本発明者等は鋭意検討の結果、水系媒体中で形成されたトナー粒子を有するトナーであって、結着樹脂と着色剤と可塑化成分とを含有し、変形開始点(Tf1)が45〜60℃、変形終了点(Tf2)が55〜75℃、変形係数(Tfr)が0.3〜0.7である場合に本発明の目的が達成されることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
本発明における変形開始点(Tf1)、変形終了点(Tf2)、変形係数(Tfr)とはトナーの熱力学特性を示す指標であり、具体的には以下に示す方法によって測定される値である。
トナー0.2gを加圧成型器にはかりとり、常温常圧環境下において200kgfの荷重で2分間加圧成型し、直径約8mm、高さ1〜4mmの円柱状試料を調整する。内径約10mm、内壁の高さが20mm以上、研磨された底面を有する筒状容器の中央に前記円柱状試料を載せ、さらに、外形約9.9mm、厚さ10mm以上の加圧ジグを前記サンプルに接触させる。これを35℃で5分間保持した後、加圧ジグに10kgfの荷重を与え、昇温速度1℃/分で120℃まで円柱状試料を昇温し、試料に接する加圧ジグの変位量を計測する。得られたチャートから、試料が変形し始める温度(℃)を変形開始点(Tf1)、変形が終了する温度(℃)を変形終了点(Tf2)と定義する。また、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、変形の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点(オンセット点)の温度をTff1、その時の加圧ジグの高さをHf1とし、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、変形の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点(オフセット点)の温度をTff2、その時の加圧ジグの高さをHf2とし、下記式から求められる値を変形係数(Tfr)と定義する。上記測定は、例えば、フローテスター(島津製作所社製)において、サンプルを載せるダイの代わりに穴が開いていないSUS−316プレートを使用することで測定することができる。測定チャートの一例を図1に示す。
Tfr=(Hf2−Hf1)/(Tff2−Tff1)
本発明によると、上記測定から得られる変形開始点(Tf1)は耐ブロッキング性能、低温定着性能及び現像安定性能に相関し、変形終了点(Tf2)は耐高温オフセット性能、変形係数(Tfr)はグロス性能に相関する。
即ち、変形開始点(Tf1)が45℃未満である場合、低温定着性能は向上するが、現像機内でブロッキングが発生し、また、カブリや画像不良が発生する。一方、Tf1が60℃を超える範囲では現像安定性能は向上するが、十分な低温定着性能が得られない。
また、変形終了点(Tf2)が55℃未満であると高温オフセットが発生しやすくなり、定着領域が著しく小さくなる。Tf2が75℃を超える範囲では耐高温オフセット性能は向上するが、低温オフセットが発生しやすくなり低温定着性能が低下する。
変形係数(Tfr)が0.3未満であると十分なグロスが得られず、Tfrが0.7を超える範囲では、定着時にトナーが転写紙に染み込みすぎることによるグロス低下が発生する。
上記のトナー物性値は、結着樹脂のガラス転移点(Tg)と、ワックスの如き結着樹脂を可塑化する成分が結着樹脂に相溶する量とのバランスにより達成される。例えば、DSCで求められるTgが低いトナーはTf1及びTf2の値が小さくなりやすい。また、ワックスの如き可塑化成分が結着樹脂に相溶している量が多いトナーは、Tfrが0.7を超える値となりやすく、可塑化成分の相溶量が少ないトナーは、Tfrが0.3未満の値となりやすい。
これら可塑化成分の相溶量は、結着樹脂の組成や分子量分布、可塑化成分の組成及び添加量、トナーの製造方法等により制御することが可能である。一般に、結着樹脂のTgが小さいほど可塑化成分の相溶量は大きくなりやすく、分子量が小さいほど相溶量は大きくなりやすい。
可塑化成分としてワックスを使用した場合には、ワックスの組成として、融点が小さいほど可塑化成分の相溶量は大きくなりやすい。また、ワックスに含有されるアルキル基の炭素数が小さいほど可塑化成分の相溶量は大きくなりやすく、融点のオンセット値とオフセット値との温度幅が大きいほど、また融点とオンセット値との差の値が大きいほど相溶量は大きくなりやすい。一方、ワックスに含有されるアルキル基の炭素数が大きいほど結晶性が大きくなり、融点とオフセット値との差の値が大きいほど結晶性が大きくなりやすい。ワックスの種類としては、エステルワックスの如き極性ワックスの方が可塑化成分の相溶量は大きくなりやすく、パラフィンワックスの如き低極性ワックスは相溶量が小さくなりやすい。さらに、これらの可塑化成分は高温で結着樹脂との親和性が増大するため、高温の状態から急冷して製造されたトナーは、徐冷されたトナーよりも可塑化成分の相溶量は大きくなりやすい。
上記可塑化成分としては、以下に述べる有機溶媒類の他、ワックス類、結着樹脂の低分子量成分、その他樹脂のオリゴマーなどから、トナーに含有される樹脂成分によって好適に選ぶことができる。有機溶媒類としては、具体的には例えば、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等の長鎖アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソアミル等の酢酸アルキルエステル類;酢酸クレシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸フェニル、酢酸ナフチル、酢酸ベンジル等の酢酸エステル類;フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジドデシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル等のフタル酸エステル類;シクロヘキサノン等のケトン類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ビシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族または芳香族炭化水素類;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の硫黄・窒素含有有機化合物類等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、混合して使用することもできる。
本発明のトナーは、上記可塑化成分としてワックスを含有することが好ましい。本発明に用いることのできるワックスとしては、具体的には例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如きポリメチレンワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、長鎖アルコール、エステルワックス、ケトンワックス及びこれらのグラフト化合物、ブロック化合物の如き誘導体が挙げられる。
中でも、好ましく用いられるワックスとしては、炭素数10乃至20個のアルキル基を有する脂肪酸エステルワックスが挙げられる。これらワックスから液状脂肪酸の如き不純物を予め除去してあるものも好ましい。
また、上記エステルワックスと組み合わせて好ましく用いられるワックスとして、アルキレンを高圧下でラジカル重合或いは低圧下でチーグラー触媒または、その他の触媒を用いて重合した低分子量のポリメチレンワックス;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるポリメチレンワックス;アルキレンを重合する際に副生する低分子量アルキレンポリマーを分離精製したポリメチレンワックス、;一酸化炭素及び水素からなる合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素ポリマーの蒸留残分から、或いは、蒸留残分を水素添加して得られる合成炭化水素から、特定の成分を抽出分別したポリメチレンワックスが挙げられる。これらワックスには酸化防止剤が添加されていてもよい。
本発明において、特に好ましく用いられるワックスとしては脂肪酸エステルワックスが挙げられる。具体的には、下記式(I)〜(V)で示される構造を有する脂肪酸エステルワックスである。
(式中、a及びbは0〜4の整数であり、a+bは4である。R
1及びR
2は炭素数が1〜40の有機基であり、R
1とR
2の少なくとも1つ以上が炭素数10〜20のアルキル基である。m及びnは0〜20の整数であり、mとnは同時に0になることはない。)
(式中、a及びbは0〜3の整数であり、a+bは1〜3である。R
1及びR
2は炭素数が1〜40の有機基であり、R
1とR
2の少なくとも1つ以上が炭素数10〜20のアルキル基である。R
3は水素原子または炭素数が1〜20以上の有機基である。kは1〜3の整数であり、a+b+k=4である。m及びnは0〜20の整数であり、mとnが同時に0になることはない。)
(式中、R
1及びR
3は炭素数1〜40の有機基であり、R
1とR
3の少なくとも1つ以上は炭素数10〜20のアルキル基である。R
2は炭素数1〜20の有機基を示す。)
(式中、R
1及びR
3は炭素数1〜40の有機基であり、R
1とR
3の少なくとも1つ以上は炭素数10〜20のアルキル基である。R
2は炭素数1〜20の有機基を示す。)
(式中、aは0〜3の整数であり、bは1〜4の整数であり、a+bは4である。R
1は炭素数10〜20のアルキル基である。m及びnは0〜20の整数であり、mとnが同時に0になることはない)
R
1−COO−R
2 (VI)
(式中、R
1及びR
2は炭素数1〜20を有するアルキル基であり、R
1の炭素数とR
2の炭素数との合計が15〜40である。)
さらには、前記エステルワックスにおいて、トータルの炭素数が同一のエステル化合物を50〜95質量%(ワックス基準)含有している脂肪酸エステルワックスが中でも好ましい。上記のような含有量の値は、前記エステルワックスのオフセット値とオンセット値に影響を及ぼし、結着樹脂への該ワックスの相溶性に影響を及ぼす。トータルの炭素数が同一のエステル化合物の含有量は、下記に説明するガスクロマトグラフィー法(GC法)によって測定することができる。
ガスクロマトグラフィー法(GC法)による炭素数が同一のエステル化合物の含有量の測定には、GC−17A(島津製作所製)が用いられる。試料は、予めトルエンに1質量%濃度で溶解させた溶液1μlをオンカラムインジェクターを備えたGC装置に注入する。カラムは、0.5mm径×10m長のUltraAlloy−1(HT)を用いる。カラムは初め40℃から40℃/分の昇温スピードで200℃迄昇温させ、さらに15℃/分で、350℃迄昇温させ、次に7℃/分の昇温スピードで450℃迄昇温させる。キャリアガスは、Heガスを50kPaの圧力条件で流す。化合物種の同定は、別途炭素数が既知のアルカンを注入し同一の流出時間同士を比較したり、ガス化成分をマススペクトマトグラフィーに導入することで構造を同定する。エステル化合物の含有量はクロマトグラムの総ピーク面積に対するピーク面積の比を求めることで算出する。
本発明では、トナー製造時の結晶性と結着樹脂への相溶性との関係から、炭素数10乃至20のアルキル基を有する脂肪酸エステルワックスを用いることが好ましく、より好ましくは炭素数12乃至20である。
さらに、本発明で用いるエステルワックスにおいて、含有量が最も多いエステル化合物に含有されるアルキル基のうち、最も炭素数が大きいアルキル基の炭素数が10乃至20の範囲にあることが好ましい。
融点のオンセット値とオフセット値との差が20℃以内であるワックスが好ましく、より好ましくは10℃以内である。融点のオンセット値とオフセット値との差の値は、該ワックスの結着樹脂への相溶性に影響し、20℃を超える値であると現像性が低下する場合がある。
また、融点とオンセット値との差が10℃以内であるワックスが好ましく、より好ましくは5℃以内である。さらに、融点とオフセット値との差が10℃以内であるワックスが好ましく、より好ましくは5℃以内である。これら融点とオンセット値との差の値、融点とオフセット値との差の値は、該ワックスの結着樹脂への相溶性に影響し、各値が10℃を超える値であると現像性が低下する場合がある。
また、45乃至70℃に融点を有する低融点ワックスと、71乃至150℃に融点を有する高融点ワックスとを併せて用いることが好ましい。低融点ワックスとしては、融点のオンセット値とオフセット値との差が20℃以内であるワックスが好ましく、より好ましくは10℃以内である。高融点ワックスとしては71乃至150℃に融点を有することが好ましいが、より好ましくは71乃至110℃であることが好ましい。
高融点ワックスを低融点ワックスと組み合わせて用いる場合、該高融点ワックスは、融点のオンセット値とオフセット値との差が5乃至80℃、好ましくは8乃至50℃であることが好ましい。これら高融点ワックスとしては、ポリメチレンワックスが好ましい。
本発明において前記ワックスの好ましい含有量は、結着樹脂100質量部当りワックス1乃至40質量部(より好ましくは、2〜20質量部)含有されるのが良い。重合法によりトナーを生成する場合には、前記ワックスは、重合性単量体100質量部に対して1乃至40質量部(より好ましくは、2〜20質量部)配合することが好ましく、また、溶融混練粉砕法によりトナーを生成する場合には、ワックスはトナー中に結着樹脂100質量部当り1乃至10質量部(より好ましくは1〜6質量部)含有されていることが好ましい。
尚、上記の如きワックスの物性や構造を求めるにあたって、ワックスをトナーから抽出する場合には、抽出方法は特に制限されるものではなく、任意の方法が扱える。
一例を挙げると、所定量のトナーをトルエンにてソックスレー抽出し、得られたトルエン可溶分から溶剤を除去した後、クロロホルム不溶分を得る。その後、IR、NMR法などにより同定分析をする。また、定量に関しては、DSCなどにより定量分析を行う。
本発明のトナーは、示差走査熱量計(DSC)測定によるDSCチャートにおいて、45乃至80℃に融点(Tm)を有することが好ましい。上記範囲に融点を有することで、良好な耐オフセット性能を保持しつつ、低温定着性能とグロス性能を向上することが可能となる。
本発明において、前記ワックスの融点(Tm)、融点のオンセット値とオフセット値、トナーのガラス転移点(Tg)は、例えば示差走査熱量測定(DSC)装置(M−DSC TAインストルメンツ社製)を用いて測定することができる。
測定方法は、アルミパンに試料約6mg精秤し、リファレンスパンとして空のアルミパンを用い、窒素雰囲気下、モジュレーション振幅±0.6℃、周波数1/分で測定する。リバーシングヒートフロー曲線から、中点法によりガラス転移温度(Tg)を求め、融解ピークの頂点を融点(Tm)とする。2つ以上の融点を有する場合は、最も温度が低い融点を上記Tmとする。また、融解ピークにおいて、ピークの立ち上がり部分の最大傾斜の点で引いた接線とピーク前の外挿基線との交点の温度を、前記ワックスの融点のオンセット値とし、融解ピーク終了前の最大傾斜の点で引いた接線とピーク後の外挿基線との交点の温度を、前記ワックスの融点のオフセット値とする。
本発明において、前記トナーのTHF可溶分は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量(Mw)が50000乃至3000000であり、該Mwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2乃至100であることが好ましい。THF可溶分のMw及びMw/Mnが上記範囲にあることで、良好な低温定着性能を保持しつつ、現像安定性能を向上することができる。
本発明において、前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分は、GPC測定による分子量分布において分子量40000乃至80000に極大値を有することが好ましい。THF可溶分の分子量分布において極大値を上記範囲に有することにより、良好な低温定着性能、グロス性能及び耐オフセット性能を保持しつつ、現像安定性能がさらに良好になる。
上記THF可溶分のMw、Mw/Mn、分子量分布の極大値は、例えばゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー社製)を用いて測定することができる。
40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、東ソー社製或いは、昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgelG1000H(H XL),G2000H(H XL),G3000H(HXL),G4000H(H XL),G5000H(H XL),G6000H(H XL),G7000H(H XL),TSKguardcolumnの組み合わせが挙げられる。
試料は以下のようにして作製する。
試料をTHF中に入れて十分に混合し、12〜18時間静置する。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えば、マイショリディスクH−25−5 東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマン サイエンス ジャパン社製などが利用できる)を通過させたものを、GPCの試料とする。試料濃度は、樹脂成分の濃度が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
本発明に用いられる結着樹脂としては公知の結着樹脂のいずれも用いることができ、例えばスチレン−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル樹脂の如きスチレン系共重合体またはポリエステル樹脂が例示される。
本発明のトナーは、THF不溶分を5乃至90質量%有することが好ましい。より好ましくは5乃至70質量%であり、さらに好ましくは5乃至65質量%である。保存安定性能、現像安定性能と低温定着性能のバランスがさらに向上するためである。
トナーのTHF不溶分とは、THF溶媒に対して不溶性となった超高分子ポリマー成分(実質的に架橋ポリマー)の質量割合を示す。トナーのTHF不溶分とは、以下のように測定された値をもって定義する。
トナー1.0〜2.0gを秤量し(W1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙社製No.86R)を入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて10時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分溶液をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2g)。トナー中の焼却残灰分の重さを求める(W3g)。
焼却残灰分は以下の手順で求める。あらかじめ精秤した30mlの磁性るつぼに約2.0gの試料を入れ精秤し、試料の質量(Wa)gを精秤する。るつぼを電気炉に入れ約900℃で約3時間加熱し、電気炉中で放冷し、常温下でデシケータ中に1時間以上放冷し、るつぼの質量を精秤する。ここから、焼却残灰分(Wb)gを求める。
(Wb/Wa)×100=焼却残灰分含有率(質量%)
この含有率から試料中の焼却残灰分の質量(W3g)が求められる。
THF不溶分は下記式から求められる。
THF不溶分=〔{W1−(W3+W2)}/(W1−W3)〕×100(%)
本発明のトナーは、結着樹脂の他に、縮合系樹脂を添加しても良い。縮合系樹脂を添加することで、重合法トナーの場合、造粒性、帯電量の環境安定性、現像性及び転写性を向上させることが可能である。該縮合系樹脂は、数平均分子量(Mn)が3,000乃至80,000であることが好ましく、より好ましくは3,500乃至60,000、さらに好ましくは3,500乃至12,000である。該縮合系樹脂は、GPCにおける分子量分布のメインピーク値(Mp)が、分子量4,500乃至40,000の領域、より好ましくは分子量6,000乃至30,000の領域に存在することが良い。より好ましくは分子量6,000乃至20,000の領域である。
縮合系樹脂のMnが3,000未満の場合、連続画像出力においてトナー表面の外添剤が耐久によって埋没しやすく、転写性の低下を招きやすくなる。逆に、Mnが80,000を超える場合には、重合性単量体に縮合系樹脂を溶解するのに時間を多く費やしてしまう。さらに、重合性単量体組成物の粘度が上昇し、粒径が小さく且つ、粒度分布の揃ったトナーが得にくくなる。
該縮合系樹脂はMw/Mnが1.2乃至3.0、より好ましくは1.5乃至2.5が良い。Mw/Mnが1.2未満の場合には、トナーの多数枚耐久性及び耐オフセット性が低下し、3.0を超える場合には、低温定着性の面で、範囲内のものよりも、若干劣ってしまう。
該縮合系樹脂はガラス転移点(Tg)が、50乃至100℃、好ましくは50乃至95℃が良い。より好ましくは55乃至90℃が良い。ガラス転移点が50℃未満の場合には、トナーの耐ブロッキング性が低下する。ガラス転移点が100℃を超える場合には、トナーの耐低温オフセット性が低下する。尚、Tgは中点法により求められる値を示す。
該縮合系樹脂の酸価(mgKOH/g)は、0.1乃至35、好ましくは3乃至35、より好ましくは4乃至35、さらに好ましくは5乃至30である。酸価が0.1未満の場合には、トナーの帯電量の立ち上がりが遅く、カブリが生じやすくなる。酸価が35を超える場合には、高温高湿下に放置した後のトナーの摩擦帯電特性が変動しやすく、連続画像出力において画像濃度が変動しやすくなる。さらに、縮合系樹脂の酸価が35を超える場合には、縮合系樹脂のポリマー相互間の親和力が強くなるために縮合系樹脂が重合性単量体に溶解しにくくなり、均一な重合性単量体組成物を調製するのに時間がかかるようになる。
該縮合系樹脂の水酸基価(mgKOH/g)は0.2乃至50、好ましくは5乃至50、より好ましくは7乃至45であるのが良い。水酸基価が0.2未満の場合には、トナー粒子表面への該縮合系樹脂の局在化が起こりにくくなる。水酸基価が50を超える場合、最適範囲内のものと比較すると、高温高湿下において放置した後のトナーの帯電量特性が若干低くなる傾向が見られ、連続画像出力において画像濃度が変動しやすい。尚、該縮合系樹脂の抽出は特に制限されるものではなく、任意の方法が扱える。
該縮合系樹脂は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部用いられることが好ましく、より好ましくは1〜15質量部である。
樹脂の酸価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を酸価といい、次によって試験を行う。
(1)試薬
(a)溶剤の調製
試料の溶剤としては、エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)を用いる。これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬として0.1モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液の調製
フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)0.1モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液の調製
水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJISK 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
(2)操作
試料1〜20gを正しくはかりとり、これに溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後、これを0.1モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いた時を中和の終点とする。
(3)計算式
次の式によって酸価を算出する。
A=B×f×5.611/S
A:酸化(mgKOH/g)
B:0.1モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:0.1モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
樹脂の水酸基価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
試料1gを規定の方法によってアセチル化する時、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を水酸基価といい、次の試薬、操作及び計算式によって試験を行う。
(1)試薬
(a)アセチル化試薬の調製
無水酢酸25mlをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜる(場合によっては、ピリジンを追加しても良い)。アセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス及び酸の蒸気に触れないようにし、褐色びんに保存する。
(b)フェノールフタレイン溶液の調製
フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)0.2モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液の調製
水酸化カリウム35gをできるだけ少量の水に溶かし、エチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJISK 8006によって行う。
(2)操作
試料0.5〜20gを丸底フラスコに正しくはかりとり、これにアセチル化試薬5mlを正しく加える。フラスコの口に小さなロートをかけ、95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。この時、フラスコの首が浴の熱を受けて温度の上昇するのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円盤をフラスコの首の付け根にかぶせる。1時間後フラスコを浴から取り出し、放冷後ロートから水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。さらに分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後、エチルアルコール5mlでロート及びフラスコの壁を洗い、フェノールフタレイン溶液を指示薬として0.2モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液で滴定する。尚、本試験と並行して空試験を行う。場合によっては、指示薬としてKOH−THF溶液にしても構わない。
(3)計算式
次の式によって水酸基価を算出する。
A={(B−C)×f×28.05/S}+D
A:水酸基価(mgKOH/g)
B:空試験の0.5モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液の使用 量(ml)
C:本試験の0.5モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液の使用 量(ml)
f:0.5モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
D:酸価(mgKOH/g)
本発明に用いられる縮合系樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、セルロースの如き樹脂を用いることができる。より好ましくは材料の多様性からポリエステルが望まれる。
該縮合系樹脂として用いられるポリエステル及び該ワックスとして用いられるエステルワックスの製造方法としては、例えば、酸化反応による合成法、カルボン酸及びその誘導体からの合成、マイケル付加反応に代表されるエステル基導入反応、カルボン酸化合物とアルコール化合物からの脱水縮合反応を利用する方法、酸ハロゲン化物とアルコール化合物からの反応、エステル交換反応で製造される。触媒としては、エステル化反応に使う一般の酸性、アルカリ性触媒、例えば酢酸亜鉛、チタン化合物などでよい。その後、再結晶法、蒸留法などにより高純度化させてもよい。
特に好ましい製造方法は、原料の多様性、反応のしやすさからカルボン酸化合物とアルコール化合物からの脱水縮合反応である。
縮合系樹脂としてポリエステルを用いる際のポリエステルの組成について以下に説明する。
ポリエステルは、全成分中45〜55モル%がアルコール成分であり、55〜45モル%が酸成分であることが好ましい。
アルコール成分としては、エチルグリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記式(VI)
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基を示し、x,yはそれぞれ1以上の整数を示し、且つx+yの平均値は2〜10を示す。)で示されるビスフェノール誘導体、または下記式(VII)
2価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸,ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−4,4P’−ジカルボン酸の如きベンゼンジカルボン酸類またはその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グリタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリエチレンジカルボン酸、マロン酸の如きアルキルジカルボン酸類またはその無水物、またさらに炭素数6〜18のアルキル基またはアルケニル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
特に好ましいアルコール成分としては前記(VI)式で示されるビスフェノール誘導体であり、酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸またはその無水物、こはく酸、n−ドデセニルコハク酸、またはその無水物、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸の如きジカルボン酸が挙げられる。
該縮合系樹脂は、2価のジカルボン酸及び2価のジオールから合成することにより得ることが可能であるが、場合により、3価以上のポリカルボン酸またはポリオールを本発明に悪影響を与えない範囲で少量使用しても良い。
3価以上のポリカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸類、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシルプロパン、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−メチレンカルボキシルプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸及びそれらの無水物が挙げられる。
3価以上のポリオールとしては、スルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ショ糖、1,2,4−メタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
本発明のトナーは、荷電制御剤を使用しても良い。
トナーを負荷電性に制御する荷電制御剤としては、例えば、有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、ノンメタルカルボン酸系化合物及びその誘導体が挙げられる。
また、トナーを正荷電性に制御する荷電制御剤としては、下記の物質がある。例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;これらを単独或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ニグロシン系、4級アンモニウム塩の如き荷電制御剤が特に好ましく用いられる。
荷電制御剤は、トナー中の結着樹脂100質量部当り、0.01乃至20質量部、より好ましくは0.5乃至10質量部となる様に含有させるのが良い。
本発明のトナーは、着色剤を含有している。黒色着色剤としては、カーボンブラック、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
イエロー着色剤としては、顔料系としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー 3,7,10,12〜15,17,23,24,60,62,74,75,83,93〜95,99,100,101,104,108〜111,117,123,128,129,138,139,147,148,150,166,168,169,177,179,180,181,183,185,191:1,191〜193,199が好適に用いられる。染料系としては、例えば、C.l.ソルベントイエロー33,56,79,82,93,112,162,163、C.I.ディスパースイエロー42,64,201,211が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5〜7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254、C.I.ピグメントバイオレッド19が特に好ましい。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が特に好適に利用される。
これらの着色剤は、単独または混合し、さらには固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は結着樹脂100質量部に対し1乃至20質量部となる様に添加して用いられる。
本発明においては、トナーにおける各種の特性向上を目的とした外添剤が用いられる。外添剤としては、耐久性の点から、トナーの体積平均径の1/5以下の粒径であるものが好ましい。添加剤の粒径とは、電子顕微鏡におけるトナーの表面観察により求めたその平均粒径を意味する。これら特性付与を目的とした外添剤としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
流動性付与剤としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ハイドロタルサイトの如き金属酸化物、カーボンブラック、フッ化カーボンが挙げられる。それぞれ、疎水化処理を行ったものが、より好ましい。
研磨剤としては、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化クロムの如き金属酸化物、窒化ケイ素の如き窒化物、炭化ケイ素の如き炭化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの如き金属塩が挙げられる。
滑剤としては、フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンの如きフッ素系樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムの如き脂肪酸金属塩が挙げられる。
荷電制御性粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの如き金属酸化物、カーボンブラックが挙げられる。
これら外添剤は、トナー粒子100質量部に対し、0.1〜10質量部が用いられ、好ましくは、0.1〜5質量部が用いられる。これら外添剤は、単独で用いても良く、また複数を併用しても良い。
本発明のトナーは、フロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、個数平均粒子径(D1)(μm)は3乃至7μmであることが好ましく、且つ、該D1と重量平均粒子径(D4)との比(D4/D1)が1.0乃至1.3であることが好ましい。
さらに、該トナーの平均円形度(Cav)が0.920乃至0.995であることが好ましく、より好ましくは該Cavが0.950乃至0.995であることが好ましい。より好ましくはCavが0.950乃至0.995で、さらに好ましくはCavが0.970乃至0.995であることが望まれる。
個数平均粒子径(D1)が3乃至7μmであるトナーは、画像の輪郭部分、特に文字画像やラインパターンの現像での再現性に優れたものである。しかし、一般にトナーを小粒径化すると必然的に微小粒子のトナーの存在率が高くなるため、トナーを均一に帯電させることが困難となり画像カブリを生じるばかりか、静電潜像担持体表面や現像剤担持体への付着力が高くなり、結果として現像特性の低下が生じてしまいやすい。
しかし、トナーの円形度頻度分布の平均円形度(Cav)を0.920乃至0.995、好ましくは0.950乃至0.995、より好ましくは0.970乃至0.995とすることにより、従来では困難であった小粒径を呈するトナーの転写性が大幅に改善されると共に現像能力も格段に向上する。
本発明における平均円形度(Cav)は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定を行い、測定された粒子の円形度(Ci)を下式により求め、さらに下式で示すように測定された全粒子の円形度(Ci)の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
尚、本発明で用いられる測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度(Ci)を算出後、平均円形度(Cav)及び円形度標準偏差値(SDc)の算出に当たって、粒子を得られた円形度(Ci)によって、円形度0.400〜1.000の範囲を0.010間隔で、0.400以上0.410未満、0.410以上0.420未満・・・0.990以上1.000未満及び1.000の如くに61分割し、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度(Cav)及び円形度標準偏差(SDc)の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出されるCav及びSDcの各値と、上述した各粒子の円形度(Ci)を直接用いる算出式によって算出されるCav及びSDcの各値との誤差は、非常に少なく、実質的に無視できる程度であり、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度(Ci)を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこの様な算出法を用いても良い。
また、個数平均粒子径(D1)とは、個数基準の粒径頻度分布の平均値を表し、粒度分布の分割点iでの粒径(中心値)をdi、頻度をfiとすると下式の如く表される。
本発明における粒度分布の分割点は、下表に示されるとおりである。
円形度(Ci)及びD1、D4/D1の具体的な測定方法としては、ノニオン型界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlにトナー約5mgを分散させ分散液を調製し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜20000個/μlとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
次に、本発明のトナーの製造方法について説明する。
本発明の物性を有するトナーの好ましい製造方法としては、融点(Tm)を有するワックスを有するトナー粒子を、水系媒体中において(Tm+10)℃以上に加熱する工程、(Tm+10)乃至(Tm−15)℃の温度領域を0.01乃至0.5℃/分の冷却速度で冷却する工程を有する製造方法が挙げられる。
ワックスを有するトナー粒子を形成する方法としては、粉砕法等の公知の方法によりトナー粒子を形成した後、これを水系媒体中に分散して上記の加熱と冷却の工程を経てもよいし、公知の懸濁重合法、乳化重合法、乳化分散法、凝集融着法といった水系媒体中で直接トナー粒子を形成する方法において、トナー粒子形成時に上記の工程を経てもよい。
水系媒体中においてワックスの融点(Tm)よりも10℃以上高い温度に加熱することで、ワックス成分と結着樹脂成分の相溶性を増大させることと、水とワックスの極性の違いから、トナー表面にワックス成分が露出することを抑制することが可能となる。次いで(Tm+10)乃至(Tm−15)℃の温度領域を0.01乃至0.5℃/分(好ましくは0.01乃至0.1℃/分)の冷却速度でゆっくりと冷却してワックス成分の結晶化を促進させることにより、低温定着性能への寄与度が大きいワックス成分を結着樹脂に十分に相溶せしめ、耐オフセット性能への寄与度が大きいワックス成分はトナー中での結晶性を高めることが可能となり、本発明の物性を有するトナーが好適に製造される。
乾燥工程においては、上記Tm以下の温度で乾燥することが好ましく、さらには(Tm−15)℃以下の温度であることが望ましい。上記温度で乾燥するために、流動層乾燥や減圧乾燥を行ってもよい。Tm以上の温度で乾燥する場合には、乾燥後の冷却工程において、(Tm+10)乃至(Tm−15)℃の温度領域を0.01乃至0.5℃/分(好ましくは0.01乃至0.1℃/分)の冷却速度でゆっくりと冷却することが好ましい。
水に再分散させる場合には、分散安定剤として、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイド等を用いることが好ましい。
上記分散安定剤に有機系化合物、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンを併用しても構わない。
これら分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して0.01〜2.0質量部を使用することが好ましい。
さらに、これら分散安定剤の微細化のため0.001〜0.1質量%の界面活性剤を併用しても良い。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用できる。例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
好ましいトナーの製造方法としては懸濁重合法が挙げられる。さらに一旦得られた重合粒子にさらに単量体を吸着せしめた後、重合開始剤を用い重合せしめるシード重合方法も本発明に好適に利用することができる。この時、吸着せしめる単量体中に、極性を有する化合物を分散或いは溶解させて使用することも可能である。
トナーの製造方法として懸濁重合を利用する場合には、以下の如き製造方法によって直接的にトナーを製造することが可能である。単量体中にワックス、着色剤、重合開始剤、架橋剤、その他の添加剤を加え、ホモジナイザー、超音波分散機等によって均一に溶解または分散せしめた単量体組成物を形成し、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウムまたはリンを含有する分散安定剤を有する水系媒体中に通常の攪拌機またはホモミキサー、ホモジナイザーにより分散せしめる。好ましくは単量体組成物の液滴が所望のトナーのサイズを有するように攪拌速度・時間を調整し、造粒する。その後は、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の攪拌を行えば良い。重合温度は30℃以上、通常50〜95℃の温度に設定して重合を行う。重合反応後半に昇温しても良く、必要に応じpHを変更しても良い。
本発明では、重合終了時点でトナー粒子が(Tm+10)℃以上の温度に加熱されていてもよいし、重合終了後、冷却されたトナー粒子を再度加熱して(Tm+10)℃以上の温度に加熱してもよい。(Tm+10)℃以上の温度から(Tm−15)℃以下の温度まで冷却する際に、0.01乃至0.5℃/分の冷却速度で冷却し、トナー粒子を洗浄し、乾燥することが好ましい。
前記単量体組成物は、単量体と着色剤とを有する着色剤組成物を形成する工程、該着色剤組成物を分散する工程を経た後、必要に応じてその他の添加剤を加えて形成されることが好ましい。着色剤の分散性を向上させる目的で、荷電制御剤や公知の顔料分散剤、その他樹脂を添加してもよい。
また、上記着色剤組成物はさらにワックスを有することが好ましい。
造粒中の水系媒体中のpHは特に制約は受けないが、好ましくは、pH4.5〜13.0、さらに好ましくは4.5〜12.0、特に好ましくは4.5〜11.0、最も好ましくは4.5〜7.5である。pHが4.5未満の場合は分散安定剤の一部に溶解が起こり、分散安定化が困難になり、造粒できなくなることがある。またpHが13.0を超える場合はトナー中に添加されている成分が分解されてしまうことがあり、十分な帯電能力が発揮できなくなることがある。造粒を酸性領域で行った場合には、分散安定剤に由来する金属のトナー中における含有量が過剰となるのを抑制することができ、本発明の規定を満たすようなトナーが得られやすくなる。
また、トナー粒子の洗浄をpH3以下、より好ましくは、pH1.5以下の酸を用いて行うことが好ましい。トナー粒子の洗浄を酸で行うことにより、トナー粒子表面に存在する分散安定剤を低減することができる。洗浄に用いる酸としては、特に限定されるものではなく、塩酸、硫酸の如き無機酸を用いることができる。
本発明に用いられる分散安定剤としては、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイドが挙げられる。
また、分散安定剤としては、少なくともマグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、リンのいずれかが含まれているものが用いられるが、好ましくは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、リンのいずれかが含まれていることが望まれる。
上記分散安定剤に有機系化合物、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンを併用しても構わない。
これら分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して0.01〜2.0質量部を使用することが好ましい。
さらに、これら分散安定剤の微細化のため0.001〜0.1質量%の界面活性剤を併用しても良い。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用できる。例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
本発明のトナーを重合法で製造する際に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。
該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトンが挙げられる。
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテルが挙げられる。
本発明においては、上記した単官能性重合性単量体を単独或いは、2種以上組み合わせて、または、上記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用する。多官能性重合性単量体は架橋剤として使用することも可能である。
上記した重合性単量体の重合の際に用いられる重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/または水溶性開始剤が用いられる。例えば、油溶性開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルの如きアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの如きパーオキサイド系開始剤が挙げられる。
水溶性開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄または過酸化水素が挙げられる。
本発明においては、重合性単量体の重合度を制御するために、連鎖移動剤、重合禁止剤等をさらに添加し用いることも可能である。
また本発明においては、架橋剤を用いて架橋を有する樹脂とすることもでき、架橋剤として、2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物を用いることができる。例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンの如きジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらは単独もしくは混合物として用いられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これは、本発明を何ら限定するものではない。
(実施例1)
・スチレン 100質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 12質量部
・荷電制御剤 6質量部
(ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
からなる混合物を、アトライター(三井金属社製)を用いて3時間分散し、顔料分散液を調整した。
高速撹拌装置TK−ホモミキサーを備えた2リットルの四つ口フラスコ中に、イオン交換水350質量部と、0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液225質量部を添加して、ホモミキサーの回転数を12000rpmに調整し、65℃に加温せしめた。ここに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液34質量部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
・上記分散液 63質量部
・スチレン 28質量部
・n−ブチルアクリレート 19質量部
・ジビニルベンゼン 0.12質量部
・飽和ポリエステル樹脂 5質量部
(テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA共重合体、酸価15mgKOH/g)
・エステルワックス1 6質量部
・ポリメチレンワックス1 2質量部
からなる混合物を、撹拌下65℃で5分間保持し、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.5質量部を添加した単量体組成物を前記水系分散媒体中に投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後、高速攪拌装置から通常のプロペラ撹拌装置に変更し、攪拌装置の回転数を150rpmに維持し、内温65℃で5時間重合し、内温を80℃に昇温して5時間時間重合を行った。重合終了後、回転を保持しつつ内温を0.08℃/分の冷却速度で28℃まで冷却した。内温を26〜30℃に保持しつつ、水系分散媒体中に希塩酸を添加し、難水溶性分散剤を溶解した。さらに洗浄、乾燥を行ってトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、一次粒径8nmのシリカ100質量部にシリコーンオイル10質量部とヘキサメチルジシラザン12質量部で表面処理した疎水性シリカ(BET比表面積265m2/g)2質量部を外添して、重量平均粒子径(D4)5.7μmのトナー1を得た。
トナー1を加圧成型器に0.2gはかりとり、常温常圧環境下において200kgfの荷重で2分間加圧成型し、直径約8mm、高さ約2mmの円柱状試料を調整した。フローテスター(島津製作所社製)において、サンプルを載せるダイの代わりに穴が開いていないSUS−316プレートに改造した装置に上記円柱状試料をセットした。これを35℃で5分間保持した後、加圧ジグに10kgfの荷重を与え、昇温速度1℃/分で120℃まで円柱状試料を昇温し、試料に接する加圧ジグの変位量を計測した。得られたチャートから、Tf1、Tf2を求めたところ、Tf1は49.5℃、Tf2は62.4℃であった。また、Tff1とHf1、Tff2とHf2の値から求めたTfrの値は0.38であった。
表1には本実施例に用いたワックスの物性を示し、トナー1の物性を表3及び表4に示す。
このトナー1を後述する試験方法に従って評価を行った。結果を表5に示す。低温定着性能、耐オフセット性能ともに優れたものであった。また、現像安定性能に関しても、初期画像及び耐久画像共に画像濃度が高く、カブリも見られず鮮明で高画質なものであった。耐久後のトナー帯電量も初期と比べて低下することがなかった。さらに、保存安定性能に関しても全く優れていた。
〔現像安定性試験〕
市販のカラーレーザープリンターLBP2160(キヤノン社製)を以下のように改造した改造機を用いて評価した。LBP2160の改造機は、シアンカートリッジを図2のように改造した。図2において、現像装置4は、一成分現像剤として非磁性一成分トナー8を収容した現像剤容器13と、現像剤容器13内の長手方向に延在する開口部にトナー担持体5とを備えており、トナー担持体5は、直径16mmのアルミニウム製スリーブ表面にガラスビーズ(#600)による定形ブラスト処理を施し、表面粗さRzが約2.5μmとしたものを用いた。トナー担持体5は、画像形成時、潜像担持体1との間隙が330μmになるように設定し、潜像担持体1の周速120mm/sに対して1.7倍の周速204mm/sで回転させている。
トナー担持体5の上方位置には、リン青銅の金属薄板を基体とし、トナー担持体5への当接面側にウレタンゴムを接着したものからなる規制部材としての弾性ブレード7が、ブレード支持板金12に支持され、自由端側の先端近傍をトナー担持体5の外周面に面接触にて当接するように設けられており、その当接方向としては、当接部に対して先端側がトナー担持体5の回転方向上流側に位置するいわゆるカウンター方向になっている。また、トナー担持体5に対する当接圧は24.5N/m(25g/cm)に設定した。
弾性ローラ6は、芯金6a上にポリウレタンフォームを設けた直径12mmの弾性ローラである。この弾性ローラ6のトナー担持体5に対する当接幅2.8mm、相対速度130mm/sとなるように設定した。
トナー帯電ローラ11はNBR製のゴムローラであり、表面のRa/Rz=0.13(Ra=1.1、Rz=8.5)であって、抑圧部材12に取り付けられている。そしてこの抑圧部材12によるトナー帯電ローラ11のトナー担持体5への当接により、0.40mmのニップを形成している。トナー帯電ローラ11は、トナー担持体5に従動している。
トナー帯電ローラ11のバイアスは、電源10によってトナー担持体5と潜像担持体1の両者間に印加された直流を重畳した交流電圧(現像AC電圧)を分岐して印加されている。トナー担持体5に印加されるバイアスは直流電圧:Vdc=−300VにAC:矩形波Vpp=2200V、f=2200Hzを重畳したものである。トナー帯電ローラ11に印加されるバイアスはVdc=−1200VにAC:矩形波Vpp=1000V、f=2200Hzを重畳したものである。尚、トナー担持体5に印加されるバイアスとトナー帯電ローラ11に印加されるバイアスの位相差はない。
上記改造機のシアンカートリッジにトナー1を300g充填し、印字比率5%で3000枚の連続プリントの試験をした。尚、試験は30℃/85%RHの環境で行った。いずれの試験においても、10枚目と3000枚目にベタ黒パターンをプリントして画像濃度と画像カブリを測定した。
〔画像濃度の測定方法〕
現像安定性能は以下の基準で評価した。画像濃度の測定は「マクベス反射濃度計RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
A:10枚目と3000枚目の画像濃度変化及びトナー帯電量変化がそれぞれ5%未満
B:10枚目と3000枚目の画像濃度変化が5%以上10%未満
C:10枚目と3000枚目の画像濃度変化が10%以上15%未満
D:10枚目と3000枚目の画像濃度変化が15%以上20%未満
E:10枚目と3000枚目の画像濃度変化が20%以上
〔画像カブリの測定方法〕
画像カブリは以下の基準で評価した。「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用いて、プリント画像の非画像部の反射率(%)を測定する。得られた反射率を、同様にして測定した未使用のプリントアウト用紙(標準紙)の反射率(%)から差し引いた数値(%)を用いて評価した。数値が小さい程、画像カブリが抑制されていることになる。
A:0.5未満
B:0.5以上、1.0未満
C:1.0以上、5.0未満
D:5.0以上
〔定着性試験〕
転写紙(坪量75g/m2、A4サイズ紙)に未定着のベタ画像(トナーの載り量:0.6mg/cm2)を形成した。市販のフルカラーレーザービームプリンター(LBP−2020,キヤノン製)から取り外した定着ユニットを定着温度が調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。常温常湿下、プロセススピードを180mm/sに設定し、130℃〜220℃の範囲で設定温度を5℃おきに変化させながら、各温度で上記トナー画像の定着を行った。低温オフセットが観察されなくなった温度を耐オフセット性の低温側開始点とし、目視で高温オフセットが観察された温度、或いは、定着器への転写紙の巻きつきが発生した温度よりも5℃低い温度を高温側終了点とした。
また、得られた定着画像を50g/cm2の加重を欠けたシルボン紙で摺擦し、摺擦前後の濃度低下率が5%以下となる定着温度を定着性の低温側開始点とし、グロス最大値となる点を高温側終了点とした。高温オフセット、或いは、受像紙の巻きつきが発生した場合には、上記と同じ温度を高温側終了点とした。
〔保存安定性試験〕
トナー10gを100cm3のポリカップに入れ、45℃及び50℃で7日間放置した後、目視で評価した。
保存性安定性の評価基準
A:凝集物が全く見られない。
B:凝集物がわずかに見られる。
C:凝集物がやや多く見られるが容易に崩れる。
D:殆どが凝集し、容易には崩れない。
(実施例2)
表2に示すワックスを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。実施例1と同様にして、重量平均粒子径(D4)5.8μmのトナー2を作成し、同様の評価を行った。トナー2の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。実施例1と比較して、高温側の定着領域においてトナーが紙に染み込むことによるグロス低下が発生し、グロス性能がやや低下するものの、それ以外は全く問題がなく良好であった。
(実施例3)
表2に示すワックスを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。実施例1と同様にして、重量平均粒子径(D4)5.8μmのトナー3を作成し、同様の評価を行った。トナー3の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。実施例1と比較して、高温側の定着領域においてトナーが紙に染み込むことによるグロス低下が発生し、グロス性能がやや低下した。また、50℃における保存安定性能がやや低下したが、それ以外は全く問題がなく良好であった。
(実施例4)
表2に示すワックスを用いた以外は実施例1と同様にして重量平均粒子径(D4)5.9μmのトナー4を作成し、同様の評価を行った。トナー4の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。実施例1と比較して、低温定着性能とグロス性能がやや低下するものの、それ以外は全く問題がなく良好であった。
(実施例5)
表2に示すワックスを用いた以外は実施例1と同様にして重量平均粒子径(D4)5.9μmのトナー5を作成し、同様の評価を行った。トナー5の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。実施例1と比較して、高温側の定着領域においてトナーが紙に染み込むことによるグロス低下が発生し、グロス性能がやや低下した。また、50℃における保存安定性能が低下し、現像安定性能がやや低下したが、実用上問題なく良好であった。
(実施例6)
・エステルワックス1 300質量部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 12質量部
・イオン交換水 800質量部
からなる混合物を85℃にて高圧剪断により乳化して、平均粒径310nmのワックス分散液1を調整した。
・ポリメチレンワックス1 300質量部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 12質量部
・イオン交換水 800質量部
からなる混合物を90℃にて高圧剪断により乳化して、平均粒径320nmのワックス分散液2を調整した。
・ワックス分散液1 30質量部
・ワックス分散液2 10質量部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.05質量部
・イオン交換水 100質量部
からなる混合物を90℃に昇温し、
・8%過酸化水素水溶液 0.4質量部
・8%アスコルビン酸水溶液 0.4質量部
からなる混合物を添加した。これに、
・スチレン 86.4質量部
・n−ブチルアクリレート 18.4質量部
・アクリル酸 2.9質量部
・オクタンチオール 0.1質量部
・ヘキサンジオールジアクリレート 0.2質量部
からなる混合物と、
・8%過酸化水素水溶液 2質量部
・8%アスコルビン酸水溶液 2質量部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.03質量部
・イオン交換水 10質量部
からなる混合物とを、それぞれ別に6時間かけて添加し、さらに1時間重合して樹脂粒子分散液1を調整した。
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.05質量部
・イオン交換水 100質量部
からなる混合物を90℃に昇温し、
・8%過酸化水素水溶液 0.4質量部
・8%アスコルビン酸水溶液 0.4質量部
からなる混合物を添加した。これに、
・スチレン 86.3質量部
・n−ブチルアクリレート 11.8質量部
・アクリル酸 2質量部
・2−メルカプトエタノール 0.005質量部
・ヘキサンジオールジアクリレート 0.1質量部
からなる混合物と、
・8%過酸化水素水溶液 2質量部
・8%アスコルビン酸水溶液 2質量部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.03質量部
・イオン交換水 10質量部
からなる混合物とを、それぞれ別に6時間かけて添加し、さらに1時間重合して樹脂粒子分散液2を調整した。
・4,4’−メチレンビス{2−[N−(4−クロロフェニル)アミド]−3−ヒドロキシナフタレン} 5質量部
・アルキルナフタレンスルホン酸塩 1質量部
・イオン交換水 20質量部
からなる混合物を、アトライター(三井金属社製)を用いて3時間分散し、荷電制御剤分散液を調整した。
・樹脂粒子分散液1 96質量部
・樹脂粒子分散液2 4質量部
・荷電制御剤分散液 2質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3分散液 8質量部
(EP−700 Blue GA、大日精化社製)
からなる混合物を撹拌しながら、
・2%硫酸アルミニウム水溶液 30質量部
を1時間かけて滴下した。58℃に昇温し、これに
・樹脂粒子分散液2 8質量部
・荷電制御剤分散液 2質量部
をそれぞれ添加した。さらに、
・5%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液 40質量部
を添加して95℃まで昇温し、3時間保持してトナー粒子分散液を調整した。
このトナー粒子分散液を冷却速度2℃/分で75℃まで冷却し、さらに、冷却速度0.05℃/分で40℃まで冷却した後、さらに冷却速度2℃/分で25℃まで冷却し、洗浄、乾燥してトナー粒子を得た。実施例1と同様にして、重量平均粒子径(D4)4.8μmのトナー6を作成し、同様の評価を行った。トナー6の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。実施例1と同様に、低温定着性能、耐オフセット性能ともに優れたものであった。また、現像安定性能、保存安定性能に関しても全く優れていた。
(実施例7)
実施例6における樹脂粒子分散液1の調整において、ワックス分散液1の添加量を50質量部とし、ワックス分散液2を使用しなかった以外は実施例6と同様にしてトナー7を作成し、同様の評価を行った。トナー7の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。実施例1と比較して、高温側の定着領域においてトナーが紙に染み込むことによるグロス低下が発生し、グロス性能がやや低下した。また、50℃における保存安定性能が低下し、現像安定性能がやや低下したが、実用上問題なく良好であった。
(実施例8)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 334質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 334質量部
・イソフタル酸 230質量部
・テレフタル酸 46質量部
・ジブチル錫オキサイド 1.5質量部
からなる混合物を230℃で6時間反応し、10〜15mmHgの減圧下4時間反応させた。160℃に冷却し、これに
・無水フタル酸 16質量部
を加え2時間反応させた後、80℃に冷却して
・酢酸エチル 1000質量部
・イソホロンジイソシアネート 77質量部
からなる混合物を加えて2時間反応させ、ポリエステル1を得た。
・上記ポリエステル1 220質量部
・イソホロンジアミン 5質量部
からなる混合物を50℃で2時間反応させ、ポリエステル2を得た。
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 724質量部
・イソフタル酸 230質量部
・テレフタル酸 46質量部
・ジブチル錫オキサイド 1.5質量部
からなる混合物を230℃で6時間反応し、10〜15mmHgの減圧下4時間反応させて、ポリエステル3を得た。
・ポリエステル2 30質量部
・ポリエステル3 50質量部
・メチルエチルケトン 80質量部
・酢酸エチル 80質量部
・エステルワックス1 5質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5質量部
・荷電制御剤 2質量部
(ジタ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
からなる混合物を、アトライター(三井金属社製)を用いて3時間分散し、分散液を調整した。
高速撹拌装置TK−ホモミキサーを備えた2リットルの四つ口フラスコ中に、イオン交換水350質量部と、0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液225質量部を添加して、ホモミキサーの回転数を12000rpmに調整し、65℃に加温せしめた。ここに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液34質量部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
・上記分散液 252質量部
を投入し、撹拌下65℃で回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後、高速攪拌装置から通常のプロペラ撹拌装置に変更し、攪拌装置の回転数を150rpmに維持し、内温を95℃に昇温して3時間保持してトナー粒子分散液を調整した。
このトナー粒子分散液を、回転を保持しつつ内温を0.25℃/分の冷却速度で28℃まで冷却した。内温を26〜30℃に保持しつつ、水系分散媒体中に希塩酸を添加し、難水溶性分散剤を溶解した。さらに洗浄、乾燥を行ってトナー粒子を得た。
実施例1と同様にして、重量平均粒子径6.8μmのトナー8を作成し、同様の評価を行った。トナー8の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。実施例1と比較して、高温側の定着領域においてトナーが紙に染み込むことによるグロス低下が発生し、グロス性能がやや低下した。また、現像安定性能がやや低下したが、実用上は問題ないレベルであった。
(比較例1)
実施例2において、重合終了後の冷却速度を8℃/分とした以外は実施例2と同様にしてトナー粒子を得た。
実施例1と同様にして、重量平均粒子径5.8μmのトナー9を作成し、評価を行った。トナー9の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。Tf1の値が小さく、低温定着性能は良好であったが、Tfrの値が小さく、高温側の定着領域においてトナーが紙に染み込むことによるグロス低下が発生し、グロス性能が低下した。また、Tf2の値が小さいため、実施例1と比較して低い定着温度で高温オフセットが発生した。さらに、初期画像は濃度がやや低い程度であったが、Tf1の値が小さいことに起因して、3000枚耐久後の画像では明らかな画像濃度の低下が見られ、画像カブリも初期に比べて大きく増大していた。さらに、保存安定性能も劣っていた。
(比較例2)
エステルワックス1を使用せず、単量体組成物調整の工程において、スチレン添加量を28質量部から19質量部へ、n−ブチルアクリレートの添加量を19質量部から28質量部へ、重合開始剤の添加量を1.5質量部から8.5質量部へ変化させた以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。
実施例1と同様にして、重量平均粒子径5.9μmのトナー10を作成し、評価を行った。トナー10の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。Tf1及びTfrの値が小さいことに起因して、低温定着性能、グロス性能は良好であったが、実施例1と比較して現像安定性能、保存安定性能が劣っていた。
(比較例3)
エステルワックス1の代わりにエステルワックス5を使用し、重合開始剤の添加量を0.8質量部とした以外は実施例2と同様にしてトナー粒子を得た。
実施例1と同様にして、重量平均粒子径5.9μmのトナー11を作成し、評価を行った。トナー11の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。Tf1及びTf2の値が大きいことに起因して、保存安定性能は良好であったが、低温定着性能及びグロス性能が劣っていた。
(比較例4)
実施例6において、重合終了後の冷却速度を8℃/分とした以外は実施例6と同様にしてトナー粒子を得た。
実施例1と同様にして、重量平均粒子径5.2μmのトナー12を作成し、評価を行った。トナー12の物性を表3及び表4に、評価結果は表5に示す。Tf1の値が小さく、低温定着性能は良好であったが、Tfrの値が小さいために、高温側の定着領域においてトナーが紙に染み込むことによるグロス低下が発生し、グロス性能が低下した。また、Tf2の値が小さいため、実施例1と比較して低い定着温度で高温オフセットが発生した。さらに、Tf1の値が小さいことに起因して、初期画像濃度では濃度がやや低い程度であったが、3000枚耐久後の画像では明らかな画像濃度の低下が見られ、画像カブリも初期に比べて大きく増大していた。さらに、保存安定性能も劣っていた。