JP2005197058A - 非水電解液二次電池およびこれに用いる非水電解液 - Google Patents

非水電解液二次電池およびこれに用いる非水電解液 Download PDF

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利一 中村
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昌史 庄司
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守 須賀
Tadafumi Tokushige
忠文 徳重
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Abstract

【課題】 深放電特性および/または充放電サイクル特性に優れた非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】 正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータおよび非水電解液からなる非水電解液二次電池において、正極、負極および非水電解液よりなる群から選ばれる少なくとも1つが、アルカリ金属塩Xを含み、ここで、前記アルカリ金属塩Xが、
【化1】
Figure 2005197058

(式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い、また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である)で表される。
【選択図】図1

Description

本発明は、深放電特性および充放電サイクル特性に優れた非水電解液二次電池およびこれに用いる非水電解液に関する。
近年、民生用電子機器のポータブル化、コードレス化が急速に進んでいる。これにつれて駆動用電源を担う小型、軽量、薄型で、かつ高エネルギー密度を有する二次電池への要望が高まっている。その中で、非水電解液を用いる二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、とりわけ高電圧、高エネルギー密度を有する電池として有望視され、その開発が盛んに行われている。
これら非水電解液二次電池の負極には、金属リチウムそのものを活物質として用いるものと、活物質のリチウムを充放電により吸蔵・放出することが可能な金属化合物や炭素材料を主材料として用いるものがある。これらの内、現在では多くの場合、炭素材料が負極活物質として用られている。
また、非水電解液二次電池の正極には、充放電によるリチウムの吸蔵・放出が可能な各種のリチウム含有複合酸化物が活物質として一般的に用いられている。
これらの正極と負極を備えた非水電解液二次電池では、電子機器に装着されたまま長時間放置されると、漏れ電流によって深放電され、電池電圧が0Vまで低下する。
電池の充電状態(例えば電圧4.2V)では、負極の対Li電位は、0V付近(vs Li+/Li)である。充電状態の電池を、電池電圧の0V付近まで放電し、開回路状態にすると、電解液注液後の初回充電前の負極と同程度の3.2V(vs Li+/Li)程度まで電位が回復する。一方、電解液注液後の初回充電前の状態のように正負極間が開回路の状態にされているのとは異なり、深放電では電池電圧が完全に0Vになるまで、正負極間で漏れ電流が継続して流れる。そのため、例えば、負極と同電位になる、鉄にニッケルメッキを施したケースでは、メッキのピンホールや割れ・欠けのあるメッキ強度の弱い部分から、鉄の溶解が起こる。そして、ケースが腐蝕し、漏液に至る場合がある。
このような深放電時のケース腐蝕対策として、負極にメタルリチウムを貼り付ける方法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。また、電池内に水酸化リチウム溶液を添加して、電気分解させることにより、負極側でリチウムの吸蔵を起こし、正極側でアニオンの分解ガスを発生させる方法などが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
ところが金属リチウムを負極に貼りつける方法では、電解液の注液直後、正極が、鉄、銅などの金属が溶解するのに十分な高い正極電位(約3.2V vs Li+/Li)に曝される。そのため、正極では、すぐに正極中に混在する金属の溶解が起こりはじめる。また、電解液の注液直後、負極電位は、金属リチウムの電位めがけて急激に低下し、多くの金属イオンが析出する電位域に至ることが問題となる。つまり、正極で溶解した鉄、銅などの金属が、セパレータを介して、直下の負極上で析出して、微小短絡を形成することになる。この微小短絡の形成は、電池の高容量化に伴うセパレータの薄肉化が進む昨今では、開回路電圧不良の要因となっている。従って、深放電時のケース腐蝕に対する対策として金属リチウムを負極に貼付ける方法は、微小短絡形成の点から採用が困難である。
また、電池内に水酸化リチウム溶液を添加する方法では、正極側で分解ガスが発生するため、電池の内圧上昇に伴いガス開放を行う特殊な弁を具備した封口体が必要であり、実用化は困難である。
ところで、サリチル酸リチウムやリチウムサリチルアルデヒドをリチウム電池の電解液に添加することにより、電池のエネルギー密度が向上することが開示されている(例えば、非特許文献1、2参照。)。しかし、これらは一次電池としての特性を評価したものであり、二次電池に関する記載はない。
特開平4−192257号公報 特開平5−144473号公報 特開平5−242912号公報 「第2回化学電池材料研究会ミーティング講演要旨集」、2000年、p.109 「表面」、2000年、第38巻、第11号、p.42−49
本発明は、主として上記のような非水電解液二次電池に関する問題を鑑みたものであり、例えば、非水電解液二次電池において、深放電特性および/または充放電サイクル特性の改善を図るものである。
本発明は、正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータおよび非水電解液からなり、正極、負極および非水電解液よりなる群から選ばれる少なくとも1つが、成分A:アルカリ金属塩Xおよび/またはアルカリ金属塩Xの酸化分解生成物を含む非水電解液二次電池に関する。ここで、アルカリ金属塩Xは、式(1):
Figure 2005197058
(式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表される。また、上記酸化分解生成物は、電池の充放電に悪影響を与えることなく電池内に存在することが好ましい。
例えば、アルカリ金属塩Xが非水電解液に対して可溶性である場合、前記アルカリ金属塩Xは、非水電解液に添加される。アルカリ金属塩Xの酸化分解により生成する酸化分解生成物は、非水電解液に対して可溶性の化合物もしくは重合体である。酸化分解により生成するアルカリ金属イオン(例えば、Li+)は、負極に吸蔵される。負極でのLiの吸蔵により、電池電圧が0V近くになるまで過放電した場合の負極電位を卑な側にシフトすることができる。
また、例えば、アルカリ金属塩Xが非水電解液に対して不溶性である場合、アルカリ金属塩Xは、正極および/または負極に混在させる。正極に混在させる場合、アルカリ金属塩Xの酸化分解により生成する酸化分解生成物は、非水電解液に対して可溶性の化合物もしくは重合体である。酸化分解により生成するアルカリ金属イオン(例えば、Li+)は、負極に吸蔵される。
一方、負極に混在させたアルカリ金属塩X(例えば、Li塩)は、負極で酸化分解されない。しかしながら、アルカリ金属塩Xが、負極(例えば、炭素)中に存在することにより、負極が予めLiを吸蔵している場合と同様に電池電圧が0V近くになるまで過放電した場合の負極電位を卑な側にシフトする効果がある。
上記非水電解質二次電池において、上記式(1)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
上記非水電解液二次電池において、成分Aは、少なくとも負極に含まれており、成分Aの量が負極活物質100重量部あたり0.01重量部〜10重量部であることが好ましい。
上記非水電解液二次電池において、正極、負極および非水電解液よりなる群から選ばれる少なくとも1つが、成分B:アルカリ金属塩Yおよび/またはアルカリ金属塩Yの酸化分解生成物ならびに成分C:アルカリ金属塩Zおよび/またはアルカリ金属塩Zの酸化分解生成物よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、アルカリ金属塩YまたはZの酸化分解電位が、Li電位:Li+/Liに対して3.2V〜4.3Vであることが好ましい。
上記非水電解液二次電池において、アルカリ金属塩Yは、式(2):
Figure 2005197058
(式(2)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表されることが好ましい。
上記非水電解液二次電池において、上記式(2)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
上記非水電解液二次電池において、負極は、成分Aおよび成分Bの両方を含み、これらの合計が、負極活物質100重量部あたり0.01重量部〜10重量部であることが好ましい。
上記非水電解液二次電池において、アルカリ金属塩Zは、式(3):
Figure 2005197058
(式(3)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表されることが好まし。
上記非水電解液二次電池において、上記式(3)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
上記非水電解液二次電池において、負極は、成分Aおよび成分Cの両方を含み、これらの合計が、負極活物質100重量部あたり0.01重量部〜10重量部であることが好ましい。
本発明は、また、非水溶媒および前記非水溶媒に溶解したアルカリ金属塩Xからなる非水電解液に関し、アルカリ金属塩Xは、上記式(1)で表される。
上記非水電解液において、上記式(1)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
上記非水電解液において、非水溶媒は、さらにアルカリ金属塩Yおよびアルカリ金属塩Zよりなる群から選ばれた少なくとも1つを溶解しており、アルカリ金属塩YまたはZの酸化分解電位が、Li電位:Li+/Liに対して3.2V〜4.3Vであることが好ましい。
上記非水電解液において、アルカリ金属塩Yは、上記式(2)で表されることが好ましい。
上記非水電解液において、上記式(2)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
上記非水電解液において、アルカリ金属塩Zは、上記式(3)で表されることが好ましい。
上記非水電解液において、上記式(3)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
上記非水電解液において、アルカリ金属塩Xの濃度は、0.001モル/L〜1.5モル/Lであることが好ましい。
上記非水電解液において、アルカリ金属塩Xと、アルカリ金属塩Yおよびアルカリ金属塩Zよりなる群から選ばれる少なくとも1つとの合計濃度は、0.001モル/L〜1.5モル/Lであることが好ましい。
本発明によれば、深放電に至っても電池ケースの腐蝕がなく、容量回復率に優れ、充放電サイクル特性にも優れた非水電解液二次電池を提供することができる。
本発明の非水電解液二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータおよび非水電解液からなり、正極、負極および非水電解液よりなる群から選ばれる少なくとも1つが、後述のアルカリ金属塩Xおよび/またはアルカリ金属塩Xの酸化分解生成物(成分A)を含んでいる。
アルカリ金属塩Xの酸化分解電位は、一般に、Li電位:Li+/Liに対して3.2V〜4.3V、より好ましくは3.6V〜4.3Vである。
電池内の正極電位が対Li電位で3.2V〜4.3Vの場合、アルカリ金属塩Xのアニオン部は、正極で酸化分解して、酸化分解生成物を生成する。酸化分解生成物は、非水電解液に対して可溶性の化合物もしくは重合体である。この酸化分解生成物は、例えば正極表面に抵抗皮膜として付着し、正極リテンション(不可逆容量)として作用する。
一方、アルカリ金属塩Xに由来のアルカリ金属は、アニオンの分解に伴い放出された電子と、Li++e- → Liの反応を起こし、負極中に吸蔵されるものと考えられる。
すなわち、電池電圧0Vまで深放電した場合、正極側では正極リテンション量の増大で容量が減少するが、負極側ではLiの吸蔵反応により、負極容量が増大する。その結果、電池電圧が0Vに至る正極と負極とが落ち合う電位は、鉄、銅などの金属が溶解しない電位、例えば3.0V(vs Li+/Li)を下回る電位になる。従って、負極と導通する電池ケースの腐蝕を防止できる。
しかも、アルカリ金属塩Xが電離して生成するアニオンの酸化分解は、初回の充電工程で初めて行われるため、負極に金属リチウムを貼り付けた場合のように、正極中に混在する金属が溶解し、直下の負極表面で析出して微小短絡に至ってしまうという問題も生じることはない。また、アルカリ金属塩Xの量を増やすと、電池電圧0V時の負極電位を、対Li電位で3.2Vより低い側にシフトさせることができ、防蝕効果を向上させることができる。
本発明による効果を効率よく発揮させるためには、アルカリ金属塩Xが、特に非水電解液および負極の少なくとも一方に含まれていることが好ましい。
アルカリ金属塩Xが、非水電解液に含まれる場合、非水電解液中におけるアルカリ金属塩Xの濃度は、0.001モル/L〜1.5モル/Lであることが好ましい。
特に、非水電解液にアルカリ金属塩X以外の溶質が含まれている場合には、非水電解液中におけるアルカリ金属塩Xの濃度は、0.001モル/L〜0.30モル/Lであることがさらに好ましい。
さらに、アルカリ金属塩Xを非水電解液の主溶質として用いることもできる。その場合には、非水電解液中におけるアルカリ金属塩Xの濃度は、0.30モル/L〜1.5モル/L、さらには0.3モル/L〜1.2モル/Lであることが好ましい。
アルカリ金属塩Xだけを溶質とする非水電解液を用いることも可能である。この場合、アルカリ金属塩Xが、通常の充電電位である4.2V以下で酸化分解してしまうと、電池特性が低下するため、アルカリ金属塩Xの酸化分解電位は、4.2Vを超えることが好ましい。アルカリ金属塩Xの酸化分解電位が4.2を超える場合であっても、通常の充電電位である4.2V以下で少量(例えば電解液中において0.001モル/L相当以上)は酸化分解されるので、負極の電位を下げる効果がある。
負極にアルカリ金属塩Xが含まれている場合には、負極に含まれるアルカリ金属塩Xの量は、負極活物質100重量部あたり、0.01重量部〜10重量部であることが好ましい。この場合、アルカリ金属塩Xは、非水電解液の非水溶媒に対する溶解度が0.10モル/L以下であることが好ましい。負極にアルカリ金属塩Xを含ませることによっても、負極の電位を下げることができ、非水電解液にアルカリ金属塩Xを溶解させた場合と同様の効果を得ることができる。
アルカリ金属塩Xは、式(1):
Figure 2005197058
(式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表される化合物であることが好ましい。
特に、式(1)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つはアラルキル基であり、残りは水素原子であることが好ましい。
ここで、式(1)で表される化合物に含まれるアルキル基の炭素数は1〜8、アルコキシル基の炭素数は1〜4であることが好ましい。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましく、特にメチル基およびtert−ブチル基が好ましい。また、アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。また、アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が好ましく、特にフェニル基が好ましい。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が好ましく、特にα−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
式(1)で表される化合物の具体例としては、3−メチルサリチル酸ジリチウム、4−メチルサリチル酸ジリチウム、5−メチルサリチル酸ジリチウム、4−tert−オクチルサリチル酸ジリチウム、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウム、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウム、3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸ジリチウム、3,5−ジ−メチルサリチル酸ジリチウム、3−クロロサリチル酸ジリチウム、4−クロロサリチル酸ジリチウム、5−フルオロサリチル酸ジリチウム、5−クロロサリチル酸ジリチウム、3,5−ジクロロサリチル酸ジリチウム、3,5,6−トリクロロサリチル酸ジリチウム、4−メトキシサリチル酸ジリチウム、5−ブロモサリチル酸ジリチウム、4−ヒドロキシ安息香酸ジリチウム、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ジリチウム、5−スルホサリチル酸ジリチウム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ金属塩Xを非水電解液に含ませる場合には、上記の中でも、特に、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムおよび3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸ジリチウムが特に好ましい。
また、負極にアルカリ金属塩Xを含ませる場合には、特に、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウム、5−スルホサリチル酸ジリチウムが好ましい。
また、本発明の非水電解液二次電池において、上記正極、負極および非水電解液よりなる群から選ばれる少なくとも1つが、アルカリ金属塩Yおよび/またはアルカリ金属塩Yの酸化分解生成物(成分B)ならびにアルカリ金属塩Zおよび/またはアルカリ金属塩Zの酸化分解生成物(成分C)よりなる群から選ばれる少なくとも1つをさらに含むことが好ましい。
本発明において用いられる上記アルカリ金属塩Yおよびアルカリ金属塩Zは、上記アルカリ金属塩Xの場合と同様に作用するものであり、アルカリ金属塩Xと、アルカリ金属塩Yおよびアルカリ金属塩Zよりなる群から選ばれる少なくとも1つとを併用することができる。この場合、アルカリ金属塩Xと、アルカリ金属Yおよびアルカリ金属Zよりなる群から選ばれる少なくとも1つとの合計の量は、非水電解液に含まれる場合には、0.001〜1.5モル/Lの範囲にあることが好ましく、負極に含まれる場合には、負極活物質100重量部あたり、0.01重量部〜10重量部の範囲にあることが好ましい。
上記アルカリ金属塩Yは、式(2):
Figure 2005197058
(式(2)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表される化合物であることが好ましい。
特に、式(2)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つはアラルキル基であり、残りは水素原子であることが好ましい。
ここで、式(2)で表される化合物に含まれるアルキル基の炭素数は1〜8、アルコキシル基の炭素数は1〜4であることが好ましい。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましく、特にメチル基およびtert−ブチル基が好ましい。また、アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。また、アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が好ましく、特にフェニル基が好ましい。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が好ましく、特にα−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
式(2)で表される化合物の具体例としては、3−メチルサリチル酸リチウム、4−メチルサリチル酸リチウム、5−メチルサリチル酸リチウム、4−tert−オクチルサリチル酸リチウム、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸リチウム、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸リチウム、3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸リチウム、3,5−ジ−メチルサリチル酸リチウム、3−クロロサリチル酸リチウム、4−クロロサリチル酸リチウム、5−フルオロサリチル酸リチウム、5−クロロサリチル酸リチウム、3,5−ジクロロサリチル酸リチウム、3,5,6−トリクロロサリチル酸リチウム、4−メトキシサリチル酸リチウム、5−ブロモサリチル酸リチウム、4−ヒドロキシ安息香酸リチウム、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸リチウム、5−スルホサリチル酸リチウム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記アルカリ金属塩Zとしては、式(3):
Figure 2005197058
(式(3)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表される化合物を好ましく用いることができる。
特に、式(3)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つはアラルキル基であり、残りは水素原子であることが好ましい。
ここで、式(3)で表される化合物に含まれるアルキル基の炭素数は1〜8、アルコキシル基の炭素数は1〜4であることが好ましい。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましく、特にメチル基およびtert−ブチル基が好ましい。また、アルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が好ましく、特にフェニル基が好ましい。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が好ましく、特にα−メチルベンジル基およびα,α−ジメチルベンジル基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
式(3)で表される化合物の具体例としては、ビスサリチルホウ酸リチウム、ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル)ホウ酸リチウム、ビス(3,5−ジ−メチルサリチル)ホウ酸リチウム、ビス(3,5−ジクロロサリチル)ホウ酸リチウム、ビス(3−メチルサリチル)ホウ酸リチウム、ビス(3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル)ホウ酸リチウム、ビス(3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル)ホウ酸リチウム、ビス(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ)ホウ酸リチウム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の中でも、非水電解液中に含有させるには、ビス(3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル)ホウ酸リチウム、ビス(3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル)ホウ酸リチウムなどが好ましく、負極に含有させるには、ビス(3,5−ジクロロサリチル)ホウ酸リチウム、ビス(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ)ホウ酸リチウムなどが特に好ましい。
非水電解液に用いる非水溶媒としては、従来から公知のものを使用することができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、γ−ブチロラクトン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、メチルブチルエーテル、ビニレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジメトキシプロパン、4−メチル−2−ペンタノン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、スルホラン、3−メチル−スルホラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。これらの非水溶媒は2種以上を混合して用いても良い。例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含む非水溶媒が好ましい。
非水電解液に含ませることができるアルカリ金属塩X、YおよびZ以外の溶質としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiBr、LiI、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiC(SO2CF33、LiC(SO2253、Li210Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでもLiPF6やLiBF4を用いることが好ましい。アルカリ金属塩X、YおよびZ以外の溶質の非水電解液中における濃度は、0.5〜1.5モル/Lであることが好ましい。
また、近年報告されている特開平10−265479号公報記載のリチウムビスナフタレンジオラトボレート、特表2000−516930号公報記載のリチウムビス[2,2’−ビフェニルジオラート(2−)−O,O’]ボレート(1−)等のリチウム錯体塩、特開2001−55396号公報記載のリチウムビス[5−フルオロ−2−オラト−ベンゼンスルフォナート(2−)O,O’]−ボレート(1−)等のリチウム錯体塩等もアルカリ金属塩X、YおよびZ以外の溶質として挙げることができる。これらは非水溶媒に対する溶解度が低いので、単独で用いることはできないが、非水電解液の溶質としてアルカリ金属塩X、Y、Zと併用して用いることができる。
非水電解液には、さらに、安定剤として、特開平10−64591号公報に開示されているアリールアルキルエーテル化合物やアリールアリールエーテル、特開平5−159787号公報に開示されている炭素−炭素三重結合を有するプロパギルアルコール等のアルコール、特開2001−256995号公報に開示されている活性水素を持たないアルキニル基および/またはアルキニレン基を有する酸素含有脂肪族化合物を含有させることもできる。アルキニル基を有する酸素含有脂肪族化合物の具体例としては、2−オクチン酸メチル、酢酸2−プロピニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジプロピニルエステル等を挙げることができる。また、アルキニレン基を有する酸素含有脂肪族化合物の具体例としては、アセチレンジカルボン酸ジエチルエステル等を挙げることができる。
正極は、例えば、普通のアルミニウム箔やラス加工もしくはエッチング処理されたアルミニウム箔からなる厚み10μm〜60μmの正極集電体の片面または両面に、正極ペーストを塗着し、乾燥し、圧延して正極活物質層を形成することにより作製される。正極ペーストは、正極活物質と、結着剤と、導電剤と、必要に応じて増粘剤とを、分散媒に分散させて調製される。正極には活物質層を有さない無地部を設け、ここに正極リードが溶接される。
正極活物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウムイオンをゲストとして受け入れ得るリチウム含有遷移金属化合物が使用される。例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムから選ばれる少なくとも1種の遷移金属と、リチウムとの複合金属酸化物が使用される。なかでもLixCoO2、LixMnO2、LixNiO2、LiCrO2、αLiFeO2、LiVO2、LixCoyNi1-y2、LixCoy1-yz、LixNi1-yyz、LixMn24、LixMn2-yy4 (ここで、M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、SbおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1種、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3)、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物のリチウム化物、ニオブ酸化物のリチウム化物等が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記のx値は充放電により増減する。正極活物質の平均粒径は、1μm〜30μmであることが好ましい。
正極ペーストに用いる結着剤、導電剤、必要に応じて添加できる増粘剤は、従来と同様のものを用いることができる。
結着剤としては、ペーストの分散媒に溶解または分散できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、フッ素系結着剤、アクリルゴム、変性アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリル系重合体、ポリアクリル酸塩ゴム、ビニル系重合体等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、フッ素系結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が好ましく、これらはディスパージョンとして用いることができる。
導電剤としては、アセチレンブラック、グラファイト、炭素繊維等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
増粘剤としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどが好ましい。
分散媒としては、結着剤が溶解可能なものが適切である。有機系結着剤を用いる場合は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルスルホルアミド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン等を単独または混合して用いることが好ましい。また、水系結着剤を用いる場合は、水や温水が好ましい。
正極活物質、結着剤、導電剤および必要に応じて加える増粘剤を分散媒に分散させて正極ペーストを作製する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ピンミキサー、ニーダー、ホモジナイザー等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、正極ペーストの混練分散時に、各種分散剤、界面活性剤、安定剤等を必要に応じて添加することも可能である。
正極ペーストは、例えば、スリットダイコーター、リバースロールコーター、リップコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ディップコーター等を用いて、正極集電体へ容易に塗着することができる。正極集電体に塗着された正極ペーストは、自然乾燥に近い乾燥を行うことが好ましいが、生産性を考慮すると、70℃〜200℃の温度で10分間〜5時間乾燥させるのが好ましい。
圧延は、ロールプレス機によって極板が所定の厚みになるまで、線圧1000〜2000kg/cmで数回を行うか、線圧を変えて圧延するのが好ましい。
負極は、例えば、普通の銅箔やラス加工もしくはエッチング処理された銅箔からなる厚み10μm〜50μmの負極集電体の片面または両面に、負極ペーストを塗着し、乾燥し、圧延して負極活物質層を形成することにより作製される。負極ペーストは、負極活物質と、結着剤と、必要に応じて導電剤と、増粘剤とを、分散媒に分散させて調製される。負極には活物質層を有さない無地部を設け、ここに負極リードが溶接される。
負極活物質としては、特に限定されるものではないが、充電・放電によりリチウムイオンを放出・吸蔵できる炭素材料を用いることが好ましい。例えば、有機高分子化合物(フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロース等)を焼成することにより得られる炭素材料、コークスやピッチを焼成することにより得られる炭素材料、人造黒鉛、天然黒鉛、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維等が好ましく、その形状としては、繊維状、球状、鱗片状、塊状のものを用いることができる。
結着剤、必要に応じて用いられる導電剤、増粘剤には、従来と同様のものを用いることができる。例えば、正極板と同様の結着剤、導電剤、増粘剤を用いることができる。
セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル(ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド)、セルロース(カルボキシメチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の高分子からなる微多孔フィルムが好ましく用いられる。また、これらの微多孔フィルムを重ね合わせた多層フィルムも用いられる。なかでもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン等からなる微多孔フィルムが好適であり、厚みは15μm〜30μmが好ましい。
電池ケースの材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼などを用いることができる。これらの材料に絞り加工、DI加工等を施して電池ケースの形状にすることができる。ケースの防蝕性を高めるために、加工後の電池ケースにメッキ処理を施しても良い。
本発明は、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型等の電池に適用することができるが、これらに限定されるものではない。また、本発明は、電気自動車等に用いる大型の電池にも適用できる。本発明の非水電解液二次電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などに用いることができるが、特にこれらの用途に限定されるものではない。
以下、本発明の詳細を実施例および比較例を挙げて説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。なお、以下の実施例および比較例では、図1に縦断面図で示すような円筒型リチウム二次電池(非水電解液は図示せず)を作製した。
図1において、正極板11と負極板12とがセパレータ13を介して渦巻状に捲回された極板群が、上部が開口している有底筒状の電池ケース18に収納されている。正極板11から引き出された正極リード14は、上部絶縁板16を介して、正極端子20に導通する封口体19の内部端子に電気的に接続されている。また、負極板12から引き出された負極リード15は、下部絶縁板17を介して、電池ケース18の底部と電気的に接続されている。電池ケース18の開口端部は、封口体19にかしめ加工されており、これにより電池ケース18の内部は密閉されている。
まず、以下の実施例および比較例で用いるアルカリ金属塩Xの合成方法について、合成例1および合成例2を挙げて説明する。なお、他のアルカリ金属塩Xは、合成例1または合成例2と同様にして合成することができる。
《合成例1》
式(1)で表される化合物の一例である3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムの合成例を示す。
容積1000mlの反応フラスコに3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸70gを投入し、トルエン500mlを加えてスラリー状にした。撹拌下、水素化リチウムをフラスコ内に加えて、その後、さらに攪拌した。ここで、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸と水素化リチウムとを、モル比で1:2とした。次いで、フラスコ内を減圧して溶媒を留去し、フラスコ内の内容物を濃縮乾固した。こうして3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムの白色固体を得た。
《合成例2》
式(1)で表される化合物の一例である3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの合成例を示す。
容積1000mlの反応フラスコに3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸68gを投入し、トルエン500mlを加えてスラリー状にした。撹拌下、リチウムメトキシドをフラスコ内に加えて、その後、さらに攪拌し反応させた。ここで、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸とリチウムメトキシドとを、モル比で1:2とした。次いで、フラスコ内の内容物を一旦濾過した後、減圧し溶媒を留去して濃縮乾固した。こうして3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの白色固体を得た。
(i)正極板の作製
正極活物質のコバルト酸リチウムを100重量部と、導電剤のアセチレンブラックを3重量部と、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(PVDF分12重量%)を33重量部と、分散媒のNMPを13重量部とを混練して、正極ペーストを調製した。この正極ペーストを、厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗着し、乾燥して、厚さ290μmの極板を作製した。この極板を、線圧1000kg/cmで3回圧延することにより、極板の厚さを180μmにした。こうして得られた正極板の無地部に正極リードをスポット溶接で取り付けた。
(ii)負極板の作製
負極活物質の人造塊状黒鉛を100重量部と、結着剤のPVDFのNMP溶液(PVDF分6重量%)を67重量部と、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムを0.005重量部と、分散媒のNMPを13重量部とを混練して、負極ペーストを作製した。この負極ペーストを、厚さ14μmの帯状の銅箔からなる集電体の両面に塗着し、乾燥して、厚さ300μmの極板を作製した。この極板を、線圧110kg/cmで3回圧延することにより、極板の厚さを196μmにした。こうして得られた負極板の無地部に負極リードをスポット溶接で取り付けた。
(iii)非水電解液の調製
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの等重量比の混合溶媒中に、溶質としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1.2モル/Lの濃度で溶解させて非水電解液を調製した。
(iv)電池の組立
得られた正極板と負極板とを、3層構造のセパレータを介して、渦巻状に捲回して、極板群を構成した。ここでは、3層構造のセパレータには、厚さ10μmのポリエチレン製微多孔フィルムおよびその両側に接する厚さ5μmのポリプロピレン製微多孔フィルムからなるセパレータを用いた。極板群を上部が開口している有底の電池ケース内に収納し、正極リードの端部を封口体の内部端子に接続した。また、負極リードの端部は、電池ケースの底部に接続した。極板群の上下には、それぞれ上部絶縁板および下部絶縁板を配した。なお、電池ケースには、厚さ1.0μmのニッケルメッキを施した厚さ0.3mmの鋼板を用いた。
次いで、電池ケース内に非水電解液を所定量注液した後、電池ケースを封口体で封口して、18650サイズで、電池容量が2000mAhの電池を完成した。得られた電池は、室温で4時間放置した後、電池電圧が4.2Vに達するまで400mA(0.2ItA)の定電流定電圧充電による初回充電を行った。
負極に含ませる3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、0.01重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の非水電解液二次電池を作製した。
負極に含ませる3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、0.5重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の非水電解液二次電池を作製した。
負極に含ませる3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、2.0重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の非水電解液二次電池を作製した。
負極に含ませる3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、5.0重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の非水電解液二次電池を作製した。
負極に含ませる3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、10重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の非水電解液二次電池を作製した。
負極に含ませる3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、15重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の非水電解液二次電池を作製した。
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムの代わりに、5−スルホサリチル酸ジリチウムを用い、負極に含ませるその量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、10.0重量部にしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の非水電解液二次電池を作製した。
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムと5−スルホサリチル酸ジリチウムとを併用し、負極に含ませるこれらの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、それぞれ3.0重量部と1.0重量部をとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例9の非水電解液二次電池を作製した。
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムとビス(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ)ホウ酸リチウムとを併用し、負極に含ませるこれらの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、それぞれ3.0重量部と1.0重量部をとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例10の非水電解液二次電池を作製した。
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムとビス(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ)ホウ酸リチウムとを併用し、負極に含ませるこれらの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、それぞれ2.0重量部と2.0重量部をとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例11の非水電解液二次電池を作製した。
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムとビス(1,1−ジフェニル−1−オキソ−アセチル)ホウ酸リチウムとを併用し、負極に含ませるこれらの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、それぞれ3.0重量部と1.0重量部をとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例12の非水電解液二次電池を作製した。
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムと3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸リチウムとを併用し、負極に含ませるこれらの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、それぞれ3.0重量部と1.0重量部をとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例13の非水電解液二次電池を作製した。
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムと3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸リチウムとを併用し、負極に含ませるこれらの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、それぞれ2.0重量部と2.0重量部をとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例14の非水電解液二次電池を作製した。
負極に含ませる3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸リチウムの量を、負極活物質の人造塊状黒鉛100重量部あたり、3.0重量部に変更し、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムを正極活物質100重量部対して、1.0重量部含ませた正極板を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例15の非水電解液二次電池を作製した。
比較例1
負極板中に3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムを含有させなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の非水電解液二次電池を作製した。
(i)正極板の作製
正極活物質のコバルト酸リチウムを100重量部と、導電剤のアセチレンブラックを3重量部と、結着剤のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のディスパージョンをPTFE分で4重量部と、増粘剤のカルボキシメチルセルロースを0.8重量部と、適量の水とを混練して、正極ペーストを作製した。この正極ペーストを、厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗着し、乾燥して、厚さ290μmの極板を作製した。この極板を、線圧1000kg/cmで3回圧延することにより、極板の厚さを180μmにした。こうして得られた正極板の無地部に正極リードをスポット溶接で取り付けた。
(ii)負極板の作製
負極活物質の鱗片状黒鉛100重量部と、結着剤のスチレンブタジエンゴム(SBR)の水溶性ディスパージョンをSBR分で4重量部と、増粘剤のカルボキシメチルセルロースを0.8重量部と、適量の水とを混練して、負極ペーストを作製した。この負極ペーストを、厚さ14μmの帯状の銅箔からなる集電体の両面に塗着し、乾燥して、厚さ300μmの極板を作製した。この極板を、線圧110kg/cmで3回圧延することにより、極板の厚さを196μmにした。こうして得られた負極板の無地部に負極リードをスポット溶接で取り付けた。
(iii)非水電解液の調製
エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジエチルカーボネートとの重量比4:5:2の混合溶媒中に、溶質として3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムを0.1モル/L、およびヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1.2モル/Lの濃度でそれぞれ溶解させて非水電解液を調製した。
(iv)電池の組立
得られた正極板と負極板とを、2層構造のセパレータを介して、渦巻状に捲回して、極板群を構成した。ここでは、2層構造のセパレータには、厚さ10μmのポリエチレン製微多孔フィルムおよびその片側に接する厚さ10μmのポリプロピレン製微多孔フィルムからなるセパレータを用いた。
この極板群を用い、上記の非水電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様の18650サイズで電池容量が2000mAhの電池を完成した。得られた電池は、室温で4時間放置した後、電池電圧が4.2Vに達するまで400mA(0.2ItA)の定電流定電圧充電による初回充電を行った。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.5モル/Lに変更したこと以外は、実施例16と同様にして実施例17の非水電解液二次電池を作製した。
3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの代わりに、非水電解液中に3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸ジリチウムを濃度0.0005モル/Lで含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例18の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.001モル/Lに変更したこと以外は、実施例18と同様にして実施例19の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.05モル/Lに変更したこと以外は、実施例18と同様にして実施例20の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.2モル/Lに変更したこと以外は、実施例18と同様にして実施例21の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.5モル/Lに変更したこと以外は、実施例18と同様にして実施例22の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を1.5モル/Lに変更したこと以外は、実施例18と同様にして実施例23の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を2.0モル/Lに変更したこと以外は、実施例18と同様にして実施例24の非水電解液二次電池を作製した。
3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの代わりに、非水電解液中に4−メトキシサリチル酸ジリチウムを0.2モル/Lの濃度で含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例25の非水電解液二次電池を作製した。
3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの代わりに、非水電解液中に3,5−ジクロロサリチル酸ジリチウムを0.2モル/Lの濃度で含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例26の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらに4−メトキシサリチル酸ジリチウムを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例27の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらに3,5−ジクロロサリチル酸ジリチウムを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例28の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらにビス(3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル)ホウ酸リチウムを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例29の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらにビスサリチルホウ酸リチウムを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例30の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらにビス(3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル)ホウ酸リチウムを0.1モル/Lとビスサリチルホウ酸リチウムを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例31の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらに3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸リチウムを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例32の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらに4−メトキシサリチル酸リチウムを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例33の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらに3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸リチウムを0.1モル/Lと3,5−ジクロロサリチル酸リチウムを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例34の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらに負極板中に3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸ジリチウムを負極活物質100重量部あたり1.0重量部含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例35の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらに3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸リチウムを0.1モル/Lとビス(3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル)ホウ酸リチウムを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例36の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらにリチウムビスナフタレンジオラトボレートを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例37の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらにリチウムビス[2,2’−ビフェニルジオラート(2−)−O,O’]ボレート(1−)を0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例38の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらにリチウムビス[5−フルオロ−2−オラト−ベンゼンスルフォナート(2−)O,O’]−ボレート(1−)を0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例39の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらに有機イソシアネートを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例40の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらにアリールアルキルエーテル化合物を0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例41の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらにプロパギルアルコールを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例42の非水電解液二次電池を作製した。
非水電解液中における3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウムの濃度を0.1モル/Lに変更し、さらにプロピオン酸エチルを0.1モル/Lの濃度で非水電解液に含有させたこと以外は、実施例16と同様にして実施例43の非水電解液二次電池を作製した。
[評価]
このようにして作製した実施例1〜実施例43および比較例1の非水電解液二次電池を各20個ずつ用いて、深放電状態の負極の対Li電位、ケースの腐蝕比率、容量回復率および充放電サイクル特性を評価した。
(i)負極の対Li電位
エージング終了後の電池を、電池電圧が4.2Vに達するまでは1400mA(0.7ItA)の定電流で充電し、次いで、電流値が減衰して100mA(0.05ItA)になるまで定電圧で充電した。次いで、2000mA(1.0ItA)の定電流で、3.0Vの放電終止電圧まで電池を放電した後、1KΩの定抵抗を接続して60℃環境下で50日間放置した。次いで抵抗を電池から取り外し、電池ケースの底を円盤状に切り取った。そして、参照電極を電池群の巻き芯部の筒状スペースに差し込んで接液させ、それを基準に負極の対Li電位を測定した。そして20個の電池の負極の対Li電位の平均値を求めた。
なお、参照電極はポリテトラフルオロエチレン製のチューブ中に白金線とリチウムホイルを挿入して作製した。
(ii)ケースの腐蝕比率
上記負極の対Li電位の測定と同様に深放電させた電池において、ケースが腐蝕しているか、目視による外観検査を行った。20個の電池のうち腐蝕のあった電池数をnとし、腐蝕比率はn/20で表した。
(iii)容量回復率
まず、エージング終了後の電池を、電池電圧が4.2Vに達するまでは1400mA(0.7ItA)の定電流で充電し、次いで、電流値が減衰して100mA(0.05ItA)になるまで定電圧で充電した。次いで、2000mA(1.0ItA)の定電流で、3.0Vの放電終止電圧まで放電したときの初期容量を求めた。次いで、1KΩの定抵抗を電池に接続して60℃環境下で50日間放置した。
次いで、抵抗を電池から取り外し、初期容量を求めた場合と同じ充放電条件で、深放電後の容量を求めた。初期容量を100%としたときの深放電後の容量の比率を容量回復率とした。そして20個の電池の容量回復率の平均値を求めた。
(iv)充放電サイクル特性
電池電圧が4.2Vに達するまでは1400mA(0.7ItA)の定電流充電を行い、次いで電流値が減衰して100mA(0.05ItA)になるまで定電圧充電した後、2000mA(1.0ItA)の定電流で3.0Vの放電終止電圧まで放電するという充放電サイクルを行った。この充放電サイクルを、20℃の環境下で、500サイクル繰り返し、3サイクル目を100%とした場合の500サイクル目の容量の比率を、容量維持率として求めた。そして20個の電池の容量維持率の平均値を求めた。
得られた結果を表1〜3に示す。
Figure 2005197058
Figure 2005197058
Figure 2005197058
表1〜3の内容について説明する。
実施例1〜14では、アルカリ金属塩X単独、アルカリ金属塩Xとアルカリ金属塩Yとが、あるいはアルカリ金属塩Xとアルカリ金属塩Zとが、負極に含まれている。
実施例15では、アルカリ金属塩Xが、正極と負極の両方に含まれている。
実施例16〜34および実施例36〜43では、アルカリ金属塩X単独、あるいはアルカリ金属塩Xとアルカリ金属塩Yおよびアルカリ金属塩Zよりなる群から選ばれる少なくとも1つとが、非水電解液に含まれている。
実施例35では、アルカリ金属塩Xが、負極と非水電解液の両方に含まれている。
一方、比較例1では、アルカリ金属塩Xが、正極、負極および非水電解液のいずれにも含まれていない。
まず、深放電特性の評価項目として、深放電時(電圧0V時)の負極電位(この場合、負極電位と正極電位とは等しい)を対Li電位として示しているが、比較例1の負極の対Li電位に比べ、各実施例の負極の対Li電位は低くなっている。
また、各実施例では、評価第二項目のケース腐蝕比率も良好な結果が得られている。
本実施例の電池ケースは、ニッケルメッキを施した鋼板からなり、非水電解液二次電池では一般に用いられるものである。電池ケース成形時、または溝入れ後封口体を電池ケースの拡口部でカシメ封口する時に、電池ケースに対して強い応力が集中するため、ニッケルメッキ強度が部分的に弱められることがある。前記電池ケースの母材である鋼板はFeからなり、実施例中のLiPF6を主溶質とした非水電解液においては、Feは、約3.0〜3.1V(vs Li+/Li)付近から溶解をはじめる。一方、ニッケルは、3.6V(vs Li+/Li)付近から溶解し始める。つまり、Feの方がより卑な電位で溶解するため、深放電時の負極電位を、Feの溶解電位よりも低くすることにより、電池ケースの腐食を抑制することができる。
上記実施例において、負極にアルカリ金属塩X(実施例ではLi塩)が混在する場合は、結果的に負極中に存在するリチウム量が増大することになる。すなわち、負極のリテンション(不可逆容量)分の容量を補填することになる。従って、電池電圧0Vまで深放電した場合の負極単極電位がより卑な側にシフトし、ケースに含まれるFeの溶解電位に到達しないため、防食効果を発現しているものと考えられる。
正極中または電解液中にアルカリ金属塩X(実施例では、Li塩)が混在する場合は、充電過程で前記アルカリ金属塩Xが酸化分解されて、酸化分解生成物が生成される。このとき、Liイオンと電子とが放出され、負極側でLiイオンの吸蔵反応が生じる。また、前記酸化分解生成物は、正極上に付着した抵抗皮膜として存在するか、または電解液中で安定な物質として存在すると考えられる。その結果、正極上に付着した場合には、前記酸化分解生成物は、正極において、電池反応的に安定なリテンション(不可逆容量)となっていると考えられる。
すなわち、電池電圧0Vまで深放電した場合に、正極側ではリテンション量(不可逆容量)の増大により容量が減少するのに対し、負極側ではアルカリ金属塩Xから放出されたLiの吸蔵反応により容量が増大する。このため、結果的に電池容量を損なうことなく、電池電圧0V時の負極電位(=正極電位)をより卑な側にシフトせしめ、故に前述の通り、防食効果を発現しているものと考えられる。
実施例1〜7および実施例16〜24からは、アルカリ金属塩Xの量を増やすことにより、電池電圧0V時の負極電位(対Li電位)を低い側にシフトさせる効果が大きくなること、つまり、電池ケースの防蝕効果が向上することがわかる。この結果は、アルカリ金属塩Xの負極混在によること自体が、負極へのLi吸蔵と同様の意味合いを持つことや、酸化分解によってアルカリ金属塩Xから放出されたLiの負極における吸蔵反応により、負極容量が増大する効果がより顕著となっているためである。
また、実施例16〜43からは、非水電解液の溶質(電解質)として、アルカリ金属塩Xを、アルカリ金属塩Yおよびアルカリ金属塩Zよりなる群から選ばれる少なくとも1つと併用することができるし、あるいはLiPF6などの従来の溶質(電解質)と併用することもできることがわかる。また、アルカリ金属塩Xを単独で用いることができることもわかる。特に、アルカリ金属塩Xを単独で用いた場合には、アルカリ金属塩Xは、溶質(電解質)として機能すると同時に、深放電特性を向上させる作用を有する。
ところで、実施例16で用いた3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸ジリチウム、実施例25で用いた4−メトキシサリチル酸ジリチウムおよび実施例26で用いた3,5−ジクロロサリチル酸ジリチウムは、非水電解液中に1.5モル/L以上混在させることができる。また、これらは、それぞれ、3.8V、3.7V、および3.9Vの酸化分解電位を有する。正極コバルト酸リチウム/負極黒鉛系のリチウムイオン電池の場合、充電深度100%は4.2Vであり、前記アルカリ金属塩の酸化分解電位以上であるため、これらの金属塩を単独で用いることは困難である。しかし、例えば、酸化分解電位が4.1Vである3,5−ジクロロサリチル酸ジリチウム単独を、充電深度80%(3.98V)以下で使用される電動自動車の用途に適用する場合には何ら問題はない。
実施例1〜7からは、負極に含ませるアルカリ金属塩Xの含有量が、負極活物質100重量部あたり0.01重量部未満では効果が小さく、10重量部を超えてもメリットがないことがわかる。電極中でのアルカリ金属塩Xの含有量が、負極活物質100重量部あたり10重量部を超えると、負極側の抵抗成分が大きくなり、電池反応を阻害するため、深放電後の回復性や充放電サイクル特性においてメリットが生じないものと考えられる。
実施例18〜24からは、非水電解液中のアルカリ金属塩Xの濃度が、0.001モル/L未満の場合には、効果が小さく、1.5モル/Lを超えてもメリットがないことがわかる。非水電解液中でのアルカリ金属塩Xの濃度が高くなると、正極側の抵抗成分が大きくなり、電池反応を阻害するために、深放電後の回復性や充放電サイクル特性においてメリットが生じないものと考えられる。
本発明によれば、深放電に至っても電池ケースの腐蝕がなく、容量回復率に優れ、充放電サイクル特性にも優れた非水電解液二次電池およびこれに用いる非水電解液を提供することができる。
本発明の実施例および比較例で作製した非水電解液二次電池の縦断面図である。
符号の説明
11 正極板
12 負極板
13 セパレータ
14 正極リード
15 負極リード
16 上部絶縁板
17 下部絶縁板
18 電池ケース
19 封口体
20 正極端子

Claims (19)

  1. 正極、負極、前記正極と負極との間に介在するセパレータおよび非水電解液からなり、
    前記正極、前記負極および前記非水電解液よりなる群から選ばれる少なくとも1つが、成分A:アルカリ金属塩Xおよび/または前記アルカリ金属塩Xの酸化分解生成物を含み、
    前記アルカリ金属塩Xが、式(1):
    Figure 2005197058
    (式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表される非水電解液二次電池。
  2. 式(1)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子である請求項1記載の非水電解液二次電池。
  3. 前記成分Aが、少なくとも負極に含まれており、前記成分Aの量が負極活物質100重量部あたり0.01重量部〜10重量部である請求項1記載の非水電解液二次電池。
  4. 前記正極、前記負極および前記非水電解液よりなる群から選ばれる少なくとも1つが、成分B:アルカリ金属塩Yおよび/または前記アルカリ金属塩Yの酸化分解生成物ならびに成分C:アルカリ金属塩Zおよび/または前記アルカリ金属塩Zの酸化分解生成物よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、
    前記アルカリ金属塩YまたはZの酸化分解電位が、Li電位:Li+/Liに対して3.2V〜4.3Vである請求項1記載の非水電解液二次電池。
  5. 前記アルカリ金属塩Yが、式(2):
    Figure 2005197058
    (式(2)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表される請求項4記載の非水電解液二次電池。
  6. 式(2)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子である請求項5記載の非水電解液二次電池。
  7. 前記負極が、前記成分Aおよび前記成分Bの両方を含み、これらの合計が、負極活物質100重量部あたり0.01重量部〜10重量部である請求項4記載の非水電解液二次電池。
  8. 前記アルカリ金属塩Zが、式(3):
    Figure 2005197058
    (式(3)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表される請求項4記載の非水電解液二次電池。
  9. 式(3)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子である請求項8記載の非水電解液二次電池。
  10. 前記負極が、前記成分Aおよび前記成分Cの両方を含み、これらの合計が、負極活物質100重量部あたり0.01重量部〜10重量部である請求項4記載の非水電解液二次電池。
  11. 非水溶媒および前記非水溶媒に溶解したアルカリ金属塩Xからなり、前記アルカリ金属塩Xが、式(1):
    Figure 2005197058
    (式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表される非水電解液。
  12. 式(1)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子である請求項11記載の非水電解液。
  13. 前記非水溶媒が、さらにアルカリ金属塩Yおよびアルカリ金属塩Zよりなる群から選ばれた少なくとも1つを溶解しており、
    前記アルカリ金属塩YまたはZの酸化分解電位が、Li電位:Li+/Liに対して3.2V〜4.3Vである請求項11記載の非水電解液。
  14. 前記アルカリ金属塩Yが、式(2):
    Figure 2005197058
    (式(2)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い。また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。)で表される請求項13記載の非水電解液。
  15. 式(2)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子である請求項14記載の非水電解液。
  16. 前記アルカリ金属塩Zが、式(3):
    Figure 2005197058
    (式(3)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、スルホ基、アラルキル基またはハロゲン原子を示し、隣接する2つが結合して環構造を形成していても良い、また、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である)で表される請求項13記載の非水電解液。
  17. 式(3)中のR1、R2、R3およびR4よりなる群から選ばれる少なくとも1つがアラルキル基であり、残りが水素原子である請求項16記載の非水電解液。
  18. 前記アルカリ金属塩Xの濃度が、0.001モル/L〜1.5モル/Lである請求項11記載の非水電解液。
  19. 前記アルカリ金属塩Xと、前記アルカリ金属塩Yおよび前記アルカリ金属塩Zよりなる群から選ばれる少なくとも1つとの合計濃度が、0.001モル/L〜1.5モル/Lである請求項13記載の非水電解液。
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