JP2005216629A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料及び酸化剤の透過の抑制、電解質の長寿命化を図ると共に、内部電極の低抵抗化により内部電極の導電性及びプロトン伝導性の双方を確保するのに有利な燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池の膜電極接合体は、プロトン伝導体4で形成された電解質と、電解質の一方の側に設けられた燃料電極3と、電解質の他方の側に設けられた酸化剤電極1とをもつ。膜電極接合体は、電解質の内部に少なくとも一つの内部電極2を有する。内部電極2は、集電体ネットワークを形成する導電性をもつ繊維状導電体と、プロトン伝導体と、触媒とを主要成分とする。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料電池の膜電極接合体は、プロトン伝導体4で形成された電解質と、電解質の一方の側に設けられた燃料電極3と、電解質の他方の側に設けられた酸化剤電極1とをもつ。膜電極接合体は、電解質の内部に少なくとも一つの内部電極2を有する。内部電極2は、集電体ネットワークを形成する導電性をもつ繊維状導電体と、プロトン伝導体と、触媒とを主要成分とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、プロトン伝導体を電解質とする燃料電池に関する。
燃料電池は、自動車や家庭用の電源として、広範な普及が期待されている。電解質の種類に応じて各種の燃料電池が研究されている。
プロトン伝導体を電解質とする燃料電池では、燃料電極に供給された水素やメタノール等の燃料が燃料電極(アノード)で酸化され、プロトンと電子とが生成される。プロトンは電解質であるプロトン伝導体を伝導して対極の酸化剤電極(カソード)に到達して、酸化剤電極に供給された酸素と燃料電極から外部負荷を通って供給される電子と反応して水を生成する。この際、燃料電極と酸化剤電極の間には、使用する燃料と酸素の反応で水が生成する際の自由エネルギ変化に相当する電圧が発生し、これが、電気エネルギとして外部に取り出される。
プロトン伝導体で形成されている電解質では、理想的にはプロトンのみを透過して、燃料や酸化剤を透過しない方が好ましい。燃料や酸化剤の透過を防止できれば、電解質の膜の耐久性の更なる長寿命化を図ることができる。
特許文献1には、膜の内部に触媒層を形成した高分子固体電解質型の燃料電池が開示されている。この触媒層は燃料電極及び酸化剤電極に対して電気的に絶縁されている。特許文献1によれば、燃料電極から膜に透過した水素、酸化剤電極から膜に透過した酸素が触媒層で互いに反応して水を生成し、これによりガス透過が低減されると記載されている。
特開平6−103992号公報
しかしながら上記した特許文献1によれば、燃料電極から膜に透過した水素、酸化剤電極から膜に透過した酸素が化学量論比的に2対1であるときにのみなりたち、それ以外の場合には、透過量が多い側のガスは完全には消費されず、そのまま対極側に透過してしまう。このため電解質の膜の耐久性の更なる長寿命化を図るためには、改善の余地がある。
更に我々の研究によれば、水素と酸素とが白金触媒上で化学的に反応するときにおいて、白金触媒の電位があるレベルよりも低いときには、ラジカルが発生するおそれがある。このため電解質の膜の耐久性の更なる長寿命化を図るためには、更なる改善の余地がある。
本発明者は燃料電池について研究を進めている。そして、本発明者は、燃料電池の電解質の内部に内部電極を設ければ、電解質内の燃料の移動、酸化剤の移動を制御することができ、ひいては燃料の透過、酸化剤の透過を抑制できることを知見し、試験で確認した。
この内部電極には、触媒活性の他に、燃料電池としての機能を阻害しないようプロトン伝導性と、電位を印加して電流を流すための電子伝導性とが要請される。このため、白金担持カーボンと高分子電解質溶液とを混練してなる白金触媒ペーストを2枚の電解質の膜の片面にそれぞれ塗布し、その後、内部電極となる白金触媒ペーストが内側となるように2枚の電解質の膜を貼りあわせ、これにより内部電極を電解質の内部に配置することにしている(本出願時に未公知)。
しかしながらこの技術によって得られた内部電極は、プロトン伝導性を有するものの、非導電性を有する高分子固体電解質膜液を主要成分として含むため、単位面積あたりの抵抗が高くなるおそれがある。この結果、内部電極の面内抵抗が高くなり、内部電極の面内を流れる電流によるオーム損に起因して、内部電極における電位分布が不均一となるおそれがある。この場合、内部電極が本来的に発揮できる作用効果、つまり、ガス透過抑制の効果の更なる向上には限界がある。
これを回避するために、多くの導電性フィラー(例えば粒子状の白金担持カーボン、粒子状のカーボンなど)を触媒ペーストに配合し、内部電極の低抵抗化を図ることが考えられる。この場合には、多くの導電性フィラーが配合されているため、内部電極の導電性は改善される。しかしながらこの場合には高分子固体電解質液の比率が相対的に低下することとなり、内部電極のプロトン伝導性が低下し、燃料電池の性能が低下してしまうおそれがある。また多量の白金触媒を使用することにもなり、コスト面から考えても好ましくない。
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、内部電極により燃料及び酸化剤の透過の抑制、電解質の長寿命化を図ると共に、内部電極の低抵抗化により内部電極の導電性及びプロトン伝導性の双方を確保するのに有利な燃料電池を提供することにある。
本発明に係る燃料電池は、プロトン伝導体で形成された電解質と、電解質の一方の側に設けられた燃料電極と、電解質の他方の側に設けられた酸化剤電極とを具備する膜電極接合体をもつ燃料電池において、
膜電極接合体は、電解質の内部に少なくとも一つの内部電極を有しており、
内部電極は、集電体ネットワークを形成する導電性をもつ繊維状導電体と、プロトン伝導体と、触媒とを主要成分として形成されていることを特徴とするものである。
膜電極接合体は、電解質の内部に少なくとも一つの内部電極を有しており、
内部電極は、集電体ネットワークを形成する導電性をもつ繊維状導電体と、プロトン伝導体と、触媒とを主要成分として形成されていることを特徴とするものである。
本発明の燃料電池によれば、電解質の内部に設けた内部電極に構成上の特徴を持つ。この内部電極の電極電位を制御することにより、電解質内の燃料の移動を制御することができる。更に、酸化剤の移動の制御と、電解質内部でのラジカルの生成が抑制される。
つまり、電解質の内部に内部電極を設け、その内部電極の電極電位を、燃料を酸化あるいは酸化剤を還元できる電位とすることで、内部電極に酸化電流あるいは還元電流を流すことができ、電解質を透過する燃料等を酸化等により分解する。その結果、燃料等の対極側への透過を抑制することができる。更に、燃料と酸化剤との混合反応を抑制することができる。
本発明の燃料電池によれば、繊維状導電体が主要成分として内部電極に含まれているため、繊維状導電体の絡みにより集電体ネットワークが形成され、内部電極の導電性を高めることができる。従って燃料電池の内部電極において、導電性フィラーの割合を相対的に低減させつつ、プロトン伝導体の割合を相対的に増加させることができる。故に、内部電極の導電性を良好に確保しつつ、内部電極のプロトン伝導性を確保することができる。
本発明の燃料電池によれば、繊維状導電体としては、長さが径よりも長いものであればよく、長さ/径が2以上,または3以上,または4以上のものが好ましい。繊維状導電体の長さとしては、集電体ネットワークを形成できるものであれば良く、特に限定されるものではないが、繊維状導電体の長さが過剰に短いと、集電体ネットワークを形成しにくい。繊維状導電体の長さが過剰に長いと、毛羽立ち等により電解質を損傷させるおそれがあり、また、均一な分散が困難となる。従って、繊維状導電体の長さとしては、例えば、100nm〜500μm、または、10μm〜200μm、または、50μm〜150μmとすることができるが、これらに限定されるものではなく、燃料電池の種類等に応じて適宜変更できる。
繊維状導電体の材質としては、耐食性を有するものが好ましい。故に、繊維状導電体としては、カーボン繊維及び金属繊維のうちの少なくとも1種であること構成を採用することができる。カーボン繊維としては、気相成長系、ピッチ系、PAN系、メソフェーズピッチ系を例示することができ、炭素質でも、黒鉛質でも良い。カーボン繊維としては、カーボン長繊維、カーボン短繊維、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ(カーボンナノホーンを含む)等を例示でき、これらの少なくとも1種を用いることができる。金属繊維の材質としては、白金、金、パラジウム、ロジウム、これらの合金等を例示することができ、これらの少なくとも1種を用いることができる。
また、カーボン繊維そのものに白金等の触媒微粒子を担持させたものを、集電体ネットワークの形成に用いることもできる。この場合、集電性及び導電性をより向上させることができ、内部電極の集電能力を向上させることができる。加えて、集電体ネットワーク自体が触媒能を有するため、内部電極において、白金担持カーボン等の白金触媒を配合する必要がなくなったり、あるいは、その配合量を減少させることもできる。この結果、内部電極における触媒使用量を低減でき、内部電極におけるプロトン伝導体の占める割合を増加させることができる。このように内部電極のプロトン伝導性を向上させることができれば、より高い燃料電池性能を得ることが可能となる。また上記した集電体ネットワークはネットワーク状である。このため触媒としても機能する集電体ネットワークと、電解質を有する膜液とが絡み易くなる。故に、内部電極のガス反応を行うための、いわゆる三相界面をより効率的に形成することができ、対極に向けて電解質膜を透過するガスをより効果的に抑えることができ、燃料電池の耐久性を向上させるのに有利となる。
上記した繊維状導電体は、メッシュシートまたは抄紙シートである構成を例示することができる。メッシュシートは導電性をもつ繊維(線材やワイヤを含む)を網状に成形したシートである。抄紙シートは、繊維状導電体を含む液体から、繊維状導電体と液分とを分離する抄紙処理により、多数の繊維状導電体を集積させたシートである。メッシュシートや抄紙シートは目の粗いものにできるので、プロトン伝導性を確保するために好都合である。なお、繊維状導電体の材質、長さ、径、材質としては、燃料電池の用途、内部電極に要請される作用効果等によって適宜選択できる。
本発明に係る燃料電池発電システムによれば、燃料電池の電解質の内部に設けられている内部電極の電位を調整する内部電極電位調整手段が装備されていることが好ましい。内部電極電位調整手段は、内部電極の電極電位を容易に制御することができ、これにより電解質内の燃料の移動、酸化剤の移動を容易に制御することができる。
前記した内部電極電位調整手段としては、燃料電池の内部電極に電圧を印加する電圧印加手段で構成することができる。従って、内部電極電位調整手段としては、燃料電極及び酸化剤電極のうちの少なくとも一方と内部電極とを接続する電源とすることができる。また、内部電極電位調整手段としては、燃料電極及び酸化剤電極のうちの少なくとも一方と内部電極とを導通する導電手段とすることができる。なお、燃料電池の燃料電極に供給される燃料としては水素ガス、水素含有ガス、メタノール等を例示することができる。酸化剤電極に供給される酸化剤としては酸素ガス、酸素含有ガス(空気等)等を例示することができる。
上記したように本発明によれば、後述の形態1〜形態4で述べるように、電解質の内部に設けた内部電極の電極電位を制御すれば、電解質内の燃料の移動を制御することができ、その結果、対極側への燃料の透過を抑制することができる。また、電解質内の酸化剤の移動を制御することができ、その結果、対極側への酸化剤の透過を抑制することができる。
更に本発明の燃料電池によれば、電解質の内部に設けた内部電極の電極電位を制御することにより、後述の形態1〜形態4で述べるように、燃料電池の燃料及び酸化剤が電解質を通して対極側に透過することが抑制される。このため当該透過により引き起こされる燃料電池の出力低下を抑制することができる。更に、電解質の内部に設けた内部電極の電極電位を制御することにより、燃焼等による電池の損傷、ラジカルの発生による電解質等といった燃料電池構成材料の化学的劣化を抑制することができる。
本発明の燃料電池によれば、内部電極には、集電体ネットワークを形成する繊維状導電体が主要成分として含まれているため、内部電極の導電性を高めることができる。従って内部電極において、導電性フィラーの割合を相対的に低減させつつ、プロトン伝導体の割合を相対的に増加させることができる、従って、内部電極の導電性を良好に確保しつつ、内部電極のプロトン伝導性を確保することができる。
先ず、本発明の燃料電池で用いられる内部電極搭載型の燃料電池について、形態1〜形態4を例にとって説明する。以下の説明に用いる図においては、対応する構成要素について共通する符号を付けている。
(1)形態1の燃料電池
図1は、形態1に係る内部電極搭載型の燃料電池の概念を示す。形態1に係る燃料電池7は、プロトン伝導体4で形成された電解質と、電解質の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極3と、電解質の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極1とを有する。プロトン伝導体4は固体高分子型とすることができる。更に、図1に示すように、プロトン伝導体4で形成された電解質の内部には、内部電極2が中間電極として配置されている。内部電極2は層状とされている。内部電極2の厚みは例えば0.1〜500μm程度、0.5〜500μm程度、または50〜100μm程度ととすることができるが、これらに限定されるものではない。
図1は、形態1に係る内部電極搭載型の燃料電池の概念を示す。形態1に係る燃料電池7は、プロトン伝導体4で形成された電解質と、電解質の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極3と、電解質の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極1とを有する。プロトン伝導体4は固体高分子型とすることができる。更に、図1に示すように、プロトン伝導体4で形成された電解質の内部には、内部電極2が中間電極として配置されている。内部電極2は層状とされている。内部電極2の厚みは例えば0.1〜500μm程度、0.5〜500μm程度、または50〜100μm程度ととすることができるが、これらに限定されるものではない。
この燃料電池7では、内部電極2と燃料電極3との間に内部電極電位調整手段5を介在させた回路が形成されている。内部電極電位調整手段5は内部電極2と燃料電極3とを電気的に接続する。そして、内部電極2の電極電位を制御することにより、燃料の対極への透過の抑制、酸化剤の対極への透過の抑制、ラジカル生成反応の抑制が実現されている。内部電極2は、これの両側に配置されるプロトン伝導体4により挟み込まれた配置とされている。内部電極2は、その両側のプロトン伝導体4のイオン伝導を絶縁しないように、それ自体がプロトン伝導性を有しなければならない。そのため、内部電極2としては、カーボン材料等の導電体と、触媒(例えば粒子状)と、プロトン伝導体とを混合して構成することができる。内部電極2には白金箔等の集電体を付設することも好ましい。
内部電極電位調整手段5としては、電源5A、ポテンショスタット5B、抵抗負荷5C、あるいは、短絡のような導電手段5Dを用いることもできる。なお、以下の説明は、燃料電池7に外部負荷6を接続しない開回路状態を仮定しているが、外部負荷6を接続した閉回路状態にも、燃料電極3と酸化剤電極1の分極を考慮することにより適用することができる。
まず、内部電極電位調整手段5を接続しないで、内部電極2と燃料電極3との間を開回路状態に設定し、内部電極2に電流が流れない場合について考える。この場合、内部電極2の電極電位(静止電位)は、プロトン伝導体4を透過して内部電極2に到達する燃料の濃度および酸化剤の濃度に依存する。水素、酸素をそれぞれ燃料、酸化剤とする燃料電池においては、水素の透過が酸素の透過よりも大きい場合、内部電極2の静止電位は燃料電極の電極電位に近づくが、燃料電極3の電極電位より正の値である。逆に酸素の透過が水素の透過よりも大きい場合、内部電極2の静止電位は酸化剤電極1の電極電位に近づくが、酸化剤電極1の電極電位より負の値である。どちらの場合になるかは、基本的には、水素、酸素に対するプロトン伝導体4の透過係数およびガス圧力により決定される。
水素の透過が酸素の透過より大きいため、内部電極2の静止電位が燃料電極3の電極電位に近い場合、透過した酸素は、内部電極2で過剰に存在する水素と内部電極2において反応して消費される。この際、内部電極2の電極電位が低いと、内部電極2の表面でラジカルが生成するおそれがある。そして、内部電極2で過剰に存在する水素は、プロトン伝導体4を透過し、対極である酸化剤電極1側に透過してしまう不具合がある。
また、酸素の透過が水素の透過より大きいため、内部電極2の静止電位が酸化剤電極1の電極電位に近い場合は、内部電極2を透過した水素は過剰に存在する酸素と反応して消費され、この電位ではラジカルの生成は抑制されている。しかしながら、過剰に存在する酸素は、対極である燃料電極3側へ透過し、燃料電極3の水素と反応する。この際、燃料電極3の電極電位が低いため、ラジカルが生成してしまう不具合がある。
次に、図1に示す回路において、内部電極電位調整手段5を燃料電極3と内部電極2とに接続する場合を説明する。水素の透過が酸素の透過より大きいため、内部電極2の静止電位が燃料電極3の電極電位に近い場合には、内部電極電位調整手段5として電源5Aを用い、燃料電極3に対する内部電極2の電圧(静止電圧)より高い電圧を、燃料電極3を基準として内部電極2へ印加する。これにより、内部電極2は分極して酸化電流が流れ、内部電極2の電極電位は正の方向に移動して高くなる。この結果、内部電極2で水素と酸素が反応する際のラジカルの生成が抑制される。そして、内部電極2で過剰に存在する水素は、内部電極2で酸化されることにより、酸化剤電極1への水素の移動は抑制される。なお、内部電極2へ印加される電圧は、内部電極2で水の酸化が起こらない電圧まで高くすることができる。
酸素の透過が水素の透過より大きいため、内部電極2の静止電位が酸化剤電極2の電極電位に近い場合には、内部電極電位調整手段5として抵抗負荷5Cを接続すると、内部電極2には還元電流が流れ、過剰に存在する酸素は還元される。従って、過剰の酸素が燃料電極3側に透過して水素と反応してラジカル生成反応を起こす不具合を抑制できる。この際、内部電極2の電極電位は負の方向に移動して低くなり、燃料電極3に対する内部電極2の電圧は小さくなる。なお、内部電極2の電極電位を下げすぎると、内部電極2でラジカルの生成が促進されるので、ラジカルが発生しない程度に抵抗負荷5Cを調整することが好ましい。
また、内部電極電位調整手段5としてポテンショスタット5B(定電圧装置)を用い、内部電極2の静止電圧より低い電圧を、燃料電極3を基準として内部電極2に印加することもできる。
さらに、内部電極電位調整手段5として、内部電極2と燃料電極3との間を導電手段5D(例えば、導線等の導通路)で短絡的に接続する手段も考えられる。この場合、内部電極2と燃料電極3との間に、ほぼ0ボルトの電圧を印加することと等価であるから、内部電極2の電極電位が燃料電極3の電極電位とほぼ同じになり、内部電極2に還元電流が流れ、過剰に存在する酸素は還元される。なお、透過防止性を高めるべく、燃料電池7の運転を停止している間中、内部電極電位調整手段5を燃料電極3と内部電極2とに接続しておくことが好ましい。また、燃料電池7の運転を停止しているときにおいても、内部電極電位調整手段5を燃料電極3と内部電極2とに接続しておくことができる。
(2)形態2に係る燃料電池
図2は、形態2に係る内部電極搭載型の燃料電池7の概念を示す。図2に示すように、プロトン伝導体4で形成された電解質の内部には、内部電極2が設けられている。そして内部電極2と酸化剤電極1の間に内部電極電位調整手段5を介在させた回路を構成し、内部電極2の電極電位を制御することにより、図1の場合と同様の制御が可能なことを説明する。
図2は、形態2に係る内部電極搭載型の燃料電池7の概念を示す。図2に示すように、プロトン伝導体4で形成された電解質の内部には、内部電極2が設けられている。そして内部電極2と酸化剤電極1の間に内部電極電位調整手段5を介在させた回路を構成し、内部電極2の電極電位を制御することにより、図1の場合と同様の制御が可能なことを説明する。
水素の透過が酸素の透過より大きいため、内部電極2の静止電位が燃料電極3の電極電位に近い場合には、内部電極電位調整手段5として抵抗負荷5Cを内部電極2と酸化剤電極1との間に接続すると、内部電極2には酸化電流が流れ、過剰の水素は酸化される。更に、内部電極2の電極電位が高くなり、ラジカルの生成は抑制される。そして、内部電極2で過剰に存在する水素は、内部電極2で酸化されることにより、酸化剤電極1への水素の移動は抑制される。
また、内部電極電位調整手段5として導電手段5Dで内部電極2と酸化剤電極1とを接続(短絡)することも考えられる。導電手段5Dで内部電極2と酸化剤電極1とを接続することにより、内部電極2の電極電位は高くなるので、ラジカルの生成は抑制される。内部電極電位調整手段5として電源5Aを用い、酸化剤電極1に対する内部電極2の静止電圧より高い電圧を、酸化剤電極1を基準として内部電極2に印加しても同様な効果が得られる。
酸素の透過が水素の透過より大きいため、内部電極2の静止電位が酸化剤電極1の電極電位に近い場合、内部電極電位調整手段5として電源5Aを用いて、静止電圧より低い電圧を酸化剤電極1を基準として内部電極2に印加すると、内部電極2には還元電流が流れ、過剰の酸素は還元される。従って、酸素の燃料電極3への透過は抑制される。この際、内部電極2の電極電位が下がりすぎてラジカルが発生することがないように電圧を設定することが好ましい。なお、透過防止性を高めるべく、燃料電池7の運転を停止している間中、内部電極電位調整手段5を酸化剤電極1と内部電極2とに接続しておくことが好ましい。また、燃料電池7の運転を停止しているときにおいても、内部電極電位調整手段5を酸化剤電極1と内部電極2とに接続しておくことができる。
(3)形態3の燃料電池
図3は、形態3の内部電極搭載型の燃料電池7の概念を示す。図3に示すように、プロトン伝導体4で形成された電解質の内部には複数の内部電極4を並設状態で間隔を隔てて配置されている。形態3は、図3に示すように、プロトン伝導体4内部に配置された複数の内部電極2と、その内部電極2の電極電位を制御する複数の内部電極電位調整手段5をもつ燃料電池を示す。内部電極2の電極電位の制御を行うことで酸化電流あるいは還元電流を流すことができる。
図3は、形態3の内部電極搭載型の燃料電池7の概念を示す。図3に示すように、プロトン伝導体4で形成された電解質の内部には複数の内部電極4を並設状態で間隔を隔てて配置されている。形態3は、図3に示すように、プロトン伝導体4内部に配置された複数の内部電極2と、その内部電極2の電極電位を制御する複数の内部電極電位調整手段5をもつ燃料電池を示す。内部電極2の電極電位の制御を行うことで酸化電流あるいは還元電流を流すことができる。
図3に示す燃料電池7では、プロトン伝導体4の内部においてこれの厚み方向に所定間隔で複数層(2層)の内部電極2が配置されている。図3に示す燃料電池7では、一方の内部電極2と燃料電極3との間に一方の内部電極電位調整手段5を介在させる。他方の内部電極2と酸化剤電極1との間に他方の内部電極電位調整手段5を介在させる。そして、それぞれの内部電極電位調整手段5により、内部電極2の電極電位を制御している。
つまり、形態3によれば、燃料電極3に近い内部電極2については、水素等の燃料を酸化できる電極電位に制御する。酸化剤電極1に近い内部電極2については、酸素等の酸化剤を還元できる電極電位に制御する。すなわち、図3に示す燃料電池7のように、プロトン伝導体4の内部を透過する燃料及び酸化剤の量および比に関わらず、簡単な電極電位の制御により、燃料及び酸化剤のプロトン伝導体7の透過が制御できる。プロトン伝導体4を透過する燃料および酸化剤の量及び比は、燃料電池7内の位置によって変動している。つまり、内部電極2の適正な電極電位もプロトン伝導体4の拡がり方向の位置によって変動する場合がある。従って、図3に示す燃料電池7のように、プロトン伝導体4の厚み方向に内部電極2を並べて配置するほか、プロトン伝導体4の拡がり方向(面方向)において内部電極をならべることもできる。
(4)形態4の燃料電池
図4は、形態4の内部電極搭載型の燃料電池7を示す。図4に示すように、プロトン伝導体4で形成された電解質の内部には内部電極4が配置されている。そして、酸化剤電極1と内部電極2とを導電手段5Dとしての導線(内部電極電位調整手段5)を介して短絡的に接続している。なお、本発明に係る燃料電池は、図1に示す形態1〜図4に示す形態4の構成に限定されるものではなく、プロトン伝導体4で形成された電解質内に内部電極2を有する上記以外の多様な形態を含むことは、上記から明らかである。
図4は、形態4の内部電極搭載型の燃料電池7を示す。図4に示すように、プロトン伝導体4で形成された電解質の内部には内部電極4が配置されている。そして、酸化剤電極1と内部電極2とを導電手段5Dとしての導線(内部電極電位調整手段5)を介して短絡的に接続している。なお、本発明に係る燃料電池は、図1に示す形態1〜図4に示す形態4の構成に限定されるものではなく、プロトン伝導体4で形成された電解質内に内部電極2を有する上記以外の多様な形態を含むことは、上記から明らかである。
(5)内部電極2の形成
MEAの電解質の内部に内部電極2を形成する代表的形態について、図5を参照して説明を加える。まず、内部電極2を形成する白金触媒ペーストの主要成分として、高分子電荷質膜液、白金担持カーボン、高導電性の繊維状導電体とを配合して、白金触媒ペーストを調整する。白金担持カーボンは、微粒子の白金が表面に担持された粒子状のカーボンをいう。繊維状導電体としてはカーボン繊維を採用することができる。この場合、図5に模式的に示すように、高導電性をもつ繊維状導電体100同士が絡み合い、集電体ネットワークを形成するため、内部電極2の導電性及び集電性を高めることができる。
MEAの電解質の内部に内部電極2を形成する代表的形態について、図5を参照して説明を加える。まず、内部電極2を形成する白金触媒ペーストの主要成分として、高分子電荷質膜液、白金担持カーボン、高導電性の繊維状導電体とを配合して、白金触媒ペーストを調整する。白金担持カーボンは、微粒子の白金が表面に担持された粒子状のカーボンをいう。繊維状導電体としてはカーボン繊維を採用することができる。この場合、図5に模式的に示すように、高導電性をもつ繊維状導電体100同士が絡み合い、集電体ネットワークを形成するため、内部電極2の導電性及び集電性を高めることができる。
更に、図5に模式的に示すように、集電体ネットワークを形成する繊維状導電体100に、高分子固体電解質液(プロトン伝導体)110及び白金担持カーボン120が絡むことにより、より少量の触媒粒子(白金担持カーボン)の使用で、反応に有効な三相界面を効率的に生成することが可能となる。
上記したように、電子伝導性を集電体ネットワークで確保することにより、内部電極2の電子伝導性が確保される。更に、集電体ネットワークの間隙を高分子固体電解質膜110が充填されるように入り込むことで、内部電極2と、内部電極2を挟むプロトン導電体4のプロトン伝導性を確保することができる。
以上の効果により、内部電極2の低抵抗性及び高プロトン伝導性の双方を向上させることができ、内部電極2の面内における均一なガス抑制の機能が得られ、MEAの高耐久性が実現される。
また本発明に係る燃料電池によれば、繊維状導電体100を集積させたシート状の繊維集積体(例えば不織布、織物)に、白金担持カーボン120及び高分子固体電解質膜(プロトン伝導体)110を有するペーストをスプレー塗布あるいは転写フィルム等の付着手段により接合したもので、内部電極2を形成しても良い。また繊維状導電体100の表面にプロトン伝導体または微粒状の白金を担持させたもので、内部電極2を形成することもできる。
またMEAの電解質の内部に内部電極2を形成する他の代表的形態について、図6を参照して説明を加える。図6に示す内部電極2によれば、繊維状導電体としての白金細線で形成されたメッシュ160を用いる。そして、高分子電荷質膜液110及び白金担持カーボン120を配合した白金触媒ペーストを、メッシュ160に付着させることにより、内部電極2を形成している。図6に模式的に示すように、集電体ネットワークを構成するメッシュ160に、高分子固体電解質液110及び白金担持カーボン120が絡むことにより、より少量の触媒粒子(白金担持カーボン)の使用で、反応に有効な三相界面を効率的に生成することが可能となる。
(6)燃料電池発電システム
図7は、内部電極搭載型の燃料電池7を装備する燃料電池発電システムの原理図を示す。前記と共通の機能を有する部位には、共通の符号を付する。この燃料電池発電システムは、図7に示すように、燃料電池7を有する。燃料電池7のMEA9は、プロトン伝導体4を基材とする膜状の電解質と、電解質の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極3と、電解質の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極1とを有する。
図7は、内部電極搭載型の燃料電池7を装備する燃料電池発電システムの原理図を示す。前記と共通の機能を有する部位には、共通の符号を付する。この燃料電池発電システムは、図7に示すように、燃料電池7を有する。燃料電池7のMEA9は、プロトン伝導体4を基材とする膜状の電解質と、電解質の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極3と、電解質の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極1とを有する。
更に、この燃料電池発電システムは、燃料電池7の燃料電極3にガス状の燃料を供給する燃料流路11をもつ燃料配流板12に繋がる燃料通路13と、燃料電池7の酸化剤電極1にガス状の酸化剤を供給する酸化剤流路15をもつ酸化剤配流板16に繋がる酸化剤通路17とをもつ。燃料配流板12及び酸化剤配流板16はセパレータとも呼ばれるものであり、例えば炭素系材料、金属材料で導電機能を有するように形成されている。なお、燃料電池7は複数積層されているものであるが、図7は原理図であるため、1個のみ図示する。燃料としては、一般的には水素ガスまたは水素含有ガス(改質ガスを含む)を例示できる。酸化剤としては、空気等の酸素含有ガス、酸素ガスを例示できる。
この燃料電池7は、前記した形態1〜形態4のいずれかに係る燃料電池とすることができ、プロトン伝導体4を基材とする電解質の内部に単数または複数の層状の内部電極2を有する。内部電極2は前述した図5または図6に示すように形成されている。
更に、図7に示すように、内部電極2の電位を調整する内部電極電位調整手段5が設けられている。また、燃料通路13は、燃料を燃料電池7の燃料電極3に供給する往路13aと、発電後の燃料オフガスを燃料電池7から排出する復路13bとで形成されている。酸化剤通路17は、酸化剤を燃料電池7の酸化剤極2に供給する往路17aと、発電後の酸化剤オフガスを燃料電池7から排出する復路17bとで形成されている。
燃料配流板12の燃料入口12iは、燃料通路13の往路13aに設けられた第1入口バルブ21を介して燃料供給源23に接続されている。燃料供給源23としては、燃料を収容する燃料容器、あるいは、改質ガスを生成する改質器を例示することができる。燃料配流板12の燃料出口12oは燃料通路13の復路13b、第1出口バルブ22に接続されている。また、酸化剤配流板16の酸化剤入口16iは第2入口バルブ25を介して酸化剤供給源27に接続されている。酸化剤供給源27としては、例えば、ファン、ブロア、コンプレッサなどの送風手段を例示できる。酸化剤配流板16の酸化剤出口16oは酸化剤通路17の復路17b、第2出口バルブ26に接続されている。制御装置30は、第1入口バルブ21及び第1出口バルブ22の開閉、第2入口バルブ25及び第2出口バルブ26の開閉を制御する。
燃料電池7を運転するときには、第1入口バルブ21を開放することにより、燃料供給源23から燃料を、燃料通路13の往路13aを経て燃料配流板12の燃料流路11を介して燃料電池7の燃料電極3に供給する。この場合、第1出口バルブ22は開放されている。更に、第2入口バルブ25及び第2出口バルブ26を開放した状態で酸化剤供給源27を作動させることにより、酸化剤を酸化剤通路17の往路17aから酸化剤配流板16の酸化剤流路15を介して燃料電池7の酸化剤極1に供給する。
上記したように燃料を燃料電池7の燃料電極3に供給すると共に酸化剤を燃料電池7の酸化剤電極1に供給することにより、燃料電池7で発電反応が生成され、発電が行われる。発電後の燃料オフガスは、燃料通路13の復路13b、開放状態の第1出口バルブ22を経て排出される。発電後の酸化剤オフガスは、酸化剤通路17の復路17b、開放状態の第2出口バルブ26を経て排出される。
また燃料電池7の運転を停止するときには、制御装置30の指令により第1入口バルブ21及び第1出口バルブ22を閉鎖すると共に、内部電極電位調整手段5を作動させる。これにより燃料電池7の運転を停止させるとき、燃料電池7の燃料電極3に燃料を封入させた状態で残留させることができる。燃料電池7の運転停止中においては、第1入口バルブ21及び第1出口バルブ22の閉鎖を維持し、燃料電極3に燃料を残留させたままとすることができる。従って、第1入口バルブ21及び第1出口バルブ22は、燃料電極3に燃料を残留させる燃料残留実現手段として機能することができる。上記した形態1〜形態4に係る記載から理解できるように、発電運転中においても、発電停止中においても、内部電極2の電位を制御すれば、電解質を介しての燃料の対極側への透過を抑制することができ、また、電解質を介しての酸化剤の対極側への透過を抑制することができる。
このため、燃料電池7の運転を停止するとき、燃料電池7の燃料電極3から全部の燃料を排出することなく、燃料電極3に燃料を残留させたままとすることができる。従って発電運転を停止するとき、窒素ガス等のパージガスを燃料電極3に封入するパージ処理の廃止または簡略化を図ることができる。この結果、運転を停止していた燃料電池7を再起動させて運転を再開するとき、燃料電池7の燃料電極3に残留している燃料を使用することができる。従って、燃料電池7の再起動時にパージガスを燃料電極3から排出させる操作を廃止または簡略化でき、燃料電池7の発電の立ち上がりを早めることができる。
また、発電運転を停止するとき、酸化剤側の第2入口バルブ25及び第2出口バルブ26は、必要に応じて、閉鎖しても良いし、あるいは、開放させても良い。第2入口バルブ25及び第2出口バルブ26を閉鎖しておけば、酸化剤極1の内圧を高めに維持できるため、内圧による燃料透過抑制効果を期待することもできる。なお、第2入口バルブ25及び第2出口バルブ26は、空気側であるため、場合によっては廃止しても良い。
本発明の実施例について具体的に説明する。まず、白金担持カーボン触媒(白金担持量40wt%)と高分子電解質膜液(旭化成(株)製, Aciplex5wt%溶液)と、イソプロピルアルコールと、水とを混合した混合物を形成した。その混合物を超音波ホモジナイザーで攪拌し、白金触媒ペースト溶液を調製した。さらに、導電性をもつカーボン繊維として気相成長カーボン繊維(以下VGCFともいう,Vapar Grouth Carbon Filter,昭和電工(株)製,平均繊維長さ10〜20μm,平均繊維径150ナノメートル)を、その白金触媒ペースト溶液に加え、機械式ホモジナイザでさらによく攪拌した。これによりカーボン繊維(VGCF)を含む白金触媒ペーストを調製した。カーボン繊維(VGCF)の配合割合としては、白金触媒ペーストの重量に対して約20重量%とした(白金触媒ペースト約80重量%,カーボン繊維約20重量%)。更に、乾操したフッ素系高分子固体電解質膜(約200ミリメートル×190ミリメートル)の片面に、この触媒ペーストの所定量をスプレーガンで吹き付けて塗布し、風乾した。その後、この膜を80℃でさらに真空乾燥した。この膜を2枚用意した。
次に、フッ素樹脂(PTFE)で撥水化処理されたカーボン粒子を均一に分散させた溶液中に、カーボンペーパ(厚み180μm、220cm2)を浸漬させ、風乾した。その後、カーボンペーパを390℃以上の湿度で焼成し、撥水化処理したカーボンペーパを作製した。更に、カーボン繊維(VGCF)のみを除いて先の方法と同様な方法で調製した白金触媒ペーストを調製した。撥水化処理したカーボンペーパ上にアプリケータ(クリアランス:300μm)を用いて白金触媒ペースト(カーボン繊維(VGCF)を含まず)を塗布し、80℃で真空乾燥して白金触媒電極(燃料電極3,酸化剤電極1に相当)を作製した。
そして、前記したように触媒ペースト(カーボン繊維(VGCF)を含有)を塗布した2枚の膜を、その触媒ペースト塗布面が内側となるように配置した。更に、内部電極2の集電体として機能する白金箔(厚み20μm、2×200ミリメートル)3本を、2枚の膜(プロトン伝導体)の間に挟み込み、積層体を形成した。
さらに白金触媒電極(燃料電極3,酸化剤電極1に相当)を膜の外側に配置して積層体を形成した。この場合、当該白金触媒電極(燃料電極3,酸化剤電極1に相当)の触媒ペースト塗布面が膜に対面するように配置した。そして、その積層体をホットプレス(160℃,80kgf/cm2=7.84MPa)で加圧し、内部電極2を有する実施例に係る膜電極接合体(以下、MEAともいう)を作製した。
比較例2として、カーボン繊維(VGCF)を混合していない点を除いて、同じ方法で高分子固体電解質膜を塗布する触媒ペーストを塗布し、比較例2に係るMEAを形成した。更に、内部電極を搭載しない点を除いて、基本的には同じ方法で通常構造のMEAも比較例1として形成した。なお、これら実施例に係るMEAと比較例1,2に係るMEAとについて、総カーボン量の配合比率は等しくなるよう調製されており、更に、白金触媒量及び高分子固体電解質膜液量についても等しくなるよう調製されている。
そして、実施例に係るMEA、比較例1,2に係るMEAの燃料電池の初期性能(I−
V特性)を評価した。この場合、図1に示すように、内部電極2と燃料電極3とにポテンショスタットを内部電極電位調整手段5として接続している。燃料として2気圧の水素を、酸化剤として2気圧の空気を使用した。利用率としては燃料は80%、空気は40%とした。加湿量としては燃料は0.1mol、空気は0.1molとした。燃料電極3及び酸化剤電極1の電極面積はそれぞれ220cm2とした。
V特性)を評価した。この場合、図1に示すように、内部電極2と燃料電極3とにポテンショスタットを内部電極電位調整手段5として接続している。燃料として2気圧の水素を、酸化剤として2気圧の空気を使用した。利用率としては燃料は80%、空気は40%とした。加湿量としては燃料は0.1mol、空気は0.1molとした。燃料電極3及び酸化剤電極1の電極面積はそれぞれ220cm2とした。
初期性能の評価結果を図8に示す。図8では横軸は電流密度(アンペア/cm2)、縦軸はセル電圧(ボルト)を示す。図8において、プロット1P(黒四角印)は、内部電極を搭載しない比較例1に係る通常構造のMEAの結果を示す。プロット2P(黒三角印)は比較例2に係るMEAの結果を示す。プロット3P(黒丸印)は実施例に係るMEAの結果を示す。
図8に示すように、プロット2Pで示す比較例2に係るMEAによれば、プロット1Pで示す比較例1に係る通常構造のMEA(内部電極を搭載していない)よりも、セル電圧が低く、燃料電池としての性能が低かった。これは、比較例2に係るMEAでは、集電体として機能する白金箔を設けていることで、高分子電解質膜の割合が相対的に低下し、結果として、集電体の占有面積の増加に伴ってプロトン伝導性が低下していると推察される。
これに対し、プロット3Pで示す実施例に係るMEAによれば、集電体として機能する白金箔を有する内部電極2を搭載しているにも関わらず、図8に示すように、比較例1に係る通常構造のMEA(内部電極を搭載しない)と殆ど同等の性能を示した。これは、実施例に係るMEAによれば、繊維状導電体であるカーボン繊維(VGCF)を内部電極2に配合した結果、集電体ネットワークが良好に形成され、内部電極2の導電性及び集電性が高くなるように改善されたことに起因すると推察される。更に、実施例に係るMEAによれば、カーボン繊維(VGCF)で形成された集電体ネットワークの間隙を充填するような形態で、高分子固体電解質膜液(プロトン伝導体)が集電体ネットワークの内部に効率よく入り込み、この結果、内部電極2の高分子固体電解質膜液(プロトン伝導体)と、内部電極2の外側のプロトン伝導体4との密接性が良好に向上した効果によるものと推察される。
更に、実施例に係るMEAの耐久性を評価するため、常圧の水素/常圧の空気を用いたサイクル耐久試験を行った。このサイクル耐久試験では、無負荷運転3分間と0.1アンペア/cm2の負荷運転1分間とを1サイクルとし、サイクルを繰り返すことにより行った。この場合、利用率としては燃料は80%、空気は40%とした。加湿量としては燃料は0.2mol、空気は0.2molとした。燃料電極3及び酸化剤電極1の電極面積は60cm2とした。
図9はサイクル耐久試験の結果を示す。図9では横軸は運転時間(Hr)、縦軸はセル電圧(ボルト)を示す。図9において、プロット4P(黒丸印)は、実施例に係るMEAの結果を示す。プロット5P(黒三角印)は、比較例1に係る通常構造のMEA(内部電極搭載せず)の結果を示す。この場合、サイクル耐久試験におけるセル電圧(無負荷運転モー3分間終了時の開回路電圧)を求めた。
図9のプロット5Pに示すように、比較例1に係る通常構造のMEA(内部電極搭載せず)によれば、試験初期では安定した性能を示しているものの、運転開始後500時間経過あたりから、セル電圧が次第に低下した。一方、図9のプロット4Pに示すように、実施例のMEAによれば、初期から約700時間経過までの間、開回路電圧の低下もなく、安定した性能を維持した。
更に、上記した実施例に係るMEA、通常構造のMEAについて、試験開始前後でのMEAのクロスリークガス量(水素ガス)をガスクロマト分析によって測定した。この場合には、条件としては、ガスを加湿するために純水を入れたバブラーの水の温度を80℃とし、各ガス流量を200ミリリットル/分間とした。測定結果によれば、比較例1に係る通常構造のMEA(内部電極搭載せず)によれば、試験開始前が1200ppmであったが、700時間経過した後には7000ppmであり、クロスリークガス量が6倍近くにかなり増加した。
これに対して、実施例に係るMEAによれば、クロスリークガス量は、試験開始前では1150ppmであり、700時間経過した後でも1260ppmであった。即ち、装置の判定精度から考えると、実施例に係るMEAによれば、クロスリークガス量の増加は誤差範囲内の微増に留まった。
ここで、比較例1に係る通常構造のMEA(内部電極搭載せず)におけるクロスリークガス量の明らかな増加は、MEAの電解質に何らかの劣化が生じたことを意味すると推察される。即ち、比較例1に係る通常構造のMEAによれば、クロスリークガス量の増加に伴って、サイクル耐久試験における燃料電池性能の低下が生じたものと考えられる。これに対して実施例に係るMEAでは、前述したように、クロスリークガス量の増加は基本的には認められず、サイクル耐久試験性能と併せても、MEAの電解質の劣化は認められないと推察される。
以上の試験結果に基づけば、実施例に係るMEAは、カーボン繊維の絡みにより集電体ネットワークを構成し、集電体ネットワークにより内部電極2における低抵抗化を図り得、内部電極2の面内において均一なガス透過抑制効果を与えることが可能であると推察される。これによりMEAの高耐久化が実現できると共に、内部電極2における良好なるプロトン伝導性も確保することができる。
本発明は例えば車両用、定置用、携帯用等の燃料電池に利用することができる。
図中、1は酸化剤電極、2は内部電極、3は燃料電極、4はプロトン伝導体(電解質)、5は内部電極電位調整手段、6は外部負荷、7は燃料電池を示す。
Claims (7)
- プロトン伝導体で形成された電解質と、前記電解質の一方の側に設けられた燃料電極と、前記電解質の他方の側に設けられた酸化剤電極とを具備する膜電極接合体をもつ燃料電池において、
前記膜電極接合体は、前記電解質の内部に少なくとも一つの内部電極を有しており、
前記内部電極は、集電体ネットワークを形成する導電性をもつ繊維状導電体と、プロトン伝導体と、触媒とを主要成分として形成されていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1において、前記繊維状導電体は、カーボン繊維及び金属繊維のうちの少なくとも1種であることを特徴とする燃料電池。
- 請求項1または請求項2において、前記繊維状導電体はメッシュシートまたは抄紙シートであることを特徴とする燃料電池。
- 請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項において、前記燃料電池の前記内部電極の電位を調整する内部電極電位調整手段が設けられていることを特徴とする燃料電池。
- 請求項4において、前記内部電極電位調整手段は、前記燃料電池の前記内部電極に電圧を印加する電圧印加手段であることを特徴とする燃料電池発電システム。
- 請求項4において、前記内部電極電位調整手段は、前記燃料電極及び前記酸化剤電極のうちの少なくとも一方と前記内部電極とを接続する電源であることを特徴とする燃料電池。
- 請求項4において、前記内部電極電位調整手段は、前記燃料電極及び前記酸化剤電極のうちの少なくとも一方と前記内部電極とを導通する導電手段であることを特徴とする燃料電池。
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Cited By (2)
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JP2009152184A (ja) * | 2007-11-21 | 2009-07-09 | Angstrom Power Inc | 導電性を増強した触媒層を有する平面型燃料電池 |
JP2011171099A (ja) * | 2010-02-18 | 2011-09-01 | Honda Motor Co Ltd | 燃料電池の電極触媒層用ペーストの製造方法 |
-
2004
- 2004-01-28 JP JP2004020467A patent/JP2005216629A/ja active Pending
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