JP2005181082A - 鋼材内部の歪部観察用試料の調製方法 - Google Patents

鋼材内部の歪部観察用試料の調製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 歪を持つ鋼材の観察面に対し、歪のある部分と歪のない部分との間に明瞭なコントラストをつけ、歪分布を可視化する方法として、従来の電解研磨−電解腐食−硝酸洗浄法では明瞭なコントラストを安定してつける事が困難であったので、これを改善する手段を提供する。
【解決手段】 鋼材観察面の処理として、化学研磨法で観察面を平坦化し、ついで電解研磨法で歪部のみが選択溶解するよう窪みを形成させ、最後に塩酸水溶液により腐食生成物を洗浄・除去する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、変圧器鉄心用素材である方向性珪素鋼板や、方向性珪素鋼板により組み立てられた変圧器鉄心、更には、回転機鉄心用素材である無方向性珪素鋼板や、無方向性珪素鋼板により組み立てられた回転子・固定子等の回転機鉄心など、歪によってその電磁気特性が影響を受ける、いわゆる電磁材料一般において、鋼材内部の歪の導入状況を光学顕微鏡等により観察できるように試料を調製する技術に関する。
方向性珪素鋼板は、変圧器用鉄心材料として、また、無方向性珪素鋼板は、回転機用鉄心材料として、それぞれ広く使用されている。
変圧器鉄心には、巻き鉄心と積み鉄心の2種類がある。
巻き鉄心は、その製造工程において、まず、鋼板が一定の巾と長さにせん断され、次いで、金属製の金型に丸巻きされた後、矩形に変形加工を施される。この加工に伴い、鋼板に加工歪が導入される。そのため、加工歪の除去を目的として800℃前後の温度で焼鈍が行われる。焼鈍が適切に行われず、歪の解放が十分でないと、鋼板が本来持つ磁気特性を十分に発揮することができず、変圧器としての性能が低下してしまう。
一方、積み鉄心も鋼板が一定の巾と長さにせん断され、積層されて鉄心となる。この鋼板せん断の際、せん断機の刃の状態が不良であったり、あるいはクリアランスの設定が不適切であるとせん断部近傍だけでなく、鋼板中心部にまでせん断歪の影響が及ぶ。その結果、磁気特性が劣化してしまう。
両方の種類の鉄心とも、歪によりその磁気特性が大きく影響を受ける。
回転機用鉄心である回転子や固定子は、次のような工程を経て製造される。まず、一定巾のコイル状の鋼板から金型を用いて、回転子の場合は円形の、固定子の場合はリング状の鋼板が打ち抜かれる。この時、「かしめ法」と呼ばれる鋼板積層方法の場合は「だぼ」と呼ばれるV字状の凹凸を鋼板に形成させる。次いで、打ち抜かれた鋼板が積層される。「かしめ法」の場合は、「だぼ」部において上下の鋼板同士が嵌入し、積層されて鋼板が一体化される。一体化の方法が「溶接法」や「レーザー法」の場合は、「だぼ」嵌入による一体化ではなく、積層された鋼板の端面を溶接やレーザー照射の方法で部分的に溶融させ一体化させる。この時、溶接やレーザー照射の条件が適切でないと、大きな歪が鋼板に導入され、磁気特性の劣化を招くものと推測される。
以上述べた通り、方向性珪素鋼板、無方向性珪素鋼板を問わず、磁気特性に及ぼす加工歪やせん断歪あるいは熱歪の影響は大きい。また、鋼材中におけるこうした歪の残留・導入状況を正確に把握することは、鋼板自体が本来有する磁気特性を鉄心や回転子、固定子の二次製品において最大限発揮させる上でも大変重要である。
このように磁気特性に対する歪の影響が大きいことは認識されていたにもかかわらず、歪の導入・残留状況や分布状態を把握、つまり「可視化」する方法は十分に確立されているとは言い難かった。その理由の一つとして、鋼材内部の歪の状況を観察するのに供する観察用試料の調製方法が十分には確立されていなかったことがあげられる。
これまで歪の観察方法としては、非特許文献1にあげられているMorrisの方法が主に適用されてきた。この方法は、まず歪の残留有無やその分布状況を把握したい鋼材を酢酸、無水クロム酸の液中で電解し(電解研磨)、観察面を平坦化する。次いで、同じ液中で、電流密度を4分の1程度に低減して電解し(電解腐食)、歪部を選択的に溶解させることで歪部に窪みを形成させる。最後に、試料を硝酸のメチルアルコール溶液中に入れ、電解腐食中に生成した腐食生成物を除去する(洗浄)。それぞれの工程は機能別に、電解研磨法による表面平坦化、電解腐食法による窪み形成、腐食生成物の洗浄・除去と言う3つの工程に機能分解できる。
このようにして調製した試料観察面では歪のない面は平坦である一方、歪部は窪んだ状態に仕上がる。その結果、光学顕微鏡等で試料面を観察すると、平坦部は金属面特有の高反射面に、一方、窪み部は黒くなり、両者の間でコントラストがつく。こうした手法により、歪部が黒く映ることで二次元的な模様となり、どの領域に歪が導入ないしは残留しているのか、識別できる状態、即ち、歪状況を可視化をすることが可能となる。
C.E.Morris, Met.Prog., 56(1949)696
Morrisの方法によりそれなりの試料は調製できる。但し、試料によっては明瞭なコントラストを持つ試料を調製できなかったり、同一試料でも、試料調製時の何らかの要因により明瞭なコントラストを持つ試料が調製できなかったりすると言う問題点があった。
発明者らはこの点を改善すべく、より明瞭なコントラストをもつ試料を安定して調製できる方法を確立すべく検討を重ねた。その結果、平坦化、腐食、洗浄の各工程における手法や液組成、実施条件が適切ではないため、良好な試料が安定して調製できないのではないかと考えた。そこで、各工程を種々再検討した結果、次の方法・条件で試料を調製すれば、明瞭なコントラストをもつ試料を安定して調製できることを突き止めた。
本発明の要旨は次の通りである。
(1) 内部に歪を持つ鋼材に対し、まず、鋼材観察面を溶液中で平坦化し、次いで、歪部を溶液中で選択的に溶解し、歪部に窪みを形成させ、最後に、腐食生成物を溶液中で洗浄・除去することにより、平坦部と窪み部との間に光学的コントラストをつけ、該鋼材中の歪分布を可視化する歪部観察用試料の調製方法において、鋼材観察面を溶液中で平坦化する方法が化学研磨法であり、かつ、歪部を溶液中で選択的に溶解し、歪部に窪みを形成させる方法が電解腐食法であり、かつ、腐食生成物を溶液中で洗浄・除去する方法が酸洗法であることを特徴とする歪部観察用試料の調製方法。
(2) 鋼材観察面を平坦化する化学研磨法が弗化水素と過酸化水素と水とからなる溶液中で行なわれることを特徴とする(1)の歪部観察用試料の調製方法。
(3) 歪部を選択的に溶解し、歪部に窪みを形成させる電解腐食法が酢酸と無水クロム酸と水とからなる溶液中で行なわれることを特徴とする(1)の歪部観察用試料の調製方法。
(4) 腐食生成物を洗浄・除去する酸洗法が塩酸と水とからなる溶液中で行なわれることを特徴とする(1)の歪部観察用試料の調製方法。
(5) 腐食生成物を溶液中で洗浄・除去する時、試料に超音波を照射しながら行なうことを特徴とする(1)〜(4)の歪部観察用試料の調製方法。
(6) 歪部を観察する鋼材の炭素濃度が10ppm以上であることを特徴する(1)〜(5)の歪部観察用試料の調製方法。
(7) 観察面の平坦化処理に先立ち、100℃以上400℃以下の温度で、5時間以上の熱処理を施すことを特徴とする(1)〜(6)の歪部観察用試料の調製方法。
(8) 鋼材観察面を溶液中で平坦化するのに先立ち、鋼材観察面に機械的な表面研削を施すことを特徴とする(1)〜(7)の歪部観察用試料の調製方法。
本発明により、歪のない平坦部と歪のある窪み部との間に極めて明瞭なコントラストを持つ試料を安定して調製することができる。
本発明を詳細に説明する前に、まず、従来の方法について述べる。
歪部を観察するために行われてきた従来の試料調製方法は、その工程目的の点から、平坦化、窪み形成、洗浄の3つの工程に分けることができる。従来法においては平坦化工程と窪み形成工程とが同じ溶液中で実施されていた。即ち、酢酸133ml、無水クロム酸25g、水7mlの組成で、温度18℃の溶液中に試料を入れ、電流密度0.096A/cm2 で8分間通電し、試料観察面を電解研磨する。次いで、この状態のまま、電流密度を0.025A/cm2 に低下させ20分間通電し、歪部を選択的に溶解させ、窪みが形成できるよう電解腐食する。最後に、硝酸濃度2%のメチルアルコール中で4分間洗浄することで前工程で生成した有色の腐食生成物を除去する。
この一連の手順を踏むことにより、鋼材中の歪分布をそれなりに観察することができる試料を調製できる。しかしながら、試料によっては明瞭なコントラストを持つ試料を調製できない場合もあった。また、同じ母集団から採取した試料でも、時として、他の試料と同様な観察面を調製することができず、再現性良く、安定して同様の試料を調製するのが難しいと言う問題点もあった。
発明者らは実験的な検討を進め、各工程を以下に述べるように改良することで、より明瞭なコントラストをもつ試料を、より安定して作製することに成功した。
以下、平坦化工程(第1工程)、窪み形成工程(第2工程)、洗浄工程(第3工程)の順序で説明する。
まずはじめに、発明者らは観察面の平坦化と窪み形成を目的とする2つの工程について検討した。その中で、従来の同一電解液中で研磨と腐食と同時に行なう方法では、たとえ電流密度を調整したとしても、観察面の平坦化と歪部の窪み形成をそれぞれ最適な状態で実現するのは難しいのではないかと考えた。そこで、従来の方法では連続化している平坦化工程(電解研磨法)と窪み形成工程(電解腐食法)とを分離、即ち、それぞれ、別々の独立した工程にすることを考えた。
(第1工程)
発明者らは観察面の平坦化方法を種々検討した。種々、検討を重ねた結果、通電を伴う電気分解法である電解研磨法にかえて、化学研磨法を採用することで観察面の状態が格段に良くなることを見出した。これは、高い平坦度が要求される本前処理法には電解法よりも化学研磨法の方が適しているものと考えられた。研磨液についても種々検討した結果、弗化水素と過酸化水素の混合溶液が最も優れていることを突き止めた。弗化水素と過酸化水素が優れているのは、弗化水素、過酸化水素とも、大概の電磁材料中に含有されている珪素成分に対し、優れた溶解力を持つためと考えられる。
化学研磨液の組成は、過酸化水素濃度31%の過酸化水素水溶液100mlに対し、弗化水素濃度46%の弗化水素酸水溶液を1mlから30mlの範囲で混合したものが適している。弗酸が1mlよりも少ないと溶解力が十分ではなく、平坦な化学研磨面を達成することが難しい。一方、弗酸が30mlよりも多いと溶解力が強すぎて、試料面の平坦化が終了する終点を判断することが難しく、試料が過度に減厚されてしまう事態が起こるので好ましくない。こうした理由から、過酸化水素濃度31%の過酸化水素水溶液100mlに対する弗化水素濃度46%の弗化水素酸水溶液の混合量は1ml以上30ml以下の範囲が適している。なお、化学研磨速度の極めて速い試料には適宜、水を添加しても良い。
温度についても注意しなければならない。液温は10℃以上30℃以下が適している。液温が30℃よりも高いと、化学研磨中に発生する溶解熱により、液温が過度に上昇し、溶解反応が暴走し、良好な化学研磨面を得ることができない。一方、液温が10℃よりも低いと溶解速度が遅すぎ、試料観察面の溶解−研磨に時間がかかりすぎてしまう。そのため研磨液温度は10℃以上30℃以下が好ましい。
研磨時間は、試料面の仕上がり具合を観察しながら進めるのが好ましいが、20秒から4分の間が適している。20秒よりも短いと十分な平坦度を持つ試料面を得ることが難しい。一方、4分よりも長いと研磨量が多すぎ、試料厚みの薄い試料では溶液中に溶け落ちてしまう可能性がある。そのため、研磨時間は20秒以上4分以下が好ましい。
(第2工程)
次に、歪部を選択的に溶解させ、窪みを形成させる第2工程、即ち、腐食工程について検討を進めた。発明者らはクロム酸、酢酸、水を成分とする溶液中での電解腐食法について検討した。その結果、液の成分は従来技術と同一成分であるものの、クロム酸と水の比率をより高めた組成にし、更に、電流密度をより高めた値に設定することで、良好な腐食−窪みの形成を安定して実現できることを見出した。
まず、液組成について述べる。
液の組成は、酢酸133mlに対し、無水クロム酸が35g以上70g以下で、かつ水が50g以上300g以下の条件が好ましい。無水クロム酸の量が35gよりも少ないと良好な腐食が進行せず、逆に70gよりも多いと歪部以外の腐食が無視できない程度進行してしまうので、無水クロム酸の量は酢酸133mlに対し、35g以上70g以下が好ましい。水については、50gよりも少ないと溶液の粘度が高すぎて取り扱いし難く、一方、300gより多いと、歪部への腐食力が低下してしまうので、水の量は50g以上300g以下が好ましい。
次に、電解を行なう際の電流密度について述べる。
従来の方法では0.025A/cm2 の電流密度で20分間電解腐食するが提案されている。発明者らは、上述した液組成の検討と並行して電流密度の検討も重ね、従来提案されていた電流密度よりも、より高い電流密度で、より短時間の電解腐食を行なった時に良好な試料が作製できることを見出した。実験を重ねた結果、0.1A/cm2以上0.9A/cm2以下の電流密度で、30秒以上180秒以下の電解時間が最も良いことを突き止めた。電流密度が0.1A/cm2よりも小さいと腐食に時間がかかりすぎてしまい、逆に、電流密度が0.9A/cm2よりも大きいと歪部に加え、歪のない領域まで腐食されてしまう。一方、電解時間については、30秒よりも短いと窪みの深さが浅すぎて、良好なコントラストを得ることが難しく、180秒よりも長いと試料面全体が腐食され、良好なコントラストを得ることが困難になる。従って、0.1A/cm2以上0.9A/cm2以下の電流密度で30秒以上180秒以下の時間、電解腐食を実施するのが好ましい。
電解腐食時の温度については、化学研磨時ほど注意を払う必要はないが、試料面の仕上がり状態を安定化させるためには、10℃以上40℃以下が好ましい。液温が40℃よりも高いと、腐食時間を適切に調整することが難しくなり、一方、液温が10℃よりも低いと、窪みの形成に時間がかかりすぎてしまう。そのため電解腐食時の液温度は10℃以上40℃以下が好ましい。
電解腐食をこのような条件で実施することにより、窪みの形成状態が安定化するだけでなく、従来の方法では20分もの時間を要していたのをわずか3分以下の時間まで短縮することにも成功した。このことは多数の試料を迅速に評価する上で大変有意義である。
(第3工程)
第3工程である洗浄工程についても見直しを進めた。
発明者らは、従来の硝酸系の液は腐食速度が速すぎて、前工程で調製した平坦部と窪み部との間の高低さがある程度解消され、その結果、平坦部と窪み部のコントラストが低減されてしまうのではないかと考え、液組成の改良に取り組んだ。その結果、従来の硝酸−メタノール液ではなく、塩酸−水系が最も優れていることを見出した。
塩酸濃度は1%以上10%以下の範囲が好ましい。濃度が1%よりも低いと腐食物の溶解速度が遅すぎ、濃度が10%よりも高いと腐食物の他に鋼板も溶解してしまうので、塩酸濃度は1%から10%の範囲が好ましい。
液温は10℃以上40℃以下の範囲が好ましい。液温が10℃よりも低いと腐食生成物の溶解に時間がかかりすぎ、液温が40℃よりも高いと溶解速度が速すぎて鋼板をも溶解させてしまうので、液温は10℃以上40℃以下の範囲が好ましい。
洗浄時間の設定は試料面に付着している腐食生成物の除去具合を観察しながら進めるのが良いが10秒以上120秒以下が適している。10秒よりも短いと腐食生成物の除去が十分に行なうことが難しく、120秒よりも長いと鋼板まで溶解されてしまうので、洗浄時間は10秒以上120秒以下が好ましい。
洗浄は、塩酸水溶液中に単に浸漬するだけでも良いが、超音波を照射しながら実施することで、観察面をより美麗に、また短時間のうちに仕上げることができる。
従来の方法では、洗浄に4分間もの時間を要していたが、本洗浄法では洗浄時間を2分以下にまで短時間化できる点でも優れている。
また、超音波を照射しながら洗浄を行なうことで、試料面からの腐食生成物の除去をより円滑に実施することが可能となる。
次に、本技術を適用できる材料について述べる。
鋼中炭素濃度が10ppmよりも低い試料では、歪部を選択的に腐食し、窪みを形成するのが難しいので、本技術は鋼中炭素濃度が10ppm以上の試料に適用するのが好ましい。また、歪部へ炭素が濃化していた方が、歪部の選択的な腐食を起こし易い。そのため、観察面の平坦化処理に先立ち、歪部への炭素の集積を目的として、100℃以上400℃以下の温度で、5時間以上の時間、熱処理を施すことにより、本技術を適用して調製した試料の出来栄え、即ち、無歪部と歪部との間のコントラストが更に良好になる。温度が100℃よりも低いと炭素の集積効果が十分でなく、逆に400℃以上では鋼中炭素は集積よりも拡散を起こす。また、熱処理時間が5時間よりも短いと集積効果が不足する。従って、熱処理温度は100℃以上400℃以下の温度で5時間以上行なうのが好ましい。
最後に、形状が平坦でない試料について述べる。
試料によってはその形態が平らではなく、表面に1mmから数mmの凹凸を有する試料もある。こうした大きな表面凹凸も化学研磨法でそれなりに平坦化することもできるが、試料が薄くなりすぎたり、あるいは化学研磨に時間がかかりすぎたりする。そこで、表面が平坦でない試料に対しては、鋼中炭素の集積処理後、鋼材観察面を溶液中で化学研磨法により平坦化するのに先立って、観察面に機械的な表面研削を施しても良い。
なお、本願で言う歪とは外部から機械的な力を受けたり、急速な加熱あるいは冷却により、結晶粒界や粒内で転移を起こした部分、全般を指す。
板厚0.23mmの方向性珪素鋼製造用脱炭焼鈍板に対し、アルミナ80%、マグネシア20%を組成とする水スラリーを塗布し、乾燥した後、乾燥水素中で1200℃,20時間の仕上げ焼鈍を施し、二次再結晶させた。このようにして製造した二次再結晶済み仕上げ焼鈍板の表面には無機物皮膜が形成されていない。この鋼板を40mm×50mmの寸法にせん断し、直径10mmの円筒に巻き付け、曲げ加工を施した。次に、曲げによって生じた変形を鋼板が平坦になるまで再度、変形させ元の平坦な形状に戻した。
次いで、このおおよそ平坦化された鋼板を重ね、厚板で結束した後、乾燥水素雰囲気中で、それぞれ、650℃,750℃,850℃の各温度で2時間焼鈍した。この時、鋼板同士の焼き付きを防止するため、鋼板の間には耐熱性のあるフォルステライト皮膜付きの鋼板を挟み込んだ。室温まで冷却した後、空気中、150℃の温度で24時間の熱処理を施した。この試料をフッ化水素濃度46%のフッ化水素酸水溶液10ml、過酸化水素濃度31%の過酸化水素水180ml、水10mlの溶液中に1分間浸漬(化学研磨)し、鏡面光沢を有する試料に調製した。
次いで、酢酸130g、無水クロム酸50g、水180gの溶液中で15Aの条件(電流密度=0.375A/cm2)で90秒間、電解腐食を行なった。最後に5%塩酸水溶液中に入れ、超音波を照射しながら60秒間洗浄した。このようにして調製した試料を光学顕微鏡で観察した。観察した写真を図1に示す。
図1から、焼鈍温度650℃の試料では試料全面に歪模様が観察されること、焼鈍温度750℃の試料ではその歪模様が相当に減少していること、焼鈍温度850℃の試料では歪模様がほとんど観察されないことが、それぞれ極めて明瞭に観察できる。この観察結果から、焼鈍前に施した曲げ加工によって導入された歪が焼鈍温度を高めるにつれて解放されていくことが良くわかり、本試料調製法が優れた試料調製法であることが確認できる。
焼鈍温度別の歪残留状況を示す顕微鏡写真。

Claims (8)

  1. 内部に歪を持つ鋼材に対し、まず、鋼材観察面を溶液中で平坦化し、次いで、歪部を溶液中で選択的に溶解し、歪部に窪みを形成させ、最後に、腐食生成物を溶液中で洗浄・除去することにより、平坦部と窪み部との間に光学的コントラストをつけ、該鋼材中の歪分布を可視化する歪部観察用試料の調製方法において、
    鋼材観察面を溶液中で平坦化する方法が化学研磨法であり、かつ、歪部を溶液中で選択的に溶解し、歪部に窪みを形成させる方法が電解腐食法であり、かつ、腐食生成物を溶液中で洗浄・除去する方法が酸洗法であることを特徴とする、歪部観察用試料の調製方法。
  2. 鋼材観察面を平坦化する化学研磨法が弗化水素と過酸化水素と水とからなる溶液中で行なわれることを特徴とする請求項1記載の歪部観察用試料の調製方法。
  3. 歪部を選択的に溶解し、歪部に窪みを形成させる電解腐食法が酢酸と無水クロム酸と水とからなる溶液中で行なわれることを特徴とする請求項1記載の歪部観察用試料の調製方法。
  4. 腐食生成物を洗浄・除去する酸洗法が塩酸と水とからなる溶液中で行なわれることを特徴とする請求項1記載の歪部観察用試料の調製方法。
  5. 腐食生成物を溶液中で洗浄・除去する際、試料に超音波を照射しながら行なうことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の歪部観察用試料の調製方法。
  6. 歪部を観察する鋼材の炭素濃度が10ppm以上であることを特徴する請求項1から5のいずれかに記載の歪部観察用試料の調製方法。
  7. 観察面の平坦化処理に先立ち、100℃以上400℃以下の温度で、5時間以上の熱処理を施すことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の歪部観察用試料の調製方法。
  8. 鋼材観察面を溶液中で平坦化するのに先立ち、鋼材観察面に機械的な表面研削を施すことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の歪部観察用試料の調製方法。
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