JP2005162738A - 1,1−ジフルオロエタンの精製方法およびその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低温用冷媒やエッチングガスとして使用することができる、高純度な1,1−ジフルオロエタンを工業的に有利に製造することのできる方法を提供する。
【解決手段】 分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類および分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する粗1,1−ジフルオロエタンと、平均細孔径が3〜6Åであり、かつ、シリカ/アルミニウム比が2.0以下であるゼオライトおよび/または平均細孔径が3.5〜6Åである炭素質吸着剤とからなる吸着剤を接触させ、粗1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の含有量を低減させる。
【選択図】 なし
【解決手段】 分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類および分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する粗1,1−ジフルオロエタンと、平均細孔径が3〜6Åであり、かつ、シリカ/アルミニウム比が2.0以下であるゼオライトおよび/または平均細孔径が3.5〜6Åである炭素質吸着剤とからなる吸着剤を接触させ、粗1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の含有量を低減させる。
【選択図】 なし
Description
本発明は1,1−ジフルオロエタンの精製方法およびその用途に関する。
1,1−ジフルオロエタン(CH3 CHF2 )は、例えば、低温用冷媒やエッチングガスとして注目されている。
1,1−ジフルオロエタンの製造方法としては、従来より次のような方法が知られている。例えば、(1)クロロエチレン(CH2 =CHCl)や1−クロロ−1−フルオロエタン等を気相でフッ素化触媒を用いてフッ素化する方法(欧州特許出願公開第0370688号公報)、(2)塩素化フッ素化炭化水素を触媒の存在下に水素で還元して製造する方法(特開平7−126197号公報)等が挙げられる。
これらの方法を用いて製造されたCH3 CHF2 (HFC−152a)は、ハイドロカーボン(HC)類、ハイドロクロロカ−ボン(HCC)類、クロロフルオロカーボン(CFC)類、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類、ハイドロフルオロカーボン(HFC)類の飽和化合物や不飽和化合物等の様々な不純物を含んでいる。
純度の高いCH3 CHF2 を得るためには、これらの不純物をできる限り除去する必要がある。特に、含塩素化合物であるハイドロクロロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン等については、高純度化するということの他に、オゾン層の破壊を防止するという観点から、通常の蒸留では分離が困難な化合物でも精製して純度を上げる必要がある。前記の不純物の中には、CH3 CHF2 と共沸混合物や共沸様混合物を形成するため、CH3 CHF2 と分離することが非常に困難な化合物もある。
例えば、冷媒として重要な化合物である1,1,1,2−テトラフルオロエタン(CF3 CH2 F)やペンタフルオロエタン(CF3 CHF2 )等は、不純物を精製する方法として、例えば、抽出蒸留による精製や触媒の存在下で水素を用いた脱ハロゲン水素化方法等によって除去する精製方法が知られているが抽出蒸留によって精製する方法は、蒸留塔などの高価な設備を複数必要とするため、設備費が高くなる等の問題を有している。また、水素を用いる方法は、可燃物対応のため、設備費が高い、触媒寿命が短い等の問題を有している。
本発明は、このような背景の下に、低温用冷媒やエッチングガスとして使用することができる、高純度な1,1−ジフルオロエタンを工業的に有利に製造することのできる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類および分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する粗1,1−ジフルオロエタンと、平均細孔径が3〜6Åであり、かつ、シリカ/アルミニウム比が2.0以下であるゼオライトおよび/または平均細孔径が3.5〜6Åである炭素質吸着剤とからなる吸着剤を接触させ、粗1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の含有量を低減させる方法を用いることにより前記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
よって、本発明は、例えば、以下の[1]〜[13]に示される1,1−ジフルオロエタンの精製方法およびその用途を提供する。
[1] 分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類および分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する粗1,1−ジフルオロエタンと、平均細孔径が3〜6Åであり、かつ、シリカ/アルミニウム比が2.0以下であるゼオライトおよび/または平均細孔径が3.5〜6Åである炭素質吸着剤とからなる吸着剤を接触させ、粗1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の含有量を低減させることを特徴とする1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
[2] 分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類が、エチレン、フルオロエチレン、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である上記[1]に記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
[3] 分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類が、ジクロロエタン、1−クロロ−1−フルオロエタンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である上記[1]に記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
[4] 粗1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の総含有量が0.1vol%以下である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
[5] 粗1,1−ジフルオロエタンと前記吸着剤とを接触させる圧力が1MPa以下である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
[6] 精製された1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の総含有量が100volppm以下である上記[1]〜[5]に記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
[7] 精製された1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類の総含有量が50volppm以下である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
[8] 精製された1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類の総含有量が50volppm以下である上記[1]〜[7]のいずれかに記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
[9] 粗1,1−ジフルオロエタンが以下の(1)〜(3)の工程を含む方法により得られたものである上記[1]〜[8]のいずれかに記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
(1)1,1−ジクロロエタンおよび/または1−クロロ−1−フルオロエタンとフッ化水素とを、フッ素化触媒の存在下に反応させて、主として1,1−ジフルオロエタンを得る工程
(2)工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物中より、フッ化水素、1,1−ジクロロエタンおよび/または1−クロロ−1−フルオロエタンを分離し、反応工程に循環する工程
(3)工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物中より、塩化水素および/または1,1−ジフルオロエタンを蒸留し、分離する工程
[10] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載の方法を用いて精製された1,1−ジフルオロエタンであって、含有される水分が5volppm以下である1,1−ジフルオロエタン製品。
(2)工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物中より、フッ化水素、1,1−ジクロロエタンおよび/または1−クロロ−1−フルオロエタンを分離し、反応工程に循環する工程
(3)工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物中より、塩化水素および/または1,1−ジフルオロエタンを蒸留し、分離する工程
[10] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載の方法を用いて精製された1,1−ジフルオロエタンであって、含有される水分が5volppm以下である1,1−ジフルオロエタン製品。
[11] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載の方法を用いて精製された1,1−ジフルオロエタンであって、含有されるフッ化水素が2volppm以下である1,1−ジフルオロエタン製品。
[12] 上記[10]または[11]に記載の1,1−ジフルオロエタン製品を含むことを特徴とする冷媒。
[13] 上記[10]または[11]に記載の1,1−ジフルオロエタン製品を含むことを特徴とするエッチングガス。
本発明によれば、高純度な1,1−ジフルオロエタンを簡便な方法で、効率的に製造することができ、得られた精製1,1−ジフルオロエタンは低温用冷媒やエッチングガスとして使用することができる。
以下、本発明の好ましい態様について詳しく説明する。
前述したように、CH3 CHF2 の製造方法としては、例えば、(1)クロロエチレンや1−クロロ−1−フルオロエタン等を気相でフッ素化触媒を用いてフッ素化する方法、(2)塩素化フッ素化炭化水素を触媒の存在下に水素で還元して製造する方法等が知られている。これらの方法を用いてCH3 CHF2 を製造すると、一般的に行なわれる蒸留操作などによる精製を行った場合であっても、CH3 CHF2 と分離することが困難な不純物が含まれる。これらの不純物としては、例えば、ハイドロカーボン(HC)類、ハイドロクロロカ−ボン(HCC)類、クロロフルオロカーボン(CFC)類、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類、ハイドロフルオロカーボン(HFC)類が挙げられ、これらの不純物をできる限り除去して高純度化する必要がある。
本発明の1,1−ジフルオロエタンの精製方法は、分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類および分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する粗1,1−ジフルオロエタンと、平均細孔径が3〜6Åであり、かつ、シリカ/アルミニウム比が2.0以下であるゼオライトおよび/または平均細孔径が3.5〜6Åである炭素質吸着剤とからなる吸着剤を接触させ、粗1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の含有量を低減させることを特徴とする。
粗1,1−ジフルオロエタンに不純物として含まれる、分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類としては、例えば、エチレン、フルオロエチレン、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。また、分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類としては、例えば、ジクロロエタン、1−クロロ−1−フルオロエタンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらの不純物を含む粗1,1−ジフルオロエタンは、公知の蒸留操作のみによって精製することが困難であり、そこで本発明者らは吸着剤の極性や細孔径などを考慮し、吸着剤の種類や吸着条件などを変化させる等の検討を重ねた。
その結果、平均細孔径が3〜6Åであり、かつ、シリカ/アルミニウム比(Si/Al)が2.0以下であるゼオライトと接触させることにより、前記の不純物を選択的に吸着して除去することができることを見出した。シリカ/アルミニウム比が2.0以下であっても、平均細孔径が3Å未満であるか、または6Åを超えるゼオライトでは、前記の不純物を低減する効果は認められなかった。また、平均細孔径が3〜6Åの範囲であっても、シリカ/アルミニウム比が2.0を超えるゼオライトにも前記の不純物を低減する効果は認められなかった。
また、平均細孔径が3.5〜6Åである炭素質吸着剤(例えば、モレキュラーシービングカーボン)と接触させることにより、前記の不純物を選択的に吸着して除去することができることを見出した。しかし、平均細孔径が3.5Å未満であるか、または6Åを超える炭素質吸着剤を用いた場合には、前記の不純物を低減する効果は認められなかった。例えば、平均細孔径が35Å程度の活性炭は一般に使用され、強い吸着能を有することが知られているが、前記の不純物を低減する効果は認められなかった。
前記のゼオライトや前記の炭素質吸着剤は、それぞれ単独で使用されてもよく、あるいは両者を任意の割合で組み合わせて使用されてもよい。
粗1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記の不純物の総含有量は0.1vol%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05vol%である。不純物の総含有量が0.1vol%を超えると、吸着剤の使用量が多くなり、1,1−ジフルオロエタンのロスや設備費等が高くなり、好ましくない。
本発明の1,1−ジフルオロエタンの精製方法において、前記不純物を含有する粗1,1−ジフルオロエタンを前記吸着剤と接触させる方法は、特に限定されず、例えば、気相で接触させる方法、あるいは液相で接触させる方法のいずれの方法も可能であるが、液相で接触させる方法が効率がよく好ましい。また、液相で接触させる方法としては、回分式や連続式などの公知の方法を用いることができ、例えば、固定床式吸着塔を2基設け、一方の吸着塔が飽和吸着に達すると、これを切りかえて再生する方法を用いることができる。粗1,1−ジフルオロエタンと吸着剤とを接触させる圧力は1MPa以下が好ましく、1MPaより大きい圧力では設備費が高くなり好ましくない。
粗1,1−ジフルオロエタンを前記のように処理し、精製して得られた1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の総含有量は100volppm以下となり、高純度な製品が得られる。また、精製された1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる、分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類の総含有量は50volppm以下であり、分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類の総含有量も50volppm以下である。すなわち、精製された1,1−ジフルオロエタンの純度は、99.99vol%以上である。
粗1,1−ジフルオロエタンは、
(1)1,1−ジクロロエタンおよび/または1−クロロ−1−フルオロエタンとフッ化水素とを、フッ素化触媒の存在下に反応させて主として1,1−ジフルオロエタンを得る工程、
(2)工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物中より、フッ化水素、1,1−ジクロロエタンおよび/または1−クロロ−1−フルオロエタンを分離し、反応工程に循環する工程、および
(3)工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物中より、塩化水素および/または1,1−ジフルオロエタンを蒸留し、分離する工程
を含む方法により得られる粗1,1−ジフルオロエタンであることが好ましい。
(1)1,1−ジクロロエタンおよび/または1−クロロ−1−フルオロエタンとフッ化水素とを、フッ素化触媒の存在下に反応させて主として1,1−ジフルオロエタンを得る工程、
(2)工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物中より、フッ化水素、1,1−ジクロロエタンおよび/または1−クロロ−1−フルオロエタンを分離し、反応工程に循環する工程、および
(3)工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物中より、塩化水素および/または1,1−ジフルオロエタンを蒸留し、分離する工程
を含む方法により得られる粗1,1−ジフルオロエタンであることが好ましい。
工程(1)は、例えば、1,1−ジクロロエタンを出発原料とし、フッ素化触媒の存在下にフッ化水素によるフッ素化反応を行って粗1,1−ジフルオロエタンを得る方法を用いることができる。フッ素化触媒としては、三価の酸化クロムを主成分とする担持型触媒または塊状型触媒が好ましい。
工程(2)において、工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物を第1蒸留塔に導入し、塔頂留出物(主として塩化水素、1,1−ジフルオロエタン)と塔底留出物として主としてフッ化水素、1,1−ジクロロエタンと1−クロロ−1−フルオロエタンを分離し、塔底留出物を反応工程に循環することが好ましい。
工程(3)において、工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物を第1蒸留塔に導入し、塔頂留出物として塩化水素と1,1−ジフルオロエタンを回収し、これを第2蒸留塔に導入し、塔頂より主として塩化水素を留出させ、塔底より主として1,1−ジフルオロエタンを留出させ、その後、前記記載の精製方法を実施することが好ましい。
また、より好ましくは工程(3)の第2蒸留塔の塔底留出物である主として1,1−ジフルオロエタン中に含まれる共沸分の酸分、主としてフッ化水素をアルカリ水溶液や水等で洗浄することが好ましく、より好ましくは洗浄後、脱水工程を設けることがよく、その後、前記記載の精製方法を実施するのがよい。
前記の精製後の1,1−ジフルオロエタンは、前述の如く、純度99.99vol%以上を有しており、特に水分は5volppm以下、フッ化水素(酸分)は2volppm以下である。
1,1−ジフルオロエタン中に含まれる不純物の含有量の測定は、ガスクロマトグラフ(GC)法のTCD法、FID法あるいはガスクロマトグラフ−質量計(GC−MS)法等により実施することができ、酸分はイオンクロマト法、水分はカールフィッシャー法等により測定することができる。
さらに、高純度の1,1−ジフルオロエタンは、冷媒用途以外に、1,1−ジフルオロエタン、He、N2 、Ar等の不活性ガス、HCl、O2 、H2 等との混合ガスは、半導体デバイス製造工程におけるエッチング工程のエッチングガスとして用いることができる。LSIやTFT、有機EL等の半導体デバイスの製造プロセスでは、CVD法、スパッタリング法、あるいは蒸着法などを用いて薄膜や厚膜を形成し、回路パターンを形成するためにエッチングを行なう際、前述の1,1−ジフルオロエタンを含むガスをエッチングガスとして用いることができる。1,1−ジフルオロエタンを用いるエッチング方法は、プラズマエッチング、マイクロ波エッチング等の各種ドライエッチング条件で実施することができる。
以下、実施例および比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
粗1,1−ジフルオロエタンの調製例1(原料例1)
触媒(三価の酸化クロムを主成分とする)が充填されている反応器に1,1−ジクロロエタンとフッ化水素を導入し、温度290℃で反応させ、主として1,1−ジフルオロエタン、塩化水素および/または未反応のフッ化水素を主成分とするガスを生成させ、蒸留操作等により、フッ化水素、塩化水素を除去し、粗1,1−ジフルオロエタンを得た。
触媒(三価の酸化クロムを主成分とする)が充填されている反応器に1,1−ジクロロエタンとフッ化水素を導入し、温度290℃で反応させ、主として1,1−ジフルオロエタン、塩化水素および/または未反応のフッ化水素を主成分とするガスを生成させ、蒸留操作等により、フッ化水素、塩化水素を除去し、粗1,1−ジフルオロエタンを得た。
得られた粗1,1−ジフルオロエタンをガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成を有していた。
CH3 CHF2 99.9461 CH2 =CH2 0.0018
CH2 =CHF 0.0143 CF3 CHClF 0.0013
CH2 =CHCl 0.0261 CH3 CHClF 0.0089
CH2 =CCl2 0.0012 CH3 CHCl2 0.0003
(単位:vol%)
また、得られた粗1,1−ジフルオロエタン中の水分の含有量は25volppmであり、フッ化水素の含有量は6volppmであった。
CH2 =CHF 0.0143 CF3 CHClF 0.0013
CH2 =CHCl 0.0261 CH3 CHClF 0.0089
CH2 =CCl2 0.0012 CH3 CHCl2 0.0003
(単位:vol%)
また、得られた粗1,1−ジフルオロエタン中の水分の含有量は25volppmであり、フッ化水素の含有量は6volppmであった。
粗1,1−ジフルオロエタンの調製例2(原料例2)
調製例1(原料例1)で得られた粗1,1−ジフルオロエタンについて更に公知の方法にしたがって蒸留操作を行ない、粗1,1−ジフルオロエタンを得た。
調製例1(原料例1)で得られた粗1,1−ジフルオロエタンについて更に公知の方法にしたがって蒸留操作を行ない、粗1,1−ジフルオロエタンを得た。
得られた粗1,1−ジフルオロエタンをガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成を有していた。
CH3 CHF2 99.9666 CH2 =CH2 0.0006
CH2 =CHF 0.0083 CF3 CHClF 0.0011
CH2 =CHCl 0.0178 CH3 CHClF 0.0052
CH2 =CCl2 0.0004
(単位:vol%)
また、得られた粗1,1−ジフルオロエタン中の水分の含有量は23volppmであり、フッ化水素の含有量は6volppmであった。
CH2 =CHF 0.0083 CF3 CHClF 0.0011
CH2 =CHCl 0.0178 CH3 CHClF 0.0052
CH2 =CCl2 0.0004
(単位:vol%)
また、得られた粗1,1−ジフルオロエタン中の水分の含有量は23volppmであり、フッ化水素の含有量は6volppmであった。
実施例1
容積200mlのステンレス製シリンダーに、ゼオライト[モレキュラーシーブス5A(ユニオン昭和株式会社製:平均細孔径4.2Å、Si/Al比=1.0)]を20g充填し、真空乾燥後、シリンダーを冷却しながら原料例1の粗1,1−ジフルオロエタンを約80g充填し、温度を−10℃に保ちながら時々攪拌し、約20時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成であった。
容積200mlのステンレス製シリンダーに、ゼオライト[モレキュラーシーブス5A(ユニオン昭和株式会社製:平均細孔径4.2Å、Si/Al比=1.0)]を20g充填し、真空乾燥後、シリンダーを冷却しながら原料例1の粗1,1−ジフルオロエタンを約80g充填し、温度を−10℃に保ちながら時々攪拌し、約20時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成であった。
CH3 CHF2 99.9925 CH2 =CH2 0.0001
CH2 =CHF 0.0003 CF3 CHClF 0.0007
CH2 =CHCl 0.0021 CH3 CHClF 0.0035
CH2 =CCl2 0.0007 CH3 CHCl2 0.0001
(単位:vol%)
また、精製によって得られた1,1−ジフルオロエタン中の水分の含有量をカールフィッシャー法(水分分析装置)により分析したところ3volppmであり、フッ化水素の含有量をイオンクロマト法により測定したところ1volppmであった。
CH2 =CHF 0.0003 CF3 CHClF 0.0007
CH2 =CHCl 0.0021 CH3 CHClF 0.0035
CH2 =CCl2 0.0007 CH3 CHCl2 0.0001
(単位:vol%)
また、精製によって得られた1,1−ジフルオロエタン中の水分の含有量をカールフィッシャー法(水分分析装置)により分析したところ3volppmであり、フッ化水素の含有量をイオンクロマト法により測定したところ1volppmであった。
実施例2
容積200mlのステンレス製シリンダーに、炭素質吸着剤[モレキュラーシービングカーボン4A(武田薬品工業株式会社製:平均細孔径4Å)]を20g充填し、真空乾燥後、シリンダーを冷却しながら原料例1の粗1,1−ジフルオロエタンを約80g充填し、温度を−20℃に保ちながら時々攪拌し、約18時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成であった。
容積200mlのステンレス製シリンダーに、炭素質吸着剤[モレキュラーシービングカーボン4A(武田薬品工業株式会社製:平均細孔径4Å)]を20g充填し、真空乾燥後、シリンダーを冷却しながら原料例1の粗1,1−ジフルオロエタンを約80g充填し、温度を−20℃に保ちながら時々攪拌し、約18時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成であった。
CH3 CHF2 99.9975 CH2 =CH2 0.0001
CH2 =CHF 0.0005 CF3 CHClF 0.0002
CH2 =CHCl 0.0011 CH3 CHClF 0.0004
CH2 =CCl2 0.0001 CH3 CHCl2 0.0001
(単位:vol%)
実施例3
容積200mlのステンレス製シリンダーに、実施例1で用いたゼオライト〔モレキュラーシーブス5A〕15gと実施例2で用いた炭素質吸着剤〔モレキュラーシービングカーボン4A〕15gを混合して充填し、乾燥後、シリンダーを冷却しながら原料例2の粗1,1−ジフルオロエタンを約100g充填し、温度を10℃に保ちながら時々攪拌し、約20時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成であった。
CH2 =CHF 0.0005 CF3 CHClF 0.0002
CH2 =CHCl 0.0011 CH3 CHClF 0.0004
CH2 =CCl2 0.0001 CH3 CHCl2 0.0001
(単位:vol%)
実施例3
容積200mlのステンレス製シリンダーに、実施例1で用いたゼオライト〔モレキュラーシーブス5A〕15gと実施例2で用いた炭素質吸着剤〔モレキュラーシービングカーボン4A〕15gを混合して充填し、乾燥後、シリンダーを冷却しながら原料例2の粗1,1−ジフルオロエタンを約100g充填し、温度を10℃に保ちながら時々攪拌し、約20時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成であった。
CH3 CHF2 99.9984 CH2 =CH2 0.0001
CH2 =CHF 0.0003 CF3 CHClF 0.0002
CH2 =CHCl 0.0005 CH3 CHClF 0.0004
CH2 =CCl2 0.0001
(単位:vol%))
また、精製によって得られた1,1−ジフルオロエタン中の水分の含有量は4volppmであり、フッ化水素の含有量は1volppmであった。
CH2 =CHF 0.0003 CF3 CHClF 0.0002
CH2 =CHCl 0.0005 CH3 CHClF 0.0004
CH2 =CCl2 0.0001
(単位:vol%))
また、精製によって得られた1,1−ジフルオロエタン中の水分の含有量は4volppmであり、フッ化水素の含有量は1volppmであった。
実施例4
容積200mlのステンレス製シリンダーに、ゼオライト[モレキュラーシーブス4A(ユニオン昭和株式会社:平均細孔径3.5Å、Si/Al比=1.0)]を20g充填し、真空乾燥後、シリンダーを冷却しながら原料例2の粗1,1−ジフルオロエタンを約80g充填し、温度を10℃に保ちながら時々攪拌し、約20時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成であった。
容積200mlのステンレス製シリンダーに、ゼオライト[モレキュラーシーブス4A(ユニオン昭和株式会社:平均細孔径3.5Å、Si/Al比=1.0)]を20g充填し、真空乾燥後、シリンダーを冷却しながら原料例2の粗1,1−ジフルオロエタンを約80g充填し、温度を10℃に保ちながら時々攪拌し、約20時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成であった。
CH3 CHF2 99.9911 CH2 =CH2 0.0002
CH2 =CHF 0.0011 CF3 CHClF 0.0010
CH2 =CHCl 0.0032 CH3 CHClF 0.0032
CH2 =CCl2 0.0002
(単位:vol%)
比較例1
容積200mlのステンレス製シリンダーに、ゼオライト[モレキュラーシーブス13X(ユニオン昭和株式会社製:平均細孔径10Å、Si/Al比=1.2]を20g充填し、真空乾燥後、シリンダ−を冷却しながら原料例2の粗1,1−ジフルオロエタンを約80g充填し、温度を10℃に保ちながら時々攪拌し、約20時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成であった。
CH2 =CHF 0.0011 CF3 CHClF 0.0010
CH2 =CHCl 0.0032 CH3 CHClF 0.0032
CH2 =CCl2 0.0002
(単位:vol%)
比較例1
容積200mlのステンレス製シリンダーに、ゼオライト[モレキュラーシーブス13X(ユニオン昭和株式会社製:平均細孔径10Å、Si/Al比=1.2]を20g充填し、真空乾燥後、シリンダ−を冷却しながら原料例2の粗1,1−ジフルオロエタンを約80g充填し、温度を10℃に保ちながら時々攪拌し、約20時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下に示す組成であった。
CH3 CHF2 99.9711 CH2 =CH2 0.0006
CH2 =CHF 0.0077 CF3 CHClF 0.0009
CH2 =CHCl 0.0146 CH3 CHClF 0.0048
CH2 =CCl2 0.0003
(単位:vol%)
上記結果から明らかなように、Si/Al比が2.0以下でも、平均細孔径が6Åを超えるゼオライトでは、不純物を選択的に吸着除去することができないことが分かった。
CH2 =CHF 0.0077 CF3 CHClF 0.0009
CH2 =CHCl 0.0146 CH3 CHClF 0.0048
CH2 =CCl2 0.0003
(単位:vol%)
上記結果から明らかなように、Si/Al比が2.0以下でも、平均細孔径が6Åを超えるゼオライトでは、不純物を選択的に吸着除去することができないことが分かった。
比較例2
容積200mlのステンレス製シリンダーに、活性炭[粒状白サギKL(武田薬品工業株式会社製:平均細孔径35Å)]を20g 充填し、真空乾燥後、シリンダ−を冷却しながら原料例2の粗1,1−ジフルオロエタンを約80g充填し、温度を10℃に保ちながら時々攪拌し、約20時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下の組成であった。
容積200mlのステンレス製シリンダーに、活性炭[粒状白サギKL(武田薬品工業株式会社製:平均細孔径35Å)]を20g 充填し、真空乾燥後、シリンダ−を冷却しながら原料例2の粗1,1−ジフルオロエタンを約80g充填し、温度を10℃に保ちながら時々攪拌し、約20時間後に液相部をガスクロマトグラフで分析したところ、以下の組成であった。
CH3 CHF2 99.9694 CH2 =CH2 0.0006
CH2 =CHF 0.0081 CF3 CHClF 0.0008
CH2 =CHCl 0.0166 CH3 CHClF 0.0044
CH2 =CCl2 0.0001
(単位:vol%)
上記結果から明らかなように、細孔径の大きい活性炭では、不純物を選択的に吸着除去することができないことが分かった。
CH2 =CHF 0.0081 CF3 CHClF 0.0008
CH2 =CHCl 0.0166 CH3 CHClF 0.0044
CH2 =CCl2 0.0001
(単位:vol%)
上記結果から明らかなように、細孔径の大きい活性炭では、不純物を選択的に吸着除去することができないことが分かった。
本発明によれば、低温用冷媒やエッチングガスとして使用することができる、高純度な1,1−ジフルオロエタンを工業的に有利に製造することができる。
Claims (13)
- 分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類および分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する粗1,1−ジフルオロエタンと、平均細孔径が3〜6Åであり、かつ、シリカ/アルミニウム比が2.0以下であるゼオライトおよび/または平均細孔径が3.5〜6Åである炭素質吸着剤とからなる吸着剤を接触させ、粗1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の含有量を低減させることを特徴とする1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
- 分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類が、エチレン、フルオロエチレン、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
- 分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類が、ジクロロエタン、1−クロロ−1−フルオロエタンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
- 粗1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の総含有量が0.1vol%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
- 粗1,1−ジフルオロエタンと前記吸着剤とを接触させる圧力が1MPa以下である請求項1〜4のいずれかに記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
- 精製された1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる前記化合物の総含有量が100volppm以下である請求項1〜5に記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
- 精製された1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる分子内に2個の炭素原子を含む不飽和化合物類の総含有量が50volppm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
- 精製された1,1−ジフルオロエタン中に不純物として含まれる分子内に2個の炭素原子を含む飽和含塩素化合物類の総含有量が50volppm以下である請求項1〜7のいずれかに記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
- 粗1,1−ジフルオロエタンが以下の(1)〜(3)の工程を含む方法により得られたものである請求項1〜8のいずれかに記載の1,1−ジフルオロエタンの精製方法。
(1)1,1−ジクロロエタンおよび/または1−クロロ−1−フルオロエタンとフッ化水素とを、フッ素化触媒の存在下に反応させて、主として1,1−ジフルオロエタンを得る工程
(2)工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物中より、フッ化水素、1,1−ジクロロエタンおよび/または1−クロロ−1−フルオロエタンを分離し、反応工程に循環する工程
(3)工程(1)で得られた1,1−ジフルオロエタンを含む生成物中より、塩化水素および/または1,1−ジフルオロエタンを蒸留し、分離する工程 - 請求項1〜9のいずれかに記載の方法を用いて精製された1,1−ジフルオロエタンであって、含有される水分が5volppm以下である1,1−ジフルオロエタン製品。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の方法を用いて精製された1,1−ジフルオロエタンであって、含有されるフッ化水素が2volppm以下である1,1−ジフルオロエタン製品。
- 請求項10または11に記載の1,1−ジフルオロエタン製品を含むことを特徴とする冷媒。
- 請求項10または11に記載の1,1−ジフルオロエタン製品を含むことを特徴とするエッチングガス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004324796A JP2005162738A (ja) | 2003-11-10 | 2004-11-09 | 1,1−ジフルオロエタンの精製方法およびその用途 |
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JP2004324796A JP2005162738A (ja) | 2003-11-10 | 2004-11-09 | 1,1−ジフルオロエタンの精製方法およびその用途 |
Publications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016505684A (ja) * | 2012-12-26 | 2016-02-25 | アルケマ フランス | 1,1−ジフルオロエタン及び3,3,3−トリフルオロプロペンを含有する組成物 |
-
2004
- 2004-11-09 JP JP2004324796A patent/JP2005162738A/ja not_active Abandoned
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JP2016505684A (ja) * | 2012-12-26 | 2016-02-25 | アルケマ フランス | 1,1−ジフルオロエタン及び3,3,3−トリフルオロプロペンを含有する組成物 |
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