本発明は、電気的特性の改善されたヒューズに関する。
近年、電子回路を利用した装置の発展は著しく、文化的生活には不可欠のものとなっている。たとえば、自動車、ステレオやテレビなどの音響装置など、快適な生活のための必需品として広く使われており、その性能の発達には著しいものがある。
これらの装置の電子回路には、ヒューズ、配線用の金属線、昇圧回路部品、コンピュータ用部品、点火コイル、点火プラグなど、種々の回路部品が使われており、それらの回路部品には、高性能化、高品質化、低価格化、低消費電力化など、多くの改良が加えられている。
自動車や音響装置は広く知られている物であり、したがって一般的な説明は後述の本発明の実施の形態での説明で行うこととするが、たとえば、ガソリンを燃料に用いる自動車についてみると、燃費はかなり向上し、スタートダッシュもかなりよくなり、エンジン音もある程度静かになるなど、多くの進歩が窺える。また、カーステレオなどの音響装置についても、音質がかなりよくなっている。
このような改善努力によって、現在の自動車はいわゆる大衆商品といえるように多くのユーザに便利に使われており、ユーザの要求に応じて種々の機能、性能、品質のものが低価格品から高価格品まで品揃えされている。
その結果、自動車の機能、性能、品質はかなり向上しているが、さらにエンジン音が静かな自動車、さらに燃費の良い自動車、さらにスタートの良い自動車を求めるユーザの声が強く、そのために、エンジン、自動車のボディー、動力伝達系、タイヤなどの部品や装置の改良が続けられている。
しかしながら、ユーザの希望を満たすにはいたっておらず、さらにエンジン音が静かな自動車、さらに燃費の良い自動車、さらにスタートの良い自動車を求めるユーザの声が強い。
この事情は、カーステレオなどの音響装置においても同様であり、購入後のユーザの求めによる改良に頼るところが大きい。
上記のような種々の改良は、主として、自動車のエンジンの新しい機構の開発、自動車の構造の改良、半導体関連デバイスなどの開発、スピーカの改良、コンピュータの改良といったものについて行われているが、ヒューズや配線用金属材料の影響についてはあまり大きな効果はないと思われているところがある。ヒューズについての改良は、コスト面や形状、実装などに関する改良が多数発表されているが、上記のニーズに応える改良は見あたらない。
ヒューズを自動車の電気回路に装着する場合は、ヒューズホルダーの電極に単に挿入するだけでよいとされており、電気回路のスイッチを入れたときに電気回路で機能すればよいとされている。したがって、ヒューズの装着される向きはどちら向きでも良く、当該電気回路をONさせればよいと考えられている。
図14と図15は乗用車に使用されている代表的なヒュ−ズホルダーにおけるヒューズの装着方法を説明する図で、ヒューズホルダーにヒューズの一対の電気回路に接続する端子(以下、接続端子もいう)を挿入した状態を説明する断面図で、接続端子とヒューズホルダーの電極との電気的接続がなされている部分の断面図である。
図14と図15で、符号101,102,121,122はヒューズの接続端子、110,111,130〜133はヒューズホルダーの電極である。接続端子101と接続端子102は同一ヒューズの一対の接続端子で、接続端子101と接続端子102は図示していないヒューズ本体で電気的に接続されており、接続端子121と接続端子122は同一ヒューズの一対の接続端子で、接続端子121と接続端子122は図示していないヒューズ本体で電気的に接続されている。
前記各ヒューズ本体は、衆知のように、それぞれの一対の接続端子の間に所定の電流値以上の電流が所定時間以上流れると発熱してヒューズ本体の一部が溶けて断線することにより当該一対の接続端子の間に流れていた電流を遮断する役割を果たすものである。
図14で、ヒューズホルダーの電極110は、そこに挿入されるヒューズの接続端子101を少しきつめに挟んで固定するように形成されている。すなわち、電極110の符号110aで示した部分が接続端子101の符号101aで示した部分を電極110の符号110cで示した部分の方向へ押すようにして、電極110の符号110aで示した部分が接続端子101の符号101aで示した部分に圧接している。同様に、電極110の符号110bで示した部分が接続端子101の符号101bで示した部分を電極110の符号110dで示した部分の方向へ押すようにして、電極110の符号110bで示した部分が接続端子101の符号101bで示した部分に圧接している。接続端子101の符号101cで示した面は電極110の内壁に部分的にあるいは全体的に押しつけられている。このような構造で、接続端子101が電極110に挿入されて保持されており、接続端子101と電極110の接触部分によって電気回路の電気的接続がなされている。
電極111と接続端子102の間の電気的接続についても電極110と接続端子101の場合と同様であり、図14の符号111,111a〜d,102,102a〜cで示した部分がそれぞれ前記符号110,110a〜d,102,102a〜cで示した部分に相当する。
図15で、ヒューズホルダーの電極130と131は、そこに挿入されるヒューズの接続端子121を少しきつめに挟んで固定するように形成されている。すなわち、電極130の符号130aで示した部分と電極131の符号131bで示した部分とで接続端子121の符号121aで示した部分と符号121bで示した部分をきつく挟み込んでおり、それぞれの接触部分で電気的接続がなされている。電極130と電極131は図示していないところで電気的に接続されている。
電極132および133と接続端子122の間の電気的接続についても電極130および131と接続端子121の場合と同様であり、図15の符号132,132a,133,133b,122,122a,122bで示した部分がそれぞれ前記符号130,130a,131,131b,121,121a,121bで示した部分に相当する。
衆知のように、自動車は走行中に激しい振動を生じるが、その振動によっても前記ヒューズホルダーの電極に装着されているヒューズがはずれないように、比較的強い力でヒューズが前記ヒューズホルダーの電極に挟み込まれて保持されている。
図15のようなヒューズホルダーの電極にヒューズを差し込んで使用すると、本発明者らの調査によると強い発熱を生じるが、ヒューズ本体を溶断することがないような発熱のため、一般には特に大きな問題になっていない。
図16は図15を用いて説明したタイプのヒューズホルダーに装着されて使用されたヒューズの接続端子の状況を説明する図である。
図16で、符号121cと122cはヒューズの接続端子の表面全面にメッキが施されている接続端子表面、121dと122dはそれぞれヒューズホルダーの電極の図15に符号130aと132aで示した部分によって強く圧接されていた結果生じた傷痕である。
前記乗用車の電気回路に用いられているヒューズは、衆知のように、その一対の接続端子とヒューズ本体が、その母材が亜鉛を主成分とする金属で、たとえば型を用いた加工によって一体に作られている。
ヒューズの接続端子の中には、その表面に銀メッキや錫メッキが施されているものと、メッキは施されていないが表面の外観を維持するためにクロメート処理を行っているものもある。
銀メッキは電気的接続の安定性を向上させる効果がある。衆知のように、亜鉛合金に直接銀メッキを施すことは実用的には行われておらず、亜鉛合金の上に銅メッキを行い、その上にニッケルメッキを施し、その上に銀メッキを施している。
電気的接点の観点からは、銀は表面の変化が心配されており、電気接点には特によい表面材質とは評価されていない。微少な信号を正確に伝送する必要があるなどの特に精密な電気接点における表面材質としては金が好ましいとされている。この接点用の金表面は、例えば時計のケースや宝飾品などの金メッキなどとは異なる技術が要求されている。
また、電気接点用の金メッキに限らず、金メッキのコストは高い。したがって、金メッキの必要性が強く認識されていない電気部品には金メッキが用いられないのが通常である。金色をしていることを表現するだけを目的とした極めて薄い金薄層、たとえば金薄層の厚みが0.01μmの金メッキを施した場合などは、コストは安いが、電気的特性も期待できないので、電気接点の品質を考えた金メッキとは異質なものである。
前記乗用車用のような自動車用ヒューズの場合は、精密電気装置における電気接点の場合とは状況が異なると見なされており、金に比較してコストが大幅に低減される銀メッキが、ある程度の電気的接続性を維持するということを想像させる効果も期待して採用されている。
図16に例示したような傷121d,122dは、ヒューズとしての電気的接続上は特に問題視されておらず、現在は外見上特に問題にすべきものとは見なされておらず、強い改善の要求も出さておらず、仕方がないものとされ、特に改善はなされていない。
以上説明したように、自動車のヒューズは、自動車の電気回路における過剰電流に対する保護の役割をするものに過ぎないとの観点から、主に、扱いやすいものにすることや、できるだけコストを安く製造することなどの改善がなされている。
自動車や音響装置は、高級品においても、量産が行われており、乗り心地が良く、発進特性が良く、燃費が良く、音響効果が良いなどの良い性能の乗用車を得ようとすれば、多くの場合、価格の高い乗用車を購入するという選択肢を選ぶのが実状である。
しかし、乗用車においてすら、高級品といえども、一つずつ念入りに調整して製造していては、製造コストがあまりにも高くなるのみならず、現在の改良工夫の延長線上では上記ユーザのニーズを満足させることができない。
そのため、従来の乗用車においては、高級品といわれる製品においても、エンジン音の大きさ、燃費、音質などのバラツキはやむを得ないものと思われていた。そして、エンジン音量の低下、燃費の向上、音質の向上を図った自動車や音響装置の実現は難しいと思われながらも、少しの望みとしてその改善方法の実現が強く望まれていた。
本発明はこのような点に鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、従来の改良の盲点になっていたヒューズや配線材料の改良のあり方を見直し、たとえばエンジン音が小さく、燃費が良く、発進特性の優れた自動車や音質の良い音響装置などを量産上のバラツキが少なく、安価に実現できるとともに、従来の方法で製造された装置の改良をも実現することができる回路部品とその製造方法を提供するとともに、その回路部品を用いて上記ユーザのニーズに応える装置を安価に提供することにある。
本発明の発明者らの研究の結果、自動車の電気回路におけるヒューズの影響自動車の性能に及ぼすは、従来考えられていたよりも極めて大きく、例えば該電気回路の特性検出におけるノイズレベルを低減するなど、その検出方法の工夫によって、電気回路におけるヒューズの効果を識別することができた。
本発明の目的を達成するため、本発明では、ヒューズをヒューズホルダーに電気的に接続する接続端子に電気回路の特性を向上することができるような金メッキを施すこと、ヒューズを零下70°C以下の温度、好ましくは零下130°C以下の,そしてさらに好ましくは190°C以下の低温環境に所定時間以上置くという低温処理を施すことなどによってヒューズの改善を行なっている。そして、本発明のヒューズを電気回路に取り付けることによって、自動車の発進特性、燃費、音響設備の音響特性などの顕著な改善が可能であることを見出した。
以下、本発明の特徴を説明する。
請求項1に記載の発明によるヒューズの特徴は、自動車の電気回路に接続することができる少なくと一対の接続端子と前記一対の接続端子の間に接続されているヒューズ本体とを有しており、前記ヒューズ本体は所定の電流値以上の電流が所定時間以上流れたときに溶断してヒューズ本体を流れる電流を遮断する役割を有するヒューズであって、前記ヒューズは前記接続端子の表面の少なくとも一部に、表面の硬度や構造などの物性のうちの少なくとも一つの物性と膜厚と形状のうちの少なくとも一つが異なる第一の金の薄層と第二の金の薄層とが形成されていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のヒューズにおいて前記第一の金の薄層が第二の金の薄層よりも硬度が高いことを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のヒューズにおいて、前記第一の金の薄層と第二の金の薄層とが前記接続端子の表面に、互いに重ならない部分を有するように配置されていることを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒューズにおいて、前記第一の金の薄層と第二の金の薄層とが前記接続端子の表面に、互いに重なる部分を有するように配置されていることを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のヒューズにおいて、前記第一の金の薄層の上に第二の金の薄層が配置されていることを特徴としている。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒューズにおいて、前記第一の金の薄層と第二の金の薄層の少なくとも一方が、蒸着やイオンプレーティングなどの乾式方法によって形成された薄層であることを特徴としている。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒューズにおいて、前記第一の金の薄層と第二の金の薄層の少なくとも一方が、メッキなどの湿式方法によって形成された薄層であることを特徴としている。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒューズにおいて、前記第一の金の薄層と第二の金の薄層が、異なる組成のメッキ液を用いて形成されたメッキ層であることを特徴としている。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のヒューズにおいて、前記接続端子の母材と前記第一の金の薄層と第二の金の薄層の少なくとも一方の薄層との間に厚みが4μm以下の銅の薄層と厚みが4μm以下のニッケルの薄層の少なくとも一方が配置されていることを特徴としている。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のヒューズにおいて、前記接続端子の母材が亜鉛を主成分とする金属であり、前記母材の上に厚みが4μm以下の銅の薄層が配置されており、前記銅の薄層の上に前記厚みが4μm以下のニッケルの薄層が配置されており、前記ニッケルの薄層の上に前記第一の金の薄層が配置されており、第一の金の薄層の上に前記第二の金の薄層が配置されていることを特徴としている。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載のヒューズにおいて、前記第一の金の薄層と第二の金の薄層のそれぞれの厚みの最大値が、あるいは前記第一の金の薄層と第二の金の薄層重なって配置されている部分ではそれらの合計の厚みの最大値が0.05μm以上であることを特徴としている。
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載のヒューズにおいて、少なくとも前記ヒューズの金属で形成された電気的主要部分が、零下70度C以下の所定温度以下の低温に所定時間以上おいて後常温に戻すという低温処理を施されていることを特徴としている。
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のヒューズにおいて、前記所定温度が零下130度C以下の低温であることを特徴としている。
請求項14に記載の発明は、請求項12または13に記載のヒューズにおいて、前記低温処理が、液体窒素あるいは液体酸素を用いた低温環境に前記ヒューズを所定時間放置する処理であることを特徴としている。
請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれか1項に記載のヒューズにおいて、前記ヒューズの接続端子の少なくともヒューズホルダーの電極部に挿入される部分の表面に、前記第二の金の薄層が所定の隙間をおいて形成されていることを特徴としている。
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載のヒューズにおいて、前記第二の金の薄層に下に前記第一の金の薄層が形成されており、前記第一の金の薄層の下に前記ニッケルの薄層が形成されており、前記第一の金の薄層と前記ニッケルの薄層は前記ヒューズの接続端子の少なくともヒューズホルダーの電極部に挿入される部分の表面のおおむね全面に形成されていることを特徴としている。
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載のヒューズにおいて、前記第二の金の薄層が形成されている前記所定の隙間が0.7mm以下であることを特徴としている。
本発明のヒューズは、それを自動車や音響装置の電気回路に用いたときに、自動車の燃費の著しい低減、エンジン音の低下、乗り心地を害する不快な振動と音の低減、発進の迅速化等の効果のうちの少なくとも1つの効果をもたらし、エンジン性能と音響装置の音質の著しい向上をもたらすという大きな効果を発揮する。
そして、本発明を例えば乗用車の電気回路のヒューズとして実施した場合、従来は高級車として評価されていなかったクラスの乗用車の性能を高級車のような性能に高めることができるという大きな効果を発揮する。
本発明による自動車の性能向上は著しいものがあり、本発明は、自動車産業の発展ならびに自動車を利用する産業の発展に大きく寄与するものであり、自動車による環境汚染を改善する効果をもたらすものである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の例について説明する。なお、説明に用いる各図は本発明の例を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状、配置関係などを概略的に示してある。そして本発明の説明の都合上、部分的に拡大率を変えて図示する場合もあり、本発明の例の説明に用いる図は、必ずしも実施例などの実物や記述と相似形でない場合もある。また、各図において、同様な構成成分については同一の番号を付けて示し、重複する説明を省略することもある。
図1と図2は本発明のヒューズについて説明する図で、図1は自動車用のヒュ−ズの外観図で、導電体部分の一部を樹脂で保護した状態の平面図、図2はヒューズの樹脂で保護する前の導電体部分を上から見た平面図である。図1と図2で、符号51はヒューズ、52と53は接続端子、54は後述のヒューズ本体、55はヒューズ本体54と接続端子52および53の一部を保護するとともにヒューズ51を取扱い易くするために実装してある樹脂製の実装部分である。ヒューズ51を自動車の電気回路に装着する場合、一般に実装部分55を手や尖頭ペンチなどでつかんでヒューズを取り扱う。
図1に示したヒューズ51の構造は、従来から良く知られているように、たとえば図2に示すように、接続端子52と53にヒューズ本体54が接続されており、接続端子52と53を介してヒューズ本体54に所定の電流値以上の電流が所定時間以上流れると、ヒューズ本体を流れる電流によるヒューズ本体54の発熱によって、ヒューズ本体54の温度がヒューズ本体54を構成する材料の融点以上に上昇し、ヒューズ本体54が溶融してヒューズ本体54の一部に電気的断線が生じるようになっている。
ヒュ−ズ51の各構成要素の材質は従来から良く知られており、本発明においても同様の材質を使ったヒューズを使用してヒューズ原型を製造して後、それに後述するような本発明の処理工程を付加して本発明の回路部品の例としてのヒューズを製造することができる。ヒュ−ズ本体54の材質の例として、亜鉛を主成分として、それに銅(Cu)、チタニウム(Ti)などが少量含まれている金属を用いることができる。そして、多くの場合、
接続端子52,53とヒュ−ズ本体54は、一体の金属板を型を用いて所定の形状に打ち抜いて、図2に示した例のような形状の一体の導電体部分として形成される。
図1に例示したヒューズ51は、たとえば自動車のエンジン駆動回路や音響設備用回路などに使われており、従来は、過電流時に回路を確実に切断できること、安く製造できること、小型で扱いやすいことなどに重点が置かれて製造されている。
図3は本発明のヒューズを製造する製造方法を説明する図である。
図3において、符号1は従来のヒューズの加工工程、符号2は本発明のヒューズの製造方法の主要工程である低温処理工程である。従来の加工工程1は、前記の如く衆知のヒューズの製造方法をそのまま使用することができる工程である。従来の加工工程で製造されたヒューズは、従来から自動車などに広く使われているヒューズを製造することができるものである。
符号2は、従来の加工工程によって製造したヒューズに低温処理を施す、本発明の特徴であり、本発明の主要工程である低温処理工程で、従来の加工工程1にこの低温処理工程2を加えることによって本発明のヒューズを製造することができる。
図4は、図3に符号2で示した本発明の主要工程である低温処理工程の一例を説明する図である。図4で、符号61は低温処理槽、62は低温処理槽61の蓋部、63は低温処理槽61の箱部、64は蓋部62の蓋、65は挿入部、66は蓋64の係合面、67は箱、68は箱67の係合面、69はワークを入れるワーク処理室である。蓋64と箱67はそれぞれその壁部が、たとえばいわゆる魔法瓶のような二重構造になっており、二重構造の壁部の内部は減圧された密閉空間になっていて、壁部の断熱効果を高めるように形成されている。
また、蓋64と箱67を安価につくる方法として、蓋64と箱67の壁部を発泡スチロールのような保冷剤でつくることもでき、手軽に本発明の低温処理を行うようにすることもできる。
図4で、図示していないが、ワーク処理室69に所定個数のワークとしてのヒューズと所定量の液体窒素を入れて、箱67の係合面68に蓋64の係合面66が対面するように、そして、蓋64の挿入部65が箱67のワーク処理室69の内部に入るように位置合わせして、箱67に蓋64を被せ、この状態で所定時間放置する。このとき、実施の形態として、ワーク処理室69に入れる液体窒素を、低温処理するワークとしてのヒューズ全体が液体窒素に完全に浸るような量にすることが好ましい。
この所定時間放置する放置の仕方は、ワークと液体窒素の量やワークの形状・状態およびワーク処理室の材質、形状、寸法などによって異なる。一例として、ワーク処理室69として、その容積が50cm×50cm×50cm、すなわち、ワーク処理室内の空間が一辺が50cmの立方体と同じ形状寸法のものを用いて、図1に示した形状の多数の乗用車用ヒューズをワーク処理室69の深さ15cmの位置まで入れ、それに液体窒素を深さ17cmの位置まで入れて蓋64をし、20時間放置して常温に戻して、本発明の回路部品の例としてのヒューズを製造した。
このようにして製造した本発明のヒューズを、図5に示した乗用車の電気系統のヒューズとして使用したところ、以下に説明するように良好な結果を得た。
図5は、本発明の回路部品の例であるヒューズを用いた装置である中級クラスの乗用車の電気系統を説明する図である。
図5は、乗用車の電気回路をブロック図で説明するものである。以下、各ブロックの従来知られている部分については詳細な説明を省略し、本発明に関係の深い部分を重点的に説明する。また、図5の配線についても通常の電気回路と同様、概念的に表してある。
図5において、符号3は電池、4a〜4gはヒューズ、5b〜5gはスイッチ、6は自動車エンジンのスタータ系回路部分、7は燃料制御系回路部分、8はコンピュータ、9はイグニッション系回路部分、10はエアコンコンディショナー系回路部分、11は音響装置、12a〜12d,13a〜13d,14a〜14d,15a〜15d,16a〜16d,17a〜17d,18〜25は電気的接続を得るための配線を示す。
図5に示した電気回路を有する中級クラスといわれている乗用車を20台用意して、それぞれ同じ乗用車に本発明のヒューズを用いた場合と従来のヒューズを用いた場合とについて、乗用車のエンジン音の静かさ、スタートの快適さ、乗り心地、燃費、音響装置の音質などの比較評価を行った。
その結果、本発明のヒューズを用いたときの方が従来のヒューズを用いたときよりも、エンジン音は明確に低くなり、スタートの快適さもはっきり良く、スタートが早くなり、乗り心地は快適で音が静かで振動が少なくなり、燃費は約15%向上し、音響装置としてのステレオの音質が明確に良くなるという著しい効果をもたらした。
さらに、乗用車の車種として、上記中級クラスの乗用車よりも廉価なものと高価なものをそれぞれ複数台ずつ用意して、本発明のヒューズと従来のヒューズを用いて比較実験を行ったところ、上記と同様な評価結果を得た。
なお、上記各比較実験における本発明のヒューズと従来のヒューズは、すべてそれぞれの対応するヒューズについて、本発明の低温処理の有無を除いて、同一材質同一形状のものを用いており、本発明のヒューズは従来の製造方法で製造されたヒューズに上記本発明の低温処理を行ったものを用いている。
また、本発明の上記の例では、図4を用いた説明において、本発明のヒューズの主要な製造工程の一つである低温処理工程に液体窒素を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液体窒素の代わりに、液体酸素を用いても良い。
液体ヘリウムを用いる場合は液体窒素に比べて冷媒のコストが高く、容器に工夫が必要であるが、本発明に適用することができる。
種々の方法を用いて零下130度C以下の環境たとえば、零下150度C以下や零下190度C以下などの低温環境をつくり、本発明のヒューズを製造することができる。
また、ドライアイスにアルコールをかけるなどして作った零下70°C以下の低温環境を利用することも有効である。
図4を用いて説明した本発明の回路部品の例としてのヒューズを製造する場合、ヒューズを低温処理するときに、ワーク処理室69にヒューズを入れる入れ方として、たとえば、ヒューズを金網に入れてワーク処理室69に入れると温度の伝達が早く、少ない液体窒素で良質のヒューズを得ることができる。
また、ヒューズが液体窒素に浸る状態にしてワーク処理室69に入れても良く、ヒューズをたとえば金属製の台に載せてワーク処理室69に入れ、前記台の下に液体窒素を前記ヒューズの位置より下に位置する程度の量だけ入れたり、ヒューズを袋などに入れてワーク処理室69内におき、その袋の外部に液体窒素を入れたりして低温処理を行うこともできる。
本発明の低温処理によりヒューズの電気的特性を改善することができたが,その効果は,本発明の明細書で説明するように、本発明のヒューズを自動車に装着したときの自動車の特性が改善されることにより説明することができる。
以上説明したように、本発明のヒューズは、従来の製造工程を用いて製造されたヒューズに本発明の低温処理を行うことによって、従来のヒューズを改良して、従来では全く期待できなかった良質のヒューズを安価に製造することができるものである。また、本発明の低温処理は、コンピュータなどの装置全体について施すこともでき、自動車のエンジン等の制御に用いているコンピュータや電子回路について行ったところ、大きな効果があることがわかった。
そして、本発明の発明者らの検討の結果、本発明は、従来の回路部品の製造工程を本発明の低温処理工程を考慮したものに改良することによって、さらに著しい効果をあげることができるものである。
このような低温処理を施したヒューズを自動車の電気回路に用いることにより、前記のような多大な効果をもたらすことができるが、自動車における効果をさらに大きなものにするために、本発明では、ヒューズの接続端子のヒューズホルダーに接続される部分である前記接続端子の電気的接続の安定性を高めるため、従来は接続端子表面に一様に銀メッキを施したものが主流であったヒューズに換えて、特殊な金メッキを施した接続端子を有するヒューズを提供する。
本発明の前記金メッキは、ヒューズに単に金色を付けるためのものではなく、精密機器の電子回路に用いられるような電気的接触状態の高安定化を図れるような金メッキである。以下にその具体的な例を説明する。
図6と図7は、本発明のヒューズの接続端子を説明する図である。図6は接続端子52または53に相当する接続端子を図2の上方から見た図に相当する平面図、図7は図6の接続端子を図6の直線X1−X2の位置で切った断面図である。
図6と図7で符号150は接続端子、151a,151b,158a,158bは第一の金(以下、Auともいう)の薄層、152、159は第二のAuの薄層、153,157はニッケルの薄層(以下、Niの薄層ともいう)、154,156は銅の薄層(以下、Cuの薄層ともいう)、155は接続端子150の母材である。符号150aは接続端子150を自動車の電気回路のヒューズホルダーに差し込むときの差し込み方向を示す矢印である。
接続端子150は、亜鉛を主成分とする金属から成る母材155の表面にCuの薄層154,156をメッキにより形成し、その上にNiの薄層153,157をメッキにより形成し、その上に図示のように部分的に第一のAuの薄層151a,151b,158a,158bをメッキにより形成するとともに部分的に第二のAuの薄層152、159をメッキにより形成して作成されている。本実施例におけるメッキは湿式メッキである。
本発明者らの実験の結果から、第一、第二の金の薄層の金の純度を高め、その厚みを厚くすれば、ヒューズをヒューズホルダーへ装着して後の電気接点としての高い信頼性を得ることができるが、純金の価格が高いので、その観点からは金の薄層の厚みをできるだけ薄くしたいという製品としての要望がある。
第一、第二の金の薄層の厚みを5〜7μmにすると、ヒューズをヒューズホルダーに装着したり外したりすることを頻繁に行っても電気接点としての極めて高い信頼性を得ることができる。この金の厚みを2μmにしてヒューズを作成して、ヒューズをヒューズホルダーに装着したり外したりすることを行ったところ、薄層の物性や構造により電気接点の安定性が大きく異なるという結果を得た。
さらに、前記金の薄層の下に配置する多の元素の薄層の諸特性によっても、ヒューズをヒューズホルダーへ装着して後の電気接点としての信頼性が大きく変わることがわかった。たとえば、前記図16を用いて、ヒューズホルダーの電極との接触部分において傷ができることを説明したが、この部分における発熱が増減したり、従来表面化していない金属表面の物理的問題が自動車の性能向上に関係することがわかった。
自動車におけるヒューズは一度装着されてからそのまま使用される場合もあるが、一度装着されて後着脱される場合もあり、ヒューズの接続端子の表面はヒューズの着脱に耐えるものでなければならず、本発明の金などの薄層は密着性の高いものでなければならない。
本発明の発明者らは、金の薄膜の厚みをできるだけ薄くするとともに、密着性の良いしかもヒューズをヒューズホルダーへ装着して後の電気接点としての高い信頼性を得ることができるヒューズを実現するための種々の工夫を行った。
Cuの薄層154,156やNiの薄層153,157は、各薄層の高い密着性を得ることや第一、第二の金の薄層への母材の亜鉛の悪影響を防ぐことなどの効果があるが、ヒューズの特性のバラツキを少なくし、かつ、ヒューズをヒューズホルダーへ装着して後の電気接点としての信頼性の観点から、CuやNi薄層の厚みと物理的性質が極めて重要である。本発明の発明者らの検討の結果、Cuの薄層とNiの薄層はそれぞれ4μm以下の厚みにすることが好ましい。
Cuの薄層の厚みを例えば十数μmのように厚くするとNiメッキ層を強く付けることができ、母材の亜鉛の影響も押さえることができるが、自動車用のヒューズにおいて、Cuの薄層の厚みを厚くすると、従来はまったく問題視されていなかったことであるが,金の薄層の厚みを薄くした場合に、電気接点としての十分な信頼性を得ることができないことがわかった。このことは,ヒューズホルダーの種類によっては、発熱量の増大や本発明で改善の対象にしているようなヒューズ性能の低下を招くなどきわめて深刻な問題が発生することが本発明の発明者らの調査でわかった。
湿式メッキにより各薄層を形成する場合、洗浄したヒューズ母材を前処理し、銅ストライクで約1μm厚みのCu薄層を形成し、洗浄等の必要な処理を行って後、pH6程度の中性に近いメッキ液で約0.5μm厚みのNiメッキ(光沢でない普通のメッキ)を行い、必要な処理の後、pH4.8程度の光沢Niメッキを行い約2μmのNiの薄層を形成し、必要な処理の後、第一の金の薄層をメッキにより形成し、必要な処理の後、第二の金の薄層をメッキにより形成した。
本発明者らの調査の結果,Cuの薄層の厚みを1μmにしても十分に密着性のよい前記各薄層を得ることができることが確認された。
図6と図7において、接続端子の差し込み方向の正面から見て、接続端子の上面と裏面の表面の左右両側に第一の金の薄層151a,151b,158a,158bが形成されており、第一の金の薄層151a,151bの間に第二の金の薄152が形成されており、層第一の金の薄層158a,158bの間に第二の金の薄159が形成されている。
図14に示したようなヒューズホルダーに装着するヒューズの場合には、図6、図7の第一の金の薄層の部分が当該ヒューズホルダーの電極に接触することになる。
図15に示したようなヒューズホルダーに装着するヒューズの場合には、図6、図7の第二の金の薄層の部分が当該ヒューズホルダーの電極に接触することになる。
第二の金の薄層の硬さを第一の金の薄層の硬さよりも柔らかいものにすると、図15のヒューズホルダーの場合、ヒューズの接続端子とヒューズホルダーの電極の電気的接続の安定性を有効に高めることができ、従来のような差し込み部におけるヒューズの接続端子とヒューズホルダーの電極の間の発熱を効果的に押さえることができる。
また、第二の金の薄層の厚みを第一の金の薄層の厚みよりも厚くしたり、第二の金の薄層の矢印150aに沿った方向の両側を第一の金の薄層に重ねて形成して、ヒューズの接続端子とヒューズホルダーの電極の間の電気的接続の信頼性を高めることができる。
このようなヒューズの接続端子表面の金の薄層の技術思想は、自動車の電気回路においては、従来は、コストが高くなるだけで全く無意味なものと考えられ、実用化されていなかったものである。
図8は、本発明の他の実施例としてのヒューズの接続端子を説明する図で、接続端子52または53に相当する接続端子の少なくともヒューズホルダーの電極に挿入する部分の表面に、第一の金の薄層と第二の金の薄層をほぼ全面にわたって重ねて形成した例である。符号160は接続端子、162,168は第一のAuの薄層、161,169は第二のAuの薄層、163,167はNiの薄層、164,166はCuの薄層、165は接続端子の母材である。
Cuの薄層とNiの薄層に関しては図6と図7を用いて説明した実施例と同様の考え方で形成した。
物理的特性の異なる2種類の金層の各厚み、すなわち、第一の金の薄層の厚みと第二の金の薄層の厚みをほぼ同じ厚みにし、厚みを0.02〜3μmの範囲の資料を作成した。その結果、第一の金の薄層と第二の金の薄層の厚みの合計した厚みが0.5μm以上の場合に接続端子として使用することが好ましく、1μm以上の合計厚みのときに信頼性の高い接続を実現することができた。
第二の金の薄層の硬さを第一の金の薄層の硬さよりも柔らかいものにすると、図15のヒューズホルダーの場合、ヒューズの接続端子とヒューズホルダーの電極の電気的接続の安定性を有効に高めることができ、従来のような差し込み部におけるヒューズの接続端子とヒューズホルダーの電極の間の発熱を効果的に押さえることができる。
図9〜図11は、本発明の他の実施例としてのヒューズの接続端子を説明する図で、図9は接続端子52または53に相当する接続端子を図2の上方から見た図に相当する平面図、図10は図9の接続端子を図9の直線X3−X4の位置で切った断面図、図11は図9の接続端子を図9の直線X5−X6の位置で切った断面図である。
図9〜図11で、符号170は接続端子、172,178は第一のAuの薄層、171,179は第二のAuの薄層、173,177はNiの薄層、174,176はCuの薄層、175は接続端子の母材である。符号170aは接続端子170を自動車の電気回路のヒューズホルダーに差し込むときの差し込み方向を示す矢印である。
自動車用のヒューズの接続端子は、図1に置いて説明したようなヒューズホルダーに挿入し易い形状、すなわち接続端子の先端部が薄くなっている場合が多い。
図9〜図11の実施例においては、図からもわかるように、接続端子の先端部近傍には金の薄層は図10のように、硬度が比較的硬い第一のAuの薄層が表面に形成されているが、硬度が比較的柔らかい第二のAuの薄層は形成されておらず、接続端子のヒューズホルダーに挿入された状態でヒューズホルダーの電極に接続される主要部分には、図11のように第一のAuの薄層とその上に第二のAuの薄層が形成されている。
第一のAuの薄層として、高純度の金の薄膜でビッカース硬度が150程度の薄膜をメッキにより形成し、第二のAuの薄層として、高純度の金の薄膜でビッカース硬度が80程度の薄膜をメッキにより形成した。このような接続端子を有するヒューズを実施例1で説明したような低温処理をしてヒューズとして作成し、乗用車の電気回路に装着して、自動車の燃費、発進特性などを調べたところ、従来のヒューズを装着した場合に比較して著しい特性の改善をすることができた。
なお、実施例2と3のヒューズについても実施例1で説明したような低温処理をしてヒューズとして作成し、乗用車の電気回路に装着して、自動車の燃費、発進特性などを調べたところ、従来のヒューズを装着した場合に比較して著しい特性の改善をすることができた。
図12と図13は本発明の他の実施例としてのヒューズの接続端子を説明する図で、図12は接続端子52または53に相当する接続端子を図2の上方から見た図に相当する平面図、図13は図12の接続端子を図12の直線X7−X8の位置で切った断面図である。
符号180は接続端子、181a〜181eと189a〜189eは第二のAuの薄層、182と188は第一のAuの薄層、183と187はNiの薄層、184と186はCuの薄層、185は接続端子の母材である。符号180aは接続端子180を自動車の電気回路のヒューズホルダーに差し込むときの差し込み方向を示す矢印である。
図12と図13に示した接続端子は、母材185の表面全面と裏面全面に図示のようにCuの薄層184と186がメッキにより形成されており、その上にNiの薄層183と187がそれぞれ全面にわたって図示のように形成されており、その上に第一のAuの薄層182と188がそれぞれ全面にわたって図示のように形成されている。
第一のAuの薄層182と188の上には、第二のAuの薄層181a〜181eと189a〜189e図示のように矢印180aの方向に接続端子180の一方の端から他方の端まで、所定の間隔をおいて形成されている。この所定の間隔は、一つの第二のAuの薄層の端からその隣の第二のAuの薄層の隣接する側の端までの距離で表すことにして、1.2mm以下が好ましく、0.7mm以下がより好ましい。このようにすることにより、当該ヒューズを自動車のヒューズホルダーに挿入したときに、前記ヒューズホルダーの電極が第二のAuの薄層181a〜181eのうちのいずれかの第二のAuの薄層と接触して電気的接触の信頼性を高めることができる。また、第二のAuの薄層の幅は、前記ヒューズホルダーの電極との高い電気的接触信頼性を実現しつつ、前記所定の間隔以下にすることもでき、金の使用量を少なくすることができる。
実施例1〜5で説明した本発明によるヒューズを乗用車に装着して自動車の特性を改善するにあたり、ヒューズの装着方法を種々検討した。その結果、本発明の前記実施例のヒューズの接続方向、すなわちヒューズに流れる電流の方向を、ヒューズの一対の接続端子をはじめにヒューズホルダーに装着してエンジンを始動したときの接続方向(以下、初期方向ともいう)にしたときと、一旦エンジンを切り前記一対の接続端子の接続方向を逆にして装着してエンジンを再始動した状態(以下、逆方向ともいう)のときとにおいて、アクセルを踏み込んだときのエンジンの回転数の上がり方とアクセルを離したときの回転数の下がり方や、アクセルを踏んだときとアクセルを離したときのエンジン音の高低あるいは高音歪みの入り方などを調べた。
そして、装着状態を初期方向と逆方向を何回か繰り返して、エンジンを始動してアクセルを踏み込んでエンジンの回転数を上げてからアクセルを離したときの回転数の下がり方が速い方を当該ヒューズの適切な接続方向(以下、正方向接続方向ともいう)とし、あるいは、エンジン音で判定するときはアクセルを踏んだときとアクセルを離したときのエンジン音の低い方あるいは高音歪みの入り方が少ない方を当該ヒューズの正方向接続方向として、正方向接続方向にした自動車と、同じ自動車に同じヒューズを正方向接続とは逆の接続方向(以下、逆方向接続方向ともいう)に接続した自動車とについて、自動車の燃費や発進特性などを調べた。その結果、正方向接続方向にヒューズを接続した場合の方が逆方向接続方向にヒューズを接続した場合よりも燃費が良く(すなわち、同じ走行条件で1リットルあたりの走行距離が長い)、発進特性がよい(同じアクセルの踏み方による同条件の走行路におけるスピードの上がり方が速い)という結果が得られた。この傾向は、自動車の他の特性についても同様であった。
以上、本発明の実施の形態について、いくつかの例をあげて説明した。
本発明の基本的技術思想は、ヒューズに前記低温処理を施すこと、ヒューズの接続端子に前記金メッキを施すこと、さらに、本発明のヒューズによる自動車の性能向上をより高いものにするためにヒューズの接続方向を前記基準などによって正方向接続方向にすることである。
そして、本発明の前記各技術思想は、全てを用いた場合に特に大きな効果をもたらすが、いずれか一つを用いた場合あるいは二つを組み合わせて用いた場合にも極めて大きな効果をもたらすものであることが本発明者らの検討でわかった。
以上、本発明を説明したが、本発明はこれに狭く限定されるものではなく、本発明の技術思想に矛盾しない範囲においての種々のバリエーションを可能とするものである。
以上の説明からもわかるように、本発明の活用範囲は自動車産業からそのユーザにおけるまで、広い範囲にわたるものである。
本発明は、従来の方法で量産された自動車の性能を大幅に向上させることを可能にするものであるとともに、性能の優れた自動車を安価に量産することを可能にするものであり、高性能な自動車を安価に得ることを可能とし、自動車を購入して使用するためのコストの大幅な削減、自動車使用による大気汚染の大幅な低減をもたらすことができるなど、その経済的、社会的効果は極めて大きなものであり、自動車産業の発展ならびに自動車を利用する産業の発展に大きく寄与するものであるとともに、自動車による環境汚染を改善する効果をもたらすものである。
本発明の実施の形態の例のヒューズについて説明する図である。
本発明の実施の形態の例のヒューズについて説明する図である。
本発明のヒューズの製造方法を説明する図である。
本発明のヒューズの製造方法を説明する図である。
本発明のヒューズを用いた装置の例としての乗用車の電気系統を説明する図である。
本発明のヒューズの実施例としての接続端子を説明する平面図である。
図6の本発明のヒューズの実施例の接続端子を説明する断面図である。
本発明のヒューズの実施例としての接続端子を説明する図である。
本発明の実施例としてのヒューズの接続端子を説明する図である。
図9の接続端子を直線X3−X4の位置で切った断面図である。
図9の接続端子を直線X5−X6の位置で切った断面図である。
本発明の実施例としてのヒューズの接続端子を説明する平面図である。
図12の接続端子を直線X7−X8の位置で切った断面図である。
乗用車に使用されている代表的なヒュ−ズホルダーにおけるヒューズの装着方法を説明する図である。
乗用車に使用されている代表的なヒュ−ズホルダーにおけるヒューズの装着方法を説明する図で
図15を用いて説明したタイプのヒューズホルダーに装着されて使用されたヒューズの接続端子の状況を説明する図である。
符号の説明
1:従来のヒューズの加工工程
2:低温処理工程
3:電池
4a〜4g,51:ヒューズ
5b〜5g:スイッチ
6:スタータ系回路部分
7:燃料制御系回路部分
8:コンピュータ
9:イグニッション系回路部分
10:エアコンコンディショナー系回路部分
11:音響装置
12a〜12d,13a〜13d,14a〜14d,15a〜15d,16a〜16d,17a〜17d,18〜25:電気的接続を得るための配線
52,53,101,102,121,122,150,160,170:接続端子
54:ヒューズ本体
55;ヒューズの実装部分
61:低温処理槽
62:低温処理槽61の蓋部
63:低温処理槽61の箱部
64:蓋部62の蓋
65:挿入部
66,68:係合面
67:箱
69:ワーク処理室
110,111,130〜133:ヒューズホルダーの電極
121c,122c:ヒューズの接続端子表面
121d,122d:傷
150a,170a,180a:矢印
151a,151b,158a,158b,162,168,172,178,182,188:第一の金の薄層
152、159,161,169,171,179,181a〜181e,189a〜189e:第二の金の薄層
153,157,163,167,173,177,183,187:ニッケルの薄層
154,156,164,166,174,176,184,186:銅の薄層
155,165,175,185:接続端子の母材