以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。図1は本発明の実施形態に係る空調冷凍装置1の冷媒回路を含むシステム構成を示す図である。この冷凍システム1は、例えばコンビニエンスストアの室内2(店内)の空調と、そこに設置されている冷却貯蔵設備としての冷蔵ケース3や冷凍ケース4の庫内冷却を実現するものである。
なお、冷蔵ケース3及び冷凍ケース4は前面や上面が開口するオープンショーケースの他、透明ガラス扉にて開口が開閉自在に閉塞されたショーケースであり、冷蔵ケース3の庫内は冷蔵温度(+3℃〜+10℃)に冷却され、飲料やサンドイッチ等の冷蔵食品などが陳列されると共に、冷凍ケース4の庫内は冷凍温度(−20℃〜−10℃)に冷却され、冷凍食品や冷菓などが陳列されるものである。
この空調冷凍装置1は、室内2の空調を行う空気調和機(空調系統部)6と、室内2の冷蔵ケース3や冷凍ケース4(冷却貯蔵設備)の庫内冷却を行う冷却装置(冷却系統部)8とを有し、空気調和機6は、室内2の天井等に設置された複数の室内機11と店外に設置された室外ユニット12との間に渡って空調用冷媒回路7が配管構成されて構成されている。
この空調用冷媒回路7は、室外ユニット12の外装ケース内に設置された二台の圧縮機(ロータリコンプレッサ)13A(インバータによる周波数制御運転)、13B(定速運転)と、逆止弁5A、5B、5C、5Dと、オイルセパレータ10と、四方弁14と、熱源側熱交換器16と、膨張弁(電動膨張弁から成る減圧手段)17、18、19と、カスケード熱交換器21と、アキュムレータ23等と、室内機11側に設置された利用側熱交換器27とから系統構成されている(空調系統)。
26は温度や圧力に基づいて空気調和機6の室外ユニット12側の機器を制御するための室外機コントローラ(運転制御手段を構成するコントローラであり、汎用のマイクロコンピュータにて構成される)であり、室外ユニット12に設けられている。また、24は熱源側熱交換器16に外気を通風するための送風機であり、室外ユニット12内の熱源側熱交換器16に対応する位置に設けられている。28は温度や圧力に基づいて空気調和機6の室内機11側の機器を制御するための室内機コントローラ(運転制御手段を構成するコントローラであり、汎用のマイクロコンピュータで構成される)であり、室内機11に設けられている。
ここで、室内2には、空気調和機6を操作するための遠隔操作装置(リモートコントロール(通称リモコン))29が設置されている。この遠隔操作装置29は、各種情報を表示する液晶パネルからなる表示部(報知手段)や各種操作子を備え、操作子の操作を介して使用者から室内2の設定温度などの指示を入力し、室内機コントローラ28との間の通信により、使用者に入力された各種指示を室内機コントローラ28に通知する共に、空気調和機6の動作情報(運転状態(冷房運転か暖房運転か等))等を表示部に表示する。また、15は利用側熱交換器27に室内2の空気(店内空気)を通風するための送風機であり、室内機11内の利用側熱交換器27に対応する位置に設けられている。
圧縮機13A及び13Bは相互に並列接続されており、各圧縮機13A、13Bの吐出側は逆止弁5A、5Bをそれぞれ介して合流され、四方弁14の一方の入口に接続されている(各逆止弁5A、5Bは四方弁14方向が順方向とされている)。また、四方弁14の一方の出口は熱源側熱交換器16の入口に接続されている。この熱源側熱交換器16は多数の並列配管から成る流路抵抗の比較的小さい入口側16Aとこれらが少数の並列配管若しくは単数の配管に集約される出口側16Bとで構成されている。そして、この熱源側熱交換器16の出口側16Bの出口は、並列接続された逆止弁5Cと膨張弁17とを介して膨張弁(利用側熱交換器用減圧弁)18の入口に接続され、膨張弁18の出口は室内機11に渡って分流し、利用側熱交換器27の入口に接続されている。
利用側熱交換器27の出口は室外ユニット12に渡り、四方弁14の他方の入口に接続され、四方弁14の他方の出口は逆止弁5Dを介してアキュムレータ23に接続されている。そして、このアキュムレータ23の出口が圧縮機13A、13Bの吸込側に接続されている。なお、逆止弁5Dはアキュムレータ23側が順方向とされている。
また、膨張弁17と18の間の配管は膨張弁19の入口に接続され、膨張弁19の出口はカスケード熱交換器21の空調側通路21Aの入口に接続されている。このカスケード熱交換器21の空調側通路21Aの出口はアキュムレータ23を介して圧縮機13A、13Bの吸込側に接続されている。
一方、冷却装置8は室外ユニット12と室内2(店内)に設置された冷蔵ケース3及び冷凍ケース4との間に渡って冷却貯蔵設備用冷媒回路9が配管構成されている。この冷却貯蔵設備用冷媒回路9は、室外ユニット12の外装ケース内に設置された冷蔵用の圧縮機(スクロールコンプレッサ)37と、凝縮器(熱交換器)38と、四方弁39、41、42(四方弁39及び41により流路制御手段が構成される)と、オイルセパレータ31と、レシーバータンク36と、冷蔵ケース3の庫内を冷却する冷蔵用蒸発器43、膨張弁(電動膨張弁)44、電磁弁46、47と、冷凍ケース4の庫内を冷却する冷凍用蒸発器49、膨張弁(電動膨張弁)51、電磁弁52、冷凍増幅用の圧縮機(ロータリコンプレッサ)54、逆止弁30、及びオイルセパレータ45等から構成されている。
32は温度や圧力に基づいて冷却装置8の室外ユニット12側の機器を制御する冷凍機コントローラ(冷却系統部を構成するコントローラであり、汎用のマイクロコンピュータで構成される)であり、室外ユニット12に設けられている。この冷凍機コントローラ32は、圧縮機37等の故障を検知する故障検知手段としても機能し、故障を検知した場合にその旨を後述する主コントローラ56に通知する。
また、35は凝縮器38に外気を通風するための送風機であり、室外ユニット12の凝縮器38に対応する位置に設けられている。また、50は温度や圧力に基づいて冷蔵ケース3側の機器を制御する冷蔵ケースコントローラ(冷却貯蔵設備系統制御手段を構成するコントローラであり、汎用のマイクロコンピュータで構成される)であり、冷蔵ケース3に設けられている。さらに、55は温度や圧力に基づいて冷凍ケース4側の機器を制御する冷凍ケースコントローラ(冷却貯蔵設備系統制御手段を構成するコントローラであり、汎用のマイクロコンピュータで構成される)であり、冷凍ケース4に設けられている。
また、20は冷蔵用蒸発器43に冷蔵ケース3の庫内冷気を通風するための送風機であり、各冷蔵ケース3内の各冷蔵用蒸発器43にそれぞれ対応する位置に設けられている。25は冷凍用蒸発器49に冷凍ケース4の庫内冷気を通風するための送風機であり、冷凍ケース4内の冷凍用蒸発器49に対応する位置に設けられている。
圧縮機37の吐出側はオイルセパレータ31を介して四方弁39の一方の入口に接続され、この四方弁39の一方の出口が凝縮器38の入口に接続されている。この凝縮器38は多数の並列配管から成る流路抵抗の比較的小さい入口側38Aとこれらが少数の並列配管若しくは単数の配管に集約される出口側38Bとで構成されている。そして、この凝縮器38の出口側38Bの出口はレシーバータンク36の入口に接続され、このレシーバータンク36の出口が四方弁41の一方の入口に接続されている。すなわち、レシーバータンク36は凝縮器38の冷媒下流側に接続されている。
また、四方弁41の一方の出口はカスケード熱交換器21のケース側通路21Bの入口に接続されている。尚、カスケード熱交換器21は、内部に構成された空調側通路21Aとケース側通路21Bをそれぞれ通過する冷媒を相互に熱交換させるものであり、これによって空調用冷媒回路7の低圧側と冷却貯蔵設備用冷媒回路9の高圧側とは熱的に連結される。
カスケード熱交換器21のケース側通路21Bの出口は、四方弁39の他方の入口に接続されており、この四方弁39の他方の出口は四方弁41の他方の入口に接続されている。そして、この四方弁41の他方の出口は室外ユニット12から出て室内2(店内)に入り分岐する。分岐した一方の配管は電磁弁46及び膨張弁44を介して冷蔵用蒸発器43の入口に接続されている。他方は電磁弁52及び膨張弁51を介して冷凍用蒸発器49の入口に接続されている。
冷凍用蒸発器49の出口は、逆止弁30を介して圧縮機54の吸込側に接続されている(逆止弁30は圧縮機54側が順方向)。この圧縮機54は圧縮機37よりも出力の小さい圧縮機であり、その吐出側は四方弁42の一方の入口に接続され、四方弁42の一方の出口は冷蔵用蒸発器43の出口側に接続された後、オイルセパレータ45を介して圧縮機37の吸込側に接続されている。すなわち、圧縮機54と圧縮機37とは、冷媒回路上、直列に接続される。
また、四方弁42の他方の入口は圧縮機54の入口側の管路に合流され、四方弁42の他方の出口は逆止弁61を介してカスケード熱交換器21のケース側通路21Bの入口側の管路に合流されている。なお、逆止弁61はカスケード熱交換器21側が順方向とされている。以下、この四方弁42とカスケード熱交換器21のケース側通路21Bの入口側までの管路を管路70と表記する。そして、冷媒回路7、9内には例えばR−410A、R−404A等の冷媒が所定量封入される。
ここで、本実施形態に係る空調冷凍装置1においては、冷蔵用の蒸発器43、49から出た冷媒(冷却用冷媒)を冷却装置の圧縮機(圧縮機37或いは圧縮機54)を経由せずにカスケード熱交換器21の入口に導くバイパス経路を形成可能に構成されている。すなわち、四方弁42を切り換えることにより、図2に示すように、蒸発器43の出口側と蒸発器49の出口側とをつなぐバイパス経路70と、圧縮機54の吐出側とカスケード熱交換器21の入口側とをつなぐバイパス経路80とを形成するように構成されている。
このようにバイパス経路70、80を形成することにより、例えば、圧縮機37が故障した場合は、蒸発器43、49から出た冷媒(冷却用冷媒)をバイパス経路70で合流させた後、圧縮機54等を経由してバイパス経路80にて圧縮機37を経由することなくカスケード熱交換器21の入口に導くことができる(図2中矢印α参照)。また、例えば、圧縮機54が故障した場合は、蒸発器43、49から出た冷媒(冷却用冷媒)をバイパス経路70で合流させた後、圧縮機54を経由することなく圧縮機37等を経由してカスケード熱交換器21の入口に導くことができる(図2中矢印β参照)。なお、バイパス経路80には逆止弁61が設けられ、これにより、四方弁41を経てカスケード熱交換器21に供給される冷媒のバイパス経路80への逆流を防止するようになされている。
以上の構成の下、この空調冷凍装置1の動作を説明する。なお、上記圧縮機37と13Aとはインバータ制御され、圧縮機13Bと圧縮機54とは定速で運転されるものとする。また、空調冷凍装置1全体の動作は汎用マイクロコンピュータから構成された主コントローラ(強制運転制御手段として機能する)56により制御される。ここで、主コントローラ56には、主コントローラ56に各種指示を与えるための遠隔操作装置(リモートコントロール(通称リモコン))57が設置されており、この遠隔操作装置57は、各種情報を表示する液晶パネルからなる表示部、警告音等を放音する放音部、及び、各種操作子を備え、操作子の操作を介して使用者からの各種指示を入力可能に構成されている。
この主コントローラ56は室外機コントローラ26、室内機コントローラ28、冷凍機コントローラ32、冷蔵ケースコントローラ50、及び、冷凍ケースコントローラ55とデータ通信可能に接続されており、各コントローラから現在の運転状態に関するデータを受信して収集する。そして、受信データに基づき、後述するその時点での最適な運転パターンを決定し、この最適運転パターンに関するデータ及び各機器の運転データを室外機コントローラ26、室内機コントローラ28、冷凍機コントローラ32、冷蔵ケースコントローラ50、及び、冷凍ケースコントローラ55に送信する。そして、室外機コントローラ26、室内機コントローラ28、冷凍機コントローラ32、冷蔵ケースコントローラ50、及び、冷凍ケースコントローラ55は主コントローラ56から受信した最適運転パターンに関するデータ及び各機器の運転データに基づいて後述する制御動作を実行する。
(1)最適運転パターン1:空気調和機の冷房運転(図1)
まず、夏場等に主コントローラ56が空気調和機6の冷房運転が最適であると判断した場合、最適運転パターン1に関するデータが室外機コントローラ26、室内機コントローラ28、冷凍機コントローラ32、冷蔵ケースコントローラ50、及び、冷凍ケースコントローラ55に送信される。
この主コントローラ56からの送信データに基づき、室外機コントローラ26は四方弁14の前記一方の入口を一方の出口に、他方の入口を他方の出口に連通させる。また、膨張弁17は全開とする。そして、圧縮機13A、13Bを運転する。尚、室外機コントローラ26は圧縮機13Aの運転周波数を調整して能力制御するものとする。
圧縮機13A、13Bが運転されると、圧縮機13A、13Bの吐出側から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方弁14を経て熱源側熱交換器16の入口側16Aに入る。この熱源側熱交換器16には送風機24により外気が通風されており、冷媒はここで放熱し、凝縮液化する。すなわち、この場合、熱源側熱交換器16は凝縮器として機能する。この液冷媒は熱源側熱交換器16の入口側16Aから出口側16Bを経て当該出口側16Bから出る。そして、膨張弁17を通過した後、分岐する。分岐した一方は膨張弁18に至り、そこで絞られて低圧とされた後(減圧)、利用側熱交換器27に流入し、そこで蒸発する。
この利用側熱交換器27には送風機15により室内2(店内)の空気が通風されており、冷媒の蒸発による吸熱作用で室内2の空気は冷却される。これにより、室内2(店内)の冷房が行われる。利用側熱交換器27を出た低温のガス冷媒は、四方弁14、逆止弁22、アキュムレータ23を順次経て圧縮機13A、13Bの吸込側に吸い込まれる循環を繰り返す。
室内機コントローラ28は利用側熱交換器27の温度やこれら利用側熱交換器27に吸い込まれる空気温度に基づき、室内2(店内)の温度を予め設定された設定温度とするよう利用側熱交換器27に通風する送風機15を制御する。室内機コントローラ28からの情報は主コントローラ56に送信されており、室外機コントローラ26はこの情報に基づいて圧縮機13A、13Bの運転を制御する。
逆止弁5Cを通過して分岐した冷媒の他方は膨張弁19に至り、そこで絞られて低圧とされた後(減圧)、カスケード熱交換器21の空調側通路21Aに流入し、そこで蒸発する。係る空調用冷媒回路7の冷媒の蒸発による吸熱作用でカスケード熱交換器21は冷却され、低温となる。カスケード熱交換器21を出た低温のガス冷媒はアキュムレータ23を経て圧縮機13A、13Bの吸込側に吸い込まれる循環を繰り返す。
室外機コントローラ26は、室内2(店内)の温度が遠隔操作装置29を用いて使用者により設定された設定温度となるように、室温、利用側熱交換器27の出入口の冷媒温度、或いは、利用側熱交換器27の温度に基づいて圧縮機13Aの運転周波数や膨張弁18の開度を調整する。また、室外機コントローラ26は、カスケード熱交換器21のケース側通路21Bの入口温度TC1と出口温度TC2の差が予め設定された設定温度差(例えば20℃)となるように、膨張弁19の弁開度を調整して過冷却制御を行う。
また、室内機コントローラ28は、利用側熱交換器27の温度や利用側熱交換器27に吸い込まれる空気温度に基づき、室内2(店内)の温度を予め設定された設定温度とするよう利用側熱交換器27に通風する送風機15を制御する。
一方、冷凍機コントローラ32は、冷却装置8の冷却貯蔵設備用冷媒回路9の四方弁39の前記一方の入口を一方の出口に連通させ、他方の入口を他方の出口に連通させる。また、四方弁41の前記一方の入口を一方の出口に連通させ、他方の入口を他方の出口に連通させる。そして、圧縮機37及び圧縮機54を運転する。圧縮機37から吐出された高温高圧のガス冷媒は、オイルセパレータ31にてオイルを分離された後、四方弁39を経て凝縮器38の入口側38Aに入る。この凝縮器38にも送風機35により外気が通風されており、凝縮器38に流入した冷媒はそこで放熱し、凝縮していく。なお、電磁弁47は全開とされる。
この凝縮器38の入口側38Aを通過した冷媒は出口側38Bに至り、そこから出ていく。凝縮器38から出た冷媒はレシーバータンク36の入口側から当該レシーバータンク36内に入り、そこに一旦貯留されて気/液が分離される。分離された液冷媒はレシーバータンク36の出口から出て四方弁41を通過した後、カスケード熱交換器21のケース側通路21Bに入る。このケース側通路21Bに入った冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒は、前述の如き空調用冷媒回路7の冷媒の蒸発によって低温となっているカスケード熱交換器21によって冷却され、さらに過冷却状態が増す。より具体的には、上記したように室外機コントローラ26により予め定めた設定温度差(例えば20℃)だけ冷却される。なお、前述の如く凝縮器38の直後にレシーバータンク36を配置しているので、過冷却時の熱損失を無くすことができるようになると共に、冷媒量の調整も行うことができる。
このカスケード熱交換器21にて過冷却された冷媒は四方弁39、四方弁41を順次通過した後に分岐し、一方は電磁弁46を通過して膨張弁44に至り、そこで絞られた後(減圧)、冷蔵用蒸発器43に流入し、そこで蒸発する。冷蔵用蒸発器43には送風機20により冷蔵ケース3の庫内空気がそれぞれ通風・循環されており、冷媒の蒸発による吸熱作用で庫内空気は冷却される。これにより、冷蔵ケース3の庫内冷却が行われる。冷蔵用蒸発器43を出た低温のガス冷媒は合流した後、圧縮機54のオイルセパレータ45の出口側に至る。
カスケード熱交換器21を出て分岐した冷媒の他方は電磁弁52を通過して膨張弁51に至り、そこで絞られた後(減圧)、冷凍用蒸発器49に流入し、そこで蒸発する。この冷凍用蒸発器49にも送風機25により冷凍ケース4の庫内空気が通風・循環されており、冷媒の蒸発による吸熱作用で庫内空気は冷却され、冷凍ケース4の庫内冷却が行われる。
冷凍用蒸発器49を出た低温のガス冷媒は逆止弁30を経て圧縮機54に至り、そこで、圧縮されて冷蔵用蒸発器43の出口側の圧力まで昇圧された後、圧縮機54から吐出され、オイルセパレータ45でオイルを分離された後、冷蔵用蒸発器43からの冷媒と合流する。この合流した冷媒は圧縮機37の吸込側に吸い込まれる循環を繰り返す。
冷蔵ケースコントローラ50は、冷蔵ケース3の庫内温度若しくは冷蔵用蒸発器43を経た吐出冷気温度或いは冷蔵用蒸発器43への吸込冷気温度と、冷蔵用蒸発器43の出口側の冷媒温度、或いは、冷蔵用蒸発器43の温度とに基づいて各膨張弁44の弁開度をそれぞれ制御する。これにより、冷蔵ケース3の庫内を前述した冷蔵温度に冷却維持しながら、適正な過熱度(過熱度一定)とする。
また、冷凍ケースコントローラ55は、冷凍ケース4の庫内温度若しくは冷凍用蒸発器49を経た吐出冷気温度或いは冷凍用蒸発器49への吸込冷気温度と、冷凍用蒸発器49の出口側の冷媒温度、或いは、冷凍用蒸発器49の温度とに基づいて膨張弁51の弁開度を制御する。これにより、冷凍ケース4の庫内を前述した冷凍温度に冷却維持しながら、適正な過熱度(過熱度一定)とする。
圧縮機37の運転周波数は吸込側の圧力(冷却貯蔵設備用冷媒回路9の低圧圧力)に基づいて制御される。そして、各膨張弁44、51の全てが全閉となった場合には停止されると共に、何れかが開放されているときは運転される。
このように、カスケード熱交換器21の空調側通路21Aを流れる空調用冷媒回路7の低圧側冷媒によって冷却貯蔵設備用冷媒回路9の高圧側冷媒を過冷却することができるので、冷蔵ケース3や冷凍ケース4の蒸発器43、49における冷却能力と冷却貯蔵設備用冷媒回路9の運転効率が改善される。なお、この場合、冷却貯蔵設備用冷媒回路9の高圧側の冷媒は、凝縮器38を介してカスケード熱交換器21のケース側通路21Bに流すので、空調用冷媒回路7の過熱度も適正範囲に維持できる。
また、冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷凍用蒸発器49から出た冷媒の圧力は、その蒸発温度が低くなることから冷蔵用蒸発器43を出た冷媒より低くなるが、冷蔵用蒸発器43から出た冷媒と合流させる以前に圧縮機54により圧縮されて昇圧されるので、冷蔵ケース3と冷凍ケース4の庫内を各蒸発器43、49によりそれぞれ円滑に冷却しながら、冷却貯蔵設備用冷媒回路9の圧縮機37に吸い込まれる冷媒の圧力を調整して支障無く運転を行うことができるようになる。
(2)最適運転パターン2:空気調和機の暖房運転
次に、冬場等の空気調和機6の暖房運転について図3を用いて説明する。主コントローラ56が空気調和機6の暖房運転が最適であると判断した場合、最適運転パターン2に関するデータが室外機コントローラ26、室内機コントローラ28、冷凍機コントローラ32、冷蔵ケースコントローラ50、及び、冷凍ケースコントローラ55に送信される。
この主コントローラ56からの送信データに基づき、室外機コントローラ26は四方弁14の一方の入口を他方の出口に、他方の入口を一方の出口に連通させるように切り換える。また、膨張弁17は全閉、膨張弁18は全開とされる。そして、圧縮機13A、13Bを運転する。圧縮機13A、13Bが運転されると、圧縮機13A、13Bの吐出側から吐出された高温高圧のガス冷媒は、オイルセパレータ10から四方弁14を経て利用側熱交換器27に入る。この利用側熱交換器27には前述の如く送風機15により室内2(店内)の空気が通風されており、冷媒はここで放熱し、室内2の空気を加熱する一方自らは凝縮液化する。これにより、室内2(店内)の暖房が行われる。
利用側熱交換器27、27で液化した冷媒は利用側熱交換器27から出て膨張弁18を通り、膨張弁19に至り、そこで絞られて低圧とされた後(減圧)、カスケード熱交換器21の空調側通路21Aに流入し、そこで蒸発して吸熱した後、アキュムレータ23を経て圧縮機13A、13Bの吸込側に吸い込まれる循環を繰り返す。
室外機コントローラ26は、室内2(店内)の温度が遠隔操作装置29を用いて使用者により設定された設定温度となるように、圧縮機13Aの運転周波数を制御すると共に、前述した冷房運転と同様に膨張弁19の弁開度を調整して過冷却制御を行う。また、室内機コントローラ28は、利用側熱交換器27の温度や利用側熱交換器27に吸い込まれる空気温度に基づき、室内2(店内)の温度を予め設定された設定温度とするよう利用側熱交換器27に通風する送風機15を制御する。
一方、冷凍機コントローラ32は冷却装置8の冷却貯蔵設備用冷媒回路9の四方弁39の前記一方の入口を他方の出口に、他方の入口を一方の出口に連通させるように切り換えると共に、四方弁41の前記一方の入口を他方の出口に、他方の入口を一方の出口に連通させるように切り換える。尚、他の電磁弁等は前述した空気調和機6の冷房運転時と同様である。即ち、電磁弁46、52を開き、圧縮機37及び54を運転する。
これにより、圧縮機37から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方弁39、41を順次通過して先ずカスケード熱交換器21のケース側通路21Bに入る。すなわち、圧縮機37から吐出された高温高圧のガス冷媒は凝縮器38に行く前に、直接カスケード熱交換器21のケース側通路21Bに供給される。このケース側通路21Bに入った冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒は、カスケード熱交換器21において放熱するので、前述の如く空調側通路21Aで蒸発する空調用冷媒回路7の冷媒によって冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒は冷却されると共に、空調用冷媒回路7の冷媒は冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒の廃熱を汲み上げることになる。
このカスケード熱交換器21のケース側通路21Bを通過した冷媒は、次に四方弁39を経て凝縮器38の入口側38Aに入る。この凝縮器38にも送風機35により外気が通風されており、凝縮器38に流入した冷媒はそこで放熱し、凝縮していく。
この凝縮器38の入口側38Aを通過した冷媒は出口側38Bに至り、そこから出ていく。凝縮器38から出た冷媒はレシーバータンク36の入口側から当該レシーバータンク36内に入り、そこに一旦貯留されて気/液が分離される。分離された液冷媒はレシーバータンク36の出口から出て四方弁41を通過した後に分岐し、前述同様に電磁弁46、52に向かうことになる。
このような運転により、空気調和機6の空調用冷媒回路7の暖房運転時には、カスケード熱交換器21で冷却貯蔵設備用冷媒回路9の高圧側冷媒の廃熱を回収して空調用冷媒回路7の利用側熱交換器27に搬送することができるようになる。これにより、空気調和機6の暖房能力の改善を図ることができるようになり、総じて、室内空調と冷蔵ケース3及び冷凍ケース4の庫内冷却を行う空調冷凍装置1の効率改善を図り、省エネ化を図ることが可能となる。
特にこの場合、冷却貯蔵設備用冷媒回路9の高圧側の冷媒を、凝縮器38より先にカスケード熱交換器21に流すので、冷却貯蔵設備用冷媒回路9の高圧側冷媒からの廃熱回収を効率的に行い、空調用冷媒回路7の利用側熱交換器27、27における暖房能力をより一層向上させることができるようになる。
ここで、店内2が比較的暖かいなど空気調和機6が軽負荷となると、室外機コントローラ26は膨張弁19の弁開度を絞って冷媒流量を低減させていくようになるので、カスケード熱交換器21における冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒の放熱量が過剰となってくるが、本発明では冷却貯蔵設備用冷媒回路9の高圧側の冷媒をカスケード熱交換器21に流した後、凝縮器38に流すようにしているので、空調用冷媒回路7の暖房運転時において冷却貯蔵設備用冷媒回路9のカスケード熱交換器21における冷媒の放熱量が過剰となった場合には、凝縮器38にて当該過剰な熱量が放出される。これにより、安定した廃熱回収運転を実現することができる。
さらに、上述の如き空気調和機6の暖房運転時に、空気調和機6がカスケード熱交換器21で冷却貯蔵設備用冷媒回路9の高圧側冷媒から回収する熱量が不足すると、室外機コントローラ26は、膨張弁19の弁開度を制御して廃熱回収を行うと共に、この廃熱回収に加え、必要熱量を維持するように膨張弁17の弁開度を制御する(熱回収制御)。なお、この場合も、冷却装置8は冷媒をカスケード熱交換器21に流して熱回収を効率的に行う。また、上述の如き空気調和機6の暖房運転時に、空気調和機6がカスケード熱交換器21で冷却貯蔵設備用冷媒回路9の高圧側冷媒から回収する熱量が過多になると、室外機コントローラ26は、膨張弁19を全閉、膨張弁18を全開とし、必要熱量を回収するように膨張弁17の弁開度を制御する(熱回収制御)。また、冷却装置8は、冷媒をカスケード熱交換器21に流し、回収熱量が過多となった場合には過冷却を増加させる。これにより、より安定した廃熱回収運転を実現することができるようになる。
また、上述した如く四方弁39及び41を用いて流路を切り換え、空調用冷媒回路7の冷房運転時と暖房運転時において、冷却貯蔵設備用冷媒回路9の凝縮器38及びその出口に接続されたレシーバータンク36に流れる冷媒の流通方向を同一としている。これにより、冷房運転時と暖房運転時とで凝縮器38やレシーバータンク36内の冷媒の流れが反対となる場合に比して冷却貯蔵設備用冷媒回路9内を流れる冷媒の圧力損失の発生を防止若しくは抑制することができるようになり、効率的な運転が可能となる。特に、二個の四方弁39、41にて流路を切り換えているので冷却貯蔵設備用冷媒回路9の構成を簡素化することができるようになる。
(3)故障検知時の最適運転パターン
次に、冷蔵系統(圧縮機37)或いは冷凍系統(圧縮機54)が故障した場合の制御(バックアップ運転)について説明する。
まず、圧縮機37或いは圧縮機54が故障した場合のシーケンスを図4を用いて説明する。圧縮機37或いは圧縮機54が故障した場合、冷凍機コントローラ32がその故障を検知し(ステップS1)、その旨を主コントローラ56に通知する(ステップS2)。主コントローラ56は、圧縮機37又は圧縮機54の故障が通知されると、故障箇所に応じて最適なバックアップ運転の運転パターン(後述する最適運転パターン3、4、5、6)を決定し、この最適運転パターンに関するデータを室外機コントローラ26、室内機コントローラ28、冷凍機コントローラ32、冷蔵ケースコントローラ50、及び、冷凍ケースコントローラ55に送信する(ステップS3)。また、主コントローラ56は、所定の通信回線を介して故障箇所をサービス会社(温度監視センタ)の端末装置に通知する(ステップS4)。これにより、サービス会社から迅速に(約90分以内)サービスマンが派遣されて修理等の故障対策が採られるようになっている。
さらに、主コントローラ56は、バックアップ運転に入ったことを使用者(コンビニエンスストアの店長等)に報知すべく、当該コントローラ56に接続(有線接続又は無線接続)された遠隔操作装置57に所定音を放音させると共に、所定のメッセージ(例えば、「バックアップ運転中」)を表示させる(ステップS5)。
一方、室内機コントローラ28は、この主コントローラ56からの送信データ(手元禁止指示等)を受信すると、当該コントローラ28に接続(有線接続又は無線接続)された遠隔操作装置29の操作が禁止されている(すなわち、強制運転中である)ことを報知すべく、その旨(例えば、「集中管理中」)のメッセージを表示させると共に、遠隔操作装置29の操作によっては運転状態や設定温度の変更を無効(禁止)とし、すなわち、遠隔操作装置29の操作を無視する設定に移行する(ステップS6)。そして、室内機コントローラ28、外機コントローラ26、室内機コントローラ28、冷凍機コントローラ32、冷蔵ケースコントローラ50、及び、冷凍ケースコントローラ55は、主コントローラ56からの送信データに基づき、後述するバックアップ運転を開始する(ステップS7、S8、S9)。なお、故障した圧縮機37或いは圧縮機54は運転停止とされる。これにより、遠隔操作装置29では空気調和機6を操作できなくなり、言い換えると、空気調和機6を強制運転状態とすることができる。
但し、バックアップ運転中であっても、主コントローラ56に接続された遠隔操作装置57は使用可能に維持される。これにより、例えば、サービスマンが遠隔操作装置57を操作することで、主コントローラ56を介して、室内機コントローラ28、外機コントローラ26、室内機コントローラ28、冷凍機コントローラ32、冷蔵ケースコントローラ50、及び、冷凍ケースコントローラ55による運転を停止等することができ、故障箇所の修理に簡易かつ迅速に取りかかることが可能となる。
(3.1) 最適運転パターン3(故障検知時の運転パターン):空気調和機が冷房運転時に冷蔵系統(圧縮機37)が故障した時の制御(図2)
上述のごとき冷房運転時に、冷蔵用の圧縮機37が故障した場合の制御を図2を用いて説明する。なお、この場合の冷却装置8における冷媒(冷却用冷媒)の一部の流れは矢印αで示している。以下、上述の冷房運転と異なる部分を説明する。
室外機コントローラ26は、主コントローラ56からの送信データに基づき、まず、カスケード熱交換器21のケース側通路21Bの出口温度TC2を予め定めた故障時出口温度(例えば、−10℃)とするように膨張弁19の弁開度を調整して冷媒(空調冷媒)の供給量を制御する。ここで、故障時出口温度は、冷凍ケース4や冷蔵ケース3での冷凍・冷蔵を優先する温度であり、空気調和機6による冷却装置8の冷媒冷却能力に応じて定められる温度である。すなわち、冷却装置(冷却系統部)8側の凝縮温度を空気調和機6側で、冷凍ケース4や冷蔵ケース3での冷凍・冷蔵を優先する故障出口温度に制御する。
また、室外機コントローラ26及び室内機コントローラ28は、室内2の設定温度を、予め設定された故障時設定温度(例えば、20℃)に設定し、この故障時設定温度とするように、圧縮機13A、13Bの運転及び送風機15を制御する。これにより、室内2の温度を下げて冷却装置8側の負荷(冷蔵負荷、冷凍負荷)を軽減することができる。なお、室外機コントローラ26及び室内機コントローラ28は、室内機11の蒸発温度による凍結保護制御の条件を通常のHz下降温度条件(例えば2℃以下)から、より低い温度(例えば、−12℃)に変更して凍結保護制御を変更するようにもなされている。
一方、冷凍機コントローラ32は、主コントローラ56からの送信データに基づき、四方弁42を切り換えて、図2に示すように蒸発器43の出口側と蒸発器49の出口側とをつなぐと共に、圧縮機54の吐出側とカスケード熱交換器21の入口側とをつなぐ(四方弁42及び冷凍機コントローラ32がバイパス経路形成手段として機能する)。また、故障した圧縮機37は運転停止とされ、電磁弁47は全閉とされる。この場合、蒸発器43から出た冷媒はバイパス経路70を経由して蒸発器49の冷媒と合流され、圧縮機54を経由した後、バイパス経路80を経由してカスケード熱交換器21のケース側通路21Bに入る。すなわち、蒸発器43、49から出た冷媒は圧縮機37を経由することなくカスケード熱交換器21に入り、前述の如き空調用冷媒回路7の冷媒の蒸発によって低温となっているカスケード熱交換器21によって冷却される。より具体的には、冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒は、上述の如く室外機コントローラ26によりカスケード熱交換器21の出口で故障時設定温度(−10℃)となるまで冷却される。
このカスケード熱交換器21にて過冷却された冷媒は、四方弁39、四方弁41を順次通過した後に分岐し、一方は電磁弁46を通過して膨張弁44に至り、そこで絞られた後(減圧)、冷蔵用蒸発器43に流入し、そこで蒸発する。これにより、冷蔵ケース3の庫内冷却が行われる。また、カスケード熱交換器21を出て分岐した冷媒の他方は電磁弁52を通過して膨張弁51に至り、そこで絞られた後(減圧)、冷凍用蒸発器49に流入し、そこで蒸発する。これにより、冷凍ケース4の庫内冷却が行われる。
このように、圧縮機37が故障した場合は、蒸発器43、49から出た冷媒を圧縮機37を経由することなくカスケード熱交換器21に流入させるので、圧縮機54によって冷却貯蔵設備用冷媒回路9に冷媒を循環させることができ、かつ、カスケード熱交換器21の空調側通路21Aを流れる空調用冷媒回路7の低圧側冷媒によって冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒を所定の温度(故障時設定温度)まで過冷却するので、冷蔵ケース3と冷凍ケース4の庫内冷却を継続することができる。さらに、空気調和機6の室内2の設定温度を予め設定された故障時設定温度に変更するので、室内2の温度を下げて冷却装置8の冷蔵・冷凍負荷を軽減することができる。これらにより、冷蔵ケース3や冷凍ケース4内の商品が傷むのを大幅に遅らせることができ、サービスマンが来て修理されるまでの間に商品が傷んでしまうのをほぼ確実に回避することが可能となる。
なお、上記の場合、冷凍ケース4の庫内冷却を優先させてもよい。具体的には、膨張弁44を全閉にして冷蔵用蒸発器43への冷媒の供給を遮断し、冷媒(冷却用冷媒)を全て冷凍用蒸発器49に供給するようにしてもよい。
(3.2) 最適運転パターン4(故障検知時の運転パターン):空気調和機が冷房運転時に冷凍系統(圧縮機54)が故障した時の制御(図2)
上述のごとき冷房運転時に、冷蔵用の圧縮機54が故障した場合の制御を図2を用いて説明する。なお、この場合の冷却装置8における冷媒(冷却用冷媒)の一部の流れは矢印βで示している。以下、上述の冷房運転と異なる部分を説明する。
室外機コントローラ26は、主コントローラ56からの送信データに基づき、上述の最適運転パターン3の場合と同様に、カスケード熱交換器21のケース側通路21Bの出口温度TC2を予め定めた故障時出口温度(例えば、−10℃)とするように膨張弁19の弁開度を調整すると共に、室外機コントローラ26及び室内機コントローラ28は、室内2の設定温度を故障時設定温度(例えば、20℃)に設定し、この故障時設定温度とするように圧縮機13A、13Bの運転及び送風機15を制御する。
一方、冷凍機コントローラ32は、主コントローラ56からの送信データに基づき、上述の最適運転パターン3の場合と同様に、四方弁42を切り換えて、図2に示すように蒸発器43の出口側と蒸発器49の出口側とをつなぐと共に、圧縮機54の吐出側とカスケード熱交換器21の入口側とをつなぐ。また、故障した圧縮機54は運転停止とされる。この場合、蒸発器49から出た冷媒はバイパス経路70を経由して蒸発器43の冷媒と合流され、圧縮機37を経由した後、カスケード熱交換器21のケース側通路21Bに入る。すなわち、蒸発器43、49から出た冷媒は圧縮機54を経由することなく圧縮機37に供給され、前述の如き空調用冷媒回路7の冷媒の蒸発によって低温となっているカスケード熱交換器21によって冷却される。これにより、カスケード熱交換器21にて過冷却された冷媒は、四方弁39、四方弁41を順次通過した後に分岐し、一方は電磁弁46及び膨張弁44を介して冷蔵用蒸発器43に流入して冷蔵ケース3の庫内冷却に用いられ、他方は電磁弁52及び膨張弁51を介して冷凍用蒸発器49に流入し、冷凍ケース4の庫内冷却に用いられる。
このように、圧縮機54が故障した場合は、蒸発器43、49から出た冷媒を圧縮機54を経由することなくカスケード熱交換器21に流入させるので、圧縮機37によって冷却貯蔵設備用冷媒回路9に冷媒を循環させることができ、かつ、カスケード熱交換器21によって冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒を所定の温度(故障時設定温度)まで過冷却するので、冷蔵ケース3と冷凍ケース4の庫内冷却を継続することができる。さらに、空気調和機6の室内2の設定温度を予め設定された故障時設定温度(20℃)に変更するので、室内2の温度を下げて冷却装置8の冷蔵・冷凍負荷を軽減することができる。これらにより、圧縮機37が故障した場合と同様に、冷蔵ケース3や冷凍ケース4内の商品が傷むのを大幅に遅らせることができ、サービスマンが来て修理されるまでの間に商品が傷んでしまうのをほぼ確実に回避することが可能となる。
(3.3) 最適運転パターン5(故障検知時の運転パターン):空気調和機が暖房運転時に冷蔵系統(圧縮機37)が故障した時の制御(図5)
上述のごとき暖房運転時に、冷蔵用の圧縮機37が故障した場合の制御を図5を用いて説明する。なお、この場合の冷却装置8における冷媒(冷却用冷媒)の一部の流れは矢印γで示している。以下、上述の暖房運転と異なる部分を説明する。
室外機コントローラ26は、主コントローラ56からの送信データに基づき、上述の最適運転パターン3、4の場合と同様に、カスケード熱交換器21のケース側通路21Bの出口温度TC2を予め定めた故障時出口温度(例えば、−10℃)とするように膨張弁19の弁開度を調整すると共に、室外機コントローラ26及び室内機コントローラ28は、室内2の設定温度を故障時設定温度(例えば、16℃)に設定し、この故障時設定温度とするように圧縮機13A、13Bの運転及び送風機15を制御する。
一方、冷凍機コントローラ32は、主コントローラ56からの送信データに基づき、上述の最適運転パターン3、4の場合と同様に、四方弁42を切り換えて、図5に示すように蒸発器43の出口側と蒸発器49の出口側とをつなぐと共に、圧縮機54の吐出側とカスケード熱交換器21の入口側とをつなぐ。また、故障した圧縮機37は運転停止とされ、電磁弁47は全閉とされる。この場合、上述の最適運転パターン3の場合と同様に、蒸発器43から出た冷媒はバイパス経路70を経由して蒸発器49の冷媒と合流され、圧縮機54を経由した後、バイパス経路80を経由してカスケード熱交換器21のケース側通路21Bに入る。すなわち、蒸発器43、49から出た冷媒は圧縮機37を経由することなくカスケード熱交換器21に入り、前述の如き空調用冷媒回路7の冷媒の蒸発によって低温となっているカスケード熱交換器21によって冷却される。より具体的には、冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒は、上述の如く室外機コントローラ26によりカスケード熱交換器21の出口で故障時設定温度(−10℃)となるまで冷却される。これにより、カスケード熱交換器21にて過冷却された冷媒は、四方弁39、四方弁41を順次通過した後に分岐し、一方は電磁弁46及び膨張弁44を介して冷蔵用蒸発器43に流入して冷蔵ケース3の庫内冷却に用いられ、他方は電磁弁52及び膨張弁51を介して冷凍用蒸発器49に流入し、冷凍ケース4の庫内冷却に用いられる。
このように、暖房運転時に圧縮機37が故障した場合でも、上述の最適運転パターン3の場合と同様に、蒸発器43、49から出た冷媒を圧縮機37を経由することなくカスケード熱交換器21に流入させるので、圧縮機54によって冷却貯蔵設備用冷媒回路9に冷媒を循環させることができ、かつ、カスケード熱交換器21によって冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒を所定の温度(故障時設定温度)まで過冷却するので、冷蔵ケース3と冷凍ケース4の庫内冷却を継続することができる。さらに、空気調和機6の室内2の設定温度を予め設定された故障時設定温度(16℃)に変更するので、室内2の温度を下げて冷却装置8の冷蔵・冷凍負荷を軽減することができる。これらにより、冷蔵ケース3や冷凍ケース4内の商品が傷むのを大幅に遅らせることができ、サービスマンが来て修理されるまでの間に商品が傷んでしまうのをほぼ確実に回避することが可能となる。
(3.4) 最適運転パターン6(故障検知時の運転パターン):空気調和機が暖房運転時に冷凍系統(圧縮機54)が故障した時の制御(図5)
上述のごとき暖房運転時に、冷蔵用の圧縮機37が故障した場合の制御を図5を用いて説明する。なお、この場合の冷却装置8における冷媒(冷却用冷媒)の一部の流れは矢印δで示している。以下、上述の暖房運転と異なる部分を説明する。
室外機コントローラ26は、主コントローラ56からの送信データに基づき、上述の最適運転パターン3、4の場合と同様に、カスケード熱交換器21のケース側通路21Bの出口温度TC2を予め定めた故障時出口温度(例えば、−10℃)とするように膨張弁19の弁開度を調整すると共に、室外機コントローラ26及び室内機コントローラ28は、室内2の設定温度を故障時設定温度(例えば、16℃)に設定し、この故障時設定温度とするように圧縮機13A、13Bの運転及び送風機15を制御する。
一方、冷凍機コントローラ32は、主コントローラ56からの冷凍機コントローラ32は、主コントローラ56からの送信データに基づき、上述の最適運転パターン3、4の場合と同様に、四方弁42を切り換えて、図5に示すように蒸発器43の出口側と蒸発器49の出口側とをつなぐと共に、圧縮機54の吐出側とカスケード熱交換器21の入口側とをつなぐ。また、故障した圧縮機37は運転停止とされ、電磁弁47は全閉とされる。この場合、上述の最適運転パターン4の場合と同様に、蒸発器49から出た冷媒はバイパス経路70を経由して蒸発器43の冷媒と合流され、圧縮機37を経由した後、カスケード熱交換器21のケース側通路21Bに入る。すなわち、蒸発器43、49から出た冷媒は圧縮機54を経由することなく圧縮機37に供給され、前述の如き空調用冷媒回路7の冷媒の蒸発によって低温となっているカスケード熱交換器21によって冷却される。より具体的には、上記したように室外機コントローラ26によりカスケード熱交換器21の出口で故障時設定温度(−10℃)となるまで冷却される。これにより、カスケード熱交換器21にて過冷却された冷媒は、四方弁39、四方弁41を順次通過した後に分岐し、一方は電磁弁46及び膨張弁44を介して冷蔵用蒸発器43に流入して冷蔵ケース3の庫内冷却に用いられ、他方は電磁弁52及び膨張弁51を介して冷凍用蒸発器49に流入し、冷凍ケース4の庫内冷却に用いられる。
このように、暖房運転時に圧縮機54が故障した場合は、上述の最適運転パターン4の場合と同様に、蒸発器43、49から出た冷媒を圧縮機54を経由することなくカスケード熱交換器21に流入させるので、圧縮機37によって冷却貯蔵設備用冷媒回路9に冷媒を循環させることができ、かつ、カスケード熱交換器21によって冷却貯蔵設備用冷媒回路9の冷媒を所定の温度(故障時設定温度)まで過冷却するので、冷蔵ケース3と冷凍ケース4の庫内冷却を継続することができる。さらに、空気調和機6の室内2の設定温度を予め設定された故障時設定温度(16℃)に変更するので、室内2の温度を下げて冷却装置8の冷蔵・冷凍負荷を軽減することができる。これらにより、冷蔵ケース3や冷凍ケース4内の商品が傷むのを大幅に遅らせることができ、サービスマンが来て修理されるまでの間に商品が傷んでしまうのをほぼ確実に回避することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の空調冷凍装置1は、冷暖房時に、冷蔵系統(圧縮機37)或いは冷凍系統(圧縮機54)が故障した場合、蒸発器43、49から出た冷媒を故障した圧縮機37或いは圧縮機54を経由することなくカスケード熱交換器21に流入させて過冷却させると共に、空気調和機6の室内2の設定温度を、冷蔵、冷凍優先の故障時設定温度に変更するので、冷蔵ケース3や冷凍ケース4内の商品が傷むのを大幅に遅らせることが可能となる。
特に、冷蔵系統(圧縮機37)或いは冷凍系統(圧縮機54)が故障した場合は、カスケード熱交換器21のケース側通路21Bの出口温度TC2を故障時出口温度(例えば、−10℃)とするように制御を変更することにより、故障していない空気調和機6側の冷媒(空調用冷媒)によって冷却装置(冷却系統部)8側の冷媒(冷却用冷媒)を、冷凍ケース4や冷蔵ケース3での冷凍・冷蔵を優先する温度まで冷却することができ、冷蔵ケース3や冷凍ケース4内の商品の傷みをより遅らせることが可能となる。
さらに、この空調冷凍装置1は、上記バックアップ運転中の間は、空気調和機6側の遠隔操作装置29による運転状態や設定温度の変更操作を無視するので、使用者(コンビニエンスストアの店長等)が誤ってバックアップ運転を中止させてしまう場合を確実に回避することができる。また、このとき、遠隔操作装置29には、その旨のメッセージ(「バックアップ運転中」等)を表示させているので、使用者がバックアップ運転中であるために操作できないことが直ぐに判り、使用者に異常であるとの誤解を与えることも回避される。また、バックアップ運転中であっても、主コントローラ56に接続された遠隔操作装置57は使用可能なので、サービスマンはこの遠隔操作装置57を操作してバックアップ運転を停止させることができ、故障箇所の修理に支障が生じることもない。
なお、上記実施例ではコンビニエンスストアを例にあげて本発明を説明したが、それに限らず、室内の空調と冷却貯蔵設備の冷却を行う種々の冷凍システムに本空調冷凍装置に本発明は有効である。さらに、実施例で示した各設定値や配管構成はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。