しかしながら、図7に示す従来の燃料電池システム501では、例えば停止時において第1燃料容器555内の水とメタノール(すなわち、メタノール水溶液)が気化し、気液分離膜560を通って外部へ流出するため、第1燃料容器555におけるメタノール水溶液の液面が低下するような場合がある。このような場合にあっては、膜電極組立体553がメタノール水溶液の液面より露出することとなり、このような露出状態にて放置されると、膜電極組立体553の当該露出部分が乾燥することとなる。
このようなメタノール水溶液の気化(蒸発)は、長期間、燃料電池システム501を使用しない場合に起き易く、特に、燃料電池システム501を備える電子機器が、高温環境に放置されるような場合には、第1燃料容器555及び第2燃料容器554の内圧が上昇し、上記メタノール水溶液の気化がさらに促進され、膜電極組立体553の乾燥状態がより発生し易くなる。例えば、第1燃料容器555に収容されるメタノール水溶液の容量が200ml程度であるような場合にあっては、1日で約2〜3mlのメタノール水溶液が蒸発する。
一方、このような膜電極組立体553の乾燥状態が発生するような場合であっても、当該乾燥状態となっただけでは膜電極組立体553自体が損傷することはなく、再び第1燃料容器555内にメタノール水溶液を供給して、メタノール水溶液中に膜電極組立体553を浸漬させて、膜電極組立体553の表面を濡れ状態とさせることで、再び、膜電極組立体553としての機能を発揮できる状態とすることができ、その後、燃料電池システム501において、発電を継続して行なうことができる。
しかしながら、このようなメタノール水溶液の液面低下により、膜電極組立体553の一部が露出した状態あるいはその結果乾燥した状態とされ、他部が濡れ状態とされた状態にて、燃料電池システム501を起動させ、電力を取り出すと、膜電極組立体における発電電圧のバラツキが発生し、極が反転する転極が発生する場合がある。膜電極組立体553において転極が発生すると、膜電極組立体自体が損傷して発電能力が低下してしまうため燃料電池システム501において、安定した発電を行なうことができない場合があるという問題がある。
このような膜電極組立体の損傷が生じるような場合における実験データの一例を以下に具体的に示す。
燃料電池システムとして、膜電極組立体浸漬型の燃料電池システムを用い、膜電極組立体のアノード側表面の全体に燃料が到達している(すなわち、全体が燃料中に浸漬されている)場合と、上記アノード側表面の一部に燃料が到達していない場合とのそれぞれの場合において、その発電時の出力の比較を行った。なお、発電時におけるその他の諸条件はそれぞれの場合について同じとし、定電流での出力の比較を行った。
上記膜電極組立体のアノード側表面の全体に燃料が到達している状態にて、燃料電池本体の発電を行って電力を取り出した場合では、上記膜電極組立体の単位面積あたりの出力は、50mW/cm2であった。
一方、上記膜電極組立体のアノード側表面における表面積の約80%にのみ燃料が到達している状態にて、燃料電池本体の発電を行って電力を取り出した場合では、単位面積あたりの出力は、30mW/cm2であり、さらにこの状態で発電を継続すると出力が低下し、最後には出力が取れなくなった。
その後、発電を停止して、上記膜電極組立体のアノード側表面の全体に燃料が到達するようにアノードへの燃料補給を行い、当該到達している状態にて再び発電を行って電力を取り出した場合では、単位面積あたりの出力は、約25mW/cm2となり、出力の回復は見られなかった。この状態では電力が供給される機器側に電力不足が起こり、機器を使用することができなくなる。
このように、膜電極組立体の一部が露出した状態では、膜電極組立体に対して燃料が部分的にしか供給されず、出力の不安定化を招き、さらに、燃料供給口が露出されていることによりアノードに収容されている燃料の対流を十分に行うことができず、燃料供給も不十分となることが要因と推測される。さらに、このような状態において燃料電池本体の発電を行って電力の取り出しを行ったため、膜電極組立体において、燃料と接触していない部分が損傷を受け、その後に燃料との接触を行っても、既に損傷を受けた状態では本来得られるべき出力密度を得ることができなくなっているものと考えられる。
このような膜電極組立体553がメタノール水溶液から露出した状態、あるいはその結果乾燥(特に部分的な乾燥)した状態の発生と、燃料電池システム501の起動とにより、誘発される膜電極組立体553の損傷という問題点は、従来の燃料電池システムにおいては着目されておらず、特に、近年開発されつつある膜電極組立体浸漬型の燃料電池システムにおいて、新たに見出された課題であるとともに、膜電極組立体が存在するような様々な種類の燃料電池システムにおいても、供給する課題であると言える。
また、燃料電池システム501における発電効率向上の観点からは、第1燃料容器555内における(あるいはアノード551内における)膜電極組立体553の膜面積効率が大きく設定されていることが望ましい。そのため、第1燃料容器555内(あるいはアノード551内)において、その表面積が大きく確保できるように膜電極組立体553が設置されることとなる。しかしながら、このような場合にあっては、第1燃料容器555内に収容されているメタノール水溶液の増減が、浸漬されている膜電極組立体553の液面よりの露出に、より影響し易くなることとなり、上述の膜損傷発生の問題点が一層顕著なものとなる。
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、膜電極組立体に液体燃料を供給することで発電を行なう燃料電池システムにおいて、上記燃料電池システムの停止時において、上記液体燃料の気化等による上記膜電極組立体の液体燃料からの露出および乾燥を防止して、上記燃料電池システムの再起動の安定化を図ることができる燃料電池システム及びその発電方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
本発明の第1態様によれば、アノードと、上記アノードと対向して配置されたカソードと、上記アノードと上記カソードとの間に配置された膜電極組立体とを有する燃料電池本体と、
液体燃料を上記アノードに供給する燃料供給装置と、
上記膜電極組立体における上記アノード側表面の全体に、上記液体燃料が到達しているかどうかを検出する燃料検出部と、
上記燃料供給装置の駆動に必要な電力の供給を行う電力供給装置と、
上記燃料電池本体における発電開始前に、上記膜電極組立体の上記アノード側表面の全体に、上記液体燃料が到達しているかどうかを上記燃料検出部により検出させて、当該検出結果に基づいて上記液体燃料が到達していないと判断する場合に、上記電力供給装置により上記燃料供給装置を駆動させて上記アノードへの上記液体燃料の供給を行い、上記膜電極組立体の上記アノード側表面の全体に上記液体燃料を到達させてから、電力を生成可能に当該燃料電池本体の発電を開始可能させる制御装置とを備える燃料電池システムを提供する。
本発明の第2態様によれば、上記制御装置は、上記燃料供給装置による上記液体燃料の供給を開始させるとともに、上記燃料検出部により上記膜電極組立体の上記アノード側表面の全体に上記液体燃料が到達しているかどうかを検出させて、上記燃料検出部により上記到達が検出された後、上記燃料電池本体の発電を開始可能させる第1態様に記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第3態様によれば、上記電力供給装置は、上記燃料検出部による検出動作に必要な電力を供給する第1態様又は第2態様に記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第4態様によれば、上記燃料電池本体の少なくとも上記アノードをその内部に配置して、当該アノードに供給可能に上記液体燃料をその内部に収容する燃料容器をさらに備え、
上記燃料供給装置は、上記燃料容器に上記液体燃料を供給することで、上記アノードへの上記液体燃料の供給を行う第1態様から第3態様のいずれか1つに記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第5態様によれば、上記電力供給装置は、2次電池である第1態様から第4態様のいずれか1つに記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第6態様によれば、アノードと、上記アノードと対向して配置されたカソードと、上記アノードと上記カソードとの間に配置された膜電極組立体とを有する燃料電池本体と、
上記燃料電池本体の少なくとも上記アノードをその内部に配置して、当該アノードに供給可能に液体燃料をその内部に収容する第1燃料容器と、
上記第1燃料容器に収容されている上記液体燃料よりもその濃度が高い液体燃料原液を上記第1燃料容器に供給可能に収容する第2燃料容器と、
上記第2燃料容器から上記第1燃料容器に上記液体燃料原液を供給する燃料供給装置と、
上記膜電極組立体における上記アノード側表面の全体に、上記液体燃料が到達しているかどうかを検出する燃料検出部と、
上記燃料供給装置の駆動に必要な電力の供給を行う電力供給装置と、
上記燃料電池本体における発電開始前に、上記膜電極組立体の上記アノード側表面の全体に、上記液体燃料が到達しているかどうかを上記燃料検出部により検出させて、当該検出結果に基づいて上記液体燃料が到達していないと判断する場合に、上記電力供給装置により上記燃料供給装置を駆動させて、上記第2燃料容器から上記第1燃料容器への上記液体燃料原液の供給を行わせ、上記膜電極組立体の上記アノード側表面の全体に上記液体燃料を到達させてから、電力を生成可能に当該燃料電池本体の発電を開始可能とさせる制御装置とを備える燃料電池システムを提供する。
本発明の第7態様によれば、アノードと、上記アノードと対向して配置されたカソードと、上記アノードと上記カソードとの間に配置された膜電極組立体とを有する燃料電池本体と、
上記燃料電池本体の少なくとも上記アノードをその内部に配置して、当該アノードに供給可能に液体燃料をその内部に収容する第1燃料容器と、
上記第1燃料容器に収容されている上記液体燃料よりもその濃度が高い液体燃料原液を上記第1燃料容器に供給可能に収容する第2燃料容器と、
上記燃料電池本体における発電運転の際に、上記第2燃料容器から上記第1燃料容器に上記液体燃料原液を供給するとともに、発電停止の際に、上記膜電極組立体の上記アノード側表面を上記第1燃料容器に収容されている上記液体燃料中に浸漬させるように、上記第2燃料容器から上記第1燃料容器に上記液体燃料原液を供給する燃料供給装置とを備える燃料電池システムを提供する。
本発明の第8態様によれば、上記第2燃料容器は上記第1燃料容器よりも高い位置に配置され、
上記燃料供給装置は、重力の作用でもって、上記第2燃料容器より上記第1燃料容器への上記液体燃料原液の供給を行なう燃料用重力供給部を備える第7態様に記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第9態様によれば、上記燃料供給装置は、動力の作用でもって、上記第2燃料容器から上記第1燃料容器に上記液体燃料原液を供給する燃料用動力供給部を備え、
上記燃料電池本体における発電運転の際に、上記燃料用動力供給部により上記液体燃料原液の供給を行わせ、上記発電停止の際に、上記燃料用重力供給部により上記液体燃料原液の供給を行わせる制御装置をさらに備える第8態様に記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第10態様によれば、上記アノードと上記カソードとを接続する発電回路と、
上記第1燃料容器における上記液体燃料の収容量を検出する収容量検出部と、
上記燃料電池本体における発電運転の際に上記発電回路を接続して、発電停止の際に上記発電回路を遮断する回路遮断スイッチとをさらに備え、
上記収容量検出部が、上記燃料容器に収容されている液体燃料より上記膜電極組立体の少なくとも一部が露出されるような当該液体燃料の収容量を検出すると、上記回路遮断スイッチにより、上記発電回路の遮断あるいは遮断保持を行なう第7態様から第9態様に記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第11態様によれば、上記燃料電池本体における発電により、上記カソードで生成された生成物を回収する生成物回収容器と、
上記燃料電池本体における発電停止の際に、上記膜電極組立体における上記アノード側表面を上記第1燃料容器に収容されている上記液体燃料中に浸漬さえるように、上記生成物回収容器から上記第1燃料容器に上記生成物を供給する生成物供給装置とをさらに備える第9態様に記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第12態様によれば、上記生成物回収容器は上記第1燃料容器よりも高い位置に配置され、
上記生成物供給装置は、重力の作用でもって、上記生成物回収容器より上記第1燃料容器への上記生成物の供給を行なう生成物用重力供給部を備える第11態様に記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第13態様によれば、上記生成物供給装置は、動力の作用でもって、上記生成物回収容器から上記第1燃料容器に上記生成物を供給する生成物用動力供給部を備え、
上記燃料電池本体における発電運転の際に、上記生成物用動力供給部により上記生成物の供給を行わせ、上記発電停止の際に、上記生成物用重力供給部により上記生成物の供給を行わせる制御装置をさらに備える第12態様に記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第14態様によれば、上記第1燃料容器に収容された上記液体燃料の濃度を検出する濃度検出装置をさらに備え、
上記制御装置は、上記濃度検出装置により検出された上記液体燃料の濃度が、発電可能な濃度範囲内に入るように、上記燃料用動力供給部による上記第1燃料容器への上記液体燃料原液の供給量と、上記生成物用動力供給部による上記第1燃料容器への上記生成物の供給量との制御を行う第13態様に記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第15態様によれば、上記生成物は、水を主成分として含み、上記第1燃料容器に収容される上記液体燃料は、上記液体燃料原液を水で希釈したものである第7態様から第14態様のいずれか1つに記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第16態様によれば、上記液体燃料は、発電可能濃度範囲である1〜10wt%の範囲内の濃度を有するメタノール水溶液であり、上記液体燃料原液は、上記メタノール水溶液よりも高い濃度を有するメタノール水溶液又はメタノール原液である第7態様から第15態様のいずれか1つに記載の燃料電池システムを提供する。
本発明の第17態様によれば、アノードと、上記アノードと対向して配置されたカソードと、上記アノードと上記カソードとの間に配置された膜電極組立体と、上記アノードと上記カソードとを接続する発電回路とを有する燃料電池本体と、
液体燃料を収容し、かつ、上記燃料電池本体の少なくとも上記アノードをその内部に配置して、当該収容された液体燃料を上記アノードに供給可能とする燃料容器と、
上記燃料容器における上記液体燃料の収容量を検出する収容量検出部と、
上記燃料電池本体における発電運転の際に上記発電回路を接続して、発電停止の際に上記発電回路を遮断する回路遮断スイッチと、
上記収容量検出部により、上記燃料容器に収容されている液体燃料より上記膜電極組立体の少なくとも一部が露出されるような当該液体燃料の収容量が検出されると、上記回路遮断スイッチにより上記発電回路を遮断させるあるいは遮断保持を行わせる制御装置とを備える燃料電池システムを提供する。
本発明の第18態様によれば、アノード、カソード、及び膜電極組立体を有する燃料電池本体と、上記アノードに供給可能に液体燃料を収容する第1燃料容器と、上記液体燃料よりもその濃度が高い液体燃料原液を上記第1燃料容器に供給可能に収容する第2燃料容器とを備える燃料電池システムにおける発電方法であって、
上記燃料電池本体における発電停止の際に、上記膜電極組立体における上記アノード側表面を上記第1燃料容器に収容されている上記液体燃料中に浸漬させるように、上記第2燃料容器から上記第1燃料容器に重力の作用でもって、上記液体燃料原液を供給して、上記燃料電池本体にて発電可能な状態を保持して、
上記燃料電池本体における発電運転の際に、上記第1燃料容器にて当該発電により消費された上記液体燃料の補給を行なうように、上記第2燃料容器から上記第1燃料容器に動力の作用でもって、上記液体燃料原液を供給して、上記燃料電池本体にて所定の電力量の発電を継続して行なう燃料電池システムにおける発電方法を提供する。
本発明の第19態様によれば、アノードと、カソードと、及び膜電極組立体を有する燃料電池本体における発電開始前に、上記膜電極組立体の上記アノード側表面の全体に、上記液体燃料が到達しているかどうかを検出し、
上記検出結果に基づいて上記液体燃料が到達していないと判断される場合に、上記膜電極組立体の上記アノード側表面の全体に上記液体燃料を到達させるように、2次電力を用いて上記アノードへの上記液体燃料の供給を行い、
上記液体燃料の上記到達の後、電力を生成可能に上記燃料電池本体の発電を開始可能とさせる燃料電池システムにおける発電方法を提供する。
本発明の上記第1態様によれば、膜電極組立体に液体燃料を供給することで発電を行う燃料電池システムにおいて、発電開始前に、上記膜電極組立体のアノード側表面の全体に、上記液体燃料が到達しているかどうかを検出し、当該検出結果に基づいて到達していないと判断する場合には、上記液体燃料の供給を行って、上記膜電極組立体の上記アノード側表面の全体に当該液体燃料を到達させてから、燃料電池本体における発電を開始可能とさせることで、当該発電の際に上記膜電極組立体にて部分的に上記液体燃料が到達していない箇所が存在することを確実に防止することができる。これにより、上記膜電極組立体にて転極が発生することを確実に防止することができ、上記膜電極組立体の損傷の発生を確実に防止することができる。
また、このような発電停止中における上記液体燃料の供給は、燃料供給装置を上記燃料電池本体の発電により生成される電力とは別に電力の供給を行う電力供給装置により駆動させることにより行われるため、上記燃料電池本体において発電が行われていない状態でも、上記液体燃料の供給を確実に行うことができる。
従って、長期間の発電停止や高温環境に放置されること等により、上記膜電極組立体が部分的に乾燥された状態とされるような場合が生じても、発電の再起動を行う前に上述の動作を行うことで、上記膜電極組立体を損傷させることなく、安定した再起動を実現することができる。
本発明の上記第2態様によれば、上記燃料供給装置による上記液体燃料の供給の開始の後、上記燃料検出部により上記膜電極組立体への上記液体燃料の到達が検出されたことでもって、上記発電を開始することで、発電開始の際に上記液体燃料を上記膜電極組立体に確実に到達させることができる。
本発明の上記第3態様によれば、上記燃料検出部による検出動作に必要な電力が上記電力供給装置から供給されることで、発電停止時においても上記検出動作を確実に実施することができる。
本発明の上記第4態様によれば、上記膜電極組立体が燃料容器中の上記液体燃料に浸漬されるような形式の燃料電池システムにおいて、上記第1態様による効果を得ることができる。
本発明の上記第5態様によれば、上記電力供給装置として2次電池が用いられることにより、実用的な燃料電池システムを提供することができる。
本発明の上記第6態様によれば、燃料容器として第1燃料容器と第2燃料容器との2つの燃料容器を備えるような構成の燃料電池システムにおいても、上記第1態様と同様な効果を得ることができる。
本発明の上記第7態様によれば、上記膜電極組立体における上記アノード側の表面が、上記液体燃料に常時浸漬されている必要がある膜浸漬型の燃料電池システムにおいて、発電停止状態にて長期間放置される等により、上記第1燃料容器に収容されている上記液体燃料が気化して、その収容量の減少が発生するような場合であっても、上記気化にて減少した上記液体燃料の収容量を補うように、上記第2燃料容器から上記第1燃料容器に上記液体燃料原液を供給する燃料供給装置が備えられていることにより、上記液面の低下を防止する、例えば、所定の高さ範囲内にすることができる。従って、このように燃料電池システムが発電停止状態で放置されるような場合であっても、上記膜電極組立体の一部あるいは全部を上記液面より露出および乾燥状態とさせることはなく、当該露出状態および乾燥状態で発電が行なわれることによる上記膜電極組立体の損傷の発生を確実に防止することができる。これにより、燃料電池システムにおいて、発電のための再起動の安定化を図ることができる。
また、上記燃料供給装置が、上記発電停止の際に、上記第1燃料容器に収容されている上記液体燃料中にその上記アノード側表面を常に浸漬させるように、上記液体燃料の収容量を補うことにより、上記第1燃料容器に収容されている上記液体燃料の液面より上記膜電極組立体が露出された状態とされることを確実に防止することができる。
本発明の上記第8態様によれば、上記第2燃料容器が上記第1燃料容器よりも高い位置に配置され、上記燃料供給装置が、重力の作用でもって、上記第2燃料容器より上記1燃料容器への上記液体燃料原液の供給を行なう燃料用重力供給部を備えていることにより、上記燃料電池システムにおける発電停止時に、動力の作用を用いることなく、上記気化により減少した収容量を補うように、上記第1燃料容器への上記液体燃料原液の供給を行なうことができる。従って、上記発電停止時、すなわち、電力を発生することができないような状態であっても、確実に上記液体燃料原液の供給を行なうことができ、上記膜電極組立体を上記液体燃料中に浸漬させた状態とすることができる。特に,このように重力の作用でもって供給を行なうことができることは、上記燃料電池システムがより長期間使用されず、発電停止状態が継続されるような場合であっても、対応することが可能となる。
本発明の上記第9態様によれば、上記燃料供給装置が、上記重力の作用でもって、上記液体燃料原液の供給を行なう上記燃料用重力供給部に加えて、動力の作用でもって、上記液体燃料原液の供給を行なう上記燃料用動力供給部をも併せて備え、発電運転の際に、その駆動に動力を有する上記燃料用動力供給部を用い、発電停止の際には、その駆動に動力を要しない上記燃料用重力供給部を用いるというように、夫々の上記供給部を使い分けることで、効率的な上記液体燃料原液の供給を行なうことができる。例えば、上記発電運転の際には、当該発電により作られた電力を用いて、上記燃料用動力供給部を駆動しながら、その駆動量を制御することで、上記液体燃料原液の供給量の制御を確実に行なうことができる。逆に、上記発電停止の際には、上記動力を要することなく、上記燃料用動力供給部を用いて上記液体燃料原液の供給を行なうことができる。
本発明の上記第10態様によれば、上記収容量検出部が、上記燃料容器に収容されている液体燃料より上記膜電極組立体の少なくとも一部が露出されるような当該液体燃料の収容量を検出すると、上記回路遮断スイッチにより、上記発電回路の遮断あるいは遮断保持を行なうことにより、このような状態において上記燃料電池システムが発電運転状態とされて、上記膜電極組立体に損傷を与えることを防止することができる。
本発明の上記第11態様によれば、上記燃料電池本体における発電停止の際に、上記第1燃料容器において気化により減少した上記液体燃料の収容量を補うように、上記生成物回収容器から上記第1燃料容器に上記生成物を供給する生成物供給装置がさらに備えられていることにより、上記第1燃料容器に上記液体燃料原液の供給を行なうことができないような場合であっても、上記生成物を供給することで、上記膜電極組立体が上記液面より露出する状態および乾燥状態とされることを防止することができ、上記膜電極組立体への損傷の発生を防止することができる。
本発明の上記第12態様又は上記第13態様によれば、上記生成物供給装置が、重力の作用でもって上記生成物の供給を行なう生成物用重力供給部と、動力の作用でもって上記生成物の供給を行なう生成物用動力供給部とを備えていることにより、上記第8態様及び上記第9態様における上記燃料供給装置の場合と同様に、上記第1燃料容器への上記生成物の供給を行なうような場合についても、同様な効果を得ることができる。
本発明の上記第14態様によれば、上記第1燃料容器に収容されている上記液体燃料の濃度を検出する濃度検出装置と、当該濃度検出装置により検出された濃度が、発電可能な濃度範囲内に入るように、上記燃料用動力供給部による上記液体燃料原液の供給量と、上記生成物用動力供給部による上記生成物の供給量とを制御する制御装置とがさらに備えられていることにより、上記燃料電池本体による発電運転の際に、上記第1燃料容器に収容されている上記液体燃料の濃度を、当該発電運転のために最適な濃度となるように調整することができる。このような濃度調整を行なうことにより、例えば、上記膜電極組立体がそのクロスオーバー特性により、上記発電運転を行なうための濃度範囲を有しているような場合であっても、当該濃度範囲に対応することが可能となる。
本発明の上記第15態様によれば、上記生成物が、水を主成分として含み、上記第1燃料容器に収容される上記液体燃料が、上記液体燃料原液を水で希釈したものである場合に、上記夫々の態様による効果を得ることができる。
本発明の上記第16態様によれば、上記液体燃料が、発電可能濃度範囲である1〜10wt%の範囲内の濃度を有するメタノール水溶液であり、上記液体燃料原液が、上記メタノール水溶液よりも高い濃度を有するメタノール水溶液又はメタノール原液である場合に、上記夫々の態様による効果を得ることができる。
本発明の上記第17態様によれば、燃料電池本体における発電停止の際に、上記第1燃料容器において気化により減少した上記液体燃料の収容量を補うように、液体燃料原液や生成物を上記第1燃料容器に供給する構成を、上記燃料電池システムが有しないような場合であっても、上記第10態様の場合と同様な構成を有していることで、乾燥状態とされた上記膜電極組立体に損傷を与えることを防止することができる。具体的には、上記収容量検出部が、上記燃料容器に収容されている液体燃料より上記膜電極組立体の少なくとも一部が露出されるような当該液体燃料の収容量を検出すると、上記回路遮断スイッチにより、上記発電回路の遮断あるいは遮断保持を行なうことにより、このような状態において上記燃料電池システムが発電運転状態とされて、上記膜電極組立体に損傷を与えることを防止することができる。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下、図面を参照して本発明における第1実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる燃料電池システム50の模式的な構成を示す模式構成図を図1に示す。
図1に示すように、燃料電池システム50は、燃料の持つ化学エネルギーを電気化学的に電気エネルギーに変換して発電を行なう発電部である燃料電池本体70と、この発電に必要な燃料等を燃料電池本体70に供給する等の発電のための補助的動作を行う補機系とを備えている。また、この燃料電池システム50は、有機系の液体燃料の一例であるメタノール水溶液を燃料として、このメタノールから直接的にプロトンを取り出すことにより発電を行なう直接型メタノール燃料電池(DMFC)である。
図1に示すように、燃料電池本体70は、アノード(燃料極)51、カソード(空気極)52、及び膜電極組立体53を備えている。アノード51は、供給されるメタノールに対して酸化反応を行ない、プロトンと電子を取り出す反応(アノード反応)を行なう機能を有している。当該電子は、アノード51とカソード52とをそれぞれの電極(図示せず)を介して電気的に接続する発電回路(図示せず)を通してカソード52へ移動し、当該プロトンは、膜電極組立体53を通してカソード52へ移動する。また、カソード52は、外部から供給される酸素と、アノード51より膜電極組立体53を通して移動してきたプロトンと、上記発電回路を通して流れてきた電子とを用いて還元反応を行なって、水を生成するという反応(カソード反応)を行なう機能を有している。このようにアノード51にて酸化反応を、カソード52にて還元反応を夫々行ない、上記発電回路に電子を流すことで、電流を発生させて発電を行なうことができる。
具体的には、燃料電池本体70は、例えば、電解質膜として、DuPont社製のナフィオン117(商標若しくは商品名称)を用い、上記電解質膜の一方の表面に、アノード51のアノード触媒として、炭素系粉末担体に白金とルテニウム、あるいは白金とルテニウムの合金を分散させて担持したものを形成し、他方の表面に、カソード52のカソード触媒として、炭素系担体に白金微粒子を分散担持したものを形成して、その後、例えば、カーボンペーパーからなる拡散層を上記アノード触媒及び上記カソード触媒の夫々に密着させたものを膜電極組立体53として形成し、その後、この膜電極組立体53をセパレータを介してハウジングに固定することにより形成することができる。
また、図1に示すように、アノード51は、上記アノード反応を実施可能にその内部にメタノール水溶液を供給させるための燃料供給口51aと、当該アノード反応により生成された二酸化炭素や、当該反応に用いられなかった残りのメタノール水溶液を上記内部より排出させるための排出口51bとを備えている。
また、カソード52は、上記カソード反応の実施に用いられる酸素を供給するために、例えば、空気を用い、当該空気をその内部に供給するための空気供給口52aと、当該カソード反応にて生成される生成物の一例である水(液相又は気相のいずれの状態、あるいは夫々の状態が混在した状態のいずれの場合をも含む)と空気を上記内部より排出させるための排出口52bとを備えている。なお、この生成物は水を主成分として含むものであるが、その他に、ギ酸、ギ酸メチル、及びメタノール(いわゆるクロスオーバーによる)等も含まれる場合がある。
次に、燃料電池システム50における上記補機系の構成について説明する。上記補機系の構成としては、燃料電池本体70のアノード51にメタノール水溶液を供給するための補機構成と、カソード52に空気を供給するための補機構成と、カソード52にて生成された生成物である水を回収するための補機構成とが備えられている。
まず、図1に示すように、上記燃料供給のための補機構成としては、メタノール水溶液を液体燃料としてアノード51に供給可能に収容する第1燃料容器の一例である(あるいは燃料容器の一例でもある)中間タンク55と、この中間タンク55に収容されているメタノール水溶液よりもその濃度が高いメタノール水溶液を液体燃料原液として、中間タンク55に供給可能に収容する第2燃料容器の一例である原液タンク54と、原液タンク54に収容されている液体燃料原液を中間タンク55に供給する燃料供給装置を備えている。なお、原液タンク54は、例えば、燃料電池システム50への着脱装備が可能なカートリッジ式の容器となっており、燃料電池システム50において、収容されていた液体燃料が空となった原液タンク54を取り外して、液体燃料が収容されている新たな原液タンク54を装備させることで、液体燃料原液を補給することが可能となっている。
上記燃料供給装置は、原液タンク54と中間タンク55とを連通する燃料用通路の一例である燃料供給管65と、この燃料供給管65の途中に設けられて、原液タンク54に収容されている液体燃料原液を燃料供給管65を通して中間タンク55に供給する燃料ポンプ62と、燃料供給管65における燃料ポンプ62の吐出側付近に設けられて、この燃料供給管65の連通及び遮断を外部信号に基づいて選択的に行う自動弁60とを備えている。また、燃料供給管65は原液タンク54の内底部近傍にその一端が位置されるように配置されており、その他端である中間タンク55への燃料供給端部は、中間タンク55内に配置されているアノード51の上部よりも少し高い位置に位置されるように配置されている。
また、図1に示すように、中間タンク55の内部の空間に、アノード51が配置されており、中間タンク55において液体燃料が満液とされて収容された状態で、完全に上記収容された液体燃料にこのアノード51全体が浸漬される、すなわち、上記収容された液体燃料の液面より下方に、このアノード51が配置されるようになっている。このように中間タンク55内にアノード51が配置されていることにより、常時液体燃料中に浸漬されている状態の燃料供給口51aを通して、アノード51の内部に液体燃料を供給することが可能となっている。また、このようにアノード51の内部への液体燃料の供給が可能となっていることにより、膜電極組立体53におけるアノード51側の表面全体を、液体燃料中に浸漬することができ、膜電極組立体53の当該表面を常に濡れた状態とすることができる。言い換えれば、中間タンク55に収容された液体燃料の液面より下方に、膜電極組立体53が浸漬された状態で配置される。
また、中間タンク55には、アノード51にて行なわれるアノード反応により生成される二酸化炭素等のガスが、アノード51の排出口51bを通して流入されることとなるが、このようにして流入されるガスを中間タンク55の外部に排気するための排気管59が設けられており、この排気管59には弁59aと気液分離膜59b(例えば、テフロン(登録商標)製のシート等により構成することができる)とが備えられている。なお、排気管59は、中間タンク55に液体燃料を初期注入する際のガス抜きとしても機能することができる。
また、中間タンク55には、収容されている液体燃料の濃度を検出可能な濃度検出装置の一例である濃度センサ67が備えられている。なお、このような濃度センサ67としては、例えば、超音波式や静電容量方式、近赤外線多波長光方式等の濃度計を用いることができる。
さらに、中間タンク55には、収容されている液体燃料の液面を検出可能なレベルセンサ64が備えられており、このレベルセンサ64は、中間タンク55において、膜電極組立体53のアノード側表面全体を、収容されている液体燃料中に完全に浸漬することができるようなレベルの液面位置を検出することが可能となっている。なお、本第1実施形態においては、このレベルセンサ64が、燃料検出部の一例となっている。
また、燃料ポンプ62としては、例えば、小型なポンプで消費電力が小さいものであること、及び、その駆動時間を制御することで液体燃料原液の供給量が制御できること等の観点より、小型の容積型ポンプ等を用いることが好ましく、例えば、本第1実施形態では、ソレノイド式ポンプ(逆止弁付、吐出量:0〜4ml/分、吐出圧力:10kPa)を用いており、使用時は、例えば間欠駆動させて適量の液体燃料原液を送り出すことが可能となっている。
また、中間タンク55には、例えば、重量百分率で1〜10wt%の範囲のいずれかの濃度、好ましくは3〜10wt%の範囲のいずれかの濃度のメタノール水溶液が液体燃料として収容されており、初期状態においては、4.5wt%の濃度のメタノール水溶液が収容されている。一方、原液タンク4には、中間タンク5に収容されている液体燃料よりも高い濃度を有するメタノール水溶液あるいはメタノール原液(すなわち、濃度が100wt%のメタノール)が収容されており、例えば、初期状態において、68wt%の濃度のメタノール水溶液が収容されている。
次に、上記空気供給の補機構成としては、カソード52の空気供給口52aにその一端が接続された酸素供給用通路の一例である空気供給管63と、空気供給管63の途中に配置され、空気供給管63を通して、空気をカソード52内に供給する酸素供給装置の一例(あるいは空気供給ポンプの一例)である空気ポンプ57とが備えられている。この空気ポンプ57としては、小型でかつ消費電力が小さいものを用いることが好ましく、例えば、モータ式ポンプ(逆止弁付、吐出量:4L/分、吐出圧力:50kPa)を用いており、使用時は、例えば、3L/分で空気を供給する。また、燃料電池本体70にて発電が行なわれる際に、空気ポンプ57が駆動されてカソード52内に必要な酸素が供給され、当該発電が停止されるときには、空気ポンプ57の駆動が停止されることとなる。なお、この停止の際には、燃料ポンプ62の駆動も停止すると同時に、燃料供給管65に設けられた自動弁60が閉止されて燃料供給管65を遮断して、原液タンク54と中間タンク55との連通を遮断することが可能となっている。
また、上記カソードで生成した水を回収するための補機構成としては、カソード52の排出口52bと、カソード52にて生成された水を回収する生成物回収容器の一例である水タンク58と、カソード52の排出口52bと水タンク58とを連通して、排出口52bから水タンク58に上記生成された水を回収させる生成物回収通路の一例である水回収管69とが備えられている。さらに、水タンク58には、回収される水に混入して水タンク58内に導入されるガス、例えば、空気を水タンク58の外部に排出する気液分離膜56が備えられている。また、水タンク58と中間タンク55とを連通して、水タンク58にて回収された水を、中間タンク55に供給する生成物供給通路の一例である水供給管66が備えられており、水供給管66の途中には、動力の作用を用いて、上記水の供給を行なう生成物用動力供給部の一例である水ポンプ61と、水供給管66の開閉を外部信号に基づいて行なう自動弁68とが備えられている。なお、本第1実施形態においては、水供給管66及び水ポンプ61が生成物供給装置の一例を構成している。また、中間タンク55への水の供給においては、例えば、濃度センサ67により検出される中間タンク55内の液体燃料の濃度が、所望の濃度となるように、水ポンプ61の運転時間を制御することで、水供給管66及び水ポンプ61を通して必要な量の水が中間タンク55内に供給される。
また、このような構成を有する燃料電池システム50においては、夫々の装置や構成機器の動作を制御する制御装置73が備えられている。制御装置73は、燃料電池システム50において、燃料ポンプ62による液体燃料原液の供給動作、空気ポンプ67による空気の供給動作、中間タンク55内のメタノール水溶液の濃度制御を、互いに関連付けながら統括的に制御することが可能となっている。
具体的には、燃料電池本体70にて発電が行なわれる際には、制御装置73は、空気ポンプ57の駆動を行ない、当該発電が停止される際には、空気ポンプ57の駆動を停止させるという制御を行なう。また、この空気ポンプ57の駆動停止に併せて、燃料ポンプ62の駆動を停止させる制御や自動弁60、68の開閉動作の制御を行なうことが可能となっている。
また、制御装置73は、濃度センサ67により検出された中間タンク55内に収容されている液体燃料の濃度に応じて、中間タンク55への液体燃料原液の供給量及び回収された水の回収量(つまり、水の供給量)を制御することが可能となっている。すなわち、当該検出された濃度に応じて、中間タンク55内に収容されている液体燃料の濃度が、制御装置73に予め設定されている所定の濃度範囲を保つように、燃料ポンプ62の駆動時間や水ポンプ61の駆動時間を制御することが可能となっている。ここで、制御装置73に予め設定されている濃度範囲とは、燃料電池本体70にて必要な電力(必要な電圧及び電流)を発電することが可能なメタノール水溶液の発電可能濃度範囲であり、例えば、10wt%〜1wt%、好ましくは10wt%〜3wt%というような濃度範囲で設定される。ただし、このような発電可能濃度範囲は、膜電極組立体53のクロスオーバー特性に起因するものであり、クロスオーバー特性が向上して、膜電極組立体53を通してアノード51からカソード52へ供給されるメタノールの通過量が低減されれば、10wt%以上の濃度範囲を上記発電可能濃度範囲とすることも可能である。
さらに、燃料電池システム50は、燃料電池本体70による発電が行われておらず、当該発電による電力の供給が行われていないような場合であっても、それぞれの補機系を駆動させるための電力を供給することができる電力供給装置の一例である2次電池74が備えられている。この2次電池は、例えば、小型で容積の小さなリチウムイオン電池等を用いることができるが、補機系の駆動のための電力を供給することができるような2次電池であれば、リチウムイオン電池以外にも様々な形式の電池を採用することができる。また、上記電力供給装置が2次電池であるような場合のみに限られるもではなく、燃料電池本体70の発電により生成される電力とは別に電力を供給可能なものであればよく、例えば、電気2重層コンデンサーや太陽電池などの発電デバイスなどを用いることもできる。
また、この2次電池74は、燃料電池本体70による発電停止中であっても、制御装置73を機能させるための電力の供給、燃料ポンプ62、水ポンプ61、及び空気ポンプ57を駆動させるための電力の供給、自動弁60及び68の開閉動作を駆動させるための電力の供給、さらにレベルセンサ64を機能させるための電力の供給を行うことが可能となっている。なお、2次電池74より供給される電力と、燃料電池本体70の発電により生成される電力と区別するために、2次電池より供給される電力を2次電力と表現するような場合であってもよい。
また、制御装置73は、中間タンク55に収容されている液体燃料の収容量をレベルセンサ64にて検出し、この検出結果に基づいて、膜電極組立体53のアノード側表面全体が液体燃料中に完全に浸漬されるように、燃料ポンプ62を駆動して原液タンク54から中間タンク55に液体燃料原液を供給し、上記浸漬させたことをレベルセンサ64にて検出することで、当該液体燃料原液の供給を停止させるような燃料補給に関する制御を行うことが可能となっている。
次に、このような構成の燃料電池システム50において発電が行なわれる場合の夫々の装置や構成機器の動作について、図2に示す発電開始手順のフローチャートに基づいて以下に説明する。なお、以降において説明する夫々の装置や構成機器の動作制御は、制御装置73により互いの動作を関連付けながら統括的に行なわれる。
まず、図1に示す燃料電池システム50において、中間タンク55には、例えば4.5wt%の濃度のメタノール水溶液(液体燃料)が収容されているとともに、原液タンク54には、例えば、68wt%の濃度のメタノール水溶液(液体燃料原液)が収容されている。中間タンク55に収容された液体燃料は、燃料供給口51aを通して、アノード51内に供給されている。また、中間タンク55へのメタノール水溶液の収容量は、原則的に中間タンク55内に配置されているアノード51が完全に浸漬されるような収容量とされる。このように中間タンク55内にメタノール水溶液が収容されることで、膜電極組立体53におけるアノード51側の表面が、メタノール水溶液中に浸漬された状態とされる。
ただし、燃料電池システム50の使用環境や使用状態等により、例えば、高温環境に放置されているような場合や長期間使用されていないような場合にあっては、中間タンク55に収容されている液体燃料の一部が蒸発して中間タンク55の外部に放出され、中間タンク55内においては、収容されている液体燃料の液面レベルが低下し、膜電極組立体53の一部が当該液面より露出されているような場合もあり得る。
このような状態のもとで、図2のフローチャートのステップS1にて、燃料電池システム50において発電開始の指示を受ける。例えば、このような燃料電池システム50が搭載されている携帯用電子機器等において電源が入力されることで、制御装置73に発電開始の指示信号が入力される。なお、この時点では燃料電池システム50による発電が開始されていない(すなわち、発電により電力が生成されていない)ため、制御装置73が機能するための電力は、2次電池74から供給される。
制御装置73では、この発電開始の指示に基づいて、レベルセンサ64により中間タンク55内に収容されている液体燃料の液面レベルの検出を行わせる(ステップS2)。なお、このレベルセンサ64による当該検出に必要な電力は2次電池より供給される。このレベルセンサ64による検出結果は、制御装置73に入力されて、制御装置73において、検出された液面レベルが予め規定されている液面レベルに到達しているかどうかの判断が行われる(ステップS3)。具体的には、膜電極組立体53のアノード側表面の全面が、収容されている液体燃料に完全に浸漬されているかどうかの判断が制御装置73において行われることとなり、上記予め規定されている液面レベルとは、このような膜電極組立体53の浸漬を可能とするような液面レベルのことである。
ステップS3における判断の結果、制御装置73において上記予め規定されている液面レベルに到達していないと判断された場合、すなわち、膜電極組立体53のアノード側表面の少なくとも一部が上記液面より露出されていると判断された場合には、制御装置73により自動弁60を開放動作させるとともに、燃料ポンプ62を駆動させて、原液タンク54から燃料供給管65を通じて中間タンク55に液体燃料原液の供給を行う(ステップS4)。なお、この際における燃料ポンプ62の駆動及び自動弁60の駆動に必要な電力は2次電池74より供給される。その後、ステップS5において再びレベルセンサ64により上記液体燃料原液の供給が行われている中間タンク55の液面レベルが検出されて、この検出結果に基づいて上記予め規定されている液面レベルに到達するまで、上記液体燃料原液の供給(ステップS4)が継続される。
その後、ステップS5において、中間タンク55の液体燃料の収容量が上記予め規定されている液面レベルに到達したことが確認されると、2次電池による燃料ポンプ62の駆動が停止される(ステップS6)。
このような状態では、膜電極組立体53のアノード側表面の全体が液体燃料に接触された状態、すなわち液体燃料が膜電極組立体53の全体に到達した状態とされ、膜電極組立体53のアノード側表面には、液体燃料と接触せずに乾燥されたままの状態とされている部分が存在しないこととなる。このような状態とされて初めて燃料電池本体70において発電開始可能な状態とされたこととなる。その後、ステップS7において、制御装置73により燃料電池本体70における発電が開始され、当該発電により電力の生成が行われる。
一方、ステップS3において、レベルセンサ64の検出結果に基づき、上記予め規定された液面レベルに到達していると判断される、すなわち液面より膜電極組立体53が露出されていないような液面レベルであると判断されるような場合には、ステップS4からS6までの手順がスキップされて、ステップS7にてそのまま燃料電池本体70の発電が開始されることとなる。このようなそれぞれの手順にて燃料電池システム50における発電が開始される。
なお、燃料電池本体70が発電開始可能な状態とされた後、制御装置73より発電開始可能信号が作成されて、例えば、燃料電池システム50の外部等に出力されるような場合であってもよい。
また、上述のそれぞれの手順の説明では、図2のステップS5において、膜電極組立体53のアノード側表面の全体に液体燃料が到達しているかどうかを、レベルセンサ64により中間タンク55の液体燃料の収容量を検出することでもって検出するような場合について説明したが、上記液体燃料の到達を検出するための手法はこのような場合についてのみ限られるものではない。このような場合に代えて、例えば、ステップS2における中間タンク55の液面レベルの検出の際に、中間タンク55における液体燃料の収容量を検出し、この検出結果に基づいて液体燃料の補給量あるいは補給時間を算出して、燃料ポンプ62による補給量あるいは補給時間が上記算出された条件に達することを検出するような場合であってもよい。
なお、上述した燃料電池本体70における発電開始までの動作においては、膜電極組立体53のアノード側表面の全体が、液体燃料中に完全に浸漬されているかを液体燃料の補給の判断基準としているが、「全体が完全に浸漬されている」とは、膜電極組立体53のアノード側において発電に実質的に寄与する部分の全体が完全に浸漬されることを意味している。具体的には、膜電極組立体53における電解質膜とアノード触媒とが接合(接触)されている部分の全体が完全に浸漬されることを意味している。
次に、このような燃料電池本体70における発電開始後の動作について以下に説明する。
まず始めに、2次電池74より供給される電力でもって空気ポンプ57が駆動されて、空気供給管路63及び空気供給口52aを通してカソード52に空気、すなわち、酸素が供給される。これにより、アノード51においてアノード反応が行なわれるとともに、カソード52においてカソード反応が行なわれる。これにより、アノード51とカソード52との間、すなわち、上記発電回路にて電力が発生する。アノード51にて上記アノード反応が行なわれることにより生成された二酸化炭素は、排出口51bを通して、中間タンク55内に流れ込み、さらに、中間タンク55の気液分離膜59bを通して中間タンク55外に排出される。この電力の生成の際、膜電極組立体53のアノード側表面の全体に液体燃料が到達された状態とされているため、部分的な反応が生じることがなく、転極が発生することもない。
一方、カソード52にて上記カソード反応が行なわれることにより生成された水は、カソード52内が空気ポンプ57により加圧されていることにより、排出口52bから水回収管69に排出され、この水回収管69を通して水タンク58に搬送されて回収される。なお、2次電池により駆動されている空気ポンプ57は、燃料電池本体70にて発電される電力による駆動にその後切り替えられる。
また、上記発電が行なわれることにより、中間タンク55においては、収容されているメタノール水溶液のうちのメタノール及び水が消費されることとなる。これにより、中間タンク55において、メタノール水溶液の液量が減少するとともに、メタノール水溶液の濃度が低下することとになる。この低下した濃度を濃度センサ67にて検出することにより、制御装置73にて、中間タンク55への液体燃料原液の供給量(補給量)及び回収された水の回収量(補給量)が決定される。当該決定された夫々の供給量に基づいて、原液タンク54から燃料供給管65及び燃料ポンプ62を通して、液体燃料原液が上記供給量だけ、さらに、水タンク58から水ポンプ61、自動弁68、及び水供給管66を通して、水が上記供給量だけ、中間タンク55へ供給される。このような液体燃料原液と水との中間タンク55への供給動作により、中間タンク55に収容されている液体燃料が補給されるとともに、その濃度が所定の濃度範囲内に保持される。燃料電池システム50において、このような動作が連続的にかつ繰り返して行なわれることにより、燃料電池本体70にて必要な電力量(所定の電力量)の発電が継続的に行なわれることとなる。
一方、燃料電池システム50にて発電を停止する際には、空気ポンプ57の駆動、燃料ポンプ62の駆動、及び水ポンプ61の駆動が停止される。さらに、それぞれの自動弁60,68が動作して、燃料供給管65と水供給管66とが遮断される。このような状態が、燃料電池システム50における発電停止状態となり、発電が行なわれない場合はこのような状態が保たれることとなる。
なお、上述の説明においては、燃料電池本体70において発電開始の前に、中間タンク55における液体燃料の収容量に応じて、2次電池により燃料ポンプ62を駆動して液体燃料原液の供給でもって、中間タンク55内に収容されている液体燃料の収容量を補給するような場合について説明したが、このような補給方法においては、さらに様々な変形例を適用することができる。
このような変形例の一つとして、例えば、燃料ポンプ62による液体燃料原液の供給を開始する際、あるいは当該供給の最中において、濃度センサ67により中間タンク55に収容されている液体燃料の濃度を検出を行う。制御装置73において、この検出結果が予め規定されている濃度範囲の上限を超過していないかどうかの判断を行い、超過していないと判断する場合には、燃料ポンプ62による液体燃料原液の供給動作をそのまま開始するか、あるいは継続して行う。
一方、上記濃度範囲を超過していると判断するような場合には、燃料ポンプ62の駆動を停止するとともに、2次電池の電力でもって、自動弁68を開放させて水ポンプ61を駆動し、水タンク58に収容されている水を中間タンク55に供給する。このように水を供給することで、中間タンク55内に収容されている液体燃料の濃度を上記濃度範囲内とさせることができる。
なお、上記予め規定されている濃度範囲とは、膜電極組立体53の性能により決定される濃度範囲であって、膜電極組立体53にて発電可能な濃度範囲のことである。
また、このように中間タンク55における液体燃料の濃度検出結果に基づくような場合に代えて、所定の比率等に基づいて、液体燃料原液と水とを共に供給することで、液体燃料の補給を行うような場合であってもよい。
また、上述の燃料電池システム50においては、膜電極組立体53のアノード側表面の全体に液体燃料が到達しているかどうかの検出を行う燃料検出部が、レベルセンサ64である場合について説明したが、上記燃料検出部はこのような場合にのみ限られるものではない。このような場合に代えて、燃料検出部の一例として、燃料電池本体70のアノード51のハウジングの外周に複数の液検知センサ81を設けるような場合の燃料電池システムの構成を図8の模式説明図に示す。なお、図8の模式説明図は中間タンク55付近における燃料電池本体70を示しており、図8におけるV−V線矢視図を図9に示す。
図8及び図9に示すように、燃料電池本体70におけるアノード51のハウジング外周の図示上面と下面には、合計4個の液検知センサ81が設けられており、例えば、図9に示すように、それぞれの面における図示左右方向の端部近傍に、それぞれの液検知センサ81が配置されており、具体的には、図11のアノード51のハウジングの上面の拡大斜視図に示すように、上記ハウジング外周上面において燃料供給口51bをかわすように略対角線上の角部近傍に配置されている。いる。これらの液検知センサ81は、液との接触の有無を検知する機能を有するようなセンサであり、例えばサーミスタ式の液検知センサを用いることができる。
また、これらの液検出センサ81は、各々において液体燃料との接触の有無を個別に検出するとともに、その検出結果を制御装置73に入力することが可能とされており、制御装置73においては、4個の液検出センサ81のうちの1つでも液体燃料と接触がなされていないセンサが存在する場合には、膜電極組立体53に液面より露出されている部分が存在するものと判断することができる。
このようにそれぞれの液検出センサ81を設けることにより、例えば、図10に示すように燃料電池本体70が傾斜された姿勢とされるような場合や、上下方向に逆向きに配置されるような場合等において、膜電極組立体53が液面より露出しているかどうかを確実に検出することができる。従って、様々な姿勢を取りうる携帯電子機器用の電源に適した燃料電池システムを提供することができる。
上記第1実施形態によれば、以下のような種々の効果を得ることができる。
まず、燃料電池システム50において、発電停止状態が長期間保たれる等により、中間タンク55内に収容されている液体燃料が蒸発してその液面が低下し、膜電極組立体53が当該液面より露出された状態とされるような場合であっても、発電開始の際に、中間タンク55の液面レベルをレベルセンサ64により検出し、当該液面レベルの低下が検出されるような場合には、燃料ポンプ62を駆動して原液タンク54より液体燃料原液を中間タンク55に供給することで、液体燃料の補給を行うことができる。
このように中間タンク55において液体燃料の補給を行い、膜電極組立体53のアノード側表面の全体が液体燃料中に完全に浸漬された状態にて、燃料電池本体70の発電を開始することで、膜電極組立体53に転極等を発生させることなくその損傷の発生を確実に防止することができる。
また、上記中間タンク55への液体燃料原液の供給のための燃料ポンプ62の駆動は、2次電池より供給される電力でもって行われることにより、燃料電池本体70における発電開始前であっても、燃料ポンプ62を問題なく駆動させることができる。
また、このように2次電池より供給される電力でもって燃料ポンプ62を駆動して、中間タンク55の液体燃料の収容量の補給を行うことで、燃料電池システム50全体における配置方向に関係なく、当該補給動作を行うことができるため、携帯用情報端末用の電源として適したものとすることができる。
また、上記第1実施形態における燃料電池システムにおいて、発電開始前に、膜電極組立体のアノード側表面全体に液体燃料が行き渡っている(すなわち、到達している)かどうかを検出し、液体燃料が行き渡っていない部分があると判断する場合には、上記表面全体に液体燃料を行き渡らせてから、その後、燃料電池本体にて発電を開始し、電力の供給を行うという手法は、膜電極組立体浸漬型の燃料電池システムのみに限られず、このような膜電極組立体を備え、当該膜電極組立体に液体燃料を供給するような方式の燃料電池システムに適用することができる。
(第2実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、本発明の第2実施形態にかかる燃料電池システム101の模式的な構成を示す模式構成図を図3に示す。なお、本第2実施形態の燃料電池システム101は、2次電池による電力を用いることなく、発電停止中に減少した中間タンクの液体燃料の補給を行うという点において、上記第1実施形態の燃料電池システム50とは異なる構成を有しているものの、燃料電池本体の発電に関する構成(補機系の構成も含めて)は上記第1実施形態と略同様な構成を有している。従って、以降の説明においては、この異なる構成を中心に説明するものとする。
図3に示すように、燃料電池システム101は、上記第1実施形態の燃料電池システム50と同様に、有機系の液体燃料の一例であるメタノール水溶液を燃料として、このメタノールから直接的にプロトンを取り出すことにより発電を行なう直接型メタノール燃料電池(DMFC)である。
図3に示すように、燃料電池本体102は、アノード(燃料極)1、カソード(空気極)2、及び膜電極組立体3を備えている。アノード反応により取り出された電子は、アノード1とカソード2とをそれぞれの電極(図示せず)を介して電気的に接続する発電回路90を通してカソード2へ移動し、プロトンは、膜電極組立体3を通してカソード2へ移動する。また、カソード2は、外部から供給される酸素と、アノード1より膜電極組立体3を通して移動してきたプロトンと、発電回路90を通して流れてきた電子とを用いて還元反応を行なって、水を生成するという反応(カソード反応)を行なう機能を有している。このようにアノード1にて酸化反応を、カソード2にて還元反応を夫々行ない、発電回路90に電子を流すことで、電流を発生させて発電を行なうことができる。
また、図3に示すように、アノード1は、その内部にメタノール水溶液を供給させるための燃料供給口1aと、当該アノード反応により生成された二酸化炭素や、当該反応に用いられなかった残りのメタノール水溶液を上記内部より排出させるための排出口1bとを備えている。
また、カソード2は、酸素を供給するために、例えば、空気を用い、当該空気をその内部に供給するための空気供給口2aと、当該カソード反応にて生成される生成物の一例である水と空気を上記内部より排出させるための排出口2bとを備えている。
次に、燃料電池システム101における補機系の構成について説明する。上記補機系の構成としては、燃料電池本体102のアノード1にメタノール水溶液を供給するための補機構成と、カソード2に空気を供給するための補機構成と、カソード2にて生成された生成物である水を回収するための補機構成とが備えられている。
まず、図3に示すように、上記燃料供給のための補機構成としては、メタノール水溶液を液体燃料としてアノード1に供給可能に収容する第1燃料容器の一例である(あるいは燃料容器の一例でもある)中間タンク5と、この中間タンク5に収容されているメタノール水溶液よりもその濃度が高いメタノール水溶液を液体燃料原液として、中間タンク5に供給可能に収容する第2燃料容器の一例である原液タンク4と、原液タンク4に収容されている液体燃料原液を中間タンク5に供給する燃料供給装置を備えている。また、原液タンク4は中間タンク5より高い位置に配置されており、原液タンク4の下部が中間タンク5の上部よりも上方に配置されている。なお、原液タンク4は、例えば、燃料電池システム101への着脱装備が可能なカートリッジ式の容器となっており、燃料電池システム101において、収容されていた液体燃料が空となった原液タンク4を取り外して、液体燃料が収容されている新たな原液タンク4を装備させることで、液体燃料原液を補給することが可能となっている。
上記燃料供給装置は、燃料電池本体102による発電停止の際(すなわち、燃料電池システム101の停止の際)に、動力の作用を用いない燃料供給と、燃料電池本体102による発電運転の際(すなわち、燃料電池システム101の運転の際)に、動力の作用を用いた燃料供給を選択的に実現可能に構成されている。具体的には、上記燃料供給装置は、上記動力の作用を用いない燃料供給として、重力の作用を利用した燃料用重力供給部の一例である第1燃料供給管14と、上記動力の作用を用いた燃料用動力供給部の一例である燃料ポンプ12をその途中に備えた第2燃料供給管15と、第1燃料供給管14と第2燃料供給管15とを原液タンク4の下部に連通可能に接続するとともに、この原液タンク4と夫々の間との上記連通を選択的に切り替える(すなわち、選択された一方を連通させて、他方を連通させないように選択的に切り替える)切替弁10とを備えている。
また、原液タンク4の底面には、収容されている液体燃料原液の原液タンク4内からの排出性(液体燃料原液の供給のための排出性)を良好とするための傾斜が設けられており、当該傾斜された底面における最低部あるいはその近傍に、第1燃料供給管14及び第2燃料供給管15を原液タンク4に連通する切替弁10が設けられている。なお、原液タンク4は、第1燃料供給管14及び第2燃料供給管15との連通部分を除いては、密閉された容器構造を有している。
また、第1燃料供給管14における中間タンク5への燃料供給端部は、中間タンク5内に配置されているアノード1の上部よりも少し高い位置に位置されるように配置されている。切替弁10は、発電停止時には、第1燃料供給管14と原液タンク4とが連通し、かつ、第2燃料供給管15と原液タンク4とが連通しないように切り替えられることが可能であり、また、発電運転時には、第2燃料供給管15と原液タンク4が連通し、かつ、第1燃料供給管14と原液タンク4とが連通しないように切り替えられることが可能となっている。
また、図3に示すように、中間タンク5の内部の空間に、アノード1が配置されており、中間タンク5において液体燃料が満液とされて収容された状態で、完全に上記収容された液体燃料にこのアノード1全体が浸漬される、すなわち、上記収容された液体燃料の液面より下方に、このアノード1が配置されるようになっている。このように中間タンク5内にアノード1が配置されていることにより、常時液体燃料中に浸漬されている状態の燃料供給口1aを通して、アノード1の内部に液体燃料を供給することが可能となっている。また、このようにアノード1の内部への液体燃料の供給が可能となっていることにより、膜電極組立体3におけるアノード1側の表面を、液体燃料中に浸漬することができ、膜電極組立体3の当該表面を常に濡れた状態とすることができる。言い換えれば、中間タンク5に収容された液体燃料の液面より下方に、膜電極組立体3が浸漬された状態で配置される。
また、中間タンク5には、二酸化炭素等のガスを中間タンク5の外部に排気するための気液分離膜9が備えられている。さらに、中間タンク5には、収容されている液体燃料の濃度を検出可能な濃度検出装置の一例である濃度センサ17が備えられている。なお、このような濃度センサ17としては、例えば、超音波式や静電容量方式、近赤外線多波長光方式等の濃度計を用いることができる。
燃料ポンプ12としては、例えば、小型の容積型ポンプ等を用いることが好ましく、使用時は、例えば間欠駆動させて適量の液体燃料原液を送り出すことが可能となっている。
また、中間タンク5には、例えば、重量百分率で1〜10wt%の範囲のいずれかの濃度、好ましくは3〜10wt%の範囲のいずれかの濃度のメタノール水溶液が液体燃料として収容されており、初期状態においては、4.5wt%の濃度のメタノール水溶液が収容されている。一方、原液タンク4には、中間タンク5に収容されている液体燃料よりも高い濃度を有するメタノール水溶液あるいはメタノール原液(すなわち、濃度が100wt%のメタノール)が収容されており、例えば、初期状態において、68wt%の濃度のメタノール水溶液が収容されている。
次に、上記空気供給の補機構成としては、カソード2の空気供給口2aにその一端が接続された酸素供給用通路の一例である空気供給管13と、空気供給管13の途中に配置され、空気供給管13を通して、空気をカソード2内に供給する酸素供給装置の一例(あるいは空気供給ポンプの一例)である空気ポンプ7とが備えられている。この空気ポンプ7としては、例えば、モータ式ポンプを用いている。また、燃料電池本体102にて発電が行なわれる際に、空気ポンプ7が駆動されてカソード2内に必要な酸素が供給され、当該発電が停止されるときには、空気ポンプ7の駆動が停止されることとなる。なお、この停止の際には、燃料ポンプ12の駆動も停止すると同時に切替弁10が動作して、第1燃料供給管14と原液タンク4を連通させるとともに、第2燃料供給管15と原液タンク4との連通を閉止させることが可能となっている。
また、上記カソードで生成した水を回収するための補機構成としては、カソード2の排出口2bと、カソード2にて生成された水を回収する生成物回収容器の一例である水タンク8と、カソード2の排出口2bと水タンク8とを連通して、排出口2bから水タンク8に上記生成された水を回収させる生成物回収通路の一例である水回収管19とが備えられている。また、水タンク8には、ガス、例えば、空気を水タンク8の外部に排出する気液分離膜6が備えられている。また、水タンク8と中間タンク5とを連通して、水タンク8にて回収された水を、中間タンク5に供給する生成物供給通路の一例である水供給管16が備えられており、水供給管16の途中には、動力の作用を用いて、上記水の供給を行なう生成物用動力供給部の一例である水ポンプ11と、水供給管16の開閉を行なうバルブ18とが備えられている。なお、本第1実施形態においては、水供給管16及び水ポンプ11が生成物供給装置の一例を構成している。また、中間タンク5への水の供給においては、例えば、濃度センサ17により検出される中間タンク5内の液体燃料の濃度が、所望の濃度となるように、水ポンプ11の運転時間を制御することで、水供給管16及び水ポンプ11を通して必要な量の水が中間タンク5内に供給される。
また、このような構成を有する燃料電池システム101においては、夫々の装置や構成機器の動作を制御する制御装置103が備えられている。制御装置103は、燃料電池システム101において、燃料ポンプ12による液体燃料原液の供給動作、空気ポンプ7による空気の供給動作、中間タンク5内のメタノール水溶液の濃度制御を、互いに関連付けながら統括的に制御することが可能となっている。
具体的には、燃料電池本体102にて発電が行なわれる際には、制御装置103は、空気ポンプ7の駆動を行ない、当該発電が停止される際には、空気ポンプ7の駆動を停止させるという制御を行なう。また、この空気ポンプ7の駆動停止に併せて、燃料ポンプ12の駆動を停止させる制御や切替弁10の切り替え動作の制御を行なうことが可能となっている。
また、制御装置103は、濃度センサ17により検出された中間タンク5内に収容されている液体燃料の濃度に応じて、中間タンク5への液体燃料原液の供給量及び回収された水の回収量(つまり、水の供給量)を制御することが可能となっている。すなわち、当該検出された濃度に応じて、中間タンク5内に収容されている液体燃料の濃度が、制御装置103に予め設定されている所定の濃度範囲を保つように、燃料ポンプ12の駆動時間や水ポンプ11の駆動時間を制御することが可能となっている。ここで、制御装置103に予め設定されている濃度範囲とは、燃料電池本体102にて必要な電力(必要な電圧及び電流)を発電することが可能なメタノール水溶液の発電可能濃度範囲であり、例えば、10wt%〜1wt%、好ましくは10wt%〜3wt%というような濃度範囲で設定される。ただし、このような発電可能濃度範囲は、膜電極組立体3のクロスオーバー特性に起因するものであり、クロスオーバー特性が向上して、膜電極組立体3を通してアノード1からカソード2へ供給されるメタノールの通過量が低減されれば、10wt%以上の濃度範囲を上記発電可能濃度範囲とすることも可能である。
また、図3に示すように、燃料電池本体102において、アノード1とカソード2とをそれぞれの電極(図示せず)を介して電気的に接続する90には、回路を入り切り(すなわち、ON(接続)/OFF(遮断))する回路スイッチ91(回路遮断スイッチの一例である)が備えられている。この回路スイッチ91のON/OFF動作は、制御装置103により行なうことが可能となっており、燃料電池本体102にて発電運転される際には、回路スイッチ91がON状態とされて、発電回路90にて発電された電流を流すことが可能な状態とされ、一方、発電運転が停止される際には、回路スイッチ91がOFF状態とされて、発電回路90が遮断されて、電流を流すことができない状態とされる。
また、中間タンク5には、液体燃料の収容量を検出する収容量検出部の一例である液面センサ92が備えられている。この液面センサ92は、中間タンク5に収容されている液体燃料の液面が低下して、膜電極組立体3の一部が当該液面より上方に露出されるような液面となったことを検出する機能を有している。また、このような液面センサ92による上記検出が行なわれた場合には、発電回路90の回路スイッチ91がOFF状態あるいはOFF状態が保持された状態とされて、燃料電池システム101において発電回路に電流が流れないように構成されている。
次に、このような構成の燃料電池システム101において発電が行なわれる場合の夫々の装置や構成機器の動作について以下に説明する。なお、以降において説明する夫々の装置や構成機器の動作制御は、制御装置103により互いの動作を関連付けながら統括的に行なわれる。
まず、図3に示す燃料電池システム101において、中間タンク5に、例えば4.5wt%の濃度のメタノール水溶液(液体燃料)を収容させるとともに、原液タンク4に、例えば、68wt%の濃度のメタノール水溶液(液体燃料原液)を収容する。中間タンク5に収容された液体燃料は、燃料供給口1aを通して、アノード1内に供給される。また、中間タンク5へのメタノール水溶液の収容量は、中間タンク5内に配置されているアノード1が完全に浸漬されて、かつ、第1燃料供給管14の供給側端部が、上記収容されるメタノール水溶液の液面よりも下方に位置されるような収容量とされる。このように中間タンク5内にメタノール水溶液が収容されることで、膜電極組立体3におけるアノード1側の表面が、メタノール水溶液中に浸漬された状態とされる。
その後、空気ポンプ7が駆動されて、空気供給管路13及び空気供給口2aを通してカソード2に空気、すなわち、酸素が供給される。これにより、アノード1においてアノード反応が行なわれるとともに、カソード2においてカソード反応が行なわれる。それとともに、発電回路90の回路スイッチ91がON状態とされる。これにより、アノード1とカソード2との間、すなわち、発電回路90にて電力が発生する。アノード1にて上記アノード反応が行なわれることにより生成された二酸化炭素は、排出口1bを通して、中間タンク5内に流れ込み、さらに、中間タンク5の気液分離膜9を通して中間タンク5外に排出される。
一方、カソード2にて上記カソード反応が行なわれることにより生成された水は、カソード2内が空気ポンプ7により加圧されていることにより、排出口2bから水回収管19に排出され、この水回収管19を通して水タンク8に搬送されて回収される。
また、上記発電が行なわれることにより、中間タンク5においては、収容されているメタノール水溶液のうちのメタノール及び水が消費されることとなる。これにより、中間タンク5において、メタノール水溶液の液量が減少するとともに、メタノール水溶液の濃度が低下することとになる。この低下した濃度を濃度センサ17にて検出することにより、制御装置103にて、中間タンク5への液体燃料原液の供給量(補給量)及び回収された水の回収量(補給量)が決定される。当該決定された夫々の供給量に基づいて、原液タンク4から切替弁10、第2燃料供給管15、及び燃料ポンプ12を通して、液体燃料原液が上記供給量だけ、さらに、水タンク8から水ポンプ11、バルブ18、及び水供給管16を通して、水が上記供給量だけ、中間タンク5へ供給される。なお、このとき、切替弁10は、第2燃料供給管15と原液タンク4とを連通し、第1燃料供給管14と原液タンク4との連通を遮蔽するように、切り替えられた状態とされている。このような液体燃料原液と水との中間タンク5への供給動作により、中間タンク5に収容されている液体燃料が補給されるとともに、その濃度が所定の濃度範囲内に保持される。燃料電池システム101において、このような動作が連続的にかつ繰り返して行なわれることにより、燃料電池本体102にて必要な電力量(所定の電力量)の発電が継続的に行なわれることとなる。
一方、燃料電池システム101にて発電を停止する際には、発電回路90の回路スイッチ91がOFFとされ、発電回路90が遮断された状態とされる。それとともに、空気ポンプ7の駆動、燃料ポンプ12の駆動、及び水ポンプ11の駆動が停止される。さらに、切替弁10が動作して、原液タンク4と第2燃料供給管15との連通が遮蔽されて、原液タンク4と第1燃料供給管14とが連通した状態とされる。このような状態が、燃料電池システム101における発電停止状態となり、発電が行なわれない場合はこのような状態が保たれることとなる。
次に、このような発電停止状態が保持された状態において、中間タンク5に収容されている液体燃料の収容量が低下した場合における動作について以下に説明する。
燃料電池システム101において、発電停止の際、特に長期間発電停止とされるような場合には、中間タンク5に収容されている液体燃料が気化して、気液分離膜9を通して中間タンク5の外部に放出され、その液面が下がることとなる。このように液体燃料の液面が低下することで、中間タンク5内において、第1燃料供給管14の供給側端部が上記液面より上方に露出される。この液面よりの露出により、上記供給側端部から第1燃料供給管14内に空気が導入され、この空気の導入に伴って、原液タンク4から中間タンク5へ第1燃料供給管14を通して液体燃料原液が、動力の作用を用いることなく、重力の作用によって供給される。この液体燃料原液の供給は、中間タンク5内において、液面が上昇して、第1燃料供給管14の上記供給側端部が上記液面より下方に位置される、すなわち、液体燃料中に浸漬されるまで行なわれる。
また、上記発電停止の際において、上述のような液体燃料原液の補給が行なわれるような場合であっても、燃料電池システム101がさらに長期間放置されたような場合にあっては、原液タンク4に収容されている液体燃料原液が無くなることが考えられる。このような場合にあっては、中間タンク5における液面の低下が発生しても液体燃料原液を補給することができず、当該液面より上方に膜電極組立体3の一部が露出されることとなる。この場合、中間タンク5に設けられた液面センサ92により当該液面の低下、すなわち、膜電極組立体3の露出を検出することで、発電回路90の回路スイッチ91をOFF状態あるいはOFF状態が保持された状態として、発電回路90に電流を流すことができないようにする。このようにすることで、膜電極組立体3が上記液面より露出された状態で、燃料電池システム101が起動されて、発電回路90に電流が流れることにより、膜電極組立体3を損傷させることを防止することができる。
なお、本第2実施形態において、燃料電池システム101が発電停止時に上下反対に置かれた場合には、切替弁10が第1燃料供給管14側から第2燃料供給管15側に自動的に切り替るように構成されており、誤って中間タンク25の液体燃料が原液タンク4へ逆流することがないようにされている。
上記第2実施形態によれば、以下のような種々の効果を得ることができる。
まず、燃料電池システム101において、発電停止状態が長期間保たれる等により、中間タンク5内に収容されている液体燃料が気化されて、その液面が低下するような場合であって、動力の作用を用いることなく、重力の作用を用いて、液体燃料を中間タンク5へ補給して、当該液面の高さを所定の範囲内に保つことができる。
具体的には、中間タンク5において、第1燃料供給管14の供給側端部が、上記液面の低下に伴って、当該液面より上方に位置されることで、原液タンク4から第1燃料供給管14を通して、液体燃料原液を中間タンク5内に供給することで、上記液面を上昇させてもとの状態に戻すことができる。また、このように上記液面が上昇されて、第1燃料供給管14の上記供給側端部が上記液面中に再び浸漬されることで、第1燃料供給管14よりの液体燃料原液の供給を停止させることができる。このような第1燃料供給管14を用いた液体燃料原液の供給を行なうことにより、重力の作用を用いて、中間タンク5内に収容されている液体燃料の液面高さを略一定の範囲、すなわち、中間タンク5から液体燃料が溢れ出すことなく、また、膜電極組立体3におけるアノード1側の表面が、液体燃料中に浸漬されるような液面高さの範囲に保つことができる。従って、燃料電池システム101が長期間使用されず、中間タンク5に収容されている液体燃料が気化されて減少するような場合であっても、動力の作用を用いずに液体燃料原液を補給することができ、膜電極組立体3が液面より露出して、その一部あるいは全部が乾燥状態となることを防止することができる。よって、膜電極組立体3が乾燥状態にて燃料電池システム101が起動されることにより、膜電極組立体3に分極が発生して損傷が生じることを確実に防止することができる。
一方、燃料電池システム101において、発電運転を行なっている際には、中間タンク5内に収容される液体燃料を所望の濃度範囲に保つべく、切替弁10を切り替えることで、原液タンク4から燃料ポンプ12及び第2燃料供給管15を通して、必要な供給量の液体燃料原液を、水タンク8から水ポンプ11及び水供給管16を通して、必要な供給量の水を夫々、中間タンク5内に供給することができる。また、このような夫々の供給量は、濃度センサ17により中間タンク5内に収容されている液体燃料の濃度を検出することにより、制御装置103にて決定することができる。
また、燃料電池システム101において、発電停止状態が保たれている間に、原液タンク4が空状態となる等により液体燃料原液の供給を行なうことができず、中間タンク5の液面の低下が発生するような場合には、中間タンク5にて液面センサ92にて当該液面の低下を検出し、回路スイッチ91をOFF状態として発電回路90を遮断状態とすることができるため、誤って燃料電池システム101を起動することにより、上記液面からその一部が露出された状態の膜電極組立体への損傷の発生を防止することができる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態にかかる燃料電池システム201の模式的な構成を示す模式構成図を図4に示す。図4に示すように、燃料電池システム201の基本的な構成は、上記第2実施形態の燃料電池システム101と同様であるものの、カソードで生成した水を回収するための補機構成と水供給の構成が異なっている。以下にこの異なる構成部分を中心に説明する。
図4に示すように、燃料電池システム201は、アノード21、カソード22、及び膜電極組立体23を備える燃料電池本体202を備えている。また、アノード21とカソード22とをそれぞれの電極(図示せず)を介して接続するように、発電回路290及び回路スイッチ291が設けられている。
また、燃料電池システム201には、上記第2実施形態の燃料電池システム101と同様な補機系の構成が設けられており、中間タンク25、原液タンク24、燃料ポンプ32、空気ポンプ27、水タンク28が備えられている。
具体的には、燃料電池本体202は、例えば、電解質膜として、Dupont社製のナフィオン117(商品名称)を用い、上記電解質膜の一方の表面に、アノード21のアノード触媒として、炭素系粉末担体に白金とルテニウム、あるいは白金とルテニウムの合金を分散させて担持したものを形成し、他方の表面に、カソード22のカソード触媒として、炭素系担体に白金微粒子を分散担持したものを形成して、その後、例えば、カーボンペーパーからなる拡散層を上記アノード触媒及び上記カソード触媒の夫々に密着させたものを膜電極組立体23として形成し、その後、この膜電極組立体23をセパレータを介してハウジングに固定することにより形成することができる。
また、図4に示すように、アノード21は、上記アノード反応を実施可能にその内部にメタノール水溶液を供給させるための燃料供給口21aと、当該アノード反応により生成された二酸化炭素を上記内部より排出させるための排出口21bとを備えている。
また、カソード22は、上記カソード反応の実施のために用いられる酸素を供給するために、例えば、空気を用い、当該空気をその内部に供給するための空気供給口22aと、当該カソード反応にて生成される生成物の一例である水(液相又は気相のいずれの状態、あるいは夫々の状態が混在した状態のいずれの場合をも含む)と空気を上記内部より排出させるための排出口22bとを備えている。なお、この生成物は水を主成分として含むものであるが、その他に、ギ酸、ギ酸メチル、及びメタノール(いわゆるクロスオーバーによる)等も含まれる場合がある。
次に、カソード22で生成した水を回収するための補機構成と水供給の構成について図4を用いて説明する。
図4に示すように、カソードで生成した水を回収するための補機構成としては、カソード22の排出口22bと、生成物回収容器として例えば水タンク28を水回収管36とバルブ38を通して連結し、水を回収する構成である。水タンク28は中間タンク25よりも上方に配置されており、空気を排出する気液分離膜26と、中間タンク25へ回収した水を供給する水供給管39が備えられる。なお、水タンク28の底部には傾斜が設けられているとともに、その最低部に水供給管39が接続されており、これにより、水タンク28内に収容されている水の排出性が良好な状態とされている。
次に、中間タンク25への水供給の具体的な構成について説明する。図4に示すように、水供給管39の図示下方先端部(水の供給側端部)近傍には、中間タンク25の液面に対応してバルブを機械的に開閉する水供給バルブ31が備えられている。水供給バルブ31には、上記液面を検出するための浮き33が連結部40を介して連結されている。この連結部40には、スイッチ41(例えば、リミットスイッチ)が備えられ、液面が下がり浮き33が下がりきった位置でスイッチ41がOFFになるように設定されている。なお、本第3実施形態においては、浮き33が収容量検出部の一例となっている。
ここで、図4における燃料電池システム201における図示A部分(すなわち、中間タンク25における液体燃料の液面近傍)の拡大模式図を図5A、図5B、及び図5Cの夫々に示す。なお、図5A、図5B、及び図5Cの夫々は、中間タンク25の液面が変化して、順次下降していく過程における夫々の状態を示している。また、図5A、図5B、及び図5Cのそれぞれにおいては、燃料電池本体202のアノード21の上端における高さ位置をH0、第1燃料供給管34の供給側端部の高さ位置をH1、水供給管39の供給側端部の高さ位置をH2としている。
図5A、図5B、及び図5Cのそれぞれに示すように、アノード21の上端よりも高い位置に第1燃料供給管34の供給側端部が位置されており、第1燃料供給管34の供給側端部よりも高い位置に位置されるように水供給管39の供給側端部が配置されている。これにより夫々の高さ位置の間で、H0<H1<H2の関係が成立している。また、図5A、図5B、及び図5Cの夫々においては、燃料電池システムが発電停止状態にある。
また、図5Aにおいては、中間タンク25にて、液体燃料の液面が、水供給管39の供給側端部の高さ位置H2と略同じ高さ位置に位置されている状態を示している。このような状態においては、浮き33の位置により連結部40が略水平に配置され、水供給バルブ31が閉止された状態となっており、水供給管39を通じて水の供給は行なわれない状態にある。また、第1燃料供給管34の供給側端部は、液面より露出されていない状態にあるため、液体燃料原液の供給は行なわれない状態にある。
次に、図5Bにおいては、中間タンク25にて、液体燃料の液面が、水供給管39の供給側端部の高さ位置H2より下方に位置され、かつ、第1燃料供給管34の供給側端部の高さ位置H1よりも上方に位置された状態にある。このような状態においては、図5Aの状態と比べて浮き33が下がるため、水供給バルブ31が開いた状態とされる。これにより、水供給管39を通して水タンク28から中間タンク25へ水が供給される。この水の供給により、中間タンク25において、液面が再び高さ位置H2の近傍まで上昇すれば、それに伴って浮き33も上昇し、再び水供給バルブが閉じられて、水供給管39を通しての水の供給が停止される。なお、再び図5Aの状態から図5Bの状態へと、中間タンク25において液面が低下するごとに、上述の夫々の動作が繰り返されて、中間タンク25への水の供給が行なわれ、液面の高さ位置が、高さ位置H2からH1の範囲内に保持されることとなる。
また、図5Cにおいては、水タンク28に収容されている水がなくなり、中間タンク25への水の供給を行なうことができず、液体燃料の液面がさらに高さ位置H1より下がり、高さ位置H0の近傍に位置された状態を示している。このような状態においては、第1燃料供給管34の供給側端部が液面よりも上方に露出された状態とされていることより、上記第2実施形態において説明した原理と同じ原理にて、原液タンク24から第1燃料供給管34を通して液体燃料原液が供給される。この液体燃料原液の供給により、中間タンク25の液面を所定の高さ位置範囲内に保つことができる。
また、図5Cに示す状態において、原液タンク24が空となっているような場合にあっては、液体燃料原液の補給を行なうことができず、中間タンク25の液面が下がった状態となる。このような状態にあっては、水供給バルブ31の連結部40のスイッチ41がOFF状態とされるため、回路スイッチ291がOFF状態とされて発電回路290が遮断された状態とされ、燃料電池システム201が起動できない状態とされる。これにより、その後、さらに中間タンク25において液体燃料の液面の低下が生じて、当該液面より上方に膜電極組立体23が露出された状態で、燃料電池システム201が起動されることを確実に防止することができる。よって、膜電極組立体23が液面の上方に露出する状態およびその結果乾燥状態とされた状態において、発電が行なわれることによる膜電極組立体23の損傷発生を防止することができる。なお、燃料電池システム201において、起動できない状態であり、燃料補給が必要であることをユーザ等に知らせる表示を出したり、燃料切れのランプを点灯させるような場合であってもよい。
なお、本第3実施形態の燃料電池システム201における発電のための動作については、上記第1実施形態の燃料電池システム101の動作と同様であるため、その説明を省略するものとする。また、このような発電のための夫々の動作及び発電運転停止時の夫々の動作における夫々の装置や構成機器の動作制御は、制御装置203により互いの動作を関連付けながら統括的に行なわれる。
また、本第3実施形態において、燃料電池システム201が発電停止時に上下反対に置かれた場合、切替弁32が第2燃料供給管35側に切り替わるため、第1燃料供給管34を閉止することができ、さらに、水供給バルブ31においては、浮き33がバルブを閉止する方向に移動されるため、誤って中間タンク25の液体燃料が原液タンク24及び水タンク28へ逆流することがないように構成されている。
また、本第3実施形態においては、水タンク28から中間タンク25への水の供給が、水供給管39及び水供給バルブ31(生成物用重力供給部の一例である)を通して、動力の作用を用いることなく、重力の作用を用いて行なわれる場合について説明したが、本第3実施形態はこのような場合のみに限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、燃料供給の態様と同様に、重力の作用を用いて水の供給を行なう水供給管39及び水供給バルブ31と、動力の作用を用いて水の供給を行なう別の水供給管とその途中に設けられた水供給ポンプ(生成物用動力供給部の一例である)と、夫々の供給管を選択可能に切り替える切替弁とが備えられるような場合であってもよい。このような場合にあっては、上記第1実施形態の場合と同様に、燃料電池システム201において発電運転中に、中間タンク25への液体燃料原液の供給量と、水の供給量とを、燃料ポンプ32と上記水供給ポンプとの駆動を制御することで調整することができるため、中間タンク25に収容される液体燃料の濃度を調整することができるという利点がある。一方、本第3実施形態の構成においては、このような濃度調整を行なうことができないため、逆に濃度調整を必要としない濃度範囲、例えば10wt%以下のメタノール水溶液を液体燃料として用いるような場合に適している。なお、このような濃度範囲は、膜電極組立体23のクロスオーバー特性に大きく影響されるものであり、このような特性が改善されることで、上記濃度範囲をさらに拡大することが可能である。
また、本第3実施形態の燃料電池システム201においては、発電停止時において中間タンク25に収容されている液体燃料の収容量が減少した場合に、水の補給が最初に行われることとなるが、このような方式によれば中間タンク25内の液体燃料の濃度が発電可能濃度範囲を下回ることも考えられ、燃料電池本体202において発電を開始できないような場合も考えられる。このような問題を解消するため、水タンク28の出口付近における水供給管39に外部信号により開閉動作可能な自動弁42を設置し、制御装置203にて、濃度センサ37により中間タンク25内の液体燃料の濃度を検出させて、当該検出結果に基づいて、上記発電可能濃度範囲を下回っていると判断する場合には、自動弁42を閉止して水供給管39を遮蔽し、中間タンク25への水の補給を停止させるような制御を行う。これにより、中間タンク25へは液体燃料原液が供給されることとなり、上記濃度の低下を防止することができ、燃料電池本体202における発電を開始させることが可能となる。その後、濃度の上昇が確認されると、自動弁42を開放させて水の補給を再開させることもできる。
上記第3実施形態によれば、燃料電池システム201において発電停止時における中間タンク25内の燃料が自然蒸発してその液面が低下しても、動力の作用を用いることなく、重力の作用を用いることで、液体燃料原液及び水を中間タンク25内へ供給することができるため、中間タンク25よりアノード21へ常に液体燃料を供給することができる。このため、中間タンク25の液体燃料が減少した状態で放置されることがないことと、燃料電池システム201を起動した時に液体燃料が少ないことで膜電極組立体23にダメージを与えないという効果を得ることができる。
なお、上記それぞれの実施形態において膜電極組立体3、23、及び53が有する電解質膜としてDuPont社のナフィオン117を用いた場合に付いて説明したが、このような場合に代えて、水素イオン導電性を示す膜の材料として、パーフルオロカーボン系スルフォン酸等に代表されるスルフォン化したフッ素系ポリマーやポリスチレンスルフォン酸、スルフォン化ポリエーテルエーテルケトン類等の炭化水素系ポリマーを用いても良い。
また、上記それぞれの実施形態においては、拡散層としてカーボンペーパーを用いた場合について説明したが、このような場合に代えて、拡散層として発泡金属(例えば、ステンレス材料からなる発泡金属)を用いることもできる。
また、上記夫々の実施形態においては、中間タンクに収容される液体燃料の濃度を1wt%〜10wt%の範囲のいずれかの濃度のメタノール水溶液を用いたが、このような濃度範囲の上限値は、燃料電池本体の膜電極組立体のクロスオーバー特性に基づくものである。従って、今後、このクロスオーバー特性が改善されれば、さらに高い濃度(すなわち、10wt%よりも高い濃度)のメタノール水溶液を用いることも可能である。
また、上記第2実施形態及び上記第3実施形態においては、燃料供給口1a、21aを通してアノード1、21の内部に液体燃料を供給すると説明したが、中間タンク5、25の液面が排出口1b、21bより高い場合は、排出口1b、21bから燃料が供給されてもよい。
また、上記それぞれの実施形態の燃料電池システム50、101、又は201を、燃料電池パック301として、携帯電子機器の一例であるノート型パーソナルコンピュータ用の電池として用いる場合の模式斜視図を図6A及び図6Bに示す。図6A及び図6Bに示すように燃料電池システム50、101、及び201を小型化することができるため、このようにノート型パーソナルコンピュータの電源として用いることが可能となる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
50…燃料電池システム、51…アノード、51a…燃料供給口、51b…排出口、52…カソード、52a…空気供給口、52b…排出口、53…膜電極組立体、54…原液タンク、55…中間タンク、56…気液分離膜、57…空気ポンプ、58…水タンク、59…排気管、60…自動弁、61…水ポンプ、62…燃料ポンプ、63…空気供給管、64…レベルセンサ、65…燃料供給管、66…水供給管、67…濃度センサ、68…自動弁、69…水回収管、70…燃料電池本体、73…制御装置、74…2次電池。