JP2005212076A - ダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】 半導体デバイスのリード線などを加工する工具であって、工具の帯電を防止して、加工時における半導体デバイスの静電気による損傷を抑制できるダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具を提供する。
【解決手段】 本発明は、基材表面にダイヤモンド膜が被覆されたダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具である。基材は超硬合金またはサーメットであり、ダイヤモンド膜は最外層と内層を有する。ダイヤモンド膜の最外層は硼素を含有する導電性ダイヤモンド膜であり、最外層と基材とは電気的につながっている。最外層の平均表面粗さがRaで0.2μm以下であり、最外層におけるダイヤモンド結晶粒子の平均粒径が1.5μm以下である。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明は、基材表面にダイヤモンド膜が被覆されたダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具である。基材は超硬合金またはサーメットであり、ダイヤモンド膜は最外層と内層を有する。ダイヤモンド膜の最外層は硼素を含有する導電性ダイヤモンド膜であり、最外層と基材とは電気的につながっている。最外層の平均表面粗さがRaで0.2μm以下であり、最外層におけるダイヤモンド結晶粒子の平均粒径が1.5μm以下である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、半導体の製造など耐摩耗性、耐溶着性や高い加工精度が要求される分野において使用されるダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具に関するものである。
コンピュータや制御装置などの各種電子機器に組み込まれる半導体デバイスは、モールド工程、トリミング工程、フォーミング工程を経て製造される。モールド工程とはチップを外部から保護する樹脂封止の工程であり、トリミング工程とはモールディングされたリードフレームからパッケージを個別に取り出す工程である。また、フォーミング工程とはパッケージのリード線などを切断、成型する工程である。
これらの工程で使用されるダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具は、耐溶着性、耐摩耗性などが高いことが必要である。それはダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具の加工対象がモールド樹脂やリード線であることに起因する。モールド樹脂はダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具に溶着し易いだけでなく、モールド樹脂に含まれるシリカやマイカは工具を激しく摩耗させる。シリカやマイカはモールド樹脂の熱伝導性を高く、熱膨張係数を低くするために添加されている。
リード線を加工する場合、リード線には半田メッキが施されており、半田による溶着が起こり易い。また、近年、鉛フリー半田の使用が盛んになってきておリ、これらに含まれるパラジウムなどが工具を摩耗させる。このようなリード線を切断するために、基材に高硬度なダイヤモンド薄膜を被覆し、タイバーカットパンチとタイバーとの間に生じる摩擦力を小さくし、タイバーカットパンチの摩耗を防止することが特許文献1に記載されている。また、リード線の曲げ用ポンチの被覆膜として絶縁性のダイヤモンドを用いることが特許文献2に記載されている。この発明では、曲げ用ポンチの静電気対策として、ダイヤモンド被覆部と本体部を分割し、本体部を導電体で構成し、この二つを一体に構成することが提案されている。
近年、半導体デバイスは素子単体の縮小化や酸化膜の薄膜化により静電気放電による破壊電圧の低下が進行している。静電気から内部回路を守るため保護回路が製作されているが、これだけでは不十分であり、実装工程においても静電気対策が講じられている。
特許文献1などに記載されているダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具は、ダイヤモンド膜の耐摩耗性を利用した工具である。ダイヤモンド膜は通常絶縁体であり、静電気を帯び、静電気が放電するときパッケージが破壊する可能性がある。このため、特許文献2などに記載されている対策が採られているが十分ではなく、製品を加工した際にパッケージ内の回路へ放電することによりチップなどを破壊する恐れがある。つまり、静電気を帯びたダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具が製品に接触することにより、静電気放電が生じ製品が破壊してしまう。
一方、パッケージなどは、微細化と、高集積化が同時に進んでいるので、これらの製造に使用される工具や部品は、特に寸法精度が厳しい。例えば±1μm以内の寸法精度が求められる。
このようなことから本発明は、静電気による静電気破壊が起こらず、かつ耐溶着性・耐摩耗性も従来どおり優れ、寸法精度の高いダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具を提供することを目的とする。
本発明は、ダイヤモンド膜の優れた性能を維持しながら、硼素を添加して導電性のダイヤモンド膜とすることにより、加工中のパッケージの静電気を除電しようとするものである。
本発明は、基材表面にダイヤモンド膜が被覆されたダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具であって、基材が超硬合金またはサーメットであり、ダイヤモンド膜は最外層と内層を有し、ダイヤモンド膜の最外層は硼素を含有する導電性ダイヤモンド膜であり、最外層と基材とは電気的につながっていて、最外層の平均表面粗さがRaで0.2μm以下であり、最外層における結晶粒子の平均粒径が1.5μm以下であるダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具を提供するものである。
硼素を含有することで導電性を有するダイヤモンド膜を最表面に形成し、この導電性ダイヤモンド膜を基材と電気的に接続することで、工具に帯電した静電気を除電することができる。そのため、本発明工具は、半導体デバイスなどを加工する際、静電気の放電による半導体デバイスの損傷を回避することができる。
硼素を含有するダイヤモンド膜の基材への密着性は、膜の結晶性の影響を受けることがわかった。例えば、結晶性の良いダイヤモンド膜に硼素を含有させたものは、結晶性に劣るダイヤモンド膜に硼素を含有させたものよりも熱膨張係数が小さくなる。その結果、基材と膜との熱膨張係数の差が大きくなり、膜の残留応力が大きくなる。よって、膜密着性という観点だけからは結晶性の良い硼素含有ダイヤモンドは好ましくない。一方、結晶性が劣るダイヤモンド膜は、高い膜密着力を得ることができるが、結晶性が良い膜ほどの耐溶着性・耐摩耗性がないこともわかった。
そこで、本発明では膜の内層を結晶性が劣るダイモンド膜で構成して基材との膜密着性を良好にし、最表面には耐溶着性・耐摩耗性とも良好な結晶性が良い硼素含有ダイヤモンド膜を形成して、膜密着性と耐溶着性・耐摩耗性とを両立させた。ここで内層は、硼素を含有していても、いなくても良い。
本発明において、基材は、切削工具などに使用される硬度と強度を合わせ持つ超硬合金やサーメットが半導体製造用工具に適している。ダイヤモンド膜は、最外層と内層を有し、そのうち少なくとも最外層に硼素を含有させて導電性を持たせる。内層はダイヤモンド膜のうち、最外層以外の部分のことである。最外層と基材は、静電気を除電するために電気的につながっている。例えば内層、最外層などの被覆層すべてに導電性を持たせ、厚みの方向に電気的に接続するのが一つの例である。内層が絶縁性のダイヤモンドの場合は、最外層を内層より基材側にはみ出して被覆し最外層のみで基材に接続することもできる。こうすることにより、静電気を基材を通じて除電することができ、半導体デバイスの加工時に放電を生じて同デバイスが損傷することを抑制できる。
また、最外層の平均表面粗さをRaで0.2μm以下とすることにより、半田などの工具への溶着を防止でき、リード線の加工精度を高く保つことができる。なお、平均表面粗さはAFM(原子間力顕微鏡)で測定する。一般の触針式の表面粗さ計では、測定できないほど小さな平均表面粗さを持つからである。
また、最外層のダイヤモンド結晶の平均粒子径を1.5μm以下とすることが必要である。この範囲の規定とすることで、高い耐溶着性を得ることができる。この粒子径は走査型電子顕微鏡で測定される。
ダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具の最外層の電気抵抗が1000Ω・cm以下であることが望ましい。半導体製造時に発生する静電気を効率よく除電するためには、上記の範囲の導電性膜であることが望ましい。最外層、内層共に導電性膜とすると、電気抵抗はより小さくなる。この電気抵抗は、例えばダイヤモンド膜が被覆された工具を用意し、その膜表面の2点間で測定すればよい。
最外層は0.05μm以上1.5μm以下の厚さであることが望ましい。これは、最外層が内層と異なる性質を発現するために好ましい厚さである。例えば、内層が絶縁性のダイヤモンド膜である場合、上記厚さ限定により、最外層は静電気を除電するために望ましい導電性を持つことができる。
最外層が含有する硼素の量は、最外層の表面から内層に向けて傾斜的に増加していることが望ましい。このように傾斜組成を形成することにより、硼素含有による残留応力の影響を最小限に抑えることができる。ダイヤモンド膜に硼素を含有させた場合、膜の熱膨張係数は下がり、基材との間に生じる残留応力が大きくなることがわかった。しかし、この傾斜組成は、例えば内層を微細な組織で、かつ水素含有量が多く、結晶性の低いダイヤモンド膜となる条件で成膜し、最外層を水素含有量が少なく結晶性の高いダイヤモンド膜となる条件で成膜する。最外層のうち内層に接する部分では、内層の影響を受けて最表面と比較して水素含有量が多く、結晶性の低いダイヤモンドが形成される。そして、成長するに従い最外層は水素含有量が少なく結晶性の高いダイヤモンドとなるので、硼素の含有量は表面から内部に向かって傾斜的に増加するものと思われる。
最外層の硼素の含有量は、5.0×1019〜1.5×1021atoms/cm3(硼素原子の単位体積当たりの個数)であることが望ましい。この値は、静電気を充分に除電するための導電性を与えるために好ましい硼素の含有量である。この範囲にあると、製造時に微量硼素の制御が容易であり、またダイヤモンド膜の高い密着力を得ることができる。なお、本発明ではSIMS((Secondary Ion Mass Spectroscopy)2次イオン質量分析法)分析により、試料の厚さの方向に硼素や後で述べる水素の含有量を測定する。
最外層および内層は水素を含有していて、最外層が含有する水素の量は5.0×1019〜9.0×1020atoms/cm3(水素原子の単位体積当たりの個数)、内層が含有する水素の量は1.0×1021〜3.0×1022atoms/cm3であることが望ましい。ダイヤモンド膜中の水素の含有量は、基材とダイヤモンド膜の密着性と密接に関係する。一般に、水素の含有量が増えると、硼素の含有量が増えた場合とは逆に、その熱膨張係数が大きくなる。内層に水素含有量が多く熱膨張係数が大きなダイヤモンド膜を形成して基材との熱膨張係数差を小さくすることで、基材と膜との密着性を高めることができる。その結果、膜の耐剥離性を高めることができる。
また、気相合成ダイヤモンド膜中の水素の含有量は、ダイヤモンド膜の結晶性とも密接に関連がある。上記範囲の水素を最外層に含有することで、最外層は水素含有量が少なく結晶性が良い膜とすることができ、耐溶着性・耐摩耗性を向上させることができる。併せて、上記範囲の水素を内層に含有することで、内層は微細な組織を維持した結晶性の低いダイヤモンド膜とすることができる。なお、内層は、硼素を含む導電性の場合と、含まない絶縁性の場合がある。
最外層の水素含有量は、最外層における硼素の挙動と同様であって、最外層の表面から内層との界面に向けて傾斜的に増加する。したがって、最外層の水素含有量は、内層の含有量よりも少ない。この理由は、最外層が、結晶性の高いダイヤモンド膜の条件で成膜されるため、水素を排除しながらダイヤモンド膜が成長するためと推定される。最外層の水素含有量が、5×1019atoms/cm3以上9×1020atoms/cm3以下のとき、耐溶着性・耐摩耗性が向上する。
内層のダイヤモンド膜の断面組織は、微細なダイヤモンドがダイヤモンド膜の成長方向に細長く配列し、かつその短径が0.001μm以上0.1μm以下であることが望ましい。断面が微細組織になっていることでダイヤモンド膜自体の強度が向上し、加工による亀裂の発生・進展を防ぐことができる。また、このような組織とすることで、ダイヤモンドの結晶成長が抑えられ、表面粗さの小さいダイヤモンド膜を形成できる。その結果、研磨しなくても高精度な工具表面を得ることができる。しかも、上記微細組織に高い水素含有量を持たすことにより、膜の熱膨張係数を極限まで大きくすることができ、膜の密着性という観点からは望ましい状態となる。
内層のダイヤモンド膜の断面組織における微細ダイヤモンドのアスペクト比が2以上20以下であることが望ましい。こうすることによりダイヤモンド膜の強度が向上し、表面粗さが小さくなる。
導電性ダイヤモンド膜が気相合成されたままのダイヤモンド膜であることが望ましい。合成されたままのダイヤモンド膜の表面粗さが小さく、ダイヤモンド膜被覆工具の寸法精度が高いので、研磨することなくそのまま使用できる。ダイヤモンド膜の厚さを調整する方法は、成膜の途中で膜厚を測定し、追加する膜厚を定め、その後の成長時間を定めることができる。そのとき、ダイヤモンド膜の形成を中止した厚さのところに、境界層ができる。
このとき、基材の表面粗さが最外層の表面粗さに影響を与えるので、目的に応じた基材を使用することが望ましい。表面粗さの小さな工具を得るには、研磨された基材をまた、表面粗さの比較的大きなものは研削したままの基材を用いるなどの方法が考えられる。
本発明のダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具は、最外層に薄い導電性のダイヤモンド膜を配置している。したがって、工具は帯電することがなく、また、仮に半導体デバイスのパッケージが帯電したとしても工具に接触することでパッケージの静電気は除電され、パッケージの放電破壊を防止できる。
また、最外層の平均表面粗さや、そのダイヤモンド結晶粒径を特定することで、高い耐溶着性や耐摩耗性を実現することができる。
半導体製造用工具の一例として、リードフレーム曲げおよび切断加工用工具を例にあげて本発明工具を説明する。図1に曲げダイ8、カット・ベンド-パンチ9およびカットダイ10を使って、パッケージ5のハンダ7が被覆されたアウターリード6を加工する例を示す。曲げダイ基材2、カット・ベンド-パンチ基材3およびカットダイ基材4はそれぞれ超硬合金からなり、その表面にはダイヤモンド膜1が形成されている。このダイヤモンド膜1は、少なくともお互いに摺動する部分や加工に作用する部分に形成されている。
図1の曲げダイ8とカット・ベンド-パンチ9は、アウターリードを押し曲げかつカットダイ10により切断する構成となっている。図1の曲げダイ8では、アウターリードが接する突起部11から切断摺動面までダイヤモンドが被覆されている。図1(A)は加工前の状態を表すもので、曲げダイ8の上にパッケージ5がセットされ、突起部11にはアウターリード6が載った状態となっている。曲げダイ8の上方にはカット・ベンド-パンチ9がセットされ、横にはカットダイ10がセットされている。
加工を行う際には、図1(B)に示すように、カット・ベンド-パンチ9が相対的に矢印の方向に移動し、パッケージ5のアウターリード6を曲げダイ8に押さえつけ、アウターリード6を曲げる。その後、図1(C)に示すように、カットダイ10が曲げダイ8の側面に沿って相対的に矢印の方向へ移動し、その角部でアウターリード6を切断する。このとき、カット・ベンド-パンチ9の右側側面はカットパンチの役割を果たしている。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
パッケージのアウターリードを曲げ、且つ切断する図1に示す工具を製作した。まず、WC-8%Coの超硬合金が、曲げダイ8、カット・ベンド-パンチ9およびカットダイ10の基材として準備された。パッケージのアウターリード加工には高い寸法精度が要求されるので、これらの超硬合金のダイヤモンドを被覆する面はすべて高精度に研磨してある。
これらの基材すなわちダイ基材2、カット・ベンド-パンチ基材3およびカットダイ基材4を1つの組として製作し、各基材に浸炭処理を行った。浸炭処理の条件は、上記の各基材を熱フィラメントCVD装置にセットして、1.5体積%メタン−水素ガス雰囲気で、圧力15.0kPa、処理温度950℃で2時間であった。
得られた基材を、8%の硝酸液に浸漬し超硬合金中の結合相を除去した後よく洗浄、乾燥した。次に、基材に超微粒ダイヤモンドを塗布した。4〜6nmの粒径を有する多結晶ダイヤモンド粉末0.02gをイソプロピルアルコール100ccに分散させた。この液の中に基材を浸漬し、10分間超音波をかけた。基材に付着した超微粒ダイヤモンドはダイヤモンド成膜時の核生成の起点となる。
表1は内層の、表2は最外層のダイヤモンド膜の製造条件を、また表3はダイヤモンド膜の特性をそれぞれ示す。試料番号は表1、2および3で共通とした。内層は最外層の内側に位置するダイヤモンド膜のことで、この実施例では基材に接している。最外層は工具の表面にある部分で、本発明では硼素を含有し、導電性を持っている。メタン濃度は、キャリアである水素に対するメタンの量を体積%で示す。F温度はフィラメントの温度を示している。
また表1および2の中のB流量について説明する。ダイヤモンド膜を導電性にするために、硼素を添加する。ダイヤモンド膜へ硼素を添加する方法は、通常気体であるジボランやトリメチルボロンを直接反応系に供給する方法が用いられる。その他に、ホウ酸を含有した有機溶媒やホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルにアルゴンガスまたは水素ガスをバブリングして反応系に供給するする方法が用いられる。今回はホウ酸トリメチルをアルゴンガスでバブリングする方法を用いたが、上記いずれの方法でも同様の結果を得ることができる。B流量は、そのときのArガスの標準状態の流量である。
まず、3μmの厚さの内層を表1に示す条件で作製した。B流量がゼロのものは絶縁性であり、ゼロでないものは導電性のダイヤモンド膜である。表1に示す水素流量(H流量)で製作されたダイヤモンド膜は、最外層と比較して水素含有量が多く結晶性の悪いダイヤモンド膜である。内層の成膜はいずれも膜厚が2.5μmに達すると予想される時点で停止して実際の膜厚を測定し、不足分を追加して成膜した。ダイヤモンド膜の断面を研磨してエッチングすると、成長を一時停止した痕跡が残っていた。ただし、試料番号1は、内層のない比較例であり条件の記載はない。
次に、内層の上に最外層を表2に示す条件で形成した。最外層は工具の表面部分で、本発明では硼素を含有し、導電性を持っている。試料番号1のものは、内層がないので最外層の厚さが4μmであった。内層の製造条件と比較すると、最外層の製造条件は、圧力が約6倍高く、水素流量は約半分以下と少なく、フィラメント温度は若干低い。
このようにして得られたダイヤモンド膜の表面粗さ、最外層の平均粒径、最外層の硼素(表3において「最外層のB」と記した。)の含有量、内層と最外層の水素(表3において「最外層のH」、「内層のH」と記した。)の含有量および電気抵抗を調べ、表3に示した。表3から明らかなように、試料番号1のダイヤモンド膜は、剥離していて比較例である。試料番号2は平均表面粗さが0.2μmを越え、平均粒径が1.5μmを越えていて比較例である。
電気抵抗は、ダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具の最外層面の値を測定した。内層が硼素を含む場合とそうでない場合を比較すると、硼素を含む方が電気抵抗は低くなる。硼素や水素の含有量はいろいろな製造条件に依存するが、それぞれの元素の供給量の目安であるB流量や水素流量の増減に関係している。表面粗さはAFMで測定し、平均粒径は最外層の表面をSEMで観察して測定した。
硼素と水素の含有量は、SIMS((Secondary Ion Mass Spectroscopy)2次イオン質量分析法)分析により、試料番号4の厚さ方向に測定した。横軸に表面からの深さ、縦軸に原子数を対数グラフでとり、SIMSの測定結果を図2に示した。表面から約1μmより深い部分では内層は結晶性が低く導電性であって、水素、硼素共にほぼ一定量含有している。
これに対して最外層中の硼素は、図2のBで示すように、最外層の表面部で含有量が少なく、内層に近づくに従いほぼ直線的に増加する。図2の中で、鎖線で示したのは内層が絶縁性の場合の硼素の予想含有量グラフである。最外層の水素の含有量は、表面から0.7μm程度の深さまでゆるい傾斜で増加し、そこから内層に向けて急激に含有量が増加する。このことから水素の含有量は、結晶性の低い内層の影響を0.3μm程度の成膜で解消することを示していると推定される。なお、表3に示されている最外層の水素と硼素の含有量は図2においてY軸に交わる部分の値を、また内層の水素量は図2の平坦な部分の値である。
実施例1で作製した試料番号6のダイヤモンド膜の内層に相当する断面をSEMで観察した。その結果を図3に示す。ダイヤモンド膜を基材と共に切断しその表面を研磨したのち、水素プラズマ中でエッチングし、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察したものである。微細ダイヤモンドがダイヤモンドの成長方向に細長く配列し、その短径が大部分0.1〜0.01μm程度であることがわかる。また、アスペクト比が2〜20の範囲に大部分のものが含まれることも判る。
これらの被覆されたままのパンチ・ダイを用い、鉛フリーハンダが被覆されたリードフレームの曲げおよび切断加工を図1に示す工程で行った。最大加工数は、100万回とした。評価項目は、10万回、50万回、100万回において、ダイヤモンド膜上へハンダが付着しているかどうか、膜の剥離があるかどうかで評価し表4に示した。
耐溶着性は、溶着の大きさが3μm以下程度の大きさで溶着している場合を二重丸とし、うっすらと平らに10μm以下程度の大きさに溶着している場合が一重丸であり、それを越えると歩留まりが悪くなるので×とした。耐剥離性は、剥離の大きさと数で評価したが、歩留まりが悪くなる程度の場合を×、まだ使用できる程度の場合を一重丸とした。良好な半導体製造用工具は、100万回の使用に十分に耐えることができた。その結果を表4に示す。
試料番号1は、剥離しているので使用できない。試料番号2は、最外層を製作するときの基材の温度が1000℃と高く、表面粗さが大きくなり耐溶着性に劣る結果となった。試料番号4〜8は、内層が導電性を有し、電気抵抗が小さく、かつ耐剥離製も良好な結果を得ることができた。以降の試料においても、50万回以上使用することができ、十分実用できる範囲であった。試料番号11のものは、導電性が若干劣るので条件によってはLSIなどが放電破壊する可能性がある。
本発明工具は、帯電を防止できるため、半導体デバイスなど、静電気による絶縁破壊を回避する必要のある製品の加工分野に有効利用することが期待される。
1 ダイヤモンド膜
2 ダイ基材
3 カット・ベンド-パンチ基材
4 カットダイ基材
5 パッケージ
6 アウターリード
7 ハンダ
8 曲げダイ
9 カット・ベンド-パンチ
10 カットダイ
11 突起部
2 ダイ基材
3 カット・ベンド-パンチ基材
4 カットダイ基材
5 パッケージ
6 アウターリード
7 ハンダ
8 曲げダイ
9 カット・ベンド-パンチ
10 カットダイ
11 突起部
Claims (9)
- 基材表面にダイヤモンド膜が被覆されたダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具であって、
前記基材が超硬合金またはサーメットであり、
前記ダイヤモンド膜は最外層と内層を有し、
前記ダイヤモンド膜の最外層は硼素を含有する導電性ダイヤモンド膜であり、
前記最外層と基材とは電気的につながっていて、
前記最外層の平均表面粗さがRaで0.2μm以下であり、
前記最外層におけるダイヤモンド結晶粒子の平均粒径が1.5μm以下であることを特徴とするダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具。 - 前記最外層の電気抵抗が1000Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1記載のダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具。
- 前記最外層は0.05μm以上1.5μm以下の厚さであることを特徴とする請求項1または2に記載のダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具。
- 前記最外層が含有する硼素は、最外層の表面から内層に向けて傾斜的に増加していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具。
- 前記最外層の硼素の含有量は、5.0×1019〜1.5×1021atoms/cm3(硼素原子の単位体積当たりの個数)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具。
- 前記最外層および内層は水素を含有していて、最外層が含有する水素の量は5×1019〜9×1020atoms/cm3(水素原子の単位体積当たりの個数)、内層が含有する水素の量は1.0×1021〜3.0×1022atoms/cm3であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具。
- 前記内層のダイヤモンド膜の断面組織は、微細ダイヤモンドがダイヤモンド膜の成長方向に細長く配列し、かつその短径が0.001μm以上0.1μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具。
- 前記内層のダイヤモンド膜の断面組織における微細ダイヤモンドのアスペクト比が2以上20以下であることを特徴とする請求項7に記載のダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具。
- 前記導電性ダイヤモンド膜が気相合成されたままのダイヤモンド膜であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のダイヤモンド膜被覆半導体製造用工具。
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