JP2006236506A - 光記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 フォトンモード記録を良好に適用できる材料を用いた光記録媒体を提供する。
【解決手段】 記録層を有し、この記録層が、第1の光により磁気モーメントの大きさが変化する物質Aを含有し、第1の光による物質Aの磁気モーメントの大きさの変化によって、記録層の第2の光に対する透過率及び/又は反射率が変化することを特徴とする光記録媒体。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光記録媒体に関するものである。より詳しくは、光の照射によって磁気モーメントが変化する物質Aを記録層に含有する光記録媒体に関するものである。
レーザー光を用いて記録を行なう光記録媒体としては、CD−R、CD−RW、ライトワンスDVD(DVD−R、DVD+R)、リライタブルDVD(DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM)に代表される光ディスクが実用化されている。これら光ディスクにおいては、記録層に有機色素(追記型の場合)又は合金材料(リライタブル型の場合)が通常用いられている。そして、これら光ディスクへの記録は、記録層にレーザー光を照射してこれを熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーを用いて有機色素の分解又は合金材料の構造変化を起こさせることにより行う。
近年、動画(例えば高画質のハイビジョン放送)等の大容量データを短時間に記録するために、より高容量、高速記録可能な光ディスクが求められている。このような要請を受け、発振波長が500nm以下の青色レーザーを用いた高密度光ディスクが実用化されつつある(非特許文献1)。
しかしながら、本発明者の検討によれば、上記実用化されている又は実用化されつつある光ディスクにおける高速記録には、限界があると考えられる。これは、光ディスクの記録原理が、(a)記録層への光(光エネルギー)の照射、(b)光エネルギーを熱エネルギーに変換、(c)熱エネルギーで記録層中の有機色素を熱分解又は合金材料を構造変化させる、という3つの段階で構成されることに起因する(以下この記録原理を「ヒートモード記録」という場合がある。)。つまり、照射した光エネルギーを熱エネルギーに変換するという過程が存在する分だけ、記録(記録層の物性値の変化)を行なうために必要な時間が長くかかるのである。
このため、将来的には、現在実用化されている光ディスクを凌ぐ記録速度で記録可能な光記録媒体の登場が望まれる。
このような記録方式として、フォトンモード記録を用いることが期待されている。「フォトンモード記録」とは、照射された光のエネルギーを一旦熱エネルギーに変換することなく(上記(b)の過程を行うことなく)、光のエネルギーを分子等の物質が直接吸収する原理を用いる記録方法をいう。実際に、フォトンモードによる線形な記録を可能にする方法として、偏光を照射することにより分子配向が変化する有機材料を記録材料として含む記録層を有する光記録媒体がある(特許文献1)。より具体的には、上記有機材料として、アゾベンゼン誘導体及び側鎖にアゾベンゼンを有するメタクリレート系ポリマーが用いられている。
Jpn.J.Appl.Phys.Vol.39(2000)pp.756−761,Part1,No2B,Feb.2000 特開2001−6208号公報(0020、0021、0042)
上記分子配向が変化する有機材料を用いた場合には、記録又は消去の際に記録層中で上記有機材料が構造変化を起こす必要がある(特許文献1の図1参照)。しかし、記録層は固体の性状を有するため、記録層中での上記有機材料の構造変化を微弱な光エネルギーによって効率的に引き起こすことは容易なことではない。つまり、分子配向の変化による構造変化を起こす有機材料を記録層に用いた光記録媒体は、光照射に対する記録膜中での分子構造変化の効率(収率)が悪くなりやすい。このため、実際は、構造変化を利用する上記光記録媒体を高速書き込みの光記録媒体として用いることは容易なことではない。
また、記録・消去時の上記有機材料の構造変化によって、記録層が膨張・収縮等の変形を起こす場合がある。このような記録層の変形は、記録層とその上下の層との接着性を悪化させたり、記録特性の劣化を速めたり等の問題を引き起こす原因となり得る。
従って、フォトンモード記録を良好に適用できる材料を用いた光記録媒体の開発が望まれている。
上記実情に鑑み、本発明者は、フォトンモード記録を利用し、高速記録が可能となる光記録媒体を得るべく鋭意検討を行った。その結果、書き込み光のエネルギーを分子等の物質が直接吸収することにより、磁気モーメントの大きさが異なる量子状態間の遷移が起こる物質Aを用いれば、記録時に物質Aの構造変化を利用することなく記録が可能となることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は、記録層を有し、前記記録層が、第1の光により磁気モーメントの大きさが変化する物質Aを含有し、前記第1の光による前記物質Aの磁気モーメントの大きさの変化によって、前記記録層の第2の光に対する透過率及び/又は反射率が変化することを特徴とする光記録媒体に存する。
本発明の他の要旨は、上記光記録媒体に対する情報の記録方法であって、前記第1の光を記録層に照射して情報の記録を行なうことを特徴とする光記録媒体の記録方法に存する。
本発明のさらに他の要旨は、上記光記録媒体に記録された情報の再生方法であって、前記第2の光を記録層に照射することによって記録の再生を行うことを特徴とする光記録媒体の再生方法に存する。
本発明によれば、フォトンモード記録を有効に利用した光記録媒体の提供が可能になる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(A)光記録媒体
本発明の光記録媒体は、記録層を有し、前記記録層が、第1の光により磁気モーメントの大きさが変化する物質Aを含有し、前記第1の光による前記物質Aの磁気モーメントの大きさの変化によって、前記記録層の第2の光に対する透過率及び/又は反射率が変化することを特徴とする。
光記録媒体においては、一般的に、エネルギー(光エネルギー、熱エネルギー)の付与による記録層の特性値(例えば、残留磁化の大きさ、反射率の値、透過率の値など)の変化を利用して、光記録媒体への情報の記録が行われる。本発明においては、記録層に物質Aを用いる。物質Aは、第1の光の照射により磁気モーメントの大きさが変化し、この磁気モーメントの変化に伴う量子状態の変化によって第2の光に対する記録層の透過率及び/または反射率を変化させるような物質である。つまり、物質Aの磁気モーメントの違いによって発生する記録層の透過率及び/又は反射率の違いを利用して記録を行う。
物質Aにおける磁気モーメントの大きさの変化は、内部の原子の持つ磁気モーメントの大きさが変化していることに対応する。原子の持つ磁気モーメントは、該原子内における電子の軌道占有状態によって定まる。すなわち、磁気モーメントが変化するということは、該原子内における電子の軌道占有状態が変化するということであり、変化の前後では、光に対する吸収スペクトルが異なることになる。この作用効果は、例えば、Applied Physics Letters,85(12), p.2295(2004)等においても報告されている。このように、物質Aは、光の照射前後で、同一スペクトルを持った光に対しての反射率及び/又は透過率が異なる特性を有する。つまり、第1の光の照射によって磁気モーメントが変化するような物質Aは、必然的に第2の光に対する記録層の透過率及び/又は反射率の違いを利用できることとなる。ここで、第1の光により、磁気モーメントの大きさが変化する物質Aの磁気モーメントの大きさは、量子磁束計(SQUID)、振動型磁力計(VSM)等によって測定することができる。
物質Aは、保持時間が長いことが好ましい。保持時間とは、下記のように定義される量である。まず、物質Aに対する第1の光照射により、物質Aの磁気モーメントを第1の磁気モーメントから第2の磁気モーメントに変化させる。この後に、該光照射を止める。ここで、物質Aが、照射を止めてからも第2の磁気モーメントを持つ時間を保持時間と呼ぶ。保持時間は、通常1s以上、好ましくは1000s以上、より好ましくは104s以上、最も好ましくは107s以上である。保持時間が短すぎると、光記録媒体として用いる際に適用範囲が限定されてしまうからである。保持時間に上限はないが、通常1010s以下である。
上記のような性質を有する物質Aとしては、例えば、[Fe(II)(ptz)6](
BF42(ここで、「ptz」は、「1−propyl−tetrazole」を表す。以下、本発明において「ptz」は同様の意味を表す。)、[Fe(III)(pap)2]ClO4(ここで、「pap」は、「N−2−pyridiyl−methylidene−2−hydroxy−phenylaminato」を表す。以下、本発明において「pap」は同様の意味を表す。)、Fe(III)(qsal)2]NCSe(ここ
で、「qsal」は、「N−(8−quinolyl)salicyl−aldimine」を表す。以下、本発明において「qsal」は同様の意味を表す。)、[Fe(II)trz]SO3(ここで、「trz」は、「1,2,4−triazole」を表す。以下、本発明において「trz」は同様の意味を表す。)、[Fe(II)(4−NH2trz)3](R−SO32(Rは、p−CH364基等、炭化水素基又は炭化水素基の置換
体を表す。このような物質Aの具体例としては、[Fe(4−NH2trz)3](p−CH364SO32を挙げることができる。)、[Fe(L)(CN)2](ここで、「L」は、「大環状Schiff塩基」を表す。以下、本発明において「L」は同様の意味を表す。)等の、光によりスピンクロスオーバー現象を起こし磁気モーメントが変化をする物質を用いれば良い。
光によりスピンクロスオーバー現象を起こす物質とは、(i)少なくとも1つの光を吸収する過程により、該物質の構成原子又はイオンの電子配置が変化することにより、磁気モーメントの大きさが変化する現象を起こす物質、又は、(ii)その他の1以上の光の吸収過程、放出過程により、該物質の構成原子又はイオンの電子配置が変化することにより、磁気モーメントの大きさが変化する現象を起こす物質、のことをいう。ここで、該物質の構成原子又はイオンの持つ電子数自体は変化しない。例えば、光によりスピンクロスオーバー現象を起こす物質である[Fe(L)(CN)2]・H2O中のFe原子(Fe(II)のイオン状態になっている)は、t2g 6g 0の電子配置からt2g 4g 2の電子配置に変化し、それに伴い、磁気モーメント(1分子あたり)は、0から1μBに変化する。電
子数が不変のまま、光により磁気モーメントの大きさの異なる状態へ遷移していることは、Mossbauer分光により確認することができる。図4に、[Fe(L)(CN)2]・H2O中のFe原子(Fe原子は、実際にはFeイオンとなっている。)がスピンクロスオーバー現象を起こす場合の例を示す。なお、図4は、放射化学ニュース第5号,p.1(2001)の図3を引用したものである。
図4中、LSは,Fe原子がt2g 6g 0電子配置の配置(Fe原子に属する電子数は24)を取り磁気モーメントの大きさが0の状態、HSは、Fe原子がt2g 4g 2の配置(
Fe(II)イオンに属する電子数は同じく24)を取り磁気モーメントの大きさが1μBの状態を指す。図4より、光照射前にLSの状態にあった分子が、照射後にHSの状態に移っている(なお、照射前の状態においてもLS状態とほぼ同数のHS状態の分子が存在していた。)。このことから、光の照射により、[Fe(L)(CN)2]・H2Oは、電子数が不変のまま、磁気モーメントの大きさの異なる状態へ遷移をしていることがわかる。
このように、物質Aは、光によりスピンクロスオーバー現象を起こす物質であることが好ましい。それは、一般に、(1)架橋構造や集積構造を取らなかったり、磁気モーメント変化を担う金属原子の種類を減らしたりすることができるなど構造を単純にすることができる、(2)保持時間を長くすることが容易である、などの利点があるからである。物質Aとしては、保持時間を長く保つことが容易であるという点から、Fe(II)イオンを含む物質であることが好ましい。このような、Fe(II)を含む物質Aとしては、例えば、[Fe(II)(ptz)6](BF42などのptz又はptzの置換体がFe
(II)イオンに配位した物質、[Fe(II)trz]SO3、[Fe(II)(4−N
2trz)3](R−SO32(Rは、p−CH364基等、炭化水素基又は炭化水素基の置換体)等のtrz又はtrzの置換体がFe(II)に配位した物質、[Fe(II)L(CN)2]等、大環状Schiff塩基がFe(II)イオンに配位した物質、等が挙げられる。
Fe(II)イオンを含む物質Aを記録層に用いた場合、通常、Fe(II)イオンの第1の量子状態の対称性は11、第2の量子状態の対称性は52である。
このような物質Aの合成法については、公知の方法を用いることができる。例えば、Synthetic Metals,103,p.2157(1999)等を参照すればよい。
その他、物質Aとしては、スピンクロスオーバー現象を起こす物質の他に、第1の光の照射により、配位子から金属イオンなどへの電荷移動が生じることで、あるサイト(例えば金属イオン)の持つスピン量子数が変化し、結果として分子の磁気モーメントが変化する物質(光誘起原子価異性(Redox異性)物質)、例えば、Co(II)(3,5−DBSQ)(3,5−DBCat)(NN)(ここで、「3,5−DBSQ」は、「3,5−di−tert−butylsemiquinone」を表し、「3,5−DBCat」は「3,5−di−tert−butylcatecholato」を表し、「NN」は、「1,10−phenanthorolin又はN,N,N’,N’−tetramethyl−ethylenediamine」を表す。以下同様である。)等も用いることができる。
また、物質Aとしては、上で挙げた物質に水やアルコールなどが結合した物質、例えば、[Fe(4−NH2trz)3](p−CH364SO32・2H2O、[Fe(III)(5−Br−qsal)2]NO3・2CH3OH、[Fe(L)(CN)2]・H2O等
であっても良い。
物質Aの記録層中の含有量は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。また、記録層中での物質Aの上限は、理想的には、100重量%である。
本発明における記録層の膜厚は、通常10nm以上、好ましくは20nm以上とする。一方、記録層の膜厚は、通常20μm以下、好ましくは1μm以下とする。上記膜厚範囲内とすれば、信号のSN比を大きくすることができ、十分な読み取り特性が得やすくなる。
記録層には、物質Aの他に、特性を損なわない範囲で、他の物質が含まれていても良い。例えば、記録層の成膜性や塗膜性を高めるために、記録層内に、ワックス、高級脂肪酸、アミド類(例えば、オレイルアミド等。)、バインダー(例えば、セルロース、ポリスチレン等。)、可塑剤、油剤、分散剤及びその他の添加剤を適宜混合しても良い。これら物質の記録層中での含有量は、特に制限されないものの、通常0.1重量%以上、10重量%以下とする。
また、本発明には単一種の物質Aを用いても良く、複数種の物質Aを用いても良い。むしろ、信号のSN比を挙げる観点からは、複数種類の物質Aを用いたほうが好ましい場合もある。
記録層の形成方法は、
(1)浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ビードコーティング、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、グラビアコーティング、ディッピング等の塗布法
(2)蒸着法、スパッタ法(PVD法)、CVD法等の気相法
等、種々の方法を任意に用いることができる。中でも、塗布法を用いることが好ましい。高価な設備を用いる必要がなく、大面積を高速に処理することが可能だからである。塗布法を用いる場合には、物質Aを溶媒中に溶解又は分散した溶液を基板上に塗布し、乾燥することによって形成すれば良い。
溶媒としては、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、ハロゲン化炭化水素系、芳香族系、脂肪族炭化水素系、フッ素系等を用いることができる。ここで、記録層に用いる物質Aを有機物や有機金属錯体とすれば、溶媒に溶解させやすくなる。このため、塗布プロセスにより膜を形成すること容易となる。
また、乾燥は、溶媒を蒸発させるような温度範囲であり、かつ、物質Aをはじめ記録層中に含有させる物質に対して熱ダメージを与えないような温度範囲であればよい。このような温度は、用いる溶媒、物質Aの種類、記録層に用いる物質A以外の材料等を考慮して決めればよい。乾燥時間も、乾燥温度と同様、溶媒の乾燥が十分となるような時間であればよく、特に限定されない。
物質Aを含有する記録層に照射する第1の光は、物質Aの磁気モーメントを変化させるような光であればよく、特に制限はないが、波長分布が小さい、効率的な書き込みを行う、等の点から、レーザー光を用いることが好ましい。特に、物質Aは、光の吸収自体で量子状態の変化を起こさせる(光エネルギーから変換された熱が主要因ではない。)原理を用いているため、効率的な吸収を起こす特定波長に限定されたレーザー光と組み合わせることで顕著な書き込み効果が得られる。そのため、レーザー光を用いることにより、効果的に高速書き込みが実現される。
第1の光に用いられるレーザーの発光波長は、用いる物質Aの構造や性質に依存して様々考えられる。但し、光記録媒体としての実用化を考える場合、第1の光に用いられるレーザー光の発光波長は、通常300nm以上、好ましくは350nm以上、より好ましくは450nm以上とする。一方、第1の光に用いられるレーザー光の発光波長は、通常800nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは480nm以下とする。
これは、以下の理由による。
(1)物質Aには、この波長域のエネルギーを有するフォトンの吸収過程が起こることにより第1の量子状態から第2の量子状態への変化が起きるものが多い。
(2)短波長のレーザーを用いる方が、より小さな書き込みスポットを得ることができる。
ただし、Fe(II)を含む物質Aを用いる場合については、540nm以上560nm以下の発光波長を有するレーザーからの光を第1の光として用いることが好ましい。これは以下の理由による。Fe(II)の好ましい第1の量子状態は11、第2の量子状態は52である。ここで、11の量子状態から52の量子状態への遷移を効率的に起こさせるためには、最初に第1の量子状態である11から一旦11の量子状態へ遷移させる必要がある。この時、自身の吸収過程により11から一旦11の量子状態への遷移を引き起こすフォトンの波長が550nmである。そのため、その光が第1の光に用いられるレーザーの発光波長は、540nm以上560nm以下であることが好ましい。
一方、物質Aを含有する記録層に照射する第2の光は、物質Aの磁気モーメントの変化による記録層の透過率及び/又は反射率の変化を検出できるような光であれば、特に制限はない。しかし、波長分布が小さい、効率的な読み取りができる、等の点から、第2の光は、レーザー光であることが好ましい。第2の光にレーザー光を用いる場合は、レーザー光の波長は、記録層の透過率及び/又は反射率の変化が最も大きくなるような波長を選べばよい。このような波長は、物質Aの構造や性質に依存して様々考えられる。その際、以下のような事情が考慮される。
(1)発光波長の短いレーザー光を用いた方が、読み取り時の照射スポットが小さくなるため、高分解能の読み取りが可能になる。
(2)第1の量子状態と第2の量子状態で物質Aの吸収値の変化量が大きい波長を有するレーザー光を第2の光に用いた方が、読み取りの際のSN比が向上する。
(3)好ましいレーザーの態様の1つである半導体レーザーを第2の光の光源として用いる場合、発光波長が400nm近傍のものの発光効率が高くなる傾向にある。
また、第2の光に用いられるレーザーの発光波長は、第1の光に用いられるレーザー光の発光波長と同一の波長を用いてもよいが、記録・再生を良好に行う観点から、異なる波長を用いることが好ましい。
以上のような事情から、光記録媒体としての実用化を考える場合、第2の光の光源として用いられるレーザーの発光波長は、通常350nm以上、また、通常600nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは480nm以下とする。
また、第2の光による記録層からの情報の読み出しは、記録層の透過率及び/又は反射率を利用するが、信号のSN比を大きく取るためには、透過率及び反射率を複合して用いることが好ましい。一方、CDやDVD等で用いられている汎用の光ピックアップを用いるという点からは、反射率を利用することが好ましい。
(B)光記録媒体の形状
本発明に用いる光記録媒体の形態は特に制限されないが、円盤形状であることが好ましい。光記録媒体を円盤形状にすることで、書き込みの高速化をより効果的に行うことができるからである。これは、以下の事情による。媒体を円盤状にすることで、媒体を高速で回転させながら書き込むこと(以下、「高速回転書き込み」という場合がある。)が可能となる。物質Aを記録層に用いることで書き込みの高速化を図っても、光記録媒体側において高速回転書き込みができないと、光記録媒体側の事情に由来した回転速度(遅くなってしまった速度)によって、記録速度が制限されるからである。
つまり、本発明においては、物質Aを記録層に用い、かつ光記録媒体の形状を円盤形状とすれば、高速書き込みの効果が顕著に得られることになる。
(C)光記録媒体の具体例
次に、本発明の光記録媒体の具体例について説明する。図1は、本発明の光記録媒体5の一実施例を示す模式的断面図である。図1をみてわかるように、基板1の上に、下引き層2、記録層3、反射層4が形成されている。
<記録層3>
上記(A)で説明した通りである。
<基板1>
本発明の光記録媒体5は、基板1を用いることが好ましい。基板1は、記録層3等が単体ではその薄さのために、光記録媒体としての形状を十分に保持できない部位の形状を支持する機能を持つ。基板1は、次の性質を有していることが好ましい。
(1)書き込み光、読み取りのための参照光、可視光の波長領域に対する透過率が高い。(2)光学的に複屈折が無い。
(3)硬くて傷が付きにくい
(4)剛性が高い。
(5)軽量である。
(6)成形が容易である。
基板1としては、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリオレフィン、PVC、ポリメチルメタクリレート、等の樹脂、ガラス板、セラミックス板等などを用いることができる。このうち、軽量性、成形の容易さ、剛性の観点から樹脂を用いることが好ましく、特にポリカーボネートやポリメチルメタクリレートを用いることが好ましく、ポリカーボネートを用いることが最も好ましい。
基板1の厚さは、通常100μm以上とする。基板1の厚さを上記範囲内とすれば、剛性の確保が十分となり、光記録媒体5を高速回転して記録再生を行う際等にフラッタリングの影響を抑制することができる。ここで、高速回転とは、100rpm以上の回転速度を指すこととする。一方、基板1の厚さは、通常5cm以下とする。基板1の厚さを上記範囲内とすれば、記録再生の駆動をスムーズに行うことができるようになる。
基板1の形状には特に制限はないが、円盤状であることが好ましい。基板1を円盤状にすることで、光記録媒体5を円盤状にすることが容易となる。光記録媒体5を円盤状にすることで、高速回転して記録再生を行うことが容易となるからである。
基板1の表面にトラッキング用の溝やプレピット等が形成されていてもよい。
基板1は、ポリカーボネート等の樹脂を用いる場合には、射出成型によって製造されるのが一般的である。
<反射層4>
本発明の光記録媒体5は、反射層4を有することが好ましい。反射層4を設けることにより、書き込み光が効率的に用いられたり、光記録媒体5の反射光に対する反射率が向上したりする等の効果があるからである。つまり、反射層4を設けることにより、記録された信号のSN比を大きくすることができる。
反射層4の材料としては、例えば、Zn、Cu、S、Ni、Cr、Ge、Se、Cd、Ag、Al、Au等の金属やそれらの合金;シアニン染料、メチン染料等の金属光沢を有する有機物;を用いることができる。CDやDVD等で用いられ、実使用に対する実績を有し、かつ、記録信号のSN比を上げる観点から好ましいのは、Zn、Cu、S、Ni、Cr、Ge、Se、Cd、Ag、Al、Au等の金属やそれらの合金である。このような金属又は合金としては、Cu、Al、Ag、Auの単体又はこれら元素と他の元素との合金を上げることができる。
反射層4に合金を用いる場合には、主体となる金属(例えば、Cu、Al、Ag、Au)の含有量は、通常90原子%以上、より好ましくは95原子%以上とする。そして、反射層4の熱伝導率、反射特性、耐腐食性等を向上させるために、主体と成る金属以外の材料を含有させればよい。もちろん、反射層4を純金属とする場合は、主体となる金属の含有量は理想的には100原子%となる。
反射層4の膜厚は、通常20nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上とする。反射層4の膜厚を上記範囲とすれば、記録された信号のSN比を確保しやすくなる。一方、反射層4の膜厚は、通常400nm以下、好ましくは300nm以下である。反射層4の膜厚を上記範囲とすれば、放熱性を確保しつつ、生産効率を良好にすることができる。
反射層4の形成方法は、
(1)浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ビードコーティング、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、グラビアコーティング、ディッピング等の塗布法、
(2)蒸着法、スパッタ法(PVD法)、CVD法等の気相法、
等、種々の方法を任意に用いることができる。反射層4は金属で形成される場合が多いために、(2)の気相法を用いることが好ましい。
<下引き層2>
接着性の向上、水またはガスなどに対する防護、記録層の保存安定性の向上、反射率の向上、溶剤からの基板1の保護およびプレグループの形成等のために、基板1と記録層3の間に下引き層2を設けても良い。
下引き層2としては、アイオノマー樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴム等の高分子材料;シランカップリング剤;SiO2、MgF2、SiO、TiO2、ZnO、TiN、SiN等の無機化合物;紫外線硬化樹脂、熱硬化性
樹脂、熱可塑性樹脂等;などを用いることができる。
接着性の向上という目的に対しては、アイオノマー樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴム等の高分子材料を用いることが好ましい。
溶剤からの基板1の保護およびプレグループの形成という目的のためには、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることが好ましい。
また、記録信号のSN比を制御する観点から、下引き層2中には、物質Aが含有されていてもよい。下引き層2中に物質Aを含有させる場合には、記録層3単独で用いた場合の記録信号のSN比を測定しておき、下引き層2中に物質Aを含有させて上記記録層3単独での記録信号のSN比を適正な範囲に制御すればよい。下引き層2中に物質Aを含有させる場合には、下引き層2中の物質Aの含有量は、通常、0.1重量%以上、50重量%以下とする。
さらに、下引き層2には、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、及び可塑剤などが含有されていてもよい。これら、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、及び可塑剤の含有量は、合計で0.1重量%以上、10重量%以下とするのが一般的である。
下引き層2の膜厚は、通常50Å以上、好ましくは200Å以上とする。下引き層2の膜厚を上記範囲内とすれば、接着性を良好に確保することができるようになる。一方、下引き層2の膜厚は、通常100μm以下、好ましくは30μm以下とする。下引き層2の膜厚を上記範囲内とすれば、接着性を確保しつつも生産効率を上げることができる。
下引き層2の形成方法は、
(1)浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ビードコーティング、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、グラビアコーティング、ディッピング等の塗布法、
(2) 蒸着法、スパッタ法(PVD法)、CVD法等の気相法、
等、種々の方法を任意に用いることができる。中でも、塗布法を用いることが好ましい。高価な設備を用いる必要がなく、大面積を高速に処理することが可能だからである。
塗布法を用いる場合には、下引き層2に用いる物質を溶媒中に溶解又は分散した溶液を基板上に塗布、乾燥することによって形成すれば良い。溶媒としては、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、ハロゲン化炭化水素系、芳香族系、脂肪族炭化水素系、フッ素系等を用いることができる。
乾燥は、溶媒を蒸発させるような温度範囲であり、かつ、下引き層2に含有される物質に対して熱ダメージを与えないような温度範囲であればよい。このような温度は、用いる溶媒、下引き層2に用いる材料等を考慮して決めればよい。乾燥時間も、乾燥温度と同様、溶媒の乾燥が十分となるような時間であればよく、特に限定されない。
<その他の層:保護層(図1には不図示)>
きず、ほこり、汚れなどからの保護や記録層3の保存安定性の向上および反射率の向上のために、記録層3上又は反射層4上等に保護層を設けても良い。
保護層としては、下引き層2と同様の材料を用いれば良く、アイオノマー樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴム等の高分子材料;シランカップリング剤;SiO2、MgF2、SiO、TiO2、ZnO、TiN、SiN等の無
機化合物;紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等;などを用いることができる。また、これらの材料を複数種混合して用いても良い。
また、記録信号のSN比を制御する観点から、保護層中には、物質Aが含有されていてもよい。保護層中に物質Aを含有させる場合には、記録層3単独で用いた場合の記録信号のSN比を測定しておき、保護層中に物質Aを含有させて上記記録層3単独での記録信号のSN比を適正な範囲に制御すればよい。保護層中に物質Aを含有させる場合には、保護層中の物質Aの含有量は、通常、0.1重量%以上、50重量%以下とする。
さらに、保護層には、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、及び可塑剤などが含有されていてもよい。これら、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、及び可塑剤の含有量は、合計で0.1重量%以上、10重量%以下とするのが一般的である。
保護層の膜厚は、通常10nm以上、好ましくは100nm以上とする。保護層の膜厚を上記範囲内とすれば、記録層の保護及び記録層の保存安定性の確保が容易となる。一方、保護層の膜厚は、通常100μm以下である。保護層の膜厚を上記範囲内とすれば、保護層の形成工程の時間が短くでき、保護層の均一性も良好にすることができる。
保護層の形成方法は、
(1)浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ビードコーティング、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、グラビアコーティング、ディッピング等の塗布法、
(2)蒸着法、スパッタ法(PVD法)、CVD法等の気相法、
等、種々の方法を任意に用いることができる。中でも、塗布法を用いることが好ましい。高価な設備を用いる必要がなく、大面積を高速に処理することが可能だからである。
塗布法を用いる場合には、保護層に用いる物質を溶媒中に溶解又は分散した溶液を塗布・乾燥することによって形成すれば良い。溶媒としては、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、ハロゲン化炭化水素系、芳香族系、脂肪族炭化水素系、フッ素系等を用いることができる。
乾燥は、溶媒を蒸発させるような温度範囲であり、かつ、保護層に含有される物質に対して熱ダメージを与えないような温度範囲であればよい。このような温度は、用いる溶媒、保護層に用いる材料等を考慮して決めればよい。乾燥時間も、乾燥温度と同様、溶媒の乾燥が十分となるような時間であればよく、特に限定されない。
<その他の層:接着層(図1には不図示)>
保護層と、記録層3や反射層4等の他の層との間に、接着層を介するようにしても良い。接着層としては、上記下引き層2と同様の材料、膜厚、製造方法を用いて得ることができる。
(D)光記録媒体の別の具体例
本発明の光記録媒体の別の具体例について説明する。図2は、本発明の光記録媒体25の一実施例を示す模式的断面図である。図2をみてわかるように、基板21の上に、記録層22、接着層23、保護層24が形成されている。
基板21、記録層22、接着層23、保護層24については、上記(C)で説明した通りのものを用いることができる。
なお、図2において、基板側から光を照射する場合、保護層は不透明であっても良い。
また、図2において反射層や下引き層を適宜設けてもよいことはいうまでもない。
(E)光記録媒体のさらに別の具体例
本発明による光記録媒体の別の構成としては、エアーサンドイッチ構造を挙げることができる。これは、図1、図2で示したような、同一の構成を持った光記録媒体2枚を作製し、これら2枚の光記録媒体を、記録層を内側に配置して密封した構造である。ここで、2枚の光記録媒体のうちの1枚を基板のみとすることもできる。また、保護層を介して接着した密着構造(貼り合せ構造)にしてもよい。
(F)光記録媒体の記録方法、再生方法
本発明においては、上記第1の光を記録層に照射して情報の記録を行なって、上記光記録媒体に対して情報を記録する。また、このようにして記録を行なった光記録媒体に対して、上記第2の光を記録層に照射することによって記録の再生を行うことができる。このような記録方法、再生方法について以下説明する。
<記録方法>
記録は、光記録媒体に対して書き込み光(第1の光)を照射することによって行う。書き込み光が照射されると、記録層中に含まれる物質Aを構成する原子の少なくとも1種が、書き込み光により磁気モーメントの大きさの異なる量子状態へ遷移する。原子が、第1の量子状態から、磁気モーメントの大きさの異なる第2の量子状態へ遷移しているかどうかは、Mossbauer(メスバウワー)分光により検証することができる。
ここで、第1の量子状態から第2の量子状態への変化の際に、量子状態が変化する原子に属する電子の数は不変である(スピンクロスオーバー現象)ことが好ましい。図4に、[Fe(L)(CN)2]・H2Oに波長550nmのレーザー光を照射することによりFe原子がS=0の量子状態からS=2の量子状態へ遷移する様子の、Mossbauer分光による観測結果を示す。ここで、Sは、スピンの大きさと呼ばれる物理量で、Sと巨視的な磁気モーメントの大きさが対応している(比例関係にある。)。ここで、巨視的な磁気モーメントの大きさとは、少なくとも10分子以上の分子からなる試料を、例えばSQUIDやVSM等を用いて測定する際に観測にかかる磁気モーメントの大きさのことと定義する。通常、SQUIDやVSM等を用いて測定される磁気モーメントとは、巨視的な磁気モーメントのことである。
また、物質Aがスピンクロスオーバー現象を起こす材料の場合、磁気モーメント変化は、ある電子が第1の軌道から第2の軌道へ変化することによって引き起こされるが、その際、第1軌道及び第2軌道は、d軌道であることが好ましい。
第1の光を照射して記録を行なう際に、スピン状態の転移を効率的にするため、必要に応じ記録する部位を外部の環境より低温に保っても良い。つまり、外部の環境が室温(例えば、25±5℃)である場合には、光記録媒体に対して記録を行なう際に、光記録媒体を、通常10℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは−100℃以下に保持する。一方、液体ヘリウム温度(4.2K(=−269℃))は、冷却機構という点では一つの境界点となる(冷却方法の容易さという点で一つの節目となる)温度なので、光記録媒体
は記録時に−270℃以上に保持されるのが通常である。
このように、記録する部位を外部の環境より低温に保持することによって、スピン状態の転移を効率的にすることができる。ここで、スピン状態の転移を効率的にするとは、一定の記録過程の時間において、スピン状態が転移した領域の比率を増大させることや、記録後にスピン転移した領域が時間の経過とともに他の状態(他の状態としては、例えば、転移前の状態等を挙げることができる。)に遷移してしまう確率を低下させることを指す。つまり、記録部位を外部の環境よりも低温にして記録を行うことにより、記録信号のSN比を大きくしたり、記録信号の保存安定性を向上させたりすることができるようになる。
<再生方法>
次に、読み取りの方法(再生方法)を示す。
本発明の光記録媒体において、記録された情報の読み取りは、第2の光を入射し、該光に対する光記録媒体の反射率及び/又は透過率の変化を読み取ることによって行う。すなわち、再生は以下の作用効果を用いることとなる。
第1の量子状態にある原子が存在する領域(領域A)と、書き込み過程により第2の量子状態に遷移した原子の存在する領域(領域B)では、反射率、透過率のスペクトルが異なる。そのため、読み取り光(第2の光)を入射した際に、その反射光、透過光のスペクトル分布は、領域Aと領域Bで異なることになる。そのため、例えば、ある特定波長を持つレーザー光等の読み取り光を入射させ、該特定波長の反射率に関する光記録媒体上の位置的な変化を測定する等を行えば、光記録媒体に書き込まれた記録情報を読み取ることができる。
読み取り光(第2の光)の波長は、反射率又は透過率の変化率が大きな波長を用いることが好ましい。反射率又は透過率の変化率が大きな波長は、一般に、吸収スペクトル上で第1の量子状態から第2の量子状態へ変化した際の吸収係数の変化が大きい波長となる。図3に、[Fe(ptz)6](BF42の、第1の量子状態及び第2の量子状態の吸収
スペクトルの測定結果の例を示す。なお、図3は、Chem. Phys. Lett., 124,p.543(1986)の図2を引用したものである。
図3からわかるように、例えば、記録層に[Fe(ptz)6](BF42を用いる場
合は、読み取り光の波長に関しては、波数が14.29cm-1より大きく15.23cm-1より小さい領域(すなわち、波長が640nmより大きく710nmより小さい領域)以外の領域が好ましく、16.7cm-1以上20.8cm-1以下の領域(すなわち、波長が480nm以上600nm以下の領域)がより好ましいことになる。ここで、「波数」は、「1/波長」によって定義される量である。
<記録・再生に用いる光について>
書き込み光(第1の光)、読み取り光(第2の光)の光源には、レーザーを用いることが好ましい。波長分布が小さく、効率的な書き込み、読み取りができるからである。特に、物質Aは、光の吸収自体で量子状態の変化を起こさせる(光エネルギーから変換された熱が主要因ではない。)原理を用いているため、効率的な吸収を起こす特定波長に限定されたレーザー光と組み合わせることで顕著な書き込み効果が得られる。そのため、より効果的に高速書き込みが実現される。レーザーの中でも、半導体レーザーを用いることが好ましい。記録システム(記録システムとしては、例えば、ドライブ等を挙げることができる)の中への組み込みが容易であり、短波長(600nm以下)の発光を得るのが容易であるからである。より短い波長のレーザーを用いることは、書き込みスポット及び読み取りスポットを小さくできるという点で好ましい。書き込みスポットを小さくすれば、記録の線密度を向上させ、情報量を基準とした高速記録性(同一時間内にどれだけの量の情報が書き込めるか)を良好にできる。また、読み取りスポットを小さくすることで、記録された情報ビットの読み取り分解能が向上する。よって、物質Aを用いて高速記録を図る場合、第1の光及び/又は第2の光に短い発光波長を有するレーザーの発光を用いることで、よりその効果を引き出すことができる。
第1の光に用いられるレーザーの発光波長は、通常300nm以上、好ましくは350nm以上、より好ましくは450nm以上とする。一方、第1の光に用いられるレーザーの発光波長は、通常800nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは480nm以下とする。このような波長範囲とする理由については、上記で説明した通りである。
第2の光に用いられるレーザーの発光波長は、第1の光に用いられるレーザー光の発光波長と同一の波長を用いてもよいが、記録・再生を良好に行う観点から、異なる波長を用いることが好ましい。具体的には、第2の光に用いられるレーザーの発光波長は、通常350nm以上、また、通常600nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは480nm以下とする。
<記録情報の消去>
また、本発明においては、記録情報の消去を行うこともできる。
本発明の光記録媒体においては、第2の量子状態に遷移させた領域を第1の量子状態に戻すことも可能である(つまり、記録情報の消去)。このような量子状態の変化は、熱緩和及び/又は光による遷移を用いて行えばよい。
熱緩和とは、第2の量子状態(準安定状態、記録状態)にある原子を有する記録層の部位を昇温することにより、該原子を第1の量子状態(未記録、消去状態)へ遷移させることである。この熱緩和の過程に関しては、例えば、Angew,Chem,Int.,Ed.,39(20),p.3699(2000)等に記載がある。
第2の量子状態に遷移させた領域を第1の量子状態に戻す際に用いる「光による遷移」とは、光を照射することにより、少なくとも該光の吸収過程と、場合により、それに続く光の吸収、放出過程により、原子が第2の量子状態から第1の量子状態へ遷移することである。
このように、第2の量子状態から第1の量子状態へ遷移させる操作を行うことにより、一旦書き込んだ記録情報を消去させることができる。この作用効果により、本発明の光記録媒体は、書き換え可能な光記録媒体(リライタブル媒体)として用いることもできる。熱緩和、光による遷移のうち、高速消去という点では、光による遷移を用いることが好ましい。しかしながら、書き込み速度に比べ、消去の速度に対する光記録媒体への要求水準は一般に低いため、消去に対しては、熱緩和による方法も用いることができる。
本発明の光記録媒体の一実施態様を示す模式的断面図。 本発明の光記録媒体の他の一実施態様を示す模式的断面図。 [Fe(ptz)6](BF42の、第1の量子状態及び第2の量子状態の吸収スペクトルの測定結果 [Fe(L)(CN)2]・H2O中のFe原子(Fe原子は、実際にはFeイオンとなっている。)がスピンクロスオーバー現象を起こす場合の例
符号の説明
1、21 基板
2 下引き層
3、22 記録層
4 反射層
23 接着層
24 保護層
5、25 光記録媒体

Claims (4)

  1. 記録層を有し、
    前記記録層が、第1の光により磁気モーメントの大きさが変化する物質Aを含有し、
    前記第1の光による前記物質Aの磁気モーメントの大きさの変化によって、前記記録層の第2の光に対する透過率及び/又は反射率が変化することを特徴とする光記録媒体。
  2. 前記光記録媒体がさらに反射層を有することを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  3. 請求項1又は2に記載の光記録媒体に対する情報の記録方法であって、前記第1の光を記録層に照射して情報の記録を行なうことを特徴とする光記録媒体の記録方法。
  4. 請求項1又は2に記載の光記録媒体に記録された情報の再生方法であって、前記第2の光を記録層に照射することによって記録の再生を行うことを特徴とする光記録媒体の再生方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009212164A (ja) * 2008-02-29 2009-09-17 Univ Of Tokyo 電子素子、ディスプレイ装置、記憶素子、光センサ、ガスセンサ及び電子素子製造方法

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