JP2005196981A - 燃料極支持膜式燃料電池中間体及びそれを用いた固体電解質形燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の燃料極支持膜式燃料電池中間体は、未焼成燃料極基板11(酸化ニッケルと、希土類元素により安定化されたジルコニアとを含有する。)と、この未焼成燃料極基板11に積層された未焼成固体電解質層12(希土類元素により安定化されたジルコニア等からなる。)とを備え、未焼成燃料極基板11は、支持材に接した状態で形成された一面と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面とを有し、この他面に、未焼成固体電解質層12が設けられている。また、本発明の固体電解質形燃料電池の製造方法は、未焼成燃料極基板11と、未焼成固体電解質12とを同時焼成し、その後、この同時焼成より低い温度で未焼成空気極層を焼成することで空気極層を形成することを特徴とする。
【選択図】 図6
Description
1.未焼成燃料極基板11と、該未焼成燃料極基板11に積層された未焼成固体電解質層12とを備える燃料極支持膜式燃料電池中間体において、該未焼成燃料極基板11は、支持材2に接した状態で形成された一面111と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面112とを有し、該他面112に、該未焼成固体電解質層12が設けられていることを特徴とする燃料極支持膜式燃料電池中間体。
2.上記未焼成燃料極基板11は、酸化ニッケルと、希土類元素により安定化されたジルコニアとを含有する上記1.に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
3.上記未焼成固体電解質層12は、支持材2に接した状態で形成された一面121と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面122とを有し、該他面122と、上記未焼成燃料極基板11の上記他面112とが接するように積層された上記1.又は2.に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
4.上記未焼成燃料極基板11は、複数の未焼成燃料極基板用シート113が積層されてなり、各々の該未焼成燃料極基板用シート113は、支持材2に接した状態で形成された一面1131と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面1132とを有し、それぞれの未焼成燃料極基板用シート113の上記一面1131同士及び上記他面1132同士が交互に接して積層されて該未焼成燃料極基板11が形成されている上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
5.上記未焼成固体電解質層12の厚さが1〜50μmである上記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
6.上記未焼成燃料極基板11の厚さが、上記未焼成固体電解質層12の厚さの50倍以上である上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
7.上記未焼成固体電解質層12の表面に、更に未焼成反応防止層13が設けられた上記1.乃至6.のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
8.上記未焼成反応防止層13が、Ce1−xLnxO2−δ(Lnは希土類元素であり、0.05≦x≦0.3である。)からなる上記7.に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
9.上記未焼成反応防止層13の厚さが1〜20μmである上記7.又は8.に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
10.上記未焼成燃料極基板11の厚さが、上記未焼成固体電解質層12の厚さと、上記未焼成反応防止層13の厚さとの合計厚さの50倍以上である上記7.乃至9.のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
11.上記1.乃至6.のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体を用いた固体電解質形燃料電池の製造方法であって、上記未焼成燃料極基板11と、上記未焼成固体電解質層12とを同時焼成する同時焼成工程、該未焼成固体電解質層12が焼成されてなる固体電解質層32の表面に未焼成空気極層14を設ける未焼成空気極層形成工程、該未焼成空気極層14を、該同時焼成の温度より低温で焼成して空気極層34を形成する空気極層形成工程、を備えることを特徴とする固体電解質形燃料電池の製造方法。
12.上記7.乃至10.のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体を用いた固体電解質形燃料電池の製造方法であって、上記未焼成燃料極基板11と、上記未焼成固体電解質層12と、上記未焼成反応防止層13とを同時焼成する同時焼成工程、該未焼成反応防止層13が焼成されてなる反応防止層33の表面に未焼成空気極層14を設ける未焼成空気極層形成工程、該未焼成空気極層14を、該同時焼成の温度より低温で焼成して空気極層34を形成する空気極層形成工程、を備えることを特徴とする固体電解質形燃料電池の製造方法。
また、未焼成燃料極基板が、酸化ニッケルと、YSZ等の希土類元素により安定化されたジルコニアとを含有する場合は、より高性能なSOFCとすることができる。
更に、未焼成固体電解質層は、支持材に接した状態で形成された一面と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面とを有し、この他面と、未焼成燃料極基板の他面とが接するように積層された場合は、未焼成燃料極基板と、未焼成固体電解質層との接触面積が更に大きくなり、より高性能なSOFCとすることができる。
また、未焼成燃料極基板は、複数の未焼成燃料極基板用シートが積層されてなり、各々の未焼成燃料極基板用シートは、支持材に接した状態で形成された一面と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面とを有し、それぞれの未焼成燃料極基板用シートの一面同士及び他面同士が交互に接して積層されて未焼成燃料極基板が形成されている場合は、未焼成燃料極基板を焼成したときに、セラミック粒子等の厚さ方向の濃度分布に起因する反り及び歪等を防止することができる。そのため、反り等を修復するための再焼成も不要となり、燃料極基板が過度に緻密化され、ガス拡散性が低下することによる発電性能の低下を抑えることができる。
更に、未焼成固体電解質層の厚さが1〜50μmである場合は、焼成後の固体電解質層等における反りなどの発生が防止され、且つ均質な固体電解質層とすることができる。
また、未焼成燃料極基板の厚さが、未焼成固体電解質層の厚さの50倍以上である場合は、未焼成燃料極基板と未焼成固体電解質層との焼成時の収縮率の差に起因する反りの発生を抑えることができる。
更に、未焼成固体電解質層の表面に、更に未焼成反応防止層が設けられた場合は、固体電解質層と空気極層との界面における抵抗の高い反応相の生成を抑えることができ、優れた発電性能を維持することができる。
また、未焼成反応防止層が、Ce1−xLnxO2−δ(Lnは希土類元素であり、0.05≦x≦0.3である。)からなる場合は、形成される反応防止層のイオン伝導性が高く、且つ未焼成空気極層を焼成する際の、反応防止層と未焼成空気極層との反応性が低いため、抵抗の高い反応相の生成を十分に抑えることができる。
更に、未焼成反応防止層の厚さが1〜20μmである場合は、未焼成空気極層を焼成する際の、固体電解質層と未焼成空気極層との反応を十分に抑えることができ、且つ反応防止層の電気抵抗が過度に大きくならず、発電性能が低下することがない。
また、未焼成燃料極基板の厚さが、未焼成固体電解質層の厚さと、未焼成反応防止層の厚さとの合計厚さの50倍以上である場合は、未焼成燃料極基板と、未焼成固体電解質層及び未焼成反応防止層の各々との焼成時の収縮率の差に起因する反り等の発生を抑えることができる。
更に、未焼成燃料極基板と、未焼成固体電解質層とを同時焼成し、未焼成固体電解質層が焼成されてなる固体電解質層の表面に、同時焼成の温度より低温で焼成することで空気極層が形成される本発明の固体電解質形燃料電池の製造方法、及び未焼成燃料極基板と、未焼成固体電解質層と、未焼成反応防止層とを同時焼成し、未焼成反応防止層が焼成されてなる反応防止層の表面に、同時焼成の温度より低温で焼成することで空気極層が形成される本発明の他の固体電解質形燃料電池の製造方法では、燃料極基板及び空気極層がともにガス拡散が容易な多孔体となり、優れた発電性能を備える固体電解質形燃料電池とすることができる。
[1]燃料極支持膜式燃料電池中間体
上記「燃料極支持膜式燃料電池中間体」は、図7(中間体102)のように、未焼成燃料極基板11と、この未焼成燃料極基板11に積層された未焼成固体電解質層12と、を備える。
また、図6(中間体101)のように、未焼成燃料極基板11と、この未焼成燃料極基板11に積層された未焼成固体電解質層12と、この未焼成固体電解質層12に積層された未焼成反応防止層13と、を備える。
上記「未焼成燃料極基板11」は、所定厚さの未焼成燃料極基板11として形成されたものでもよく、複数の未焼成燃料極基板用シート113を所定厚さの未焼成燃料極基板11となるように所要枚数積層したものでもよい。所定厚さの未焼成燃料極基板11及び未焼成燃料極基板用シート113は、いずれも支持材2(未焼成燃料極基板11の場合の図1及び未焼成燃料極基板用シート113の場合の図2参照)の表面においてガス雰囲気下に形成される。従って、所定厚さの未焼成燃料極基板11は、支持材2に接した状態で形成された一面111と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面112とを有する。また、未焼成燃料極基板用シート113は、支持材2に接した状態で形成された一面1131と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面1132とを有する。
尚、この平滑面とは、三次元表面構造解析顕微鏡、走査型レーザー顕微鏡、電子線表面形態解析装置等の光学式表面粗さ測定器、及び触針式表面粗さ計等の接触式表面粗さ測定器などを用いて測定した表面粗さ(算術平均高さRa)が3μm以下、特に1〜3μmである面であることを意味する。
尚、この凹凸面とは、三次元表面構造解析顕微鏡、走査型レーザー顕微鏡、電子線表面形態解析装置等の光学式表面粗さ測定器、及び触針式表面粗さ計等の接触式表面粗さ測定器などを用いて測定した表面粗さ(算術平均高さRa)が3μmを越える、特に3μmを越え、8μm以下である、更に4〜7μmである面であることを意味する。
以下、固体電解質形燃料電池の製造について、その一例の断面を示す模式図である図10及び図11を用いて説明する。
図11の、反応防止層33を有さない固体電解質形燃料電池302の製造方法は、未焼成燃料極基板11と、未焼成固体電解質層12とを同時焼成する同時焼成工程、未焼成固体電解質層12が焼成されてなる固体電解質層32の表面に未焼成空気極層14を設ける未焼成空気極層形成工程(図9参照)、未焼成空気極層14を、同時焼成の温度より低温で焼成して空気極層34を形成する空気極層形成工程、を備える。
また、図10の、反応防止層33を有する固体電解質形燃料電池301の製造方法は、未焼成燃料極基板11と、未焼成固体電解質層12と、未焼成反応防止層13とを同時焼成する同時焼成工程、未焼成反応防止層13が焼成されてなる反応防止層33の表面に未焼成空気極層14を設ける未焼成空気極層形成工程(図8参照)、未焼成空気極層14を、同時焼成の温度より低温で焼成して空気極層34を形成する空気極層形成工程、を備える。
尚、焼成温度を保持する時間は、焼成温度にもよるが、30分〜5時間、特に30分〜3時間とすることができる。また、焼成雰囲気は特に限定されず、大気雰囲気、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気等とすることができる。
尚、焼成温度を保持する時間は、焼成温度にもよるが、30分〜5時間、特に30分〜3時間とすることができる。また、焼成雰囲気は特に限定されず、大気雰囲気、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気等とすることができる。
固体電解質形燃料電池は、複数のSOFCが積層されてなるスタック構造(以下、「SOFCスタック」という。)とすることもできる。このSOFCスタックは種々の構造を有するものとすることができ、例えば、図12及び図13のようなSOFCスタック303、304とすることができる。これらのSOFCスタックは、隣り合う各々のSOFC301、302の、燃料極基板31に燃料ガスを導入する流路を有する金属セパレータ351と、空気極層34に支燃性ガスを導入する流路を有する金属セパレータ352とが、それぞれ接して積層されて形成されている。
固体電解質形燃料電池を用いて発電する場合、燃料極基板側には燃料ガスを導入し、空気極層側には支燃性ガスを導入する。燃料ガスとしては、水素、水素源となる炭化水素、水素と炭化水素との混合ガス、必要に応じて所定温度の水中を通過させた加湿燃料ガス、水蒸気を混合した水蒸気混合燃料ガス及びメタノール等のアルコール類等が挙げられる。炭化水素は特に限定されず、例えば、天然ガス、ナフサ、石炭ガス化ガス等を用いることができる。更に、炭素数が1〜10、特に1〜7、更に1〜4である飽和炭化水素(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン及びペンタン等)及び不飽和炭化水素(例えば、エチレン及びプロピレン等)を主成分とするものが好ましく、これらのうちでは飽和炭化水素を主成分とするものが特に好ましい。また、燃料ガスは、窒素及びヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを50体積%以下含有するものであってもよい。
[1]燃料極支持膜式燃料電池中間体の作製
(1)未焼成燃料極基板用シートの作製
酸化ニッケル(NiO)粉末60質量部と、8モル%のイットリアが固溶されたジルコニア(以下、「8YSZ」という。)粉末40質量部とを混合した。その後、造孔材として30質量部の人造黒鉛粉末を配合し、更に混合した。次いで、分散剤として1質量部のジエチルアミン、及び有機溶媒(トルエンとメチルエチルケトンとを質量比で2:3の割合で混合した溶媒)35質量部を配合し、アルミナ製ポットミルを用いて24時間混合した。その後、可塑剤としてジブチルフタレートを7質量部、バインダとしてポリビニルアルコールを16質量部配合し、更に3時間混合してスラリーを調製した。次いで、このスラリーを用いてドクターブレード法によりポリエステルフィルム上で厚さ200μmの未焼成燃料極基板用シート113を8枚作製した。尚、この未焼成燃料極基板用シート113の作製時、支持材(ポリエステルフィルム)2と接していた側(平滑面)を、以下「平滑面側」といい、大気と接していた側(凹凸面)を、以下「凹凸面側」という。また、前記の方法により測定した凹凸面側の表面粗さ(算術平均高さRa)は5μmであり、平滑面側の表面粗さ(算術平均高さRa)は2μmであった。
上記(1)で作製した未焼成燃料極基板用シート113を8枚用いて、以下の(A)及び(B)の方法により積層した。
(A)8枚の未焼成燃料極基板用シートの各々を、隣り合うシートの一方のシートの平滑面側と、他方のシートの凹凸面側とが接するようにして積層し、圧着した。この場合、形成される未焼成燃料極基板の一方の面(他面)は凹凸面となり、他方の面(一面)は平滑面となる。実施例1、3、5及び7では、この未焼成燃料極基板の凹凸面に未焼成固体電解質層を設けた。また、比較例1、2では、この未焼成燃料極基板の平滑面に未焼成固体電解質層を設けた。
(B)8枚の未焼成燃料極基板用シートの各々を、隣り合うシートの一方のシートと他方のシートのそれぞれの平滑面側同士、又は凹凸面側同士が交互に接するようにし、且つ形成される未焼成燃料極基板の一面及び他面がともに凹凸面となるようにして積層し、圧着した(実施例2、4、6及び8で用いた。)。
上記(2)で作製した未焼成燃料極基板11の表面に、以下の(a)及び(b)の方法により未焼成固体電解質層12を形成した。また、以下の(c)の方法により未焼成反応防止層13を形成した。
(a)未焼成固体電解質層をスクリーン印刷により形成した(実施例1、2、5及び6、比較例1、2で用いた。)。
8YSZ粉末100質量部、バインダとしてポリビニルアルコール20質量部及びブチルカルビトール35質量部を混合し、未焼成固体電解質層用のスラリーを調製した。その後、このスラリーを、上記(2)において作製した未焼成燃料極基板11から切り出した縦30mm×横30mm×厚さ1500μmの寸法の試験体の凹凸面(実施例1、2、5及び6)又は平滑面(比較例1、2)に厚さ25μmとなるようにスクリーン印刷し、未焼成固体電解質層12を形成した。
8YSZ粉末100質量部、分散剤としてジエチルアミン1質量部、有機溶媒(トルエンとメチルエチルケトンとを質量比で2:3の割合で混合した溶媒)35質量部を、アルミナ製ポットミルを用いて24時間混合した。その後、可塑剤としてジブチルフタレート7質量部、及びバインダとしてポリビニルアルコール20質量部を配合し、更に3時間混合し、スラリーを調製した。次いで、このスラリーを用いてポリエステルフィルム上にドクターブレード法により厚さ25μmの未焼成固体電解質層用シートを作製した。その後、(2)、(A)、(B)で作製した未焼成燃料極基板11の凹凸面に、未焼成固体電解質層用シートを、その大気と接した状態で形成された面を対向させて積層し、圧着した。次いで、縦30mm×横30mmの試験体を切り出し、各々の試験体の未焼成固体電解質層用シートからポリエステルフィルムを剥離した。
上記(a)、(b)で作製された燃料極支持膜式燃料電池中間体の未焼成固体電解質層12の表面に、縦15mm×横15mm×厚さ3μmの未焼成反応防止層13をスクリーン印刷により形成した。
未焼成反応防止層13は、サマリアをドープしたセリア[Sm0.2Ce0.8O1.9(以下、「SDC」という。)を含有するスラリーを用いて、スクリーン印刷法により形成した。このスラリーは、所定量の酸化サマリウム粉末と酸化セリウム粉末とを使用し、エタノールを溶媒として湿式混合した後、1400℃で6時間保持し、仮焼してSDC粒状体とし、その後、エタノールを溶媒として湿式粉砕して平均粒径0.6μmのSDC粉末とし、次いで、このSDC粉末100質量部に、バインダとしてポリビニルアルコール13質量部及びブチルカルビトール35質量部をそれぞれ配合して調製した。
(1)燃料極支持膜式燃料電池中間体の焼成
上記[1]、(3)、(a)、(b)、(c)で作製された燃料極支持膜式燃料電池中間体を、それぞれ1400℃で1時間保持して同時焼成した。
その結果、(2)、(B)のように、8枚の未焼成燃料極基板用シートの各々を、隣り合うシートの一方のシートと他方のシートのそれぞれの平滑面側同士、又は凹凸面側同士が交互に接するようにして積層し、圧着した場合は、反りのない平坦な中間体が得られた。一方、(2)、(A)のように、8枚の未焼成燃料極基板用シートの各々を、隣り合うシートの一方のシートの平滑面側と、他方のシートの凹凸面側とが接するようにして積層し、圧着した場合は反りが発生したため、焼結体の上面に約0.5kgの錘を載置し、1350℃で3時間保持して、反りを修復するための再焼成を行った。
(i)空気極層の形成
空気極層34を形成するためのセラミック粉末としては、反応防止層33が形成されない実施例1、2、3及び4及び比較例1では、平均粒径2μmの市販のLa0.6Sr0.4MnO3(以下、「LSM」と表記する。)粉末を用いた。一方、反応防止層33が形成される実施例5、6、7及び8では、平均粒径2μmの市販のLa0.6Sr0.4CoO3(以下、「LSC」と表記する。)粉末を用いた。これは、一般に、LSCはLSMと比較して電極触媒能が高く、高性能なSOFCとするためには有利であるが、ジルコニア系電解質との反応性が高く、反応防止層が形成されない場合は、抵抗の高い反応相が生成し、発電性能が低下するためである。
未焼成空気極層14は、LSM粉末又はLSC粉末100質量部に、バインダとしてポリビニルアルコール13質量部及びブチルカルビトール35質量部を混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いてスクリーン印刷により縦5mm×横5mm、厚さ30μmに形成し、その後、LSMの場合は1000℃で1時間保持し、LSCの場合は1200℃で1時間保持して焼成し、それぞれ空気極層34を形成した。
上記のようにして空気極層34を形成した後、積層体の周縁部の8YSZ面と、SUS430からなる実験装置用セパレータ41(直径45mm、厚さ0.1mmであり、中心部に直径15mmの開口部が形成されている。)との間を、結晶化ガラスを用いて形成された実験装置用シール部42により気密に封止し、図14のような、発電性能評価用の実験用固体電解質形燃料電池305を作製した。
上記[1]、[2]の手順で作製した実験用固体電解質形燃料電池305を、図15のように、上下からアルミナ管によりシールガラスからなるアルミナ管用シール部44を介して挟持し、上下の各々の内側のアルミナ管432の先端に巻き付けられた白金網45を、それぞれ燃料極基板31と空気極層34とに接触させた。その後、この実験用固体電解質形燃料電池305を電気炉内に収容し、下方の内側アルミナ管432内に水素ガスを流通させ、上方の内側アルミナ管432内に大気と同じ比率で混合した酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを流通させて発電させ、最大出力密度を求めた。結果を表1に示す。
また、実施例1では、未焼成固体電解質層が積層された未焼成燃料極基板の面が異なる他は構成が同じ比較例1と比較して、出力密度が向上しており、未焼成燃料極基板の凹凸面に固体電解質層を積層することにより接触界面の面積が大きくなった効果が裏付けられている。更に、実施例2では、反り修復のための再焼成をしていないため、燃料極基板の緻密化が抑制され、実施例1より更に出力密度が向上していることが分かる。また、実施例3では、未焼成固体電解質層の形成にシートを使用し、このシートの凹凸面を未焼成燃料極基板の凹凸面に積層したため、実施例1よりも接触界面の面積が更に大きくなり、出力密度がより向上した。更に、実施例4では、未焼成固体電解質層の形成にシートを使用し、このシートの凹凸面を未焼成燃料極基板の凹凸面に積層し、且つ反り修復のための再焼成をしていないため、燃料極基板の緻密化が抑制され、実施例1〜4の中で最も高い出力密度であることが分かる。
尚、反応防止層が形成され、且つ空気極層がLSCにより形成された実施例5〜8では、対応する実施例1〜4の各々の場合と比較し、いずれの場合も出力密度が向上していることが分かる。
一方、未焼成燃料極基板の平滑面に未焼成固体電解質層が形成され、且つ反り修復のための再焼成をしている比較例1では、実施例1、2に比べて出力密度が大きく低下している。また、同様に未焼成燃料極基板の平滑面に未焼成固体電解質層が形成され、且つ反り修復のための再焼成をしている比較例2では、実施例5、6に比べて出力密度が大きく低下していることが分かる。
Claims (12)
- 未焼成燃料極基板11と、該未焼成燃料極基板11に積層された未焼成固体電解質層12とを備える燃料極支持膜式燃料電池中間体において、該未焼成燃料極基板11は、支持材2に接した状態で形成された一面111と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面112とを有し、該他面112に、該未焼成固体電解質層12が設けられていることを特徴とする燃料極支持膜式燃料電池中間体。
- 上記未焼成燃料極基板11は、酸化ニッケルと、希土類元素により安定化されたジルコニアとを含有する請求項1に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
- 上記未焼成固体電解質層12は、支持材2に接した状態で形成された一面121と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面122とを有し、該他面122と、上記未焼成燃料極基板11の上記他面112とが接するように積層された請求項1又は2に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
- 上記未焼成燃料極基板11は、複数の未焼成燃料極基板用シート113が積層されてなり、各々の該未焼成燃料極基板用シート113は、支持材2に接した状態で形成された一面1131と、ガス雰囲気に接した状態で形成された他面1132とを有し、それぞれの未焼成燃料極基板用シート113の上記一面1131同士及び上記他面1132同士が交互に接して積層されて該未焼成燃料極基板11が形成されている請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
- 上記未焼成固体電解質層12の厚さが1〜50μmである請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
- 上記未焼成燃料極基板11の厚さが、上記未焼成固体電解質層12の厚さの50倍以上である請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
- 上記未焼成固体電解質層12の表面に、更に未焼成反応防止層13が設けられた請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
- 上記未焼成反応防止層13が、Ce1−xLnxO2−δ(Lnは希土類元素であり、0.05≦x≦0.3である。)からなる請求項7に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
- 上記未焼成反応防止層13の厚さが1〜20μmである請求項7又は8に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
- 上記未焼成燃料極基板11の厚さが、上記未焼成固体電解質層12の厚さと、上記未焼成反応防止層13の厚さとの合計厚さの50倍以上である請求項7乃至9のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体。
- 請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体を用いた固体電解質形燃料電池の製造方法であって、
上記未焼成燃料極基板11と、上記未焼成固体電解質層12とを同時焼成する同時焼成工程、
該未焼成固体電解質層12が焼成されてなる固体電解質層32の表面に未焼成空気極層14を設ける未焼成空気極層形成工程、
該未焼成空気極層14を、該同時焼成の温度より低温で焼成して空気極層34を形成する空気極層形成工程、を備えることを特徴とする固体電解質形燃料電池の製造方法。 - 請求項7乃至10のうちのいずれか1項に記載の燃料極支持膜式燃料電池中間体を用いた固体電解質形燃料電池の製造方法であって、
上記未焼成燃料極基板11と、上記未焼成固体電解質層12と、上記未焼成反応防止層13とを同時焼成する同時焼成工程、
該未焼成反応防止層13が焼成されてなる反応防止層33の表面に未焼成空気極層14を設ける未焼成空気極層形成工程、
該未焼成空気極層14を、該同時焼成の温度より低温で焼成して空気極層34を形成する空気極層形成工程、を備えることを特徴とする固体電解質形燃料電池の製造方法。
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