《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図である。
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。レーダ装置10は、例えば車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられたレーザレーダであり、水平方向にレーザ光を照射して車両前方領域を走査し、自車両前方の障害物を検出する。図2に、レーダ装置10による障害物検出の原理を説明する図を示す。図2に示すように、レーダ装置10はレーザ光を出力する発光部10aと、自車両の前方にある反射物(通常、前方車の後端)で反射された反射光を検出する受光部10bとを備えている。レーダ装置10は、受光部10bで受光した反射波の到達時間より、障害物の有無および自車両と障害物との相対的な位置を算出する。レーダ装置10によりスキャンされる前方の領域、すなわちレーダ装置10の検知範囲は、例えば自車正面に対して±6deg程度であり、検知範囲内に存在する複数の前方物体が検出される。
車速センサ20は自車両の車速を検出し、検出した自車速を障害物検知装置40およびコントローラ50に出力する。
舵角センサ30は、ステアリングコラムもしくはステアリングホイール(不図示)付近に取り付けられた角度センサ等であり、ステアリングシャフトの回転を操舵角として検出し、コントローラ50へ出力する。
アクセルペダル61には、アクセルペダル61の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。アクセルペダルストロークセンサによって検出されたアクセルペダル操作量はコントローラ50および駆動力制御装置60に出力される。ブレーキペダル91には、その踏み込み量(操作量)を検出するブレーキペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。ブレーキペダルストロークセンサによって検出されたブレーキペダル操作量は、制動力制御装置90に出力される。
障害物検知装置40は、レーダ装置10および車速センサ20の検出結果に従って自車両と前方障害物との車間距離および相対速度等の障害物情報を算出し、コントローラ50へ出力する。
コントローラ50は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1全体の制御を行う。コントローラ50は、車速センサ20から入力される自車速、および障害物検知装置40から入力される障害物情報から、自車両の走行状況を認識する。コントローラ50は、走行状況に基づいて前方障害物に対する自車両のリスクポテンシャルを算出する。さらに、コントローラ50は、障害物に対するリスクポテンシャルに基づいて、自車両に発生する制駆動力を制御する。
駆動力制御装置60は、エンジンへの制御指令を算出する。図3に、駆動力制御装置60における駆動力制御のブロック図を示す。図4に、アクセルペダル操作量SAとドライバ要求駆動力Fdaとの関係を定めた特性マップを示す。駆動力制御装置60は、図4に示すようなマップを用いて、アクセルペダル操作量SAに応じてドライバ要求駆動力Fdaを算出する。そして、駆動力制御装置60は、ドライバ要求駆動力Fdaに、後述する駆動力補正量ΔDaを加えて目標駆動力を算出する。駆動力制御装置60のエンジンコントローラは、目標駆動力に従ってエンジンへの制御指令を算出する。
制動力制御装置90は、ブレーキ液圧指令を出力する。図5に、制動力制御装置93における制動力制御のブロック図を示す。図6に、ブレーキペダル操作量SBとドライバ要求制動力Fdbとの関係を定めた特性マップを示す。制動力制御装置93は、図6に示すようなマップを用いて、ブレーキペダル操作量SBに応じてドライバ要求制動力Fdbを算出する。そして、制動力制御装置93は、ドライバ要求制動力Fdbに、後述する制動力補正値ΔDbを加えて目標制動力を算出する。制動力制御装置93のブレーキ液圧コントローラは、目標制動力に従ってブレーキ液圧指令を出力する。ブレーキ液圧コントローラからの指令に応じて各車輪95に設けられたブレーキ装置が作動する。
以下に、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を説明する。車両用運転操作補助装置1は、レーダ装置10によって検出される前方障害物の状態に基づいて、自車両周囲のリスクポテンシャルを算出する。リスクポテンシャルが大きい場合には自車両の駆動力を低下したり、制動力を増加する。自車両の制駆動力制御を行うことにより、運転者に減速感を与えて運転者の注意を喚起することができる。
前方障害物の状態に基づいて自車両を制御する場合には、自車両と前方障害物とが接触する可能性があるか否かといった自車両周囲のリスクポテンシャルを正確に判定するため、前方障害物の幅、および車両前後方向および左右方向に関する前方障害物の位置等を正確に検出する必要がある。しかし、レーダ装置10の検知範囲(視野角)は10°〜20°程度に限定されているため、前方障害物の一部が検知範囲外にある場合は、前方障害物の左右位置を正確に検出することが困難である。また、他の障害物が前方障害物の一部を遮るような場合も、前方障害物の左右位置を正確に検出することが困難となる。このようにレーダ装置10の検出結果の精度が低下すると、不適切な制駆動力制御が行われる可能性がある。
そこで、本発明の第1の実施の形態においては、レーダ装置10の精度が低下するような状況では制駆動力の制御方法を適切に変更することにより、レーダ装置10の精度低下に伴うシステムの性能低下を補償する。以下に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を、図7を用いて詳細に説明する。図7は、第1の実施の形態のコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
まず、ステップS110で、車速センサ20によって検出される自車速Vhと、舵角センサ30によって検出される自車両の操舵角δを読み込む。ステップS120では、アクセルペダルストロークセンサ(不図示)によって検出されるアクセルペダル操作量SAを読み込む。つづくステップS130で、レーダ装置10の検出結果に従って障害物検知装置40で算出した前方障害物に関する情報を読み込む。前方障害物に関する情報は、例えば各障害物までの距離D、自車両に対する障害物の左右方向位置xおよび前後方向位置yである。
ステップS140では、ステップS110で読み込んだ自車速Vhおよび操舵角δに基づいて、自車両の進路を推定する。以下に、予測進路の推定方法を図8および図9を用いて説明する。予測進路を推定するために、図8に示すように自車両が矢印方向に進行している場合の旋回半径Rを算出する。まず、自車両の旋回曲率ρ(1/m)を算出する。旋回曲率ρは、自車速Vhおよび操舵角δに基づいて、以下の(式1)で算出できる。
ρ=1/{L(1+A・Vh2)}×δ/N・・・(式1)
ここで、L:自車両のホイールベース、A:車両に応じて定められたスタビリティファクタ(正の定数)、N:ステアリングギア比である。
旋回半径Rは、旋回曲率ρを用いて以下の(式2)で表される。
R=1/ρ ・・・(式2)
図9に示すように、旋回半径Rの円弧を基準線とした幅Twの領域を、自車両の予測進路として設定する。予測進路の幅Twは、予め適切に設定しておく。
ステップS150では、レーダ装置10によって検出される複数の障害物について、ステップS140で設定した自車両の予測進路内にあるか、予測進路外にあるかを判定する。ここでは、ステップS130で検出した障害物の前後方向位置yと、ステップS140で算出した補正左右方向位置xcとを用いて、障害物が予測進路内にあるか否かを判定する。図10に、レーダ装置10による障害物の検出状況を示す。コントローラ50は、レーダ装置10によって検出される障害物A〜Dのうち、自車両の予測進路内に存在する障害物B〜Dを選択する。なお、図10は自車両が直進している場合の予測進路を示している。ステップS160では、ステップS150で自車両の予測進路内にあると判定した障害物のうち、自車両に最も近い物体を、制駆動力制御の対象障害物として選択する。
ステップS170では、制駆動力制御を行う際の制御パラメータを設定する。具体的には、制駆動力特性を変更する補正量を算出する際に用いる制御パラメータを、レーダ装置10の検出状況に応じて設定する。ここで、第1の実施の形態における制駆動力制御の概念を簡単に説明する。
具体的には、自車両前方に仮想的な弾性体を設けたと仮定し、この仮想的な弾性体が前方車両に当たって圧縮され、自車両に対する擬似的な走行抵抗を発生するというモデルを考える。自車両と前方障害物との車間距離Dが仮想的な弾性体の長さよりも長い場合は、仮想弾性体は前方障害物に接触しないので圧縮されない。一方、車間距離Dが仮想弾性体の長さよりも短い場合は仮想弾性体が圧縮される。このように仮想弾性体が圧縮されるときの仮想弾性体の反発力Fcを、制駆動力特性の補正量として算出する。仮想弾性体の反発力Fcは、以下の(式3)で表される。
Fc=k×(Th−D) ・・・(式3)
ここで、kは仮想的な弾性体のばね定数、Thは仮想弾性体の長さとして設定されるしきい値である。
ばね定数kおよびしきい値Thは反発力Fcを算出するための制御パラメータであり、レーダ装置10の検出状況に応じて設定する。ここでは、障害物がレーダ装置10の検知範囲の側方端部に存在する場合に、レーダ装置10の検出精度が低下すると判断する。図11に、レーダ装置10の検知範囲の分割方法を説明する図を示す。図11に示すように、レーダ装置11の検知範囲において自車両左方向の側方端部領域を領域A,自車両右方向の側方端部領域を領域Bとする。自車両の左右方向に関する領域A、Bの幅は、例えば自車幅から自車幅の1/2となるように予め適切に設定しておく。
以下に、制御パラメータkおよびThの設定処理を、図12のフローチャートを用いて説明する。ステップS1701では、ステップS130で検出した対象障害物の前後方向位置yおよび左右方向位置xに基づいて、対象障害物が領域Aに存在するかを判定する。対象障害物が領域Aに存在する場合はステップS1702へ進む。対象障害物が領域Aに存在しない場合は、ステップS1703へ進んで対象障害物が領域Bに存在するか否かを判定する。対象障害物が領域Bに存在する場合はステップS1702へ進む。一方、対象障害物が領域Aおよび領域Bのいずれにも存在しない場合は、ステップS1704へ進む。
ステップS1704では、レーダ装置10の検出精度が低下する状況ではないので、ばね定数kおよびしきい値Thをそれぞれ予め設定した基準値k=k0,Th=Th0に設定する。一方、ステップS1702では、レーダ装置10の検出精度が低下する状況であるので、ばね定数kを基準値k0よりも大きい値k=k1に設定し、しきい値Thを基準値Th0よりも小さい値Th=Th1に設定する。
図13に、レーダ装置10の検出状況に応じて制御パラメータk、Thを変更する場合の反発力Fcの変化を説明する図を示す。図13の横軸は自車両と対象障害物との前後方向の位置関係を示し、縦軸は反発力Fcを示す。レーダ装置10の検出精度が低下しない通常時には、自車両と対象障害物との車間距離Dがしきい値Th0以下となると反発力Fcが発生し、車間距離Dが小さくなるに従って反発力Fcが増加する。一方、レーダ装置10の検出精度が低下する状況では、車間距離Dがしきい値Th1以下となると反発力Fcが発生し、車間距離Dが小さくなるに従って通常時よりも急な傾きで反発力Fcが増加する。
このようにステップS170で制御パラメータk、Thを設定した後、ステップS180へ進む。ステップS180では、ステップS160で対象障害物として選択した障害物について、自車両との車間時間THWを算出する。車間時間THWは、対象障害物の現在位置に自車両が到達するまでの時間を示す物理量であり、以下の(式4)から算出される。
THW=D/Vh ・・・(式4)
つづくステップS190では、ステップS180で算出した対象障害物に対する車間時間THWが予め設定したしきい値T1以上か否かを判定する。車間時間THWがしきい値T1未満の場合は、対象障害物との接触のリスクポテンシャルが高いと判断し、制駆動力制御を行うためにステップS200へ進む。
ステップS200では、ステップS170で設定した制御パラメータk、Thを用いて、上述した(式3)に従って仮想弾性体の反発力Fcを算出する。ステップS190で車間時間THWがしきい値T1以上であると判定されると、ステップS210へ進み、反発力Fcを0とする。
つづくステップS220では、ステップS200またはS210で算出した反発力Fcを用いて、制駆動力補正を行う際の駆動力補正量ΔDaおよび制動力補正量ΔDbを算出する。ステップS220における制駆動力補正量の算出処理を、図14を用いて説明する。
まずステップS2201で、ステップS120で読み込んだアクセルペダル操作量SAに基づいて、アクセルペダル61が踏みこまれているか否かを判定する。アクセルペダル61が踏み込まれていない場合には、ステップS2202へ進み、アクセルペダル61が急に解放されたか否かを判定する。例えば、アクセルペダル操作量SAから算出するアクセルペダル61の操作速度が所定値未満であった場合は、アクセルペダル61がゆっくりと戻されたと判断し、ステップS2203へ進む。ステップS2203では、駆動力補正量ΔDaとして0をセットし、つづくステップS2204で制動力補正量ΔDbとして上述したように算出した反発力Fcをセットする。
一方、ステップS2202でアクセルペダル61が急に戻されたと判定されると、ステップS2205へ進む。ステップS2205では駆動力補正量ΔDaを漸減させ、ステップS2206で制動力補正量ΔDbを反発力Fcまで漸増させる。具体的には、アクセルペダル61が急に戻された場合は、アクセルペダル操作中には駆動力を反発力Fc分だけ減少させるように設定していた駆動力補正量ΔDa(=−Fc)を、0まで徐々に変化させる。また、アクセルペダル61が急に戻されてから制動力補正量ΔDbを反発力Fcまで徐々に増加させる。このように、アクセルペダル61が急に戻された場合は、最終的に駆動力補正量ΔDaが0に、制動力補正量ΔDbがFcになるように変化させる。
一方、ステップS2201が肯定判定され、アクセルペダル61が踏み込まれている場合は、ステップS2207へ進んでドライバ要求駆動力Fdaを推定する。コントローラ50内には、駆動力制御装置60内に記憶されたドライバ要求駆動力算出マップ(図4)と同一のものが用意されており、アクセルペダル操作量SAに従って、ドライバ要求駆動力Fdaを推定する。
つづくステップS2208で、ステップS2207で推定したドライバ要求駆動力Fdaと反発力Fcとの大小関係を比較する。ドライバ要求駆動力Fdaが反発力Fc以上(Fda≧Fc)の場合は、ステップS2209へ進む。ステップS2209では、駆動力補正量ΔDaとして−Fcをセットし、ステップS2210で制動力補正量ΔDbに0をセットする。すなわち、Fda−Fc≧0であることから、駆動力Fdaを反発力Fcにより補正した後も正の駆動力が残る。従って、補正量の出力は駆動力制御装置60のみで行うことができる。この場合、車両の状態としては、ドライバがアクセルペダル61を踏んでいるにも関わらず期待した程の駆動力が得られない状態となる。補正後の駆動力が走行抵抗より大きい場合には、加速が鈍くなる挙動としてドライバに感じられ、補正後の駆動力が走行抵抗より小さい場合には、減速する挙動としてドライバに感じられる。
一方、ステップS2208が否定判定され、ドライバ要求駆動力Fdaが反発力Fcより小さい場合(Fda<Fc)は、駆動力制御装置60のみでは目標とする補正量を出力できない。そこで、ステップS2211において駆動力補正量ΔDaに−Fdaをセットし、ステップS2212で制動力補正量ΔDbとして、補正量の不足分(Fc−Fda)をセットする。この場合、車両の減速挙動としてドライバには察知される。
図15に、駆動力および制動力の補正方法を説明する図を示す。図15の横軸はアクセルペダル操作量SAおよびブレーキペダル操作量SBを示しており、原点0から右へ進むほどアクセルペダル操作量SAが大きく、左へ進むほどブレーキペダル操作量SBが大きいことを示している。図15の縦軸は駆動力および制動力を示し、原点0から上へ進むほど駆動力が大きく、下へ進むほど制動力が大きいことを示している。
図15において、アクセルペダル操作量SAに応じた要求駆動力Fda、およびブレーキペダル操作量SBに応じた要求制動力Fdbをそれぞれ一点差線で示す。また、前方障害物とのリスクポテンシャルに応じて補正した駆動力および制動力を実線で示す。
アクセルペダル操作量SAが大きく、アクセルペダル操作量SAに応じた要求駆動力Fdaが反発力Fc以上の場合は、駆動力を補正量ΔDaに応じて減少方向に補正する。一方、アクセルペダル操作量SAが小さく、アクセルペダル操作量SAに応じた要求駆動力Fdaが反発力Fcよりも小さい場合は、駆動力を発生しないような補正量ΔDaを設定して駆動力を補正する。さらに、反発力Fcと要求駆動力Fdaとの差を補正量ΔDbとして設定する。これにより、アクセルペダル操作量SAに応じた緩制動を行う。
ブレーキペダルが踏み込まれると、補正量ΔDbに基づいて制動力を増大方向に補正する。これにより、全体として車両の走行抵抗を補正量、すなわち仮想弾性体の反発力Fcに相当して増大させるように制駆動力の特性を補正している。
このようにステップS220で制駆動力補正量を算出した後、ステップS230へ進む。ステップS230では、ステップS220で算出した駆動力補正量ΔDa、及び制動力補正量ΔDbをそれぞれ駆動力制御装置60、及び制動力制御装置90に出力する。駆動力制御装置60は、駆動力補正量ΔDaと要求駆動力Fdaとから目標駆動力を算出し、算出した目標駆動力を発生するようにエンジンコントローラを制御する。また、制動力制御装置90は、制動力補正量ΔDbと要求制動力Fdbとから目標制動力を算出し、目標制動力を発生するようにブレーキ液圧コントローラを制御する。これにより、今回の処理を終了する。
−第1の実施の形態の変形例1−
ここでは、障害物が領域A、Bに存在し、さらに自車両が追い越し動作中である場合を、レーダ装置10の検出精度が低下する状況とする。図16のフローチャートを用いて制御パラメータ設定処理を説明する。
ステップS1711で自車両が追い越し動作中であるか否かを判定する。自車両が追い越し動作中であるか否かは、例えば運転者によるウィンカ操作、または操舵角速度に基づいて判定することができる。ウィンカ操作が行われている場合、または操舵角速度が所定値以上である場合は、自車両が追い越し動作中であると判断する。追い越し動作中であると判定されると、ステップS1712へ進み、対象障害物が領域Aに存在するか否かを判定する。対象障害物が領域Aに存在する場合はステップS1713へ進む。対象障害物が領域Aに存在しない場合は、ステップS1714へ進んで対象障害物が領域Bに存在するか否かを判定する。対象障害物が領域Bに存在する場合はステップS1713へ進む。
ステップS1713では、しきい値Thを基準値Th0よりも小さい値Th1に設定し、ばね定数kを基準値k0よりも大きい値k1に設定する。一方、自車両が追い越し動作中でない場合、または対象障害物が領域Aおよび領域Bのいずれにも存在しない場合は、ステップS1715へ進んでしきい値Thおよびばね定数kをそれぞれ基準値Th0,k0に設定する。
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置1は、自車両周囲の障害物状況と自車両の走行状態とに基づいて自車両前方の障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、リスクポテンシャルに応じて制駆動力制御を行う。さらに、レーダ装置10による障害物の検出状況を監視し、レーダ装置10の検出精度が低下する状況では、制駆動力制御の制御方法を変更して検出精度の低下に伴うシステムの性能低下を補償する。これにより、制駆動力制御を適切に作動させることができる。
(2)コントローラ50は、レーダ装置10の検出状況に応じて制駆動力制御の制御タイミングおよび制御量変化率(制御ゲイン)を変更することにより、レーダ装置10の検出精度の低下に伴うシステムの性能低下を補償する。具体的には、レーダ装置10の検出精度が低下する状況では、検出精度が低下しない状況に対して制御タイミングを遅延させるとともに制御量変化率を増大させる。例えば、図13に示すように、検出精度低下時には通常時に対して仮想弾性体の反発力Fcが遅れて発生するが、通常時に比べて、対象障害物への接近に対する反発力Fcの増加の傾きは大きく設定される。これにより、レーダ装置10の検出精度が低下する状況において、検出精度の低下に伴うシステムの性能低下を補償し、制駆動力制御を適切に作動させることができる。
(3)コントローラ50は、図11に示すようにレーダ装置10の検知範囲の側方端領域A、Bに障害物が存在する場合に、レーダ装置10の検出精度が低下すると判断する。レーダ装置10によって対象障害物を正確に検出することが困難な状況では、制駆動力制御の制御タイミングを遅らせるとともに、対象障害物への接近リスクに対する反発力Fcの増加の傾きを大きくするので、制駆動力制御を適切に作動させることができる。
(4)検出物体が側方端領域A、Bに存在し、かつ自車両が車線変更を行おうとしている、または車線変更を行っているような車線変更状態である場合に、レーダ装置10の検出精度が低下すると判断する。レーダ装置10によって対象障害物を正確に検出することが困難な状況では、制駆動力制御の制御タイミングを遅らせるとともに、対象障害物への接近リスクに対する反発力Fcの増加の傾きを大きくするので、制駆動力制御を適切に作動させることができる。
(5)コントローラ50は、自車両の操舵状態またはウィンカー操作状態に基づいて自車両が車線変更状態であるかを判定する。従って、特別な検出器等を用いることなく容易に車線変更状態を判定することができる。
《第2の実施の形態》
以下に、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
第2の実施の形態においては、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況において制駆動力の補正量を制限することにより、制駆動力制御の制御方法を変更する。具体的には、仮想弾性体の反発力Fcに上限値を設け、レーダ装置10の検出精度が低下する状況では、検出精度が低下しない状況に比べて上限値を低下する。
第2の実施の形態における車両用運転操作補助装置1の動作について、図17のフローチャートを用いて説明する。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS310〜S360における処理は、図7のフローチャートのステップS110〜S160での処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS370では、ステップS360で選択した対象障害物に対する車間時間THWを算出する。ここでは、第1の実施の形態と同様に(式4)を用いて車間時間THWを算出する。続くステップS380では、ステップS370で算出した車間時間THWが予め設定したしきい値T1以上か否かを判定する。車間時間THWがしきい値T1未満の場合は、対象障害物との接触のリスクポテンシャルが高いと判断し、制駆動力制御を行うためにステップS390へ進む。
ステップS390では、上述した(式3)に従って仮想弾性体の反発力Fcを算出する。このとき、制御パラメータk、Thはそれぞれ予め定めた所定値を用いる。ステップS380で車間時間THWがしきい値T1以上であると判定されると、ステップS400へ進み、反発力Fcを0とする。
ステップS410では、レーダ装置10の検出精度が低下する状況において制駆動力の補正量を制限するため、ステップS390またはS400で算出した反発力Fcに対してリミット処理を行う。ステップS410で行う反発力リミット処理を、図18のフローチャートを用いて説明する。
ステップS4101では、対象障害物が領域Aに存在するか否かを判定する。対象障害物が領域Aに存在しない場合は、ステップS4103へ進んで対象障害物が領域Bに存在するか否かを判定する。対象障害物が領域Aまたは領域Bに存在する場合は、ステップS4102へ進む。ステップS4102では、反発力リミット処理のリミット値L、すなわち反発力Fcの上限値を所定値L1に設定する。
一方、対象障害物が領域Aおよび領域Bのいずれにも存在しない場合は、ステップS4104へ進んで反発力Fcの上限値Lを所定値L2に設定する。ここで、所定値L1,L2は、L1<L2の関係を満たすように予め適切に設定しておく。
つづくステップS4105では、ステップS4102またはS4104で設定したリミット値Lを用いて、仮想弾性体に対する反発力Fcにリミット処理を行う。具体的には、ステップS390またはS400で算出した反発力Fcがリミット値Lよりも大きい場合は、反発力Fcをリミット値Lに制限する。反発力Fcがリミット値L以下の場合は、ステップS390またはS400で算出した反発力Fcをそのまま用いる。
このように、対象障害物が検知範囲の側方端部領域に存在し、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においては、検出精度が低下しない場合に比べて反発力Fcの上限値Lを低下する。
ステップS410において反発力Fcのリミット処理を行った後、ステップS420へ進む。ステップS420では、リミット処理を行った反発力Fcを用いて制駆動力の補正量を算出する。ステップS420およびS430での処理は、上述した図7のフローチャートのステップS220およびS230での処理と同様であるので説明を省略する。
−第2の実施の形態の変形例−
ここでは、悪天候の場合、またはレーダ装置10によって検出する反射波のノイズが多い場合をレーダ装置10の精度が低下する状況とする。従って、レーダ装置10によって検出された対象障害物が検知範囲内のどの領域に存在するかに関わらず、悪天候の場合、またはノイズが多い場合は反発力Fcのリミット値Lを小さい値L1に設定する。図19のフローチャートを用いて反発力Fcのリミット処理を説明する。
ステップS4111では、悪天候であるか否かを判定する。ここでは、例えば降雨時、降雪時、または霧が発生している場合を、悪天候とする。そこで、例えばワイパーの作動状態(ワイパーオン/オフ、ワイパー作動速度等)、雨滴センサの出力値、またはフォグランプのオン/オフ等を読み込み、悪天候であるか否かを判定する。悪天候であると判定されると、ステップS4112へ進み、反発力Fcのリミット値LをL1に設定する。
一方、悪天候でない場合は、ステップS4113へ進む。ステップS4113では、レーダ装置10の受光部10bによって受光する反射波のノイズ成分が多いか否かを判定する。図20に、レーダ装置10における物体検出状況を説明する図を示す。図20は、レーダ装置10の検知範囲内に、○で表される複数の反射物が存在することを示している。検知範囲のほぼ中央にある4つの○は、前方車両の後部リフレクタの反射によるものと判断できる。しかし、それ以外の、車両相当の障害物と判断されない反射物は、ノイズである。このようなノイズが多いほどレーダ装置10の精度は低下する。
ここでは、レーダ装置10の検出結果から車両相当の障害物と判断されない反射物の数に基づいてノイズレベルを算出する。なお、ノイズレベルは所定の幅を持つものである。算出したノイズレベルから、レーダ装置10の検出結果にノイズ成分が多いか否かを判定する。ノイズ成分が多い場合はステップS4112へ進み、反発力Fcの上限値を低下させるためにリミット値LをL1に設定する。ノイズ成分が少ない場合はステップS4114へ進み、反発力Fcのリミット値LをL2に設定する。
ステップS4115では、ステップS4112またはS4114で設定したリミット値Lを用いて反発力Fcのリミット処理を行う。
なお、以上説明した第2の実施の形態において、自車両が車線変更中で、かつ対象障害物がレーダ装置10の検知範囲の側方端部領域A、Bに存在する場合を、レーダ装置10の検出精度が低下する状況であると判断することもできる。
以上説明した第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)コントローラ50は、レーダ装置10の検出状況に応じて制駆動力の補正量の最大制御量を変更する。具体的には、仮想弾性体の反発力Fcに対してリミット処理を行う際に、レーダ装置10の検出精度が低下する状況では、検出精度が低下しない状況に比べて反発力Fcのリミット値Lを低下する。反発力Fcがリミット値Lを超える場合は反発力Fcをリミット値Lに制限する。これにより、反発力Fcの急激な変化、さらには制駆動力制御補正量ΔDa、ΔDbの急な変化を防止して、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においても、制駆動力制御を適切に作動させることができる。
(2)コントローラ50は、レーダ装置10の検知範囲の側方端領域A、Bに障害物が存在する場合、検出物体が側方端領域A、Bに存在し、かつ自車両が車線変更を行おうとしている、または車線変更を行っているような車線変更状態である場合、または、悪天候、例えば降雨時、降雪時、霧発生中にレーダ装置10の検出精度が低下すると判断し、反発力Fcにリミット処理を行う。これにより、反発力Fcの急激な変化、さらには制駆動力制御補正量ΔDa、ΔDbの急な変化を防止するので、制駆動力制御を適切に作動させることができる。
(3)図2に示すように、レーダ装置10はレーザ光等の電磁波を出力する発光部(出力部)10aと電磁波が障害物にとって反射された反射波を検出する受光部(検出部)10bとを備え、検出した反射波の状態に基づいて障害物の状況を検出する。コントローラ50では、反射波のノイズが多い場合にレーダ装置10の検出精度が低下すると判断する。これにより、レーダ装置10の検知範囲内に反射物が多数存在し、前方車両とそれ以外の物体とを区別することが困難な状況においては、反発力Fcにリミット処理を行う。これにより、反発力Fcの急激な変化、さらには制駆動力制御補正量ΔDa、ΔDbの急な変化を防止するので、制駆動力制御を適切に作動させることができる。
《第3の実施の形態》
以下に、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
第3の実施の形態では、制駆動力の補正量に対してフィルタ処理を行う。レーダ装置10の検出精度が低下するような状況において、制駆動力の補正量に対するフィルタ処理のフィルタ特性を変更することにより、制駆動力制御の制御方法を変更する。具体的には、仮想弾性体の反発力Fcに対してフィルタ処理を行う際に、レーダ装置10の検出精度が低下する状況では、検出精度が低下しない状況に比べてフィルタ特性の応答を低くする。
第3の実施の形態における車両用運転操作補助装置1の動作について、図21のフローチャートを用いて説明する。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS510〜S560における処理は、図7のフローチャートのステップS110〜S160での処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS570では、ステップS560で選択した対象障害物に対する車間時間THWを算出する。ここでは、第1の実施の形態と同様に(式4)を用いて車間時間THWを算出する。続くステップS580では、ステップS570で算出した車間時間THWが予め設定したしきい値T1以上か否かを判定する。車間時間THWがしきい値T1未満の場合は、対象障害物との接触のリスクポテンシャルが高いと判断し、制駆動力制御を行うためにステップS590へ進む。
ステップS590では、上述した(式3)に従って仮想弾性体の反発力Fcを算出する。このとき、制御パラメータk、Thはそれぞれ予め定めた所定値を用いる。ステップS580で車間時間THWがしきい値T1以上であると判定されると、ステップS600へ進み、反発力Fcを0とする。
ステップS610では、レーダ装置10の検出状況に応じて制駆動力の補正量に対するフィルタ処理を行う。具体的には、ステップS590またはS600で算出した反発力Fcに対して、レーダ装置10の検出状況に応じて設定したフィルタ特性に従ってフィルタ処理を行う。ステップS610で行うフィルタ処理を、図22のフローチャートを用いて説明する。
ステップS6101では、対象障害物が領域Aに存在するか否かを判定する。対象障害物が領域Aに存在する場合はステップS6102へ進み、領域Aに存在しない場合はステップS6103へ進む。ステップS6103では対象障害物が領域Bに存在するか否かを判定し、領域Bに存在する場合はステップS6102へ進み、領域Bに存在しない場合はステップS6104へ進む。
ステップS6102では、フィルタ特性を低応答に設定する。具体的には、図23に示すようにローパスフィルタのカットオフ周波数を低く設定して、算出された反発力Fcの変動を抑制する。このようなローパスフィルタは、ラプラス演算子sを用いて、1/(1+Ts)と定義される。時定数Tを大きくすることによりカットオフ周波数が低くなり、フィルタ特性を遅延方向に変化させて低応答とすることができる。
障害物が領域Aおよび領域Bのいずれにも存在しない場合は、ステップS6104へ進み、フィルタ特性を高応答に設定する。具体的には、図23に示すようにカットオフ周波数を高く、すなわち時定数Tを小さく設定する。フィルタ特性を低応答または高応答にする場合の時定数Tは、それぞれ予め適切に設定しておく。
ステップS6105では、ステップS6102またはS6104で設定したフィルタ特性に従って、ステップS590またはS600で算出した反発力Fcに対してフィルタ処理を施す。これにより、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においては、フィルタ特性が低応答に設定されるので反発力Fcの変動が抑制される。
ステップS620およびS640での処理は、図7のステップS220およびS230での処理と同様であるので説明を省略する。
これにより、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においては、フィルタ特性が低応答になるので反発力Fcの変動が小さくなり、さらには、反発力Fcを用いて算出する制駆動力の補正量の変動も抑制される。これにより、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においても適切な制駆動力制御を行うことができる。
なお、フィルタ特性の切換は、上述したようにローパスフィルタのカットオフ周波数を変更するだけでなく、例えば変化量リミッタを用いることもできる。変化量リミッタを用いる場合は、レーダ装置10の検出精度が低下する状況において反発力Fcの変化量のリミット値を小さくすることにより、フィルタ特性を低応答にすることができる。
−第3の実施の形態の変形例−
ここでは、悪天候の場合、レーダ装置10で検出する反射波のノイズが多い場合、または対象障害物が停止車両である場合を、レーダ装置10の精度が低下する状況とする。そして、レーダ装置10の精度が低下する状況においては、反発力Fcに対するフィルタ特性を低応答に設定する。図24のフローチャートを用いて反発力Fcに対するフィルタ処理の処理手順を説明する。
ステップS6111では、悪天候であるか否かを判定する。ここでは、上述した図19のフローチャートのステップS4111と同様に、例えば降雨時、降雪時、または霧が発生している場合を、悪天候とする。そこで、例えばワイパーの作動状態(ワイパーオン/オフ、ワイパー作動速度等)、雨滴センサの出力値、またはフォグランプのオン/オフ等から、悪天候であると判定されると、ステップS6112へ進み、悪天候でないと判定されると、ステップS6113へ進む。
ステップS6113では、レーダ装置10の受光部10bによって受光する反射波のノイズ成分が多いか否かを判定する。ここでは、上述した図19のステップS4113と同様に、レーダ装置10の検出結果から車両相当の障害物と判断されない反射物の数に基づいてノイズレベルを算出する。算出したノイズレベルから、レーダ装置10の検出結果にノイズ成分が多いか否かを判定する。ノイズ成分が多い場合はステップS6112へ進み、ノイズ成分が少ない場合はステップS6114へ進む。
ステップS6114では、対象障害物が停止車両であるか否かを判定する。障害物が停止している場合、レーダ装置10の検出結果から障害物と障害物ではない物体とを区別することは困難である。そこで、対象障害物が停止している場合には、レーダ装置10の精度が低下する状況とする。
対象障害物が停止車両であるか否かを判定するために、まず、対象障害物の相対速度を算出する。対象障害物の相対速度は、例えば自車両と対象障害物との距離Dを疑似微分することにより算出できる。そして、例えば対象障害物の相対速度が所定値(例えば2m/s)未満の場合に、対象障害物が停止していると判定する。なお、ここでは自車両と障害物との相対速度を用いて停止しているか否かを判定したが、これには限定されず、障害物の絶対速度を用いて判定することもできる。対象障害物が停止している場合はステップS6112へ進み、停止していない場合はステップS6115へ進む。
ステップS6112では、図22のフローチャートのステップS6102と同様にフィルタ特性を低応答に設定する。一方、ステップS6115では、図22のステップS6104と同様にフィルタ特性を高応答に設定する。
ステップS6116では、ステップS6112またはS6115で設定したフィルタ特性に従って、ステップS590またはS600で算出した反発力Fcにフィルタ処理を施す。
なお、以上説明した第3の実施の形態において、自車両が車線変更中で、かつ対象障害物がレーダ装置10の検知範囲の側方端部領域A、Bに存在する場合を、レーダ装置10の検出精度が低下する状況であると判断することもできる。
このように、以上説明した第3の実施の形態においては上述した第1および第2の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)コントローラ50は、制駆動力制御の制御出力値に対するフィルタ特性を変更することにより、レーダ装置10の検出精度の低下に伴うシステムの性能低下を補償する。具体的には、レーダ装置10の検出精度が低下する状況においては、反発力Fcに対して行うフィルタ処理のフィルタ特性の応答を低くする。これにより、反発力Fcの変動を抑制し、制駆動力補正量ΔDa、ΔDbの変化を小さくして、レーダ装置10の検出精度が低下する状況でも、制駆動力制御を適切に作動させることができる。なお、レーダ装置10の検出精度が低下しない状況ではフィルタ特性を高応答に設定するので、応答性のよい制駆動力制御を行うことができる。
(2)コントローラ50は、レーダ装置10の検知範囲の側方端領域A、Bに障害物が存在する場合、検出物体が側方端領域A、Bに存在し、かつ自車両が車線変更状態である場合、悪天候の場合、レーダ装置10で検出する反射波のノイズが多い場合、または対象障害物が停止物である場合にレーダ装置10の検出精度が低下すると判断し、反発力Fcにフィルタ処理を行う。これにより、反発力Fcの変動を抑制し、さらには制駆動力制御補正量ΔDa、ΔDbの変動を小さくして、制駆動力制御を適切に作動させることができる。
《第4の実施の形態》
以下に、本発明の第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図25に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の構成を示すシステム図を示す。図25において、図1に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
図25に示すように、車両用運転操作補助装置2は、アクセルペダル61に操作反力を発生させるアクセルペダル反力発生装置62と、ブレーキペダル91に操作反力を発生させるブレーキペダル反力発生装置92とをさらに備えている。第4の実施の形態においては、自車両周囲のリスクポテンシャルに応じて制御する制駆動力の補正量に応じて、アクセルペダル61またはブレーキペダル91に発生する操作反力を制御する。
アクセルペダル反力発生装置62は、アクセルペダル61のリンク機構に組み込まれたサーボモータを備えている。アクセルペダル反力発生装置62は、コントローラ51からの指令に応じてサーボモータで発生させるトルクを制御し、運転者がアクセルペダル61を操作する際に発生する操作反力を任意に制御することができる。
ブレーキペダル反力発生装置92は、ブレーキペダル91のリンク機構に組み込まれたサーボモータを備えている。ブレーキペダル反力発生装置92は、コントローラ51からの指令に応じてサーボモータで発生させるトルクを制御し、運転者がブレーキペダル91を操作する際に発生する操作反力を任意に制御することができる。なお、ここでは、サーボモータによってブレーキペダル91の反力を制御しているが、これには限定されず、例えばコンピュータ制御による油圧力を用いてブレーキアシスト力を発生させることもできる。
以下に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の動作を、図26を用いて説明する。図26は、第4の実施の形態のコントローラ51における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
ステップS710〜S830での処理は、第1の実施の形態で説明した図7のフローチャートのステップS110〜S230での処理と同様であるので説明を省略する。ステップS840では、ステップS800またはS810で算出した仮想弾性体の反発力Fcに基づいて、アクセルペダル61またはブレーキペダル91に発生する操作反力の制御量、すなわちアクセルペダル反力制御指令値FAとブレーキペダル反力制御指令値FBを算出する。
図27に、仮想弾性体の反発力Fcとアクセルペダル反力制御指令値FAとの関係を示す。図27において、アクセルペダル反力制御を行わない場合の、通常のアクセルペダル反力を破線で示す。ここではアクセルペダル操作量SAが一定の場合のアクセルペダル反力を示している。図27に示すように、反発力Fcが大きくなるほど、通常値に対してアクセルペダル反力制御指令値FAが増加する。すなわち、制駆動力の補正量が大きくなるほど、アクセルペダル61に発生する操作反力が大きくなる。
図28に、仮想弾性体の反発力Fcとブレーキペダル反力制御指令値FBとの関係を示す。図28において、ブレーキペダル反力制御を行わない場合の、通常のブレーキペダル反力制御指令値を破線で示す。ここではブレーキペダル操作量SBが一定の場合のブレーキペダル反力を示している。図28に示すように、反発力Fcが所定値を超える領域では、反発力Fcが大きくなるほど、通常値に対してブレーキペダル反力制御指令値FBが低下する。これにより、制駆動力の補正量が大きくなるほどブレーキペダル91に発生する操作反力が小さくなり、ブレーキペダル91を踏み込みやすくなる。
このように、ステップS770で設定した制御パラメータk、Thを用いて算出した反発力Fcに基づいて、アクセルペダル反力制御指令値FAおよびブレーキペダル反力制御指令値FBを算出する。これにより、レーダ装置10の検出精度が低下する状況であるか否かに基づいて設定した反発力Fcの発生タイミングおよび増加率(ゲイン)を、操作反力制御にも反映させることができる。すなわち、レーダ装置10の検出精度が低下する状況では、検出精度が低下しない状況に比べて操作反力の発生タイミングは遅くなるが、操作反力の変化率は大きくなる。
つづくステップS850では、ステップS840で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAおよびブレーキペダル反力制御指令値FBをそれぞれアクセルペダル反力発生装置62およびブレーキペダル反力発生装置92に出力する。アクセルペダル反力制御装置62およびブレーキペダル反力制御装置92は、それぞれコントローラ51から入力される指令値に応じてアクセルペダル反力およびブレーキペダル反力を制御する。
このように、以上説明した第4の実施の形態においては上述した第1から第3の実施の形態による効果に加えて、以下のような作用効果を奏することができる。
レーダ装置10によって検出される自車両周囲の障害物状況に基づいてリスクポテンシャルを算出し、リスクポテンシャルに基づいて制駆動力制御を行うとともに、運転操作装置、すなわちアクセルペダル61およびブレーキペダル91の操作反力制御も行う。制駆動力制御によって補正する制駆動力の補正量を、運転操作装置の操作反力として運転者に伝達することにより、自車両の制御状態を運転者に知らせて注意を喚起することができる。レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においては、上述した第1の実施の形態と同様に反発力Fcの発生タイミングおよび増加の傾きを変更する。さらに、反発力Fcに応じて反力制御指令値FA、FBを算出するので、操作反力制御に関しても、制駆動力制御に対する制御タイミングおよび制御量変化率の設定が反映される。これにより、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においても、制駆動力制御および操作反力制御を適切に作動させることができる。
《第5の実施の形態》
以下に、本発明の第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図25に示した第4の実施の形態と同様である。
第5の実施の形態においては、上述した第4の実施の形態と同様に、自車両周囲のリスクポテンシャルに基づいて自車両の制駆動力制御を行うとともに、制駆動力の補正量を運転操作装置の操作反力として発生させる操作反力制御を行う。ただし、レーダ装置10の検出精度が低下する状況においては、上述した第2の実施の形態と同様に制駆動力の補正量を制限することにより、制駆動力制御の制御方法を変更する。さらに、操作反力制御の制御量を制限することにより、操作反力制御の制御方法も変更する。
以下に、第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の動作を、図29を用いて説明する。図29は、第5の実施の形態のコントローラ51における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
ステップS910〜S1030での処理は、第2の実施の形態で説明した図17のフローチャートのステップS310〜S430での処理と同様であるので説明を省略する。ステップS1040では、ステップS990またはS1000で算出した仮想弾性体の反発力Fcに基づいて、アクセルペダル61またはブレーキペダル91に発生する操作反力の制御量、すなわちアクセルペダル反力制御指令値FAとブレーキペダル反力制御指令値FBを算出する。具体的には、図27および図28に示した反発力Fcに対するアクセルペダル反力制御指令値FA、およびブレーキペダル反力制御指令値FBの特性に従って、アクセルペダル反力制御指令値FAおよびブレーキペダル反力制御指令値FBをそれぞれ算出する。
ただし、レーダ装置10の検出精度が低下する状況においては、アクセルペダル反力制御指令値FAに上限値を設定し、ブレーキペダル反力制御指令値FBに下限値を設定する。図30および図31に、レーダ装置10の検出精度が低下する状況において操作反力制御量を制限する場合の、反発力Fcに対するアクセルペダル反力制御指令値FA、およびブレーキペダル反力制御指令値FBの特性を示す。
図30に示すように、反発力Fcが増加するとともにアクセルペダル反力制御指令値FAが増加するが、反発力Fcが所定値Fc1を超えると、アクセルペダル反力制御指令値FAを上限値FA1に制限する。また、図31に示すように、反発力Fcが増加するとブレーキペダル反力制御指令値FBが徐々に低下するが、反発力Fcが所定値Fc1を超えると、ブレーキペダル反力制御指令値FBを下限値FB1に制限する。
例えば対象障害物がレーダ装置10の検知範囲の側方端部領域A、Bに存在し、レーダ装置10の検出精度が低下するような場合には、図30および図31に示すマップに従って反力制御量FA、FBを算出する。
ステップS1050では、ステップS1040で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAおよびブレーキペダル反力制御指令値FBをそれぞれアクセルペダル反力発生装置62およびブレーキペダル反力発生装置92に出力する。これにより、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況において、操作反力制御の制御量を制限する。
なお、第5の実施の形態では、ステップS1010でリミット処理を行う前の反発力Fcを用いてアクセルペダル反力制御指令値FAおよびブレーキペダル反力制御指令値FBを算出した。ただし、これには限定されず、ステップS1010でリミット処理を行った後の反発力Fcを用いて反力制御指令値FA、FBを算出することもできる。この場合は、反発力Fc自体が制限されているので、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況でも、検出精度が低下しない場合と同様に、図27および図28のマップを用いて反力制御指令値FA、FBを算出する。
このように、以上説明した第5の実施の形態においては上述した第1から第4の実施の形態による効果に加えて、以下のような作用効果を奏することができる。
レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においては、上述した第2の実施の形態と同様に反発力Fcに対してリミット処理を行うとともに、アクセルペダル反力制御指令値FAおよびブレーキペダル反力制御指令値FBに対してもリミット処理を行う。レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においては、リミット値を低下する。これにより、レーダ装置10の検出精度が低下する状況において、制駆動力補正量ΔDa、ΔDb、および反力制御指令値FA、FBの急な変化を防止することができ、制駆動力制御および操作反力制御を適切に作動させることができる。
《第6の実施の形態》
以下に、本発明の第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図25に示した第4の実施の形態と同様である。
第6の実施の形態においては、上述した第4の実施の形態と同様に、自車両周囲のリスクポテンシャルに基づいて自車両の制駆動力制御を行うとともに、制駆動力の補正量を運転操作装置の操作反力として発生させる操作反力制御を行う。そして、制駆動力補正量および操作反力制御量に対してフィルタ処理を行う。このとき、レーダ装置10の検出精度が低下する状況においては、上述した第3の実施の形態と同様に制駆動力の補正量に対するフィルタ処理のフィルタ特性を低応答にすることにより、制駆動力制御の制御方法を変更する。さらに、検出精度が低下する状況においては、操作反力制御の制御量に対するフィルタ処理のフィルタ特性を低応答に変更し、操作反力制御の制御方法も変更する。
以下に、第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の動作を、図32を用いて説明する。図32は、第6の実施の形態のコントローラ51における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
ステップS1110〜S1230での処理は、第3の実施の形態で説明した図21のフローチャートのステップS510〜S630での処理と同様であるので説明を省略する。ステップS1240では、ステップS1190またはS1200で算出した仮想弾性体の反発力Fcに基づいて、アクセルペダル61またはブレーキペダル91に発生する操作反力の制御量、すなわちアクセルペダル反力制御指令値FAとブレーキペダル反力制御指令値FBを算出する。
具体的には、図27および図28に示した反発力Fcに対するアクセルペダル反力制御指令値FA、およびブレーキペダル反力制御指令値FBの特性に従って、アクセルペダル反力制御指令値FAおよびブレーキペダル反力制御指令値FBをそれぞれ算出する。そして、レーダ装置10の検出状況に応じて設定したフィルタ特性に従って、反力制御指令値FA、FBにフィルタ処理を施す。ここで、反力制御指令値FA、FBに対するフィルタ処理のフィルタ特性は、以下のように設定する。
例えば対象障害物がレーダ装置10の検知範囲の側方端部領域A、B(図11参照)に存在し、レーダ装置10の検出精度が低下する状況では、フィルタ特性を低応答に設定する。一方、レーダ装置10の検出精度が低下しない状況では、フィルタ特性の高応答に設定する。ここで、例えばローパスフィルタのカットオフ周波数を低く設定することにより、フィルタ特性を低応答にすることができる。
反力制御指令値FA、FBに対してフィルタ処理を行う場合は、低応答と高応答のフィルタ特性の特性変化幅が、ステップS1210における反発力Fcに対するフィルタ処理のフィルタ特性の特性変化幅よりも大きくなるように設定する。例えば、反発力Fcに対して高応答でフィルタ処理を行うときのカットオフ周波数を3Hzとし、低応答でフィルタ処理を行うときのカットオフ周波数を2Hzとする。この場合、反力制御指令値FA、FBに対して高応答でフィルタ処理を行うときのカットオフ周波数を3Hzに設定した場合は、低応答でフィルタ処理を行うときのカットオフ周波数を、例えば1Hzに設定する。すなわち、反力制御指令値FA、FBに対してフィルタ処理を行うときの高応答から低応答へのカットオフ周波数の低下量(2Hz)が、反発力Fcに対してフィルタ処理を行うときの高応答から低応答へのカットオフ周波数の低下量(1Hz)よりも大きくなるように設定する。
ステップS1240で、上述したように設定したフィルタ特性に従ってフィルタ処理を施し、反力制御指令値FA、FBを設定した後、ステップS1250へ進む。ステップS1250では、ステップS1240で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAおよびブレーキペダル反力制御指令値FBをそれぞれアクセルペダル反力発生装置62およびブレーキペダル反力発生装置92に出力する。これにより、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況において、検出精度の低下による反力制御指令値FA、FBの変動がアクセルペダル61またはブレーキペダル91を介して運転者に伝わることを抑制する。
なお、ステップS1210およびS1240で反発力Fc、および反力制御指令値FA、FBに対してそれぞれフィルタ処理を行う場合、上述したローパスフィルタの代わりに変化量リミッタを用いることもできる。この場合、レーダ装置10の検出精度が低下する状況においては、検出精度が低下しない場合に比べて変化量リミット値を小さくする。さらに、反力制御指令値FA、FBに対する低応答と高応答の変化量リミット値の差を、反発力Fcに対する変化量リミット値の差よりも大きく設定する。これにより、レーダ装置10の検出精度が低下するような状況において、検出精度の低下による制駆動力の補正量および反力制御指令値FA、FBの変動を抑制する。
このように、以上説明した第6の実施の形態においては上述した第1から第5の実施の形態による効果に加えて、以下のような作用効果を奏することができる。
レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においては、上述した第3の実施の形態と同様に反発力Fcに対してフィルタ処理を行うとともに、アクセルペダル反力制御指令値FAおよびブレーキペダル反力制御指令値FBに対してもフィルタ処理を行う。レーダ装置10の検出精度が低下するような状況においては、フィルタ特性を低応答に設定する。これにより、レーダ装置10の検出精度が低下する状況において、制駆動力補正量ΔDa、ΔDb、および反力制御指令値FA、FBの変動を抑制し、制駆動力制御および操作反力制御を適切に作動させることができる。さらに、反力制御指令値FA、FBに対する低応答と高応答のフィルタ特性の特性変化幅、例えば低応答と高応答のカットオフ周波数の変化量を、反発力Fcに対する低応答と高応答のフィルタ特性の特性変化幅よりも大きくする。これにより、レーダ装置10の検出精度の低下に起因する反力制御指令値FA、FBの変動がアクセルペダル61またはブレーキペダル91を介して運転者に伝わることを適切に抑制することができる。
上述した第4から第6の実施の形態においては、自車両周囲の現在のリスクポテンシャルRPに応じたアクセルペダル反力制御およびブレーキペダル反力制御をそれぞれ行った。ただし、これには限定されず、アクセルペダル反力制御またはブレーキペダル反力制御を行うこともできる。
上述した第1から第6の実施の形態においては、レーザレーダをレーダ装置10として用いる例を説明したが、レーザレーダの代わりにミリ波レーダ等の別方式のレーダ装置を用いることももちろん可能である。
上述した第1から第6の実施の形態においては、自車両と障害物との車間時間THWを障害物に対する自車両のリスクポテンシャルとして算出したが、これには限定されない。例えば、車間時間THWの代わりに自車両が障害物に接触するまでの時間を表す余裕時間TTCを用いることもできる。余裕時間TTCは、自車両と障害物との車間距離Dを相対速度で割ることにより算出できる。なお、余裕時間TTCを用いる場合でも、仮想弾性体の反発力Fcに基づいて制駆動力の補正量を算出する。
上述した第1から第6の実施の形態においては、自車両前方の障害物に対するリスクポテンシャルに応じて、アクセルペダル操作量SAに対する駆動力の特性を減少方向に補正し、ブレーキペダル操作量SBに対する制動力の特性を増加方向に補正した。これらには限定されず、リスクポテンシャルに応じて自動的に制動制御を行うシステムにおいても、上述したようにセンサ出力値の精度低下を補償することができる。また、制駆動力制御を行わずに操作反力制御のみを行うシステムで、上述したようにセンサ出力値の精度低下を補償することもできる。
上述した第1から第6の実施の形態においては、レーダ装置10の検知範囲の側方端領域A、Bを図11に示すように設定したが、これには限定されない。図11に示す領域A、Bは、検知範囲の側方端から一定の幅を有する領域として設定しているが、例えば検知範囲の側方端に対して一定の角度を有する領域として設定することもできる。
上述した第2および第3の実施の形態においては、図19および図24のフローチャートに示すように、レーダ装置10の検出精度が低下する状況であるか否かを複数のパラメータについて一度に判定したが、これには限定されない。例えば、悪天候であるか否かのみに基づいて、レーダ装置10の検出精度が低下する状況であるか否かを判断することももちろん可能である。
以上説明した第1から第6の実施の形態においては、障害物検出手段としてレーダ装置10および障害物検知装置40を用い、走行状態検出手段として車速センサ20を用い、リスクポテンシャル算出手段、監視手段、制御方法変更手段、および車線変更判定手段としてコントローラ50,51を用いた。また、制御手段として、コントローラ50,51,駆動力制御装置60,制動力制御装置90,アクセルペダル反力発生装置62,およびブレーキペダル反力発生装置92を用いた。
《第7の実施の形態》
以下に、本発明の第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図33に、第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の構成を示すシステム図を示す。図33において、図1に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
図33に示すように、車両用運転操作補助装置3は、自車両の前方領域を撮像する前方カメラ15をさらに備えている。前方カメラ15は、例えばフロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラである。CCDカメラ15は、自車両前方の状況を広角かつ高速に把握することの可能なプログレッシブスキャン式のものであり、前方道路の状況を画像として検出し、障害物検知装置41へと出力する。障害物検知装置41は、CCDカメラ15で撮像された自車両前方の画像に画像処理を施す機能を備えており、自車両の走行レーンの道路白線を検出するとともに、レーザレーダ10で検出された検出物体の左右エッジ端を検出する。
コントローラ52は、各種センサで検知された検出物体の位置情報、すなわちレーザレーダ10およびCCDカメラ15で検知された検出物体の位置情報に基づいて、これらのセンサによる物体の検出精度を評価する。制駆動力制御を行う際には、各種センサによる検出精度の評価結果、すなわち総合的なセンサの検出精度状態に応じて制駆動力制御の出力を調整する。さらに、各種センサによる物体の検出精度が低下するような状況においては、制駆動力の制御方法を適切に変更することにより、センサの検出精度の低下に伴うシステムの性能低下を補償する。
以下に、第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の動作を、図34を用いて説明する。図34は、第7の実施の形態のコントローラ52における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
まず、ステップS2010で、車速センサ20によって検出される自車速Vhと、舵角センサ30によって検出される自車両の操舵角δを読み込む。ステップS2020では、アクセルペダルストロークセンサ(不図示)によって検出されるアクセルペダル操作量SAを読み込む。
つづくステップS2030で、レーザレーダ10によるスキャニング結果を読み込む。なお、この処理はレーザレーダ10のサンプリング周期(例えば100msec)毎に行われる。レーザレーダ10のスキャニング結果に基づいて、物体を検知した場合は、障害物情報である検出物体の位置ベクトルを算出する。なお、レーザレーダ10によって複数の物体が検知されている場合は、各物体について位置ベクトルを算出する。
ステップS2040では、ステップS2010で読み込んだ自車速Vhおよび操舵角δに基づいて、自車両の進路を推定する。ここでは、図7のフローチャートのステップS140における処理と同様に、自車両の旋回曲率ρ(1/m)および旋回半径Rを算出する。そして、図9に示すように、旋回半径Rの円弧を基準線とした幅Twの領域を、自車両の予測進路として設定する。予測進路の幅Twは、予め適切に設定しておく。
ステップS2050では、レーザレーダ10によって検出される各物体について、ステップS2040で設定した自車両の予測進路内にあるか、予測進路外にあるかを判定する。ここでは、ステップS2030で検出した各物体の位置ベクトル、すなわち物体の縦位置および横位置を用いて、検出物体が予測進路内にあるか否かを判定する。レーザレーダ10によって図10に示すように物体A〜Dが検知されていたとすると、コントローラ52は自車両の予測進路内に存在する物体B〜Dを選択する。なお、図10は自車両が直進している場合の予測進路を示している。
ステップS2060では、ステップS2050で自車両の予測進路内にあると判定した検出物体のうち、自車両に最も近い物体を制駆動力制御の対象障害物として選択する。これは、以下の(式5)を用いて決定することができる。
primNo=min(LR_Py) ・・・(式5)
ここで、min(A)とは、集合Aにおける最小値を出力する関数である。LR_Pyとは、ステップS2030で求めたレーザレーダ10による各検出物体の位置ベクトル群における縦位置(車間距離)を表している。つまり、(式5)は、各検出物体の中から自車両に最も接近している物体を選択することを表し、primNoには、検出物体を識別するための物体番号あるいは物体のID番号を代入する。
レーザレーダ10で検知され、対象障害物として選択された物体の横位置は、以下の(式6)で表される。
LPx=LR_Px(primNo) ・・・(式6)
ここで、LR_Pxとは、ステップS2030でレーザレーダ10の検出結果から求めた位置ベクトルにおける各検出物体の横位置(車幅方向位置)を表している。例えば、LR_Px(2)とは、複数の検出物体群において識別番号が“2”として認識している検出物体の横位置を意味している。
つづくステップS2070では、CCDカメラ15による撮像画像を用いて、ステップS2060で選択した対象障害物の位置情報を取得する。具体的には、CCDカメラ15で撮像した撮像画像における対象障害物の位置を透視変換、つまり3次元座標から2次元の画像座標に座標変換した画像上の領域から、レーザレーダ10によって検知された対象障害物のみを抽出し、カメラ画像処理による物体位置を求める。そして、このカメラ画像による対象障害物の位置ベクトルを、CPy(縦位置)、CPx(横位置)とする。
なお、この処理は、CCDカメラ15のサンプリング周期毎(例えば一般的なNTSCレートである33.33msec毎とする)行われ、コントローラ52は、図34の処理が行われるたびに対象障害物の位置ベクトルを取得する。また、レーザレーダ10の非検出時、例えばレーザレーダ10が物体を捕捉していない場合や物体をロストした場合は、カメラ画像による位置情報の取得は行わない。
なお、前記3次元座標から2次元の画像座標への座標変換を行い、座標変換した画像上の領域から対象障害物の位置を検出する処理は、例えば特開2003−237509号公報に開示された手順を用いることができる。簡単に説明すると、CCDカメラ15の取付高さ、画素換算したCCDカメラ15の鉛直方向および水平方向の焦点距離、および障害物であるとして考慮すべき物体の高さおよび幅等に基づいて、レーザレーダ10で検知した検出物体の位置を含むその近傍の領域を、画面上の領域に座標変換して、検出物体の存在する画面上の領域への絞り込みを行う。そして、この絞り込んだ領域内において、sobelフィルタ等を行った後2値化し、2値化した画像を投影処理することにより、検出物体のエッジに相当するエッジペアを検出し、検出物体の画像内位置を検出する。
つづくステップS2080では、ステップS2070の処理においてカメラ画像上で対象障害物を抽出できたか否か(対象障害物の位置情報を取得できたか否か)を判定する。ステップS2080が肯定判定され、レーザレーダ10およびCCDカメラ15の両方で対象障害物を検知できている場合には、ステップS2090へ進む。ステップS2090では、各センサ、すなわちレーザレーダ10およびCCDカメラ15の検出精度を評価し、評価結果に基づいていずれのセンサの検出値を制御用の検出値として用いるかを選択する。ここで行う処理を、図35のフローチャートを用いて説明する。なお、図35に示す物体情報選択処理は例えば10msec毎に行われており、コントローラ52は図34の処理が行われるたびに物体情報の選択結果を取得する。
ステップS2091では、レーザレーダ10の検出値から、対象障害物の相対速度を検出する。具体的には、ステップS2060で決定した対象障害物の横位置LR_Px(primNo)を入力とし、以下の(式7)の伝達関数で表される疑似微分器により相対速度LrVxを算出する。
G(Z)=(LcZ2-Lc)/(Z2-LaZ+Lb) ・・・(式7)
ここで、(式7)のZは進み演算子であり、係数La、Lb、Lcは正の定数であって、レーザレーダ10の測距精度のばらつきと、相対速度の算出に要求される応答性との兼ね合いから適切に設定される。
なお、ここではレーザレーダ10のサンプリング周期がCCDカメラ15のサンプリング周期よりも長いため、(式7)における係数La、Lb、Lcを定数としている。また、レーザレーダ10により検出物体のロストやロストや捕捉といった測距状況の変化が生じた場合には、入出力変数の全ての過去値として、現在の測距値をセットする。
続くステップS2092では、ステップS2091で算出したレーザレーダ10による対象障害物の横位置を入力とする相対速度LrVxの過去10回分の値に基づき、以下の(式8)から、その分散値LVを算出する。なお、ここではわかりやすさの観点から標準偏差として算出する。
LV={(LrVx[0]-a)2+(LrVx[1]-a)2+… …+(LrVx[9]-a)2}1/2/10
a=(LrVx[0]+LrVx{1]+… …+LrVx[9])/10 ・・・(式8)
ここで、LrVx[0]とは、今回算出したレーザレーダ10による相対速度を意味し、LrVx[1]とは前回算出したレーザレーダ10による相対速度を意味し、… …、LrVx[9]は9回前に算出したレーザレーダ10による相対速度を意味している。
ステップS2093では、CCDカメラ15の撮像画像による検出値から、対象障害物の相対速度を検出する。具体的には、ステップS2070で取得したCCDカメラ15のカメラ画像による対象障害物の横位置CPxを入力とし、以下の(式9)の伝達関数で表される疑似微分器により、横位置CPxの相対速度CrVxを算出する。
G(Z)=(CcZ2-Cc)/(Z2-CaZ+Cb) ・・・(式9)
ここで、係数Ca、Cb、Ccは正の定数であって、CCDカメラ15のカメラ画像に基づく測距精度のばらつきと、相対速度の算出に要求される応答性との兼ね合いから適切に設定される。
続くステップS2094では、ステップS2093で算出したCCDカメラ15による対象障害物の横位置CPxの相対速度CrVxの過去10回分の値に基づき、以下の(式10)にしたがって、その分散値CVを算出する。なお、ここではわかりやすさの観点から標準偏差として算出する。
CV={(CrVx[0]-a)2+(CrVx[1]-a)2+… …+(CrVx[9]-a)2}1/2/10
a=(CrVx[0]+CrVx{1]+… …+CrVx[9]) 1/2/10 ・・・(式10)
ここで、CrVx[0]とは、今回算出したカメラ画像に基づく相対速度を意味し、CrVx[1]とは前回算出したカメラ画像による相対速度を意味し、… …、CrVx[9]は9回前に算出したカメラ画像による相対速度を意味している。
ステップS2095では、ステップS2092で算出したレーザレーダ10による相対速度の分散値LVと、ステップS2094で算出したカメラ画像に基づく相対速度の分散値CVとを比較する。レーザレーダ10による相対速度の分散値LVがカメラ画像による相対速度の分散値CVよりも大きい場合は(LV>CV)、ステップS2096に進み、CCDカメラ15による検出値を制駆動力制御に用いる位置情報として選択する。一方、ステップS2095においてLV≦CVと判定されると、ステップS2097へ進み、レーザレーダ10による検出値を制駆動力制御に用いる位置情報として選択する。
このようにステップS2090でいずれのセンサによる位置情報を用いるかを選択した後、ステップS2100へ進む。ステップS2100では、レーザレーダ10とCCDカメラ15の両方で前方障害物を検出できているので検出精度が良好であると判断し、出力リミット値Lを所定値L10に設定する。
一方、ステップS2080が否定判定され、CCDカメラ15によって前方障害物が抽出できなかった場合は、ステップS2110へ進み、レーザレーダ10による検出値(位置情報)を選択する。続くステップS2120では、レーザレーダ10によってしか前方障害物を検出できなかったので検出精度が低下していると判断し、出力リミット値LをL10よりも小さい所定値L20に設定する(L20<L10)。
ステップS2130では、ステップS2090またはS2110で選択した前方障害物の位置情報を用いて自車両と前方障害物との車間時間THWを算出する。ここでは、上述した(式4)に示すように、自車両と前方障害物との車間距離Dを自車速Vhで割ることにより、車間時間THWを算出する。
つづくステップS2140では、ステップS2130で算出した対象障害物に対する車間時間THWが予め設定したしきい値T1以上か否かを判定する。車間時間THWがしきい値T1未満の場合は、対象障害物との接触のリスクポテンシャルが高いと判断し、制駆動力制御を行うためにステップS2150へ進む。
ステップS2150では、上述した(式3)に従って仮想弾性体の反発力Fcを算出する。このとき、制御パラメータk、Thはそれぞれ予め定めた所定値を用いる。ステップS2140で車間時間THWがしきい値T1以上であると判定されると、ステップS2160へ進み、反発力Fc=0とする。
ステップS2170では、センサの検出精度が低下する状況において制駆動力の補正量を制限するため、ステップS2150またはS2160で算出した反発力Fcに対して、ステップS2100またはS2120で設定したリミット値Lを用いてリミット処理を行う。具体的には、仮想弾性体の反発力Fcがリミット値Lよりも大きい場合は、反発力Fcをリミット値Lに制限する。反発力Fcがリミット値L以下の場合は、算出した反発力Fcをそのまま用いる。
このように、一方のセンサでしか対象障害物を検出できていないような検出精度の低下する状況では、両方のセンサで検出できている検出精度が良い状況に比べて反発力Fcの上限値Lを低下させる。
ステップS2170で反発力Fcのリミット処理を行った後、ステップS2180へ進む。ステップS2180では、リミット処理を行った反発力Fcを用いて制駆動力の補正量を算出する。ステップS2180およびS2190での処理は、上述した図7のフローチャートのステップS220およびS230での処理と同様であるので説明を省略する。
このように、以上説明した第7の実施の形態においては、上述した第1から第6の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置3は、障害物を検出するための種類の異なる複数の検出器(センサ)を備えている。コントローラ52は、車両用運転操作補助装置3に設けられた複数のセンサの種類および検出精度に応じて、制駆動力制御の補正量(出力)を調整する。すなわち、検出精度のパフォーマンスの高い方のセンサの検出値を用いて制駆動力制御の補正量を調整する。これにより、障害物の位置情報をより正確に検出し、適切な制駆動力制御を行うことができる。
(2)車両用運転操作補助装置3は、光学式のレーダであるレーザレーダ10と、撮像手段であるCCDカメラ15とを備えている。これにより、障害物の位置情報をより正確に検出し、適切な制駆動力制御を行うことができる。
(3)コントローラ52は、レーザレーダ10とCCDカメラ15のうち、一方のセンサのみが障害物を検出している場合に、総合的なセンサの検出精度が低下すると判定する。この場合、リミット値Lを小さい方の値L20に設定する。これにより、一方のセンサが故障するなどしてセンサの検出精度が低下する状況では、検出精度が良好な場合に比べて反発力Fcのリミット値Lが低下し、反発力Fcの急激な変化を抑制して適切な制駆動力制御を行うことができる。
《第8の実施の形態》
以下に、本発明の8の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第8の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図33に示した第7の実施の形態と同様である。ここでは、第7の実施の形態との相違点を主に説明する。
第8の実施の形態においては、レーザレーダ10とCCDカメラ15のうち、いずれのセンサによる検出値を用いるかを選択するとともに、レーザレーダ10の検出精度が低下するような状況を判定し、これらに基づいて反発力Fcのリミット値Lを設定する。具体的には、レーザレーダ10の検知範囲の側方端部領域(例えば図11に示す領域A、B)に対象障害物が存在する場合は、レーザレーダ10の検出精度が低下する状況であると判定する。
以下に、第8の実施の形態による車両用運転操作補助装置の動作を、図36を用いて説明する。図36は、第8の実施の形態のコントローラにおける運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS3010〜S3040での処理は、図34のフローチャートのステップS2010〜S2040での処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS3050では、レーザーレーダ10で検出した各物体について、レーザレーダ10の検知範囲内のどの領域に存在しているかを判定する。すなわち、検出物体が図11に示すような検知範囲の側方端部領域AまたはBに存在しているか、あるいはそれ以外の領域に存在しているかを判定する。
つづくステップS3060〜S3100では、レーザレーダ10によって検出された各物体から制駆動力制御の対象とする対象障害物を決定し、CCDカメラ15によって対象障害物を検知できている場合は、レーザーレーダ10およびCCDカメラ15のいずれの検出値を用いるかを選択する。ステップS3100でいずれのセンサによる位置情報を使用するかを選択した後、ステップS3110へ進む。
ステップS3110では、対象障害物がレーザレーダ10の検知範囲の側方端部領域AまたはBに存在するか否かを判定する。ステップS3110が否定判定され、レーザレーダ10およびCCDカメラ15の両方で対象障害物が検出できているとともに、対象障害物が側方端部領域A、B以外に存在している場合は、総合的なセンサの検出精度が良好であると判断し、ステップS3120へ進む。ステップS3120では、反発力Fcのリミット値Lを所定値L10に設定する。
ステップS3110が肯定判定され、レーザレーダ10およびCCDカメラ15の両方で対象障害物を検出できているが、対象障害物が側方端部領域AまたはBに存在している場合は、総合的なセンサの検出精度が中程度であると判断し、ステップS3130へ進む。ステップS3130では、反発力Fcのリミット値Lを所定値L30(L10>L30>L20)に設定する。
一方、ステップS3090が否定判定され、CCDカメラ15によって前方障害物が抽出できなかった場合は、ステップS3140へ進み、レーザレーダ10による検出値(位置情報)を選択する。続くステップS3150では、対象障害物がレーザレーダ10の検知範囲の側方端部領域AまたはBに存在するか否かを判定する。ステップS3150が肯定判定され、レーザレーダ10でしか対象障害物が検出できておらず、かつ対象障害物が側方端部領域A、Bに存在している場合は、総合的なセンサの検出精度が低下していると判断し、ステップS3160へ進む。ステップS3160では、反発力Fcのリミット値LをL10およびL30よりも小さい所定値L20に設定する。
つづくステップS3170〜S3230での処理は、図34のステップS2130〜S2190での処理と同様であるので説明を省略する。
このように以上説明した第8の実施の形態においては、上述した第1から第7の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
コントローラは、レーザレーダ10とCCDカメラ15のうち、一方のセンサのみが障害物を検出しており、かつ障害物が検知範囲の側方端部領域に存在する場合に、総合的なセンサの検出精度が低下すると判定する。この場合、リミット値Lを最も小さい値L20に設定する。これにより、例えば一方のセンサ、ここではCCDカメラ15が故障したときにレーザレーダ10の検知範囲の側方端部領域に障害物が存在するなどしてセンサの検出精度が低下する状況では、検出精度が良好な場合に比べて反発力Fcのリミット値Lが低下する。従って、反発力Fcの急激な変化を抑制し、適切な制駆動力制御を行うことができる。
−第8の実施の形態の変形例−
上述した第8の実施の形態においては、対象障害物がレーザレーダ10の検知範囲の側方端部領域AまたはBに存在している場合に、レーザレーダ10の検出精度が低下するとして説明したが、レーザレーダ10の検出精度が低下する状況は、これには限定されない。検出精度が低下する状況の他の例を以下に示す。
・自車両が追い越し動作中の場合。
・悪天候の場合(降雨時、降雪時、霧発生)。
・レーザレーダ10の受光部10bで受光する反射波のノイズ成分が多い場合。
・対象障害物が停止車両である場合。
自車両が追い越し動作中すなわち車線変更中であるか否かは、例えば運転者によるウィンカ操作、または操舵角速度に基づいて判定することができる。ウィンカ操作が行われている場合、または操舵角速度が所定値以上である場合は、自車両が追い越し動作中であると判断する。悪天候であるか否かは、例えばワイパーの作動状態(ワイパーオン/オフまたはワイパー作動速度等)、雨滴センサの出力値、またはフォグランプのオン/オフ等を読み込んで判定する。レーザレーダ10のノイズ成分については、図20に示したようなレーザレーダ10の検出結果から車両相当の物体と判断されない反射物の数に基づいてノイズレベルを算出し、ノイズ成分が多いか否かを判定する。対象障害物が停止車両であるか否かは、例えば自車両と対象障害物との車間距離Dを疑似微分して相対速度を算出し、相対速度が所定値未満の場合に対象障害物が停止していると判定する。
また、上述した第7および第8の実施の形態においては、センサの検出精度が低下するような状況において反発力Fcのリミット値Lを変更することによりシステムの性能低下を補償するようにしたが、これには限定されない。センサの検出精度が低下するような状況における制駆動力の制御方法の他の例を以下に示す。
・仮想弾性体の反発力Fcに対してフィルタ処理を行う際にフィルタ特性の応答を低くする。
・検出精度が低下しない場合に比べて制駆動力の制御タイミングを遅延させるとともに制御量変化率(制御ゲイン)を増大させる。
フィルタ特性の応答については、センサの検出精度が低下するような状況において、例えばローパスフィルタのカットオフ周波数を低くすることにより反発力Fcの変動を抑制することができる。制駆動力の制御タイミングおよび制御ゲインの変更については、例えば仮想弾性体の反発力Fcを算出するための制御パラメータ(バネ定数kおよびしきい値Th)をセンサの検出精度に応じて設定することにより実現できる。具体的には、レーザレーダ10の検出精度が低下する状況では、検出精度が良好な場合に比べてバネ定数kを大きく、かつしきい値Thを小さく設定する。
図37に、レーザレーダ10とCCDカメラ15とを組み合わせて用いたシステムにおいて、総合的なセンサの検出精度が低下するような状況でどのようにシステムの性能低下を補償するかをまとめた表を示す。なお、レーザレーダ10で物体を検知していない場合はCCDカメラ15による物体の検知は行わない。
レーザレーダ10による物体の検出精度が良好で、かつCCDカメラ15で該物体を検出できている場合は、総合的なセンサの検出精度が良好であると判断し、リミット値Lを大きな値L10に設定する。またはフィルタ特性を高応答とする。または制御タイミングを遅延させず、制御ゲインは小さくする。このように、障害物の位置情報を正確に検出できている場合は、その情報を明確に運転者に報知することができる。
レーザレーダ10による物体の検出精度が良好であるが、CCDカメラ15で該物体の検出に失敗した場合は、総合的なセンサの検出精度を中程度と判断し、リミット値Lを中程度のL30に設定する。またはフィルタ特性の応答を中程度にする。または制御タイミングを若干遅延させるとともに制御ゲインを中程度にする。このように、障害物の位置情報の精度が若干低下しているような状況では、適切な制駆動力制御を行うことができるように補正を行う。
レーザレーダ10による物体の検出精度が低下する状況であるが、CCDカメラ15で該物体を検出できている場合は、総合的なセンサの検出精度を中程度と判断し、リミット値Lを中程度のL30に設定する。またはフィルタ特性の応答を中程度にする。または制御タイミングを若干遅延させるとともに制御ゲインを中程度にする。このように、障害物の位置情報の精度が若干低下しているような状況では、適切な制駆動力制御を行うことができるように補正を行う。
レーザレーダ10による物体の検出精度が低下する状況で、CCDカメラ15による該物体の検出にも失敗した場合は、総合的なセンサの検出精度が低下していると判断し、リミット値Lを小さい値L20に設定する。またはフィルタ特性を低応答にする。または制御タイミングを遅延させるとともに制御ゲインを大きくする。このように、障害物の位置情報の精度が低下している状況では、制駆動力の補正量の急激な変動を抑制するように補正を行うことにより適切な制駆動力制御を行うことができる。
このように、反発力Fcに対するフィルタ特性を変更したり、制駆動力制御のタイミングやゲインを変更することによっても、上述した第8の実施の形態と同様に、センサの検出精度が低下するような状況においてシステムの性能を補償することができる。
《第9の実施の形態》
以下に、本発明の第9の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図38に、第9の実施の形態による車両用運転操作補助装置4の構成を示すシステム図を示す。図38において、図33に示した第7の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第7の実施の形態との相違点を主に説明する。
図38に示すように、車両用運転操作補助装置4は、CCDカメラに代えてミリ波レーダ16を備えている。ミリ波レーダ16は障害物検知装置41に接続されており、障害物検知装置42はミリ波レーダ16によって検出された一つまたは複数の物体に対して自車両を原点とする二次元座標値、すなわち検出物体の位置を算出する機能を備えている。
コントローラ53は、各種センサで検知された検出物体の位置情報、すなわちレーザレーダ10およびミリ波レーダ16で検知された検出物体の位置情報に基づいて、これらのセンサによる物体の検出精度を評価する。制駆動力制御を行う際には、各種センサによる検出精度の評価結果、すなわち総合的なセンサの検出精度状態に応じて制駆動力制御の出力を調整する。さらに、各種センサによる物体の検出精度が低下するような状況においては、制駆動力の制御方法を適切に変更することにより、センサの検出精度の低下に伴うシステムの性能低下を補償する。
以下に、第9の実施の形態による車両用運転操作補助装置4の動作を、図39を用いて説明する。図39は、第9の実施の形態のコントローラ53における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS4010〜S4050での処理は、図34のフローチャートのステップS2010〜S2050での処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS4060では、ステップS4050で自車両の予測進路内にあると判定した検出物体のうち、自車両に最も近い物体(物体1)を選択する。レーザレーダ10で検知された物体1の縦位置は、以下の(式11)で表される。
LPy=LR_Py(primNo) ・・・(式11)
ステップS4070では、ミリ波レーダ16によって検出される各物体の検出結果を読み込む。具体的には、各検出物体の測距値MR_Py(縦位置)、MR_Px(横位置)を読み込む。なお、この処理はミリ波レーダ16の検知周期毎、例えばレーザレーダ10の検知周期と同じ100msec毎に行う。
続くステップS4080では、ミリ波レーダ16で検出された各物体について、ステップS4040で設定した自車両の予測進路内にあるか、予測進路外にあるかを判定する。ここでは、ステップS4070で検出した各物体の位置ベクトル、すなわち物体の縦位置および横位置を用いて、検出物体が予測進路内にあるか否かを判定する。ステップ4090では、ステップS4080で自車両の予測進路内にあると判定した検出物体のうち、自車両に最も近い物体(物体2)を選択する。選択した物体2の物体番号をMprimNoとする。ミリ波レーダ16で検知された物体2の縦位置は以下の(式12)で表される。
MPy=MR_Py(MprimNo) ・・・(式12)
ステップS4100では、レーザレーダ10によって検知した物体1とミリ波レーダ16によって検知した物体2が一致するか否かを判定する。例えば物体1と物体2の縦位置および横位置を比較することにより両者が同一物体であると判定されると、ステップS4110へ進む。ステップS4110では、レーザレーダ10とミリ波レーダ16で同じ物体(対象障害物)を検出している場合に、いずれのセンサによる検出値(位置情報)を使用するかを選択する。ここでの処理を図40のフローチャートを用いて説明する。
ステップS4111では、レーザレーダ10の検出値から、対象障害物の相対速度を検出する。ここでは、上述した(式7)の伝達関数に対してレーザレーダ10で検出した対象障害物(物体1)の縦位置を入力し、レーザレーダ10による相対速度LrVyを算出する。
続くステップS4112では、ステップS4111で算出したレーザレーダ10による相対速度LrVyの過去10回分の値に基づき、以下の(式13)に従って分散値LVを算出する。なお、ここではわかりやすさの観点から標準偏差として算出する。
LV={(LrVy[0]-a)2+(LrVy[1]-a)2+… …+(LrVy[9]-a)2}1/2/10
a=(LrVy[0]+LrVy{1]+… …+LrVy[9])/10 ・・・(式13)
ここで、LrVy[0]とは、今回算出したレーザレーダ10による相対速度を意味し、LrVy[1]とは前回算出したレーザレーダ10による相対速度をそれぞれ意味している。
また、過去10回分の間の分散値LVの算出に用いる検知データに、レーザレーダ10が物体を捕捉していない、あるいはロストを意味する値がある場合、すなわち非捕捉中やロストが発生していた場合は、上記(式13)の出力を予め定めた所定値に設定する。
ステップS4113では、ミリ波レーダ16の検出結果から対象障害物の相対速度を取得する。ミリ波レーダ16を用いる場合はドップラー効果を利用することによって、直接対象障害物(物体2)の縦方向の相対速度MrVyを検出することができる。
続くステップS4114では、ステップS4113で取得したミリ波レーダ16による相対速度MrVyの過去10回分の値に基づき、以下の(式14)に従って分散値MVを算出する。なお、ここではわかりやすさの観点から標準偏差として算出する。
MV={(MrVy[0]-a)2+(MrVy[1]-a)2+… …+(MrVy[9]-a)2}1/2/10
a=(MrVy[0]+MrVy{1]+… …+MrVy[9])/10 ・・・(式14)
ここで、MrVy[0]とは、今回算出したミリ波レーダ16による相対速度を意味し、MrVy[1]とは前回算出したミリ波レーダ16による相対速度を意味し、・・・MrVy[9]とは9回前に算出したミリ波レーダ16による相対速度をそれぞれ意味している。
また、過去10回分の間の分散値MVの算出に用いる検知データに、ミリ波レーダ16が物体を捕捉していない、あるいはロストを意味する値がある場合、すなわち非捕捉中やロストが発生していた場合は、上記(式14)の出力を予め定めた所定値に設定する。
続くステップS4115では、ステップS4112で算出したレーザレーダ10による相対速度の分散値LVと、ステップS4114で算出したミリ波レーダ16による相対速度の分散値MVとを比較する。レーザレーダ10による相対速度の分散値LVがミリ波レーダ16による相対速度の分散値MVよりも大きい場合は(LV>MV)、ステップS4116に進み、ミリ波レーダ16による検出値を制駆動力制御に用いる位置情報として選択する。一方、ステップS4115においてLV≦MVと判定されると、ステップS4117へ進み、レーザレーダ10による検出値を制駆動力制御に用いる位置情報として選択する。
このように、いずれのセンサによる位置情報を用いるか選択した後、ステップS4120へ進む。ステップS4120では、レーザレーダ10とミリ波レーダ16で同一の物体を検出できているので検出精度が良好であると判断し、出力リミット値Lを所定値L10に設定する。
一方、ステップS4100が否定判定され、レーザレーダ10とミリ波レーダ16で異なる物体を検出している場合は、ステップS4130へ進む。ステップS4130では、レーザレーダ10によって検出された物体1とミリ波レーダ16によって検出された物体2とから、自車両に近い方の物体を制駆動力制御の対象障害物として選択する。続くステップS4140では、レーザレーダ10とミリ波レーダ16の内、一方のセンサでしか対象障害物が検出できなかったため検出精度が低下していると判断し、出力リミット値LをL10よりも小さい所定値L20に設定する(L20<L10)。
以降、ステップS4150〜S4210での処理は、図34のステップS2130〜S2190での処理と同様であるので説明を省略する。
このように、以上説明した第9の実施の形態においては、上述した第1から第8の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置4は、光学式のレーダであるレーザレーダ10と、電波式のレーダであるミリ波レーダ16とを備えている。これにより、障害物の位置情報をより正確に検出し、適切な制駆動力制御を行うことができる。
(2)コントローラ53は、レーザレーダ10とミリ波レーダ16のうち、一方のセンサのみが障害物を検出している場合に、総合的なセンサの検出精度が低下すると判定する。この場合、リミット値Lを小さい方の値L20に設定する。これにより、一方のセンサが故障するなどしてセンサの検出精度が低下する状況では、検出精度が良好な場合に比べて反発力Fcのリミット値Lが低下し、反発力Fcの急激な変化を抑制して適切な制駆動力制御を行うことができる。
上述した第9の実施の形態においては、センサの検出精度が低下するような状況において反発力Fcのリミット値Lを変更することによりシステムの性能低下を補償するようにしたが、これには限定されない。図41に、レーザレーダ10とミリ波レーダ16とを組み合わせて用いたシステムにおいて、総合的なセンサの検出精度が低下するような状況でどのようにシステムの性能低下を補償するかをまとめた表を示す。
レーザレーダ10とミリ波レーダ16の両方によって検出成功した場合、すなわち両方のセンサで同一の物体を検出した場合は、総合的なセンサの検出精度が良好であると判断し、リミット値Lを大きな値L10に設定する。またはフィルタ特性を高応答とする。または制御タイミングを遅延させず、制御ゲインは小さくする。
レーザレーダ10では物体を検出できたが、ミリ波レーダ16では検出できなかった場合、またはレーザレーダ10では検出できなかったがミリ波レーダ16で検出できた場合は、総合的なセンサの検出精度が低下していると判断し、リミット値Lを小さい値L20に設定する。またはフィルタ特性を低応答にする。または制御タイミングを遅延させるとともに制御ゲインを大きくする。
両方のセンサで物体の検出に失敗した場合は制御を行わない。
このように、反発力Fcに対するフィルタ特性を変更したり、制駆動力制御のタイミングやゲインを変更することによっても、上述した第9の実施の形態と同様に、センサの検出精度が低下するような状況においてシステムの性能を補償することができる。
上述した第7から第9の実施の形態において、第4から第6の実施の形態と同様に制駆動力の補正量を運転操作装置の操作反力として発生させる操作反力制御を組み合わせることも可能である。
また、上述した第7および第8の実施の形態においては、レーザレーダ10とCCDカメラ15とを組み合わせたが、ミリ波レーダ16とCCDカメラ15を組み合わせて用いることももちろん可能である。また、CCDカメラの代わりにCMOSカメラを用いることもできる。
以上説明した第7から第9の実施の形態においては、障害物検出手段としてレーザレーダ10(光学式レーダ)、CCDカメラ15(撮像手段),ミリ波レーダ16(電波式レーダ)、および障害物検知装置41,42を用い、走行状態検出手段として車速センサ20を用い、リスクポテンシャル算出手段、監視手段、制御方法変更手段、調整手段および車線変更判定手段としてコントローラ52,53を用いた。また、制御手段として、コントローラ52,53,駆動力制御装置60,制動力制御装置90,アクセルペダル反力発生装置62,およびブレーキペダル反力発生装置92を用いた。