JP2004356152A - 磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れたコアロス特性と直流重畳特性を有する安価な磁心およびそれを用いたインダクタンス部品を提供する。
【解決手段】磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを有する磁芯であって、そのギャップに固有保磁力が10kOe以上、Tcが500℃以上、粉末平均粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末と樹脂からなり、比抵抗が1.0Ω・cm以上で、挿入前に比べて、その磁心のヒステリシス損失の増加が20%以内であるボンド磁石を挿入した磁芯11と、前記磁芯に巻かれた少なくとも1ターン以上の巻線4とで構成されたインダクタンス部品とする。
【選択図】 図2
【解決手段】磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを有する磁芯であって、そのギャップに固有保磁力が10kOe以上、Tcが500℃以上、粉末平均粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末と樹脂からなり、比抵抗が1.0Ω・cm以上で、挿入前に比べて、その磁心のヒステリシス損失の増加が20%以内であるボンド磁石を挿入した磁芯11と、前記磁芯に巻かれた少なくとも1ターン以上の巻線4とで構成されたインダクタンス部品とする。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スイッチング電源などに使用されるチョークコイル用及びトランス用磁芯に好適な磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
チョークコイル用及びトランス用磁芯には、良好な直流重畳特性が求められており、高周波用の磁芯にはフェライトや圧粉磁芯が使用されている。フェライト磁芯は初透磁率が高く飽和磁束密度が小さい、圧粉磁芯は初透磁率が低く飽和磁束密度が高い、という材料物性に由来した特徴がある。従って、圧粉磁芯は、トロイダル形状で用いられることが多く、フェライトは、例えばE型コアの中足にギャップを挿入してEEコアで用いられることが多い。
【0003】
しかし、近年の電子機器の小型化要請に伴う電子部品の小型化の要求により、より大きな重畳磁界における、より高い透磁率が強く求められている。一般に、直流重畳特性を向上させるためには、飽和磁化の高い磁芯を選択する事、つまり高磁界で磁気飽和しない磁芯の選択が必須とされている。しかし、飽和磁化は、材料の組成で必然的に決まるものであり、無限に高く出来るものではない。そのため、従来の直流重畳特性を向上させる手段は、わずかな飽和磁化の向上に多大な労力が費やされている割には、直流重畳特性は期待されている程伸びていないのが現状であった。
【0004】
その解決手段として、磁路の一箇所以上にギャップを挿入し、そのギャップに永久磁石を挿入する事が従来から検討されてきた。この方法は、直流重畳特性を向上させるには優れた方法であるが、一方で金属焼結磁石を用いると磁芯のコアロスの増大が著しく、またフェライト磁石を用いると重畳特性が安定しないなどとても実用に耐え得るものではなかった。
【0005】
これらを解決する手段として、例えば、特許文献1では、永久磁石として保磁力の高い希土類磁石粉末とバインダーとを混合し圧縮成形したボンド磁石を挿入することが示されており、直流重畳特性とコアの温度上昇が改善されたことが示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭50−133453号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年、電源に対する電力変換効率向上の要求はますます厳しくなっており、チョークコイル用及びトランス用のコアについても単にコア温度を測定するだけでは優劣が判断不能なレベルとなっている。そのため、コアロス測定装置による測定結果の判断が不可欠であり、実際、本発明者等が検討を行った結果、特許文献1に示された抵抗率の値ではコアロス特性が劣化する事が明らかになった。
【0008】
そこで、我々は、先願特許として、特許文献2に、ギャップに挿入する永久磁石として10kOe以上の固有保磁力、500℃以上のTc、1.0Ω・cm以上の比抵抗の永久磁石を挿入することでコアロスを低下させることなく、良好な直流重畳特性が得られることを開示している。しかしながら、これらの特性値では十分とは言えず、信頼性、コアロス特性、重畳特性において更なる向上を目指すためには、ギャップに挿入する永久磁石の高保磁力と高残留磁束密度、高Tcをあわせ持つ、磁石の開発が必要である。
【0009】
【特許文献2】
特開2003−007519号公報
【0010】
また、耐蝕性を向上させるために、従来行われていたZnコーティング技術ではSMCo粉末とZn粉末が反応を起こし、軟磁性相が形成される。このため、磁石特性としては、残留磁束密度Brの減少、保磁力の減少、角型比の減少といった劣化が見られ、これらのボンド磁石を挿入した磁芯の特性としては直流重畳特性の劣化、コアロスの増大、信頼性の減少といった劣化が生じる。特に、コアロスは軟磁性層析出に伴う、ヒステリシス損失の増大として劣化し、従来行われた475℃・Ar中でZnコーティング熱処理した場合、約50%もヒステリシス損失が増大する。
【0011】
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、優れたコアロス特性と直流重畳特性を有する安価な磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を達成するべく挿入する永久磁石について検討した結果、磁石の比抵抗が1.0Ω・cm以上の永久磁石を使用した時、優れた直流重畳特性が得られ、しかも、コアロス特性の劣化が生じない磁芯を形成できることを発見したことによりなされたものである。これは、優れた直流重畳特性を得るのに必要な磁石特性はエネルギー積よりもむしろ固有保磁力であり、従って、比抵抗の高い永久磁石を使用しても固有保磁力が高ければ充分に高い直流重畳特性が得られるためである。
【0013】
比抵抗が高く、しかも固有保磁力が高い磁石は、一般的には希土類磁石粉末をバインダーとともに混合して成形した希土類ボンド磁石で得られる。希土類磁石粉末の種類はSmCo系、NdFeB系、SmFeN系とあるが、リフロー条件及び耐酸化性を考慮すると、Tcが500℃以上、保磁力が10kOe以上の磁石は現状ではSm2Co17系磁石に限定される。また、Znコーティングをする際の熱処理条件として、Zn量が3wt%〜7wt%、10−6〜100torrの減圧下で300℃〜400℃において熱処理することにより、耐食・耐酸化性とコアロス特性の両方を兼ね備えた磁芯を容易かつ安価に提供することが可能になる。
【0014】
即ち、本発明は、磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを有する磁芯であって、そのギャップに固有保磁力が10kOe以上、Tcが500℃以上、粉末平均粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末と樹脂からなり、比抵抗が1.0Ω・cm以上で、挿入前に比べて、その磁芯のヒステリシス損失の増加が20%以内であるボンド磁石が挿入された磁芯である。
【0015】
また、本発明は、前記ボンド磁石を、270℃、大気中で30分熱処理をした時の減磁率(不可逆減磁率+永久減磁率)が8%以内とする磁芯である。
【0016】
また、本発明は、前記希土類磁石粉末は、3%〜7%の重量比で混合されたZn粉末を300℃〜400℃で熱処理して得られる被覆層を有する磁芯である。
【0017】
また、本発明は、前記熱処理における雰囲気は、圧力が10−6〜100torrの不活性ガスの磁芯である。
【0018】
また、本発明は、前記磁芯と、前記磁芯に巻かれた少なくとも1ターン以上の巻線とで構成されたインダクタンス部品である。
【0019】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態による磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品について、以下に説明する。
【0020】
前述のように比抵抗が高く、しかも固有保磁力が高い磁石は、一般的には希土類磁石粉末をバインダーとともに混合して成形した希土類ボンド磁石で得られる。希土類磁石粉末の種類は、SmCo系、NdFeB系、SmFeN系とあるが、リフロー条件及び耐酸化性を考慮するとTcが500℃以上、保磁力が10kOe以上の磁石は現状ではSm2Co17系磁石に限定される。
【0021】
また、Znコーティングをする際の熱処理条件として、Zn量が3wt%〜7wt%、10−6〜100torrの減圧下で300℃〜400℃において熱処理することにより、耐食・耐酸化性とコアロス特性の両方を兼ね備えた磁芯を容易かつ安価に提供することが可能になる。
【0022】
チョークコイル用及びトランス用磁芯としては、軟磁気特性を有する材料であればなんでも有効であるが、一般的にはMnZn系又はNiZn系フェライト、圧粉磁芯、珪素鋼板、アモルファス等が用いられる。また、磁芯の形状についても特に制限があるわけではなく、トロイダルコア、EEコア、EIコア等あらゆる形状の磁芯に本発明の適用が可能である。これらコアの磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを設け、そのギャップに永久磁石を挿入する。ギャップ長に特に制限はないが、ギャップ長が狭すぎると直流重畳特性が劣化し、またギャップ長が広すぎると透磁率が低下しすぎるので、おのずから挿入するギャップ長は決まってくる。
【0023】
次に、ギャップに挿入される永久磁石に対する要求特性は、固有保磁力については信頼性の確保とヒステリシス損失を抑えるため10kOe以上の保磁力が必要であり、また比抵抗は大きいほど良いが、1.0Ω・cm以上であれば渦電流損失劣化の大きな要因にはならない。粉末の平均最大粒径が50μm以上になるとコアロス特性が劣化するので、粉末の最大粒径は50μm以下である事が望ましく、最小粒径が2.5μm以下になると粉末熱処理及びリフロー時に粉末の酸化による磁化の減少が顕著になるため、2.5μm以上の粒径が必要である。また、耐蝕性を向上させるために行うZnコーティング処理であるが、従来行われていた方法では、Znとの反応が進み、その結果、軟磁性相が析出し、ヒステリシス損失が増大する。
【0024】
しかしながら、Zn量や熱処理温度が低いと、減磁率特性が劣化する。これに対し、Zn量を総重量に対し3wt%〜7wt%混合し、10−6〜100torr、300℃〜400℃で熱処理することにより、270℃・大気中で30分熱処理をした時の減磁率が8%以内、コアロス特性がMnZnフェライトのコアに磁石を挿入しないときに比べ、20%以内の増加に抑えることが可能になる。これにより、高耐食性、高効率を満足するバイアスコア用のボンド磁石を得ることが可能になる。
【0025】
【実施例】
発明の実施例による磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品について、以下に説明する。
【0026】
(実施例1)
実施例1の磁芯について、以下に説明する。実施例1の磁芯の例として、Sm2Co17系磁石粉末にZnを1〜10wt%混合し、それを275℃〜450℃で熱処理し、Znコーティングを施した試料の磁気特性・減磁率特性を測定し、比較を行った例を示す。
【0027】
使用したSmCo磁石粉末、Zn粉末の平均粒径は、それぞれ12μm、7μmであり、これらの粉末に対しZnを総重量の1wt%、2wt%、3wt%、5wt%、7wt%、10wt%をそれぞれ加え、V型混合機で30分間、混合した。これらの粉末を5×10−3torrの不活性ガス中で、それぞれ275℃、300℃、325℃、350℃、375℃、400℃、425℃、450℃でそれぞれ熱処理し、SmCo粉末にZnコーティングを施した。
【0028】
これらのZnコーティングしたSmCo磁石粉末に10wt%に当たる量のバインダー(エポキシ樹脂)を混合した後、プレス圧5ton/cm2・無磁場中で金型成形を行い、その後、150℃・30min大気中で硬化を行った。以下に、試料の作製条件・測定条件の詳細を示す。
【0029】
【0030】
〔ヒステリシス損失測定〕
・測定装置:東英工業社製B−Hトレーサー(軟磁性測定)
・測定コア材:FEEフェライトコア(BH2)に500μmのSmCoボンド挿入
・測定磁場:Hm=10〜15Oe
・巻線:1次75ターン、2次30ターン
・測定温度:50℃(恒温層内にて測定)
【0031】
〔B−H特性測定(Br測定)〕
・測定装置:東英工業社製B−Hトレーサー(硬磁性測定)
・形状:φ13×9(mm)の円柱型
・最大印加磁界:25kOe(25kOe以上の保磁力は外挿して導出)
・検出コイル:25ターン、16ターン
【0032】
〔減磁率特性〕
・OEI TDF−5 DIGITAL FLUXMETER
・76ターンの巻線を施した15×15×50(mm)のパーマロイの磁芯に磁石を貼り付け、そこを零点とし、シート磁石を引き剥がした時の磁束の変化を測定
・測定5回の平均値
【0033】
減磁率は、270℃で30分、大気中で加熱した後、室温まで冷却し、その時のフラックス量の降下した割合を示している。ヒステリシス損失の測定は、以下のとおりである。MnZn系フェライト材で作製された磁路長5.93cm、実効断面積0.83cm2のEEコアであり、その中芯に500μmのギャップ加工をした。ボンド磁石をフェライトコアの中芯断面形状で、かつ高さ500μmの形状に加工し、その後、約10Tのパルス磁場で磁路方向に着磁後、そのギャップ部に挿入した。
【0034】
各磁石を挿入したコアを東英工業製BHトレーサーでBm=0.2000T時におけるヒステリシス損失を測定した。残留磁束密度Brは、バイアスコイルにおけるバイアス量に比例し、直流重畳特性を左右する重要な因子となる。上記の条件で作製された試料の残留磁束密度Brの結果を表1に示す。また、Znコーティングを行わなかった試料の残留磁束密度Brは0.3000Tであった。
【0035】
【表1】
【0036】
表1より、Znの割合が増えると、非磁性であるZnの占有率が大きくなり、残留磁束密度が悪化すると思われる。また、高温では、SmCo磁石とZnとの反応が進み、残留磁束密度が小さくなったものと考えられる。5wt%・425℃以上、7wt%・425℃以上、10wt%・350℃以上の条件では、残留磁束密度は500G以上小さくなり、磁気特性が大きく劣化することが分かった。表2に、270℃で30分、大気中で加熱した時の減磁率のZn量、熱処理温度の依存性を示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2より、低Zn量では、SmCo表面を完全にはコーティングできずに減磁率が大きくなると思われる。また、275℃の低温では、減磁率が非常に大きいことから、Znコーティングはほとんどなされないと考えられる。Zn量が1wt%、2wt%における範囲と、275℃で熱処理した場合では、減磁率が10%を超え、耐食性が大きく劣化することが明らかになった。また、Zn量=3〜10wt%、熱処理温度=300〜450℃の条件下では、減磁率は8%以下になり良好な特性を示した。
【0039】
表3に、Bm=0.2000T時のヒステリシス損失値のZn量、熱処理温度の依存性を示す。実験に用いたフェライトコアは、MnZn系フェライト材で作製された磁路長5.93cm、実効断面積0.83cm2のEEコアであり、その中芯赤に500μmのギャップ加工をした。ボンド磁石をフェライトコアの中芯断面形状で、かつ高さ500μmの形状に加工した。その後、約10Tのパルス磁場で磁路方向に着磁後、そのギャップ部に挿入した。各磁石を挿入したコアを東英工業製BHトレーサーでBm=2000G時におけるヒステリシス損失を測定した。また、磁石を挿入していないファライトコアのみのヒステリシス損失値は60.2×10−7J/ccである。
【0040】
【表3】
【0041】
表3より、高熱処理温度ではSmCoとZnが反応してしまい、高ヒステリシス損失になると考えられる。また、高Zn量になるほど、SmCoとの反応率は大きくなると考えられる。Zn=10wt%・400℃、Zn=3〜10wt%・450℃、Zn=2〜10wt%・450℃の条件ではBm=0.2000Tにおけるヒステリシス損失は、磁石を挿入していないフェライトコアのみのヒステリシス損失値に比べ、20%以上、上昇することが明らかになった。
【0042】
以上の実験より、Br、減磁率特性、ヒステリシス損失値のすべてを満足するZn量、熱処理条件はZn量=3〜7wt%、熱処理温度=300〜400℃である。この条件下で磁石粉末をZnコーティングすれば、高Br、高耐食性、高効率を満足するバイアスコア用のボンド磁石が得られることが明らかになった。
【0043】
(実施例2)
実施例2の磁芯について、以下に説明する。実施例2の磁芯の例として、Sm2Co17系磁石粉末にZnを1〜10wt%混合し、それを275℃〜450℃で熱処理し、Znコーティングを施した試料の磁気特性・減磁率特性を測定し、比較を行った例を示す。使用したSmCo磁石粉末、Zn粉末の平均粒径は、それぞれ12μm、7μmであり、これらの粉末に対し総重量に対し5wt%のZnをV型混合機で30分間、混合した。これらの粉末を5×10−3torr〜500torrの真空中(Ar雰囲気)において350℃で2時間熱処理し、SmCo粉末にZnコーティングを施した。これらのZnコーティングしたSmCo磁石粉末に10wt%に当たる量のバインダー(エポキシ樹脂)を混合した後、プレス圧5ton/cm2・無磁場中で金型成形を行い、その後、150℃・30分、大気中でバインダーの硬化を行った。
【0044】
【0045】
〔ヒステリシス損失測定〕
・測定装置:東英工業社製B−Hトレーサー(軟磁性測定)
・測定コア材:FEEフェライトコア(BH2)に500μmのSmCoボンド挿入
・測定磁場:Hm=10〜15Oe
・巻線:1次75ターン2次30ターン
・測定温度:50℃(恒温層内にて測定)
【0046】
〔B−H特性測定(Br測定)〕
・測定装置:東英工業社製B−Hトレーサー(硬磁性測定)
・形状:φ13×9(mm)の円柱型
・最大印加磁界:25kOe(25kOe以上の保磁力は外挿して導出)
・検出コイル:25ターン、16ターン
【0047】
〔減磁率測定〕
・OEI TDF−5 DIGITAL FLUXMETER
・76ターンの巻線を施した15×15×50(mm)のパーマロイの磁芯に磁石を貼り付け、そこを零点とし、シート磁石を引き剥がした時の磁束の変化を測定
・測定5回の平均値
【0048】
上記の条件で作製された試料の残留磁束密度Br、減磁率、ヒステリシス損失の各特性の結果を表4に示す。減磁率と真空度の関係を図1に示す。測定は実施例1と同じ方法を用いた。減磁率は270℃で30分、大気中で加熱した後、室温まで冷却し、その時のフラックス量の降下した割合を示している。
【0049】
ヒステリシス損失測定は、以下のとおりである。MnZn系フェライト材で作製された磁路長5.93cm、実効断面積0.83cm2のEEコアであり、その中芯に500μmのギャップ加工をした。ボンド磁石をフェライトコアの中芯断面形状で、かつ高さ500μmの形状に加工し、その後、約1cmのパルス磁場で磁路方向に着磁後、そのギャップ部に挿入した。各磁石を挿入したコアを東英工業製BHトレーサーでBm=2000G時におけるヒステリシス損失を測定した。
【0050】
【表4】
【0051】
表4、図1より、Znコーティングの熱処理時において、真空度が低くなるにつれて、残留磁束密度Brは高く、またヒステリシス損失値は低くなり、良好な値を示すが、減磁率は次第に大きくなり、特性は劣化した。Znコーティングを500torrで行った場合、減磁率は10.6%と非常に大きな値を示した。Znコーティング100torr以下で行った場合、減磁率は8%以下に抑えられ、良好な特性を示すことが明らかになった。
【0052】
(実施例3)
図2は、本発明の実施例のインダクタンス部品の説明図である。図2のインダクタンス部品は、E型のフェライトコア1と2の、合体した中足部に磁石3が配置された磁芯11と、前記磁芯11の中足部に巻かれた巻線4とで構成されている。ここで、前記磁芯11は、実施例1と実施例2にて説明した製造方法にて作製された磁芯が用いられる。また、巻線4は、少なくとも1ターン以上の巻かれている。
【0053】
【発明の効果】
以上により、残留磁束密度Br、減磁率特性、ヒステリシス損失直のすべてを満足する混合Zn量、熱処理温度条件は、Zn量=3〜7wt%、熱処理温度=300〜400℃、真空度=100torr以下である。この条件下で磁石粉末をZnコーティングすれば、270℃・大気中で30分熱処理をした時の減磁率が8%以内、コアロス特性がMnZnフェライトのコアに磁石を挿入しないときに比べ、20%以内の増加に抑えることが可能になり、高耐食性、高効率を満足するバイアスコア用のボンド磁石が得られることが明らかになった。従って、本発明によれば、優れたコアロス特性と直流重畳特性を有する安価な磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の磁芯の減磁率と真空度の関係の特性図。
【図2】本発明の実施例のインダクタンス部品の説明図。
【符号の説明】
1,2 フェライトコア
3 磁石
4 巻線
11 磁芯
10 インダクタンス部品
【発明の属する技術分野】
本発明は、スイッチング電源などに使用されるチョークコイル用及びトランス用磁芯に好適な磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
チョークコイル用及びトランス用磁芯には、良好な直流重畳特性が求められており、高周波用の磁芯にはフェライトや圧粉磁芯が使用されている。フェライト磁芯は初透磁率が高く飽和磁束密度が小さい、圧粉磁芯は初透磁率が低く飽和磁束密度が高い、という材料物性に由来した特徴がある。従って、圧粉磁芯は、トロイダル形状で用いられることが多く、フェライトは、例えばE型コアの中足にギャップを挿入してEEコアで用いられることが多い。
【0003】
しかし、近年の電子機器の小型化要請に伴う電子部品の小型化の要求により、より大きな重畳磁界における、より高い透磁率が強く求められている。一般に、直流重畳特性を向上させるためには、飽和磁化の高い磁芯を選択する事、つまり高磁界で磁気飽和しない磁芯の選択が必須とされている。しかし、飽和磁化は、材料の組成で必然的に決まるものであり、無限に高く出来るものではない。そのため、従来の直流重畳特性を向上させる手段は、わずかな飽和磁化の向上に多大な労力が費やされている割には、直流重畳特性は期待されている程伸びていないのが現状であった。
【0004】
その解決手段として、磁路の一箇所以上にギャップを挿入し、そのギャップに永久磁石を挿入する事が従来から検討されてきた。この方法は、直流重畳特性を向上させるには優れた方法であるが、一方で金属焼結磁石を用いると磁芯のコアロスの増大が著しく、またフェライト磁石を用いると重畳特性が安定しないなどとても実用に耐え得るものではなかった。
【0005】
これらを解決する手段として、例えば、特許文献1では、永久磁石として保磁力の高い希土類磁石粉末とバインダーとを混合し圧縮成形したボンド磁石を挿入することが示されており、直流重畳特性とコアの温度上昇が改善されたことが示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭50−133453号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年、電源に対する電力変換効率向上の要求はますます厳しくなっており、チョークコイル用及びトランス用のコアについても単にコア温度を測定するだけでは優劣が判断不能なレベルとなっている。そのため、コアロス測定装置による測定結果の判断が不可欠であり、実際、本発明者等が検討を行った結果、特許文献1に示された抵抗率の値ではコアロス特性が劣化する事が明らかになった。
【0008】
そこで、我々は、先願特許として、特許文献2に、ギャップに挿入する永久磁石として10kOe以上の固有保磁力、500℃以上のTc、1.0Ω・cm以上の比抵抗の永久磁石を挿入することでコアロスを低下させることなく、良好な直流重畳特性が得られることを開示している。しかしながら、これらの特性値では十分とは言えず、信頼性、コアロス特性、重畳特性において更なる向上を目指すためには、ギャップに挿入する永久磁石の高保磁力と高残留磁束密度、高Tcをあわせ持つ、磁石の開発が必要である。
【0009】
【特許文献2】
特開2003−007519号公報
【0010】
また、耐蝕性を向上させるために、従来行われていたZnコーティング技術ではSMCo粉末とZn粉末が反応を起こし、軟磁性相が形成される。このため、磁石特性としては、残留磁束密度Brの減少、保磁力の減少、角型比の減少といった劣化が見られ、これらのボンド磁石を挿入した磁芯の特性としては直流重畳特性の劣化、コアロスの増大、信頼性の減少といった劣化が生じる。特に、コアロスは軟磁性層析出に伴う、ヒステリシス損失の増大として劣化し、従来行われた475℃・Ar中でZnコーティング熱処理した場合、約50%もヒステリシス損失が増大する。
【0011】
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、優れたコアロス特性と直流重畳特性を有する安価な磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を達成するべく挿入する永久磁石について検討した結果、磁石の比抵抗が1.0Ω・cm以上の永久磁石を使用した時、優れた直流重畳特性が得られ、しかも、コアロス特性の劣化が生じない磁芯を形成できることを発見したことによりなされたものである。これは、優れた直流重畳特性を得るのに必要な磁石特性はエネルギー積よりもむしろ固有保磁力であり、従って、比抵抗の高い永久磁石を使用しても固有保磁力が高ければ充分に高い直流重畳特性が得られるためである。
【0013】
比抵抗が高く、しかも固有保磁力が高い磁石は、一般的には希土類磁石粉末をバインダーとともに混合して成形した希土類ボンド磁石で得られる。希土類磁石粉末の種類はSmCo系、NdFeB系、SmFeN系とあるが、リフロー条件及び耐酸化性を考慮すると、Tcが500℃以上、保磁力が10kOe以上の磁石は現状ではSm2Co17系磁石に限定される。また、Znコーティングをする際の熱処理条件として、Zn量が3wt%〜7wt%、10−6〜100torrの減圧下で300℃〜400℃において熱処理することにより、耐食・耐酸化性とコアロス特性の両方を兼ね備えた磁芯を容易かつ安価に提供することが可能になる。
【0014】
即ち、本発明は、磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを有する磁芯であって、そのギャップに固有保磁力が10kOe以上、Tcが500℃以上、粉末平均粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末と樹脂からなり、比抵抗が1.0Ω・cm以上で、挿入前に比べて、その磁芯のヒステリシス損失の増加が20%以内であるボンド磁石が挿入された磁芯である。
【0015】
また、本発明は、前記ボンド磁石を、270℃、大気中で30分熱処理をした時の減磁率(不可逆減磁率+永久減磁率)が8%以内とする磁芯である。
【0016】
また、本発明は、前記希土類磁石粉末は、3%〜7%の重量比で混合されたZn粉末を300℃〜400℃で熱処理して得られる被覆層を有する磁芯である。
【0017】
また、本発明は、前記熱処理における雰囲気は、圧力が10−6〜100torrの不活性ガスの磁芯である。
【0018】
また、本発明は、前記磁芯と、前記磁芯に巻かれた少なくとも1ターン以上の巻線とで構成されたインダクタンス部品である。
【0019】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態による磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品について、以下に説明する。
【0020】
前述のように比抵抗が高く、しかも固有保磁力が高い磁石は、一般的には希土類磁石粉末をバインダーとともに混合して成形した希土類ボンド磁石で得られる。希土類磁石粉末の種類は、SmCo系、NdFeB系、SmFeN系とあるが、リフロー条件及び耐酸化性を考慮するとTcが500℃以上、保磁力が10kOe以上の磁石は現状ではSm2Co17系磁石に限定される。
【0021】
また、Znコーティングをする際の熱処理条件として、Zn量が3wt%〜7wt%、10−6〜100torrの減圧下で300℃〜400℃において熱処理することにより、耐食・耐酸化性とコアロス特性の両方を兼ね備えた磁芯を容易かつ安価に提供することが可能になる。
【0022】
チョークコイル用及びトランス用磁芯としては、軟磁気特性を有する材料であればなんでも有効であるが、一般的にはMnZn系又はNiZn系フェライト、圧粉磁芯、珪素鋼板、アモルファス等が用いられる。また、磁芯の形状についても特に制限があるわけではなく、トロイダルコア、EEコア、EIコア等あらゆる形状の磁芯に本発明の適用が可能である。これらコアの磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを設け、そのギャップに永久磁石を挿入する。ギャップ長に特に制限はないが、ギャップ長が狭すぎると直流重畳特性が劣化し、またギャップ長が広すぎると透磁率が低下しすぎるので、おのずから挿入するギャップ長は決まってくる。
【0023】
次に、ギャップに挿入される永久磁石に対する要求特性は、固有保磁力については信頼性の確保とヒステリシス損失を抑えるため10kOe以上の保磁力が必要であり、また比抵抗は大きいほど良いが、1.0Ω・cm以上であれば渦電流損失劣化の大きな要因にはならない。粉末の平均最大粒径が50μm以上になるとコアロス特性が劣化するので、粉末の最大粒径は50μm以下である事が望ましく、最小粒径が2.5μm以下になると粉末熱処理及びリフロー時に粉末の酸化による磁化の減少が顕著になるため、2.5μm以上の粒径が必要である。また、耐蝕性を向上させるために行うZnコーティング処理であるが、従来行われていた方法では、Znとの反応が進み、その結果、軟磁性相が析出し、ヒステリシス損失が増大する。
【0024】
しかしながら、Zn量や熱処理温度が低いと、減磁率特性が劣化する。これに対し、Zn量を総重量に対し3wt%〜7wt%混合し、10−6〜100torr、300℃〜400℃で熱処理することにより、270℃・大気中で30分熱処理をした時の減磁率が8%以内、コアロス特性がMnZnフェライトのコアに磁石を挿入しないときに比べ、20%以内の増加に抑えることが可能になる。これにより、高耐食性、高効率を満足するバイアスコア用のボンド磁石を得ることが可能になる。
【0025】
【実施例】
発明の実施例による磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品について、以下に説明する。
【0026】
(実施例1)
実施例1の磁芯について、以下に説明する。実施例1の磁芯の例として、Sm2Co17系磁石粉末にZnを1〜10wt%混合し、それを275℃〜450℃で熱処理し、Znコーティングを施した試料の磁気特性・減磁率特性を測定し、比較を行った例を示す。
【0027】
使用したSmCo磁石粉末、Zn粉末の平均粒径は、それぞれ12μm、7μmであり、これらの粉末に対しZnを総重量の1wt%、2wt%、3wt%、5wt%、7wt%、10wt%をそれぞれ加え、V型混合機で30分間、混合した。これらの粉末を5×10−3torrの不活性ガス中で、それぞれ275℃、300℃、325℃、350℃、375℃、400℃、425℃、450℃でそれぞれ熱処理し、SmCo粉末にZnコーティングを施した。
【0028】
これらのZnコーティングしたSmCo磁石粉末に10wt%に当たる量のバインダー(エポキシ樹脂)を混合した後、プレス圧5ton/cm2・無磁場中で金型成形を行い、その後、150℃・30min大気中で硬化を行った。以下に、試料の作製条件・測定条件の詳細を示す。
【0029】
【0030】
〔ヒステリシス損失測定〕
・測定装置:東英工業社製B−Hトレーサー(軟磁性測定)
・測定コア材:FEEフェライトコア(BH2)に500μmのSmCoボンド挿入
・測定磁場:Hm=10〜15Oe
・巻線:1次75ターン、2次30ターン
・測定温度:50℃(恒温層内にて測定)
【0031】
〔B−H特性測定(Br測定)〕
・測定装置:東英工業社製B−Hトレーサー(硬磁性測定)
・形状:φ13×9(mm)の円柱型
・最大印加磁界:25kOe(25kOe以上の保磁力は外挿して導出)
・検出コイル:25ターン、16ターン
【0032】
〔減磁率特性〕
・OEI TDF−5 DIGITAL FLUXMETER
・76ターンの巻線を施した15×15×50(mm)のパーマロイの磁芯に磁石を貼り付け、そこを零点とし、シート磁石を引き剥がした時の磁束の変化を測定
・測定5回の平均値
【0033】
減磁率は、270℃で30分、大気中で加熱した後、室温まで冷却し、その時のフラックス量の降下した割合を示している。ヒステリシス損失の測定は、以下のとおりである。MnZn系フェライト材で作製された磁路長5.93cm、実効断面積0.83cm2のEEコアであり、その中芯に500μmのギャップ加工をした。ボンド磁石をフェライトコアの中芯断面形状で、かつ高さ500μmの形状に加工し、その後、約10Tのパルス磁場で磁路方向に着磁後、そのギャップ部に挿入した。
【0034】
各磁石を挿入したコアを東英工業製BHトレーサーでBm=0.2000T時におけるヒステリシス損失を測定した。残留磁束密度Brは、バイアスコイルにおけるバイアス量に比例し、直流重畳特性を左右する重要な因子となる。上記の条件で作製された試料の残留磁束密度Brの結果を表1に示す。また、Znコーティングを行わなかった試料の残留磁束密度Brは0.3000Tであった。
【0035】
【表1】
【0036】
表1より、Znの割合が増えると、非磁性であるZnの占有率が大きくなり、残留磁束密度が悪化すると思われる。また、高温では、SmCo磁石とZnとの反応が進み、残留磁束密度が小さくなったものと考えられる。5wt%・425℃以上、7wt%・425℃以上、10wt%・350℃以上の条件では、残留磁束密度は500G以上小さくなり、磁気特性が大きく劣化することが分かった。表2に、270℃で30分、大気中で加熱した時の減磁率のZn量、熱処理温度の依存性を示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2より、低Zn量では、SmCo表面を完全にはコーティングできずに減磁率が大きくなると思われる。また、275℃の低温では、減磁率が非常に大きいことから、Znコーティングはほとんどなされないと考えられる。Zn量が1wt%、2wt%における範囲と、275℃で熱処理した場合では、減磁率が10%を超え、耐食性が大きく劣化することが明らかになった。また、Zn量=3〜10wt%、熱処理温度=300〜450℃の条件下では、減磁率は8%以下になり良好な特性を示した。
【0039】
表3に、Bm=0.2000T時のヒステリシス損失値のZn量、熱処理温度の依存性を示す。実験に用いたフェライトコアは、MnZn系フェライト材で作製された磁路長5.93cm、実効断面積0.83cm2のEEコアであり、その中芯赤に500μmのギャップ加工をした。ボンド磁石をフェライトコアの中芯断面形状で、かつ高さ500μmの形状に加工した。その後、約10Tのパルス磁場で磁路方向に着磁後、そのギャップ部に挿入した。各磁石を挿入したコアを東英工業製BHトレーサーでBm=2000G時におけるヒステリシス損失を測定した。また、磁石を挿入していないファライトコアのみのヒステリシス損失値は60.2×10−7J/ccである。
【0040】
【表3】
【0041】
表3より、高熱処理温度ではSmCoとZnが反応してしまい、高ヒステリシス損失になると考えられる。また、高Zn量になるほど、SmCoとの反応率は大きくなると考えられる。Zn=10wt%・400℃、Zn=3〜10wt%・450℃、Zn=2〜10wt%・450℃の条件ではBm=0.2000Tにおけるヒステリシス損失は、磁石を挿入していないフェライトコアのみのヒステリシス損失値に比べ、20%以上、上昇することが明らかになった。
【0042】
以上の実験より、Br、減磁率特性、ヒステリシス損失値のすべてを満足するZn量、熱処理条件はZn量=3〜7wt%、熱処理温度=300〜400℃である。この条件下で磁石粉末をZnコーティングすれば、高Br、高耐食性、高効率を満足するバイアスコア用のボンド磁石が得られることが明らかになった。
【0043】
(実施例2)
実施例2の磁芯について、以下に説明する。実施例2の磁芯の例として、Sm2Co17系磁石粉末にZnを1〜10wt%混合し、それを275℃〜450℃で熱処理し、Znコーティングを施した試料の磁気特性・減磁率特性を測定し、比較を行った例を示す。使用したSmCo磁石粉末、Zn粉末の平均粒径は、それぞれ12μm、7μmであり、これらの粉末に対し総重量に対し5wt%のZnをV型混合機で30分間、混合した。これらの粉末を5×10−3torr〜500torrの真空中(Ar雰囲気)において350℃で2時間熱処理し、SmCo粉末にZnコーティングを施した。これらのZnコーティングしたSmCo磁石粉末に10wt%に当たる量のバインダー(エポキシ樹脂)を混合した後、プレス圧5ton/cm2・無磁場中で金型成形を行い、その後、150℃・30分、大気中でバインダーの硬化を行った。
【0044】
【0045】
〔ヒステリシス損失測定〕
・測定装置:東英工業社製B−Hトレーサー(軟磁性測定)
・測定コア材:FEEフェライトコア(BH2)に500μmのSmCoボンド挿入
・測定磁場:Hm=10〜15Oe
・巻線:1次75ターン2次30ターン
・測定温度:50℃(恒温層内にて測定)
【0046】
〔B−H特性測定(Br測定)〕
・測定装置:東英工業社製B−Hトレーサー(硬磁性測定)
・形状:φ13×9(mm)の円柱型
・最大印加磁界:25kOe(25kOe以上の保磁力は外挿して導出)
・検出コイル:25ターン、16ターン
【0047】
〔減磁率測定〕
・OEI TDF−5 DIGITAL FLUXMETER
・76ターンの巻線を施した15×15×50(mm)のパーマロイの磁芯に磁石を貼り付け、そこを零点とし、シート磁石を引き剥がした時の磁束の変化を測定
・測定5回の平均値
【0048】
上記の条件で作製された試料の残留磁束密度Br、減磁率、ヒステリシス損失の各特性の結果を表4に示す。減磁率と真空度の関係を図1に示す。測定は実施例1と同じ方法を用いた。減磁率は270℃で30分、大気中で加熱した後、室温まで冷却し、その時のフラックス量の降下した割合を示している。
【0049】
ヒステリシス損失測定は、以下のとおりである。MnZn系フェライト材で作製された磁路長5.93cm、実効断面積0.83cm2のEEコアであり、その中芯に500μmのギャップ加工をした。ボンド磁石をフェライトコアの中芯断面形状で、かつ高さ500μmの形状に加工し、その後、約1cmのパルス磁場で磁路方向に着磁後、そのギャップ部に挿入した。各磁石を挿入したコアを東英工業製BHトレーサーでBm=2000G時におけるヒステリシス損失を測定した。
【0050】
【表4】
【0051】
表4、図1より、Znコーティングの熱処理時において、真空度が低くなるにつれて、残留磁束密度Brは高く、またヒステリシス損失値は低くなり、良好な値を示すが、減磁率は次第に大きくなり、特性は劣化した。Znコーティングを500torrで行った場合、減磁率は10.6%と非常に大きな値を示した。Znコーティング100torr以下で行った場合、減磁率は8%以下に抑えられ、良好な特性を示すことが明らかになった。
【0052】
(実施例3)
図2は、本発明の実施例のインダクタンス部品の説明図である。図2のインダクタンス部品は、E型のフェライトコア1と2の、合体した中足部に磁石3が配置された磁芯11と、前記磁芯11の中足部に巻かれた巻線4とで構成されている。ここで、前記磁芯11は、実施例1と実施例2にて説明した製造方法にて作製された磁芯が用いられる。また、巻線4は、少なくとも1ターン以上の巻かれている。
【0053】
【発明の効果】
以上により、残留磁束密度Br、減磁率特性、ヒステリシス損失直のすべてを満足する混合Zn量、熱処理温度条件は、Zn量=3〜7wt%、熱処理温度=300〜400℃、真空度=100torr以下である。この条件下で磁石粉末をZnコーティングすれば、270℃・大気中で30分熱処理をした時の減磁率が8%以内、コアロス特性がMnZnフェライトのコアに磁石を挿入しないときに比べ、20%以内の増加に抑えることが可能になり、高耐食性、高効率を満足するバイアスコア用のボンド磁石が得られることが明らかになった。従って、本発明によれば、優れたコアロス特性と直流重畳特性を有する安価な磁芯およびそれを用いたインダクタンス部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の磁芯の減磁率と真空度の関係の特性図。
【図2】本発明の実施例のインダクタンス部品の説明図。
【符号の説明】
1,2 フェライトコア
3 磁石
4 巻線
11 磁芯
10 インダクタンス部品
Claims (5)
- 磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを有する磁芯であって、そのギャップに固有保磁力が10kOe以上、Tcが500℃以上、粉末平均粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末と樹脂からなり、比抵抗が1.0Ω・cm以上で、挿入前に比べて、その磁芯のヒステリシス損失の増加が20%以内であるボンド磁石が挿入されたことを特徴とする磁芯。
- 前記ボンド磁石は、270℃、大気中で30分熱処理をした時の減磁率(不可逆減磁率+永久減磁率)が8%以内であることを特徴とする請求項1に記載の磁芯。
- 前記希土類磁石粉末は、3%〜7%の重量比で混合されたZn粉末を、300℃〜400℃で熱処理して得られる被覆層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の磁芯。
- 前記熱処理における雰囲気は、圧力が10−6〜100torrの不活性ガスであることを特徴とする請求項3に記載の磁芯。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の磁芯と、前記磁芯に巻かれた少なくとも1ターン以上の巻線とで構成されたことを特徴とするインダクタンス部品。
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