JP2005201979A - 眼鏡レンズおよび眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 中距離にある物体を良好に観察するための広い明視域を有する領域を持ち、かつ中距離にある物体から近距離あるいは遠距離にある物体を観察するために眼を回旋させたときも違和感や疲労を与えることなく快適に観察することでき、レンズデザイン的にも優れた眼鏡レンズおよび該眼鏡レンズの製造方法を提供すること。
【解決手段】 眼鏡レンズは、透過屈折力が略一定である屈折力一定領域をレンズの略中央部に備え、屈折力一定領域の上方に該レンズの上端まで連続的に透過屈折力が変化する上方屈折力変化領域を有し、屈折力一定領域の下方に該レンズの下端まで連続的に透過屈折力が変化する下方屈折力変化領域を有し、複数の異なる位置を含む所定範囲が該屈折力一定領域内であって主注視線上に規定されており、該所定範囲の中から眼鏡の仕様に応じて選択された所定位置がフィッティングポイントである構成にした。
【選択図】 図8
【解決手段】 眼鏡レンズは、透過屈折力が略一定である屈折力一定領域をレンズの略中央部に備え、屈折力一定領域の上方に該レンズの上端まで連続的に透過屈折力が変化する上方屈折力変化領域を有し、屈折力一定領域の下方に該レンズの下端まで連続的に透過屈折力が変化する下方屈折力変化領域を有し、複数の異なる位置を含む所定範囲が該屈折力一定領域内であって主注視線上に規定されており、該所定範囲の中から眼鏡の仕様に応じて選択された所定位置がフィッティングポイントである構成にした。
【選択図】 図8
Description
この発明は、視力の調整、特に老視の補正に用いられる眼鏡レンズに関する。
従来、加齢に伴い衰えた眼の調節力を補う為に用いられる老視用眼鏡レンズとしては、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等が存在する。どのレンズも他のレンズと比較すると一長一短がある。そのため、上記老視用眼鏡レンズの装用者は、様々な状況や環境に応じて装用する眼鏡を適宜使い分けなければならない。これにより、眼鏡装用者は、主として見ようとする物体との距離等に対応した視力を確保する。
例えば、近年、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)の普及に伴い、高齢者が仕事や趣味等においてパソコンを使用する時間が年々増加する傾向にある。そのため、近年、例えばパソコンのディスプレイのように眼鏡から50cm前後の距離(以下、本文において中距離という)にある物体を快適に見たいという要望が強くある。
上記要望に応えるために、上記中距離に屈折力を合わせた単焦点眼鏡レンズが考えられる。単焦点眼鏡レンズは、中距離にある物体を見るという点においては、非常に適したレンズである。しかし、単焦点レンズの性質上調整力の残っている範囲内の浅い奥行きにしか適用できず、遠距離(または近距離)にある物体を見るときには眼鏡を掛け替えなければならず、眼鏡装用者の煩に耐えないという問題がある。特に、パソコン作業時のように、中距離にあるディスプレイを見ながら近距離にある物体も見る状況下においては、実用性が著しく低下してしまう。
遠距離にある物体と近距離にある物体とを見ることが可能なレンズとしては多焦点レンズを用いることが考えられる。しかし多焦点レンズは、屈折力の不連続性から像がジャンプしてしまい、眼鏡装用者に違和感やかなりの疲労を与えてしまうという本質的な問題がある。しかも、高加入度の多焦点眼鏡レンズの場合、遠用部と近用部との屈折力の差が大きく設計されるため、中距離にある物体にはうまくピントが合わないといった問題もあり好ましくない。
上記問題に鑑み、従来、下記特許文献1〜4に開示される技術思想のように、中距離や近距離にある物体を見ることを主目的とした老視用累進屈折力眼鏡レンズが提案されている。
上記特許文献1に開示されたマルチフォーカス眼鏡用レンズでは、レンズ上部とレンズ下部に累進的加入屈折力を配し、かつ遠用部と近用部との間に屈折力が略均一の中間部を設けている。特許文献1に記載の眼鏡用レンズは、遠用部、近用部、中間部の三つの特定視距離範囲を設けることにより、遠くにある物体から近くにある物体まで見ることができる。しかし、三つの特定視距離範囲を備えることが必須となるため、各領域の上下方向の幅、特に中間部の上下方向の幅は狭くせざるを得ない。また、三つの特定視距離範囲と二つの累進帯域を配置することから、必然的に各累進帯域における屈折力は急激に変化する。よって、レンズ加工時にかなりの困難さを伴うだけでなく、上述した多焦点レンズと同様の問題も発生してしまうため、実用性に極めて乏しかった。
上記特許文献2〜4に記載の累進屈折力レンズは、いずれも遠用部と近用部との間にある累進部において、中距離にある物体を見ることになる。各文献2〜4に記載の構成では、累進(中間)部側方で非点収差が大きく発生するために、該中間部において明視域を広く取ろうとしても限界があるという問題や歪みの問題がある。また、例えばパソコン作業中においては、中距離にあるディスプレイとキーボードを交互に見る作業が頻繁に繰り返される。しかし、累進部で中距離の物体を見る構成では、視線の上下方向の角度が変わると焦点の合う物体距離が変化する。そのため、同じ距離の物体に対しても眼鏡装用者は頭を上下方向、または水平方向に振って屈折力の変化する累進部内のもっとも見やすい場所に合わせなければならない。そのため疲労がたまりやすく作業効率が悪くなるという問題があった。
なお、本明細書において、明視域とは、像の歪みやボケを感じることなく物をみることができる領域をいい、具体的には、透過性能での非点収差が0.5D以下の領域を言う。また上方、下方、水平方向、鉛直方向等の方向を示す表現は、装用時における眼鏡レンズの状態を基準とした方向を示す。
さらに、特許文献1〜4に開示される累進屈折力レンズにおける、眼鏡レンズを眼鏡フレームに配置する際の指標(フィッティングポイント)は、眼鏡レンズの仕様の如何を問わず、所定の位置に設けられる、いわゆる汎用の指標であった。そのため、たとえ処方通りに眼鏡レンズが製造されたとしても、顧客(眼鏡装用者)に提供される最終製品としての眼鏡において、該眼鏡レンズが該装用者の使用目的に対応した最適な状態で眼鏡フレームに配置されるかどうかは、上記汎用の指標を用いてレンズ配置を調整する各眼鏡店の経験と技量に委ねざるを得なかった。なお、眼鏡の仕様とは、眼鏡装用者が眼鏡店等に持参した処方箋の記載内容や、視力測定の結果等により作成される眼鏡レンズに関する様々な情報のことをいう。
そこで本発明は上記の事情に鑑み、中距離にある物体を良好に観察するための広い明視域を有する領域を持ち、かつ中距離にある物体から近距離あるいは遠距離にある物体を観察するために眼を回旋させたときも違和感や疲労を与えることなく快適に観察することができる眼鏡レンズおよび該眼鏡レンズの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する為に、本発明にかかる眼鏡レンズは、透過屈折力が略一定である屈折力一定領域をレンズの略中央部に備え、屈折力一定領域の上方に該レンズの上端まで連続的に透過屈折力が変化する上方屈折力変化領域を有し、屈折力一定領域の下方に該レンズの下端まで連続的に透過屈折力が変化する下方屈折力変化領域を有し、複数の異なる位置を含む所定範囲が該屈折力一定領域内であって主注視線上に規定されており、該所定範囲の中から眼鏡の仕様に応じて選択された所定位置がフィッティングポイントであることを特徴とする。
請求項1に記載の発明は、まず、上記特許文献2〜4に記載の発明とは異なり、レンズ中央部に屈折力一定領域を設けるように構成する。これにより、該中央部を介して物体を長時間見るのに最適な眼鏡レンズが提供される。一般にデスクワークにおいて見る物体は中距離にあることが多い。そのため本発明は、該屈折力一定領域を中距離にある物体を快適に見るために必要な度数に設定する。これにより、中距離にある物体を主として見るのに好適な眼鏡レンズが提供される。すなわち本発明の眼鏡レンズであれば、中距離にあるディスプレイやキーボードを眼に負担をかけることなく見ることができる。眼鏡装用者は、疲労がたまりにくく、効率よく作業を行うことができる。
上記構成の実効性を高めるために請求項1に記載の発明は、眼鏡の仕様に応じて選択されたフィッティングポイントを基準に眼鏡フレームに眼鏡レンズを固定する。これにより、眼鏡レンズが眼鏡装用者の使用目的に最適な状態で眼鏡フレームに配置された眼鏡を提供することができる。眼鏡の仕様に応じてフィッティングポイントを設けることにより、中距離にある物体から近距離あるいは遠距離にある物体を観察するための眼の回旋量を最小限に設定できるので、眼鏡装用者に疲労を与えることなく快適に観察させることができる。さらに請求項1に記載の発明は、フィッティングポイントを選択可能な複数の位置を含む所定範囲を規定することにより、眼鏡店等の該フィッティングポイントを選択時における負担を軽減することができる。
ここで、上記所定範囲および上記複数の異なる位置は、眼鏡の仕様とは無関係に規定されている(請求項2)。つまり、上記所定範囲および上記複数の異なる位置は、どの眼鏡レンズにも共通の場所に規定することができる。
本発明に係る眼鏡レンズにおいて、フィッティングポイントは、眼鏡製造工程において、眼鏡の仕様に応じて所定位置に設定することができる。また、上記所定範囲を囲んだゾーンや上記複数の異なる位置のそれぞれを眼鏡レンズに印刷(レイアウト)しておくことも可能である。このように所定範囲(ゾーン)等を予めレイアウトした眼鏡レンズのフィッティングポイントは眼鏡店において設定することができる。
ここで、受注時に入手可能な眼鏡の仕様のうち、屈折力一定領域において観察しようとする物体までの距離、より具体的には中距離に関する情報に応じて、フィッティングポイントを設定することができる。
加えて、屈折力一定領域の上方と下方には、レンズ端部まで屈折力が連続的にかつ緩やかに変化する屈折力変化領域を設ける。従って上記特許文献1と異なり、眼を上下方向に回旋した場合に疲れにくく違和感なく視線を移すことができる構成になっている。各屈折力変化領域は、眼鏡の仕様に応じて屈折力変化が設定されているため、装用者の要望や眼の調節力に沿った眼鏡設計が可能になる。例えば、上方屈折力変化領域は、主として中距離よりも遠方の物体を観察するための領域として、下方屈折力変化領域は、主として中距離よりも近方の物体を観察するための領域として設計することができる(請求項7)。
請求項8に記載の発明によれば、上記中距離は、約40cmから約67cmの範囲内にある値に設定するのが望ましい。換言すれば、距離(単位;mm)をディオプター表示したときに、眼からパソコンディスプレイまでの平均的な距離50cm(−2D)を基準値として−2±0.5D範囲を中距離とするとよい。
請求項9に記載の眼鏡レンズによれば、フィッティングポイントは、中距離が上記範囲内において定義される所定の基準値(例えば、50cm)である場合に、主注視線上において屈折力一定領域の上下方向の中点に設けられることが望ましい。ここで中点とは、屈折力一定領域における前記主注視線(線分)を略二等分する点と定義することもできる。
請求項10に記載の眼鏡レンズによれば、フィッティングポイントは、中距離が上記所定の基準値よりも遠方である場合、上記中点よりも下方に設定されるとよい。また、請求項11に記載の眼鏡レンズによれば、フィッティングポイントは、中距離が上記所定の基準値よりも近方である場合、主注視線上において屈折力一定領域の上下方向の中点よりも上方に設定されるとよい。
請求項13に記載の眼鏡レンズの製造方法は、レンズの略中央部に透過屈折力が略一定である屈折力一定領域を設定するステップと、透過屈折力一定領域の上方に該レンズの上端まで連続的に透過屈折力が変化する上方屈折力変化領域を設定するステップと、屈折力一定領域の下方に該レンズの下端まで連続的に透過屈折力が変化する下方屈折力変化領域を設定するステップと、複数の異なる位置を含む所定範囲を屈折力一定領域内に規定するステップと、該所定範囲の中から眼鏡の仕様に応じて選択された所定の位置をフィッティングポイントとして設定するステップと、を含む。
以上のように、本発明によれば、レンズ中央部に中距離にある物体を見る場合に好適な広い明視域を有する屈折力一定領域を持つ眼鏡レンズを提供することができる。
また本発明の眼鏡レンズは、中距離に関する情報等の眼鏡の仕様に応じてフィッティングポイントの位置を設定する。従って、設定されたフィッティングポイントを基準にレンズをフレームに固定すれば眼鏡装用者にとって快適な眼鏡レンズとなる。よって眼鏡装用者は、中距離にある物体から近距離あるいは遠距離にある物体を観察するために眼を回旋させたときも違和感や疲労を与えることなく快適に観察することできる。
まず図1〜図4を参照しつつ、本実施形態の眼鏡レンズの屈折力配置について説明する。図1、図2は、それぞれレンズ中心部の透過屈折力SPHが負の度数(−4.00D)の眼鏡レンズにおける主注視線上での面性能および透過性能を表すグラフである。また図3、図4は、それぞれレンズ中心部の透過屈折力SPHが正の度数(+2.00D)の眼鏡レンズにおける主注視線上での面性能および透過性能を表すグラフである。図1〜図4において、実線が平均屈折力の変化を表し、点線が非点収差の変化を表す。また各図中、横軸が平均屈折力(または非点収差)の大きさ(単位;D)を、縦軸が原点(本実施形態ではフィッティングポイント)からの距離(単位;mm)を表す。
本発明の本実施形態の眼鏡レンズは、図2実線や図4実線に共通して表れるような透過屈折力を得るために、図1や図3のような変化を有する内面(レンズの眼側の面)を有することを特徴とする。具体的には、まず内面中央部に透過屈折力が略一定の領域(屈折力一定領域)Amを備える。屈折力一定領域Amは、中距離にある物体を見るための領域、つまり機能的には従来の累進屈折力レンズにおける累進部に相当する領域である。屈折力一定領域Amの上方は、レンズ上端まで連続的に透過屈折力が変化する領域(上方屈折力変化領域)Auを備える。上方屈折力変化領域Auは、負の加入によって、主として中距離よりも遠方にある物体を観察するための領域となっている。屈折力一定領域Amの下方は、レンズ下端まで連続的に透過屈折力が変化する領域(下方屈折力変化領域)Adを備える。下方屈折力変化領域Adは、正の加入によって、主として中距離よりも近方にある物体を観察するための領域となっている。
上記のように、屈折力一定領域Amの上下にレンズ端部まで透過屈折力が変化する屈折力変化領域Au、Adを設け、変化の勾配を緩やかにしている。これにより、屈折力変化領域使用時に眼にかかる負担が軽減され、結果として眼精疲労の発生を低減することができる。
なお本実施形態において中距離は、眼から、40cm〜67cm程度の範囲内に設定される。ここで、距離(単位;mm)をディオプター表示すると、眼からパソコンディスプレイまでの平均的な距離50cmは、−2Dとなる。該−2D(50cm)を基準値とすると、上記範囲は、該基準値の±0.5Dの範囲となる。つまり、基準値は、中距離を決定する範囲のちょうど中間値に該当する。図1〜図4に示す眼鏡レンズでは、基準値である50cmを中距離としている。
図1点線や図3点線に示すように、本実施形態の眼鏡レンズは、ベースカーブをより浅くしてレンズ全体の薄型軽量化を図るために、主注視線上の面形状を非臍点状である部分を有するように設計される。非臍点状とは、主注視線上の面非点収差が0でない状態をいう。
また、レンズ中心部の透過屈折力が負の度数の眼鏡レンズは、図1実線に示すように屈折力一定領域がある中央部よりも下方に行くにつれて、面の平均屈折力が大きくなるように加工される。中央部よりも上方は、下方よりも小さい変化の割合(平均勾配)で面の平均屈折力が小さくなるように加工される。また、レンズ中心部の透過屈折力が正の度数の眼鏡レンズは、図3実線に示すように屈折力一定領域がある中央部よりも上方に行くにつれて、面の平均屈折力が小さくなるように加工される。中央部よりも下方は、上方よりも小さい変化の割合(平均勾配)で面の平均屈折力が大きくなるように加工される。
このように上方屈折力変化領域および下方屈折力変化領域の主注視線上における面形状を変えることにより、レンズ中心部の透過屈折力(度数)が違う場合でも、図2と図4の実線に示すような近い透過屈折力変化が得られる。
ここで実施形態の眼鏡レンズは、従来の累進屈折力レンズにおける特定視距離範囲に相当する屈折力一定領域が中央部に一箇所設けられているだけである。そのため、屈折力一定領域Amについては、受注時に入手した眼鏡の仕様に対応して最適な設計や加工がなされる。そして、上方屈折力変化領域Auや下方屈折力変化領域Adについては、該仕様に基づいて屈折力変化の平均勾配を設定することにより、装用者により相応しい設計や加工がなされる。一般的に屈折力一定領域Amの度数は、眼鏡の仕様のうち、屈折力一定領域Amを介して観察しようとする物体までの距離、つまり中距離の情報に対応して決定される。よって、二つの屈折力変化領域Au、Adも、中距離の情報に基づいて設計、加工される。
また従来の累進屈折力レンズでは、フィッティングポイントはレンズ設計時に予め定められた所定の一点に設けられていた。これに対し、本発明に係る眼鏡レンズは、レンズ設計時に、フィッティングポイントを選択可能な所定範囲(選択範囲)が印刷されている。そして本発明に係る眼鏡レンズでは、レンズ出荷時あるいは出荷後眼鏡店において、上記選択範囲の中から眼鏡の仕様に応じた位置にフィッティングポイントが設定される。なお、選択範囲の印刷やフィッティングポイントの設定には、消去性あるインクが用いられる。本実施形態では、上記各領域Amの度数、Au、Adの屈折力変化勾配決定と同様に眼鏡の仕様のうち、眼鏡装用者が見ることを所望する中距離の情報を使用して、フィッティングポイントの位置の選択を行う。フィッティングポイントの設定位置を眼鏡の仕様に応じて変えることにより、より少ない眼球旋回で所望の距離範囲の物体を観察することができるように眼鏡レンズを眼鏡フレームに配置することが容易となり、該装用者は違和感や疲労を感じることなく、より快適に眼鏡を使用することができる。
ここで、フィッティングポイントは、眼鏡を装用する者が正面視をした際に視線がレンズを通過する点(視線通過点)と一致する点であり、各眼鏡店が眼鏡レンズをフレームに固定する際の基準となる点である。ここで、屈折力一定領域Am内にフィッティングポイントを設定することにより、本発明に係る眼鏡レンズは、単焦点レンズと同様の取り扱いができる。そのため、レンズ製造者の加工(検査)や眼鏡店でのレンズ発注が容易になる。また、レンズをフレームに入れる枠入れ作業時の作業者の負担軽減を図ることができる。
具体的には、中距離が基準値である50cmに設定された場合には、フィッティングポイントを主注視線上において屈折力一定領域の上下方向の中点に一致するように設計する。中距離が基準値よりも遠方に設定されるときにはフィッティングポイントを上記中点よりも下方に配置する。中距離が基準値よりも近方に設定されるときにはフィッティングポイントを上記中点よりも上方に配置する。
以下、図を参照しつつ、中距離の値によってフィッティングポイントの設定位置を変えた眼鏡レンズについて3例(眼鏡レンズ10A、10B、10C)説明する。どの眼鏡レンズ10A、10B、10Cも、中心度数SPHが0.00D、外径がφ75mm、屈折力一定領域Amの上下方向の長さが8mmである。
図5から図7が、第1実施例の中距離を50cm(−2D)に設定した眼鏡レンズ10Aに関する図である。図5は、眼鏡レンズ10Aの透過平均屈折力の等高線図(等平均屈折力分布図)である。図6は、眼鏡レンズ10Aにおける主注視線上での透過性能を表すグラフである。図7は、眼鏡レンズ10Aの透過非点収差の等高線図(等非点収差分布図)である。図5、図7において、等高線間隔はいずれも0.5Dであり、後述する各眼鏡レンズ10B、10Cの等高線図でも同様である。図5中、破線で囲まれた領域が屈折力一定領域Amを、点FPがフィッティングポイントを、点Oが主注視線上において屈折力一定領域Amの上下方向の中点を、それぞれ表す。なお、屈折力一定領域Amの左右の端部、つまりレンズの左周辺と右周辺の領域は、図7に示すように収差の多い周辺部である。各記号が示す意味は、以下に示す各図面においても同様である。また図6中、横軸が透過平均屈折力の大きさ(単位;D)を、縦軸が点FPからの距離(単位;mm)を表す。以下に説明する図9、図11についても同様である。
ここで、図6に示す透過性能は、図2や図4に示す透過性能と同様の屈折力変化をする。つまり、第1実施例の眼鏡レンズ10Aも屈折力一定領域Am、上方屈折力変化領域Au、下方屈折力変化領域Adを備えている。
上記の通り、基準値である50cm(−2D)は、中距離を決定する範囲のちょうど中間値である。従って、基準値を中距離に設定した眼鏡レンズ10Aは、50cmより遠方および50cmより近方のどちらにある物体に対しても、眼を上下方向において略同量だけ回旋することにより、略均一の快適さで観察できるような設計がなされる。すなわち、図5に示すように、中距離を基準値に設定した眼鏡レンズ10Aは、フィッティングポイントFPを屈折力一定領域Amの上下方向の中点Oと一致するように設定される。
フィッティングポイントFPと屈折力一定領域Amの上下方向の中点Oとが一致していることは、図6に示す透過性能のグラフからも読み取れる。また図6に示すように、眼鏡レンズ10Aは、50cmから所定距離分遠い物体または50cmから所定距離分近い物体のいずれに対しても、上下方向においてフィッティングポイントFPから略同量分眼を回旋することによって快適に観察できるような透過性能になっていることがわかる。
なお、図5や図6に示す透過性能を有する眼鏡レンズ10Aは、図7中矢印線に示すように屈折力一定領域Amの明視域幅が最も広くなる。これにより、パソコン作業時におけるディスプレイ観察といった中距離にある物体を見る頻度が高い状況に対して好適なレンズとなっている。
図8および図9が、第2実施例の中距離を67cm(−1.5D)に設定した眼鏡レンズ10Bに関する図である。図8は、第2実施例の眼鏡レンズ10Bの透過平均屈折力の等高線図(等平均屈折力分布図)である。図9は、眼鏡レンズ10Bにおける主注視線上での透過性能を表すグラフである。眼鏡レンズ10Bの透過非点収差の等高線図(等非点収差分布図)は、図7と同様であるため、ここでの説明は省略する。図9に示すように、第2実施例の眼鏡レンズ10Bも屈折力一定領域Am、上方屈折力変化領域Au、下方屈折力変化領域Adを備えている。つまり上述した本発明独自の透過性能を有している。
中距離として基準値よりも遠方の67cmが設定されているということは、眼鏡装用者は比較的遠方を見るためのマイナス加入は、あまり必要としていない。これに対し、67cmよりも近距離にある物体に対するプラス加入が不足していると考えられる。この場合に、眼鏡レンズ10AのようにフィッティングポイントFPが中点Oと一致している透過性能のレンズを使用すると、以下のような不都合がある。すなわち眼鏡装用者は、近距離にある物体を見たい場合、中距離が基準値よりも遠方に設定されているために必要以上に眼を下方に回旋させてプラス加入を得なければならない。よって、必要以上に眼鏡装用者に負担をかけるおそれがある。
そこで図8に示すように、眼鏡レンズ10Bは、フィッティングポイントFPが主注視線上において中点Oよりも3mm下方に位置するように設計される。これにより図9に示すように、眼鏡レンズ10Bは、フィッティングポイントFPからわずかに下方の位置で既に正の加入が始まる透過性能となる。従って、眼鏡装用者は、眼をわずか下方へ回旋させることによって、近方にある物体を快適に観察することができる。(例えば、屈折力一定領域の度数よりプラス1.0Dの加入を得るためには、−15mmの所を通して見ていたが、FPを3mm下方にすることによって−12mm下方に回旋すれば同じ加入が得られる。)これにより、上記の不都合は解消される。
図10および図11が、第3実施例の中距離を40cm(−2.5D)に設定した眼鏡レンズ10Cに関する図である。図10は、第3実施例の眼鏡レンズ10Cの透過平均屈折力の等高線図(等平均屈折力分布図)である。図11は、眼鏡レンズ10Cにおける主注視線上での透過性能を表すグラフである。眼鏡レンズ10Cの透過非点収差の等高線図(等非点収差分布図)は、図7と同様であるため、ここでの説明は省略する。図10に示すように、第3実施例の眼鏡レンズ10Cも屈折力一定領域Am、上方屈折力変化領域Au、下方屈折力変化領域Adを備えている。つまり上述した本発明独自の透過性能(図1〜図4参照)を有している。
中距離として基準値よりも近方である40cmが設定されているということは、眼鏡装用者は比較的近方を見るためのプラス加入はあまり必要としていない。これに対し、40cmよりも遠距離にある物体に対するマイナス加入が不足していると考えられる。この場合に、眼鏡レンズ10AのようにフィッティングポイントFPが中点Oと一致している透過性能のレンズを使用すると、以下のような不都合がある。すなわち眼鏡装用者は、遠距離にある物体を見たい場合、中距離の設定が基準値よりも近方であるために必要以上に眼を上方に回旋させてマイナス加入を得なければならない。よって、必要以上に眼鏡装用者に負担をかけるおそれがある。眼鏡レンズ10BのようにフィッティングポイントFPが中点Oよりも下方に位置する透過性能のレンズではなおさら上記不都合が起こりやすい。
そこで図10に示すように、眼鏡レンズ10Cは、フィッティングポイントFPが主注視線上において中点Oよりも3mm上方に位置するように設計される。これにより図11に示すように、眼鏡レンズ10Cは、フィッティングポイントFPからわずかに上方の位置で既に負の加入が始まる透過性能となる。従って、眼鏡装用者は、眼をわずかに上方へ回旋させることによって、遠方にある物体を快適に観察することができる。これにより、遠方にある物体を見るために眼を大きく回旋させる必要が無くなり、上記の不都合は解消される。
以上が本発明の実施形態である。なお、上記実施形態の眼鏡レンズにおけるフィッティングポイントは、眼鏡レンズ製造工程において、眼鏡の仕様に応じて選択範囲の中から選択し、マーキングされるものである。ここで、本発明に係る眼鏡レンズは、図12や図13に示す眼鏡レンズ20や眼鏡レンズ30のように変形しても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。眼鏡レンズ20や眼鏡レンズ30は、どちらも眼鏡店が顧客に対して所定の測定を行う際に、適切なフィッティングポイントを設定するものである。
図12に示す眼鏡レンズ20は、眼鏡店に出荷前、つまりレンズ製造時にフィッティングポイントを設定可能な位置に複数のマークPが予め印刷されている。マークPは、屈折力一定領域Am内における主注視線上に設けられている。すなわち、眼鏡レンズ20であれば、眼鏡店は複数のマークPの中から眼鏡の仕様に応じたフィッティングポイント設定位置に最適なマークを特定する。
また、図13に示す眼鏡レンズ30は、眼鏡店に出荷前にフィッティングポイントを設定可能なゾーンZが予め印刷されている。ゾーンZは、屈折力一定領域Am内であって、主注視線を含む一定範囲を囲むように設けられている。すなわち、眼鏡レンズ30であれば、眼鏡店はゾーンZ内において眼鏡の仕様に応じた位置にフィッティングポイントをマークする。つまり、本発明に係る眼鏡レンズは、眼鏡レンズ30のように、主注視線上以外の位置にフィッティングポイントをマークすることもできる。
なお、上記実施形態の説明に用いた図において示す主注視線は、説明の便宜上、線分として描かれている。しかし、実際の眼鏡レンズにおいて、観察する物体の距離が一定となる領域内では、いわゆる眼球の打寄せは生じない。そのため、より詳細には、図12や図13に示すように、主注視線は、屈折力一定領域があるレンズ中央部では水平方向と略直交する方向に延出し、屈折力変化領域では傾くような軌跡を描く。
また、上記実施形態の眼鏡レンズは、どれも上方屈折力変化領域が遠方にある物体を観察するような屈折力配置になっており、下方屈折力変化領域が近方にある物体を観察するような屈折力配置になっている。該屈折力配置はあくまでも例示であり、本発明に係る眼鏡レンズはこれに限定されるものではない。例えば、本発明に係る眼鏡レンズは、上方屈折力変化領域が近方にある物体を観察するような屈折力配置で、下方屈折力変化領域が遠方にある物体を観察するような屈折力配置であるような変形も可能である。但し、該変形例では、フィッティングポイントの設定位置が上記説明とは逆になることに留意する必要がある。
上記実施形態では、中距離が採りうる値の範囲を40cm〜67cmとして説明したが、これはあくまで例示であり、上記範囲以外の範囲を中距離が採りうる範囲として設定しても良い。また、上記実施形態では、中距離として50cm、67cm、40cmの眼鏡レンズ10A、10B、10Cについて説明したが、これらもあくまで例示である。本発明においては、中距離を上記3つの値以外の値に設定して、設定された中距離の値に応じてフィッティングポイントの位置を設定することが可能である。
なお、上記の説明では、眼鏡レンズのフィッティングポイントは、眼鏡の仕様のうち中距離に関する情報に基づいて設定している。フィッティングポイントは、他の情報、例えば屈折力一定領域の平均屈折力や観察しようとする最も遠い(または近い)物体距離に基づいて設定することも可能である。
また、上記眼鏡レンズ10A、10B、10Cでは、屈折力一定領域Amでの中心度数SPHが0.00Dのレンズを例にあげて説明している。ここで眼鏡の仕様により、該中心度数が0.00D以外の値に設定されたとしても、上記と同様の設計方法によって、眼鏡の仕様に最適なフィッティングポイントを設定することが可能である。
10A、10B、10C、20、30 眼鏡レンズ
FP フィッティングポイント
O 中点
P マーク
Z ゾーン
FP フィッティングポイント
O 中点
P マーク
Z ゾーン
Claims (22)
- 透過屈折力が略一定である屈折力一定領域をレンズの略中央部に備え、
前記屈折力一定領域の上方に該レンズの上端まで連続的に透過屈折力が変化する上方屈折力変化領域を有し、
前記屈折力一定領域の下方に該レンズの下端まで連続的に透過屈折力が変化する下方屈折力変化領域を有し、
複数の異なる位置を含む所定範囲が前記屈折力一定領域内に規定されており、前記所定範囲の中から眼鏡の仕様に応じて選択された所定位置がフィッティングポイントであることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 前記所定範囲および前記複数の異なる位置は、前記眼鏡の仕様とは無関係に規定されていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ。
- 請求項1または請求項2に記載の眼鏡レンズにおいて、
前記所定範囲は前記眼鏡レンズに印刷されていることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の眼鏡レンズにおいて、
前記複数の異なる位置は、前記眼鏡レンズに印刷されていることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の眼鏡レンズにおいて、
前記仕様は、前記屈折力一定領域において観察しようとする物体までの距離を含むことを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項5に記載の眼鏡レンズにおいて、
前記屈折力一定領域において観察しようとする物体までの距離は、中距離であることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項6に記載の眼鏡レンズにおいて、
前記上方屈折力変化領域は、主として前記中距離よりも遠方の物体を観察するための領域であり、
前記下方屈折力変化領域は、主として前記中距離よりも近方の物体を観察するための領域であることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項6または請求項7に記載の眼鏡レンズにおいて、
前記中距離は、約40cmから約67cmまでの範囲内にあることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項8に記載の眼鏡レンズにおいて、
前記中距離が前記範囲内において定義される所定の基準値である場合に、前記フィッティングポイントは、前記主注視線上において前記屈折力一定領域の上下方向の中点に設けられることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項8に記載の眼鏡レンズにおいて、
前記中距離が前記範囲内において定義される所定の基準値よりも遠方である場合、前記フィッティングポイントは、前記主注視線上において前記屈折力一定領域の上下方向の中点よりも下方に設定されることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項8に記載の眼鏡レンズにおいて、
前記中距離が前記範囲内において定義される所定の基準値よりも近方である場合、前記フィッティングポイントは、前記主注視線上において前記屈折力一定領域の上下方向の中点よりも上方に設定されることを特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項9から請求項11のいずれかに記載の眼鏡レンズにおいて、
前記基準値は、略50cmであることを特徴とする眼鏡レンズ。 - レンズの略中央部に透過屈折力が略一定である屈折力一定領域を設定するステップと、
前記透過屈折力一定領域の上方に該レンズの上端まで連続的に透過屈折力が変化する上方屈折力変化領域を設定するステップと、
前記屈折力一定領域の下方に該レンズの下端まで連続的に透過屈折力が変化する下方屈折力変化領域を設定するステップと、
複数の異なる位置を含む所定範囲を前記屈折力一定領域内に規定するステップと、
前記所定範囲の中から眼鏡の仕様に応じて選択された所定の位置をフィッティングポイントとして設定するステップと、を含む眼鏡レンズの製造方法。 - 請求項13に記載の眼鏡レンズの製造方法であって、
前記所定範囲および前記複数の異なる位置は、前記眼鏡の仕様とは無関係に規定される眼鏡レンズの製造方法。 - 請求項13または請求項14に記載の眼鏡レンズの製造方法であって、
前記眼鏡レンズは、任意のタイミングで消去可能なインク等で前記所定範囲および前記複数の異なる位置が印刷されている眼鏡レンズの製造方法。 - 請求項13から請求項15のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法であって、
前記眼鏡レンズは、前記複数の異なる位置が印刷されている眼鏡レンズの製造方法。 - 請求項13から請求項16のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法であって、
前記仕様は、前記屈折力一定領域において観察しようとする物体までの距離を含む眼鏡レンズの製造方法。 - 請求項17に記載の眼鏡レンズの製造方法において、
前記屈折力一定領域において観察しようとする物体までの距離は、中距離である眼鏡レンズの製造方法。 - 請求項18に記載の眼鏡レンズの製造方法において、
前記上方屈折力変化領域は、前記レンズの上端に向かうにつれ前記透過屈折力が連続的に減少するように設定され、
前記下方屈折力変化領域は、前記レンズの下端に向かうにつれ前記透過屈折力が連続的に増加するように設定される眼鏡レンズの製造方法。 - 請求項19に記載の眼鏡レンズの製造方法において、
前記フィッティングポイントは、前記中距離が基準値よりも遠方である場合、前記主注視線上において前記屈折力一定領域の上下方向の中点よりも下方に設定される眼鏡レンズの製造方法。 - 請求項19に記載の眼鏡レンズの製造方法において、
前記フィッティングポイントは、前記中距離が基準値よりも近方である場合、前記主注視線上において前記屈折力一定領域の上下方向の中点よりも上方に設定される眼鏡レンズの製造方法。 - 請求項20または請求項21に記載の眼鏡レンズの製造方法において、
前記基準値は、略50cmである眼鏡レンズの製造方法。
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- 2004-01-13 JP JP2004005821A patent/JP2005201979A/ja active Pending
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