JP2005163178A - 耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材 - Google Patents

耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材 Download PDF

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Abstract

【課題】 鉄鋼などの金属精錬における転炉、電気炉の排ガス環境での耐久性、加工性、施工性に優れた排煙設備用鋼を提供することを目的とする。
【解決手段】 質量%で、Cu:0.1〜1%、Ni:0.01〜1%、Cr:4.0%〜6.0%、Sb:0.01〜0.2%等を含有し、かつMo:0.005〜0.5%、W:0.005〜0.5%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材。
【選択図】 図2

Description

本発明は、鉄鋼などの金属精錬における転炉、電気炉の排ガス環境での耐久性、および、加工性、施工性に優れた排煙設備用鋼材に関する。
以下、鉄鋼製造を行う精錬炉(転炉や電気炉など)を例に、背景技術を説明する。
金属精錬炉の排ガスには腐食性のガス成分や金属ダストを含むため、排煙設備で排ガス流路は厳しい損耗を受ける。一般に、排ガスの温度は1200℃に達する。炉によっては、燃焼塔で可燃性ガスを燃焼させた上で、排煙設備に通風するケースもある。
一般に、排煙ダクトは、炭素鋼板の溶接構造で二重筒構造とし、内筒に排ガスを通し内筒と外筒との間に冷却水を通すケースや、ダクト内面に鋼管を並べて水冷管パネルを作り、内部に冷却水を通す形式が使われている。以下、これらを排煙水冷ダクトと呼ぶ。
近年、排煙水冷ダクトの損耗が顕著になってきた。1990年代前半までは、板厚9mmの炭素鋼製内筒で5年以上の耐久性が得られていたが、最近では、板厚12mmに増厚しても半年〜1年で損耗する事例が多くなり、日常的な補修や取換工事が行われていた。また、転炉において転炉排ガス(OG)処理装置でも、最近、排煙水冷ダクトの耐久寿命が従前と比較して半分以下に短くなってきた。
損耗の原因としては、固体粒子の衝突による摩耗、ダストによる溶融塩腐食、吸湿による濃厚電解質形成に伴う湿食などが考えられるが、いずれの要因が損耗の支配プロセスなのかは、ほとんど解明されていないという課題があった。
排煙水冷ダクトの損耗を防止する従来技術では、排ガスと接触する面の材質を変更し、耐久性を確保する方法が提案されている。この方法は、排ガスに接する表面を改質する方法と、ダクトを構成する部材自身の材質を変更する方法に分類できる。
前者の方法としては、例えば、1)耐熱・耐火レンガで内張りする、2)無機系キャスターでライニングする、3)肉盛り溶射層を施す、4)高合金鋼を表層に持つクラッド鋼を採用するなどの方法が考えられ、一部は既に提案されている。
例えば、(特許文献1)に示されるようなステンレス系合金の溶射肉盛や、(特許文献2)に示されている800℃で酸化物を形成する成分の合金の溶射被覆層を形成する方法等が挙げられる。また、後者の方法としては、炭素鋼に代えて、耐久性に優れた構造材料、鋼SUS310Sなどの耐熱ステンレス鋼などを使用することが容易に考えられる。
レンガの内張り、金属溶射、無機系ライニング、高合金の内張りは、いずれも炭素鋼を裸で使用してきた排ガスダクトにおいては、材料・施工コストが極めて高くなるほか、炭素鋼との熱膨張率が不可避的に異なるため、1000℃程度の高温と室温近くの熱サイクルを1時間に1回のサイクルで受ける環境では、長期にわたり密着性を確保するのが難しいといった課題があった。
さらに、レンガや無機系ライニングを採用した場合、1)排ガスの冷却速度が遅くなるために、所定温度以下で集塵装置に排ガスを送るためには、排ガスダクトを延長する必要が生じるし、また、2)冷却速度が小さすぎると、ダイオキシンの発生抑制にさらなる対策が必要となる等の課題があった。
炭素鋼に代えてステンレス鋼などの高合金鋼を用いる場合、素材および施工コストが極めて高くなるといった課題があった。また、SUS316L、SUS310Sなどのステンレス鋼でも経済性に見合った耐久性が必ずしも得られないといった課題があった。
特公平4−80089号公報 特許第2565727号公報
本発明は、前述の問題を克服してなされたものであり、特に、鉄鋼などの金属精錬における転炉、電気炉の排ガス環境での耐久性、加工性、施工性に優れた排煙設備用鋼を提供することを目的とする。
本発明者は、鉄鋼精錬炉の水冷排ガスダクトの損耗機構を詳細に検討した結果、特定の化学組成を満足する鋼が、当該環境で優れた耐久性を示し、かつ炭素鋼並の加工性、施工性を具備することを知見した。すなわち、従来技術では開示されていなかった合金組成を制御することによって、従来にない対策鋼材が得られることを知見した。
本発明は前記知見に基づいて構成したものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、
C :0.001〜0.2%、
Si:0.01〜0.5%、
Mn:0.1〜2%、
Cu:0.1〜1%、
Ni:0.01〜1%、
Cr:4.0%〜6.0%、
Sb:0.01〜0.2%、
Al:0.005〜0.5%、
P :0.05%以下、
S :0.005〜0.02%、
N :0.008%以下、
を含有し、かつ
Mo:0.005〜0.5%、
W :0.005〜0.5%
の1種または2種を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材。
(2)質量%で、
Nb:0.002〜0.2%、
V :0.005〜0.5%、
Ti:0.002〜0.2%、
Ta:0.005〜0.5%、
Zr:0.005〜0.5%、
B :0.0002〜0.005%
のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする前記(1)記載の耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材。
(3)質量%で、さらに
Mg:0.0001〜0.01%、
Ca:0.0005〜0.01%、
Y :0.0001〜0.1%、
La:0.005〜0.1%、
Ce:0.005〜0.1%
のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材。
(4)質量%で、さらに
Sn:0.01〜0.3%、
Pb:0.01〜0.3%
のうちの1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材。
本発明鋼材は、金属精錬炉の排煙処理設備環境にて、優れた耐久性を示すとともに、炭素鋼並の加工性および施工性を併せて有している。
以下、本発明について詳細に説明する。以下、%は質量%を意味している。
本発明鋼材の骨子は、低C−Cr−低Si−Cu−(Mo、W、Mo+W)−Sbの複合添加により、(1)金属精錬炉の排煙処理設備環境にて優れた耐久性を示し、(2)オーステナイト系の溶接材料とともに使用することで、普通鋼並の加工性および施工性を同時に具備させるものである。
一般に、排煙処理設備接ガス面は、排ガスと材料との相互作用による損耗(板厚減少)により劣化する。損耗では、化学的な腐食現象や物理的な摩耗現象等が複合的に作用する。本発明では、排煙処理設備においてガスと接する部材面の板厚減少を招く現象を、損耗と呼ぶ。
まず、損耗挙動に及ぼす合金組成の影響について述べる。図1は、鉄鋼電気炉の排ガスダクト内面における平均損耗速度に及ぼすCr添加量の影響(Cr以外の化学成分は、表1の比較例A3と同じ成分に調整した)を示したが、平均損耗速度で充分な効果を得るためには、4.0%以上のCr添加が必要であることがわかる。
同じく図1に、最大損耗深さに及ぼすCr添加量の影響を示した。Crの単独添加では、最大損耗深さが十分に低減されないことがわかる。それゆえ、4.0%以上のCr添加鋼の場合、第三元素の複合添加により耐損耗性を向上させる必要がある。
本発明者は、4.0%以上のCr含有鋼の耐損耗性に及ぼす複合添加元素の効果を検討した結果、耐損耗性の改善には、低C、Si、Cu、Ni、Mo、W、Sb、Sn、Pbの添加が有効であることが判明した。さらに、Cu−Ni−(Mo、W、Mo+W)−Sbの複合添加により、顕著な耐損耗性の改善効果が得られることが判明した。
図2は、排ガスダクトでの損耗環境に対する5%Cr鋼へのCu、Ni、Mo、Sbの複合添加の効果を示す。Cr添加鋼においてCu−Ni−Mo−Sbを複合添加すると、耐損耗性が飛躍的に改善されるが、Cu、Ni、Mo、Sbのうち1元素でも含まれないと、優れた耐損耗性が得られないことがわかる。
次に、ガス切断性の確保について述べる。Cr−Cu−Ni−Mo−Sb添加鋼のアセチレンガスによるガス切断性、すなわち、ブローホールの発生抑制を十分に確保するためには、脱酸元素であるSi、Alを添加し、鋼中のNを極力低減するだけでは不十分であり、Si、Al量に最適バランスがあることを見出した。すなわち、0.01〜0.5%Siかつ0.005〜0.5%Alの範囲で良好な切断面が得られることを知見した。
次に、本発明鋼材の化学組成の限定理由について述べる。
Cは、排ガスダクト環境での耐損耗性の観点から、その量は少ないほど好ましいが、強度を確保するためには0.001%以上の添加が必要であるので、下限値を0.001%とした。0.2%を超えると耐損耗性、冷間加工性、および、溶接性が損なわれるので、0.001〜0.2%を限定範囲とした。
特に、排ガスダクト用鋼板として加工性が求められる場合、0.01〜0.06%が好ましい。また、フェライト系溶接材料を使用する場合は、良好な溶接施工性を確保するためには、0.002〜0.05%が好ましい。
Siは、脱酸のために0.01%以上添加すると、ガス成分が低減することによりブローホールが減少して、ガス切断性を確保するための必須元素であるが、0.5%を超えると熱影響部(HAZ)靱性が劣化するので、0.01〜0.5%を限定範囲とした。
耐損耗性と良好なガス切断性を両立させるためには、0.01〜0.3%の添加が好ましい。さらに、鋼の製造性、溶接性などを考慮した場合、0.1〜0.3%が好ましい。
Mnは、鋼の強度確保および脱酸のため0.1%以上添加するが、過度の添加は、強度過剰および冷間加工性を損なうので、0.1〜2%を限定範囲とした。
Pは、不純物元素であり、0.05%を超えると溶接性および耐損耗性が低下するので、0.05%以下を限定範囲とした。なお、Pは、少ないほどその効果は良好となるため、0.02%以下が好ましい。なお、下限値は0%を含む。
Sは、不純物元素であり、0.02%を超えると耐ラメラテア性が低下するので、0.02%以下に限定した。一方、Sが0.005%未満になると、耐損耗性が低下するので、0.005〜0.020%に限定した。耐損耗性および靭性のバランスを考慮すると、0.005〜0.015%が好ましい。
Cuは、局部的な損耗を抑制するためには、Ni、(Mo、W、または、Mo+W)、Sbとともに0.1%以上の添加が必要である。但し、1%を超えて添加すると、強度の過度の上昇および製造性、冷間加工性の低下を招くため、0.1〜1%を限定範囲とした。好ましくは、0.2〜0.5%の添加が冷間加工性および耐損耗性のバランスに優れている。
Niは、局部的な損耗を抑制する目的にCu、(Mo、W、Mo+W)、Sbとともに0.01%以上添加するが、その効果は1%で十分なので、0.01〜1%を限定範囲とした。
Crは、耐損耗性を確保するために、4.0%以上添加する。4.0〜6.0%Cr−Cu−Ni−Sbの複合添加効果によって、耐損耗性は、4.0〜6.0%Cr単独添加系に比較して飛躍的に改善される。6.0%を超えると、Siを制限しても、ガス切断性が著しく低下するので、限定範囲を4.0〜6.0%とした。耐損耗性とガス切断性のバランスを考慮すると、4.5〜5.5%が好ましい。
Mo、Wは、局部的な損耗を抑制する目的に、少なくとも1種以上を、Cu、Ni、Sbとともに0.005%以上添加するが、0.5%を超えると、逆に、溶接性や耐損耗性を阻害するので、0.0005〜0.5%を限定範囲とした。耐損耗性、経済性、溶接性の観点からは、0.01〜0.1%が好ましい。
Sbは、局部的な損耗を抑制する目的に、0.01%以上添加するが、0.2%を超えて添加してもその効果は飽和するので、0.01〜0.2%を限定範囲とした。熱間加工性の観点から、0.05〜0.15%がより好ましい。
Alは、脱酸効果を得るために、0.005%以上必要である。Al量の増加に従って耐損耗性は向上するが、過度の添加はガス切断性を損なうため、0.005%〜0.5%を限定範囲とした。良好なガス切断性を十分に確保するためには、0.005〜0.03%未満の範囲がより好ましい。
Nは、0.008%を超えると、ガス切断におけるブローホールを増大させ、切断性を低下させるだけでなく、靭性を低下させるので、その上限を0.008%とした。
以上、これらの基本成分で本発明鋼材として、優れた耐損耗性およびガス切断性を発揮できるが、さらに以下の元素を選択的に添加することで、より大きな効果が期待できる。
Tiは、必要に応じて0.002%以上添加することで、TiOやTiNを鋼中に形成し、溶接時熱影響部の粒径を微細化したり、粒内フェライトを生成したりすることにより靱性を向上させる効果や、Cr−Cu−Ni−(Mo、W、または、Mo+W)−Sb鋼のガス切断性を改善する効果がある。この場合、0.2%を超えて添加すると靱性が劣化するので、その範囲を0.002〜0.2%とすることが好ましい。
Nb、V、Ta、Zr、Bは、微量で鋼の強度を高めるのに有効な元素であり、主に強度調整のために必要に応じて含有させる。各々効果を発現するためには、Nbは0.002%以上、Vは0.005%以上、Taは0.005%以上、Zrは0.005%以上、Bは0.0002%以上含有させることが好ましい。
一方、Nbは0.2%超、Vは0.5%超、Taは0.5%超、Zrは0.5%、Bは0.005%超で、靭性劣化が顕著となり易い。従って、必要に応じて、Nb、V、Ti、Ta、Zr、Bを含有させる場合は、Nbは0.002〜0.2%、Vは0.005〜0.5%、Tiは0.002〜0.2%、Taは0.005〜0.5%、Zrは0.005〜0.5%、Bは0.0002〜0.005%とすることが好ましい。
Mg、Ca、Y、La、Ceは、介在物の形態制御に有効で、延性特性の向上に有効であり、また、溶接継手のHAZ靭性向上にも有効であり、さらに、耐局部損傷性を向上する効果も弱いながらあるので、必要に応じて含有させることが好ましい。
本発明における各元素の含有量は、効果が発現する下限から下限値が決定され、各々、Mgは0.0001%、Caは0.0005%、Yは0.0001%、Laは0.005%、Ceは0.005%を下限値とすることが好ましい。
一方、上限値は、介在物が粗大化して、機械的性質、特に延性と靭性に悪影響を及ぼすか否かで決定され、本発明では、この観点から、上限値を、Mg、Caは0.01%、Y、La、Ceは0.1%とすることが好ましい。
Sn、Pbは、耐損耗性を一層向上させるのに有効な元素であり、必要に応じて添加するが、その効果を発現するには、Sn:0.01〜0.3%、Pb:0.01〜0.3%が好ましい。
また、添加元素以外では、Oは0.0040%を超えると、ブローホールの数が著しく増加し、ガス切断性が低下するので、その上限を0.0040%とすることが好ましい。
本発明の鋼材は、転炉、電気炉等の溶製炉において鋼を溶製し、必要に応じて、脱ガス装置、取鍋などにおいて二次精錬を施して、所定の鋼成分とした後、この溶鋼を連続鋳造により、あるいは、鋼塊とした後、分塊圧延して、鋼片とする。その後、この鋼片を、加熱しあるいは加熱することなく、熱間圧延して、熱延薄鋼板や厚鋼板とし、さらに、冷間圧延して冷延薄鋼板等の鋼板として使用できるほか、熱間圧延により形鋼、棒鋼、線材あるいは鋼管など、その耐蝕用鋼部材として多様な形で使用することができる。
一般に、排煙処理設備は、鋼材の溶接構造で構成されるので、該鋼材には、所要特性の他、溶接施工性が要求される。従って、溶接金属の選択的な損耗を防止するとともに、本発明鋼材で炭素鋼並みの溶接施工性を確保するためには、溶接金属の合金組成が重要である。
耐損耗性に有効なCr、Ni、Cu、Moなどの含有量を高めたオーステナイト系の溶接材料、または、鋼板と同程度までCr、Ni、Cu、Moなどの含有量を高めたフェライト系の溶接材料が好ましい。オーステナイト系溶接材料としては、周知の技術を活用すれば良く、オーステナイト系ステンレス、例えばSUS309Lなどを用いるのが常套である。
表1に示す合金組成の鋼を溶製、鋳造し、板厚12mmまで熱間圧延、熱処理後、この熱延鋼板を素材とした。
Figure 2005163178
〔損耗試験:ダクト内曝露試験〕
補修用試験鋼板(250mm×250mm×12mm)を採取した。試験鋼板を、内筒径に冷間曲げ加工した。鉄筋棒鋼の電気溶製炉の排ガスダクト内筒にあらかじめ試験鋼板の空間を切断しておき、試験鋼板を溶接して取り付けた。
溶接は、入熱:約20kJ/cmのアーク溶接とし、溶接材料としてはオーステナイト系ステンレス(SUS309L)の被覆アーク溶接棒を用いた。取り付け、6ヶ月後に、試験鋼板を取り付けたダクトのセクションをガス切断で切り出した後、各試験片を切り出して、酸洗後に板厚計測を行い、平均損耗速度および局部的な最大損耗速度を求め、耐損耗性を評価した。
〔ガス切断性試験〕
それぞれの供試材について直切断(板厚16mm)および開先切断(16mm厚、30°、40°)を実施し、それぞれの場合のアセチレンガスを使用した場合またはパウダー切断を使用した場合の切断作業性および切断面の状態を評価し、比較鋼A1を基準として、◎;良好、○;切断易、△;切断難、×;切断不可の評点評価を行った。
表2に、上記のダクト内曝露試験結果を示す。表3にガス切断性試験結果を示す。
Figure 2005163178
Figure 2005163178
比較鋼であるA1は、市販の一般溶接構造用鋼(JIS G 3141 SS400)、A2は低合金鋼であるが、双方とも、耐損耗性が低い。また、A3は、4.9%Crを単独添加した低炭素鋼であり、平均損耗速度はA1、A2に比べてよいものの、最大損耗速度はA2と同等で、Crの添加効果が認められない。
また、A4、A5、A6、A7はCr5.1%を含有し、さらに、Si、Cu、Ni、Mo、Sbが複合添加されるが、A4はCuが、A5はNiが、A6はMoが、A7はSbがそれぞれ不足しているために、最大損耗速度の抑制は十分ではない。
また、A8は、Cr含有量が3.5%と低いため、複合添加による平均および最大損耗速度の抑制は十分ではない。
また、A9は、Si、Cu、Ni、Mo、Sbを本願の規定する鋼組成範囲に含有するが、Crを6.9%含有するために、ガス切断性が本発明鋼に比較して劣る。
また、A10は、Cr4.9%を含有し、Cu、Ni、Mo、Sbを本願の規定する鋼組成範囲に含有するが、0.65%Siを含有するために、ガス切断性が本発明鋼に比較して劣る。
これに対して、本発明鋼であるB1〜B31は、本願の規定する鋼組成範囲にあり、耐損耗性に優れ、かつ、ガス切断性も普通鋼(A1)並に優れている。
そのため、本発明鋼材は、製鋼電気炉、製鋼転炉の排ガス処理装置、灰溶融炉の排ガス処理装置、廃棄物や汚泥などの焼却施設の排ガス処理装置において、例えば、ダクト、熱交換器、電気集塵機、冷却塔、煙突などに使用すれば、優れた耐久性による設備寿命の延伸を図りながら、従来の炭素鋼と同じ維持管理および補修方法を継続でき、その産業上の価値は極めて高い。
鋼の溶製電気炉水冷ダクト内筒でのCr単独添加鋼の最大・平均損耗速度に及ぼすCr量の影響を示す図である。(試料の化学成分は、Crを除いて比較例A3に同じ) 水冷排ガスダクト内筒環境における5%Cr鋼の損耗速度に及ぼすCu、Ni、Sbの複合添加の効果を示す図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.001〜0.2%、
    Si:0.01〜0.5%、
    Mn:0.1〜2%、
    Cu:0.1〜1%、
    Ni:0.01〜1%、
    Cr:4.0%〜6.0%、
    Sb:0.01〜0.2%、
    Al:0.005〜0.5%、
    P :0.05%以下、
    S :0.005〜0.02%、
    N :0.008%以下、
    を含有し、かつ
    Mo:0.005〜0.5%、
    W :0.005〜0.5%
    の1種または2種を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材。
  2. 質量%で、
    Nb:0.002〜0.2%、
    V :0.005〜0.5%、
    Ti:0.002〜0.2%、
    Ta:0.005〜0.5%、
    Zr:0.005〜0.5%、
    B :0.0002〜0.005%
    のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1記載の耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材。
  3. 質量%で、さらに
    Mg:0.0001〜0.01%、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    Y :0.0001〜0.1%、
    La:0.005〜0.1%、
    Ce:0.005〜0.1%
    のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材。
  4. 質量%で、さらに
    Sn:0.01〜0.3%、
    Pb:0.01〜0.3%
    のうちの1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐損耗性およびガス切断性に優れた排煙処理設備用鋼材。
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