JP2005205947A - 車両の動揺抑制装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 動揺抑制装置4は、トンネルT内を車両1が走行するときにこの車両1に作用する空気力の変動によって生ずるこの車両1の動揺を抑制する。動揺抑制装置4は、トンネルT内を車両1が走行するときに車両底面1aから空気Fを噴射して車両底面1aの空気の流れと車両側面1bの空気の流れとが交わるのを防ぎ、車両1の動揺の原因となる渦の発生を抑える。空気圧検出装置11は、トンネルTへの車両1の突入を検出しこの検出結果に基づいて流体噴射装置9,10を制御装置13が動作制御する。流体噴射装置9,10は、車両底面1aなどに形成された流体取入口5,6から取り込まれた空気Fを流体送出装置9a,10aによって圧縮してスリット部から噴射する。
【選択図】 図1
Description
図15に示す縦軸はヨーイング振動角加速度(rad/sec2)であり、横軸は時間(sec)である。図16に示す縦軸はヨーイングモーメント(Nm)であり、横軸は時間(sec)である。近年、新幹線などの高速列車がトンネルT内を移動中に、車両101に加わる変動空気力によって車両101が揺れて乗り心地が低下する問題が発生しており、この変動空気力は車両底面付近から発生する渦が主な原因の一つであることが分かっている。図15及び図16に示すように、明かり区間を車両101が走行する場合に比べて、トンネル区間を車両101が走行する場合には、ヨーイング振動角加速度及びヨーイングモーメントが大きく変化しており、明かり区間に比べてトンネル区間では車両101が大きく動揺している。
図17(A)に示すように、トンネルT内を車両101がx軸方向に走行すると車両101の周囲の空気の流れが乱れて車両側面101bとトンネル側面T1との間に渦Vが発生し、車両101を左右に動揺させる空気力が車両101に作用する。図17(B)に示すように、車両側面101bとトンネル側面T1との間には、列車からみて車両101の進行方向とは逆方向に空気の流れが生じており、図17(C)に示すように車両底面(床下)101aと軌道面R3との間にも、車両101の進行方向とは逆方向に空気の流れが生じている。図17(A)に示すように、車両底面101a付近では車両底面101aと軌道面R3との間の距離が短いため、車両101の走行により車両101に空気が引きずられて空気の強い流れが生じる。図17(B)(C)に示すように、車両底面101aの空気の流れと車両側面101bの空気の流れとには差があるため、図17(A)に示すように速度差のある流れが交わるところでは渦Vが発生する。この渦Vは、先頭車両近くでは車両101の下側付近に留まっているが、トンネル側面T1に衝突すると巻き上がり車両側面101bに沿って広がり、後尾車両に向かうほど車両側面101bで大きく広がる。先頭車両から後尾車両に向かってこの渦Vが移動すると、車両側面101bに圧力の変化が生じて変動空気力が発生し、車両101に沿って移動する空気が最後尾の車両側面101bから剥離したときには、さらに大きな圧力変化が生じるため後尾車両ほど揺れが強くなる。
図18に示す縦軸は、模型車両に作用する空気力の左右成分(kN)であり、横軸は時間(sec)である。図18に示すように、仕切板を装着した場合には仕切板を装着しない場合に比べて、圧力の変動が減少するため空気力の左右成分の変動が小さくなり模型車両に発生する動揺が小さくなっている。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、トンネル(T)内を車両(1)が通過するときにこの車両に作用する空気力の変動によって生ずるこの車両の動揺を抑制する車両の動揺抑制装置であって、前記車両の底面(1a)と通路面(R3)との間の空間(S1)と、前記車両の側面(1b,1c)と前記トンネル側面(T1,T2)との間の空間(S2,S3)とを仕切るように、これらの空間の間に流体(F)を噴射する流体噴射手段(9,10)を備えることを特徴とする車両の動揺抑制装置(4)である。
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る車両の動揺抑制装置を備える車両がトンネル内を走行している状態を示す正面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る車両の動揺抑制装置を備える車両がトンネル内を走行している状態を示す側面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る車両の動揺抑制装置のスリット部の斜視図である。
空気圧検出装置11,12は、車両1がトンネルTに突入したときの空気圧Pの変化と、車両1がトンネルTから退出したときの空気圧Pの変化とを検出する装置である。車両1がトンネルT内に突入すると突入時に発生する圧力波(圧縮波及び膨張波)がトンネルTの入口と出口との間を音速で行き来するため、図4(C)に示すように車両1に加わる圧力が複雑に変化する。空気圧検出装置11は、図4(A)に示すように、トンネルT内に車両1が突入したときには、図4(C)に示すように先頭の車両1に作用する空気圧Pの時間変動が大きくなるためこの空気圧Pの変化を検出する。空気圧検出装置12は、図4(B)に示すように、トンネルT外に車両1が退出したときには、図4(C)に示すように先頭の車両1に作用する空気圧Pの時間変動が収まり、空気圧Pが明かり区間走行中の圧力(略大気圧と見なせる圧力)に戻るためこの空気圧Pの変化を検出する。空気圧検出装置11,12は、車両1の外部の空気圧Pの変化に応じた電気信号を空気圧情報として出力する圧力センサなどである。
図5は、この発明の第1実施形態に係る車両の動揺抑制装置の動作を説明するためのフローチャートである。以下では、制御装置13の動作を中心として説明する。
ステップ(以下、Sという)100において、空気圧検出装置11,12に制御装置13が動作開始を指令する。空気圧検出装置11,12に制御装置13が検出動作開始を指令すると空気圧検出装置11,12が車両1の外部の空気圧Pの変化を検出して、この検出結果を空気圧情報として制御装置13に出力する。
(1) この第1実施形態では、車両底面1aと軌道面R3との間の空間S1と、車両側面1bとトンネル側面T1との間の空間S2とを仕切るように、これらの空間S1,S2の間に空気Fを流体噴射装置9が噴射する。また、この第1実施形態では、車両底面1aと軌道面R3との間の空間S1と、車両側面1cとトンネル側面T2との間の空間S3とを仕切るように、これらの空間S1,S3の間に空気Fを流体噴射装置10が噴射する。その結果、空間S1内の空気と空間S2内の空気とが接するのを防ぐとともに、空間S1内の空気の流れと空間S3内の空気の流れとが接するのを防ぐことができる。その結果、車両1の動揺の原因となる渦の発生を抑えることができる。
図6は、この発明の第2実施形態に係る車両の動揺抑制装置を備える車両がトンネル内を走行している状態を示す正面図である。図7は、この発明の第2実施形態に係る車両の動揺抑制装置を備える車両がトンネル内を走行している状態を示す側面図である。以下では、図1〜図4に示す部分と同一の部分については同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図6及び図7に示す速度検出装置14は、車両1の速度を検出する装置であり、車輪3a,3bの回転数に応じて発生する距離パルス信号を速度情報として出力する速度発電機などである。ATS地上子15は、自動列車停止装置(ATS)のATS車上子16aとの間で相互に情報を送受信するために地上側の特定地点に設置されたコイルである。
図8は、この発明の第2実施形態に係る車両の動揺抑制装置の動作を説明するためのフローチャートである。
S200において、現在位置検出装置16に制御装置13が動作開始を指令する。現在位置検出装置16に制御装置13が動作開始を指令すると、ATS地上子15からの信号をATS車上子16aが受信可能な状態になる。
(1) この第2実施形態では、車両1が通過するトンネルTに関するトンネル情報をトンネル情報記憶装置17が記憶し、この車両1の現在位置に関する現在位置情報とトンネル情報とに基づいて流体噴射装置9,10を制御装置13が動作制御する。その結果、トンネル区間を正確に検知することができるためトンネル区間を走行するときだけ空気Fを噴射して沿線の騒音を防ぐことができる。
図9は、この発明の第3実施形態に係る車両の動揺抑制装置を備える車両がトンネル内を走行している状態を示す斜視図である。
図9に示すノズル部9e,10eは、空気Fを噴射する噴射口である。ノズル部9e,10eは、車両1の長さ方向に沿って間隔をあけて複数形成されており、ノズル部9eは車両底面1aの一方の縁部に配置され、ノズル部10eは車両底面1aの他方の縁部に配置されている。ノズル部9e,10eは、単数又は複数列にわたり直線状又はジグザグ状に配置された多数の孔であり、管路9c,10c内の空気Fを高圧高速の空気ジェットにして車両底面1aから噴射する。ノズル部9e,10eは、図3に示すスリット部9d,10dと同様に車両1の速度と略同一の速度で空気Fを噴射する。この第3実施形態には、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果がある。
図10は、この発明の第4実施形態に係る車両の動揺抑制装置を備える車両がトンネル内を走行している状態を示す正面図である。
図10に示す流体噴射装置9,10は、車両1の両側から空気Fを噴射可能であり、トンネルT内にこの車両1が突入したときにトンネル側面T1,T2に近い側から空気Fを噴射する。図10に示すような複線トンネル内を車両1が通過する場合には、トンネル側面T2との間の距離が長い車両側面1c側にくらべて、トンネル側面T1との間の距離が短い車両側面1b側のほうが圧力の変動が大きくなる。このため、制御装置13は、図示しない列車情報読取装置によって読み取られた車両1の進行方向などに関する列車情報に基づいて、上下線のいずれの軌道Rを車両1が走行しているかを判断し、図10に示すようにトンネル側面T1,T2に近い側から空気Fを噴射するように流体噴射装置9,10を動作制御する。この第4実施形態では、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、車両1の動揺の主要因となる側の渦の発生を重点的に抑えることができる。
図11は、この発明の第5実施形態に係る車両の動揺抑制装置を備える車両がトンネル内を走行している状態を示す正面図である。
図11に示す流体噴射装置9,10は、噴射角度が軌道面R3に対して略水平になるように、高圧高速の空気ジェットを車両1の速度と略同じ速度で車両底面1aから噴射する。この第5実施形態には、第1実施形態〜第4実施形態の効果と同様の効果がある。
図12は、この発明の第6実施形態に係る車両の動揺抑制装置を備える車両がトンネル内を走行している状態を示す正面図である。
図12に示す流体噴射装置9,10は、図12に示すような単線トンネル内を車両1が走行するときには、車両底面1aの両縁部から空気Fを噴射する。制御装置13は、トンネル情報記憶装置17が記憶するトンネル情報と現在位置検出装置16が検出した現在位置情報とに基づいて、トンネルTが単線トンネルであるか否かを判断する。制御装置13は、単線トンネル内に車両1が突入したときには、車両底面1aの両縁部から空気Fを噴射するように流体噴射装置9,10を動作制御する。この第6実施形態には、第1実施形態〜第5実施形態の効果と同様の効果がある。
図13は、この発明の第7実施形態に係る車両の動揺抑制装置を備える車両がトンネル内を走行している状態を示す斜視図である。
図13に示す流体噴射装置9,10は、スリット部9d,10dが車両1の台車3付近に配置されている。このため、この第7実施形態では、車両1の動揺の主要因となる台車3付近の渦の発生を重点的に抑えることができるとともに、動揺抑制装置4がコンパクトになり動揺抑制装置4の低コスト化を図ることができる。
図14は、この発明の第8実施形態に係る車両の動揺抑制装置を車両毎に備える列車がトンネル内を走行している状態を示す側面図である。
図14に示す流体噴射装置9,10は、車両1毎に設置されており、制御装置13は車両1毎に流体噴射装置9,10を動作制御する。制御装置13は、図14に示すように、車両1の揺れが比較的小さい先頭の車両1側では空気Fの噴射量が少なくなるように流体噴射装置9,10を制御し、車両1の揺れが比較的大きい後尾の車両1側では空気Fの噴射量が多くなるように流体噴射装置9,10を制御する。この第8実施形態では、各車両1の揺れの程度に応じて空気Fの噴射量を車両1毎に調整することができるため車両1毎に揺れを抑制することができる。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、車両1として鉄道車両を例に挙げて説明したが、自動車などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、流体として空気Fを噴射する場合を例に挙げて説明したが、水などの液体、空気以外の気体、空気と水の混合物などのような他の流体を噴射することもできる。さらに、この実施形態では、車両1側から流体を噴射する場合を例に挙げて説明したが、トンネルT側から流体を噴射することもできる。
1a 車両底面
1b,1c 車両側面
2 車体
3 台車
4 動揺抑制装置
5,6 流体取入口(流体取入口)
7,8 管路
9,10 流体噴射装置
9a,10a 流体送出装置
9b,9c,10b,10c 管路
9d,10d スリット部
9e,10e ノズル部
11,12 空気圧検出装置
13 制御装置
14 速度検出装置
15 ATS地上子
16 現在位置検出装置
16a ATS車上子
16b ATS受信機
17 トンネル情報記憶装置
R 軌道
R1,R2 レール
R3 軌道面(通路面)
S1,S2,S3 空間
T トンネル
T1,T2 トンネル側面
Claims (13)
- トンネル内を車両が通過するときにこの車両に作用する空気力の変動によって生ずるこの車両の動揺を抑制する車両の動揺抑制装置であって、
前記車両の底面と通路面との間の空間と、前記車両の側面と前記トンネル側面との間の空間とを仕切るように、これらの空間の間に流体を噴射する流体噴射手段を備えること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項1に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記流体噴射手段は、空気及び/又は水を噴射すること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記車両がトンネルに突入したときに前記流体噴射手段が動作し、この車両がこのトンネルから退出したときに前記流体噴射手段が停止するように、この流体噴射手段を制御する制御手段を備えること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項3に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記流体噴射手段は、前記車両毎に設置されており、
前記制御手段は、前記流体噴射手段を前記車両毎に動作制御すること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項3又は請求項4に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記車両がトンネルに突入したときの空気圧の変化と、前記車両がトンネルから退出したときの空気圧の変化とを検出する空気圧検出手段を備え、
前記制御手段は、前記空気圧検出手段の検出結果に基づいて前記流体噴射手段を動作制御すること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記車両が通過するトンネルに関するトンネル情報を記憶するトンネル情報記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記車両の現在位置に関する現在位置情報と前記トンネル情報とに基づいて前記流体噴射手段を動作制御すること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項6に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記制御手段は、前記車両が通過するトンネルの長さが所定長さよりも短いときには、前記流体噴射手段の動作を規制すること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項6又は請求項7に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記トンネル情報記憶手段は、前記トンネルの位置及び前記トンネルの長さを前記トンネル情報として記憶すること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記流体噴射手段は、前記流体を噴射する噴射口を備え、
前記噴射口は、前記車両の長さ方向に沿って連続して形成されたスリット部、又は前記車両の長さ方向に沿って間隔をあけて複数形成されたノズル部であること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項9に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記噴射口は、前記車両の台車付近に配置されていること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記流体噴射手段は、前記車両の両側から流体を噴射可能であり、トンネル内にこの車両が突入したときにトンネル側面に近い側から流体を噴射すること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記流体噴射手段は、前記流体を送出する流体送出装置を備え、
前記流体送出装置は、空気を圧縮する空気圧縮機又は空気を送出する送風機であること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。 - 請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の車両の動揺抑制装置において、
前記車両の外部から空気を取り入れる空気取入口を備え、
前記流体噴射手段は、前記空気取入口から取り込まれた空気を噴射すること、
を特徴とする車両の動揺抑制装置。
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