JP2005200629A - 成形品成形用重合体組成物、成形品、親水性成形品及びその製造方法並びに積層品 - Google Patents

成形品成形用重合体組成物、成形品、親水性成形品及びその製造方法並びに積層品 Download PDF

Info

Publication number
JP2005200629A
JP2005200629A JP2004272292A JP2004272292A JP2005200629A JP 2005200629 A JP2005200629 A JP 2005200629A JP 2004272292 A JP2004272292 A JP 2004272292A JP 2004272292 A JP2004272292 A JP 2004272292A JP 2005200629 A JP2005200629 A JP 2005200629A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molded product
hydrophilic
silane compound
molding
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004272292A
Other languages
English (en)
Inventor
Fumio Kurihara
文夫 栗原
Takemoto Nakai
壮元 中井
Kazuto Nagakusa
一人 長草
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Techno UMG Co Ltd
Original Assignee
Techno Polymer Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Techno Polymer Co Ltd filed Critical Techno Polymer Co Ltd
Priority to JP2004272292A priority Critical patent/JP2005200629A/ja
Publication of JP2005200629A publication Critical patent/JP2005200629A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Treatments Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】 成形品の表面に効率的に、且つ、永続的に親水性を付与することができる成形品成形用重合体組成物及びそれを用いた成形品、更には、容易に製造することができ、成形品の表面が親水性に優れる親水性成形品及びその製造方法、並びに、親水性部材が積層された積層体を提供する。
【解決手段】 本組成物は、(A)熱可塑性重合体と、(B)成形体表面にブリードアウト可能なアルコキシシラン及びその縮合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物とを含み、上記シラン化合物(B)の含有量は、上記熱可塑性重合体(A)100質量部に対して、SiO換算で、0.1〜50質量部であり、且つ、上記熱可塑性重合体(A)100質量部及び上記シラン化合物(B)3質量部からなる成形品に対し、水を接触させた後の、上記成形品の表面における水滴接触角が、60度以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、成形品成形用重合体組成物、成形品、親水性成形品及びその製造方法並びに積層品に関し、更に詳しくは、成形品の表面に効率的に、且つ、永続的に親水性を付与することができる成形品成形用重合体組成物及びそれを用いた成形品、更には、容易に製造することができ、成形品の表面が親水性に優れる親水性成形品及びその製造方法、並びに、親水性部材が積層された積層品に関する。
熱可塑性樹脂等の熱可塑性重合体は、多種多様な分野の成形材料として有用であり、目的に応じてその成形品が各種製品として用いられている。例えば、家電部品、自動車部品、建材部品、住設部品等に使用されている。また、その他の構造物や屋外物品にも使用されている。
近年、熱可塑性樹脂からなる構造物、屋外物品等の汚れの付着防止、雨等により除去するために、熱可塑性樹脂に親水性を付与する方法が検討されている。熱可塑性樹脂に親水性を付与する方法として、ケイ素化合物を使用し、構造物表面にシラノール基を発現させる方法が知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、オルガノシリケートの加水分解生成物を、建築構造物、土木構造物用の産業機械等の上塗り塗膜表面に塗装し、付着する塵埃や油性成分等に起因する汚れを防止する塗装方法が開示されている。また、特許文献3には、シラノール基を有するシラン化合物等を含む表面処理剤を、疎水性合成樹脂塗膜に塗装し、薄膜を形成する方法が開示されている。更に、特許文献4には、オルガノシリケート等を含むケイ素含有液状組成物を、建築構造物、土木構造物の表面に塗布し、汚れを防止する塗装方法が開示されている。
また、特許文献5には、特定のポリアルコキシシロキサンと、アクリル樹脂等とを含む被膜形成用組成物、塗料組成物及び水系エマルション形成用組成物が開示されている。
特開平7−136583号公報 特開平10−202177号公報 特開平8−12922号公報 特開2000−327996号公報 国際公開WO98/36016号公報
しかし、上記特許文献1〜3及び5のように、単にシリケート含有溶液を構造物の表面に塗布して親水性皮膜を形成する方法の場合、通常、その厚さが数μm程度と薄いことから、接触等により剥がれやすい。しかも、一度剥がれてしまうと、構造物の表面における親水性が低下することから、親水性が持続しにくいという問題がある。また、上記特許文献4に開示されているケイ素含有液状組成物等のシリケートの液状組成配合物は、多量の水−アルコール等の溶剤を含んでいることから、このようなシリケートの液状組成配合物を樹脂に練り込むことは、多量の水−アルコールを同時に練り込むことになる結果、シリケートを樹脂に練り込むことは事実上困難となるという問題がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、容易に製造することができ、成形品とした場合に、該成形品に水等を接触させることにより、その表面の永続的な親水性を付与することができる成形品成形用重合体組成物、成形品、親水性に優れる親水性成形品及びその製造方法、並びに、積層品を提供することを目的とする。
本発明は、以下に示される。
1.(A)熱可塑性重合体と、(B)成形体表面にブリードアウト可能なアルコキシシラン及びその縮合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物とを含み、上記シラン化合物(B)の含有量は、上記熱可塑性重合体(A)100質量部に対して、SiO換算で、0.1〜50質量部であり、且つ、上記熱可塑性重合体(A)100質量部及び上記シラン化合物(B)3質量部からなる成形品に対し、水を接触させた後の、上記成形品の表面における水滴接触角が、60度以下であることを特徴とする成形品成形用重合体組成物。
2.上記熱可塑性重合体(A)の溶解度パラメーター(S)と、上記シラン化合物(B)の溶解度パラメーター(S)との関係が、|S−S|≧0.2である上記1に記載の成形品成形用重合体組成物。
3.上記シラン化合物(B)の重量平均分子量が300〜3,000である上記1又は2に記載の成形品成形用重合体組成物。
4.更に、触媒及び希釈剤のうちの少なくとも1種を含有する上記1乃至3のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物。
5.含水率が0.2質量%以下である上記1乃至4のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物。
6.上記1乃至5のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物を用いて成形されたことを特徴とする成形品。
7.薄肉部の最小厚さが35μm以上である上記6に記載の成形品。
8.上記1乃至5のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物を用いて成形品とする成形工程と、上記成形品の表面からシラン化合物(B)をブリードアウトさせるブリードアウト工程と、上記成形品に水を接触させる水接触工程とを備えることを特徴とする親水性成形品の製造方法。
9.上記水接触工程は、上記成形品に含まれるシラン化合物(B)の加水分解により生成するシラノール基を、上記成形品の表面に形成する上記8に記載の親水性成形品の製造方法。
10.上記1乃至5のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物を用いて成形品とする成形工程と、上記成形品の表面に放射線処理及びコロナ放電処理から選ばれる少なくとも1種の処理工程とを備えることを特徴とする親水性成形品の製造方法。
11.上記8乃至10のいずれかに記載の方法により得られたことを特徴とする親水性成形品。
12.本親水性成形品の表面における水滴接触角が60度以下である上記11に記載の親水性成形品。
13.薄肉部の最小厚さが35μm以上である上記11又は12に記載の親水性成形品。
14.本親水性成形品を、大気中、室温で9時間乾燥し、その後、23℃の水中で、15時間浸漬する処理を、50回連続で繰り返した後の、該親水性成形品の表面における水滴接触角が60度以下である上記11乃至13のいずれかに記載の親水性成形品。
15.本親水性成形品の表面を、エタノールで洗浄し、その後、23℃の水中で、1時間浸漬した後の、該親水性成形品の表面における水滴接触角が60度以下である上記11乃至14のいずれかに記載の親水性成形品。
16.基部と、該基部の表面に配設され且つ上記1乃至5のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物を用いて成形された部材とを備えることを特徴とする積層品。
17.上記部材の表面における水滴接触角が60度以下である上記16に記載の積層品。
本発明の成形品成形用重合体組成物は、(A)熱可塑性重合体と、(B)成形体表面にブリードアウト可能なアルコキシシラン及びその縮合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物とを各々所定量含むことにより、成形品とした場合に、該成形品に水等を接触させることにより、その表面の永続的な親水性を付与することができる。また、親水性付与剤を表面に被覆する場合と比較して、長期に渡って親水性を維持することができる親水性成形品を容易に得ることができる。
上記シラン化合物(B)の重量平均分子量が300〜3,000である場合には、成形品の表面により効率的ににじみ出させることができる。
特に、含水率が0.2質量%以下である場合には、成形品の表面にシラン化合物(B)を効率的ににじみ出させ、使用時に水に接触する等により加水分解されることでシラノール基を効率的に生成させることができ、その結果、表面の永続的な親水性を付与することができる。
本発明の親水性成形品の製造方法は、上記成形品成形用重合体組成物を用いて成形品とする成形工程と、上記成形品の表面からシラン化合物(B)をブリードアウトさせるブリードアウト工程と、上記成形品に水を接触させる水接触工程とを備えることから、表面における水滴接触角が60度以下の親水性成形品を容易に得ることができる。
本発明の親水性成形品は、その表面が優れた親水性を有する。また、親水性付与剤を表面に被覆する場合と比較して、長期に渡って親水性を維持することができる。
本発明の積層品は、基部と、上記基部の表面に配設され、且つ、上記成形品成形用重合体組成物を用いて成形された部材とを備えることから、部材表面において優れた親水性を有する。また、親水性付与剤を表面に被覆する場合と比較して、長期に渡って親水性を維持することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
1.成形品成形用重合体組成物
本発明の成形品成形用重合体組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、(A)熱可塑性重合体と、(B)成形体表面にブリードアウト可能なアルコキシシラン及びその縮合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物とを含み、上記シラン化合物(B)の含有量は、上記熱可塑性重合体(A)100質量部に対して、SiO換算で、0.1〜50質量部であり、且つ、上記熱可塑性重合体(A)100質量部及び上記シラン化合物(B)3質量部からなる成形品に対し、水を接触した後の、上記成形品の表面における水滴接触角が、60度以下であることを特徴とする。
上記熱可塑性重合体(A)としては特に限定されず、エラストマー、ゴム及び樹脂を単独であるいは組み合わせて用いることができる。
エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ウレタン系エラストマー;塩ビ系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;フッ素ゴム系エラストマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系ゴム、スチレン・ブタジエン(ブロック)共重合体、スチレン・イソプレン(ブロック)共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ブタジエン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、水素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水素化ブタジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、エチレン系アイオノマー等が挙げられる。
尚、上記スチレン・ブタジエンブロック共重合体及び上記スチレン・イソプレンブロック共重合体には、AB型、ABA型、テーパー型、ラジアルテレブロック型の構造を有するものも含まれる。更に、上記水素化ブタジエン系重合体は、上記ブロック共重合体の水素化物のほかに、スチレンブロックとスチレン・ブタジエンランダム共重合ブロックを有する重合体の水素化物、1,2−ビニル結合含有量が20質量%以下のポリブタジエンブロックと1,2−ビニル結合含量が20重量%を超えるポリブタジエンブロックとからなる重合体の水素化物等が含まれる。
上記ゴムは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ゴム強化スチレン系樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、ポリオレフィン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリカーボネート樹脂が好ましく、特に、スチレン系樹脂が好ましい。
上記スチレン系樹脂は、ゴム質重合体の存在下又は非存在下に、芳香族ビニル化合物を含む単量体成分を重合して得られる樹脂である。上記ゴム質重合体としては、上記熱可塑性重合体として例示したゴム成分を所定の粒径で用いることができる。好ましいゴム質重合体は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエン(ブロック)共重合体、スチレン・イソプレン(ブロック)共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ブタジエン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、水素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水素化ブタジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体、アクリル系ゴム、シリコーンゴム等である。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記スチレン系樹脂とするために、上記ゴム質重合体の存在下に重合される単量体成分のうち、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、メチル−α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、モノクロルスチレン、ジクロロスチレン等の塩素化スチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン等の臭素化スチレン、モノフルオロスチレン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
尚、上記ゴム質重合体の存在下又は非存在下に、重合させる単量体成分は、芳香族ビニル化合物のみであってもよいし、この芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系化合物との組み合わせであってもよい。
上記芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系化合物;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド;アクリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等のアミノ基含有不飽和化合物;ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシル基含有不飽和化合物;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の酸無水物基含有不飽和化合物;ビニルオキサゾリン等のオキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。
これら他のビニル系化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記スチレン系樹脂としては、ゴム質重合体の存在下に、上記単量体成分を重合して得られる樹脂(i)を単独で用いてもよいし、ゴム質重合体の非存在下に、上記単量体成分を重合して得られる樹脂(ii)を単独で用いてもよいし、(i)及び(ii)を組み合わせて用いてもよい。
尚、上記スチレン系樹脂として、(i)を含むものとする場合には、上記スチレン系樹脂中の、ゴム質重合体の含有割合は、好ましくは3〜80質量%、より好ましくは5〜60質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。また、上記スチレン系樹脂のメチルエチルケトン可溶分の固有粘度(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.3〜1.5dl/gである。
上記スチレン系樹脂は、公知の重合法である乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等により製造することができる。グラフト共重合体のグラフト率は、好ましくは5〜200質量%、更に好ましくは5〜150質量%である。
次に、シラン化合物(B)について説明する。
このシラン化合物(B)は、本発明の組成物を用いて成形された成形品の表面にブリードアウト可能なアルコキシシラン及びその縮合物から選ばれる少なくとも1種である。ブリードアウトは、成形品を室温に静置することにより、あるいは、適宜、加熱することにより発生する。
上記アルコキシシランは、下記一般式(I)で表される化合物である。
(RO)4−n−Si−R (I)
〔式中、Rは、各々、独立して炭素数が1〜10の、直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり、Rは、各々、独立してハロゲン原子又は有機基であり、nは0、1又は2である。〕
上記一般式(I)におけるRは、炭化水素基であり、この炭化水素基は、脂肪族、脂環族及び芳香族のいずれであってもよい。
脂肪族の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
脂環族の炭化水素基としては、シクロプロピル機、シクロブチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
芳香族の炭化水素基としては、アリール基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
尚、上記炭化水素基は、置換基を有してもよく、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、エーテル基等を有する炭化水素基であってもよい。
また、上記一般式(I)において、Rが複数ある場合、各Rは同一の炭化水素基でもよいし、異なる炭化水素基でもよい。
上記一般式(I)におけるRは、有機基であり、この有機基としては、炭化水素基、アルコキシル基(シクロアルコキシル基、アリールオキシ基を含む)等が挙げられる。
この炭化水素基は、脂肪族、脂環族及び芳香族のいずれであってもよく、上記Rとして例示したものを適用することができる。また、アルコキシル基としては、上記Rを用いて表される−ORを適用することができる。尚、上記炭化水素基及びアルコキシル基は、置換基を有してもよく、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、エーテル基等を有する炭化水素基及びアルコキシル基であってもよい。
上記一般式(I)で表されるアルコキシシランは、以下に例示される。
上記一般式(I)におけるRが脂肪族の炭化水素基であり、且つ、n=0である場合、Rの炭素数は、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4である。従って、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が挙げられる。
また、上記一般式(I)におけるRが脂肪族の炭化水素基であり、Rが有機基であり、且つ、n=1である場合、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
更に、上記一般式(I)におけるRが脂肪族の炭化水素基であり、Rが有機基であり、且つ、n=2である場合、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
本発明において、上記アルコキシシランとしては、上記一般式(I)におけるRが脂肪族の炭化水素基であり、Rが有機基であり、且つ、n=1である化合物が好ましい。
上記アルコキシシランは、シラン化合物(B)として、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アルコキシシランの縮合物は、通常、上記一般式(I)で表されるアルコキシシランが加水分解・縮合したオリゴマーであり、例えば、下記一般式(II)で表される化合物等が挙げられる。
O[Si(OR−O]−R (II)
この一般式(II)におけるRは、上記一般式(I)におけるRと同様とすることができる。
上記一般式(II)におけるRは、各Rは同一の炭化水素基でもよいし、異なる炭化水素基でもよい。縮合の程度は、Rの炭化水素基の炭素数が1又は2である場合、通常、2〜10量体、好ましくは2〜6量体、更に好ましくは2〜4量体である。また、Rの炭化水素基の炭素数が3〜6である場合、通常、2〜10量体、好ましくは2〜8量体、更に好ましくは4〜8量体である。
尚、上記アルコキシシランの縮合物は、上記一般式(II)においてRの一部が水素原子であってもよい。このようなシラノール基の含有割合は、縮合前のアルコキシル基の全量に対して、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。上記シラノール基の含有量をこの範囲とすることにより、アルコキシシランの縮合物が結晶状態となることを抑制することができる。
また、上記アルコキシシランの縮合物は、更にエステル交換反応を行って得られた、より炭素数の多いアルコールのエステルに変性したものであってもよい。例えば、メチルエステルの一部に対し、エステル交換反応を行いブチルエステルに変性された縮合物とすることができる。
本発明において、上記アルコキシシランの縮合物としては、上記一般式(II)におけるRが炭素数3〜6の炭化水素基であり、且つ、4〜8量体である化合物が好ましい。
上記アルコキシシランの縮合物は、シラン化合物(B)として、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、アルコキシシランと、アルコキシシランの縮合物とを組み合わせて用いることもできる。
上記シラン化合物(B)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリプロピレングリコール換算における重量平均分子量で、好ましくは300〜3,000、更に好ましくは350〜2,500である。重量平均分子量が300未満では、親水性の持続性が不十分な場合があり、また、毒性の問題が生じる場合がある。一方、重量平均分子量が大きすぎると、ブリードアウトが不十分な場合がある。
上記シラン化合物(B)として、アルコキシシランを用いる場合、本発明の組成物中の含有量(SiO換算)は、熱可塑性重合体(A)100質量部に対して、0.1〜50質量部であり、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15質量部、更に好ましくは0.5〜10質量部である。尚、「SiO換算」とは、アルコキシシランのSi量をSiOに換算して求められる値である。以下の「アルコキシシランの縮合物」についても同じである。
また、上記シラン化合物(B)として、アルコキシシランの縮合物を用いる場合、本発明の組成物中の含有量(SiO換算)は、熱可塑性重合体(A)100質量部に対して、0.1〜50質量部であり、好ましくは0.1〜40質量部、更に好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、特に好ましくは1〜10質量部である。
更に、上記シラン化合物(B)として、アルコキシシランと、アルコキシシランの縮合物とを組み合わせて用いる場合、本発明の組成物におけるこれらの合計量(SiO換算)は、熱可塑性重合体(A)100質量部に対して、0.1〜50質量部であり、好ましくは0.5〜30質量部、更に好ましくは0.5〜20質量部である。尚、これらアルコキシシラン及びその縮合物の混合割合は特に限定されないが、熱可塑性重合体(A)100質量部に対して、通常、0〜30質量部/0.1〜40質量部、好ましくは0〜10質量部/0.5〜30質量部である。
上記シラン化合物(B)の含有量が0.1質量部未満であると、成形品の表面に親水性が発現しにくくなる傾向にあり、一方、50質量部を超えると、上記シラン化合物(B)自身が反応(縮合等)することによりゲル化物が生成し易くなり、その結果、親水性が低下するので好ましくない。
また、本発明の組成物は、上記シラン化合物(B)以外に、他のシラン化合物を含んでもよい。他のシラン化合物としては、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、へキシルトリクロロシラン等のアルキルトリクロロシランや、フェニルトリクロロシラン、メチルシリルトリイソシアネート、ジメチルシリルジイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン等が挙げられる。これらの他のシラン化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの他のシラン化合物を用いる場合の含有量は、熱可塑性重合体(A)100質量部に対して、SiO量換算で、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
本発明の組成物に含有される熱可塑性重合体(A)及びシラン化合物(B)としては、上記熱可塑性重合体(A)の溶解度パラメーターをS、上記シラン化合物(B)の溶解度パラメーターをSとした場合、|S−S|≧0.2の関係を満たすことが好ましい。より好ましくは、|S−S|≧0.5、更に好ましくは|S−S|≧1である。|S−S|<0.2では、シラン化合物(B)をブリードアウトさせるために、長時間必要となる傾向がある。尚、上記溶解度パラメーターは、Smart式により求められたものである。
本発明の組成物は、熱可塑性重合体(A)及びシラン化合物(B)を必須成分として含有するが、更に、触媒及び希釈剤のうちの少なくとも1種を含有したものとすることができる。
上記触媒は、シラン化合物(B)の加水分解を促進することができるものであれば、特に限定されない。この触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸等の有機系カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸等の有機系スルホン酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等の無機アルカリ触媒;有機アミン化合物;有機金属化合物;有機スズ化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物等の金属アルコキシド化合物;ボロントリn−ブトキシド、ホウ酸等のホウ素化合物等が挙げられる。
これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記触媒を用いる場合の含有量は、シラン化合物(B)の量から計算されるSiO量100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。この範囲にあれば、加水分解の促進効果が十分である。尚、この触媒の含有量が少なすぎると、加水分解の促進効果が十分でない場合がある。
上記希釈剤は、上記シラン化合物(B)の希釈に用いるものであり、縮合反応を抑制することができる。この希釈剤としては、特に限定されないが、ヒドロキシル基を有する希釈溶剤が好ましく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶剤;炭素数8以上、好ましくは12以上、より好ましくは18以上の高級アルコール等が挙げられる。尚、これらの希釈剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記希釈剤を用いる場合の含有量は、シラン化合物(B)の量から計算されるSiO量100質量部に対して、好ましくは100〜50,000質量部、より好ましくは150〜10,000質量部、更に好ましくは200〜5,000質量部である。
本発明の組成物は、上記成分以外に、更に、各種添加剤を含有したものとすることができる。
添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、充填剤(無機化合物、金属粉末、高分子化合物等)、補強剤、可塑剤、相溶化剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤(染料、顔料等)、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤等が挙げられる。
各添加剤の含有量は、本発明の組成物を100質量%とした場合、通常、0.01〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
本発明の組成物は、含水率が低いことが好ましく、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0〜0.15質量%、更に好ましくは0〜0.1質量%である。この水分量が少ないことにより、成形品とした場合、その表面にシラン化合物(B)を効率的ににじみ出させ(ブリードアウトさせ)、使用時に水に接触する等により加水分解されることでシラノール基を効率的に生成させることができ、その結果、表面の永続的な親水性を付与することができる。一方、水分量が多すぎると、組成物の内部でシラン化合物(B)の加水分解が進行し、シラン化合物(B)がブリードアウトしにくく、表面における親水性が低下あるいは親水性の持続性が低下する場合がある。
尚、組成物の含水率は、カールフィッシャー法等の方法により測定することができる。
本発明の組成物は、上記熱可塑性重合体(A)100質量部及び上記シラン化合物(B)3質量部からなる成形品に対し、下記条件により水を接触させた後の、上記成形品の表面における水滴接触角が、60度以下であり、好ましくは5〜60度、より好ましくは5〜30度である。
<条件>
縦150mm、横30mm及び厚さ300μmのシート状成形品を試験片として用い、23℃の水(使用量は、シートの体積の3倍量である。)に1時間浸し、取り出した後、成形品表面の水を拭き取らずに、気温23℃及び湿度30〜50%の空気中に1時間放置し、乾燥する。その後、成形品の表面に、水滴0.2ccを滴下し、23℃、空気雰囲気下、滴下から30秒経過後の接触角を測定する。測定装置としては、協和界面科学社製の全自動接触角測定器等がある。
本発明の組成物を得る方法は特に限定されず、例えば、熱可塑性重合体(A)及びシラン化合物(B)を含む原料組成物を、混練装置を用いて溶融混練する方法、熱可塑性重合体(A)のみを予め溶融混練した後、シラン化合物(B)を添加して更に溶融混練する方法等が挙げられる。これらの製造方法において、熱可塑性重合体(A)及びシラン化合物(B)、並びに、必要に応じて用いられる触媒、希釈剤及び各種添加剤の形状は、特に限定されない。
固体の物質は、ペレット等の塊状であってもよいし、粉末状であってもよい。粉末状である場合には、より効率的に且つ均一に分散させやすく、好ましい。
前者の場合における原料組成物の調製方法としては、室温で、粉末状の熱可塑性重合体(A)に、シラン化合物(B)を含浸させる方法等が挙げられる。また、原料組成物は、混練装置に一括して投入してもよいし、分割して投入してもよい。
混練装置としては、押出機、ブラベンダー等が挙げられる。
上記原料組成物を溶融混練する温度、時間等も特に限定されない。溶融温度は、熱可塑性重合体(A)の融点以上であることが好ましい。また、混練時間は、通常、0.1〜60分間、好ましくは0.5〜20分間である。
尚、触媒、希釈剤及び各種添加剤を配合する場合には、それ自身を単独で配合してもよいし、アルコール類、グリコール誘導体、炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類等の溶剤に溶解あるいは分散させてからこれを配合してもよい。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アセチルアセトンアルコールの各無水物等が挙げられる。
グリコール誘導体としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
炭化水素類としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ケロシン等が挙げられる。
エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル等が挙げられる。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等が挙げられる。
また、エーテル類として、エチルエーテル、ブチルエーテル、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独であるいは組み合わせて用いることができる。
本発明の組成物を含水率の低いものとするためには、予め、低含水率とした熱可塑性重合体(A)を用いることが好ましく、例えば、真空加熱乾燥等の方法によって0.2質量%以下とした熱可塑性重合体(A)を用いることが好ましい。
また、下記で説明する混練装置内でこの熱可塑性重合体のみを溶融混練させながら、適宜水蒸気を排気してもよい。
本発明の組成物を含水率の低いものとするためには、原料組成物とする際には、吸湿していない原料成分を、吸湿しないようにして調製することが好ましい。例えば、窒素ガス等の雰囲気下で調製する等とすることができる。また、触媒を配合する場合には、上記のように、溶剤等に溶解あるいは分散させて用いることもできるが、全ての原料成分をこのようにして用いてもよい。
含水率の低い組成物は、熱可塑性重合体(A)を、水分(水蒸気)を排出しながら溶融混練する溶融工程と、シラン化合物(B)を投入し、上記熱可塑性重合体(A)と更に混練する混練工程と、を順次備えることにより製造することができる。
上記溶融工程においては、水分(水蒸気)を排出しながら、熱可塑性重合体(A)の溶融混練を行う。溶融混練は、ベント口付きの押出機等を用いて行うことができる。熱可塑性重合体(A)は、上記装置に一括して投入してもよいし、分割して投入してもよい。溶融温度は、熱可塑性重合体(A)の融点以上であることが好ましい。また、混練時間は、通常、0.1〜60分間、好ましくは0.5〜20分間である。
その後、混練工程において、シラン化合物(B)を投入して熱可塑性重合体(A)と更に混練する。シラン化合物(B)の投入は、上記溶融工程の直後であってもよいし、熱可塑性重合体(A)を一旦冷却してからでもよい。また、シラン化合物(B)の投入は、他の添加物と同時でもよいし、いずれかを先又は後にしてもよい。更に、シラン化合物(B)は、一括して投入してもよいし、分割して投入してもよい。
この混練工程における混練温度は、熱可塑性重合体(A)の融点以上であることが好ましい。また、混練時間は、通常、0.1〜60分間、好ましくは0.5〜20分間である。
尚、この製造方法においては、混練物を取り出した後、更に、混練物を水分(水蒸気)の存在しないところで貯蔵する貯蔵工程を備えることができる。この貯蔵工程においては、例えば、窒素ガス等の雰囲気下で密閉可能な容器、袋等に収容させることができる。水分の存在しないところで、貯蔵することにより、成形品を製造した際に、後述する各種処理後に親水性に優れた成形品を得ることができる。
2.成形品
本発明の成形品は、上記の成形品成形用重合体組成物を用いて成形されたことを特徴とする。組成物の含水率が、例えば、0.2質量%以下等と低い場合には、製造される成形品の含水率も低くなる。本発明の成形品は、熱可塑性重合体(A)と、シラン化合物(B)とからなるものであってもよいし、更に他の添加剤を含むものであってもよい。本発明の成形品の形状は特に限定されず、目的、用途等に応じたものとすることができる。成形品の例は後述する。
成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、スラッシュ成形、蒸気発泡成形、積層成形、カレンダー成形等が挙げられる。
尚、熱可塑性重合体(A)自体に透明性を有する場合には、シラン化合物(B)の含有量に関わらず、成形品も透明性を有する。
熱可塑性重合体(A)及びシラン化合物(B)を含み、含水率の低い成形品は、水分量が0.2質量%以下の熱可塑性重合体(A1)と、シラン化合物(B1)とを含む原料組成物(S1)を溶融混練した後、成形することにより製造することができる。
上記熱可塑性重合体(A1)は、上記熱可塑性重合体(A)において例示したものを用いることができる。好ましい形状は、ペレット状あるいは粉末状である。この熱可塑性重合体(A1)の水分量を0.2質量%とするためには、原料組成物(S1)とする前に、真空加熱乾燥等の方法によって調整することができる。また、混練装置内でこの熱可塑性重合体(A1)のみを溶融混練させながら、適宜水蒸気を排気してもよい。
また、シラン化合物(B1)は、上記シラン化合物(B)において説明したものを用いることができる。シラン化合物(B1)の重量平均分子量も、上記シラン化合物(B)と同様とすることができる。
原料組成物(S1)の調製方法も、上記の成形品成形用重合体組成物の製造方法と同様とすることができる。また、原料組成物(S1)を溶融混練する方法、条件、装置等も上記と同様とすることができる。
上記原料組成物(S1)が混練された後、公知の成形方法によって成形品を得ることができる。
熱可塑性重合体(A)及びシラン化合物(B)を含み、含水率の低い成形品の他の製造方法としては、熱可塑性重合体(A2)を、水分(水蒸気)を排出しながら溶融混練する溶融工程と、シラン化合物(B2)を投入し、上記熱可塑性重合体(A2)と更に混練する混練工程と、混練物を用いて成形する成形工程とを順次備える方法が挙げられる。
上記熱可塑性重合体(A2)は、上記熱可塑性重合体(A)において例示したものを用いることができる。好ましい形状は、ペレット状あるいは粉末状である。
また、シラン化合物(B2)は、上記シラン化合物(B)において説明したものを用いることができる。シラン化合物(B2)の重量平均分子量も、上記と同様とすることができる。
上記溶融工程及び混練工程は、上記の成形品成形用重合体組成物の製造方法における説明と同様とすることができる。
上記成形工程としては、公知の成形方法の適用によるものとすることができる。
成形品の含水率が低い場合には、更に、この成形品を水分(水蒸気)の存在しないところで貯蔵してもよい。
成形品の含水率を低くする場合には、熱可塑性重合体(A)の融点を超える温度で混練しても、シラン化合物(B)が変質することがない。即ち、水分量が多いと、シラン化合物(B)が水と反応して二酸化ケイ素等を生成し、所望の含有量を維持できなくなるが、これを防ぐことができる。従って、熱可塑性重合体(A)が透明性を有する場合には、二酸化ケイ素等が白色を有するために、白化した成形品となってしまうが、熱可塑性重合体(A)の水分量を低下させることで、これを防ぐことができる。
本発明の成形品は、上記のように、形状が限定されるものではないが、より肉厚であることが好ましい。即ち、薄肉部を有する場合の最小厚さは、好ましくは35μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは80μm以上、特に好ましくは200μm以上である。特に、表面の親水性が要求する部位については、肉厚であるほど、長期の親水性を維持することができる。尚、上記薄肉部の厚さが小さすぎると、後述する各種処理後に親水性に優れた成形品とすることが困難な場合がある。
3.親水性成形品及びその製造方法
本発明の親水性成形品の製造方法(以下、「親水性成形品の製造方法(I)」ともいう。)は、上記の成形品成形用重合体組成物を用いて成形品(以下、「未処理成形品」という。)とする成形工程と、上記未処理成形品の表面からシラン化合物(B)をブリードアウトさせるブリードアウト工程と、上記成形品に水を接触させる水接触工程とを備えることを特徴とする。この方法によると、表面からブリードアウトしたシラン化合物(B)が加水分解されてシラノール基が形成された成形品を得ることができる。
本発明の親水性成形品の製造方法(I)において、上記成形工程における具体的な手段は特に限定されず、公知の重合体の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、スラッシュ成形、蒸気発泡成形、積層成形、カレンダー成形等により得ることができる。
本発明の親水性成形品の製造方法(I)において、上記ブリードアウト工程における具体的な手段は特に限定されない。上記未処理成形品を空気中、室温下に静置する、加熱下に静置する等により、シラン化合物(B)をブリードアウトさせることができる。
このブリードアウトの程度は、熱可塑性重合体(A)と、シラン化合物(B)との相溶性、熱可塑性重合体(A)の種類及び性質(結晶性、ガラス転移点)、添加剤(例えば、充填剤等)の種類等によって影響を受ける。
例えば、未処理成形品が、分子の小さいシラン化合物(B)、あるいは、炭素数が少ないアルコキシル基を有するシラン化合物(B)を含む場合には、ブリードアウトが比較的早い。一方、未処理成形品が、分子の大きなシラン化合物(B)、あるいは、炭素数の多いアルコキシキル基を有するシラン化合物(B)を含む場合、未処理成形品が充填剤等の添加剤にシラン化合物(B)を含浸させて製造されたものである場合には、ブリードアウトが比較的遅くなる。後者の場合、例えば、ゼオライト等からなる充填剤を用いた場合顕著である。従って、上記の因子を適宜調整することによってブリードアウトを制御することができ、その結果、得られる親水性成形品の親水性を適宜調整することができる。
本発明の親水性成形品の製造方法(I)において、上記水接触工程における具体的な手段は特に限定されない。
水は、日常入手できるものであれば、水道水等であっても好ましく用いることができる。また、目的、用途等によって、脱イオン水、蒸留水、超純水等を用いることもできる。
水は、入手したものをそのままの状態(温度、雰囲気等)で用いてもよいし、加温してから用いてもよい。また、水の使用量も特に限定されず、未処理成形品の所望の位置を濡らす程度の量でもよいし、大型の容器内に入るほどの大量であってもよい。
上記水接触工程において、水の使用方法は、噴霧、塗布、浸漬等目的により選択すればよい。また、未処理成形品の水への接触時間は、好ましくは1秒〜20時間、より好ましくは2秒〜10時間、更に好ましくは5秒〜3時間である。接触時間が短すぎると、未処理成形品の表面におけるシラン化合物(B)の加水分解反応が不十分となり、表面が均一に親水化されない場合がある。尚、上記水接触工程において、未処理成形品は、予め、加温しておいてもよい。上記条件を選択することで、シラン化合物(B)の加水分解反応速度を制御することができる。
尚、上記水接触工程においては、通常、水を用いるが、本発明の組成物の説明において、組成物に含有させることのできる触媒を水に溶解又は分散させたものを用いてもよい。例えば、硫酸等の無機酸等が挙げられる。この場合の接触方法は上記と同様とすることができる。
また、上記成形工程の後、ブリードアウト工程を省略して、水接触工程へと進めることもできる。この水接触工程は、複数回行ってもよい。
上記水接触工程によって、上記未処理成形品に含まれるシラン化合物(B)の加水分解により生成したシラノール基をその表面に生成させることができる。
即ち、上記各工程を経て得られた本発明の親水性成形品の表面は、未処理成形品の表面に比べ、ブリードアウトしたシラン化合物(B)の少なくとも一部(通常、シラン化合物(B)が有するアルコキシル基の20%以上、好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上)が加水分解して生成したシラノール基が豊富に存在する。このシラノール基は、水に対して親和性が高いので、好適な親水性成形品とすることができる。尚、シラノール基の存在割合が高いほど、優れた親水性の持続性も向上する。
本発明の他の親水性成形品の製造方法(以下、「親水性成形品の製造方法(II)」ともいう。)は、上記の成形品成形用重合体組成物を用いて成形品とする成形工程と、上記成形品(未処理成形品)の表面に放射線処理及びコロナ放電処理から選ばれる少なくとも1種の処理工程とを備えることを特徴とする。
本発明の親水性成形品の製造方法(II)における成形工程は、上記の親水性成形品の製造方法(II)と同様とすることができる。
本発明の親水性成形品の製造方法(II)において、未処理成形品の表面に対して、放射線処理及びコロナ放電処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行う。これらの処理によって、未処理成形品の最表面における熱可塑性重合体(A)の分子の一部に−C−O−結合、−C=O結合等を生成させ、親水性を向上させることができる。
放射線処理としては、公知の電子線照射装置、紫外線照射装置等を用いた、電子線照射、紫外線照射、イオン照射等の方法が挙げられる。これらのうち、電子線照射が好ましい。尚、処理条件は、特に限定されない。
また、コロナ放電処理も、公知の装置を用いて行うことができる。尚、処理条件は、特に限定されない。
更に、その他の方法として、エキシマーランプの照射等を適用することによって、表面改質を行うこともできる。
尚、本発明において、放射線処理及びコロナ放電処理は、いずれか一方のみ行ってよいし、両方行ってもよい。両方行う場合は、その順序は限定されない。また、処理を複数回行ってもよい。更に、本発明の親水性成形品の製造方法(I)における水接触工程を組み合わせてもよい。
上記2つの製造方法において、最後に、水等により濡れている場合、又は、水等を用いて成形品の表面を洗浄した場合には、自然乾燥、温風乾燥、赤外線乾燥等の方法により、乾燥させることができる。乾燥温度は、好ましくは5〜80℃、より好ましくは10〜70℃、更に好ましくは20〜60℃である。
上記2つの製造方法により得られた本発明の親水性成形品の表面における水滴接触角は、好ましくは60度以下、より好ましくは5〜60度、更に好ましくは5〜30度である。
本発明の親水性成形品は、大気中、室温で9時間乾燥し、その後、23℃の水中で、15時間浸漬する処理を、50回連続で繰り返した後の、親水性成形品の表面における水滴接触角を好ましくは60度以下、より好ましくは5〜60度、更に好ましくは5〜30度とすることができる。これは、親水性に持続性があることを意味する。
本発明の親水性成形品は、エタノールで洗浄し、その後、23℃の水中で、1時間浸漬した後の、成形品の表面における水滴接触角を好ましくは60度以下、より好ましくは5〜60度、更に好ましくは5〜30度とすることができる。尚、エタノールによる具体的な洗浄方法は、エタノールを含浸させたガーゼを用い、成形品の表面を3回強くぬぐうことにより行う方法である。
尚、親水性成形品の表面に存在するシラノール基は、エタノールによる洗浄によって、それを含む成分自体が消失する等によって量的に減少する場合があるが、新たに水に浸漬することによって、シラノール基が再生成されて、上記の接触角が得られる。
本発明の親水性成形品は、より肉厚であることが好ましい。即ち、薄肉部を有する場合の最小厚さは、好ましくは35μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは80μm以上、特に好ましくは200μm以上である。特に、表面に親水性を発揮する部位については、肉厚であるほど、長期の親水性を維持することができる。
成形品が肉厚であるほど、単位面積あたりのシラン化合物(B)の含有割合が多くなるため、表面に生成したシラノール基が使用時に摩耗等により消滅した場合であっても、シラン化合物(B)の新たな供給が容易である。
本発明の親水性成形品において、単位面積あたりのシラン化合物(B)の含有量は、好ましくは0.35mg/cm以上、より好ましくは0.4〜2mg/cmである。尚、成形品の密度を1g/cmとする。上記範囲にあれば、親水性の持続性に優れる。
本発明の親水性成形品は、シラン化合物(B)が成形品の全表面にブリードアウトして、一面がシラノール基で覆われている場合と、島状にシラノール基が分布している場合とがある。これらは、成形品に含有されるシラン化合物(B)の含有量に依存し、また、水接触工程等の条件等にも依存する。
シラン化合物(B)の含有量が十分であり、親水性成形品の表面に安定した固膜(シラノール基含有膜)が形成されている場合には、上記のような、持続性能、あるいは、エタノール等の有機溶剤に対する耐性にも優れており、新たに加水分解縮合を要することなく、表面の親水性を維持することができる。
しかしながら、シラン化合物(B)の含有量が十分ではなく、水、有機溶剤等による処理、物理的な接触等により、生成しているシラノール基が消失してしまうと、成形品の断面方向においてシラン化合物(B)の濃度差が生じるため、それを補おうとしてシラン化合物(B)が新たに表出しようとする。その際、更に水接触工程を進めることにより、親水性が再現される。
尚、成形品及び親水性成形品は、上記熱可塑性重合体(A)100質量部及び上記シラン化合物(B)を含む組成物であれば、上記熱可塑性重合体(A)100質量部及び上記シラン化合物(B)3質量部からなる成形品に対し、水を接触させた後の、上記成形品の表面における水滴接触角が、60度を超える組成物を用いても製造することができる。この成形品及び親水性成形品は、公知の成形方法、並びに、本発明の親水性成形品の製造方法(I)又は(II)によって得ることができる。
本発明の成形品及び親水性成形品の用途としては、例えば、自動二輪車等のハンドルカバーやカウル、小型船舶、雪上車等のエンジンカバー、家具、AV機器の家電製品、看板、自動販売機等の部品、便座、タンクカバー、ケーシング、台所回りの備品、洗面台関連部品、浴室関連パーツ等のサニタリー関連部品、窓枠、床材、壁材等の住宅、住設関連部品等が挙げられる。これらのうち、水と接触する製品や屋外に設置される製品、これらの部品等が好適であり、例えば、便座、タンクカバー、ケーシング、台所回りの備品、洗面台関連部品、浴室関連パーツ等のサニタリー関連部品、窓枠、床材、壁材等の住宅、住設関連部品等が特に好適である。
本発明の成形品及び親水性成形品は、使用条件、環境等によっては、表面が傷付いたり、摩耗したりすることがあるが、水に接触するのみで、所定の親水性を再現することができるので、同じ性能を長期に渡って維持することができる。
尚、本発明の親水性成形品は、必要に応じて、印刷、塗装、メッキ、接着等の加工を施すこともできる。
4.積層品
本発明の積層品は、基部と、上記基部の表面に配設され、且つ、上記成形品成形用重合体組成物を用いて成形された部材とを備える。この部材に対して、上記親水性成形品の製造方法における水接触工程等を行うことにより、積層品の部材表面を親水性にすることができる。従って、従来技術のように、基部の表面に親水性付与材料を形成した積層品に比べ、親水性の持続性に優れる。
上記基部及び上記部材を含む積層品の1例を図1に示す。即ち、図1の積層品1は、基部11と、この基部11の表面に配設する部材12とを備える。
上記部材の形状は特に限定されず、板状、線状、塊状等とすることができる。
尚、上記部材は、図1のように、上記基部の表面の一部にあってよいが、全面にあってもよい。
上記基部を構成する材料、形状等も特に限定されず、目的、用途等に応じて選択すればよい。
構成材料としては、熱可塑性重合体(エラストマー、ゴム、樹脂等)、熱硬化樹脂、木材、無機材料(金属、非金属、セラミック、大理石等)等が挙げられる。また、形状は、板状、線状、塊状等とすることができる。
本発明の積層品は、上記基部及び上記部材が、接着剤、粘着剤等により接合されたものであってもよい。その例を図2に示す。図2の積層品1aは、基部11及び部材12の間に接合部2を備える。
本発明の積層品は、例えば、本発明の積層品は、真空成形、インモールド成形、共押出等の成形、ラミネート、圧着、接着等の方法により得ることができる。
また、本発明の積層品は、例えば、看板、パネル、各種容器、家電製品及びその部品、車両用部材等が挙げられる。更に、本発明の積層品は、上記部材に含まれるシラン化合物(B)の加水分解により生成したシラノール基による親水性を継続的に発現する性質を有することから、水と接触する製品や屋外に設置される製品、これらの部品等に好適に使用することができる。例えば、便座、タンクカバー、ケーシング、台所回りの備品、洗面台関連部品、浴室関連パーツ等のサニタリー関連部品、窓枠、床材、壁材等の住宅、住設関連部品等が特に好適である。
尚、本発明の積層品は、表面に、予め、親水性を有する部材を備える積層品であってもよい。その場合には、部材の表面における水滴接触角は、好ましくは60度以下、より好ましくは5〜60度、更に好ましくは5〜30度である。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例及び比較例において、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
1.親水性成形品の製造及び評価
実施例1−1
シラン化合物(I)として、テトラn−ブチルシリケート(商品名「シリケートMS58B30」、三菱化学社製、重量平均分子量1,500〜1,800)を4部(SiO換算)、また、熱可塑性重合体(I)として、パウダー状のABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、商品名「テクノABS830」、テクノポリマー社製)を100部、室温にてヘンシェルミキサーを用いて均一に攪拌混合した後、40mm押出機を用いて200℃で溶融混練しペレットを得た。その後、該ペレットをシート成形機に投入して、幅20cm及び厚さ2mmのシート状の成形体を得た。
次いで、得られたシート状の成形体の表面に、水/エタノール混合溶媒(質量比1:1)を霧吹きにより噴霧し、一定時間室温下で放置することにより自然乾燥させて(以下、「表面処理(i)」という。)、親水性成形品を得た。ここで、表1における表面処理(i)の処理時間の欄の数字は、噴霧を行った時間(秒)を意味する。
親水性成形品の親水性の評価は、下記方法による接触角をもって行った。即ち、親水性成形品の表面に、水滴0.2ccを滴下し、23℃、空気雰囲気下、滴下から30秒経過後の接触角を全自動接触角測定器(協和界面科学社製)により測定した。
実施例1−2〜1−7
シラン化合物(I)及び熱可塑性重合体(I)の配合割合、並びに、表面処理(i)の条件を表1に示すようにした以外は、実施例1−1と同様にして親水性成形品を製造し、親水性の評価を行った。
実施例1−8〜1−11
シート状の成形体とするための原料成分として、更にゼオライト(商品名「モレキュラーシーブ3A(パウダー)」、ユニオン昭和社製)を用い、各配合割合、並びに、表面処理(i)の条件を表1に示すようにした以外は、実施例1−1と同様にして親水性成形品を製造し、親水性の評価を行った。
比較例1−1
上記熱可塑性重合体(I)のみからなるシート状の成形体に対し、表2の条件で表面処理(i)を行い、親水性の評価を行った。
比較例1−2
シラン化合物(I)、熱可塑性重合体(I)及び上記ゼオライトの配合割合を表2に示すようにした以外は、実施例1−3と同様にして親水性成形品を製造し、親水性の評価を行った。尚、得られた親水性成形品の表面には、白濁が観察された。
比較例1−3
比較例1−1で用いたシート状の成形体の表面に、上記シラン化合物(I)及び上記水/エタノール混合溶媒の混合物(質量比1:1)を霧吹きにより塗布した。その後、一定時間室温下で放置することにより自然乾燥し(以下、「表面処理(ii)」という。)て親水性成形品を製造し、親水性の評価を行った(表2参照)。尚、得られた親水性成形品の表面には、白濁が観察された。
ここで、表2における表面処理(ii)の処理時間の欄の数字は、噴霧を行った時間(秒)を意味する。
比較例1−4
比較例1−1で用いたシート状の成形体の表面に、上記シラン化合物(I)及び上記水/エタノール混合溶媒の混合物(質量比1:1)を霧吹きにより塗布した。その後、表2の条件で表面処理(ii)及び上記表面処理(i)を続けて行い、上記と同様にして親水性成形品を製造し、親水性の評価を行った。
Figure 2005200629
Figure 2005200629
表2より、シラン化合物(アルコキシシランの縮合物)を含まない比較例1−1の成形品の接触角は80度であるのに対し、シラン化合物(アルコキシシランの縮合物)を樹脂に練り込みブリードアウトさせ、その後、加水分解により成形品表面にシラノール基を形成した実施例1−1〜1−11の親水性成形品では、接触角が36〜57度である(表1)。この結果より、実施例1−1〜1−11の親水性成形品では、親水性が向上していることが分かる。また、シラン化合物(アルコキシシランの縮合物)の練り込み量が過剰な比較例1−2の親水性成形品では、接触角が70度であり、実施例1−1〜1−11の親水性成形品と比べて親水性に劣ることが分かる。更に、アルコキシシラン含有液を樹脂表面に塗布した比較例1−3及び1−4の親水性成形品では、接触角が72度及び75度と実施例1−1〜1−11の親水性成形品より大きい値を示していることから、本発明の親水性成形品は、シリケートを樹脂表面に塗布した従来型の親水性成形品と比較して、優れた親水性を発現していることが分かる。
また、実施例1−1〜1−7と実施例1−8〜1−11とを対比すると、ゼオライトを練り込んだ実施例1−8〜1−11の方が、接触角の小さい値を示している。このことから、ゼオライトを練り込むことにより親水性を向上させることができることが分かる。これは、アルコキシシランの直練りの即効性とフィラー含浸により遅効性の効果による制御の可能性が考えられる。
更に、アルコキシシランの練り込み量が過剰な比較例1−2、並びに、アルコキシシランを加水分解させてシラノールとした状態で塗布した比較例1−3及び1−4では、成形品表面に白濁が認められたのに対し、実施例1−1〜1−11ではかかる白濁が認められなかった。このことから、本発明の親水性成形品の製造方法により、アルコキシシランの加水分解促進−縮合反応を適切に制御し、成形品の白濁を防止するこができることが分かる。
2.含水率の低い重合体組成物の製造及び評価
実施例2−1
オーブンを用い、80℃で16時間乾燥させ、精密微量水分計(型名「CZA−3100」、チノー社製)による含水率を0.01%以下としたパウダー状の上記熱可塑性樹脂(I)100部及び上記シラン化合物(I)3部をヘンシェルミキサーに入れ、均一に攪拌混合した。その後、ベント口を閉ざした30mm押出機(型名「TEX30」、日本製鋼所社製)を用い、シリンダー温度200℃及び滞留時間4分間として溶融混練し、ホットカット方式でペレット(重合体組成物)を作製し、密閉容器内に収容した。
その後、このペレットを用い、ダイス幅250mmとしたTダイ押出成形機(創研社製)により、成形温度200℃で、幅200mm及び厚さ1mmのシート状成形体を得た。
上記シート状成形体を下記項目について評価し、表3に示した。
(1)接触角
上記シート状成形体に、水・エタノール混合液(質量比1:1)を、霧吹きにより吹きつけ、室温で24時間静置し、自然乾燥させた。その後、実施例1−1と同様にして23℃における接触角を測定した。
(2)ヘイズ(曇価)
ヘイズ測定器(型名「hazegard−plus」、ビックケミージャパン社製)により測定した。
また、持続性を評価するために、縦100mm、横100mm及び厚さ1mmのシート状成形体を23℃の水槽に30日間浸漬させた。その後、水槽から取り出して自然乾燥させ、翌日、上記方法で接触角及びヘイズを測定した。その結果を表3に併記した。
実施例2−2
シラン化合物(I)の配合量を6部とした以外は、実施例2−1と同様にして重合体組成物及びシート状成形体を製造し、評価した。その結果を表3に併記した。
実施例2−3
上記精密微量水分計による含水率が0.45%であるペレット状のアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(商品名「テクノABS810」、テクノポリマー社製、以下、「熱可塑性重合体(II)」ともいう。)6kgを、上記押出機により、シリンダー温度200℃及び滞留時間2分間として溶融混練し、ベント口から水蒸気を吸引(730mmHg)して脱水乾燥させた。その後、シラン化合物(I)0.18kgを、プランジャーポンプ(型名「2MC051−75V」、FUJI PUMP社製)により注入し、更に2分間混練し、重合体組成物を得た。また、実施例2−1と同様にしてシート状成形体を得た。これらの評価も上記と同様にして行い、その結果を表3に併記した。
実施例2−4
シラン化合物(I)の配合量を6部とした以外は、実施例2−3と同様にして重合体組成物及びシート状成形体を製造し、評価を行った。その結果を表3に併記した。
実施例2−5
上記精密微量水分計による含水率が0.45%であるペレット状の熱可塑性樹脂(I)を用いた以外は、実施例2−1と同様にして重合体組成物及びシート状成形体を製造し、評価を行った。その結果を表3に併記した。
実施例2−6
押出機のベント口を開き、ベント口から水蒸気を吸引(730mmHg)して脱水乾燥させた以外は、実施例2−5と同様にして重合体組成物及びシート状成形体を製造し、評価を行った。その結果を表3に併記した。
実施例2−7
押出機のベント口を閉じた以外は、実施例2−3と同様にして重合体組成物及びシート状成形体を製造し、評価を行った。その結果を表3に併記した。
比較例2−1
シラン化合物(I)を用いなかったこと以外は、実施例2−1と同様にして重合体組成物及びシート状成形体を製造し、評価を行った。その結果を表3に併記した。
比較例2−2
押出機のベント口を閉じ、シラン化合物(I)を注入しなかった以外は、実施例2−3と同様にして重合体組成物及びシート状成形体を製造し、評価を行った。その結果を表3に併記した。
Figure 2005200629
表3より、比較例2−1及び2−2は、シラン化合物(アルコキシシランの縮合物)を用いなかった例であり、製造方法によらず、接触角が80度と高く、親水性表面が得られなかった。
一方、実施例2−1では、含水率が0.01%以下であるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂を用いたため、接触角が35度であり、親水性に優れる。30日経過すると、31度とわずかに良化した。ヘイズは3.5%であり、透明性も高かった。実施例2−2は、シラン化合物(アルコキシシランの縮合物)の使用量を増やした例であり、ヘイズはわずかに低下したが十分に透明であった。また、接触角が33度であり、実施例2−1よりも親水性が高くなった。実施例2−3は、ベント口を開いた状態でアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂を溶融し、その水分量を減らしてからシラン化合物(アルコキシシランの縮合物)を添加した例であり、実施例2−1よりも更に接触角が小さく、ヘイズも良化した。本実施例においては、いずれも永続的な親水性を有するものと確認された。
3.親水性成形品の製造及び評価
実施例3−1
上記実施例1−1で用いた、Smart式による溶解度パラメーター(以下、「SP値」ともいう。)が10.3の熱可塑性樹脂(I)100部と、シラン化合物(II)として、SP値が8.2のテトラn−ブチルシリケート(商品名「シリケートMS58B15」、三菱化学社製、重量平均分子量1,600〜1,800)3部とを、ヘンシェルミキサーを用いて均一に攪拌混合した後、40mm押出機用いて200℃で溶融混練しペレットを得た。その後、該ペレットをシート成形機に投入して、縦150mm、横30mm及び厚さ300μmのシート(以下、「未処理シート」ともいう。)を作製した。この未処理シートの、単位面積あたりのシラン化合物(II)の含有量は、0.9mg/cmであり、表面の接触角は80度であった。
上記未処理シートに対して前処理を行い、親水性シートを得た。まず、上記未処理シートを気温23℃及び湿度50%以下の空気中に7日間放置した。このときのシート表面の接触角は70度であった。その後、シートを23℃の水(使用量は、シートの体積の3倍量である。)に22時間浸し、取り出した後、シート表面の水を拭き取らずに、気温23℃及び湿度50%以下の空気中に2時間放置し、乾燥した(以下、この処理を「水浸漬」ともいう。)。このときの親水性シート表面の接触角は45度であった(表4参照)。また、この親水性シートの表面に、水の膜を形成させて濡れの状態を目視観察し、一様に濡れていない場合を「ムラ有」、一様に濡れた場合を「ムラ無」と判定した。
次に、上記親水性シートに対して、下記(3)〜(5)の各処理を行い、各処理後の成形品表面の接触角を測定し、その結果を表4に示した。
(3)エタノール処理(エタノール拭き取り)
エタノールを含浸させたガーゼを用いて、親水性シートの表面を3回ぬぐい、23℃で1分間乾燥した。
(4)エタノール処理後の再度の水浸漬
上記(3)による処理の後、再度水浸漬を行った。
(5)乾湿サイクル試験
親水性シートの親水性表面の堅牢性を見るため、1サイクルを、気温23℃及び湿度50%以下の空気中に9時間放置して乾燥させ、次いで、23℃の水(使用量は、シートの体積の3倍量である。)に15時間浸す工程を50回繰り返した。
実施例3−2
熱可塑性樹脂(I)100部及びシラン化合物(II)3部を用い、実施例3−1と同様にして、厚さ100μmの未処理シートを作製した。この未処理シートの表面の接触角は80度であった。この未処理シートに対して、実施例3−1と同じ前処理を行い、親水性シートを得、上記処理(3)〜(5)を行った。その結果を表4に示した。
実施例3−3
熱可塑性樹脂(I)100部及びシラン化合物(II)3部を用い、実施例3−1と同様にして、厚さ50μmの未処理シートを作製した。この未処理シートの表面の接触角は
80度であった。この未処理シートに対して、実施例3−1と同じ前処理を行い、親水性シートを得、接触角の測定及び表面状態を観察した。その結果を表4に示した。
実施例3−4
シラン化合物(II)の使用量を8部とした以外は、実施例3−3と同様にして未処理シートを作製した。この未処理シートの表面の接触角は80度であった。この未処理シートに対して、実施例3−1と同じ前処理を行い、親水性シートを得、上記処理(3)〜(5)を行った。その結果を表4に示した。
実施例3−5
熱可塑性樹脂(I)100部及びシラン化合物(II)8部を用い、実施例3−1と同様にして、厚さ30μmの未処理シートを作製した。この未処理シートの表面の接触角は
80度であった。この未処理シートに対して、実施例3−1と同じ前処理を行い、親水性シートを得、上記処理(3)〜(5)を行った。その結果を表4に示した。
実施例3−6
実施例3−1で作製した未処理シートを気温23℃及び湿度50%以下の空気中に7日間放置した後、下記条件で、シートの表面に電子線を照射し、親水性シートを得、上記処理(3)〜(5)を行った。その結果を表4に示した。
<電子線照射条件>
装置 ; EC250/15/180L型(アイ・エレクトロビーム社製)
加速電圧 ; 125kV
ビーム電流 ; 3.46mA
照射線量 ; 100.0kGy。
実施例3−7
実施例3−1で作製した未処理シートに対して、実施例3−1と同じ前処理を行い、更に、実施例3−6と同じ条件で電子線照射を行うことで親水性シートを得た。この親水性シートに対して、上記処理(3)〜(5)を行い、その結果を表4に示した。
実施例3−8
熱可塑性重合体(VII)として、下記に記載の方法で製造した、SP値が11.1のアクリロニトリル・スチレン・アクリレート(ASA)樹脂100部と、SP値が8.3のシラン化合物(I)5部とを用い、実施例3−1と同様にして、厚さ150μmの未処理シートを作製した。この未処理シートの表面の接触角は80度であった。この未処理シートを気温23℃及び湿度50%以下の空気中に7日間放置した後、水浸漬を2回繰り返すことで親水性シートを得、接触角の測定及び表面状態を観察した。その結果を表5に示した。
<ASA樹脂の製造方法>
まず、アクリル酸n−ブチル99%及びアリルメタクリレート1%を乳化重合することにより得られたアクリル系ゴム質重合体50部を含むラテックスと、水200部(合計量)と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部とを反応器に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。60℃に達した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部を溶解した水溶液を反応系に添加し、その直後、スチレン38部、アクリロニトリル12部及びt−ブチルハイドロパーオキサイド0.6部の混合溶液を3時間に渡って連続添加し、重合を行った。重合転化率は96%であった。その後、得られたラテックスより、反応生成物(重合体)を凝固、洗浄及び乾燥し、粉末状の樹脂(p1)を得た。グラフト率は55%であった。
一方、メタクリル酸メチル、スチレン及びアクリロニトリルを用いて、溶液重合を行い、結合メタクリル酸メチル含量72%、スチレン含量21%及びアクリロニトリル含量7%の共重合体(p2)を得た。極限粘度〔η〕は、0.5dl/gであった。
ASA樹脂は、樹脂(p1)及び共重合体(p2)を質量比4/6で混合することにより得た。
実施例3−9
実施例3−8で得た未処理シートに対して、実施例3−7と同じ前処理を行うことで親水性シートを得、接触角の測定及び表面状態を観察した。その結果を表5に示した。
実施例3−10
熱可塑性重合体(VI)として、SP値が12.8のポリエチレンテレフタレート樹脂(商品名「IS404」、MCC社製)100部と、シラン化合物(I)3部とを用い、実施例3−1と同様にして、厚さ150μmの未処理シートを作製した。この未処理シートの表面の接触角は80度であった。この未処理シートを気温23℃及び湿度50%以下の空気中に7日間放置した後、水浸漬を2回繰り返すことで親水性シートを得、上記処理(3)〜(5)を行い、その結果を表5に示した。
実施例3−11
熱可塑性重合体(III)として、SP値が11.1のアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(商品名「テクノABS150」、テクノポリマー社製)17.4部と、熱可塑性重合体(IV)として、SP値が10.7のスチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー(商品名「TR2500」、JSR社製)13部と、熱可塑性重合体(V)として、SP値が7.9のポリプロピレン樹脂(商品名「FY6C」、JPP社製)69.6部と、シラン化合物(I)5部とを用い、実施例3−1と同様にして、厚さ150μmの未処理シートを作製した。この未処理シートの表面の接触角は80度であった。この未処理シートを気温23℃及び湿度50%以下の空気中に7日間放置した後、水浸漬を3回繰り返すことで親水性シートを得、上記処理(3)〜(5)を行い、その結果を表5に示した。
実施例3−12
熱可塑性重合体(V)100部と、シラン化合物(I)5部とを用い、実施例3−1と同様にして、厚さ150μmの未処理シートを作製した。この未処理シートの表面の接触角は80度であった。この未処理シートを気温23℃及び湿度50%以下の空気中に7日間放置した後、水浸漬を35回繰り返すことで親水性シートを得、接触角の測定及び表面状態を観察した。その結果を表5に示した。
実施例3−13
熱可塑性重合体(V)100部と、シラン化合物(III)として、SP値が8.1のテトラメチルシリケート(商品名「シリケートMS41」、三菱化学社製、重量平均分子量400〜600)5部とを用い、実施例3−1と同様にして、厚さ150μmの未処理シートを作製した。この未処理シートの表面の接触角は80度であった。この未処理シートを気温23℃及び湿度50%以下の空気中に7日間放置した後、水浸漬を10回繰り返すことで親水性シートを得、接触角の測定及び表面状態を観察した。その結果を表5に示した。
実施例3−14
熱可塑性重合体(VII)100部と、シラン化合物3部とを用い、実施例3−1と同様にして、厚さ300μmの未処理シートを作製した。この未処理シートの表面の接触角は80度であった。この未処理シートを気温23℃及び湿度80%以上の空気中に50日間放置することで親水性シートを得、接触角の測定及び表面状態を観察した。その結果を表5に示した。
実施例3−15
実施例3−1で作製した未処理シートを気温23℃及び湿度50%以下の空気中に7日間放置した後、上記水浸漬に使用する水を硫酸水溶液(濃硫酸2部を水100部に溶解したもの)として実施例3−1と同様にして親水性シートを得、上記処理(3)〜(5)を行い、その結果を表5に示した。
比較例3−1
熱可塑性樹脂(I)のみを用いて、実施例3−1と同様にして厚さ300μmの未処理シートを得た。この未処理シートの表面の接触角は80度であった。この未処理シートに対して水浸漬を50回行った後の接触角は80度であった(表6)。
比較例3−2
実施例3−1で作製した未処理シートを気温23℃及び湿度20%以下の空気中に50日間放置し、シート表面の接触角を測定したところ、78度であった(表6)。
比較例3−3
比較例3−1で作製した未処理シートを気温23℃及び湿度20%以下の空気中に50日間放置した後、実施例3−6と同じ条件で電子線照射を行うことで親水性シートを得た。この親水性シートの表面の接触角は69度であった。
比較例3−4
比較例3−1で得たシート(厚さ300μm)の表面に、親水化材料として、シリケート配合親水性コーティング剤(商品名「シンスイフローMS1200」、大日本色材工業社製)を塗布し、乾燥して厚さ5μmの皮膜を形成し、親水性シートを得た。この親水性シートの表面の接触角は52度であった。また、上記処理(3)〜(5)を行い、その結果を表6に示した。
Figure 2005200629
Figure 2005200629
Figure 2005200629
表6より、本発明のシラン化合物を含有しない比較例3−1は、水浸漬を行っても、接触角が80度と高く、表面が親水化されていないことが分かる。比較例3−2は、水浸漬を行わなかった例であり、低湿度の環境下に長期間放置しても、シート表面のシラン化合物の加水分解が進行しないため、接触角が78度と高くなった。比較例3−3は、本発明のシラン化合物を含有しないシートに対して電子線を照射した例であり、接触角を低下させるほどの表面改質効果が得られなかった。また、比較例3−4は、市販の親水性コーティング剤を塗布した例であり、上記処理(3)〜(5)による接触角の回復が見られなかった。
一方、表4及び表5より、熱可塑性重合体及びシラン化合物が本発明の範囲内に含有され、良好な親水性が得られることが分かる。
表4より、実施例3−2は、実施例3−1に比べて、フィルムの厚さが薄い(100μm)例であり、乾湿サイクル50回繰り返しても、シラノール基が消失せず、良好な親水性を維持したが、エタノール処理により、接触角が65度にまで低下した。その後、再度水浸漬することにより、もとの親水性を示した。
実施例3−5は、シラン化合物の含有量を増量したが、フィルムの厚さを30μmとしたものであり、エタノール処理により、親水性が低下したものの、再度水浸漬することにより、もとの親水性を示した。しかし、乾湿サイクルを50回繰り返した場合には、親水性がなくなった。
実施例3−6は、水浸漬を行わず、電子線により表面改質した例であり、実施例3−1よりも接触角の小さい、優れた親水性を有する表面を形成することができた。水浸漬と電子線照射を組み合わせた実施例3−7は、更に親水性が向上(接触角30度)した。
また、表5より、熱可塑性重合体の種類が異なっても、親水性に優れた成形品とすることができることが分かる。特に、実施例3−13のように、各成分のSP値を用いた差が0.2と小さい場合であっても、シラン化合物がブリードアウトし、水浸漬によりシラノール基が形成されたものと考えられる。
実施例3−14は、水浸漬を行わなかった例であり、湿度が80%以上と高い空気中に放置するのみで、親水性表面を形成することが可能であることが分かる。
尚、本発明においては、上記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
本発明の重合体組成物を用いることにより、優れた親水性を有する成形品及び積層品を容易に製造することができ、自動二輪車等のハンドルカバーやカウル、小型船舶、雪上車等のエンジンカバー、家具、AV機器の家電製品、看板、自動販売機等の部品、便座、タンクカバー、ケーシング、台所回りの備品、洗面台関連部品、浴室関連パーツ等のサニタリー関連部品、窓枠、床材、壁材等の住宅、住設関連部品等に好適である。
本発明の積層品の1例を示す概略断面図である。 本発明の積層品の他の例を示す概略断面図である。
符号の説明
1,1a;積層品、11;基部、12;部材、2;接合部。

Claims (17)

  1. (A)熱可塑性重合体と、(B)成形体表面にブリードアウト可能なアルコキシシラン及びその縮合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物とを含み、
    上記シラン化合物(B)の含有量は、上記熱可塑性重合体(A)100質量部に対して、SiO換算で、0.1〜50質量部であり、且つ、
    上記熱可塑性重合体(A)100質量部及び上記シラン化合物(B)3質量部からなる成形品に対し、水を接触させた後の、該成形品の表面における水滴接触角が、60度以下であることを特徴とする成形品成形用重合体組成物。
  2. 上記熱可塑性重合体(A)の溶解度パラメーター(S)と、上記シラン化合物(B)の溶解度パラメーター(S)との関係が、|S−S|≧0.2である請求項1に記載の成形品成形用重合体組成物。
  3. 上記シラン化合物(B)の重量平均分子量が300〜3,000である請求項1又は2に記載の成形品成形用重合体組成物。
  4. 更に、触媒及び希釈剤のうちの少なくとも1種を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物。
  5. 含水率が0.2質量%以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物を用いて成形されたことを特徴とする成形品。
  7. 薄肉部の最小厚さが35μm以上である請求項6に記載の成形品。
  8. 請求項1乃至5のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物を用いて成形品とする成形工程と、該成形品の表面からシラン化合物(B)をブリードアウトさせるブリードアウト工程と、該成形品に水を接触させる水接触工程とを備えることを特徴とする親水性成形品の製造方法。
  9. 上記水接触工程は、上記成形品に含まれるシラン化合物(B)の加水分解により生成するシラノール基を、該成形品の表面に形成する請求項8に記載の親水性成形品の製造方法。
  10. 請求項1乃至5のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物を用いて成形品とする成形工程と、該成形品の表面に放射線処理及びコロナ放電処理から選ばれる少なくとも1種の処理工程とを備えることを特徴とする親水性成形品の製造方法。
  11. 請求項8乃至10のいずれかに記載の方法により得られたことを特徴とする親水性成形品。
  12. 本親水性成形品の表面における水滴接触角が60度以下である請求項11に記載の親水性成形品。
  13. 薄肉部の最小厚さが35μm以上である請求項11又は12に記載の親水性成形品。
  14. 本親水性成形品を、大気中、室温で9時間乾燥し、その後、23℃の水中で、15時間浸漬する処理を、50回連続で繰り返した後の、該親水性成形品の表面における水滴接触角が60度以下である請求項11乃至13のいずれかに記載の親水性成形品。
  15. 本親水性成形品の表面を、エタノールで洗浄し、その後、23℃の水中で、1時間浸漬した後の、該親水性成形品の表面における水滴接触角が60度以下である請求項11乃至14のいずれかに記載の親水性成形品。
  16. 基部と、該基部の表面に配設され且つ請求項1乃至5のいずれかに記載の成形品成形用重合体組成物を用いて成形された部材とを備えることを特徴とする積層品。
  17. 上記部材の表面における水滴接触角が60度以下である請求項16に記載の積層品。
JP2004272292A 2003-09-17 2004-09-17 成形品成形用重合体組成物、成形品、親水性成形品及びその製造方法並びに積層品 Pending JP2005200629A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004272292A JP2005200629A (ja) 2003-09-17 2004-09-17 成形品成形用重合体組成物、成形品、親水性成形品及びその製造方法並びに積層品

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003324866 2003-09-17
JP2003419986 2003-12-17
JP2004272292A JP2005200629A (ja) 2003-09-17 2004-09-17 成形品成形用重合体組成物、成形品、親水性成形品及びその製造方法並びに積層品

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005200629A true JP2005200629A (ja) 2005-07-28

Family

ID=34830945

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004272292A Pending JP2005200629A (ja) 2003-09-17 2004-09-17 成形品成形用重合体組成物、成形品、親水性成形品及びその製造方法並びに積層品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005200629A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011107547A (ja) * 2009-11-20 2011-06-02 Canon Inc 帯電部材の製造方法
CN113912936A (zh) * 2021-09-30 2022-01-11 成都金发科技新材料有限公司 一种增韧抗静电的聚丙烯组合物及其制备方法和应用

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011107547A (ja) * 2009-11-20 2011-06-02 Canon Inc 帯電部材の製造方法
CN113912936A (zh) * 2021-09-30 2022-01-11 成都金发科技新材料有限公司 一种增韧抗静电的聚丙烯组合物及其制备方法和应用
CN113912936B (zh) * 2021-09-30 2023-02-17 成都金发科技新材料有限公司 一种增韧抗静电的聚丙烯组合物及其制备方法和应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5276789B2 (ja) 付加硬化性物質との付着性が向上した組成物及びその組成物を含む複合材料製品
WO2017104714A1 (ja) レーダー装置が発するビームの経路に配置される樹脂部品、レドーム及びレーダー装置
CN101657502B (zh) 对基材具有改进的自粘合性的可缩合固化的组合物
EP2583834B1 (en) Modified polyvinyl alcohol coated film used for printing and preparation method thereof
CA2473626A1 (en) Nanoclay modified waterborne compositions for coating plastic and methods for making the same
JP6535596B2 (ja) 接触用部品、および該接触用部品を含む構造体
JP2011137066A (ja) 軋み音を低減した自動車内装部品
WO2018221742A1 (ja) 熱可塑性樹脂組成物及び成形体
JP5238341B2 (ja) 樹脂組成物およびその製造方法、塗料組成物、積層体
WO2005028562A1 (ja) 成形品成形用重合体組成物、成形品、親水性成形品及びその製造方法並びに積層品
US10465068B2 (en) Article comprising plated component
JP2005200629A (ja) 成形品成形用重合体組成物、成形品、親水性成形品及びその製造方法並びに積層品
JP2000272071A (ja) ポリカーボネート樹脂積層体
CN101065237A (zh) 减少热板焊接期间树脂组合物拉丝的方法
JP5608246B2 (ja) 多層構造物及びその作製方法
JP2007169488A (ja) ガスバリア膜及びガスバリア性を有する積層体
JP2005248138A (ja) 成形材料
JP2012223922A (ja) 加飾樹脂シート
KR102417536B1 (ko) 휠 러스트 커버용 열가소성 투명 수지 조성물 및 이의 제조방법
JPH06100765A (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP2016191022A (ja) 発泡樹脂成形体
JPH0976426A (ja) 積層体
WO2018051870A1 (ja) 熱可塑性樹脂組成物およびその成形体
CA1181636A (en) Article comprising silicone resin coated, methacrylate-primed substrate
JP2001288400A (ja) 一液型艶消し塗料組成物

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20050606

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070126

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090708

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090721

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091117