JP2005216392A - 光ディスクコーティング用スプレー - Google Patents

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Abstract

【課題】光ディスクの表面に無機系の皮膜を容易に形成する。
【解決手段】光ディスクコーティング用スプレー1には、ペルヒドロポリシラザンと、金属カルボン酸塩等の酸化触媒とをミネラルターペン等の有機溶媒に含有させた溶液が封入されている。さらに、この溶液には、紫外線による光ディスク2の劣化を抑えるために、粒子状の酸化亜鉛(ZnO)が混合されている。すなわち、このスプレー内の溶液を光ディスク2のレーザ光入射面2aに噴霧することで、この溶液が常温・大気中で硬化し、ディスク面にシリカ(SiO2)で構成された透光性の良好な無機系の皮膜が容易に形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、光ディスクのレーザ光入射面等にコーティングを施すための光ディスクコーティング用スプレーに関する。
従来、光ディスクでは、ポリカーボネート等で形成された透明基板上に情報記録層を設け、レーザ光を、透明基板を透過させつつ情報記録層上に集束させることで、情報の書き込みや読み取りを行う構成となっている。
ここで、上記ポリカーボネート製の透明基板は、一般に帯電し易く、またその硬度も比較的軟らかい(ほぼ鉛筆硬度の2B程度)ため、傷に弱く塵埃等の付着が容易に発生する。光ディスクの透明基板の表面、つまりレーザ光入射面に傷があったり、塵埃等が付着していると、記録/再生の際にエラーが生じる要因となる。そこで、この対策として、レーザ光入射面に紫外線硬化性樹脂等のハードコート層を形成すること等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平6−119664号公報
しかしながら、近年の光ディスクにおける情報の高密度記録化に伴って、レーザ光入射面の傷等が、情報の記録/再生により大きく影響を及ぼしてしまうため、透明基板に形成される皮膜には、さらなる硬質化が求められている。
また、上述したポリカーボネート製の透明基板は、ガス透過性や吸水性が比較的高いことから酸素や水を通し易い。このため、透明基板やこの透明基板上の情報記録膜の経時的劣化を抑制するために、レーザ光入射面にDLC(Diamond Like Carbon薄膜)等の無機系の皮膜を形成することが好ましい。しかしながら、このような無機系の皮膜は、一般に、スパッタリング、イオン化蒸着法、アーク放電等の方法で形成されるため、皮膜形成に際して大掛かりな専用装置が必要となる。
そこで本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、光ディスクの表面に無機系の皮膜を容易に形成することのできる光ディスクコーディング用スプレーの提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る光ディスクコーディング用スプレーは、光ディスクの表面にコーティングを施すための光ディスクコーティング用スプレーであって、ペルヒドロポリシラザンと酸化触媒とを有機溶媒に含有させた溶液が封入されていることを特徴とする。
本発明では、このスプレー内に封入されたペルヒドロポリシラザンと酸化触媒とが含有された溶液を光ディスクの表面に噴霧することで、噴霧した溶液が常温・大気中で硬化し、シリカ(SiO2)で構成された透光性の良好な無機系皮膜がディスク面に形成される。したがって、本発明によれば、皮膜形成のための例えば大掛かりな専用装置等を用いることなく、光ディスクの表面にユーザレベルで容易に無機系硬質皮膜をコーティングすることができる。これにより、光ディスクにおける例えばポリカーボネート製の透明基板側、つまりレーザ光入射面に上記シリカの皮膜を形成した場合には、この透明基板上に傷や塵埃等が付き難くなり、レーザ光が照射されて情報の読み出し及び/又は書き込みが行われる際には十分な光学特性が確保される。さらに、光ディスクの上記透明基板上に当該シリカの皮膜を形成した場合には、酸素や水が通り難くなり、透明基板や情報記録膜の経時的劣化等を抑制することができる。
ここで、本発明の光ディスクコーティング用スプレーに封入される溶液中に酸化亜鉛(ZnO)を混合するようにしてもよい。この溶液を光ディスクに噴霧して皮膜を形成した場合には、UV遮断効果が得られ、紫外線による光ディスクの劣化を抑えることができる。特に、情報記録膜が例えば有機色素膜で構成されたCD−R若しくはDVD−R、又は情報記録膜が相変化膜で構成されたCD−RW、DVD−RW若しくはDVD−RAM等のレーザ光入射面に、上記UV遮断効果を有する皮膜を形成した場合、情報記録膜に書き込まれたデータを紫外線から保護する点で有用である。
また、本発明においては、スプレーからディスク面に噴霧された溶液の常温・大気中での硬化を促進させるために、前記酸化触媒は、金属カルボン酸塩又は金属のアセチルアセトナト錯体であることが望ましい。さらに、本発明では、スプレー内における前記有機溶媒とペルヒドロポリシラザンとの反応を抑制するために、この有機溶媒は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂肪族エーテル、脂環族エーテル、又は芳香族アミンであることが好ましい。
このように本発明によれば、光ディスクの表面に無機系の皮膜を容易に形成することの可能な光ディスクコーディング用スプレーを提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る光ディスクコーディング用スプレーより、封入されている溶液を光ディスクに噴霧している状態を概略的に示す図、図2は、図1の光ディスクの構成を示す模式図、図3は、図2の光ディスクのトラックを詳細に示す拡大図(図2中のA部詳細図)、図4は、図1の光ディスクの表面に無機系皮膜が形成された状態を示す断面図である。
すなわち、本実施形態の光ディスクコーディング用スプレー1は、光ディスクの表面にコーティングを施すためのスプレーであって、図1及び図4に示すように、光ディスク2の例えばレーザ光入射面2aに対し、噴霧容器1a(スプレー本体)内に封入された溶液を噴霧することで、ディスク面に無機系皮膜8を形成するために用いられる。
ここで、まず、無機系皮膜が形成される上記光ディスク2の構造について簡単に説明する。
図2ないし図4に示すように、この光ディスク2は、次世代光ディスク規格の高密度書き換え型ディスクであって、例えばポリカーボネート製の透明基板3上の情報記録層(情報記録膜)6のデータ記録領域MA(情報記録エリア)内に、トラックTを有し、情報の記録再生はこのトラックTに沿って行われる。上記情報記録層6は、図4に示すように、その上部が保護層7によって覆われている。また、光ディスク2の中央には、光ディスク装置側のターンテーブル上にこの光ディスク2を保持するためのクランプ孔Hが穿孔されている。トラックTは、図2に示すように、光ディスク2の内側から外側まで連続してつながるスパイラル型である。トラックTには、この他に、複数の同心円から形成される同心円型がある。また、トラックTは、図3に示すように、情報記録層6の凹凸(案内溝)によって形成されている。この凹側がグルーブG、凸側がランドLである。光ディスク2は、ランドLとグルーブGとの両方に情報を記録マークMとして形成するランドグルーブ方式の光ディスクである。
光ディスク2の情報記録層6には、追記、書き換えのできるものとして、熱記録型の情報記録媒体(情報記録膜)が用いられる。熱記録型の情報記録媒体は、情報記録媒体を加熱及び冷却することで情報を記録するものであり、代表的なものとして相変化媒体(相変化膜)が知られている。相変化膜では、媒体の相の違い(例えば、アモルファスと結晶の違い)による物理的性質の差(例えば反射率差)を利用して情報を記録する。相変化媒体を利用して情報の記録再生を行う光ディスク装置では、例えば、初期化によって媒体全面を結晶化しておき、そこに強度の強いパルス状のレーザ光をレーザ光入射面2a側から照射することでアモルファスの記録マークMを形成する。強いレーザ光により媒体が溶融し、その後レーザ光の照射が弱まることで媒体が急冷し、アモルファス化することで記録マークが形成される。情報の再生時には、媒体に一定レベルの弱いレーザ光をレーザ光入射面2a側から照射し、記録マークMであるアモルファス部と結晶部による絶対反射率の変化や複素反射率の位相の変化を電気信号に変換して読み出しが行われる。アモルファス部と結晶部の反射率や位相の変化量は、情報記録層6に用いる情報記録媒体の材料の種類、層構成や組成によって調整をすることが可能である。
次に、本実施形態に係る光ディスクコーディング用スプレー1の噴霧容器1a内に封入(充填)された溶液について詳述する。
この溶液は、主に無機ポリマであるペルヒドロポリシラザンと酸化触媒とを有機溶媒に含有させたものである。有機基を有していないペルヒドロポリシラザンは、Si又はNに結合しているの原子が全てHであるため、立体障害が小さく反応を妨げないばかりか、有機基のように酸化・分解されることがない。したがって、常温・大気中で保持するだけで酸化、或いは空気中の水蒸気による加水分解が進んで(セラミックス化が促進して)硬化する。つまり、光ディスク2のレーザ光入射面2aに対し、噴霧容器1a内の溶液を噴霧することで、図4に示すように、ディスク面に無機系皮膜(シリカ[SiO2]皮膜)8が形成される。
また、酸化触媒としては、金属カルボン酸塩が好ましく、詳細には、例えばニッケル、チタン、白金、ロジウム、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、イリジウム、アルミニウムなどの群から選択される少なくとも一種の金属を有するもの等が例示される。また、その他の酸化触媒としては、各種金属のアセチルアセトナト錯体が望ましく、この錯体は、具体的にはアセチルアセトン(2,4−ペンタジオン)から酸解離により生じた陰イオンが金属原子に配位したものである。詳述すると、アセチルアセトナト錯体の具体的金属としては、例えばニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム、ロジウム等を有するものを挙げることができる。このような酸化触媒としては、例えばプロピオン酸パラジウム(C25COOPd)等が例示される。酸化触媒の配合量は、酸化触媒/ペルヒドロポリシラザン重合比率が、0.001〜1であることが好ましく、0.01〜0.5であれば最適である。
また、有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂肪族エーテル、脂環族エーテル、芳香族アミン類等を用いることが望ましい。詳細には、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム、n−ヘキサン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ピリジン、メチルピリジン、ミネラルターペン等を適用することが可能である。これにより、噴霧容器1a内における有機溶媒とペルヒドロポリシラザンとの反応が抑制される。ペルヒドロポリシラザンの配合割合は、溶媒中に固形分濃度として0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%含まれるように調整する。
また、噴霧容器1a内の主にペルヒドロポリシラザンを含有する溶液中には、さらに、粒子径が例えば0.02〜0.03μm程度の酸化亜鉛(ZnO)が添加されている。これにより、ディスク面に形成される皮膜には、UV遮断効果が得られ、紫外線による光ディスク2の劣化を抑えることができる。なお、噴霧容器1a内には、上記したペルヒドロポリシラザンを含有する溶液とともに、この溶液を噴霧させるための噴射剤が混入されている。
したがって、図1に示すように、光ディスクコーディング用スプレー1(噴霧容器1a)内に封入されている既述した溶液を光ディスク2のレーザ光入射面2aに対し噴霧することで、噴霧した溶液が常温・大気中で硬化し、図4に示すように、レーザ光入射面2aにシリカ(SiO2)で構成された透光性の良好な無機系皮膜8が形成される。すなわち、光ディスクコーディング用スプレー1によれば、皮膜形成のための例えば大掛かりな装置等を用いることなく、光ディスクの表面にユーザレベルで容易に無機系の硬質皮膜(一般に鉛筆硬度で9H以上の硬度を有するSiO2皮膜)をコーティングすることができる。
これにより、シリカの皮膜が形成されたポリカーボネート製の透明基板3側(レーザ光入射面2a側)に傷や塵埃等が付き難くなり、レーザ光が照射されて情報の読み出し及び/又は書き込みが行われる際には十分な光学特性が確保される。また、シリカがコーティングされたレーザ光入射面2a側は、いわゆるガスバリア性が向上し、酸素や水が通り難くなる。したがって、透明基板3や情報記録層6の経時的劣化(酸化等)を抑制することができ、長期にわたって一定以上の光学特性を確保することができる。なお、ディスク面に形成されるシリカの皮膜は、1μm以下の厚さでも硬質皮膜としての十分な効果が発揮されるため、ディスク面の皮膜の厚さが要因となる光学特性への影響が極めて低いものである。さらに、シリカの皮膜は、対薬品性も高いため、ポリカーボネートを劣化させるエタノールやアセトン等の薬品から、透明基板3を保護できる。
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこの実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、無機系の皮膜を形成する対象の光ディスクの種類については特に説明しなかったが、CD、CD−ROM、DVD、DVD−ROM等の他、情報記録膜が例えば有機色素膜で構成されたCD−R、DVD−Rや、情報記録膜が相変化膜で構成されたCD−RW、DVD−RW、DVD−RAM等を始めとする、あらゆる光ディスクに対し本発明のスプレーを使用して無機系の皮膜を形成することができる。
本発明の実施形態に係る光ディスクコーディング用スプレーより、封入されている溶液を光ディスクに噴霧している状態を概略的に示す図。 図1の光ディスクの構成を示す模式図。 図1の光ディスクのトラックを詳細に示す拡大図(図2中のA部詳細図)。 図1の光ディスクの表面に無機系皮膜が形成された状態を示す断面図。
符号の説明
1…光ディスクコーディング用スプレー、1a…噴霧容器、2…光ディスク、2a…レーザ光入射面、3…透明基板、6…情報記録層。

Claims (4)

  1. 光ディスクの表面にコーティングを施すための光ディスクコーティング用スプレーであって、
    ペルヒドロポリシラザンと酸化触媒とを有機溶媒に含有させた溶液が封入されていることを特徴とする光ディスクコーティング用スプレー。
  2. 前記溶液中にさらに酸化亜鉛が含有されていることを特徴とする請求項1記載の光ディスクコーティング用スプレー。
  3. 前記酸化触媒は、金属カルボン酸塩又は金属のアセチルアセトナト錯体であることを特徴とする請求項1又は2記載の光ディスクコーティング用スプレー。
  4. 前記有機溶媒は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂肪族エーテル、脂環族エーテル、又は芳香族アミンであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光ディスクコーティング用スプレー。
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