以下、本発明の樹脂組成物及びその製造方法、成形品並びに電気製品について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、生分解性を示す有機高分子化合物と、難燃系添加剤として水酸化物と、生分解性を示す有機高分子化合物の加水分解速度を調節する加水分解抑制剤とを含有するものである。ここで生分解性を示す有機高分子化合物(以下、「生分解性高分子化合物」と称することがある。)とは、使用後は自然界において微生物が関与して低分子化合物、すなわち最終的に水と二酸化炭素に分解する化合物(生分解性プラスチック研究会、ISO/TC−207/SC3)のことをいう。
生分解性を示す有機高分子化合物としては、本発明では多糖類を用いる。樹脂組成物に含まれる多糖類としては、セルロース、澱粉、キチン、キトサン、デキストラン若しくはそれら誘導体のいずれか、又はそれらのうち少なくとも一つを含む共重合体等を挙げることができる。多糖類は、代表的な生分解性高分子である脂肪族ポリエステル樹脂に比べて高い耐熱性を有するという利点がある。多糖類としては、上述の化合物等を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもかまわない。また多糖類へは、熱可塑性を付与するために種々の可塑剤を添加することも可能である。
上記セルロースの誘導体としては例えばエステル化セルロースを例示でき、具体的なエステル化セルロースとしては、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート等の有機酸エステル、硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース等の無機酸エステル、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロース等の混成エステル、及びポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテート等のセルロースエステル誘導体等の少なくとも一つを含む共重合体等を例示できる。これらエステル化セルロースは、単独、又は2種以上混合して使用できる。
本発明で用いられるエステル化セルロースは、公知の方法に従って製造することができる。エステル化セルロースは、セルロースを完全にアセチル化した後、部分ケン化することで製造することができる。さらに製造したエステル化セルロースには、成形加工性を上げるために可塑剤の添加を行う。可塑剤としては、生分解性が良好で可塑効果の優れた可塑剤であれば、特に限定されないが、低分子量のエステル系可塑剤が好ましく、リン酸エステル又はカルボン酸エステル等がより好ましい。
具体的なリン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等をあげることができる。
また、具体的なカルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル、クエン酸エステル等を代表なものとしてあげることができる。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート、(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が含まれる。
その他、カルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等、種々のトリメリットエステルが含まれる。
単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもかまわない。
また、グリコール酸エステルも使用でき、具体的には、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等がある。中でも、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート等が好ましい。これらの可塑剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもかまわない。
化工澱粉である澱粉置換誘導体は、公知の方法に従って製造することができる。化工澱粉である澱粉置換誘導体の基本的な製造方法としては、エステル化であり、それらの反応により製造された澱粉エステルは、低置換度の水系反応エステル化澱粉(澱粉エステル)として、以前より知られている。(「澱粉科学ハンドブック」(1997年7月20日)(株)朝倉書店p550)また、高置換度の澱粉エステルに関しては、酸無水物をピリジン中でジメチルアミノピリジンやアルカリ金属を触媒として反応させる方法("スターチケミストリー&テクノロジー"・ウィスラー著,Academic Press発行、p332〜336)、酸無水物中で、アルカリ金属水酸化物水溶液を触媒として、100℃以上の高温で反応される方法(特表平5−508185号公報、Die Starke1972 の3月号p73等参照)、更には、「ビニルエステルを使用して、非水有機溶媒中で反応させる方法」(特開平8−188601号公報参照)等が知られている。また、原料である澱粉に天然脂肪酸等を添加し、エーテル化、グラフト重合反応させ、化工澱粉である澱粉置換誘導体を得てもよい。さらに、これらの澱粉置換誘導体(澱粉エステル)に通常の熱可塑性プラスチック(熱可塑性樹脂)のような成形加工性(例えば、射出成形、押出し成形、延伸成形等)を持たせるために、可塑剤を添加してもよい。
さらに、可塑剤を添加しないで、又は可塑剤少量使用で熱可塑化可能な澱粉置換誘導体(例えば、特開2000−159802号公報参照)であってもよい。上記内容は、同一澱粉分子上の反応性水酸基の水素が、炭素数6〜24の長鎖炭化水素含有基及び短鎖炭化水素含有基で置換されてなり(長鎖・短鎖炭化水素含有基がともにアシル基である場合を除く。)、長鎖炭化水素含有基及び短鎖炭化水素含有基の置換度が調整されて、生分解性を保持しながら自己熱可塑性を有する澱粉置換誘導体についてのものである。
澱粉エステル等の澱粉に添加される可塑剤としては、澱粉エステルと相溶性の高い可塑剤が好ましく、下記各種可塑剤(主としてエステル型)を使用可能である。例えばフタル酸エステル系では、ジメチル・ジエチル・ジブチル等のフタル酸エステル、及び、エチルフタロイルエチルグリコレート、ブチルフタロイルブチルグリコレート等、脂肪族エステル系では、オレイン酸、アジピン酸、ステアリン酸のメチル・エチル・ブチル・イソプロピル等、多価アルコールエステル系では、スークロールアセテート、ジエチルグリコールベンゾエート、トリアセチン(トリアセチルグリセリン)、トリプロピオニン(トリプロピオニルグリセリン)、アセチルジグリセリン等、オキシ酸エステルでは、アセチルリシノール酸メチル、アセチルクエン酸トリエチル等、燐酸エステルでは、燐酸トリブチル、燐酸トリフェニル等、エポキシ可塑剤では、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、アルキルエポキシステアレート等、高分子系可塑剤では、各種液状ゴム、テルペン類、リニアポリエステル等、これらの中で、特に、アセチルクエン酸トリエチル、エチルフタロイルエチルグリコレート、トリアセチン、トリプロピオニン等のエステル型可塑剤が好ましく使用される。
本発明では、難燃系添加剤として、水酸化物を樹脂組成物中に配合する。上記難燃系添加剤は、樹脂等の高分子材料を主体として構成される添加対象材料に対して、混入や定着等により複合(添加)することができる。このとき、難燃系添加剤を添加することにより、当該難燃系添加剤は難燃剤・安定剤・増量剤として機能し、本発明の添加対象材料である生分解性を示す有機高分子化合物に対して、例えば難燃性・安定性・増量性等を付与することができる。
難燃系添加剤として水酸化物を生分解性を示す有機高分子化合物中に含ませることで、生分解性を示す有機高分子化合物に高熱(例えば500℃以上)が付与された場合、水酸化物は、樹脂が燃焼する際に発生する熱を吸熱し、分解するのと同時に水を生成し、吸熱作用と水の生成とにより難燃性を発現する。
また、この難燃系添加剤は、高い難燃性とともに、廃棄後にはアルミナ、水、二酸化炭素等の生体や地球環境に対して安全な成分に分解するため、周辺環境や人体に悪影響を及ぼすおそれがない。
上記難燃系添加剤の成分である水酸化物としては、分子中に水酸基を含む化合物であり、加熱により水を生成するものを用いることができる。具体的な水酸化物としては、組成中に金属元素を含む金属水酸化物、具体的には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化セリウム、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化チタン、水酸化バリウム、水酸化ベリリウム、水酸化マンガン、水酸化ストロンチウム、水酸化ジルコニウム、水酸化ガリウム、カルシウム・アルミネート水和物(3CaO・Al2O3・6H2O)、ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)等の少なくともいずれかを主成分とするもの等を例示することができ、中でも水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムを用いることが好ましい。
水酸化物は、その純度が約99.5%以上であるものがより好ましい。水酸化物の純度が高いほど、加水分解抑制剤を組み合わせたときの保存安定性が向上するからである。水酸化物の純度は、公知の方法で測定することができる。例えば、水酸化物に含まれている不純物の含有量を公知の方法で測定し、全体量から上記不純物の含有量を減じれば、水酸化物の純度を得ることができる。より具体的には、例えば水酸化アルミニウムの場合、不純物としてはFe2O3、SiO2、T−Na2O、S−Na2O等が挙げられる。Fe2O3の含有量は炭酸ナトリウム−ホウ酸液に融解後、O−フェナントロリン吸光光度法(JIS H 1901)により求められる。SiO2の含有量は、炭酸ナトリウム−ホウ酸液に融解後、モリブテン青吸光光度法(JIS H 1901)により求められる。T−Na2Oの含有量は、硫酸に融解後、フレーム光度測定法で、S−Na2Oは、温水抽出後、フレーム光度測定法で求められる。上記により求められた含有量を水酸化アルミニウムの重量より減じることにより水酸化物の純度を得ることができる。もちろん99.5%以上の純度があれば、異なる複数種の難燃系水酸化物を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる水酸化物の形状は特に限定されないが、粒状であることが好ましい。その粒子径は、難燃系添加剤の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、水酸化物は、レーザー回折法により求められる平均粒子径が約100μm以下であることが好ましい。なお、この場合において粒度分布は問わない。成形プロセスにおける射出成形性や混練時の分散性の観点から、平均粒子径は上記範囲が好ましく、上記範囲の中でもより小さい方がより好ましい。なお、もちろん組成物への充填率を高めるために平均粒子径の異なる複数種の難燃系添加剤を組み合わせて用いることができる。
さらに、水酸化物は、窒素ガス吸着法により求められるBET比表面積が約20m2/g以下の粒子を用いることが好ましい。もちろん組成物への充填率を高めるためにBET比表面積の異なる複数種の化合物を組み合わせて用いることができる。成形性の観点から、BET比表面積は上記範囲が好ましく、上記範囲の中でもより小さい方がより好ましい。
また、難燃系添加剤は、上述した水酸化物とともに、窒素化合物を含むことが好ましい。上記難燃系添加剤の成分である窒素化合物としては、加熱により燃焼阻害性気体を生成するものを用いることができる。難燃系添加剤の添加対象材料に高熱が付与されたとき、窒素化合物は分解することにより燃焼阻害性気体を発生し、添加対象材料の難燃効果を向上させる。この難燃性の向上は、燃焼阻害性気体が生成することにより、燃焼に必要となる酸素が対象材料近傍において相対的に減少するためであると考えられる。燃焼阻害性気体は、具体的には、窒素化合物が分解して生成する窒素ガスや、二酸化窒素ガス、一酸化窒素ガス、N2Oガス等の酸化窒素系ガス等の窒素含有ガス等である。
また、難燃系添加剤が水酸化物及び窒素化合物の両方を含むことで、生分解性を示す有機高分子化合物に高熱(例えば500℃以上)が付与された場合に、水酸化物の難燃性効果と、窒素化合物が分解して生成する窒素含有燃焼阻害性気体による難燃性効果とが相乗して機能する。具体的には、本発明の難燃系添加剤を含む生分解性を示す樹脂組成物の成形品が加熱されると、窒素化合物の加熱により生成する酸化窒素系ガス(NxOy系ガス)と、水酸化物の加熱により生成する水とが反応し、当該反応により生成する硝酸の熱酸化作用により、生分解性樹脂等の高分子化合物がCO2やH2O等の不燃性材料に変性し、高い難燃性が付与される。このため、難燃系添加剤として水酸化物と窒素化合物とを用いることにより、水酸化物を単独で用いた場合に比べて、生分解性を示す有機高分子化合物に対してより高い難燃性を付与することができる。
ここで、難燃系添加剤の成分である窒素化合物は、例えば、その組成中にNxOy(x,yは自然数)で表されるような窒素酸化物を少なくとも含む化合物とすることができる。具体的には、例えば非金属性硝酸化合物及び/又は非金属性亜硝酸化合物を用いるのが良い。より具体的には、硝酸アセチル(C2H3NO4)、硝酸アニリン(C6H8N2O3)、硝酸メチル(CH3ONO3)や硝酸エチル(C2H5ONO2)や硝酸ブチル(C4H9ONO2)や硝酸イソアミル((CH3)2CHCH2CH2ONO2)や硝酸イソブチル((CH3)2CHCH2ONO2)や硝酸イソプロピル((CH3)2CHONO2)等の硝酸エステル(RONO2)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、硝酸グアニジン(CH6N4O3)、硝酸酢酸セルロース(ニトロアセチルセルロース)、硝酸セルロース(ニトロセルロース)、硝酸尿素、硝酸ヒドロジニウム(N2H5NO3)、硝酸ヒドロキシルアンモニウム((NH3O)NO3)、硝酸ベンゼンジアゾニウム(C6H5N3O3)、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸エチル、亜硝酸メチル、亜硝酸プロピル、亜硝酸ブチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸イソアミル等の亜硝酸エステル(RONO)等を例示することができる。窒素化合物としては、上記の化合物等を単独又は組み合わせて用いることができる。
窒素化合物は、その平均粒子径を100μm以下とすることが好ましい。100μmを上回ると充填率や分散性の低下が懸念されるために好ましくない。
難燃系添加剤には、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコアルミニウム系、脂肪酸系、ワックス系、界面活性剤類等の表面処理を施してもよい。具体的には、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等を用いたもの、脂肪酸系としてステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等を用いたもの、さらには脂肪酸塩として上記各脂肪酸のカルシウム塩、亜鉛塩等を用いたもの、非イオン系界面活性剤としてポリエチレングリコール誘導体を用いたもの等を用いることができる。
難燃系添加剤の添加量は、対象となる有機高分子化合物100重量部に対して、窒素化合物を1重量部〜50重量部、水酸化物を20重量部〜120重量部とすることが好ましい。窒素化合物が1重量部未満の場合、上述の効果を十分に発現せず、また50重量部を超えると添加対象物である有機高分子化合物の機械的な強度等を損なうおそれがある。この窒素化合物の添加量は、より好ましくは1重量部〜20重量部程度である。一方、水酸化物の添加量が20重量部以下の場合は、上述の効果を十分に発現せず、また120重量部を超えると添加対象物である高分子化合物の強度等を十分に保てなくなるおそれがある。なお、水酸化物の最適な添加量は30重量部〜100重量部である。
本発明で用いる加水分解抑制剤は、生分解性高分子化合物の加水分解を抑制する添加剤等であれば、特に限定されない。生分解性高分子化合物の加水分解を抑制する加水分解抑制剤を含有することで、生分解性高分子化合物の加水分解速度が遅延され、その結果、長期にわたって高い機械的強度や衝撃強度等を維持することができるという高い保存特性を示す。
具体的な加水分解抑制剤としては、例えば生分解性高分子化合物中の活性水素と反応性を有する化合物が挙げられる。上記化合物を加えることで、生分解性高分子化合物中の活性水素量を低減させ、活性水素が触媒的に生分解性高分子鎖を加水分解することを防ぐことができる。ここで、活性水素とは、酸素、窒素等と水素との結合(N−H結合やO−H結合)における水素のことであり、かかる水素は炭素と水素の結合(C−H結合)における水素に比べて反応性が高い。より具体的には、生分解性高分子化合物中の例えばカルボキシル基:−COOH、水酸基:−OH、アミノ基:−NH2、又はアミド結合:−NHCO−等における水素等が挙げられる。
上記生分解性高分子化合物中の活性水素と反応性を有する化合物としては、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン系化合物等が適用可能である。特にカルボジイミド化合物は、生分解性高分子化合物と溶融混練でき、少量の添加で加水分解性をより抑制できるために好ましい。
上記カルボジイミド化合物は分子中に一個以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、ポリカルボジイミド化合物をも含む。上記カルボジイミド化合物の製造方法としては、例えば、触媒として、例えば、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)ホスホロチオエート、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−(メチルチオ)フェニル)ホスホロチオエート、O,O−ジエチル−O−2−イソプロピル−6−メチルピリミジン−4−イルホスホロチオエート等の有機リン系化合物、又は、例えばロジウム錯体、チタン錯体、タングステン錯体、パラジウム錯体等の有機金属化合物を用い、各種ポリマーイソシアネートを約70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒(たとえば、ヘキサン、ベンゼン、ジオキサン、クロロホルム等)中で脱炭酸重縮合により製造する方法を挙げることができる。
このカルボジイミド化合物に含まれるモノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ナフチルカルボジイミド等を例示することができ、これらの中でも、特に工業的に入手が容易であるジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
上記生分解性高分子化合物中の活性水素と反応性を有する化合物であるイソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジクロロ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート又は3,3'−ジメチル−4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
上記イソシアネート化合物は、公知の方法で容易に製造することができ、また市販品を適宜使用することができる。市販のポリイソシアナート化合物としては、コロネート(日本ポリウレタン製;水添ジフェニルメタンジイソシアネート)又はミリオネート(日本ポリウレタン製)等の芳香族イソシアネートアダクト体が適用可能である。なかでも、本発明にかかる組成物を溶融混練で製造する場合は、液状より固形物、例えばイソシアネート基をマスク剤(多価脂肪族アルコール、芳香族ポリオール等)でブロックしたポリイソシアネート化合物の使用が好ましい。
上記生分解性高分子化合物中の活性水素と反応性を有する化合物であるオキサゾリン系化合物としては、例えば、2,2'−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(4,4'−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(4,4'−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、又は2,2'−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。また、加水分解抑制剤は、上記化合物を単独で又は2種以上混合して使用してもかまわない。
加水分解抑制剤の種類や配合量等は、特に限定されないが、加水分解抑制剤の種類や配合量等を適宜調整することにより成形品の生分解速度、ひいては機械的強度を調整することができるので、目的とする製品に応じて決定すればよい。例えば、有機高分子化合物100重量部に対して、加水分解抑制剤は、20重量部以下とすることが好ましく、13重量部以下であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いてよい。例えば、生分解性を示す多糖類に対し、上述の難燃系添加剤を溶融混練することにより製造する方法が、好適な例として挙げられる。
上記溶融混練による製造方法としては、生分解性を示す有機高分子化合物を溶融する前又は溶融する時、難燃系添加剤及び加水分解抑制剤を添加し、混合することにより行われる。このとき、難燃系添加剤及び加水分解抑制剤は同時に添加してもよいし、個別に添加してもよい。また、個別に添加する場合は、いずれを先に添加してもよい。また、生分解性を示す有機高分子化合物を溶融後、難燃系添加剤又は加水分解抑制剤のいずれかを添加し、混合したのち、得られた組成物を再び溶融し、加水分解抑制剤又は難燃系添加剤のいずれか残りの成分を添加し、混合する方法等も挙げられる。また、難燃系添加剤としての水酸化物及び窒素化合物は、同時に添加しても、個別に添加してもかまわない。また、難燃系添加剤としては、構成成分が複合した状態のものを用いてもよい。
単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもかまわない。
本発明にかかる樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、性能向上のための他の添加剤を適宜使用することができる。他の添加剤としては、例えば補強材、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の他、滑剤、ワックス類、着色剤、結晶化促進剤、ドリッピング防止剤、澱粉のような分解性を有する有機物等が挙げられるが、これらに限定されない。これら添加剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもかまわない。
補強材としては、例えば無機フィラー、有機フィラー等のフィラー等が挙げられる。無機フィラーとしては、例えば炭素、二酸化珪素の他、アルミナ、シリカ、マグネシア、又はフェライト等の金属酸化微粒子、例えばタルク、マイカ、カオリン、ゼオライト、ウォラストナイト等の珪酸塩類、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又はフラーレン等の微粒子等が挙げられる。また、無機フィラーとしては、ガラスマイクロビーズ、炭素繊維、チョーク、例えばノボキュライト(novoculite)のような石英、アスベスト、長石、雲母等が挙げられる。また、有機フィラーとしては、例えばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、又はテフロン(登録商標)樹脂が挙げられる。中でも、炭素、二酸化珪素が好ましい。ただし、補強材としては、上記に限定されず、汎用的に使用されている無機フィラー、有機フィラー等のフィラー等をいずれも使用できる。また、補強材は上記の材料を1種又は2種以上混合して使用してもかまわない。
上記酸化防止剤としては、例えばフェノール系、アミン系、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、又はキノリン系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のC2-10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばトリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のジ又はトリオキシC2-4アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばグリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のC3-8 アルカントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のC4-8 アルカンテトラオールテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばn−オクタデシル−3−(4',5'−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、ステアリル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンムアミド)、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、又は1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N'−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、又はN−フェニル−N'−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミン等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、トリス[2−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス[2,4−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物;トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルビニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルフェニル−p−アニシルホスフィン、p−アニシルジフェニルホスフィン、p−トリルジフェニルホスフィン、ジ−p−アニシルフェニルホスフィン、ジ−p−トリルフェニルホスフィン、トリ−m−アミノフェニルホスフィン、トリ−2,4−ジメチルフェニルホスフィン、トリ−2,4,6―トリメチルフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o―アニシルホスフィン、トリ−p−アニシルホスフィン、又は1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のホスフィン化合物等が挙げられる。
ヒドロキノン系酸化防止剤としては、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等が挙げられ、キノリン系酸化防止剤としては、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等が挙げられ、イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。中でも、好ましい酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤(特に、ヒンダードフェノール類)、例えば、ポリオール−ポリ[(分岐C3-6 アルキル基及びヒドロキシ基置換フェニル)プロピオネート]等が挙げられる。また酸化防止剤は単独で又は2種以上使用してもかまわない。
上記熱安定剤としては、例えばポリアミド、ポリ−β−アラニン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、メラミン、シアノグアニジン、メラミン−ホルムアルデヒド縮合体等の塩基性窒素含有化合物等の窒素含有化合物;有機カルボン酸金属塩(ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等)、金属炭酸塩等のアルカリ又はアルカリ土類金属含有化合物;ゼオライト;又はハイドロタルサイト等が挙げられる。特に、アルカリ又はアルカリ土類金属含有化合物(特にマグネシウム化合物やカルシウム化合物等のアルカリ土類金属含有化合物)、ゼオライト、又はハイドロタルサイト等が好ましい。また熱安定剤は単独で又は2種以上使用してもかまわない。
上記紫外線吸収剤としては、従来公知のベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリチレート系又はシュウ酸アニリド系等が挙げられる。例えば、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2'−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2'−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、又は[2,2'−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシオクトキシベンゾフェノン)−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。また紫外線吸収剤は単独で又は2種以上使用してもかまわない。
上記滑剤としては、例えば、流動パラフィン等の石油系潤滑油;ハロゲン化炭化水素、ジエステル油、シリコン油、フッ素シリコン等の合成潤滑油;各種変性シリコン油(エポキシ変性、アミノ変性、アルキル変性、ポリエーテル変性等);ポリオキシアルキレングリコール等の有機化合物とシリコンとの共重合体等のシリコン系潤滑性物質;シリコン共重合体;フルオロアルキル化合物等の各種フッ素系界面活性剤;トリフルオロ塩化メチレン低重合物等のフッ素系潤滑物質;パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類;高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アミド、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸塩、又は二硫化モリブデン等が挙げられる。これらの中でも、特に、シリコン共重合体(樹脂にシリコンをブロックやグラフトにより重合させたもの)の使用が好ましい。シリコン共重合体としては、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリブチラール系樹脂、メラミン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂等に、シリコンをブロック又はグラフト重合させたものであればよく、シリコングラフト共重合体を用いるのが好ましい。これらの潤滑物質は、単独で又は2種以上使用してもかまわない。
上記ワックス類としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックスやパラフィンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ミクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、脂肪酸アミド系ワックス、高級脂肪族アルコール系ワックス、高級脂肪酸系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらのワックス類は単独で又は2種以上使用してもかまわない。
上記着色剤としては、無機顔料、有機顔料又は染料等が挙げられる。無機顔料としては、例えばクロム系顔料、カドミウム系顔料、鉄系顔料、コバルト系顔料、群青、又は紺青等が挙げられる。また、有機顔料や染料の具体的な例としては、例えばカーボンブラック;例えばフタロシアニン銅のようなフタロシアニン顔料;例えばキナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッドのようなキナクリドン顔料;例えばハンザイエロー、ジスアゾイエロー、パーマネントイエロー、パーマネントレッド、ナフトールレッドのようなアゾ顔料;例えばスピリットブラックSB、ニグロシンベース、オイルブラックBWのようなニグロシン染料、オイルブルー、ピグメントイエロー、ピグメントブルー、ピグメントレッド等又はアルカリブルー等が挙げられる。また着色剤は単独で又は二種以上使用してもかまわない。
上記結晶化促進剤としては、例えば、p−t−ブチル安息香酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム等の有機酸塩類;例えば炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク等の無機塩類;例えば酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン等の金属酸化物等が挙げられる。これらの結晶化促進剤は、単独で又は2種以上使用してもかまわない。
ドリッピング防止剤としては、例えばフッ素樹脂やフェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂等を用いることができる。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等のフッ素含有モノマーの単独又は共重合体;上記フッ素含有モノマーと、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリレート等の共重合性モノマーとの共重合体が含まれる。これらのドリッピング防止剤は、単独で又は2種以上使用してもかまわない。
本発明にかかる樹脂組成物に対し、公知の処理を行ってもよい。たとえば、本発明にかかる樹脂組成物中の生分解性高分子化合物の加水分解を抑制するために、本発明にかかる樹脂組成物に対し、活性エネルギー線を照射させてもよい。
上記活性エネルギー線源としては、例えば電磁波、電子線又は粒子線及びこれらの組み合わせが挙げられる。電磁波としては、紫外線(UV)、エックス線等が挙げられ、粒子線としては、陽子、中性子等の素粒子の線が挙げられる。中でも特に、電子加速器の使用による電子線照射が好ましい。
上記活性エネルギー線は、公知の装置を用いて照射することができる。例えば、UV照射装置、電子加速器等が挙げられる。照射線量及び照射強度としては、本発明にかかる樹脂組成物において、効果的に生分解性高分子化合物の加水分解を遅延する範囲であれば、とくに限定されない。例えば、電子線の場合、加速電圧が、約100〜5000kV程度が好ましく、照射線量としては、約1kGy程度以上であることが好ましい。
本発明にかかる樹脂組成物を成形して得られる成形品は、種々の用途に応用可能である。成形品の成形方法としては、例えば、圧空成形、フィルム成形、押出成形又は射出成形等が挙げられ、中でも特に射出成形が好ましい。より具体的には、押出成形は、常法に従い、例えば単軸押出機、多軸押出機、タンデム押出機等の公知の押出成形機を用いて行うことができる。また、射出成形は、常法に従い、例えばインラインスクリュ式射出成形機、多層射出成形機、二頭式射出成形機等の公知の射出成形機にて行うことができる。また、本発明の樹脂組成物を成形して成形品を製造する方法としては、特に限定されず、公知の成形方法をいずれも利用できる。
このように、生分解性を示す有機高分子化合物と、難燃系添加剤として水酸化物と、加水分解抑制剤とを含むことにより、例えばUL燃焼性試験にて評価したときにV0からV1の範囲を充足する極めて高い難燃性と、例えば電気製品の筐体として利用可能な優れた保存特性とを両立することができる。
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品は、生体に対して安全な成分である生分解性樹脂を主体とし、また、自然環境中で容易に分解されるので、廃棄時や廃棄後の環境への悪影響を低減することができる。このため、このような成形品を電気製品の筐体や梱包材料に適用することで、既存の合成樹脂や生分解性樹脂等を用いる場合に比べて、充分な環境配慮を実現することができる。
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品は、これまで生分解性樹脂の適用が困難であった例えば以下のような電気製品の一部に適用されて好適である。具体的な電気製品としては、例えばDVD(デジタルバーサタイルディスク)プレーヤー、CD(コンパクトディスク)プレーヤー、MD(ミニディスク)プレーヤー、アンプ等の据置型のAV機器、スピーカー、車載用AV/IT機器、電子書籍を含めたPDA、ビデオデッキ、プロジェクター、テレビ受信機器、モニター、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、プリンター、ラジオ、ラジカセ、システムステレオ、マイク、ヘッドフォン、キーボード、ヘッドフォンステレオ、携帯型CDプレーヤー、携帯型MDプレーヤー、いわゆるシリコンオーディオプレーヤー等の携帯型音楽機、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコン及びパソコン周辺機器、据え置き型のゲーム機器、携帯型ゲーム機器、携帯電話、電話機、ファクシミリ、コピー機、エンターテイメントロボット等が挙げられ、本発明の成形品はこれら電気製品の筐体として利用することができる。また、本発明の成形品は、電気製品の筐体等だけでなく、電気製品を構成する部品、構造材等の他の構成要素にも使用できる。本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品を電気製品の構成要素とすることで、この電気製品は、充分な難燃性及び保存特性を示すとともに、生分解性を示すことから合成樹脂に比べて廃棄時及び廃棄後に自然環境に与える悪影響を軽減することができる。
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品の用途は、この限りではなく、生分解性を示すことから日用雑貨品、衛生用品又は遊戯用品等を主とした使い捨て製品はもちろん、梱包材、自動車用途、工業製品用途等のあらゆる用途に適用可能である。
以下に、本発明の実施例について詳細に述べるが、本発明はこれに限定されないことは言うまでもない。
<実験1>
実験1では、難燃系添加剤として水酸化物を単独で用いる場合について検討した。
(試料の調製)
生分解性を示す有機高分子化合物として、(A1)アセチルセルロース(360E−16、ダイセルファインケム社製)、及び(A2)エステル化澱粉(CPR−3M、日本コーンスターチ社製)、(B)加水分解抑制剤(カルボジライトHMV−8CA、日清紡績社製)、難燃系添加剤(C1)水酸化アルミニウム(和光純薬社製)を用いた。A、B、Cの混合には溶融混練法を用いた。
混練条件としては、混練機としてミニマックス−ミックスルーダ(東洋精機社製)を使用し、ノズル温度を170〜175℃、トルクを4〜6kg、滞留時間を3秒以内とし、混練により樹脂に対して添加剤を添加した。得られた樹脂複合体は粉砕した後に、170℃で300Kg/cm2のプレスを行い、厚さ1.0mmの板材に成形し、12.7mm×127mmのサイズに切り出して測定試験片とした。実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例6の試験片の組成を下記表1に示す。
以上のように作製された実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例6の試験片について、以下のように燃焼試験及び保存試験を行い、難燃性及び保存特性の評価を行った。
(燃焼試験)
垂直燃焼試験は、上記試験片を用いて、UL94燃焼性試験V−0〜V−2に準じて行った。その方法を以下に述べる。
各試料を上端から6.4mmのところで縦軸を垂直にして、リング・スタンドのクランプで保持し、試料の下端から9.5mm下にバーナーの先端が、また、305mm下に乾燥した外科用脱脂綿の水平層が広がるようにする。水平層を作るためには、親指と人差し指で綿のかたまりから約12.7mm×25.4mmほどの小片をちぎり取り、指で薄く広げて50.8mm平方で、自然の厚さが6.4mmになるようにする。
バーナーを試料から離れた位置におき、点火し、高さ19mmの青い炎が出るように調節する。炎はガスの供給量とバーナーの空気口を調節して、先ず高さ19mmの先の黄色い青い炎が出るようにし、その後、空気の量を調整してゆき、先の黄色い炎がなくなるようにする。炎の高さをもう一度測り、必要に応じて調節する。
試験炎を試験試料の下端の中心にあて、10秒間そのまま継続する。そして炎を少なくとも152mm離して、試料が炎を出して燃える時間を記録する。試料の炎が消えたら、直ちに試験炎を再び試料の下端に当てる。そして10秒後に再び炎を離して、有炎および無炎の燃焼時間を記録する。目視による有炎と無炎とを識別するのが難しいときは、外科用綿をその疑問箇所に接触させる。綿が着火すれば有炎である。各接炎中に、試料から融解又は有炎物質が滴下するときは、その接炎中にバーナーを45度の角度まで傾斜させ、さらにまた試料の12.7mmの面のいずれか一方からごく少し遠ざけて、バーナー管の中に材料が滴下するのを避けてもよい。もし試料から融解又は有炎物質が滴下したり、試験中に燃え続けたりするときは、バーナーを手持ちにして、接炎中は試料の下端とバーナー管の先端との間に9.5mmの間隔を保持しなければならない。全ての融解材料の滴下は無視できるものとし、試料の中央に接炎しなければならない。
そして、94V−1認定材料、すなわち94V−1と認定される材料は下記の条件に適合しなければならない。
(a)全ての試料は、毎回炎を当てた後、30秒以上炎を出して燃焼しないこと。
(b)各組5枚の試料に合計10回の接炎を行い、炎を出して燃焼する時間の合計が250秒を超えないこと。
(c)全ての試料は、有炎又は無炎の燃焼が支持クランプまで達しないこと。
(d)試料から物質が滴下することにより305mm下にある乾燥した外科用脱脂綿を着火しないこと。
(e)全ての試料は第2回目に炎を遠ざけた後、60秒以上無炎の燃焼を続けないこと。
(保存試験)
本発明による高い難燃性を有する成形品は、生分解性を有しているとはいえ、成形品として電気機器の筐体等に用いるために、ある程度の保存性が求められる。その評価として、高温高湿下での保存性の評価を行った。評価は、各資料を温度80℃、相対湿度80%の状態で100時間保存し、その後の形状、高分子の分子量の測定を行うことで求めた。試験片は上記燃焼試験と同じ試験片を用い、形状に問題がなく、評価前からの分子量維持率が80%を確保したものを○、確保できなかったものを×とした。分子量の評価はGPC(Gel Permeation Chromatography)法にて行った。実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例6の燃焼試験及び保存試験の結果を下記表1に示す。なお、以下表中、「UL94−V1;○」は、94V−1認定材料であることを示し、「UL94−V1;×」は、94V−1認定材料でないことを示す。
表1から、生分解性を示す多糖類(A1又はA2)と加水分解抑制剤(B)と難燃系添加剤である水酸化物(C1)とを含む実施例1〜実施例10は、UL94V−1規格を満足するという高い難燃性を示し、且つ保存特性も良好であった。これに対して、難燃系添加剤成分を含まない比較例3及び比較例6は、UL94V−1規格を充足しなかった。また、水酸化物(C1)を含むが加水分解抑制剤を含まない比較例2及び比較例5は、難燃性は良好であったものの、保存特性が損なわれていた。
以上の実験1の結果から、生分解性を示す多糖類に、難燃系添加剤として水酸化物、及び加水分解抑制剤を配合することで、難燃性と保存特性との両立が可能であることがわかった。また、実施例と比較例1及び比較例4と実施例とを比較することにより、水酸化物の添加量を増量すること、すなわち多糖類100重量部に対して水酸化物を20重量部を超えて添加することにより、高い難燃性を確実に得られることがわかった。
<実験2>
次に、難燃系添加剤として水酸化物と窒素化合物との両方を用いる場合について検討した。
(試料の調製)
実験2では、難燃系添加剤として、水酸化物に加えて、(C2)硝酸アンモニウム(和光純薬社製)を用いた。そのほかの成分については、実験1で用いたものと同様である。
これら原料を実験1と同様にして、混練し、実施例11〜実施例20及び比較例7〜比較例10の測定試験片を作製した。実施例11〜実施例20及び比較例7〜比較例10の試験片の組成を下記表2に示す。
これら実施例11〜実施例20及び比較例7〜比較例10の試験片について、実験1と同様に燃焼試験及び保存試験を実施した。燃焼試験及び保存試験の結果を下記表2に示す。
表2から、生分解性を示す多糖類(A1又はA2)と加水分解抑制剤(B)と難燃系添加剤として水酸化物(C1)及び窒素化合物(C2)を含む実施例11〜実施例20は、UL94V−1規格を満足するという高い難燃性を示し、且つ保存特性も良好であった。これに対して、難燃系添加剤成分を含まない比較例8及び比較例10は、UL94V−1規格を充足しなかった。また、難燃系添加剤を含むが加水分解抑制剤を含まない比較例7及び比較例9は、難燃性は良好であったものの、保存特性が損なわれていた。
以上の実験2の結果から、生分解性を示す多糖類に、難燃系添加剤として水酸化物及び窒素化合物、並びに加水分解抑制剤を配合することで、難燃性と保存特性との両立が可能であることがわかった。