以下、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態として、媒体の加熱と磁気書き込みのタイミングに関する独特の構成について説明する。
図1は、本実施形態の概念を説明するための概念図であり、同図(a)は記録ヘッドと記録媒体の基本配置構成を示す断面図、同図(b)は記録媒体の熱応答を模式的に示すグラフ図、同図(c)は記録媒体の保磁力Hc0と記録ヘッドの記録磁界Hwとの関係を示すグラフ図である。
図1(a)において、1は媒体の記録磁性層、2は熱源の出射孔、3は出射孔周囲の隔壁部、4は記録磁極、LEは記録磁極のリーディングエッジ(Leading Edge)、TEは記録磁極のトレーリングエッジ(Trailing Edge)、MFPはHc0とHwの大きさが等しくなる磁化固定点(Magnetic Frozen Point)、DはMFPとTEの間の距離、Bminは最短磁化転移間隔を各々表わしている。
媒体を加熱昇温するための熱源としては、光ビームや電子ビームなどを用いることが可能である。例えば光ビームを用いる形態としては、端面発光レーザの出射面に全反射膜3を成膜し、活性層の中央部付近に微小光学開口2を設けるなどの具体例を挙げることができる。また、電子ビームを用いる形態しては、開口2の部分にエミッターコーンを形成し、コーン先端から電界放出される電子ビームを直接、媒体に照射する具体例を挙げることができる。
図1に例示した開口を用いる態様においては、開口2から出射した光ビームあるいは電子ビームは媒体1に照射され、記録磁性層を加熱する。媒体の移動方向は同図(a)中に、「Medium moving direction」と示したように、図の左側から右側である。この場合、各素子の左側がリーディング側で、右側がトレーリング側と定義される。
そして、本実施形態おいては、MFPとTEとの間の距離Dと、最短磁化転移間隔Bminとが、D≦Bminなる条件を満足することを規定する。
記録磁性層の温度は、例えば図1(b)に表したような時間応答を示す。すなわち、同図の縦軸Tは磁性層の温度であり、横軸tは時間を表わす。時間tに線速を掛ければ図1(b)及び(c)の横軸は記録トラック方向の位置と解釈することもできる。媒体の熱応答は、照射される熱ビームの空間的プロファイル、熱ビームのパワー、媒体のビームに対する移動速度(線速)、媒体の膜材料(熱物性値)、膜厚、膜構造(図1には表していないが、通常は記録磁性層の他に下地層、保護層、潤滑層などを有する)、などに依存する。実際のディメンションで媒体の熱応答解析を行うと、冷却時間は媒体が記録磁極下部を通過する時間よりも長く、図1(b)に表したようになる。
すなわち、将来の数100Gbpsi級の磁気記録システムにおいては、Bminは数10nm程度、記録トラック幅は数100nm未満まで縮小される。サイドイレーズ(隣接トラックの情報の不必要な消去)を防止するためには、ビームサイズをトラック幅程度に規定すべきなので、開口2の大きさも例えば200nm程度となる。この開口から例えばガウス型ビームが出射した場合、実効的な加熱範囲は全半値幅相当の100nm程度であり、線速を20m/sとした場合、実効加熱時間は5ns程度となる。
媒体の構造を熱的に調整して高速熱応答とした場合、加熱速度は数10K/ns程度となるので、例えば50K/nsとおくと媒体は環境温度よりも250K程度昇温させることが可能である。冷却速度は例えば平均的には20K/ns程度なので、250Kの冷却には12.5nsの時間を要し、その間に媒体は250nm移動することになる。
一方で、熱アシスト記録の原理から鑑みて、加熱部としての開口と記録磁極の間の距離は極力近接されるべきである。何故ならば、高密度化の為には可能な限り媒体の粒径を小さくすべきなので、室温で十分な熱擾乱耐性を確保する上では、磁気異方性エネルギー(Ku)の巨大な磁性膜を媒体として用いるべきである。Kuが大きい程室温の保磁力(Hc0)は上昇し記録しにくくなるのであるから、熱アシスト記録における記録温度は高く設定されることになる。従って、媒体が十分に加熱されているタイミングで記録磁界を印加しないと記録できないことになり、開口と記録磁極は可能な限り近接配置すべきという帰結になる。
例えば、開口2と記録磁極のLE間は数10nm未満例えば20nmに設定され、線速20m/sでは開口のトレーリングエッジ通過後1nsの後から媒体に記録磁界が印加されることになる。図1(b)に表したように記録磁極下部を通過している間、媒体温度は低下を続け、それに従って図1(c)に表したようにHc0は増加する。記録する為にはHw≧Hc0でなければならないので、MFPで媒体磁化は固定される。
従来提案されていた熱アシスト磁気記録においては、記録磁極のトラック方向の長さ(LE−TE間距離)については、着目されておらず、何ら規定はされていない。これに対して、本実施形態においては、この位置関係の重要性に着目し、独特の構成を規定する。この規定の論拠と効果については後に詳述するが、ここではまず、各素子の配置と冷却時間の関係が、なぜ図1に表したようになるのかを説明する。
MFPが磁極のミドルポイント(LEとTEとの間に位置する点)にある場合で、かつ最短磁化転移間隔が例えば20nmの場合、本実施形態の規定に従って、記録磁極のトラック方向の長さは40nmとなる。線速20m/sでは媒体が記録磁極下部を通過する時間は2nsである。この値と前記した開口とLE間を通過する時間1nsは、媒体が室温付近まで冷却するに要する時間の12.5nsに比較して非常に短い。線速、媒体の熱応答、MFPの位置などによって上記した値はある程度変化するが、図1に示したように媒体が十分に冷却する以前に、媒体は記録磁極を通過する状況が理解できる。
ここで、従来の磁気記録ではMFPは磁極のTEだったが、本実施形態においてはMFPは磁極のTEよりもLE側に配される。こうすることの効果は2つ有る。一つは記録の急峻性であり、もう一つは記録後の熱擾乱耐性の確保である。
記録の急峻性に関しては、記録磁界Hwの空間的急峻性よりもHc0の空間的急峻性の方が鋭いことを意味する。線密度の制限要因が、媒体の磁化転移幅、ヘッドと媒体のスペーシング、Hwの空間的急峻性にあることは従来より知られている。Hwの急峻性は通常は100Oe/nm未満で、典型的には50Oe/nm程度である。一方で、前記したように、Hc0は最高到達温度での値から室温での値までに250nmで変化する。再度前述の説明で例示した値を用いると、記録点から室温までの距離はほぼ200nmになる。記録点のHc0と室温のHc0の差が大きければ大きい程高密度化されることは前述の通りだが、例えば室温Hc0が50kOeの媒体を用いて、記録点Hc0が10kOeになる様に設定した場合を想定すると、200nmで40kOeのHc0の変化なので、Hc0の空間的急峻性としては200Oe/nmとなり、従来の磁気記録に比べて格段に記録の急峻性が向上すると言える。
もう一つの記録直後の熱擾乱耐性の確保も、本実施形態の大きな特徴のひとつである。MFPからトレーリング側では、Hc0>Hwなので、媒体磁化はHw単独では変化しないが、記録層の温度は未だ高温状態にある。前記した数字を挙げるとMFP以降200nmの距離(線速20m/sでは10nsの時間に相当)は十分にKuV/kTが立上がっておらず、再反転を起す可能性はある。但しMFPからTEの間を媒体が通過する時間帯は、Hwが熱擾乱による反転を防止する方向に作用するので、少なくもこの間は再反転しない。但し注意を要するのは、MFPからTEを通過している間にHwの極性が反転してしまった場合には、Hwは熱擾乱をサポートする方向の転換するので、直ちに再反転してしまう危険性が大きい点である。
Hwが極性を変える時間内に、媒体が移動する距離は最短磁化転移間隔Bminである。従って、本発明に規定する様に、D≦Bminとすれば、Hwの印加は記録直後の再反転を防止する方向にのみ作用し、熱擾乱をサポートする方向には働かないことが理解できる。
以下、具体例を参照しつつ本実施形態についてさらに説明する。
図2は、本実施形態の熱アシスト磁気記録装置の主要部の一実施例を表す断面図である。同図において、11−14は磁気記録媒体部、21,22は光学開口部、31−33は磁気記録ヘッド隔壁部、40−43は磁気記録ヘッド記録磁極部、51−55はレーザ素子部を各々表わし、11は磁気媒体基板、12は下地層、13は記録磁性層、14は保護層、21は光学開口、22は導波路、31は第一の導波路隔壁、32は第二の導波路隔壁、33は第三の隔壁、40は記録磁極全体部、41は記録磁極、42はリターンパス、43はコイル、51は第二のクラッド層部、52は活性層部、53は第一のクラッド層部、54はレーザ素子成長基板、55はレーザ素子隔壁部である。
図2に表した熱アシスト磁気記録ヘッドと熱アシスト磁気記録媒体は、例えば以下の手順で作成することが可能である。
まず、レーザ素子一体型磁気ヘッドの形成方法の一例を説明する。
GaAs、サファイアを代表とするレーザ素子成長基板54上に、第一のクラッド層53、活性層52、第二のクラッド層51の順に、例えばMOCVD(metal-organic chemical vapor deposition :有機金属化学気相成長)法、MBE(molecular beam epitaxy:分子線エピタキシー)法などによって結晶成長し、磁気記録再生素子部の間隔(例えば数100μm)に従って、島状に面発光レーザ素子を形成する。ここで図2ではレーザ素子の主要部のみを示してあり、クラッド層、活性層などの詳細構造や電極は煩雑を避ける為に省いてある。
次に、島状形成したレーザ素子の間は隔壁部55で埋め込み、必要に応じて平坦化処理を施す。
次に、51,55の下面上に順次、プラナー型の磁気ヘッド部を形成していく。磁気ヘッド素子部の形成プロセスには自由度が有り各種の材料・プロセスが適用可能であるが、ここでは典型例を述べる。
まず、導波路部22と光学開口部21を、例えばスパッタリング法によるSiO2の成膜後、CHF3−RIE(reactive ion etching)とCDE(chemical dry etching)の二段エッチングプロセスを用いて、開口部を垂直加工、導波路部をテーパ加工し図2の形状を得る。
次に、隔壁部31,32を、例えばTi−N,Ta−Nなどの高融点・高反射率材料もしくは、W,Mo,Taなどの高融点金属をCVDもしくはスパッタリングを用いて形成することにより得る。この際、51,55の下面上に隔壁31,32の材料が形成されても構わない。開口部21側壁への隔壁膜31,32の付きまわりを良好にする上では、CVD法、もしくは基板回転型のスパッタリングを用いるのが好ましい。
次に、隔壁部33として例えばレジストを埋め込み形成した後、記録磁極全体部40とコイル部43の形状に合せてパターニングする。
次に、記録磁極全体部40をコイル上面まで例えばレジストフレームメッキ成長法で形成した後、コイルパターンに合せてレジストをパターニング成長し、例えばCuコイルをフレームメッキ成長させた後、記録磁極残部形状に合せてレジストをパターニングし、磁極残部を再度メッキ成長させる。記録磁極部41は例えば100nm程度の微細パターンになるので、必要に応じて最後にFIB(focused ion beam)加工に供される。
以上説明した工程により、図2の熱アシスト磁気ヘッドの発光部と記録磁極を形成することができる。再生素子部は記録磁極のトレーリング側(図2の右方向)に適宜作成すれば発光素子一体型の熱アシスト磁気ヘッドを作成することができる。上記実施例では、面発光レーザと垂直記録ヘッドを組合せた例を挙げたが、本発明は、端面発光レーザ、長手記録用ヘッドにも適用可能である。端面発光レーザを用いる形態では、例えば光学開口の上部に直接活性層を配置し、光出射方向を図2と同一にすれば良い。また、長手記録に適用する場合には、例えば隔壁31の左側に第二の記録磁極を配すれば良い。
さらに熱源として、レーザ以外に電子ビームを用いることも可能であり、その場合には開口21部に例えばC(炭素)からなるコーン状エミッターを配置し、媒体に対して負の電圧を印加すれば、媒体を加熱昇温するのに十分な電界放出電子ビームを得ることができる。
次に、図2に例示した熱アシスト磁気記録媒体の作成手順の一例を説明する。媒体基板11としては、ガラス、AlPコートAl基板などが代表的であり、媒体各層は典型的にはスパッタリング法を用いて基板上に形成される。
垂直媒体の例では、まずNiFe、CoZrNbなどを代表とする軟磁性裏打ち層を下地層12として形成、続いて、CoPt,SmCo,FePtを代表とする高Kuの記録磁性層13、更にCを代表とする保護層14を連続成膜する。スパッタ装置から取出した後、PTFE系などの潤滑層をディッピングもしくはスピンコート形成すれば、図2の熱アシスト磁気記録媒体を得ることが可能である。
一方、長手(面内)記録媒体の例では、例えばCr,Vなどを代表とする結晶配向制御層を下地層として用いれば良い。
本発明の効果を実証する実験に先立って、記録磁性層の熱磁気特性をトルクメータとVSMで、微細構造をTEMを用いて調べた結果を以下に説明する。TEM観察レベルの平均磁性粒径は5nm程度と微細で、かつ揺らぎ場の測定から得られた活性化体積はほぼ物理的な粒子体積に近く、本実施例の媒体が優れた高密度ポテンシャルを有していることが確認できた。室温のKuは2.5x107erg/ccと十分に高く、室温でのKuV/kTは100程度と十分な熱擾乱耐性を有していることを示した。室温でのHc0は25kOe程度と高く、記録磁界のシミュレーション値の10kOeから考えて、室温での磁気記録は不可能と判定された。Hc0の温度特性は、室温から高温に掛けてほぼ直線的に低下し、10kOeのHc0を示す膜温度は、250℃程度であった。
図2の構成を用いて、本実施形態を以下の手順で実施しその効果を検証した。本実施例においては光学開口21の大きさは200nm角とし、隔壁32の膜厚(開口21のトレーリングエッジと記録磁極41のリーディングエッジ間の距離)は20nm、記録磁極のトラック方向の長さは150nmとした。前述した数100Gbpsi級では磁極の長さはもっと短く設定されるべきであるが、本実施例では、本発明の効果を明確にする目的で150nmとした。なお、本発明の効果を明確にするためには、記録磁極の長さ自体は問題では無く、最短磁化転移間隔Bminとの関係が重要であることは言うまでもない。
実験は、最短磁化転移間隔Bminを幾通りかに変えつつ最短磁化転移間隔相当の単一記録周波数で記録を行い、記録磁極のトレーリング側に設けられたGMR(giant magnetoresistive)ヘッドで記録直後の信号を再生し、MFPの計測を行い、本発明の規定するDとBminの比と再生信号振幅の関係を調べた。ここでMFPの計測は以下の様に実施した。記録磁界の立上り立ち下がりを媒体が記録磁極下部を通過する時間に比べて極めて短い様に調整した場合、記録磁界の零クロス点(極性が変わる時刻)と再生信号のピーク値(微分信号の零クロス点)の時間間隔は、MFPとGMR素子の間の距離を線速で割った値に相当する。また、媒体が記録磁極のTEからGMR再生部に移動する時間は、記録磁極のTEとGMR素子部の間の物理的距離を線速で割った値に相当する。上記二つの時間の差に線速を掛ければ、本実施形態において規定する磁化固定点と記録磁極のTE間の距離Dを得ることができる。Dは照射する光ビームのパワー、記録磁界強度、媒体の熱応答に依存して変化する。
図3は、再生信号振幅とD/Bminの関係を表すグラフ図である。D/Bmin<1の領域においてD/Bminの増加に従って信号振幅がなだらかに低下しているのは、GMR再生素子部に流入する媒体磁界強度がBminの低下に従って緩やかに減少するためである。このなだらかな低下よりも格段に大きな低下率で、D/Bmin〜1付近で信号振幅が急激に低下していることが分かる。
Bminを変えて記録した幾つかのトラックをMFMで観察した結果、D/Bmin<1の領域では、記録磁化の向きは一つの記録セル内でほぼ揃っていたが、D/Bmin>1なる場合には、一つの記録セル内で再反転した磁性粒子が多数観察され、消磁状態に近い磁化状態を呈した。このことは、MFPで形成された磁化転移のトレーリング側の磁性粒子の磁化が、記録磁界の向きが記録方向と変わらない時間帯では記録した通りの向きを向いていたにも関わらず、記録磁極の下部に有る時に磁界の極性が反転してしまうと、Hc0はHwよりも大きいにも関わらず、Hwが熱擾乱を助長してしまうがために、再反転磁化が形成されてしまうことを意味しており、同時に本実施形態の熱アシスト磁気記録装置の効果を端的に表わしている。
また、図3において、Dは光照射強度、記録磁界、媒体熱応答その他が一意に決まった場合、光ビームのトラック幅方向の空間分布がトラックと垂直な線分の場合には一意に決まるが、トラック幅方向に湾曲している場合にはトラック中心とトラックエッジで値が異なる。その様な場合にもトラック幅方向に亘る平均的なDは前述のやり方に従って再生信号から定義することができる。
また、図3の実施例では特にD/Bminの下限は見られないが、より磁性粒子サイズが小さくなった場合には、D/Bmin≦1の範囲内においては、MFPから記録磁極のTEに亘る間は、Hwが記録済み磁化の熱擾乱を防止する方向に作用するので下限値が存在する。この下限値は媒体磁性粒子の粒径とKuに依存する。
以上説明したように、本実施形態によれば、熱アシスト磁気記録において、磁化転移を急峻にできると共に、磁化転移形成直後の熱擾乱による再反転を確実に防止することが可能となる。その結果として、記録密度を飛躍的に向上させ、且つ安定した高信頼性の磁気記録が可能となる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
本実施形態の熱アシスト磁気記録装置は、(1)熱源としての光ビームと記録磁界とを媒体の同一面側から供給すること、(2)発光素子と磁気記録素子とが一体型の構造をなすこと、(3)媒体移動方向の上流側から発光素子、記録磁極の順番に積層されていること、(4)発光部と記録磁極とが近接配置されていること、を構成上の基本とする。
(1)光ビームと記録磁界を媒体の同一面側から供給することにより、近接場光の利用を可能とし、ファーフィールド光では実現不能な数10nmの微小領域の選択的加熱を可能足らしめる。(2)発光素子と磁気記録素子が一体型の構造を為すことにより、構成が複雑で質量の重い光学系を除きヘッドの高速シーク動作を可能足らしめると共に、導波路やファイバーを用いて光照射する方式に比較して光利用効率を格段に高め、数10mWの半導体レーザの採用を可能足らしめる。(3)媒体移動方向の上流(リーディング)側から発光素子、記録磁極の順番に積層する構成と、(4)発光部と記録磁極の近接配置によって、十分に媒体のHc0が低下しているタイミングで記録磁界を供給することが可能となる。
上述した基本構成に加えて、本実施形態においては、さらに、磁気再生素子を独特の位置関係に配置する。
すなわち、本実施形態においては、媒体進行方向の上流(リーディング)側から、発光素子、記録磁極、磁気再生素子の順番に近接配置され、記録磁極のトラック方向の長さ(すなわち記録磁極のリーディングエッジからトレーリングエッジまでの距離)をLmag、記録磁極のトレーリングエッジから再生素子の磁気ギャップのトラック方向中心までの距離をDmr、該記録磁極からの記録磁界を反転させて磁気記録媒体の記録層に磁化遷移を記録するために該記録磁極に鎖交させたコイルに流す記録電流を反転させる瞬間から、該磁気再生素子がその反転磁化を検出して再生信号を出力する瞬間までの時間間隔をΔT、該磁気記録媒体と該記録磁極との相対速度をvとおく時、
Dmr≦v・ΔT≦Lmag+Dmr
を満たすものとする。
このような条件を満たせば、磁気記録媒体上に磁化反転が記録される位置は記録磁極の直下すなわち記録磁極のリーディングエッジからトレーリングエッジの範囲に入り、磁化反転の記録が決定される瞬間まで記録磁界が一定のまま磁気記録媒体に加わるため、記録が確定するまでに熱擾乱による磁化消磁を招くことが無く、安定且つ高速の記録を保証することができる。
以下、図面を参照しつつ本実施形態についてさらに詳細に説明する。
(第1の具体例)
まず、本実施形態の第1の具体例として、比較的広いトラック幅で本実施形態の熱アシスト磁気ヘッドを試作し、その効果を検証した。なお、本具体例においては、ニアフィールドの光学開口や、収束レンズ系は使用していない。
図4は、本具体例に関わる熱アシスト磁気記録装置の一実施例を表し、図4(a)は熱アシスト磁気ヘッドを媒体面側から見た平面、図4(b)は媒体を含めたトラック方向のA−A’線断面図である。
図4において、151−154の符号で示した部分は媒体の主要部、残る符号で示した部分は全て熱アシスト磁気ヘッドの構成主要部である。
ヘッドの構成要素は、111−119からなる半導体レーザ発光素子部、120−127からなる磁気記録素子部、130−133からなる磁気再生素子部、4からなる保護コート部からなる。図中に示した様に、上流(リーディング)側から、発光素子部、直記録素子部、磁気再生素子部の順番に並ぶ構成となっている。ここでも、「上流(リーディング)」、「下流(トレーリング)」とは媒体がヘッドに対して上流側から下流側へ移動して記録再生を行うことを意味する。
また、「リーディングエッジ」、「トレーリングエッジ」とはヘッドを構成する各要素(例えば発光素子、光学開口、記録磁極、再生素子など)のトラック方向の上流側端部、下流側端部を意味する。なお図4では、煩雑を避ける為、本発明に直接関連のない要素、例えば再生素子部の詳細な構造、電極取出し部の構造等は省略した。
図4に表した半導体発光素子部の構成において、111は基板、112は格子整合の為のバッファ層例えば膜厚数μm程度のGaAs層、113はp層例えば膜厚200nm程度のp型GaAs層、114はストライプ状積層メタル電極例えば幅が1μm、全厚100nm程度のTi/Pt/Au積層膜、115はp型クラッド層例えば膜厚1μm程度のp型AlGaInP層、116は活性層例えば膜厚100nm程度のGaInP層、117は活性層中の共振領域(発光領域)、118はn型クラッド層例えば膜厚1μm程度のn型AlGaInP層、119は電極例えば膜厚100nm程度のAuGe/Au積層膜である。
上記構成では、発光領域は幅1μm程度、トラック方向には活性層厚の数100nm程度の矩形状を為す。後述する様に発光面117と媒体の間隔(スペーシング)は数10nm程度はなれている。媒体面上でのビームプロファイルをシミュレーションで求めた結果、トラック幅方向に約1μm、トラック方向に200nm程度のe−2径を有する長円形状であった。
トラック方向のビーム径と活性層厚の関係はスペーシングにも依るが、数10nmのスペーシングでは、ビーム径は活性層厚の二倍程度である。
図4の磁気記録素子部の構成においては、120は絶縁膜例えば膜厚100nmのSiO2、121は上流側磁極例えば膜厚200nmのCoNiFe膜(磁極先端部122以外の部分は図4(a)で奥に引っ込んだ構造を為す)、122は本発明を特徴付ける発光素子中に埋め込まれた記録磁極先端部、例えば先端幅が0.75μm、奥行きが1μmの先端部、23は絶縁体例えばレジストフレーム、124は記録磁界発生用コイル例えば10ターンのCuコイル、125はリターンパス用磁極例えば膜厚1μmのNiFe膜、26は上流側磁極とリターンパス用磁極の接合部、127は平坦化絶縁膜例えば膜厚500nmのSiO2である。
図4の磁気再生素子部の構成においては、130は上流側シールド例えば膜厚500nmのNiFe、131は再生ギャップ例えばシールド間厚が200nmのSiO2(シールドとGMR間即ち再生ギャップは100nm)、132はGMR再生素子部例えばCoFe/Cu/CoFe/FeMn積層膜、133は下流側シールド例えば膜厚500nmのNiFeである。図4(a)には示していないが、GMR素子の両端はハードバイアス膜例えばCoPt、及びメタル電極膜が連結されている。104はヘッド全体の保護膜であり、例えば膜厚数10μmのAl2O3膜を用いることができる。
図4の媒体部の構成においては、151は磁気記録層、例えば膜厚30nmのCoPt−SiO2垂直磁化・多粒子系薄膜、152は軟磁性下地例えば膜厚100nmのNiFe、153は発光素子からの光を受けて加熱する部分、154は冷却過程において磁化転移が決定される位置、155は記録磁極から供給され媒体を鎖交する記録磁束、156はレーザ発光素子端面から放出されて媒体面へ向かう光束を、各々示している。媒体構成において、基板、保護膜、潤滑膜は省略した。
図5は、図4に例示した磁気記録ヘッドにおいて孤立磁化反転の記録再生特性を表し、同図(a)は記録電流の時間依存性、同図(b)はGMR素子から得られる再生電圧の時間依存性をそれぞれ表すグラフ図である。
記録磁極122のトラック方向の長さ(すなわち記録磁極のリーディングエッジからトレーリングエッジまでの距離)をLmag、記録磁極22のトレーリングエッジから再生素子の磁気ギャップのトラック方向の中心までの距離をDmr、該記録磁極122からの記録磁界を反転させて磁気記録媒体の記録層に磁化遷移を記録するために該記録磁極に鎖交させたコイルに流す記録電流を反転させる瞬間から、該磁気再生素子がその反転磁化を検出して再生信号を出力する瞬間までの時間間隔をΔT(この時間は高周波数帯域を有するオシロスコープ等を使用することで十分計測可能である)、該磁気記録媒体と該記録磁極との相対速度をvとおく時、
Dmr≦v・ΔT≦Dmr+Lmag
を満たすことにより、磁気記録媒体上に磁化反転が記録される位置は記録磁極の直下すなわち記録磁極のリーディングエッジからトレーリングエッジの範囲に入る。その結果として、磁化反転の記録が決定される瞬間まで記録磁界が一定のまま磁気記録媒体に加わるため、記録が確定するまでに熱擾乱による磁化消磁を招くことが無く、安定且つ高速の記録を保証することができる。
本具体例においては、媒体としては多粒子系を用いたが、基板上に、連続磁性膜そして多粒子系磁性膜を順次積層した構成、あるいは、基板上に、連続磁性層、数nm厚み程度の極薄の非磁性層(あるいはCoZrNb等の軟磁性アモルファス層)、多粒子系磁性層を順次積層した構成を用いても差し支えない。
このような構成の媒体を用いることで、多粒子系層と連続磁性層との間に働く交換結合力の温度特性を利用することによって、多粒子系記録層単体では得ることが困難な記録温度付近での保持力Hc0の温度特性を急峻化したり、記録温度付近からそれ以上の温度で媒体記録層の活性化体積Vを増やすことが可能となる為、トラック方法の線記録分解能を上げても(すなわち記録信号周波数を増加させても)、記録磁化を安定に形成することが可能となり、しかも、例え、光ビーム径を記録トラック幅より大きくすることで隣接記録トラックが比較的高温度にさらされても、Vの増加により熱擾乱耐性が増す為、クロスイレーズを招くおそれも解消することができる。
さらに、本実施形態は、連続磁性膜を媒体として用いる場合にも効果的である。例えば、光磁気記録媒体として用いられている、非晶質希土類・遷移金属フェリ磁性合金膜(R−T膜)、より具体的には、ガラス基板上に、Al合金系ヒートシンク層、TbFeCo記録層、C保護層、潤滑層を順次積層した構成などである。
(第2の具体例)
次に、本実施形態の第2の具体例について説明する。
前述した第1具体例においては、通常の積層型薄膜磁気ヘッドのリーディング側に端面発光素子を設ける場合について述べたが、本実施形態はプラナー(planer)型薄膜磁気ヘッドに面発光素子を設ける場合にも適用可能である。
図6は、本発明をプラナー型薄膜磁気ヘッドに適用した場合の一実施例の主要部構成図であり、記録素子部と面発光素子部のみを示したものである。
すなわち、図6において、159はn型クラッド層、160は活性層、161はp型クラッド層、162は低屈折率部、163は高屈折率部、164は発光部、165は記録磁極、166は記録磁極先端部、167はコイル、168は熱絶縁部、169は対向テーパ部、170は保護膜、151は媒体の記録層、152は媒体の裏打ち層、71はヨーク型GMRヘッドの磁気ヨーク、73はGMR素子、72はGMR素子73と磁気ヨーク71との電気的絶縁を保つAL2O3等から成る非磁性絶縁層、74、75はGMR素子にセンス電流を通電するための電極膜、76はヨーク型再生素子の磁気ギャップ、Xは媒体進行方向、vは媒体とヘッドの相対速度、Lmagは記録磁極先端部のトラック方向の長さ、Dmrは記録磁極先端部のトレーリングエッジからヨーク型磁気再生素子の磁気ギャップ76のトラック方向中心までの距離を各々示している。
図6に表した熱アシスト磁気記録ヘッドの構成をその製造工程に沿って説明すると以下の如くである。
まず、基板としては、前記具体例と同様にGaAsバッファ層を有するサファイア基板、比較的厚いバッファ層を成長させたアルチック基板などを用いる。図6には基板を表していないが、同図の上面に配される。即ちn型クラッド層の上方に基板があり、薄膜の成長方向は図6の上から下へ向けて行われる。
図示しない基板上にn型接合層を成長した後、例えばn型AlGaAs/AlAs多層クラッド層159を成長、続いてInGaAs多層量子井戸型活性層160を成長、さらにp型GaAs/AlGaAs多層クラッド層161を成長する。電流注入の為の電極は発光素子の側面部に設けられ、例えばZn拡散層を電極として用いることが可能である。活性層からの発光は活性層の上下方向に起こり、二つのクラッド層によって活性層側へ反射、増幅されてレーザ発振する。
レーザ光はp型クラッド層161の下面から記録磁極側へ放射する。発光素子部を成長後、絶縁部材の埋め込みと表面平滑化を行った後、記録素子部と収束レンズ部の形成を行う。先ず発光素子の出射部にテーパ状に低屈折率部162を形成し、162の中央部に逆テーパ状の加工を施した後に、逆テーパ部に高屈折率部163を埋め込み形成して、収束レンズ部を作成する。発光素子部から出射した光は低屈折率部162と高屈折率部163の界面で内側に曲げられ、効率良く発光部164に導かれる。低屈折率部162としては、CaF2,MgF2,SiO2など、高屈折率部163としては、ZnS,TiO2,Si3N4などが各々好適である。
収束レンズ部162,163は光利用効率を向上する目的で設けられるものなので、発光部164のサイズが比較的大きく収束レンズ無しでも利用効率が比較的高い場合などは設ける必要は無い。収束レンズ部を媒体面から見込んだ時の形状は円形、長円形、正方形、長方形いづれでも良い。
次に、高屈折率部163上に再度低屈折率部材をテーパ状に形成し、テーパコーンの側壁を利用して記録磁極165と対向テーパ部169を形成する。記録磁極165の形成にはレジストフレームメッキ法が好適である。対向部169は、垂直記録方式を採用する場合には非磁性体、長手記録方式を採用する場合には記録磁極と同一の磁性体で形成される。ここでは垂直記録方式を実施したので、非磁性体例えばCu,Al,Auなどの高反射率膜を表面に配する部材を用いた。
光による昇温が顕著な場合には、W,Mo,Taなどの高融点金属を配するのが好ましい。また、記録磁極のテーパ面上にも高反射率膜もしくは高融点金属膜を熱絶縁部168として被覆するのが良い。こうする事で光による記録磁極の昇温を防止して記録磁界が低かするのを防止することができるのと同時に、光利用効率を向上することができる。熱絶縁部は金属被覆単体でも良いが、熱伝導率の低いセラミクス部材と金属膜を積層すると記録磁極の昇温防止効果がより向上する。
記録磁極165と対向部169を形成した後、磁極内にコイル孔を形成し、続いて記録電流を通電するCuコイル部167を例えばフレームメッキ形成する。続いて、記録磁極先端部166の微細加工をPEPもしくはFIB形成する。発光部164もサイズによってはFIBで仕上げ加工を行うのが好ましい。
最後に保護膜170をコーティングすれば、図6に表した熱アシスト磁気ヘッドが完成する。
本具体例においても、第1の具体例と同様に、記録磁極166のトラック方向の長さ(すなわち記録磁極166のリーディングエッジからトレーリングエッジまでの距離)をLmag、記録磁極122のトレーリングエッジからヨーク磁極171、GMR素子173、電極174、175、非磁性絶縁層172から成るヨーク型の再生素子の磁気ギャップ176のトラック方向の中心までの距離をDmr、該記録磁極122からの記録磁界を反転させて磁気記録媒体の記録層151に磁化遷移を記録するために該記録磁極166に鎖交させたコイルに流す記録電流を反転させる瞬間から、該磁気再生素子がその反転磁化を検出して再生信号を出力する瞬間までの時間間隔をΔT(この時間は高帯域のオシロスコープ等を使用することで十分計測可能である)、該磁気記録媒体と該記録磁極との相対速度をvとおく時、
Dmr≦v・ΔT≦Dmr+Lmag
を満たすことにより安定な高速記録を実現することが可能である。
以上、第1及び第2の具体例を挙げつつ詳述したように、本実施形態によれば、高密度記録再生に必要な極めて微細な粒径からなる低ノイズの多粒子媒体に対して、室温付近で十分に高い熱擾乱耐性を付与出来ると共に、記録磁界印加部では光照射により媒体の磁化反転に必要な磁界を低減化することにより、実用的な記録ヘッドで高速記録を実現することが可能となる。
また、発光素子、記録再生素子一体化により、小型軽量の熱アシスト磁気記録ヘッドが提供出来るので、高速シーク動作が可能になると共に低価格にヘッドとドライブを構成することが出来る。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
本実施形態にかかる熱アシスト磁気記録装置も、(1)熱源としての光ビームと記録磁界とを媒体の同一面側から供給すること、(2)発光素子と磁気記録素子とが一体型の構造をなすこと、(3)媒体移動方向の上流側から発光素子、記録磁極の順番に積層されていることを基本とし、さらに本実施形態の基本的な特徴は、(4)発光部と記録磁極とを独特の距離関係によって近接配置する構造にある。
(1)光ビームと記録磁界を媒体の同一面側から供給することにより、近接場光の利用を可能とし、ファーフィールド光では実現不能な数10nmの微小領域の選択的加熱を可能足らしめる。(2)発光素子と磁気記録素子が一体型の構造を為すことにより、構成が複雑で質量の重い光学系を除きヘッドの高速シーク動作を可能足らしめると共に、導波路やファイバーを用いて光照射する方式に比較して光利用効率を格段に高め、数10mWの半導体レーザの採用を可能足らしめる。(3)媒体移動方向の上流(リーディング)側から発光素子、記録磁極の順番に積層する構成と、(4)発光部と記録磁極の近接配置によって、十分に媒体のHc0が低下しているタイミングで記録磁界を供給することが可能となる。
具体的には、発光部のトレーリングエッジと記録磁極のリーディングエッジ間の距離をDth、発光部のトラック方向の長さをLとおく時、Dth≦4Lを満たすようにする。
発光部と記録磁極とを近接配置する好ましい実施手段(4)は、媒体面から見たときに、レーザ発光素子の下流側に記録磁極が埋設されている構造である。つまり、媒体がヘッドに対向して走行した時に、発光素子→記録磁極の順に出会うことになる。発光素子の下流(トレーリング)側にクラッド層が配される構造では、クラッド層に直接、記録磁極が埋設されている構造でも構わず、発光面が記録磁極よりもリセスしており、リセス部に記録磁極が埋設されている構造でも構わない。下流側に活性層が配されている構造でも同様である。要は媒体面から見込んだ際に、発光素子のトレーリングエッジ側に配されている層に、記録磁極先端部が埋設されている構成であれば良い。
発光部のトレーリングエッジ位置の定義は、トレーリング側にクラッド層が配される場合には、活性層のトレーリングエッジ位置を意味し、活性層がトラック方向に配される場合には、活性層の端部位置を意味する。上記で定義した位置と記録磁極先端部のリーディングエッジの間の距離がDthである。また、発光部のトラック方向の長さLとは発光部の長さに対応し、発光素子の活性層の厚さと概略等しい場合もある。
また、トレーリング側に活性層が配置される場合には、Lはその活性層からの発光部の幅であり、面発光素子の出射口が記録磁極に積層されてなる構成の場合には、Lは記録磁極に隣接して設けられる発光部のトラック方向の長さを意味する。
一方、近接場光(エバネッセント光)を利用する形態においては、幾つかのものが挙げられる。代表的には、半導体レーザの出射面を反射膜で覆った後に、数10nm乃至数100nmの微小孔(光学開口)を出射面に開けて、そこに近接場光を形成する形態である。この形態では、微小孔のサイズを小さくすると光利用効率が低下する為、記録密度が高くなる程、光源パワーの要求値が高くなるが、構成上は最も簡便で、低価格でヘッドを提供できる。また、面発光素子の出射口からテーパ状に光を導き、記録磁極に隣接して微小孔を設ける形態も挙げることができる。
微細孔を用いる態様においては、微細孔のトレーリングエッジと記録磁極のリーディングエッジの距離をDth、微細孔のトラック方向の長さをLとおく時、 Dth≦4Lを満足することが望ましい。Dth>4Lの場合には、記録磁極下部に媒体が進んできた時に、光照射で加熱した媒体温度が既に低くなってしまい、有意な記録が困難となる。
本発明の熱アシスト磁気記録装置は、特に媒体の種類には限定されず、多粒子系磁性薄膜を記録層とする媒体でも、連続磁性膜を記録層とする媒体でも採用することが可能である。
以下、具体例を参照しつつ本実施形態についてさらに詳細に説明する。
(第1の具体例)
まず、本実施形態の第1の具体例として、比較的広いトラック幅において熱アシスト磁気ヘッドを試作し、本実施形態の効果を検証した。なお、本具体例においては、ニアフィールドの光学開口や、収束レンズ系は使用していない。
図7は、本具体例に関わる熱アシスト磁気記録ヘッドの概略構成を表す図であり、同図(a)媒体面側からみた平面図、同図(b)は媒体を含めたトラック方向のA−A’線断面図である。
図7において、151−154の符号で示した部分は媒体の主要部であり、残る符号で示した部分は全て熱アシスト磁気ヘッドの構成主要部である。ヘッドの構成要素は、111−119からなる半導体レーザ発光素子部、120−127からなる磁気記録素子部、130−133からなる磁気再生素子部、104からなる保護コート部からなる。
本実施形態のヘッドは、同図に例示したように、上流(リーディング)側から、発光素子部、直記録素子部、磁気再生素子部の順番に並ぶ構成となっている。ここで「上流(リーディング)」、「下流(トレーリング)」とは媒体がヘッドに対して上流側から下流側へ移動して記録再生を行うことを意味する。「リーディングエッジ」、「トレーリングエッジ」とは、ヘッドを構成する各要素(例えば発光素子、光学開口、記録磁極、再生素子など)のトラック方向の上流側端部、下流側端部をそれぞれ意味する。なお図7では、煩雑を避ける為、本発明に直接関連のない要素、例えば再生素子部の詳細な構造、電極取出し部の構造等は省いて示してある。
図7の半導体発光素子部において、111は基板、112は格子整合の為のバッファ層例えば膜厚数μm程度のGaAs層、113はp層例えば膜厚200nm程度のp型GaAs層、14はストライプ状積層メタル電極例えば幅が1μm、全厚100nm程度のTi/Pt/Au積層膜、15はp型クラッド層例えば膜厚1μm程度のp型AlGaInP層、16は活性層例えば膜厚100nm程度のGaInP層、117は活性層中の共振領域(発光領域)、118はn型クラッド層例えば膜厚1μm程度のn型AlGaInP層、119は電極例えば膜厚100nm程度のAuGe/Au積層膜である。
上記具体例の場合には、発光領域は、幅1μm程度で、トラック方向には活性層厚の数100nm程度の矩形状を為す。後述する様に発光面117と媒体の間隔(スペーシング)は数10nm程度離れている。媒体面上でのビームプロファイルをシミュレーションで求めた結果、トラック幅方向に約1μm、トラック方向に200nm程度のe−2径を有する長円形状であった。トラック方向のビーム径と活性層の厚みとの関係はスペーシングにも依るが、数10nmのスペーシングでは、ビーム径は活性層厚の二倍程度である。
図7の磁気記録素子部の構成においては、120は絶縁膜例えば膜厚100nmのSiO2、121は上流側磁極例えば膜厚200nmのCoNiFe膜(磁極先端部122以外の部分は図7(a)で奥に引っ込んだ構造を為す)、122は本発明を特徴付ける発光素子中に埋め込まれた記録磁極先端部、例えば先端幅が0.75μm、奥行きが1μmの先端部、123は絶縁体例えばレジストフレーム、24は記録磁界発生用コイル例えば10ターンのCuコイル、125はリターンパス用磁極例えば膜厚1μmのNiFe膜、126は上流側磁極とリターンパス用磁極の接合部、127は平坦化絶縁膜例えば膜厚500nmのSiO2である。
図7の磁気再生素子部においては、130は上流側シールド例えば膜厚500nmのNiFe、131は再生ギャップ例えばシールド間厚が200nmのSiO2(シールドとGMR間即ち再生ギャップは100nm)、132はGMR再生素子部例えばCoFe/Cu/CoFe/FeMn積層膜、133は下流側シールド例えば膜厚500nmのNiFeである。図7(a)には示していないがGMR素子の両端はハードバイアス膜例えばCoPt、及びメタル電極膜が連結されている。104はヘッド全体の保護膜であり、例えば膜厚数10μmのAl2O3膜を用いることができる。
図7の媒体部においては、151は磁気記録層、例えば膜厚30nmのCoPt−SiO2垂直磁化・多粒子系薄膜、152は軟磁性下地例えば膜厚100nmのNiFe、153は発光素子からの光を受けて加熱する部分、154は冷却過程において磁化転移が決定される位置、155は記録磁極から供給され媒体を鎖交する記録磁束、156はレーザ発光素子端面から放出されて媒体面へ向かう光束を、各々示している。図7の媒体部においては、基板、保護膜、潤滑膜は省略した。
次に、上記構成の熱アシスト磁気記録ヘッド及び媒体の形成方法について説明する。
まず、前提として、ヘッド製造時に薄膜を成長する方向は、基板が上流側に配されるように設計することが好ましい。これは半導体発光素子の成長温度の方が、磁気記録再生素子の形成温度よりも高い為である。つまり、先に磁気記録再生素子を形成してから半導体発光素子を成長させると、磁気記録再生素子が半導体発光素子の成長温度で劣化してしまう為である。
もう一つの理由は、基板をそのままスライダーとして用いることが可能となり現行の磁気ヘッドと同等の後工程が採用できる為である。
基板111としては半導体発光素子の結晶成長性からは、AlGaAs系、AlGaInP系などの赤色発光素子の場合はGaAs基板、もしくはサファイア基板上にGaAsバッファ層を設けて用い、InGaN系などの青色発光素子の場合はサファイア基板やSiC基板上にGaNバッファ層を設けて用いるのが良いが、スライダー加工及びスライダーとしての動作信頼性を確保する上ではサファイア基板もしくは現行の磁気ヘッドに用いられているアルチック系の基板を用いるのが好ましい。
GaAsを成長用基板とする場合は、薄膜素子部形成後に基板を薄くしてからアルチック基板に貼り付けて後工程に供しても良い。アルチック系基板を用いる場合は格子整合用のバッファ層を厚く設けるのが良い。
以下に半導体発光素子部の作成手順について実施例を説明する。
まず、基板111としてサファイア基板を用い、格子整合の為のバッファ層例えば膜厚数μm程度のGaAs層112をMOCVD(metal-organic chemical vapor deposition)法で成長させる。
次に、p層例えば膜厚200nm程度のp型GaAs層をやはりMOCVD法で成長させる。
次に、活性層の共振幅(レーザ発光部の幅)を規定する為に、p型GaAs層にストライプ状の溝をエッチングにより形成し、溝中にストライプ状積層メタル電極例えば幅1μm、全厚100nm程度のTi/Pt/Au積層膜114をスパッタ法で形成する。
レジスト除去後、CMP(chemical mechanical polishing)で表面平滑化と清浄化を行った後に、再度MOCVD法によりp型クラッド層例えば膜厚1μm程度のp−AlGaInP層115を成長させる。この時、メタル電極114上には直接的にはp型クラッド層は成長しないが、電極端部から横方向の拡散成長が起こり、平坦形状のp型クラッド層115がp型GaAs層113と電極114上に一様に形成される。
続いてMOCVD法により、活性層例えば膜厚100nm程度のGaInP層116を成長、さらに引続きMOCVD法でn型クラッド層例えば膜厚1μm程度のn型AlGaInP層118を成長させる。
次に、n型クラッド層にレジストマスクを形成してストライプ状の電極例えば膜厚100nm程度のAuGe/Au積層膜を共振部の直上からずれた部分に埋め込み形成する。電極119は図7(a)に示したように、共振部上部に対象に配置しても良いし片側だけに配置しても良く、活性層の共振部に電流注入される配置ならばどこでも構わない。
以上が半導体発光素子部の作成方法の一実施例である。
次に、磁気記録素子部の形成プロセスの一実施例を説明する。
まず、半導体素子部の下流側電極と上流側記録磁極膜との絶縁の為、絶縁膜120を形成する。これは半導体素子形成の最後に電極119埋め込み形成後、レジストマスクをそのままにしてSiO2をスパッタ形成しても構わない。また、下流側クラッド層118中へ上流側磁極121の埋め込み部を形成した後に、一様にSiO2を形成しても良い。この場合は図7(a)おいて、上流側磁極膜121の上流側に隣接してSiO2連続膜が形成される構造となる。
また、さらには、絶縁膜を設けずに上流側磁極を半導体発光素子の下流側電極として用いることも可能であり、この場合は特に電極119は設けなくても構わない。上流側磁極膜を半導体発光素子の下流側電極として用いる場合は、活性層共振部への電流注入の効率が良い。但し、密着性、電気的接合性を確実にする上では金属電極119を設け、上流側磁極に隣接して一様にSiO2コートする形態が好ましい。
いづれの構造の場合においても、本実施形態のポイントは下流側クラッド層中への上流側磁極埋め込みにある。埋め込みに関しては、上流側磁極の上流側に隣接して一様にSiO2コートする形態について実施例を説明する。
まず、電極119を埋め込み後、レジストを電極119形成時とは反転させたパターンに形成し、クラッド層118をエッチングに供する。記録磁極部122の部分は垂直エッチングし122以外の上流側磁極先端部はテーパエッチングもしくは等方エッチングする。記録磁極部を垂直エッチングする理由は、記録磁界の空間分布を急峻にする為であり、記録磁極部以外の部分をテーパエッチングする理由は、記録磁極部への磁束の集中を効率的に行う為である。
先端部の幅が0.75μm、奥行きが1μmの記録磁極先端部122を形成する場合、図7(a)において下流側クラッド層下流側面での最大エッチング広さは2μm程度、図7(b)において下流側クラッド層のエッチング深さ(媒体面と垂直な方向の深さ)は2−3μm程度となる。クラッド層の一部をエッチングすることにより、光出射端付近で光が一部散乱を受け発光効率を損ねるが、共振部の全長(深さ方向の距離)は数10から数100μmある為、散乱の影響は少ない。また、後述する様に高密度記録になるほど、エッチング部は縮小されるので光散乱の影響は軽減化される。
本実施例では、発光部117のトレーリングエッジと記録磁極先端部122のリーディングエッジ間の距離Dthは50nmから1μmの間で変えた。1μmの場合はクラッド層のエッチング加工は行っていない。距離Dthは、クラッド層先端をエッチングする際のエッチング時間で制御しても良いが、精度を高める上では、活性層面までエッチングしてからSiO2膜などを距離規定膜としてコートするのが良い。この場合はクラッド層のエッチャントを選定し、クラッド層と活性層のエッチング比を調整して活性層がエッチングストッパーとして作用する様にするのが好ましい。
このようにして形成したクラッド層エッチング部にフレームメッキ法を用いて上流側磁極膜21を形成した。メッキシード層としてはNiもしくはNiFeのスパッタ膜を用いることができる。続いてCuコイル124と絶縁部材123部をやはりフレームメッキ法で形成した後、磁路孔部125を形成し、引き続き下流側磁極(リターンパス)126をフレームメッキ法で形成する。リターンパスの媒体面側の面積は記録磁極先端部122のそれよりも広くして、リターンパスにおける媒体への磁束の集中を避ける。
最後に平坦化絶縁膜127をスパッタコートしてからCMPで平坦化し記録素子部の作成を完了する。
以上説明したようにして、本実施形態の熱アシスト磁気記録ヘッドを特徴付ける発光素子部と記録素子部との近接配置構造が完成する。
次に、平坦化絶縁膜127の上に再生素子部を形成する。
まず、上流側シールド130をメッキ法もしくはスパッタ法で形成し、その上に膜厚100nm程度の上流側絶縁膜を形成する。さらに、GMR膜部132を形成してからイオンミリング法などで加工し先端にGMRの島を作成する。島をマスクにしてハードバイアス膜、電極膜をスパッタして再生素子の主要部を作成する。本実施例では、再生トラック幅は0.6μmに調整した。続いて約100nmの下流側絶縁膜、下流側シールド膜133の形成を行い再生素子部を完成した。最後に保護膜104をコートし、図7には表していないが電極取出し、基板の切断、サファイア基板のスライダー加工、リードワイア接続、サスペンションへの取付けを行い、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドを得た。
この様にして得たヘッドはスピンスタンドタイプの磁気記録再生評価系に取付け、後述の本発明の実証実験に供した。
次に、本実施形態の実施に使用した媒体の作成手順について説明する。本実施例においては、媒体として軟磁性下地層付垂直磁化・多粒子系膜を用いた。
すなわち、ガラス基板上に、軟磁性下地膜152としてNiFe膜を100nm、その上に膜厚30nmのCoPt−SiO2垂直磁化・多粒子系薄膜151、さらにC保護膜10nmを連続してスパッタ形成し、潤滑剤をコーティングした後、テープバニッシュにより表面突起を除去して、前記した熱アシスト磁気記録ヘッドと共にスピンスタンドタイプの磁気記録再生評価系に取付けた。
本実施例では記録層としてSiO2母材中にCoPt磁性粒子が分散する構造の所謂グラニュラー膜を採用したが、これは磁性粒子の粒径制御、含有率制御などがやり易い為である。CoPt−SiO2記録層形成時は、CoPtターゲットとSiO2ターゲットの二元同時スパッタとし、各ターゲットへのスパッタ入力を変えて粒径とCoPt含有比を制御した。また、スパッタ中に基板にバイアスを印加し、バイアスパワーによって粒径のみを独立制御することも可能である。
記録再生実験を行う前に、別途、本発明に関わる媒体の組成、微細構造、磁気特性を調べた。典型的な条件で成膜したCoPt−SiO2膜中のCoPt含有比は60vol%であった。また、微細構造分析の結果、CoPtとSiO2は分離しており、SiO2母材中にCoPt粒子が点在する構造を為すことが判った。CoPt粒子の平均粒径は約7nmであった。
磁気特性の測定はトルクメータとVSMを用い、各々液体窒素温度から500℃の間で温度特性を調べた。室温における典型的な磁気特性は、Ku:4.5×106erg/cc、Hc:5kOe、Ms:400emu/ccであった。平均粒径を記す粒子の室温(300K)におけるKuV/kTは約125なので、本実施例で用いた媒体は室温付近では十分な熱擾乱耐性を示すものと言える。磁気特性は温度の関数として変化し、低温から高温に向けて単調に低下した。
図8はVSMで実測したHcと、シャロックの式を用いて推定したHc0の温度依存性を表すグラフ図である。VSMはループ測定に10分程度の時間を要するので、VSMループから得られたHcはその温度で10分程度の熱擾乱を受けた後の保磁力である。一方で記録の関わる保磁力Hc0は、実際にヘッドで記録する際の10ns以下程度の高速磁化反転に要する磁界であり、これは熱擾乱の影響を殆ど受けない時間内で磁化反転するのに必要な磁界を意味する。
10分程度の時間内では熱擾乱の影響を殆ど受けない温度領域ではHcとHc0はほぼ一致するが(0Kでは完全に一致する)、高温域ではHcはHc0を大幅に下回る。熱アシスト記録で重要なのはHcでは無くHc0なので、VSM測定とシャロックの式を組合せてHc0を求めた。
その結果、室温付近のHc0は5.2kOeとHcとほぼ一致したが、熱アシスト記録の記録温度に相当する100℃以上の温度域ではHcはHc0を大幅に下回った。記録に必要な媒体飽和磁界は好ましくはHcoの二倍程度であるが、飽和磁界とHc0はほぼ比例関係にあるので、本実施形態では記録に必要な磁界として以下Hc0を用いて説明する。ちなみに0Kでの異方性エネルギーKu0は8×106erg/cc、0Kでの飽和磁化Ms0は600emu/ccであった。膜中のCoPt含有比は前記したように60vol%なので、正味の磁化量Isbは1000emu/ccである。高温側のHc0を外挿するとキューリー点は500数10℃と推定され、Hc0が2kOeに低下する温度は約300℃と推定された。
以上の磁気特性を有する媒体を、本発明の熱アシスト磁気ヘッドと共にスピンスタンド磁気記録再生評価機にセットし、媒体を10m/sでヘッドに対して移動させ、100kfciの孤立波出力相当の比較的低い線密度で記録再生試験を行い、再生出力電圧を調べた。パラメータとしては、発光素子への注入電流により光出力パワーを、記録コイルへの通電電流により記録磁界強度を、各々変えた。
図9及び図10は、その評価結果を表し、図9(a)は光出力パワーPoとトラック幅1μm当りのGMR再生出力電圧Vsとの関係を表すグラフ図、図9(b)は記録コイルへの通電電流Iwと再生出力電圧Vsとの関係を表すグラフ図、図10は発光素子発光面(図7の117)のトレーリングエッジと記録磁極(図7の122)のリーディングエッジ間の距離Dthと再生出力電圧Vsとの関係を表すグラフ図である。各図のデータ曲線には、パラメータとして変えたPo,Iwの値を示した。
ここで、実用的な磁気記録装置として望ましい記録コイルへの通電電流は60mA以下、好ましくは40mA以下、最も好ましくは20mA以下であり、実用的な光記録装置として望ましい光出力は15mW以下、より好ましくは10mW以下である。図9には示していないが、光照射しない場合は、記録コイルへの通電電流を60mA以上にした場合でも全く出力は得られなかった。
図9から分かるように、本実施形態に従って、記録磁極下部を媒体が通過する上流側で光照射による加熱を行って、媒体の記録に必要な磁界を低下させてから記録を行う形態においては、実用的な光強度と記録電流の範囲で十分に高い再生出力を得ることができる。
さらに本実施形態に関わる重要なデータは、光照射による加熱と記録磁界印加のタイミングを規定するDthに関する図10のデータである。すなわち、図10から光スポットのe−2径程度内にDthを設定した場合には、最も好ましい光パワーと記録電流において十分に高い出力が得られること、パワーと通電電流を高くすれば、光スポット径の倍程度のDthであっても十分な再生出力が得られることが判る。
また、Dth>4Lの場合には、光照射パワーと通電電流をさらに大きくした場合でも再生出力の改善は殆ど見られなかった。これはDth>4LではHc0の低下している領域外に記録磁界が供給されてしまっていることを意味する。トラック方向の光スポット径は、前記した通り、発光素子の活性厚の概ね二倍である。従って、媒体進行方向の上流(リーディング)側から、レーザ発光素子、記録磁極の順番に配され、発光素子の発光面のトレーリングエッジと記録磁極のリーディングエッジ間の距離をDth、発光面のトラック方向の長さをLとおく時、Dth≦4Lを満たす事を特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッドが、有意な記録を行う為に必要となる。
活性層厚をLとした時に、発光素子のクラッド層厚は通常1μm程度であり、薄い場合でも500nm程度以上はレーザ発振を得る為に必要である事から、媒体面から見込んだ際に、レーザ発光素子の下流(トレーリング)側に記録磁極が埋設されている構造を為すことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッドが、実用上極めて有用と言える。ここで上記の実証実験結果の理解を助ける目的で、本発明の記録過程について図面を用いて説明する。
図11は、本実施形態の熱アシスト磁気記録区ヘッドを用いた記録過程を模式的に表す概念図である。図11(a)は図7(b)の中で記録過程に関わる部分を抽出した断面図、図11(b)は媒体面での光ビームプロファイルと媒体の温度分布を表すグラフ図、図11(c)は媒体のHc0の空間分布と記録磁界の空間分布を表すグラフ図である。
図11(a)においては、図7(b)に表したものと同等の機能を有する要素は同一の符号で示してあり、115は発光素子のリーディング側のクラッド層、117は活性層発光部、118は発光素子のトレーリング側のクラッド層、122はトレーリング側クラッド層中に埋設された記録磁極先端部、151は媒体記録層、153は媒体の光照射部、154は磁化転移が決定される位置、155は媒体に印加する記録磁束、156は発光素子発光部117から放出する光束を各々示している。
媒体をヘッドに対して移動させ(図11では紙面右側から左側へ移動;即ち右側がリーディング側、左側がトレーリング側となる)、発光素子を駆動して活性層発光部117から光束156を記録層151に照射する。媒体に照射される光の空間分布は図11(b)のB1に示される様なガウス形分布を呈する。このガウス形の光により記録層が加熱される。媒体は高速で移動しているので、記録層の温度は光プロファイルに対して、トレーリング側にピークシフトして伸びる形状、図11(b)のB2の形状を呈する。記録層のHc0の分布は温度分布B2と図8に示したHc0の温度特性で決定され、図11(c)のC1で示される分布を呈する。このC1の分布と記録磁極から発生して媒体を鎖交する磁束155の分布C2の交点が磁化転移が決定される位置154になる。
図11から判る様に、カーブC1の谷の深さは、照射する光パワーPoが高い程深く、カーブC2の山の高さは記録コイルへの通電電流Iwが大きい程高い。また、C1,C2の交わる位置は発光面117のトレーリングエッジと記録磁極122のリーディングエッジ間の距離Dthに依存して変化する。Dthが4L以下の場合には、記録電流もしくは光照射パワーを高くすればC1,C2は交点を持つが、Dthが4Lよりも大きいとC1とC2は交点を持たなくなり有意な記録ができなくなることが理解される。
ここで、図11から本発明の熱アシスト磁気記録における磁化転移点は、従来の磁気記録における磁化転移点と異なり、記録磁極先端部のトレーリングエッジ以外の点にも位置することが判る。従来の磁気記録では、媒体のHc0は空間的に一様であり、Hc0よりも大きな記録磁界が印加して磁化転移を形成したいた為に、磁化転移部は必ず記録磁極先端部のトレーリングエッジに位置していたが、本発明の熱アシスト磁気記録においては、磁化の向きが記録磁界の向きに揃うのはC1とC2の二つの交点の間のみである。媒体がC1とC2の間を通過するタイミングで記録磁界の向きが逆転した場合は、その位置において磁化転移が形成される。従って磁化転移は必ずしも記録磁極のトレーリングエッジに形成されるのでは無く、リーディングエッジからトレーリングエッジ間のC1とC2間の任意の領域で形成される。
また、図11には記録素子主要部と媒体の側断面のみが描いてあるが、媒体面上の光スポットの強度分布がトラック幅方向に湾曲している時には、C1とC2の交わる線も湾曲する。従って本発明の熱アシスト磁気記録によって形成される磁化転移もトラック幅方向に湾曲する場合が有る。磁化転移が必ずしも記録磁極先端部のトレーリングエッジでは無くC1とC2間の任意点で形成される点、磁化転移がトラック幅方向に湾曲する場合がある(基本的に媒体の等温度線の形状に従う)点が、従来の磁気記録と本発明の熱アシスト磁気記録の相違点として挙げることができる。
上記した本実施形態の基本的な実施例では信号出力の挙動を明確に調べる目的で低い記録周波数を選んだが、高い線密度で記録した時も同様であることは説明するまでもない。
(第2の具体例)
次に、本実施形態の第2の具体例について説明する。前述した第1の具体例では、媒体として多粒子系を用いたが、本実施形態は連続磁性膜を媒体として用いる場合にも効果的である。本具体例においては光磁気記録媒体として用いられている、非晶質希土類・遷移金属フェリ磁性合金膜(R−T膜)を搭載する媒体を試作して前述した第1具体例と同様の評価を行った。
作成した媒体は、ガラス基板上に、Al合金系ヒートシンク層、TbFeCo記録層、C保護層、潤滑層を順次積層した構成である。ヒートシンク層は記録層の熱応答特性を調整する為に設けた。
図12は、本具体例において試作した媒体の熱磁気特性を表すグラフ図であり、同図においてHcは保磁力、Msは再生信号に関わる飽和磁化である。
光磁気膜の様な連続磁性体においては熱擾乱が無いので、HcとHc0は基本的に全温度領域で一致する。記録層の組成を調整して、室温(再生温度)付近でのMsを200emu/cc程度として、十分な磁気信号が得られる様にした。また、補償点を100℃程度、記録点は200数10℃、キューリー点は300℃とした。この媒体を第1具体例の場合と同様に本実施形態の熱アシスト磁気記録ヘッドと共にスピンスタンド評価機にセットして同様の評価を行った。
その結果、第1具体例の場合とほぼ同等の効果が得られ、発光面117のトレーリングエッジと記録磁極122のリーディングエッジの間の距離Dthを、媒体面上でのトラック方向のビーム径の二倍以内即ちDth≦4Lにした時に良好な再生信号を得ることができた。
図13は、図12の媒体を用いて本発明を実施する場合の記録過程の概念を説明するための概念図である。熱アシスト磁気ヘッドの構成、光強度分布、媒体の温度分布は図11の(b)、(c)と一致する。図11と異なるのは媒体のHc分布であり、100℃付近に補償点を設定したので、図11(b)のB2の温度分布に対応して、図13のC3に示すHc分布が形成される。このC3の分布と記録磁極から供給される磁界分布C2の交点が磁化の向きが決定される位置である。
(第3の具体例)
次に、本発明の第3の具体例として、第1具体例に関して前述した多粒子系媒体を用いた具体例について説明する。
前述した第1及び第2具体例では、トラック方向には幅広い発光部をそのまま用いたが、高密度記録を実現するためには、発光部のトラック幅は狭い方が良い。そこで、発光素子の媒体面側に反射膜を設けて反射膜に微細孔を設けて記録実験を行った。
図14は、微細孔を有する熱アシスト磁気記録ヘッドの一実施例の主要部構成を表す平面図であり、ヘッド主要部を媒体面から眺めた図である。図14においては、図7と同等の機能を有する要素には図7と同一の符号で示した。すなわち、図14において、116は活性層、117は発光部、118はトレーリング側クラッド層、121は記録磁極膜、122はトレーリング側クラッド層に埋め込まれた記録磁極先端部、157は発光素子の出射面側にコーティングされたAl合金系反射膜、158は反射膜に設けられた微細な光学開口である。図7に表した構造と図14の構造の違いは、反射膜157と光学開口158の有無であり、他の部分は共通とすることができる。
図14に例示した微細な光学開口を有する熱アシスト磁気記録ヘッドは、例えば以下の様に作成することが可能である。
すなわち、図7に表した素子を形成し基板壁開して、媒体対向面を露出した後、媒体対向面に絶縁膜として例えばSiO2を5nmコートした後、Al合金反射膜を10nmスパッタコートする。そして、媒体対向面からGaイオンをFIB(focused ion beam)照射して光学開口158を開ける。
反射膜に先立ってSiO2をコートするのは、素子間の電気的な接触を防止する為である。反射膜厚は厚い方が光学開口以外の発光部から光が漏れるのを防ぐ上では好ましいが、厚いと磁気素子のスペーシングロスが大きくなって好ましくない。また、光学開口をFIB加工する際に、同時に記録磁極先端部も加工して磁極のトラック幅を狭くしても良い。FIB加工を用いれば、通常のPEP(photo-engraving process)では作成できない、数10nmの加工も可能である。本具体例では、光学開口のトラック幅を200nm、記録磁極のトラック幅も200nmにFIB加工で仕上げた。ここで、FIB加工の位置決めは現行の磁気ヘッドのABS(air bearing surface)面からのトリミングブロセスと同様に実施することができる。
図14において、光学開口158のトレーリングエッジと記録磁極先端部122のリーディングエッジ間の距離Dthは、50nmから600nmの間で変え、光学開口のトラック方向の長さLは50nmと100nmの二通りに加工した。FIB加工後のヘッドはチップ切断、電極取出し、スライダー加工、サスペンション取付け、電極接続などの後工程を経て、本実施形態の第1具体例で用いたスピンスタンド形の記録再生評価機に取付けた。
本具体例では、GMR再生素子のトラック幅は第1具体例と同じ0.6μmとし、光スポットのトラック幅と記録磁極のトラック幅のみをFIBで狭くしたので、再生出力は第1具体例あるいは第2具体例に比較して低下したが、記録できたかどうかはGMR素子の再生出力で反転可能であった。
図15は、図14のヘッドを用いて行った記録再生実験の結果を表すグラフ図である。すなわち、図15の縦軸は再生出力を表し、横軸はDth/Lの比を表す。図15から、有意な記録を行うためには、Dth≦4Lなる条件が好ましく、さらに好ましくはDth≦2Lであることが、微細光学開口を用いた場合においても明らかとなった。
(第4の具体例)
次に、本実施形態の第4の具体例として、熱アシスト磁気記録装置の一実施例を説明する。
図16は、本具体例の熱アシスト磁気記録装置を例示するブロック図である。図16において、Ioは発光素子駆動入力、Isは信号入力、Osは信号出力、201は発光素子駆動回路系、202はヘッドに内蔵された発光素子、203はECC(誤り訂正コード)附加回路系、204は変調回路系、205はき録補正回路系、206はヘッドに内蔵された記録素子部、207は媒体、208はヘッドに内蔵された再生素子部、209は等価回路系、210は復号回路系、211は復調回路系、212はECC回路系である。
従来の磁気ディスク装置に、発光素子駆動入力Io、発光素子駆動回路系201、発光素子202が附加されたブロック構成を為す点、前記具体例に詳述したようにヘッドの構成が新規な点、前記具体例に詳述したように媒体の熱磁気特性が特別に調整されている点、が本具体例の熱アシスト磁気記録装置を特徴付けている。
発光素子駆動入力はレーザ素子へのDC電圧の供給で構わず、発光素子駆動回路系は特に設けずに発光素子をDC駆動しても構わない。変調回路の出力に同期させてパルス的に駆動しても良く、パルス駆動の方が回路構成は複雑化するが、レーザの寿命を長期化する上では好ましい。ECC附加回路系203とECC回路系212は特に設けなくても構わない。変復調の方式、記録補正の方式は自由に選定することが可能である。
媒体への情報入力は、発光素子部202からの光照射と、この光照射でHc0が低下している媒体位置に、記録素子部206から記録信号変調された記録磁界を印加することにある。記録情報が媒体面上の磁化転移列として形成される点は従来の磁気記録装置と同等である。但し媒体面上での光スポットがトラック幅方向に湾曲している場合には、磁化転移もトラック幅方向に湾曲している点が特徴となる。湾曲した磁化転移は発光素子の発光部に微細孔を設けずに本発明を実施する場合に形成され、
また、微細孔を用いる形態においても孔近傍に形成されるニアフィールド光の分布がトラック幅方向に湾曲している場合にも形成される。微細孔の形状を工夫して、光強度分布がトラック幅方向に直線形状を為す場合には、磁化転移は湾曲形状にならず直線形状を為す。磁化転移列から発生する媒体からの漏洩磁界を信号磁界として再生素子部208が検出する。
再生素子部はGMR形型典型的であるが、通常のAMR(anisotropic magnetoresistance)型でも良く、将来的にはTMR(tunneling magnetoresistance)型を採用しても良い。
上記構成を用いて熱アシスト磁気記録再生を実施した結果は、前記具体例においてスピンスタンドタイプの実験評価系で得られた結果と同等である。
(第5の具体例)
次に、本実施形態の第5の具体例について説明する。
前述した具体例においては、通常の積層型薄膜磁気ヘッドのリーディング側に端面発光素子を設ける場合について述べたが、本実施形態はプラナー(planer)型薄膜磁気ヘッドに面発光素子を設ける場合にも適用可能である。
図17は、本発明をプラナー型薄膜磁気ヘッドに適用した場合の一実施例の主要部構成図であり、記録素子部と面発光素子部のみを示したものである。図17において、159はn型クラッド層、160は活性層、161はp型クラッド層、162は低屈折率部、163は高屈折率部、164は発光部、165は記録磁極、166は記録磁極先端部、167はコイル、168は熱絶縁部、169は対向テーパ部、170は保護膜、151は媒体の記録層、152は媒体の裏打ち層、Xは媒体進行方向、Lは発光部の長さ、Dthは発光部のトレーリングエッジと記録磁極先端部のリーディングエッジ間の距離を各々示している。
図17には再生素子部は表されていないが、記録素子部のリーディング側もしくはトレーリング側にプラナー構造で配置することが可能であり、具体的には例えば媒体に面して磁束掬い上げ用のヨークが配され、ヨーク中にGMR再生素子が埋め込まれた構造を用いることができる。
図17に表した熱アシスト磁気記録ヘッドの構成をその製造工程に沿って説明すると以下の如くである。
まず、基板としては、前記具体例と同様にGaAsバッファ層を有するサファイア基板、比較的厚いバッファ層を成長させたアルチック基板などを用いる。図17には基板を表していないが、同図の上面に配される。即ちn型クラッド層の上方に基板があり、薄膜の成長方向は図17の上から下へ向けて行われる。
図示しない基板上にn型接合層を成長した後、例えばn型AlGaAs/AlAs多層クラッド層159を成長、続いてInGaAs多層量子井戸型活性層160を成長、さらにp型GaAs/AlGaAs多層クラッド層161を成長する。電流注入の為の電極は発光素子の側面部に設けられ、例えばZn拡散層を電極として用いることが可能である。活性層からの発光は活性層の上下方向に起こり、二つのクラッド層によって活性層側へ反射、増幅されてレーザ発振する。
レーザ光はp型クラッド層161の下面から記録磁極側へ放射する。発光素子部を成長後、絶縁部材の埋め込みと表面平滑化を行った後、記録素子部と収束レンズ部の形成を行う。先ず発光素子の出射部にテーパ状に低屈折率部162を形成し、162の中央部に逆テーパ状の加工を施した後に、逆テーパ部に高屈折率部163を埋め込み形成して、収束レンズ部を作成する。発光素子部から出射した光は低屈折率部162と高屈折率部163の界面で内側に曲げられ、効率良く発光部164に導かれる。低屈折率部162としては、CaF2,MgF2,SiO2など、高屈折率部163としては、ZnS,TiO2,Si3N4などが各々好適である。
収束レンズ部162,163は光利用効率を向上する目的で設けられるものなので、発光部164のサイズが比較的大きく収束レンズ無しでも利用効率が比較的高い場合などは設ける必要は無い。収束レンズ部を媒体面から見込んだ時の形状は円形、長円形、正方形、長方形いづれでも良い。
次に、高屈折率部163上に再度低屈折率部材をテーパ状に形成し、テーパコーンの側壁を利用して記録磁極165と対向テーパ部169を形成する。記録磁極165の形成にはレジストフレームメッキ法が好適である。対向部169は、垂直記録方式を採用する場合には非磁性体、長手記録方式を採用する場合には記録磁極と同一の磁性体で形成される。ここでは垂直記録方式を実施したので、非磁性体例えばCu,Al,Auなどの高反射率膜を表面に配する部材を用いた。
光による昇温が顕著な場合には、W,Mo,Taなどの高融点金属を配するのが好ましい。また、記録磁極のテーパ面上にも高反射率膜もしくは高融点金属膜を熱絶縁部168として被覆するのが良い。こうする事で光による記録磁極の昇温を防止して記録磁界が低かするのを防止することができるのと同時に、光利用効率を向上することができる。熱絶縁部は金属被覆単体でも良いが、熱伝導率の低いセラミクス部材と金属膜を積層すると記録磁極の昇温防止効果がより向上する。
記録磁極165と対向部169を形成した後、磁極内にコイル孔を形成し、続いて記録電流を通電するCuコイル部167を例えばフレームメッキ形成する。続いて、記録磁極先端部166の微細加工をPEPもしくはFIB形成する。発光部164もサイズによってはFIBで仕上げ加工を行うのが好ましい。
最後に保護膜170をコーティングすれば、図17に表した熱アシスト磁気ヘッドが完成する。
この様にして形成した熱アシスト磁気記録ヘッドを用いて前記具体例と同様の評価を実施した結果、Dth≦4Lの場合に有意な記録が可能なことが確認できた。また、図17の構成においても媒体面から見た場合に、記録磁極先端部が発光素子に埋め込まれた構造を為していることは言うまでも無い。
以上、第1乃至第5具体例を挙げつつ説明したように、本実施形態によれば、高密度記録再生に必要な極めて微細な粒径からなる低ノイズの多粒子媒体に対して、室温付近で十分に高い熱擾乱耐性を付与できると共に、記録磁界印加部では光照射により媒体の磁化反転に必要な磁界を低減化することにより、実用的な記録ヘッドで高速記録を実現することが可能となる。また、発光素子、記録再生素子一体化により、小型軽量の熱アシスト磁気記録ヘッドが提供できるので、高速シーク動作が可能になると共に低価格にヘッドとドライブを構成することができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の第1乃至第3の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
例えば、熱源としての電子放出源や発光素子、あるいは磁気記録ヘッドや磁気再生ヘッドを構成する各要素の構造や材料については、前述したもの他にも当業者が公知技術の範囲から適宜選択して同様の効果を得ることができる。
また、記録媒体として用いるものも、磁気的な記録が可能なものであれば良く、いわゆる「面内記録」でも「垂直記録」でも可能であり、例えば、磁気的記録層と軟磁性層とを有する「キーパードメディア」などの各種の記録媒体を用いることができる。
さらに、記録媒体は、いわゆるハードディスクには限定されず、その他フレキシブルディスクや磁気カードなどの磁気的記録が可能なあらゆる媒体を用いることができる。
同様に、磁気記録装置に関しても、磁気記録のみを実施するものでも良く、記録・再生を実施するものでも良い。磁気ヘッドと媒体との位置関係についても、いわゆる「浮上走行型」でも「接触走行型」でも良い。さらに、記録媒体を磁気記録装置から取り外し可能とした、いわゆる「リムーバブル」の形式の磁気記録装置であっても良い。