JP2005162522A - 被覆線条体の製造方法、及び被覆線条体製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 線条体の表面に塗布された樹脂に充分なエネルギー密度で効率よく紫外線を照射することができる被覆線条体の製造方法及び被覆線条体製造装置を提供する。
【解決手段】 線条体2に液状の樹脂31を塗布し、紫外線照射装置40内に設けられた透明管41内に該線条体2を通過させる。そして、紫外線光源42から紫外線UVを照射する。このとき、集光中心Bからの紫外線照度の低下が20%以下である領域C1内を線条体2の中心線が通過するように、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70が配置される。線条体2に塗布された樹脂31に紫外線が照射されることにより樹脂31が硬化して被覆層3となり、線条体2及び被覆層3を含む被覆線条体1が完成する。
【選択図】 図2
【解決手段】 線条体2に液状の樹脂31を塗布し、紫外線照射装置40内に設けられた透明管41内に該線条体2を通過させる。そして、紫外線光源42から紫外線UVを照射する。このとき、集光中心Bからの紫外線照度の低下が20%以下である領域C1内を線条体2の中心線が通過するように、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70が配置される。線条体2に塗布された樹脂31に紫外線が照射されることにより樹脂31が硬化して被覆層3となり、線条体2及び被覆層3を含む被覆線条体1が完成する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、線条体に樹脂が被覆された被覆線条体の製造方法、及び被覆線条体製造装置に関するものである。
一般的に、光ファイバの製造工程には、ファイバ母材を線引きして線条体を形成する工程と、紫外線によって硬化する樹脂で線条体の表面を被覆する工程とが含まれる。具体的には、(1)ファイバ母材を加熱して線引きし、冷却することにより線条体を形成する工程と、(2)線条体の表面を覆うように樹脂を塗布する工程と、(3)紫外線に対し透光性を有する透明管内に線条体を通過させるとともに、線条体に塗布された樹脂に紫外線を照射して硬化させることにより被覆層を形成する工程と、(4)被覆層が形成された線条体(すなわち被覆線条体)を巻き取る工程と、を経て光ファイバが完成する。
光ファイバを製造する際には、製造効率を高めるために、線条体の走行速度をより速くすることが望ましい。線条体の走行速度を高速化する場合、線条体に塗布された樹脂を充分に硬化させるために、複数の紫外線光源を並べて照射するか、或いは線条体に照射される紫外線のエネルギー密度を高める必要がある。
樹脂に照射される紫外線のエネルギー密度を高める場合には、従来より、紫外線を反射する反射鏡によって紫外線光源及び透明管を囲み、透明管内に紫外線を集光する方法が用いられている。すなわち、走行方向と直交する断面が楕円状となるような反射鏡を設け、その楕円の一方の焦点に紫外線光源を配置し、他方の焦点に透明管(線条体)を配置することによって、紫外線光源から出射された紫外線を反射鏡により反射して透明管内へ集光する。こうして、紫外線光源からの紫外線が透明管内へ効率よく集められ、樹脂に照射される紫外線のエネルギー密度が高められる。
しかしながら、例えば上記の方法により紫外線を透明管内へ集光する場合、紫外線を好適に集光できたとしても、その集光中心から離れたラインを線条体が通過すると、紫外線照射効率が低下し、樹脂に照射される紫外線のエネルギー密度が低下してしまう。樹脂に照射される紫外線のエネルギー密度が低下すると、樹脂の硬化が不十分となり、線条体を保護するのに必要な被覆層の特性が得られないだけでなく、被覆層の長期的な信頼性(耐久性)が低下するおそれもある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、線条体の表面に塗布された樹脂に充分なエネルギー密度で効率よく紫外線を照射することができる被覆線条体の製造方法及び被覆線条体製造装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明による被覆線条体の製造方法は、樹脂を保持するとともに、樹脂中を通過した線条体に樹脂を塗布する塗布装置と、樹脂を塗布された線条体が所定の走行方向に沿って移動するように線条体を案内するガイドローラと、紫外線に対して透光性を有する透明管、紫外線を発生する紫外線光源、及び紫外線光源からの紫外線を透明管内へ向けて集光する集光部材を有し、線条体が透明管内を通過するように塗布装置とガイドローラとの間に配置された紫外線照射装置とを用いる被覆線条体の製造方法であって、透明管内における紫外線の集光中心からの紫外線照度の低下が集光中心における紫外線照度の20%以下である領域内を線条体の中心線が通過するように、塗布装置、ガイドローラならびに紫外線光源及び集光部材のうち少なくとも1つの位置を制御することを特徴とする。
また、本発明による被覆線条体製造装置は、樹脂を保持するとともに、樹脂中を通過した線条体に樹脂を塗布する塗布装置と、樹脂を塗布された線条体が所定の走行方向に沿って移動するように線条体を案内するガイドローラと、紫外線に対して透光性を有する透明管、紫外線を発生する紫外線光源、及び紫外線光源からの紫外線を透明管内へ向けて集光する集光部材を有し、線条体が透明管内を通過するように塗布装置とガイドローラとの間に配置された紫外線照射装置とを備え、透明管内における紫外線の集光中心からの紫外線照度の低下が集光中心における紫外線照度の20%以下である領域内を線条体の中心線が通過するように、塗布装置、ガイドローラ、ならびに紫外線光源及び集光部材が、それらのうち少なくとも一つがその位置を変わりうるように配置されることを特徴とする。
上記した被覆線条体の製造方法または被覆線条体製造装置では、透明管内における集光中心からの紫外線照度の低下が20%以下である領域内を線条体の中心線に通過させている。本発明者らは、集光中心からの低下が20%以下である紫外線照度でもって線条体の表面に塗布された樹脂に紫外線を照射すれば、樹脂の硬化度が80%以上となり、線条体を保護するのに充分な特性を有する被覆層が得られることを見出した。従って、上記した被覆線条体の製造方法または被覆線条体製造装置によれば、線条体の表面に塗布された樹脂に充分なエネルギー密度で効率よく紫外線を照射することができる。
なお、被覆線条体の製造方法(被覆線条体製造装置)は、透明管内における紫外線の集光中心からの紫外線照度の低下が集光中心における紫外線照度の10%以下である領域内を線条体の中心線に通過させるのがより好ましい。集光中心からの紫外線照度の低下が10%以内である領域内を通過させると、樹脂の硬化度が85%以上となり、被覆層が線条体を保護する機能がさらに高まり、かつ長期的な信頼性も高まる。
また、被覆線条体の製造方法(被覆線条体製造装置)は、塗布装置とガイドローラとに挟まれた区間において(塗布装置とガイドローラとの間に設置され)、所定の走行方向と交差する面内における線条体の位置を計測する計測工程(計測部)と、透明管内における領域内を線条体の中心線が通過するように、計測工程における(計測部からの)線条体の位置情報に基づいて、塗布装置、ガイドローラ、ならびに紫外線光源及び集光部材のうち少なくとも1つの位置を制御する制御工程(制御部)とをさらに備えることを特徴としてもよい。これにより、透明管内における集光中心からの紫外線照度の低下が20%以下である領域内を線条体の中心線に好適に通過させることができる。
本発明による被覆線条体の製造方法及び被覆線条体製造装置によれば、線条体の表面に塗布された樹脂に充分なエネルギー密度で効率よく紫外線を照射することができる。
以下に、図面と共に本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、同一の要素には同一の符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
まず、本実施形態に係る被覆線条体の製造方法によって製造される被覆線条体について説明する。図1は、被覆線条体1の斜視図である。本実施形態において、被覆線条体1は光ファイバ素線であって、線条体2と、線条体2の表面を被覆している被覆層3とを含んで構成されている。線条体2は、光ファイバ母材を線引きして形成されたガラスファイバである。被覆層3は、紫外線が照射されると硬化する紫外線硬化型の樹脂からなり、線条体2の表面を保護する機能を有している。なお、被覆層3は、線条体2に隣接している内層と、その内層を取り巻く外層との2層から構成されている。
次に、本実施形態に用いられる被覆線条体の製造装置について説明する。図2は、被覆線条体1を製造する製造装置10を示す図である。図2を参照すると、製造装置10は、線引炉20、冷却装置60、樹脂コーティングダイス30、計測部50、紫外線照射装置40、ガイドローラ70、引き取り装置100、巻き取りドラム80、及び制御部90を備えている。
製造装置10においては、これらの装置のうち、線引炉20及びガイドローラ70が、線引炉20からガイドローラ70に達する線条体2が所定の走行方向dに沿って移動するように配置されている。そして、冷却装置60、樹脂コーティングダイス30、計測部50、及び紫外線照射装置40が、所定の走行方向dに沿った線条体2が好適に通過するように、順に配置されている。なお、本実施形態では、所定の走行方向dは鉛直方向に設定されている。
線引炉20は、石英ガラスを主成分とする光ファイバ母材4を線引きして線条体2を形成するための装置である。線引炉20は、線引炉20内にセットされる光ファイバ母材4を挟んで(或いは囲んで)配置されるヒータ21を有している。光ファイバ母材4は、その端部がヒータ21により加熱されて溶融し、線引きされて線条体2となる。線引きされた線条体2は、所定の走行方向dに沿って移動する。
冷却装置60は、線引きされた線条体2を冷却するための装置である。冷却装置60は、線条体2を充分に冷却するために所定の走行方向dに沿って所定の長さを備えている。冷却装置60は、線条体2を冷却するために例えば図示しない吸気口及び排気口を備え、この吸気口及び排気口から冷却用ガスを導入することによって線条体2を冷却する。
樹脂コーティングダイス30は、線条体2に樹脂を塗布するための塗布装置である。樹脂コーティングダイス30には紫外線によって硬化する液状の樹脂31が保持されており、樹脂コーティングダイス30の樹脂31中を線条体2が通過することによって線条体2の表面に樹脂31が塗布される。また、樹脂コーティングダイス30には図示しないアクチュエータが設けられており、該アクチュエータによって、所定の走行方向dと交差する(本実施形態では、直交する)面内における樹脂コーティングダイス30の位置を変更することが可能となっている。このとき、アクチュエータは、後述する制御部90からのダイス制御信号Sc1に基づいて、樹脂コーティングダイス30の位置を変更する。なお、図2には1つの樹脂コーティングダイス30が示されているが、図1に示した被覆層3を内層及び外層の2層構造とする場合には、例えば樹脂コーティングダイス30を2つ備えるとよい。
計測部50は、所定の走行方向dと交差する(直交する)面内における線条体2の位置を計測するための装置である。計測部50は、本実施形態では樹脂コーティングダイス30と紫外線照射装置40との間に設置されているが、樹脂コーティングダイス30とガイドローラ70との間であれば、任意の位置に設置される。また、1台に限らず、複数台を設置してもよい。例えば、紫外線照射装置40の上下に1台ずつ計2台設置してもよい。
計測部50としては、例えばレーザ光を用いた外径測定器を好適に用いることができる。例えば、計測部50は、線条体2を挟むように配置された2組のレーザ出射部51及びレーザ受光部52を有している。レーザ出射部51は例えばレーザ素子が二次元状に配列されたレーザアレイであり、レーザ受光部52は例えば画素が二次元状に配列されたイメージセンサである。レーザ出射部51及びレーザ受光部52は、それらの長手方向が線条体2の走行方向dと直交するように配置されている。そして、2組のレーザ出射部51及びレーザ受光部52は、それぞれのレーザ光出射方向が互いに直交するように配置されている。計測部50は、レーザ出射部51から出射されたレーザ光のうち線条体2によって遮られなかったレーザ光をレーザ受光部52が受光することによって、走行方向dと交差する面内における線条体2の位置を計測する。計測部50は、計測した線条体2の位置情報を含む位置信号Spを制御部90に送る。計測部50は、いわゆる外径測定器を使用して、線条体2または被覆線条体1の外径を測定すると同時に位置を計測してもよい。
紫外線照射装置40は、線条体2の表面に塗布された樹脂31に紫外線を照射して樹脂31を硬化させるための装置である。紫外線照射装置40は、紫外線照射装置40を通過する線条体2を覆う透明管41と、樹脂31を硬化させるための紫外線UVを出力する紫外線光源42とを含んで構成されている。線条体2に塗布された樹脂31は、線条体2が紫外線照射装置40を通過することによって硬化し、線条体2を覆う被覆層3となる。すなわち、表面に樹脂31が塗布された線条体2が紫外線照射装置40を通過することによって、線条体2及び被覆層3を有する被覆線条体1が形成される。
また、紫外線照射装置40には図示しないアクチュエータが設けられており、該アクチュエータによって、所定の走行方向dと交差する(直交する)面内における紫外線照射装置40の位置を変更することが可能となっている。このとき、透明管41内を走行する線条体2の位置は変化しないので、紫外線照射装置40と線条体2との相対位置が変化することとなる。また、アクチュエータは、後述する制御部90からの紫外線照射装置制御信号Sc2に基づいて、紫外線照射装置40の位置を変更する。なお、アクチュエータは、紫外線照射装置40全体の位置を変更する以外にも、例えば紫外線照射装置40が有する紫外線光源42及び反射鏡43(後述)の位置を変更してもよい。紫外線照射装置40と紫外線光源42とを連結して、連結箇所にアクチュエータを差動して紫外線照射装置40と紫外線光源42との位置を変更すると、紫外線UVの集光中心Bの広がりが変わらないので好ましい。
ガイドローラ70は、樹脂31が塗布された線条体2が所定の走行方向dに沿って移動するように線条体2を案内するための装置である。引き取り装置100に引き取られた被覆線条体1は、ガイドローラ70により走行方向が変更されて巻き取りドラム80へ送られる。巻き取りドラム80は、完成した被覆線条体1を巻き取るための装置である。
また、ガイドローラ70には図示しないアクチュエータが設けられており、該アクチュエータによって、所定の走行方向dと交差する(直交する)面内におけるガイドローラ70の位置を変更することが可能となっている。このとき、アクチュエータは、後述する制御部90からのガイドローラ制御信号Sc3に基づいて、ガイドローラ70の位置を変更する。
ここで、図3(a)は、紫外線照射装置40の構成を示す、走行方向dに沿った断面図である。また、図3(b)は、紫外線照射装置40の構成を示す、走行方向dと直交する方向に沿った断面図である。図3(a)及び図3(b)を参照すると、紫外線照射装置40は、透明管41、紫外線光源42、反射鏡43、及びこれらを収容する筐体44を備えている。透明管41及び紫外線光源42は、その長手方向が線条体2の走行方向dに沿うように並んで配置されている。そして、樹脂31が塗布された線条体2が透明管41のほぼ中心を移動する。
反射鏡43は、紫外線光源42からの紫外線UVを透明管41内へ向けて集光するための集光部材である。反射鏡43は、線条体2の走行方向に沿って延びる筒状を呈しており、透明管41及び紫外線光源42の周囲を覆っている。図3(b)に示すように、線条体2の走行方向と直交する反射鏡43の断面形状は楕円である。そして、その楕円の2つ焦点の位置にそれぞれ線条体2及び紫外線光源42が配置されている。反射鏡43の内面は紫外線を反射する反射面となっており、紫外線光源42からの紫外線UVは、反射鏡43の内面において反射した後、透明管41を透過して、線条体2に塗布された樹脂31に照射される。
透明管41は、紫外線に対して透光性を有していれば特に限定されないが、例えば、石英管が好適に用いられる。また、透明管41内に酸素が存在すると樹脂31が硬化しにくくなるので、透明管41内の酸素を追い出すために透明管41内に不活性ガスGが導入される。
また、透明管41内に不活性ガスGを流すことにより、以下のような効果を得ることができる。すなわち、樹脂31に紫外線UVを照射すると、硬化反応熱や輻射熱によって樹脂31の低分子量成分が揮発する。この樹脂31の揮発成分が透明管41内面に付着して硬化すると、透明管41内面が曇り、紫外線UVが遮られてしまう。これに対し、本実施形態のように透明管41内に不活性ガスGを流すことによって、樹脂31の揮発成分を除去することができるので、透明管41内面の曇りを防止できる。また、不活性ガスGの流れを層流に近づけることによって、透明管41内での線条体2の振動(ぶれ)を抑制することができる。
透明管41の樹脂コーティングダイス30側の端部には、不活性ガスGを導入するためのガス導入口45が形成されている。ガス導入口45にはガス導入管47が接続されており、不活性ガスGがガス導入管47を介して透明管41内に導入される。また、ガス導入管47が接続されている端部と反対側の透明管41の端部には、ガス排出口46が形成されている。ガス排出口46にはガス排出管48が接続されており、不活性ガスG及び揮発した樹脂31の成分がガス排出管48を介して排出される。
紫外線光源42は、紫外線を出力する光源であれば特に限定されないが、例えば、メタルハライドランプが好適に用いられる。紫外線光源42は、例えば図示しない制御装置に電気的に接続され、該制御装置により紫外線光源42への投入電力が制御されてもよい。
ここで、透明管41内における線条体2の通過領域について説明する。図4は、走行方向dと交差する方向の透明管41の断面を示す図である。また、図5は、透明管41内に集められた紫外線UVの照度と透明管41内の径方向位置との相関を示すグラフである。図4及び図5を参照すると、紫外線光源42から出射された紫外線UVは、反射鏡43によって集光されて透明管41内の集光中心Bに集まる。そして、紫外線UVの照度は、集光中心Bにおいて最大となり、集光中心Bから離れるにつれて減少する。従って、線条体2に塗布された樹脂31に照射される紫外線UVの照射エネルギー密度は、線条体2の中心線と集光中心Bとが一致しているとき最大となり、線条体2の中心線が集光中心Bから離れるに従い減少する。
本実施形態においては、透明管41内において線条体2の中心線が領域C1内を通過するように、さらに好ましくは線条体2の中心線が領域C2内を通過するように、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70が配置される。ここで、領域C1は、集光中心Bからの紫外線照度の低下が集光中心Bにおける紫外線照度の20%以下である領域であり、例えば集光中心Bから半径1.5mm以内の領域である。また、領域C2は、集光中心Bからの紫外線照度の低下が集光中心Bにおける紫外線照度の10%以下である領域であり、例えば集光中心Bから半径1.0mmの領域である(ともに図5参照)。
再び図2を参照する。制御部90は、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70の位置を制御するための装置である。上述したように、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70は、透明管41内において線条体2の中心線が領域C1(C2)内を通過するように配置されるが、例えば樹脂コーティングダイス30の交換の際や、紫外線照射装置40内の反射鏡43或いは紫外線光源42の交換の際に互いの相対位置がずれるおそれがある。樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70の相対位置がずれると、線条体2の走行ラインの紫外線集光中心Bに対する位置が変化して、線条体2の中心線が領域C1(C2)外に位置することとなる。そこで、制御部90が、透明管41内における領域C1内、さらに好ましくは領域C2内を線条体2の中心線が通過するように、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70それぞれの、所定の走行方向dと交差する(直交する)面内における位置を制御する。
すなわち、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70の相対位置がずれることによって線条体2の走行ラインが変化すると、この走行ラインの変化が計測部50によって検出される。制御部90は、計測部50から線条体2に関する位置信号Spを得ると、透明管41内における領域C1(C2)内を線条体2が通過するような樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70それぞれの位置を位置信号Spに基づいて演算する。そして、制御部90は、演算したそれぞれの位置情報を含むダイス制御信号Sc1、紫外線照射装置制御信号Sc2、及びガイドローラ制御信号Sc3のそれぞれを、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70に送る。それぞれのアクチュエータが作動してそれらの位置が変わる。所定の方向dと線条体2の走行ラインとがあまりずれないようにするためには、紫外線光源42及び反射鏡43、または紫外線照射装置40の位置を変更するのが好ましい。
次に、本実施形態に係る被覆線条体1の製造方法について図2及び図6を参照しながら説明する。ここで、図6は、被覆線条体1の製造方法を示すフローチャートである。図2及び図6を参照すると、本製造方法においては、まず光ファイバ母材4を線引炉20にセットする。そして、光ファイバ母材4をヒータ21によって加熱・溶融し、線引きして線条体2を形成する(ステップS1)。続いて、線条体2を走行方向dに沿って移動させ、冷却装置60を通過させる。冷却装置60では、線引きされた線条体2が冷却される(ステップS2)。
続いて、冷却された線条体2を走行方向dに沿って移動させ、樹脂コーティングダイス30を通過させる。このとき、線条体2に樹脂31が塗布される(ステップS3)。
続いて、樹脂31が塗布された線条体2を走行方向dに沿って移動させ、紫外線照射装置40を通過させる。すなわち、線条体2に紫外線照射装置40の透明管41内を通過させるとともに、紫外線光源42を点灯して線条体2に塗布された樹脂31に紫外線UVを照射する(ステップS4)。このとき、透明管41の内部を通過する線条体2の走行方向dに沿って、透明管41内に不活性ガスGを流す。また、紫外線光源42に接続された制御装置を用いて、線条体2の走行速度に応じた投入電力を紫外線光源42に供給することが好ましい。こうして、樹脂31に紫外線UVが照射されることにより、樹脂31が硬化して被覆層3が形成され、線条体2及び被覆層3を含む被覆線条体1が完成する。
続いて、被覆線条体1を走行方向dに沿って移動させた後、ガイドローラ70によって被覆線条体1の走行方向を変更し、被覆線条体1を巻き取りドラム80に送る。そして、被覆線条体1は巻き取りドラム80に巻き取られる(ステップS5)。
樹脂31が塗布された線条体2が計測部50を通過したとき、走行方向dと交差する面内における線条体2の位置が計測部50によって計測される(計測工程)。計測部50は、線条体2の位置を示す位置信号Spを生成し、位置信号Spを制御部90へ送る。
続いて、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70の位置が、制御部90によって制御される(制御工程)。すなわち、制御部90は、計測部50からの位置信号Spに基づいて、線条体2が領域C1(C2)内を通過するような樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70それぞれの位置を位置信号Spに基づいて演算する。このとき、制御部90は、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70それぞれの相対位置が、線条体2の中心線が紫外線の集光中心を通るように最初に調整された状態(初期状態)での位置信号Spと現在の位置信号Spとの差が零に近づくように、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70それぞれの位置を制御するとよい。
そして、制御部90は、演算したそれぞれの位置情報を含むダイス制御信号Sc1、紫外線照射装置制御信号Sc2、及びガイドローラ制御信号Sc3のそれぞれを、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70に送る。こうして、透明管41内において線条体2の中心線が領域C1(C2)を通過するように、線条体2の走行ラインが変更される。
以上に述べた本実施形態に係る被覆線条体の製造方法、及び被覆線条体製造装置10が有する効果について説明する。上述したように、本実施形態に係る被覆線条体の製造方法及び製造装置10では、透明管41内において集光中心Bからの紫外線照度の低下が20%以下である領域C1内を線条体2の中心線が通過するように、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40(紫外線光源42及び反射鏡43)、ならびにガイドローラ70が配置される。
ここで、下の表1は、線条体2の中心線の集光中心Bからの平均距離及び振れ幅と、線条体2に塗布された樹脂31の硬化度との相関を示す表である。集光中心Bの位置を調べる方法としては、紫外線UVを照射した状態で熱電対を用いて透明管41内における温度を調査し、温度が最大となる位置として求めることができる。これ以外にも、集光中心Bを調べる方法としては例えば一般的な紫外線照度測定器を用いて直接紫外線照度を測定してもよい。また、表1に、透明管41内での線条体2の振動(ぶれ)に起因する線条体2の長手方向における硬化度の変化を考慮し、線条体2の長手方向の最低硬化度を示す。
なお、上記表1における条件は以下の通りである。
線条体2の走行速度:500m/分
紫外線照射装置40:フュージョン(Fusion)社製F450
紫外線光源42:フュージョン社製メタルハライドランプ(Dバルブ、外径9mm)
樹脂31:ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂
被覆層3の径:内層200μm、外層245μm
線条体2の走行速度:500m/分
紫外線照射装置40:フュージョン(Fusion)社製F450
紫外線光源42:フュージョン社製メタルハライドランプ(Dバルブ、外径9mm)
樹脂31:ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂
被覆層3の径:内層200μm、外層245μm
また、硬化度の測定方法は次のとおりである。まず、完成した被覆線条体1を例えばアルコール系溶液に浸して被覆層3を膨張させるとともに振動を加えて線条体2と被覆層3とを分離させ、線条体2を取り除く。そして、被覆層3を乾燥させた後に、被覆層3のヤング率Eを表2に示す条件で測定した。このとき、ヤング率Eを、2.5%伸張時の応力と断面積とに基づいて算出した。なお、上述したように被覆層3は、内層と外層との2層から構成されているが、内層のヤング率は外層のヤング率よりも2桁程度小さいので、測定されるヤング率は外層のヤング率とみなせる。
そして、予め求めていた最大ヤング率Emax(樹脂31を完全に硬化させたときのヤング率。樹脂31への紫外線の照射とヤング率の測定とを、ヤング率が増加しなくなるまで繰り返すことにより求めた。)とヤング率Eとの比E/Emaxを、樹脂31の硬化度とした。
表1を参照すると、実施例1〜3では、樹脂31の最低硬化度がいずれも65%以上となり、樹脂31が充分に硬化している。特に、実施例1及び2では、樹脂31の最低硬化度が90%以上に達しており、樹脂31がほぼ完全に硬化している。これに対し、比較例1では、樹脂31の最低硬化度が65%に達しておらず、樹脂31が充分に硬化しているとは言い難い。
ここで、図7は、上記した実験の実施例1〜3及び比較例1のそれぞれに対応する、透明管41内における線条体2の中心線の通過領域を示す図である。実施例1では、表1に示したとおり、集光中心Bからの線条体2の中心線の平均距離が0.0mmであり、線条体2の振れ幅が1.0mmなので、線条体2は、図7に示すように集光中心Bを中心として半径±0.5mm以内の領域を通過することとなる。
また、実施例2では、集光中心Bからの線条体2の中心線の平均距離が0.5mmであり、線条体2の振れ幅が1.0mmなので、線条体2は、集光中心Bからの距離が1.0mm以内の領域を通過することとなる。また、実施例3では、集光中心Bからの線条体2の中心線の平均距離が0.5mmであり、線条体2の振れ幅が2.0mmなので、線条体2は、集光中心Bからの距離が1.5mm以内の領域を通過することとなる。また、比較例1では、集光中心Bからの線条体2の中心線の平均距離が1.0mmであり、線条体2の振れ幅が2.0mmなので、線条体2は、集光中心Bからの距離が2.0mm以内の領域を通過することとなる。
従って、集光中心Bから半径1.5mm以内、さらに好ましくは1.0mm以内の領域を線条体2の中心線が通過すれば、線条体2に塗布された樹脂31が好適に硬化する。そして、集光中心Bから1.5mm離れた位置においては、集光中心Bからの紫外線照度の低下が20%である。また、集光中心Bから1.0mm離れた位置においては、集光中心Bからの紫外線照度の低下が10%である。
以上より、本実施形態のように、透明管41内における集光中心Bからの紫外線照度の低下が20%以下である領域C1内、さらに好ましくは紫外線照度の低下が10%以下である領域C2内を線条体2に通過させることにより、樹脂31の硬化度が65%以上となり、線条体2を保護するのに充分な特性を有する被覆層が得られる。従って、本実施形態による被覆線条体1の製造方法または製造装置10によれば、線条体2の表面に塗布された樹脂31に充分なエネルギー密度で効率よく紫外線UVを照射することができる。
また、本実施形態による被覆線条体1の製造方法及び製造装置10では、樹脂コーティングダイス30とガイドローラ70との間に計測部50が設置されており、走行方向dと交差する面内における線条体2の位置を計測している。また、透明管41内における領域C1(C2)内を線条体2の中心線が通過するように、計測部50からの位置信号Spに基づいて、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40(紫外線光源42及び反射鏡43)、ならびにガイドローラ70の位置を制御部90が制御している。これにより、例えばこれらの装置の交換などによって互いの相対位置が初期状態からずれて走行ラインが変動した場合であっても、透明管41内における領域C1内を線条体2の中心線に好適に通過させることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、線条体は光ファイバ母材が線引きされて形成されたファイバガラスとし、被覆線条体は光ファイバ素線としているが必ずしもこれに限られない。例えば、線条体を光ファイバ素線として、その光ファイバ素線に更に樹脂を被覆したものを被覆線条体としても良い。
また、上記した実施形態では、制御部90が、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40、及びガイドローラ70の位置を制御しているが、制御部90は、樹脂コーティングダイス30、紫外線照射装置40(紫外線光源42及び反射鏡43)、ならびにガイドローラ70のうち少なくとも1つの位置を制御することにより、線条体2の中心線に領域C1を通過させることができる。
1…被覆線条体、2…線条体、3…被覆層、4…光ファイバ母材、10…製造装置、20…線引炉、21…ヒータ、30…樹脂コーティングダイス、31…樹脂、40…紫外線照射装置、41…透明管、42…紫外線光源、43…反射鏡、50…計測部、51…レーザ出射部、52…レーザ受光部、60…冷却装置、70…ガイドローラ、80…巻き取りドラム、90…制御部、100…引き取り装置、B…集光中心、d…走行方向。
Claims (4)
- 樹脂を保持するとともに、前記樹脂中を通過した線条体に前記樹脂を塗布する塗布装置と、
前記樹脂を塗布された前記線条体が所定の走行方向に沿って移動するように前記線条体を案内するガイドローラと、
紫外線に対して透光性を有する透明管、紫外線を発生する紫外線光源、及び前記紫外線光源からの紫外線を前記透明管内へ向けて集光する集光部材を有し、前記線条体が前記透明管内を通過するように前記塗布装置と前記ガイドローラとの間に配置された紫外線照射装置と
を用いる被覆線条体の製造方法であって、
前記透明管内における紫外線の集光中心からの紫外線照度の低下が前記集光中心における紫外線照度の20%以下である領域内を前記線条体の中心線が通過するように、前記塗布装置、前記ガイドローラならびに前記紫外線光源及び前記集光部材のうち少なくとも1つの位置を制御することを特徴とする、被覆線条体の製造方法。 - 前記塗布装置と前記ガイドローラとに挟まれた区間において、前記所定の走行方向と交差する面内における前記線条体の位置を計測する計測工程と、
前記透明管内における前記領域内を前記線条体の中心線が通過するように、前記計測工程における前記線条体の位置情報に基づいて、前記塗布装置、前記ガイドローラ、ならびに前記紫外線光源及び前記集光部材のうち少なくとも1つの位置を制御する制御工程と
をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の被覆線条体の製造方法。 - 樹脂を保持するとともに、前記樹脂中を通過した線条体に前記樹脂を塗布する塗布装置と、
前記樹脂を塗布された前記線条体が所定の走行方向に沿って移動するように前記線条体を案内するガイドローラと、
紫外線に対して透光性を有する透明管、紫外線を発生する紫外線光源、及び前記紫外線光源からの紫外線を前記透明管内へ向けて集光する集光部材を有し、前記線条体が前記透明管内を通過するように前記塗布装置と前記ガイドローラとの間に配置された紫外線照射装置と
を備え、
前記透明管内における紫外線の集光中心からの紫外線照度の低下が前記集光中心における紫外線照度の20%以下である領域内を前記線条体の中心線が通過するように、前記塗布装置、前記ガイドローラ、ならびに前記紫外線光源及び前記集光部材が、それらのうち少なくとも一つがその位置を変わりうるように配置されることを特徴とする、被覆線条体製造装置。 - 前記塗布装置と前記ガイドローラとの間に設置され、前記所定の走行方向と交差する面内における前記線条体の位置を計測する計測部と、
前記透明管内における前記領域内を前記線条体の中心線が通過するように、前記計測部からの前記線条体の位置情報に基づいて、前記塗布装置、前記ガイドローラ、ならびに前記紫外線光源及び前記集光部材のうち少なくとも1つの位置を制御する制御部と
をさらに備えることを特徴とする、請求項3に記載の被覆線条体製造装置。
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Cited By (4)
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US10838159B2 (en) | 2016-09-30 | 2020-11-17 | Fujikura Ltd. | Optical fiber colored core wire, optical fiber cable, and method of manufacturing optical fiber colored core wire |
US10908373B2 (en) | 2016-09-30 | 2021-02-02 | Fujikura Ltd. | Optical fiber ribbon, optical fiber cable, and method of manufacturing optical fiber ribbon |
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WO2022191097A1 (ja) | 2021-03-10 | 2022-09-15 | 古河電気工業株式会社 | 光ファイバ着色心線、光ファイバリボン、単心ファイバの集合体ケーブル、光ファイバリボンケーブル、およびこれらの製造方法 |
-
2003
- 2003-12-01 JP JP2003402124A patent/JP2005162522A/ja active Pending
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