しかしながら、特許文献3のガイド機構を、傷による品質故障が懸念される印刷面(感光層面又は感熱層面)を有すると共に巻き癖等により真っ平らではない平版印刷版に適用しても高精度な測定を行えないと共に、印刷面が傷ついてしまうとの欠点がある。この点を詳説すると、
(1)従来技術で説明したように、平版印刷版はロール状の支持体や原反に由来する巻き癖が残存しており、光学的な測定器に対する平版印刷版の距離が一定しない。従って、平版印刷版の形状測定を行う装置は、巻き癖の差異に関係なく測定器からの距離を一定にでき、且つ印刷面を傷つけないように平版印刷版の形状を測定できることが必要である。
(2)平版印刷版は巻き癖の他にも微小凸凹があり、この微小凸凹の差異により、光学的な測定器に対する平版印刷版の位置が一定でない。従って、平版印刷版の形状測定を行う装置は、微小凸凹の差異に関係なく測定器からの距離を一定にでき、且つ印刷面を傷つけないように平版印刷版の形状を測定できることが必要である。
(3)平版印刷版の光学的な形状測定は、上流側コンベヤから下流側コンベヤに平版印刷版が乗り渡る際の平版印刷版に光を照射して測定するが、平版印刷版の各種サイズや各種厚みによって平版印刷版の自重に起因する垂れ下がり量が相違する。従って、測定器に対する平版印刷版の距離が一定しなくなるので、測定位置で平版印刷版が垂れ下がらないガイド機構が必要である。
(4)平版印刷版の印刷面が感光層の場合は、カブリによる品質故障が懸念されるため、測定器の光線を感光層に照射して測定することはできない。従って、測定器を感光層とは反対側に配置して測定する必要があるが、この場合、特許文献3のガイド機構ではガイド本体に感光層が面して平版印刷版が摺動するので、感光層がガイド本体に擦れて傷ついてしまう。このことは、平版印刷版の場合以外にも、傷や測定用の光線に対して品質故障が懸念され且つ真っ平らではないシートには特許文献3のガイド機構は使用できず、別のガイド機構を備えたシート形状測定装置を開発する必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、傷や光に対して品質故障が懸念され且つ真っ平らではないシートの形状を光学的にオンライン測定する際に、シートを傷つけることなく、且つシートと光学的な測定器との距離を一定に維持できるので、高精度な測定を行うことができ、例えばシートとして平版印刷版の形状を測定する場合に特に有効なシート形状測定方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、搬送中のシートの形状を光学的にオンライン測定するシート形状測定方法において、前記シートの表裏面の一方面に非接触式の圧力を付与して前記シートの他方面をシート搬送方向と同方向に同速度で移動する移動ベルトを介して該移動ベルトのシート反対側に設けられた裏当て部材の押し当て面に押し当て、前記シートを前記押し当て面に倣わせた状態で前記シートの形状を光学的にオンライン測定することを特徴とする。
請求項1によれば、シートの表裏面の一方面に非接触式の圧力を付与してシートの他方面をシート搬送方向と同方向に同速度で移動する移動ベルトを介して移動ベルトのシート反対側に設けられた裏当て部材の押し当て面に押し当て、シートを押し当て面に倣わせるようにした。これにより、巻き癖等により真っ平らではないシートであっても押し当て面の形状に倣ってシート形状が矯正されると共に、シートは非接触式の圧力で支持されるのでシートが垂れ下がることがない。また、裏当て部材の位置と光学的な測定を行う測定器の位置は固定されているので、押し当て面と測定器との距離は常に一定になっている。従って、押し当て面に倣って矯正されたシートと測定器との距離も一定となるので、光学的なシート形状測定に求められるシートと測定器との距離精度を十分に達成することができる。
また、シートの表裏面のうち、上記の他方面が傷に対して品質故障の懸念のある面であっても、シートは移動する移動ベルトと一緒に移動しながら押し当て面に倣うので、シートが押し当て面で擦れて傷つくことがない。更には、シートの一方面は非接触式の圧力が付与されることから、シートの一方面側に光学的な測定を行う測定器を配置して測定用の光線をシートの一方面に照射することが可能となる。従って、シートの他方面が傷や光線によって品質故障の懸念される面の場合、シートの他方面を移動ベルトに支持させて、一方面に光線を照射すれば、シートの他方面に傷や光によって品質故障を発生させることなくシート形状を測定できる。
また、シートの表裏面の一方面に非接触式の圧力を付与することで、シートと一緒に移動ベルトも裏当て部材に押し当てられるので、シート形状の測定中に移動ベルトが振動することがない。従って、移動ベルトの振動によって測定精度が低下することもない。
以上の本発明における作用により、傷や光に対して品質故障が懸念され且つ真っ平らではないシートの形状を光学的にオンライン測定する際に、シートを傷つけることなく且つ高精度に測定することができる。従って、本発明は例えばシートとして感光層を有する平版印刷版の形状測定を行う場合に特に有効である。
請求項2は請求項1において、前記非接触式の圧力は、前記シートの前記一方面に気体を吹き付けることによる気体圧力であることを特徴とする。請求項2はシートの一方面に付与する非接触式の圧力として好ましい態様を示したものである。
請求項3は請求項1又は2において、前記裏当て部材の押し当て面は前記移動ベルトの移動方向に湾曲していることを特徴とする。このように裏当て部材の押し当て面を移動ベルトの移動方向に湾曲させることで、押し当て面が真っ平らの場合に比べ、シートの巻き癖をより効果的に矯正し、自重によるシートの垂れ下がりをより効果的に防止する。この場合、シートが長方形の場合には、移動ベルトの移動方向に対して直交する方向とシートの長手方向とが一致するようにシートを押し当て面に押し当てることが好ましい。これにより、シートの垂れ下がりを一層効果的に防止することができる。
本発明の請求項4は前記目的を達成するために、搬送コンベヤで搬送中のシートをガイド機構でガイドしながら前記シートの形状を光学的な測定器でオンライン測定するシート形状測定装置において、前記ガイド機構は、前記シートの表裏面の一方面を支持すると共に前記搬送コンベヤのシート搬送方向と同方向に同速度で移動する移動ベルトと、前記移動ベルトのシート反対側であって前記測定器に対向して設けられ、平坦な押し当て面を有する裏当て部材と、前記シートの表裏面の他方面に非接触で圧力を付与して前記シートを前記移動ベルトを介して前記押し当て面に押し当てる圧力付与手段と、を備えていること特徴とする。
本発明の請求項4は、請求項1を装置として構成したもので、上記構成のガイド機構によってシートを搬送することで、傷や光に対して品質故障が懸念され且つ真っ平らではないシートの形状を光学的にオンライン測定する際に、シートを傷つけることなく且つ高精度に測定することができる。従って、例えばシートとして感光層を有する平版印刷版の形状測定を行う場合に特に有効である。
請求項5は請求項4において、前記裏当て部材の押し当て面は、前記移動ベルトの移動方向に湾曲した湾曲面形状であることを特徴とする。これにより、請求項3と同様にシートの巻き癖を矯正し、自重によるシートの垂れ下がりを効果的に防止することができる。
請求項6は請求項4又は5において、前記圧力付与手段は、前記裏当て部材の押し当て面に向けて気体を吹き出すノズルを前記測定器を挟んだシート搬送方向の上流位置と下流位置に隙間を開けて一対設けてなると共に、前記隙間に測定用の光線を通すことを特徴とする。
請求項6は圧力付与手段の好ましい態様を示したもので、測定器を挟んだシート搬送方向の上流位置と下流位置に隙間を開けて気体を吹き出す一対のノズルを設け、前記隙間に測定用の光線を通すように構成することで、圧力付与手段と測定器とを移動ベルトに対して同じ側に配置させることができる。これにより、シートの他方面が傷や光線によって品質故障が懸念される面の場合、シートの多方面を移動中の移動ベルトに支持させて、一方面に光線を照射すれば、シートの他方面に傷や光によって品質故障を発生させることなくシート形状を測定できる。この場合、シートと移動ベルトとの間に、吹き出した気体が入り込んでシートをバタつかせないように、一対のノズルから吹き出す気体のタイミンングや吹き出す方向を設定することが好ましい。
請求項7は請求項6において、前記ノズルは前記シートの形状に合わせて移動可能であることを特徴とする。これは、シートの形状、例えばシートの各種サイズや厚みによるスリット幅やカット幅の違いや自重に起因する垂れ下がり量の違い、或いは巻き癖状態の違いにより、ノズルからシートのどの場所に気体を吹き付ければシートが裏当て部材の押し当て面に倣うように押し当てることができるかが相違する。従って、ノズルを固定配置するのではなく、請求項7のように移動可能に配置することで、どのようなシート形状のものであっても、シートを裏当て部材の押し当て面に精度良く倣うように押し当てることができる。
請求項8は請求項4〜7の何れか1において、前記シートは感光層を有する平版印刷版であることを特徴とする。シートが感光層を有する平版印刷版の場合に本発明が特に有効だからである。
以上説明したように、本発明のシート形状測定方法及び装置によれば、傷や光に対して品質故障が懸念され且つ真っ平らではないシートの形状を光学的にオンライン測定する際に、シートを傷つけることなく、且つシートと光学的な測定器との距離を一定に維持できると共に移動ベルトも振動することがないので、高精度な測定を行うことができる。従って、例えばシートとして感光層を有する平版印刷版の場合に特に有効である。
以下、添付図面に従って、本発明に係るシート形状測定方法及び装置の好ましい実施態様について説明する。
図1には、本発明のシート形状測定装置16を組み込んだ平版印刷版の加工ライン100が示されている。尚、本実施の形態では、シートとして感光層を有する平版印刷版で説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
加工ライン100の上流側(図1右上側)には、送出機102が設けられる。送出機102には、長尺状の平版印刷版10(原反)がコイル状に巻回されて装着されており、この平版印刷版10が送出機102から巻き戻されて加工ライン100に送り出される。送り出された平版印刷版10は、レベラ106でカール矯正される。平版印刷版10は、送出機102でセンター走行するように制御されているが、走行中の寄りなどによりセンターから幅方向にずれる場合がある。そのため、CPC(センターポジションコントロール)装置(不図示)によって規定の位置(中央位置)を走行するように規制される。尚、CPC装置としては、例えば、長尺状の平版印刷版10の幅方向のエッジ部分位置を検出するカメラを配設し、このカメラで検出したエッジ部分位置に基づいて、平版印刷版10を巻き掛けたローラを傾斜させ、平版印刷版10の幅方向のセンター位置が一定の位置を走行するように構成するとよい。こうして中心位置を走行するように規制された平版印刷版10は、重ね合わせ装置108の位置で、合紙14が重ね合わされて帯電接着される。
一方、合紙14は、コイル状に巻かれた状態で送出機112に装着され、この送出機112から巻き戻されて送り出される。そして、搬送のための張力がダンサローラ等で付与された後、EPC(エッジ部分ポジションコントロール)装置(不図示)によって幅方向の搬送位置がラインの中央になるように制御される。その後、スリッタ装置114によって合紙14が所定の幅寸法にトリミングされる。
また、合紙14のスリットを行う際、スリッタ装置114の左右スリット位置は、精度良くラインセンタ振り分けになるようにして位置決めされている。従って、スリッタ装置114でスリットされた合紙14はライン中央を走行し、ライン中央を走行する平版印刷版10と重ね合わされる。以下、長尺状の平版印刷版10と合紙14が重ね合わされたものをウエブ116という。
ウエブ116は、ノッチャー118に移送され、ノッチャー118によってウエブ116の耳部が打ち抜かれる。この打ち抜き位置に応じて、後述するスリッタ装置120のトリミング上刃122とトリミング下刃124が平版印刷版10の幅方向に移動される。
ノッチャー118によって耳部が打ち抜かれたウエブ116は、スリッタ装置120に移送され、スリッタ装置120のトリミング上刃122とトリミング下刃124とによって所定のスリット幅にトリミングされる。その際、トリミング上刃122及びトリミング下刃124が、打ち抜き位置に応じてウエブ116の幅方向へ移動するので、ウエブ116を連続裁断しながら、トリミング幅(スリット幅)を変更することができる。
所定のスリット幅に裁断されたウエブ116は、測長装置126で送り長が検出された後、指示されたカット長で走間カッタ128により切断される。これにより、設定されたサイズの平版印刷版10Aが製造される。平版印刷版10Aの製品サイズは特に限定されないが、例えば、厚み0.1〜0.5mm、長尺方向の寸法(スリット幅)200〜2000mm、短尺方向の寸法(カット幅)400〜2000mmが好ましい。
製品サイズとなった平版印刷版10Aは、本発明のシート形状測定装置16によって、平版印刷版の形状(スリット幅、カット長、直角度)が光学的に測定され、合格品と不良品に振り分けられた後、合格品がコンベヤ132によって集積装置134に移送される。
集積装置134では、合紙14が貼り合わされた複数枚の平版印刷版10Aが所定枚数積層される。これにより、平版印刷版10Aと合紙14とが交互に積層され、平版印刷版10Aの積層束12が構成される。1つの積層束12を構成する平版印刷版10の数は特に限定されないが、運搬や保管の効率化の観点等から、例えば10枚〜100枚とすることができる。尚、積層装置134を二つ設け、交互に積層するようにしてもよい。これにより、積層束12を搬出する間も連続的にウエブ116の切断を行うことができる。
次に、本発明のシート形状測定装置16について説明する。
図2はシート形状測定装置16を説明するもので、ガイド機構18及び搬送機構20の構造を分かり易く図示するために移動ベルト22や裏当て部材44を搬送機構20から離した状態の斜視図である。図3及び図4はシート形状測定装置16の平版印刷版10Aの搬送方向に沿った側面断面図であり、図3は平版印刷版10Aの形状測定開始状態で図4は形状測定終了状態を示し、平版印刷版10Aは図3及び図4の左側から右側に向かって搬送される。図5はシート形状測定装置16の正面断面図であり、平版印刷版が図5の裏面から表面に向かって搬送される。
これらの図に示すように、シート形状測定装置16は、平版印刷版10Aの左右(図5の左右)のエッジ部分a、aが通過する場所に配設された一対の光学的な測定機構24、24と、一対の光学的な測定機構24、24を通過するように平版印刷版10Aを搬送する搬送機構20と、平版印刷版10Aの形状測定を行う際に平版印刷版10Aの搬送をガイドするガイド機構18とで構成される。
光学的な測定機構24は、主として、測定用の光線を平版印刷版10Aに照射する照明器30と、平版印刷版10Aを連続撮像するCCDラインセンサー32(測定器)と、CCDラインセンサー32で連続撮像された画像を処理する図示しない画像処理装置と、画像処理で得られたデータに基づいて平版印刷版の形状演算を行うパソコン等で構成される。尚、照明器30は一対である必要はなく、1つの照明器30で平版印刷版10Aの左右エッジ部分a、aを照明してもよい。
CCDラインセンサー32は、要求される測定精度、ラインスピード(平版印刷版10Aの搬送速度)に合わせて分解能・スキャンスピードが選定される。例えば、平版印刷版10Aにおけるスリット幅の寸法精度が±0.125mm、カット長が±0.25mm、直角度が±0.02°とし、平版印刷版10Aの蛇行を5mm以内、ラインスピードを150m/分とした場合には、1024bit −100MHzのCCDラインセンサー32に20mm幅測定するレンズを装着して平版印刷版10Aの左右エッジ部分a、aを連続撮像するとよい。この場合の分解能は平版印刷版10Aの幅方向で約20μm、搬送方向でmax約30μmになる。
そして、搬送される平版印刷版10Aを照明器30で照明しながら、平版印刷版10Aの左右エッジ部分a、aを一対のCCDラインセンサー32、32で連続撮像し、連続撮像した画像を画像処理装置で2値化処理すると、図6に示す2値化画像が得られ、平版印刷版10Aの画像部分(境界面)が平版印刷版10A以外の画像部分から抽出される。図6の濃色な部分が平版印刷版10Aに対応する画像部分で、薄色の部分が平版印刷版10A以外の移動ベルト22の画像部分である。パソコンは、得られた2値化画像とラインパルスから得られるラインスピードでカメラ1ピクセル毎の分解能を演算し、長方形な平版印刷版10Aの4辺を4本の近似直線を引くと共に4本の近似直線の交点間距離及び近似直線が交わる角度からスリット幅、スリット長、直角度を演算する。これにより、平版印刷版10Aの形状(スリット幅、スリット長、直角度)を測定することができる。
ところが、前述したように、平版印刷版10Aの感光層は傷や照射光による品質故障が懸念されると共に平版印刷版10Aは巻き癖等により真っ平らではないため、CCDラインセンサー32に対する平版印刷版10Aの距離、特に平版印刷版10Aの撮像部分である左右エッジ部分a、aを常に一定に維持することが難しい。
そこで、本発明のシート形状測定装置16には、搬送機構20で搬送される平版印刷版10Aの形状測定時に平版印刷版10Aを適切にガイドするガイド機構18が設けられている。
図2に示すように、搬送機構20は、主として、ベルト式の中央列コンベヤ34、ベルト式の右側列コンベヤ36(中央列コンベヤの進行方向右側)、ベルト式の左側列コンベヤ38(中央列コンベヤの進行方向左側)の平行な3列のコンベヤ34、36、38で構成されると共に、右側列コンベヤ36と左側列コンベヤ38とは所定間隔を開けて離間されたベルト式の上流側コンベヤ40とベルト式の下流側コンベヤ42とで構成される。そして、この3列のコンベヤ34、36、38で搬送される平版印刷版10Aが上流側コンベヤ40から下流側コンベヤ42に乗り移るときに、平版印刷版10Aの左右エッジ部分a、aを一対のCCDラインセンサー32、32で連続撮像する。この場合、平版印刷版10Aの形状測定におけるライン速度は40〜150m/分の範囲が好ましい。
ガイド機構18は、主として、平版印刷版10Aの感光層面側を支持すると共に搬送機構20による平版印刷版10Aの搬送方向と同方向に同速度で移動する移動ベルト22と、移動ベルト22の平版印刷版10A反対側であってCCDラインセンサー32に対向して設けられ、表面に凸凹が無く平坦性に優れると共に移動ベルト22の移動方向に湾曲した押し当て面44Aを有する裏当て部材44と、平版印刷版10Aの反感光層面に気体を吹き付けることで平版印刷版10Aに非接触の気体圧力を付与して平版印刷版10Aを移動ベルト22を介して押し当て面44Aに押し当てる圧力付与手段46と、で構成される。裏当て部材44は固定物として形成されると共に、移動ベルト22は裏当て部材44の押し当て面44Aに摺接しながら移動する。尚、符号48はコンベヤのパスローラである。また、使用する気体としては、エアが一般的であるが、窒素ガス等の不活性ガスを使用してもよい。
圧力付与手段46は、図2〜図5に示すように、裏当て部材44の押し当て面44Aに向けて気体を吹き出すノズル52A、52Bを平版印刷版10A搬送方向の上流位置と下流位置に隙間54を開けて一対設けられ、この隙間54を利用して照明器30から平版印刷版10Aに向けて照明を照射し、反射光が隙間54を通ってCCDラインセンサー32に受光される。この一対のノズル52A、52Bが、更に平版印刷版10Aの左右エッジ部分a、a位置にそれぞれ設けられ(図5参照)、圧力付与手段46は合計4本のノズルで構成される。
そして、平版印刷版10Aが上流側コンベア40から下流側コンベア42に乗り移るときに、図3のように一対のノズル52A、52Bのうちの先ず上流側のノズル52Aのみから気体を吹き出すようにして、平版印刷版10Aの前端部分を移動ベルト22を介して裏当て部材44に押し当てる。次に、平版印刷版10Aの前端が下流側コンベヤ42のパスローラ48の中心線48A位置に進入したらノズル52Bからも気体を吹き出す。これにより、平版印刷版10Aの前端と移動ベルト22との間からノズル52Bから吹き出された気体が入り込んで、平版印刷版10Aをバタつかせるのを防止することができる。次に、平版印刷版10Aの後端が上流側コンベヤ40のパスローラ48の中心線48A位置から離れたら、図4のようにノズル52Aからの気体の吹き出しを停止する。これにより、平版印刷版10Aの後端と移動ベルト22との間からノズル52Aから吹き出された気体が入り込んで、平版印刷版10Aをバタつかせるのを防止することができる。この場合、図5のように、上流側の左右エッジa、a位置に配置されたノズル52A、52Aからの気体が平版印刷版10Aの左右エッジa、aに対して内側から外側に向けて吹き付けられるように、ノズル52A、52Aの向きを平版印刷版幅方向の外側に向けて設定することが好ましい。同様に、下流側の左右エッジa、a位置に配置されたノズル52B、52Bからの気体が平版印刷版10Aの左右エッジa、aに対して内側から外側に向けて吹き付けられるように、ノズル52B、52Bの向きを平版印刷版幅方向の外側に向けて設定することが好ましい。これにより、平版印刷版10Aの巻き癖を効果的に矯正できるだけでなく、平版印刷版10Aの両側端と移動ベルト22との間からノズル52A、52Bから吹き出された気体が入り込んで、平版印刷版10Aをバタつかせるのを防止することができる。この結果、平版印刷版10Aを裏当て部材44の押し当て面44Aに効果的に倣わせることができると共に、ノズル52A、52Bから平版印刷版10Aに気体を吹き付けても、平版印刷版10Aと移動ベルト22との間に、ノズル52A、52Bから吹き出された気体が入り込むことがないので、平版印刷版10AのCCDラインセンサー32による連続撮像の際に吹き付けた気体で平版印刷版10Aがバタつくことがない。ノズル52A、52Bから吹き出す気体の圧力は0.05〜0.3MPaの範囲が好ましく、ノズル52A、52Bのノズル口と平版印刷版10Aとの距離は1〜10mmの範囲が好ましい。特に、オンライン測定している最中は、ノズル52A、52Bから吹き出した気体圧力で平版印刷版10Aを浮上(搬送機構34、36、38に接触しない状態)させて裏当て部材44の押し当て面44Aに押し当てるに足る気体圧力を発生させることが好ましい。これは、移動ベルト22は、搬送機構20の搬送方向と同方向で同速度で移動するように設定されているが、移動ベルト22と搬送機構20との速度を完全に同期させないと、平版印刷版10Aに擦れキズができる虞があるためで、平版印刷版10Aを浮上させることで確実に解決することができる。この浮上した状態では、平版印刷版10Aは気体圧力によって支えられながら、移動ベルト22の移動と一緒に移動する。
また、一対のノズル52A、52Bは、図3及び図4の矢印51で示すように、平版印刷版10Aの搬送方向に沿って移動可能に構成されると共に、図5の矢印53に示すように、平版印刷版10Aの幅方向にも移動可能に構成されることが好ましい。これは、平版印刷版10Aの形状、例えば平版印刷版10Aの各種サイズや厚みによるスリット幅やカット幅の違いや自重に起因する垂れ下がり量の違い、或いは巻き癖状態の違いにより、ノズル52A、52Bから平版印刷版10Aのどの場所に気体を吹き付ければ平版印刷版10Aが裏当て部材44の押し当て面44Aに倣うように押し当てることができるかが相違するためである。従って、ノズル52A、52Bを固定配置するのではなく、平版印刷版10Aの搬送方向や幅方向に移動可能に構成することで、どのような平版印刷版10Aの形状のものであっても、平版印刷版10Aを裏当て部材の押し当て面に倣うように精度良く押し当てることができる。ノズル52A、52Bの移動機構については特に示さないが、送りネジや機構、シリンダ機構等公知の移動機構を使用することができる。
このように、本発明のシート形状測定装置16によれば、上記の如く構成したガイド機構18により、平版印刷版10Aの反感光層面にノズル52A、52Bから気体圧力を付与して平版印刷版10Aの感光層面を平版印刷版10Aの搬送方向と同方向に同速度で移動する移動ベルト22を介して裏当て部材44の平坦な押し当て面44Aに押し当て、平版印刷版10Aを押し当て面44Aに倣わせるようにした。これにより、巻き癖等により真っ平らではない平版印刷版10Aであっても押し当て面44Aの形状に倣って平版印刷版10Aの形状が矯正されると共に、平版印刷版10Aは気体圧力で支持されているので、平版印刷版10の前端部や後端部が垂れ下がることがない。特に、本実施の形態では、裏当て部材44の押し当て面44Aを移動ベルト22の移動方向に湾曲させるようにしたので、押し当て面44Aが真っ平らな場合に比べて、平版印刷版10Aの巻き癖や微小な凸凹をより効果的に矯正し、自重による平版印刷版10Aの垂れ下がりをより効果的に防止することができる。この場合、図2のように、移動ベルト22の移動方向に対して直交する方向と平版印刷版10Aの長手方向とが一致するように平版印刷版10Aを押し当て面44Aに押し当てることが好ましい。これにより、平版印刷版10Aの垂れ下がりを一層効果的に防止することができる。
また、裏当て部材44の位置とCCDラインセンサー32との位置は固定されているので、押し当て面44AとCCDラインセンサー32との距離は常に一定になっている。従って、押し当て面44Aに倣って矯正された平版印刷版10AとCCDラインセンサー32との距離も一定となるので、光学的な測定に求められる平版印刷版10AとCCDラインセンサー32との距離精度を十分に達成することができる。
また、平版印刷版10Aの感光層面は、傷がつくと品質故障になるが、平版印刷版10Aは移動する移動ベルト22と一緒に移動しながら押し当て面44Aに倣うので、平版印刷版10Aの感光層面を押し当て面44Aの押し当てることによる擦れは発生しない。従って、感光層面に傷がつくことがない。更には、平版印刷版10Aの感光層面が照明器30からの光線によって品質故障を発生する虞があるが、平版印刷版10Aの反感光層面に気体圧力が付与されていることから、平版印刷版10Aの反感光層面側に照明器30やCCDラインセンサー32を配置することが可能となり、感光層面が照明器30の照明で品質故障を発生することがない。また、平版印刷版10Aは感光層面に合紙14が重ね合わされており、感光層面側から測定すると、合紙14のズレが誤測定の原因になるが、本発明では反感光層面から測定するので、合紙14のズレがあっても誤測定を発生させることがない。更には、平版印刷版10Aがノズル52A、52Bからの気体でバタついたり、移動ベルト22が振動すると誤測定の原因になるが、上記したようにノズル52A、52Bの吹き出すタイミングとノズル52A、52Bの向きを適切に設定したので平版印刷版10Aが吹き付けた気体でバタつくことはなく、また平版印刷版10Aと一緒に移動ベルト22も裏当て部材44に押し当てられるので、平版印刷版10Aの形状測定中に移動ベルト22が振動することもない。
図7は、上記のガイド機構18を逆さまにしたもので、平版印刷版10Aの上側に一対のノズル52A、52Bを設け、平版印刷版10Aの下側に移動ベルト22と裏当て部材44を配置したものである。この場合には、照明器30やCCDラインセンサー32は平版印刷版10Aの上側に配置される。このような構成を平版印刷版10Aの形状測定のガイド機構18として適用する場合には、感光層ではなく感熱層を有する平版印刷版に適用することが好ましい。勿論、平版印刷版10A以外の光による品質故障の懸念がないシートにも適用できる。このようにガイド機構18を逆さまにした場合、搬送される平版印刷版10Aが0.1mm程度の薄板であれば自重で裏当て部材44の押し当て面44Aに倣うが、0.4mm以上の厚めの平版印刷版10Aは剛性があるので、ノズル52A、52Bからの気体圧力で平版印刷版10Aを強制的に裏当て部材44の押し当て面44Aに倣わせる必要がある。
尚、本発明の実施の形態では、シートとして平版印刷版10Aの例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、薄板鉄板や樹脂シート等にも適用することができる。また、裏当て部材44の押し当て面44Aが移動ベルト22の移動方向に湾曲形状した例で説明したが、押し当て面44Aが真っ平らであってもよい。また、本実施の形態では、搬送機構20は加工ライン100の一部として、シート形状測定装置16とは別装置としたが、搬送機構20をシート形状測定装置16の一部とすることもできる。また、本実施の形態では、CCDラインセンサー32を平版印刷版10Aの左右エッジa、a位置に一対設けて、搬送される平版印刷版10Aの前端部から後端部にかけて連続撮像するようにしたが、平版印刷版10Aの前端部から後端部にCCDラインセンサーを4台設け、平版印刷版10Aの前端部の左右エッジa、aと後端部の左右エッジa、aを一度に撮像するようにしてもよい。
次に、本発明における平版印刷版10Aに関する好ましい態様を説明する。
平版印刷版10Aは、長方形の板状に形成された薄いアルミニウム製の支持体上に、塗布膜(感光性印刷版の場合には感光層、感熱性印刷版の場合には感熱層、さらに必要に応じて、オーバーコート層やマット層等)を塗布して形成されている。この塗布膜に、露光、現像処理、ガム引き等の製版処理が行われ、印刷機にセットされ、インクが塗布されることで、紙面に文字、画像等が印刷される。
尚、本実施形態の平版印刷版10は、印刷に必要な処理(露光や現像等)が施される前段階のものであり、場合によっては平版印刷版原版あるいは平版印刷版材と称されることもある。このような構成とされていれば、平版印刷版10Aの具体的構成は特に限定されないが、例えば、ヒートモード方式およびフォトン方式のレーザ刷版用の平版印刷版10Aとすることによって、デジタルデータから直接製版可能な平版印刷版10Aとすることができる。
また、平版印刷版10Aは、感光層又は感熱層中の成分を種々選択することによって、種々の製版方法に対応した平版印刷版とすることができる。本発明の平版印刷版10Aの具体的態様の例としては、下記(1)〜(11)の態様が挙げられる。
(1)感光層が赤外線吸収剤、熱によって酸を発生する化合物、および酸によって架橋する化合物を含有する態様。
(2)感光層が赤外線吸収剤、および熱によってアルカリ溶解性となる化合物を含有する態様。
(3)感光層が、レーザ光照射によってラジカルを発生する化合物、アルカリに可溶のバインダー、および多官能性のモノマーあるいはプレポリマーを含有する層と、酸素遮断層との2層を含む態様。
(4)感光層が、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との2層からなる態様。
(5)感光層が、多官能性モノマーおよび多官能性バインダーとを含有する重合層と、ハロゲン化銀と還元剤を含有する層と、酸素遮断層との3層を含む態様。
(6)感光層が、ノボラック樹脂およびナフトキノンジアジドを含有する層と、ハロゲン化銀を含有する層との2層を含む態様。
(7)感光層が、有機光導電体を含む態様。
(8)感光層が、レーザー光照射によって除去されるレーザー光吸収層と、親油性層および/または親水性層とからなる2〜3層を含む態様。
(9)感光層が、エネルギーを吸収して酸を発生する化合物、酸によってスルホン酸またはカルボン酸を発生する官能基を側鎖に有する高分子化合物、および可視光を吸収することで酸発生剤にエネルギーを与える化合物を含有する態様。
(10)感光層が、キノンジアジド化合物と、ノボラック樹脂とを含有する態様。
(11)感光層が、光又は紫外線により分解して自己もしくは層内の他の分子との架橋構造を形成する化合物とアルカリに可溶のバインダーとを含有する態様。
特に、レーザー光の照射により現像液に対する可溶性が変化する感光層(又は感熱層)を有する平版印刷版10Aでは、画像形成面(感光層又は感熱層)が損傷を受けやすいため、本発明を適用すると、後述するようにいわゆる膜剥れを確実に防止でき、好ましい。
尚、ここでいうレーザー光の波長は特に限定されず、例えば、(A)波長域350〜450nmのレーザー(具体例としては、波長405±5nmのレーザーダイオード)、(B)波長域480〜540nmのレーザー(具体例としては、波長488nmのアルゴンレーザー、波長532nmの(FD)YAGレーザー、波長532nmの固体レーザー、波長532nmの(グリーン)He−Neレーザー)、(C)波長域630〜680nmのレーザー(具体例としては、波長630〜670nmのHe−Neレーザー、波長630〜670nmの赤色半導体レーザー)、(D)波長域800〜830nmのレーザー(具体例としては、波長830nmの赤外線(半導体)レーザー)、(E)波長1064〜1080nmのレーザー(具体例としては、波長1064nmのYAGレーザー)、等を挙げることができる。これらのうち、例えば、(B)及び(C)の波長域のレーザー光はいずれも、上記した(3)又は(4)の態様の感光層又は感熱層を有する平版印刷版の双方に適用可能である。また、(D)及び(E)の波長域のレーザー光はいずれも、上記した(1)又は(2)の態様の感光層又は感熱層を有する平版印刷版10Aの双方に適用可能である。もちろん、レーザー光の波長域と感光層又は感熱層との関係はこれらに限定されない。
10…長尺な平版印刷版、10A…シート状の平版印刷版、12…積層束、14…合紙、16…シート形状測定装置、18…ガイド機構、20…搬送機構、22…移動ベルト、24…測定機構、30…照明器、32…CCDラインセンサー、34…中央列コンベヤ、36…右側列コンベヤ、38…左側列コンベヤ、40…上流側コンベヤ、42…下流側コンベヤ、44…裏当て部材、44A…押し当て面、46…圧力付与手段、48…パスローラ、ノズル…52A、52B、54…隙間、100…加工ライン、102…送出機、106…レベラ、108…重ね合わせ装置、112…送出機、114…スリッタ装置、116…ウエブ、118…ノッチャー、120…スリッタ装置、126…測長装置、128…走間カッタ、132…コンベア、134…集積装置、a…平版印刷版の左右エッジ部分