JP2005175009A - 磁気コア及びそれを用いたインダクタンス部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 原料として用いる磁石粉末を微細化しても、1200kA/m以上の保磁力を安定して発現する、磁気コアギャップ挿入用のボンド磁石を得ることで、小型化しても重畳特性の劣化が起こらない磁気コア、及びそれを用いたインダクタンス部品を提供すること。
【解決手段】 微細セル組織における平均セル径が、150〜2500Åの2−17型サマリウムコバルト磁石希土類磁石を、平均粒子径が2.0〜50μmとなるように粉砕し、ボンド磁石に用いる原料粉末とする。平均セル径を150〜2500Åに調整することで、粉砕した際の磁石粉末の平均粒子径を、2.0〜50μmにしても磁気特性、特に保磁力の低下が起こらず、ボンド磁石の薄型化が可能となり、薄型のボンド磁石を用いることで、磁気コアの小型化が可能となる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、磁気コア、及びそれを用いたインダクタンス部品に関わるものである。
チョークコイルやトランスに用いられる磁気コアには、優れた直流重畳特性が求められており、高周波用の磁気コアにはフェライト磁気コアや圧粉磁気コアが使用されている。フェライト磁気コアは初透磁率が高く飽和磁束密度が小さい、圧粉磁気コアは初透磁率が低く飽和磁束密度が高い、という材料物性に由来した特徴がある。従って、圧粉磁気コアはトロイダル形状で用いられることが多く、フェライト磁気コアは、例えばE型磁気コアの中足の突合せ部にギャップを設けた、EE磁気コアとして用いられることが多い。
しかし、近年の電子機器の小型化への要求に伴う、電子部品の小型化への要求により、より大きな重畳磁界における、より高い透磁率が強く求められている。そして、一般に直流重畳特性を向上させるためには、飽和磁化の高い磁気コアを選択すること、つまり高磁界で磁気飽和しない磁気コアの選択が必須とされている。
しかし、飽和磁化は材料の組成で必然的に決まるものであり、無限に高くできるものではない。そのため、従来の直流重畳特性を向上させる手段は、わずかな飽和磁化の向上に多大の労力が費やされている割には、直流重畳特性は期待されている程に伸びていないのが実状であった。
これに対処する手段の一つとして、磁路の一箇所以上にギャップを挿入し、そのギャップに永久磁石を挿入することが従来から検討されてきた。この方法は直流重畳特性を向上させるには優れた方法であるが、一方で、金属焼結磁石を用いると、コアロスの増大が著しく、またフェライト磁石を用いると、直流重畳特性が安定しないなどの理由で、実用に耐え得るものではなかった。
これらの問題を解決する手段として、例えば特許文献1には、永久磁石として保磁力の高い希土類磁石粉末とバインダーとを混合し、圧縮成形したボンド磁石を挿入することで、直流重畳特性を向上し、併せて磁気コアの温度上昇を防止する技術が開示されている。
しかし、近年、電源に対する電力変換効率向上の要求はますます厳しくなっており、チョークコイル用及びトランス用の磁気コアについても、単に磁気コア自体の温度を測定するだけでは、優劣が判断不能なレベルとなっている。このため、コアロスの測定結果に依拠した判断が不可欠であり、実際に本発明者らが検討を行った結果、特許文献1に示された抵抗率の値では、コアロス特性が劣化することが明らかになった。
そこで、本発明者らは、特許文献2において、ギャップに挿入する永久磁石として400kA/m以上の固有保磁力、300℃以上のTc、1.0Ω・cm以上の比抵抗の永久磁石を挿入することでコアロスを低下させることなく、優れた直流重畳特性が得られることを開示している。
しかし、実際は、小型化が進むに伴い、ギャップ長を小さくせざるを得ず、挿入するボンド磁石の薄型化が要求されてきており、薄型化に対応するためには、ボンド磁石用粉砕粉末のさらなる微細化が必要である。しかし、粒子径の微細化は、ボンド磁石における磁気特性、特に保磁力の劣化を伴い、それが原因で150℃程度の高温度下における磁気コアの直流重畳特性が、粉末の平均粒子径が100μm程度より小さい領域で低下の傾向が顕著となり、ボンド磁石用粉末粒子径の微細化には限界があった。
従って、本発明の課題は、原料として用いる磁石粉末の粒子径を微細化しても、1200kA/m以上の保磁力を安定して発現する、磁気コアギャップ挿入用のボンド磁石を得ることで、小型化しても直流重畳特性の劣化が起こらない磁気コア、及びそれを用いたインダクタンス部品を提供することにある。
本発明は、ボンド磁石の原料として用いることができる、2−17型サマリウム−コバルト希土類磁石(以下、SmCo磁石)粉末粒子における、微細セル組織のセル径を調整することで、微細化した磁石粉末粒子の、保磁力低下を抑制することを検討した結果なされたものである。
即ち、本発明は、磁路に設けられた少なくとも1箇所のギャップに、固有保磁力(以下、iHc)が1200kA/m以上、キュリー温度(以下、Tc)が300℃以上の、SmCo磁石粉末と、高分子からなるボンド磁石を挿入してなる磁気コアにおいて、前記ボンド磁石に含まれる前記SmCo磁石粉末の微細セル組織における平均セル径が、150〜2500Åで、前記SmCo磁石粉末の平均粒子径が2.0〜50μmであること特徴とする磁気コアである。
また、本発明は、前記ボンド磁石の残留磁束密度(以下、Br)が150〜480mT、保磁力(以下、bHc)が103〜358kA/m、固有保磁力(以下、iHc)が1200〜2400kA/m、最大エネルギー積(以下、(BH)max)が8〜32kJ/m3であることを特徴とする、前記の磁気コアである。
また、本発明は、前記ボンド磁石に含まれる高分子の占積率が20%以上で、前記ボンド磁石の比抵抗が1Ω・cm以上であることを特徴とする、前記の磁気コアである。
また、本発明は、前記の磁気コアに、少なくとも1ターンの巻線を施してなることを特徴とするインダクタンス部品である。
本発明者らは、前記課題に対処するために、磁気コアのギャップに挿入する永久磁石について検討した結果、磁石の比抵抗が1.0Ω・cm以上の永久磁石を使用した時、薄型化した場合においても、優れた直流重畳特性を発現する磁気コアが得られることを見出した。これは、優れた直流重畳特性を得るのに必要な磁石特性は、エネルギー積よりもむしろ固有保磁力であり、比抵抗の高い永久磁石を使用しても、固有保磁力が高ければ充分に高い直流重畳特性が得られることを見出したことによる。
つまり、永久磁石としてボンド磁石をギャップに挿入した磁気コアをさらに小型化するには、原料となる磁石粉末の粒子径をさらに微細化した際の、磁石粉末の固有保磁力低下を抑制すればよい。これを実現するために、本発明者らは、原料として用いるSmCo磁石における微細セル組織のセル径を、150〜2000Åに調整することで、SmCo磁石粉末の粒子径を2.0〜100μmの範囲に微細化しても、所要の固有保磁力を維持し得ることを見出した。
なお、希土類磁石には、SmCo系の他に、ネオジム−鉄−ホウ素(NdFeB)系、や、サマリウム−鉄−窒素(SmFeN)系があるが、リフロー条件及び耐酸化性を考慮すると、Tcが300℃以上、且つ微細化してもiHcが1200kA/m以上の磁石は、現状ではSmCo磁石に限定される。
本発明が適用できる、チョークコイル用及びトランス用磁気コアとしては、軟磁気特性を有する材料であれば特に限定されないが、一般的にはMnZn系又はNiZn系フェライト、圧粉磁気コア、珪素鋼板を積層などの方法で磁気コアとしたもの、アモルファス合金の薄帯や粉末を磁気コアに成形したものなどが挙げられる。また、磁気コアの形状についても特に制限があるわけではなく、トロイダル磁気コア、EE磁気コア、EI磁気コアなど、あらゆる形状の磁気コアに本発明の適用が可能である。
これら磁気コアの磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを設け、そのギャップに永久磁石を挿入する。ギャップ長に特に制限はないが、ギャップ長が狭すぎると直流重畳特性が劣化し、またギャップ長が広すぎると透磁率が低下するので、おのずから挿入するギャップ長は決まってくる。
次に、ギャップに挿入される永久磁石に対する要求特性は、iHcについてはヒステリシス損失を抑えるため、1200kA/m以上が必要であり、また比抵抗は大きいほど良いが、1.0Ω・cm以上であれば、渦電流損失劣化の大きな要因にはならない。
また、磁石粉末の平均粒子径が50μm以上になるとコアロス特性が劣化するので、磁石粉末の平均粒子径は50μm以下であることが望ましく、平均粒子径が2.0μm以下になると粉末熱処理及びリフロー時に磁石粉末の酸化による磁化の減少が著しいため、2.0μm以上の粒子径が必要である。
また、本発明において、最適平均セル径を、150〜2000Åとしたのは、磁石粉末の粒子径の微細化に伴う保磁力劣化の傾向から、平均セル径が2500Åを超える領域では、磁石粉末の粒子径の微細化により、iHcが1200kA/m以下に低下し、従来からSmCo磁石において、安定的にその磁気特性を得ることできる平均セル径は、最小で150Å程度までが限界とされていることから、下限値については150Åとした。
一方で、セルの微細化によって、1200kA/m以上のiHcを、安定的に得られる磁石粉末の粒子径の範囲は、2.0〜100μmの範囲であり、この観点からも、磁石粉末の粒子径の最適値は、2.0〜50μmであることが分かる。
また、平均セル径が200〜2500Å、磁石粉末の粒子径が2.0〜50μmの範囲において、1200〜2200kA/mのiHcが得られていることと、ボンド磁石における高分子の混合比率を変化させることで、Br=150〜450mT、(BH)max=8〜32kJ/m3、bHc=103〜358kA/mと、高分子の混合比率の変化に応じた磁気特性が得られ、磁気コア用ボンド磁石として十分優れた数値であることから、本発明に用いるボンド磁石の磁気特性は、Br=150〜450mT、(BH)max=4〜32kJ/m3、bHc=103〜358kA/m、iHc=1200〜2400kA/mとした。
ここでは、まず、平均セル径の異なる磁石粉末を用いて、SmCoボンド磁石を作製し比較を行った例を示す。平均セル径が、100Å、200Å、500Å、1050Å、1650Å、2080Å、2590Å、3630ÅのSmCo焼結磁石をそれぞれ粗粉砕後、ボールミルで微粉砕を行い、平均粒子径が2.0〜500μmの磁石粉末を作製した。
これらのSmCo磁石粉末に、10重量%に相当する量のエポキシ樹脂をバインダーとして混合した後、無磁場中、4.9GPaの圧力で金型成形を行い、その後、大気中室温で12時間の乾燥、硬化を行った。成形したボンド磁石の形状は、直径が13mm、高さが9mmの円柱で、このボンド磁石を4Tの磁界で予備着磁配向後、2.5Tの直流BHトレーサーを使用して磁気特性を評価した。
図1は、前記の手順にて製造したボンド磁石の、磁石粉末の微細セル組織における平均セル径毎に、粉砕粒子径とiHcの関係を示した図である。図1に示すように、平均セル径が2500Åより大きい領域では、磁石粉末の微細化に伴うiHcの低下が顕著になる。特に、磁石粉末の平均粒子径が100μm以下の領域において、その傾向が顕著化している。
それに反して、平均セル径が2500Å以下になると、磁石粉末の微細化に伴う保磁力低下傾向は大きく抑制されることと、前記のように所要の保磁力確保のための平均セル径の下限値が150Åであることから、平均セル径を150〜2500Åの範囲とすることで、磁石粉末の平均粒子径を、2.0〜100μmmの範囲に微細化しても磁気コア用ボンド磁石として必要な保磁力である1.2MA/m以上が得られることが確認できた。
また、前記のようにSmCo磁石においては、従来からセルと称される微細組織を有することで、SmCo磁石特有の優れた磁気特性を発現するとされている。図2は、SmCo磁石における微細セル組織の走査型電子顕微鏡による写真である。なお、図2は、日本電子製JL−5600走査型電子顕微鏡を用いて、30000倍の倍率にて撮影したものであり、焼結体表面を鏡面研磨後、酸溶液によりエッチング処理を施し、磁化容易磁区であるc軸に対して垂直方向に切断した面である、c面における微細セル組織を示す。
表1は、前記の方法にて製造したボンド磁石の、各平均セル径における磁気特性の平均粒子径依存性を示したものである。
表1に示すとおり、平均セル径が200〜2500ÅにおいてiHc=1200kA/m〜2200kA/mの、優れた磁気特性が安定して得られていることが確認できる。
また、表2は、平均セル径が1050Åの磁石粉末を用い、高分子の混合比率を変えた場合の磁気特性、つまり磁気特性のバインダー混合比率依存性を示したものである。
表2に示したとおり、高分子の混合比率を変化させることで、Br=150〜480mT、(BH)max=8.0〜31.8kJ/m3、bHc=103〜358kA/mと、その混合比率に応じて、磁気コア用ボンド磁石として十分優れた磁気特性が得られていることが確認できた。
次に、平均セル径がそれぞれ200、1050、2590ÅのSmCoボンド磁石をMn−Zn系フェライト磁気コアの磁路の一部に設けたギャップに、挿入した場合の効率を測定し、比較を行った例を示す。
SmCo磁石で、上記のセル径の微細セル組織を有する焼結磁石を、それぞれ粗粉砕後、ボールミルで微粉砕を行い、平均粒子径、D50=2、30、120、500μmの磁石粉末を作製した。次に、SmCo磁石粉末とバインダーの、乾燥後の体積比が、SmCo磁石粉末/バインダー=50/50となるように秤量し、溶媒を加えて遠心脱泡機で5分攪拌後、3本ロールで混練を行ってペーストを作製した。
ここでは、東洋紡績株式会社製のポリアミドイミド樹脂である、バイロマックス(登録商標)HR11NNを、バインダーとして用い、溶媒にはN−メチルピロリドンを用いた。溶媒の添加量は、SmCo磁石粉末とバインダーの混合物と溶媒が重量比で、混合物/溶媒=70/10となるようにした。
ドクターブレード法により、ペーストを成膜して作製したグリーンシートを作製し、150℃で1時間乾燥して、厚みが200μmのシート磁石を作製した。これらのシート磁石の比抵抗を測定し、全て1.0Ω・cm以上であることを確認した。
ここで用いたフェライト磁気コアは、Mn−Zn系フェライト材で作製された、磁路長が5.93cm、実効断面積が0.83cm2のEE型磁気コアであり、その中足の突合せ部に、500μmのギャップ加工を施した。一方、ボンド磁石は、フェライト磁気コアの中足の断面形状で、かつ厚みが500μmの形状に加工した。その後、約10Tのパルス磁場で磁路方向、つまり厚み方向に着磁後、EE型磁気コアのギャップ部に挿入した。
これらについて、直流重畳特性を測定した。図3は、平均セル径が200ÅのSmCo磁石粉末を用いた場合の直流重畳特性、図4は、平均セル径が1050ÅのSmCo磁石粉末を用いた場合の直流重畳特性、図5は、平均セル径が2590ÅのSmCo磁石粉末を用いた場合の直流重畳特性、図6は、平均セル径が3680ÅのSmCo磁石粉末を用いた場合の直流重畳特性を示した図である。
従来技術による磁気コアの、150℃程度の高温下における直流重畳特性評価においては、ギャップに挿入するボンド磁石を構成する磁石粉末の平均粒子径が100μm以下になると、磁石粉末の保磁力の低下により、直流重畳特性も低下する傾向にある。これに対して、本発明の磁気コアは、図3〜図6に示したように、磁石粉末の平均セル径を200〜2500Åの間に調製することで、磁石粉末の微細化に伴う直流重畳特性の低下は認められず、磁石粉末の微細化による影響のない、優れた直流重畳特性が得られることが確認できた。なお、平均セル径=3630Åにおける直流重畳特性が、粉末粒子径の減少とともに低下していることから、最適平均セル径の上限値は、2500Åであることが確認できた。
Claims (4)
- 磁路に設けられた少なくとも1箇所のギャップに、固有保磁力(iHc)が1200kA/m以上、キュリー温度(Tc)が300℃以上の、2−17型サマリウム−コバルト希土類磁石粉末と、高分子からなるボンド磁石を挿入してなる磁気コアにおいて、前記ボンド磁石に含まれる前記2−17型サマリウム−コバルト希土類磁石粉末の微細セル組織における平均セル径が、150〜2500Åで、前記2−17型サマリウム−コバルト希土類磁石粉末の平均粒子径が2.0〜50μmであること特徴とする磁気コア。
- 前記ボンド磁石の残留磁束密度(Br)が150〜480mT、保磁力(bHc)が103〜358kA/m、固有保磁力(iHc)が1200〜2400kA/m、最大エネルギー積((BH)max)が8〜32kJ/m3であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気コア。
- 前記ボンド磁石に含まれる高分子の占積率は20%以上で、前記ボンド磁石の比抵抗は1Ω・cm以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の磁気コア。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気コアに、少なくとも1ターンの巻線を施してなることを特徴とするインダクタンス部品。
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