JP2005220341A - 充填材及びこれを用いた配線基板並びに配線基板の製造方法 - Google Patents

充填材及びこれを用いた配線基板並びに配線基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 充填性、他層との接合性及び耐熱性等に優れる充填材及び配線基板並び製造方法を提供する。
【解決手段】 本充填材は、熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤と無機フィラーとを含有する充填材において、所定の熱硬化性エポキシ樹脂(レゾルシノール型等)と、これを除く他の熱硬化性エポキシ樹脂と、を含有する。本配線基板(100a)は、貫通孔(11)を備える基層(1)と、本充填材の硬化物(2)からなり且つ貫通孔内充填物(2)と、貫通孔開口面に表出した充填物(2)の表面を覆う導体層(3)とを備える。本製造方法は、基体貫通孔(11)内に、本充填材(2)を充填する充填工程と、充填された充填材を硬化させて充填物(2)とする硬化工程と、基体(1)表面に表出した充填物(2)の表面を覆うように導体層(3)を形成する導体層形成工程と、を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は充填材及びこれを用いた配線基板並びに配線基板の製造方法に関する。更に詳しくは、フィラーを高含有させることができ、より小さな充填箇所に対応できる充填材、及びこれを用いた配線基板、並びにその製造方法に関する。
充填材は、従来より配線基板の凹部及び貫通孔等の充填に用いられてきた。近年、配線基板には高密度化及び信頼性向上が益々要求されている。このうち高密度化の面では、充填箇所は次第に小さく充填し難い形態となる傾向にある。例えば、いわゆるビルドアップ多層配線基板では、層間の導通を要する所望の層にスルーホールを設け、その後、表裏の導通を行った後、もはや必要のなくなったスルーホール内の空隙を埋めるため等に充填材が用いられている。このようなスルーホールもまた小径化傾向にある。また、信頼性向上の面では、低熱膨張化が要求されており、充填材にも同様な低熱膨張化が必要となっている。
ビルドアップ多層配線基板に適した充填材が下記特許文献1において、また、高密度化された構造で使用される充填材等が下記特許文献2において各々知られている。
特開平10−75027号公報 特開平6−232560号公報
上記特許文献1では、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、無機フィラー及び特定の硬化剤を含有する充填材が開示されている。また、上記特許文献2では、ネオペンチルグリコールエポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂及び銅粉末を含有する充填材が開示されている。しかし、これらの組成では、低熱膨張化のためにフィラーを高含有させた場合、充填は低下すると考えられる。即ち、従来の組成では、近年要求されている低熱膨張化と充填性の向上とを両立させることが困難であった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、フィラーを高含有させることができ、微細な充填箇所に対応できる充填材及びこれを用いた配線基板並びにその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、充填材の低熱膨張化及び高密度構造への対応について検討を行った。その結果、充填材を低熱膨張化するには、熱膨張率の小さいフィラーを充填材に高含有させることが有効であるが、高密度化の要求から充填対象でもあるスルーホール等は小径化傾向にあり、このような場合は充填が困難であることを見知した。そこで、耐熱性、耐湿性、耐熱衝撃性、作業性、加工性及び従来からの製造設備等の使用が可能であることなど加味し、従来使用されていない各種材料について検討を行った。その結果、少なくとも所定の樹脂を用いた場合には、低熱膨張化を目的とする場合だけでなく、各種フィラーを高含有させた場合に極めて良好な充填性が得られる場合があることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下に示す通りである。
[1]熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤と無機フィラーとを含有する充填材において、該熱硬化性エポキシ樹脂として下記(1)〜(5)のうちの少なくとも1種と、下記(1)〜(5)を除く他の熱硬化性エポキシ樹脂と、を含有することを特徴とする充填材。
(1)下記化学式(i)(但し、R及びRは各々2価の有機基であり、R〜Rは1価の有機機又は水素原子である)で表されるエポキシ化合物
(2)下記化学式(i)で表されるエポキシ化合物が重合されて得られたオリゴマー
(3)下記化学式(ii)(但し、R及びRは各々2価の有機基であり、R〜R12は1価の有機機又は水素原子である)で表されるエポキシ化合物
(4)下記化学式(ii)で表されるエポキシ化合物が重合されて得られたオリゴマー
(5)下記化学式(i)で表されるエポキシ化合物と下記化学式(ii)で表されるエポキシ化合物とが共重合されて得られたオリゴマー
Figure 2005220341
Figure 2005220341
[2]上記他の熱硬化性エポキシ樹脂として、二官能性のビスフェノール型エポキシ樹脂を含有する上記[1]に記載の充填材。
[3]貫通孔を備える基層と、上記[1]又は[2]に記載の充填材の硬化物からなり且つ該貫通孔内を充填する充填物と、該貫通孔の開口面に表出した該充填物の表面を覆い且つ該基層上に形成された導体層と、を備えることを特徴とする配線基板。
[4]凹部及び貫通孔のうちの少なくとも一方の充填用部を備える基層と、該充填用部内に配置された電子部品と、上記[1]又は[2]に記載の充填材が該充填用部内の少なくとも一部に充填された後、硬化されてなり且つ該電子部品を固定する充填物と、該充填物の該充填用部内から表出された表面の少なくとも一部を覆う導体層と、を備えることを特徴とする配線基板。
[5]貫通孔を備える基体の該貫通孔内に、上記[1]又は[2]に記載の充填材を充填する充填工程と、充填された該充填材を硬化させて充填物とする硬化工程と、基体表面に表出した該充填物の表面を覆うように導体層を形成する導体層形成工程と、を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
本発明の充填材によれば、充填性を保持又は向上させながらフィラーを高含有させることができ、低熱膨張化でき、優れた耐熱性を発揮でき、充填材硬化物と基層との密着性及び充填材硬化物上の他層(導体層及び絶縁層等)との接合性に優れ、多層化した場合にも高い信頼性が発揮される。
他の熱硬化性エポキシ樹脂として、二官能性のビスフェノール型エポキシ樹脂を含有する場合は、他の性能を保持しつつ、耐熱性、他層との接合性、充填性及び信頼性をバランス良く発揮させることができる。
本発明の第1観点の配線基板によれば、本発明の充填材を用いて得られるため、充填物は耐熱性、他層との接合性、充填性及び信頼性をバランス良く発揮できる。このため熱衝撃等の熱耐久性及び熱信頼性において優れる。
本発明の第2観点の配線基板によれば、本発明の充填材を用いて得られるため、充填物は耐熱性、他層との接合性、充填性及び信頼性をバランス良く発揮でき、電子部品を確実に固定しつつその性能を十分に発揮させることができる。また、熱衝撃等の熱耐久性及び熱信頼性において優れる。
本発明の製造方法によれば、充填材を充填用部内へ充填性よく充填できる。また、得られる充填物は耐熱性、他層との接合性、充填性及び信頼性に優れるため、高い信頼性を発揮できる配線基板を得ることができる。更に、低熱膨張化できるため、熱衝撃等の熱耐久性及び熱信頼性において優れた配線基板を得ることができる。従って、充填物上に形成された上部導体層との界面に、間隙(デラミネーション)及びクラック等が発生することが効果的に防止された配線基板を得ることができる。また、ビア導体等を用いて高密度に多層化された配線基板であっても、これらの効果を得ることができる。
本発明について、以下詳細に説明する。
[1]充填材
本発明の充填材は、熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤と無機フィラーとを含有する充填材において、熱硬化性エポキシ樹脂として上記(1)〜(5)のうちの少なくとも1種と、上記(1)〜(5)を除く他の熱硬化性エポキシ樹脂と、を含有することを特徴とする。
上記「熱硬化性エポキシ樹脂」は、エポキシ環を有し、加熱により硬化される硬化前化合物(硬化物の前駆体化合物)を意味する。この硬化前化合物には単量体及びオリゴマーが含まれるものとする。本充填材には、少なくとも後述する(1)〜(5)のうちの少なくとも1種の熱硬化性エポキシ樹脂(以下、「第1エポキシ樹脂」ともいう)と、これらを除くその他の熱硬化性エポキシ樹脂(以下、「第2エポキシ樹脂」ともいう)とが含有される。
上記「(1)〜(5)のうちの少なくとも1種の熱硬化性エポキシ樹脂」は、本充填材に必須の第1エポキシ樹脂である。この第1エポキシ樹脂を含有することにより、本樹脂は優れた充填性を有し且つフィラーを高含有することができる。この第1エポキシ樹脂としては、上記(1)〜(5)が挙げられる。この第1エポキシ樹脂(1)〜(5)とは下記の通りである。
第1エポキシ樹脂(1)は、化学式(i)で表されるエポキシ化合物である。
第1エポキシ樹脂(2)は、化学式(i)で表されるエポキシ化合物が重合されて得られたオリゴマーである。
第1エポキシ樹脂(3)は、化学式(ii)で表されるエポキシ化合物である。
第1エポキシ樹脂(4)は、化学式(ii)で表されるエポキシ化合物が重合されて得られたオリゴマーである。
第1エポキシ樹脂(5)は、化学式(i)で表されるエポキシ化合物と化学式(ii)で表されるエポキシ化合物とが共重合されて得られたオリゴマーである。
上記「化学式(i)」は、R1及びR2が各々2価の有機基(R1とR2とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。)であり、且つ、R3〜R6が1価の有機機又は水素原子であるエポキシ樹脂(エーテル結合によりジグリシジル化されたメタジヒドロキシベンゼン誘導体)である。
また、R3は、1価の有機機又は水素原子であれば特に限定されないが、分子量の小さい基であることが好ましい。例えば、有機基である場合には、炭化水素基であることが好ましく、更には、炭素数は3以下(更には炭素数1)であることがより好ましい。また、有機基であるよりも水素原子であることが好ましい。
更に、R4〜R6は、1価の有機機又は水素原子であれば特に限定されず、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、有機基である場合には、炭素数は5以下(より好ましくは1〜3)であることが好ましい。更に、R4〜R6は全てが有機基であってもよいが、1つの基は水素原子であることが好ましく、更には2つの基が水素原子であることがより好ましい。
この化学式(i)で表されるエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル、メチルレゾルシノールジグリシジルエーテル、ジメチルレゾルシノールジグリシジルエーテル及びエチルレゾルシノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記「化学式(ii)」は、R7及びR8が各々2価の有機基(R7とR8とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。)であり、且つ、R9〜R12が1価の有機機又は水素原子であるエポキシ樹脂(エーテル結合によりジグリシジル化されたオルトジヒドロキシベンゼン誘導体)である。
更に、R9〜R12は、1価の有機機又は水素原子であれば特に限定されず、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、有機基である場合には、炭素数は5以下(より好ましくは1〜3)であることが好ましい。更に、R9〜R12は全てが有機基であってもよいが、1つの基は水素原子であることが好ましく、2つの基が水素原子であることがより好ましく、更には3つの基が水素原子であることが特に好ましい。
この第1エポキシ樹脂は、上記化学式(i)及び(ii)から分かるようにベンゼン環を有するにもかかわらず、エポキシ当量を小さく保持した構造とすることができる。このため、得られる硬化後の充填物は、優れた耐熱性を得ることができる。更に、エポキシ当量が小さいため、通常、低粘度であり、充填材中では希釈剤として機能できる。従って、フィラーを高充填させた際にも、作業性(良好な充填性)を保持しつつ、耐熱性に優れた充填物となる充填材を得ることができる。また、耐熱性及び充填性に加えて、耐水性も良好であり、更には、他層(特に導体層)との接合性にも優れるため高いピール強度を得ることができる。
この第1エポキシ樹脂の粘度は特に限定されないが、25℃において1.5Pa・s以下(より好ましくは0.10〜1.5Pa・s、更に好ましくは0.15〜1.0Pa・s)であることが好ましい。この範囲であれば、充填材に対して希釈剤として機能し、充填材にフィラーの高充填と良好な印刷性との両方の特性を十分に発揮させることができると共に、皮膚刺激性等の取扱い上の問題も生じないからである。更に、この第1エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、90〜200(より好ましくは95〜180、更に好ましくは100〜150)であることが好ましい。
更に、この第1エポキシ樹脂の含有量は特に限定されないが、熱硬化性エポキシ樹脂全体を100質量%とした場合に、80質量%未満(より好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは5〜60質量%)であることが好ましい。80質量%未満であれば、得られる硬化物の靭性が十分に良好な状態に保たれる(脆くならない)からである。
これら第1エポキシ樹脂に相当する現行の市販品としては、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX−201(レゾルシノールジグリシジルエーテル、粘度0.25Pa・s、エポキシ当量117)、及び、日本化薬株式会社製のMRGE(メチルレゾルシノールジグリシジルエーテル、粘度0.8Pa・s、エポキシ当量129)等が挙げられる。
上記「他の熱硬化性エポキシ樹脂」(第2エポキシ樹脂)は、第1エポキシ樹脂以外であればよく、その種類は特に限定されない。また、その含有量も特に限定されない。第2エポキシ樹脂は、二官能性であってもよく、三官能以上の多官能性(以下、「多官能」とは三官能以上であることをいうものとする)であってもよい。
二官能性エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型及び脂環型等が挙げられる。このうちグリシジルエーテル型としては、各種ビスフェノール型、ビフェニル型、ナフタレン型及びフルオレン型等が挙げられる。これらのうちビスフェノール型としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノール型及びビスフェノールAF型等が挙げられる。また、グリシジルアミン型としては、ヒダントイン型、アニリン型及びトルイジン型等が挙げられる。
また、多官能性エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型及びグリシジルアミン型等が挙げられる。このうちグリシジルエーテル型としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジフェニルプロパン型、トリスヒドロキシフェニルメタン型及びテトラフェニロールエタン型等が挙げられる。また、グリシジルアミン型としては、アミノフェノール型、テトラグリシジルジアミニジフェニルメタン型、トリグリシジルイソシアヌレート型及び1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン型等が挙げられる。この多官能エポキシ樹脂を用いる場合は、第1エポキシ樹脂による効果等を保持しつつ、特に耐熱性を向上させることができる。
第2エポキシ樹脂は、上記のなかでは、各種ビスフェノール型、フェノールノボラック型及びクレゾールノボラック型の各グリシジルエーテル型、各種アミノフェノール型、グリシジルアミン型、並びに、脂環型の各エポキシ樹脂が好ましい。これらは耐熱性、耐薬品性、及び、第1エポキシ樹脂と混合された際に良好な流動性を保持できるためである。また、これらのなかでも、液状(25℃における粘度が1〜25Pa・s)のビスフェノール型、アミノフェノール型及びグリシジルアミン型がより好ましい。更に、ビスフェノールF型、ビスフェノールA型、アミノフェノール型及びグリシジルアミン型の各エポキシ樹脂が特に好ましい。これらは耐熱性、耐薬品性及びフィラーとの混練性が特に良好であり、且つ、第1エポキシ樹脂と混合された際に良好な流動性を保持できるためである。これら第2エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
この第2エポキシ樹脂の含有量は、熱硬化性エポキシ樹脂全体を100質量%とした場合に、20質量%以上(より好ましくは25〜95質量%、更に好ましくは30〜95質量%)であることが好ましい。20質量%以上であれば、得られる硬化物の靭性が十分に良好な状態に保たれる(脆くならない)からである。
更に、第2エポキシ樹脂を2種以上用いる場合は、二官能性エポキシ樹脂と多官能性エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。各々の種類は特に限定されず上記と同様であるが、二官能性のビスフェノールF型及び二官能性のビスフェノールA型のうちの少なくとも一方のエポキシ樹脂と、多官能性のグリシジルアミン型のエポキシ樹脂とを併用することが特に好ましい。この場合、第2エポキシ樹脂全体を100質量%とした場合に、上記の二官能性のビスフェノール型エポキシ樹脂を合計で5〜95質量%(より好ましくは10〜90質量%)、多官能性のグリシジルアミン型エポキシ樹脂を5〜90質量%(より好ましくは5〜90質量%)含有することが好ましい。
上記「硬化剤」は、第1エポキシ樹脂及び第2エポキシ樹脂を加熱硬化できるものであればよく、その種類は特に限定されない。即ち、触媒型硬化剤であってもよく、重付加型硬化剤であってもよい。触媒型硬化剤としては、イミダゾール系硬化剤、三級アミン系硬化剤及びルイス酸等が挙げられる。また、重付加型硬化剤としては、ポリアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤及びイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。これらのなかでも、イミダゾール系硬化剤及びポリアミン系硬化剤が好ましい。
イミダゾール系硬化剤としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
ポリアミン系硬化剤としては、ジシアンジアミド、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、メタキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン及びジヒドラジド等が挙げられる。これらのなかでもジシアンジアミドが好ましい。
これらイミダゾール系硬化剤及びポリアミン系硬化剤のうちジシアンジアミドを用いて得られる硬化物は、特に耐熱性、耐溶剤性、耐酸性及び耐水性に優れ、更に、充填材自体の充填性、作業性及び保存安定性等に優れるためである。
これら硬化剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、硬化剤以外にも1種類又は2種以上の硬化触媒を用いることができる。
この硬化剤の含有量は、熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させることができるものであればよく特に限定されないが、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量を100質量%とした場合に、硬化剤は2〜10質量%(より好ましくは3〜7質量%)とすることができる。この範囲であれば、耐熱性を保持しつつ、熱硬化性エポキシ樹脂を十分に硬化させることができるからである。
上記「無機フィラー」は、無機物からなるフィラーである。この無機フィラーとしては、無機化合物フィラー(セラミックフィラー及び誘電体フィラー等を含む)並びに金属フィラー等が挙げられる。このうち無機化合物フィラーとしては、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、タルク、窒化アルミニウム及び硫酸バリウム等からなるセラミックフィラー(各無機化合物の粉末)が挙げられる。また、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛及びチタン酸ジルコン酸鉛等からなる誘電体フィラーが挙げられる。これらの無機フィラーは目的用途に応じて適宜のフィラーが含有されることが好ましいが、炭酸カルシウム、酸化ケイ素及びアルミナ粉末がより好ましく、炭酸カルシウム及び酸化ケイ素粉末が特に好ましい。いずれも得られる充填物を低熱膨張化できるからである。特に酸化ケイ素粉末は、少量で効率よく低熱膨張化を行うことができる。更に、炭酸カルシウムは低熱膨張化に加えて充填物上に形成される層との接合性に優れる。これらの無機フィラーは1種のみが含有されてもよく、2種以上が含有されてもよい。
上記炭酸カルシウム粉末は、CaCOを主成分とする粉末である。炭酸カルシウムは、酸化剤等により分解又は溶解させて微細な凹凸を形成でき、硬化後の充填物上に形成された層(例えば、導体層、絶縁層及びソルダーレジスト層等)との接合性に優れる。
尚、上記CaCOを主成分とする炭酸カルシウム粉末は、この粉末を1050±50℃で恒温になるまで加熱した場合に、加熱前の粉末全体(100質量%)に対して54〜55.5質量%がCaOとなり、43〜45質量%がIg.Loss(焼失分)となり、且つ、Ig.Loss全体(100質量%)の99質量%以上がCOであるものが好ましい。
この炭酸カルシウム粉末の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性エポキシ樹脂全体を100質量部とした場合に10〜150質量部(より好ましくは15〜140質量部)であることが好ましい。この範囲であれば、硬化後の充填物上に形成された層との接合性が十分に得られ、また、充填材中に含有される水分量を調整し易く、更には、配線基板を構成する他材との熱膨張率の調整も容易だからである。
また、炭酸カルシウム粉末を構成する粉末粒子には、破砕物状粒子、球状粒子、立方体状粒子、紡錘状粒子、針状粒子及び柱状粒子(棒状粒子)等がある。本充填材では、これらのなかでも、破砕物状粒子、球状粒子、立方体状粒子及び紡錘状粒子のうちの少なくともいずれかが含有され、針状粒子及び柱状粒子は実質的に含有されないことが好ましい。上記の結晶構造のうち好ましい構造のものを用いることにより、充填箇所(特にスルーホール等)への充填不良を防止でき、また、特に充填に際してずり応力が負荷される場合(印刷により充填する場合等)にも無機フィラーが配向することを防止できる。このため、熱膨張率等に偏りを生じない。更に、この熱膨張率の偏りがないため、硬化後の充填物上に形成された層との界面に間隙(デラミネーション)及びクラック等が発生することを効果的に防止できる。
破砕物状粒子とは、不定形状からなる粒子であり、通常、破砕(粉砕等であってもよい)により塊状物を小粒化した場合に形成される形状の粒子である(但し、実際に破砕により得られているか否かは限定されない)。この破砕物状粒子は、どのような手段で得られたものであってもよいが、例えば、蠣殻、海産微生物殻の堆積物及び糖晶石灰石等を破砕し、更には、分級して得ることができる。この破砕物状粒子としては、いわゆる重質炭酸カルシウム等が挙げられる。
また、球状粒子とは、球状及び略球状(例えば、ラグビーボール状等を含む)等の形状からなる粒子である。この球状粒子は、どのような手段により得られたものであってもよいが、例えば、溶媒中に溶解されたカルシウム化合物と二酸化炭素とを、又は、溶媒中に溶解されたカルシウム化合物と炭酸化合物とを反応させる等して得ることができる。この球状粒子としては、いわゆるコロイド炭酸カルシウム等が挙げられる。
更に、立方体状粒子とは、立方体形状及び略立方体形状(例えば、面取りされた立方体形状等)の形状からなる粒子である。この立方体状粒子としては、バテライト結晶粒子及び立方体型カルサイト結晶粒子等が挙げられる。
また、紡錘状粒子とは、紡錘形状及び略紡錘形状からなる粒子である。また、通常、そのアスペクト比は3以下(好ましくは2以下)である。アスペクト比が3以下であれば充填時の配向が特に生じ難いからである。即ち、配向が生じたとしてもその量が少ないためほとんど配向の影響を受けないものである。
尚、これらの以外の形状である、針状粒子及び柱状粒子とは、通常、アスペクト比が3を超える形状であるものを意味するものとする。
これら破砕物状粒子、球状粒子、立方体状粒子及び紡錘状粒子の粉末粒子からなる炭酸カルシウム粉末を用いた場合は、流動性に優れるため充填性にも優れ、充填時の充填不良を防止できる。また、粒子が充填時に配向しないため、熱膨張に異方性を生じない。特に、配向し易いずり応力が負荷される場合にも無機フィラーが配向することを防止できる。硬化後の充填物上に他層(例えば、導体層、絶縁層及びソルダーレジスト層等)が形成されている場合には、他層との界面に間隙(デラミネーション)及びクラック等が発生することを特に良好に防止できる。
これら破砕物状粒子、球状粒子、立方体状粒子及び紡錘状粒子のなかでも、特に破砕物状粒子、球状粒子及び立方体状粒子が好ましい。これらは特にアスペクト比が小さい(例えば、3以下)。このため、更に効果的に、充填不良の防止、熱膨張の異方性防止、ずり応力が負荷される場合の配向防止、及び、充填物上に他層と接合不良防止ができる。
更に、炭酸カルシウムの結晶構造には、カルサイト結晶構造、バテライト結晶構造及びアラゴナイト結晶構造の同質異像が知られている。これらのなかでも、本充填材に含有される炭酸カルシウム粉末はカルサイト結晶からなる粉末及び/又はバテライト結晶からなる粉末を主成分とすることが好ましい。これらの結晶はアスペクト比が大きくなり難いからである。更に、カルサイト結晶からなる粉末及びバテライト結晶からなる粉末のうちでは、カルサイト結晶からなる粉末が好ましい。カルサイト結晶は最も安定な構造であり、また、バテライト結晶よりも入手し易く、安価に得られるためである。また、上記主成分とするとは、炭酸カルシウム粉末全体の70質量%以上含有されていることを表す。
更に、この炭酸カルシウム粉末は、平均一次粒子径が0.03〜5μm(より好ましくは0.05〜3μm、更に好ましくは0.05〜2.5μm)であることが好ましい。平均一次粒子径がこの範囲であれば、充填材が極端に増粘すること等がなく良好な充填性を調整し易い。また、分散不良生じることがない。更に、配線基板製造工程においては酸化剤による溶出不良を生じることがなく、硬化後の充填物上の他層との接合性も十分に得られる。尚、この平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察又は空気透過法によって測定するものとする。
一方、酸化ケイ素粉末はどのような形状の粉末粒子からなるものであってもよいが、
球状粒子及び破砕物状粒子が好ましく、更には、球状粒子からなることが好ましい。この粒子からなる酸化ケイ素粉末を使用することで、流動性がよい充填材を容易に得ることができる。また、高充填が可能となる。この酸化ケイ素粉末の平均粒子径(平均一次粒子径)は特に限定されないが、0.1〜15μm(より好ましくは2〜12μm)であることが好ましい。この範囲であれば、高充填が可能であり、特に無溶剤の充填材を調製する場合にも高充填が容易である。また、硬化後の充填物を研磨する場合にも脱粒による平滑性低下を生じ難く、また、積層される他層(例えば、導体層等)との接合性も十分に得ることができる。更に、最大粒径は100μmを超えないことが好ましい。この範囲であれば、充填口径が300μm以下の貫通孔、凹部及び貫通孔等においても確実に充填を行うことができる。
これらの無機フィラー(炭酸カルシウムを含む)は、表面処理されていてもよく、表面処理されていなくてもよい。表面処理の種類は特に限定されないが、例えば、脂肪酸(炭素数10〜20が好ましい。例えば、ステアリン酸等が挙げられる。)、スルホン酸系化合物(炭素数10〜20が好ましい)及びパラフィン系化合物(炭素数10〜20が好ましい)等の有機系表面処理剤によるコーティング、シランカップリング剤等のカップリング剤によるコーティング等が挙げられる。表面処理により、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂と無機フィラーとの密着性を向上させること等ができる。これら表面処理は1種のみが施されていてもよく、2種以上が施されていてもよい。
また、本発明の充填材には、溶剤が含有されてもよいが、含有されないことが特に好ましい。溶剤が含有されないことで、充填箇所(貫通孔等)に充填した後、硬化させる際に溶剤の揮発に起因する泡の発生、凹みの発生及びクラックの発生等を特に効果的に防止できる。更に、配線基板においては、熱負荷が加えられた場合であっても、硬化後の充填物のフクレの発生、気泡の発生及びクラックの発生等を特に効果的に防止できる。
更に、本発明の充填材には、熱硬化性エポキシ樹脂、硬化剤及び無機フィラー以外にも、各種光硬化性樹脂、各種光硬化剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤及び分散剤等を含有できる。また、熱硬化性エポキシ樹脂と無機フィラーとの親和性を向上させるカップリング剤を混合することができる。更に、無機フィラーが充填材内で沈降することを防止するために、平均一次粒子径が80nm以下の極微粒の酸化ケイ素粉末、酸化チタン粉末及び酸化アルミニウム粉末等を含有できる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の充填材の水分量は、充填材全体を100%とした場合に0.5%未満(より好ましくは0.0〜0.5%、更に好ましくは0〜0.3%、特に好ましくは0.0〜0.1%)であることが好ましい。この範囲であれば含有される材料等によらず極度な増粘を防止できる。また、硬化後の充填物内にボイドが生じることも防止できる。特に無機フィラーとして炭酸カルシウム粉末を用いる場合、炭酸カルシウムは一般に吸水性が高いが、上記水分量の範囲は、その管理方法及び添加時の工夫(添加量及び脱水処理等)などにより上記範囲を達することができる。
更に、本発明の充填材の粘度は特に限定されないが、B型粘度計により温度22±1℃で測定した場合の剪断速度21s−1における粘度が90Pa・s以下(より好ましくは20〜85Pa・s、更に好ましくは30〜85Pa・s)であることが好ましい。この範囲であれば充填性に優れるからである。特に後述する充填口径が350μm以下(更には300μm以下、特に150μm以下、通常30μm以上)の貫通孔に対しても十分な充填性を得ることができる。
本発明の充填材を充填する部位は特に限定されず、配線基板等の充填を要する、貫通孔及び凹部等の充填箇所に特に限定されることなく利用できる。これらの貫通孔及び凹部については後述する。
更に、本充填材は、硬化後の充填物上に他層が積層される場所に用いられることに適している。この他層の種類は特に限定されないが、例えば、導体層及び絶縁層等である。このうち、特に充填物上に導体層が直接積層される場所に用いられることが特に適している。即ち、充填後、硬化させて得られた充填物の表面を覆う導体層(以下、単に「上部導体層」という)が形成されることとなる充填箇所の充填に特に好適である。この上部導体層を構成する導体材料等については後述する。更に、この上部導体層上にビア導体が積層されることとなる充填箇所の充填に特に好適である。
[2]配線基板
本発明の第1観点に係る配線基板は、貫通孔を備える基層と、本発明の充填材の硬化物からなり且つ貫通孔内を充填する充填物と、貫通孔の開口面に表出した充填物の表面を覆い且つ基層上に形成された導体層と、を備えることを特徴とする。
上記「貫通孔」は、配線基板(多層配線基板等を含む)を構成する基層に貫通された孔である。また、この貫通孔には、基層の表裏の導通を行うもの(以下、単に「導通用貫通孔」という)と、内部に電子部品が配設されるもの(以下、「電子部品搭載用貫通孔」ともいう)とが含まれる(これら両方の機能を有するものも貫通孔には含まれる)。導通用貫通孔としては、例えば、図1において、配線基板(100a)を構成する基層(1)に形成された貫通孔(11)が挙げられる。一方、電子部品搭載用貫通孔としては、例えば、図4において、配線基板(100b)を構成する基層(1)に形成された貫通孔(11)が挙げられる。これらの貫通孔には、目的用途に応じて、基層の表裏の導通を行ってもよく、行わなくてもよい。この表裏の導通を行う場合、その手段は特に限定されないが、内部導体(後述する内壁導体層及び/又は導電性充填物等)を形成することで基層の表裏を導通できる。
また、貫通孔の形状及び大きさ等は限定されない。例えば、実際に充填する際の口径(以下、単に「充填口径」という)は350μm以下であってもよく、特に300μm以下(更には200μm以下、特に150μm以下、通常30μm以上)の小径であってもよい。この充填口径とは、貫通孔自体の開口径にかかわらず、本充填材を充填する際の開口径を意味する。即ち、例えば、貫通孔内に内壁導体層が形成されている場合には、内壁導体層に囲まれた孔の開口径を意味するものである。また、貫通孔の開口部が円形でない場合は、最も充填し難い部分の長さを意味するものとする。即ち例えば、貫通孔の開口部が矩形である場合には、対辺間の最短距離とする。更に、この貫通孔の長さは、1000μm以下であることが好ましい。この範囲であれば作業性よく充填を行うことができるからである。また、内壁導体層は、通常、常温において3μΩ・cm以下の導体層であるが、その導体材料は特に限定されず、前述の上部導体層の導体材料をそのまま適用できる。この内壁導体層の厚さも特に限定されないが、通常、10μm以上(好ましくは10〜50μm)である。
尚、内壁導体層が形成されている場合、基層に形成された貫通孔のうち、内壁導体層により占有された領域を除く部分も貫通孔というものとする。
上記「貫通孔の開口面」(以下、単に「貫通孔開口面」という)とは、貫通孔の端面である。本配線基板では、図1のように後述する上部導体層(3)との接触面積を大きくする目的で、内壁導体層(6)から連続して基層表面に形成される導体層(6')(以下、単に「基層表面導体層」という)を備える場合がある。この場合、貫通孔開口面は基層表面導体層(6')の表面と同じ平面上に位置することとなる。また、例えば、基層表面導体層を備えない場合、貫通孔開口面は基層の表面と同じ平面上に位置することとなる。
上記「基層」は、貫通孔が形成された層である。この基層は、本第1観点に係る配線基板を製造する際の基体である。この基体はコア基板であってもよく、その他の基板(自身を支持し得る機械的強度を備える)又は層(他の基板等による支持を要する)であってもよい。即ち、例えば、シーケンシャル積層法における基層は、通常、コア基板である。また、一括積層法における基層は、コア基板以外にも、その他の既に多層化されたものが挙げられる。
この基層を構成する材料は特に限定されず、有機材料及び有機材料を用いた複合材料が挙げられる。有機材料は、特に限定されず、配線基板の絶縁部に用いられるあらゆる有機材料を用いることができる。例えば、エポキシ系樹脂、BT(ビスマレイミド・トリアジン)系樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、熱硬化性PPE(ポリフェニレンエーテル)系樹脂、LCP(液層ポリマー)、BCB(ベンゾシクロブテン)及びポリノルボルネン等を挙げることができる。これらの有機材料は1種のみからなってもよく、2種以上からなってもよい。また、これらの樹脂に改質のための各種ゴム等を含有することもできる。更に、基体は芯材としてガラスクロス、ガラス不織布、樹脂(ポリアミド等)クロス、樹脂(ポリアミド等)不織布、樹脂(ポリアミド等)フィルム、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等で形成された3次元網目構造を有するフッ素樹脂系芯材及び金属箔等を有していてもよい。更に、熱膨張率の調整及び絶縁性向上等の目的で充填材におけると同様に上記セラミックフィラーを含有してもよい。
上記「充填物」は、貫通孔内を充填している前記本発明の充填材の硬化物からなるものである。即ち、無機フィラーと、前記化学式(i)又は(ii)に由来する硬化樹脂とを少なくとも含有するものである。
上記「導体層」は、貫通孔開口面に表出した充填物の表面を覆う基層上に形成された層である。即ち、基層表面に形成された導体層のうち、貫通孔開口面に表出する充填物を覆っている層であり、前述の上部導体層である。例えば、図1では、貫通孔開口面に表出した充填物(2)の表面を覆う基層(1)上に形成された層(3)である。
上部導体層を構成する導体材料の種類は特に限定されないが、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケル、スズ及び鉛及びこれらのうちの2種以上の合金等が挙げられる。また、この上部導体層の厚さも特に限定されないが、通常、50μm以下(好ましくは5〜45μm、より好ましくは7〜40μm、特に好ましくは10〜35μm)である。更に、上部導電層の導電性も特に限定されないが、通常、常温において3μΩ・cm以下である。
また、本第1観点に係る発明の配線基板は、更に、上部導体層を覆う絶縁層と、絶縁層の上部導体層と対向する面に形成された他の導体層と、絶縁層を貫通して上部導体層及び他の導体層を電気的に接続するビア導体と、を備えて多層化されたものとすることができる。更には、このビア導体は、少なくとも貫通孔の開口面上に形成されているものとすることができる。
このうち絶縁層とは、上部導体層を上記他の導体層以外の導体層等と絶縁するために、上部導体層を覆う絶縁性を有する層である。例えば、図1では、上部導体層(3)を上記他の導体パターン(5)以外の導体層等と絶縁するために、上部導体層(3)を覆う層(4)である。この絶縁層を構成する絶縁材料の種類は特に限定されないが、通常、有機材料が用いられる。有機材料の種類は特に限定されず上記基層を構成する有機材料をそのまま適用できる。更に、基層を構成する有機材料と同様に、改質等のためにゴム、芯材、セラミックフィラー等を併用できる。
絶縁層の厚さは特に限定されないが、通常、60μm以下(好ましくは10〜50μm、より好ましくは15〜50μm、特に好ましくは15〜40μm)である。更に、絶縁層の絶縁性も特に限定されないが、通常、常温において1010Ω・m以上である。
また、上記他の導体層は、絶縁層を介して上部導体層と対向している導体層である。この他の導体層を構成する導体材料は、上部導体層における導体材料をそのまま適用できる。また、厚さ及び導電性についても同様である。
更に、ビア導体は、上部導体層と他の導体パターンとを絶縁層を貫通して電気的に接続する導体である。即ち、例えば、図1では、上部導体層(3)と他の導体パターン(5)とを絶縁層(4)を貫通して電気的に接続する導体(52)である。このビア導体(52)を構成する導体材料は、上部導体層における導体材料をそのまま適用できる。また、導電性についても同様である。更に、このビア導体の大きさも特に限定されないが、通常、最大長(最大径)が100μm以下(好ましくは10〜80μm)であり、更に、貫通孔の開口径の10分の1以下(好ましくは1分の1〜10分の1)の大きさである。
ビア導体は、貫通孔開口面上に形成されていなくてもよいが、貫通孔開口面上に形成されているものとすることができる。即ち、貫通孔開口面上の上部導体層と、貫通孔開口面上の他の導体層とを、貫通孔開口面上で電気的に接続する導体である。このビア導体は、貫通孔開口面上に形成され且つ貫通孔の開口面上でない部分にも形成されていてもよい。
更に、多層化とは、上部導体層以外に、絶縁層を介して少なくとも1層以上の他の導体層を形成することを意味する。この多層化は繰り返して行うことにより、複数の導体層がビアで接続された多層配線基板が得られる。
本発明の第2観点に係る配線基板は、凹部及び貫通孔のうちの少なくとも一方の充填用部を備える基層と、充填用部内に配置された電子部品と、本発明の充填材が充填用部内の少なくとも一部に充填された後、硬化されてなり且つ電子部品を固定する充填物と、充填物の充填用部内から表出された表面の少なくとも一部を覆う導体層と、を備えることを特徴とする。
上記「基層」、上記「充填材」及び上記「充填物」は、本発明の充填材における各々をそのまま適用できる。
上記「充填用部」とは、充填を要する充填箇所を意味する。この充填用部には凹部及び貫通孔が含まれる。上記「凹部」(以下、「電子部品搭載用凹部」という)は、配線基板(多層配線基板等を含む)を構成する基層に形成された貫通されていない穴であり、内部に電子部品が配設されるものである。この電子部品搭載用凹部としては図5に示すように、基層(1)に設けられた凹部(12)が挙げられる。また、上記「貫通孔」は、前記本第1観点において述べた貫通孔のうち、電子部品搭載用貫通孔である。即ち、図4に示すように、基層(1)に設けられた貫通孔(11)が挙げられる。これらの凹部及び貫通孔等の形状は、貫通の有無以外は各々特に限定されない。また、その大きさも特に限定されない。
電子部品搭載用凹部及び電子部品搭載用貫通孔の充填口径は、導通用貫通孔のものに比べると大きい場合もある。しかし、充填口径が大きい場合であっても、配置された電子部品同士の隙間及び貫通孔内壁と電子部品の隙間等を確実に充填できる必要があり、導通用貫通孔に比べてより困難な充填となる場合もある。本充填材によるとこのような状況の充填に対しても、フィラーとの分離等を生じることなく良好な充填性を発揮させることができる。即ち、例えば、隙間の最短距離が350μm以下(更には30〜300μm、特に30〜150μm)となる電子部品搭載用凹部及び電子部品搭載用貫通孔においても良好な充填性を確保できる。
また、上記充填材(硬化後は充填物)は、電子部品を固定することができればよく、充填用部の少なくとも一部に充填されていればよい。
上記「電子部品」は、充填用部内に搭載可能であればどのような電子部品であってもよい。即ち、例えば、能動部品、受動部品、変換部品及び接続部品等のいずれであってもよい。これらの電子部品としては、コンデンサ、インダクタ、フィルタ、抵抗及びトランジスタ等が含まれる。更に、その形態は、各々チップ状のものであってもよく、これらのうちの2個以上が集合されたユニット状のものであってもよい。
この電子部品の搭載方法は特に限定されず、本発明の充填材からなる充填物により固定することができればよい。即ち、例えば、図4及び図5等のように、充填物(2)により貫通孔(11)内に電子部品(8)を固定することができる。
上記「導体層」(以下、「上部導体層」ともいう)は、充填用部内から表出された充填物の表面の少なくとも一部を覆うものであること以外は、前記上部導体層と同様である。即ち、この上部導体層を構成する導体材料、厚さ及び導電性等は上部導体層と同様である。この上部導体層は、例えば、図4では、貫通孔(11)の開口面に表出した充填物(2)の表面の一部を覆う導体層(3)である。また、図5では、凹部(12)の開口面に表出した充填物(2)の表面の一部を覆う導体層(3)である。
また、本第2観点に係る配線基板は、前記第1観点に係る配線基板と同様に、上部導体層を覆う絶縁層と、絶縁層の上部導体層と対向する面に形成された他の導体層と、絶縁層を貫通して上部導体層及び他の導体層を電気的に接続するビア導体と、を備えて多層化されたものとすることができる。
絶縁層は、例えば、図4及び図5では、上部導体層(3)を上記他の導体パターン(5)以外の導体層等から絶縁している層(4)である。また、他の導体パターンは、例えば、図4及び図5では、絶縁層(4)を介して上部導体層(3)と対向する導体層(51)と、上部導体層(3)と他の導体層(51)とを絶縁層(4)を貫通して電気的に接続するビア導体(52)とからなる。
[3]配線基板の製造方法
本発明の配線基板の製造方法は、
貫通孔を備える基体の貫通孔内に、本発明の充填材を充填する充填工程と、充填された充填材を硬化させて充填物とする硬化工程と、基体表面に表出した充填物の表面を覆うように導体層を形成する導体層形成工程と、を備えることを特徴とする。
上記「充填工程」は、貫通孔を備える基体の貫通孔内に、本充填材を充填する工程である。貫通孔の形成方法は特に限定されず、貫通孔孔設前の基体にドリル及び/又はレーザーを用いて形成できる。また、充填材に導電性フィラーが含有されない場合は、貫通孔内壁に内壁導体層を形成する。この内壁導体層の形成方法は特に限定されないが、貫通孔内壁面に無電解めっきを施して行うことができる。また、更に内壁導体層の厚みを増すために電解めっきを施すこともできる。充填材の充填方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、圧入印刷法及びディスペンサーを用いた印刷法等を用いることができる。
上記「硬化工程」は、充填された充填材を硬化させて充填物とする工程である。この工程では、加熱により完全に硬化(充填材が光硬化樹脂等を含有する場合には光照射を行うことができる)させてもよく、半硬化状態で加熱を一旦停止してもよい。通常、充填物の表面はより正確な積層を行うために平坦化される。平坦化のための研磨は、完全に硬化された充填物に対して行ってもよいが、半硬化された充填物に対する方が行い易い場合があるからである。完全に硬化させた際には、完全に硬化された充填物を備える基体の表面を研磨して平坦化することができる。また、半硬化させた際には、半硬化された充填物を備える基体の表面を研磨して平坦化した後、更に加熱して充填物を完全に硬化させることができる。また、この研磨方法は特に限定されないが、通常、各種の機械的研磨により行う。即ち、例えば、ベルトサンダーによる研磨及びバフによる研磨を挙げることができる。
上記「導体層形成工程」は、基体表面に表出した充填物の表面を覆うように基体上に上部導体層を形成する工程である。
上部導体層の形成方法は特に限定されないが、無電解めっきを用いることができ、更には、無電解めっきと電解めっきとを併用することができる。また、この工程では、充填材表面と上部導体層との密着性を向上させるために粗化処理を施すことができる。粗化方法は特に限定されず、ウェットエッチング及びドライエッチング等で施すことができる。ウェットエッチングでは、エッチング液として、酸化剤を用いることができ、更には、過マンガン酸溶液を用いることができる。更に、ドライエッチングでは、プラズマ処理を用いることができる。更に、形成された上部導体層は、必要に応じてパターンニングを施すことができる。パターンニングの方法は特に限定されないが、フォトリソ工程(レジスト形成工程、露光工程、現像工程、エッチング工程、剥離工程等を含む)を経て行うことができる。
更に、本発明の配線基板の製造方法では、上部導体層を覆うように絶縁層を積層する絶縁層積層工程と、この絶縁層にビアホールを穿設するビアホール穿設工程と、この絶縁層の上部導体層と対向する面に他の導体層を形成し且つビアホール内にビア導体を形成して上部導体層と他の導体層とを電気的に接続する導体層接続工程と、を備えて多層化することができる(以下、この絶縁層形成工程、ビアホール穿設工程及び導体層接続工程をまとめて「多層化工程」という)。
絶縁層積層工程は、上部導体層を覆うように絶縁層を積層する工程である。この絶縁層の形成方法は特に限定されないが、半硬化樹脂フィルムを用いる方法と、液状未硬化樹脂を用いる方法と、これらを併用する方法が挙げられる。半硬化樹脂フィルムを用いる方法とは、半硬化樹脂からなるフィルムを上部導体層を覆うように転着して形成した半硬化樹脂層を、必要に応じてパターンニングしたのち硬化させて絶縁層を形成する方法である。半硬化樹脂フィルムを用いる方法では、半硬化樹脂フィルムの積層時に加熱圧着を行うことができる。
また、液状未硬化樹脂を用いる方法とは、上部導体層を覆うように絶縁層となる液状未硬化樹脂を用いて未硬化樹脂層を形成し、必要に応じてこの未硬化樹脂層をパターンニングしたのち硬化させて絶縁層を得る方法である。更に、液状未硬化樹脂を用いる方法では、未硬化樹脂層を形成する際の塗布方法は特に限定されず、スクリーン印刷法、ロールコーター印刷法及びカーテンコーター印刷法等を用いることができる。
絶縁層の形成方法のうち、半硬化樹脂フィルムを用いる方法と、液状未硬化樹脂を用いる方法とでは、半硬化樹脂フィルムを用いる方法が工程数削減の観点からは好ましい。
ビアホール穿設工程は、絶縁層にビアホールを穿設する工程である。穿設方法は特に限定されず、フォトリソ法及びレーザー穿設法が挙げられる。このビアホールの形成場所は、上部導体層とその他の導体層とを接続できればよく特に限定されないが、前述のように、貫通孔開口面上にビア導体を形成する場合には、貫通孔開口面上に穿設する。
また、導体層接続工程は、絶縁層の上部導体層と対向する面に他の導体層を形成し且つビアホール内にビア導体を形成して上部導体層と他の導体層とを電気的に接続する工程である。この導体層接続工程では、ビア導体と他の導体層とを同工程で形成してもよく、別工程で形成してもよい。
ビア導体及び他の導体層の各々の形成方法は特に限定されず、無電解めっきを用いることができ、更には、無電解めっきと電解めっきとを併用することができる。更に、形成されためっき層には必要に応じてフォトリソ法等により
パターンニングを施し、ビア導体及び他の導体層を得ることができる。
この導体層接続工程を行ったのち、更に多層化工程を繰り返すことにより更なる多層化を行うことができる。即ち、絶縁層と導体層(導体パターン)とが交互に複数積層された多層配線基板を得ることができる。尚、2回目以降の多層化工程では、例えば、絶縁層積層工程は、他の導体層上に他の絶縁層を形成する工程となる。また、ビアホール穿設工程は、他の絶縁層にビアホールを穿設する工程となる。更に、導体層接続工程は、更に他の導体層及びビア導体を形成して他の導体層と更に他の導体層とを電気的に接続する工程となる。
以下、実施例及び図により本発明を具体的に説明する。
[1]充填材の調製
下記の各熱硬化性エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒及び無機フィラー等の充填材原料を用意し、硬化性エポキシ樹脂は表1の配合割合、また、他の充填材原料は下記の配合割合、となるよう秤量して調合用容器に投入し、撹拌した後、3本ロールで混練をして実施例1及び2並びに比較例1〜5の充填材を得た。
熱硬化性エポキシ樹脂;
第1エポキシ樹脂;
(E1)レゾルシノール型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコール EX−201」)
第2エポキシ樹脂
(E2-1)ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「エピコート807」)
(E2-2)アミノフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「エピコート630」)
(E2-3)グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコール EX−321」)
(E2-4)フェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコール EX−141」)
硬化剤;
ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「DICY7」)
配合割合:5質量部(硬化性エポキシ樹脂合計が100質量部)
硬化触媒;
ウレア(サンアプロ株式会社製、商品名「U−CAT」)
配合割合:3質量部(硬化性エポキシ樹脂合計が100質量部)
添加剤;
滑剤(共栄社化学株式会社製、商品名「グラノール400」)
配合割合:0.5質量部(硬化性エポキシ樹脂合計が100質量部)
無機フィラー;
炭酸カルシウム粉末;
破砕物状粒子(丸尾カルシウム株式会社製、商品名「ナノコート」、平均粒子径2μm、カルサイト結晶)
配合割合:30質量部(硬化性エポキシ樹脂合計が100質量部)
酸化ケイ素粉末;
球状粒子粉末(龍森株式会社製、商品名「TSS−6」、平均粒子径6um且つ最大粒子径24μm、溶融シリカ)
配合割合:190質量部(硬化性エポキシ樹脂合計が100質量部)
Figure 2005220341
各熱硬化性エポキシ樹脂の配合量は、熱硬化性エポキシ樹脂の合計を100質量部とした場合の値である。また、表中の「*」は、本発明外であることを示す。
[2]特性評価
(1)粘度測定
B型粘度計を用いて温度22±1℃において、剪断速度21s−1での各充填材の粘度を測定した。その結果を、表1に示した。
(2)耐熱性評価
各充填材をシート状に成形し、150℃で完全に硬化させて得られた厚さ約100μmの各シートから4mm×50mmの試験片を切り出した。その後、各試験片をDMA(Dynamic Mechanical Analysis)測定に供し、周波数11Hzにおけるtanδ曲線(温度とtanδとの相関曲線)をプロットし、このtanδ曲線の変曲点から各々の試験片のガラス転移点を求めた。
その結果、ガラス転移点が150℃以上の試験片は表1に「◎」と示し、130℃以上150℃未満である試験片は表1に「○」と示し、130℃未満であった試験片は表1に「×」と示した。
(3)銅めっきとの接合性評価
基板上に各充填材を100〜200μmの厚さにメタルマスクを介して印刷し、150℃で硬化した後、デスミア処理を施した。その後、硬化物表面に無電解銅めっきを施し、更に、電解銅めっきを施して硬化物上に約25μmの銅めっき層を形成した。
この電解銅めっきを形成する際のアニール処理時に、めっきにフクレが認められたものには表1に「×」と示した。
その後、硬化物上に形成された銅めっきを巾が1cmとなるように切込みを入れて、銅めっきを硬化物表面から引き剥がした。この時、引き剥がし角度は90度とし、引き剥がし速度は毎分50mmとした。この引き剥がしに要した力が0.5kN/m以上であったものには表1に「○」と示した。また、引き剥がしに要した力が0.5kN/m未満であったものには表1に「△」と示した。
尚、「×」と示したものについては後述する下記(5)の信頼性評価は行っていない。
(4)印刷性評価(図1〜3参照)
ビスマレイミド・トリアジン樹脂からなる厚さ800μmの基体(1)に200μmの貫通孔(11)を形成し、この貫通孔(11)の内壁に銅めっきを施して基層表面導体層(6')を伴った厚さ25μmの内壁導体層(6)を形成した。その後、充填口径が150μmとなった内壁導体層を備えるスルーホール(11)内に、厚さ150μmの印刷マスクを介して、各充填材(21)をスクリーン印刷により充填した。
その後、100〜150℃の雰囲気に基体(1)を40分間放置して充填材(21)を半硬化(完全に硬化が飽和していない状態)させた半硬化物(22)とした。
次いで、基体(1)の表面を研磨した後、スルーホール開口面近傍を顕微鏡で50倍に拡大して観察し、充填材の半硬化物(22)の上面が基体(1)の上下面より突き出しているか否かを確認し、突き出しているものは研磨によりスルーホール開口部の凹みなく次のめっき工程へ進めるため表1に「○」と示した。一方、突き出していないものは研磨によってスルーホール開口部の凹部を無くすことはできないため表1に「×」と示した。
その後、「×」と示したものには、半硬化物(22)が突き出るまで繰り返し充填材(21)を充填し、半硬化物(22)の上面が基体(1)の上下面より突き出したことを確認してから下記(5)の信頼性評価を行った。
(5)信頼性評価(図1〜3参照)
i)上部導体層の形成及びパターンニング
上記(4)までに得られた基体(1)の表面を研磨し、その後、150℃〜170℃の温度に保持された乾燥機内を5時間放置し、半硬化された充填物(22)を完全に硬化させて充填物(2)とした。次いで、研磨を行った表面に、デスミア処理、無電解めっき処理及び電解めっき処理を施して、完全硬化された充填物(2)の表面を覆う銅からなる厚さ20μmの上部導体層(3)を形成した。その後、上部導体層(3)をフォトリソ法を用いてパターンニングし、上部導体パターン(3)を形成した。
ii)多層化工程(絶縁層形成工程、ビアホール穿設工程及び導体層接続工程)
上部導体パターン(3)上に、フィルム状の樹脂材料を加熱圧着して絶縁層(4)を形成し、次いで、COレーザーを用いてこの絶縁層(4)を貫通するビアホール(41)を形成した。このビアホール(41)は、後にこの上部導体パターン(3)と接続できる上部導体パターン(3)上に形成した。
その後、先に形成した絶縁層(4)上に他の導体層(51)を形成し、この他の導体層(51)と先に形成した上部導体パターン(3)とが接続されるようにビアホール(41)内にビア導体(52)を形成し、他の導体パターン(5)を形成した。
iii)多層化工程の繰り返し
上記ii)までに得られた配線基板の表面に、更に、上記ii)と同じ作業を2回繰り返し、複数の導体パターンと絶縁層とが交互に積層された配線基板を得た。
その後、配線基板の最表面にパターンニングしたソルダーレジスト層(7)を形成した後、このソルダーレジスト層(7)下の導体パターン表面にニッケルめっきを行った。更に、このニッケルめっきの表面に金めっきを施して多層配線基板(100a)を得た。
この多層配線基板は、各充填材毎に20枚を作製した。
iv)熱衝撃試験
上記iii)までに得られた多層配線基板を、−55℃まで冷却して5分間保持した後、125℃まで加熱し5分間保持する工程を1サイクルとして、500サイクルを繰り返して熱衝撃を加えた。
その後、多層配線板を乾燥機内から取り出し、上記(4)で充填された充填物の断面を観察できる面で切断した。次いで、その断面を、光学顕微鏡で200倍に拡大して観察し、充填物と上部導体パターンとの剥離の有無、充填物とスルーホール内導体との剥離の有無、充填物及びその周囲のクラックの有無を確認した。また、同様に上部導体パターン上に積層された絶縁層、他の導体パターン及びソルダーレジスト層等の相互間の剥離及びクラックの有無を確認した。
これらのうちのいずれかの剥離又はクラックが1つでも認められたものは表1に「×」と示し、1枚も認められなかったものは表1に「○」と示した。
表1より、比較例1は、第1エポキシ樹脂(E1)を含有せず、熱硬化性エポキシ樹脂としてはビスフェノールF型エポキシ樹脂(E2-1)のみを含む充填材である。このエポキシ樹脂は一般に低粘度のエポキシ樹脂として多用されている。しかし、比較例1のように多量のフィラーを含有する場合、耐熱性及び接合性は良好であるものの粘度が125Pa・sと大きく、充填性が悪いことが問題である。また、このエポキシ樹脂のみでは多層化を伴う場合等には十分な信頼性を発揮させることが困難であることも分かる。
比較例2は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(E2-1)を母成分として、アミノフェノール型エポキシ樹脂(2E-2)を含有する充填材である。このアミノフェノール型エポキシ樹脂を含有されることで、粘度を低下させることができ、耐熱性及び信頼性を向上させることができる。しかし、依然充填性を改善するには至らないものである。
比較例3は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(E2-1)を母成分として、フェニルグリシジルエーテル(2E-3)を含有するものである。これにより充填材の粘度を十分に低下させることができ、充填性を向上させることができる。しかし、耐熱性、接合性及び信頼性は低下してしまう。
比較例4及び5は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(E2-1)を母成分として、グリセロールポリグリシジルエーテル(2E-4)を含有するものである。このエポキシ樹脂によっても粘度を低下させることができ、充填性を向上させることができるが、耐熱性、接合性及び信頼性等をバランス良く保持するには至らない。
これに対して、実施例3は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(E2-1)を母成分として、第1エポキシ樹脂(E1)を含有する充填材である。この充填材は、多量のフィラーを含有するにも係わらず、粘度が低下されて充填性が改善されている。更に、耐熱性、接合性及び信頼性のいずれもが良好にバランス良く保たれている。また、実施例1及び実施例2のように、アミノフェノール型エポキシ樹脂(2E-2)を更に添加することにより、粘度を更に低下させることができ、優れた充填性を発揮させることができることに加えて、耐熱性、接合性及び信頼性のいずれもが良好にバランス良く保たれている。特に耐熱性は実施例3に比べて向上させることができる。この第1エポキシ樹脂(E1)を含有する充填材では、実施例2のようにビスフェノールF型エポキシ樹脂(E2-1)の含有量を15質量部まで低下させても十分な各性能を保持でき、更には、実施例5のようにビスフェノールF型エポキシ樹脂(E2-1)を全く含まない場合であっても、充填性を初めとして耐熱性、接合性及び信頼性のいずれもが良好にバランス良く保たれていることが分かる。
即ち、第1エポキシ樹脂を含有することにより、優れた各種性能をバランス良く発揮させることができる充填材を得ることができることが分かる。
本発明は電子部品関連分野において広く利用できる。また、本発明の配線基板は、マザーボード等の通常の配線基板、フリップチップ用配線基板、CSP用配線基板及びMCP用配線基板等の半導体素子搭載用配線基板、アンテナスイッチモジュール用配線基板、ミキサーモジュール用配線基板、PLLモジュール用配線基板及びMCM用配線基板等のモジュール用配線基板等に好適である。
本発明の一例の配線基板の貫通孔近傍を拡大して表した模式的な断面図である。 本発明の一例の製造方法であり、上部導体層を形成するまでの工程を模式的に示す説明図である。 本発明の一例の製造方法であり、多層化工程を模式的に示す説明図である。 本発明の他例の配線基板の貫通孔近傍を拡大して表した模式的な断面図である。 本発明の更に他例の配線基板の凹部近傍を拡大して表した模式的な断面図である。
符号の説明
100a、100b及び100c;配線基板(多層配線基板)、1;基層(基体)、11;貫通孔(スルーホール)、12;凹部、2;充填物(硬化物)、21;充填材(未硬化物)、22;半硬化された充填物(半硬化物)、3;上部導体層(上部導体パターン)、4;絶縁層、41;ビアホール、5;他の導体パターン、51;他の導体層、52;ビア導体、6;内壁導体層、6';基層表面導体層、7;ソルダーレジスト層、8;電子部品。

Claims (5)

  1. 熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤と無機フィラーとを含有する充填材において、該熱硬化性エポキシ樹脂として下記(1)〜(5)のうちの少なくとも1種と、下記(1)〜(5)を除く他の熱硬化性エポキシ樹脂と、を含有することを特徴とする充填材。
    (1)下記化学式(i)(但し、R及びRは各々2価の有機基であり、R〜Rは1価の有機機又は水素原子である)で表されるエポキシ化合物
    (2)下記化学式(i)で表されるエポキシ化合物が重合されて得られたオリゴマー
    (3)下記化学式(ii)(但し、R及びRは各々2価の有機基であり、R〜R12は1価の有機機又は水素原子である)で表されるエポキシ化合物
    (4)下記化学式(ii)で表されるエポキシ化合物が重合されて得られたオリゴマー
    (5)下記化学式(i)で表されるエポキシ化合物と下記化学式(ii)で表されるエポキシ化合物とが共重合されて得られたオリゴマー
    Figure 2005220341
    Figure 2005220341
  2. 上記他の熱硬化性エポキシ樹脂として、二官能性のビスフェノール型エポキシ樹脂を含有する請求項1に記載の充填材。
  3. 貫通孔を備える基層と、請求項1又は2に記載の充填材の硬化物からなり且つ該貫通孔内を充填する充填物と、該貫通孔の開口面に表出した該充填物の表面を覆い且つ該基層上に形成された導体層と、を備えることを特徴とする配線基板。
  4. 凹部及び貫通孔のうちの少なくとも一方の充填用部を備える基層と、該充填用部内に配置された電子部品と、請求項1又は2に記載の充填材が該充填用部内の少なくとも一部に充填された後、硬化されてなり且つ該電子部品を固定する充填物と、該充填物の該充填用部内から表出された表面の少なくとも一部を覆う導体層と、を備えることを特徴とする配線基板。
  5. 貫通孔を備える基体の該貫通孔内に、請求項1又は2に記載の充填材を充填する充填工程と、充填された該充填材を硬化させて充填物とする硬化工程と、基体表面に表出した該充填物の表面を覆うように導体層を形成する導体層形成工程と、を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
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