しかしながら、液晶の応答速度は液晶自身の温度に大きく依存し、特に低温時においては、その応答速度が大きく損なわれる。さらに、オーバーシュート駆動は、必要以上に行うと必要以上に応答するため、表示画像が不自然な見え方をしてしまう。このため、温度によりオーバーシュート駆動の出力レベルを切り換えることが必須となっている。
この結果、液晶表示装置では、複数の温度に対する階調補正データを準備しなければならない。それに加えて、近年の液晶表示装置の大型化に伴い液晶表示装置の表示領域内における液晶自身の温度のバラツキがさらに問題となってきている。これまで、液晶表示装置のオーバーシュート駆動は周囲温度により画一的に切り換えてきているのが現状であり、特に、表示領域内の温度バラツキに対する補正が行われることはなかった。
また、オーバーシュート駆動とは関係なく、走査信号線毎に駆動できるのが好ましい。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、走査信号線毎に駆動することができ、液晶表示装置の表示領域内における温度バラツキに対しても最適なオーバーシュート駆動を行うことができる液晶表示装置及びその駆動装置、並びに液晶表示装置の駆動方法を提供するものである。
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、複数の走査信号線と、映像信号が階調表示に適したデータ信号として供給される複数のデータ信号線と、上記走査信号線とデータ信号線との交点に対応してスイッチ部を介して接続された画素をマトリクス状に配置した表示部とを有する液晶表示装置において、上記データ信号を生成する複数のデータ生成部と、該複数のデータ生成部を格納するデータ生成部格納手段と、上記走査信号線単位で、上記データ生成部格納手段に格納された複数のデータ生成部から1つのデータ生成部を選択するデータ生成部選択手段とが設けられていることを特徴としている。
また、本発明の液晶表示装置の駆動方法は、上記課題を解決するために、複数の走査信号線と、映像信号が階調表示に適したデータ信号として供給される複数のデータ信号線と、上記走査信号線とデータ信号線との交点に対応してスイッチ部を介して接続された画素をマトリクス状に配置した表示部とを有する液晶表示装置の駆動方法において、上記データ信号を生成する複数のデータ生成部を用意し、上記走査信号線単位で、上記複数のデータ生成部から1つのデータ生成部を切り換え選択したデータ信号を画素に印加することを特徴としている。
上記の発明によれば、複数のデータ生成部を用意し、上記走査信号線単位で、上記複数のデータ生成部から1つのデータ生成部を切り換え選択したデータ信号を画素に印加する。したがって、本発明では、駆動のためのデータ生成部を走査信号線毎に切り替えることができる。
例えば、ある表示画面領域のうち、上下部分のみを黒で表示する場合を考えると、従来では、そのような映像信号をデータ信号として生成して入力する。しかし、本発明では、そのような表示を行なうためには、1つのデータ生成部の出力を固定(黒レベル)にすることによって達成することができる。
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、複数の走査信号線と、映像信号が階調表示に適したデータ信号として供給される複数のデータ信号線と、上記走査信号線とデータ信号線との交点に対応してスイッチ部を介して接続された画素をマトリクス状に配置した表示部とを有する液晶表示装置において、上記映像信号と該映像信号の少なくとも1フレーム前の映像信号とに基いてデータ信号を生成するデータ生成部を複数有し、かつ各データ生成部は映像信号と該映像信号の少なくとも1フレーム前の映像信号とのそれぞれ異なる出力レベルに基いてデータ信号を生成すると共に、さらに、上記複数のデータ生成部を格納するデータ生成部格納手段と、上記走査信号線単位で、上記データ生成部格納手段に格納された複数のデータ生成部から1つのデータ生成部を選択するデータ生成部選択手段とが設けられていることを特徴としている。
また、本発明の液晶表示装置の駆動方法は、上記課題を解決するために、複数の走査信号線と、映像信号が階調表示に適したデータ信号として供給される複数のデータ信号線と、上記走査信号線とデータ信号線との交点に対応してスイッチ部を介して接続された画素をマトリクス状に配置した表示部とを有する液晶表示装置の駆動方法において、上記映像信号と該映像信号の少なくとも1フレーム前の映像信号とを基にデータ信号を生成するためのデータ生成部を複数用意し、かつ各データ生成部は映像信号と該映像信号の少なくとも1フレーム前の映像信号とのそれぞれ異なる出力レベルに基いてデータ信号を生成すると共に、上記走査信号線単位で、上記複数のデータ生成部から1つのデータ生成部を切り換え選択したデータ信号を画素に印加することを特徴としている。
上記の発明によれば、映像信号と該映像信号の少なくとも1フレーム前の映像信号とを基にデータ信号を生成するためのデータ生成部を複数用意する。ここで、各データ生成部は映像信号と該映像信号の少なくとも1フレーム前の映像信号とのそれぞれ異なる出力レベルに基いてデータ信号を生成する。このデータ生成部が、複数、データ生成部格納手段に用意される。そして、データ生成部選択手段によって、上記走査信号線単位で、上記データ生成部格納手段に格納された複数のデータ生成部から1つのデータ生成部を選択する。
したがって、従来の液晶表示装置で行っていたオーバーシュート駆動よりも走査信号線単位でのオーバーシュート駆動の最適化が図れるので、より液晶の特性に応じた応答速度補正が可能となる。
その結果、液晶表示装置の表示領域内における温度バラツキに対しても最適なオーバーシュート駆動を行うことができる液晶表示装置、及び液晶表示装置の駆動方法を提供することができる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記走査信号線間において、互いに異なるデータ生成部にて生成されたデータ信号が出力されることを特徴としている。
上記の発明によれば、走査信号線間において、互いに異なるデータ生成部にて生成されたデータ信号が出力されるので、走査信号線間でデータ生成部を切り換え可能となっている。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記データ生成部には、入力データを加工せずに出力されるものが含まれていることを特徴としている。
上記の発明によれば、データ生成部には、入力データを加工せずに出力されるものが含まれているので、オーバーシュート駆動のデータ信号を出力することが可能となる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記データ生成部は、複数の走査信号線毎に切り換えられていることを特徴としている。
上記の発明によれば、データ生成部は、複数の走査信号線毎に切り換えられている。したがって、例えば、表示部の領域単位でデータ生成部を切り換えることができる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記データ生成部は、前記表示部の表示動作中に変化することを特徴としている。
上記の発明によれば、データ生成部は、表示部の表示動作中に変更可能となっているので、例えば、表示領域の温度上昇に伴ってデータ生成部を変更することができる。したがって、温度変化によって変化する液晶の応答特性に対応した動作を補償することができる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記データ生成部は、映像信号との出力レベル比較において装置本体の電源起動時から徐々に小さくなるように選択されることを特徴としている。
上記の発明によれば、データ生成部は、映像信号との出力レベル比較において装置本体の電源起動時から徐々に小さくなるように選択される。したがって、特に、低温時の温度変化によって変化し易い液晶の応答特性に対応した動作を補償することができる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記データ生成部は、前記装置本体の電源起動からの時間に応じて切り換えられることを特徴としている。
すなわち、表示部の温度は、前記装置本体の電源起動からの時間に応じて上昇するので、オーバーシュート駆動のデータ生成部も温度上昇に伴い、つまり時間の経過に伴って、小さい値に切り換えるのが好ましい。
そこで、本発明によれば、データ生成部は、前記装置本体の電源起動からの時間に応じて切り換えられる。
この結果、特に、液晶の温度検出を必要としないので、構成を簡略化することできる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記データ生成部選択手段は、前記走査信号線を示す個別番号と、その走査信号線を示す個別番号に対応する前記装置本体の電源起動からの時間に応じたデータ生成部の選択肢とを組み合わせたアドレスからなる記憶手段からなっていることを特徴としている。
上記の発明によれば、データ生成部選択手段は、前記走査信号線を示す個別番号と、その走査信号線を示す個別番号に対応する前記装置本体の電源起動からの時間に応じたデータ生成部の選択肢とを組み合わせたアドレスからなる記憶手段からなっている。
したがって、データ生成部選択手段を記憶手段にて好適に構成することができる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記データ生成部は、前記表示部の温度により切り換えられることを特徴としている。
上記の発明によれば、データ生成部は、表示部の温度により切り換えられる。したがって、実際の液晶の温度検出により応答速度を補償するので、正確な応答速度補償を実現することができる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記データ生成部は、温度センサによって得られた温度情報に基づいて切り換えられることを特徴としている。
上記の発明によれば、データ生成部は、温度センサによって得られた温度情報に基づいて切り換えられる。したがって、温度センサからの温度データに基づき、直接、液晶の応答速度補償を行うことができるので、より正確な応答速度補償を実現することができる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記データ生成部選択手段は、周囲温度に対応する前記データ生成部をルックアップテーブルにして格納していることを特徴としている。
上記の発明によれば、データ生成部選択手段は、周囲温度に対応するデータ生成部をルックアップテーブルにして格納しているので、ルックアップテーブルにて種々の機種に対し、同一の装置設計にて対応可能であるので、コスト的に有利である。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記温度センサは、前記表示部の薄膜トランジスタ基板上に設けられていることを特徴としている。
上記の発明によれば、温度センサは、表示部の薄膜トランジスタ基板上に設けられている。
すなわち、温度センサを後付けすると温度センサが必ずしも正確な温度を測定できない場合があるが、上記の構成により、温度センサは薄膜トランジスタ基板上に作りこんであるため、温度測定を正確に行うことができる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記温度センサは、前記表示部における表示領域の列方向に沿って複数個配設されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、温度センサは、前記表示部における表示領域の列方向に沿って複数個配設されている。すなわち、液晶の表示画面における温度分布は液晶表示装置を立てて設置する場合において、垂直方向に温度分布が推移する。したがって、そのような使用状況に応じた温度センサの実装を行うことによって、効率的な温度データの抽出が可能となる。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記温度センサにおける温度検出信号の伝送は、前記表示部に配設されている予備データ配線を用いて行われていることを特徴としている。
上記の発明によれば、温度センサにおける温度検出信号の伝送は、前記表示部に配設されている予備データ配線を用いて行われている。したがって、温度センサの信号出力用に対して、液晶表示装置に一般的に設けられている予備データ配線を使用することによって、新たな配線を必要としないため、表示部の大きな設計変更を行うことなく実現できるので、コストメリットがある。
また、本発明の液晶表示装置は、上記記載の液晶表示装置において、前記データ生成部選択手段は、表示部の複数の温度に対応する前記データ生成部をルックアップテーブルにして格納していることを特徴としている。
上記の発明によれば、データ生成部選択手段は、表示部の複数の温度に対応する前記データ生成部をルックアップテーブルにして格納している。
したがって、複数の走査信号線に対する表示部の複数の温度に対して効率よくデータ生成部の切り換えが可能となる。
また、本発明の液晶表示装置の駆動装置は、上記課題を解決するために、前記記載の液晶表示装置を駆動することを特徴としている。
上記の発明によれば、従来の液晶表示装置で行っていたオーバーシュート駆動よりも走査信号線単位でのオーバーシュート駆動の最適化が図れるので、より液晶の特性に応じた応答速度補正が可能となる。
したがって、液晶表示装置の表示領域内における温度バラツキに対しても最適なオーバーシュート駆動を行うことができる液晶表示装置の駆動装置を提供することができる。
また、本発明の液晶表示装置の駆動方法は、上記記載の液晶表示装置の駆動方法において、前記映像信号とデータ生成部により生成されるデータ信号との出力レベルの差は、液晶表示装置が設置された状態における垂直方向の表示部の上側領域及び中央領域に比べて下側領域が最大となることを特徴としている。
上記の発明によれば、映像信号とデータ生成部により生成されるデータ信号との出力レベルの差は、液晶表示装置が設置された状態における垂直方向の表示部の上側領域及び中央領域に比べて下側領域が最大となる。
したがって、表示部の垂直方向の下側領域は、表示部の上側領域及び中央領域に比べて温度上昇が遅く、温度が低いので、映像信号とデータ生成部により生成されるデータ信号との出力レベルの差を下側領域が最大となるようにしておくことによって、下側領域においても、適切に表示することができる。
本発明では、複数のデータ生成部を用意し、上記走査信号線単位で、上記複数のデータ生成部から1つのデータ生成部を切り換え選択したデータ信号を画素に印加するので、駆動のためのデータ生成部を走査信号線毎に切り替えることができるという効果を奏する。
また、本発明では、映像信号と該映像信号の少なくとも1フレーム前の映像信号とに基いてデータ信号を生成するデータ生成部を複数有し、かつ各データ生成部は映像信号と該映像信号の少なくとも1フレーム前の映像信号とのそれぞれ異なる出力レベルに基いてデータ信号を生成すると共に、さらに、上記複数のデータ生成部を格納するデータ生成部格納手段と、上記走査信号線単位で、上記データ生成部格納手段に格納された複数のデータ生成部から1つのデータ生成部を選択するデータ生成部選択手段とが設けられている。
それゆえ、従来の液晶表示装置で行っていたオーバーシュート駆動よりも走査信号線単位でのオーバーシュート駆動の最適化が図れるので、より液晶の特性に応じた応答速度補正が可能となる。
その結果、液晶表示装置の表示領域内における温度バラツキに対しても最適なオーバーシュート駆動を行うことができる液晶表示装置、及び液晶表示装置の駆動方法を提供することができるという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1ないし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施の形態のアクティブマトリクス型の表示装置としての液晶表示装置1は、図2に示すように、表示部としての表示パネル2と、走査信号を出力する走査信号線駆動部3及び映像信号であるデータ信号を印加するデータ信号線駆動手段としてのデータ信号線駆動部4とから構成されている。上記表示パネル2は、例えば、上下一対の相互に平行なガラス基板と、両ガラス基板の外方表面にそれぞれ形成される偏光板と、上記各ガラス基板の内方表面に形成される透明電極と、上記透明電極上に形成される配向膜と、両ガラス基板の外周部を気密に封止するシール樹脂と、上記ガラス基板及びシール樹脂によって形成された空間内に封入される液晶とを備えている。
上記透明電極は、例えば、上側基板上では共通に形成されており、これに対して下側基板上では、各画素に対応してマトリクス状に配列されて形成されている。
上記下側基板上には、一方向に平行する多数のデータ信号線5と、このデータ信号線5に直交する多数の走査信号線6とが平行して設けられている。データ信号線5と走査信号線6とは、電気的に絶縁した状態で交差している。データ信号線5及び走査信号線6に囲まれた各領域には、画素電極7がそれぞれ設けられている。この画素電極7には、スイッチング部としてのTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)8が接続されている。
上記データ信号線5は、信号線端子5aを介して、データ信号線駆動部4と接続されており、このデータ信号線5にはデータ信号が印加される。一方、上記走査信号線6は、走査線端子6aを介して、走査信号線駆動部3と接続されており、この走査信号線6には走査信号が印加される。
上記TFT8は、図3に示すように、ガラス基板21上に、ゲート電極9、ゲート絶縁膜22、半導体層23、チャネル保護層24及びソース電極10、ドレイン電極11となるn+−Si層がこの順に積層される構造を有している。TFT8のゲート電極9は、図2に示すように、走査信号線6に接続され、ソース電極10はデータ信号線5に接続されている。また、ドレイン電極11は、図3に示すように、接続電極25と接続されており、この接続電極25を介して上記画素電極7と接続されている。
上記画素電極7は、隣り合うデータ信号線5と隣り合う走査信号線6とで囲まれた領域に配置されている。この画素電極7は、TFT8、走査信号線6及びデータ信号線5が形成されている面との間に層間絶縁膜26を介在させることにより、その周端部がデータ信号線5及び走査信号線6とオーバーラップしている。そして、この画素電極7と接続電極25とは、層間絶縁膜26に形成されたコンタクトホール27を介して接続されている。
さらに、上記ガラス基板21の上には、補助容量配線13が、走査配線1と平行に、かつ隣り合う走査信号線6の間に配置されている。この補助容量配線13は、全画素電極7に共通して設けられている。また、補助容量配線13とコンタクトホール27との間には、補助容量12が形成されている。
上記補助容量配線13は、図2に示すように、すべて短絡されており、補助容量配線端子13aを介して、上記下側基板に接続されている。
上記構成のアクティブマトリクス型の液晶表示装置1では、走査信号線6からの走査信号によりそれぞれの走査信号線6上にあるTFT8のON・OFFが制御される。そして、TFT8がON状態のとき、データ信号線5にて入力されるデータ信号が画素電極7及び補助容量12に入力し、画素電極7と、上側基板である対向基板側の対向電極とそれらの間に狭持される液晶とからなる液晶容量にデータ信号が書き込まれると共に、補助容量12にもデータ信号が書き込まれる。一方、TFT8がOFF状態のとき、データ信号線5からのデータ信号の画素電極7及び補助容量12への入力が阻止され、液晶容量と補助容量12に書き込まれたデータ信号が保持される。
ところで、本実施の形態の液晶表示装置1では、図1(a)に示すように、この液晶表示装置1を駆動するための駆動装置50を有している。
上記駆動装置50は、同図(a)に示すように、前記走査信号線駆動部3及びデータ信号線駆動部4の他、コントローラ51、画像メモリ52、データ生成部選択手段としてのデータ生成部切換用メモリ53、及びデータ生成部格納手段としてのデータ生成部格納部54を備えている。
上記データ生成部切換用メモリ53は、本実施の形態では、液晶表示装置1が電源オンした状態からの表示パネル2における液晶表示領域の面内温度の温度推移のバラツキ情報を記憶している。
また、データ生成部格納部54は、例えば、4個等の複数のデータ生成部A〜Dを備えている。このデータ生成部A〜Dは、入力される映像信号(以下「画像信号」という)と画像メモリ52から得られる画像信号の1フレーム前の画像信号とを利用し、表示すべきデータ信号を演算により生成する部分であり、その演算式が4種類からなっていることを示している。また、データ生成部A〜Dにより生成されるデータ信号は、基本的には画像信号の変化分をやや強調するような値に設定されている。そして、データ信号はデータ信号線駆動部4に出力されるようになっている。すなわち、本実施の形態の駆動装置50は、基本的にオーバーシュート駆動(以下、オーバーシュート駆動」という」を採用している。したがって、本実施の形態では、その大きさの程度つまり出力レベルをデータ生成部A〜Dにて決定するものとなっている。
このように、本実施の形態では、データ生成部切換用メモリ53に電源オンした状態からの表示パネル2における液晶表示領域の面内温度の温度推移のバラツキ情報を記憶させ、その記憶された液晶表示領域における面内の温度推移情報に基づいてデータ生成部格納部54中のオーバーシュート駆動のデータ生成部A〜Dを走査信号線毎に選択するようになっている。
通常、液晶の応答速度は低温時に遅いことが知られている。このため、電源投入時が一番条件の悪いところであり、このときに、最も大きくオーバーシュート駆動するためには、データ生成部A〜Dのうち、最もオーバーシュート値が大きく得られるデータ生成部A〜Dを選択するようにデータ生成部切換用メモリ53の初期値を設定しておく必要がある。
この場合、上記液晶表示領域における面内の温度推移情報をデータ生成部A〜Dとして出力するために、液晶表示装置1にタイマ機能を備えておくことができる。すなわち、液晶表示装置1のON時間が長くなると、それに伴って液晶表示領域における面内の温度も上昇する。したがって、電源起動時にタイマ55を動作させ、予め設定した時間(液晶温度)に達したときに、タイマの出力データを、走査信号線6を示すアドレスの上位ビットとすることによって、予め記憶させておいた走査信号線6を示すメモリのアドレスに対するオーバーシュート駆動のデータ生成部A〜Dの切り換えを走査信号毎に行うことが可能となる。液晶の温度がある程度一定の温度に上がればオーバーシュート駆動のデータ生成部A〜Dはその値の小さいものが選択され、或いは不要になる。
具体的には、データ生成部切換用メモリ53の出力はデータ生成部A〜Dの種類を選定するために利用し、その切り換えを走査信号毎に行うために走査信号線6の番号をデータ生成部切換用メモリ53のアドレスとし、電源オンからの液晶の温度上昇をタイマにて管理し、かつタイマの出力データもデータ生成部切換用メモリ53のアドレスの一部として利用する。
例えば、図1(b)に示すように、データ生成部切換用メモリ53は、アドレス番号が「00001」から「n」まで存在する。そして、このアドレス番号に対応して、走査信号線6の番号が「1」から「N」まで設けられている。さらに、各アドレスには、データ生成部選択肢を示す番号が設定されるようになっている。このデータ生成部選択肢は、経過時間に伴って、変更される。
今、データ生成部A〜Dは、データ生成部Dが最も大きい値になっているとする。このとき、走査信号線6の番号が「K」までは、例えば20分毎に、データ生成部切換用メモリ53におけるアドレスが「4」を示す「100」から「3」を示す「011」、「2」を示す「010」、「1」を示す「001」と切り換っていく。これにより、データ生成部切換用メモリ53におけるそのアドレスに応じたデータ生成部A〜Dが選択される。例えば、アドレスが「k」のときは、データ生成部選択肢が「011」であるからデータ生成部Cが選択される。そして、さらに、20分経過するごとにデータ生成部選択肢が「010」、「001」に移行する。また、本実施の形態では、例えば、データ生成部選択肢が「001」の次は、「000」に繰り上がる。このときには、データ生成部A〜Dを設定することなく、表示すべき階調データの信号がそのままデータ信号線駆動部4に出力されるようになっている。
なお、走査信号線番号「N」は表示パネル2における液晶表示領域の最下部を示しており、この液晶表示領域の最下部からその近傍では、例えば30分経過する毎に、データ生成部選択肢を繰り上げていくようになっている。これは、実施の形態3で説明するように、液晶表示領域の下部は温度上昇が遅いので、データ生成部選択肢の繰り上げ速度を遅くしているものである。これにより、走査信号線6によって、異なるデータ生成部A〜Dを使用していることになる。
また、全走査信号線6についてアドレス化する必要は必ずしもなく、必要に応じて間引きしてもよい。つまり、複数の走査信号線6毎に切り換えるようにアドレス指定してもよい。
このようにすれば、液晶表示装置1における液晶表示領域の温度バラツキに影響を受けず、また予め予測している温度に達した頃、つまり電源オンから所定の時間経過後、データ生成部A〜Dを切り換えるようにすることが可能である。このとき、データ生成部切換用メモリ53へ記憶すべき情報は、液晶表示装置1の検査段階で実測により求めておき、それに応じた値を予めデータ生成部切換用メモリ53に記憶しておけば上記動作メカニズムである程度の所望した結果を得ることができる。
このように、本実施の形態の液晶表示装置1及びその駆動装置50、並びに液晶表示装置1の駆動方法では、複数のデータ生成部A〜Dを用意し、走査信号線6単位で、複数のデータ生成部A〜Dから1つのデータ生成部を切り換え選択したデータ信号を画素に印加する。したがって、本実施の形態では、駆動のためのデータ生成部A〜Dを走査信号線6毎に切り替えることができる。
例えば、ある表示画面領域のうち、上下部分のみを黒で表示する場合を考えると、従来では、そのような映像信号をデータ信号として生成して入力する。しかし、本実施の形態では、そのような表示を行なうためには、1つのデータ生成部の出力を固定(黒レベル)にすることによって達成することができる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1及びその駆動装置50、並びに液晶表示装置1の駆動方法では、映像信号と該映像信号の少なくとも1フレーム前の映像信号とを基にデータ信号を生成するためのデータ生成部を複数用意する。ここで、各データ生成部A〜Dは映像信号と該映像信号の少なくとも1フレーム前の映像信号とのそれぞれ異なる出力レベルに基いてデータ信号を生成する。これらデータ生成部A〜Dが、複数、データ生成部格納部54に用意される。そして、データ生成部切換用メモリ53によって、走査信号線6単位で、データ生成部格納部54に格納された複数のデータ生成部A〜Dから1つのデータ生成部を選択する。
したがって、従来の液晶表示装置で行っていたオーバーシュート駆動よりも走査信号線6単位でのオーバーシュート駆動の最適化が図れるので、より液晶の特性に応じた応答速度補正が可能となる。
その結果、液晶表示装置1の液晶表示領域内における温度バラツキに対しても最適なオーバーシュート駆動を行うことができる液晶表示装置1、及び液晶表示装置1の駆動方法を提供することができる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1及びその駆動装置50では、走査信号線6間において、互いに異なるデータ生成部A〜Dにて生成されたデータ信号が出力されるので、走査信号線6間でデータ生成部A〜Dを切り換え可能となっている。
また、本実施の形態の液晶表示装置1では、データ生成部A〜Dには、入力データを加工せずに出力されるものが含まれているとすることが可能であるので、オーバーシュート駆動しないデータ信号を出力することが可能となる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1では、データ生成部A〜Dは、複数の走査信号線6毎に切り換え可能となっている。したがって、例えば、表示パネル2の液晶表示領域の高さ方向に応じてデータ生成部A〜Dを切り換えることができる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1では、データ生成部A〜Dは、表示パネル2の表示動作中に変更可能となっているので、例えば、液晶表示領域の温度上昇に伴ってデータ生成部A〜Dを変更することができる。したがって、温度変化によって変化する液晶の応答特性に対応した動作を補償することができる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1では、データ生成部A〜Dは、映像信号との出力レベル比較において装置本体の電源起動時から徐々に小さくなるように選択される。したがって、特に、低温時の温度変化によって変化し易い液晶の応答特性に対応した動作を補償することができる。
ところで、表示パネル2の温度は、装置本体の電源起動からの時間に応じて上昇するので、オーバーシュート駆動のデータ生成部A〜Dも温度上昇に伴い、つまり時間の経過に伴って、小さい値に切り換えるのが好ましい。
そこで、本実施の形態によれば、データ生成部A〜Dは、装置本体の電源起動からの時間に応じて小さくなるように切り換えられる。
この結果、特に、液晶の温度検出を必要としないので、構成を簡略化することできる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1では、データ生成部切換用メモリ53は、走査信号線6を示す個別番号と、その走査信号線6を示す個別番号に対応する装置本体の電源起動からの時間に応じたデータ生成部の選択肢とを組み合わせたアドレスからなる記憶手段としてのメモリからなっている。
したがって、データ生成部選択手段をメモリにて好適に構成することができる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態の液晶表示装置1における駆動装置60は、図4(a)に示すように、前記実施の形態1の構成に加えて、表示パネル2における液晶表示領域に温度センサ61を備えており、この温度センサ61にて検出した温度推移情報をデータ生成部選択手段としてのデータ生成部切換用メモリ63に記憶し、かつ液晶表示装置1の周囲温度情報を得るようになっている。そして、その温度情報により、データ生成部格納手段としてのデータ生成部A〜Dを切り換えるようになっている。
すなわち、本実施の形態では、液晶表示装置1が電源オンの状態からの該液晶表示領域における面内温度の温度推移のバラツキ情報をデータ生成部切換用メモリ63に記憶させ、記憶された液晶表示領域における面内の温度推移情報に基づいてオーバーシュート駆動のデータ生成部A〜Dを可変する。また、本実施の形態では、データ生成部切換用メモリ63は、ルックアップテーブル(LUT:Look Up Table)にてなっている。
このルックアップテーブルでは、例えば、図4(b)に示すように、温度センサ61による測定温度が32℃未満のときは、データ生成部切換用メモリ63におけるアドレス「4」が設定され、その結果、値の最も大きいデータ生成部Dが選択されるようになっている。そして、温度センサ61による測定温度が32℃以上34℃未満のときは、データ生成部切換用メモリ63におけるアドレス「3」が設定され、データ生成部Cが選択される。以下、同様にして、温度が所定温度に達する毎にデータ生成部切換用メモリ63における選択肢の項のアドレスが変わり、データ生成部A、Bが変わるようになっている。
なお、本実施の形態においても、走査信号線6が「N]つまり表示パネル2の下側では
、上側の温度変化に対するデータ生成部A〜Dの変化を変えている。したがって、本実施の形態でも、走査信号線6によって、データ生成部A〜Dが異なる値となっている。
ここで、上記温度センサ61の設置場所は、液晶の温度と関連する箇所であればよい。したがって、温度センサ61は、例えば熱伝対のようなものであってもよい。少なくとも温度センサ61の示す値が、液晶表示装置1の電源オンの状態から徐々に温度変化するようなものであればよい。この温度センサ61からの情報を、上記データ生成部切換用メモリ63にアドレスとして入力し、それに対応する最適オーバーシュート駆動のデータ生成部A〜Dの種類を選定するようにすれば、その他の部分は、前記実施の形態1と同様であり、その結果、同様な効果を得ることができる。
このように、本実施の形態の液晶表示装置1及びその駆動装置60、並びに液晶表示装置1の駆動方法では、データ生成部A〜Dは、表示パネル2の温度により切り換えられる。したがって、実際の液晶の温度検出により応答速度を補償するので、正確な応答速度補償を実現することができる。
また、本実施の形態では、データ生成部A〜Dは、温度センサ61によって得られた温度情報に基づいて切り換えられる。したがって、温度センサ61からの温度データに基づき、直接、液晶の応答速度補償を行うことができるので、より正確な応答速度補償を実現することができる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1では、データ生成部切換用メモリ63は、周囲温度に対応するデータ生成部A〜Dをルックアップテーブルにして格納しているので、ルックアップテーブルにて種々の機種に対し、同一の装置設計にて対応可能であるので、コスト的に有利である。
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について図5ないし図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1及び実施の形態2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態では、実施の形態2の温度検出をさらに精度良く行うものとなっている。
すなわち、本実施の形態における液晶表示装置1の駆動装置70では、図5に示すように、温度センサ30を表示パネル2の画素に実装し、液晶の正確な温度情報を得ることにより、正確なオーバーシュート駆動のデータ生成部A〜Dを可変するようになっている。
ここで、温度センサ30を画素へ実装する方法について詳細に説明する。
本実施の形態では、図6に示すように、各データ信号線5の横には、この各データ信号線5に平行に予備データ配線としての各予備配線15が配設されている。この予備配線15は、各画素においてデータ信号線5と連絡線16によって接続されている。したがって、データ信号線5、予備配線15及び連絡線16の形状は、いわゆるはしご形状となっている。つまり、Hの字を繋ぎ合わせた形状となっている。
この予備配線15は、データ信号線5の一部に断線等の欠陥が生じることによりその表示パネル2に線欠陥等の表示劣化が発生するのを防止するために設けられているものである。すなわち、上記はしご形状の予備配線15を用いた場合には、データ信号線5によるデータ信号は、連絡線16を通して予備配線15に絶えず供給されているので、データ信号線5のいずれの箇所で断線していても、データ信号線駆動部4から出力されたデータ信号は、データ信号線5又は予備配線15のいずれかを通って末端まで供給される。
そして、本実施の形態の液晶表示装置1では、この予備配線15を利用して、画素内に温度センサ30を設けている。
すなわち、温度センサ30を画素内に形成するためには、少なくともこの温度センサ30に通じるリード線が必要となるが、本実施の形態では、このリード線として予備配線15を利用している。
ここで、予備配線15を温度センサ30のリード線として使用するためには、温度センサ30を取り付けた予備配線15がデータ信号線5に電気的に繋がっていてはいけない。そこで、本実施の形態では、温度センサ30よりもデータ信号線駆動部4側の全ての連絡線16には予め連絡線隙間16aを形成していると共に、該温度センサ30を形成した画素内において、温度センサ30を接続した予備配線15のデータ信号線駆動部4とは反対側の末端側に予備配線隙間15aを形成している。これにより、温度センサ30のリード線としての機能を予備配線15のデータ信号線駆動部4側に求めることができる。このとき、予備配線15の予備配線隙間15aよりもデータ信号線駆動部4とは反対側つまり末端側では、連絡線16に連絡線隙間16aがないので、本来の予備配線15としての機能を保持していることになる。
なお、本実施の形態では、温度センサ30のリード線の機能をデータ信号線駆動部4側に求めて、データ信号線駆動部4側に温度センサ30の信号を送っているが、必ずしもこれに限らず、温度センサ30のリード線の機能をデータ信号線駆動部4とは反対側にすることも可能である。この場合には、上記連絡線隙間16aは、温度センサ30よりも末端側における連絡線16の全てに設けられると共に、温度センサ30を形成した予備配線15のデータ信号線駆動部4側に予備配線隙間15aが形成される。
また、上記の温度センサ30の画素内での位置は、例えば、TFT8の近傍等に設けることが好ましい。このTFT8には、このTFT8が外部から見えないようにするために、図示しない遮蔽部材としてのブラックマトリクスが設けられているので、そのブラックマトリクスの下側に位置することが好ましいためである。したがって、データ信号線5又は走査信号線6の近傍に設けるの好ましい。データ信号線5及び走査信号線6の上部には、ブラックマトリクスが設けられているためである。
ところで、予備配線15は、本来、データ信号線5に断線が生じている場合に、この予備配線15を使用してデータ信号を供給するものである。
したがって、本実施の形態では、データ信号線5に断線が発生した場合には、予備配線15の温度センサ30のリード線としての使用を断念することとしている。したがって、データ信号線5に断線が発生した場合には、予備配線15をデータ信号線駆動部4近傍でレーザ装置を用いて切断することにより後述する温度検出制御部40との経路を断つ一方、レーザ装置を用いて連絡線16のいずれか一つを短絡する。これにより、容易に本来の予備配線15として使用することができる。
次に、上記温度センサ30の構造について詳細に説明する。
本実施の形態では、温度センサ30を液晶素子内に直接形成している。この温度センサ30は、例えば、図7に示すように、二酸化ケイ素(SiO2)の酸化膜31とCrNi膜32との積層体の上に、隙間を開けてアルミニウム(Al)電極33a・33bを形成したものからなっている。この温度センサ30は、サーミスタ型のセンサであり、半導体のキャリア濃度が温度によって、指数関数的に変化する現象を利用するものである。したがって、隙間の抵抗を検出することによって温度測定できる。なお、本実施の形態では、CrNi膜32を使用しているが、必ずしもこれに限らず、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の遷移金属の酸化物半導体等を利用することが可能である。
次に、本実施の形態の液晶表示装置1において、温度センサ30を画素内に形成する理由について説明する。
まず、本実施の形態の液晶表示装置1は、例えばコンピュータ用の表示装置として使用される高精細なものである。この高精細な液晶表示装置1にTVの映像や動画映像を映す場合に、応答速度の遅さが問題となる。すなわち、液晶は容量性負荷であるため、データ信号電圧を画素電極に印加すると、印加されたデータ信号電圧に応じて変化した配向状態を保持する性質(ホールド特性)がある。このため、CRT等と比べてちらつきのない表示画面が得られる反面、液晶自身の応答速度が遅く、特に中間調の応答が映像入力信号の1フレーム期間で十分に応答しないために、動画表示の場合に残像が見られるといった表示品位低下の問題がある。
そこで、この問題を解決するために、オーバーシュート駆動等により液晶モジュールに入力データの変化分以上の変化を加えることによって、応答速度を改善させることが可能である。
ところで、液晶表示装置1では、表示パネル2内の温度は、周囲環境温度の影響を受けると共に、当該表示パネル2の表示動作途中にてもばらつく。したがって、この表示パネル2内の温度に応じた上記入力データの変化分以上の変化を加えなければ、適切に応答速度を改善させることができず、その結果、動画表示時の表示品位不良が発生することになる。
具体的には、オーバーシュート駆動においては、図8(a)に示すように、25℃の時に階調値30を表示するために、例えば、階調値50に相当するデータ信号電圧を印加する。この結果、階調値30を表示するためのデータ信号電圧を印加するよりも短時間で、階調値30に到達することができるようになる。
今、例えば、図8(b)に示すように、0℃の時に階調値30を表示するために、階調値80に相当するデータ信号電圧を印加することにより、10m秒にて階調値30に到達することができるとした場合に、誤って液晶素子の温度が10℃であると認識した時には、図8(c)に示すように、階調値30に到達するために15m秒かかることになる。この結果、動画の変化に対応できない応答速度になってしまう。
したがって、応答速度の改善のためには、正確な温度管理によるより正確なデータ信号電圧の補正を行う必要がある。特に、冬季において電源をONしたときには、低温であるため応答速度は遅い。
ここで、実際の表示パネル2では、図9(a)〜(d)に示すように、表示画面の温度が変化することが確認できている。表示パネル2が温度上昇するのは、表示パネル2の裏側に図示しないバックライトが設けられており、そのバックライトの放射熱によるためである。具体的には、周囲温度24℃のときに、表示パネル2の温度分布は、電源ONから30分後では、図9(a)に示すように、全体的に低い32℃である。その後、電源ONから60分後には、図9(b)に示すように、上側約4/5までが36.8℃であり下側約1/5までが30.0℃である。なお、表示パネル2の上側が下側よりも温度が高いのは、熱は上側に移動するためである。そして、図9(c)に示すように、電源ONから90分後になって略飽和状態となり、上側約4/5までが38.3℃となり下側約1/5が30.0℃である。また、図9(d)に示すように、図9(c)の状態から電源OFFすると、30分にて略元の図9(a)の状態に戻る。
したがって、飽和状態の温度分布になるまでに90分を要している。なお、上記の例では、初期周囲温度24℃から始めているが、より低い初期周囲温度から始めるとさらに長時間にて飽和温度に達すること、及び飽和温度として38℃よりも低い値になること等が考えられる。
また、表示パネル2の温度分布は上側約4/5までの温度変化が大きい。この結果、電源ONから30分後程度までの温度分布と、電源ONから90分後の飽和状態の温度分布とでは温度差に明確な違いがあることから、このような表示パネル2の温度変化を踏まえたデータ信号線5への電圧印加が必要であることがわかる。特に、低い温度における温度管理が重要である。
温度センサ30を実装する場所については、上記の表示パネル2の温度分布測定結果に基いて、例えば、図5に示すように、表示パネル2の高さ方向に複数設けると共に、液晶表示領域の下側の方の間隔が密になるようにしている。このように、上述した表示パネル2の温度分布測定結果に基いて、複数の走査信号線6の温度データを抽出できることがより重要であり、特に、液晶表示領域の下側についての温度データが抽出できるように、サンプルポイントを多くとること好ましい。
上記の各温度センサ30を上記ポイントに配置しておくことにより、図10に示すように、各温度センサ30からの検知信号が予備配線15を通して温度検出制御手段としての温度検出制御部40に送られ、温度検出制御部40の内部に設けられた温度検出部41によって温度検出が行われる。なお、温度検出制御部40は、例えば、データ信号線駆動部4内の端部等に設けることができる。
上記温度検出部41は、具体的には、電源電圧を各温度センサ30に印加することにより、各温度センサ30の抵抗値に基く電流値を算出し、この電流値に対応する予め求められた温度により、画素の温度を検出する。
また、温度センサ30により抽出した温度データは、本実施の形態でも、基本的には実施の形態1及び実施の形態2と同様に処理され、データ生成部A〜Dが選択される。ただし、温度サンプルデータが多ければ、走査信号線6及びその付近の液晶の温度は、略抽出された温度センサ30が示す温度であると判断できる。このため、この抽出温度データを直接利用して各走査信号が必要とするオーバーシュート駆動のデータ生成部A〜Dを可変するように制御すれば、実施の形態1で示すような走査信号線6そのものをアドレスとするような大容量のメモリは不要となり、図5に示すデータ生成部選択手段としてのセレクタ73のように、図11に示すように、抽出した温度データをそのままオーバーシュート駆動のデータ生成部A〜D用のルックアップテーブル(LUT:Look Up Table)のアドレスとして活用することができる。したがって、メモリ容量の削減に寄与する。
また、このよう駆動方法では、走査信号線6毎にデータ生成部A〜Dを変えることが可能になる。
このように、本実施の形態の液晶表示装置1及びその駆動装置70、並びに液晶表示装置の駆動方法では、データ生成部A〜Dは、表示パネル2の温度により切り換えられる。したがって、実際の液晶の温度検出により応答速度を補償するので、正確な応答速度補償を実現することができる。
また、本実施の形態では、データ生成部A〜Dは、温度センサ30によって得られた温度情報に基づいて切り換えられる。したがって、温度センサ30からの温度データに基づき、直接、液晶の応答速度補償を行うことができるので、より正確な応答速度補償を実現することができる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1及びその駆動装置70、並びに液晶表示装置の駆動方法では、温度センサ30は、表示パネル2のTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)基板上に設けられている。
すなわち、温度センサ30を後付けすると、温度センサ30が必ずしも正確な温度を測定できない場合があるが、上記の構成により、温度センサ30はTFT基板上に作りこんであるため、温度測定を正確に行うことができる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1では、温度センサ30は、表示パネル2における液晶表示領域の列方向に沿って複数個配設されている。すなわち、液晶の表示画面における温度分布は液晶表示装置1を立てて設置する場合において、垂直方向に温度分布が推移する。したがって、そのような使用状況に応じた温度センサ30の実装を行うことによって、効率的な温度データの抽出が可能となる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1では、温度センサ30における温度検出信号の伝送は、表示パネル2に配設されている予備配線15を用いて行われている。したがって、温度センサ30の信号出力用に対して、液晶表示装置1に一般的に設けられている予備配線15を使用することによって、新たな配線を必要としないため、表示パネル2の大きな設計変更を行うことなく実現できるので、コストメリットがある。
また、本実施の形態の液晶表示装置1では、セレクタ73は、表示パネル2の複数の温度に対応するデータ生成部A〜Dをルックアップテーブルにして格納している。
したがって、複数の走査信号線6に対する表示パネル2の複数の温度に対して効率よくデータ生成部A〜Dの切り換えが可能となる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1の駆動装置70により、従来の液晶表示装置で行っていたオーバーシュート駆動よりも走査信号線単位でのオーバーシュート駆動のデータ生成部の最適化が図れるので、より液晶の特性に応じた応答速度補正が可能となる。
したがって、液晶表示装置1の表示領域内における温度バラツキに対しても最適なオーバーシュート駆動を行うことができる液晶表示装置1の駆動装置70を提供することができる。
また、本実施の形態の液晶表示装置1の駆動装置70及び駆動方法では、映像信号とデータ生成部A〜Dにより生成されるデータ信号との出力レベルの差は、液晶表示装置1が設置された状態における垂直方向の表示パネル2の上側領域及び中央領域に比べて下側領域が最大となる。
したがって、表示パネル2の垂直方向の下側領域は、表示パネル2の上側領域及び中央領域に比べて温度上昇が遅く、温度が低いので、映像信号とデータ生成部A〜Dにより生成されるデータ信号との出力レベルの差を下側領域が最大となるようにしておくことによって、下側領域においても、適切に表示することができる。
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、温度センサ30はCrNi膜32を使用したサーミスタ構造となっており、画素内に温度センサ30を作り込んでいる。しかし、特にこれに限定するものではなく、例えば、既存のダイオードを画素内に埋め込み、そのダイオードの温度特性による出力電圧の変化を利用して、温度変化を感知することが可能である。
また、本実施の形態では、温度センサ30のリード線として予備配線15を使用しているが、必ずしもこれに限らず、単独のリード線を設けることが可能である。また、予備配線15ははしご形状となっているが、必ずしもこれに限らず、はしご形状でない予備配線を使用することも可能である。
さらに、本実施の形態においては、透明電極がそれぞれ上下基板に具備される構成を示しているが、本発明の適用範囲はこの限りではなく、例えば、IPS(In-Plane Switching)等の片側基板にのみ電極を有するタイプの液晶に対しても有効である。