JP2005189833A - 画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 非常に高速な画像形成装置であり、高速で繰返し使用した際に、異常画像発生がなく、安定で解像度の高い画像を出力する画像形成装置を提供する。
【解決手段】 50μm以下のビーム径を有する光源を用いた画像形成装置において、電荷発生層中にCuKα線(波長1.542A)の対するブラッグ角2θの回折ピークとして、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、かつ26.3°にピークを有さず、一次粒子の平均サイズが0.25μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶(図19参照)を含むことを特徴とする画像形成装置である。
【選択図】 図19

Description

本発明は、高解像度で高精細な画像を形成する画像形成装置に関する。詳しくは、50μm以下のビーム径により書き込みを行う画像形成装置において、該画像形成装置に用いられる電子写真感光体が、少なくとも特定結晶型および特定の粒子サイズを有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層と電荷輸送層を順に積層してなる電子写真感光体である画像形成装置に関する。
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行う光プリンターは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。このデジタル記録技術はプリンターのみならず通常の複写機にも応用され、所謂デジタル複写機が開発されている。また、従来からあるアナログ複写にこのデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるため今後その需要が益々高まっていくと予想される。さらに、パーソナルコンピュータの普及及び性能の向上にともない、画像及びドキュメントのカラー出力を行なうためのデジタルカラープリンタの進歩も急激に進んでいる。
近年、上記プリンターや複写機はカラー化を含め装置の高画質化が要求される。デジタル機における高画質化は2つの課題があり、1つは如何に静電潜像を微小ドットで均一に形成するかであり、もう1つは各種異常画像を如何に低減するかである。
前者に関しては、静電潜像を形成するための書き込みビーム系を小さくし、これを最大限に活用するための周辺技術の開発が必要である。後者に関しては、感光体の劣化等に起因する異常画像の発生がそのほとんどの原因であり、感光体の高耐久化及び高安定化技術を獲得するとともに、使用するプロセスの特性を理解した感光体の開発が必要となる。
前者の技術としては、2つの方向性が提示されている。1つは、短波長発振のレーザー光を使用する技術であり、紫〜青色の発振を行うブルーレーザーと呼ばれる450nm以下の発振波長を有する書き込み光源が開発された。これは高エネルギーを有し、ビーム径を容易に絞れるため、高密度書き込みが可能である。これにより、これまでの光源を用いた書き込みよりも小さいビーム径による書き込みが実現できるようになった。
しかしながら、この書き込み光源は過去に使用されてきた露光部材の光波長よりも短いため、いくつかの課題を生み出すことになる。1つは、これまで使用されてきた電荷輸送層に使用される電荷輸送物質は、そのほとんどが輸送特性を向上させるためにπ共役系を広げた構造を有しており、材料そのものが黄色を呈しており、上記短波長光源による書き込み光波長に吸収性を有する。このため、電荷輸送物質が書き込み光を遮ることとなり、感光体の光感度を低下させることになる。また、電荷輸送物質そのものが光吸収することにより、電荷輸送物質が励起状態を経由して劣化を促進することになり、感光体の機能そのものを低下させてしまう。2つめは、電荷発生物質の課題である。通常、これまでの電子写真感光体は、電荷発生物質を含有する電荷発生層上に、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を積層した機能分離型の感光層構成で用いられてきた。上述のように、これまで使用されてきた電荷輸送物質はそのほとんどが黄色をしているため、概ね450nmより短波長の光(例えば、帯電部材で発せられる紫外線、蛍光灯などから発する紫外線など)を電荷輸送層で吸収してしまい、電荷発生層を通過することはなく、これにより実は電荷発生層(電荷発生物質)が守られてきた。450nmより短波長側の光は、エネルギーが高く、光キャリア発生に必要なエネルギーよりも高く余剰なエネルギーをも有している。
図1に有機系電荷発生物質による光キャリア発生機構の模式図を示す。図1に示すように有機電荷発生物質の光キャリア発生は、最低励起一重項状態(S)を経てなるものである。基底状態(S)に存在した電荷発生物質は、光吸収により励起状態に励起される。この際、光エネルギー(即ち波長)によりエネルギー的に打ち上げられる高さ(ポテンシャル)が異なる。SとSのエネルギー差よりも高いエネルギーを得た電荷発生物質は、一度、より高い励起状態(S)まで打ち上げられ、S状態まで通常熱的に緩和され、その状態より光キャリアを生成する。この際、Sのエネルギーレベルよりも高いエネルギー(SとSのエネルギー差)は、余剰エネルギーであり、すべて熱的に緩和されずに他の反応に使用されることもあり得る。有機物の励起状態とは、非常に活性な状態であり、熱的に内部緩和されS状態に落ち着く以外に、その余剰エネルギーを利用して他の物質と反応したり(酸化、分解など)、同一分子間で結合したり、分子構造を変えたり(異性化など)もする。このように、光キャリア発生という反応過程だけを考えると、余剰なエネルギーは実は有害であり、電荷発生物質に高い化学的安定性を要求することになる。
以上のことから、短波長レーザー光による書き込みを使用する場合には、感光体を構成する主材料(電荷発生物質、電荷輸送物質)の開発が必要になってくる。
書き込み光に関するもう1つの技術としては、既存の光源(半導体レーザー(LD等))を使用し、光源より発せられた光を、光学的にビーム径を絞る技術である。この技術は光学系(レンズ、ミラー等)の開発が必用となるが、最近ではこれまでにデジタル画像形成装置に一般的に使用されるLD光源を用いて50μm以下のビーム径に絞ることができるようになってきた(例えば、特許文献2)。
このような書き込み技術が開発されたことにより、感光体開発においては既存材料技術を展開できることになり、コスト的にも非常に有利になる。
上述のような画像形成装置における光学系の開発により、書き込み径を従来のもの(概ね60〜70μm以上)よりも遙かに小さくすることができるようになってきた。これにより感光体上に形成される静電潜像のドット径も小さくできる可能性が出てきた。しかしながら、静電潜像の形成は感光体に印加される電荷を、書き込みにより生じた逆電荷により打ち消すことにより行われるものであり、小径ビームを使用したからといって単純に小径ドットが形成されるものではなく、小径ビーム形成技術を活かすための工夫も必要となる。
すなわち、小径ビームの書き込みにより電荷発生層に照射されるビーム径は確かに小さくなるものの、その高密度書き込みのため、狭い面積に高密度で光キャリアが生成することになる。この光キャリアは正孔と電子というペアで生成されることになるが、感光体にかかる電界により、それぞれ感光体表面と電極(導電性支持体)に移動する。この際、移動する方向は感光体表面に印加された極性によって決定されるが、機能分離型有機積層感光体の場合には、概ね表面にマイナス極性を印加するため、正孔は表面に、電子は電極方向に進むことになる。
同極性の電荷が近接した場合に、互いの電荷によりクーロン反発することが知られており、感光体の場合も例外ではない。特に上述のように高密度書き込みを行った場合には、高密度で光キャリア生成が行われるため、スムーズに電荷を移動させないと、正孔と電子による再結合(キャリア発生効率の低下を生み出す)の他に、電荷輸送層を移動する際にドットが広がってしまうという問題を生み出す。その結果、小径ビームで書き込んだつもりでも、感光体表面に形成される静電潜像のドット径が大きくなってしまうという結果をもたらす(図2参照)。
図3には、感光体に印加される電界強度と静電潜像を現像したドットの関係を示す。図3では、十分に小粒径のトナーを使用して現像した場合のトナー像を示しているが、電界強度が小さい場合には、ドットが大きく且つかすれている状態になっている。これは、電荷発生層で生成したキャリアが電荷輸送層を横切る際にクーロン反発により広がってしまった結果を示し、感光体表面における書き込み部と非書き込み部に対応する電位コントラストが十分にとれなかった結果を示す。従って、このような小径ビームの書き込みにより微小ドットを形成する場合には、感光体に印加する電界強度を高めに設定しなければならない。本発明者らの検討に依れば、電荷輸送層の膜厚が30μm以下程度の通常の電子写真感光体であれば、電界強度として30V/μm以上の印加が必要である。
この30V/μm以上の電界強度は、通常の印加電界強度よりも高めの設定であり、感光体へのストレスを増加させることになる。図4には、感光体に印加する電界強度と地汚れの関係を示す。図中の地汚れランクとは、地汚れの程度を示すものであり、数字が大きいほど地汚れの程度が良いことを示す。図から分かるように、電界強度の増大は地汚れの発生を促し、電界強度に関して地汚れとドット再現性(微小ドットの形成)はトレード・オフの関係が成立している。従って、上述のような微小ドットの再現性をよくするためには、地汚れ耐性の強い感光体が必要になる。
また、電荷発生層に書き込まれたビームが、均質な電荷を生み出すためには電荷発生層そのものがかなりの均質体である必要がある。電荷発生層は通常、電荷発生物質である有機顔料をバインダー樹脂に分散した形態により構成される。従って、本質的には不均質体である。しかしながら、このような分散膜においては、ある程度十分な分散が行われているか、顔料粒子そのものが十分に小さい状態で存在すれば、光学的には均質体の挙動を振る舞う。このため、感光体の電荷発生層を構成する顔料粒子は書き込み波長に対して十分に小さな粒子サイズであることが必要である。
従って、ビーム径が50μm以下の書き込み光源を用いて微小ドットを形成するような画像形成装置においては下記の項目が必用となる。
(1)単位面積あたりに高密度な書き込みが行われるため、使用される感光体(電荷発生物質)が高い光キャリア発生能を有すること。
(2)電荷の移動に際してクーロン反発が影響して電荷が拡散しないよう、感光体に与える電界強度を十分に大きくすること(30V/μm以上が必要)。
(3)高い電界強度の印加に際して、地汚れが発生しやすくなるため、地汚れ耐性の高い感光体が必要。
(4)小径ビームの書き込みに対して、十分な均質性を有すること。このため、電荷発生層に含有される電荷発生物質は十分な小ささを有していること。
以上の問題は、電荷輸送物質の透明性以外は、すべて感光層(電荷発生層)に関連することであり、高密度書き込みによる微小ドット形成を意図した画像形成装置用感光体の開発が電荷発生物質の開発に依存しているかを示す。
なお、本願において、電界強度は、下記式にて定義したものを用いるとする。
電界強度(V/μm)
=現像位置における感光体未露光部の表面電位(V)/感光層膜厚(μm)
高感度・高速応答性を有する感光体用電荷発生物質として、CuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を用いることが知られている(特許文献1参照)。
この特定結晶型は、非常に高いキャリア発生機能を有しており、高速画像形成装置用感光体の電荷発生材料として有効に使用できる。しかしながら、この結晶型は、結晶としての安定性が低く、分散等の機械的ストレス、熱的なストレスに対して結晶転移し易いという問題を抱えており、結晶転移後の結晶型は、結晶転移前の結晶型に比べて非常に低感度であり、結晶の一部が結晶転移した場合、充分な光キャリアを発生することができない。また、感光体の繰り返し使用において、帯電性の低下を引き起こしやすく、ネガ残を引き起こしやすいという問題を有していた。また、ネガ・ポジ現像固有の問題点である地汚れ画像と呼ばれる異常画像が起こりやすいという問題点も有している。
また、小径ビームによる書き込みは、高密度に書き込むことを意図したものである。しかしながら、後述の様に高密度化における感光体感度の相反則不軌の問題が発生したり、小径ビームに対する書き込み(静電潜像)ドット輪郭の不鮮明さが発生したりする場合がある。
更には、上述の様に小径ビームを利用した小径ドットを形成する際に、電荷発生層が十分な均質体構造になっていないと、微少ドットの輪郭が鮮明にならず、必ずしも小径ビームの利点を利用し切れず、電荷発生層の均質化(即ち、電荷発生物質粒子の微細化)が考慮されていなかった。
このように、光学系の革新技術により小径ビームを形成し、高密度書き込みを実現する画像形成装置を設計するために発生するプロセス上の制約(要望)に対して、感光体の開発が十分とはいえない状況であり、安定した繰り返し画像形成を実現するための感光体開発が十分でないのが実情であった。
特開2001−19871号公報 特開2002−277801号公報 特開平6−293769号公報 特開平8−110649号公報 特開昭52−36016号公報 特開平3−109460号公報 特開2000−206723号公報 特開2001−34001号公報 特開平5−94049号公報 特開平5−113688号公報 特開平1−299874号公報 特開平3−269064号公報 特開平2−8256号公報 特開昭64−17066号公報 特開平11−5919号公報 特開平3−255456号公報 特開昭61−239248号公報 Japan Hardcopy ‘89論文集 p.103 1989年 Moser等による「Phthalocyanine Compounds」(1963年)、「The Phthalocyanines」(1983年)
従って、本発明の目的は、小径ビームを用い高密度書き込みを行い、繰り返し使用した際に、異常画像の発生がなく、安定した状態で画像を出力する画像形成装置を提供することにある。
具体的には、高精細な画像を形成するため、書き込み光源に50μm以下のビーム径を有する光源を使用する画像形成装置において、特定結晶型のチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光体を使用することにより、チタニルフタロシアニン固有の高感度を維持し、高耐久で高速画像出力が可能な画像形成装置を提供することにある。
本発明者らは、50μm以下のビーム径を有する光源を用いた画像形成装置において、繰り返し使用時においても異常画像の少ない画像形成を行うため数々の検討を行なったところ、使用する電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を順に積層してなる電子写真感光体であり、該電荷発生層中にCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、更に26.3°にピークを有さず、かつ1次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含むことによって、上記問題点を解決できることを見出した。
上述の画像形成における地汚れの問題は、感光体における電荷リーク現象によるものと理解されている。本発明の効果の詳細な理由は不明であるが、地汚れに関しては、これまでに知られている27.2゜に最大回折ピークを有する他のチタニルフタロシアニン結晶に比べ、本発明に用いられるチタニルフタロシアニン結晶の化学的な安定性が高いことに由来し、地汚れの発生を低減化できることに起因しているものと推定される。
また、微少ドット輪郭の不鮮明さは、電荷発生層における不均一性に基づくものであり、本発明の様に電荷発生層における電荷発生物質粒子が十分に微細化してあると、光学的に電荷発生層が均質体構造となり、潜像ドットにおける輪郭が非常にシャープになる。このことは、これまで使用されてきた光源としてのビーム径と比べて、ビーム径が小さくなった分、粒子サイズを更に小さくしなければならないという書込ビームサイズから来る課題であり、これまでの書き込みビームサイズに対応した電荷発生層では対応が出来ない問題であると考えられる。
図5と図6にはそれぞれ、電荷発生層に含有する電荷発生物質粒子のサイズが細かい場合と大きい場合に同じ大きさのビームにて書き込みを行った際の静電潜像の概略図を示す。図5に示される様に、電荷発生物質の粒子サイズが細かくかつ粒度分布が狭い様な場合には、ドットの輪郭がシャープであり、一方粒子サイズが大きくかつ粒度分布が広い(もしくは粗大粒子を含んでいる)場合(図6)には、ドットの輪郭が崩れ鮮明性に欠けるものである。従って、粒子サイズが細かくかつ粒度分布が狭い電荷発生層を用いることにより、小粒径トナーを使用して、高精細なドット形成技術を更に効果的に実施できるようになる。
更に、光学系の工夫により小径ビームを形成した場合、単位面積当たりの入射フォトン数が増え、電荷発生物質に照射される単位時間あたりのフォトン数が増えることになる。この結果、低電界時でのキャリア発生効率の低下が起こり、表面電荷を十分に低下できない場合が発生する。これは、キャリア発生において相反則不軌現象が起こることに由来している。
相反則不軌が起こる理由は幾つかある。例えば、(i)電荷発生粒子内で発生した励起子が、粒子表面に到達し、フリーキャリアする前に失活してしまうこと、(ii)生成したフリーキャリアが電荷輸送物質にキャリアを渡す前に再結合(ジェミネート・リコンビネーション)してしまうこと等が挙げられる。これらの原因としては、電荷発生物質粒子のサイズが大きすぎ、体積(書き込み方向に対する断面積)に比例して受け取るフォトン数に対して、十分な表面積を有せないことに端を発すると考えられる。
図7には、感光体に用いる電荷発生物質の粒子サイズを変更した場合の2種類の感光体の光減衰特性を示す。粒子サイズが大きい場合には(図7のA)、光減衰速度が遅めに推移している以外に、低電界領域(感光体表面電位の低い領域)では、光減衰のなまりを生じている。これにより飽和減衰電位が高めで飽和している。一方、粒子サイズを十分に小さく制御した場合には(図7のB)、光減衰の裾切れが良好であり、低電界においても十分に光減衰し、飽和電位も低い。
本発明において上述の様な不具合が発生しない理由に関しては、本発明で使用するチタニルフタロシアニン結晶が、上述のように化学的安定性が高いことを含め、高いキャリア発生能を有し、更に十分な微粒子化が施してあるため、相反則不軌現象が抑制されていることに依るものと考えられる。
このように、高速化を実現するための基本的な設計が行われていながら、その特長を生かす有効な感光体が開発されてないため、安定した画像形成が実現できずに、様々な画像形成に対応できないといった問題点が残存しているのが現状であるが、本発明ではこれを解決している。
即ち、上記課題は、下記本発明(1)〜(21)により解決される。
(1) 導電性支持体上に、電荷輸送層と、電荷発生物質としてチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層とを有する電子写真感光体;及び
50μm以下のビーム径の光源を用いた書込手段;
を備えた画像形成装置において、
前記チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として:
27.2゜に最大回折ピークを有し;
9.4゜、9.6゜及び24.0゜に主要なピークを有し;
最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し;かつ
7.3°のピークと9.4゜のピークとの間及び26.3°にピークを有しておらず;
前記チタニルフタロシアニン結晶は、0.25μm以下の平均一次粒子サイズを有し、
前記電子写真感光体は、30V/μm以上の電界強度を印加されることを特徴とする画像形成装置。これにより、電子写真特性の優れたビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(2) 前記電荷発生層は、前記チタニルフタロシアニン結晶粒子の平均粒子サイズが0.3μm以下で、その標準偏差が0.2μm以下になるまで分散を行ない、その後有効孔径が3μm以下のフィルターにて濾過を行なった分散液を使用して形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。これにより、電子写真特性の優れたビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(3) 前記チタニルフタロシアニン結晶は:
CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有し、回折ピークの半値巾が1゜以上で一次粒子の平均粒子サイズが0.1μm以下の不定形チタニルフタロシアニン又は低結晶性チタニルフタロシアニンを、該チタニルフタロシアニンの一次粒子が、0.25μm以下の平均粒子サイズに成長するまで、結晶変換するように水の存在下で有機溶媒で撹拌し、組成物を得る工程;及び
該組成物を分別濾過する工程;
により調製されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。これにより、電子写真特性の優れたビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(4) 前記チタニルフタロシアニン結晶は、ハロゲン化物を含まない原材料を使用して調製されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。これにより帯電性が安定し、良好な画像を出力する画像形成装置を得ることが出来る。
(5) 前記チタニルフタロシアニン結晶は、結晶変換に際して、水で洗浄した洗液の、pHが6以上8以下であり及び/又は比伝導度が8μS/cm以下である不定形チタニルフタロシアニンを用いることを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。これにより帯電性が安定し、良好な画像を出力する画像形成装置を得ることが出来る。
(6) 前記チタニルフタロシアニン結晶は、結晶変換に際して、不定形チタニルフタロシアニン及び/又は低結晶性チタニルフタロシアニン重量の30倍量以上の有機溶媒を使用して撹拌されることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。これにより、感光体電位が安定し、画質の安定した画像形成装置を得ることが出来る。
(7) 前記電荷輸送層は、少なくともトリアリールアミン構造を主鎖及び/又は側鎖に含むポリカーボネートを含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。これにより、耐摩耗性を保持しつつ、電子写真特性の優れたビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(8) 前記電子写真感光体は、前記電荷輸送層上に保護層を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずか一項に記載の画像形成装置。これにより、耐摩耗性を保持しつつ、電子写真特性の優れたビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(9) 前記保護層は、比抵抗1010Ω・cm以上の無機顔料あるいは金属酸化物を含有することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。これにより、耐摩耗性を保持しつつ、電子写真特性、特に画像ぼけを生じにくいビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(10) 前記保護層は、高分子電荷輸送物質を含有することを特徴とする請求項8又は9に記載の画像形成装置。これにより、耐摩耗性を保持しつつ、電子写真特性の優れたビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(11) 前記保護層のバインダー樹脂は、架橋構造を有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の画像形成装置。これにより、高い耐摩耗性を有する感光体を得ることができ、ひいては、耐久性に優れたビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(12) 前記架橋構造を有するバインダー樹脂は、電荷輸送部位を有することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。これにより、感光体の耐摩耗性に大きく寄与し、ひいては、耐久性に優れたビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(13) 前記導電性支持体の表面は、陽極酸化皮膜処理されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の画像形成装置。これにより、感光体において発生する光キャリアのバリア性が向上し、ひいては、良好な電子写真特性を有するビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(14) 直接転写方式で画像形成を行うことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の画像形成装置。これにより、良好な転写バイアスの印加が可能になり、ひいては、良好な電子写真特性を有するビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(15) 前記書込手段により前記電子写真感光体上に静電潜像を形成されない非書込部におけるトナー像転写後の該感光体表面電位は、主帯電器により帯電された極性の絶対値として、100V以下であることを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。これにより、繰り返し使用における感光体の通過電荷量が低減出来、ひいては、良好な電子写真特性を有するビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(16) 前記書込手段により前記電子写真感光体上に静電潜像を形成されない非書込部におけるトナー像転写後の該感光体表面電位は、主帯電器により帯電された極性の逆極性であることを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。これにより、繰り返し使用における感光体の通過電荷量が低減出来、ひいては、良好な電子写真特性を有するビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(17) 前記書込手段により前記電子写真感光体上に静電潜像を形成されない非書込部におけるトナー像転写後の該感光体表面電位は、主帯電器により帯電された極性の逆極性の絶対値として、100V以下であることを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。これにより、繰り返し使用における感光体の通過電荷量が低減出来、ひいては、良好な電子写真特性を有するビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(18) 光除電機構を用いないことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の画像形成装置。これにより、繰り返し使用における感光体の通過電荷量が低減出来、ひいては、良好な電子写真特性を有するビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(19) 少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体からなる画像形成要素を複数配列したことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載の画像形成装置。これにより、フルカラー印刷に対応したビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
(20) 当該電子写真装置の帯電手段に、交流重畳電圧印加を行うことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載の画像形成装置。これにより、感光体への帯電安定化を図ることが出来、高画質な画像を得ることが可能になる。
(21) 感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群から選択された少なくとも1つの手段とが一体となった、装置本体と着脱自在なカートリッジを搭載していることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか一項に記載の画像形成装置。これにより、ユーザーにて取り扱い性能が向上した画像形成装置を得ることが可能となり、かつ、目的に応じた利用方法を選択することができるビーム径が50μm以下の光源を用いた書き込み手段を備えた画像形成装置を得ることが可能となる。
以上、詳細かつ具体的な発明から明らかなように、本発明によれば、非常に高速な画像出力を行う画像形成装置であり、高速で繰り返し使用した際に、異常画像の発生がなく、安定で解像度の高い画像を出力する画像形成装置が提供される。
(本発明における画像形成装置)
初めに図面を用いて本発明の画像形成装置を詳しく説明する。
図8は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図であり、後に示すような変形例も本発明の範疇に属する。
図8において、感光体1は導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を含む感光層が設けられてなり、電荷発生層にはCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、更に26.3°にピークを有さず、かつ一次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有してなる。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
帯電チャージャー3には、感光体に十分な帯電を与えられるものであれば、公知のいかなる部材を使用することができる。中でもスコロトロン方式の帯電部材や接触方式の帯電部材(ローラー形状)、あるいは感光体表面と帯電部材表面が100μm以下に近接配置された帯電部材等が良好に使用される。高精細な画像形成を狙い、ドット再現性を優先させる場合には、この帯電部材により、感光体には30V/μm以上の電界強度が印加される。感光体に印加される電界強度は高いほどドット再現性が良好になるものの、感光体の絶縁破壊や現像時のキャリア付着の問題を生み出す可能性があり、上限値は概ね60V/μm以下、より好ましくは50V/μm以下である。
また、画像露光部5には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保でき、50μm以下で書き込むことの出来る光学系の工夫がなされた光源が使用される。
上述の光学系の工夫とは、例えば特許文献2に記載されたような方法により、書き込みビーム径を小径化する技術であり、本発明においては書き込みビームを50μm以下に形成できる方法であれば、いかなる方法も使用できる。
ここで、ビーム径50μm以下について述べる。通常、光学素子から発せられた書き込み光は、光学系(ミラーやレンズ)を介して感光体表面に照射される。この書き込みビームは、完全な円形になることはなく、僅かに楕円のように扁平した形になっている。書き込みサイズを決定するのは、楕円の長軸方向であり、本発明におけるビーム径とは、長軸の長さをいう。
また、このようなビームには発光の中心から概ねガウシアン分布を有し、特許文献2(図6)に記載された様な形をしている。従って、光強度に関する定義をしないと、上記の長軸を決定することが出来ないが、本発明では一般的に用いられている定義を使用することとする。即ち、露光ビームの最大強度の1/eよりも光量が大きい領域の長径を本発明のビーム径とする。
光源(書き込み光)の解像度により、形成される静電潜像ひいてはトナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られる。しかしながら、解像度を高くして書き込みを行うとそれだけ書き込みに時間がかかることになるため、書き込み光源が1つであると書き込みがドラム線速(プロセス速度)の律速になってしまう。従って、書き込み光源が1つの場合には2400dpi程度の解像度が上限となる。書き込み光源が複数の場合には、それぞれが書き込み領域を負担すれば良く、実質的には「2400dpi×書き込み光源個数」が上限となる。ここで言う書き込み光源とは、LD素子1つ、あるいはLED素子1つを示すものであり、例えばアレイ状に配置されたLED等は、複数の光源として取り扱うものである。
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、また600〜800nmの長波長光を有するため、本発明で用いられる電荷発生材料である特定結晶型のフタロシアニン顔料が高感度を示すことから良好に使用される。
現像ユニット6は、使用するトナーの帯電極性により、正規現像にも反転現像にも対応可能である。感光体の帯電極性と逆極性のトナーを使用した場合には正規現像が使用され、同極性のトナーを用いた場合には反転現像によって、静電潜像が現像される。先の画像露光部に使用する光源によっても異なるが、近年使用するデジタル光源の場合には、光源の寿命等を考慮すると一般的に画像面積率が低いことに対応して、書込部分にトナー現像を行なう反転現像方式が有利である。また、トナーのみで現像を行なう1成分方式と、トナーおよびキャリアからなる2成分現像剤を使用した2成分方式の2通りの方法があるが、いずれの場合にも良好に使用できる。
また、転写チャージャー10は転写ベルト、転写ローラを用いることも可能であるが、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが望ましい。特に、感光体表面に形成されたトナー像を被転写体に直接転写する直接転写方式が良好に用いられる。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより望ましい。
また、感光体上の形成されたトナー像は、転写紙に転写されることで転写紙上の画像となるが、この際、2つの方法がある。1つは図8に示すような感光体表面に現像されたトナー像を転写紙に直接転写する方法と、もう1つはいったん感光体から中間転写体にトナー像が転写され、これを転写紙に転写する方法である。いずれの場合にも本発明において用いることができる。特に、感光体表面に形成されたトナー像を被転写体(出力する紙など)に直接転写する直接転写方式が良好に用いられる。
このような転写部材は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
この際、転写後の感光体表面電位が繰り返し使用における感光体の静電疲労に大きな影響を及ぼす。即ち、感光体の静電疲労は感光体の通過電荷量により大きく左右される。この通過電荷量とは、感光体の膜厚方向を流れる電荷量に相当する。感光体の画像形成装置中の動作として、メイン帯電器により所望の帯電電位に帯電され(ほとんどの場合負帯電される)、原稿に応じた入力信号に基づき光書き込みが行われる。この際、書き込みが行われた部分は光キャリアが発生し、表面電荷を中和する(電位減衰する)。この時、光キャリア発生量に依存した電荷量が感光体膜厚方向に流れる。
一方、光書き込みが行われない領域(非書き込み部)は、現像工程・転写工程を経て、除電工程に進む(必要に応じて、その前にクリーニング工程が施される)。ここで、感光体の表面電位がメイン帯電により施された電位に近い状態(暗減衰分は除く)であると、光書き込みが行われた領域とほぼ同じ量の電荷量が感光体膜厚方向に流れることになる。一般的に、現在の原稿は書き込み率が低いため、この方式であると、繰り返し使用における感光体の通過電荷量のほとんどは除電工程で流れる電流である(書き込み率が10%であるとすると、除電工程で流れる電流は、全体の9割を占めることになる)。
この通過電荷は、感光体を構成する材料の劣化を引き起こす等、感光体静電特性に大きく影響を及ぼす。その結果、通過電荷量に依存して、特に感光体の残留電位を上昇させる。感光体の残留電位が上昇すると、本発明で使用されるネガ・ポジ現像では、画像濃度が低下することになり、大きな問題となる。従って、画像形成装置内での感光体の長寿命化(高耐久化)を狙うためには、如何に感光体の通過電荷量を小さくするかという課題が存在する。
これに対して、光除電を行わないという考え方もあるが、メイン帯電器の帯電器能力が大きくないと、帯電の安定化が図れず、残像のような問題を生じる場合がある。
感光体の通過電荷は、感光体表面に帯電された電位(これにより生じた電界)により、光照射が行われることにより、発生した光キャリアが移動することにより生じる。従って、感光体表面電位を光以外の手段で減衰させることが出来れば、感光体1回転(画像形成1サイクル)あたりの通過電荷量を低減することが出来る。
このためには、転写工程において転写バイアスを調整することにより、感光体通過電荷量を調整することが有効である。即ち、メイン帯電により帯電され、書き込みが行われない非書き込み部は、暗減衰量を除き、帯電された電位に近い状態で転写工程に突入する。この際、メイン帯電器により帯電された極性側の絶対値として100V以下まで低減することにより、引き続く除電工程に突入しても光キャリア発生がほとんど行われず、通過電荷が生じない。この値は、0Vにより近いほど望ましい。
更には、転写バイアスの調整により、メイン帯電により施される帯電極性とは逆極性に感光体表面電位が帯電するように転写バイアスを印加させることにより、光キャリアが絶対に発生しないため、より望ましい。但し、逆極性にまで帯電するような転写条件では、場合により転写チリを多く発生させたり、次の画像形成プロセス(サイクル)のメイン帯電が追いつかない場合が出てくる。その場合には、残像のような不具合が発生する場合があるため、逆極性の絶対値として100V以下であることが望ましい。
除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
かかる光源等は、図8に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
先の帯電方式においてAC(交流)成分を重畳して使用する場合や、感光体の残留電位が小さい場合等は、この除電機構を省略することもできる。また、光学的な除電ではなく静電的な除電機構(例えば、逆バイアスを印加したあるいはアース接地した除電ブラシなど)を用いることもできる。前述のように書き込み率の小さな原稿では、光除電の影響は大きく、次の画像形成サイクルにおいて残像などの影響がない限り、光除電を用いない方が好ましい。
図中、8はレジストローラ、11は分離チャージャー、12は分離爪である。
また、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、感光体1上に残存するトナーが生じた場合、ファーブラシ14およびクリーニングブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
(タンデム方式の画像形成装置)
図9は、本発明のタンデム方式のフルカラー画像形成装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属する。
図9に示す画像形成装置においても、ビーム径が50μm以下になるように設計された光源が使用される。
図9において、符号16Y、16M、16C、16Kはドラム状の感光体であり、感光体は導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を含む感光層が設けられてなり、電荷発生層にはCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、更に26.3°にピークを有さず、かつ一次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有してなる。
この感光体16Y、16M、16C、16Kは図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材17Y、17M、17C、17K、現像部材19Y、19M、19C、19K、クリーニング部材20Y、20M、20C、20Kが配置されている。帯電部材17Y、17M、17C、17Kは、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する部材である。この帯電部材17Y、17M、17C、17Kと現像部材19Y、19M、19C、19Kの間の感光体表面側より、露光部材(図示せず)からのレーザー光18Y、18M、18C、18Kが照射され、感光体16Y、16M、16C、16Kに静電潜像が形成されるようになっている。そして、このような感光体16Y、16M、16C、16Kを中心とした4つの画像形成要素25Y、25M、25C、25Kが、転写材搬送手段である転写搬送ベルト22に沿って並置されている。転写搬送ベルト22は各画像形成要素25Y、25M、25C、25Kの現像部材19Y、19M、19C、19Kとクリーニング部材20Y、20M、20C、20Kの間で感光体16Y、16M、16C、16Kに当接しており、転写搬送ベルト22の感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ21Y、21M、21C、21Kが配置されている。各画像形成要素25Y、25M、25C、25Kは現像装置内部のトナーの色が異なっており、その他は全て同様の構成となっている。
図9に示す構成のフルカラー画像形成装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素25Y、25M、25C、25Kにおいて、感光体16Y、16M、16C、16Kに静電潜像が形成される。そして、感光体16Y、16M、16C、16Kのそれぞれが回転し、帯電部材17Y、17M、17C、17Kにより、感光体が帯電される。この際、高精細の潜像を形成させるために、感光体の電界強度が30V/μm以上(60Vμm以下、好ましくは50V/μm以下)となるように帯電される。
次に感光体の外側に配置された露光部(図示せず)で、50μm以下のビーム径を有するレーザー光18Y、18M、18C、18Kにより、1200dpi以上(好ましくは2400dpi以上)の解像度で書き込みが行われ、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。この場合にも書き込み光源1つに対して2400dpiの書き込みが概ね上限となる。
次に現像部材19Y、19M、19C、19Kにより潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材19Y、19M、19C、19Kは、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナーで、現像を行なう現像部材であり、4つの感光体16Y、16M、16C、16K上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙26は給紙コロ(図示せず)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ23で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト22に送られる。転写搬送ベルト22上に保持された転写紙26は搬送されて、各感光体16Y、16M、16C、16Kとの当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行なわれる。
感光体上のトナー像は、転写ブラシ21Y、21M、21C、21Kに印加された転写バイアスと感光体16Y、16M、16C、16Kとの電位差から形成される電界により、転写紙26上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた転写紙26は定着装置24に搬送され、トナーが定着されて、排紙部(図示せず)に排紙される。
また、転写部で転写されずに各感光体16Y、16M、16C、16K上に残った残留トナーは、クリーニング部材20Y、20M、20C、20Kで回収される。
続いて、必要に応じて除電部材(図示せず)により、感光体上の余分な残留電荷が除去される。この後再び、帯電部材で均一に帯電が施されて、次の画像形成が行われる。
なお、図9の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものではなく、色順は任意に設定されてもよい。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(25Y、25M、25C)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
この場合にも、先に述べたように転写後の感光体表面電位が、メイン帯電極性側100V以下、好ましくは逆極性、更に好ましくは逆極性側100V以下に制御することにより、感光体の繰り返し使用における残留電位の上昇を低減化することが出来、有効である。
(画像形成手段)
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図10に示すものが挙げられる。感光体101は導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を含む感光層が設けられてなり、電荷発生層にはCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、更に26.3°にピークを有さず、かつ一次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有してなる。
帯電部材102には、前述のように公知の帯電部材が用いられ、高精細な画像形成を行う際には感光体に対して30V/μm以上(60V/μm以下、好ましくは50V/μm以下)の電界強度を印加する。
画像露光部103には、前述のように1200dpi以上(好ましくは2400dpi以上)の解像度で書き込みが行うことの出来るビーム径が50μm以下の光源が用いられ、図10中、104は現像手段、105は転写体、106は転写手段、107はクリ−ニング手段、108は除電手段である。
以下、本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体について詳しく説明する。
本発明に用いられる電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を形成してなる電子写真感光体であって、該電荷発生層中にCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、更に26.3°にピークを有さず、かつ一次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有している。
この結晶型は、特許文献1に記載されているが、このチタニルフタロシアニン結晶を用いることで、高感度を失うことなく繰り返し使用によっても帯電性の低下を生じない安定な電子写真感光体を得ることができる。
特許文献1には、本発明で使用される電荷発生物質およびこれを用いた感光体、電子写真装置などが開示されている。しかしながら、高解像を目的として50μm以下のビーム径を有する書き込み光源を使用する場合において、小径ドット輪郭の不鮮明さの問題、低電界でのキャリア発生効率の問題を生じる場合が存在した。また、1200dpi以上あるいは2400dpi以上の解像度で使用される様な状況下では、書き込み解像度を生かすためには感光体に印加される電界強度を高くする必要があった。しかしながら、電界強度が高いと地汚れを発生させてしまうという問題点を発生していた。このような現象は、同公報に記載された画像形成装置よりも高解像度な書き込みを実施する画像形成装置での使用の場合に、顕著に発現する。このように、過去のプロセス(装置)では、必ずしも同公報に記載された材料の実力を充分に引き出していないだけでなく、プロセス条件を適正化してやらないと逆に副作用を生み出すものであった。
また、特許文献1には粒子サイズに関する記載およびそれをコントロールする技術の記載が無く、粒子サイズの適正化がなされていない。本発明においては、粒子サイズをコントロールした特定結晶型のチタニルフタロシアニンを含有した感光体を用い、画像形成装置のプロセス条件を適正化することで、より最適な画像形成装置を構築している。
また、チタニルフタロシアニン結晶の合成方法として、特許文献3に記載されているように、ハロゲン化チタンを原料に用いない方法が良好に用いられている。この方法の最大のメリットは、合成されたチタニルフタロシアニン結晶がハロゲン化フリーであることである。チタニルフタロシアニン結晶は不純物としてのハロゲン化チタニルフタロシアニン結晶を含むと、これを用いた感光体の静電特性において光感度の低下や、帯電性の低下といった悪影響を及ぼす場合が多い(非特許文献1)。本発明においても、特許文献1に記載されているようなハロゲン化フリーチタニルフタロシアニン結晶をメインに対象にしているものであり、これらの材料が有効に使用される。
ハロゲン化フリーのチタニルフタロシアニンを合成するためには、チタニルフタロシアニン合成の際の原材料に、ハロゲン化された材料を使用しないことである。具体的には、後述の方法が用いられる。
(本発明におけるチタニルフタロシアニン結晶の合成方法)
ここでまず、本発明で用いられる特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶の合成方法について述べる。
初めにチタニルフタロシアニン結晶の合成粗品の合成法について述べる。フタロシアニン類の合成方法は古くから知られており、非特許文献2、特許文献3等に記載されている。
例えば、第1の方法として、無水フタル酸類、金属あるいはハロゲン化金属及び尿素の混合物を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒が併用される。第2の方法としては、フタロニトリル類とハロゲン化金属を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この方法は、第1の方法で製造できないフタロシアニン類、例えば、アルミニウムフタロシアニン類、インジウムフタロシアニン類、オキソバナジウムフタロシアニン類、オキソチタニウムフタロシアニン類、ジルコニウムフタロシアニン類等に用いられる。第3の方法は、無水フタル酸あるいはフタロニトリル類とアンモニアを先ず反応させて、例えば1,3−ジイミノイソインドリン類等の中間体を製造し、次いでハロゲン化金属と高沸点溶媒中で反応させる方法である。第4の方法は、尿素等存在下で、フタロニトリル類と金属アルコキシドを反応させる方法である。特に、第4の方法はベンゼン環への塩素化(ハロゲン化)が起こらず、電子写真用材料の合成法としては、極めて有用な方法であり、本発明においては極めて有効に使用される。
次に、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)の合成法について述べる。この方法は、フタロシアニン類を硫酸に溶解した後、水で希釈し、再析出させる方法であり、アシッド・ペースト法あるいはアシッド・スラリー法と呼ばれる方法が使用できる。
具体的な方法としては、上記の合成粗品を10〜50倍量の濃硫酸に溶解し、必要に応じて不溶物を濾過等により除去し、これを前記硫酸量に相対して、充分に冷却した10〜50倍量の水もしくは氷水にゆっくりと投入し、チタニルフタロシアニンを再析出させる。析出したチタニルフタロシアニンを濾過した後、イオン交換水で洗浄・濾過を行ない、濾液が中性になるまで充分にこの操作を繰り返す。最終的に、イオン交換水で洗浄した後、濾過を行ない、固形分濃度で5〜15wt%程度の水ペーストを得る。
この際、イオン交換水で十分に洗浄し、可能な限り濃硫酸を残さないことが重要である。具体的には、洗浄後のイオン交換水が以下のような物性値を示すことが好ましい。即ち、硫酸の残存量を定量的に表せば、洗浄後のイオン交換水のpHや比伝導度で表すことが出来る。pHで表す場合には、pHが6〜8の範囲であることが望ましい。この範囲であることにより、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断出来る。このpH値は市販のpHメーターで簡便的に測定することが出来る。また比伝導度で表せば、8μS/cm以下であることが望ましい(好ましくは5μS/cm以下、更に好ましくは3μS/cm以下である)。この範囲であれば、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断出来る。この比伝導度は市販の電気伝導率計で測定することが可能である。比伝導度の下限値は、洗浄に使用するイオン交換水の比伝導度ということになる。いずれの測定においても、上記範囲を逸脱する範囲では、硫酸の残存量が多く、感光体の帯電性が低下したり、光感度が悪化したりするので望ましくない。
このようにして、本発明に用いる不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を作製する。この際、この不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有していることが好ましい。特に、その回折ピークの半値巾が1゜以上であることがより好ましい。更に、一次粒子の平均粒子サイズが0.1μm以下であることが好ましい。
(結晶変換方法)
次に、結晶変換方法について述べる。
結晶変換は、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、かつ26.3゜にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶に変換する工程である。
具体的な方法としては、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を乾燥せずに、水の存在下で有機溶媒と共に混合・撹拌することにより、前記結晶型が得られる。
この際、使用される有機溶媒は、所望の結晶型を得られるものであれば、いかなる有機溶媒も使用できるが、特にテトラヒドロフラン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンの中から選ばれる1種を選択すると、良好な結果が得られる。これら有機溶媒は単独で用いることが好ましいが、これらの有機溶媒を2種以上混合する、あるいは他の溶媒と混合して用いることも可能である。結晶変換に使用される前記有機溶媒の量は、不定形チタニルフタロシアニンの重量に相対して、10倍以上、好ましくは30倍以上の重量であることが望ましい。これは、結晶変換を素早く十分に起こさせると共に、不定形チタニルフタロシアニンに含まれる不純物を十分に取り除くことができるためである。尚、ここで使用する不定形チタニルフタロシアニンは、アシッド・ペースト法により調製されているが、上述のように硫酸を十分に洗浄したものを使用することが望ましい。硫酸が残存するような条件で結晶変換を行うと、残存してしまい、水洗処理のような操作を行っても、出来上がった結晶から硫酸イオンを完全には取り除くことが出来ない。硫酸イオンが残存した場合には、感光体の感度低下、帯電性低下を引き起こすなど、好ましい結果を得られない。例えば、特許文献4(比較例)には、硫酸に溶解したチタニルフタロシアニンをイオン交換水と共に有機溶媒に投入し結晶変換を行う方法が記載されている。この際、本発明で得られるチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルに類似した結晶を得ることが出来るが、チタニルフタロシアニン中の硫酸イオン濃度が高く、光減衰特性(光感度)が悪いことから、本発明のチタニルフタロシアニンの製造方法には適さない。この理由は、先に述べたとおりである。
以上の結晶変換方法は特許文献1に準じた結晶変換方法である。一方、本発明の電子写真装置に用いる感光体に含有される電荷発生物質においては、チタニルフタロシアニン結晶の粒子サイズをより細かく(0.25μm以下)することにより、その効果が達成される。以下には、小さな粒子サイズを有するチタニルフタロシアニンに関する合成手法について記載する。
(本発明におけるチタニルフタロシアニン結晶の粒子サイズ及び結晶型)
本発明者らが観察したところによれば、本発明者らが観察したところによれば、前述の不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)は、一次粒径が0.1μm以下(そのほとんどが0.01〜0.05μm程度)であるが(図11参照)、結晶成長と共に結晶型が変換されることが分かった。通常、この種の結晶変換においては、原料の残存をおそれて充分な結晶変換時間を確保し、結晶変換が十二分に行なわれた後に、濾過を行ない、所望の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を得ている。このため、原料として充分に小さな一次粒子を有する原料を用いているにもかかわらず、結晶変換後の結晶では一次粒子の大きな結晶(概ね0.3〜0.5μm)が得られてしまう(図12参照)。
図中のスケール・バーは、いずれも0.2μmである。
図12に示されるように作製されたチタニルフタロシアニン結晶を分散するにあたっては、分散後の粒子サイズを小さなもの(0.25μm以下)にするため、強いシェアを与えることで分散を行ない、更には必要に応じて一次粒子を粉砕する強いエネルギーを与えて分散を行なっている。この結果、前述の如き、粒子の一部が所望の結晶型でない結晶型へと転移してしまう可能性を有している。
この点に関して、合成段階からチタニルフタロシアニン結晶の一次粒子サイズをコントロールすることにより、小さいサイズの結晶を得られ、この問題を解決することが可能であり、本発明には有効に使用される。具体的には、結晶変換に際して結晶成長がほとんど起こらない範囲(図11に観察される不定形チタニルフタロシアニン粒子のサイズが、結晶変換後において遜色ない小ささ、概ね0.25μm以下に保たれる範囲)で、結晶変換が完了した時点を見極めることで、可能な限り一次粒子サイズの小さなチタニルフタロシアニン結晶が得られる。結晶変換後の粒子サイズは、結晶変換時間に比例して大きくなる。このため前述のように、結晶変換の効率を高くし、短時間で完了させることが重要である。このためには、いくつかの重要なポイントが挙げられる。
ポイントの1つ目は、前述のように適正な結晶変換溶媒を選択し、結晶変換効率を高めることであり、もう1つのポイントは、結晶変換を短時間に完了させるために、溶媒とチタニルフタロシアニン水ペースト(前述の如く作製した原料:不定形チタニルフタロシアニン)を充分に接触させるために強く撹拌することである。具体的には、撹拌力の非常に強いプロペラを用いた撹拌、ホモジナイザー(ホモミキサー)のような強烈な撹拌(分散)手段を用いるなどの手法により、短時間での結晶変換を実現させる。これらの条件により、原料が残存することなく、結晶変換が充分に行なわれ、かつ結晶成長が起こらない状態のチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。この場合にも、結晶変換に使用する有機溶媒量の適正化が有効な手段である。具体的には、不定形チタニルフタロシアニンの固形分に対して、10倍以上、好ましくは30倍以上の有機溶媒を使用することが望ましい。これにより、短時間での結晶変換を確実なものとすると共に、不定形チタニルフタロシアニン中に含まれる不純物を確実に取り除くことが出来る。
図13は、上記の2つのポイントを考慮した、短時間で結晶変換を行なったチタニルフタロシアニン結晶のTEM像である。図中のスケール・バーは、0.2μmである。
また、上述のように結晶粒子サイズと結晶変換時間は比例関係にあるため、所定の反応(結晶変換)が完了したら、反応を直ちに停止させる方法も有効な手段である。この手段として挙げられるのは、上述のように結晶変換を行なった後、直ちに結晶変換の起こりにくい溶媒を大量に添加することである。結晶変換の起こりにくい溶媒としては、アルコール系、エステル系などの溶媒が挙げられる。これらの溶媒を結晶変換溶媒に対して、10倍程度加えることにより、結晶変換を停止することができる。
このようにして作製される一次粒子サイズは、細かいほど感光体の課題に対して、良好な結果を示すが、顔料作製にかかる次工程(顔料の濾過工程)、分散液での分散安定性を考慮すると、あまり小さすぎても他の問題が起こる可能性がある。即ち、一次粒子が非常に細かい場合には、これを濾過する工程において濾過時間が非常に長くなってしまう。また、一次粒子が細かすぎる場合には、分散液中での顔料粒子の表面積が大きくなるため、粒子の再凝集の可能性が高くなる。したがって、適切な顔料粒子の粒子サイズは、およそ0.05μm〜0.2μm程度の範囲である。
図13には、短時間で結晶変換を行った場合のチタニルフタロシアニン結晶のTEM像を示す。図12の場合とは異なり、粒子サイズが小さくほぼ均一であり、図12に観察されるような粗大粒子は全く認められない。
図13に示されるように1次粒子が小さい状態で作製されたチタニルフタロシアニン結晶を分散するにあたっては、分散後の粒子サイズを小さなもの(0.25μm以下、より好ましくは0.2μm以下)にするためには、1次粒子が凝集(集合)して集まって形成する2次粒子をほぐすだけのシェアを与えることで分散が可能である。この結果、必要以上のエネルギーを与えないため、前述の如く、粒子の一部が所望の結晶型でない結晶型へと転移することなく、粒度分布の細かい分散液を容易に作製することが可能である。
ここでいう平均粒子サイズとは、体積平均粒径であり、超遠心式自動粒度分布測定装置:CAPA−700(堀場製作所製)により測定され、累積分布の50%に相当する粒子径(Median径)として算出されたものである。しかしながら、この方法では微量の粗大粒子を検出できない場合があるため、より詳細に求めるには、チタニルフタロシアニン結晶粉末、あるいは分散液を直接、電子顕微鏡にて観察し、その大きさを求めることが重要である。
分散液の更なる観察により、微小欠陥に関して検討した結果、上記現象は次のように理解される。通常、平均粒子サイズを測定する方法において、極端に大きな粒子が数%以上も存在するような場合には検出できるが、全体の1%以下程度と、微量になってくると、検出限界以下になってしまう。結果として、平均粒子サイズの測定だけでは粗大粒子の存在が検出されず、上述のような微小欠陥に関する解釈が困難となる。以下、微小欠陥に関して実験的に検証した結果を示す。
図14及び図15に、分散条件を固定して分散時間だけを変更した2種類の分散液の状態を観察した写真を示す。図14及び15における分散時間は、図14の方が短く、図14では、粗大粒子が残っている様子が観測される。図14中の黒い粒が粗大粒子である。
この2種類の分散液の平均粒径並びに粒度分布を公知の方法に従って、市販の粒度分布測定装置(堀場製作所製:超遠心式自動粒度分布測定装置、CAPA700)により測定した。その結果を図16に示す。図16における「A」が図14に示す分散液に対応し、「B」が図15に示す分散液に対応する。両者を比較すると、粒度分布に関してはほとんど差が認められない。また、両者の平均粒径値は、「A」が0.29μm、「B」が0.28μmと求められ、測定誤差を加味した上では、両者に全くの差異が認められない。
したがって、公知の平均粒径(粒子サイズ)の規定だけでは、微量な粗大粒子の残存を検出できずに、昨今の高解像度のネガ・ポジ現像には対応できていないことが理解される。この微量な粗大粒子の存在は、塗工液を顕微鏡レベルで観察することにより、初めて認識できたものである。
このような事実に対して、結晶変換時に作製される一次粒子をできる限り小さいものを作製することは有効な手段である。このために、有効な手法としては、前述のように適正な結晶変換溶媒を選択し結晶変換効率を高めつつ、結晶変換を短時間に完了させるために、溶媒とチタニルフタロシアニン水ペースト(前述の如き作製した原料)を充分に接触させるために強く撹拌することである。
このような結晶変換方法を採用することにより、一次粒子サイズの小さな(0.25μm以下、より好ましくは0.2μm以下)チタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。特許文献1に記載された技術に加えて、必要に応じて上述のような技術(微細なチタニルフタロシアニン結晶を得るための結晶変換方法)を併用することは、本発明において重要な手段である。
続いて、結晶変換されたチタニルフタロシアニン結晶は直ちに濾過することにより、結晶変換溶媒と分別される。この濾過に際しては、適当なサイズのフィルターを用いることにより行なわれる。この際、減圧濾過を用いることが最も適当である。
その後、分別されたチタニルフタロシアニン結晶は、必要に応じて加熱乾燥される。加熱乾燥に使用する乾燥機は、公知のものがいずれも使用可能であるが、大気圧下で行なう場合には送風型の乾燥機が好ましい。更に、乾燥速度を早め、本発明の効果をより顕著に発現させるために減圧下にて乾燥することも非常に有効な手段である。特に、高温で分解する、あるいは結晶型が変化するような材料に対しては有効な手段である。特に10mmHgよりも真空度が高い状態で乾燥することが有効である。
このようにして得られた特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶は、電子写真感光体用電荷発生物質として極めて有用である。しかしながら、先述のように結晶型が不安定であり、分散液を作製する際に結晶型が転移し易いという欠点を有している。しかしながら、本発明のように一次粒子を限りなく小さく合成することにより、分散液作製時に過剰なシェアを与えることなく、平均粒径の小さな分散液を作製することができ、結晶型も極めて安定に(合成した結晶型を変えることなく)作製することができる。
(分散液の作成方法)
次に分散液の作製方法について述べる。
分散液の作製に関しては一般的な方法が用いられ、前記チタニルフタロシアニン結晶を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、超音波などを用いて分散することで得られる。この際、バインダー樹脂は感光体の静電特性などにより、また溶媒は顔料へのぬれ性、顔料の分散性などにより選択すればよい。
既に述べたように、CuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶は、熱エネルギー・機械的シェア等のストレスにより他の結晶型に容易に結晶転移をすることが知られている。本発明で用いるチタニルフタロシアニン結晶もこの傾向は変わらない。すなわち、微細な粒子を含む分散液を作製するためには、分散方法の工夫も必要であるが、結晶型の安定性と微粒子化はトレード・オフの関係になりがちである。分散条件を最適化することによりこれを回避する方法はあるが、いずれも製造条件を極めて狭くしてしまうものであり、より簡便な方法が望まれている。この問題を解決するために、以下のような方法も有効な手段である。
すなわち、結晶転移が起こらない範囲で、できる限り粒子を微細にした分散液を作製後、適当なフィルターで濾過する方法である。この方法では、目視では観察できない(あるいは粒径測定では検出できない)残存する微量な粗大粒子をも取り除くことができ、また粒度分布を揃えるという点からも非常に有効な手段である。具体的には、上述のように作製した分散液を有効孔径が3μm以下のフィルター、より好ましくは1μm以下のフィルターにて濾過操作を行ない、分散液を調製する。この方法によっても、粒子サイズの小さな(0.25μm以下、より好ましくは0.2μm以下)チタニルフタロシアニン結晶のみを含む分散液を作製することができ、これを用いた感光体を画像形成装置に搭載使用することにより、本願の効果はより一層顕著になる。
分散液を濾過するフィルターは、除去したい粗大粒子のサイズによって異なるが、本発明者等の検討によれば、600dpi程度の解像度を必要とする電子写真装置で使用される感光体では、最低でも3μm以上の粗大粒子が存在すると画像に対して影響を及ぼす。したがって、有効孔径が3μm未満のフィルターを使用すべきである。より好ましくは1μm以下の有効孔径を有するフィルターを使用する。このようなフィルタリング処理を行うことにより、不必要な粗大粒子を取り除くことが可能であり、粒度分布が狭く、かつ粗大粒子の含まない分散液を作製することが可能になる。
この有効孔径に関しては、細かいほど粗大粒子の除去に効果があるが、あまり細かすぎると、必要な顔料粒子そのものも濾過されてしまうため、適切なサイズを選択する。また、有効径が小さすぎる場合には、(1)濾過に時間がかかる、(2)フィルターが目詰まりを起こす、(3)ポンプ等を使用して送液する場合には負荷がかかりすぎる等の問題を生じる。なお、ここで使用されるフィルターの材質は、当然のことながら濾過する分散液に使用される溶媒に対して耐性のあるものを使用する。
濾過に際しては、濾過される分散液中の粗大粒子量があまりにも多い場合、取り除かれる顔料が多くなり、濾過後の分散液の固形分濃度が変化してしまい好ましくない。従って、濾過を行う際には適切な粒度分布(粒子サイズ、標準偏差)が存在する。本発明のように、濾過による顔料のロス、フィルターの目詰まり等がなく、効率よく濾過を行うためには、濾過前の分散液の体積平均粒径が0.3μm以下で、その標準偏差が0.2μm以下に分散しておくことが望ましい。
このような分散液の濾過操作を加えることによっても、粗大粒子を取り除くことが可能になり、ひいては分散液を使用した感光体で発生する地汚れを低減化することが出来る。上述のように、より細かいフィルターを使用するほど、その効果は大きく確実になるが、顔料粒子そのものが濾過されてしまう場合がある。このような場合には、先に述べたチタニルフタロシアニン一次粒子を微細化合成する技術と併用することで、非常に大きな効果が発せられる。
即ち、(i)微細化チタニルフタロシアニンを合成し、これを使用することにより、分散時間の短縮化・分散ストレスの低減化が図れ、分散における結晶転移の可能性が小さくなる。(ii)分散によって残存する粗大粒子サイズが、微細化しない場合よりも小さいため、より小さなフィルターを使用することが可能になり、粗大粒子の除去効果がより確実なものとなる。また、除去されるチタニルフタロシアニン粒子量が低減し、濾過前後における分散液組成の変化が少なく、安定した製造が可能になる。(iii)その結果、製造される感光体は安定して地汚れ耐性の高い感光体が製造されることになる。
(電子写真感光体)
続いて、本発明に用いられる電子写真感光体について、図面を用いて詳しく説明する。
図17は、本発明に用いられる電子写真感光体の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、前記特定粒子サイズで特定結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶(電荷発生材料)を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層37とが、積層された構成をとっている。
また、図18は、本発明に用いられる電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、前記特定粒子サイズで特定結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶(電荷発生材料)を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層37とが積層され、更に電荷輸送層上に、保護層39を設けた構成をとっている。
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特許文献5に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。
また、これらの中でも陽極酸化皮膜処理を簡便に行なうことのできるアルミニウムからなる円筒状支持体が最も良好に使用できる。ここでいうアルミニウムとは、純アルミニウム系あるいはアルミニウム合金のいずれを含む。具体的には、JIS1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金が最も適している。陽極酸化皮膜は各種金属、各種合金を電解質溶液中において陽極酸化処理して得られるが、本発明に用いる感光体に最も適しているのは、中でもアルミニウムもしくはアルミニウム合金を電解質溶液中で陽極酸化処理を行なったアルマイトと呼ばれる被膜である。特に、反転現像(ネガ・ポジ現像)に用いた際に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止することができる点で優れている。
陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行なわれる。このうち、硫酸浴による処理が最も適している。一例を挙げると、硫酸濃度:10〜20%、浴温:5〜25℃、電流密度:1〜4A/dm、電解電圧:5〜30V、処理時間:5〜60分程度の範囲で処理が行なわれるが、これに限定するものではない。このように作製される陽極酸化皮膜は、多孔質であり、また絶縁性が高いため、表面が非常に不安定である。このため、作製後、経時的に変化し、陽極酸化皮膜の物性値が変化しやすい。これを回避するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが望ましい。封孔処理には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。このうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最も好ましい。封孔処理に引き続き、陽極酸化皮膜の洗浄処理が行なわれる。これは、封孔処理により付着した過剰な金属塩等を除去することが主な目的である。金属塩が支持体(陽極酸化皮膜)表面に過剰に残存すると、この上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまうため、逆に地汚れの発生原因にもなってしまう。洗浄は純水にて1回のみ行っても構わないが、通常は多段階の洗浄を行なう。この際、最終の洗浄液が可能な限りきれい(脱イオンされた)ものであることが好ましい。また、多段階の洗浄工程のうち1工程では、接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことが望ましい。以上のようにして形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、5〜15μm程度が望ましい。これより薄すぎる場合には陽極酸化皮膜としてのバリア性の効果が充分でなく、これより厚すぎる場合には電極としての時定数が大きくなりすぎて、残留電位の発生や感光体のレスポンスが低下する場合がある。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体31として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)などの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
次に、感光層について説明する。感光層は前述のように、電荷発生層35と電荷輸送層37で構成される積層型が感度、耐久性において優れた特性を示し、良好に使用される。
電荷発生層35は、電荷発生物質として、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、更に26.3゜にピークを有さず、結晶合成時もしくは分散濾過処理により、一次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下(好ましくは0.2μm以下)のチタニルフタロシアニン結晶を主成分とする層である。
電荷発生層35は、必要に応じてバインダー樹脂とともに前記顔料を適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
必要に応じて電荷発生層35に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
ここで用いられる溶剤としては、例えばイソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層35の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
電荷輸送層37は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
結着樹脂としてはポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度とすることが好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。中でも、環境への負荷低減等の意図から、非ハロゲン系溶媒を使用することが望ましい。具体的には、テトラヒドロフランやジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテルやトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、及びそれらの誘導体が良好に用いられる。
また、電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、式(I)〜(X)式で表わされる高分子電荷輸送物質が良好に用いられ、これらを以下に例示し、具体例を示す。
・・・(I)式
(I)式中、R、R、Rはそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、Rは水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R及びRは置換もしくは無置換のアリール基、o、p及びqはそれぞれ独立して0〜4の整数、k及びjは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表される2価基を表す。尚、(I)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表す。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す。)または、
(aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103及びR104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す)を表す。ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい)。
・・・(II)式
(II)式中、R、Rは置換もしくは無置換のアリール基、Ar、Ar及びArは同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(II)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
・・・(III)式
(III)式中、R、R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar、Ar及びArは同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(III)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
・・・(IV)式
(IV)式中、R11、R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar、Ar及びArは同一又は異なるアリレン基、pは1〜5の整数を表す。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(IV)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
・・・(V)式
(V)式中、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10、Ar11及びAr12は同一又は異なるアリレン基、X及びXは置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(V)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
・・・(VI)式
(VI)式中、R15、R16、R17及びR18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13、Ar14、Ar15及びAr16は同一又は異なるアリレン基、Y、Y及びYは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。X,k,jおよびnは、(V)式の場合と同じである。尚、
(I)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
・・・(VII)式
(VII)式中、R19、R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18及びAr19は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(VII)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
・・・(VIII)式
(VIII)式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20、Ar21、Ar22及びAr23は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(VIII)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
・・・(IX)式
(IX)式中、R22、R23、R24及びR25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27及びAr28は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(IX)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
・・・(X)式
(X)式中、R26、R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29、Ar30及びAr31は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(X)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
また、電荷輸送層に使用される高分子電荷輸送物質として、上述の高分子電荷輸送物質の他に、電荷輸送層の成膜時には電子供与性基を有するモノマーあるいはオリゴマーの状態で、成膜後に硬化反応あるいは架橋反応をさせることで、最終的に2次元あるいは3次元の架橋構造を有する重合体も含まれる。
これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層、あるいは架橋構造を有する重合体は耐摩耗性に優れている。通常、電子写真プロセスにおいては、帯電電位(未露光部電位)は一定であるため、繰り返し使用により感光体の表面層が摩耗すると、その分だけ感光体にかかる電界強度が高くなってしまう。この電界強度の上昇に伴い、地汚れの発生頻度が高くなるため、感光体の耐摩耗性が高いことは、地汚れに対して有利である。これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層は、電荷輸送層自体が高分子化合物であるため成膜性に優れ、低分子分散型高分子からなる電荷輸送層に比べ、電荷輸送部位を高密度に構成することが可能で電荷輸送能に優れている。このため、高分子電荷輸送物質を用いた電荷輸送層を有する感光体には高速応答性が期待できる。
その他の電子供与性基を有する重合体としては、公知単量体の共重合体や、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーや、また、例えば特許文献6、特許文献7、特許文献8等に開示されている電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることも可能である。
本発明において電荷輸送層37中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
本発明の電子写真感光体には、導電性支持体31と感光層との間に中間層を設けることができる。中間層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶媒で塗布することを考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、中間層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等、金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの中間層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の中間層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の中間層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。中間層の膜厚は0〜5μmが適当である。
本発明の電子写真感光体には、感光層保護の目的で、保護層が感光層の上に設けられることもある。近年、日常的にコンピュータの使用が行なわれるようになり、プリンタによる高速出力とともに、装置の小型化も望まれている。したがって、保護層を設け、耐久性を向上させることによって、本発明の高感度で異常欠陥のない感光体を有用に用いることができる。
本発明の感光体においては、感光層保護の目的で、感光層の上に保護層39を設けてもよい。保護層39に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。中でも、ポリカーボネートもしくはポリアリレートが最も良好に使用できる。
保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂及びシリコーン樹脂並びにこれらの樹脂に、酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム、シリカ等の無機フィラー(無機顔料)又は有機フィラー(有機顔料)を分散した組成物等を添加することができる。
また、感光体の保護層に用いられるフィラー材料のうち有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。特に、フィラーの硬度の点からは、この中でも無機材料を用いることが有利である。特に、シリカ、酸化チタン、アルミナが有効に使用できる。
保護層中のフィラー濃度は使用するフィラー種により、また感光体を使用する電子写真プロセス条件によっても異なるが、保護層の最表層側において全固形分に対するフィラーの比で5重量%以上、好ましくは10重量%以上50重量%以下、好ましくは30重量%以下程度が良好である。
また、使用するフィラーの体積平均粒径は、0.1μm〜2μmの範囲が良好に使用され、好ましくは0.3μm〜1μmの範囲である。この場合、平均粒径が小さすぎると耐摩耗性が充分に発揮されず、大きすぎると塗膜の表面性が悪くなったり、塗膜そのものが形成できなかったりするからである。
なお、本発明におけるフィラーの平均粒径とは、特別な記載のない限り体積平均粒径であり、超遠心式自動粒度分布測定装置:CAPA−700(堀場製作所製)により測定され、累積分布の50%に相当する粒子径(Median径)として算出されたものである。また、同時に測定される各々の粒子の標準偏差が1μm以下であることが重要である。標準偏差値が1μm以上である場合には、粒度分布が広すぎて、本発明の効果が顕著に得られなくなってしまう場合がある。
また、本発明で使用するフィラーのpHも解像度やフィラーの分散性に大きく影響する。その理由の一つとしては、フィラー、特に金属酸化物に、製造時に使用する塩酸等が残存することが考えられる。塩酸等の残存量が多い場合には、画像ボケが発生してしまい、残存量によってはフィラーの分散性にも影響を及ぼす場合がある。
もう一つの理由としては、フィラー、特に金属酸化物の表面における帯電性の違いによるものである。通常、液体中に分散している粒子はプラスあるいはマイナスに帯電しており、それを電気的に中性に保とうとして反対の電荷を持つイオンが集まり、そこで電気二重層が形成されることによって粒子の分散状態は安定化している。粒子から遠ざかるに従いその電位(ゼータ電位)は徐々に低くなり、粒子から充分に離れて電気的に中性である領域の電位はゼロとなる。したがって、ゼータ電位の絶対値の増加によって粒子の反発力が高くなることによって安定性は高くなり、ゼロに近づくに従い凝集しやすく不安定になる。一方、系(ビヒクル)のpH値によってゼータ電位は大きく変動し、あるpH値において電位はゼロとなり等電点を持つことになる。したがって、系(ビヒクル)の等電点からできるだけ遠ざけて、ゼータ電位の絶対値を高めることによって分散系の安定化が図られることになる。
本発明の構成においては、フィラーとしては前述の等電点におけるpHが、少なくとも5以上を示すものが画像ボケ抑制の点から好ましく、より塩基性を示すフィラーであるほどその効果が高くなる傾向が確認された。等電点におけるpHが高い塩基性を示すフィラーは、系(ビヒクル)が酸性であったほうがゼータ電位はより高くなることにより、分散性及びその安定性は向上することになる。
ここで、本発明におけるフィラーのpHは、ゼータ電位から等電点におけるpH値を記載した。この際、ゼータ電位の測定は、大塚電子(株)製レーザーゼータ電位計にて測定した。
更に、画像ボケが発生しにくいフィラーとしては、電気絶縁性が高いフィラー(比抵抗が1010Ω・cm以上)が好ましく、フィラーのpHが5以上を示すものやフィラーの誘電率が5以上を示すものが特に有効に使用できる。また、pHが5以上のフィラーあるいは誘電率が5以上のフィラーを単独で使用することはもちろん、pHが5以下のフィラーとpHが5以上のフィラーとを2種類以上を混合したり、誘電率が5以下のフィラーと誘電率が5以上のフィラーとを2種類以上混合したりして用いることも可能である。また、これらのフィラーの中でも高い絶縁性を有し、熱安定性が高い上に、耐摩耗性が高い六方細密構造であるα型アルミナは、画像ボケの抑制や耐摩耗性の向上の点から特に有用である。
本発明において使用するフィラーの比抵抗は以下のように定義される。フィラーのような粉体は、充填率によりその比抵抗値が異なるので、一定の条件下で測定する必要がある。本発明においては、特許文献9(図1)、特許文献10(図1)に示された測定装置と同様の構成の装置を用いて、フィラーの比抵抗値を測定し、この値を用いた。測定装置の電極面積は4.0cmである。測定前に片側の電極に4kgの荷重を1分間かけ、電極間距離が4mmになるように試料量を調節する。測定の際は、上部電極の重量(1kg)の荷重状態で測定を行ない、印加電圧は100Vにて測定する。10Ω・cm以上の領域は、HIGH RESISTANCE METER(横河ヒューレットパッカード)、それ以下の領域についてはデジタルマルチメーター(フルーク)により測定した。本発明では、この測定により得られた比抵抗値を比抵抗値と定義している。
フィラーの誘電率は以下のように測定した。上述の比抵抗の測定と同様なセルを用い、荷重をかけた後に、静電容量を測定し、これより誘電率を求めた。静電容量の測定は、誘電体損測定器(安藤電気)を使用した。
更に、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性が低下すると、残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、フィラーの分散性の向上及び画像ボケ防止の観点から、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al、TiO、ZrO、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはこれらを組み合わせて処理することがより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、保護層を構成する全固形分に対して、3〜30wt%が適しており、5〜20wt%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらフィラ−材料は単独もしくは2種類以上混合して用いられる。フィラーの表面処理量に関しては、上述のようにフィラー量に対する使用する表面処理剤の重量比で定義される。
これらフィラー材料は、適当な分散機を用いることにより分散できる。また、保護層の透過率の点から使用するフィラーは1次粒子レベルまで分散され、凝集体が少ないほうが好ましい。
また、残留電位低減、応答性改良のため、保護層39には電荷輸送物質を含有しても良く、電荷輸送物質は、電荷輸送層の説明にて記載した材料を用いることができる。電荷輸送物質として、低分子電荷輸送物質を用いる場合には、保護層中における濃度勾配を設けても構わない。耐摩耗性向上のため、表面側を低濃度にすることは有効な手段である。ここでいう濃度とは、保護層を構成する全材料の総重量に対する低分子電荷輸送物質の重量の比を表わし、濃度勾配とは上記重量比において表面側において濃度が低くなるよう、当該層を設けることを示す。また、高分子電荷輸送物質を用いることは、感光体の耐久性を高める点で非常に有利である。
保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。また、以上のほかに真空薄膜作成法にて形成したa−C、a−SiCなど公知の材料を保護層として用いることができる。
この他、保護層のバインダー樹脂として電荷輸送層の項で説明した高分子電荷輸送物質も用いることが出来る。これを用いた場合の効果としては、電荷輸送層の項に記載したことと同様に、耐摩耗性の向上、高速電荷輸送の効果を得ることが出来る。
また、保護層のバインダー構成として、架橋構造からなる保護層も有効に使用される。架橋構造の形成に関しては、1分子内に複数個の架橋性官能基を有する反応性モノマーを使用し、光や熱エネルギーを用いて架橋反応を起こさせ、3次元の網目構造を形成する。この網目構造がバインダー樹脂として機能し、高い耐摩耗性を発現する。
また、上記反応性モノマーとして、全部もしくは一部に電荷輸送能を有するモノマーを使用することは非常に有効な手段である。このようなモノマーを使用することにより、網目構造中に電荷輸送部位が形成され、保護層としての機能を十分に発現することが可能となる。電荷輸送能を有するモノマーとしては、トリアリールアミン構造を有する反応性モノマーが有効に使用される。このような網目構造を有する電荷輸送層は、耐摩耗性が高い反面、架橋反応時に体積収縮が大きく、厚膜化しすぎるとクラックなどを生じる場合がある。このような場合には、保護層を積層構造として、下層(感光層側)には低分子分散ポリマーの保護層を使用し、上層(表面側)に架橋構造を有する保護層を形成しても良い。
上述したように、感光層(電荷輸送層)に高分子電荷輸送物質を使用したり、あるいは感光体の表面に保護層を設けることは、各々の感光体の耐久性(耐摩耗性)を高めるだけでなく、後述のようなタンデム型フルカラー画像形成装置中で使用される場合には、モノクロ画像形成装置にはない新たな効果をも生み出す。
フルカラーの画像の場合、様々な形態の画像が入力されるが、逆に定型的な画像も入力される場合がある。例えば、日本語の文書等における検印等である。検印等は通常、画像領域の端部に配置され、また使用される色も限定される。ランダムな画像が常に書き込まれているような状態においては、画像形成要素中の感光体には、平均的に画像書き込み、現像、転写が行なわれることになるが、上述のように特定の部分に数多くの画像形成が繰り返されたり、特定の画像形成要素ばかり使用された場合には、その耐久性のバランスを欠くことにつながる。このような状態で表面の耐久性(物理的・化学的・機械的)の低い感光体が使用された場合には、この差が顕著になり、画像上の問題になりやすい。一方、感光体を高耐久化した場合には、このような局所的な変化量が小さく、結果的に画像上の欠陥として現われにくくなるため、高耐久化を実現すると共に、出力画像の安定性をも増すことになり、非常に有効である。
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
まず、電荷発生材料(チタニルフタロシアニン結晶)の合成例について述べる。
(比較合成例1)
引用文献1に準じて、顔料を作製した。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過、ついで洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)による水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40gをテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行なった後、濾過を行ない、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た(顔料1とする)。
上記ウェットケーキの固形分濃度は、15wt%であった。結晶変換溶媒のウェットケーキに対する重量比は33倍である。尚、比較合成例1の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。その結果を図19に示す。
また、比較合成例1で得られた水ペーストの一部を80℃の減圧下(5mmHg)で、2日間乾燥して、低結晶性チタニルフタロシアニン粉末を得た。水ペーストの乾燥粉末のX線回折スペクトルを図20に示す。
(X線回折スペクトル測定条件)
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
(比較合成例2)
特許文献11、実施例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の比較合成例1で作製したウェットケーキを乾燥し、乾燥物1gをポリエチレングリコール50gに加え、100gのガラスビーズと共に、サンドミルを行なった。結晶転移後、希硫酸、水酸化アンモニウム水溶液で順次洗浄し、乾燥して顔料を得た(顔料2とする)。比較合成例2の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
(比較合成例3)
特許文献12、製造例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の比較合成例1で作製したウェットケーキを乾燥し、乾燥物1gをイオン交換水10gとモノクロルベンゼン1gの混合溶媒中で1時間撹拌(50℃)した後、メタノールとイオン交換水で洗浄し、乾燥して顔料を得た(顔料3とする)。比較合成例3の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
(比較合成例4)
特許文献13の製造例に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、フタロジニトリル9.8gと1−クロロナフタレン75mlを撹拌混合し、窒素気流下で四塩化チタン2.2mlを滴下する。滴下終了後、徐々に200℃まで昇温し、反応温度を200℃〜220℃の間に保ちながら3時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、室温で放冷し130℃になったところ熱時濾過し、次いで1−クロロナフタレンで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後、乾燥し顔料を得た(顔料4とする)。比較合成例4の原材料には、ハロゲン化物を使用している。
(比較合成例5)
特許文献14、合成例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、α型チタニルフタロシアニン5部を食塩10gおよびアセトフェノン5gと共にサンドグラインダーにて100℃にて10時間結晶変換処理を行なった。これをイオン交換水及びメタノールで洗浄し、希硫酸水溶液で精製し、イオン交換水で、その洗液が中性になるまで洗浄した後、乾燥して顔料を得た(顔料5とする)。比較合成例5の原材料には、ハロゲン化物を使用している。
(比較合成例6)
特許文献15、実施例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、O−フタロジニトリル20.4部、四塩化チタン7.6部をキノリン50部中で200℃にて2時間加熱反応後、水蒸気蒸留で溶媒を除き、2%塩酸、続いて2%水酸化ナトリウム水溶液で精製し、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄後、乾燥し、チタニルフタロシアニンを得た。このチタニルフタロシアニン2部を5℃の98%硫酸40部の中に少しずつ溶解し、その混合物を約1時間、5℃以下の温度を保ちながら攪拌する。続いてこの混合物を高速攪拌した400部の氷水中に、ゆっくりと注入し、析出した結晶を濾過する。結晶が中性となるまで蒸留水で洗浄し、ウエットケーキを得る。そのケーキをTHF100部中で約5時間攪拌を行ない、濾過し、残渣をTHFにより洗浄し、乾燥後、顔料を得た(顔料6とする)。比較合成例6の原材料には、ハロゲン化物を使用している。
(比較合成例7)
特許文献16、合成例2に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の比較合成例1で作製したウェットケーキ10部を塩化ナトリウム15部とジエチレングリコール7部に混合し、80℃の加熱下で自動乳鉢により60時間ミリング処理を行なった。次に、この処理物に含まれる塩化ナトリウムとジエチレングリコールを完全に除去するために充分な水洗を行なった。これを減圧乾燥した後にシクロヘキサノン200部と直径1mmのガラスビーズを加えて、30分間サンドミルにより処理を行ない、顔料を得た(顔料7とする)。比較合成例7の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
(比較合成例8)
特許文献17のチタニルフタロシアニン結晶体の製造方法に準じて、顔料を作製した。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン58g、テトラブトキシチタン51gをα−クロロナフタレン300mL中で210℃にて5時間反応後、α−クロロナフタレン、ジメチルホルムアミド(DMF)の順で洗浄した。その後、熱DMF、熱水、メタノールで洗浄、乾燥して50gのチタニルフタロシアニンを得た。チタニルフタロシアニン4gを0℃に冷却した濃硫酸400g中に加え、引き続き0℃、1時間撹拌した。フタロシアニンが完全に溶解したことを確認した後、0℃に冷却した水800mL/トルエン800mL混合液中に添加した。室温で2時間撹拌後、析出したフタロシアニン混晶体を混合液より濾別し、メタノール、水の順で洗浄した。洗浄水の中性を確認した後、洗浄水よりフタロシアニン混晶体を濾別し、乾燥して、2.9gのチタニルフタロシアニン混晶体を得た。比較合成例8の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
(合成例1)
比較合成例1の方法に従って、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを合成し、次のように結晶変換を行ない、比較合成例1よりも一次粒子の小さなフタロシアニン結晶を得た。
比較合成例1で得られた結晶変換前の水ペースト60部にテトラヒドロフラン400部を加え、室温下でホモミキサー(ケニス、MARKIIfモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行なった。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキを得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶8.5部を得た(顔料9とする)。合成例1の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。上記ウェットケーキの固形分濃度は、15wt%であった。結晶変換溶媒のウェットケーキに対する重量比は44倍である。
(合成例2)
合成例1と同じ条件で、攪拌時間を30分に変更した以外は、合成例1と同様に結晶変換を行い、チタニルフタロシアニン結晶を得た(顔料10とする)。
(合成例3)
合成例1と同じ条件で、攪拌時間を40分に変更した以外は、合成例1と同様に結晶変換を行い、チタニルフタロシアニン結晶を得た(顔料11とする)。
比較合成例1で作製されたチタニルフタロシアニン(水ペースト)の一部をイオン交換水でおよそ1重量%になるように希釈し、表面を導電性処理した銅製のネットですくい取り、チタニルフタロシアニンの粒子サイズを透過型電子顕微鏡(TEM、日立:H−9000NAR)にて、75000倍の倍率で観察した。平均粒子サイズとして、以下のように求めた。
上述のように観察されたTEM像をTEM写真として撮影し、映し出されたチタニルフタロシアニン粒子(針状に近い形)を30個任意に選び出し、それぞれの長径の大きさを測定する。測定した30個体の長径の算術平均を求めて、平均粒子サイズとした。
以上の方法により求められた合成例1における水ペースト中の平均粒子サイズは、0.06μmであった。
また、比較合成例1のチタニルフタロシアニン結晶及び合成例1〜3における濾過直前のチタニルフタロシアニン結晶を、テトラヒドロフランでおよそ1重量%になるように希釈し、上の方法と同様に観察を行なった。上記のようにして求めた平均粒子サイズを表1に示す。なお、比較合成例1及び合成例1で作製されたチタニルフタロシアニン結晶は、必ずしも全ての結晶の形が同一ではなかった(三角形に近い形、四角形に近い形など)。このため、結晶の最も大きな対角線の長さを長径として、平均粒子サイズを算出した。
表1
以上の比較合成例2〜8で作製した顔料2〜8は、先程と同様の方法でX線回折スペクトルを測定し、それぞれの公報に記載のスペクトルと同様であることを確認した。また、合成例1〜3で作製した顔料9〜11のX線回折スペクトルは、比較合成例1で作製した顔料1のスペクトルと一致した。表2にそれぞれのX線回折スペクトルと比較合成例1で得られた顔料のX線回折スペクトルのピーク位置の特徴を示す。
表2
(分散液作製例1)
比較合成例1で作製した顔料1を下記組成の処方にて、下記に示す条件にて分散を行い電荷発生層用塗工液として、分散液を作製した。
チタニルフタロシアニン顔料(顔料1) 15部
ポリビニルブチラール(積水化学製:BX−1) 10部
2−ブタノン 280部
市販のビーズミル分散機に直径0.5mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノンおよび顔料を全て投入し、ローター回転数1200r.p.m.にて30分間分散を行ない、分散液を作製した(分散液1とする)。
(分散液作製例2〜11)
分散液作製例1で使用した顔料1に変えて、それぞれ比較合成例2〜8および合成例1〜3で作製した顔料2〜11を使用して、分散液作製例1と同じ条件にて分散液を作製した(顔料番号に対応して、それぞれ分散液2〜11とする)。
(分散液作製例12)
分散液作製例1で作製した分散液1を、アドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−1−CS(有効孔径1μm)を用いて、濾過を行なった。濾過に際しては、ポンプを使用し、加圧状態で濾過を行い、濾液を得た(分散液12とする)。
(分散液作製例13)
分散液作製例10で使用したフィルターを、アドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−3−CS(有効孔径3μm)に変えた以外は、分散液作製例10と同様に加圧濾過を行ない分散液を作製した(分散液13とする)。
(分散液作製例14)
分散液作製例12で使用したフィルターを、アドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−5−CS(有効孔径5μm)に変えた以外は、分散液作製例12と同様に加圧濾過を行ない分散液を作製した(分散液14とする)。
(分散液作製例15)
分散液作製例1における分散条件を下記の通り変更して、分散を行った(分散液15とする)。ローター回転数:1000r.p.m.にて20分間分散を行った。
(分散液作製例16)
分散液作製例15で作製した分散液をアドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−1−CS(有効孔径1μm)を用いて、濾過を行なった。濾過に際しては、ポンプを使用し、加圧状態で濾過を行なった。濾過の途中でフィルターが目詰まりを起こして、全ての分散液を濾過することが出来なかった。このため以下の評価は実施しなかった。
以上のように作製した分散液中の顔料粒子の粒度分布を、堀場製作所:CAPA−700にて測定した。結果を表3に示す。
表3
(感光体作製例1)
直径60mmのアルミニウムシリンダー(JIS1050)に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、電荷発生層、28μmの電荷輸送層を形成し、積層感光体を作製した(感光体1とする)。なお、電荷発生層の膜厚は、780nmにおける電荷発生層の透過率が20%になるように調整した。電荷発生層の透過率は、下記組成の電荷発生層塗工液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き付けたアルミシリンダーに感光体作製と同じ条件で塗工を行ない、比較対照を電荷発生層を塗工していないポリエチレンテレフタレートフィルムとし、市販の分光光度計(島津:UV−3100)にて、780nmの透過率を評価した。
◎下引き層塗工液
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製) 70部
アルキッド樹脂 15部
(ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 10部
(スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製)
2−ブタノン 100部
◎電荷発生層塗工液
先に作製した分散液1を用いた。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
塩化メチレン 80部
(感光体作製例2〜15)
感光体作製例1で使用した電荷発生層塗工液(分散液1)をそれぞれ、分散液2〜15に変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した。なお、電荷発生層の膜厚は、感光体作製例1と同様に、すべての塗工液を用いた場合に780nmの透過率が20%になるように調整した。

(実施例1〜5および比較例1〜25)
以上のように作製した感光体作製例1〜15の電子写真感光体を図8に示す画像形成装置に搭載し、スコロトロン方式の帯電部材を用いて下記の帯電条件にて帯電を行い、画像露光光源として655nmの発振波長を有する半導体レーザーを用い、カップリングレンズ、アパーチャー、シリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー、走査レンズからなる像露光装置により長径45μmビームを形成し、感光体に書き込みを行った。現像には2成分現像(体積平均粒径が6μmのトナー)を行い、転写部材として転写ベルトを用い、除電光には780nmのLEDを用い、感光体全面に光照射を行い除電を行うようにした。書き込み率6%のチャートを用い、連続5万枚印刷を行った(試験環境は、22℃−55%RHである)。
帯電条件1:
放電電圧:−6.0kV
グリッド電圧:−920V(感光体の未露光部表面電位は、−900V)
現像バイアス:−650V
帯電条件2:
放電電圧:−5.8kV
グリッド電圧:−780V(感光体の未露光部表面電位は、−750V)
現像バイアス:−500V
なお、画像評価は5万枚印刷後に、下記3つの評価を実施した。
(i)地汚れの評価:
白ベタ画像を出力し、地肌部に発生する黒点の数、大きさからランク評価を実施した。
(ii)ドット形成状態の評価
ハーフトーン画像(直径50μmの1ドット画像)を形成し、ドット形成状態を観察した(ドットの散り具合やドット再現性)。
(iii)ドットの輪郭ドットの周辺(エッジ)部分の鮮鋭性に関して評価した。
いずれの場合にもランク評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表わした。以上の結果を表4に示す。
表4
(実施例6〜10および比較例26〜35)
以上のように作製した感光体作製例1〜15の電子写真感光体を図8に示す画像形成装置に搭載し、接触方式の帯電部材(直径18mmの帯電ローラー)を用いて下記帯電条件にて感光体表面が−880Vになるように帯電を行い、画像露光光源として655nmの発振波長を有する半導体レーザーを用い、カップリングレンズ、アパーチャー、シリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー、走査レンズからなる像露光装置により長径45μmビームを形成し、感光体に書き込みを行った。現像には2成分現像(体積平均粒径が6μmのトナー)を行い、転写部材として転写ベルトを用い、除電光には780nmのLEDを用い、感光体全面に光照射を行い除電を行うようにした。書き込み率6%のチャートを用い、連続5万枚印刷を行った(試験環境は、22℃−55%RHである)。
帯電条件:
DCバイアス:−1580V
なお、画像評価は5万枚印刷後に、下記3つの評価を実施した。
(i)地汚れの評価:
白ベタ画像を出力し、地肌部に発生する黒点の数、大きさからランク評価を実施した。
(ii)ドット形成状態の評価
ハーフトーン画像(直径50μmの1ドット画像)を形成し、ドット形成状態を観察した(ドットの散り具合やドット再現性)。
(iii)ドットの輪郭
ドットの周辺(エッジ)部分の鮮鋭性に関して評価した。
地汚れランク評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表わした。以上の結果を表5に示す。
表5
(実施例11)
実施例1において、通紙試験に使用したチャートを書き込み率1%のチャートに変更し、連続5万枚の印刷を行った。この際、図3に示す画像形成装置の現像部位における感光体表面電位と、転写直後の感光体表面電位を計測するため、表面電位計をセット出来るように改造を行った。
通紙試験前と通紙試験後において、現像部位における感光体露光部の電位を測定した。この際、露光部の表面電位を計測するために、光書き込みは感光体全面のベタ書き込みを行った。
実施例4における通紙試験に際しては転写バイアスを調整することにより、転写後の感光体非書き込み部の電位が−150Vになるように調整した。この測定の際には、光書き込みを行わず、感光体の転写後の電位を測定した。結果を表6に示す。
(実施例12)
実施例11において、転写後の感光体非書き込み部の電位が−80Vになるように調整した以外は、実施例11と同様に試験を行った。結果を表6に示す。
(実施例13)
実施例11において、転写後の感光体非書き込み部の電位が0Vになるように調整した以外は、実施例11と同様に試験を行った。結果を表6に示す。
(実施例14)
実施例11において、転写後の感光体非書き込み部の電位が+70Vになるように調整した以外は、実施例11と同様に試験を行った。結果を表6に示す。
(実施例15)
実施例11において、転写後の感光体非書き込み部の電位が+150Vになるように調整した以外は、実施例11と同様に試験を行った。結果を表6に示す。
(実施例16)
実施例11において、除電部材を除電ランプから、導電性ブラシ(アースに接続)に変更した以外は、実施例11と同様に試験を行った。結果を表6に示す。
表6
(感光体作製例16)
感光体作製例9における電荷輸送層塗工液を以下の組成のものに変更した以外は、感光体作製例9と同様に感光体を作製した。
◎電荷輸送層塗工液
下記組成の高分子電荷輸送物質 10部
(重量平均分子量:約135000)
下記構造の添加剤 0.5部
塩化メチレン 100部
(感光体作製例17)
感光体作製例9における電荷輸送層の膜厚を22μmとし、電荷輸送層上に下記組成の保護層塗工液を塗布乾燥し、5μmの保護層を設けた以外は感光体作製例9と同様に感光体を作製した。
◎保護層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
アルミナ微粒子 4部
(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、平均一次粒径:0.4μm)
シクロヘキサノン 500部
テトラヒドロフラン 150部
(感光体作製例18)
感光体作製例17における保護層塗工液中のアルミナ微粒子を以下のものに変更した以外は、感光体作製例17と同様に感光体を作製した。
酸化チタン微粒子 4部
(比抵抗:1.5×1010Ω・cm、平均一次粒径:0.5μm)
(感光体作製例19)
感光体作製例17における保護層塗工液中のアルミナ微粒子を以下のものに変更した以外は、感光体作製例17と同様に感光体を作製した。
酸化錫−酸化アンチモン粉末 4部
(比抵抗:10Ω・cm、平均1次粒径0.4μm)
(感光体作製例20)
感光体作製例17における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例17と同様に電子写真感光体を作製した。
◎保護層塗工液
下記構造式の高分子電荷輸送物質 17部
(重量平均分子量:約135000)
アルミナ微粒子 4部
(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、平均一次粒径:0.4μm)
シクロヘキサノン 500部
テトラヒドロフラン 150部
(感光体作製例21)
感光体作製例17における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例17と同様に電子写真感光体を作製した。
◎保護層塗工液
メチルトリメトキシシラン 100部
3%酢酸 20部
下記構造の電荷輸送性化合物 35部
酸化防止剤(サノール LS2626:三共化学社製) 1部
硬化剤(ジブチル錫アセテート) 1部
2−プロパノール 200部
(感光体作製例22)
感光体作製例17における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例17と同様に電子写真感光体を作製した。
◎保護層塗工液
メチルトリメトキシシラン 100部
3%酢酸 20部
下記構造の電荷輸送性化合物 35部
α−アルミナ粒子
(スミコランダム AA−03:住友化学工業製) 15部
酸化防止剤(サノール LS2626:三共化学社製) 1部
ポリカルボン酸化合物 BYK P104:ビックケミー社製 0.4部
硬化剤(ジブチル錫アセテート) 1部
2−プロパノール 200部
(感光体作製例23)
感光体作製例9におけるアルミニウムシリンダー(JIS1050)を以下の陽極酸化皮膜処理を行ない、次いで下引き層を設けずに、感光体作製例9と同様に電荷発生層、電荷輸送層を設け、感光体を作製した。
◎陽極酸化皮膜処理
支持体表面の鏡面研磨仕上げを行ない、脱脂洗浄、水洗浄を行なった後、液温20℃、硫酸15vol%の電解浴に浸し、電解電圧15Vにて30分間陽極酸化皮膜処理を行なった。更に、水洗浄を行なった後、7%の酢酸ニッケル水溶液(50℃)にて封孔処理を行なった。その後純水による洗浄を経て、7μmの陽極酸化皮膜が形成された支持体を得た。
(実施例17〜24)
以上のように感光体作製例16〜23で作製した電子写真感光体を図8に示す画像形成装置に搭載し、スコロトロン方式の帯電部材を用いて下記の帯電条件にて帯電を行い、画像露光光源として655nmの発振波長を有する半導体レーザーを用い、カップリングレンズ、アパーチャー、シリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー、走査レンズからなる像露光装置により長径45μmビームを形成し、感光体に書き込みを行った。現像には2成分現像(体積平均粒径が6μmのトナー)を行い、転写部材として転写ベルトを用い、除電光には780nmのLEDを用い、感光体全面に光照射を行い除電を行うようにした。書き込み率6%のチャートを用い、連続5万枚印刷を行った(試験環境は、22℃−55%RHである)。
帯電条件:
放電電圧:−6.0kV
グリッド電圧:−920V(感光体の未露光部表面電位は、−900V)
現像バイアス:−650V
なお、画像評価は5万枚印刷後に、下記3つの評価を実施した。
(i)地汚れの評価:
白ベタ画像を出力し、地肌部に発生する黒点の数、大きさからランク評価を実施した。
(ii)ドット形成状態の評価
ハーフトーン画像(直径50μmの1ドット画像)を形成し、ドット形成状態を観察した(ドットの散り具合やドット再現性)。
(iii)ドットの輪郭
ドットの周辺(エッジ)部分の鮮鋭性に関して評価した。
いずれの場合にもランク評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表わした。以上の結果を表7に示す。
また、5万枚印刷後の感光層の摩耗量(保護層を有する場合は保護層の摩耗量)を測定した。以上の結果、実施例1の場合と併せて表7に示す。
表7
(感光体作製例24)
感光体作製例1のアルミシリンダーを直径30mmのものに変え、感光体作製例1と同じ組成の感光体を作製した。
(感光体作製例25)
感光体作製例4のアルミシリンダーを直径30mmのものに変え、感光体作製例4と同じ組成の感光体を作製した。
(感光体作製例26)
感光体作製例5のアルミシリンダーを直径30mmのものに変え、感光体作製例5と同じ組成の感光体を作製した。
(感光体作製例27)
感光体作製例8のアルミシリンダーを直径30mmのものに変え、感光体作製例8と同じ組成の感光体を作製した。
(感光体作製例28)
感光体作製例9のアルミシリンダーを直径30mmのものに変え、感光体作製例9と同じ組成の感光体を作製した。
(感光体作製例29)
感光体作製例12のアルミシリンダーを直径30mmのものに変え、感光体作製例12と同じ組成の感光体を作製した。
(実施例25〜26および比較例36〜39)
以上のように作製した感光体作製例24〜29の感光体を、帯電部材(スコロトロン帯電)と共に、図10に示すような1つの画像形成装置用プロセスカートリッジに装着し、更に図9に示すフルカラー画像形成装置に搭載した。4つの画像形成要素では、帯電部材としてスコロトロン方式の帯電部材により感光体表面電位が−900Vになるように帯電を行い、画像露光光源として655nmの発振波長を有する半導体レーザーを用い、カップリングレンズ、アパーチャー、シリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー、走査レンズからなる像露光装置により長径40μmビームを形成し、感光体に書き込みを行った。現像には2成分現像(体積平均粒径が6μmのトナー)を行い、転写部材として転写ベルトを用い、除電光には780nmのLEDを用い、感光体全面に光照射を行い除電を行うようにした。書き込み率6%のチャートを用い、連続3万枚印刷を行った(試験環境は、22℃−55%RHである)。
なお、画像評価は3万枚印刷後に、下記4つの評価を実施した。
(i)地汚れの評価:
白ベタ画像を出力し、地肌部に発生する黒点の数、大きさからランク評価を実施した。
(ii)ドット形成状態の評価
ハーフトーン画像(直径45μmの1ドット画像)を形成し、ドット形成状態を観察した(ドットの散り具合やドット再現性)。
(iii)ドットの輪郭ドットの周辺(エッジ)部分の鮮鋭性に関して評価した。
(iv)色再現性の評価
感光体初期状態と3万枚ランニング後に、同じフルカラー画像を出力し、色再現性の評価を試みた。
いずれの場合にもランク評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表わした。以上の結果を表8に示す。
表8
最後に、本発明で使用するチタニルフタロシアニン結晶の特徴であるブラッグ2θの最低角ピークである7.3°について、公知材料の最低角7.5°と同一であるか否かについて検証する。
(比較合成例9)
比較合成例1における結晶変換溶媒を塩化メチレンから2−ブタノンに変更した以外は、比較合成例1と同様に処理を行ない、チタニルフタロシアニン結晶を得た。
比較合成例1の場合と同様に、比較合成例9で作製したチタニルフタロシアニン結晶のXDスペクトルを測定した。これを図21に示す。図21より、比較合成例9で作製されたチタニルフタロシアニン結晶のXDスペクトルにおける最低角は、比較合成例1で作製されたチタニルフタロシアニンの最低角(7.3°)とは異なり、7.5°に存在することが判る。
(測定例1)
比較合成例1で得られた顔料(最低角7.3°)に特許文献17に記載の顔料(最大回折ピークを7.5°に有する)と同様に作製したものを3重量%添加し、乳鉢で混合して、先程と同様にX線回折スペクトルを測定した。測定例1のX線回折スペクトルを図22に示す。
(測定例2)
比較合成例9で得られた顔料(最低角7.5°)に特許文献17に記載の顔料(最大回折ピークを7.5°に有する)と同様に作製したものを3重量%添加し、乳鉢で混合して、先程と同様にX線回折スペクトルを測定した。測定例2のX線回折スペクトルを図23に示す。
図22のスペクトルにおいては、低角側に7.3°と7.5°の2つの独立したピークが存在し、少なくとも7.3°と7.5°のピークは異なるものであることが判る。一方、図23のスペクトルにおいては、低角側のピークは7.5°のみに存在し、図22のスペクトルとは明らかに異なっている。
以上のことから、本願発明のチタニルフタロシアニン結晶における最低角ピークである7.3°は、公知のチタニルフタロシアニン結晶における7.5°のピークとは異なるものであることが判る。
光キャリア発生の模式図である。 電荷輸送に際して、ドットが拡散することを表した図である。 電界強度とドット(トナー像)形成の状態を表した図である。 電界強度と地汚れの関係を表した図である。 粒子サイズが小さくかつ粒度分布の小さな電荷発生物質を用いた感光体の静電潜像(ドット)概略図である。 粒子サイズが大きくかつ粒度分布が大きい(あるいは粗大粒子を含んでいる)電荷発生物質を用いた感光体の静電潜像(ドット)の概略図である。 粒子サイズの異なる電荷発生物質を用いた際の感光体の光減衰特性の違いを説明するための図である。Aは粒子サイズが大きく、Bは粒子サイズが小さい場合である。 本発明の電子写真プロセスおよび画像形成装置を説明するための概略図である。 本発明のタンデム方式のフルカラー画像形成装置を説明するための概略図である。 本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジを説明するための図である。 不定形チタニルフタロシアニンのTEM像である。図中のスケール・バーは、0.2μmである。 結晶変換後のチタニルフタロシアニンのTEM像である。図中のスケール・バーは、0.2μmである。 短時間で結晶変換を行なったチタニルフタロシアニン結晶のTEM像である。図中のスケール・バーは、0.2μmである。 分散時間が短い場合の分散液の状態を示す図である。 分散時間が長い場合の分散液の状態を示す図である。 図14、15の分散液について、平均粒径及び粒度分布を示す図である。 本発明に用いられる電子写真感光体の層構成を表わした図である。 本発明に用いられる別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。 比較合成例1で合成されたチタニルフタロシアニンのXDスペクトルを表わした図である。 水ペーストの乾燥粉末のXDスペクトルを表わした図である。 比較合成例9で合成されたチタニルフタロシアニンのXDスペクトルを表わした図である。 測定例1で用いたチタニルフタロシアニンのXDスペクトルを表わした図である。 測定例2で用いたチタニルフタロシアニンのXDスペクトルを表わした図である。
符号の説明
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャー
5 画像露光部
6 現像ユニット
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャー
11 分離チャージャー
12 分離爪
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
16Y、16M、16C、16K 感光体
17Y、17M、17C、17K 帯電部材
18Y、18M、18C、18K レーザー光
19Y、19M、19C、19K 現像部材
20Y、20M、20C、20K クリーニング部材
21Y、21M、21C、21K 転写ブラシ
22 転写搬送ベルト
23 レジストローラ
24 定着装置
25Y、25M、25C、25K 画像形成要素
26 転写紙
27Y、27M、27C、27K 除電部材
31 導電性支持体
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 保護層
101 感光体
102 帯電部材
103 画像露光部
104 現像手段
105 転写体
106 転写手段
107 クリ−ニング手段
108 除電手段

Claims (21)

  1. 導電性支持体上に、電荷輸送層と、電荷発生物質としてチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層とを有する電子写真感光体;及び
    50μm以下のビーム径の光源を用いた書込手段;
    を備えた画像形成装置において、
    前記チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として:
    27.2゜に最大回折ピークを有し;
    9.4゜、9.6゜及び24.0゜に主要なピークを有し;
    最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し;かつ
    7.3°のピークと9.4゜のピークとの間及び26.3°にピークを有しておらず;
    前記チタニルフタロシアニン結晶は、0.25μm以下の平均一次粒子サイズを有し、
    前記電子写真感光体は、30V/μm以上の電界強度を印加されることを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記電荷発生層は、前記チタニルフタロシアニン結晶粒子の平均粒子サイズが0.3μm以下で、その標準偏差が0.2μm以下になるまで分散を行ない、その後有効孔径が3μm以下のフィルターにて濾過を行なった分散液を使用して形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記チタニルフタロシアニン結晶は:
    CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有し、回折ピークの半値巾が1゜以上で一次粒子の平均粒子サイズが0.1μm以下の不定形チタニルフタロシアニン又は低結晶性チタニルフタロシアニンを、該チタニルフタロシアニンの一次粒子が、0.25μm以下の平均粒子サイズに成長するまで、結晶変換するように水の存在下で有機溶媒で撹拌し、組成物を得る工程;及び
    該組成物を分別濾過する工程;
    により調製されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  4. 前記チタニルフタロシアニン結晶は、ハロゲン化物を含まない原材料を使用して調製されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  5. 前記チタニルフタロシアニン結晶は、結晶変換に際して、水で洗浄した洗液の、pHが6以上8以下であり及び/又は比伝導度が8μS/cm以下である不定形チタニルフタロシアニンを用いることを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
  6. 前記チタニルフタロシアニン結晶は、結晶変換に際して、不定形チタニルフタロシアニン及び/又は低結晶性チタニルフタロシアニン重量の30倍量以上の有機溶媒を使用して撹拌されることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  7. 前記電荷輸送層は、少なくともトリアリールアミン構造を主鎖及び/又は側鎖に含むポリカーボネートを含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  8. 前記電子写真感光体は、前記電荷輸送層上に保護層を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずか一項に記載の画像形成装置。
  9. 前記保護層は、比抵抗1010Ω・cm以上の無機顔料あるいは金属酸化物を含有することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
  10. 前記保護層は、高分子電荷輸送物質を含有することを特徴とする請求項8又は9に記載の画像形成装置。
  11. 前記保護層のバインダー樹脂は、架橋構造を有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  12. 前記架橋構造を有するバインダー樹脂は、電荷輸送部位を有することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
  13. 前記導電性支持体の表面は、陽極酸化皮膜処理されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  14. 直接転写方式で画像形成を行うことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  15. 前記書込手段により前記電子写真感光体上に静電潜像を形成されない非書込部におけるトナー像転写後の該感光体表面電位は、主帯電器により帯電された極性の絶対値として、100V以下であることを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。
  16. 前記書込手段により前記電子写真感光体上に静電潜像を形成されない非書込部におけるトナー像転写後の該感光体表面電位は、主帯電器により帯電された極性の逆極性であることを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。
  17. 前記書込手段により前記電子写真感光体上に静電潜像を形成されない非書込部におけるトナー像転写後の該感光体表面電位は、主帯電器により帯電された極性の逆極性の絶対値として、100V以下であることを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。
  18. 光除電機構を用いないことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  19. 少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体からなる画像形成要素を複数配列したことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  20. 当該電子写真装置の帯電手段に、交流重畳電圧印加を行うことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  21. 感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群から選択された少なくとも1つの手段とが一体となった、装置本体と着脱自在なカートリッジを搭載していることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか一項に記載の画像形成装置。
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