JP2005185276A - Psm’活性のプロモータ - Google Patents

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Abstract




【課題】選択的にスプライシングされた前立腺特異的膜(PSM')抗原をコードする単離された核酸分子であって、プロモータ活性を備えた単離された核酸を提供すること。
【解決手段】 プロモータ活性を備えた単離された核酸であって、選択的にスプライスされた前立腺特異的膜抗原をコードする遺伝子の転写に関連したプロモータ配列に対応する連続的ヌクレオチドを具備し、その構造内に、位置58のメチオニンで始まり位置750のアラニンで終わる特定のアミノ酸配列をもった連続的アミノ酸を有するが、位置1〜位置57のアミノ酸配列をもった連続的アミノ酸を有さない単離された核酸。
【選択図】なし

Description

関連出願の表示
本出願は、共に1995年6月2日付けで出願された米国特許出願第08/466,381号および08/470,735号(これらは1995年2月24日付けで出願された米国特許出願08/394,152号の継続出願である)の一部継続出願である。これらの出願の内容は、出典明示により本明細書の一部とする。
本明細書に開示する発明の一部は、NIH助成第DK47650号および米国保険社会福祉省からのCA58192、CA-39203、CA-29502、CA-08748-29に基づく政府の援助によりなされた。従って、米国政府は本発明において一定の権利を有する。
発明の背景
本出願ではその全体において、括弧内に示す種々の参照文献に言及している。本発明に関連した技術水準をより完全に説明するために、これらの刊行物の全体の開示を、出典明示により本出願の一部とする。実験の詳細の部における各組の実施例の最後に、これらの参照文献の完全な書誌的引用を示す。
前立腺癌は、現在、米国人男性で診断される最も一般的な悪性疾患であるため、該疾患は米国における最も重要な医学的問題の1つとなっている。1992年には、132,000以上の症例が前立腺癌として新たに診断され、この疾患により36,000人以上が死亡しており、4年間で17.3%増加している(2)。前立腺癌患者の5年生存率は、限局性疾患患者の88%から転移性疾患患者の29%である。症例数の急激な増加の原因は、1つには、当該疾患に気づく例が増えたことと、分泌タンパク質である前立腺特異的抗原(PSA)や前立腺酸ホスファターゼ(PAP)などの臨床的マーカーが広く使用されるようになったためと考えられる(37)。
前立腺は、良性成長(BPH)、新形成(前立腺癌)、感染症(前立腺炎)などの状態に冒される病理学的に重要な部位である。前立腺癌は、男性の癌死亡の第2位の主要原因である(1)。しかし、前立腺癌は男性の癌発生の最も主要な部位である。これらの2つの事実の相違は、男性が齢をとるにつれて、特に他の要因による死亡が加わってくることが多い60歳を越えてから、前立腺癌の発生頻度が増加することと関係している。また、男性によっては、検出後に該腫瘍が潜伏的組織学的腫瘍のまま維持されて臨床的に重要でなくなる例もあるが、前立腺癌の生物学的攻撃性は激しく、該腫瘍が急速に進行し、転移し、比較的短期間(2〜5年)のうちに死に至る場合もある(1, 3)。
前立腺癌細胞中で非常に高濃度で産生される2つの特異的タンパク質として、前立腺酸ホスファターゼ(PAP)および前立腺特異的抗原(PSA)が挙げられる(4, 5, 6)。これらのタンパク質は既に特徴づけされており、治療に対する反応を追跡するのに使用されている。癌が広がるにつれて、前立腺の正常な構造が変化し、例えば、分泌物を運ぶための正常な管構造が失われ、そのため該分泌物が血清に達する。実際、血清PSAの測定が、前立腺癌の潜在的スクリーニング方法として提案されている。実際、正常または良性組織と比べて、該癌におけるPSAおよび/またはPAPの相対量は減少する。
PAPは、転移の広がりを検出するための最も初期の血清マーカーの1つである(4)。PAPは、チロシンホスファターゼを加水分解し、広い基質特異性を有する。チロシンのリン酸化は、腫瘍形成トランスフォーメーションと共に増強されることが多い。ある種のタンパク質はチロシン残基上のリン酸化により活性化され、そのようなタンパク質を不活性化するのにホスファターゼ活性が利用できるのであるが、腫瘍性トランスフォーメーションの間は、そのようなホスファターゼ活性が低下していると仮定されている。チロシンホスファターゼ活性を有するホスファターゼを挿入することにより、悪性表現型が逆転する場合もある。
PSAはプロテアーゼであり、その活性の喪失が癌発生とどのように相関しているかを理解することは容易ではない(5, 6)。PSAのタンパク質分解活性は、亜鉛により阻害される。亜鉛濃度は、正常前立腺中では高く、前立腺癌中では減少する。おそらく、亜鉛が失われることにより、PSAのタンパク分解活性が増強されるのであろう。プロテアーゼは転移に関与しており、いくつかのプロテアーゼは有糸分裂活性を刺激するため、PSA活性の潜在的増加は、腫瘍の転移および拡張において何らかの役割を果たしていると仮定される(7)。
PSAおよびPAPは共に、前立腺分泌物中に見いだされる。両者の産生はアンドロゲンの存在に依存し、両者はアンドロゲン喪失後に実質的に減少するらしい。
前立腺膜に局在していると考えられる前立腺特異的膜抗原(PSM)が既に同定されている。この抗原は、前立腺癌細胞LNCaPに対するモノクローナル抗体を作製した結果として同定された(8)。
ホロスツェビクツ(Horoszewicz)博士は、ホルモン治療に反応しない前もって十分に治療された患者のリンパ節から、LNCaPと称される細胞株を樹立した(9)。この系は、異数体ヒト男性核型を有することが判明した。該細胞株は、PSAおよびPAPの両方を産生する点で、前立腺分化機能を維持していた。該細胞株は、高い親和性および特異性のアンドロゲン受容体を有していた。LNCaP細胞でマウスを免疫し、感作動物からハイブリドーマが誘導された。モノクローナル抗体が誘導され、7E11−C5と命名された(8)。該抗体染色は膜局在と一致し、LNCaP細胞膜の単離画分は、免疫ブロット法およびELISA技術で強力な陽性反応を示した。この抗体は、インビトロまたはインビボでLNCaP細胞の成長を阻害も増強もしなかった。この抗原に対する抗体は、他の成分では反応性が認められなかったため、前立腺上皮細胞に著しく特異的であったといえる。癌性上皮細胞の免疫組織化学的染色は、正常または良性の上皮細胞の場合と比較して強かった。
また、ホロスツェビクツ博士は、前立腺癌患者の血清中において、7E11−C5を用いた免疫反応性物質の検出を報告している(8)。該免疫反応性は、D−2段階の疾患の患者の約60%で検出可能であった。また、より初期の段階の疾患の患者ではそれより若干低い割合の患者で検出可能であったが、このグループの患者数は少ない。良性前立腺過形成(BPH)の患者は陰性であった。明らかな疾患を有さない患者は陰性であったが、寛解状態にあるが活性な安定疾患を有するかまたは進行中の患者の50〜60%は、陽性血清反応性を示した。非前立腺腫瘍の患者は、7E11−C5による免疫反応性を示さなかった。
7E11−C5モノクローナル抗体は、現在、臨床試験中である。該抗体のアルデヒド基を酸化し、該重鎖の反応性アルデヒドに対して、リンカー−キレート剤 グリコール−チロシル−(n,ε−ジエチレントリアミン−ペンタ酢酸)−リシン(GYK−DTPA)を結合させた(10)。得られた抗体はCYT−356と称された。免疫組織化学的染色パターンは、CYT−356修飾抗体が骨格筋を染色した以外は同様であった。CYT−356を7E11−C5モノクローナル抗体と比較することにより、両者が2型筋繊維に対する結合性を有することが示唆された。より初期の研究では骨格筋は陰性と報告されており、この報告と相違する理由は、組織固定化技術の相違によることが示唆された。それでも、前立腺上皮細胞、特に癌性細胞を用いたときに、最も強く且つ明確な反応が観察された。マウス骨格筋との反応性は、イメージング研究でなく、免疫組織化学的方法により検出された。インジウム111標識抗体は、ヌードマウス中で成長したLNCaP腫瘍に局在し、4日目で腫瘍1グラム当たりの注入用量の約30%が取り込まれていた。インビボでは、PC−3、DU−145などの抗原陰性腫瘍中の又は骨格筋による該抗体の選択的保持は認められなかった。PSM抗原については、ほとんど知られていない。精製および特徴づけのための努力については、ジョージ・ライト(George Wright)博士らにより学会で説明されている(11, 12)。
発明の概要
本発明は、選択的にスプライシングされた前立腺特異的膜(PSM')抗原をコードする単離された哺乳動物核酸分子を提供する。
本発明は、前立腺特異的膜抗原プロモーターをコードする単離された核酸分子を提供する。本発明は、対象の血行性微小転移腫瘍細胞を検出し、対象の前立腺癌の進行を測定する方法を提供する。
発明の詳細な説明
本出願の全体において、特定のヌクレオチドに対する言及は、該核酸のコーディング鎖上に存在するヌクレオチドに対するものである。本明細書では、特定のヌクレオチドを示すために、以下の標準的な略語を使用する:
C=シトシン、A=アデノシン、
T=チミジン、G=グアニン。
「遺伝子」は、特定のタンパク質の正常に調節された産生に必要な、構造コーディング配列、プロモーターおよびエンハンサーを含むすべての情報がその配列の中に含まれている核酸分子を意味する。
本発明は、選択的にスプライシングされた前立腺特異的膜(PSM')抗原をコードする単離された哺乳動物核酸を提供する。
本発明は、哺乳動物前立腺特異的膜(PSM)抗原をコードする単離された哺乳動物核酸を提供する。
さらに本発明は、選択的にスプライシングされた前立腺特異的膜抗原をコードする、単離された哺乳動物核酸分子の単離された哺乳動物DNA分子を提供する。また本発明は、選択的にスプライシングされた前立腺特異的膜抗原をコードする単離された哺乳動物cDNA分子を提供する。本発明は、哺乳動物の選択的にスプライシングされた前立腺特異的サイトゾル抗原をコードする単離された哺乳動物RNA分子を提供する。
さらに本発明は、哺乳動物前立腺特異的膜抗原をコードする、単離された哺乳動物核酸分子の単離された哺乳動物DNA分子を提供する。また本発明は、哺乳動物前立腺特異的膜抗原をコードする単離された哺乳動物cDNA分子を提供する。本発明は、哺乳動物前立腺特異的膜抗原をコードする単離された哺乳動物RNA分子を提供する。
本発明の好ましい実施態様では、その単離された核酸配列は、図47A〜47Dに示すヒトからのcDNAである。このヒト配列は、PSM、ホモサピエンス、2653塩基対という説明と共に、受託番号M99487でジーンバンク(GenBank;Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, New Mexico)へ提出されている。
また本発明は、PSMまたはPSM'抗原とは異なるが、表現型変化を与えないアミノ酸配列をコードするようなDNAおよびcDNAを包含する。あるいは、本発明はまた、本発明のDNAおよびcDNAとハイブリダイズするDNAおよびcDNAを包含する。ハイブリダイゼーション法は、当業者によく知られている。
例えば、一定のイオン強度およびpHでの特定の配列の熱融解温度(Tm)よりも約5℃低い温度で、厳密性の高いハイブリダイゼーション条件を選択する。Tmは、標的配列の50%が、完全適合プローブとハイブリダイズする温度(一定のイオン強度およびpH下において)である。典型的には、厳密性の高い条件は、pH7において塩濃度が少なくとも約0.02モルであり、温度が少なくとも約60℃であるような条件である。他の要因(とりわけ、相補鎖の塩基組成およびサイズ、有機溶媒の存在、すなわち、塩またはホルムアミド濃度、塩基ミスマッチの程度など)がハイブリダイゼーションの厳密性に有意な影響を及ぼしうるため、パラメーターの組み合わせは、いずれか1つの絶対測定値よりも重要である。例えば、厳密性の高いハイブリダイゼーションは、例えば、6×SSC溶液中において、約68℃で一晩ハイブリダイゼーションし、室温で6×SSC溶液により洗浄し、ついで0.6×SSX溶液中の6×SSC中、約68℃で洗浄することにより行ってもよい。
適度の厳密性でのハイブリダイゼーションは、例えば、以下のとおりに行ってもよい: 1)3×塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム(SSC)、50%ホルムアミド、0.1M トリス緩衝液(pH7.5)、5×デンハルト溶液を用いるフィルタープレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション、2)37℃で4時間のプレハイブリダイゼーション、3)3,000,000cpmと同等量の標識プローブによる37℃での合計16時間のハイブリダイゼーション、4)2×SSCおよび0.1%SDS溶液中での洗浄、5)4×1分間、室温(それぞれ)、および4×60℃、30分間(それぞれ)の洗浄、および6)乾燥およびフィルムへの露光。
本明細書中で説明し、且つ請求の範囲に記載したDNA分子は、該分子が提供するポリペプチドのアミノ酸配列に関する情報のために有用であり、また種々の組換え技術によに前記ポリペプチドを大規模合成するための物質として有用である。該分子は、新規クローニングベクターおよび発現ベクター、並びに形質転換されトランスフェクションされた原核および真核宿主細胞を作製するのに有用であり、また、該ポリペプチドおよび関連生成物の発現能を有するそのような宿主細胞の培養増殖のための新規且つ有用な方法を得るために有用である。
さらに、哺乳動物前立腺特異的膜抗原および選択的にスプライシングされたPSM'をコードする単離された哺乳動物核酸分子は、前立腺癌の腫瘍形成の研究のためのプローブを開発するために有用である。
また本発明は、前立腺特異的膜抗原または選択的にスプライシングされた前立腺特異的膜抗原をコードする核酸分子の配列と特異的にハイブリダイズする能力を有する少なくとも15ヌクレオチドの単離された核酸分子を提供する。
製造されたこの核酸分子は、DNAであってもRNAであってもよい。本明細書中で用いる「特異的にハイブリダイズする」の語は、核酸分子が、それ自体と相補的な核酸配列を認識し、相補的塩基対間で水素結合により二重らせんセグメントを形成する能力を意味する。
前立腺特異的膜抗原をコードする核酸分子の配列と特異的にハイブリダイズする能力をもった少なくとも15ヌクレオチドのこの核酸分子は、プローブとして使用することができる。核酸プローブ技術は当業者によく知られており、当業者であれば、そのようなプローブの長さは多種多様であってもよく、プローブの検出を容易にするために検出可能な標識(例、放射性同位体、蛍光染料など)でプローブを標識してもよいことを容易に理解するであろう。DNAプローブ分子は、当該分野でよく知られている方法により、PSM抗原をコードするDNA分子を適当なベクター(例、プラスミド、バクテリオファージなど)中へ挿入し、ついで適当な細菌宿主細胞中へ形質転換し、該形質転換細菌宿主細胞中で複製し、該DNAプローブを回収することにより製造すればよい。あるいは、当該プローブは、DNA合成装置により化学的に製造してもよい。
RNAプローブは、バクテリオファージプロモーター(例えば、T3、T7、SP6など)の下流にPSM抗原分子を挿入することにより作製してもよい。上流プロモーターを適当なRNAポリメラーゼの存在下で含有する線状化PSM抗原断片と共に、該標識ヌクレオチドをインキュベーションすることにより、多量のRNAプローブを生成させてもよい。
また本発明は、哺乳動物前立腺特異的膜抗原をコードする哺乳動物核酸分子に対して相補的な核酸分子配列と特異的にハイブリダイズする能力を有する少なくとも15ヌクレオチドの核酸分子を提供する。この分子は、DNA分子またはRNA分子のいずれであってもよい。
さらに本発明は、哺乳動物PSMまたはPSM'抗原の細胞中での発現を検出する方法であって、該細胞から全mRNAを得ることと、こうして得られたmRNAを、ハイブリダイゼーション条件下において、哺乳動物PSMまたはPSM'抗原をコードする核酸分子の配列と特異的にハイブリダイズする能力を有する少なくとも15ヌクレオチドの標識された核酸分子と接触させることと、該分子とハイブリダイズしたmRNAの存在を判定し、それにより該哺乳動物前立腺特異的膜抗原の該細胞中での発現を検出することを含んでなる方法を提供する。前記で合成された核酸分子を用いて、PSM抗原をコードするmRNAの存在を検出することにより、PSMまたはPSM'抗原の発現を検出してもよい。該細胞からの全mRNAは、当業者によく知られている種々の方法で単離してもよい。該標識核酸分子のハイブリダイゼーション条件は、当該分野で公知の通常の実験により決定すればよい。該プローブにハイブリダイゼーションしたmRNAの存在は、ゲル電気泳動または当該分野で公知の他の方法により判定すればよい。得られたハイブリッドの量を測定することにより、該細胞によるPSM抗原の発現を測定することができる。該標識は放射性のものであってもよい。例えば、核酸の生成時に、1以上の放射性ヌクレオチドを該核酸に取り込ませることができる。
本発明の1つの実施態様では、溶解細胞から沈殿させることにより核酸を抽出し、mRNAのポリA尾部に結合するオリゴ−dTカラムを用いて該抽出物からmRNAを単離する(13)。ついで、ニトロセルロース膜上で該mRNAを放射性標識プローブにさらすと、該プローブは、相補的mRNA配列とハイブリダイゼーションして、それを標識する。結合は、発光オートラジオグラフィーまたはシンチレーション計数により検出してもよい。しかしながら、これらの工程を行うための他の方法も当業者によく知られており、上記で述べたものは例示にすぎない。
さらに本発明は、組織切片中でのPSMまたはPSM'抗原の発現を検出するためのもう1つの方法であって、前記組織切片を、ハイブリダイゼーション条件下において、哺乳動物PSM抗原をコードする核酸分子配列と特異的にハイブリダイズする能力を有する少なくとも15ヌクレオチドの標識核酸分子と接触させることと、該分子とハイブリダイゼーションしたmRNAの存在を判定し、それにより、該組織切片中での哺乳動物PSMまたはPSM'抗原の発現を検出することとを含んでなる方法を提供する。該プローブは、種々の生物学的組織中におけるin-situハイブリダイゼーション、当該遺伝子を発現する組織の位置決定、またはこの遺伝子またはそのmRNAの存在についての他のハイブリダイゼーションアッセイにも有用である。標識核酸分子を用いるin-situハイブリダイゼーションは、当該分野において周知である。本質的には、組織切片を標識核酸分子とインキュベーションしてハイブリダイゼーションを起こさせる。該分子は「標識」されているため、検出用マーカーを保持しているといえる。該ハイブリッドの量は該マーカー量の検出に基づき測定され、PSM抗原の発現についても同様である。
さらに本発明は、RNA転写のプロモーターに作動可能に結合している単離されたPSMまたはPSM'抗原核酸分子を提供する。その単離されたPSMまたはPSM'抗原配列は、ベクター系に結合させることができる。プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクター、他のウイルスなどの種々のベクターが、当業者において周知である。さらに本発明は、PSMまたはPSM'抗原をコードする単離された核酸分子を含んでなるベクターを提供する。
これらのベクターを得るための一例として、挿入物とベクターDNAとを共に制限酵素にさらして、互いに塩基対形成する相補的末端を両分子上につくり、ついでDNAリガーゼで互いに連結させることができる。あるいは、ベクターDNA中の制限部位に対応するリンカーを挿入DNAに連結し、ついでその部位で切断する制限酵素で消化する。他の手段も利用可能であり、これらは当業者に公知である。
1つの実施態様では、pSPORT/ベクター(Gibco −BRL)のNot I/SalI部位中にPSM配列をクローニングしする。このプラスミドp55A-PSMは、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の規定に基づき1992年8月14日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection(ATCC),12301, Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, U.S.A.)に寄託されている。プラスミドp55A-PSMには、ATCC受託番号75294が付与されている。
さらに本発明は、前立腺特異的膜抗原の生物学的活性を有するポリペプチドを製造するための宿主ベクター系を提供する。PSM抗原の生物学的活性を有するポリペプチドの産生のための宿主細胞ベクター系を得るために、これらのベクターを適当な宿主細胞中に形質転換してもよい。
発現に必要な調節要素には、RNAポリメラーゼに結合するプロモーター配列、およびリボソーム結合のための転写開始配列が含まれる。例えば、細菌発現ベクターには、lacプロモーターなどのプロモーター、転写開始のためのシャイン・ダルガルノ配列、および開始コドンAUGが含まれる(14)。同様に、真核発現ベクターには、RNAポリメラーゼIIのための異種または同種プロモーター、下流ポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、およびリボゾームの脱離のための終結コドンが含まれる。そのようなベクターは、商業的に入手してもよいし、当該分野でよく知られている方法、例えば前記の一般的ベクター構築方法により、該記載配列から組み立ててもよい。発現ベクターは、PSM抗原を発現する細胞の生産に有用である。
さらに本発明は、前記の単離されたDNAまたはcDNA分子を提供するものであり、この場合、該宿主細胞は、細菌細胞(例、大腸菌(E. coli))、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞および動物細胞よりなる群から選ばれる。適当な動物細胞には、Vero細胞、HeLa細胞、Cos細胞、CV1細胞および種々の一次哺乳動物細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。
さらに本発明は、前立腺特異的膜抗原の生物学的活性を有するポリペプチドの製造法であって、該ポリペプチドの製造を許容する適当な条件下で、PSM抗原配列を含有するベクター系の宿主細胞を成長させ、得られたポリペプチドを回収することを含んでなる製造法を提供する。
本発明は、哺乳動物PSMまたはPSM'抗原をコードするDNA分子を含んでなる哺乳動物細胞(例えば、哺乳動物細胞中での発現に適合化されたプラスミドを含んでなる哺乳動物細胞)であって、哺乳動物PSM抗原をコードするDNA分子および該哺乳動物細胞中での該DNAの発現に必要な調節要素を含んでなり、該調節要素が、該哺乳動物PSMまたはPSM'抗原をコードするDNAに対してその発現を許容するように位置することを特徴とする哺乳動物細胞を提供する。
宿主としては種々の哺乳動物細胞を用いてもよく、例えばマウス繊維芽細胞NIH3T3、CHO細胞、HeLa細胞、LtK細胞、Cos細胞などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば前記の発現プラスミドを用いて、リン酸カルシウム沈殿法、エレクトロポレーションなどの当該分野で周知の方法により哺乳動物細胞をトランスフェクションしてもよい。あるいは、哺乳動物PSM抗原をコードするDNAを、例えばマイクロインジェクションにより哺乳動物中に導入して、哺乳動物PSM抗原をコードするDNA、例えばcDNAまたはプラスミドを含んでなる哺乳動物細胞を得てもよい。
本発明は、リガンドが哺乳動物前立腺膜抗原に結合するか否かを判定する方法であって、哺乳動物前立腺特異的膜抗原をコードする単離されたDNA分子を含んでなる哺乳動物細胞と該リガンドとを、該哺乳動物前立腺特異的膜抗原に対するリガンドの結合を許容する条件下で接触させ、それにより、該リガンドが哺乳動物前立腺特異的膜抗原に結合するか否かを判定することを特徴とする方法を提供する。
さらに本発明は、該哺乳動物PSMまたはPSM'抗原に結合したリガンドを提供する。
また本発明は、前記方法により同定されたリガンドと、それに結合した細胞障害剤とを含んでなる治療剤を提供する。該細胞障害剤は、放射性同位体であってもよいし毒素であってもよい。放射性同位体または毒素の具体例は、当業者によく知られている。
また本発明は、ヒト患者における前立腺癌のイメージング方法であって、該前立腺癌細胞の細胞表面に結合する能力を有しイメージング剤で標識されている前記方法により同定された少なくとも1つのリガンドを、該リガンドと該細胞表面PSMまたはPSM'抗原との複合体の形成を許容する条件下で該患者に投与することを含んでなる方法を提供する。さらに本発明は、PSMまたはPSM'抗原リガンドの有効なイメージング剤と医薬上許容しうる担体とを含んでなる組成物を提供する。医薬上許容しうる担体は当業者によく知られている。例えば、そのような医薬上許容しうる担体は生理食塩水であってもよい。
また本発明は、精製されている哺乳動物PSMおよびPSM'抗原を提供する。本明細書中で用いる「精製された前立腺特異的膜抗原」なる語は、単離された天然に生じる前立腺特異的膜抗原またはタンパク質(天然に生じる物質と一次、二次および三次コンホメーションおよび翻訳後修飾が同一となるように、天然から精製されているかまたは製造されている)、ならびに一次構造コンホメーション(すなわち、アミノ酸残基の連続配列)を有する非天然に生じるポリペプチドを意味する。そのようなポリペプチドには、誘導体および類似体が含まれる。
本発明は、前立腺特異的膜抗原プロモーターをコードする単離された核酸分子を提供する。1つの実施態様では、該PSMプロモーターは、少なくとも、図58A〜58Cに記載の配列を有する。
本発明は、選択的にスプライシングされた前立腺特異的膜抗原プロモーターをコードする単離された核酸分子を提供する。
さらに本発明は、PSMおよびPSM'抗原の単離された哺乳動物核酸配列によりコードされるポリペプチドを提供する。
PSMまたはPSM'抗原と相互作用する天然リガンドが存在すると考えられており、本発明は、そのような天然リガンドまたはPSMまたはPSM'抗原に結合しうる他のリガンドを同定する方法を提供する。このリガンドを同定する方法は、a)該精製哺乳動物PSMまたはPSM'抗原を固体マトリックスに結合させることと、b)リガンドと該精製PSMまたはPSM'抗原との結合を許容する条件下において、該結合精製哺乳動物PSMまたはPSM'タンパク質を該潜在的リガンドと共にインキュベーションすることと、c)b)で生成したリガンドと結合精製哺乳動物PSMまたはPSM'抗原との複合体を洗浄して、非特異的結合体および不純物を除去することと、最後にd)該結合精製哺乳動物PSMまたはPSM'抗原から該リガンドを溶出することとを含んでなる。タンパク質を固体マトリックスに結合させる技術は、当該分野でよく知られている。潜在的リガンドは、当業者に公知の他の経験的実験により、哺乳動物PSMまたはPSM'の構造から推定してもよい。また、結合条件は容易に決定でき、そのような実験を行うためのプロトコールについては、かなり前から十分に記載されている(15)。該リガンド−PSM抗原複合体を洗浄し、最後に、該結合リガンドを溶出し特徴づけする。標準的なリガンドの特徴づけの技術は、当該分野でよく知られている。
前記方法を用いて、いずれかの生物学的起源からリガンドを精製してもよい。該細胞中の天然リガンドを精製するためには、細胞溶解物、血清または他の生物学的サンプルを使用して、マトリックス上に結合した哺乳動物PSMまたはPSM'抗原と共にインキュベーションする。ついで、前記のとおり、特異的天然リガンドを同定し精製する。
該タンパク質配列情報を用いて抗原領域を同定し、これらの領域に対する抗体を産生させ、前立腺癌にターゲッティングして、該癌のイメージングまたは治療に用いてもよい。
本発明は、哺乳動物PSMまたはPSM'抗原のアミノ酸配列に対する抗体を提供する。
本発明は、抗体を産生させるための、PSMまたはPSM'抗原上の特異的領域を選択する方法を提供する。該タンパク質配列は、PSMまたはPSM' DNA配列から決定してもよい。当業者によく知られている方法によりアミノ酸配列を分析して、それらが構成するタンパク質中にそれらが疎水性または親水性領域を作るか否かを判定してもよい。細胞膜タンパク質の場合、細胞膜の脂質二重層中に挿入されているタンパク質部分を疎水性領域が形成し、水性環境中の細胞表面上に親水性領域が位置することがよく知られている。通常、親水性領域は、疎水性領域より免疫原性である。したがって、親水性アミノ酸配列を選び、これを用いて、哺乳動物PSM抗原に特異的な抗体を産生させてもよい。例えば、図16:1〜11の親水性プロット中に示すヒトPSM抗原の親水性配列が容易に選択できる。商業的に入手可能な機械を用いて該選択ペプチドを製造してもよい。あるいは、DNA、例えばcDNAまたはその断片をクローニングし、発現させ、得られたポリペプチドを回収し、免疫原として用いてもよい。
これらのペプチドに対するポリクローナル抗体は、該選択ペプチドを用いて動物を免疫することにより産生させてもよい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を用いて、免疫動物からの抗体産生B細胞を骨髄腫細胞と融合させ、所望の抗体を産生する得られたハイブリドーマ細胞株を選択することにより製造する。あるいは、当業者に公知のインビトロ技術によりモノクローナル抗体を産生させてもよい。これらの抗体は、生存動物、ヒトにおける、または動物またはヒトから単離した生物学的組織における哺乳動物PSM抗原の発現を検出するのに有用である。
1つの実施態様では、ヒトPSM抗原のペプチドAsp-Glu-Leu-Lys-Ala-Glu(配列番号 )、Asn-Glu-Asp-Gly-Asn-Glu(配列番号 )およびLys-Ser-Pro-Asp-Glu-Gly(配列番号 )を選択する。
さらに本発明は、ペプチドAsp-Glu-Leu-Lys-Ala-Glu(配列番号 )、Asn-Glu-Asp-Gly-Asn-Glu(配列番号 )およびLys-Ser-Pro-Asp-Glu-Gly(配列番号 )に対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。
本発明は、PSM抗原に対する抗体またはリガンドおよびそれに結合した細胞障害剤または該腫瘍を殺すプロドラッグを活性化する抗体結合酵素を含んでなる治療剤を提供する。該細胞障害剤は、放射性同位体または毒素のいずれであってもよい。
本発明は、哺乳動物PSMまたはPSM'抗体のペプチドに対するモノクローナル抗体を該患者に投与することを含んでなるヒト患者における前立腺癌をイメージングする方法であって、該モノクローナル抗体が、該前立腺癌細胞の細胞表面に結合する能力を有し、かつイメージング剤で標識されており、該投与を、該モノクローナル抗体と該細胞表面前立腺特異的膜抗原との複合体の形成を許容する条件下で行うことを特徴とする方法を提供する。該イメージング剤は、インジウム111などの放射性同位体である。
さらに本発明は、PSMまたはPSM'抗原に対する抗体とそれに結合した放射性同位体とを含んでなる前立腺癌特異的イメージング剤を提供する。
また本発明は、PSMまたはPSM'抗原に対する抗体の有効イメージング量と医薬上許容される担体とを含んでなる組成物を提供する。有効イメージング量を決定する方法は、当業者にはよく知られている。1つの方法は、種々の量の該抗体を用いる力価測定によるものである。
さらに本発明は、生物学的サンプル中の前立腺特異的膜抗原量を測定するためのイムノアッセイであって、a)PSMまたはPSM'抗原に対する少なくとも1つの抗体と該生物学的サンプルとを接触させて、前記抗体と該前立腺特異的膜抗原との複合体を形成させる工程と、b)前記複合体の量を測定することにより、前記生物学的サンプル中の該前立腺特異的膜抗原量を測定する工程とを含んでなるイムノアッセイを提供する。該生物学的サンプルの1つの具体例は、血清サンプルである。
本発明は、哺乳動物前立腺特異的膜抗原を精製する方法であって、a)PSMまたはPSM'抗原に対する抗体を固体マトリックスに結合させる工程と、b)前立腺特異的膜抗原を含有する溶解物と共にa)の結合抗体を、該抗体と前立腺特異的膜とが結合しうる条件下でインキュベーションする工程と、c)該固体マトリックスを洗浄して、不純物を除去する工程と、d)該結合抗体から該前立腺特異的膜抗原を溶出する工程とを含んでなる方法を提供する。
また本発明は、哺乳動物PSMまたはPSM'抗原をコードする単離された核酸分子を含んでなるトランスジェニック哺乳動物(ヒトを除く)を提供する。さらに本発明は、哺乳動物前立腺特異的膜抗原をコードするDNAに相補的なアンチセンスDNAを含んでなるゲノムを有するトランスジェニック哺乳動物(ヒトを除く)であって、該アンチセンスDNAから転写されるアンチセンスmRNAが、前立腺特異的膜抗原をコードするmRNAと相補的であり、該前立腺特異的抗原をコードするmRNAとハイブリダイズして、それによりその翻訳を抑制するものであり、該アンチセンスDNAが、該アンチセンスmRNAに転写されるように位置することを特徴とする動物を提供する。
哺乳動物PSMまたはPSM'抗原の生理学的および行動的役割を解明する動物モデル系は、種々の技術により、PSMまたはPSM'抗原の発現が増加または減少されているか、あるいは該発現PSM抗原のアミノ酸配列が改変されているトランスジェニック動物を作製することにより生産される。これらの技術としては、例えば、1)哺乳動物PSMまたはPSM'抗原をコードするDNAの正常または突然変異体を、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクションまたは当該分野でよく知られている他の手段により適当な受精胚中へ挿入して、トランスジェニック動物を生産すること(16)、または2)ヒトまたは動物のこれらの遺伝子の突然変異または正常遺伝子と、トランスジェニック動物中の天然遺伝子座との相同的組換え(17)により、これらのPSMまたはPSM'抗原配列の発現調節または構造を改変させることなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。相同的組換え技術は当該分野でよく知られている。該相同的組換え技術により、天然遺伝子が挿入遺伝子で置換される。したがって、天然PSM抗原を発現できないが、例えば組換えにより該動物ゲノム中の天然PSM抗原と置き換わった挿入突然変異PSM抗原を発現して、該輸送体の発現減少を引き起こす動物の生産に、該相同的組換え技術は有用である。マイクロインジェクションは、該ゲノムに遺伝子を加えるが遺伝子を除去しないため、それ自身のPSM抗原及び加えられたPSM抗原を発現してPSM抗原の過剰発現を引き起こす動物の生産に有用である。
トランスジェニック動物の生産に利用できる1つの手段は、例えばマウスの場合には以下のとおりである。雌マウスを交配し、得られた受精卵をその輸卵管から切り取る。該卵を、Me培地(16)などの適当な培地中で保存する。当該分野で周知の方法により、哺乳動物PSM抗原をコードするDNAまたはcDNAをベクターから精製する。該DNAのコーディング領域と誘導プロモーターとを融合させて、該導入遺伝子の発現を調節するための実験的手段を得てもよい。その代わりにまたはそれに加えて、該導入遺伝子の組織特異的発現を可能にするために、組織特異的調節要素を該コーディング領域に融合してもよい。適当に緩衝化された溶液中の該DNAを、マイクロインジェクション針(これは、ピペットプラーを用いて毛細管から作製すればよい)中に入れ、注入すべき卵をデプレッションスライドに入れる。該針を該卵の前核中に挿入し、該DNA溶液を注入する。ついで該注入卵を偽妊娠マウス(妊娠を維持するために適当なホルモンにより刺激されているが、実際には妊娠していないマウス)の輸卵管中に移すと、そこで、該卵は子宮に進み、着床し、分娩まで発達する。前記のとおり、マイクロインジェクションは、該卵細胞中へDNAを挿入する唯一の方法ではなく、ここでは単に例示のために用いたにすぎない。
PSM抗原配列のもう1つの用途は、種々の哺乳動物中の1以上の相同遺伝子を単離することである。それらの1以上の遺伝子は、PSM配列からのプローブを用いて、種々の哺乳動物のcDNAまたはゲノムライブラリーを低い厳密性でスクリーニングすることにより単離することができる。同定された陽性クローンを、当業者によく知られているDNA配列決定技術によりさらに分析する。例えば、相同性プロービングにより、プロテインセリンキナーゼファミリーのメンバーを検出する。
本発明は、前立腺腫瘍細胞の転移能または前立腺腫瘍成長を抑制またはモジュレーションするか、または前立腺腫瘍細胞を除去する方法であって、5'調節要素に作動可能的に結合した前立腺特異的膜抗原をコードするDNA分子を対象の腫瘍細胞中へ導入し、この際、該前立腺特異的膜抗原の発現が該調節要素の制御下となるようにし、それにより、前立腺腫瘍細胞の転移能または前立腺腫瘍成長を抑制またはモジュレーションするか、または前立腺腫瘍細胞を除去することを特徴とする方法を提供する。該対象は哺乳動物、特にヒトであってもよい。
1つの実施態様では、5'調節要素に作動可能的に結合した前立腺特異的膜抗原をコードするDNA分子は、細胞または生物中に挿入された輸送ベクターの一部を形成する。さらに、該ベクターは、前立腺特異的膜抗原を複製し発現する能力を有する。前立腺特異的膜抗原をコードするDNA分子を、真核または原核細胞のゲノム中へ、または前立腺特異的膜抗原を含有および/または発現する宿主細胞へ組み込むことができる。
さらに、前立腺特異的膜抗原をコードするDNA分子を、細菌、ウイルス、真菌、動物またはリポソーム輸送ベヒクルにより導入してもよい。他の手段も利用可能であり、当業者に公知である。
さらに、プロモーターまたはエンハンサーに結合した前立腺特異的膜抗原をコードするDNA分子。いくつかのウイルスベクターは既に記載されており、これらには、ウイルス起源の種々のプロモーターおよび他の調節要素から作製されたベクターが含まれる。プロモーターは、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する短い配置の核酸配列よりなる。種々の認識配列と該同族体転写因子の細胞濃度との組み合わせが、特定の細胞型において遺伝子が転写される効率を決定する。
適当なプロモーターとしては、例えばウイルスプロモーターなどが挙げられる。ウイルスプロモーターとしては、アデノウイルスプロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、マロニー(Malony)ネズミ白血病ウイルスプロモーター、ネズミ肉腫ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターなどが挙げられる。
さらに、もう1つの適当なプロモーターは熱ショックプロモーターである。さらに、適当なプロモーターはバクテリオファージプロモーターである。適当なバクテリオファージプロモーターとしては、例えば、T7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、ラムダプロモーター、バキュロウイルスプロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、適当なプロモーターとしては、動物細胞プロモーター、例えばインターフェロンプロモーター、メタロチオネインプロモーター、免疫グロブリンプロモーターなどが挙げられる。真菌プロモーターも適当なプロモーターである。真菌プロモーターとしては、例えば、ADC1プロモーター、ARGプロモーター、ADHプロモーター、CYC1プロモーター、CUPプロモーター、ENO1プロモーター、GALプロモーター、PHOプロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、交配型因子プロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、植物細胞プロモーターおよび昆虫細胞プロモーターも、本明細書中に記載の方法に適している。
本発明は、前立腺腫瘍細胞の転移能または前立腺腫瘍成長を抑制またはモジュレーションするか、または前立腺腫瘍細胞を除去する方法であって、治療用DNAと結合し5'調節要素に作動可能的に結合した前立腺特異的膜抗原をコードするDNA分子を対象の腫瘍細胞中へ導入し、それにより、前立腺腫瘍細胞の転移能または前立腺腫瘍成長を抑制またはモジュレーションするか、または前立腺腫瘍細胞を除去することを特徴とする方法を提供する。該対象は哺乳動物、特にヒトであってもよい。
さらに、腫瘍細胞中へ導入する、5'調節要素に作動可能的に結合した前立腺特異的膜抗原をコードするDNA分子に結合した該治療用DNAは、サイトカイン、ウイルス抗原またはプロドラッグ活性化酵素をコードしていてもよい。他の手段も利用可能であり、当業者に公知である。
さらに本発明は、5'調節要素に作動可能的に結合した前立腺特異的膜抗原の制御下で哺乳動物前立腺特異的膜抗原をコードする哺乳動物核酸から単離されたDNA分子を含んでなる前立腺腫瘍細胞を提供する。
本明細書中で用いるDNA分子には、相補的DNA(cDNA)、合成DNAおよびゲノムDNAが含まれる。
本発明は、対象におけるヒト前立腺腫瘍成長または前立腺腫瘍細胞の刺激を予防するための治療用ワクチンであって、その有効量を医薬上許容しうる担体と共に該前立腺細胞へ投与し、それにより該対象における腫瘍成長または腫瘍細胞の刺激を予防することを特徴とするワクチンを提供する。他の手段も利用可能であり、当業者に公知である。
本発明は、対象の血行性微小転移腫瘍細胞を検出する方法であって、(A)前立腺特異的膜抗原プライマーまたは選択的にスプライシングされた前立腺特異的抗原プライマーを用いて、該対象の血液、骨髄またはリンパ節サンプル上でネスティッドポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をなうことと、(B)DNA配列決定およびサザン分析により微小転移を確認し、それにより該対象の血行性微小転移腫瘍細胞を検出することとを含んでなる方法を提供する。該対象は哺乳動物、特にヒトであってもよい。
該微小転移腫瘍細胞は前立腺癌であってもよく、該DNAプライマーは前立腺特異的抗原に由来するものであってもよい。さらに、該対象に有効量のホルモンを同時に投与して、前立腺特異的膜抗原の発現を増加させてもよい。さらに、増殖因子またはサイトカインを単独でまたはホルモンと組み合わせて投与してもよい。サイトカインには、トランスフォーミング増殖因子ベータ、上皮増殖因子(EGF)ファミリー、繊維芽細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、インシュリン様増殖因子、B−神経増殖因子、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、インターロイキン−1、IL−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン2、インターロイキン3、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、IL−6可溶性受容体、インターロイキン7、インターロイキン8、インターロイキン9、インターロイキン10、インターロイキン11、インターロイキン12、インターロイキン13、アンギオゲニン、ケモカイン、コロニー刺激因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、エリトロポエチン、インターフェロン、インターフェロンガンマ、白血病阻害因子、オンコスタチンM、プレイオトロフィン、分泌白血球プロテアーゼ阻害剤、幹細胞因子、腫瘍壊死因子、接着分子、可溶性腫瘍壊死因子(TNF)受容体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明は、トランスフェリンによる分裂促進応答を阻害する方法であって、5'調節要素に作動可能的に結合している前立腺特異的膜抗原をコードするDNA分子を腫瘍細胞中へ導入することを含んでなり、その遺伝子の発現が多細胞生物内の一定の病理学的効果と直接的に関連しており、該DNA分子の導入により、トランスフェリンによる分裂促進応答を阻害することを特徴とする方法を提供する。該腫瘍細胞は前立腺細胞であってもよい。
本発明は、対象の前立腺癌の進行を決定する方法であって、a)適当な前立腺組織サンプルを得ることと、b)該前立腺組織サンプルからRNAを抽出することと、c)該RNA上でRNアーゼプロテクションアッセイを行い、それにより、二重らせんRNA−RNAハイブリッドを形成させることと、d)該組織サンプル中のPSMおよびPSM'の量を検出することと、e)PSM/PSM'腫瘍指数を計算し、それにより該対象の前立腺癌の進行を決定することとを含んでなる方法を提供する。前記検出方法と組み合わせて、in-situハイブリダイゼーションを行ってもよい。
本発明は、対象の前立腺癌を検出する方法であって、(a)対象から前立腺組織サンプルを得ることと、(b)該組織サンプルを処理して、該前立腺組織サンプル中に存在する核酸分子を別々に回収することと、(c)得られた核酸分子を、ハイブリダイゼーション条件下で該組織サンプルと特異的にハイブリダイゼーションする能力を有する複数の一本鎖標識オリゴヌクレオチドプライマー対と接触させることと、(d)プライマー対がハイブリダイズするいずれかの核酸分子を増幅して、二本鎖増幅産物を得ることと、(e)いずれかの該二本鎖増幅産物を処理して、それから一本鎖核酸分子を得ることと、(f)いずれかの得られた一本鎖核酸分子を、それぞれ同じ標識を含有しハイブリダイゼーション条件下で該組織サンプルと特異的にハイブリダイゼーションする能力を有する複数の一本鎖標識オリゴヌクレオチドプローブと接触させることと、(g)いずれかの得られたハイブリッドを、マーカーが結合しており該標識プローブと複合体を特異的に形成する能力を有する抗体と接触させること(該複合体中に該プローブが存在する場合、複合体形成条件下)と、(h)対象中の前立腺癌を示すいずれかの得られた複合体の存在を検出することとを含んでなる方法を提供する。
本発明は、前立腺癌の診断または治療のために、前立腺組織における抗体に基づくPSMまたはPSM'の標的化を強化する方法であって、PSMまたはPSM'発現のアップレギュレーションを起こすのに十分な量のb−EGFを患者に投与することを含んでなる方法を提供する。
本発明は、前立腺癌の診断または治療のために、前立腺組織における抗体に基づくPSMまたはPSM'の標的化を強化する方法であって、PSMまたはPSM'発現のアップレギュレーションを起こすのに十分な量のTGFを患者に投与することを含んでなる方法を提供する。
本発明は、前立腺癌の診断または治療のために、前立腺組織における抗体に基づくPSMまたはPSM'の標的化を強化する方法であって、PSMまたはPSM'発現のアップレギュレーションを起こすのに十分な量のEGFを患者に投与することを含んでなる方法を提供する。
本発明は、PSMまたは選択的にスプライシングされたPSMの有効量と担体または希釈剤とを含んでなる医薬組成物を提供する。さらに本発明は、対象、好ましくはヒトに該医薬組成物を投与する方法を提供する。さらに本発明は、PSMまたは選択的にスプライシングされたPSMの一定量と担体または希釈剤とを含んでなる組成物を提供する。特に、本発明は食品添加物として使用してもよい。
該組成物は、剤形に適合する態様で治療的有効量を投与する。投与を要する有効成分の正確な量は臨床家の判断にゆだねられ、それぞれの対象に特有である。
適当な初回投与およびブースター投与の計画も特に限定されるものではないが、典型的には、初回投与の後、連続注射または他の投与により1時間以上の間隔での反復投与を行う。
本明細書中で用いる投与とは、対象へ投与する方法を意味する。そのような方法は当業者によく知られており、例えば、局所的、非経口的、経口的、静脈内、筋内、皮下またはエアロゾルによる投与などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。PSMの投与は、連続的または断続的に行ってもよい。
本発明の医薬処方または組成物は、固体、半固体または液体(例、懸濁液、エアロゾルなど)の剤形であってもよい。好ましくは、該組成物は、正確な投与量の一回投与に適した単位投与形で投与する。また該組成物は、所望の処方に応じて、動物またはヒトに対する投与のための医薬組成物を処方するのに一般に使用される賦形剤と定義される医薬上許容される無毒性担体または希釈剤を含んでいてもよい。該希釈剤は、該組み合わせの生物学的活性に影響を及ぼさないように選ぶ。そのような希釈剤としては、例えば、蒸留水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、ハンクス液などが挙げられる。さらに、該医薬組成物または処方は、他の担体、補助剤または無毒性、非治療的、非免疫原性安定剤などを含んでいてもよい。そのような希釈剤または担体の有効量は、成分の安定性または生物学的活性などの点で医薬上許容される処方を得るのに有効な量である。
本発明は、以下の実験の部の説明からさらに明らかとなるであろう。しかしながら、当業者であれば、記載されている特定の方法および結果は、後に続く請求の範囲でより完全に記載される本発明の例示にすぎないと容易に理解するであろう。
実験の詳細
実施例1
<材料および方法>:
該遺伝子をクローニングするためのアプローチには、免疫沈降法による該抗原の精製、およびポリメラーゼ連鎖反応(19, 20)で後で用いる縮重オリゴヌクレオチドプライマーの合成に使用するためのいくつかの内部ペプチドのミクロシークエンシングが必要とされた。部分cDNAをPCR生成物として増幅し、これを相同性プローブとして使用して、LNCaP(前立腺のリンパ節癌)細胞株cDNAプラスミドライブラリー(8)から完全長cDNA分子をクローニングした。
PSM抗原のウエスタン分析
低張性溶解の後、ショ糖密度勾配上で遠心分離を行うことにより、膜タンパク質を細胞から単離した(21)。10〜20μgのLNCaP、DU−145およびPC−3膜タンパク質を、10%SDS−PAGE分離ゲルおよび4%濃縮用ゲル中、9〜10ミリアンペアで16〜18時間電気泳動した。タンパク質をトランスファーバッファー(48mMトリス塩基、39mMグリシン、20%メタノール)中、25ボルト、4℃で一晩、PVDF膜(Millipore Corp.)にエレクトロブロットした。膜をTSB(0.15M NaCl、0.01Mトリス塩基、5%BSA)中で30分間、室温でブロッキングし、ついで10〜15μg/mlのCYT−356モノクローナル抗体(Cytogen Corp.)と共に2時間インキュベートした。ついで、膜を10〜15μg/mlのウサギ抗マウス免疫グロブリン(Accurate Scientific)と共に室温で1時間インキュベートし、ついで125I−プロテインA(AmershamTM)と共に1×10cpm/mlで室温でインキュベーションした。ついで膜を洗浄し、−70℃で12〜24時間オートラジオグラフィーに付した(図1)。
PSM抗原発現の免疫組織化学的分析
免疫組織化学的検出のアビジン−ビオチン法を用いて、PSM抗原発現に関してヒト組織切片および細胞株の両方を分析した(22)。クリオスタット切断前立腺組織切片(4〜6μm厚)をメタノール/アセトン中で10分間固定した。ガラススライド上で、50,000細胞/100μl/スライドを用いて細胞サイトスピン(cytospin)を作製した。あらゆる内因性ペルオキシダーゼ活性を除去するために、サンプルをPBS中1%過酸化水素で10〜15分間処理した。組織切片をPBS中で数回洗浄し、ついで適切なサプレッサー血清と共に20分間インキュベーションした。該サプレッサー血清を排出し、ついで該切片または細胞を、該希釈CYT−356モノクローナル抗体と共に1時間インキュベーションした。ついでサンプルをPBSで洗浄し、第2抗体(ウマまたはヤギ免疫グロブリン、1:200希釈、30分間)およびアビジン−ビオチン複合体(1:25希釈、30分間)と順次インキュベーションした。色素原としてDABを使用し、ついでヘマトキシリン対比染色し、封入した。それぞれの実験では、2通りの細胞サイトスピンおよび前立腺サンプルの凍結切片を対照として用いた。陽性対照として、前記と同じ方法に従い、抗サイトケラチンモノクローナル抗体CAM5.2を使用した。組織切片は、該細胞の少なくとも5%が免疫反応性を示せば、PSM抗原を発現するとみなした。得点系は、以下のとおりである:1=<5%、2%=5〜19%、3=20〜75%、および4=>75%陽性細胞。同質性対異質性は、陽性および陰性細胞を3〜5の高性能光学顕微鏡視域(400×)で評価し、100〜500個の細胞中の陽性細胞の割合を記録することにより計数した。免疫染色の強度は、1+〜4+の範囲で評価し、陽性対照に対して、1+は穏やか、2〜3+は適度、および4+は強力な免疫染色を表すこととした。
PSM抗原の免疫沈降法
100mmペトリ皿中の80%集密性のLNCaP細胞を、メチオニンを含まないRPMI培地中において2時間飢餓状態にし、ついで35S−メチオニンを100μCi/mlで加え、該細胞をさらに16〜18時間増殖させた。ついで、細胞を洗浄し、4℃で20分間インキュベーションしながら、1mlの溶解緩衝液(1%トリトンX−100、50mMヘペス,pH7.5、10%グリセロール、150mM MgCl、1mM PMSFおよび1mM EGTA)を加えることにより該細胞を溶解した。溶解物を、4℃で90分間、パンソルビンセル(PansorbinTM cells; CalbiochemTM)と混合することにより前清澄化した。ついで細胞溶解物を、4℃で3〜4時間、CYT−356抗体(Cytogen Corp.)およびRAM抗体(Accurate Scientific)に前結合させたプロテインAセファロース CL−4Bビーズ(PharmaciaTM )と混合した。ペトリ皿当たり3mgのビーズ当たり12μgの抗体を使用した。ついでビーズをHNTG緩衝液(20mMヘペス, pH7.5、150mM NaCl、0.1%トリトンX−100、10%グリセロールおよび2mMオルトバナジン酸ナトリウム)で洗浄し、β−メルカプトエタノールを含有するサンプル添加緩衝液中に再懸濁し、95℃で5〜10分間変性させ、10%SDS−PAGEゲルおよび4%濃縮用ゲル上、10ミリアンペアで一晩移動させた。ゲルをクーマシーブルーで染色し、酢酸/メタノールで脱染し、真空乾燥機中60℃で乾燥した。ついでゲルを−70℃で16〜24時間オートラジオグラフィーに付した(図2A〜2D)。
免疫沈降法およびペプチド配列決定
約6×10のLNCaP細胞を含有する8個の集密化したペトリ皿を用いて、免疫沈降のための前記方法を繰り返した。該免疫沈降産物をプールし、10%SDS−PAGEゲルの2つのレーンに添加し、9〜10ミリアンペアで16時間電気泳動した。タンパク質を、トランスファーバッファー中、75ボルト、4℃で2時間、ニトロセルロースBA−85膜(Schleicher and Schuell TM )上にエレクトロブロットした。膜をポンソーレッドで染色して、該タンパク質を可視化し、その100kDタンパク質のバンドを切り出し、可溶化し、トリプシンでタンパク質分解的に消化した。ついで、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)171C型を用いて、該消化サンプルのHPLCを行い、明らかな主ペプチドピ−クを選び、改変ポストリキッド(post liquid)アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)477A型タンパク質/ペプチドミクロシークエンサー上の改変エドマン分解により配列決定した(23)。該ペプチドのすべての配列決定データが本明細書中に含まれている。PSM抗原を免疫沈降法により精製し、エレクトロブロッティングによりPVDF膜(Millipore )へ移すことを含む同様の方法により、PSM抗原のアミノ末端を配列決定した。タンパク質を、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)477A型タンパク質/ペプチドシークエンサー上で分析したところ、該アミノ末端がブロックされていることが判明し、したがって、この技術により配列データを得ることはできなかった。
PSM抗原ペプチド配列:
2T17 #5 SLYES(W)TK(配列番号)
2T22 #9 (S)YPDGXNLPGG(g)VQR(配列番号)
2T26 #3 FYDPMFK(配列番号)
2T27 #4 IYNVIGTL(K)(配列番号)
2T34 #6 FLYXXTQIPHLAGTEQNFQLAK(配列番号)
2T35 #2 G/PVILYSDPADYFAPD/GVK(配列番号)
2T38 #1 AFIDPLGLPDRPFYR(配列番号)
2T46 #8 YAGESFPGIYDALFDIESK(配列番号)
2T47 #7 TILFAS(W)DAEEFGXX(q)STE(e)A(E)...(配列番号)
注:Xは、この位置で残基を同定できなかったことを意味する。大文字は同定結果を示すが、信頼性は低い。(小文字)は、存在するが非常に低レベルである残基を意味する。...は、配列が続くが検出限界未満であることを示す。
翻訳Genbankコンピューターデータベースの完全ホモロジー検索の後、これらのペプチド配列はすべてユニークであることが確認された。
縮重(degenerate)PCR
前記ペプチドの部分に対応する長さのセンスおよびアンチセンス5'−非リン酸化縮重オリゴヌクレオチドプライマーの17〜20ヌクレオチドを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)394A型DNAシンセサイザー上で合成した。これらのプライマーは、32〜144の縮重を有する。使用したプライマーを以下に示す。該ペプチド中の下線を付したアミノ酸は、プライマー設計で使用した残基を示す。
ペプチド3: FYDPMFK(配列番号 )
PSMプライマー「A」 TT(CまたはT) - TA (CまたはT) - GA (CまたはT) - CCX - ATG - TT (配列番号 )
PSMプライマー「B」 AAC -ATX - GG(AまたはG) - TC(AまたはG) - TA(AまたはG) - AA(配列番号 )
プライマーAはセンスプライマーであり、Bはアンチセンスである。縮重は32倍である。
ペプチド4: IYNVIGTL(K)(配列番号6)
PSMプライマー「C」 AT(TまたはCまたはA) - TA(TまたはC) - AA(TまたはC) - GTX - AT(TまたはCまたはA) - GG(配列番号 )
PSMプライマー「D」 CC(AまたはTまたはG) - ATX - AC(GまたはA) - TT(AまたはG) - TA(AまたはGまたはT) - AT(配列番号 )
プライマーCはセンスプライマーであり、Dはアンチセンスプライマーである。縮重は144倍である。
ペプチド2: G/PVILYSDPADYFAPD/GVK(配列番号 )
PSMプライマー「E」 CCX - GCX - GA(TまたはC) - TA(TまたはC) - TT(TまたはC) - GC(配列番号 )
PSMプライマー「F」 GC(GまたはA) - AA(AまたはG) - TA(AまたはG) - TXC - GCX - GG(配列番号 )
プライマーEはセンスプライマーであり、Fはアンチセンスである。縮重は128倍である。
ペプチド6: FLYXXTQIPHLAGTEQNFQLAK(配列番号 )
PSMプライマー「I」 ACX - GA(AまたはG) - CA(AまたはG) - AA(TまたはC) - TT(TまたはC) - CA(AまたはG) - CT(配列番号 )
PSMプライマー「J」 AG - (TまたはC)TG - (AまたはG)AA - (AまたはG)TT - (TまたはC)TG - (TまたはC)TC - XGT(配列番号 )
PSMプライマー「K」 GA(AまたはG) - CA(AまたはG) - AA(TまたはC) - TT(TまたはC) CA(AまたはG) - CT(配列番号 )
PSMプライマー「L」 AG - (TまたはC)TG - (AまたはG)AA - (AまたはG)TT - (TまたはC)TG - (TまたはC)TC(配列番号22)
プライマーIおよびKはセンスプライマーであり、JおよびLはアンチセンスである。IおよびJは128倍の縮重を有し、KおよびLは32倍の縮重を有する。
ペプチド7: TILFAS(W)DAEEFGXX(q)STE(e)A(E)...(配列番号 )
PSMプライマー「M」 TGG - GA(TまたはC) - GCX - GA(AまたはG) - GA(AまたはG) - TT(CまたはT) - GG(配列番号 )
PSMプライマー「N」 CC - (GまたはA)AA - (TまたはC)TC - (TまたはC)TC - XGC - (AまたはG)TC - CCA(配列番号 )
PSMプライマー「O」 TGG - GA(TまたはC) - GCX - GA(AまたはG) - GA(AまたはG) - TT(配列番号 )
PSMプライマー「P」 AA - (TまたはC)TC - (TまたはC)TC - XGC - (AまたはG)TC - CCA(配列番号 )
プライマーMおよびOはセンスプライマーであり、NおよびPはアンチセンスである。MおよびNは64倍の縮重を有し、OおよびPは32倍の縮重を有する。
パーキンエルマー(Perkin-Elmer)480型DNAサーマルサイクラー(thermal cycler)を用いて縮重PCRを行った。該PCR用のcDNA鋳型は、オリゴdTクロマトグラフィー(Collaborative Research)の標準的な方法により単離済みのLNCaP mRNAから調製した。該cDNA合成は以下のとおりに行った。
4.5μl LNCaPポリA+ RNA(2μg)
1.0μl オリゴdTプライマー(0.5μg)
4.5μl dH
10μl
68℃×10分間のインキュベーション。
氷上×5分間で急速冷却。
添加:
4μl 5×RT緩衝液
2μl 0.1M DTT
1μl 10mM dNTPs
0.5μl RNアシン(Promega)
1.5μl dH
19μl
37℃で2分間インキュベーション。
1μlのスーパースクリプト(SuperscriptTM )逆転写酵素
(GibcoTM -BRL)
37℃で1時間インキュベーション。
30μl dHOを添加。
PCR反応毎に2μlを使用。
縮重PCR反応は、アニーリング温度、Mg++濃度、プライマー濃度、緩衝液組成、伸長回数およびサイクル数を変化させることにより最適化した。最適なサーマルサイクラープロフィールは、94℃×30秒の変性、45〜55℃で1分間(使用するプライマーの平均Tmに依存する)のアニーリング、および72℃で2分間の伸長であった。
5μl 10×PCR緩衝液*
5μl 2.5mM dNTP混合物
5μl プライマー混合物(センスおよびアンチセンスプライマーのそれぞれの0.5〜1.0μgを含有)
5μl 100mM β−メルカプトエタノール
2μl LNCaP cDNA鋳型
5μl 25mM MgCl(2.5mM 最終)
21μl dH
2μl 希釈Taqポリメラーゼ(0.5U/μl)
50μlの合計容量
管に60μlの軽鉱油を重層し、30サイクル増幅した。各サンプル5μlを2〜3%アガロースゲル上で電気泳動し、ついで臭化エチジウムで染色し写真撮影することにより、PCR生成物を分析した。
* 10×PCR緩衝液
166mM NHSO
670mM トリス, pH8.8
2mg/ml BSA
PCR生成物を示す代表的な写真を図5に示す。
PCR生成物のクローニング
これらのPCR生成物をさらに分析するために、「TAクローニング」(InvitrogenTM Corp.)を用いてこれらの産物を適切なプラスミドベクター中にクローニングした。ここで用いたクローニング戦略では、伸長するT残基を該挿入部位に有するプラスミドベクター中にPCR生成物を直接連結するが、これは、伸長するA残基をTaqポリメラーゼが該PCR生成物の末端に残すという事実を利用している。該連結混合物をコンピテントな大腸菌(E. coli)細胞中に形質転換し、得られたコロニーを成長させ、プラスミドDNAをアルカリ溶解法(24)により単離し、制限分析によりスクリーニングした(図6A〜6B)。
PCR生成物のDNA配列決定
ついでPCR生成物のTAクローンを、シークエナーゼ(U.S. Biochemical)を用いるジデオキシ法(25)により配列決定した。各プラスミドDNA3〜4μgをNaOHで変性させ、エタノール沈殿させた。製造業者の推奨に従い、35S−ATPを用いて標識反応を行い、同じプロトコールに従い該反応を停止した。ついで配列決定産物を、IBI配列決定装置を用いて6%ポリアクリルアミド/7M 尿素ゲル上で分析した。ゲルを120ワットで2時間泳動させた。電気泳動後、該ゲルを10%メタノール/10%酢酸中で15〜20分間固定し、ワットマン3MM紙に移し、バイオラッド(BioradTM )真空乾燥機中、80℃で2時間乾燥した。ついでゲルを室温で16〜24時間オートラジオグラフィーに付した。該PCR生成物が正しいクローンであるか否かを判定するために、該分子の5'および3'末端で得られた配列を、正しいプライマー配列、および該プライマーの設計で未使用のペプチド部分に対応する隣接配列に関して分析した。
IN−20は正しく、PSM遺伝子の部分cDNAを示すことが確認された。このPCR反応では、IおよびNプライマーを使用した。Iプライマーから読み取れるDNA配列は、
ACG GAG CAA AAC TTT CAG CTT GCA AAG(配列番号)
T E Q N F Q L A K (配列番号)
であった。下線を付したアミノ酸は、このセンスプライマーを設計するのに使用したペプチド6の一部分であり、該ペプチド内に存在するアミノ酸と合致する残りのアミノ酸は、該分子のこの末端が正しいタンパク質(PSM抗原)を示すことを証明するものである。
該分子のもう一方の末端を、Nプライマーから読み取ることにより分析したところ、該アンチセンス配列は、
CTC TTC GGC ATC CCA GCT TGC AAA CAA AAT TGT TCT(配列番号)
であり、センス(相補的)配列は、
AGA ACA ATT TTG TTT GCA AGC TGG GAT GCC AAG GAG(配列番号)
R T I L F A S W D A E E (配列番号)
であった。ここで下線を付したアミノ酸は、プライマーNを作製するのに使用したペプチド7の一部分を示す。IN−20クローン中、このプライマーの上流のアミノ酸はすべて正しく、ペプチド7中に見いだされるアミノ酸と合致する。さらに、DNA配列決定を行った結果、該陽性クローン内のDNA配列中の他のPSMペプチドの存在を同定することが可能となった。
ゲンバンク(Genbank)コンピューターデータベース上でスクリーニングしたところ、この部分cDNAのDNA配列はユニークであることが判明した。
cDNAライブラリーの構築および完全長PSMcDNAのクローニング:
スーパースクリプト(SuperscriptTM )プラスミド系(BRLTM -Gibco)を用いて、LNCaP mRNAからcDNAライブラリーを構築した。該ライブラリーを、コンピテントなDH5−α細胞を用いて形質転換し、LBおよび100μg/mlカルベニシリンを含有する100mmプレート上に播種した。プレートを37℃で一晩成長させ、ニトロセルロースフィルターにコロニーを移した。グルンシュタイン(Grunstein)およびホグネス(Hogness)(26)に従い、フィルターを加工し、ランダムプライミング(27)により32P−dCTPで放射能標識した1.1kbの部分cDNA相同性プローブを用いてスクリーニングした。8個の陽性コロニーを得、DNA制限および配列決定分析に付したところ、それは、PSM抗原をコードする完全長cDNA分子を示すことが判明した。図7に示すのは、該ライブラリー中に提示されるcDNA分子のサイズを示すオートラジオグラムである。図8には、いくつかの完全長クローンの制限分析を示す。図9は、図8中のサンプルのプラスミドサザン分析であり、それらがすべて1.1kb部分cDNAプローブとハイブリダイゼーションすることを示す。
該cDNAおよび該抗原は共に、ゲンバンク(Genbank)コンピューターデータベースによりスクリーニングされており(ヒトゲノムプロジェクト)、ユニークであることが判明している。
PSM遺伝子発現のノーザン分析
PSM遺伝子のノーザン分析(28)により、発現は前立腺および前立腺癌に限定されることが示された。
RNAサンプル(全RNA10μgまたはポリA+ RNA2μgのいずれか)を変性させ、1.1%アガロース/ホルムアルデヒドゲル中、60ミリアンペアで6〜8時間電気泳動した。ついで、10×SSC中、ポシ・ブロッター(Posi-blotter)(StratageneTM)を用いる圧力ブロッティングにより、RNAをナイトラン(NytranTM)ナイロン膜(Schleicher and SchuellTM)に移した。RNAを、ストラタリンカー(Stratalinker)(Stratagene TM)を用いて膜へクロスリンキングし、ついで真空オーブン中80℃で2時間焼いた。ブロットを、プレハイブリダイゼーション溶液(BRLTM)中、65℃で2時間プレハイブリダイズし、ついで、1〜2×10cpm/mlの32P−標識ランダムプライムドcDNAプローブを含有するハイブリダイゼーション緩衝液(BRLTM)中、16時間ハイブリダイズした。膜を、1×SSPE/1%SDS中で2回、0.1×SSPE/1%SDS中で2回洗浄(42℃)した。ついで、膜を風乾し、−70℃で12〜36時間オートラジオグラフィーに付した。
ヒト前立腺組織におけるPSM遺伝子発現のPCR分析
15個のヒト前立腺サンプル上でPCRを行って、PSM遺伝子発現を測定した。それぞれ正常前立腺組織、良性前立腺過形成および前立腺癌からの5個のサンプルを使用した(組織はMSKCC Pathology Departmentにより確認された)。
第IV節に既に記載したとおりに、各サンプルからの全RNAの10μgを逆転写してcDNA鋳型を作製した。使用したプライマーは、1.1kbの部分cDNA(IN−20)の5'および3'末端に対応し、したがって、増幅されたバンドの予想サイズは1.1kbである。該プライマーのTmは64℃であるため、PCRプライマーを60℃でアニーリングさせた。第IV節に既に記載しているのと同じ条件を用いて、35サイクルでPCRを行った。
LNCaPおよびH26 − RasトランスフェクションLNCaP(29)が陽性対照として、DU−145が陰性対照として含まれていた。明らかに、14/15個のサンプルが1.1kbのバンドを増幅し、したがって該遺伝子を発現した。
<実験結果>
100kDのPSM抗原をコードする遺伝子を同定した。完全なcDNA配列を配列番号1に示す。その核酸配列の真下に、推定翻訳アミノ酸配列を示す。該アミノ酸の総数は750である(配列番号2)。該推定タンパク質配列の親水性を図16:1〜11に示す。図17A〜17Cに示すのは、親水性の最高点を有する3つのペプチドである。それらは、Asp-Glu-Leu-Lys-Ala-Glu(配列番号)、Asn-Glu-Asp-Gly-Asn-Glu(配列番号)およびLys-Ser-Pro-Asp-Glu-Glyである。
クライン(Klein), カネイシ(Kanehisa)およびデリシ(Delisi)の方法により、特異的膜伸長ドメインを同定する。該配列は、第19アミノ酸から第44アミノ酸:Ala-Gly-Ala-Leu-Val-Leu-Aal-Gly-Gly-Phe-Phe-Leu-Leu-Gly-Phe-Leu-Phe(配列番号)である。
この推定膜伸長ドメインをPC Gene(コンピューターソフトウェアプログラム)上で計算した。前立腺癌の標的化およびイメージングに使用する抗体を設計するのに助けとなるPSM抗原の内部および外部膜ドメインを予想することが、このデータから可能となる。
PSM抗原配列をジーンバンク(GeneBank)の他の公知配列と比較したところ、該PSM抗原配列とトランスフェリン受容体配列との間の相同性が見いだされた。該データを図18に示す。
<実験の考察>
PSM抗原の潜在的用途
1.腫瘍検出:
顕微鏡的:
種々の抗原に対するプローブを使用することにより、はっきりと腫瘍を明示することができる。前立腺癌には、PSM抗原プローブが有益と考えられる。したがって、PSMは診断用に使用でき、本出願人らがクローニングしたcDNAのコーディング領域由来のセンス(対照)およびアンチセンスプローブを用いるin-situハイブリダイゼーションにより、これを顕微鏡的レベルで行うことができる。これは、局所的前立腺外拡張、リンパ節、骨または他の転移部位の関連性の評価に使用することができる。骨転移は前立腺癌の大きな問題であるため、特に病期分類のためには、転移拡張の初期検出が必要である。いくつかの腫瘍では、骨髄中の腫瘍細胞が検出されれば厳しい予後が予想され、転移に向けた介入を試みることが提案される。骨髄吸引液または切片におけるPSM抗原発現の検出から、そのような初期情報が得られるかもしれない。PCR増幅またはin-situハイブリダイゼーションを行ってもよい。RT−PCRにより、血行性転移による循環中の細胞を検出することができる。
2.抗原部位の同定
該抗原のcDNAを知ることにより、該抗原の特異的アミノ酸配列に対して用いる抗体の産生用の優れた抗原として機能する領域が同定される。そのような配列は、PSM抗原の外部、膜または内部などの種々の領域に存在するかもしれない。これらの特異的抗体を産生させれば、該抗原を免疫組織化学的に同定できるであろう。したがって、これらの誘導抗体を、特に、免疫診断に最も有用なパラフィン固定切片および凍結切片中で働く抗体用に開発できるであろう。
3.制限断片長多型およびゲノムDNA
制限断片長多型(RFLPS)は、発癌イニシエーションおよびプロモーション中に生じる遺伝的損傷の進行を示すのに有用であることが判明している。PSM配列制限マッピング中の変化が前立腺腫瘍のリスクまたは悪性潜在性または進行の素因の証拠を与えることが、PFLP分析から示されるかもしれない。
PSM抗原の染色体位置により、PSM抗原遺伝子は、染色体分析のための有用な染色体位置マーカーとして機能するかもしれない。
4.血清
抗原特異的抗体を産生させることにより、該抗原または選択抗原断片が血清中に出現すれば、それらは転移疾患の存在についての血清マーカーを与え、単独または他の前立腺特異的マーカーと併用して有用と考えられる。
5.イメージング
エキソフェイシャル(exofacial)表面上のタンパク質の大部分を有する膜伸長タンパク質の特徴を該抗原が有することが該cDNA配列から暗示されるため、該腫瘍に露出し該腫瘍に特異的なペプチド断片に対する抗体、特にモノクローナル抗体により、転移腫瘍または前立腺切除術または照射後の残存腫瘍の腫瘍イメージング局所拡張が得られるかもしれない。コーディング領域を知ることによりモノクローナル抗体の産生が可能となり、これらを併用して最大のイメージング目的を達成することができる。該抗原はトランスフェリン受容体とcDNA分析に基づく類似性(約54%)を共有するため、この抗原に対する特異的な正常リガンドが存在し、該リガンドの同定から別のイメージング手段が得られるかもしれない。
6.リガンドの単離
PSM抗原は、それに結合する正常リガンドの単離に使用することができる。特異性に依存するこれらのリガンドを標的化に使用してもよいし、あるいは、それらの血清レベルは病態の予想に有用かもしれない。PSMに対する正常リガンドが担体分子だとわかれば、PSMを治療目的でそのリガンドに結合させるのに用いて(鉄キレート物質のように)、循環から該リガンドを除去する助けとなるかもしれない。該リガンドが腫瘍成長または転移を促進するならば、可溶性PSM抗原を与えることにより、該リガンドが前立腺に結合できなくなるであろう。PSM抗原構造の知見は、同じ目的で機能しうるリガンドに結合する小断片を得るのに有用であろう。
7.治療的用途
a)リガンド。PSM抗原のcDNAの構造がトランスフェリン受容体と構造的相同性を共有する(核酸レベルで54%)という知見は、トランスフェリン様であるかそうでない受容体に対する内因性リガンドが存在する可能性を暗示する。トランスフェリンは、トランスフェリン受容体に結合した後、細胞中へ鉄を輸送するリガンドだと考えられている。しかしながら、アポトランスフェリンは、トランスフェリン受容体を発現するいくつかの細胞の増殖因子だと報告されている(30)。トランスフェリンがこの抗原のリガンドなのか、あるいは、何らかの他のリガンドがこのリガンドに結合するのかは明らかではない。リガンドが同定されれば、該リガンドにより金属イオン(鉄、亜鉛など)などの特異的物質を該腫瘍中へ運ばせてもよく、したがって、該リガンドは、毒性物質(放射性または細胞障害性化学物質、すなわち毒素、例えばリシンまたは細胞障害性アルキル化剤または細胞障害性プロドラッグ)を該腫瘍へ輸送する手段として使用しうる。
前立腺癌の主要転移部位は骨である。骨および骨支質はトランスフェリンに富む。この微環境が骨における前立腺転移に対してまさに「温床」を与えるのだ、と最近の研究は示唆している(31)。これが付着をも促進させる可能性があり、この能力の抑制因子が、骨への前立腺転移および骨における前立腺転移成長を減少させると考えられる。
新規抗原(乳癌の悪性表現型の癌遺伝子およびマーカーだと考えられているもの)に対するリガンドは、乳癌細胞の分化を誘導するように作用し、したがって該疾患のプロモーターというより治療剤として作用することが判明している。天然リガンドまたは抗体によるPSMの右領域へのリガンド結合が、同様の機能を果たすかもしれない。
細胞障害剤と結合したPSM抗原に対する抗体は、前立腺癌細胞を除去するのに有用である。腫瘍細胞ではトランスフェリン受容体の発現レベルが増加する傾向があるため(32)、毒素結合体を有するトランスフェリン受容体抗体は、いくつかの腫瘍細胞に対して細胞障害性である。トランスフェリン受容体は、エンドサイトーシスにより該細胞中へ分子を取り込む。抗体と薬物との組み合わせは毒性を有することがある。トランスフェリン結合毒素は毒性を有することがある。
b)細胞障害剤と結合したPSM抗原に対する抗体は、前立腺癌細胞を除くのに有用である。該細胞障害剤は、当業者に公知の放射性同位体であっても毒素であってもよい。該抗体と該毒素または放射性同位体との結合は、化学的であってもよい。直接結合毒素としては、例えば、ドキソルビシン、クロラムブシル、リシン、シュードモナス外毒素などが挙げられる。あるいは、半分はPSMに対する特異性、および残りの半分は該毒素に対する特異性を有するハイブリッド毒素を産生させてもよい。そのような二価分子が該腫瘍に結合し、残りの半分が細胞障害性を該腫瘍へ輸送するか、細胞障害性リンパ球に結合してこれを活性化するようにように作用しうる(例えば、T−T受容体複合体に対する結合)。また、必要な特異性の抗体をT細胞中にクローニングすることができ、該T細胞受容体(TcR)の免疫グロブリンドメインを置換し、所望のMAb重および軽鎖中にクローニングし、UhおよびUL遺伝子セグメントをαおよびβTCR鎖の定常領域でスプライシングし、そしてこれらのキメラAb/TcR遺伝子を患者のT細胞にトランスフェクションし、これらの雑種細胞を増殖させ、それらを該患者に注入する(33)。標的に対する組織特異的抗原およびそのような標的に特異的なMAbの産生についての詳細な知見は、これを利用可能なアプローチとするのに有用である。PSM抗原コーディング領域から、完全コーディング領域の知見が得られるため、いくつかの抗体を産生させて、ついでそれを併用して、追加的または相乗的な抗腫瘍作用を得ることが可能である。該抗体は、無毒性プロドラッグを腫瘍部位で活性化しうる酵素[例えば、マウスにおけるAb−カルボキシペプチダーゼ、4−(ビス(2クロロエチル)アミノ)ベンゾイル−α−グルタミン酸およびその活性親薬物]に結合させることができる(34)。
遺伝子組換え体TP−40などの毒性遺伝的キメラを産生させることも可能である。TP−40は、TGF−アルファおよびシュードモナス外毒素の毒性部分からのcDNAを有する。該ハイブリッドのTGFおよび一部が上皮増殖因子受容体(EGFR)に結合し、シュードモナス部分が酵素的に該細胞中に取り込まれ、タンパク質合成を行うリボソームの能力を不活性化して、細胞死を引き起こすのである。
さらに、PSM抗原に対するリガンドが同定されたら、毒素を該リガンドへ化学的に結合させることができる。そのような結合リガンドが治療的に有用な場合もある。該毒素としては、例えば、ダウノマイシン、クロラムブシル、リシン、シュードモナス外毒素などが挙げられる。あるいは、該リガンドのcDNAを該毒素のcDNAに結合することにより、キメラ構築物を作製することができる。そのような毒素の一例は、TGFαおよびシュードモナス外毒素である(35)。
8.その他
PSM抗原は他の用途を有する可能性もある。前立腺は亜鉛に富むことがよく知られており、該抗原がこれに関連する機能または他の生物的機能を付与すれば、PSM抗原は、良性過形成増殖および/または前立腺炎などの他の前立腺病変の治療で有用かもしれない。
精製PSM抗原を得ることができるため、該精製PSM抗原をビーズに結合させ、それを標準的な「アフィニティー」精製と同様に使用することができる。ビーズに結合したPSM抗原と共にインキュベーションするのに、血清、尿または他の生物学的サンプルを使用することができる。該ビーズを十分に洗浄し、ついで、塩またはpH勾配で溶出させてもよい。溶出物質をSDSゲルで精製し、ミクロシークエンシング用サンプルとして使用する。該配列を他の公知タンパク質と比較してユニークであれば、該リガンドを得るのに縮重PCRの技術を用いることができる。該リガンドの親和性は、一旦わかれば、標準的なプロトコールにより決定される(15)。
参考文献1
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実施例2:
前立腺特異的膜抗原の発現
PSMをコードする2.65kbの相補的DNAをクローニングした。7E11−C5.3抗体を用いてPSM発現に関してLNCaP、DU−145およびPC−3前立腺癌細胞株を免疫組織化学的分析すると、LNCaP細胞では強い染色が示され、DU−145およびPC−3細胞では共に発現が検出されない。2.65kbの完全長PSM cDNAのインビトロ転写/翻訳共役により、PSMの予想ポリペプチド分子量に相当する84kDaのタンパク質が得られる。膵臓イヌミクロソームによるこのタンパク質の翻訳後修飾により、予想される100kDaのPSM抗原が得られる。PC−3細胞を真核発現ベクター中の完全長PSM cDNAでトランスフェクションした後、本出願人は、7E11−C5.3モノクローナル抗体を用いるウエスタン分析により、PSM糖タンパク質の発現を検出する。ヒト組織におけるPSM mRNAの発現はほとんど完全に前立腺特異的であることが、リボヌクレアーゼプロテクション分析により示された。PSM発現は無ホルモン状態で最高であるらしく、ステロイドによりホルモン的にモジュレーションされ、DHTはヒト前立腺癌細胞株LNCaPにおけるPSM発現を8〜10倍ダウンレギュレーションし、テストステロンはPSMを3〜4倍ダウンレギュレーションし、コルチコステロイドは有意な効果を示さない。正常および悪性前立腺組織は一貫して高いPSM発現を示すが、良性前立腺過形成では不均一であり、時にはPSMの発現が無い。ヌードマウスの皮下に正所性移植し成長させたLNCaP腫瘍は、PSMを豊富に発現し、PSM発現の調節およびモジュレーションの研究のための優れたインビボモデル系を提供する。
<材料および方法>
細胞および試薬
LNCaP、DU−145およびPC−3細胞株を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手した。これらの細胞株の樹立および特徴づけに関する詳細は、すでに公開されている(5A, 7A, 8A)。特に示さない限り、LNCaP細胞は、L−グルタミン、非必須アミノ酸および5%ウシ胎仔血清(Gibco-BRL, Gaithersburg, MD)で補足したRPMI 1640培地中、COインキュベーター中37℃で成長させた。DU−145およびPC−3細胞は、10%ウシ胎仔血清で補足した最少必須培地中で成長させた。すべての細胞培地は、MSKCC メディア・プレパレーション・ファシリティー(Media Preparation Facility)から入手した。特に示さない限り、制限および修飾酵素はGibco-BRLから購入した。
PSMの免疫組織化学的検出
検出のアビジン−ビオチン法を用いて、PSM抗原発現に関して前立腺癌細胞株を分析した(9A)。ガラススライド上で、5×10細胞/100ul/スライドを用いて細胞サイトスピン(cytospin)を作製した。スライドをPBSで2回洗浄し、ついで適当なサプレッサー血清と共に20分間インキュベーションした。該抑制血清を排出し、ついで該細胞を、希釈7E11−C5.3(5g/ml)モノクローナル抗体と共に1時間インキュベーションした。ついでサンプルをPBSで洗浄し、第2抗体と30分間、そしてアビジン−ビオチン複合体と30分間、順次インキュベーションした。色素原および発色現像用にジアミノベンジジンを使用し、ついでヘマトキシリン対比染色し、封入した。それぞれの実験では、2通りの細胞サイトスピンを対照として用いた。陽性対照として、前記と同じ方法に従い、抗サイトケラチンモノクローナル抗体CAM5.2を使用した。ヒトEJ膀胱癌細胞を陰性対照として使用した。
PSM抗原のインビトロ転写/翻訳
プラスミドpSPORT 1(Gibco-BRL)中に完全長2.65kb PSM cDNAを含有するプラスミド55Aを、プロメガ(Promega)TNT系(Promega Corp. Madison, WI)を用いてインビトロで転写した。ウサギ網状赤血球溶解物、メチオニンを欠くアミノ酸混合物、緩衝液および35S−メチオニン(Amersham)を含有する反応混合物中のcDNAへ、T7 RNAポリメラーゼを加え、30℃で90分間インキュベーションした。該反応混合物(Promega Corp. Madison、 WI.)へ膵臓イヌミクロソーム(Pancreatic canine microsomes)を加えることにより、得られたタンパク質の翻訳後修飾を行った。タンパク質産物の分析を行うために、該タンパク産物を10%SDS−PAGEゲル上で電気泳動し、ついで、製造業者の指示に従いアンプリファイ・オートラジオグラフィー・エンハンサー(Amersham, Arlington Heights, IL.)で処理し、真空乾燥機中80℃で乾燥した。ハイパーフィルム(Hyperfilm)MP(Amersham)を用いて、ゲルを−70℃で一晩オートラジオグラフィーに付した。
PC−3細胞中へのPSMのトランスフェクション
pREP7 真核発現ベクター(Invitrogen, San Diego, CA.)へ、完全長PSM cDNAをサブクローニングした。キアゲンマキシ−プレップ(Qiagen maxi-prep)プラスミド単離カラム(Qiagen Inc., Chatsworth, CA.)を用いて、形質転換DH5−α細菌(Gibco-BRL)からプラスミドDNAを精製した。精製プラスミドDNA(6〜10g)を900ulのオプティメン(Optimen)培地(Gibco-BRL)で希釈し、900lのオプティメン培地で既に希釈されている30ulのリポフェクチン試薬(Gibco-BRL)と混合した。オプティメン培地中の40〜50%集密性PC−3細胞のT−75フラスコへ、この混合物を加えた。24〜36時間後、細胞をトリプシン処理し、10%ウシ胎仔血清および1mg/mlのハイグロマイシンB(Calbiochem, La Jolla, CA.)で補足したRPMI 1640培地を含有する100mm皿に落とした。使用したハイグロマイシンBの用量は、時間経過/用量反応細胞毒性アッセイにより、前もって決定しておいた。離散コロニーが出現するまで、4〜5日毎に培地およびハイグロマイシンBを変えながら、細胞をこの培地中で2〜3週間維持した。6mmのクローニングシリンダーを用いて、コロニーを単離し、同じ培地中に広げた。対照として、PC−3細胞もpREP7プラスミド単独でトランスフェクションした。該トランスフェクション細胞からRNAを単離し、RNアーゼプロテクション分析(後記)およびノーザン分析の両方によりPSM mRNA発現を検出した。
PSM発現のウエスタンブロット検出
既に記載されているとおりに(10A)、粗製タンパク質溶解物をLNCaP、PC−3およびPSM−トランスフェクションPC−3細胞から単離した。公開されている方法(10A)に従い、LNCaP細胞膜も単離した。BioRadタンパク質試薬キット(BioRad, Richmond, CA.)を用いるブラッドフォード(Bradford)法により、タンパク質濃度を定量した。変性後、20μlのタンパク質を10%SDS−PAGEゲル上、25mAで4時間電気泳動した。ゲルをイモビロン(Immobilon)P膜(Millipore, Bedford, MA.)に4℃で一晩エレクトロブロットした。膜を0.15M NaCl/0.01M トリス−HCl(TS)および5%BSAでブロッキングし、ついで7E11−C5.3モノクローナル抗体(10μg/ml)と共に1時間インキュベーションした。ブロットを0.15M NaCl/0.01M トリス−HCl/0.05%トリトン−X100(TS−X)で4回洗浄し、10μg/mlの濃度のウサギ抗マウスIgG(Accurate Scientific, Westbury, N.Y.)と共に1時間インキュベーションした。
ついでブロットをTS−Xで4回洗浄し、百万cpm/mlの濃度の125I−プロテインA(Amersham, Arlington Heights, IL.)で標識した。ついでブロットをTS−Xで4回洗浄し、ワットマン3MM紙上で乾燥し、ついで、ハイパーフィルム(Hyperfilm)MP(Amersham)を用いて−70℃で一晩オートラジオグラフィーに付した。
ヌードマウスにおける正所性の皮下LNCaP腫瘍成長
0.25%トリプシンおよび0.02%EDTAの溶液に1分間さらすことにより、LNCaP細胞を亜密集的(sub-confluent)培養から得た。細胞を、5%ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640培地へ再懸濁し、マトリゲル(Matrigel)(Collaborative Biomedical Products, Bedford, MA.)またはカルシウムおよびマグネシウムを含まないハンクス均衡塩類溶液(HBSS)のいずれかで洗浄し希釈した。トリパンブルー排除により90%を越える生存度を有する単細胞懸濁液のみをインビボ注射に使用した。4〜6週齢の雄の無胸腺Swiss(nu/nu)ヌードマウスをメモリアル・スロアン・ケタリング・キャンサー・センター・アニマル・ファシリティー(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center Animal Facility)から入手した。皮下腫瘍細胞注射には、28ゲージ針が付いている使い捨てシリンジを用いて、0.2mlのマトリゲルに再懸濁した百万個のLNCaP細胞を各マウスの後肢に注射した。正所性注射のために、まずペントバルビタールの腹腔内注射によりマウスを麻酔し、背臥位で置いた。腹部をベタジン(Betadine)で洗浄し、前立腺を正中切開により露出させた。0.1ml中の250万個のLNCaP腫瘍細胞を、1mlの使い捨てシリンジおよび28ゲージ針を用いて、いずれかの後葉に直接注射した。マトリゲルの存在下および不存在下でLNCaP細胞を注射した。オートクリップ・ウーンド・クリップス(Autoclip wound clips)(Clay Adams, Parsippany, N.J.)を用いて、一層で腹部を閉じた。腫瘍は6〜8週間で収穫し、メモリアル・スロアン・ケタリング・キャンサー・センター・パソロジー・デパートメント(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center Pathology Department)のメンバーにより組織学的に確認され、後続のRNA単離のために液体窒素中で凍結した。
RNA単離
標準的な技術(11, 12)により、およびRNAzol B(Cinna/Biotecx, Houston, TX.)を用いて、全細胞RNAを細胞および組織から単離した。RNA濃度および質を、ベックマン(Beckman)DU 640分光光度計でUV分光法により、およびゲル分析により評価した。ヒト組織全RNAサンプルは、クローンテック・ラボラトリーズ・インコーポレーティッド(Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, CA.)から購入した。
リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ
PSM cDNAの一部をプラスミドベクターpSPORT 1(Gibco-BRL)中にサブクローニングし、フランキングT7およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターに対する該cDNA挿入の配向を制限分析により確認した。該PSM挿入の上流のこのプラスミドを線状化し、ついでSP6 RNAポリメラーゼにより転写することにより、400ヌクレオチドのアンチセンスRNAプローブが得られる。そのうちの350ヌクレオチドがPSM RNAによりRNアーゼ消化から保護されているはずである。このプローブは図20で使用した。また、プラスミドpCR II(Invitrogen)中に1kbの部分PSM cDNAを含有するプラスミドIN−20をリボプローブ合成に使用した。Xmn I(Gibco-BRL)で線状化したIN−20を、SP6 RNAポリメラーゼを用いて転写すると、298ヌクレオチドのアンチセンスRNAプローブが得られるが、そのうちの260ヌクレオチドはPSM mRNAによりRNアーゼ消化から保護されているはずである。このプローブは図21および22で使用した。公開されているプロトコールに従い(13)、SP6 RNAポリメラーゼ(Gibco-BRL)、rNTP(Gibco-BRL)、RNアシン(Promega)および32P−rCTP(NEN, Wilmington, DE.)を用いてプローブを合成した。プローブをNENSORB 20精製カラム(NEN)上で精製し、約百万cpmの精製放射性標識PSMプローブを10μlの各RNAと混合し、RPA IIキット(Ambion, Austin, TX)からの緩衝液および試薬を用いて45℃で一晩ハイブリダイズした。製造業者の指示に従い、サンプルを加工し、Seq ACRYL試薬(ISS, Natick, MA.)を用いて5%ポリアクリルアミド/7M 尿素変性ゲル上で分析した。ゲルを55℃まで前加熱し、25ワットで約1〜2時間移動させた。ついでゲルを10%メタノール/10%酢酸中で30分間固定し、バイオラッド(BioRad)真空乾燥機中80℃でワットマン3MM紙上で乾燥し、ハイパーフィルム(Hyperfilm)MP(Amersham)を用いて一晩オートラジオグラフに付した。走査型レーザーデンシトメーター(LKB, Piscataway, NJ.)を用いることによりPSM発現を定量した。
ステロイドモジュレーション実験
LNCaP細胞(2百万)を、5%ウシ胎仔血清で補足したRPMI 1640培地中のT−75フラスコ上に播種し、約30〜40%密集になるまで24時間成長させた。ついでフラスコをリン酸緩衝食塩水で数回洗浄し、5%木炭抽出血清で補足したRPMI培地を加えた。ついで細胞をさらに24時間成長させ、この時点で、ジヒドロテステロン、テストステロン、エステラジオール、プロゲステロンおよびデキサメタゾン(Steraloids Inc., Wilton, NH.)を最終濃度2nMで加えた。細胞をさらに24時間成長させ、ついで、既に記載されているとおりにRNAを収穫し、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイによりPSM発現を分析した。
<実験結果>
PSMの免疫組織化学的検出
7E11−C5.3抗PSMモノクローナル抗体を用いた場合、PSM発現は、LNCaP前立腺癌細胞株では明らかに検出可能であるが、PC−3およびDU−145細胞株では可能でない(図17A〜17C)。分析したすべての正常および悪性前立腺組織は、PSM発現について陽性に染色された。
PSM抗原のインビトロ転写/翻訳
図18に示すとおり、2.65kbの完全長PSM cDNAのインビトロ転写/翻訳共役は、750アミノ酸PSMオープンリーディングフレームからの予想タンパク質産物と一致して、84kDaのタンパク質種を与える。膵臓イヌミクロソームを用いる翻訳後修飾の後、100kDaのグリコシル化タンパク質種が得られ、これは成熟天然PSM抗原と一致した。
LNCaP細胞膜およびトランスフェクションされたPC−3細胞におけるPSM抗原の検出
pREP7発現ベクター中の完全長PSM cDNAでトランスフェクションされたPC−3細胞を、ノーザン分析によりSM mRNAの発現に関してアッセイした。7E11−C5.3抗体を用いるウエスタンブロット法によるPSM抗原分析には、高いPSM mRNA発現を有するクローンを選んだ。図19では、100kDaのPSM抗原が、LNCaP細胞溶解物および膜画分、およびPSMでトランスフェクションされたPC−3細胞ではよく発現しているが、天然PC−3細胞では発現していない。該トランスフェクションPC−3細胞中のこの検出可能な発現は、既にクローニングされている2.65kbのPSM cDNAが、7E11−C5.3抗前立腺モノクローナル抗体により認識される抗原をコードすることを証明するものである。
PSM mRNA発現
正常ヒト組織におけるPSM mRNAの発現を、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイにより分析した。PSMの組織発現は主に前立腺内で現れ、ヒト脳および唾液腺で検出可能な発現は非常に低レベルであった(図20)。ノーザン分析で分析したところ、検出可能なPSM mRNAの発現は非前立腺ヒト組織では明らかでなかった。検出可能なPSM発現が正常ヒト小腸組織で認められことがあるが、このmRNA発現は、使用する特異的リボプローブに応じて変化しうる。アッセイした正常ヒト前立腺およびヒト前立腺腺癌のすべてのサンプルでは明らかに検出可能なPSM発現が示されたが、良性過形成を示す組織では、PSMの発現が一般に低下しているか発現していなかった(図21)。ヌードマウスにおいて正所的におよび皮下の両方で成長させたヒトLNCaP腫瘍では、皮下移植されたLNCaP細胞の成長に必要なマトリゲルを使用した場合または使用しない場合に、豊富なPSM発現が検出された(図21)。PSM mRNAの発現は、生理学的用量のステロイドの存在により明らかにモジュレーションされる(図22)。DHTは24時間後に発現を8〜10倍下方調節し、テストステロンはPSM発現を3〜4倍減少させた。エストラジオールおよびプロゲステロンも、LNCaP細胞におけるPSM発現をダウンレギュレーションしたが、おそらくこれは、LNCaP細胞中に存在していることが公知の突然変異アンドロゲン受容体に対する結合の結果であろう。全体では、ステロイド枯渇培地中で成長させた未処理LNCaP細胞[ホルモンの無い(去勢)状態をインビボで刺激する状態である]においてPSM発現は最高である。この実験を2〜200nMのステロイド用量および6時間〜7日間の時点で繰り返しても同様の結果が得られ、PSM mRNAの最大ダウンレギュレーションは、24時間の時点でDHTにより2〜20nMの用量で認められた。
<実験の考察>
以前の研究で、2つの貴重な前立腺生物学的マーカー(PAPおよびPSA)が得られており、その両者は、前立腺悪性疾患の診断、治療および処置に大きな影響を与えている。前立腺特異的膜抗原(PSM)の予備的特徴づけを記載している本研究は、それが、多くの興味深い特徴を有する遺伝子であることを示す。PSMは、PAPおよびPSAと同様、ほぼ完全に前立腺特異的であり、それ自体により、前立腺の独特の機能および挙動がさらに明らかになるかもしれない。PSMタンパク質の予想配列(3)およびLNCaP細胞膜中のその存在(ウェスタンブロット法および免疫組織化学的方法により判定)は、それが内在性膜タンパク質であることを示す。したがって、PSMは抗体指向性診断用イメージングおよび細胞障害性標的化法のための興味深い細胞表面エピトープを与える(14)。PSM抗原をインビトロで合成し、高レベルのPSM発現を維持する腫瘍異種移植片を産生できれば、PSM発現の調節およびモジュレーションについてさらに研究し特徴づけるための便利で興味深いモデル系が得られる。また、LNCaP細胞で高レベルのPSMが発現されるため、優れたインビトロモデル系が得られる。PSM発現はステロイドに対してホルモン反応性であり、ホルモン無反応性疾患ではPSMが高レベルで発現される可能性がある(15)。脳、唾液腺および小腸は、7E11−C5.3抗体を用いる免疫組織化学的方法では、PSM抗原の発現に関して陰性であるが(16)、これらの組織における微少量のPSM mRNAの検出はさらなる研究を保証するものである。これらのすべての組織、特に小腸においては、3'末端付近のPSM cDNAの領域に対応するプローブを用いるmRNA発現であるが、5'末端PSMプローブを用いた場合には発現は検出されなかった。これらの結果は、PSM mRNA転写物が種々の組織で選択的スプライシングを受けることを示しているのかもしれない。
出願人のアプローチは、前立腺組織特異的プロモーター、酵素またはサイトカインキメラに基づく。単純ヘルペスチミジンキナーゼにより毒性代謝物に変換される無毒性ガンシクロビルなどのプロドラッグ、シュードモナスカルボキシペプチダーゼG2による安息香酸マスタードアルキル化剤へのプロドラッグである4−(ビス(2クロロエチル)アミノ)ベンゾイル−1−グルタミン酸などのプロモーター特異的活性化を調べた。これらの薬物は、該腫瘍中で特異的に酵素(キメラ)により活性化されるため、該活性薬物は該腫瘍環境内で単に局所的に遊離されて、周囲の腫瘍細胞を破壊する。活性化および特異的抗腫瘍ワクチン療法のためのIL−12、IL−2、GM−CSFなどのサイトカインのプロモーター特異的活性化を調べた。最後に、細胞死遺伝子の組織特異的プロモーター活性化がこの分野で有用だと判明するかもしれない。
遺伝子治療キメラ
遺伝子治療のための「キメラDNA」を確立するためには、種々のDNAセグメントをつないで、該結合に関与する両前駆体DNA種の特徴を有する新しいDNAを作製することが必要である。この提案の場合、結合されているその2つの断片はDNAの種々の機能的態様を含み、mRNAの生成のための該DNAの読み取りを許容するプロモーター領域は特異性を付与し、該mRNAをコードするDNA配列は治療用機能的DNAを与える。
DNA特異的酵素またはサイトカインmRNA
抗腫瘍薬は、有効であれば、非常に大量の腫瘍の後退を起こしうる。抗腫瘍薬活性発現のための主な要件は、細胞死が生じるよう十分な細胞障害を保証するために腫瘍を毒性薬物にさらす場合の十分に長い時間(t)および十分に高い濃度(c)の両方(cxt)を得る要件である。また、薬物は「活性」でなければならず。腫瘍に対する毒性は、宿主の正常細胞に対するものより大きくなければならない(22)。腫瘍に対する薬物の有効性は、腫瘍血流および薬物の拡散能に依存する。多数の正常組織への血流は腫瘍への血流と同程度かそれを上回ることが多いため、腫瘍への血流は選択性を付与しない。化学療法用の細胞障害性薬物の大部分は、腫瘍組織に対する毒性と正常組織に対する毒性が同程度であることが多い。分裂中の細胞は非分裂正常細胞より感受性であることが多いが、前立腺癌などの成長が遅い多数の固形腫瘍では、これによる抗腫瘍特異性は得られない(22)。
これまで、抗腫瘍薬の腫瘍特異性を増大させる手段は、腫瘍関連酵素を用いて無毒性プロドラッグを活性化して細胞障害剤にすることであった(19)。このアプローチの問題点は、腫瘍中に認められる酵素のほとんどはそれらの活性が完全に特異的というわけではなく、同様の基質活性酵素または同じ酵素がわずかに少量ではあるが他の組織にも見いだされ、したがって正常の組織が傷害を受ける危険性が依存として存在するということである。
絶対的な特異性および独特の活性を得るために、選択プロドラッグに対する独特の特異性を有し、ヒトまたは他の動物細胞には存在しないウイルス、細菌および真菌の酵素が見いだされた。単純ヘルペスチミジンキナーゼ、細菌シトシンデアミナーゼ、カルボキシペプチダーゼG−2などの酵素を利用する試みが、抗体標的化系と結びついて、ある程度の成功を収めている(19)。残念なことに、抗体標的化酵素は、細胞当たりに利用できる酵素の数を限定する。また、ほとんどの抗体は、腫瘍標的対正常組織比が高くなく、したがって正常組織が依然として標的となり、これらの独特の酵素の特異性が減少してしまう。抗体は拡散性が低い大きな分子である上、さらに、酵素分子量が加わることにより抗体の拡散性が減少する。
遺伝子治療が正常組織でなく腫瘍においてタンパク質を特異的に発現し、該酵素の高い局所濃度を利用して腫瘍環境で活性薬物を産生できるのであれば、遺伝子治療は最高の望ましい結果を与えるであろう(21)。
サイトカイン
結果からは、膀胱および前立腺などの腫瘍が免疫原性でないことが示された。すなわち、照射腫瘍細胞を動物へ投与し、ついで非照射腫瘍細胞を投与しても、腫瘍産生腫瘍細胞数を減少させることも、該腫瘍の成長速度を低下させることもなかった。しかし、該腫瘍をレトロウイルスおよび高濃度の分泌サイトカイン(例、Il−2)でトランスフェクションすれば、これは抗腫瘍ワクチンとして働き、既に樹立され成長中の腫瘍の成長可能性を低下させることができた。IL−2が最も優れており、GM−CSFも活性を有していたが、他のいくつかのサイトカインははるかに低活性であった。免疫刺激に単にIL−2を用いる臨床研究では、非常に高濃度を与えなければならず、毒性であることが判明した。サイトカイン遺伝子修飾腫瘍細胞の成功への鍵は、サイトカインを腫瘍部位で局所的に産生させ、毒性でないこと、およびそれが該腫瘍の免疫認識を刺激し、該腫瘍の特異的および無毒性認識を可能にすることである。腫瘍細胞によるIL−2産生が免疫認識を活性化する正確なメカニズムは完全にはわかっていないが、1つの説明は、それがヘルパーT細胞によるサイトカイン産生の必要性を回避し、腫瘍抗原活性化細胞障害性CD8細胞を直接的に刺激する、というものである。抗原提示細胞の活性化が生じる可能性もある。
<組織プロモーター特異的キメラDNA活性化>
非前立腺腫瘍系
プロモーター特異的活性化により、トランスフェクション遺伝子の組織特異的遺伝子発現が選択的に得られることが、非前立腺腫瘍で認められている。黒色腫では、メラニン発現を起こす酵素をコードするチロシナーゼプロモーターの使用により、黒色腫細胞におけるプロモータ−駆動レポーター遺伝子発現の50倍を越える発現が得られたが、非黒色腫細胞ではこのようなことはなかった。マウス中で成長中にトランスフェクションされた黒色腫細胞で同様の特異的活性化が認められた。その実験では、非黒色腫またはメラノサイト細胞は、チロシナーゼ駆動レポーター遺伝子産物を発現しなかった。ウェルカム・ラボラトリーズ(Welcome Laboratories)の研究グループは、癌胎児性抗原(CEA)をコードする遺伝子のプロモーター領域をクローニングし配列決定した。CEAは、結腸および結腸癌細胞上で発現されるが、転移の場合は特異的である。シトシンデアミナーゼの遺伝子キメラを得た。5−フルオロシトシンを5−フルオロウラシルへ変換するシトシンデアミナーゼでは、CEAプロモーター駆動結腸腫瘍細胞を選択的に殺す(正常肝細胞は殺さない)能力の大きな増強が認められた。彼らは、シトシンデアミナーゼ遺伝子でトランスフェクションされていないバイスタンダー(bystander)腫瘍細胞も殺され、処理後に大きな腫瘍が後退する際に宿主動物に対する毒性がないことを、インビボで観察した。単純ヘルペスウイルス(HSV)、チミジンキナーゼも同様に、分裂中の癌細胞に対して毒性となるようプロドラッグであるガンシクロビルを活性化し、HSVチミジンキナーゼは、組織特異的プロモーターにより特異的に活性化されうることが示されている。
前立腺腫瘍系
有効な癌治療のための治療上の鍵は、特異性を獲得し、患者の毒性を抑制することである。非必須組織、例えば前立腺および前立腺腫瘍が組織特異的タンパク質、例えば酸ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異的抗原(PSA)、およびクローニングされた遺伝子、前立腺特異的膜抗原(PSM)を産生する点で、遺伝子治療は特異性の鍵部分を与えるかもしれない。前立腺などの組織は、これらの組織特異的mRNAのDNAのプロモーター領域に対する結合を起こす選択された組織特異的転写因子を含有する。PSAのプロモーターは既にクローニングされている。通常、転移前立腺癌の治療をされている患者は、PSAのmRNAの発現を劇的に減少させるアンドロゲン喪失療法を受けている。一方、PSMではホルモン喪失により発現が増加し、このことは、ホルモン療法で治療されている患者でPSMがより一層強く発現されることを意味する。
参考文献2
Figure 2005185276
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実施例3:
ポリメラーゼ連鎖反応においてPSAおよびPSA由来プライマーを用いる前立腺血行性微小転移の高感度検出
前立腺癌の患者における血行性微小転移の高感度検出を可能とするPCRに基づくアッセイを開発した。前立腺特異的抗原および前立腺特異的膜抗原に対してユニークなmRNA配列を増幅することにより「ネスティッド(nested)PCR」を行い、それらのそれぞれの結果を比較した。PSA由来プライマーを用いるPCRにより2/30人(6.7%)の患者で微小転移が検出され、PSM由来プライマーを用いた場合には、19/16人(63.3%)の患者で腫瘍細胞が検出された。合計8の陰性対照は、PSAおよびPSMの両方のPCRで陰性であった。結果を確認するためにアッセイを繰り返し、DNA配列決定およびサザン分析によりPCR生成物を確認した。PSMでは検出されるがPSA−PCRでは検出されない循環前立腺腫瘍細胞を保持する患者として、このアッセイの時点で既に根治的前立腺切除術による治療を受けており測定できない血清PSAレベルを有する4人の患者が含まれていた。将来の疾患の再発に関するこれらの知見の重要性を調べることとする。
前立腺癌の患者の全体の生存率の向上は、より初期の診断に依存する。前立腺外拡張の証拠のない限局性疾患を根治的前立腺切除術または外部ビーム照射のいずれかで治療することは成功しており、優れた長期結果が得られている(2, 3)。大きな問題は、前立腺癌と診断された男性の約3分の2が診断時に既に前立腺外拡張の証拠を有し、そのため、現在、治療法がないということである(4)。前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺酸ホスファターゼ(PAP)などの臨床的血清マーカーを使用することにより、臨床家はより初期に前立腺癌を検出することが可能となっており、治療に対する反応を追跡する有用なパラメーターが得られる(5)。しかし、血清PSAアッセイ、放射性核種骨スキャン、CTスキャンおよび他のイメージング法の出現にもかかわらず、それらの結果からは、固形転移の定着前に微小転移細胞の存在が検出されていない。以前の研究は、循環中の乳癌、白血病および他の悪性細胞に対してユニークなmRNA配列を増幅するためにポリメラーゼ連鎖反応を利用して行われており、微小転移の初期検出が可能となっている(6, 7)。最近、PSA DNA配列由来のプライマーを利用するPCRに基づくアプローチが公開された(8)。この研究では、進行したD段階の前立腺癌の3/12人の患者が、検出可能な血行性微小転移を有していた。
PSMは、前立腺腫瘍および転移中で非常に高度に発現される内在性膜糖タンパク質であるらしく、ほとんど完全に前立腺特異的である(10)。多くの退形成腫瘍および骨転移は可変的な、時には検出不可能なPSA発現を示し、一方、これらの病変は一貫して高レベルのPSMを発現するらしい。前立腺から出て循環に入った前立腺腫瘍細胞は、転移形成能を有する可能性があり、おそらくより攻撃的であり、おそらく退形成細胞、すなわち、PSAを高レベルで発現できないがPSMの高い発現を維持しうる細胞集団である。PCRアッセイにおいて、PSAおよびPSMの両方の配列に由来するDNAプライマーを使用して、末梢循環中の微小転移細胞を検出した。通常のRNA PCRが高レベルの増幅および感度を示すにもかかわらず、「ネスティッド」PCRアプローチを用いた。この方法では、標的配列を増幅し、ついでPCR増幅の別のラウンドの鋳型としてこのPCR生成物を使用し、新しいセットのプライマーは前産物の配列内に完全に含有される。このアプローチにより、10,000個の細胞当たり1個の前立腺腫瘍細胞から1億個の細胞当たり1個の細胞を上回るまでに、検出レベルを増加させることが可能となった。
<材料および方法>
細胞および試薬
LNCaPおよびMCF−7細胞を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(Rockville, MD.)から入手した。これらの細胞株の樹立および特徴づけに関する詳細は、すでに公開されている(11, 12)。細胞は、L−グルタミン、非必須アミノ酸[MSKCC メディア・プレパレーション・ファシリティー(Media Preparation Facility)から入手]および5%ウシ胎仔血清(Gibco-BRL, Gaithersburg, MD)で補足したRPMI 1640培地中、COインキュベーター中37℃で成長させた。すべての細胞培地は、MSKCC メディア・プレパレーション・ファシリティー(Media Preparation Facility)から入手した。通常の化学試薬は可能な限り高い等級のものであり、シグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Company)(St. Louis, MO.)から入手した。
患者の血液標本
この研究で使用したすべての血液標本は、MSKCCのスタッフである泌尿器科医が外来診察室で会った患者からのものである。定期的に予定された採血時に、患者1人当たり2本の抗凝血(パープルトップ(purple top))管を得た。標本の入手は、MSKCCインスティチューショナル・レビュー・ボード(Institutional Review Board)の承認に従い行った。サンプルは、すぐに加工するためにただちに研究室へ運んだ。血清PSAおよびPAP測定は、MSKCCクリニカル・ケミストリー・ラボラトリー(Clinical Chemistry Laboratory)による標準的な技術により行った。PSAの測定は、タンデムPSAアッセイ(Hybritech, San Diego, CA.)により行った。陰性対照として使用した8個の血液標本は、正常な血清PSA値および生検により判明したBPHを有する2人の男性、1人の健康な女性、3人の健康な男性、1人の膀胱癌患者および1人の急性前骨髄球性白血病患者からのものであった。
血液サンプル加工/RNA抽出
4mlの全抗凝血静脈血を3mlの氷冷リン酸緩衝食塩水と混合し、ついで15mlポリスチレン管中の8mlのフィコール(Pharmacia, Uppsala, Sweden)上に注意深く重層した。管を200×g、4℃で30分間遠心した。無菌パスツールピペットを用いて、バフィーコート層(約1ml)を注意深く除き、50mlポリプロピレン管中、50mlになるまで氷冷リン酸緩衝食塩水で再希釈した。ついでこの管を2000×g、4℃で30分間遠心した。該上清を注意深くデカントし、該ペレットを滴下乾燥した。ついで1mlのRNazol Bを該ペレットに加え、製造業者の指示に従い(Cinna/Biotecx, Houston, TX.)、全RNAを単離した。RNA濃度および純度は、ベックマン(Beckman)DU 640分光光度計によるUV分光法およびゲル分析により測定した。
PCR感度の測定
RNAzol Bを用いて、LNCaP細胞および一定の比率(すなわち、1:100、1:1000など)のLNCaP細胞とMCF−7細胞との混合物からRNAを単離した。ついで、該アッセイの検出限界を測定するために、PSAとPSMの両プライマーを用いて後記のとおりにネスティッドPCRを行った。LNCaP:MCF−7(1:100,000)cDNAを蒸留水で希釈して、1:1,000,000および1:10,000,000の濃度を得た。MCF−7は既に試験されており、PSMを発現しないことがPCRにより示されていたため、MCF−7細胞を選んだ。
ポリメラーゼ連鎖反応
PSA外側プライマーにエキソン4および5の伸長部を用いて、486bpのPCR生成物を得、cDNAと可能な混入ゲノムDNA増幅との間の識別が可能となった。PSA cDNA配列中のヌクレオチド494から始まる上流プライマー配列は、5'-TACCCACTGCATCAGGAACA-3'(配列番号)であり、ヌクレオチド960の下流プライマーは、5'-CCTTGAAGCACACCATTACA-3'(配列番号)である。PSA内側上流プライマー(ヌクレオチド559から始まる)5'-ACACAGGCCAGGTATTTCAG-3'(配列番号)および下流プライマー(ヌクレオチド894から始まる)5'-GTCCAGCGTCCAGCACACAG-3'(配列番号)は、355bpのPCR生成物を与える。すべてのプライマーは、MSKCCマイクロケミストリー・コア・ファシリティー(Microchemistry Core Facility)により合成された。5μgの全RNAを、製造業者の推奨に従いスーパースクリプト(Superscript)逆転写酵素(Gibco-BRL)を用いて合計容量20μl中でcDNAに逆転写した。1μlのこのcDNAを外側プライマーPCR反応の出発鋳型として使用した。20μlのPCR混合物には、0.5U Taqポリメラーゼ(Promega Corp., Madison, WI.)、プロメガ(Promega)反応緩衝液、1.5mM MgCl、200mM dNTPおよび1.0μMの各プライマーが含まれていた。ついで、この混合物をパーキンエルマー(Perkin Elmer)9600DNAサーマルサイクラーに移し、25サイクルのインキュベーションを行った。該PCRプロフィールは、以下のとおりであった:94℃×15秒、60℃×15秒および72℃×45秒。25サイクルの後、サンプルを氷上に載せ、この反応混合物の1μlを、該内側プラマーを用いる別のPCRラウンドの鋳型として使用した。管の最初のセットを該サーマルサイクラーへ戻し、さらに25サイクル行った。ゲノムDNAでなくcDNAが増幅されていることを保証するために、PSM−PCRには、イントロンに伸長するプライマー対を選ぶ必要があった。
PSM外側プライマーは946bpの産物を与え、該内側プライマーは434bpの産物を与えた。使用したPSM外側上流プライマーは、5'-ATGGGTGTTTGGTGGTATTGACC-3'(配列番号)(ヌクレオチド1401から始まる)であり、該下流プライマー(ヌクレオチド2348から始まる)は、5'-TGCTTGGAGCATAGATGACATGC-3'(配列番号)であった。PSM内側上流プライマー(ヌクレオチド1581)は、5'-ACTCCTTCAAGAGCGTGGCG-3'(配列番号)であり、該下流プライマー(ヌクレオチド2015)は、5'-AACACCATCCCTCCTCGAACC-3'(配列番号)であった。使用したcDNAは、PSAアッセイのものと同じであった。該50lのPCR混合物には、1U Taqポリメラーゼ(Promega)、250M dNTP、10mM−メルカプトエタノール、2mM MgClおよび5lの10×緩衝液混合物(166mM NHSO、670mMトリス, pH8.8および2mg/mlのアセチル化BSAを含有)が含まれていた。PCRは、以下のパラメーターを有するパーキンエルマー(Perkin Elmer)480DNAサーマルサイクラー中で行った:94℃×4分で1サイクル、94℃×30秒、58℃×1分および72℃×1分で25サイクル、ついで72℃×10分。ついでサンプルを氷冷し、この反応混合物の2lを、該内側PSMプライマーを含有する新しい反応混合物を用いる別の25サイクルの鋳型として使用した。cDNAの質は、446bpのPCR生成物を与えるアクチン由来のプライマーを用いる対照反応を行うことにより確認した。使用した上流プライマーは、5'-AGGCCAACCGCGAGAAGATGA-3'(配列番号)(エキソン3)であり、該下流プライマーは、5'-ATGTCACACTGGGGAAGC-3'(配列番号)(エキソン4)であった。全PSA混合物および10lの各PSM反応混合物を、1.5〜2%アガロースゲル上で移動させ、臭化エチジウムで染色し、イーグル・アイ・ビデオ・イメージング・システム(Eagle Eye Video Imaging System)(Stratagene, Torrey Pines, CA.)中で写真撮影した。結果を確認するために、少なくとも3回、アッセイを繰り返した。
PCR生成物のクローニングおよび配列決定
TAクローニング系(Invitrogen)を用いて、PCR生成物をpCR IIプラスミドベクター中にクローニングした。これらのプラスミドを、標準的な方法(13)を用いてコンピテントな大腸菌(E. coli)細胞中に形質転換し、マジック・マニプレップス(Magic Minipreps)(Promega)を用いてプラスミドDNAを単離し、制限分析によりスクリーニングした。ついで、シークエナーゼ(U.S. Biochemical)を用いてジデオキシ法(14)によりTAクローンを配列決定した。3〜4gの各プラスミドをNaOHで変性し、エタノール沈殿させた。製造業者の推奨に従い、35S−dATP(NEN)を用いて標識反応を行い、同じプロトコールの記載に従い該反応を停止した。ついで配列決定産物を、120ワットで2時間移動させる6%ポリアクリルアミド/7M 尿素ゲル上で分析した。ゲルを10%メタノール/10%酢酸中で20分間固定し、ワットマン3MM紙に移し、真空乾燥機中、80℃で2時間乾燥した。ついでゲルを室温で18時間オートラジオグラフィーに付した。
サザン分析
PCR生成物のエチジウム染色アガロースゲルを、0.2N HClに15分間、ついで0.5N NaOH/1.5M NaClおよび0.1Mトリス(pH7.5/1.5M NaCl)にそれぞれ30分間浸けた。ついで、ゲルを10×SSC(1.5M NaCl/0.15M クエン酸ナトリウム)中で10分間平衡化した。DNAを、10×SSC中、ポシ・ブロッター(Posi-blotter)(Stratagene)を用いる圧力ブロッティングによりナイトラン(Nytran)ナイロン膜(Schleicher and Schuell)に移した。UVストラタリンカー(Stratalinker)(Stratagene)を用いて、DNAを該膜にクロスリンキングした。ブロットを65℃で2時間プレハイブリダイズし、ついで変性32P−標識ランダムプライムドcDNAプローブ(PSMまたはPSAのいずれか)とハイブリダイズした(9, 15)。ブロットを1×SSPE/0.5%SDS中、42℃で2回、0.1×SSPE/0.5%SDS中、50℃で2回、それぞれ20分間洗浄した。膜を風乾し、コダック(Kodak)X-Omatフィルムを用いて−70℃で30分〜1時間オートラジオグラフィーに付した。
<実験結果>
PSAまたはPSM由来プライマーのいずれかを用いるネスティッドプライマーによるPCR増幅により前立腺細胞の検出レベルが向上し、10,000個のMCF−7細胞当たり約1個の前立腺細胞から、百万個のMCF−7細胞当たり1個の細胞より優れた検出レベルになった(図26および27)。これは、微小疾患(minimal disease)を検出する能力の実質的な向上を示す。臨床段階、治療、血清PSAおよびPAP値に関して分析した16人の患者の特徴、および該アッセイの結果を示す。全体で、PSA−PCRは2/30人の患者(6.7%)で腫瘍細胞を検出したが、PSM−PCRは19/30人の患者(63.3%)で細胞を検出した。腫瘍細胞がPSAで陽性であるが、PSMで陽性でない患者はいなかったが、PSMは、PSAで検出されない8人の陽性患者を検出した。表1中の患者10および11は共に、非常に進行したホルモン無反応性疾患を有する患者であり、PSAおよびPSMの両方で検出された。これらの両患者は、これらのサンプルを得た後で死亡している。患者4、7および12はすべて、臨床的限局性疾患のために根治的前立腺切除術で治療され、手術の1〜2年後にはその全員が測定できない血清PSA値を有していた患者であり、これらの患者は循環前立腺腫瘍細胞に関して、PSM−PCRでは陽性であったが、PSA−PCRでは陰性であった。PSM−PCRの代表的なエチジウム染色ゲル写真を図28に示す。レーンA中を移動したサンプルは、該外側プライマーから生じたPCR生成物を示し、Bと表示されたレーン中のサンプルは内側プライマー対の産物である。対応するPSMサザンブロットオートラジオグラフを図29に示す。いくつかのサンプルでは、該外側産物が図28では見えないが、図29に示すサザンブロット法では検出可能なことからわかるとおり、該サザンブロット分析の感度は、エチジウム染色の感度を上回るものであった。さらに、図28および29のサンプル3(図30の患者6)は、残りの患者の対応するバンドより小さい外側および内側両方のバンドを含有しているらしい。DNA配列決定により、これらのバンドのヌクレオチド配列が、小さな欠失を除きPSMのものと符号することが確認された。これは、PCRの人工産物、この患者のPSM mRNAの選択的スプライシングまたはPSM突然変異のいずれかを示している可能性がある。サザン分析により配列決定し分析したすべてのサンプルは、PSAおよびPSMに関して真に陽性であることが確認された。
<実験の詳細>
前立腺癌の患者を診断時に正確に段階づけしうることは、適当な治療法を選択し、治療に対する長期的反応および治癒の可能性を予想する上で最も重要であることは明らかである。手術前の段階づけは、現在、身体的検査、血清PSAおよびPAP測定および多数のイメージング法(例、経直腸超音波検査法、CTスキャン、放射性核種骨スキャン、MRIスキャン)よりなる。しかしながら、現在の治療法のなかには、血行性微小転移疾患の問題や、それから生じうる予後に対する潜在的な否定的影響に向けられているものはない。以前の研究では、固形転移形成への進行を避けられないのは循環腫瘍細胞のうちのごくわずかであることが示されているが(16)、循環腫瘍細胞の検出および潜在的定量の負担は、疾患をより正確に段階づけするのに貴重かもしれない。血行性微小転移疾患の長期的影響は、循環内にこれらの細胞を有すると判明している患者の臨床経過を、試験で陰性の同様の段階および治療の患者と比較して研究する必要がある。
PSAの発現は、分化程度がより低い退形成前立腺癌において、可変的であるのに対し、PSMの発現は、すべての段階およびグレードの前立腺癌において、一貫していることが認められるため、腫瘍細胞の検出レベルが、PSAよりPSMによる場合に高いことは、驚くべきものではない。根治的前立腺切除術を既に受けており、その後血清PSAを検出できなかった3人の患者において腫瘍細胞が検出されたことは、驚くべきものであった。これらの患者は、標準的な基準により外科的に「治癒している」とみなされているが、前立腺腫瘍細胞を保持し続けていることは明らかである。PCRによる残存疾患の証拠を有さない他の患者と比較して、これらの患者の臨床経過を追跡することは興味深いことであろう。
参考文献3
Figure 2005185276
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実施例4:
前立腺特異的膜抗原(PSM)の発現は、トランスフェリンによる攻撃的ヒト前立腺癌細胞の分裂促進刺激を抑制する
トランスフェリンとヒト前立腺癌との関連性が、いくつかの研究から示唆されている。前立腺癌患者の発現前立腺分泌物はトランスフェリン含量に富み、前立腺癌細胞はトランスフェリン受容体に富むことが示されている(J. Urol. 143, 381, 1990)。骨髄由来のトランスフェリンは、攻撃的前立腺癌細胞の成長を選択的に刺激することが示されている(PNAS 89, 6197, 1992)。DNA配列分析により、該コーディング領域の一部分(ヌクレオチド1250〜1700)が、ヒトトランスフェリン受容体に対して54%の相同性を有することが示された。PC−3細胞は、PSM mRNAまたはタンパク質を発現せず、トランスフェリンに応答して細胞成長の増加を示すが、LNCaP前立腺癌細胞は、PSMを高度に発現し、トランスフェリンに対する応答性が非常に弱い。前立腺癌細胞によるPSM発現が、トランスフェリンに対するその分裂促進応答に影響を及ぼすか否かを判定するために、完全長PSM cDNAをPC−3前立腺癌細胞にトランスフェクションした。PSM mRNAを高度に発現するクローンをノーザン分析により同定し、PSMタンパク質の発現を、抗PSMモノクローナル抗体7E11−C5.3を用いるウエスタン分析により確認した。
1ウェル当たり2×10個のPC−3またはPSMでトランスフェクションされたPC−3細胞を、10%ウシ胎仔血清で補足したRPMI培地に播種し、24時間たった時点で1μg/mlのホロトランスフェリンを該細胞に加えた。1日たった時点で細胞を計数したところ、該PC−3細胞に対して高度に分裂促進性であった。平板効率を測定するために1日たった時点で、そして該トランスフェリンの効果を判定するために5日たった時点で、細胞を計数した。その結果を確認するために実験を繰り返した。
PC−3細胞では、対照に対して平均して275%増加したが、LNCaP細胞は43%刺激したに過ぎなかった。成長速度論からは、PSMによりトランスフェクションされたPC−3細胞の成長が、天然のPC−3細胞より30%遅いことが示された。このデータが示唆するとおり、攻撃的転移ヒト前立腺癌細胞におけるPSM発現は、トランスフェリンに対するその分裂促進応答を阻害する。
サイトカインを分泌する腫瘍細胞調製物よりなる治療用ワクチンを定着前立腺癌の治療に使用することについて、Dunning R3327-MatLyLuラット前立腺腺癌モデルで調べた。IL−2を分泌する照射腫瘍細胞調製物だけが、皮下に定着した腫瘍から動物を治癒させる能力を有しており、別の腫瘍攻撃から該動物を防御する免疫記憶を引き起こした。腫瘍を正所的に誘導した場合、免疫療法はそれほど有効ではなかったが、それでも結果の改善につながり、癌性前立腺の切除後の腫瘍の再発を有意に遅らせ、時にはそれを予防した。非免疫原性MatLyLu腫瘍に対する強力な免疫応答が腫瘍担持動物で誘導されることは、前立腺癌の能動免疫療法が治療上有益かもしれないという見解を支持する。
実施例5:
前立腺特異的膜抗原(PSM)プロモーターのクローニングおよび特徴づけ
PSM遺伝子の発現および調節は複雑である。免疫染色法により、PSM抗原は、転移した腫瘍および器官限局性腫瘍では強く発現されるが、正常前立腺組織ではより低度であり、BPHではより不均一であることが判明した。PSMは、退形成腫瘍およびホルモン無反応性腫瘍の両方で強力に発現される。PSM mRNAは、アンドロゲンによりダウンレギュレーションされることが示されている。また、PSM RNAの発現は、サイトカインおよび増殖因子の宿主によりモジュレーションされる。PSM発現の調節についての知見は、前立腺癌のイムノシンチグラフィーイメージングおよび前立腺特異的プロモーター駆動遺伝子治療のような診断および治療戦略で助けとなるはずである。
転写開始部位の2.5kb上流を含有する3kbのゲノムDNAクローンの配列決定により、約300b.p.の2つの伸長(−260〜−600および−1325〜−1625)が、公知遺伝子に対して実質的な相同性(79〜87%)を有することが示された。該プロモーターはGCに富む領域を欠く上に、コンセンサスTATAボックスも有さない。しかしながら、それは−35位〜−65位にTAに富む領域を含有する。
AP1、AP2、NFkB、GRE、E2−REなどの一般の転写因子のための幾つかのコンセンサス認識部位が同定された。プロモーターの無いクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子に融合したPSM遺伝子の上流領域の断片を含有するキメラ構築物を、LNCaP、PC−3およびSW620(結腸細胞株)にトランスフェクションし、これらの細胞内で一過性発現させた。追加的SV40エンハンサーを用いた場合、−565〜+76の配列はプロモーター活性をLNCaPでは示したが、PC−3やSW620では示さなかった。
<材料および方法>
細胞株
LNCaPおよびPC−3前立腺癌細胞株(American Type Culture Collection)を、それぞれRPMIおよびMEM(5%ウシ胎仔血清で補足したもの)中、37℃、5%CO2で培養した。結腸細胞株であるSW620は、メリサ(Melisa)から贈呈された。
ポリメラーゼ連鎖反応
該反応は、以下の最終濃度の試薬を含む50μl容量中で行った:16.6mM NHSO、67mM トリス−HCl, pH8.8、アセチル化BSA0.2mg/ml、2mM MgCl、250μM dNTP、10mM β−メルカプトエタノールおよび1U rth 111 Taqポリメラーゼ(Boehringer Mannhiem, CA)。以下のプロフィールで合計25サイクルを完了した:サイクル1、94℃4分;サイクル2〜25、94℃1分、60℃1分、72℃1分。最終反応は延長した(72℃で10分間)。該反応のアリコートを、1×トリス−酢酸−EDTA緩衝液中、1%アガロースゲル上で電気泳動した。
PSMプロモーターのクローニング
ピアス(Pierce)らのPCR法を用いて、ヒト繊維芽細胞ゲノムDNA(Genomic Systems, Inc., St. Louis, MI.)のバクテリオファージP1ライブラリーをスクリーニングした。PSM cDNAの5'末端に位置するプライマーは、5'-CTCAAAAGGGGCCGGATTTCC-3'および5'-CTCTCAATCTCACTAATGCCTC-3'であった。陽性クローンp683をXho1制限酵素で消化した。PSM cDNAの末端(extreme)5'からAva-1部位のDNAプローブを用いる制限断片のサザン分析により、3kb断片がPSM遺伝子の5'調節配列を含有することが確認された。該3kb Xho1断片をpKSBluscrptベクター中にサブクローニングし、ジデオキシ法により配列決定した。
PSMプロモーターの機能的アッセイ
プロモーターの無いpCAT基礎またはpCAT−エンハンサーベクター(Promega)へ挿入することにより、Smal-HindIII断片またはサブフラグメント(制限酵素サブフラグメントまたはPCRのいずれかを使用)からクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子プラスミドを構築した。リン酸カルシウム法(Gibco-BRL, Gaithersburg, MD.)により、pCAT−構築物をpSVβgalプラスミド(5μgの各プラスミド)と共に細胞株に2通りにコトランスフェクションした。72時間後に該トランスフェクション細胞を収穫し、LSC法によりCAT活性に関して、そしてβgal活性に関して(Promega)アッセイした(15μgの溶解物)。CAT活性を、βgal活性の場合と比較することにより標準化した。
<結果>
PSM遺伝子の5'末端の配列
RNA開始部位からのDNAの500bpを含むp683の3kb XhoI断片のDNA配列を決定した(図31A〜31D)。配列683XFRVSは、PSMプロモーターの5'遠位末端から始まり、公開されているPSM推定プロモーターとnt2485で重複する。すなわち、該推定転写開始部位はnt2485にある。配列683XF107は逆である(683XFRVSの相補体)。該XhoI断片からの配列は、真核プロモーターおよび調節領域(他の遺伝子中で見いだされるもの)に特徴的な注目に値する一連の要素およびモチーフを示した(図32)。
上流PSMゲノム要素のプロモーター活性についての機能的分析
2つの前立腺細胞株:LNCaP、PC−3および結腸SW620で、種々のpCAT-PSMプロモーター構築物のプロモーター活性を試験した(図33)。CAT活性の誘導は、1070bpのPSM5'プロモーター断片を含有するp1070-CATにおいても、641bpのPSM5'プロモーター断片を含有するp676-CATにおいても観察されなかった。しかしながら、追加的SV−40エンハンサーを用いると、−565〜+76の配列(p676-CATE)はプロモーター活性を、LNCaPにおいては示したが、PC−3およびSW620においては示さなかった。
したがって、PSMプロモーター駆動遺伝子治療で使用できる−565〜+76のLNCaP特異的プロモーター断片が単離された。
実施例6:
前立腺特異的膜抗原RNAの選択的にスプライシングされた変異体:進行の潜在的測定としての発現の割合
<材料および方法>
細胞株
LNCaPおよびPC−3前立腺癌細胞株を、5%ウシ胎仔血清で補足された、それぞれRPMIおよびMEM中、37℃、5%COで培養した。
一次組織
一次前立腺組織を、MSKCCの企業内腫瘍入手サービスから入手した。粗大標本が、MSKCCの病理学サービスにより病理学的に段階づけされた。
RNAの単離
RNAzol Bキット(Tel-Test, Friendswood, TX)を用いる改変グアニジニウムチオシアナート/フェノール/クロロホルム法により、全RNAを単離した。RNAは、ジエチルピロカルボナートで処理された水中に−80℃で保存した。RNAは、分光光度吸収により260nmで定量した。
cDNA合成
外傷により死亡した男性から得た正常mRNA(Clontech, Palo Alto, CA)の2つの異なるバッチを70℃で10分間変性させ、ついでランダムヘキサマーおよびスーパースクリプト(Superscript)II逆転写酵素(GIBCO-BRL, Gaithersburg, MD)を50℃で30分間使用し、ついで94℃で5分間インキュベーションすることにより、cDNAへ逆転写した。
ポリメラーゼ連鎖反応
PSM cDNAの5'および3'末端に特異的なオリゴヌクレオチドプライマー(5'-CTCAAAAGGGGCCGGATTTCC-3'および5'-AGGCTACTTCACTCAAAG-3')を、該cDNA配列が伸長するように設計した。該反応は、以下の最終濃度の試薬を含む50μl容量中で行った:16.6mM NHSO、67mM トリス−HCl, pH8.8、アセチル化BSA 0.2mg/ml、2mM MgCl、250μM dNTP、10mM β−メルカプトエタノールおよび1U rTthポリメラーゼ(Perkin Elmer, Norwalk, CT)。以下のプロフィールで合計25サイクルを完了した:サイクル1、94℃4分;サイクル2〜25、94℃1分、60℃1分、72℃1分。最終反応は延長した(72℃で10分間)。該反応のアリコートを、1×トリス−酢酸−EDTA緩衝液中、1%アガロースゲル上で電気泳動した。
PCR生成物のクローニング
TAクローニング法により、インビトロゲン(Invitrogen)(San Diego, CA)からのキットを用いて、PCR生成物をpCRIIベクター中にクローニングした。連結反応混合物をコンピテント大腸菌(Escherichia coli)Inv5α中に形質転換した。
配列決定
US バイオケミカル(Biochemical)(Cleveland, OH)からのシークエナーゼキットを用いてジデオキシ法により配列決定を行った。配列決定産物を、5%ポリアクリルアミド/7M尿素ゲル上、52℃で電気泳動した。
RNアーゼプロテクションアッセイ
完全長PSM cDNAクローンをNgoM 1およびNhe1で消化した。350bpの断片を単離し、pSPORT1ベクター(GIBCO-BRL, Gaithersburg, MD)中にサブクローニングした。得られたプラスミドpSP350を線状化し、該挿入物をSP6 RNAポリメラーゼにより転写して、395ヌクレオチド長のアンチセンスプローブを得た。該プローブのうちの355ヌクレオチドおよび/または210ヌクレオチドは、それぞれPSMまたはPSM' RNAによりRNアーゼ消化から保護されるはずである(図2)。種々の組織からの全細胞RNA(20μg)を前記のアンチセンスRNAプローブとハイブリダイゼーションさせた。記載されているとおりに(7)、アッセイを行った。tRNAを陰性対照として使用した。LNCaPおよびPC−3についてRPAを繰り返した。
<結果>
正常前立腺組織からのmRNAのRT−PCR
正常前立腺からのmRNAの2つの独立したRT−PCRを、「材料および方法」に記載のとおりに行った。ついで行った該PCR生成物のクローニングおよび配列決定から、選択的にスプライシングされた変異体(PSM')の存在が示された。PSM'は、PSM(2653ヌクレオチド)より短いcDNA(2387ヌクレオチド)を有する。配列分析の結果を図34に示す。これらのcDNAは、PSM cDNAの5'末端付近の266ヌクレオチド領域(ヌクレオチド114〜380)がPSM' cDNA中に存在しないことを除き、同一である。種々のmRNAサンプルのRT−PCRを独立して2回繰り返しても同じ結果が得られた。
RNアーゼプロテクションアッセイ
PSM RNAに相補的でPSM' RNAの3'スプライス部位に伸長するRNAプローブを使用して、PSM mRNAとPSM' mRNAの発現を相対的に測定した(図35)。このプローブを用いて、LNCaP細胞中のPSMおよびPSM'双方のRNAを検出したところ、優勢な形態はPSMであった。PSMおよびPSM'のRNAは共に、PC−3細胞では検出されなかったが、これは、既に行われているノーザンおよびウエスタンブロットのデータと一致する(5, 6)。図36からは、ヒト一次前立腺組織中の両スプライス変異体の存在が示された。一次前立腺腫瘍では、PSMが優勢な形態である。これに対し、正常な前立腺はPSMよりPSM'を多く発現した。BPHサンプルは、両変異体のほぼ等しい発現を示した。
腫瘍指数
PSMとPSM'との発現(図36)をデンシトメトリーにより相対的に定量し、腫瘍指数として表した(図37)。LNCaPは9〜11、CaPは3〜6、BPHは0.75〜1.6、正常前立腺は0.075〜0.45の指数を有する。
<考察>
5'および3'末端PSMオリゴヌクレオチドプライマーを用いた場合のヒト正常前立腺mRNA由来のPCR生成物の配列決定データは、既に記載されているPSM cDNAに加え、第2のスプライス変異体PSM'を示した。
PSMは、計算分子量84,330を有する750a.a.のタンパク質である。PSMは、II型内在性膜タンパク質であると仮定された(5)。古典的なII型膜タンパク質はトランスフェリン受容体であり、実際、PSMは、トランスフェリン受容体と適度な相同性を有する領域を有する(5)。RaoおよびArgos(7)またはEisenburgら(8)のいずれかの方法による該PSMアミノ酸配列の分析から、アミノ酸20〜43の領域内に1つの膜貫通ヘリックスがあるという説得力のある予想がなされた。両プログラムは、膜結合しうるが膜貫通領域の可能な候補とは考えられない他の領域を見いだした。
一方、PSM'抗原は、そのmRNA配列から推定すると、78,000の分子量を有する693アミノ酸のタンパク質である。PSM'抗原は、PSM抗原内に存在する最初の57アミノ酸を欠く(図34)。PSM'抗原はサイトゾル性であると考えられる。
PSMとPSM'では、それらの機能がおそらく異なっているであろう。PSM抗原の細胞局在からは、それが細胞外または細胞内のいずれかのリガンドまたはその両方と相互作用しうることが示唆される。一方、PSM'の細胞局在からは、PSM'がサイトゾルリガンドとだけしか反応しないことが暗示される。さらに、PSM抗原は、そのサイトゾルドメイン上に3個の潜在的リン酸化部位を有する。これらの部位はPSM'抗原内には存在しない。一方、PSM'抗原は25個の潜在的リン酸化部位、10個のN−ミリストイル化部位および9個のN−グリコシル化部位を有する。PSM抗原の場合、これらの潜在的部位はすべて、細胞外表面上にあるのであろう。これらの相同性タンパク質のこれらの部位の修飾は、それらの細胞位置に応じて異なるであろう。その結果、各形態の機能は、それらの修飾のされ方に依存するであろう。
RNアーゼプロテクションアッセイによるPSMとPSM'の発現の相対的相違を分析した。一次前立腺組織におけるPSMおよびPSM'の発現の結果は、これらの変異体の相対発現と該細胞の状態(正常か癌性か)との関係を強く示唆した。該研究のサンプルのサイズが小さいことがここでは注目されるが(図36および37)、傾向の一貫性は明らかである。使用したサンプルは、患者からの粗大標本であった。CaP、BPHまたは正常物の含量の点で純粋な標本を使用していたなら、この結果はより一層劇的なものとなったであろう。それでも、これらの標本で正常からCaPへ変化する場合に、PSM' mRNAに対してPSMの相対的な増加があることは明らかである。腫瘍指数(図37)は、与えられたサンプルの病理学的状態の測定に有用であろう。PSM'に対するPSMの発現の変化が腫瘍進行の根拠となる可能性もある。より分化した腫瘍状態は、トランスフェクションまたは分化剤の使用のいずれかによりPSM'で回復しうる。
参考文献4
Figure 2005185276
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実施例7:
PSMプライマーを用いる高感度ネスティッド逆転写−PCRアッセイによる前立腺血行性微小転移の検出の強化(PSAプライマーを用いる場合との比較)
前立腺癌の患者からランダムに選択された77サンプルを分析したところ、PSMおよびPSAプライマーが、それぞれ48人(62.3%)および7人(9.1%)の患者で循環前立腺細胞を検出することが示された。治療段階がDの疾患の患者で、PSMプライマーは24人中16人(66.7%)で細胞を検出したが、PSAプライマーは24人中6人(25%)で細胞を検出した。ホルモン無反応性前立腺癌(D3段階)では、PSAおよびPSMの両プライマーにより7人中6人の患者が陽性であった。精力的な細胞障害性化学療法にもかかわらず、これらの6人の患者は全員、そのアッセイ後2〜6カ月以内に死亡したのに対し、試験結果が陰性であったこのグループの1人の患者はそのアッセイ後15カ月生存している。このことは、PSA−PCRの陽性結果が早期死亡の予測因子として働きうることを示唆する。陰性の血清PSA値を有する根治的前立腺切除術後の患者において、PSMプライマーは31人中21人(67.7%)の患者で転移を検出したが、PSAプライマーは33人中わずか1人(3.0%)で細胞を検出したにすぎず、このことは、微小転移の広がりが前立腺癌の比較的初期のイベントであるらしいことを示す。前立腺癌と判明していない40人の分析から、このアッセイが非常に特異的であるとの証拠が得られ、臨床的に明白な前立腺癌を有さない患者でPSM発現が発癌を予想しうることが示唆される。PSMプライマーを用いることにより、40人中4人の対照で微小転移が検出された。そのうちの2人は前立腺生検によりBPHであると判明していたが、後で血清PSA値が上昇したので前立腺生検を繰り返したところ、以前に未検出だった前立腺癌を有することが判明した。これらの結果は、PSMプライマーを用いる血行性微小転移前立腺細胞の検出の臨床的重要性、およびこの分子アッセイの潜在的有用性を示す。
実施例8:
インビトロでの前立腺特異的膜抗原(PSM)発現のサイトカインおよび増殖因子によるモジュレーション
CYT−356イメージングの有効性は、PSMの発現を操作することにより向上する。PSM mRNA発現は、ステロイドによりダウンレギュレーションされる。このことは、PSMが退形成病変およびホルモン無反応性病変の両方で強く発現されるという臨床的観察と一致する。これに対して、PSA発現はホルモン停止により減少する。ホルモン無反応性疾患では、腫瘍細胞が増殖因子および受容体の両方を産生し、そして細胞が正常な成長拘束を克服するのを可能にする自己分泌ループを確立すると考えられている。多数の前立腺腫瘍上皮細胞は、TGFαおよびその受容体である上皮増殖因子受容体の両方を発現する。結果は、ヒト前立腺癌細胞株LNCaPにおけるPSMのインビトロでの発現に対するTGFαおよび他の選択された増殖因子およびサイトカインの効果を示す。
アンドロゲン枯渇培地中で成長する2×10個のLNCaP細胞を、0.1ng/ml〜100ng/mlの濃度のEGF、TGFα、TNFβまたはTNFαで24〜72時間処理した。該細胞から全RNAを抽出し、PSM mRNA発現をノーザンブロット分析およびレーザーデシメトリーにより定量した。未処理LNCaPと比べて、b−FGFおよびTGFαは共に、PSM発現を用量依存的に10倍アップレギュレーションし、EGFは5倍アップレギュレーションした。これに対し、他のグループは、この同じインビトロモデルにおいて、これらの増殖因子により誘導されるPSA発現の著しいダウンレギュレーションを示した。LNCaP細胞に対して細胞障害性であるTNFα、およびTNFβはアンドロゲン枯渇LNCaP細胞でPSM発現を8倍ダウンレギュレーションした。
TGFαは、攻撃的前立腺癌細胞に対して分裂促進性である。PSMには複数の形態があり、膜形態だけが腫瘍進行に関連していることが判明している。サイトカインおよび増殖因子で処理してPSM発現を操作することにより、サイトジェン(Cytogen)356イメージングの効力および前立腺転移の治療的標的化を向上させうる。
実施例9:
プライマーを用いるネスティッドRT−PCTで検出したところによれば、根治的前立腺切除術前のネオアジュバント(neoadjuvant)アンドロゲン喪失療法(ADT)により、残存微小転移疾患の発生率が有意に減少する
臨床的に限局性の前立腺癌に対する根治的前立腺切除術は「金本位(gold standard)」的治療であると考える人は多い。過去10年にわたる進歩は、罹患率を劇的に減少させるのに役立っている。臨床家が手術前に患者をよりよく段階づけするのを助けることを意図した改良が開発されてきたが、前立腺外拡張の発生率は、依然として50%を越えることが、多数の研究で報告されている。フェーズIIIの予見的無作為臨床研究を行った。この研究は、根治的前立腺切除術を受けている患者での3カ月間のADTの効果を、手術だけを受け同様に調和させた対照と比較するように設計されている。既に完了しているフェーズIIの研究は、ADT群(N=69)では10%のマージン陽性率を示したのに対して、手術だけの群では33%の陽性率(N=72)を示した。
フェイズIIIの研究を完了した患者を分析して、残存微小転移疾患に関してその2つの群の間に何らかの違いがあるか否かを判定した。前立腺切除術後の患者においてPCR結果が陽性であれば、循環中の生存可能転移細胞が確認されたことになる。
ADT群からの12人患者および対照群からの10人の患者でPSMプライマーを用いてネスティッドRT−PCRを行った。微小転移細胞が検出された患者は、対照群では9/10人(90%)なのに対し、ADT群ではわずか2/12人(16.7%)であった。器官限局性疾患の患者で陽性であったのは、ADT群では7人中1人なのに対し、対照群では3人中3人であった。前立腺外疾患の患者で陽性であったのは、ADT群では5人中1人なのに対して、対照群では7人中6人であった。これらの結果が示すとおり、ネオアジュバントADTを用いることにより、有意により多くの患者で腫瘍がなくなり、潜在的に「治癒した」。
実施例10:
循環前立腺腫瘍細胞の高感度ネスティッドRT−PCR検出−PSMおよびPSAに基づくアッセイ間での比較
高感度血清PSAアッセイ、CTスキャン、経直腸超音波検査法、直腸内co.I MRIなど、現在臨床家が利用できる多種多様な治療法が改良され拡大しているにもかかわらず、骨盤リンパ節切開および根治的前立腺切除術の際に転移疾患を有することが判明する患者が依然として多い。現在利用できる段階づけ方法によれば未検出のままとなる不顕性血行性微小転移前立腺細胞を検出する能力を有する高感度の逆転写PCRアッセイが開発された。このアッセイは、前立腺癌および他の悪性疾患の患者で行う同様のPCRアッセイの変法である(2, 3, 4, 5)。該アッセイは、前立腺特異的抗原(6)および最近クローニングされ配列決定された前立腺特異的膜抗原のcDNA配列に由来するPCRプライマーを使用する。
<材料および方法>
細胞および試薬
LNCaPおよびMCF−7細胞を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(Rockville, MD.)から入手した。これらの細胞株の樹立および特徴づけに関する詳細は、すでに公開されている(8, 9)。細胞は、L−グルタミン、非必須アミノ酸および5%ウシ胎仔血清(Gibco-BRL, Gaithersburg, MD)で補足したRPMI 1640培地中、COインキュベーター中37℃で成長させた。すべての細胞培地は、MSKCC メディア・プレパレーション・ファシリティー(Media Preparation Facility)から入手した。通常の化学試薬は可能な限り高い等級のものであり、シグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Company)(St. Louis, MO.)から入手した。
患者の血液標本
この研究で使用したすべての血液標本は、MSKCCのスタッフである泌尿器科医が外来診察室で会った患者からのものである。定期的に予定された採血時に、患者1人当たり2本の抗凝血管を得た。標本の入手は、各患者のインフォームドコンセントにより、MSKCCインスティチューショナル・レビュー・ボード(Institutional Review Board)の承認に従い行った。サンプルは、すぐに加工するためにただちに研究室へ運んだ。前立腺癌の患者からの77個の標本を無作為に選び、陰性対照からのサンプルと共に、「盲検的」に研究室へ移し、加工した。これらは、D段階の疾患の24人の患者(3人はD、3人はD、11人はD、および7人はD)、根治的前立腺切除術を既に受けており検出不可能な術後血清PSAレベルを有する31人の患者(18人はpT2病変、11人はpT3、および2人はpT4)、根治的前立腺切除術後の限局性再発性疾患の2人の患者、外部ビーム放射線治療または間隙性I125インプラントを受けた4人の患者、未治療の臨床段階がT1〜T2の疾患の10人の患者、および抗アンドロゲン療法を受けている臨床段階がT3の疾患の6人の患者を含んでいた。陰性対照として使用した40個の血液標本は、10人の健康な男性、生検により判明したBPHおよび上昇した血清PSAレベルを有する9人の男性、7人の健康な女性、4人の腎細胞癌の男性患者、2人の前立腺上皮内癌(PIN)患者、2人の膀胱および病理学的に正常な前立腺の移行上皮癌患者、1人の急性前立腺炎患者、1人の急性前骨髄球性白血病患者、1人の精巣癌患者、1人の腎細胞癌の女性患者、1人の肺癌患者、および1人の精巣嚢胞患者からのものであった。
血液サンプル加工/RNA抽出
4mlの全抗凝血静脈血を3mlの氷冷PBSと混合し、ついで14mlポリスチレン管中の8mlのフィコール(Pharmacia, Uppsala, Sweden)上に注意深く重層した。管を200×g、4℃で30分間遠心した。無菌パスツールピペットを用いて、バフィーコート層(約1ml)を注意深く除き、50mlポリプロピレン管中、50mlになるまで氷冷PBSで再希釈した。ついでこの管を2000×g、4℃で30分間遠心した。該上清を注意深くデカントし、該ペレットを滴下乾燥した。ついで1mlのRNazol Bを該ペレットに加え、製造業者の指示に従い(Cinna/Biotecx, Houston, TX.)、全RNAを単離した。RNA濃度および純度は、ベックマン(Beckman)DU 640分光光度計によるUV分光法およびゲル分析により測定した。
PCR感度の測定
RNAzol Bを用いて、LNCaP細胞および一定の比率(すなわち、1:100、1:1000など)のLNCaP細胞とMCF−7細胞との混合物からRNAを単離した。ついで、該アッセイの検出限界を測定するために、PSAとPSMの両プライマーを用いて後記のとおりにネスティッドPCRを行った。LNCaP:MCF−7(1:100,000)cDNAを蒸留水で希釈して、1:1,000,000の濃度を得た。ヒト乳癌細胞株MCF−7は既に本発明者らにより試験されており、PSMもPSAも発現しないことが免疫組織化学的方法および通常のPCRおよびネスティッドPCRにより示されていたため、MCF−7細胞を選んだ。
ポリメラーゼ連鎖反応
PSA外側プライマーは、PSA cDNAのエキソン4中のヌクレオチド494〜513(センス)およびエキソン5中のヌクレオチド960〜979(アンチセンス)である。これらのプライマーは、考えられる混入ゲノムDNAからの合成産物から識別できるPSA cDNAからの486bpのPCR生成物を与える。
PSA-494 5'-TAC CCA CTG CAT CAG GAA CA-3'
PSA-960 5'-CCT TGA AGC ACA CCA TTA CA-3'
PSA内側上流プライマーはヌクレオチド559から始まり、下流プライマーはヌクレオチド894から始まり、355bpのPCR生成物を与える。
PSA-559 5'-ACA CAG GCC AGG TAT TTC AG-3'
PSA-894 5'-GTC CAG CGT CCA GCA CAC AG-3'
すべてのプライマーは、MSKCCマイクロケミストリー・コア・ファシリティー(Microchemistry Core Facility)により合成された。5μgの全RNAを、製造業者の推奨に従い、ランダムヘキサマープライマー(Gibco-BRL)およびスーパースクリプト(Superscript)II 逆転写酵素(Gibco-BRL)を用いてcDNAに逆転写した。1μlのこのcDNAを外側プライマーPCR反応の出発鋳型として使用した。20μlのPCR混合物には、0.5U Taqポリメラーゼ(Promega)、プロメガ(Promega)反応緩衝液、1.5mM MgCl、200mM dNTPおよび1.0μMの各プライマーが含まれていた。ついで、この混合物をパーキンエルマー(Perkin Elmer)9600DNAサーマルサイクラーに移し、25サイクルのインキュベーションを行った。該PCRプロフィールは、以下のとおりであった:94℃×15秒、60℃×15秒および72℃×45秒。25サイクルの後、サンプルを氷上に載せ、この反応混合物の1μlを、該内側プラマーを用いる別の25サイクルの鋳型として使用した。管の最初のセットを該サーマルサイクラーへ戻し、さらに25サイクル行った。PSM外側上流プライマー配列はヌクレオチド1368〜1390であり、該下流プライマーはヌクレオチド1995〜2015であり、67bpのPCR生成物を与える。
PSM-1368 5'-CAG ATA TGT CAT TCT GGG AGG TC-3'
PSM-2015 5'-AAC ACC ATC CCT CCT CGA ACC-3'
PSM内側上流プライマーはヌクレオチド1689〜1713に伸長し、該下流プライマーはヌクレオチド1899〜1923に伸長し、234bpのPCR生成物を与える。
PSM-1689 5'-CCT AAC AAA AGA GCT GAA AAG CCC-3'
PSM-1923 5'-ACT GTG ATA CAG TGG ATA GCC GCT-3'
該PCRアッセイの出発DNA鋳型として、2μlのcDNAを使用した。該50μlのPCR混合物には、1U Taqポリメラーゼ(Boehringer Mannheim)、250M cNTP、10mM−β−メルカプトエタノール、2mM MgClおよび5μlの10×緩衝液混合物(166mM NH4SO4、670mMトリス, pH8.8および2mg/mlのアセチル化BSAを含有)が含まれていた。PCRは、以下のパラメーターを有するパーキンエルマー(Perkin Elmer)480DNAサーマルサイクラー中で行った:94℃×4分で1サイクル、94℃×30秒、58℃×1分および72℃×1分で25サイクル、ついで72℃×10分。ついでサンプルを氷冷し、この反応混合物の2.5μlを、該内側PSMプライマーを含有する新しい反応混合物を用いる別の25サイクルの鋳型として使用した。cDNAの質は、遍在性ハウスキーピング遺伝子であるβ−2−ミクログロブリン遺伝子配列(10)由来のプライマーを用いる対照反応を行うことにより確認した。これらのプライマーはエキソン2〜4に伸長し、620bpのPCR生成物を与える。これらのプライマーの配列は、以下のとおりである:
β-2(エキソン2) 5'-AGC AGA GAA TGG AAA GTC AAA-3'
β-2(エキソン4) 5'-TGT TGA TGT TGG ATA AGA GAA-3'。
全PSA混合物および7〜10μlの各PSM反応混合物を、1.5〜2%アガロースゲル上で移動させ、エチジウムブロミドで染色し、イーグル・アイ・ビデオ・イメージング・システム(Eagle Eye Video Imaging System)(Stratagene, Torrey Pines, CA.)中で写真撮影した。結果を確認するために、少なくとも2回、アッセイを繰り返した。
PCR生成物のクローニングおよび配列決定
TAクローニング系(Invitrogen)を用いて、PCR生成物をpCR IIプラスミドベクター中にクローニングした。これらのプラスミドを、標準的な方法(11)を用いてコンピテント大腸菌(E. coli)細胞中に形質転換し、マジック・マニプレップス(Magic Minipreps)(Promega)を用いてプラスミドDNAを単離し、制限分析によりスクリーニングした。ついで、35S−cCTP(NEN)およびシークエナーゼ(U.S. Biochemical)を用いてジデオキシ法(12)により二本鎖TAクローンを配列決定した。ついで、記載されているとおりに、配列決定産物を6%ポリアクリルアミド/7M 尿素ゲル上で分析し、固定し、乾燥し、オートラジオグラフィーに付した。
サザン分析
製造業者の指示に従いポシ・ブロッター(Posi-blotter)(Stratagene)を用いる圧力ブロッティングにより、PCR生成物を、エチジウム染色アガロースゲルからナイトラン(Nytran)ナイロン膜(Schleicher and Schuell)に移した。UVストラタリンカー(Stratalinker)(Stratagene)を用いて、DNAを該膜にクロスリンキングした。ブロットを65℃で2時間プレハイブリダイズし、ついで変性32P−標識ランダムプライムド(13)cDNAプローブ(PSMまたはPSAのいずれか)とハイブリダイズした(6, 7)。ブロットを1×SSC/0.5%SDS中、42℃で2回、0.1×SSC/0.5%SDS中、50℃で2回、それぞれ20分間洗浄した。膜を風乾し、ハイパーフィルム(Hyperfilm)MP(Amersham)を用いて室温で1〜3時間オートラジオグラフィーに付した。
<結果>
PSAおよびPSMネスティッドPCRアッセイ
ネスティッドPCRを適用することにより、検出レベルが、外側プライマーだけを用いた場合の平均値である1:10,000から、1:1,000,000より優れた値にまで上昇した。PSAおよびPSM−PCRの場合のこの感度の増加を示す希釈曲線を、それぞれ図1および2に示す。図1に示すとおり、PSA外側プライマーセットの486bpの産物は、エチジウム染色により1:10,000希釈まで明確に検出可能であり、一方、PSA内側プライマーの355bpの産物は、示しているすべての希釈において明確に検出可能である。また、図2では、PSM外側プライマーの647bpの産物が通常のPCRにより明確に検出可能なのは1:10,000までの希釈にすぎないが、PSM内側ネスティッドPCRの234bpの産物は1:1,000,000に希釈においても検出される。特異性を確認するために、対照のすべておよび患者のサンプルのほとんで、サザンブロット法を行った。それぞれの希釈曲線のサザンブロットから、該プライマーの特異性は確認されたが、感度の有意な増加は示されなかった。
陰性対照でのPCR
材料および方法の項に記載したとおりに、患者およびボランティアからの40個のサンプルについてネスティッドPSAおよびPSM PCRを行った。図48は、陽性対照に加えて4つの代表的陰性対照標本からの結果を示す。この図に示すとおり、RNAの完全性を確認するために、この研究の各標本はβ−2−ミクログロブリン対照と共にアッセイした。PSAプライマーを用いた場合には、これらのサンプルの39個で陰性結果が得られたが、PSMネスティッドPCRでは4個の陽性結果が得られた。これらの「偽陽性」の2つは、血清PSA値が上昇し、前立腺が拡大しており、経直腸前立腺生検を受けたところ間質および線維筋過形成が示された患者に相当する。これらの両患者では、血清PSAレベルが上昇し続け、後日再び行った前立腺生検により前立腺癌が示された。精巣嚢胞で該診察室に現れた1人の患者は、PSMネスティッドPCRで陽性結果を有することが判明し、これについては説明不可能である。残念なことに、この患者はフォローアップに戻らなかったため、このアッセイを繰り返すための別の血液サンプルを得られなかった。腎細胞癌の61歳の男性患者で、PSAおよびPSMの両プライマーを用いて陽性結果が得られた。この患者は、血清PSAレベルが正常であり、指による直腸検査が正常である。全体としては、陽性PCR(他の臨床試験ではない)が前立腺癌の存在を正確に予想した2人の患者を除外すれば、36/38(94.7%)の陰性対照がPSMプライマーで陰性であり、39/40(97.5%)がPSAプライマーを用いて陰性であった。
患者のサンプル
研究スタッフに各標本の性質が知られないように「盲検的」に、40個の陰性対照と無作為に混合した77人の患者からの117個のサンプルをアッセイした。既に記載したとおり、その患者のサンプルは、種々の異種群から選ばれたものである。いくつかの代表的な患者のサンプルを図49に示すが、これは、限局性および散在性の両方の疾患の患者からの陽性結果に対応する。患者4および5は共にD段階の前立腺癌の患者であり、外側および内側の両プライマー対により陽性結果を示したが、これは、他のサンプルと比べて、大きな循環腫瘍細胞負荷を示すものである。既に示したとおり、PSMおよびPSAプライマーはLNCaP希釈曲線で同様の感度を示したが、PSMプライマーは該患者サンプルの62.3%で微小転移を検出したのに対し、PSAプライマーは9.1%を検出したにすぎなかった。抗アンドロゲン治療を受けている実証された転移前立腺癌(D0〜D3段階)の患者で、PSMプライマーは16/24(66.7%)で微小転移を検出したのに対し、PSAプライマーは6/24(25%)で循環細胞を検出したにすぎなかった。この研究では、ホルモン無反応性前立腺癌(D3段階)の6/7の患者が陽性だった。この研究で、PSAプライマーが微小転移細胞を示したのは、根治的前立腺切除術後のpT3またはpT4(局所的に進行した)のいずれかの前立腺癌患者のわずか1/15(6.7%)であった。PSMプライマーは、これらの患者の9/15(60%)で循環細胞を検出した。興味深いことに、根治的前立腺切除術後のpT2(器官限局性)前立腺癌の13/18(72.2%)の患者で、PSMプライマーを用いることにより循環細胞が検出された。これらの患者のサンプルはいずれも、PSA−PCRで陽性ではなかった。
免疫組織化学的方法(14)およびポリメラーゼ連鎖反応(3, 4, 5)を用いて最小の不顕性微小転移疾患を検出するための高感度改良法が、いくつかの悪性疾患について報告されている。前立腺癌における不顕性血行微小転移を検出するためのPCRの適用については、Morenoら(2)が最初に記載しており、これはPSA由来プライマーを用いる通常のPCRによるものである。
免疫組織化学的方法およびmRNA分析によりインビトロのヒト前立腺腫瘍および前立腺癌細胞を研究したところ、PSAと比べて、PSMは退形成細胞、ホルモン無反応性細胞および骨転移(22, 23, 24)中で高度に発現されるようであった。血行転移能を有する細胞がより攻撃的な低分化細胞に相当すれば、それらは、PSAより高レベルのPSMを1細胞当たりで発現すると考えられ、このためRT−PCRによるその検出能が向上する。
ネスティッドRT−PCRアッセイは高感度かつ特異的である。繰り返し行った場合でも、結果は確実に再現されている。cDNAおよびRNAの両方の安定性についての長期試験が、現在進行中である。両アッセイは、同様の大きさの少なくとも百万個の非前立腺細胞の中の1個の前立腺細胞を検出する能力を有する。このことは、PSMおよびPSAの両プライマー間の比較の妥当性を証明するものである。インビボのヒト前立腺癌細胞およびインビトロのLNCaP細胞において、同様のレベルのPSM発現が得られた。PSM−PCRで陽性結果が出た2人の「陰性対照」患者が後で前立腺癌だと判明したという知見は、PSM−PCRアッセイの特異性を支持するものであった。このことは、この技術が癌スクリーニングのための感動的な潜在的適用性を示唆する。PSAプライマーが病理学的に器官限局性の前立腺癌の患者の微小転移性細胞を正確に検出する能力については、該アッセイが高感度であるにもかかわらず、最近公開されたデータ(18)に対する有意性は得られなかった。「治癒的」な根治的前立腺切除術の後で不顕性循環前立腺細胞を有する限局性前立腺癌の患者がやや驚くほどに高い割合であるが、このことは、微小転移が前立腺癌の初期イベントであることを示唆するものである。
この強力で新しい療法を前立腺癌の患者で潜在的に段階づけおよび/または治療に対する反応を追跡するのに適用することについては、疑いなく、さらに研究の価値がある。不顕性腫瘍細胞の分子検出に比べると、前立腺癌拡張を検出するための現在の臨床的方法は不十分だと考えられる。
参考文献5
Figure 2005185276
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実施例11:
蛍光in-situハイブリダイゼーションによるコスミドクローン194および683の染色体上の位置決定:
まずPSMをマッピングしたところ、これは染色体11p11.2−p13上に位置していた(図51〜54)。さらにcDNAin-situハイブリダイゼーション実験の情報からは、q腕上でp腕と同程度のハイブリダイゼーションが示された。ゲノムDNAのより一層大きな断片がコスミドとして得られ、これらのうちの2つ(それぞれ約60キロベースで、一方は3'へ、もう一方は5'へ伸長する)は、厳密性の低い条件下で第11染色体のpおよびqに対する結合性を示した。しかしながら、より高い緊縮条件下では、11q14〜q21での結合だけが残った。この結果は、PSMと非常に類似したもう1つの遺伝子が11p上に存在することを示唆する。なぜなら、それは、ゲノムDNAの約120キロベースに対して非常に強く結合するからである(図50)。
コスミドクローン194および683からの精製DNAを、ニックトランスレーションによりビオチンdUTPで標識した。標識プローブを剪断ヒトDNAと一緒にし、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸および2×SSCを含有する溶液中、別々にPHA刺激末梢血リンパ球由来の正常中期染色体とハイブリダイズさせたた。該ハイブリダイゼーションスライドをフルオレセイン結合アビジン中でインキュベーションすることにより、特異的ハイブリダイゼーションシグナルを検出した。シグナル検出の後、該スライドをヨウ化プロピジウムで対比染色し分析した。これらの第1の実験により、長短両腕上のグループC染色体の特異的標識を得た。この染色体は、そのサイズおよび形態に基づき、第11染色体だと考えられている。一連の第2の実験では、第11染色体セントロメア特異的プローブを該コスミドクローンとコハイブリダイゼーションした。厳密性の低いハイブリダイゼーションを行う場合に観察される交差反応性シグナルを除去するため、これらの実験は60%ホルムアミド中で行った。これらの実験により、第11染色体のセントロメアおよび長腕の特異的標識が得られた。10個の特異的標識第11染色体を測定したところ、コスミドクローンは、該セントロメアから染色体11q腕のテロメアまでの距離の44%の位置(バンド14qに相当する領域)にあることが示された。合計160個の中期細胞を調べたところ、153個で特異的標識が示された。
PSMゲノムDNAの5'上流および3'下流領域のクローニング。ヒト繊維芽細胞ゲノムDNAのバクテリオファージP1ライブラリー(Genomic Systems, St. Louis, MI)を、PierceらのPCR法によりスクリーニングした。PSM cDNAの5'または3'のいずれかの末端に位置するプライマー対を使用した。陽性コスミドクローンを制限酵素で消化し、PSM cDNAの5'または3'のいずれかの末端から構築したプローブを用いるサザン分析により確認した。陽性クローンp683は、PSM cDNAの5'領域および約60kbの上流領域を含有する。クローン−194は、PSM cDNAの3'末端および約60kbの下流を含有する。
実施例12:
ペプチダーゼ酵素活性
PSMは2型膜タンパク質である。ほとんどの2型膜タンパク質は結合タンパク質、輸送タンパク質またはペプチダーゼである。PSMはペプチダーゼ活性を有するらしい。基質N−アセチル−アスパルチル−14Cグルタミン酸(NAAG)を用いてLNCaP細胞を調べたところ、グルタミン酸が遊離したため、カルボキシペプチダーゼとして働いている。インビトロで翻訳されたPSMメーセージもこのペプチダーゼ活性を有していた。
その結果が示すところによれば、精漿はそのグルタミン酸含量に富み、その増加レベルが所望の生物学的活性を有するのであれば、未分解正常基質の活性を増強する阻害剤を設計しうる。また、生物学的活性を測定して、それがメッセージのレベルとどのように相関しているかを調べることができる。in-situ分析または免疫組織化学的プローブを用いて、間接的にではなく直接的に、組織の活性を調べてもよい。非常に類似したもう1つの遺伝子が第11染色体のもう一方の腕上にあるため、単離し発現させた該クローン化遺伝子を用いて、基質の相違が何かを判定し、PSM関連活性の同定にそれらの基質を用いることができる(例えば、循環細胞における転移の探索)。
実施例13:
前立腺組織内のチャンネル型グルタミン酸受容体の分布
<緒言>:
中枢神経系(CNS)での興奮性神経伝達は、主にグルタミン酸受容体により媒介される。ヒトCNSでは、2つの型のグルタミン酸受容体(第2メッセンジャー系と共役している代謝調節型受容体、およびリガンド依存性イオンチャネルとして働くイオンチャンネル型受容体)が同定されている。ヒト前立腺組織内のイオンチャネル型グルタミン酸受容体の存在を調べた。
<方法>:
パラフィン包埋ヒト前立腺組織で抗GluR2/3および抗ビオチン免疫組織化学技術を用いて、グルタミン酸受容体発現の検出を行った。PSM抗原は、グルタミン酸を遊離するように作用するニューロカルボキシペプチダーゼである。CNSにおいて、グルタミン酸はグルタミン酸作動性イオンチャンネルに作用することにより神経伝達物質として作用し、カルシウムイオンなどのイオン流動を増加させる。グルタミン酸シグナルが細胞活性に変換される1つの方法は、NOシンターゼの活性化である。最近、NOシンターゼはヒト組織中に存在することが判明した。NOは主要なシグナル伝達機構であり、細胞の成長および死の制御、炎症に対する応答、平滑筋細胞収縮などに関与している。前立腺では、支質のほとんどが平滑筋である。前立腺はグルタミン酸作動性受容体に富むことが知見されており、この関係が解明され始めている。支質異常は、BPHの重要な特徴である。支質上皮相互作用はBPHおよびCaPの両方で重要である。もう一方のグルタミン酸作動性受容体は、Gタンパク質を介して細胞の代謝を変化させる。
<結果>:
抗GluR2/3免疫反応性は前立腺支質に特有であり、前立腺上皮画分には存在しなかった。強力な抗GluR4免疫反応性が前立腺房の基底細胞で観察された。
<考察>:
イオンチャネル型グルタミン酸受容体サブタイプの分布が前立腺の支質と上皮の画分間で異なることについては、未だ記載されていない。前立腺特異的膜抗原(PSMA)は同様の前立腺分布を有し、発現は上皮画分に限定される。PSM抗原は、NAAG1からグルタミン酸を遊離するように作用するニューロカルボキシペプチダーゼであり、神経伝達物質である可能性もある。CNSで、グルタミン酸はグルタミン酸作動性(glutaminergic)イオンチャンネルに作用することにより神経伝達物質として作用し、カルシウムイオンなどのイオン流動を増加させる。グルタミン酸シグナルが細胞活性に変換される1つの方法は、NOシンターゼの活性化である。最近、NOシンターゼはヒト組織中に存在することが判明した。NOは主要なシグナル伝達機構であり、細胞の成長および死の制御、炎症に対する応答、平滑筋細胞収縮などに関与している。前立腺では、支質のほとんどが平滑筋である。前立腺はグルタミン酸作動性受容体に富む。支質異常は、BPHの重要な特徴である。支質上皮相互作用はBPHおよびCaPの両方で重要である。もう一方のグルタミン酸作動性受容体は、Gタンパク質を介して細胞の代謝を変化させる。グルタミン酸は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)のカルボキシペプチダーゼ活性を介して大脳皮質内で産生されうる。この場所で、PSMAはアセチル−アスパルチル−グルタミン酸からグルタミン酸を切断する。総合すると、これらの観察はヒト前立腺におけるPSMAの機能を示唆するものであり、グルタミン酸は、おそらく上皮−支質相互作用を媒介する自己分泌および/またはパラ分泌シグナル伝達分子と考えられる。イオンチャンネル型グルタミン酸受容体は、ヒト前立腺内で独特の区画分布を示す。
カルボキシペプチダーゼ様活性の1つである基質は、ジペプチドN−アセチル−アスパルチルグルタミン酸(NAAG)であり、これは、中枢神経系で神経伝達物質として作用する今日見いだされている最良の基質の1つである。その異常な機能は、てんかん、ALS、アルツハイマーなどの神経毒性障害と関連していると考えられる。PSMカルボキシペプチダーゼは、前立腺内で神経ペプチド伝達物質をプロセッシングするように働くと考えられる。神経ペプチド伝達物質は前立腺の神経内分泌細胞と関連しており、前立腺腫瘍の進行において何らかの役割を果たしていると考えられている。興味深いことに、癌ではPSM抗原の発現がアップレギュレーションされる。TGF−a、bFGFなどの前立腺増殖因子として作用することが公知のペプチドは、該抗原の発現をアップレギュレーションする。一方、TNFはPSMをダウンレギュレーションする。TGFおよびFGFは分裂促進因子活性化シグナル伝達経路を通じて作用するのに対し、TNFはストレス活性化プロテインキナーゼ経路を通じて作用する。したがって、PSM発現のモジュレーションは治療の改善に有用である。
実施例14:
ヒト前立腺癌中で発現される膜結合プテロイルポリガンマグルタミルカルボキシペプチダーゼ(葉酸加水分解酵素)の同定
PSMは、葉酸加水分解酵素およびカルボキシニューロペプチダーゼとしての活性を有すると考えられる。細胞障害性薬メトトレキセートが腫瘍毒素となるためには、それが該細胞内に入り、ポリガンマグルタミン酸化されて活性化される必要がある。なぜなら、ポリガンマグルタミン酸化形態は酵素基質として働き、また、ポリガンマグルタミン酸化形態または毒素は該細胞により保持されるからである。葉酸加水分解酵素は競合的反応で作用し、メトトレキセートを脱グルタミン酸化し、ついでこれは該細胞から逆拡散しうる。葉酸加水分解酵素にさらされ過ぎた細胞は、メトトレキセートに抵抗性である。このことは、前立腺癌が常にメトトレキセート療法に絶対無反応性である理由を説明しうる。なぜなら、前立腺および前立腺癌は多量の葉酸加水分解活性を有するからである。しかしながら、この活性に基づき、腫瘍部位で活性化されるプロドラッグ(例、N−ホスホノアセチル−1−アスパラギン酸−グルタミン酸)を生成させてもよい。PALgluは、NAAGを基質とする酵素活性の阻害剤である。
前立腺特異的膜抗原は前立腺癌細胞株LNCaPから免疫沈降し、それは葉酸加水分解酵素活性に富むことが示された。ガンマグルタミン酸化葉酸またはポリグルタミン酸化メトトレキセートは、この時点までの報告で最も強力な阻害剤であったキスカル酸よりはるかに強力なニューロペプチダーゼ活性阻害剤であり、ポリグルタミン酸化葉酸が好ましい基質であるという見解と一致する。
ペンタ−ガンマグルタミル−葉酸は非常に強力な活性阻害剤である(該酵素活性の阻害は、0.5uMのKiによる)。ペンタ−ガンマグルタミル−葉酸は基質でもあり、葉酸は細胞内に輸送されるためには脱ポリガンマグルタミン酸化される必要があるため、このことは、この酵素が葉酸代謝で何らかの役割を果たしていることを示唆する。葉酸は、細胞機能および成長を助けるのに必要であり、したがって、この酵素は、前立腺および前立腺癌への葉酸の接近をモジュレーションする働きがあると考えられる。PSMが発現されるもう一方の領域は小腸である。葉酸の取り込みに関与する小腸の鍵酵素は、葉酸から末端ガンマグルタミニル基を逐次的にタンパク質分解により除去する際に、ガンマカルボキシペプチダーゼとして作用することが判明している。骨では、高レベルの異常ガンマグルタミン酸修飾タンパク質が存在しており、該タンパク質中では、ガンマグルタミル基がさらにカルボキシル化されてガンマカルボキシグルタミン酸またはGLAを生成している。そのような1つのタンパク質はオステオネクチンである。
キャピラリー電気泳動により、アンドロゲン感受性ヒト前立腺癌細胞(LNCaP)からの膜調製物中でプテロイルポリ−ガンマ−グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ(加水分解)活性を調べた。該酵素は、前立腺特異的膜(PSM)抗原を認識する抗前立腺モノクローナル抗体(7E11−C5)の誘導体と免疫学的に交差反応する。PSM酵素はメトトレキセートトリグルタマート(MTXGlu3)および葉酸ペンタグルタマート(Pte Glu3)からグルタミン酸を次第に放出させ、それぞれMTXおよびGluを蓄積させるため、PSM酵素はガンマ−グルタミル結合を加水分解するエキソペプチダーゼである。半精製膜結合酵素は、pH2〜10で広域活性を有し、pH4.0で最大活性を示す。酵素活性は、ジチオトレイトール(0.2mM以上)により少し阻害されるが、還元型グルタチオン、ヘモシステインまたはp−ヒドロキシ安息香酸水銀(0.05〜0.5mM)では阻害されなかった。LNCaP細胞膜とは対照的に、アンドロゲン無感受性ヒト前立腺(TSU−Prl、Duke−145、PC−3)およびエストロゲン感受性乳房腺癌(MCF−7)細胞から単離された膜は、比較しうる加水分解活性を示さないし、7E11−C5とも反応しない。このようにして、LNCaP細胞において、エキソペプチダーゼ活性を示しこの細胞中で強く発現される葉酸加水分解酵素が同定された。
N−アセチルアスパルチルグルタミン酸(NAAG1)(図59)を製造することにより、PALAグルタミン酸3のプロドラッグ戦略の効果を調べた。NAAGの合成は、商業的に入手可能なガンマ−ベンジルアスパルタートから行い、これをピリジン中無水酢酸でアセチル化して、N−アセチルガンマ−ベンジルアスパルタートをほぼ定量的に得た。その後者を、ピリジン中、0℃で1時間ペンタフルオロフェニルトリフルオロアセタートで処理することにより、そのペンタフルオロフェニルエステルとして活性化した。この活性化エステルは、化合物1および4(図60)の製造における中心物質である。THF−DMF(テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド)中、HOAT(1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール)の存在下、還流温度で一晩、6をイプシロン−ベンジル−L−グルタマートと反応させ、水素化分解(H2、30psi、10%Pd/C、酢酸エチル中)によりベンジル保護基を除去すると、商業的に入手可能なNAAG(Sigma)とあらゆる点で一致する生成物が得られた。
単なるアセタートではなく保護されたホスホノアセタート部を導入することにより、同様にして、PALA−グルタミン酸3および類似体5を合成した。それは、比較的穏やかな条件下でエチル基を脱離させるジエチルホスホノ酢酸の機能に適合しうる。
商業的に入手可能なジエチルホスホノ酢酸をペンタフルオロフェニルアセタートと、ピリジン中0℃から室温で1時間処理し、ショートパスカラムクロマトグラフィーの後、対応するペンタオフルオロエステルをほぼ定量的に得た。ついでこれをガンマベンジルアスパルタートおよびHOATとテトラヒドロフラン中、還流温度で30分間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーの後、保護されたPALA7(N−ホスホノアセチルアスパルタート)を収率90%で得た。ついで該遊離酸をそのペンタフルオロフェニルエステル8として活性化し、ついでそれを、THF−DMF(9:1, v/v)の混合物中、還流温度で12時間、デルタ−ベンジル−L−グルタマートおよびHOATと反応させ、カラムクロマトグラフィーの後、完全に保護されたPALA−グルタミン酸9を収率66%で得た。ベンジル基とエチル基の両方を1工程で脱保護することにより、エチル基の連続的脱離およびそれに続く脱ベンジル化を行った。したがって、保護PALA−グルタミン酸をニートのトリメチルシリルクロリド中で還流するまで一晩加熱した。得られたビストリメチルシリルホスホナートエステル10を、精製することなく水素化分解(H2、30psi、10%Pd/C、酢酸エチル)に付した。逆相カラムクロマトグラフィーおよびイオン交換樹脂により精製した後、所望の物質3を単離した。
アルファ−カルボキシル−保護グルタミン酸からホスホノグルタミン酸14を製造することにより、類似体4および5を合成した。
商業的に入手可能なアルファ−ベンジル−N−Boc−L−グルタマート11を、THFの還流温度でニートのボランジメチルスルフィド錯体と反応させて、対応するアルコールを収率90%で得た。常法(PpH3、CBr4)により、これをブロミド12に変換した。
亜リン酸トリエチルを用いるミカエリス−アルブゾフ反応により対応するジエチルホスホナート13を得、これをトロフルオロ酢酸により窒素の位置で脱保護して遊離アミノ酸14を得た。その後者をペンタフルオロフェニルエステル6または8のいずれかと、3に関して記載したのと同様の条件下で別々に縮合して、それぞれ16および15を得た。15および16を3と同様に脱保護して、所望の類似体4および5を得た。
DON(6−ジアゾ−5−オキソ−ノルロイシン)またはそのアスパラギン酸(17など)およびグルタミン酸(18など)類似体などのプリンおよびピリミジンの代謝阻害剤を一連の基質に加えた。
類似体20を塩化オキサリル、ついでジアゾメタンで処理し、脱保護して(公知条件下)所望のアナログを得ることにより、化合物17に変換する。また、アゾトマイシンは、PSMが類似体17、18および19に作用した後で遊離されるDONへインビボで変換された後でのみ活性である。
また、全てではないがほとんどの化学療法は1つの仮定に基づいている。成長の早い細胞は正常細胞と比べて、栄養素に対する要求度が高い、というものである。したがって、該細胞はその近くの化学療法薬のほとんどを取り込む。このため、化学療法は、患者を生命の危機に直面させることがある重篤な二次効果(免疫系の減弱、毛の喪失など)と関連しているのである。傷害されてはならない部位を傷害することなく治癒の必要な部位を治癒する選択的かつ効果的な薬物は、代表的構造式21および22で例示される。
代表的化合物21および22は、PSMのいくつかの特異的効果および特徴、およびいくつかの新しく知見された細胞障害性分子(現在、作用機序は公知である)の独特の特徴に基づいて設計された。後者は一般にエンジインと称され、例えばダイネマイシンA 23および/またはその活性類似体などが挙げられる。ダイネマイシンA 23などの新規天然産物が最近単離されたことにより、医学および化学分野において非常に関心が高まってきている。それらは、ナノモルレベル以下で多数の癌細胞株に細胞毒性を示している。1つの問題点は、それらは毒性が高く、不安定で非選択的なことである。それらは、以下に示すラジカル機構によるDNA損傷によりインビトロで活性を示しているが、それらの高レベルの毒性は、それらがその経路でタンパク質、酵素などのいずれに対しても同等に損傷を与えうることを暗示するものである。
これらの分子は特異な構造的特徴を有し、そのため例外的な反応性を有する。ダイナマイシンA 23は、アントラキノン部分がヒドロアントラキノン24へ生物的に還元されるまでは比較的安定であるが、これにより一連のイベントが誘発され、バーグマン芳香環化によりジラジカル種25が生成する。ジラジカル種25は、ダイナマイシンAの最終的な損傷刃(damaging edge)である。それは、いずれかの隣接分子(すなわちDNA)から2個のプロトンを引き抜いて、分子中にラジカルを生成する。今度はこれらのラジカルが分子状酸素と結び付いてヒドロペルオキシド中間体を与え、DNAの場合には、これが一本鎖または二本鎖切断および細胞死を引き起こす。もう1つの興味深い特徴は、多数の有機化学者の精力的な研究から得られた。彼らは、(+)−ダイネマイシンA 23および他のエンジインの全合成を行っただけでなく、より単純であるが活性なアナログ(例、26)を設計し効率的に製造した。
エンジイン26も、23と同じメカニズムにより誘発され作用する。この観点は、本研究での提案と非常に関連性がある。すなわち、27(26の非常に近い類似体)をNAAGに結合させ、得られるNAAG−27分子(21)が前立腺癌および転移細胞の付近を除く体内のあらゆる部位(血液、器官、正常前立腺細胞など)で不活性となるようにするのである。これに関して、NAAGは以下の複数の役割を果たす:
− 可溶化および輸送:26のタイプの類似体は疎水性であり水性媒体中で不溶性であるが、体内に固有の水溶性ジペプチドにより、基質21は、NAAGが輸送され体内に貯蔵されるのと同じ経路をたどるはすである。
− 認識、誘導および選択性:PSMの同族体は小腸および脳内に位置する。
後者に関しては、27などの化合物はNAAGなどの多荷電ジペプチドに結合すると、血液脳関門を通過する可能性がない。前者に関しては、小腸内のPSM同族体濃度は、前立腺癌細胞中のPSM濃度に比べて非常に低い。さらに、前立腺への局所注射により、該プロドラッグの輸送選択性を向上させることができる。この戦略のもう1つの構想は、以下のように組み立てることができる。前立腺癌が戦争であり、該戦域の平和的環境の損傷を最小限にするために「スマート爆弾」が必要だとすると、21はその「スマート爆弾」である。NAAGはその誘導システムであり、PSMは誘発装置であり、27は弾頭である。
26およびその類似体は、ダイナマイシンAの活性を発現する確立された活性分子である。それらの合成は本明細書中に記載されている。光学活性な27の全合成は既に記載されている。28の製造のための合成スキームは、27のものとほとんど同じであり、メトキシ基の位置だけが異なる。28の場合には、メトキシ基は窒素に対してメタ位にある。これは29のタイプの中間体を必要とし、これはMyers法の変法により製造されることとなる。化合物28は26と非常によく似ており、おそらく最も類似した光学活性類似体であろう。後者の活性は公知で非常に高い。
NAAGは光学的に純粋であるため、それがラセミ体と混ざると中間体の精製が複雑になることがある。さらに、この系の成分を一度で修飾するためには、21および22のタイプの光学的に純粋な中間体を製造する。27は、商業的に入手可能な物質から17工程で製造した。27のもう1つの興味深い特徴は、非常に類似した類似体26と同様、矢印で示す2つの誘導装置を有することである。
該酸素および窒素は共に、バーグマン芳香環化およびそれによる所望の障害を引き起こしうる。いずれかの官能基の簡単な保護・脱保護操作により、該窒素または酸素中心におけるNAAGの選択的な位置づけが可能となるはずである。PSMは21または22のNAAG部分を認識するはずであり、それによりグルタミン酸部分を脱離させるのである。これは、27をN−アセチルアスパラギン酸に結合したままの状態に保つ。
N−アセチルアスパラギン酸などの系の分子内支援加水分解は、文献に十分に記載されている。該アミノ酸部分がそのような結合の加水分解を促進するはずである。NAAGが窒素上に位置しこれが作用しない場合には、その代わりに、NAAGを酸素に結合させてフェノール性エステル22を得るが、これはそれ自体が不安定であり穏やかな条件下で除去される。PSM特異的基質は、前立腺腫瘍細胞部位でプロドラッグを活性化して、それらの細胞を殺すように設計しうる。PSM特異的基質は、良性前立腺過形成の治療に使用してもよい。
実施例15:
PSMエキソン/イントロン結合配列のゲノム体制

エキソン 1 イントロン 1
1F. 鎖
CGGCTTCCTCTTCGG
cggcttcctcttcgg taggggggcgcgtcgcggag...tatttttca

1R. 鎖 ...ataaaaagtCCCACCAAA

エキソン 2 イントロン 2
2F. 鎖
ACATCAAGAAGTTCT
acatcaagaagttct caagtaagtccatactcgaag...

2R. 鎖 ...caagtggtcATTAAAATG

エキソン 3 イントロン 3
3F. 鎖
GAAGATGGAAATGAG
gaagatggaaatgag gtaaaatataaataaataaataa...

エキソン 4 イントロン 4
4F. 鎖
AAGGAATGCCAGAGG
aaggaatgccagagg taaaaacacagtgcaacaaa...

4R. 鎖 ...agagttgTCCCGCTAGAT

エキソン 5 イントロン 5
5F. 鎖
CAGAGGAAATAAGGT
cagaggaaataaggt aggtaaaaattatctctttttt...
...gtgttttctAGGTTAAAAATG

5R. 鎖 ...cacttttgaTCCAATTT

エキソン 6 イントロン 6
6F. 鎖
GTTACCCAGCAAATG
gttacccagcaatg gtgaatgatcaatccttgaat...

6R. 鎖 ...aaaaaaagtCTTATACGAATA

エキソン 7 イントロン 7
7F. 鎖
ACAGAAGCTCCTAGA
acagaagctcctaga gtaagtttgtaagaaaccargg...

7R . 鎖 ...aaacacaggttatcTTTTTACCCA

エキソン 8 イントロン 8
8F. 鎖
AAACTTTTCTACACA
aaacttttctacaca gttaagagactatataaatttta...

8R. 鎖 ...aaacgtaatcaTTTTCAGTTCTAC

エキソン 9F. イントロン 9
9F. 鎖
AGCAGTGGAACCAG
agcagtggaaccag gtaaaggaatcgtttgctagca...
...tttctagatAGATATGTCATTC

9R. 鎖 ...aaagaTCTGTCTATACAGTAA

エキソン 10 イントロン 10
10F. 鎖
CTGAAAAAGGAAGG
ctgaaaaaggaagg taatacaaacaaatagcaagaa...

エキソン 11 イントロン 11
11F. 鎖
TGAGTGGGCAGAGG
agagg ttagttggtaatttgctataatata...

エキソン 13 イントロン 12
12R. 鎖
GAGTGTAGTTTCCT
gtagtttcct gaaaaataagaaaagaatagat...

エキソン 14 イントロン 13
13R. 鎖
AGGGCTTTTCAGCT
agggcttttcagct acacaaattaaaagaaaaaaag...

エキソン 14 イントロン 14
14F. 鎖
GTGGCATGCCCAGG
gtggcatgcccagg taaataaatgaatgaagtttcca...

エキソン 16 イントロン 15
15R. 鎖
AATTTGTTTGTTTCC
aatttgtttgtttcc tacagaaaaaacaacaaaaca...

エキソン 16 イントロン 16
16F. 鎖
CAGTGTATCATTTG
cagtgtatcatttg gtatgttacccttcctttttcaaatt...
...tttcagATTCACTTTTTT

16R. 鎖 ...aaagtcTAAGTGAAAA

エキソン 17 イントロン 17
17F. 鎖
TTTGACAAAAGCAA
tttgacaaaagcaa gtatgttctacatatatgtgcatat...

17R. 鎖 ...aaagagtcGGGTTA

エキソン 18 イントロン 18
18F. 鎖
GGCCTTTTTATAGG
ggcctttttatagg taaganaagaaaatatgactcct...

18R. 鎖 ...aatagttgTGTAAACCC

エキソン 19 イントロン 19
19F. 鎖
GAATATTATATATA
gaatattatatata gttatgtgagtgtttatatatgtgtgt...

注: F: フォワード鎖
: R: リバース鎖
図1は、PSM抗原のウエスタン分析の結果を示すオートラジオグラムである。レーン2のシグナルは、100kDのPSM抗原を示す。EGFrを陽性対照として使用し、これをレーン1に示す。ウサギ抗マウス(RAM)抗体単独でのインキュベーションを陰性対照として用い、これをレーン3に示す。 図2は、PSM抗原の免疫沈降法の結果を示すオートラジオグラムである。 図2A〜2D:上側の2つの写真は、PSM抗原について陽性に染色するLNCaPサイトスピンを示す。左下はDU−145、右下はPC−3サイトスピンであり、両者はPSM抗原発現について陰性である。 図3A〜3D:上側の2つのパネルは、PSM抗原について陽性に染色するヒト前立腺切片(BPH)である。下側の2つのパネルは、PSM抗原の発現について陽性に染色する侵襲性前立腺癌ヒト切片を示す。 Cyt−356抗体による35S−メチオニン標識LNCaP細胞の免疫沈降後の100kDのPSM抗原。 エチジウムブロミドで染色された3%アガロースゲルであり、縮重PSM抗原プライマーを用いて得たPCR生成物を示す。矢印は、1.1kb PCR生成物であるサンプルIN−20を示し、これは、PSM遺伝子をコードする部分cDNAであることが後で確認された。 図6A−6B:PCR生成物のTAクローニングにより得たプラスミドDNAの2%アガロースゲル。EcoRIで消化することにより、挿入物をPCR IIベクター(Invitrogen Corp.)から切り出した。1.1kbのPSM遺伝子部分cDNA産物を、ゲル1のレーン3に示す。 M−MLV逆転写酵素を用いて出願人のLNCaPライブラリーで示されるcDNAのサイズを示すオートラジオグラム。 cDNAライブラリーをスクリーニングした後で得たPSM遺伝子の完全長クローンの制限分析。該挿入物を遊離するように、サンプルはNot IおよびSal I制限酵素で切断されている。 完全長PSM遺伝子クローンのプラスミドサザンオートラジオグラム。サイズは約2.7kbである。 LNCaPプロテアーゼ癌系およびH26 RasでトランスフェクションされたLNCaP細胞株に限定されているPSM発現を表すノーザンブロット。PC−3、DU−145、T−24、SKRC−27、HELA、MCF−7、HL−60、その他はすべて陰性であった。 LNCaP細胞株にユニークな(レーン1)、およびDU−145(レーン2)およびPC−3細胞株(レーン3)に存在しない2.8kb PSMメッセージの発現を表すノーザン分析のオートラジオグラム。RNAサイズラダーを、左に示し(kb)、28Sおよび18SリボソームRNAバンドを右に示す。 図12A〜12B:PSM遺伝子プライマーを用いるヒト前立腺組織のPCRの結果。レーンは、左から右へ番号が付されている。レーン1はLNCaP、レーン2はH26、レーン3はDU−145、レーン4は正常前立腺、レーン5はBPH、レーン6は前立腺癌、レーン7はBPH、レーン8は正常、レーン9はBPH、レーン10はBPH、レーン11はBPH、レーン12は正常、レーン13は正常、レーン14は癌、レーン15は癌、レーン16は癌、レーン17は正常、レーン18は癌、レーン19はIN−20対照、レーン20はPSM cDNAである。 PSM抗原(グリコシル化されていないもの)の等電点。 PSM抗原の二次構造。 PSM抗原の二次構造(続き)。 PSM抗原の二次構造(続き)。 PSM抗原の二次構造(続き)。 PSM抗原の二次構造(続き)。 PSM抗原の二次構造(続き)。 PSM抗原の二次構造(続き)。 PSM抗原の二次構造(続き)。 PSM抗原の親水性プロット。 PSM抗原の膜伸長セグメントの予想。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性(続き)。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性(続き)。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性(続き)。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性(続き)。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性(続き)。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性(続き)。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性(続き)。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性(続き)。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性(続き)。 ニワトリ、ラットおよびヒトトランスフェリン受容体配列に対する相同性(続き)。 図17A〜17C:前立腺細胞株におけるPSM抗原発現の免疫組織化学的検出。上部パネルは、LNCaP細胞における均一で高いレベルの発現を示す。中央パネルおよび下部パネルは、それぞれ、DU−145およびPC−3細胞であり、どちらも陰性である。 PSMインビトロ転写/翻訳共役の産物を示すタンパク質ゲルのオートラジオグラム。グリコシル化されていないPSMポリペプチドが84kDaで認められ(レーン1)、ミクロソームを加えた後で合成されたPSM糖タンパク質が100kDaで認められる(レーン2)。 トランスフェクションされた非PSM発現PC−3細胞でのPSM発現を検出するウエスタンブロット分析。LNCaP膜(レーン1)、LNCaP粗製溶解物(レーン2)、およびPSMでトランスフェクションされたPC−3細胞(レーン4)では、100kDa PSM糖タンパク質種が明らかに認められるが、天然PC−3細胞(レーン3)ではそれが検出できない。 正常ヒト組織におけるPSM mRNA発現についてアッセイするリボヌクレアーゼプロテクションゲルのオートラジオグラム。放射能標識1kb DNAラダーを(Gibco-BRL)をレーン1に示す。未消化プローブは400ヌクレオチドであり(レーン2)、予想保護PSMバンドは350ヌクレオチドである。tRNA対照をレーン3に示す。ヒト前立腺で強いシグナルが認められ(レーン11)、ヒト脳(レーン4)およびヒト唾液腺(レーン12)で、非常にかすかであるが検出可能なシグナルが認められる。 ヌードマウス中およびヒト前立腺組織中で成長させたLNCaP腫瘍中のPSM mRNAの発現についてアッセイするリボヌクレアーゼプロテクションゲルのオートラジオグラム。32Pで標識された1kb DNAラダーをレーン1に示す。298ヌクレオチドの未消化プローブをレーン2に、tRNA対照をレーン3に示す。LNCaP細胞(レーン4)、マトリゲルを用いるまたは用いないヌードマウス中で正所的に成長させたLNCaP腫瘍(レーン5および6)、およびヌードマウスの皮下に移植し成長させたLNCaP腫瘍(レーン7)では、PSM mRNAの発現がはっきりと検出できる。PSM mRNAの発現は、正常なヒト前立腺(レーン8)、および適度に分化したヒト前立腺腺癌(レーン10)でも認められる。良性過形成を有するヒト前立腺組織のサンプルでは、非常にかすかな発現が認められる(レーン9)。 生理学的用量の種々のステロイドで24時間処理されたLNCaP細胞におけるPSM発現についてのリボヌクレアーゼプロテクションアッセイ。32Pで標識されたDNAラダーをレーン1に示す。298ヌクレオチドの未消化プローブをレーン2に示し、tRNA対照をレーン3に示す。PSM mRNAの発現は、木炭除去培地での未処理LNCaP細胞で最も高い(レーン4)。DHT(レーン5)、テストステロン(レーン6)、エストラジオール(レーン7)およびプロゲステロン(レーン8)で処理したLNCaP細胞においては、PSM発現の有意な減少が認められ、デキサメタゾンに対してはほとんど反応しなかった(レーン9)。 サザンおよびノーザンブロット法を用いて得た、トランスフェクトダニング(transfect Dunning)細胞株中のPSM DNAおよびRNAの存在の結果を示すデータ。 図Aは、サイトカインでトランスフェクションされた細胞が非修飾細胞を教える能力を示す。投与は、親側腹部または前立腺細胞に対して行った。その結果は、微環境考慮点を示す。図Bは、サイトカインでトランスフェクションされた細胞が非修飾細胞を教える能力を示し、特定の部位での実際の効力を示す。該腫瘍を前立腺細胞に移植し免疫細胞で処理した(2つの異なる部位について行った)。 原発性腫瘍の成長阻害におけるサイトカインの効力に関するものである。動物に非修飾親腫瘍細胞を投与し、ワクチンをトランスフェクションされた細胞として投与した。げっ歯類の腫瘍の前立腺切除術により、生存率が増加する。 いずれかのPSAを用い、ネスティッド(nested)プライマーを用いるPCR増幅により、10,000個のMCF−7細胞あたり約1個の細胞検出レベルから、百万個のMCF−7細胞あたり1個の細胞検出レベルを上回るまで、前立腺細胞の検出レベルが向上した。 いずれかのPSM由来プライマーを用い、ネスティッドプライマーを用いるPCR増幅により、10,000個のMCF−7細胞あたり約1個の細胞検出レベルから、百万個のMCF−7細胞あたり1個の細胞検出レベルを上回るまで、前立腺細胞の検出レベルが向上した。 PSM−PCRの代表的なエチジウム染色ゲル写真。レーンA中を移動したサンプルは、外側プライマーから生成したPCR生成物を示し、Bと表示したレーン中のサンプルは、内側プライマー対の産物である。 PSMサザンブロットオートラジオグラフ。サザンブロット分析の感度は、エチジウム染色の感度を上回った。これは、外側産物が図3では見えないが、図4に示すサザンブロット法では検出可能ないくつかのサンプルで示されるとおりである。 臨床段階、血清PSAおよびPAP値、およびアッセイ結果に関して分析された16人の患者の特徴。 RNA開始部位からの500bpのDNAを含むp683の3kb XhoI断片のDNA配列を決定した。配列683XFRVSは、PSMプロモーターの5'遠位末端から出発する。 図31Aの配列の続き。 図31Bの配列の続き。 図31Cの配列の続き。 PSMプロモーター上の潜在的結合部位。 PSM上流断片/CAT遺伝子キメラのプロモーター活性。 PSMとPSM' cDNAとの比較。PSM cDNA(5)の5'末端の配列を示す。下線を付した領域は、PSM cDNA配列中には存在するがPSM' cDNA中には存在しないヌクレオチドを示す。枠で囲んだ領域は、PSM抗原の推定膜貫通ドメインを示す。アステリスク(*)は、PSM'の推定翻訳開始部位を示す。 PSMおよびPSM' cDNA配列およびアンチセンスPSM RNAプローブを示す図である(b)。完全コーディング領域を有するPSM cDNA配列(5)。(c)網影部分および中空枠部分は、PSMおよびPSM'中の配列同一性を示す。線影枠部分は、PSM'にない配列を示す。該アンチセンスプローブに相補的なcDNA配列の領域を、配列間の破線で示す。 一次前立腺組織におけるPSM特異的プローブを用いるRNアーゼプロテクションアッセイ。全細胞RNAをヒト前立腺サンプル(正常前立腺、BPHおよびCaP)から単離した。PSMおよびPSM'のスプライシングされた変異体を右側に矢印で示す。左のレーンはDNAラダーである。種々の患者からのサンプルを以下のように分類した:レーン3〜6、CaP、前立腺癌;BPH、良性前立腺肥大、レーン7〜9;正常、正常前立腺組織、レーン10〜12。レーン5および9を読み取るために、より長時間オートラジオグラフを露光した。 腫瘍指数、PSMおよびPSM'の発現の定量。PSMおよびPSM'(図3)の発現をデンシトメトリーにより定量し、Y軸上にPSM/PSM'の割合として表した。一次CaP、BPHおよび正常前立腺組織について、それぞれ3つのサンプルを定量した。LNCaPについては、2つのサンプルを定量した。「正常」は正常前立腺組織である。 膜に結合したPSMおよびサイトゾル中のPSM'の特徴づけ。 イントロン1F:順配列。イントロン1は、腫瘍細胞中の染色体不安定性と関連する領域と考えられるいくつかのトリヌクレオチド反復を含有する。LNCaP細胞と一次前立腺組織とは同じであるが、PC−3およびDu−145腫瘍ではこれらのトリヌクレオチド反復レベルが実質的に変化しており、このことは、それらがPSMの発現を欠くことと関係している可能性がある。 イントロン1R:逆配列。 図40Aの配列の続き イントロン2F:順配列。 イントロン2R:逆配列。 イントロン3F:順配列。 図43Aの配列の続き イントロン3R:順配列。 図44Aの配列の続き イントロン4F:順配列。 図45Aの配列の続き イントロン4R:順配列。 図46Aの配列の続き PSMの5'転写開始部位の上流のゲノム領域の配列。 図47Aの配列の続き 図47Bの配列の続き 図47Cの配列の続き 該研究で用いた代表的な陰性および陽性対照を示すエチジウムブロミド染色ゲルの写真。サンプル1〜5は、それぞれ、前立腺炎の男性、健康な女性ボランティア、BPHの男性、LNCaP細胞の対照1:1,000,000希釈物、および腎細胞癌の患者から得た。それぞれの反応の下には、対応する対照反応を示すが、これは、RNAの完全性を保証するためにβ−2−ミクログロブリンプライマーを用いて行った。これらの陰性対照のいずれについてもPCR生成物は検出されなかった。 限局性または散在性のいずれかの前立腺癌の選ばれた患者における、PSMプライマーを用いる代表的な陽性PCR結果を示すゲルの写真。サンプル1〜5は、それぞれ、臨床的に限局したT1C段階の疾患、器官限局性疾患および陰性血清PSAを有する根治的前立腺切除術を受けた患者、局所進行疾患および陰性血清PSAを有する根治的前立腺切除術を受けた患者、治療されたD2段階の疾患の患者、および治療されたホルモン無反応性疾患の患者から得た。 コスミド構造に基づくPSMの染色体位置。 第11染色体がPSM遺伝子配列を含有していたことをサザン分析により示すヒト単染色体体細胞ハイブリッドブロットである。PstI制限酵素で消化し、PSM cDNAでプローブしたDNAパネル。レーンMおよびHは、マウスおよびハムスターDNAを示す。数字は、そのハイブリッドにおけるヒト染色体DNAに対応する。 PSM放射能標識RNAプローブを用いるリボヌクレアーゼプロテクションアッセイは、PSM mRNA発現がAT6.1−11クローン1では豊富であるが、AT6.1−11クローン2ではそうでないことを示し、そのため、PSMを11p11.2−13領域に対してマッピングする。 ノーザンブロット法およびRNアーゼプロテクションアッセイによるPSM RNAの組織特異的発現。 サザンブロット法およびin-situハイブリダイゼーションによる、ヒト第11染色体の11p11.2−p13領域に対するPSM遺伝子のマッピング。 潜在的反応要素の図。 PSM遺伝子のゲノム体制。 転移前立腺細胞の図。 PSMゲノムDNAの核酸は、転写開始部位から5プライム(prime)離れて読み取られる。配列上の数字は、該開始部位の上流のヌクレオチドを示す。したがって、ヌクレオチド番号121は、通常の番号付けでは実際には−121となる。 図58Aの配列の続き。 図58Bの配列の続き。 NAAG1、アシビジン、アゾトマイシンおよび6−ジアゾ−5−オキソノルロイシン(DON)を示す。 N−アセチルアスパルチルグルタミン酸(NAAG1)の製造。 N−アセチルアスパルチルグルタミン酸(NAAG1)合成。 N−ホスホノアセチルアスパルチル−L−グルタミン酸の合成。 5−ジエチルホスホノン−2 アミノベンジル吉草酸中間体の合成。 類似体4および5の合成。 DON、類似体17〜20を示す。 標的化トラッグデリバリーの基質、類似体21および22。 ダイネマイシンAおよびその作用機序。 類似体28の合成。 中間体類似体28の合成。 PALAの結合点。 基質21についての作用機序。 イントロン1F:順配列。 図72Aの配列の続き 図72Bの配列の続き 図72Cの配列の続き イントロン1R:逆配列 図73Aの配列の続き 図73Bの配列の続き 図73Cの配列の続き 図73Dの配列の続き イントロン2F:順配列。 図74Aの配列の続き 図74Bの配列の続き イントロン2R:逆配列。 図75Aの配列の続き 図75Bの配列の続き イントロン3F:順配列。 図76Aの配列の続き イントロン3R:逆配列。 図77Aの配列の続き イントロン4F:順配列。 図78Aの配列の続き 図78Bの配列の続き イントロン4RF:逆配列。 図79Aの配列の続き 図79Bの配列の続き 図79Cの配列の続き 図79Dの配列の続き エキソンおよび19個のイントロン結合配列のPSMゲノム体制。該エキソン/イントロン結合(実施例15を参照されたし)は以下のとおりである: 1.bp389〜390のエキソン/イントロン1、 2.bp490〜491のエキソン/イントロン2、 3.bp681〜682のエキソン/イントロン3、 4.bp784〜785のエキソン/イントロン4、 5.bp911〜912のエキソン/イントロン5、 6.bp1096〜1097のエキソン/イントロン6、 7.bp1190〜1191のエキソン/イントロン7、 8.bp1289〜1290のエキソン/イントロン8、 9.bp1375〜1376のエキソン/イントロン9、 10.bp1496〜1497のエキソン/イントロン10、 11.bp1579〜1580のエキソン/イントロン11、 12.bp1640〜1641のエキソン/イントロン12、 13.bp1708〜1709のエキソン/イントロン13、 14.bp1803〜1804のエキソン/イントロン14、 15.bp1892〜1893のエキソン/イントロン15、 16.bp2158〜2159のエキソン/イントロン16、 17.bp2240〜2241のエキソン/イントロン17、 18.bp2334〜2335のエキソン/イントロン18、 19.bp2644〜2645のエキソン/イントロン19。

Claims (1)

  1. プロモータ活性を備えた単離された核酸であって、選択的にスプライスされた前立腺特異的膜抗原をコードする遺伝子の転写に関連したプロモータ配列に対応する連続的ヌクレオチドを具備し、その構造内に、位置58のメチオニンで始まり位置750のアラニンで終わる図47A〜図47Dに記載したアミノ酸配列をもった連続的アミノ酸を有するが、図47A〜図47Dに記載した位置1〜位置57のアミノ酸配列をもった連続的アミノ酸を有さない単離された核酸。
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