JP2005205582A - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成された3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、(b)上部層として、化学蒸着形成した状態でκ型またはθ型の結晶構造を有し、かつ、特定の組成式:(Al1−X TiX )2 O3、を満足するAl系酸化物層の表面に、変態発生割れ起点材として、化学蒸着形成され、かつ、特定の組成式を満足するTi酸化物微粒を分散分布させた状態で、加熱処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造を有するAl系酸化物層の結晶構造をα型結晶構造に変態してなると共に、1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型Al系酸化物層、以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる。
【選択図】なし
Description
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成した状態でα型の結晶構造を有し、かつ1〜15μmの平均層厚を有する蒸着α型酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている。
工具基体の表面に、通常の化学蒸着装置で、下部層として、通常の条件で、上記Ti化合物層を形成した後、同じく通常の条件で、κ型またはθ型の結晶構造を有し、かつ、
組成式:(Al1−X TiX )2 O3 、
で現した場合、電子線マイクロアナライザー(EPMA)で測定して、X値が0.01〜0.05を満足するAl系酸化物[以下、(Al,Ti)2 O3 で示す]層を蒸着形成し、ついで、前記(Al,Ti)2 O3 層の表面を、同じく化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:体積%で、TiCl4:0.2〜3%、CO2:0.2〜10%、Ar:5〜50%、H2:残り、
反応雰囲気温度:900〜1020℃、
反応雰囲気圧力:7〜30kPa、
時間:1〜10分、
の条件で処理すると、前記(Al,Ti)2 O3 層の表面には、
組成式:TiOY 、
で表わした場合、オージェ分光分析装置で測定して、Y値がTiに対する原子比で1.2〜1.9、を満足するTi酸化物微粒が分散分布するようになり、この状態で、加熱処理、望ましくは圧力:7〜50kPaのAr雰囲気中、温度:1000〜1200℃に10〜120分間保持の条件で加熱処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造の(Al,Ti)2 O3 層をα型結晶構造の(Al,Ti)2 O3 層に変態させると、この結果の加熱変態α型(Al,Ti)2 O3 層においては、前記変態前の(Al,Ti)2 O3 層の表面に一様に分散分布したTi酸化物微粒が前記κ型またはθ型の結晶構造からα型結晶構造へ変態する際に発生する割れ(クラック)の起点となることから、変態発生割れはきわめて微細化し、かつ一様に分散分布した状態となると共に、構成成分であるTiの作用で前記加熱変態時の結晶成長が抑制され、むしろ結晶の微細化が図られるようになり、この結果としてすぐれた耐チッピング性を具備するようになり、したがって、硬質被覆層の上部層が前記加熱変態α型(Al,Ti)2 O3 層、下部層が上記Ti化合物層(このTi化合物層には上記の条件での加熱処理では何らの変化も起らない)で構成された被覆サーメット工具は、特に激しい機械的熱的衝撃を伴なう高速断続切削加工でも、前記加熱変態α型(Al,Ti)2 O3 層が、α型Al2 O3 層の本来具備するすぐれた高温硬さおよび耐熱性と同等の高温硬さと耐熱性を具備した状態で、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、高強度を有する前記Ti化合物層の共存と相俟って、硬質被覆層におけるチッピング発生が著しく抑制され、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになるという研究結果を得たのである。
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成した状態でκ型またはθ型の結晶構造を有し、かつ、
組成式:(Al1−X TiX )2 O3 、
で表わした場合、電子線マイクロアナライザー(EPMA)で測定して、X値が原子比で0.01〜0.05を満足する(Al,Ti)2 O3 層の表面に、
変態発生割れ起点材として、化学蒸着形成され、かつ、
組成式:TiOY 、
で表わした場合、オージェ分光分析装置で測定して、Y値がTiに対する原子比で1.2〜1.9、を満足するTi酸化物微粒を分散分布させた状態で、加熱処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造を有する(Al,Ti)2 O3 層の結晶構造をα型結晶構造に変態してなると共に、1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型(Al,Ti)2 O3 層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
(a)下部層(Ti化合物層)の平均層厚
Ti化合物層は、自体が高強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高強度を具備するようになるほか、工具基体と上部層である加熱変態α型(Al,Ti)2 O3 層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)Ti酸化物微粒のY値
Ti酸化物微粒は、上記の通り蒸着(Al,Ti)2 O3 層のα型(Al,Ti)2 O3 層への加熱変態時に発生する割れの起点となることから、加熱変態α型(Al,Ti)2 O3 層における変態発生割れは、微細化し、かつ一様に分散分布したものとなり、この結果前記加熱変態α型(Al,Ti)2 O3 層はすぐれた耐チッピング性を具備するようになるが、そのY値がTiに対する原子比で1.2未満でも、また同1.9を越えても変態発生割れ微細化効果を十分に発揮させることができなくなることから、そのY値をTiに対する原子比で1.2〜1.9と定めた。
(c)上部層[加熱変態α型(Al,Ti)2 O3 層]のTiの含有割合および平均層厚
加熱変態α型(Al,Ti)2 O3 層は、構成成分であるAlの作用ですぐれた高温硬さと耐熱性を有し、かつ同Tiの作用で加熱変態時の結晶成長が抑制され、結晶が微細化された状態にあるので、加熱変態発生割れの均一微細分布と相俟って、すぐれた耐摩耗性と耐チッピング性を具備するようになるが、Tiの含有割合(X値)が、Alとの合量に占める割合で、原子比で(以下同じ)0.01未満では、十分な結晶微細化効果を発揮することができず、一方Tiの含有割合が同0.05を越えると変態に乱れが生じ、加熱処理でのκ型またはθ型結晶構造からα型結晶構造への変態を満足に行うことが困難になることから、Tiの含有割合(X値)を0.01〜0.05、望ましくは0.015〜0.035と定めた。
被削材:JIS・SCr420の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:450m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:5分、
の条件での合金鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は250m/min)、
被削材:JIS・S20Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:5分、
の条件での炭素鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
被削材:JIS・FC300の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:500m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:5分、
の条件での鋳鉄の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は250m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表7に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成した状態でκ型またはθ型の結晶構造を有し、かつ、
組成式:(Al1−X TiX )2 O3 、
で表わした場合、電子線マイクロアナライザー(EPMA)で測定して、X値が原子比で0.01〜0.05を満足するAl系酸化物層の表面に、
変態発生割れ起点材として、化学蒸着形成され、かつ、
組成式:TiOY 、
で表わした場合、電子線マイクロアナライザー(EPMA)で測定して、Y値がTiに対する原子比で1.2〜1.9、を満足するTi酸化物微粒を分散分布させた状態で、加熱処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造を有するAl系酸化物層の結晶構造をα型結晶構造に変態してなると共に、1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型Al系酸化物層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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JPH10140353A (ja) * | 1996-11-14 | 1998-05-26 | Mitsubishi Materials Corp | 硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を有する表面被覆超硬合金製切削工具 |
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JP2001310203A (ja) * | 1999-08-12 | 2001-11-06 | Mitsubishi Materials Corp | 切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具 |
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