装置を用いて容易に第3の表面保護層を形成することができる。
本発明の第40の態様は、第35又は第36の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第3の表面保護層は、前記第2の表面保護層の形成時におけるプラズマのイオンエネルギーよりも低いイオンエネルギーにて形成されるものである。
この方法によれば、第3の表面保護層が、第2の表面保護層の形成時におけるプラズマのイオンエネルギーよりも低いイオンエネルギーにて形成される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第41の態様は、第40の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際のガス圧を制御することで前記イオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際のガス圧を制御することでイオンエネルギーの高低を変化させる。このため、ガス圧を制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第2の表面保護層の電気抵抗を第1の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第42の態様は、第41の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第3の表面保護層を形成する際のガス圧を、前記第2の表面保護層を形成する際のガス圧よりも高く設定することでイオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、第3の表面保護層を形成する際のガス圧が、第2の表面保護層を形成する際のガス圧よりも高く設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第43の態様は、第40の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧を制御することで前記イオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧を制御することでイオンエネルギーの高低を変化させる。このため、表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧を制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第44の態様は、第43の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第3の表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧を、前記第2の表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧より小さく設定することでイオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、第3の表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧が、第2の表面保護層を形成する際に印加されるバイアス電圧より小さく設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第45の態様は、第40の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅を制御することで前記イオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅を制御することでイオンエネルギーの高低を変化させる。このため、表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅を制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第46の態様は、第45の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第3の表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅を、前記第2の表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅より大きく設定することでイオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、第3の表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅が、第2の表面保護層を形成する際に印加されるパルスバイアス電圧のパルス幅より大きく設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第47の態様は、第40の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅を制御することで前記イオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅を制御することでイオンエネルギーの高低を変化させる。このため、表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅を制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第48の態様は、第47の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第3の表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅を、前記第2の表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅より大きく設定することでイオンエネルギーの高低を変化させるものである。
この方法によれば、第3の表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅が、第2の表面保護層を形成する際に印加されるパルス高周波電圧のパルス幅より大きく設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第49の態様は、第35又は第36の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第3の表面保護層は、前記第2の表面保護層の形成時におけるプラズマの電子温度よりも低い電子温度にて形成されるものである。
この方法によれば、第3の表面保護層は、第2の表面保護層の形成時におけるプラズマの電子温度よりも低い電子温度にて形成される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第50の態様は、第49の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際に重畳して印加されるパルス高周波電圧とパルスバイアス電圧との印加タイミングを制御することで前記電子温度の高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際に重畳して印加されるパルス高周波電圧とパルスバイアス電圧との印加タイミングを制御することで電子温度の高低を変化させる。このため、表面保護層を形成する際に重畳して印加されるパルス高周波電圧とパルスバイアス電圧との印加タイミングを制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第51の態様は、第50の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記表面保護層を形成する際、前記パルス高周波電圧の印加を停止した後、パルスバイアス電圧が印加されるまでの遅延時間を制御することで前記電子温度の高低を変化させるものである。
この方法によれば、表面保護層を形成する際、パルス高周波電圧の印加を停止した後、パルスバイアス電圧が印加されるまでの遅延時間を制御することで前記電子温度の高低を変化させる。このため、表面保護層を形成する際、パルス高周波電圧の印加を停止した後、パルスバイアス電圧が印加されるまでの遅延時間を制御することで、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができると共に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。
本発明の第52の態様は、第51の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第3の表面保護層を形成する際における前記遅延時間を、前記第2の表面保護層を形成する際における前記遅延時間よりも短く設定することで前記電子温度の高低を変化させるものである。
この方法によれば、第3の表面保護層を形成する際における遅延時間が、第2の表面保護層を形成する際における遅延時間よりも短く設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第53の態様は、第52の態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第3の表面保護層を形成する際における前記遅延時間を、前記第2の表面保護層を形成する際における前記遅延時間よりも長く設定することで前記電子温度の高低を変化させるものである。
この方法によれば、第3の表面保護層を形成する際における遅延時間が、第2の表面保護層を形成する際における遅延時間よりも長く設定される。このため、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性並びに第1の表面保護層と第2の表面保護層との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。同時に、第3の表面保護層の電気抵抗を第2の表面保護層よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層における画像の解像度を高品質に維持することができる。
本発明の第54の態様は、第35から第53のいずれかの態様に係る表面保護層を有する感光体の製造方法において、前記第1の表面保護層を形成する前に、水素ガスのエッチングにより前記感光体の表面をクリーニングするものである。
この方法によれば、第1の表面保護層を形成する前に、水素ガスのエッチングにより感光体の表面がクリーニングされるので、感光体の表面上の異物等を除去することでき、電荷輸送層と第1の表面保護層との密着性をより一層向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体が適用される画像形成装置における画像形成部周辺の構成を示す図である。
かかる画像形成装置においては、同図に示すように、有機感光体(以下、「感光体」という)101の近傍に帯電装置102、露光装置103、現像装置104及び転写装置105が配置されている。感光体101は、表面保護層を有するが、かかる表面保護層の構成については後述する。感光体101は、不図示の駆動機構により同図中矢印方向に回転する。
帯電装置102は、感光体101の表面を均一に帯電させる。同図においては、非接触帯電法により感光体101の表面を均一に帯電させる帯電装置102について示しているが、これに限定されず、接触帯電法により帯電させる装置を適用することもできる。露光装置103は、帯電された表面をレーザ光により露光させる。これにより、感光体101の表面上に潜像画像が形成される。現像装置104は、内蔵する現像ローラ106に非磁性の現像剤(トナー)を供給し、一定量のトナーを感光体101の表面に形成された潜像画像に付着させる。転写装置105は、潜像画像に付着したトナーを、搬送ローラ107により搬送される記録紙108に対して転写する。
また、感光体101の回転方向であって、転写装置105の下流側にクリーニング装置109が配置されている。クリーニング装置109は、記録紙108への転写後に感光体101の表面上に残留するトナーを除去する。クリーニング装置109は、感光体101の表面に残留したトナーに直接接触して除去するクリーニングブレード110を備えている。
図2は、実施の形態1に係る感光体101の構成を示す拡大図である。
同図に示すように、実施の形態1に係る感光体101は、導電性支持体201に対して電荷発生層202及び電荷輸送層203が積層され、さらにその上に表面保護層204が積層された構成としている。表面保護層204は、第1の表面保護層205と、第2の表面保護層206との2層構造となっている。実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体101において、これらの第1及び第2の表面保護層205及び206は、プラズマCVD法により形成される。
図3は、実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体101を製造する際に用いられるCVD成膜装置の一例の概略図である。図4は、図3に示すCVD成膜装置において、実施の形態1に係る感光体101の第1の表面保護層205及び第2の表面保護層206を形成する際に利用されるCVDガスや印加電圧等の一例を示している。
図3に示すように、CVD成膜装置300は、真空容器301の内側に、導電性支持体201に電荷発生層202及び電荷輸送層203が積層されたもの(以下、「基体」という)Bを保持する基体ホルダ302を備え、この基体ホルダ302で保持した基体Bの周囲を囲むように配置された電極303を備える。電極303は、下方において僅かに基体ホルダ302との間に隙間を有する。電極303には、高周波電源304が接続されており、高周波電圧が印加される。
基体ホルダ302には、DCバイアス電源305が接続され、この基体ホルダ302を介して基体BにDCバイアス電圧が印加される。CVD成膜装置300には、電極303の内部に上方からCVDガスを導入するガス導入口306が設けられている。また、ガス導入口306から導入され、基体ホルダ302と電極303との隙間から真空容器301に漏れ出たCVDガスを排出する排出口307が設けられている。
このようなCVD成膜装置300において表面保護層を形成する場合、第1の表面保護層205を形成する前に、基体ホルダ302に保持した基体Bの表面を水素ガスのエッチングによりクリーニングする。具体的には、ガス導入口306から水素ガスを導入し、基体Bに−500〜−1000Vのバイアス電圧を印加することで、基体Bの表面をクリーニングする。このようなクリーニング作業を行うことで、基体Bの表面上の異物等を除去することでき、電荷輸送層203と第1の表面保護層205との密着性をより一層向上させることができる。このように基体Bの表面をクリーニングした後、第1の表面保護層205及び第2の表面保護層206を形成する。
第1の表面保護層205を形成する場合、図4に示すように、ガス導入口306からCVDガスとしてメタン等の炭化水素系ガスが導入される。真空容器301の内部に炭化水素系ガスが充満した状態で電極303に高周波電圧が印加され、基体Bに負のDCバイアス電圧が印加される。高周波電圧を印加することで真空容器301内の炭化水素系ガスをプラズマ化し、プラズマ中の電子と炭化水素系ガスとの衝突により炭化水素系ガスを分解してイオンを生成する一方、基体Bに負のDCバイアス電圧を印加することで生成されたイオンを基体Bに引き付けて第1の表面保護層205を形成する。
第1の表面保護層205を形成する際、CVD成膜装置300は、図4に示すように、基体Bに−500〜−1000Vのバイアス電圧を印加する。これにより、高周波電圧の印加によって生成されたイオンは、基体Bに引き付けられると共に、その一部が基体Bの表面を構成する電荷輸送層203に注入される。すなわち、電荷輸送層203に炭素が注入され、電荷輸送層203に単に第1の表面保護層205が付着するのでなく、電荷輸送層203にミキシング層(遷移層)を伴って第1の表面保護層205が形成される。このとき、基体Bの表面に膜厚0.01〜0.1μmの、イオン注入層を伴う非晶質カーボンで第1の表面保護層205が形成される。
一方、第2の表面保護層206を形成する場合、図4に示すように、ガス導入口306から炭化水素系ガスを水素で希釈したガス(以下、「水素希釈炭化水素系ガス」という)が導入される。真空容器301の内部に水素希釈炭化水素系ガスが充満した状態で電極303に高周波電圧が印加され、基体Bに負のDCバイアス電圧が印加される。高周波電圧を印加することで真空容器301内の水素希釈炭化水素系ガスをプラズマ化し、プラズマ中の電子と水素希釈炭化水素系ガスの衝突により水素希釈炭化水素系ガスを分解してイオンを生成する一方、基体Bに負のDCバイアス電圧を印加することで生成されたイオンを基体Bに引き付けて第2の表面保護層206を形成する。
第2の表面保護層206を形成する際、CVD成膜装置300は、図4に示すように、第1の表面保護層205を形成する場合よりも小さい−100〜−500Vのバイアス電圧を基体Bに印加する。この場合、高周波電圧の印加によって生成されたイオンは、基体Bに引き付けられるものの、第1の表面保護層205の場合と異なり、その一部が基体Bの表面層に注入されることはない。基体Bに引き付けられたイオンは、基体Bの表面層を構成する第1の表面保護層205の表面に堆積し第2の表面保護層206を形成する。このとき、基体B(第1の表面保護層205)の表面に膜厚0.1〜2.0μmの堆積層の非晶質カーボンで第2の表面保護層206が形成される。
また、実施の形態1に係るCVD成膜装置300は、上述したような基体B及び電極303への印加電圧を制御すると共に、表面保護層204を形成する際における真空容器301へのガス圧も制御している。具体的には、図4に示すように、第2の表面保護層206を形成する際のガス圧を、第1の表面保護層205を形成する際のガス圧よりも相対的に高く設定している。より具体的には、第1の表面保護層205を形成する際のガス圧と、第2の表面保護層206を形成する際のガス圧との比率を1〜2:2〜3に設定している。
図5は、実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体を画像形成装置に適用した場合に得られる効果の一例を示す図である。特に、図5においては、表面保護層204を形成する際に用いられるCVDガスの相違から得られる効果を主に示している。
なお、図5においては、特に、画像形成部において、1000枚プリントした後の密着性及び初期状態のプリントにおける解像度を比較することで効果を示している。比較の対象として、従来から存在するプラズマCVD法により形成された単層の表面保護層(単層CVD)を有する感光体を示している。
また、ガス導入口306から導入されるCVDガスは、炭化水素系ガスとしてメタンガスを使用し、水素希釈炭化水素系ガスとしてメタンガスを水素ガスで希釈したもの(以下、「水素希釈メタンガス」という)を使用している。また、メタンガスをアルゴンガスで希釈したもの(以下、「アルゴン希釈メタンガス」という)を比較の対象として使用している。
同図に示すように、単層の表面保護層を有する感光体においては、メタンガス、水素希釈メタンガス及びアルゴン希釈メタンガスのいずれを用いた場合においても、1000枚プリントした後に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化した状態となっている。このため、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなるという事態が発生し得る。
また、初期状態のプリントにおける解像度においては、水素希釈メタンガスを用いた場合にのみ画像の解像度が劣化する事態が回避され、メタンガス及びアルゴン希釈メタンガスを用いた場合には画像の解像度が劣化する事態が発生している。これは、水素希釈メタンガスを用いることで、表面保護層の電気抵抗が低下するのを回避したことに基づくものである。
一方、本実施の形態に係る表面保護層(2層CVD)を有する感光体においては、第2の表面保護層(第2層)206にメタンガス、水素希釈メタンガス及びアルゴン希釈メタンガスのいずれを用いた場合においても、1000枚プリントした後に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化する状態を回避している。これは、電荷輸送層203に炭素が注入され、電荷輸送層203に単に第1の表面保護層(第1層)205が付着するのでなく、電荷輸送層203にミキシング層(遷移層)を伴って第1の表面保護層205が形成されていることに基づくものである。このため、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなるという事態を確実に回避することができる。
また、初期状態のプリントにおける解像度においては、第2の表面保護層206に水素希釈メタンガスを用いた場合に画像の解像度が劣化する事態が確実に回避され、メタンガスを用いた場合に画像の解像度が劣化する事態がある程度回避され、アルゴン希釈メタンガスを用いた場合には画像の解像度が劣化する事態が発生している。これは、上述のように、水素希釈メタンガスを用いることで、表面保護層の電気抵抗が低下するのを回避したことに基づいたものである。
このように実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体によれば、第1の表面保護層205を炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層205との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
また、実施の形態1の表面保護層を有する感光体によれば、第2の表面保護層206を水素希釈炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成したので、表面保護層の電気抵抗が低下する事態を確実に回避することができる。これにより、表面保護層の電気抵抗を高く維持することができるので、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができる。
なお、実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体においては、炭化水素系ガスのイオン注入層を伴う非晶質カーボンで形成された第1の表面保護層205と、水素希釈炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成された第2の表面保護層206とで構成された場合について説明している。しかし、第2の表面保護層206について水素希釈炭化水素系ガスの堆積層の非晶質カーボンで形成しない場合においても、電荷輸送層203と第1の表面保護層205との密着性を向上させる効果を得ることができる。
図6及び図7は、実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体101を画像形成装置に適用した場合に得られる効果の一例を示す図である。特に、図6においては、表面保護層204を形成する際における真空容器301へのガス圧の相違から得られる効果を主に示している。また、図7においては、表面保護層204を形成する際に基体Bの印加されるDCバイアス電圧の相違から得られる効果を主に示している。
なお、図6及び図7においては、特に、画像形成部において、1000枚プリントした後の第1の表面保護層205における密着性及び初期状態でのプリント時の第2の表面保護層206における画像の解像度を比較することで効果を示している。
図6に示すように、1000枚プリントした後の第1の表面保護層205における密着性は、イオンエネルギーが低い場合(例えば、図6に示すガス圧2.5〜3の場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化した状態となり、イオンエネルギーが高い場合(例えば、図6に示すガス圧1.0〜1.5の場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化する状態を回避している。これに対し、初期状態でのプリント時の第2の表面保護層206における解像度は、イオンエネルギーが高い場合に劣化する事態が発生し、イオンエネルギーが低い場合に劣化する事態が回避されている。
かかるイオンエネルギーは、真空容器301へのガス圧を高くする設定することで低くなり、ガス圧を低く設定することで高くなる。このため、実施の形態1に係る成膜装置300においては、第2の表面保護層206を形成する際のガス圧を、第1の表面保護層205を形成する際のガス圧よりも相対的に高く設定している。
このように実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体によれば、第1の表面保護層205を形成する際のガス圧を、第2の表面保護層206を形成する際のガス圧よりも相対的に低く設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層205との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体によれば、第2の表面保護層206を形成する際のガス圧を、第1の表面保護層205を形成する際のガス圧よりも相対的に高く設定したので、第2の表面保護層206の電気抵抗を第1の表面保護層205よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層206における画像の解像度を高品質に維持することができる。
一方、イオンエネルギーの高低を基体Bに印加されるDCバイアス電圧の観点から見ると、図7に示すように、イオンエネルギーは、DCバイアス電圧が小さく設定することで低くなり(例えば、図7に示すDCバイアス電圧−100V〜−300V)、DCバイアス電圧を大きく設定することで高くなる(例えば、図7に示すDCバイアス電圧−1000V)。このため、実施の形態1に係るCVD成膜装置300においては、第2の表面保護層206を形成する際に基体Bに印加されるDCバイアス電圧を、第1の表面保護層205を形成する際のDCバイアス電圧よりも小さく設定している。
このように実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体によれば、第1の表面保護層205を形成する際に基体Bに印加されるDCバイアス電圧を、第2の表面保護層205を形成する際のDCバイアス電圧よりも大きく設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層205との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体によれば、第2の表面保護層206を形成する際のDCバイアス電圧を、第1の表面保護層205を形成する際のDCバイアス電圧よりも小さく設定したので、第2の表面保護層206の電気抵抗を第1の表面保護層205よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層206における画像の解像度を高品質に維持することができる。
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体101を製造する際に用いられるCVD成膜装置800の一例の概略図である。図9は、図8に示すCVD成膜装置800において、実施の形態2に係る感光体101の第1の表面保護層205及び第2の表面保護層206を形成する際に利用されるCVDガスや印加電圧等の一例を示している。
図8に示すCVD成膜装置800は、電極303を備えていない点、高周波電源304及びDCバイアス電源305の代わりに、それぞれパルス高周波電源801及びパルスバイアス電圧電源802を備える点、並びにパルス高周波電源801が基体ホルダ302に接続されている点で、図3に示したCVD成膜装置300と相違する。なお、図3に示す構成と同一の機能を有する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体101は、上記構成を有するCVD成膜装置800で製造される。このため、実施の形態1に係るCVD成膜装置300と比較して、電極303のために必要とされるスペースを削減することができ、そのスペースに基体Bを配置することができるので、感光体を大量に製造する場合に好適である。
実施の形態2に係るCVD成膜装置800において表面保護層を形成する際、第1の表面保護層205を形成する前に基体ホルダ302に保持した基体Bの表面を水素ガスのエッチングによりクリーニングするのは実施の形態1に係るCVD成膜装置300と同様である。
第1の表面保護層205を形成する場合、図9に示すように、ガス導入口306からCVDガスとしてメタン等の炭化水素系ガスが導入される。真空容器301の内部に炭化水素系ガスが充満した状態で基体Bに負のパルスバイアス電圧とパルス高周波電圧とを重畳した電圧が印加される。なお、この重畳した電圧の詳細については後述する。基体Bにパルス高周波電圧を印加することで真空容器301内の炭化水素系ガスをプラズマ化し、プラズマ中の電子と炭化水素系ガスとの衝突により炭化水素系ガスを分解してイオンを生成する一方、基体Bに負のパルスバイアス電圧を印加することで生成されたイオンを基体Bに引き付けて第1の表面保護層205を形成する。
第1の表面保護層205を形成する際、CVD成膜装置800は、図9に示すように、基体Bに−5kV〜−10kVのパルスバイアス電圧を印加する。これにより、パルス高周波電圧の印加によって生成されたイオンは、基体Bに引き付けられると共に、その一部が基体Bの表面を構成する電荷輸送層203に注入される。すなわち、電荷輸送層203に炭素が注入され、電荷輸送層203に単に第1の表面保護層205が付着するのでなく、電荷輸送層203にミキシング層(遷移層)を伴って第1の表面保護層205が形成される。このとき、基体Bの表面に膜厚0.01〜0.1μmの、イオン注入層を伴う非晶質カーボンで第1の表面保護層205が形成される。
一方、第2の表面保護層206を形成する場合、図9に示すように、ガス導入口306から水素希釈炭化水素系ガスが導入される。真空容器301の内部に水素希釈炭化水素系ガスが充満した状態で基体Bに負のパルスバイアス電圧とパルス高周波電圧とを重畳した電圧が印加される。基体Bにパルス高周波電圧を印加することで真空容器301内の水素希釈炭化水素系ガスをプラズマ化し、プラズマ中の電子と水素希釈炭化水素系ガスの衝突により水素希釈炭化水素系ガスを分解してイオンを生成する一方、基体Bに負のパルスバイアス電圧を印加することで生成されたイオンを基体Bに引き付けて第2の表面保護層206を形成する。
第2の表面保護層206を形成する際、CVD成膜装置800は、図9に示すように、第1の表面保護層205を形成する場合よりも小さい−500〜−1000Vのパルスバイアス電圧を基体Bに印加する。この場合、パルス高周波電圧の印加によって生成されたイオンは、基体Bに引き付けられるものの、第1の表面保護層205の場合と異なり、その一部が基体Bの表面層に注入されることはない。基体Bに引き付けられたイオンは、基体Bの表面層を構成する第1の表面保護層205の表面に堆積し第2の表面保護層206を形成する。このとき、基体B(第1の表面保護層205)の表面に膜厚0.1〜2.0μmの堆積層の非晶質カーボンで第2の表面保護層206が形成される。
図10〜図13は、実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体101を画像形成装置に適用した場合に得られる効果の一例を示す図である。特に、図10においては、表面保護層204を形成する際に基体Bの印加されるパルスバイアス電圧の相違から得られる効果を主に示している。また、図11においては、表面保護層204を形成する際に基体Bの印加されるバイアス電圧のパルス幅(以下、「バイアスパルス幅」という)の相違から得られる効果を主に示している。また、図12においては、表面保護層204を形成する際に基体Bの印加される高周波電圧のパルス幅(以下、「高周波パルス幅」という)の相違から得られる効果を主に示している。また、図13においては、表面保護層204を形成する際に発生するプラズマの電子温度の相違から得られる効果を主に示している。
なお、図10〜図13においては、特に、画像形成部において、1000枚プリントした後の第1の表面保護層205における密着性及び初期状態でのプリント時の第2の表面保護層206における画像の解像度を比較することで効果を示している。
図10に示すように、1000枚プリントした後の第1の表面保護層205における密着性は、イオンエネルギーが低い場合(例えば、図10に示すバイアス電圧−0.5kV〜−1kVの場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化した状態となり、イオンエネルギーが高い場合(例えば、図10に示すバイアス電圧−5kV〜−10kVの場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化する状態を回避している。これに対し、初期状態でのプリント時の第2の表面保護層206における解像度は、イオンエネルギーが高い場合に画像の解像度が劣化する事態が発生し、イオンエネルギーが低い場合に画像の解像度が劣化する事態が回避している。
イオンエネルギーは、基体Bの印加されるパルスバイアス電圧を小さく設定することで低くなり、パルスバイアス電圧を大きく設定することで高くなる。このため、実施の形態2に係るCVD成膜装置800においては、第2の表面保護層206を形成する際に基体Bに印加されるパルスバイアス電圧を、第1の表面保護層205を形成する際のパルスバイアス電圧よりも小さく設定している。
このように実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体においては、第1の表面保護層205を形成する際に基体Bに印加されるパルスバイアス電圧を、第2の表面保護層206を形成する際のパルスバイアス電圧よりも大きく設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層205との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体によれば、第2の表面保護層206を形成する際のパルスバイアス電圧を、第1の表面保護層205を形成する際のパルスバイアス電圧よりも小さく設定したので、第2の表面保護層206の電気抵抗を第1の表面保護層205よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層206における画像の解像度を高品質に維持することができる。
一方、イオンエネルギーの高低を基体Bに印加されるバイアスパルス幅の観点から見ると、図11に示すように、イオンエネルギーは、バイアスパルス幅を大きく設定することで低くなり(例えば、図11に示すバイアスパルス幅20μs〜50μs)、バイアスパルス幅を小さく設定することで高くなる(例えば、図11に示すバイアスパルス幅5μs)。このため、実施の形態2に係るCVD成膜装置800においては、第2の表面保護層206を形成する際に基体Bに印加されるバイアスパルス幅を、第1の表面保護層205を形成する際のバイアスパルス幅よりも大きく設定している。
このように実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体においては、第1の表面保護層205を形成する際に基体Bに印加されるバイアスパルス幅を、第2の表面保護層206を形成する際のバイアスパルス幅よりも小さく設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層205との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体によれば、第2の表面保護層206を形成する際のバイアスパルス幅を、第1の表面保護層205を形成する際のバイアスパルス幅よりも大きく設定したので、第2の表面保護層206の電気抵抗を第1の表面保護層205よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層206における画像の解像度を高品質に維持することができる。
また、イオンエネルギーの高低を基体Bに印加される高周波パルス幅の観点から見ると、図12に示すように、イオンエネルギーは、高周波パルス幅を大きく設定することで低くなり(例えば、図12に示す高周波パルス幅100μs〜200μs)、高周波パルス幅を小さく設定することで高くなる(例えば、図12に示す高周波パルス幅10μs〜20μs)。このため、実施の形態2に係るCVD成膜装置800においては、第2の表面保護層206を形成する際に基体Bに印加される高周波パルス幅を、第1の表面保護層205を形成する際の高周波パルス幅よりも大きく設定している。
このように実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体においては、第1の表面保護層205を形成する際に基体Bに印加される高周波パルス幅を、第2の表面保護層206を形成する際の高周波パルス幅よりも小さく設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層205との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体によれば、第2の表面保護層206を形成する際の高周波パルス幅を、第1の表面保護層205を形成する際の高周波パルス幅よりも大きく設定したので、第2の表面保護層206の電気抵抗を第1の表面保護層205よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層206における画像の解像度を高品質に維持することができる。
さらに、1000枚プリントした後の第1の表面保護層205における密着性は、図13に示すように、表面保護層204を形成する際に発生するプラズマ中の電子温度が低い場合(例えば、図13に示す遅延時間15〜50μsの場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化した状態となり、電子温度が高い場合(例えば、図13に示す遅延時間0〜5μs又は75〜100μsの場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化する状態を回避している。これに対し、初期状態でのプリント時の第2の表面保護層206における解像度は、電子温度が高い場合に劣化する事態が発生し、電子温度が低い場合に劣化する事態が回避されている。なお、本明細書において、電子温度とはプラズマ中の電子の平均運動エネルギーを熱エネルギーに換算した時の温度をいう。
かかるプラズマの電子温度は、基体Bに重畳されて印加されるパルス高周波電圧とパルスバイアス電圧との印加タイミングの差異に応じて変化する。具体的には、パルス高周波電圧をオフした時点からパルスバイアス電圧が印加されるまでの時間(以下、「遅延時間」という)の長短に応じて変化する。より具体的にいうと、図13に示すように、電子温度は、遅延時間を短く設定(0〜5μs)又は長く設定(75〜100μs)することで高くなり、遅延時間をその中間の長さに設定(15〜50μs)した場合に低くなる。このため、実施の形態2に係るCVD成膜装置800においては、第2の表面保護層206を形成する際の遅延時間を、第1の表面保護層205を形成する際の遅延時間よりも短く設定している。具体的には、図9に示すように、第1の表面保護層205を形成する際の遅延時間を80〜150μsに設定し、第2の表面保護層206を形成する際の遅延時間を10〜50μsに設定している。
このように実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体においては、第1の表面保護層205を形成する際の遅延時間を、第2の表面保護層206を形成する際の遅延時間よりも長く設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層205との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体によれば、第2の表面保護層206を形成する際の遅延時間が第1の表面保護層205を形成する際の遅延時間よりも短く設定したので、第2の表面保護層206の電気抵抗を第1の表面保護層205よりも高く設定することができる。このため、第2の表面保護層206における画像の解像度を高品質に維持することができる。
なお、ここでは第2の表面保護層206を形成する際の遅延時間を、第1の表面保護層205を形成する際の遅延時間よりも短く設定する場合について示している。しかし、これと逆に、第2の表面保護層206を形成する際の遅延時間を、第1の表面保護層205を形成する際の遅延時間よりも長く設定することも可能である。例えば、第1の表面保護層205を形成する際の遅延時間を0〜5μsに設定し、第2の表面保護層206を形成する際の遅延時間を10〜50μsに設定することも可能である。このように変更して遅延時間を設定した場合においても、実施の形態2にかかる効果を得ることができる。
ここで、上述のように電子温度が、遅延時間を短く設定(0〜5μs)又は長く設定(75〜100μs)することで高くなり、遅延時間をその中間の長さに設定(15〜50μs)した場合に低くなる原理について図14〜図17を用いて説明する。
図14は、基体Bに重畳して印加されるパルス高周波電圧及びパルスバイアス電圧とそれらの遅延時間Dとの関係を示す図である。図15は、図14に示すパルス電圧を基体Bに印加した場合におけるプラズマ密度を示す図である。図16は、図14に示すパルス電圧を基体Bに印加した場合におけるプラズマの電子温度を示す図である。図17は、図14に示すパルス電圧を基体Bに印加した場合におけるプラズマ密度をイオン及び電子単位で示す図である。
図14においては、時点T1からパルス高周波電圧を基体Bに印加した後、時点T2においてこの印加をストップしている。そして、時点T2から遅延時間Dを経過した時点T3においてパルスバイアス電圧を基体Bに印加している。パルス電圧を基体Bに印加した状態においては、1ms毎に繰り返し基体Bに電圧が印加されている。同図において遅延時間Dは、例えば、80μsに設定されているものとする。
図14に示すパルス電圧を基体Bに印加すると、図15に示すように、プラズマ密度は時点T1から上昇する。そして、時点T1から50μs経過した時点T4で飽和状態となる。パルス高周波電圧が印加されている間は飽和した状態が維持される。その後、時点T2でパルス高周波電圧の印加がストップすると、プラズマ密度は徐々に低下していき、アフターグロー特性になる。図15においては、アフターグロー特性により時点T3を超えてプラズマ密度が低下している状態を示している。時点T3においてパルスバイアス電圧が印加されると、プラズマ密度は一時的に上昇する。しかし、同図においては、パルスバイアス電圧の印加によって上昇したプラズマ密度よりも、アフターグロー特性に応じて低下しているプラズマ密度の方が高いため、低下中のプラズマ密度には影響を与えない。
また、図14に示すパルス電圧を基体Bに印加すると、図16に示すように、プラズマ中の電子温度は時点T1から上昇する。そして、一定の時間が経過した時点T5で電子温度の上限温度に到達する。パルス高周波電圧が印加されている間はこの上限温度が維持される。その後、時点T2でパルス高周波電圧の印加がストップすると、電子温度は急激に低下する。図16においては、時点T2から8μs経過した時点T6で低電子温度まで低下した状態について示している。パルスバイアス電圧が印加される時点T3まで低電子温度が維持されている。そして、時点T3においてパルスバイアス電圧が印加されると、電子温度は急激に上昇する。
ここでは、パルス高周波電圧の印加をストップしてから遅延時間Dである80μs経過した後にパルスバイアス電圧が印加されている。しかし、遅延時間Dが時点T6以降であって、時点T2から50μs経過していない時間に設定されている場合には電子温度が急激に上昇しない事態が発生する。これは、パルス高周波電圧の印加をストップした後にプラズマ中に残存する電子が電子温度の上昇を阻害することに起因する。
図15で説明したように、プラズマ密度は、時点T2からアフターグロー特性に応じて徐々に低下していく。このアフターグロー中のプラズマ中に含まれる正イオン、負イオン及び電子は、図17に示すような経過を辿って低下していく。すなわち、正イオンは、パルス高周波電圧の印加がストップされると、時点T2から時点T7に向けて緩やかに低下し、時点T7から時点T8に向けてさらに緩やかに低下する。負イオンは、パルス高周波電圧の印加がストップされると、時点T2から時点T9に向けて上昇し、時点T9から時点T8に向けて緩やかに低下する。一方、電子は、パルス高周波電圧の印加がストップされると、時点T2から急激に低下する。そして、時点T2から50μs経過した時点T10において消滅する。
すなわち、パルス高周波電圧の印加がストップされた時点T2から50μsの間は電子がプラズマ中に残存した状態となっている。このため、この間に遅延時間Dが設定された場合には、電子温度は急激に温度上昇することが阻害される。一方、時点T2から8μs経過した時点T6までの間に遅延時間Dが設定された場合には電子が残存するものの、電子温度自体がまだ大幅に低下していないため、電子温度は高い状態となる。また、時点T2から50μs経過した時点T10以降に遅延時間Dが設定された場合には電子が既に消滅しているため、電子温度は急激に上昇する。このため、電子温度は、遅延時間Dが短く設定(0〜5μs)又は長く設定(75〜100μs)された場合に高い温度となり、遅延時間Dがその中間の長さに設定(15〜50μs)された場合に低い温度となることとなる。
なお、図9に示すように、実施の形態2に係るCVD成膜装置800は、ガス導入口306から導入されるCVDガスに関して実施の形態1に係るCVD成膜装置300と同種のCVDガスを用いている。これにより、実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体においても、図5を用いて説明したCVDガスの相違に基づく効果を得ることができる。
また、実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体は、実施の形態1と同様に、表面保護層204を形成する際における真空容器301へのガス圧も制御している。これにより、実施の形態2に係るCVD成膜装置800においても、図6を用いて説明したガス圧の相違に基づく効果を得ることができる。
(実施の形態3)
実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体は、表面保護層204が3層構造になっている点において実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体と相違する。図18は、本発明の実施の形態3に係る感光体1801の構成を示す拡大図である。なお、図18において、図2と同一の構成を有するものには同一の符号を付し、その説明を省略する。
同図に示すように、実施の形態3に係る感光体1801は、導電性支持体201に対して電荷発生層202及び電荷輸送層203が積層され、さらにその上に表面保護層1802が積層された構成としている。表面保護層1802は、第1の表面保護層1803と、第2の表面保護層1804と、第3の表面保護層1805との3層構造となっている。表面保護層1802を3層構造にしたため、2層構造の表面保護層から成る感光体と比べて耐久性に優れ、感光体の寿命を長くすることができる。実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体1801において、これらの第1、第2及び第3の表面保護層1803〜1805は、プラズマCVD法により形成される。
実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体1801を製造する際には、実施の形態1で説明したCVD成膜装置300(図3)が用いられる。このようなCVD成膜装置300において表面保護層を形成する場合、第1の表面保護層1803を形成する前に、基体ホルダ302に保持した基体Bの表面を水素ガスのエッチングによりクリーニングするのは実施の形態1と同様である。
図19は、CVD成膜装置300において、実施の形態3に係る感光体1801の第1の表面保護層1803、第2の表面保護層1804及び第3の表面保護層1805を形成する際に利用されるCVDガスや印加電圧等の一例を示している。
第1の表面保護層1803を形成する際に利用されるCVDガス等は、実施の形態1に係る感光体101における第1の表面保護層205を形成する際と同一である。このため、実施の形態1に係る第1の表面保護層205と同様に、基体Bの表面に膜厚0.01〜0.1μmの、イオン注入層を伴う非晶質カーボンで第1の表面保護層1803が形成される。
第2の表面保護層1804を形成する際に利用されるCVDガス等は、基体Bに印加される負のDCバイアス電圧において実施の形態1に係る第2の表面保護層206を形成する際に利用されるものと相違する。実施の形態1に係る第2の表面保護層206を形成する際には−100〜−500Vのバイアス電圧が基体Bに印加されるのに対し、実施の形態3に係る第2の表面保護層1804を形成する際には−200〜−500Vのバイアス電圧が基体Bに印加される。
また、第1の表面保護層とのガス圧の相対値においても相違する。実施の形態1に係る第2の表面保護層206を形成する際のガス圧が第1の表面保護層205を形成する際のガス圧より高く設定されているのに対し、実施の形態3に係る第2の表面保護層1804を形成する際にはガス圧が第1の表面保護層1803を形成する際のガス圧とほぼ同一に設定されている。
一方、第3の表面保護層1805を形成する場合、図19に示すように、ガス導入口306から水素希釈炭化水素系ガスが導入される。真空容器301の内部に水素希釈炭化水素系ガスが充満した状態で電極303に高周波電圧が印加され、基体Bに負のDCバイアス電圧が印加される。高周波電圧を印加することで真空容器301内の水素希釈炭化水素系ガスをプラズマ化し、プラズマ中の電子と水素希釈炭化水素系ガスの衝突により水素希釈炭化水素系ガスを分解してイオンを生成する一方、基体Bに負のDCバイアス電圧を印加することで生成されたイオンを基体Bに引き付けて第3の表面保護層1805を形成する。
第3の表面保護層1805を形成する際、CVD成膜装置300は、図19に示すように、第2の表面保護層1804を形成する場合よりも小さい−0〜−100Vのバイアス電圧を基体Bに印加する。この場合、高周波電圧の印加によって生成されたイオンは、基体Bに引き付けられるものの、第1の表面保護層1803の場合と異なり、その一部が基体Bの表面層に注入されることはない。基体Bに引き付けられたイオンは、基体Bの表面層を構成する第2の表面保護層1804の表面に堆積し第3の表面保護層1805を形成する。このとき、基体B(第2の表面保護層1804)の表面に膜厚0.01〜0.1μmの堆積層の非晶質カーボンで第3の表面保護層1805が形成される。第3の表面保護層1805は、後述するように、ガス圧及びイオンエネルギーを操作することにより第2の表面保護層1804よりも電気抵抗が高く設定される。このため、図19においては、高抵抗堆積層と示している。かかる第3の表面保護層1805は本実施の形態に係る表面保護層を有する感光体において絶縁効果を有する層(絶縁層)として機能する。
実施の形態3に係る感光体1801においては、図19に示すように、第3の表面保護層1805を形成する際の真空容器301へのガス圧を第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際のガス圧よりも高く設定している。より具体的には、第1の表面保護層1803等を形成する際のガス圧と、第3の表面保護層1805を形成する際のガス圧との比率を1〜2:2〜3に設定している。
図20及び図21は、実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体1801を画像形成装置に適用した場合に得られる効果の一例を示す図である。特に、図20においては、表面保護層1802を形成する際における真空容器301へのガス圧の相違から得られる効果を主に示している。また、図21においては、表面保護層1802を形成する際に基体Bの印加されるDCバイアス電圧の相違から得られる効果を主に示している。
なお、図20及び図21においては、特に、画像形成部において、1000枚プリントした後の第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804における密着性及び初期状態でのプリント時の第3の表面保護層1805における解像度を比較することで効果を示している。
図20に示すように、1000枚プリントした後の第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804における密着性は、イオンエネルギーが低い場合(例えば、図20に示すガス圧2.5〜3の場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化した状態となり、イオンエネルギーが高い場合(例えば、図20に示すガス圧1.0〜1.5の場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化する状態を回避している。これに対し、初期状態でのプリント時の第3の表面保護層1805における解像度は、イオンエネルギーが高い場合に劣化する事態が発生し、イオンエネルギーが低い場合に劣化する事態が回避されている。
かかるイオンエネルギーは、実施の形態1で説明したように、真空容器301へのガス圧を高くする設定することで低くなり、ガス圧を低く設定することで高くなる。このため、実施の形態3に係るCVD成膜装置300においては、第3の表面保護層1805を形成する際のガス圧を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際のガス圧よりも相対的に高く設定している。
このように実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体によれば、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際のガス圧を、第3の表面保護層1805を形成する際のガス圧よりも相対的に低く設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層1803との密着性並びに第1の表面保護層1803と第2の表面保護層1804との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体によれば、第3の表面保護層1805を形成する際のガス圧を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際のガス圧よりも相対的に高く設定したので、第3の表面保護層1805の電気抵抗を第2の表面保護層1804よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層1805における画像の解像度を高品質に維持することができる。
一方、イオンエネルギーの高低を基体Bに印加されるDCバイアス電圧の観点から見ると、図21に示すように、イオンエネルギーは、DCバイアス電圧が小さく設定することで低くなり(例えば、図21に示すDCバイアス電圧−100V〜−300V)、DCバイアス電圧を大きく設定することで高くなる(例えば、図21に示すDCバイアス電圧−1000V)。このため、実施の形態3に係るCVD成膜装置300においては、第3の表面保護層1805を形成する際に基体Bに印加されるDCバイアス電圧を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際のDCバイアス電圧よりも小さく設定している。
このように実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体においては、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際に基体Bに印加されるDCバイアス電圧を、第3の表面保護層1805を形成する際のDCバイアス電圧よりも大きく設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層1803との密着性並びに第1の表面保護層1803と第2の表面保護層1804との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体によれば、第3の表面保護層1805を形成する際のDCバイアス電圧を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際のDCバイアス電圧よりも小さく設定したので、第3の表面保護層1805の電気抵抗を第2の表面保護層1804よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層1805における画像の解像度を高品質に維持することができる。
なお、実施の形態3において、CVD成膜装置300は、図19に示すようにガス導入口306から導入されるCVDガスに関して実施の形態1と同種のCVDガスを用いている。これにより、実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体においても、図5を用いて説明したCVDガスの相違に基づく効果を得ることができる。
(実施の形態4)
実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体が実施の形態1に係るCVD成膜装置300を用いて製造されるのに対し、実施の形態4に係る表面保護層を有する感光体は、実施の形態2に係るCVD成膜装置800(図8)を用いて製造される点で相違する。なお、実施の形態4に係る表面保護層を有する感光体は、実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体と同様に、図18に示す3層構造を有している。表面保護層1802を3層構造にしたため、2層構造の表面保護層から成る感光体と比べて耐久性に優れ、感光体の寿命を長くすることができる。CVD成膜装置800において表面保護層を形成する場合、第1の表面保護層1803を形成する前に、基体ホルダ302に保持した基体Bの表面を水素ガスのエッチングによりクリーニングするのは実施の形態3と同様である。
図22は、CVD成膜装置800において、実施の形態4に係る感光体1801の第1の表面保護層1803、第2の表面保護層1804及び第3の表面保護層1805を形成する際に利用されるCVDガスや印加電圧等の一例を示している。
第1の表面保護層1803を形成する際に利用されるCVDガス等は、実施の形態2に係る感光体101における第1の表面保護層205を形成する際と同一である。このため、実施の形態2に係る第1の表面保護層205と同様に、基体Bの表面に膜厚0.01〜0.1μmの、イオン注入層を伴う非晶質カーボンで第1の表面保護層1803が形成される。
第2の表面保護層1804を形成する際に利用されるCVDガス等は、基体Bに印加されるパルスバイアス電圧において実施の形態2に係る第2の表面保護層206を形成する際に利用されるものと相違する。実施の形態2に係る第2の表面保護層206を形成する際には−500〜−1000Vのパルスバイアス電圧が基体Bに印加されるのに対し、実施の形態4に係る第2の表面保護層1804を形成する際には−1000〜−2000Vのパルスバイアス電圧が基体Bに印加される。
また、第1の表面保護層とのガス圧の相対値においても相違する。実施の形態2に係る第2の表面保護層206を形成する際のガス圧が第1の表面保護層205を形成する際のガス圧より高く設定されているのに対し、実施の形態4に係る第2の表面保護層1804を形成する際にはガス圧が第1の表面保護層1803を形成する際のガス圧とほぼ同一に設定されている。
さらに、第2の表面保護層1804を形成する際の高周波パルス幅、バイアスパルス幅及び遅延時間においても相違する。施の形態2に係る第2の表面保護層206を形成する際の高周波パルス幅、バイアスパルス幅及び遅延時間がそれぞれ50〜200μs、20〜50μs及び10〜50μsに設定されているのに対し、実施の形態4に係る第2の表面保護層1804を形成する際の高周波パルス幅、バイアスパルス幅及び遅延時間はそれぞれ10〜20μs、3〜10μs及び80〜150μsに設定されている。
一方、第3の表面保護層1805を形成する場合、図22に示すように、ガス導入口306から水素希釈炭化水素系ガスが導入される。真空容器301の内部に水素希釈炭化水素系ガスが充満した状態で基体Bに負のパルス電圧とパルス高周波電圧とを重畳した電圧が印加される。基体Bにパルス高周波電圧を印加することで真空容器301内の水素希釈炭化水素系ガスをプラズマ化し、プラズマ中の電子と水素希釈炭化水素系ガスの衝突により水素希釈炭化水素系ガスを分解してイオンを生成する一方、基体Bに負のパルスバイアス電圧を印加することで生成されたイオンを基体Bに引き付けて第2の表面保護層206を形成する。
第3の表面保護層1805を形成する際、CVD成膜装置800は、図22に示すように、第2の表面保護層1804を形成する場合よりも小さい−100〜−500Vのパルスバイアス電圧を基体Bに印加する。この場合、パルス高周波電圧の印加によって生成されたイオンは、基体Bに引き付けられるものの、第1の表面保護層1803の場合と異なり、その一部が基体Bの表面層に注入されることはない。基体Bに引き付けられたイオンは、基体Bの表面層を構成する第2の表面保護層1804の表面に堆積し第3の表面保護層1805を形成する。このとき、基体B(第1の表面保護層205)の表面に膜厚0.01〜0.1μmの堆積層の非晶質カーボンで第3の表面保護層1805が形成される。第3の表面保護層1805は、後述するように、ガス圧、イオンエネルギー及び電子温度を操作することにより第2の表面保護層1804よりも電気抵抗が高く設定される。このため、図22においては、高抵抗堆積層と示している。かかる第3の表面保護層1805は本実施の形態に係る表面保護層を有する感光体において絶縁効果を有する層(絶縁層)として機能する。
図23〜図26は、実施の形態4に係る表面保護層を有する感光体1801を画像形成装置に適用した場合に得られる効果の一例を示す図である。特に、図23においては、表面保護層1802を形成する際に基体Bの印加されるパルスバイアス電圧の相違から得られる効果を主に示している。また、図24においては、表面保護層1802を形成する際に基体Bの印加されるバイアスパルス幅の相違から得られる効果を主に示している。また、図25においては、表面保護層1802を形成する際に基体Bの印加される高周波パルス幅の相違から得られる効果を主に示している。また、図26においては、表面保護層1802を形成する際に発生するプラズマの電子温度の相違から得られる効果を主に示している。
なお、図23〜図26においては、特に、画像形成部において、1000枚プリントした後の第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804における密着性及び初期状態でのプリント時の第3の表面保護層1805における画像の解像度を比較することで効果を示している。
図23に示すように、1000枚プリントした後の第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804における密着性は、イオンエネルギーが低い場合(例えば、図23に示すバイアス電圧−0.5kV〜−1kVの場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化した状態となり、イオンエネルギーが高い場合(例えば、図23にすバイアス電圧−5kV〜−10kVの場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化する状態を回避している。これに対し、初期状態でのプリント時の第3の表面保護層1805における解像度は、イオンエネルギーが高い場合に画像の解像度が劣化する事態が発生し、イオンエネルギーが低い場合に画像の解像度が劣化する事態が回避している。
イオンエネルギーは、図10で説明したように、基体Bの印加されるパルスバイアス電圧を小さく設定することで低くなり、パルスバイアス電圧を大きく設定することで高くなる。このため、実施の形態4に係るCVD成膜装置800においては、第3の表面保護層1805を形成する際に基体Bに印加されるパルスバイアス電圧を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際のパルスバイアス電圧よりも小さく設定している。
このように実施の形態4に係る表面保護層を有する感光体においては、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際に基体Bに印加されるパルスバイアス電圧を、第3の表面保護層1805を形成する際のパルスバイアス電圧よりも大きく設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層1803との密着性並びに第1の表面保護層1803と第2の表面保護層1804との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態4に係る表面保護層を有する感光体によれば、第3の表面保護層1805を形成する際のパルスバイアス電圧を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際のパルスバイアス電圧よりも小さく設定したので、第3の表面保護層1805の電気抵抗を第2の表面保護層1804よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層1805における画像の解像度を高品質に維持することができる。
一方、イオンエネルギーの高低を基体Bに印加されるバイアスパルス幅の観点から見ると、図24に示すように、イオンエネルギーは、バイアスパルス幅を大きく設定することで低くなり(例えば、図24に示すバイアスパルス幅20μs〜50μs)、バイアスパルス幅を小さく設定することで高くなる(例えば、図24に示すバイアスパルス幅5μs)。このため、実施の形態4に係るCVD成膜装置800においては、第3の表面保護層1805を形成する際に基体Bに印加されるバイアスパルス幅を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際のバイアスパルス幅よりも大きく設定している。
このように実施の形態4に係る表面保護層を有する感光体においては、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際に基体Bに印加されるバイアスパルス幅を、第3の表面保護層1805を形成する際のバイアスパルス幅よりも小さく設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層1803との密着性並びに第1の表面保護層1803と第2の表面保護層1804との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体によれば、第3の表面保護層1805を形成する際のバイアスパルス幅を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際のバイアスパルス幅よりも大きく設定したので、第3の表面保護層1805の電気抵抗を第2の表面保護層1804よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層1805における画像の解像度を高品質に維持することができる。
また、イオンエネルギーの高低を基体Bに印加される高周波パルス幅の観点から見ると、図25に示すように、イオンエネルギーは、高周波パルス幅を大きく設定することで低くなり(例えば、図25に示す高周波パルス幅100μs〜200μs)、高周波パルス幅を小さく設定することで高くなる(例えば、図25に示す高周波パルス幅10μs〜20μs)。このため、実施の形態4に係るCVD成膜装置800においては、第3の表面保護層1805を形成する際に基体Bに印加される高周波パルス幅を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際の高周波パルス幅よりも大きく設定している。
このように実施の形態4に係る表面保護層を有する感光体においては、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際に基体Bに印加される高周波パルス幅を、第3の表面保護層1805を形成する際の高周波パルス幅よりも小さく設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層1803との密着性並びに第1の表面保護層1803と第2の表面保護層1804との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体によれば、第3の表面保護層1805を形成する際の高周波パルス幅を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際の高周波パルス幅よりも大きく設定したので、第3の表面保護層1805の電気抵抗を第2の表面保護層1804よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層1805における画像の解像度を高品質に維持することができる。
さらに、1000枚プリントした後の第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804における密着性は、図26に示すように、表面保護層1802を形成する際に発生するプラズマ中の電子温度が低い場合(例えば、図26に示す遅延時間15〜50μsの場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化した状態となり、電子温度が高い場合(例えば、図26に示す遅延時間0〜5μs又は75〜100μsの場合)に表面保護層と電荷輸送層との密着性が悪化する状態を回避している。これに対し、初期状態でのプリント時の第3の表面保護層1805における解像度は、電子温度が高い場合に劣化する事態が発生し、電子温度が低い場合に劣化する事態が回避されている。このため、実施の形態4に係る成膜装置800においては、第3の表面保護層1805を形成する際の遅延時間を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際の遅延時間よりも短く設定している。具体的には、図22に示すように、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際の遅延時間を80〜150μsに設定し、第3の表面保護層1805を形成する際の遅延時間を10〜50μsに設定している。
このように実施の形態4に係る表面保護層を有する感光体においては、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際の遅延時間を、第3の表面保護層1805を形成する際の遅延時間よりも長く設定したので、電荷輸送層203と第1の表面保護層1803との密着性並びに第1の表面保護層1803と第2の表面保護層1804との密着性を向上させることができる。これにより、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避することができるので、感光体の寿命を長くすることができる。
同時に、実施の形態3に係る表面保護層を有する感光体によれば、第3の表面保護層1805を形成する際の遅延時間を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際の遅延時間よりも短く設定したので、第3の表面保護層1805の電気抵抗を第2の表面保護層1804よりも高く設定することができる。このため、第3の表面保護層1805における画像の解像度を高品質に維持することができる。
なお、ここでは第3の表面保護層1805を形成する際の遅延時間を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際の遅延時間よりも短く設定する場合について示している。しかし、これとは逆に、第3の表面保護層1805を形成する際の遅延時間を、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際の遅延時間よりも長く設定することも可能である。例えば、第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804を形成する際の遅延時間を0〜5μsに設定し、第3の表面保護層1805を形成する際の遅延時間を10〜50μsに設定することも可能である。このように変更して遅延時間を設定した場合においても、実施の形態4にかかる効果を得ることができる。
(実施の形態5)
実施の形態5に係る表面保護層を有する感光体は、実施の形態1に係るCVD成膜装置300で製造された感光体の第2の表面保護層に何らかの処理を施してその表面に酸化層(絶縁層)を形成する点で実施の形態1に係る表面保護層を有する感光体と相違する。実施の形態5に係る表面保護層を有する感光体においては、この酸化層(絶縁層)が第3の表面保護層を構成するため、3層構造を有することとなる。このように表面保護層1802を3層構造にしたので、2層構造の表面保護層から成る感光体と比べて耐久性に優れ、感光体の寿命を長くすることができる。以下の説明においては、3層構造を有する感光体の構成を図18に示す符号を用いて説明する。
実施の形態5においては、CVD成膜装置300で製造された感光体の第2の表面保護層1804の表面を酸化させて第3の表面保護層1805を形成する方法として、第1に酸素ガスをCVDガスとして用いてプラズマCVD法により第3の表面保護層1805を形成する方法、第2に空気中において熱処理を施すことで第3の表面保護層1805を形成する方法を採用している。
図27は、実施の形態5に係る感光体1801の第1の表面保護層1803、第2の表面保護層1804及び第3の表面保護層1805を形成する際に利用されるCVDガスや印加電圧等の一例を示している。なお、図27における第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804においては、ガス圧を除いて実施の形態1に係る感光体101と同一であるため、その説明を省略する。また、図27における第3の表面保護層1805においては、上記第1及び第2の2つの方法を示している。
実施の形態5において、第1の方法を用いて第3の表面保護層1805を形成する場合、図27に示すように、ガス導入口306からCVDガスとして酸素ガスが導入される。真空容器301の内部に酸素ガスが充満した状態で電極303に高周波電圧が印加され、基体Bに負のDCバイアス電圧が印加される。高周波電圧を印加することで真空容器301内の酸素ガスをプラズマ化し、プラズマ中の電子と酸素ガスとの衝突により酸素ガスを分解してイオンを生成する一方、基体Bに負のDCバイアス電圧を印加することで生成されたイオンを基体Bに引き付けて第3の表面保護層1805を形成する。
第3の表面保護層1805を形成する際、CVD成膜装置300は、図27に示すように、基体Bに0〜−100Vのバイアス電圧を印加する。これにより、高周波電圧の印加によって生成されたイオンは、基体Bに引き付けられ、基体Bの表面層を構成する第2の表面保護層1804の表面に堆積し第3の表面保護層1805を形成する。このとき、基体B(第2の表面保護層1804)の表面に膜厚0.01〜0.1μmの非晶質カーボンで第3の表面保護層1805が形成される。かかる第3の表面保護層1805は本実施の形態に係る表面保護層を有する感光体において絶縁効果を有する層(絶縁層)として機能する。
一方、実施の形態5において、第2の方法を用いて第3の表面保護層1805を形成する場合には、CVD成膜装置300で第2の表面保護層1804まで形成した感光体1801を別途設けた炉などの空気中の加熱処理が可能な装置(以下、「加熱装置」という)に所定時間入れる。これにより、基体B(第2の表面保護層1804)の表面に膜厚0.01〜0.1μmの非晶質カーボンで第3の表面保護層1805が形成される。なお、加熱装置に入れておく適度な時間については後述する。かかる第3の表面保護層1805も本実施の形態に係る表面保護層を有する感光体において絶縁効果を有する層(絶縁層)として機能する。
このように形成された第3の表面保護層1805としての酸化層(絶縁層)においては、その電気抵抗が第2の表面保護層1804が有する電気抵抗より高く設定される。このため、画像をプリントした場合においてその画像の解像度の品質が向上するという効果が現れる。
図28は、実施の形態5に係る表面保護層を有する感光体1801を画像形成装置に適用した場合に得られる効果の一例を示す図である。特に、図28においては、第3の表面保護層1805を形成する際の方法の相違から得られる効果を示している。なお、図28においては、特に、500枚プリントした後における画像の解像度を比較することで効果を示している。図28においては、第1の方法による処理を酸素プラズマ処理と示し、第2の方法により処理を熱処理と示している。
同図に示すように、CVD成膜装置300で第2の表面保護層1804まで製造した感光体1801に対して空気中における熱処理を施すと、500枚プリントした後における画像の解像度において差異が現れる。熱処理を施していない感光体1801との比較において、50℃で120分間又は70℃で30分間の熱処理を施した場合には、ある程度の画像の解像度の改善が現れる。一方、80℃で30分間、90℃で30分間又は100℃で30分間の熱処理を施した場合には画像の解像度の品質において明らかな改善が現れる。特に、90℃で30分間の熱処理を施した場合に顕著に解像度の品質が向上される。
しかし、感光体1801の表面に熱処理を施す場合にはその外観において注意が必要となる。すなわち、感光体1801に対する適度な時間の熱処理は、解像度を向上させる効果をもたらす。しかしながら、感光体1801に対する過度の時間の熱処理は、感光体1801自体の外観に悪影響を及ぼす。図28に示した例では、100℃で30分間の熱処理を施した場合に感光体1801の表面に細かなヒビ割れが発生している。
これに対し、第1の方法(酸素プラズマ処理)により第3の表面保護層1805を形成した場合には、5分間の酸素プラズマ処理で画像の解像度に明らかな改善が現れる。この場合には、5分間という短期間で処理を完了することができる。また、外観においても熱処理の場合における悪影響は発生しない。
このように実施の形態5に係る感光体1801においては、第2の表面保護層1804に何らかの処理を施して絶縁層(酸化層)を構成する第3の表面保護層1805を形成したので、感光体1801の表面の電気抵抗を高く維持することができ、画像の解像度を高品質に維持することができる。
なお、図27に示すように、実施の形態5に係る表面保護層を有する感光体1801においては、ガス導入口306から導入されるCVDガスに関して実施の形態1に係るCVD成膜装置300と同種のCVDガスを用いている。これにより、実施の形態5に係る感光体1801においても、図5を用いて説明したCVDガスの相違に基づく効果を得ることができる。
(実施の形態6)
実施の形態6に係る表面保護層を有する感光体は、実施の形態2に係るCVD成膜装置800で製造された感光体の第2の表面保護層に何らかの処理を施してその表面に酸化層(絶縁層)を形成する点で実施の形態2に係る表面保護層を有する感光体と相違する。実施の形態6に係る表面保護層を有する感光体においては、この酸化層(絶縁層)が第3の表面保護層を構成するため、3層構造を有することとなる。このように表面保護層1802を3層構造にしたので、2層構造の表面保護層から成る感光体と比べて耐久性に優れ、感光体の寿命を長くすることができる。以下の説明においては、3層構造を有する感光体の構成を図18に示す符号を用いて説明する。
実施の形態6においては、CVD成膜装置800で製造された感光体の第2の表面保護層1804の表面を酸化させて第3の表面保護層1805を形成する方法として、実施の形態5と同様に、第1に酸素ガスをCVDガスとして用いてプラズマCVD法により第3の表面保護層1805を形成する方法、第2に空気中において熱処理を施すことで第3の表面保護層1805を形成する方法を採用している。
図29は、実施の形態6に係る感光体1801の第1の表面保護層1803、第2の表面保護層1804及び第3の表面保護層1805を形成する際に利用されるCVDガスや印加電圧等の一例を示している。なお、図29における第1の表面保護層1803及び第2の表面保護層1804においては、ガス圧を除いて実施の形態2に係る感光体101と同一であるため、その説明を省略する。また、図29における第3の表面保護層1805においては、上記第1及び第2の2つの方法を示している。
実施の形態6において、第1の方法を用いて第3の表面保護層1805を形成する場合、図29に示すように、ガス導入口306からCVDガスとして酸素ガスが導入される。真空容器301の内部に酸素ガスが充満した状態で基体Bに負のパルスバイアス電圧とパルス高周波電圧とを重畳した電圧が印加される。基体Bにパルス高周波電圧を印加することで真空容器301内の酸素ガスをプラズマ化し、プラズマ中の電子と酸素ガスとの衝突により酸素ガスを分解してイオンを生成する一方、基体Bに負のパルスバイアス電圧を印加することで生成されたイオンを基体Bに引き付けて第3の表面保護層1805を形成する。
第3の表面保護層1805を形成する際、CVD成膜装置800は、図29に示すように、基体Bに−500〜−1000Vのパルスバイアス電圧を基体Bに印加する。この場合、パルス高周波電圧の印加によって生成されたイオンは、基体Bに引き付けられ、基体Bの表面層を構成する第2の表面保護層1804の表面に堆積し第3の表面保護層1805を形成する。このとき、基体B(第2の表面保護層1804)の表面に膜厚0.01〜0.1μmの非晶質カーボンで第3の表面保護層1805が形成される。かかる第3の表面保護層1805は本実施の形態に係る表面保護層を有する感光体において絶縁効果を有する層(絶縁層)として機能する。
一方、実施の形態6において、第2の方法を用いて第3の表面保護層1805を形成する場合は、実施の形態5における場合と同様のため、説明を省略する。
このように形成された第3の表面保護層1805としての酸化層(絶縁層)においては、実施の形態5と同様に、その電気抵抗が第2の表面保護層1804が有する電気抵抗より高く設定される。このため、画像をプリントした場合においてその画像の解像度の品質が向上するという効果が現れる。かかる効果については、実施の形態5における場合と同様に、図28に示すように現れる。
このように実施の形態6に係る感光体1801においては、第2の表面保護層1804に何らかの処理を施して絶縁層(酸化層)を構成する第3の表面保護層1805を形成したので、感光体1801の表面の電気抵抗を高く維持することができ、画像の解像度を高品質に維持することができる。
なお、図29に示すように、実施の形態6に係る表面保護層を有する感光体1801においては、ガス導入口306から導入されるCVDガスに関して実施の形態1に係るCVD成膜装置300と同種のCVDガスを用いている。これにより、実施の形態5に係る感光体1801においても、図5を用いて説明したCVDガスの相違に基づく効果を得ることができる。
また、以上の説明においては、実施の形態1〜6に係る表面保護層を有する感光体から直接、記録紙に転写する場合の構成について説明している。しかし、これに限定されず、感光体から中間転写ベルトなどの中間転写体に転写し、この中間転写体から記録紙に転写する画像形成装置にも適用することができる。
図30は、本発明の実施の形態に係る表面保護層を有する感光体が適用されるカラー画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
同図に示すように、本カラー画像形成装置3000は、上部に原稿の読み取りを行う読取ユニット1を備え、その下方に給紙、転写、記録、定着の処理を実行する本体ユニット2を備える。
本体ユニット2の下方領域に複数段からなる給紙カセット3が設置されている。給紙カセット3にセットされた記録紙束から最上面の記録紙がピックアップローラ4によって取り出される。給紙カセット3から取り出された記録紙は、給紙ローラ5によって本体ユニット2の底部から上方に向けて形成された紙パス6に送り込まれる。紙パス6には、記録紙をさらに上方に搬送する複数の搬送ローラ7及び8が配置されている。
搬送ローラ8によって搬送された記録紙は、搬送ローラ9により搬送され、レジストローラ10に渡される。レジストローラ10による記録紙の搬送先には、二次転写ローラ11が配置されている。二次転写ローラ11は、後述する中間転写ベルトが巻回されたベルト搬送ローラ12a、12bのうち、ベルト搬送ローラ12aと対向して配置されている。二次転写ローラ11は、中間転写ベルトに形成されたカラー画像を、搬送されてくる記録紙に転写させる。なお、中間転写ベルト上の画像と記録紙の記録領域との位置調整はレジストローラ10によって制御される。
ベルト搬送ローラ12aは、本カラー画像形成装置3000の図30に示す右方端部近傍に配置され、ベルト搬送ローラ12bは、図30に示す左方端部近傍に配置されている。中間転写ベルト13は、これらのベルト搬送ローラ12a、12bに巻回されている。ベルト搬送ローラ12aが駆動ローラにより駆動され、その駆動に応じて中間転写ベルト13は、図中矢印方向に回転する。
中間転写ベルト13の下方に、中間転写ベルト13の表面にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するプロセスカートリッジ14Y〜Kが並列配置されている。各プロセスカートリッジ14は、本実施の形態に係る表面保護層を有する感光体で構成される感光体ドラム15Y〜Kを備えている。各感光体ドラム15は、中間転写ベルト13に転写させる画像を担持する。各プロセスカートリッジ14は、それぞれの感光体ドラム15に対向配置され、各感光体ドラム15上に形成された潜像画像にトナーを付着させることで画像を顕像化させる現像ローラ16Y〜Kを有する現像器17Y〜Kの外壁と、本体ユニット2の筐体の内壁とで構成される収納部18Y〜Kに収納される。
中間転写ベルト13の内側であって、各感光体ドラム15と対向する位置に一次転写ローラ19Y〜Kが設けられている。各一次転写ローラ19は、各感光体ドラム15に形成された画像を中間転写ベルト13に転写させる。一次転写ローラ19Y〜Kが各色の画像を同一位置に重ねて転写させることで、中間転写ベルト13にカラー画像が形成される。この中間転写ベルト13上のカラー画像が二次転写ローラ11により記録紙に転写される。
カラー画像が転写された記録紙の搬送先に、定着ユニット20が配置されている。定着ユニット20は、定着ローラ21と、定着ローラ21に対向配置された加圧ローラ22と、を備えている。定着ローラ21が記録紙の記録面に熱を加え、加圧ローラ22が記録紙を定着ローラ21との間で押圧することにより、記録紙にカラー画像が定着する。定着ユニット20から排出された記録紙は、排出ローラ23により排紙トレイ24上に排出される。なお、本カラー画像形成装置3000においては、排紙トレイ24は、本体ユニット2の内部領域に形成されている。
このような中間転写体を介して記録紙に画像を転写するカラー画像形成装置3000に適用された場合においても、感光体から直接、記録紙に画像を転写する場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、プリント枚数が増加した場合においても、プリント時のスクラッチにより表面保護層が削れ、有機感光体自体の寿命が短くなる事態を確実に回避して感光体の寿命を長くすることができると共に、表面保護層の電気抵抗が低下することに起因して画像の解像度が劣化する事態を確実に回避することができるという効果を奏する。