本発明は、製造時に不良部分が発生した場合にも修正可能であり、また被検査物が非特異的に吸着すること等のない、微細なパターン状に特異性生体高分子が配列・固定されたマイクロアレイチップの製造方法、マイクロアレイチップに用いられるマイクロアレイチップ用基板、およびマイクロアレイチップに関するものである。以下、それぞれについて詳しく説明する。
A.マイクロアレイチップの製造方法
まず、本発明のマイクロアレイチップの製造方法について説明する。本発明のマイクロアレイチップの製造方法には、二つの実施態様がある。以下、それぞれの実施態様についてわけて説明する。
1.第1実施態様
まず、本発明のマイクロアレイチップの製造方法における第1実施態様について説明する。本実施態様のマイクロアレイチップの製造方法は、基材上に、感光性保護基を有する固定化層を形成する固定化層形成工程と、
上記固定化層上の特異性生体高分子固定部に、特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定化工程と
を有するマイクロアレイチップの製造方法であって、
上記特異性生体高分子固定部間のスペース部に存在する有機基を除去する有機基除去工程を有するものである。
本実施態様のマイクロアレイチップの製造方法は、例えば図1に示すように、基材1上に固定化層2を形成する固定化層形成工程(図1(a))と、その固定化層2の特異性生体高分子固定部aに、特異性生体高分子3を固定させる特異性生体高分子固定化工程(図1(b))とを有するものであって、その特異性生体高分子固定部a間のスペース部bに存在する、例えば特異性生体高分子3や固定化層2等の有機基を除去する有機基除去工程(図1(c))を有するものである。ここで、上記特異性生体高分子固定部とは、マイクロアレイチップにおいて最終的に特異性生体高分子を固定させる領域である。また、上記スペース部とは、隣り合う上記特異性生体高分子固定部の間の領域をいうこととする。
一般的に、微細な特異性生体高分子固定部のパターン状に感光性ポリマー合成法を用いて特異性生体高分子を形成する場合、露光の際のアライメント精度等によって、例えば図1(b)に示すように、特異性生体高分子固定部aより広い領域、すなわちスペース部bに特異性生体高分子3が形成される場合がある。このように特異性生体高分子が固定化されていたり、固定化層の有機基がスペース部上に存在している場合、マイクロアレイチップを用いて検出を行う際に被検査物がスペース部上で非特異的な吸着をしてしまい、高精度に検出を行うことができない場合がある。
そこで、本実施態様においては、上記スペース部上の有機基を除去する有機基除去工程を行い、スペース部と被検査物との間で非特異的な吸着が生じないようなマイクロアレイチップとするのである。
なお、本実施態様においては上記有機基除去工程は、マイクロアレイチップの製造時のどの時点で行われてもよく、例えば図1に示すように、特異性生体高分子を固定化する特異性生体高分子固定化工程後に行うものであってもよい。また例えば図2に示すように、まず基材1上に固定化層2を形成する固定化層形成工程(図2(a))を行い、続いて上記スペース部bに存在する固定化層2の有機基を除去する有機基除去工程(図2(b))を行った後、上記固定化層2が残存する特異性生体高分子固定部a上に特異性生体高分子3を固定化する特異性生体高分子固定化工程(図2(c))を行ってもよい。この場合、上記有機基除去工程により、スペース部上の固定化層の有機基が除去されていることから、このスペース部には特異性生体高分子が固定しないものとすることができるのである。
以下、上述したような本実施態様のマイクロアレイチップの製造方法における各工程について説明する。
(固定化層形成工程)
まず、本実施態様の固定化層形成工程について説明する。本実施態様における固定化層形成工程は、基材上に、感光性保護基を有する固定化層を形成する工程である。
本工程により形成される固定化層とは、感光性保護基を有するものであり、この感光性保護基が後述する特異性生体高分子固定化工程における露光により脱離し、特異性生体高分子を構成する例えばアミノ酸や塩基等と反応する官能基が露出するものである。
上記官能基を有し、基材と接着性を有する化合物としては、例えば基材と炭素−炭素結合等、好ましくはシロキサン結合によって、接着する化合物が挙げられる。このような基材とシロキサン結合する化合物としては、トリクロロシリル基、またはトリアルコキシシリル基を有する化合物等が挙げられる。また、感光性保護基が脱離して露出する官能基として、アミン、ヒドロキシル、チオール、カルボン酸、エステル、アミド、エポキシド、イソシアネート、またはイソチオシアネートを有する化合物であることが好ましい。このような化合物として、具体的には、アミノアルキルトリアルコキシシラン、アミノアルキルトリクロロシラン、ヒドロキシアルキルトリアルコキシ−シラン、ヒドロキシアルキルトリクロロシラン、カルボキシアルキルトリアルコキシシラン、ポリエチレングリコール、トリエトキシシラン、エポキシアルキルトリアルコキシシラン、およびそれらの組み合わせ等が挙げられる。
本実施態様においては、上記の中でも、アミノ基を含むシランカップリング剤が用いられることが好ましい。アミノ基を含むシランカップリング剤としては、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
また、上記の感光性保護基としては、後述する特異性生体高分子固定化工程において露光された場合に、容易に上記官能基から脱離し、かつ露光されていない領域においては安定であり、上記官能基が反応することを防止するものであることが好ましい。このような感光性保護基の除去速度は、特異性生体高分子固定化工程において照射されるエネルギーの入射波長や照射強度、感光性保護基自体の物理的および化学的特性に依存することとなる。本工程においては特に、低エネルギーで素早く除去され得るものであることが好ましく、一般的に300nm〜450nmの波長のエネルギーで光分解を起こす感光性保護基であることが好ましい。
このような感光性保護基としては、例えば、オルト‐(o‐)ニトロベンジル誘導体、o−ニトロベンジルオキシカルボニル誘導体、芳香族アミンN-オキシド誘導体、o‐ニトロベンジルカルバメート誘導体、アリルフォルムアミド誘導体、N‐ベンジルアミド誘導体、ベンジルカルバメート誘導体、ベンジルスルフォナミド誘導体、ビス(o-ニトロフェニル)メチルエステル誘導体、S,S‐ジベンジルアセタール誘導体及びケタール誘導体、3,5-ジメトキシベンジルカルバメート誘導体、4−(4´,8´-ジメトキシナフチルメチル)ベンゼンスルフォナミド誘導体、3,4−ジメトキシ-6-ニトロベンジルカルバメート誘導体、α‐(3,5‐ジメトキシフェニル)フェナシルエステル誘導体、N,N‐ジメチルヒドラゾン誘導体、ジ-2-ニトロベンジルアセタール誘導体、2−(9,10−ジオキソ)アンスリルメチルエステル誘導体、4,5−ジフェニル-3-オキサゾリン-2-オン誘導体、1,3‐ジチオレン誘導体、9−フルオレンカルボキシレートエステル誘導体、p-メトキシベンジルエーテル誘導体、フェナシル誘導体、p‐メトキシフェナシルエステル誘導体、N‐メチルアミン誘導体、1‐メチル‐1‐(3,5‐ジメトキシフェニル)エチルカルバメート誘導体、α‐メチルフェナシルエステル誘導体、ニトレートエステル誘導体、ニトロアミド誘導体、o‐ニトロアニリド誘導体、N‐o‐ニトロベンジルアミン誘導体、o‐ニトロベンジルカーボネート誘導体、o-ニトロベンジルエステル誘導体、o-ニトロベンジルエーテル誘導体、o-ニトロベンジリデンアセタール誘導体、N‐7‐ニトロインドリルアミド誘導体、m‐ニトロフェニルカルバメート誘導体、4−o−ニトロフェニル-1,3‐ジオキソラン誘導体、N‐8‐ニトロ‐1,2,3,4‐テトラヒドロキノリルアミド誘導体、1,3‐オキソチオラン誘導体、フェニル(o‐ニトロフェニル)メチルカルバメート誘導体、1‐ピレニルメチルエステル誘導体、トルエンスルフォナミド誘導体、トルエンスルフォネート誘導体、キサンテンカルボキシレートエステル誘導体、ニトロフェニルスルフェニル誘導体などであり、具体的には、例えば、o‐ニトロベンジル基、α‐メチル‐ニトロピペロニル基、α‐メチル‐ニトロピペロニルオキシカルボニル基、1‐ピレニルメチルオキシカルボニル基、α,α‐ジメチル‐3,5‐ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、4‐ニトロピリジンN‐オキシド基、m‐ニトロフェニルカルバメート基、3,5‐ジメトキシベンジルカルバメート基、o‐ニトロベンジルオキシカルボニル基、3,4‐ジメトキシ−6‐ニトロベンジルカルバメート基、フェニル(o‐ニトロフェニル)メチルカルバメート基、p-メトキシフェナシル基、1,3‐ジチオレン基、1,3−オキサチオレン基、p-メトキシベンジル基、トシル基、ベンゼンスルフォナミド基等を挙げることができる。
また上記官能基や感光性保護基については、例えば、“Protective groups in organic synthesis” (Second Edition), by Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts, John Wiley & Sons, 1991)、特表2000−508542号公報等に記載されたもの等も用いることができる。
本工程における上記官能基および感光性保護基を有する固定化層の形成方法としては、上記官能基が感光性保護基により保護された固定化層を形成可能な方法であれば、特に限定されるものではなく、例えば上記の官能基が上述した感光性保護基で保護された材料を溶媒に溶解させて、固定化層形成用塗工液とし、基材上にスピンコーティング、フレキソコーティング、グラビアコーティング、オフセットコーティング等のコーティング法により薄膜状に形成する方法等が挙げられる。また、例えば上記感光性保護基で保護された官能基を有する分子が、低分子材料である場合は、蒸着法により基材上に薄膜状に形成する方法等であってもよい。またさらに、自己組織化単分子膜として形成する方法であってもよい。なお、この自己組織化法(自己組織化単分子膜)に関しては、例えば、Abraham Ulman, “Formation and structure of self-assembled monolayers”, Chemical Review, vol. 96, 1533-1554 (1996)を参照することができる。
また、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)で基体上に薄膜(LB膜)を形成する方法を用いてもよく、上記感光性保護基で保護された官能基を有する分子が高分子電解質である場合等においては、吸着法および交互吸着法により薄膜を形成することも可能である。
ここで、本工程においては、例えば上記官能基を有する材料を、上記の方法により基材上に固定させた後、一般的な方法により上記の官能基を感光性保護基により保護する方法を用いてもよい。
また、本工程に用いられる基材としては、通常マイクロアレイチップに用いられる基材を用いることが可能であり、例えばシリコンウェハ、金属、クオーツ、ガラス、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、アルミナ、高分子材料等を用いることができ、これらは製造されるマイクロアレイチップの用途に応じて適宜選択されて用いられる。また用いられる基材の形状としては、一般的には平板上のものが用いられるが、特に制限されるものではなく、用途に応じて好適な形状とすることが可能である。
(特異性生体高分子固定化工程)
次に、本実施態様における特異性生体高分子固定化工程について説明する。本工程は、上記特異性生体高分子固定化工程により形成された固定化層上の特異性生体高分子固定部に、特異性生体高分子を固定させる工程であり、上記固定化層上に特異性生体高分子固定部のパターンに沿って、特異性生体高分子を固定化させることが可能な方法であれば、その特異性生体高分子の固定化方法等は特に限定されるものではない。
ここで、上記特異性生体高分子固定部とは、上述したように特異性生体高分子を最終的に固定させる領域であり、通常この各特異性生体高分子固定部ごとに異なる特異性生体高分子が固定化されるものである。この特異性生体高分子固定部の形状は、マイクロアレイチップの用途等により適宜選択され、例えば円形等であってもよいが、一般的には、矩形状のパターンとされる。
また、マイクロアレイチップの用途等によっても異なるが、通常一つのマイクロアレイチップ上に上記特異性生体高分子固定部は100個〜500,000個程度設けられるものであり、後述するように特異性生体高分子の固定化が感光性ポリマー合成法により行われる場合には、1,000個〜200,000個、中でも10,000個〜100,000個程度設けられる。なお、上記特異性生体高分子固定部の個数は、マイクロアレイチップ1つにおける個数であり、製造工程で多面の大きな基材を用いてマイクロアレイチップを作製後、切り出す場合は上記の数に限定されない。また特異性生体高分子の固定化が感光性ポリマー合成法により行われる場合、矩形状の特異性生体高分子固定部の矩形の一辺の長さとしては、1μm〜2,000μm、中でも5μm〜200μm、特に10μm〜100μmとされることが好ましい。またこの際隣り合う特異性生体高分子固定部の間の領域であるスペース部は、通常1μm〜2,000μm、中でも2μm〜150μm、特に5μm〜75μmとされることが好ましい。
ここで、上記特異性生体高分子とは、所定の生体高分子と特異的に結合することができる生体高分子をいうこととし、本工程に用いられる特異性生体高分子はこのような性質を有する生体高分子であれば特に限定されるものではない。
このような特異性生体高分子と生体高分子との組み合わせとしては、例えば、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド)とそれに相補的な核酸との組み合わせ、抗原と抗体(又は抗体フラグメント)との組み合わせ、受容体とそのリガンド(例えば、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、又はレクチン)との組み合わせ、酵素とそのリガンド(例えば、酵素の基質アナログ、補酵素、調節因子、又は阻害剤)との組み合わせ、酵素アナログとその酵素アナログの元となる酵素の基質との組み合わせ、又はレクチンと糖との組み合わせ等を挙げることができる。なお、「酵素アナログ」とは、元の酵素に対する基質との特異的な親和性は高いものの、触媒活性は示さないものを意味する。また、上記の各組み合わせにおける各化合物は、それぞれ、いずれか一方が「特異性生体高分子」となり、他方が、検出される物質となる。例えば、「抗原と抗体との組み合わせ」では、抗原が「検出される物質」となる場合には、抗体が「特異性生体高分子」となることができ、逆に、抗体が「検出される物質」となる場合には、抗原が「特異性生体高分子」となる。
例えば、本実施態様により製造されるマイクロアレイチップを、核酸ハイブリダイゼーションアッセイに適用する場合には、上記特異性生体高分子として、検出される物質である核酸(例えば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド)と相補的に結合することのできるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを用いることができる。本明細書においては、「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」には、2´−デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、及びペプチド核酸(PNA)が含まれる。なお、PNAとは、DNAのホスホジエステル結合をペプチド結合に変換した人工核酸である。上記不溶性粒子に結合されるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの鎖長は、分析目的に応じて適宜選択することができ、例えば、捕捉しようとするDNA、RNA、又はPNAの相補的配列の鎖長に基づいて決定することができる。また、アレイ上に異なる組合せの確認された塩基配列のオリゴマーを配し、それよりも十分に長い特異性生体高分子の一部配列との相補的な結合位置が決定することで、コンピューターで配列の共通点をマイニングして広範囲の配列決定をすることもできる。
また、本実施態様のマイクロアレイチップを免疫学的アッセイに適用する場合には、上記特異性生体高分子として、検出される物質と特異的に結合する抗原(ハプテンを含む)又は抗体を用いることができる。この場合に、上記検出される物質としては、被検試料中に一般的に含まれている成分で、しかも、免疫学的に検出することのできる物質あれば、特に制限されない。一例を挙げれば、各種タンパク質、多糖類、脂質、菌体、又は各種環境物質等を挙げることができる。より詳細には、免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、又はIgA)、感染症関連マーカー(例えば、HBs抗原、HBs抗体、HIV−1抗体、HIV−2抗体、HTLV−1抗体、又はトレポネーマ抗体)、腫瘍関連抗原(例えば、AFP、CRP、又はCEA)、凝固線溶マーカー(例えば、プラスミノーゲン、アンチトロンビン−III、D−ダイマー、TAT、又はPPI)、抗てんかん薬(例えば、ホルモン)、各種薬剤(例えば、ジゴキシン)、菌体(例えば、O−157又はサルモネラ)若しくはそれらの菌体内毒素若しくは菌体外毒素、微生物類、酵素類、残留農薬、又は環境ホルモン等を挙げることができる。上記特異性生体高分子として用いる抗体としては、周知の方法で得られるポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれをも使用することができる。さらに、上記抗体は、タンパク質[例えば、酵素(例えば、ペプシン又はパパイン)]処理したもの[例えば、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab´、F(ab´)2、又はFv)]を用いることもできる。
このような特異性生体高分子を上記固定化層の特異性生体高分子固定部に固定化する方法としては、特に限定されるものではないが、微細なパターン状に特異性生体高分子を固定化させることが可能となるという点から、感光性ポリマー合成法により行われることが好ましい。
感光性ポリマー合成法による特異性生体高分子の形成は、特異性生体高分子を構成するモノマー等、低分子のブロックごとに反応を行い、これらの反応を繰り返し行うことによって目的とする特異性生体高分子を合成する。このような低分子のブロックとしては、例えばL−アミノ酸や、D−アミノ酸、天然または合成アミノ酸、およびヌクレオチド(リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチド、天然および非天然の両方)のセット、ならびにペントースおよびヘキソース等が挙げられる。例えば特異性生体高分子がヌクレオチドである場合には、A、T(またはU)、GおよびCの4種類の塩基のブロックをそれぞれ用いて形成されることとなる。
具体的な特異性生体高分子の形成方法としては、例えば、反応を生じさせたい特異性生体高分子固定部の固定化層上のみに、例えばフォトマスク等を用いてエネルギーを照射し、上記固定化層が有する感光性保護基を脱離させる。この感光性保護基が脱離して上述した官能基が露出した領域に、目的とするモノマー等を接触させて、上記官能基とモノマー等とを反応させる。その後、官能基と反応したモノマー等が有する置換基を、再度上述した感光性保護基等によって保護し、他の領域の特異性生体高分子固定部とモノマーとの反応を行っている際、この感光性保護基により保護された領域は反応が行われないものとする。このような露光やモノマー等との反応を繰り返して行うことにより、各特異性生体高分子固定部に異なる特異性生体高分子を固定化することができる。
このような露光に用いられる光源は、得られたポリマー配列を損傷せず、上記感光性保護基を脱離させることが可能な波長のエネルギーであれば特に限定されるものではない。一般的には、340nmより長波長のエネルギーが用いられ、例えばエアカットオフフィルターを用いたHg−Arcランプ等を用いることができる。
また、上記特異性生体高分子を構成するモノマー等については、目的とする特異性生体高分子によって、適宜選択されることとなり、例えば特表2000−508542号公報等に記載されたものを用いることができる。
(有機基除去工程)
次に、本実施態様の有機基除去工程について説明する。本実施態様における有機基除去工程は、上記特異性生体高分子固定部間のスペース部に存在する有機基を除去する工程である。本工程は、上記固定化層形成工程後、上記特異性生体高分子固定化工程前に行われるものであってもよく、上記特異性生体高分子固定化工程後に行われるものであってもよい。また、上記特異性生体高分子固定化工程中に行われるものであってもよい。
例えば、上記固定化層形成工程後、特異性生体高分子固定化工程前に有機基除去工程が行われる場合、有機基除去工程によって特異性生体高分子固定部間のスペース部に存在する固定化層の有機基が除去されることとなる。これにより、特異性生体高分子固定化工程において特異性生体高分子を固定化する際、このスペース部には固定化層の有機基がないことから、上記特異性生体高分子が付着せず、最終的に製造されたマイクロアレイチップのスペース部には、有機基が付着していないものとすることができるのである。また、例えば上記特異性生体高分子固定化工程後、上記有機基除去工程が行われる場合、上記特異性生体高分子固定化工程によりこのスペース部に特異性生体高分子が付着している場合や、固定化層の有機基が存在している場合であっても、この特異性生体高分子や固定化層の有機基を除去することができ、製造されたマイクロアレイチップのスペース部に有機基が付着していないものとすることができるのである。また、特異性生体高分子固定化工程中に行われる場合にも同様である。
ここで、本工程により除去される有機基としては、上記固定化層の上記官能基や特異性生体高分子等であるが、例えば固定化層が、基材と結合しているシラン化合物等、無機材料からなる部分を有する場合、この無機材料からなる部分が有機基と同時に除去されてもよく、また無機材料からなる部分が基材表面に残存してもよい。
本工程における上記有機基を除去する方法としては、上記スペース部に存在する有機基を除去することが可能な方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、一般的に行われているフォトリソグラフィー法等によって行われるものであってもよく、また例えば短波長の紫外光等をパターン状に照射して有機基を分解等する方法であってもよい。
本実施態様においては、例えば図3に示すように、光触媒を含有する光触媒含有層11および基体12を有する光触媒含有層側基板13の上記光触媒含有層11を、上記特異性生体高分子3(または固定化層2)と間隙をおいて配置した後、例えばフォトマスク14等を用いてエネルギー15を照射することにより行われることが好ましい。
この方法によれば、上記有機基の除去をエネルギー照射に伴う光触媒の作用により行うことができることから、例えばフォトリソグラフィー法に用いられるアルカリ現像液等の、特異性生体高分子等に悪影響を及ぼすような薬品を用いる必要がない。またスペース部に上記光触媒含有層側基板を用いてエネルギー照射することによって、容易に有機基等の分解除去を行うことができることから、高いエネルギーを有する光を用いることなく、効率よく有機基の除去を行うことができる、という利点も有するからである。
このような光触媒含有層側基板を用いて有機基を除去する方法に用いられる、光触媒含有層側基板やエネルギー等について、以下説明する。
a.光触媒含有層側基板
まず、本工程に用いられる光触媒含有層側基板について説明する。本工程に用いられる光触媒含有層側基板とは、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有するものである。本工程において用いられる光触媒含有層側基板は、このように、少なくとも光触媒含有層と基体とを有するものであり、通常は基体上に所定の方法で形成された薄膜状の光触媒含有層が形成されてなるものである。また、この光触媒含有層側基板には、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部が形成されたものも用いることができる。以下、光触媒含有層側基板の各構成について説明する。
(1)光触媒含有層
本工程に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層中の光触媒が、対象とする有機基を分解除去等することが可能な構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよいし、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の濡れ性は特に親液性であっても撥液性であってもよい。
本工程において用いられる光触媒含有層は、例えば図3に示すように、基体12上に全面に形成されたものであってもよいが、例えば図4に示すように、基体12上に光触媒含有層11がパターン状に形成されたものであってもよい。
このように光触媒含有層をパターン状に形成することにより、後述するエネルギー照射の際、フォトマスク等を用いてパターン状にエネルギーを照射する必要がなく、全面にエネルギーを照射することにより、上記スペース部の有機基を除去することが可能となるからである。
また、実際に光触媒含有層に面する部分のみの有機基が分解除去等されるものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒含有層と特異性生体高分子等とが面する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。
このよう光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、このキャリアが光触媒含有層近傍に配置されるスペース部の有機基に作用を及ぼすものであると思われる。
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
また、上記酸化チタンとして可視光応答型のものを用いてもよい。可視光応答型の酸化チタンとは、可視光のエネルギーによっても励起されるものであり、このような可視光応答化の方法としては、酸化チタンを窒化処理する方法等が挙げられる。
酸化チタン(TiO2)は、窒化処理をすることにより、酸化チタン(TiO2)のバンドギャップの内側に新しいエネルギー準位が形成され、バンドギャップが狭くなる。その結果、通常酸化チタン(TiO2)の励起波長は380nmであるが、その励起波長より長波長の可視光によっても、励起されることが可能となるのである。これにより、種々の光源によるエネルギー照射の可視光領域の波長も酸化チタン(TiO2)の励起に寄与させることが可能となることから、さらに酸化チタンを高感度化させることが可能となるのである。
ここで、本発明でいう酸化チタンの窒化処理とは、酸化チタン(TiO2)の結晶の酸素サイトの一部を窒素原子での置換する処理や、酸化チタン(TiO2)結晶の格子間に窒素原子をドーピングする処理、または酸化チタン(TiO2)結晶の多結晶集合体の粒界に窒素原子を配する処理等をいう。
酸化チタン(TiO2)の窒化処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば、結晶性酸化チタンの微粒子をアンモニア雰囲気下で700℃の熱処理により、窒素をドーピングし、この窒素のドーピングされた微粒子と、無機バインダや溶媒等を用いて、分散液とする方法等が挙げられる。
ここで、光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
本工程に用いられる光触媒含有層は、上述したように光触媒単独で形成されたものであってもよく、またバインダと混合して形成されたものであってもよい。
光触媒のみからなる光触媒含有層の場合は、有機基の分解除去等に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより有機基の分解除去等を均一に行うことが可能である。
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基体上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基体上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基体上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
(2)基体
本工程に用いられる光触媒含有層側基板には、例えば図3に示すように、少なくとも基体12とこの基体12上に形成された光触媒含有層11とを有するものである。
この際、用いられる基体を構成する材料は、後述するエネルギーの照射方向や、マイクロアレイチップが透明性を有するか等により適宜選択される。
すなわち、例えばマイクロアレイチップが不透明なものである場合においては、エネルギー照射方向は必然的に光触媒含有層側基板側からとなり、例えば図3に示すように、フォトマスク14を光触媒含有層側基板13側に配置して、エネルギー照射をする必要がある。また、後述するように光触媒含有層側基板に光触媒含有層側遮光部を予め所定のパターンで形成しておき、この光触媒含有層側遮光部を用いてパターンを形成する場合においても、光触媒含有層側基板側からエネルギーを照射する必要がある。このような場合、基体は透明性を有するものであることが必要となる。
一方、マイクロアレイチップが透明である場合であれば、マイクロアレイチップ側にフォトマスクを配置してエネルギーを照射することも可能である。このような場合においては、基体の透明性は特に必要とされない。
このような基体としては、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、エネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
このように、光触媒含有層側基板に用いられる基体は特にその材料を限定されるものではないが、本工程においては、この光触媒含有層側基板は、繰り返し用いられるものであることから、所定の強度を有し、かつその表面が光触媒含有層との密着性が良好である材料が好適に用いられる。
具体的には、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。
なお、基体表面と光触媒含有層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
(3)光触媒含有層側遮光部
本工程に用いられる光触媒含有層側基板には、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板を用いることにより、露光に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、光触媒含有層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
このような光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板は、光触媒含有層側遮光部の形成位置により、下記の二つの態様とすることができる。
一つが、例えば図5に示すように、基体12上に光触媒含有層側遮光部16を形成し、この光触媒含有層側遮光部16上に光触媒含有層11を形成して、光触媒含有層側基板とする態様である。もう一つは、例えば図6に示すように、基体12上に光触媒含有層11を形成し、その上に光触媒含有層側遮光部16を形成して光触媒含有層側基板とする態様である。
いずれの態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒含有層側遮光部が、上記光触媒含有層と特異性生体高分子等とが間隙をもって位置する部分の近傍に配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
さらに、上記光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部を形成する実施態様においては、光触媒含有層と特異性生体高分子等とを所定の間隙をおいて配置する際に、この光触媒含有層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒含有層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒含有層と特異性生体高分子等とを配置する際に、上記光触媒含有層側遮光部と特異性生体高分子等とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態で光触媒含有層側基板からエネルギーを照射することにより、精度良く有機基を分解除去等することが可能となるのである。
本工程に用いられる光触媒含有層側遮光部の形成方法については、特に限定されるものではなく、光触媒含有層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製光触媒含有層側遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製光触媒含有層側遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
なお、上記説明においては、光触媒含有層側遮光部の形成位置として、基体と光触媒含有層との間、および光触媒含有層表面の二つの場合について説明したが、その他、基体の光触媒含有層が形成されていない側の表面に光触媒含有層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、エネルギー照射する領域を小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
(4)プライマー層
次に、光触媒含有層側基板に用いられるプライマー層について説明する。本工程において、上述したように基体上に光触媒含有層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒含有層を形成して光触媒含有層側基板とする場合においては、上記光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成してもよい。
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による有機基の分解除去等を阻害する要因となる光触媒含有層側遮光部および光触媒含有層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒含有層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で有機基の分解除去等の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンでスペース部の有機基を除去することが可能となるのである。
なお、上記プライマー層は、光触媒含有層側遮光部のみならず光触媒含有層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒含有層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
上記プライマー層は、光触媒含有層側基板の光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiX4で示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
b.エネルギーの照射
次に、エネルギーの照射方法について説明する。本工程においては、上述した光触媒含有層および、上記特異性生体高分子または固定化層とを間隙を置いて配置し、所定の方向からエネルギーを照射することによって、スペース部に存在する有機基を除去することができる。ここで、上記光触媒含有層側基板は、上記特異性生体高分子が形成されている場合には、特異性生体高分子と間隙をおいて配置され、上記特異性生体高分子固定化工程前に本工程が行われる場合には、固定化層と間隙をおいて配置されることとなる。
本工程における上記の配置とは、実質的に光触媒の作用が有機基に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、上記光触媒含有層と上記特異性生体高分子が密着している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒含有層と特異性生体高分子とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
本発明において上記間隙は、光触媒の感度が高く、有機基の分解等の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積のマイクロアレイチップに対して特に有効である。
一方、例えば300mm×300mm以上といった大面積のマイクロアレイチップに対して処理を行う場合は、上述したような微細な間隙を光触媒含有層側基板と特異性生体高分子との間に形成することは極めて困難である。したがって、マイクロアレイチップが比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、有機基を除去するパターンの精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して有機基を分解除去する効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに有機基の除去にムラが発生しないといった効果を有するからである。
このように比較的大面積のマイクロアレイチップにエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒含有層側基板と透明基材との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく配置することが可能となるからである。
このように光触媒含有層と特異性生体高分子等とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒含有層と特異性生体高分子等との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に有機基の分解除去等の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくなく、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が特異性生体高分子等に届き難くなり、この場合も有機基の分解除去等の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくないのである。
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒含有層と特異性生体高分子等とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が有機基に及ばないことから、このスペーサを上述したパターンと同様のパターンを有するものとすることにより、スペース部のパターン上に有機基を分解除去等することが可能となる。
本工程においては、このようなスペーサを一つの部材として形成してもよいが、工程の簡略化等のため、上記光触媒含有層側基板の欄で説明したように、光触媒含有層側基板の光触媒含有層表面に形成することが好ましい。なお、上記光触媒含有層側基板の説明においては、光触媒含有層側遮光部として説明したが、本発明においては、このようなスペーサは特異性生体高分子等の表面に光触媒の作用が及ばないように表面を保護する作用を有すればよいものであることから、特に照射されるエネルギーを遮蔽する機能を有さない材料で形成されたものであってもよい。
なお、上記光触媒含有層が可撓性を有する樹脂フィルム等の可撓性を有する基体上に形成された光触媒含有層側基板を用いる場合においては、上述したような間隙を設けることが難しく、製造効率等の面から、上記光触媒含有層と特異性生体高分子等とが接触するように配置されていることが好ましい。
本発明においては、このような間隙をおいた配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
次に、上述したような配置状態を維持した状態で、エネルギー照射が行われる。なお、本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層により有機基を分解除去等することが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
通常このような露光に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
このような露光に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。この場合、フォトマスクが必要ない、という利点を有する。
また、露光に際してのエネルギーの照射量は、スペース部に存在する有機基が光触媒含有層中の光触媒の作用により分解除去等されるのに必要な照射量とする。
この際、光触媒含有層を加熱しながら露光することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な特性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
本工程におけるエネルギーの照射方向は、上述したように光触媒含有層側基板もしくは製造されるマイクロアレイチップが透明であるか否かにより決定される。
すなわち、光触媒含有層側遮光部が形成されている場合は、光触媒含有層側基板側から露光が行なわれる必要があり、かつこの場合は光触媒含有層側基板が照射されるエネルギーに対して透明である必要がある。
また、光触媒含有層がパターン状に形成されている場合における露光方向は、上述したように、光触媒含有層と特性変化層とが接触する部分にエネルギーが照射されるのであればいかなる方向から照射されてもよい。
同様に、上述したスペーサを用いる場合も、接触する部分にエネルギーが照射されるのであればいかなる方向から照射されてもよい。
フォトマスクを用いる場合は、フォトマスクが配置された側からエネルギーが照射される。この場合は、フォトマスクが配置された側の基板、すなわち光触媒含有層側基板もしくはマイクロアレイチップのいずれかが透明である必要がある。
上述したようなエネルギー照射が終了した後、光触媒含有層側基板を配置位置からはずすことにより、上記スペース部の有機基が除去されたものとすることができるのである。
2.第2実施態様
次に、本発明のマイクロアレイチップの製造方法の第2実施態様について説明する。本実施態様におけるマイクロアレイチップの製造方法は、
基材上に、感光性保護基を有する固定化層を形成する固定化層形成工程と、
上記固定化層上の特異性生体高分子固定部に、特異性生体高分子を固定させる特異性生体高分子固定化工程と
を有するマイクロアレイチップの製造方法であって、
上記特異性生体高分子固定化工程で不良が生じた際、不良部分の上記特異性生体高分子および上記固定化層を除去する不良部分除去工程を有するものである。
本実施態様のマイクロアレイチップの製造方法は、例えば図7に示すように、基材1上に固定化層2を形成する固定化層形成工程(図7(a))と、その固定化層2の特異性生体高分子固定部aに、特異性生体高分子3(3´、3´´、3´´´等)を固定させる特異性生体高分子固定化工程(図7(b))とを有するものである。本実施態様においては、その特異性生体高分子固定化工程において、例えば隣り合う領域の特異性生体高分子3が混じり合って不良部分4´が生じた場合や、目的とする特異性生体高分子と異なるものが形成された不良部分4´´が生じた場合等に、その不良部分4の特異性生体高分子3および固定化層2を除去する不良部分除去工程(図7(c))を有するものである。
本実施態様によれば、上記特異性生体高分子固定化工程中に生じた不良部分を除去することができることから、製造されたマイクロアレイチップにおいて、例えばこの不良部分と被検査物とが非特異的な吸着をすること等を防ぐことができる。また、目的とする特異性生体高分子と異なるものが形成されてしまった場合に、その不良部分だけ除去して、再度その部分に固定化層を形成し、特異性生体高分子を固定化することが可能となる。これにより、欠陥のないマイクロアレイチップを製造することができるのである。
ここで、上記不良部分除去工程は、上記特異性生体高分子固定化工程後に行われるものであってもよく、また特異性生体高分子固定化工程中に行われるものであってもよい。ここで、本実施態様においては、例えば目的とする特異性生体高分子固定部の一部に不良部分が生じた場合、その不良部分を除去すればマイクロアレイチップとした際に何ら支障をきたさない場合には、その不良部分のみを除去する不良部分除去工程を行うだけでよいが、例えば不良部分が特異性生体高分子固定部の大部分を占める等、その部分の特異性生体高分子が欠けることによって、マイクロアレイチップを用いた際に支障をきたす場合には、その不良部分を除去する不良部分除去工程を行った後、さらに例えば図8に示すように、不良部分が除去された不良部分除去部cに第2固定化層6を形成する第2固定化層形成工程(図8(a))を行い、その第2固定化層6上に目的とする特異性生体高分子7を固定化する第2特異性生体高分子固定化工程(図8(b))を行うことが好ましい。
なお、本実施態様において製造されるマイクロアレイチップにおいても、上述した第1実施態様の有機基除去工程を有することが好ましい。これにより、製造されたマイクロアレイチップのスペース部上に有機基がなく、このスペース部上で被検査物が非特異的吸着等をすることのない、高品質なマイクロアレイチップとすることができるからである。
ここで、本実施態様における固定化層形成工程、および特異性生体高分子固定化工程については、上述した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略し、以下、本工程における不良部分除去工程、第2固定化層形成工程、および第2特異性生体高分子固定化工程について説明する。
(不良部分除去工程)
まず、本工程における不良部分除去工程について説明する。本工程における不良部分除去工程は、上述した特異性生体高分子固定化工程で生じた不良部分の特異性生体高分子および固定化層を除去する工程である。本工程は、上述したように、上記特異性生体高分子固定化工程中に行われるものであってもよく、また上記特異性生体高分子固定化工程後に行われるものであってもよい。例えば、少量の隣り合う特異性生体高分子が混じりあった部分を除去する場合等、後述する第2固定化層形成工程や第2特異性生体高分子固定化工程を行わない場合には、特異性生体高分子固定化工程後に行ってもよく、また特異性生体高分子固定化工程中に行ってもよい。
一方、例えば不良部分が特異性生体高分子固定部の大部分を占める場合等、後述する第2固定化層形成工程や第2特異性生体高分子固定化工程を行うことが必要である場合には、その不良が発生したことが判明した時点で、不良部分除去工程を行うこと等が、ロスが少なく好ましいといえる。
ここで、本実施態様の不良部分除去工程における特異性生体高分子および固定化層の除去には、特異性生体高分子および固定化層を完全に除去する場合のみならず、固定化層の一部が残存する場合も含むものとする。例えば、上述したように固定化層が基材と密着している部分が無機材料からなる場合には、この無機材料の部分は全部除去されてもよく、また無機材料が残存していてもよい。
本工程における不良部分を除去する方法としては、不良部分を除去することが可能な方法であれば、特に限定されるものではなく、一般的に行われているフォトリソグラフィー法等によって行われるものであってもよく、また例えば短波長の紫外光をパターン状に照射して上記特異性生体高分子や固定化層を除去するもの等であってもよい。
本実施態様においては、特に、例えば図3に示すように、光触媒を含有する光触媒含有層11および基体12を有する光触媒含有層側基板13の上記光触媒含有層11を、上記特異性生体高分子3と間隙をおいて配置した後、例えばフォトマスク14等を用いてエネルギー15を照射することにより行われることが好ましい。
これにより、例えばフォトリソグラフィー法に用いられるアルカリ現像液等の、その他の部分の特異性生体高分子等に悪影響を及ぼすような薬品を用いる必要がない。また不良部分に上記光触媒含有層側基板を用いてエネルギー照射することによって、容易に有機基等の分解除去を行うことができることから、高いエネルギーを有する光を用いることなく、効率よく特異性生体高分子や固定化層の除去を行うことができる、という利点も有するからである。
ここで、本実施態様に用いられる光触媒含有層側基板や、照射されるエネルギーについては、上述した第1実施態様の有機基除去工程において用いられるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(第2固定化層形成工程)
次に、本実施態様における第2固定化層形成工程について説明する。本実施態様における第2固定化層形成工程とは、上述した不良部分除去工程後、不良部分が除去された不良部分除去部に、上記固定化層形成工程で形成されるものと同様の第2固定化層を形成する工程である。本工程により第2固定化層を形成することにより、不良部分除去部上に、新たに特異性生体高分子を付着させることができるのである。
この第2固定化層形成工程により形成される第2固定化層としては、上述した固定化層と同様であり、また形成方法についても同様のものとすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
(第2特異性生体高分子固定化工程)
次に、本実施態様における第2特異性生体高分子固定化工程について説明する。本実施態様における第2特異性生体高分子固定化工程は、上記第2固定化層形成工程により形成された第2固定化層上に、特異性生体高分子固定化工程で固定化される特異性生体高分子と同様の特異性生体高分子を固定化する工程である。
本工程における特異性生体高分子の固定化方法としては、上記第2固定化層上に特異性生体高分子を固定することが可能な方法であれば、特に限定されるものではなく、上記特異性生体高分子固定化工程と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
B.マイクロアレイチップ用基板
次に、本発明のマイクロアレイチップ用基板について説明する。本発明のマイクロアレイチップ用基板は、基材と、上記基材上に形成され、感光性保護基を含有する固定化層とを有し、上記固定化層は特異性生体高分子を固定化する領域である特異性生体高分子固定部のパターン状に形成されているものである。
本発明のマイクロアレイチップ用基板は、例えば図9に示すように、基材1上に固定化層2を有するものであり、この固定化層2は、特異性生体高分子を固定化する特異性生体高分子固定部aのパターン状に形成されているものである。
一般的なマイクロアレイチップ用基板においては、隣接する特異性生体高分子固定部間にも固定化層が形成されているため、感光性ポリマー重合法等によって特異性生体高分子を固定化する場合、この部分にも特異性生体高分子が付着してしまう場合や、隣り合う特異性生体高分子が混じり合ってしまう場合等がある。このような場合、隣接する特異性生体高分子固定部間や、異なる特異性生体高分子が混じり合った部分においては、マイクロアレイチップを使用した際、被検査物が非特異的吸着をしてしまい、マイクロアレイチップの精度が低下する場合や、コントラストが低下するといった問題がある。また、固定化層の有機基が存在する場合にも、同様に被検査物が非特異的な吸着をしてしまうという問題がある。
そこで、本発明においては、このような特異性生体高分子を付着させる特異性生体高分子固定部の形状に固定化層が形成されている。したがって、例えば特異性生体高分子を感光性ポリマー重合法等によって、固定化層上に固定化する際、この特異性生体高分子固定部以外の部分には固定化層が形成されていないことから、特異性生体高分子が付着せず、また固定化層の有機基もないものとすることができる。これにより、上記のようなマイクロアレイチップの精度の低下やコントラストの低下等のない、高品質なマイクロアレイチップとすることができるのである。
ここで、上記特異性生体高分子固定部とは、上述したように特異性生体高分子を固定させる領域であり、通常この各特異性生体高分子固定部ごとに異なる特異性生体高分子が固定化されるものである。
ここで、隣接する上記特異性生体高分子固定部の間隙は、1μm〜2,000μm、中でも2μm〜150μm、特に5μm〜75μmであることが好ましい。隣接する特異性生体高分子固定部の間隙がこのようなものとすることにより、感光性ポリマー重合法等により特異性生体高分子を固定化した際に、異なる特異性生体高分子が混じり合ったり不良部分が発生しないものとすることとができるからである。また、このような範囲内であることから、本発明の利点を活かすことができる、ということもいえる。
このような固定化層の形成方法としては、例えば基材上の全面に固定化層を形成し、この固定化層をパターニングすることにより行うことができる。このようなパターニングの方法としては、例えば一般的なフォトリソグラフィー法や、高いエネルギーを有する光の照射等であってもよいが、本発明においては、特に、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板を用いて、エネルギーを照射することによって、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により目的とする領域の固定化層を分解除去して、形成する方法であることが好ましい。これにより、例えばフォトリソグラフィー法におけるアルカリ現像液のような、固定化層や特異性生体高分子に悪影響を及ぼすような材料を用いる必要がない。また、高いエネルギーを有する光を用いることなく、効率よく固定化層の除去を行うことができる、という利点も有するからである。
なお、本実施態様に用いられる基材や、固定化層、その固定化層の形成方法や、固定化層のパターニング方法等については、上述した「A.マイクロアレイチップの製造方法」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
C.マイクロアレイチップ
次に、本発明のマイクロアレイチップについて説明する。本発明のマイクロアレイチップは、上述したマイクロアレイチップ用基板の固定化層上に特異性生体高分子が固定化されたものである。
本発明によれば、上記固定化層が上述したように特異性生体高分子固定部の形状に形成されていることから、特異性生体高分子が、隣接する特異性生体高分子固定部間に付着していないマイクロアレイチップとすることができるのである。
これにより、マイクロアレイチップが使用された際、特異性生体高分子固定部間に付着した有機物等によって、非特異的吸着がされることなく、高品質なマイクロアレイチップとすることができるのである。
ここで、本発明のマイクロアレイチップに用いられる特異性生体高分子や、その形成方法等については、上述した「A.マイクロアレイチップの製造方法」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。