JP2005176776A - 米の研ぎ汁を用いた食酢及び清涼飲料水の製造方法 - Google Patents

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信 涌井
Hitoshi Ogoshi
均 大越
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雅人 藤井
Shinya Kawaguchi
信也 川口
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Abstract

【課題】 従来、廃水処理されていた洗米の研ぎ汁、無洗米製造工程において副生される研ぎ汁を、有効利用した食酢およびその食酢を原料とした清涼飲料を提供する。
【解決手段】 研ぎ汁由来のデンプン質を利用してアルコールを作り、それを用いて酢酸生成と熟成を行って食酢を開発することにより目的を達成しようとするもので、具体的には研ぎ汁を微生物汚染されないように、・瞬時に食酢の原料として使用・高温高圧殺菌処理後に食酢の原料として使用・乾燥して水分を取除いて固形状にして使用し、研ぎ汁のデンプンを酵母によってアルコールにし、その次にアルコールに酢酸菌を入れて酢酸発酵し、熟成により食酢を製造することで、研ぎ汁由来の栄養価の高い食酢を製造し、さらには、水、果汁、糖液を混和して適切なブリックス糖度値と酸度に調整した清涼飲料とし、これを提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は米の洗米時に発生する研ぎ汁、無洗米の製造工程において副生される研ぎ汁を原料として食酢を製造する方法に関し、特に高濃度のアミノ酸、必須アミノ酸、γ−アミノ酪酸、ミネラルを含有する食酢および製造方法と、その食酢を原料とした清涼飲料水に関する。
従来から米を原料とする炊飯工場、無洗米を製造する精米工場、一般家庭より、出る米の研ぎ汁は、毎年、5000万t〜1万t以上(米の年間生産量1000万tの5倍〜10倍)排出されている。一方、米の研ぎ汁の成分には、デンプンや胚芽、脂肪酸、タンパクなど栄養価の高い成分が含まれているため、BOD(生物化学的酸素要求量)が2000mg/l以上、COD(化学的酸素要求量)が1000mg以上であり、その殆んどが廃水処理に回されている。研ぎ汁は微生物に分解されにくいために、廃水処理槽に対する負担は技術的、経済的に大きく、水質の汚染という観点から環境問題の一つと言われており、この対策の一つとして、無洗米という研がなくても良いお米が普及しているが、無洗米の普及率は米の販売量の10%程度と言われており、研ぎ汁の問題は未だ解決されていない。
このような現状において米の研ぎ汁の有効活用について模索していたところ、研ぎ汁そのもの、研ぎ汁を高温高圧殺菌したもの、あるいは乾燥によって固形化したものを原料とした食酢の製造が可能である事を確認した。
一方、食酢は従来調味料であるが、最近は酢に含まれる遊離アミノ酸やミネラル等の健康機能が注目され、アミノ酸については様々な食品に添加されるようになり、ミネラルについてはカルシウム、鉄等が栄養補助剤として市販され、その需要も伸びている。同時にアミノ酸の機能についても様々な研究が進められている。
中でも最近、発芽玄米やお茶の中に含まれているアミノ酸のγ−アミノ酪酸(通称ギャバ)の効能が注目されており、研ぎ汁にはギャバの前駆体であるグルタミン酸が多く含まれていることが分かった。このグルタミン酸は所定の温度、所定のPHの条件でγ−アミノ酪酸に生化学反応により変化することが分かっており、温度条件30〜35℃、PH条件5〜6が適当と言われている。このγ−アミノ酪酸は人間の脳内にある神経伝達物質で神経抑制作用や精神安定作用などの機能を有しており、血圧降下作用、脳の代謝促進作用、動脈硬化の予防、二日酔いの防止、皮膚の老化防止などの効果もある物質としても注目されている。
さらに、研ぎ汁に含まれる胚芽にはビタミンB群、ビタミンE、ビタミンKや、鉄、カリウム、マグネシウム等のミネラルが豊富であり、同様に研ぎ汁に含まれる糠にはタンパク質、脂質、食物繊維が多く含まれている。
酢の原料としては、デンプン質を含む、米、玄米、穀物類ならびに糖を含むものとして果実類、蜂蜜、さとうきび等が用いられ、原料によって異なった味と品質の酢ができる。
このような食酢の製造方法として、もろみに通気攪拌して酢酸発酵を進める深部培養法(通気攪拌培養法)ともろみの液面だけで酢酸発酵を進める表面発酵法(静置発酵法)がある。
深部培養法は酢酸発酵が好気発酵である事を利用し気体と液体の接触面積をできるだけ大きくして酢酸発酵を早める速醸法で、表面発酵法は古くから行われてきた方法で小規模での生産も可能で管理操作が簡易な方法で、しかもできる製品も良品であるのでわが国の食酢製造業者の大部分はこの方法を採用して製造を行っている。
従来、廃水処理を行っていた米の洗米時に副生される研ぎ汁、無洗米の製造工程において副生される研ぎ汁を、そのまま使用するか、高温高圧殺菌後に使用するか、或いは乾燥して水分を取除いて固形状にして使用するかにより、研ぎ汁由来の栄養価を有効利用した食酢および食酢の製造方法を得ようとするもので、さらに、その食酢を原料とした清涼飲料水を製造しようとするものである。
研ぎ汁由来のデンプン質を利用してアルコールを作り、それを用いて酢酸生成と熟成を行って食酢を開発することにより目的を達成しようとするもので、具体的には研ぎ汁を微生物汚染されないように、
・瞬時に食酢の原料として使用
・高温高圧殺菌処理後に食酢の原料として使用
・乾燥して水分を取除いて固形状にして使用
し、研ぎ汁のデンプンを酵母によってアルコールにし、その次にアルコールに酢酸菌を入れて酢酸発酵し、熟成により食酢を製造することで、研ぎ汁由来の栄養価の高い食酢を製造することにより、上記の課題を解決しようとするものである。
研ぎ汁の成分について表1、2に示す。明らかにミネラルやアミノ酸が多く含まれていることが分かる。
Figure 2005176776
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さらに、研ぎ汁を原料とした酢を用いて清涼飲料水を開発する場合、適正な酸度および糖度の上限、下限を官能試験により見い出したので、酸度0.2〜0.6%、糖度3〜20%の範囲内とするものである。
官能試験結果を表3に示す。
Figure 2005176776
本発明によれば、研ぎ汁の有効活用による環境問題の解決、栄養価の高い研ぎ汁を使うことによるミネラル、γ−アミノ酪酸、必須アミノ酸を多く含んだ健康酢の開発、さらに、その酢を原料とした飲みやすい清涼飲料水の開発を可能とするものであり、環境、健康面からも有意性がある。
表4の仕込み配合でアルコール発酵を9日間行い、得られたもろみに330kgの種酢を添加して49日間かけて酢酸発酵させる。酢酸発酵したものを30日間かけて熟成し、フィルターブレスでろ過し、ろ液を70℃で殺菌して食酢を得た。得られた食酢の成分値は表5、6の通りである。本発明の酢の成分値は財団法人日本食品分析センターの調査結果である。
Figure 2005176776
Figure 2005176776
Figure 2005176776
表7の仕込み配合でアルコール発酵を9日間行い、得られたもろみに400kgの種酢を添加して49日間かけて酢酸発酵をさせる。酢酸発酵したものを30日間かけて熟成し、フィルターブレスでろ過し、ろ液を70℃で殺菌して食酢を得た。
Figure 2005176776
本発明により得られた研ぎ汁を原料とした食酢は、一般の食酢に比べて、カルシウムが2倍以上、鉄が10倍以上、カリウムが6倍以上、マグネシウムが40倍以上等ミネラル成分が格段に多く含まれていることが分かる。さらに、本発明の研ぎ汁を原料とした酢はナトリウムに比べてカリウムが多量に含まれていることから、食塩過剰摂取者の人体のナトリウム−カリウムバランスを保つために有効な食酢であり、人体に不足しがちなミネラル成分、カルシウム、鉄、ナトリウム、カリウム、マグネシウムを補給する上で有用なミネラル成分を豊富に含んだ発酵食品であることも分かる。さらに、本発明はミネラル成分、化学薬品等を一切添加せずに研ぎ汁由来のミネラル成分を無駄にすることなく食酢に有効利用させた点に意義がある。
本発明により得られた研ぎ汁を原料とした酢は、一般の食酢に比べてγ−アミノ酪酸、アミノ酸、必須アミノ酸が多く含まれていることが分かる。これは研ぎ汁由来の栄養価の高い原料を使用していること、研ぎ汁から酢を製造する際のアルコール発酵、酢酸発酵、酢酸熟成の製造条件(温度、PH)が、γ−アミノ酪酸が増加する条件と重なっているためであると考えられる。
本発明の研ぎ汁を原料とした酢を原料として様々な配合条件で清涼飲料水の製造を行い、各々について官能試験を行った。清涼飲料水の配合条件とその官能試験結果を表3に示す。製造は研ぎ汁を原料とした酢に、水、果汁、砂糖や液糖を加えた。清涼飲料水の品質は、酸度、ブリックス糖度、PH測定にて確認した。酸度は0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液による中和滴定での確認、ブリックス糖度はブリックス糖度計による確認、PHはPH測定計による確認にて行った。官能試験は10名のパネラーで行い、各々の清涼飲料水を酸味、甘味、バランスの観点から評価を得た。
表3の試験1〜6の比較は、糖度(ブリックス糖度計による)を一定の5%として酸度を変えた場合の清涼飲料水の官能試験結果である。官能試験結果より、酸度が0.6%を越えると酸味を強く感じるようになり、清涼飲料水とする場合の酸度は0.6%程度が上限であるとみられる。反対に酸度が0.2%になると酸味が弱く、甘味を強く感じるようになり、食酢としての酸味と甘味のバランスが崩れる。したっがって酸度は0.2%程度が下限であると考えられる。
一方、上記表3の試験7〜14の比較は、酸度を一定の0.5%として糖度を変えた場合の清涼飲料水の官能試験結果である。官能試験結果より糖度が20%を越えると甘味を感じるようになり、清涼飲料水とする場合の糖度は20%程度が上限であると考えられる。反対に糖度が3%になると甘味が弱く、酸味を強く感じるようになり、食酢としての酸味と甘味のバランスが崩れる。したがって糖度は3%程度が下限であると考えられる。
以上より、研ぎ汁を原料とした酢を用いて清涼飲料水を開発する場合、適正な酸度および糖度の上限、下限のあることが分かり、酸度が0.2%〜0.6%、糖度が3%〜20%の範囲内の清涼飲料水であれば、美味しく飲みやすくなる。酸味と甘味のバランスを調整することによって、栄養価の高く、飲みやすい清涼飲料水が製造することができる。

Claims (7)

  1. 米の研ぎ汁に、麹と酵母と水を加えてアルコール発酵させた後、酢酸菌を加えて酢酸発酵させることを特徴とする食酢の製造方法。
  2. 米の研ぎ汁はそのまま、或いは高温高圧殺菌した請求項1記載の食酢の製造方法。
  3. 米の研ぎ汁は乾燥により水分を5%以内とした請求項1記載の食酢の製造方法。
  4. アルコール発酵を25℃で、7日間行う請求項1、請求項2、請求項3記載の食酢の製造方法。
  5. 酢酸発酵を34℃〜36℃の範囲内で49〜60日間静置式酢酸発酵法で行い、次いで30〜90日間、静置熟成させる請求項1、請求項2、請求項3記載の食酢の製造方法。
  6. 得られた食酢はアミノ酸が1000mg/100g以上、必須アミノ酸が500mg/100g以上、γ−アミノ酪酸(ギャバ)が100mg/100g以上、カルシウムが5mg/100g以上、鉄が1.3mg/100g以上、カリウムが300mg/100g以上、マグネシウムが200mg/100g以上を含む請求項1、請求項2、請求項3記載の食酢の製造方法。
  7. 請求項1乃至請求項6記載の食酢を原料として、水、果汁、砂糖や液糖にて希釈または混ぜてブリックス糖度値で0.2〜0.6%、酸度を3〜20%以内に調整した清涼飲料水。
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