画像を表示する表示装置は、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、テレビジョン受像機等の様々な装置で用いられている。一般に、表示装置の画面部分は、電源をオフとしたときに、灰色や黒色になる。表示装置の画面を灰色や黒色の状態のままにしたのでは、何ら使用者の役に立つことはない。そこで、電源をオフとした場合等に鏡として使えるようにした表示装置が提案されている(例えば特許文献1)。
特許文献1には、使用者が観察する側から順に、透過型液晶パネル部、散乱型液晶パネル部および鏡を配置した表示装置が記載されている。散乱型液晶パネル部は、通電時に光を通過させ、通電状態をオフにすると光を反射する。画像の表示のために表示装置を使用するときには、散乱型液晶パネル部の通電状態をオフとする。すると、透過型液晶パネル部を通過した光は、散乱型液晶パネル部で反射する。この状態で、画像を表示する。一方、画像の表示のために表示装置を使用しないときには、通電により散乱型液晶パネル部を光透過状態にする。すると、外部から入射した光は、透過型液晶パネル部を通過し、更に散乱型液晶パネル部も通過して鏡に到達する。そして、その光は鏡で反射し、散乱型液晶パネル部、透過型液晶パネル部を通過し、表示装置の表面に戻る。この結果、画像を表示しない場合には、表示装置を鏡として使用することができる。また、特許文献1には、このような表示装置を携帯電話機に適用した場合についても記載されている。
なお、特許文献1では、散乱型液晶パネル部の通電状態をオフとした場合、外部からの光は散乱型液晶パネル部で反射する旨が記載されている。しかし、散乱型液晶の後方散乱は一般に少なく、散乱型液晶パネル部は、通電状態がオフとなっていても、入射光の一部を通過させていると考えられる。従って、画像の表示のために表示装置を使用する場合には、散乱型液晶パネル部だけでなく鏡による反射光も生じていると考えられる。
また、特許文献1に記載の構成とは異なる構成によって、電源オフ時に画面部分を鏡として利用できるようにした携帯電話機が販売されている。図13(a)は、このような携帯電話機の構成を示す説明図である。画像を表示するディスプレイ101の前に、順番に反射偏光板102と、液晶層103と、偏光板104とが配置される。偏光板104は、偏光軸方向に振動する光を通過させ、偏光軸に垂直な吸収軸方向に振動する光を吸収する。一方、反射偏光板102は、偏光軸方向に振動する光を通過させ、偏光軸に垂直な反射軸方向に振動する光を反射する。反射偏光板102と偏光板104とは、偏光軸が互いに直交するように配置される。また、液晶層103は、光を旋光させて通過させる状態と、光を旋光させずに通過させる状態のいずれかに切り替えられる。液晶層103は、光を旋光させる場合、反射偏光板102の偏光軸方向から偏光板104の偏光軸方向に光を旋光させる。
図13(b)は、ディスプレイ101の電源をオンとして画像を表示する場合における光の通過状況を示す説明図である。このとき、液晶層103は、光を旋光させる状態に切り替えられる。ディスプレイ101からの光のうち、反射偏光板102の偏光軸方向に振動する光は、反射偏光板102を通過する。液晶層103は、この光を旋光させる。この結果、光の振動方向と、偏光板104の偏光軸が一致するので、光は偏光板104を通過し、外部(観察者)に達する。よって、観察者は、ディスプレイ101に表示された画面を観察することができる。また、外部から入射する光は、ディスプレイ101からの光とは逆の経路をたどる。従って、外部からの光は、反射偏光板102で反射しない。
図13(c),(d)は、ディスプレイ101の電源をオフとして画像を表示しない場合における光の通過状況を示す説明図である。このとき、液晶層103は、光を旋光させずに通過させる状態に切り替えられる。ディスプレイ101方向からの光のうち、反射偏光板102の偏光軸方向に振動する光は、反射偏光板102を通過する。この光は、そのまま液晶層103を通過する。この光は、偏光板104の吸収軸方向に振動しているので、偏光板104で吸収され、外部に達しない(図13(c))。また、外部から入射する光のうち、偏光板104の偏光軸方向に振動する光は、偏光板104を通過し、さらに、そのまま液晶層103を通過する。この光は、反射偏光板102の反射軸方向に振動しているので、反射偏光板102で反射する。その後、反射偏光板102までの経路を逆にたどって外部に戻る。このように、ディスプレイ101方向からの光を外部に漏らさず、外部からの光を反射するので、ディスプレイ101の電源をオフとしたときには、携帯電話機を鏡として利用することができる。
また、選択反射を呈する液晶が液晶表示装置に用いられる場合がある。このような選択反射を呈する液晶としてカイラルネマチック液晶やコレステリック液晶がある。以下、カイラルネマチック液晶を例に、選択反射を呈する液晶について説明する。なお、このような選択反射を呈する液晶は、例えば、特許文献2に記載されている。
一対の平行基板間に挟持されたカイラルネマチック液晶は、その液晶ディレクタが一定周期でねじれた「ねじれ構造」を有する。そのねじれ中心軸(以下、ヘリカル軸という。)の基板に対する向きによって、光の反射態様が異なる。図14は、カイラルネマチック液晶の各種状態を示す模式図であり、鼓型で表した液晶ドメインの配列状態を示す。
複数の液晶ドメインの各ヘリカル軸の平均的な方向が基板面に対してほぼ垂直となる状態をプレナー状態という。図14(a),(b)は、このプレナー状態を示している。プレナー状態のうち、図14(b)に示すように各ヘリカル軸が揃った状態を完全プレナー状態という。プレナー状態では、入射光のうちの、液晶層のねじれの向きに対応した円偏光を選択反射する。選択反射される波長λは、液晶組成物の平均屈折率nAVGと液晶組成物のピッチpの積にほぼ等しい(λ=nAVG・p)。
ピッチpは、カイラル剤等の光学活性物質の添加量cと光学活性物質の定数HTP(Helical Twisting Power)から、p=1/(c・HTP)によって決まる。したがって、選択反射波長は、光学活性物質の種類と添加量によって調整できる。
また、図14(a)に示すように、複数の液晶ドメインのヘリカル軸が平均的にはほぼ基板に対して垂直な方向を向いているものの、向きが僅かずつ異なっていると、その液晶ドメイン間にて入射光の散乱現象が発生する。すなわち、図14(a)に示すプレナー状態は、散乱を伴う反射状態(散乱反射状態)となる。また、図14(b)に示す完全プレナー状態では、入射光は散乱せずに反射する。すなわち、光の入射角と反射角とが等しくなる鏡面状態となる。なお、物を写し見る道具または部材を指す場合には「鏡」と記し、光の入射角と反射角が等しくなる面の状態を指す場合には「鏡面」と記す。
図14(a),(b)に示すプレナー状態は、高電圧を印加することによりカイラルネマチック液晶をホメオトロピック状態にし、その後電圧印加を停止することにより得られる。ホメオトロピック状態とは、図14(d)に示すように、各液晶分子が基板にほぼ垂直に配向した状態である。ホメオトロピック状態は、カイラルネマチック液晶に所定値以上の高電圧を印加することにより得られる。また、ホメオトロピック状態の場合、液晶は光を通過させる。従って、ホメオトロピック状態の液晶は、透明状態を呈する。
図14(b)に示す完全プレナーになるか、図14(a)に示すプレナーになるかは、カイラルネマチック液晶が接する配向膜の状態によって定まる。配向膜にラビング処理が施されていると、界面で液晶分子が基板に平行に配向し、その結果、完全プレナー状態が得られる。一方、配向膜にラビング処理が施されていない場合、僅かに散乱が生じたプレナー状態になる。
また、カイラルネマチック液晶は、複数の液晶ドメインのヘリカル軸が基板面に対してランダム方向または非垂直方向に配列したフォーカルコニック状態をとることもできる。図14(c)は、フォーカルコニック状態を示している。一般的に、フォーカルコニック状態の液晶層は全体として散乱状態を示す。選択反射時のように特定の波長の光を反射することはない。従って、フォーカルコニック状態の液晶は、光を散乱させながら通過させる。
フォーカルコニック状態およびプレナー状態は、無電界時でも安定に存在する。
次に、液晶表示装置の駆動法について説明する。駆動電圧の振幅の大きさによって、プレナー状態をフォーカルコニック状態に、またフォーカルコニック状態をプレナー状態にそれぞれ変化させることができる。後者の場合、ホメオトロピック状態を経由させるので、前者よりも高い電圧を印加する。また、ホメオトロピック状態になっているカイラルネマチック液晶に印加される電圧を徐々に低下させていくと、フォーカルコニック状態になる(非特許文献1参照)。
カイラルネマチック液晶では、一連の印加電圧波形の実効値が直接電圧消去後の状態を決定するのではなく、電圧消去後の表示は、直前に印加された電圧パルスの印加時間および振幅値に依存する。
カイラルネマチック液晶をフォーカルコニック状態に転移させる電圧をVFとし、プレナー状態に転移させる下限電圧をVPとし、電圧を印加しても表示状態が変わらない上限電圧をVSとする。線順次駆動の場合を例に説明すると、選択行の走査電極の電位をVrに設定し、それに同期して各信号電極の電位をVcまたは−Vcに設定する。選択行においてプレナー状態にすべき画素には(Vr+Vc)の電圧が印加され、その画素はホメオトロピック状態になる。また、フォーカルコニック状態にすべき画素には(Vr−Vc)の電圧が印加され、その画素はフォーカルコニック状態になる。選択行が切り替わると、それまで選択されていた行の画素への印加電圧の大きさはVcに下がり、ホメオトロピック状態だった液晶はプレナー状態に変化し、プレナー状態を維持する。フォーカルコニック状態に変化した液晶は、その状態を維持する。ただし、各電極に設定する電位Vr,Vcの条件は、以下の通りである。
Vr+Vc>VP、Vr−Vc=VF、VS>Vc
また、一対の基板において、電極パターンが存在する領域の周囲を囲むようにしてスペーサを形成し、そのスペーサに囲まれた領域の内部に液晶を注入した液晶表示素子が知られている(例えば、特許文献3に記載された実施例2および実施例3参照。)。特許文献3に記載されている液晶表示素子において、電極パターンが存在する領域の周囲を囲むようにして形成されるスペーサは、1対の基板の外周に沿って設けられるシール材とは別に形成される。
特開2001−350157号公報(段落0016−0024、第2図−第4図)
特開2003−98507号公報(段落0002−段落0015)
特開平9−222609号公報(段落0011−段落0012、第6図−第7図)
岡野光治、小林俊介、「液晶 応用編」、初版第3刷、培風館、昭和62年11月10日、p.38−39、図1.37
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明による表示装置の構成例を示す説明図である。本発明による表示装置は、主電源6がオンとされている場合に情報(画像)を表示するための表示パネル11と、表示パネル11の前面に配置される前面パネル1とを備える。なお、「オン」とは、電源が電圧を出力する状態を指し、「オフ」とは電源が電圧出力を停止している状態を指すものとする。
図1では、便宜上、表示パネル11と前面パネル1とを並べて示しているが、前面パネル1は、図2に示すように表示パネル11の表示面の前方(観察者50側)に配置される。また、ここでは表示パネル11が液晶表示パネルである場合を例に示すが、表示パネル11の種類は液晶表示パネルに限定されない。表示パネル11としてCRT(Cathode-ray tube)やPDP(Plasma Display Panel)を用いてもよい。なお、情報を表示するための表示体としては、主電源6を有しないポスターや提示版等の固定表示体であってもよい。
表示パネル11として液晶表示パネルを用いる場合、表示パネル11は、例えば、複数の走査電極が配置された基板と、複数の信号電極が配置された基板とを備え、その基板間に液晶を挟持する。表示パネル用走査電極ドライバ12は、複数の電圧出力端子を備え、表示パネル11の各走査電極はこの電圧出力端子と一対一に接続される。同様に、表示パネル用信号電極ドライバ13も複数の電圧出力端子を備え、表示パネル11の各信号電極はこの電圧出力端子と一対一に接続される。
主電源6は、表示装置の電源であり、表示パネル11の駆動制御を行う制御部21と、表示パネル用電源14に電圧を出力する。また、主電源6は、後述する前面パネル用電源2にも電圧を出力する。
表示パネル用電源14は、表示パネル11の各電極の電位設定に必要な電圧を表示パネル用走査電極ドライバ12および表示パネル用信号電極ドライバ13に出力する。
表示パネル用走査電極ドライバ12および表示パネル用信号電極ドライバ13は、表示装置の主電源6がオンとなっているときに、制御部21に従って表示パネル11を駆動する。この駆動方法は、表示パネル11に画像を表示できる駆動方法であれば、特定の駆動方法に限定されない。従って、表示パネル用走査電極ドライバ12および表示パネル用信号電極ドライバ13は、例えば、公知の線順次駆動方法等によって表示パネル11を駆動すればよい。線順次駆動の場合、表示パネル用走査電極ドライバ12が各走査電極を順次選択し、選択した走査電極を所定の電位に設定する。また、表示パネル用信号電極ドライバ13が、選択行の画素が画像に応じた表示状態になるように各信号電極の電位を設定する。そして、選択行を順次切り替えながら各走査電極を走査することを繰り返す。
制御部21は、表示パネル11の駆動を制御する。主電源6がオンとなっている場合、制御部21は、表示パネル11において表示すべき画像が表示されるように走査電極の走査を指示する制御信号を出力する。例えば、1フレームの開始を指示するFLM(ファーストラインマーカ)を表示パネル用走査電極ドライバ12に出力し、選択行の切り替えを指示するラッチパルスを表示パネル用走査電極ドライバ12および表示パネル用信号電極ドライバ13に出力する。表示パネル用走査電極ドライバ12および表示パネル用信号電極ドライバ13は、これらの制御信号に従って線順次駆動を行い、表示パネル11に画像を表示させる。主電源6がオフにされると、制御部21は、FLMやラッチパルスの出力を停止し、表示パネル11の駆動を停止する。
前面パネル1は、主電源6がオンのときには透明状態を呈し、主電源6がオフのときには色分けによって模様(文字やキャラクターなども含む。)を表示する液晶パネルである。前面パネル1が表示パネル11の画面を覆えるように、前面パネル1の大きさは表示パネル11の画面よりも大きいことが好ましい。ただし、前面パネル1の大きさが表示パネル11の画面より小さくてもよい。
前面パネル1は、コモン電極(図1において図示せず。)が配置された第一の基板41と、複数のセグメント電極44a,44bが配置された第二の基板42との間にカイラルネマチック液晶を挟持する表示パネルである。前面パネル1において、セグメント電極は複数設けられる。一方、コモン電極は一つであってもよい。以下、コモン電極が一つである場合を例にして説明する。
複数のセグメント電極は、主電源6がオフのときに色分けされる個々の領域と同一の形状になるように形成されている。また、主電源6がオフであるときの色分けは、カイラルネマチック液晶のプレナー状態が呈する色と、フォーカルコニック状態が呈する透明状態(散乱を伴う透明状態)とによって行われる。従って、複数のセグメント電極のうちの一部のセグメント電極は、カイラルネマチック液晶がフォーカルコニック状態にされる領域と同一形状に形成される。他のセグメント電極は、カイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域と同一形状に形成される。
図1に示す例では、セグメント電極44aは、カイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域と同一形状に形成されている。もう一つのセグメント電極44bは、カイラルネマチック液晶がフォーカルコニック状態にされる領域と同一形状に形成されている。図3は、図1に例示する二つのセグメント電極44a,44bを別々に示した説明図である。図3に示す二つのセグメント電極が、それぞれ第二の基板42上に形成される。この結果、主電源6がオフのときには、セグメント電極44aの形状によって表される「ABC」という文字が選択反射波長の色を呈する。また、セグメント電極44bの形状によって表される背景の部分が、散乱を伴う透明状態を呈する。従って、主電源6がオフのときに観察者に「ABC」という文字を観察させることができる。
なお、図3に示すように、文字「A」、「B」を表す部分には、切れ目31が設けられる。切れ目31は、文字の背景部分に対応するセグメント電極44bを一体化させるために設けられる。仮に、切れ目31がないとすると、セグメント電極44bは一体化されず、図4に示すように4つの部分71〜74に分けられてしまう。すると、文字「A」を表す線に囲まれた部分72および文字「B」を表す線に囲まれた部分73,74の電極に電位を設定できなくなってしまう。セグメント電極44bを一体化することによってこのような状態を防止するために、切れ目31が設けられる。なお、切れ目31の幅は、数10μm程度あればよい。
前面パネル用電源2は、主電源6がオンであるときに、コモン電極およびセグメント電極44a,44bに電圧を出力して、コモン電極およびセグメント電極44a,44bを所定の電位に設定する。このとき、前面パネル用電源2は、コモン電極およびセグメント電極間の電圧が、カイラルネマチック液晶をホメオトロピック状態に変化させる電圧になるように各電極の電位を設定する。
また、前面パネル用電源2には、第一のリレー(継電器)3が設けられ(図1参照。)、主電源6のオンおよびオフに連動して、前面パネル用電源2がオンまたはオフに切り替えられるように構成されている。すなわち、主電源6がオンからオフに切り替えられたとき、第一のリレー3は前面パネル用電源2もオンからオフに切り替える。そして、主電源6がオフからオンに切り替えられたとき、第一のリレー3は前面パネル用電源2もオフからオンに切り替える。
コモン電極および各セグメント電極44a,44bは、前面パネル用電源2に接続される。コモン電極と前面パネル用電源2との接続経路は一定に保たれる。同様に、主電源6のオフ時(すなわち、前面パネル用電源2のオフ時)にカイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域に対応するセグメント電極(本例ではセグメント電極44a)と、前面パネル用電源2との接続経路も一定に保たれる。なお、接続経路とは、部材同士を接続する配線の経路を意味する。
これに対し、主電源6のオフ時にカイラルネマチック液晶がフォーカルコニック状態にされる領域に対応するセグメント電極(本例ではセグメント電極44b)と、前面パネル用電源2との接続経路は、第二のリレー(継電器)4によって切り替えられる。第二のリレー4は、前面パネル用電源2のオンおよびオフに連動して、前面パネル用電源2とセグメント電極44bとの接続経路を切り替える。第二のリレー4は、前面パネル用電源2がオフであるときには、抵抗5を介して前面パネル用電源2とセグメント電極44bとが接続されるように接続経路を切り替える。また、前面パネル用電源2がオンであるときには、抵抗5を介さずに前面パネル用電源2とセグメント電極44bとが接続されるように接続経路を切り替える。
第二のリレー4は、経路設定手段に相当する。
図5は、前面パネル用電源2とセグメント電極44bとの接続経路の切替を示す説明図である。抵抗5はセグメント電極44bに接続されているが、抵抗5とセグメント電極44bとの間には、第二のリレー4によって前面パネル用電源2に接続される第一端子7が設けられている。また、抵抗5において、第一端子7とは反対側にも、第二のリレー4によって前面パネル用電源2に接続される第二端子8が設けられている。第二のリレー4は、前面パネル用電源2がオフに切り替えられたとき、前面パネル用電源2を第二端子8に接続させる。この結果、前面パネル用電源2とセグメント電極44bとは、抵抗5を介して接続される(図5(a)参照。)。また、第二のリレー4は、前面パネル用電源2がオンに切り替えられたとき、前面パネル用電源2を第一端子7に接続させる。この結果、前面パネル用電源2とセグメント電極44bとは、抵抗5を介さずに接続される(図5(b)参照。)。
抵抗5は、前面パネル用電源2がオフであるときに、セグメント電極44bと接続される。ただし、抵抗5に接続されるセグメント電極44bとコモン電極によって形成されるキャパシタの静電容量と、抵抗5の抵抗値との積によって表される時定数は、3μs(μ秒)以上に予め定められる。すなわち、セグメント電極44bとコモン電極によって形成されるキャパシタの静電容量をC[pF]とし、抵抗5の抵抗値をR[kΩ]としたときに、C・F・10−3≧3μsとなるように、予め定められる。特に、この時定数は、6μs以上であることが好ましい。
前面パネル用電源2がオフになると、前面パネル用電源2からの電圧出力が停止されるので、セグメント電極44a,44bおよびコモン電極の電位は0Vに変化する。ただし、セグメント電極44bは時定数が3μs以上(好ましくは6μs以上)になるような抵抗5を介して前面パネル用電源2と接続される。従って、セグメント電極44bの電位は徐々に0Vに近づくように変化する。一方、セグメント電極44aおよびコモン電極の電位は急速に0Vに変化する。
次に前面パネル1の構成について説明する。図6は、前面パネル1の構成例を示す模式的断面図である。第一の基板41および第二の基板42は、それぞれ透明基板(例えば、ガラス基板)である。第一の基板41上には、コモン電極43が形成され、さらにコモン電極43の上層に樹脂膜45が形成される。同様に、第二の基板42上に、複数のセグメント電極44a,44bおよび樹脂膜45が順に形成される。なお、コモン電極が形成される基板が観察者側に位置し、セグメント電極が形成される基板が表示パネル11側に位置するように構成されていてもよい。あるいは、セグメント電極が形成される基板が観察者側に位置し、コモン電極が形成される基板が表示パネル11側に位置するように構成されていてもよい。
また、第二の基板42上に形成される各セグメント電極44a,44bは、セグメント電極同士が接触しないように、間隔を空けて形成される。ただし、セグメント電極同士の間隔を空けすぎると、色分けされる領域の境界が目立ってしまうので、セグメント電極同士の間隔は3〜30μmにすることが好ましく、特に、3〜20μmにすることが好ましい。
また、主電源6をオフとしたときに、液晶をプレナー状態にする領域の色に金属的光沢を実現する反射特性を持たせる場合には、その領域に配置されるセグメント電極(図1に示す例ではセグメント電極44a)上の樹脂膜として平行配向膜を用い、その樹脂膜にラビング処理を施しておく。また、コモン電極43上の樹脂膜も平行配向膜とし、コモン電極43上の樹脂膜のうち、そのセグメント電極44aに対向する領域上の樹脂膜にもラビング処理を施しておく。コモン電極43およびセグメント電極44a上のラビング処理が施された樹脂膜の間に存在する液晶は、電圧が印加されていないときに完全プレナー状態に変化する。従って、液晶をプレナー状態にする領域の色に金属的光沢を実現する反射特性を持たせることができる。なお、平行配向膜とは、ラビング処理を施されることによって液晶分子を基板に平行に配向させることができる配向膜である。
ただし、主電源6をオフとしたときに、液晶をフォーカルコニック状態にする領域の樹脂膜には、ラビング処理を施さないことが好ましい。図1に示す例では、セグメント電極44b上の樹脂膜および、コモン電極上の樹脂膜のうち、セグメント電極44bに対向する領域の樹脂膜にはラビング処理を施さないことが好ましい。樹脂膜の種類によっては、ラビング処理を施すことによりフォーカルコニック状態の安定性が失われてしまうからである。従って、ラビング処理は、主電源6をオフとしたときに液晶をフォーカルコニック状態にする領域に対してマスクを設けてから行うことが好ましい。
また、主電源6をオフとしたときに液晶をプレナー状態にする領域の色に、金属的光沢を実現する反射特性を持たせない場合には、樹脂膜45にラビング処理を施さない。この場合、樹脂膜45は、平行配向膜であっても、平行配向膜でなくてもよい。
なお、コモン電極43と樹脂膜45との間に絶縁膜の層を形成してもよい。同様に、セグメント電極44a、44bと樹脂膜45との間に絶縁膜の層を形成してもよい。
第一の基板41および第二の基板42は、電極同士が対向するように配置され、対向面の間にカイラルネマチック液晶46を挟持する。樹脂膜45が形成された領域の周囲にはシール材47が配置される。シール材47は、基板同士を接着させ、また、基板間にカイラルネマチック液晶46を封止する。
既に説明したように、主電源6がオフである時の色分けは、カイラルネマチック液晶のプレナー状態が呈する色と、フォーカルコニック状態が呈する透明状態(散乱を伴う透明状態)とによって行われる。従って、カイラルネマチック液晶46として、プレナー状態のときに所望の色(電源オフ時に呈すべき色)の波長域に属する波長の光を反射するカイラルネマチック液晶を用いればよい。
図1および図3に示すセグメント電極44aを例にして、カイラルネマチック液晶46の選択例について説明する。カイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域と同一形状に形成されているセグメント電極は、「ABC」という文字を表しているセグメント電極44aである。表示装置の主電源6がオフのときに、この「ABC」という文字を赤い文字で表したい場合には、プレナー状態のときに赤色の波長域に属する波長の光を反射するカイラルネマチック液晶を前面パネル1内に配置すればよい。同様に、主電源6がオフのときに「ABC」という文字を緑色で表示したい場合には、プレナー状態のときに緑色の波長域に属する波長の光を反射するカイラルネマチック液晶を前面パネル1内に配置すればよい。同様に、主電源6がオフのときに「ABC」という文字を青色で表示したい場合には、プレナー状態のときに青色の波長域に属する波長の光を反射するカイラルネマチック液晶を前面パネル1内に配置すればよい。なお、赤色の波長域は580〜780nmである。緑色の波長域は480〜580nmである。青色の波長域は420〜520nmである。
次に、表示装置の動作および前面パネル1に配置されたカイラルネマチック液晶46の状態の変化について説明する。
表示装置21の使用者(観察者)によって表示装置の主電源6がオフからオンに切り替えられると、制御部21は、表示パネル用走査電極ドライバ12および表示パネル用信号電極ドライバ13を制御して、表示パネル11に画像を表示させる。
また、主電源6がオフからオンに切り替えられたとき、第一のリレー3は前面パネル用電源2もオフからオンに切り替える。さらに、前面パネル用電源2がオンに切り替えられたことによって、第二のリレー4は、前面パネル用電源2と第一端子7とを接続させる。すなわち、前面パネル用電源2とセグメント電極44bとは、図5(b)に示すように抵抗5を介さずに接続される。この結果、全てのセグメント電極44a,44bが抵抗5を介さずに前面パネル用電源2に接続され、全てのセグメント電極44a,44bは前面パネル用電源2によって等電位に設定される。このように、第二のリレー4は、各セグメント電極と前面パネル用電源2とが抵抗5を介さずに接続されるようにして、各セグメント電極を等電位にする。また、コモン電極も前面パネル用電源2によって所定の電位に設定される。前面パネル用電源2は、セグメント電極44a、44bと図6に示すコモン電極43との間の電圧が、カイラルネマチック液晶46をホメオトロピック状態に変化させる電圧になるように各電極の電位を設定する。すなわち、前面パネル用電源2は、電極間に挟持されるカイラルネマチック液晶46に対して、ホメオトロピック状態に変化させるための電圧を印加する。この結果、カイラルネマチック液晶46はホメオトロピック状態となる。ホメオトロピック状態の液晶は、散乱を伴わない透明状態を呈するので、表パネル11に表示された画像を観察者に観察させることができる。
なお、前面パネル用電源2は、印加電圧の極性反転を繰り返しながらカイラルネマチック液晶46に電圧を印加する。極性反転とは、コモン電極の電位と各セグメント電極の電位の高低関係を逆転させることをいう。
図7は、表示装置の電源をオフにする場合の、前面パネル1の駆動波形の例を示す説明図である。表示装置の使用者によって、主電源をオフにする操作が行われるまでは、図7に示すように、前面パネル用電源2は、コモン電極43と各セグメント電極44a,44bとの電位差がV1+V2になるように各電極の電位を設定し、カイラルネマチック液晶をホメオトロピック状態にしている。図7に示す例において、電圧V1+V2は、カイラルネマチック液晶をホメオトロピック状態にするための電圧である。また、上述のように、前面パネル用電源2は、印加電圧の極性反転を繰り返しながら電圧を印加するが、図7では便宜的に、各電圧の電位が一定になっているように示している。
表示装置の使用者によって主電源6をオフにする操作が行われると、主電源6はオンからオフに切り替えられる。この切り替えに連動して、第一のリレー3は前面パネル用電源2もオンからオフに切り替える。すると、前面パネル用電源2がオフになったことにより、抵抗を介さずに前面パネル用電源2に接続されているコモン電極43およびセグメント電極44aの電位は急速に0Vに変化する。従って、セグメント電極44aが存在する領域のカイラルネマチック液晶は、電圧V1+V2が印加されている状態から電圧印加が停止される状態に急速に変化し、その領域のカイラルネマチック液晶はホメオトロピック状態からプレナー状態に変化する。その後、その領域のカイラルネマチック液晶はプレナー状態を維持する。カイラルネマチック液晶はプレナー状態のときに選択反射を呈するので、セグメント電極44aが存在する領域は選択反射波長に応じた色になる。
また、前面パネル用電源2がオンからオフに切り替えられたことによって、第二のリレー4は、前面パネル用電源2と第二端子8とを接続する。すなわち、前面パネル用電源2とセグメント電極44bとは、図5(a)に示すように抵抗5を介して接続される。従って、前面パネル用電源2がオフに切り替えられると、セグメント電極44bの電位は徐々に0Vに変化していく。従って、セグメント電極44bが存在する領域のカイラルネマチック液晶の印加電圧はV1+V2から徐々に0Vに変化していき、その領域のカイラルネマチック液晶はホメオトロピック状態からフォーカルコニック状態に変化する。その後、その領域のカイラルネマチック液晶はフォーカルコニック状態を維持する。カイラルネマチック液晶はフォーカルコニック状態のときに散乱を伴う透明状態を呈するので、観察者に前面パネルの背面の状態を観察させることになる。主電源6がオフに切り替えられると、制御部21や表示パネル用電源14に対する電圧出力が停止され、制御部21による表示パネル11の駆動制御も停止されるので、表示パネル11の画面は主電源オフ時の色(例えば、灰色や黒色)になる。よって、観察者は、セグメント電極44bが存在する領域において表示パネル11の画面の色(灰色や黒色等)を観察する。
この結果、色分けにより、セグメント電極44aが配置されている領域の形状を選択反射波長に応じた色で観察者に観察させることができる。図1に示す場合では、「ABC」という文字を色分けによって観察させることができる。
本例では主電源6がオフのときに「ABC」という文字を表示する場合を示したが、色分けによって表される模様は、文字に限らずキャラクターであってもよいし、文字やキャラクター以外の模様であってもよい。所望の模様に応じて、各セグメント電極の形状を定めることで、色分けにより所望の模様を表示させることができる。
本発明によれば、表示装置の主電源6をオフにしたときに、画面部分に色分けによる模様を表すことができる。従って、表示装置を使用しないときにおける画面部分のデザインを、表示装置の筐体の色や模様と調和するように定めることができる。また、表示装置を使用しないときに、画面部分に文字やキャラクターなどを表すこともできる。
また、色分けによる模様を実現する場合、本発明のような構成ではなく、基板面の一部の領域に所望の模様に合わせた形状のセグメント電極を設け、そのセグメント電極の外周に沿って隔壁(特許文献4の実施例2,3に記載されているようなスペーサ)を設け、隔壁に囲まれた空間に液晶を注入し、隔壁の外側を液晶以外の材料で充填する構成も考えられる。このような構成の場合、隔壁の内側の液晶と、隔壁の外側の材料により色分けを実現することができる。しかし、このような構成では、セグメント電極の形状が細い線の形状であったり、鋭角的な部分を有する形状であったりする場合、隔壁を形成することが困難であり、所望の色分けによる模様を実現できないことがある。また、隔壁に囲まれた空間に液晶を注入する工程と、隔壁の外側の空間に材料を充填する工程とが必要になり、工程数が多くなる。
これに対し、本発明による表示装置では、セグメント電極の外周に隔壁を形成することなく色分けを実現することができる。本発明では、対になる基板間にシール材47(図6参照)以外の隔壁を形成する必要がない。従って、隔壁形成の困難性に起因する模様の制限はなく、所望の模様に応じて個々のセグメント電極を形成すれば所望の模様を実現することができる。従って、主電源6がオフのとき(前面パネル用電源2がオフのとき)の画面部分の模様の自由度を高くすることができる。例えば、細い線状の領域と他の領域とで色分けを行ったり、鋭角的な部分を含む文字を示す領域と他の領域とで色分けを行うことが可能になる。
また、本発明では、図6に示す基板41,42およびシール材47によって形成された空間にカイラルネマチック液晶46を注入すればよい。従って、隔壁を形成する工程や、隔壁の外側に他の材料を充填する工程が不要であり、製造工程数を少なくすることができる。
また、前面パネル用電源2がオフからオンに切り替えられると、その切り替えに連動して、セグメント電極44b(液晶をフォーカルコニック状態とする領域に対応するセグメント電極)が、抵抗5を介さずに前面パネル用電源2に接続され、各セグメント電極44a,44bは等電位に設定される。このとき、前面パネル用電源2はコモン電極43も所定の電位に設定し、カイラルネマチック液晶46をホメオトロピック状態(透明状態)に変化させる。そして、前面パネル用電源2がオンからオフに切り替えられる場合には、その切り替えに連動して、セグメント電極44b(液晶をフォーカルコニック状態とする領域に対応するセグメント電極)が、抵抗5を介して前面パネル用電源2に接続され、セグメント電極44bの電位は徐々に0Vに変化する。また、コモン電極43およびセグメント電極44の電位は、前面パネル用電源2がオフに切り替えられるとともに急速に0Vになる。従って、セグメント電極44bが存在する領域はフォーカルコニック状態になり、セグメント電極44aが存在する領域はプレナー状態になる。
このような構成では、各電極の電位を設定するための制御信号を出力するような制御部(例えばMPUなど)を前面パネル1用に設ける必要はない。前面パネル用電源2をオンに切り替えるだけで前面パネル1を透明状態にすることができ、前面パネル用電源2をオフに切り替えるだけで所望の模様を前面パネルに表示させることができる。このように、前面パネル1の駆動制御を行うMPUのような制御部は不要であるので、表示装置の構成を簡易な構成にすることができる。
また、この表示装置は、偏光板を備えていない。従って、偏光板に起因して表示パネル11の画像が暗くことはない。また、反射偏光板を使用していないので生産コストの上昇を抑えることができる。また、表示パネルに前面パネルを重ねた構成であるので、図13に示すようなディスプレイの前に複数種類の部材を重ねる構成よりも簡易な構成にすることができる。
図1に示す例では、プレナー状態にされる領域と同一形状に形成されるセグメント電極と、フォーカルコニック状態にされる領域と同一形状に形成されるセグメント電極を一つずつ設ける場合を示したが、各セグメント電極はそれぞれ1つでなくてもよい。
カイラルネマチック液晶がフォーカルコニック状態にされる領域と同一形状に形成されるセグメント電極を複数設ける場合には、各セグメント電極が、それぞれ同一の第一端子7を介して抵抗5に接続されるように構成すればよい。図8は、複数のセグメント電極が同一の第一端子7を介して抵抗5に接続されるように構成した場合の例を示す説明図である。なお、図8において、表示パネル11や主電源6などの図示は省略した。図8に示すセグメント電極44d,44eは、それぞれ前面パネル用電源2がオフのときに液晶がフォーカルコニック状態にされる領域に対応するセグメント電極である。セグメント電極44cは、前面パネル用電源2がオフのときに液晶がプレナー状態にされる領域に対応するセグメント電極である。セグメント電極44dから引き出される配線と、セグメント電極44eから引き出される配線とは、例えば、第二の基板42上で接続される。そして、その接続された配線が、第一端子7を介して抵抗5に接続される。なお、抵抗5および第二のリレー4の構成は、既に説明した構成と同様であり、第二のリレー4は、前面パネル用電源2のオンおよびオフに応じて、前面パネル用電源2とセグメント電極44d,44eとの接続経路を切り替える。
この場合の時定数も3μs以上とする(6μs以上であることが好ましい。)。この時定数は、セグメント電極44d,44eと、コモン電極とによって形成されるキャパシタの静電容量と、抵抗5の抵抗値との積として求められる。セグメント電極44dとコモン電極とによって形成されるキャパシタの静電容量をC1[pF]とし、セグメント電極44eとコモン電極とによって形成されるキャパシタの静電容量をC2[pF]とすれば、各セグメント電極44d,44eと、コモン電極とによって形成されるキャパシタの静電容量は、C1+C2[pF]と表せる。このC1+C2[pF]と抵抗5の抵抗値によって求まる時定数が3μs以上になるようにすればよい。
また、カイラルネマチック液晶がフォーカルコニック状態にされる領域と同一形状に形成されるセグメント電極を複数設ける場合、各セグメント電極毎に、第二のリレー4および抵抗5を設ける構成としてもよい。図9は、各セグメント電極毎に第二のリレー4および抵抗5を設ける構成とした場合の例を示す説明図である。図9において、表示パネル11や主電源6などの図示は省略した。図9に示すように、各セグメント電極44d,44eは、それぞれ異なる第一端子7を介して別個の抵抗5に接続される。抵抗5および第二のリレー4の構成は、既に説明した構成と同様であり、個々の第二のリレー4は、前面パネル用電源2のオンおよびオフに応じて、前面パネル用電源2とセグメント電極44d,44eとの接続経路を切り替える。この場合、各セグメント電極毎に時定数が、3μs以上とする(6μs以上であることが好ましい。)。図9に示す例では、セグメント電極44dとコモン電極とによって形成されるキャパシタの静電容量と、セグメント電極44dに接続される抵抗5の抵抗値によって定まる時定数が3μs以上になるようにすればよい。同様に、セグメント電極44eとコモン電極とによって形成されるキャパシタの静電容量と、セグメント電極44eに接続される抵抗5の抵抗値によって定まる時定数も3μs以上になるようにすればよい。
なお、図9に示すように、各セグメント電極毎に第二のリレー4および抵抗5を設ける構成としてもよいが、図8に示すように、各セグメント電極が同一の第一端子7を介して抵抗5に接続されるようにした方が構成を簡易化できる。
また、表示パネル11と前面パネル1は、界面反射を無くすために光学的に接着されていてもよい。
また、前面パネル1の製造時に、樹脂膜45として平行配向膜を配置し、カイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域に対応するセグメント電極(例えば、セグメント電極44a)上の樹脂膜、およびコモン電極上の樹脂膜のうちそのセグメント電極に対向する領域上の樹脂膜にラビング処理を施すとする。すると、その樹脂膜間のカイラルネマチック液晶は、ホメオトロピック状態からプレナー状態に変化する際、完全プレナー状態(図14(b))になる。完全プレナー状態の液晶に入射した選択反射波長の光は、散乱せずに反射する。従って、この場合、主電源6をオフとしたときに、プレナー状態にされる領域の色に金属的光沢を生じさせることができる。例えば、プレナー状態で赤色になるカイラルネマチック液晶を用いた場合、金属的光沢のある赤色を実現することができる。一方、樹脂膜45にラビング処理を施さないでおくと、カイラルネマチック液晶46は、プレナー状態に変化する際、ヘリカル軸が僅かにずれたプレナー状態(図14(a))になる。この場合、選択反射波長の光は僅かに散乱するので、金属的光沢を有する色にはならない。
また、樹脂膜45として平行配向膜を配置して、カイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域に対応するセグメント電極(例えば、セグメント電極44a)上の樹脂膜、およびコモン電極上の樹脂膜のうちそのセグメント電極に対向する領域上の樹脂膜にラビング処理を施す場合、ラビング処理される領域とラビング処理されない領域とが混在するようにラビング処理を行ってもよい。この場合、例えば、プレナー状態にされる領域に対応するセグメント電極上の樹脂膜、およびコモン電極上の樹脂膜のうちそのセグメント電極に対向する領域上の樹脂膜において、ラビング処理を行わない領域に対しマスクを設けてからラビング処理を行えばよい。
この結果、主電源6がオフのときに、プレナー状態にされる領域に金属的光沢を有する部分(完全プレナーになる部分)と金属的光沢を有さない部分(ヘリカル軸が僅かにずれたプレナー状態になる部分)とを混在させることができる。例えば、セグメント電極44aが存在する領域に、金属的光沢を有する部分と金属的光沢を有さない部分とを混在させることができる。金属的光沢を有する複数の領域および金属的光沢を有さない複数の領域が混在するようにして、個々の領域の面積を小さく定めた場合、観察者は、各部分の平均的な状態を認識できる。この場合、反射状態としてはパール調ペイントを実現することができる。金属的光沢を有する個々の領域および金属的光沢を有さない個々の領域は、例えば、一辺の長さが5〜50μmの矩形になるようにすればよい。また、直径が5〜50μmの円形(または二つの軸の長さがそれぞれ5〜50μmになるような楕円形)の領域を複数分散して定め、その領域が金属的光沢を有するようにしてもよい。ここで示した個々の領域の形状は、例示であり、矩形、円形あるいは楕円形に限定されるわけではない。
また、図1では、一つの前面パネル1を用いる場合を示したが、前面パネル1を二つ以上重ねた構成にしてもよい。このとき、例えば、個々の前面パネル1が備える各セグメント電極の形状は、各前面パネル毎に同一形状とし、同一形状のセグメント電極同士が重なり合うようにする。例えば、一つの前面パネルに2つのセグメント電極44a,44b(図3参照)を配置するのであれば、他の前面パネルにも同一形状のセグメント電極44a,44bを配置する。そして、セグメント電極44a同士、セグメント電極44b同士が重なり合うようにする。以下、積層した前面パネルの各層において、セグメント電極の形状が同一であり、同一形状のセグメント電極が重なり合うように配置されているものとして説明する。前面パネル1を複数重ね、個々の前面パネル1に選択反射波長がそれぞれ異なるカイラルネマチック液晶を配置することにより、実現できる色のバリエーションを増やすことができる。
前面パネル1を二枚以上重ねる場合には、例えば、各前面パネル1の各セグメント電極が、それぞれ同一の第一端子7を介して抵抗5に接続されるように構成すればよい。図10は、各前面パネル1の各セグメント電極が同一の第一端子7を介して抵抗5に接続されるように構成した場合の例を示す説明図である。なお、図10において、表示パネル11や主電源6などの図示は省略した。個々の前面パネル1において、セグメント電極44d,44eは、それぞれ前面パネル用電源2がオフのときに液晶がフォーカルコニック状態にされる領域に対応するセグメント電極である。セグメント電極44cは、前面パネル用電源2がオフのときに液晶がプレナー状態にされる領域に対応するセグメント電極である。個々の前面パネル1において、セグメント電極44dから引き出される配線と、セグメント電極44eから引き出される配線とは、例えば、セグメント電極44d,44eが配置されている第二の基板42上で接続される。そして、個々の前面パネル1から、セグメント電極44d,44eに接続されている配線がパネル外部に引き出され、その引き出された配線が、各前面パネル1の外部で接続される。図10に示す例では、各前面パネル1から引き出された配線が接続点200で接続されている。そして、各前面パネル1の外部で接続された配線が、第一端子7を介して抵抗5に接続される。抵抗5および第二のリレー4の構成は、既に説明した構成と同様であり、第二のリレー4は、前面パネル用電源2のオンおよびオフに応じて、前面パネル用電源2とセグメント電極44d,44eとの接続経路を切り替える。なお、各前面パネルのコモン電極およびセグメント電極44cは、前面パネル用電源2に直接接続される。
この場合の時定数も3μs以上とする(6μs以上であることが好ましい。)。この時定数は、各前面パネル毎のセグメント電極44d,44eとコモン電極とによって形成されるキャパシタの静電容量の総和と、抵抗5の抵抗値との積として求められる。一方の前面パネルにおいて、セグメント電極44d,44eとコモン電極によって形成されるキャパシタの静電容量をC3[pF]とする。他方の前面パネルにおいて、セグメント電極44d,44eとコモン電極によって形成されるキャパシタの静電容量をC4[pF]とする。この場合、各パネル毎の静電容量の総和はC3+C4[pF]となる。このC3+C4[pF]と、抵抗5の抵抗値によって求まる時定数が3μs以上になるようにすればよい。なお、図10に示す例ではC3=C4である。
また、前面パネル1を二枚以上重ねる場合、各前面パネル毎に、第二のリレー4および抵抗5を設ける構成としてもよい。図11は、各前面パネル毎に第二のリレー4および抵抗5を設ける構成とした場合の例を示す説明図である。図11において、表示パネル11や主電源6などの図示は省略した。図11に示すように、個々の前面パネル1において、セグメント電極44dから引き出される配線と、セグメント電極44eから引き出される配線とは、例えば、セグメント電極44d,44eが配置されている第二の基板42上で接続される。セグメント電極44d,44eに接続されている配線が、個々の前面パネル1からパネル外部に引き出され、その引き出された配線が、それぞれ異なる第一端子7を介して別個の抵抗5に接続される。抵抗5および第二のリレー4の構成は、既に説明した構成と同様であり、個々の第二のリレー4は、前面パネル用電源2のオンおよびオフに応じて、前面パネル用電源2とセグメント電極44d,44eとの接続経路を切り替える。この場合、各前面パネル毎に時定数が、3μs以上とする(6μs以上であることが好ましい。)。一枚の前面パネルにおいて、セグメント電極44d,44eとコモン電極によって形成されるキャパシタの静電容量をC3[pF]とする。この場合、そのC3[pF]と、その前面パネルのセグメント電極44d,44eに接続される抵抗5の抵抗値とによって定まる時定数が3μs以上になるようにすればよい。
なお、ある一枚の前面パネルにおいて、セグメント電極毎に第二のリレー4および抵抗5を設けてもよい。
なお、図11に示すように、各前面パネル毎に第二のリレー4および抵抗5を設ける構成としてもよいが、図10に示すように、各前面パネルのセグメント電極が同一の第一端子7を介して抵抗5に接続されるようにした方が構成を簡易化できる。
次に、前面パネル1を複数重ねて、色のバリエーションを増やす例について説明する。例えば、主電源6をオフにしたときに、カイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域の色を黄色にするものとする。この場合、選択反射により赤色を呈するカイラルネマチック液晶を挟持した前面パネルと、選択反射により緑色を呈するカイラルネマチック液晶を挟持した前面パネルとを重ねればよい。選択反射により赤色を呈するカイラルネマチック液晶を挟持した前面パネルを観察者側に配置したとすると、赤色波長の光は、観察者側の前面パネルで反射し観察者に到達する。他の波長の光はもう一方の前面パネルまで達する。その光のうち緑色の波長の光は反射し、観察者側の前面パネルを通過して観察者に到達する。この結果、カイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域(例えば、図1に示すセグメント電極44aが存在する領域)は黄色として観察される。なお、カイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域は、散乱を伴う透明状態となるので、その領域では表示パネル11の画面の色が観察される。
また、主電源6をオフにしたときに、カイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域の色を白色にするのであれば、以下の3種類の前面パネルを重ねればよい。一つ目の前面パネルは、選択反射により赤色を呈するカイラルネマチック液晶を挟持した前面パネルである。二つ目の前面パネルは、選択反射により緑色を呈するカイラルネマチック液晶を挟持した前面パネルである。三つ目の前面パネルは、選択反射により青色を呈するカイラルネマチック液晶を挟持した前面パネルである。このような構成にすれば、各前面パネルにおける選択反射によって、カイラルネマチック液晶がプレナー状態にされる領域(例えば、図1に示すセグメント電極44aが存在する領域)は白色として観察される。この場合も、カイラルネマチック液晶がフォーカルコニック状態にされる領域では、表示パネル11の画面の色が観察される。
また、この三枚の前面パネル全てにおいて、樹脂膜45として平行配向膜を配置し、プレナー状態にされる領域に対応するセグメント電極(例えば、図1に示すセグメント電極44a)上の樹脂膜、およびコモン電極上の樹脂膜のうちそのセグメント電極に対向する領域の樹脂膜にラビング処理を施すとする。すると、個々の前面パネルはそれぞれ散乱を生じさせずに赤色、緑色、青色の光を鏡面反射する。従って、画面部分は鏡となる。すなわち、主電源6がオフのときに、色分けする領域の一部を鏡として用いることができる。
また、二つの前面パネルを一組とし、選択反射波長(λとする。)が同一であり、液晶のらせんの向き(液晶ドメインのねじれの向き)が互いに逆向きになる2種類のカイラルネマチック液晶を二つの前面パネルに別々に配置してもよい。一方の前面パネルのプレナー状態となる領域は、波長λの光のうち、液晶のらせんの向きに応じた光のみ(右回りの円偏光と左回りの円偏光のいずれか一方のみ)を反射させる。他方の前面パネルのプレナー状態となる領域では、液晶のらせんの向きが逆向きであるので、一方の前面パネルを通過した波長λの光を反射する。すなわち、二つの前面パネルの一方と、他方とで、異なる光偏光状態であって波長が同一の光を反射する。従って、前面パネルを一枚だけ用いる場合よりも、選択反射波長に応じた色を明るくすることができる。なお、前面パネルを三層以上重ねる場合、一つの前面パネルと、他の前面パネルのうちの少なくとも一つの前面パネルとで、異なる光偏光状態の光を反射するするようにすればよい。
また、ここでは、各層の選択反射波長が共通する場合について説明した。二つの前面パネルの選択反射波長が異なっていても、選択反射する波長域に重なる領域があれば、液晶ドメインのねじれの向きが互いに逆向きになるようなカイラルネマチック液晶を各前面パネルに配置することで、重なる波長域における光の反射量を増やして、その波長域の色を明るくすることができる。
また、プレナー状態のカイラルネマチック液晶は、液晶ドメインのねじれの向きに応じて右回りの円偏光または左回りの円偏光を反射する。この円偏光を直線偏光に変換する必要がある場合には、円偏光を直線偏光に変換する部材(例えば、1/4波長板)を前面パネルに配置すればよい。
前面パネルを複数枚重ねる場合、一部の前面パネルには、電源オフ時にフォーカルコニック状態になる領域を設け、他の前面パネルには、電源オフ時にフォーカルコニック状態になる領域を設けないようにしてもよい。
既に説明したように、液晶表示パネル以外の装置を表示パネル11として用いてもよい。例えば、CRT、PDP、無機ELディスプレイ、有機ELディスプレイ、あるいは蛍光表示管等を表示パネル11として用いてもよい。その場合、液晶表示パネル用の駆動ドライバではなく、CRTやPDP等の種類に応じた駆動装置を用いて画像を表示させればよい。また、ここに例示したような電子表示体ではなく、機械的な部材を用いて表示を行う機械式表示体を表示パネル11としてもよい。機械式表示体の例としては、例えば、針の動きによって情報を表示する表示体がある。より具体的な例として、自動車のインスツルメントパネルに搭載される速度メータやタコメータ等がある。
また、上記の説明では、前面パネル1の液晶としてカイラルネマチック液晶を用いる場合を示したが、前面パネル1に配置される液晶は、カイラルネマチック液晶でなくてもよい。前面パネル1に配置される液晶は、ホメオトロピック状態、選択反射状態および散乱状態を呈する液晶であればよい。例えば、前面パネル1にコレステリック液晶を配置してもよい。