JP2005179707A - アルミニウム系溶射摺動材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 PbフリーAl-Sn、Al-Sn及びAl-Sn-Si系溶射摺動材料を提供する。
【解決手段】 (イ)5〜20%Sn、(ロ)5〜20%Sn及び1〜15%Si、又は(ハ)8〜17%Siを含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、未溶解組織と溶解組織が混在するアルミニウム系溶射摺動材料。Al-Snの未溶解組織はSnが片状、三日月状などとのアトマイズ組織となり、Al-Siの未溶解組織はSiが円に近い粒上、凹凸がある粒状などとなる。溶解組織は溶射過程で溶解した組織である。これらの組織が混在することにより摺動性能が高められる。
【選択図】 図3
【解決手段】 (イ)5〜20%Sn、(ロ)5〜20%Sn及び1〜15%Si、又は(ハ)8〜17%Siを含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、未溶解組織と溶解組織が混在するアルミニウム系溶射摺動材料。Al-Snの未溶解組織はSnが片状、三日月状などとのアトマイズ組織となり、Al-Siの未溶解組織はSiが円に近い粒上、凹凸がある粒状などとなる。溶解組織は溶射過程で溶解した組織である。これらの組織が混在することにより摺動性能が高められる。
【選択図】 図3
Description
本発明はアルミニウム系摺動材料に関するものであり、さらに詳しく述べるならば、Pbを添加しないでも優れた耐焼付き性、耐摩耗性及び耐疲労性を実現するアルミニウム系溶射摺動材料に関するものである。
アルミニウム系摺動材料は基本的に潤滑性に優れたAl-Sn系と耐摩耗性に優れたAl-Si系、及びこれらの性質を兼備したAl-Sn-Si系に大別される。
本出願人の特許文献1(ドイツ特許DE3249133C2号公報)で提案された軸受合金組成はAl-Sn-Si系であり、組成は、例えばAl-3%Si-15%Sn-3%Pb-0.5%Cu-0.4%Crである。その組織はSi粒子及び2.5μm以上のSn+Pb粒子が分散した組織である。
本出願人の特許文献1(ドイツ特許DE3249133C2号公報)で提案された軸受合金組成はAl-Sn-Si系であり、組成は、例えばAl-3%Si-15%Sn-3%Pb-0.5%Cu-0.4%Crである。その組織はSi粒子及び2.5μm以上のSn+Pb粒子が分散した組織である。
アルミニウム合金を溶射して摺動層として使用することは特許文献2(特開平10-311326号公報)にて公知であり、添加元素がCu,Mg,CrであるAl合金が、内燃機関のコネクティングロッドの大端部内面にプラズマ溶射されている。この方法では、摺動皮膜の形成方法として、溶射を用いているので、摺動部に直接摺動材を形成でき、また、摺動皮膜を裏金などの支持部材を用いずに直接形成することができ、結果として、コネクティングロッドとすべり軸受からなる装置の軽量化とそれによる長寿命化が図られる。
また、特許文献3(米国特許第6090497号明細書)によると、Al−26〜80質量%Si合金をプラズマ溶射することにより微細Si粒子が多量に分散し、耐摩耗性及び切削性に優れた摺動被覆が提供されている。
溶射条件の一例は次のとおりである。
(イ)酸素圧力-0.45〜0.76MPa
(ロ)燃料圧力- 0.45〜0.86MPa
(ハ)溶射距離- 50〜200 mm
(ニ)溶射層厚さ- 10〜500μm
溶射条件の一例は次のとおりである。
(イ)酸素圧力-0.45〜0.76MPa
(ロ)燃料圧力- 0.45〜0.86MPa
(ハ)溶射距離- 50〜200 mm
(ニ)溶射層厚さ- 10〜500μm
さらに、本出願人の特許文献4(WO99/47724)ではAl-12〜60%Si - 0.1〜30%Snの組成をもつAl合金をHVOF溶射することにより、Si粒子が原料合金粉末に見られるように片状化もしくは共晶化せずに、粒状化することが開示されている。Sn粒子は顕微鏡組織でも検出されていず、またその説明もされていない。
溶射条件は次のとおりである。
(イ)酸素圧力-0.45〜0.76MPa
(ロ)燃料圧力- 0.45〜0.86MPa
(ハ)溶射距離- 50〜200mm
(ニ)溶射層厚さ- 10〜500μm
溶射条件は次のとおりである。
(イ)酸素圧力-0.45〜0.76MPa
(ロ)燃料圧力- 0.45〜0.86MPa
(ハ)溶射距離- 50〜200mm
(ニ)溶射層厚さ- 10〜500μm
非特許文献1(「まてりあ」Vol.40(2001)、No.4第356〜363頁)は自動車部品への溶射技術の適用を俯瞰し多量のSi添加Al合金が斜板式コンプレッサーの斜板へ適用されると述べている。
非特許文献2にはAl-12%Snの溶射組織が示されており、Snは微細均一に分布した析出物であると説明されている。Sn粒子は特許文献4では説明がなく、非特許文献2では析出物として説明されている。このことは非特許文献2に説明されている次の溶射条件が関係していると考えられる:粉末―45〜106μm;燃料―ケロシン;被覆厚さ−500μm
ドイツ特許DE3249133C2
特開平10−311326号公報
米国特許第6090497号明細書
WO99/47724号公報
特公平3-27619号
「まてりあ」Vol.40(2001)No.4,第356〜363頁
"Thermal Spray", ASM International (Materials Park, Ohio, USA)発行の論文"Development of HVOF Sprayed Aluminum Alloy Engine Bearings"(第825から828頁)
従来の溶射Al-(Sn)-Si合金では例えば12〜40重量%もの多量のSiを含有しており、Si粒子は粒状であった(特許文献4)。この粒状Siは溶射後に生成した特有の塊形態であり、鋳造組織には見られないものである。
特許文献4の溶射Al-Sn-Si合金ではSiの粒状もしくは微細粒子形状の説明はあるが、Snの形態は述べられていない。また、Siを含有しないAl-Sn系溶射材料は提案されていない。
従来のAl-Si系溶射材料で添加される多量のSiは耐焼付き性を劣化する傾向を招いていた。
従来のAl-Si又はAl-Si-Sn系鋳造材料もしくは圧延材はなじみ性を確保するために環境汚染物質であるPbの添加が必要であった。
従来のAl-Si又はAl-Si-Sn系鋳造材料もしくは圧延材はなじみ性を確保するために環境汚染物質であるPbの添加が必要であった。
本発明は上述の状況を念頭において、溶射Al-Si系合金、Al-Sn系合金、あるいはAl-Sn-Si系合金であって、摺動特性に優れ、特に圧縮機の摺動部材に使用された際に、冷媒中での摺動つまり貧潤滑条件下でのさらに十分な性能を持つ皮膜の形成をできる溶射合金を提供することを目的とする。特に本発明者らは、従来の溶射材料開発は例えば高Si−Al合金などの特殊な材料を使用することを志向しており、長い年月に亘って実績があるAl合金の溶射は省みられなかったことは、結果的には原料コストの面などで反省すべきであるとの観点から研究を行った。
図1〜3はAl-Sn系合金のSn相組織を示す模式図である。
図1はAl-Sn系圧延もしくは鋳造合金の組織を示し、図2はHVOFによるAl-Sn系溶射合金の組織を示す。
特許文献5(特公平3-27619号公報)によると「アルミニウムに錫を添加して溶解すると、アルミニウムと錫は固溶しないで、錫は微細な粒子としてアルミニウムのマトリックス中に分散した状態になる。」(第6欄第8〜11行);さらに、冷間加工を施すと、錫粒子が微細化するとの説明ある。このようなAl-Sn合金の組織を図1に模式的に示す。図2には溶射によりさらに微細化されたSn粒子を模式的に示す。これらの図1,2に示すように、Sn相を微細化することにより摺動性能は向上する。しかしながら、図2よりさらにSn相を微細化することは困難である。したがって、Sn相の微細化による摺動性能向上には限界がある。
図1はAl-Sn系圧延もしくは鋳造合金の組織を示し、図2はHVOFによるAl-Sn系溶射合金の組織を示す。
特許文献5(特公平3-27619号公報)によると「アルミニウムに錫を添加して溶解すると、アルミニウムと錫は固溶しないで、錫は微細な粒子としてアルミニウムのマトリックス中に分散した状態になる。」(第6欄第8〜11行);さらに、冷間加工を施すと、錫粒子が微細化するとの説明ある。このようなAl-Sn合金の組織を図1に模式的に示す。図2には溶射によりさらに微細化されたSn粒子を模式的に示す。これらの図1,2に示すように、Sn相を微細化することにより摺動性能は向上する。しかしながら、図2よりさらにSn相を微細化することは困難である。したがって、Sn相の微細化による摺動性能向上には限界がある。
図2に示されるAl-Sn系溶射合金の組織はAl-Sn合金が全体に溶融し、その後凝固したものである。本発明者らはAl-Sn系溶射合金の組織を上記した溶解組織と未溶解組織との混合組織とすることにより、図1,2に示されるものより摺動特性が向上することを見出した。
Al-Sn、Al-Sn-Si及びAl-Si系合金の未溶解組織とは、出発原料の鋳塊やアトマイズなどの製造過程では出発原料が溶解を経ているが、溶射過程では溶融していない組織である。
Al-Sn 及びAl-Sn-Si合金を溶融しアトマイズ法などにより凝固させると、Sn粒子は片状、三日月状、鉤状、釣り針状、棒状、ラメラー状、紐状、針状、樹枝状などとなり、Snの析出物とは明らかに形状が異なるものとすることができる。これらの形態をAl-Sn系溶射合金の未溶解組織として残すことができる。さらに、これら片状などの粒子は溶射組織中のSn相よりも明らかに粗大である。未溶解組織と溶解組織が混合した組織を模式的に図3に示す。
Al-Si 系合金をアトマイズ法などにより凝固させた粉末組織の一例を図4に示す。この組織のSi相の特長は次のとおりである。;(a)円に近い粒状、凹凸がある粒状、一部尖った粒状などの形態をもつ。;(b)Al-Si合金粒子に対するSiの面積率が大きい。このような粉末組織を溶射合金の未溶解組織として残すことができる。Al-Sn-Si系合金のSiの場合も同様である。
一方Al-Si系合金の溶射による溶解組織は特許文献3の第1図及び特許文献4の第1図に示されるように粒状となり、Si結晶に関して一次晶と二次晶の区別はできない。
Al-Sn、Al-Sn-Si及びAl-Si系合金の未溶解組織とは、出発原料の鋳塊やアトマイズなどの製造過程では出発原料が溶解を経ているが、溶射過程では溶融していない組織である。
Al-Sn 及びAl-Sn-Si合金を溶融しアトマイズ法などにより凝固させると、Sn粒子は片状、三日月状、鉤状、釣り針状、棒状、ラメラー状、紐状、針状、樹枝状などとなり、Snの析出物とは明らかに形状が異なるものとすることができる。これらの形態をAl-Sn系溶射合金の未溶解組織として残すことができる。さらに、これら片状などの粒子は溶射組織中のSn相よりも明らかに粗大である。未溶解組織と溶解組織が混合した組織を模式的に図3に示す。
Al-Si 系合金をアトマイズ法などにより凝固させた粉末組織の一例を図4に示す。この組織のSi相の特長は次のとおりである。;(a)円に近い粒状、凹凸がある粒状、一部尖った粒状などの形態をもつ。;(b)Al-Si合金粒子に対するSiの面積率が大きい。このような粉末組織を溶射合金の未溶解組織として残すことができる。Al-Sn-Si系合金のSiの場合も同様である。
一方Al-Si系合金の溶射による溶解組織は特許文献3の第1図及び特許文献4の第1図に示されるように粒状となり、Si結晶に関して一次晶と二次晶の区別はできない。
Al-Sn系溶射合金及びAl-Sn-Si系溶射合金の組織の一例をそれぞれ図5及び6に示す。黒線で囲んだ領域が未溶解組織であり、その他の領域とは組織上の区別が簡単にできる。
溶解組織はAlマトリックスとSnなどの二次相からなる点では未溶解組織と同じであるが、二次相は粒状のこともあり、この場合は未溶解組織と二次相とは明瞭に区別が可能である。一方、未溶解組織のSn二次相は片状などの形状をもつこともあるが、この場合は、Sn二次相の大きさ、配列などから組織を二分類に分類し、原料粉末の組織を参照として、溶解組織と未溶解組織を定める。
溶解組織はAlマトリックスとSnなどの二次相からなる点では未溶解組織と同じであるが、二次相は粒状のこともあり、この場合は未溶解組織と二次相とは明瞭に区別が可能である。一方、未溶解組織のSn二次相は片状などの形状をもつこともあるが、この場合は、Sn二次相の大きさ、配列などから組織を二分類に分類し、原料粉末の組織を参照として、溶解組織と未溶解組織を定める。
従来のスパッタリングでは、AlマトリックスにSn相が平均粒径0.5〜2μmの大きさで点在するのに対し、鋳造ではSn相が平均長さ5〜25μmで層状に広がる。それに対し、本願発明のAl-Sn溶射材では未溶解粉中Sn相がには平均粒径0.5〜3μmの大きさで点在あるいは樹枝状に分布し、溶解部では更に細かく分散し、また粒界には平均長さ5〜20μmの長さで層状に広がっており、結果的にはスパッタリングや鋳造に対し、溶射の方がSn相が細かく全体に広く分散している。その分散割合は断面観察写真によるSn面積率で定義する。未溶解部及び粒界には合計平均で10〜30%の面積率で存在する。また、溶解部には微細粒として平均15〜30%の面積率で存在する。この結果、Sn相は、なじみ性及び潤滑特性に効果を発揮することとなる。
本発明に係るAl系溶射摺動材料は次のものである。
(1) Snを5〜20重量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物かなり、未溶解組織と溶解組織が混在する。
(2) Snを5〜20重量%及びSiを1〜15重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、未溶解組織と溶解組織が混在する。
(3) Siを8〜17重量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、未溶解組織と溶解組織が混在する。
(1) Snを5〜20重量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物かなり、未溶解組織と溶解組織が混在する。
(2) Snを5〜20重量%及びSiを1〜15重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、未溶解組織と溶解組織が混在する。
(3) Siを8〜17重量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、未溶解組織と溶解組織が混在する。
Al系溶射摺動材料(2)において、Siの含有量が1重量%未満であると耐摩耗性の効果が得られず、15重量%を超えると析出Siが増加することにより相手材を摩耗させる(攻撃する)。好ましいSi含有量は2〜10重量%である。Al系溶射摺動材料(3)において、Siの含有量が8重量%未満であると耐摩耗性の効果が得られず、17重量%を超えると析出Siが増加することにより相手材を摩耗させる(攻撃する)。好ましいSi含有量は11〜14重量%である。
上記したAl系溶射摺動材料(1)〜(3)は、7.0重量%以下のCu、0.7重量%以下のNi、0.3重量%以下のCr、及び0.3重量%以下のZrからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含有することができる。これらの元素の添加により更に強度を向上させることができる。
さらに、上記アルミニウム系溶射摺動材料を100重量%とし、さらに0.5〜5.0重量%の黒鉛及び0.5〜10.0重量%のMoS2からなる群から選択された1種又は2種の成分を含有することができる。この場合の黒鉛粒径は25〜35μmで、MoS2平均粒径は15〜25μmである。以下、本発明を詳しく説明する。
上記したAl系溶射摺動材料(1)〜(3)は、7.0重量%以下のCu、0.7重量%以下のNi、0.3重量%以下のCr、及び0.3重量%以下のZrからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含有することができる。これらの元素の添加により更に強度を向上させることができる。
さらに、上記アルミニウム系溶射摺動材料を100重量%とし、さらに0.5〜5.0重量%の黒鉛及び0.5〜10.0重量%のMoS2からなる群から選択された1種又は2種の成分を含有することができる。この場合の黒鉛粒径は25〜35μmで、MoS2平均粒径は15〜25μmである。以下、本発明を詳しく説明する。
Al系軸受合金開発の経緯
Al-Sn系軸受合金は1960年代までは鋳造合金の研究が為されていたが、なじみ性不足のために実用化がされなかった。その後、鋳造Al合金を裏金に圧接し、加工と焼鈍を繰り返すいわゆるバイメタルが開発された結果Al-Sn系軸受合金はより一般に使用されるに至った。
鋳造合金でもバイメタルでも表面に存在するSn相の総面積には大きな違いがないから、
なじみ性はSn総面積には関係しない。軸と軸受が完全な平坦面もしくは円形面で構成されているのではなく、凹凸があるので、図7に模式的に示すように軸受の凸部に必ずSn相が存在するモデルを想定すると、バイメタルによりなじみ性が向上した理由を説明することができる。
Al-Sn系軸受合金は1960年代までは鋳造合金の研究が為されていたが、なじみ性不足のために実用化がされなかった。その後、鋳造Al合金を裏金に圧接し、加工と焼鈍を繰り返すいわゆるバイメタルが開発された結果Al-Sn系軸受合金はより一般に使用されるに至った。
鋳造合金でもバイメタルでも表面に存在するSn相の総面積には大きな違いがないから、
なじみ性はSn総面積には関係しない。軸と軸受が完全な平坦面もしくは円形面で構成されているのではなく、凹凸があるので、図7に模式的に示すように軸受の凸部に必ずSn相が存在するモデルを想定すると、バイメタルによりなじみ性が向上した理由を説明することができる。
ところで、PbとAlは比重差が大きいために、溶射合金中で微細均一分布は困難であるが、Pbはなじみ性が優れているために分散程度に関係なくなじみ性を向上し、PbはSnのなじみ性不足を補っていた。ところが溶射合金では粒状のPb粒子を多く存在させようとするとAl-Pb合金粒子などをできるだけ溶解しないようにする必要がある。一方では未溶解比率を多くすると、Sn微粒子相の形成ができなくなる。一方Al中に固溶したPbは摺動特性にほとんど寄与しない。これらの諸点も考察して、本発明ではPbフリー材料を提供することとした。すなわち、従来のAl-Sn系合金ではSiなどの耐摩耗性成分あるいはPbなどの軟質元素が存在しないと摺動性能が不良になったが、本発明に係るAl-Sn系溶射材料(1)はSi,Pbを必須成分としない。
また、本発明に係るAl-Sn-Si, Al-Si系溶射材料(2),(3)では、添加されたSiがSi粒子として耐摩耗性を高める作用を利用している点では、従来の材料と同じであるが、なじみ性が優れていることが特長である。
また、本発明に係るAl-Sn-Si, Al-Si系溶射材料(2),(3)では、添加されたSiがSi粒子として耐摩耗性を高める作用を利用している点では、従来の材料と同じであるが、なじみ性が優れていることが特長である。
本発明合金の摺動特性
本発明におけるなじみ性はSnが微細かつ多数析出したAl-Sn系合金(1)及びAl-Sn-Si系合金(2)がすぐれている。
また、Siが析出して存在することにより、特に潤滑油下で耐摩耗性は向上するが、全体の硬さが増大することから耐焼付き性は劣化の傾向が見られる。これらのことから、Al-Sn-Si系合金(2)については、Si含有量は2〜10重量%が好ましい。
本発明におけるなじみ性はSnが微細かつ多数析出したAl-Sn系合金(1)及びAl-Sn-Si系合金(2)がすぐれている。
また、Siが析出して存在することにより、特に潤滑油下で耐摩耗性は向上するが、全体の硬さが増大することから耐焼付き性は劣化の傾向が見られる。これらのことから、Al-Sn-Si系合金(2)については、Si含有量は2〜10重量%が好ましい。
本発明のAl-Si-Sn合金(2)ではSn微粒子によるなじみ性と少量の析出Siによる耐摩耗性の向上を図っている。
図3に組織が示される溶射Al-Sn合金あるいはAl-Sn-Si合金が図2のものより摺動性能が優れている理由は次のように考えられる。
(イ)図2のAlマトリックスには微細分散する析出Snのために軟質であるが、図3の未溶解組織のAlマトリックスはより大きな塊状、片状Snが存在し更に軟質である。このことからなじみ性を更に有する組織となる。
(ロ)もしも相手軸が均一固溶体もしくは均一組織であるならば、微細分散粒子が均質でも不均質でもなじみ性には影響がほとんどない。しかし、相手軸材料は軟鋼の場合はフェライトとパーライトの混合組織であり、均質ではない。この場合は、全体により軟質な溶射アルミニウム合金の組織がなじみ性を良好にする。したがって、粒子状Sn相などの均質粒子を微細分散させるよりも片状などの形状が異なった異質粒子を微細分散させることがなじみ面形成に有効である。
図3に組織が示される溶射Al-Sn合金あるいはAl-Sn-Si合金が図2のものより摺動性能が優れている理由は次のように考えられる。
(イ)図2のAlマトリックスには微細分散する析出Snのために軟質であるが、図3の未溶解組織のAlマトリックスはより大きな塊状、片状Snが存在し更に軟質である。このことからなじみ性を更に有する組織となる。
(ロ)もしも相手軸が均一固溶体もしくは均一組織であるならば、微細分散粒子が均質でも不均質でもなじみ性には影響がほとんどない。しかし、相手軸材料は軟鋼の場合はフェライトとパーライトの混合組織であり、均質ではない。この場合は、全体により軟質な溶射アルミニウム合金の組織がなじみ性を良好にする。したがって、粒子状Sn相などの均質粒子を微細分散させるよりも片状などの形状が異なった異質粒子を微細分散させることがなじみ面形成に有効である。
一方、従来の溶射Al−Si系合金ではSiは0.01〜10μmの多数のSi微粒子を晶出または析出させて耐摩耗性を向上させていた。しかし、従来合金では多量のSiが相手軸を攻撃してしまうことがあった。これに対して、本発明のAl−Si系合金ではSiが多く析出している未溶解粉末と、析出が少ない溶解粉末の混合物を溶射する。本発明のAl-Si系溶射合金の組織例を図8に示す。
ところで、Al-Si合金の摩耗には次のような現象がある。(a)Si自体の硬度はHV1000以上であり、Alマトリックスより極めて高い。(b)Si微粒子はアブレーシブ摩耗され難いから、Alマトリックスは軟質であるが、Al-Si合金自体の耐摩耗性は高くなる。(c) Si粒子が軸受表面より突出して相手軸と接触するような摺動状態では前記(b)による耐摩耗性が向上する。
本発明においては,上記現象(a)-(c)を考慮して析出Siにより耐摩耗性が維持するとともに、従来のAl-Si合金は相手材の攻撃性が高かったために、析出Si量を少量にしている。
ところで、Al-Si合金の摩耗には次のような現象がある。(a)Si自体の硬度はHV1000以上であり、Alマトリックスより極めて高い。(b)Si微粒子はアブレーシブ摩耗され難いから、Alマトリックスは軟質であるが、Al-Si合金自体の耐摩耗性は高くなる。(c) Si粒子が軸受表面より突出して相手軸と接触するような摺動状態では前記(b)による耐摩耗性が向上する。
本発明においては,上記現象(a)-(c)を考慮して析出Siにより耐摩耗性が維持するとともに、従来のAl-Si合金は相手材の攻撃性が高かったために、析出Si量を少量にしている。
組織の調整方法
組織中のSn及びSi分布は、溶射時の熱量制御により粉末の溶け具合を変えることができる。粉末がより溶けきった溶射状態を作り出すとSn及びSi相が微細かつ全面に分布する。Al-Sn合金溶解粉と未溶解粉が混合していると、これらの粉末の境界に溶解Al-Sn合金から析出したSn相粒子が集まり易くなる。
本発明において好ましいHVOF溶射条件は次のとおりである。
(イ)酸素圧力:150PSI
(ロ)燃料圧力:100PSI
(ハ)溶射距離:180mm
(ニ)溶射層厚さ:300〜400μm
(ホ)燃料:プロピレン
(ヘ)原料粉末粒度:150μm以下、より好ましくは106μm以下
上記した条件内で、溶射の熱量を上げると溶解組織の割合が多くなり、遂には全体が溶解組織となるので、本発明では溶射熱量を抑える必要がある。また、原料合金粉末粒度を粗くすることにより、見掛け上の溶射熱量を小さく保つことができる。
一方、段落番号0024に示すHVAF溶射法はHVOF溶射よりも熱量が高くなり得る点を勘案して上記条件を調整する。
組織中のSn及びSi分布は、溶射時の熱量制御により粉末の溶け具合を変えることができる。粉末がより溶けきった溶射状態を作り出すとSn及びSi相が微細かつ全面に分布する。Al-Sn合金溶解粉と未溶解粉が混合していると、これらの粉末の境界に溶解Al-Sn合金から析出したSn相粒子が集まり易くなる。
本発明において好ましいHVOF溶射条件は次のとおりである。
(イ)酸素圧力:150PSI
(ロ)燃料圧力:100PSI
(ハ)溶射距離:180mm
(ニ)溶射層厚さ:300〜400μm
(ホ)燃料:プロピレン
(ヘ)原料粉末粒度:150μm以下、より好ましくは106μm以下
上記した条件内で、溶射の熱量を上げると溶解組織の割合が多くなり、遂には全体が溶解組織となるので、本発明では溶射熱量を抑える必要がある。また、原料合金粉末粒度を粗くすることにより、見掛け上の溶射熱量を小さく保つことができる。
一方、段落番号0024に示すHVAF溶射法はHVOF溶射よりも熱量が高くなり得る点を勘案して上記条件を調整する。
本発明における溶射法は非特許文献1の第327頁の高速ガスフレーム溶射(HVOF),プラズマ溶射あるいは高速空気フレーム溶射(HVAF)を好ましく使用することができる。しかし、空孔を少なくするためには粒子速度が速いHVOFが好ましく、HVAFがさらに好ましい。 この場合の空孔率は、溶射層全体に対して、0.5〜12面積%、好ましくは、0.5〜9面積%となる。
組成限定理由
本発明のAl-Sn系合金においてSn含有量が5重量%未満ではなじみ性が乏しく、20重量%を超えると軟化が起こり好ましくない。好ましいSn含有量は10〜15重量%である。本発明における組成とは合金全体の組成であり、合金を構成する(未)溶解相の組成ではない。例えば溶解相のSn量を多くして融点を下げることができる。
本発明のAl-Sn系合金においてSn含有量が5重量%未満ではなじみ性が乏しく、20重量%を超えると軟化が起こり好ましくない。好ましいSn含有量は10〜15重量%である。本発明における組成とは合金全体の組成であり、合金を構成する(未)溶解相の組成ではない。例えば溶解相のSn量を多くして融点を下げることができる。
本発明に係るAl-Sn-Si系合金において、Sn含有量が5重量%未満であると耐久性が低下し、Si含有量が1重量%未満であると耐摩耗性低下となる 。Sn含有量が20重量%を超えると高温での強度が低下し、Siが15重量%を超えると析出Siが増加することにより、相手材を摩耗させる。好ましいSn含有量は10〜15重量%であり、好ましいSi含有量は2〜10重量%である。
本発明のAl-Sn系合金、Al-Sn-Si系及びAl-Si系合金は、強度向上のために、7.0重量%以下のCu、0.7重量%以下のNi、0.3重量%以下のCr、及び0.3重量%以下のZrからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含有することができる。
Si析出率
本発明のAl-Si系又はAl-Sn-Si系合金においては、溶解組織中のSiは一部が析出している。ここでいう析出とは二次相を形成しているとの広義の意味である。その析出率は、合金全体で金属顕微鏡(400倍)による観察においてが7面積%以下、好ましくは4面積%以下である。但し、析出しているSiの面積率の算出には、Siの大きさが判断できる1μm以上の大きさを対象とする。なお、Siについて析出率を計算するための組織の条件は次のとおりである。
(イ)組織全体が未溶解組織と溶解組織で構成されていること。さらに、金属顕微鏡(200倍)による観察において、未溶解組織が30面積%以下であること。
(ロ)Al合金中に析出するSi相は100%Siであること。
(ハ)Si相粒子は円形あるいは多角形であること。
(ニ)画像解析装置により析出Si相の面積率が求められること。これは画像解析装置(ニレコ(株)製LUZEX FS)で解析可能である。
本発明のAl-Si系又はAl-Sn-Si系合金においては、溶解組織中のSiは一部が析出している。ここでいう析出とは二次相を形成しているとの広義の意味である。その析出率は、合金全体で金属顕微鏡(400倍)による観察においてが7面積%以下、好ましくは4面積%以下である。但し、析出しているSiの面積率の算出には、Siの大きさが判断できる1μm以上の大きさを対象とする。なお、Siについて析出率を計算するための組織の条件は次のとおりである。
(イ)組織全体が未溶解組織と溶解組織で構成されていること。さらに、金属顕微鏡(200倍)による観察において、未溶解組織が30面積%以下であること。
(ロ)Al合金中に析出するSi相は100%Siであること。
(ハ)Si相粒子は円形あるいは多角形であること。
(ニ)画像解析装置により析出Si相の面積率が求められること。これは画像解析装置(ニレコ(株)製LUZEX FS)で解析可能である。
Al-Si系状態図ではSiはAl-Si共晶あるいはSi初晶として存在する。この種の合金をここでは析出型という。従来の析出型Al-Si系合金では多量に析出したSiが耐摩耗性に寄与している。しかしながら、本願発明のAl-Si-(Sn)系合金は同じ析出型ではあるが、少量のSi析出が望ましいので組織の一部を溶解組織としている。
溶射アルミニウム合金の硬度
続いて本発明の溶射アルミニウム合金の硬度は、溶射状態で、一般的にいって次のとおりである。
(1)Al-Sn系合金:HV40〜80
(2)Al-Sn-Si系合金:HV45〜150
(3)Al-Si系合金:HV110〜150
溶射後下地基材との接着強度を高めるために熱処理を行うことがあり、この場合は硬度は若干低下する。
続いて本発明の溶射アルミニウム合金の硬度は、溶射状態で、一般的にいって次のとおりである。
(1)Al-Sn系合金:HV40〜80
(2)Al-Sn-Si系合金:HV45〜150
(3)Al-Si系合金:HV110〜150
溶射後下地基材との接着強度を高めるために熱処理を行うことがあり、この場合は硬度は若干低下する。
軸受装置
本発明の摺動材料の使用対象となる軸受装置では、潤滑油の種類及び潤滑油供給法、鋼軸と銅合金系軸受摺動層の間のクリアランスにより高度のなじみ性が要求されるか否かが決定される。(イ)潤滑油種類が冷媒を混合した潤滑油での潤滑油下または、その噴霧式及び無潤滑下、あるいは(ロ)潤滑油供給方式が潤滑油下、潤滑油滴下式あるいは無潤滑下、(ハ)軸と軸受のクリアランスが20〜100μm以下の何れかの条件を満たし、高度のなじみ性が要求される場合が本発明の好ましい対象となる。本発明の溶射銅合金が使用されるなじみ性が要求される摺動部材は、例えば斜板式コンプレッサーの斜板あるいはシューであり、これは前記(イ)に該当し、摺動面において潤滑油が不足し、焼付きが起こり易い。次にプレス等のスライドプレートなどは(ロ)に該当する。メインベアリングあるいはコンロッド大端部・小端部の内面、キャップブロック内面などは流体潤滑軸受で、潤滑条件に該して良好であるが、(ハ)に該当し、クリアランスが近年益々少なくなっているために、疲労あるいは焼付きが起こり易い。
本発明の摺動材料の使用対象となる軸受装置では、潤滑油の種類及び潤滑油供給法、鋼軸と銅合金系軸受摺動層の間のクリアランスにより高度のなじみ性が要求されるか否かが決定される。(イ)潤滑油種類が冷媒を混合した潤滑油での潤滑油下または、その噴霧式及び無潤滑下、あるいは(ロ)潤滑油供給方式が潤滑油下、潤滑油滴下式あるいは無潤滑下、(ハ)軸と軸受のクリアランスが20〜100μm以下の何れかの条件を満たし、高度のなじみ性が要求される場合が本発明の好ましい対象となる。本発明の溶射銅合金が使用されるなじみ性が要求される摺動部材は、例えば斜板式コンプレッサーの斜板あるいはシューであり、これは前記(イ)に該当し、摺動面において潤滑油が不足し、焼付きが起こり易い。次にプレス等のスライドプレートなどは(ロ)に該当する。メインベアリングあるいはコンロッド大端部・小端部の内面、キャップブロック内面などは流体潤滑軸受で、潤滑条件に該して良好であるが、(ハ)に該当し、クリアランスが近年益々少なくなっているために、疲労あるいは焼付きが起こり易い。
基材、その他の溶射条件
溶射を行う基材は軟鋼(SPCC)、機械構造用炭素鋼(S45C),構造用合金鋼(SCM)など任意の材料とすることができる。
また、溶射を行う前処理として基材の表面を洗浄した後、加圧式ショットブラスト処理を行うことで、基材表面の十点平均粗さを40〜60μmとし、十分な密着強度を確保することができる。なお、ショットブラスト処理は、加圧式以外にも吸引式または重力式などでも良い。
溶射層の厚さは2mm以下であれば良いが、5〜500μmであることが好ましい。
溶射層は溶射後研摩しあるいは研摩しないで摺動層として使用する。
さらに、溶射層の表面に、なじみのためのオーバレイとしてMoS2もしくは黒鉛−樹脂系被覆やSn系めっきを施すことができる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
溶射を行う基材は軟鋼(SPCC)、機械構造用炭素鋼(S45C),構造用合金鋼(SCM)など任意の材料とすることができる。
また、溶射を行う前処理として基材の表面を洗浄した後、加圧式ショットブラスト処理を行うことで、基材表面の十点平均粗さを40〜60μmとし、十分な密着強度を確保することができる。なお、ショットブラスト処理は、加圧式以外にも吸引式または重力式などでも良い。
溶射層の厚さは2mm以下であれば良いが、5〜500μmであることが好ましい。
溶射層は溶射後研摩しあるいは研摩しないで摺動層として使用する。
さらに、溶射層の表面に、なじみのためのオーバレイとしてMoS2もしくは黒鉛−樹脂系被覆やSn系めっきを施すことができる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
以下の実施例で使用した原料は次のとおりである。
(a)Al‐5重量%Sn含有アトマイズ粉末、平均粒度75μm
(b)Al‐12重量%Si含有アトマイズ粉末、平均粒度83μm
(c)Al‐13重量%Sn‐3重量%Si‐1重量%Cuアトマイズ粉末、平均粒度85μm
(d)Al‐10重量%Sn‐10重量%Cu含有アトマイズ粉、平均粒度73μm
(e)Al‐15重量%Sn含有アトマイズ粉末、平均粒度79μm
(f) 黒鉛粉末、平均粒度30μm
これらの原料粉末を表1に示す組成となるように混合した。但し、黒鉛はAl合金を100重量%としたときの外割添加量である。
(a)Al‐5重量%Sn含有アトマイズ粉末、平均粒度75μm
(b)Al‐12重量%Si含有アトマイズ粉末、平均粒度83μm
(c)Al‐13重量%Sn‐3重量%Si‐1重量%Cuアトマイズ粉末、平均粒度85μm
(d)Al‐10重量%Sn‐10重量%Cu含有アトマイズ粉、平均粒度73μm
(e)Al‐15重量%Sn含有アトマイズ粉末、平均粒度79μm
(f) 黒鉛粉末、平均粒度30μm
これらの原料粉末を表1に示す組成となるように混合した。但し、黒鉛はAl合金を100重量%としたときの外割添加量である。
溶射はDJガン(メテコ社製、商品名型式DJ9)を使用してHVOF法で厚さが4.5mm以上の鋼板S45C,SPCC,SCMなどの軟質材上に厚さが300〜400μmの溶射層を形成した。溶射条件は次のとおりである。なお、溶射時の使用粉末は、150μm以下の粒径を、より好ましくは106μm以下の粒径を用いる。また、使用粉末の種類は、粉砕粉末、造粒粉末、被覆粉末などでも良く、アトマイズ粉末に限られるものではない。
(a)ガス圧:プロピレン=100PSI/酸素=150PSI/空気=75PSI
(b)ガス量:プロピレン=75l/min/酸素=278l/min/空気339l/min
(c)粉末供給量:50g/min(25〜80g/minが可)
(d)溶射距離:180mm(150〜250mmが可)
(e)溶射時間:13秒(10〜60秒が可)
(f)予熱=100℃〜150℃
上記は溶解組織と未溶解組織を形成する条件となるが、従来の条件はガス容量が異なる。従来の条件は、プロピレン量44〜61l/minとしていたため、熱量が低く未溶解組織が多すぎて、本発明のような組織形成は困難であった。
(a)ガス圧:プロピレン=100PSI/酸素=150PSI/空気=75PSI
(b)ガス量:プロピレン=75l/min/酸素=278l/min/空気339l/min
(c)粉末供給量:50g/min(25〜80g/minが可)
(d)溶射距離:180mm(150〜250mmが可)
(e)溶射時間:13秒(10〜60秒が可)
(f)予熱=100℃〜150℃
上記は溶解組織と未溶解組織を形成する条件となるが、従来の条件はガス容量が異なる。従来の条件は、プロピレン量44〜61l/minとしていたため、熱量が低く未溶解組織が多すぎて、本発明のような組織形成は困難であった。
表1のNo.3の組織を図9に示し、No.5 の組織を図10に示す。また、これらの高倍率組織写真を図11,12に示す。図中黒線内が未溶解組織であり、白部はAl-Sn,Al-Sn-Si中のSnを示す。Snの形状は,粒状,樹枝状,層状及び網目状であり、全体として網状組織となっている。これらの場合のSn面積率は、図11で22.5%、図12で27.1%である。
図13はNo.3の試料のX線回折チャートである。
続いて、各種摺動部材への適用を想定して種々の試験を行った結果を以下説明する。
図13はNo.3の試料のX線回折チャートである。
続いて、各種摺動部材への適用を想定して種々の試験を行った結果を以下説明する。
実施例1
この実施例では斜板式コンプレッサーにおける斜板とシューの摺動を想定して、冷媒下での焼付き試験を行った。試験条件は次のとおりであった。
試験機:高圧雰囲気試験機
回転数:7200rpm
荷 重:2MPa/15min漸増
油 種:冷凍機油+冷媒の混合
潤 滑:潤滑噴霧式
相手軸:SUJ2
試験の結果を次表に示す。なお、複数個の試験片を試験し、最大値と最小値を表2に示し、ばらつきがない場合は1個の値を示す。(以下の表において同じ)。
この実施例では斜板式コンプレッサーにおける斜板とシューの摺動を想定して、冷媒下での焼付き試験を行った。試験条件は次のとおりであった。
試験機:高圧雰囲気試験機
回転数:7200rpm
荷 重:2MPa/15min漸増
油 種:冷凍機油+冷媒の混合
潤 滑:潤滑噴霧式
相手軸:SUJ2
試験の結果を次表に示す。なお、複数個の試験片を試験し、最大値と最小値を表2に示し、ばらつきがない場合は1個の値を示す。(以下の表において同じ)。
本発明の溶射合金No.3〜10はPbフリーであるにも拘らず、従来の鋳造材と同等の性能が得られる。本条件では耐焼付き性は硬さの影響が大きく、硬さが低いほど性能は良好である。
実施例2
この実施例では斜板式コンプレッサーにおける斜板とシューの摺動を想定して、冷媒下での摺動部材向け摩耗試験を行った。試験条件は次のとおりであった。
この実施例では斜板式コンプレッサーにおける斜板とシューの摺動を想定して、冷媒下での摺動部材向け摩耗試験を行った。試験条件は次のとおりであった。
試験機:高圧雰囲気試験機
回転数:700rpm
合計摺動距離:23200m
荷 重:16MPa
時 間:2時間
油 種:冷凍機油+冷媒の混合
潤 滑:どぶづけ
相手軸:SUJ2
試験結果を次表に示す。
回転数:700rpm
合計摺動距離:23200m
荷 重:16MPa
時 間:2時間
油 種:冷凍機油+冷媒の混合
潤 滑:どぶづけ
相手軸:SUJ2
試験結果を次表に示す。
本発明の溶射材料は従来の鋳造材と同程度以上の耐摩耗性を示す。またSn量が少なくなるとばらつきが少ない。
耐摩耗性は硬さが大きいほど良好である。ただし、No.2については、あまりにも硬すぎて極めて脆いものとなっている。
耐摩耗性は硬さが大きいほど良好である。ただし、No.2については、あまりにも硬すぎて極めて脆いものとなっている。
実施例3
この実施例では無潤滑摺動条件で摺動される一般摺動部材を想定して、摺動部材向け平板―球摩耗試験を行った。試験条件は次のとおりであった。
試験機:往復摺動試験機
速 度:0.08m/s(2Hz,0±10mm)
合計摺動距離:288m
荷 重:0.6MPa
時 間:1時間
油 種:なし
潤 滑:無し
相手軸:SUJ2
試験結果を次表に示す。
この実施例では無潤滑摺動条件で摺動される一般摺動部材を想定して、摺動部材向け平板―球摩耗試験を行った。試験条件は次のとおりであった。
試験機:往復摺動試験機
速 度:0.08m/s(2Hz,0±10mm)
合計摺動距離:288m
荷 重:0.6MPa
時 間:1時間
油 種:なし
潤 滑:無し
相手軸:SUJ2
試験結果を次表に示す。
本発明の溶射材料は従来の鋳造材と同等以上の耐摩耗性を示す。無潤滑下では硬さが低い方が耐摩耗性は良好である。
実施例4
この実施例では一般摺動部材を想定して、平板−球摩耗試験を行った。試験条件は次のとおりであった。
試験機:往復摺動試験機
速 度:0.08m/s(2Hz,0±10mm)
摺動距離:6912m
荷 重:0.6MPa
時 間:24時間
油 種:一般切削油
潤 滑:どぶづけ
相手軸:SUJ2
試験結果を表5に示す。
この実施例では一般摺動部材を想定して、平板−球摩耗試験を行った。試験条件は次のとおりであった。
試験機:往復摺動試験機
速 度:0.08m/s(2Hz,0±10mm)
摺動距離:6912m
荷 重:0.6MPa
時 間:24時間
油 種:一般切削油
潤 滑:どぶづけ
相手軸:SUJ2
試験結果を表5に示す。
本発明の溶射材料は従来の鋳造材と同等以上の性能を示す。耐摩耗性は硬さが高いほど良好である。
実施例5
この実施例では内燃機関のすべり軸受の摺動層を想定して、高面圧軸受試験を次の条件で行った。
試験機:ジャーナル型焼付き試験機
回転数:1300rpm
荷 重:10MPa/45min漸増
油 温:140℃
油 種:5W-30
相手軸:S55C焼入れ
試験結果を次表に示す。
この実施例では内燃機関のすべり軸受の摺動層を想定して、高面圧軸受試験を次の条件で行った。
試験機:ジャーナル型焼付き試験機
回転数:1300rpm
荷 重:10MPa/45min漸増
油 温:140℃
油 種:5W-30
相手軸:S55C焼入れ
試験結果を次表に示す。
本発明の溶射材料の耐焼付き性は従来材料と比べ同等以上であり、Sn量が多いと良好になる。
実施例5
この実施例では内燃機関のすべり軸受の摺動層を想定して、往復荷重試験を次の条件で行った。
試験機:往復動荷重試験機
回転数:3000rpm
荷 重:14.3MPa/30min漸増→全7ステップ、100MPaまでで疲労が起こらなかった場合は、100MPaの荷重で疲労発生まで試験を続行した。
油 温:160℃
油 種:10W-30
相手軸:S55C焼入れ
試験結果を次表に示す。
この実施例では内燃機関のすべり軸受の摺動層を想定して、往復荷重試験を次の条件で行った。
試験機:往復動荷重試験機
回転数:3000rpm
荷 重:14.3MPa/30min漸増→全7ステップ、100MPaまでで疲労が起こらなかった場合は、100MPaの荷重で疲労発生まで試験を続行した。
油 温:160℃
油 種:10W-30
相手軸:S55C焼入れ
試験結果を次表に示す。
本発明の溶射材料の耐疲労性は従来材に比べ同等以上である。
以上説明したように、本発明はPbフリーAl系材料の開発をさらに一歩進めるものであり、性能の向上及び安定に寄与するとともに、溶射材料を鉛フリーとすることにより鉛蒸気の大気中への揮散も避けることができる。
Claims (5)
- Snを5〜20重量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、未溶解組織と溶解組織が混在することを特徴とするアルミニウム系溶射摺動材料。
- Snを5〜20重量%及びSiを1〜15重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、未溶解組織と溶解組織が混在することを特徴とするアルミニウム系溶射摺動材料。
- Siを8〜17重量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、未溶解組織と溶解組織が混在することを特徴とするアルミニウム系溶射摺動材料。
- 7.0重量%以下のCu、0.7重量%以下のNi、0.3重量%以下のCr、及び0.3重量%以下のZrからなる群の少なくとも1種の元素をさらに含有することを特徴とする請求項1から3までの何れか1項記載のアルミニウム系溶射摺動材料。
- 前記アルミニウム系溶射摺動材料を100重量%とし、さらに0.5〜5.0重量%の黒鉛及び0.5〜10.0重量%のMoS2からなる群から選択された1種又は2種の成分を含有することを特徴とする請求項1から4までの何れか1項記載のアルミニウム系溶射摺動材料。
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- 2003-12-17 JP JP2003419147A patent/JP2005179707A/ja active Pending
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