JP2005179323A - ω−メルカプトアルキルピリジン類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ピリジン類(I)と該ピリジン類に対して化学量論量よりも多い硫化水素を、上記ピリジン類とは異なる第三級アミンの存在下に反応させて得た反応液中に、下式(1’)で算出される量の不活性ガスを導入することを特徴とする。
不活性ガス導入量(l)≧[反応時における硫化水素の過剰モル数の5倍] (1’)
[式中、n’は0〜2の整数を表し、n’が0であるときは、単結合を表す。q’は0〜2の整数を表す。]
【選択図】 なし
Description
従来、ω−メルカプトアルキルピリジン類の製造方法としては、例えば、2−ビニルピリジンに硫化水素を反応させて、2−(2−メルカプトエチル)ピリジンを製造する方法が報告されている(非特許文献1及び非特許文献2)。
で示される化合物[以下、化合物(III)という]が不純物として多量に副生し、ω−メルカプトアルキルピリジン類の収率が著しく低下するという問題があった。
この問題を解決するためには、硫化水素が存在する反応容器にピリジン類を添加すればよいが、硫化水素が存在する反応容器に該硫化水素と当量のピリジン類を添加する方法では、ピリジン類と硫化水素の混合が不十分であった。そのため、大過剰の硫化水素が存在する反応容器中にピリジン類を添加する必要があった。ところが、大過剰の硫化水素を用いる方法では、未反応の硫化水素が反応液中に多量に溶存し、反応液中の溶存硫化水素は容易に除去できないという問題があった。
で示されるピリジン類と該ピリジン類に対して化学量論量よりも多い硫化水素とを上記ピリジン類とは異なる第三級アミンの存在下に反応させて得た反応液中に下式(1’)で算出される量の不活性ガスを導入することを特徴とする下式(II)
で示されるω−メルカプトアルキルピリジン類の製造方法を提供するものである。
不活性ガス導入量(l)≧[反応時における硫化水素の過剰モル数の5倍](1’)
但し、上記の不活性ガス導入量は0℃、1気圧に換算したときのリットル値である。
本発明のω−メルカプトアルキルピリジン類(II)の製造方法は、通常回分式で行われるが、ピリジン類(I)と、硫化水素及び上記ピリジン類とは異なる第三級アミンとを、同時並行的に反応槽に導入する方法で行うこともできる。
上記のピリジン類(I)には、該ピリジン類(I)の100重量部当り、ハイドロキノン類やカテコール類等の重合禁止剤が0.01〜0.5重量部程度含まれていてもよい。より好ましくは、前記ピリジン類(I)は、上述の反応に供する前に、単蒸留等の手段により精製される。
硫化水素を仕込む際に、上記の反応を効率良く行う目的で、反応容器を密閉してもよく、加圧反応器を用いてもよい。
大気圧下に反応させる場合、硫化水素の使用量はピリジン類(I)の1モル当り、通常は1.05〜30モルの範囲であり、好ましくは1.1〜10モルの範囲である。
加圧下に反応させる場合、硫化水素の使用量はピリジン類(I)の1モル当り、好ましくは1.05〜5モルの範囲である。
上記の第三級アミンとしては、例えば、次に示す(A)〜(C)の化合物等が挙げられる。
[式(b)におけるR24は、炭素数1〜8の鎖状アルキル基、炭素数4〜12の環状アルキル基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を表し、該鎖状アルキル基、該環状アルキル基及び該芳香族炭化水素基中の水素原子は、それぞれ、アミノ基、N−アルキルアミノ基(但し、該アルキルは炭素数が1〜8個である)、N,N−ジアルキルアミノ基(但し、各アルキルはそれぞれ独立に炭素数が1〜8個である)又は水酸基で置換されていてもよい。また、式(b)における複素環中の一部の−CH2−は、−NH−又は−O−で置換されてもよい。mは0〜8の整数を表す。]
[該含窒素芳香族複素環化合物は、複素環を構成する炭素原子に炭素数1〜8のアルキル基が結合していてもよく、さらに、該アルキル基中の水素原子はアミノ基、N−アルキルアミノ基(但し、該アルキルは炭素数が1〜8である)、N,N−ジアルキルアミノ基(但し、各アルキルはそれぞれ独立に炭素数が1〜8である)又は水酸基で置換されていてもよい。]
また、式(a)中のR21、R22及びR23における上記環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基やシクロヘキシル基等の炭素数4〜12のアルキル基が挙げられる。
さらに、式(a)中のR21、R22及びR23における上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基やベンジル基等の炭素数6〜12の炭化水素基が挙げられる。
式(1)で表される第三級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンやジイソプロピルエチルアミン等が挙げられる。
式(2)で表される第三級アミンの具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等が挙げられる。
式(3)で表される第三級アミンとしては、N,N−ジエチルエタノールアミン等が例示される。また、式(4)で表される第三級アミンとしては、N−メチルジエタノールアミン等が例示される。
式(5)で表される第三級アミンの具体例としては、N,N−ジメチルアニリンやN,N−ジエチルアニリン等が挙げられる。
上記の第三級アミンとしては、ω−メルカプトアルキルピリジン類(II)の収率が向上するという観点から、上記(A)及び(B)に属する第三級アミンが好ましく、前記(A)の式(1)、(2)、(5)及び(6)で表される第三級アミン並びに前記(B)の脂環式第三級アミンからなる群から選ばれる一種以上の第三級アミンがより好ましく、式(1)及び(2)で表される第三級アミンが殊に好ましい。
反応時間は、ピリジン類(I)、第三級アミン及び硫化水素の量、各原料化合物の仕込み方法、反応温度等によっても異なるが、通常は0.1〜20時間の範囲である。
反応容器等の系内を大気圧まで戻す時間は、特に制限されないが、24時間以内が好ましい。反応容器等の系内を大気圧まで戻すときの温度は、通常は−40〜100℃の範囲であり、好ましくは−30〜60℃の範囲であり、より好ましくは−30〜30℃の範囲である。反応容器等の系内を大気圧まで戻すときの温度が−40℃未満では、硫化水素の除去速度が遅くなり、100℃を超えると前述した化合物(III)等の副生量が増加する傾向がある。
(i)反応容器又は反応槽の上部に設けられた導入管等から、反応液中に不活性ガスを吹き込む方法、
(ii)反応容器又は反応槽の底部に設けられた導入管等から、反応液中に不活性ガスを吹き込む方法。
上記の方法のうち、(ii)の方法が好ましい。
上記の反応容器又は反応槽の外部から導入管等を通じて反応液中に吹込まれた不活性ガスにより回収された硫化水素は、反応容器又は反応槽の外部に別に設置された反応容器等に移して、本発明の製造方法における次回の反応に再使用してもよい。
上記の不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス及び/又は希ガス類等が挙げられる。
上記の希ガス類としては、例えば、ヘリウムやアルゴン等が挙げられる。
反応系内を大気圧まで戻した後、硫化水素の追い出しに用いられる不活性ガスの導入量は、反応時における硫化水素の過剰モル数の5倍量(0℃、1気圧に換算したときのリットル値)以上用いる。5倍量未満ではガス出口の硫化水素濃度が1000ppmを超える可能性があり、安全衛生上好ましくない。不活性ガスの導入量は、好ましくは、50倍量以下である。
得られたω−メルカプトアルキルピリジン類(II)は、必要に応じて、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸や燐酸等)又は有機酸(酢酸やクエン酸等)の水溶液を用いて、ω−メルカプトアルキルピリジン類(II)の塩の水溶液とすることもできる。
また、粗ω−メルカプトアルキルピリジン類を上記の無機酸や有機酸の塩として再結晶後、アルカリ等を用いて中和してω−メルカプトアルキルピリジン類(II)を単離してもよい。
かくして、本発明の製造方法によれば、ω−メルカプトアルキルピリジン類を含む反応液中に不活性ガスを吹き込むことによって、反応液中に溶存している未反応の硫化水素を安全に且つ効率良く追い出すことができる。
反応系出口の排ガスをガス捕集バッグ(テドラーバッグ)で捕集し、ガス検知器/検知菅[(株)ガステック製]で測定した。
オートクレーブに硫化水素570.5g(16.7モル)を0.8MPa(ゲージ圧、8kg/cm2)加圧を保ちながら導入したのち、4−ビニルピリジン421.0g(4.0モル)とN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン 23.4g(0.2モル)の混合溶液を攪拌下に5℃で3時間かけて滴下した。滴下終了後、3℃で1時間攪拌した。次いで、オートクレーブ内を30℃まで昇温しながら大気圧にまで戻して、硫化水素を反応系外へ放出した。30℃で大気圧にまで戻した反応液中に、窒素を毎分0.3l(リットル)の流量で吹き込んだ。窒素を5時間吹き込み後、反応系出口の排ガス中の硫化水素濃度を測定したところ、230ppmであった。
窒素吹き込み時間を12時間にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応系出口の排ガス中の硫化水素濃度を測定したところ、120ppmであった。
窒素吹き込み時間を24時間にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応系出口の排ガス中の硫化水素濃度を測定したところ、110ppmであった。
窒素吹き込み時間を48時間にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応系出口の排ガス中の硫化水素濃度を測定したところ、110ppmであった。
窒素吹き込み時間を2時間にした以外は実施例1と同様の操作を行った。排ガスライン出口でガス中の硫化水素濃度を測定したところ、硫化水素濃度7000ppmであった。
Claims (7)
- 式(I)で示されるピリジン類と該ピリジン類に対して化学量論量よりも多い硫化水素とを、上記ピリジン類とは異なる第三級アミンの存在下に反応させて得た反応液中に、大気圧下に不活性ガスを導入する請求項1に記載のω−メルカプトアルキルピリジン類の製造方法。
- 上記ピリジン類とは異なる第三級アミンが、下記(A)〜(C)からなる群から選ばれる少なくとも一種のアミンである請求項1又は2に記載のω−メルカプトアルキルピリジン類の製造方法。
(A):下式(a)で表わされる第三級アミン
[式(a)におけるR21〜R23は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の鎖状アルキル基、炭素数4〜12の環状アルキル基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を表す。該鎖状アルキル基、該環状アルキル基及び該芳香族炭化水素基中の水素原子は、アミノ基、炭素数1〜8のN−アルキルアミノ基、炭素数1〜8のN,N−ジアルキルアミノ基及び水酸基から選ばれる一つ以上の基で置換されていてもよい。]
(B):下式(b)で表わされる脂環式第三級アミン
[式(b)における複素環中の窒素原子に結合するR24は、炭素数1〜8の鎖状アルキル基、炭素数4〜12の環状アルキル基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を表し、該鎖状アルキル基、該環状アルキル基及び該芳香族炭化水素基中の水素原子は、それぞれ、アミノ基、N−アルキルアミノ基(ただし、該アルキルは炭素数が1〜8個である)、N,N−ジアルキルアミノ基(ただし、各アルキルはそれぞれ独立に炭素数が1〜8個である)又は水酸基で置換されていてもよい。
また、式(b)における複素環中の一部の−CH2−は、−NH−又は−O−で置換されてもよい。mは0〜8の整数を表す。]
(C):含窒素芳香族複素環化合物
[含窒素芳香族複素環化合物は、複素環を構成する炭素原子に炭素数1〜8のアルキル基が結合していてもよく、さらに、該アルキル基中の水素原子はアミノ基、N−アルキルアミノ基(ただし、該アルキルは炭素数が1〜8である)、炭素数1〜8のN,N−ジアルキルアミノ基(ただし、各アルキルはそれぞれ独立に炭素数が1〜8個である)又は水酸基で置換されていてもよい。] - 式(I)で示されるピリジン類が、4−ビニルピリジン及び/又は2−ビニルピリジンである請求項1〜3のいずれかに記載のω−メルカプトアルキルピリジン類の製造方法。
- 上記ピリジン類とは異なる第三級アミンが、下式(1)、(2)、(5)及び(6)で表されるアミン群から選ばれる一種以上のアミンである請求項1〜4のいずれかに記載のω−メルカプトアルキルピリジン類の製造方法。
[式(1)におけるR3〜R5は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の鎖状アルキル基又は炭素数4〜12の環状アルキル基を表す。]
[式(2)におけるR6〜R9は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の鎖状アルキル基又は炭素数4〜12の環状アルキル基を表す。pは1〜3の整数を表す。]
[式(5)及び(6)におけるR13〜R15は、それぞれ独立に炭素数1〜8の鎖状アルキル基又は炭素数4〜12の環状アルキル基を表す。φ1〜φ3は、それぞれ独立に芳香族炭化水素基を表す。] - 不活性ガスが、窒素ガス及び/又は希ガス類である請求項1〜5のいずれかに記載のω−メルカプトアルキルピリジン類の製造方法。
- 希ガス類が、ヘリウム又はアルゴンである請求項6に記載のω−メルカプトアルキルピリジン類の製造方法。
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