JP2005154720A - 再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム - Google Patents

再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 再帰反射シートとして使用した際に必要となる色相および反射性能を満足しうる再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】 着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45゜照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.541,0.370)、(0.629,0.281)、(0.735,0.265)および(0.629,0.370)の範囲内にあり、Y値が2から12の範囲である再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム。
【選択図】 図1

Description

本発明は、再帰反射シートの表皮材であって、再帰反射シートを保護し、基材に意匠性を付与する透明、かつ着色されたアクリル樹脂フィルムに関する。さらに詳しくは、看板や道路標識などに使用される再帰反射シートの表皮材として用いられてその表面を保護するとともに、意匠性を付与することができるアクリル樹脂フィルムに関する。
入射した光を光源方向に向けて反射される再帰反射シートは、従来からよく知られており、その再帰反射性、夜間における優れた視認性を利用して種々の分野で使用されている。例えば、再帰反射シートを用いた道路標識、工事標識等は、夜間等において、走行する車両等のヘッドライト等の光源からの光を光源方向、即ち走行する車両の方向へ向けて反射させ、標識の視認者である車両の運転手に対し優れた視認性を提供し、明確な情報伝達を可能にするという優れた特性を有している。このような道路標識、工事標識等として用いられる再帰反射シートは、視認性を良好にするために着色されており、さらに、着色された再帰反射シートには、直接文字や模様がスクリーン印刷することにより形成されている。
着色された再帰反射シートの色の種類としては、白、黄、赤、黄赤、緑、青があり、各色について色度座標の範囲や輝度率(β)の下限値が規格に定められている。例えば、JIS規格の場合は、JIS Z9117に、赤の再帰反射シートの色は、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学条件(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.722,0.278)、(0.608,0.323)、(0.580,0.363)、(0.654,0.346)の範囲であり、輝度率(β)の下限値は0.05と定められている。ここで、輝度率(β)は、完全拡散反射面の値を1.00とし、それに対する試料濃度の比率を示した値である。
また、ASTM D4956では、赤の再帰反射シートの色は、XYZ表色系での色度座標(x,y)が(0.648,0.351)、(0.735,0.265)、(0.629,0.281)、(0.565,0.346)の範囲内であり、Y値が2.5から12の範囲内であることが定められている。
上述のような着色された再帰反射シートを得る方法としては、再帰反射シートの表層に印刷によって着色する方法、フィルムを製造するまでの工程の何れかで着色剤を練り込み、得られた着色フィルムを保護層として再帰反射シートの基材に積層する方法等が考えられる。これらの方法の中でも、再帰反射シートの反射性能や製造コストを考慮すると後者の方が好ましい。
再帰反射シート用カバーフィルムとしては、特開昭62−4741号公報(特許文献1)、特開昭62−4742号公報(特許文献2)に、熱可塑性重合体と多層構造重合体とからなり、ゲル含量がコントロールさせたものが開示されている。このフィルムは、耐候性と加工性に優れるものである。さらに、特開平11−15415号公報(特許文献3)の実施例に、無色透明のポリメチルメタクリレートフィルムを使用した再帰反射シートおよびその製造方法が開示されている。このフィルムは耐衝撃性、耐候性に優れるものである。
これらフィルムは、耐候性、加工性、耐衝撃性については優れているものの、いずれの公開公報においても、着色された再帰反射シートおよびこれを得る方法については全く言及されていない。
一方、再帰反射シートの表皮材として用いることを前提とはしていないものの、着色されたフィルムや着色層については、これまでに様々なものが開示されている。
このうち、特開2002−331619号公報(特許文献4)には、屋外で使用可能な耐候性を有し、かつ曲面への施工が可能な柔軟性を有するマーキングフィルム用基材を構成するための着色アクリル系樹脂フィルムが開示されている。該公報の実施例には、市販の柔軟性アクリル原料に酸化チタン顔料を添加して着色アクリル系樹脂フィルムが得られることを開示している。
また、特開2001−253033号公報(特許文献5)には、適度なフィルム強度と柔軟性や形状追従性を有し、高彩度色の発色性や耐候性に富むマーキングフィルムを構成するための着色透明層が開示されている。該公報の実施例には、アクリルウレタン系塗料にシアニンブルー有機顔料を添加し、青色の着色透明層が得られることが開示されている。
また、特開2002−49315号公報(特許文献6)には、耐候性に優れ、適度な柔軟性や形状追従性を有するマーキングフィルムを構成するための着色基材層が開示されている。該公報の実施例には、塩化ビニル樹脂に白色顔料を添加したり、ポリプロピレン系樹脂にシアニンブルーを添加したりして着色基材層を得ることが開示されている。
しかしながら、上述の特開2002−331619号公報(特許文献4)で開示されている着色アクリル樹脂フィルムは、マーキングフィルムを構成するための着色層としては優れた性能を示すものの、この公開公報においては、再帰反射シートとして使用した際に必要となる色相および透明性に関しては言及されていない。さらに、該公報の実施例に開示されている着色アクリル系樹脂フィルムは、樹脂成分100質量部に対して酸化チタンが15質量部添加されて、透明性に劣るため、再帰反射シートの表皮材として満足できるものではない。
また、特開2001−253033号公報(特許文献5)で開示されている基材層は、マーキングフィルムを構成するための着色層としては非常に優れた性能を示すものの、この公開公報においては、熱可塑性樹脂に着色した時の具体的な色相および透明性について言及されていない。さらに、該公報の実施例に開示されている、基材層にシアニンブルー有機顔料を樹脂分100質量部に対して5質量部含有したフィルムは、再帰反射シートとして必要となる色相が得られず、更に透明性に劣るため、再帰反射シートの表皮材としては満足できないものである。
さらに、特開2002−49315号公報(特許文献6)で開示されている着色基材層は、マーキングフィルムを構成するための着色層としては優れた性能を示すものの、この公開公報においては、具体的なフィルムの色相について言及されていない。さらに、該公報の実施例に記載された着色基材層は、樹脂100質量部に対して白色顔料が45質量部添加された塩化ビニル樹脂、または樹脂100質量部に対してシアニンブルー顔料が4質量部添加された着色ポリプロピレン系樹脂組成物であり、このフィルムを再帰反射シートの表皮として使用した場合、再帰反射シートとして必要となる色相が得られず、更に透明性が劣るため、再帰反射シートの表皮材として満足できるものではない。
上述の如く、これまで、再帰反射シートとして使用した際に必要となる色相および反射性能を満足しうる、再帰反射シートの表皮材として用いることのできる着色アクリル樹脂フィルムは知られていなかった。このため、着色された再帰反射シート表皮用アクリル樹脂フィルム、詳しくは再帰反射シートとして使用した際に必要となる色相および反射性能を満足しうる再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムの開発が強く望まれていた。
特開昭62−4741号公報 特開昭62−4742号公報 特開平11−15415号公報 特開2002−331619号公報 特開2001−253033号公報 特開2002−49315号公報
よって、本発明の目的は、再帰反射シートとして使用した際に必要となる色相および反射性能を満足しうる再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムを提供することにある。
本発明者らは、再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムについて検討した結果、色度座標(x、y)を特定の範囲内になるようにアクリル樹脂フィルムに特定の着色剤を練り込んで着色することにより、再帰反射シートとして使用した際に必要となる色相および反射性能を満足しうる着色アクリル樹脂フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは、再帰反射シートの表皮材として用いられる着色アクリル樹脂フィルムであり、該着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45゜照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.541,0.370)、(0.629,0.281)、(0.735,0.265)および(0.629,0.370)の範囲内にあり、Y値が2から12の範囲であることを特徴とするものである。
また、本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは、アンスラキノン系着色剤、ペリノン系着色剤、ジアゾ系着色剤、ジケトピロロピロール系着色剤のいずれかを含有することが望ましい。
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは、着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.541,0.370)、(0.629,0.281)、(0.735,0.265)および(0.629,0.370)の範囲内にあり、Y値が2から12の範囲であるものなので、再帰反射シートとして使用した際に必要となる色相および反射性能を満足しうる。
また、本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムが、アンスラキノン系着色剤、ペリノン系着色剤、ジアゾ系着色剤、ジケトピロロピロール系着色剤のいずれかを含有するものであれば、再帰反射シートとして使用した際に必要となる色相および反射性能を満足しうる。
以下、本発明について詳細に説明する。
<着色アクリル樹脂フィルム>
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム(以下、着色アクリル樹脂フィルムとも記す)は、該着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x、y)が、(0.541,0.370)、(0.629,0.281)、(0.735,0.265)および(0.629,0.370)の範囲内でなければならない。
ここで、「(0.541,0.370)、(0.629,0.281)、(0.735,0.265)および(0.629,0.370)の範囲」とは、図1に示すように、色度座標(x、y)における(0.541,0.370)、(0.629,0.281)、(0.735,0.265)、(0.629,0.370)そして最初の(0.541,0.370)の各座標を順に直線で結ぶことによって囲まれる領域を意味する。
この範囲の色度座標(x、y)を有する着色アクリル樹脂フィルムを再帰反射シートの表皮材として用いた場合、その再帰反射シートは、例えばJIS Z9117に記載の色相を満足することができ、反射シートの視認性を高めることができる。
好ましい色度座標(x、y)の範囲は、(0.5488,0.363)、(0.613,0.300)、(0.670,0.300)、(0.636,0.363)の範囲である。
マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙としては、日本色研事業(株)の標準色カード230のねずみ色(マンセル記号:N5.5)を用いることができる。
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムのY値は、着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した値であり、このY値が2から12の範囲内でなければならない。
Y値が2から12の範囲内であると、その着色アクリル樹脂フィルムを再帰反射シートの表皮材として用いた場合、その再帰反射シートの色相はASTM D4956の規格を満足することができ、道路標識などに使用した場合、視認性が良好になる。
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムの全光線透過率は、JIS K7361−1で測定した時の値で10%以上であることが好ましい。全光線透過率が10%以上の場合、その着色アクリル樹脂フィルムを表皮材として製造した再帰反射シートの反射性能が向上する傾向にあり、道路標識などに使用した場合、視認性が良くなる傾向があるため好ましい。より好ましい全光線透過率は13%以上であり、さらに好ましくは15%以上でであり、特に好ましくは18%以上である。
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムのヘイズは、JIS K7136に規定する方法で測定した時の値で20%以下であることが好ましい。ヘイズが20%以下の場合、その着色アクリル樹脂フィルムを表皮材として製造した再帰反射シートの反射性能が向上する傾向にあり、道路標識などに使用した場合、視認性が良くなる傾向があるため好ましい。さらに好ましいヘイズは11%以下、特に好ましくは1%以下である。
<アクリル樹脂>
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂を主成分とし、これに着色剤等を添加したアクリル樹脂組成物からなるフィルムである。アクリル樹脂を用いることによって、フィルムに耐候性の優れた特性を付与できる。
アクリル樹脂としては、特に限定されないが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートおよびブチルメタクリレートから成る群より選ばれる少なくとも一種を主原料とし、必要に応じて炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を共重合成分として用いることによって得られる単一重合体又は共重合体が挙げられる。また、特公昭59−36646号公報、特公昭62−19309号公報、特公昭63−20459号公報および特開昭63−77963号公報に記載されているような多層構造重合体を用いることができる。
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムに用いられる好ましいアクリル樹脂は、アクリル(メタ)アクリレートを主成分とするゴム含有重合体を含むアクリル樹脂であり、例えば、ゴム含有重合体としては、以下に説明する多層構造重合体(I−1)、または多層構造重合体(I−2)、またはゴム含有重合体(I−3)を用いることが好ましい。これらゴム含有重合体を含んだ着色アクリル樹脂フィルムは、耐候性、耐衝撃性が良好で、透明性の温度依存性が小さいため、再帰反射シートの表皮材として好適に用いることができる。
また、本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムに用いられるアクリル樹脂は、上述の多層構造重合体および/またはゴム含有重合体と、さらに下記に示すアルキルメタクリレートを主成分として含む熱可塑性重合体(II)を構成成分として使用することが好ましい。熱可塑性重合体(II)を含んだアクリル樹脂フィルムは、フィルム成形時の流動性が良くなり、フィルム製造の際の膜厚の安定性の観点から好ましい。
以下、上述した好ましい形態の多層構造重合体(I−1)、多層構造重合体(I−2)、ゴム含有重合体(I−3)、及び熱可塑性重合体(II)について具体的に説明する。
[多層構造重合体(I−1)]
アクリル樹脂として用いられる多層構造重合体(I−1)は、中心から最内層重合体(I−1−A)、第1中間層重合体(I−1−B)、第2中間層重合体(I−1−C)、最外層重合体(I−1−D)の順に配置された多層構造重合体であり、
最内層重合体(I−1−A)は、少なくとも、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−1−A1)、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−1−A2)、芳香族ビニル単量体(I−1−A3)および多官能性単量体(I−1−A4)を重合して得られた、ガラス転移温度が10℃以上である重合体であり、
第1中間層重合体(I−1−B)は、少なくとも、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−1−B1)、芳香族ビニル単量体(I−1−B2)、多官能性単量体(I−1−B3)およびグラフト交叉剤(I−1−B5)を重合して得られた、ガラス転移温度が0℃以下である重合体であり、
第2中間層重合体(I−1−C)は、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−1−C1)、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−1−C2)、芳香族ビニル単量体(I−1−C3)およびグラフト交叉剤(I−1−C4)を重合して得られた重合体であり、 最外層重合体(I−1−D)は、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−1−D1)、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−1−D2)および芳香族ビニル単量体(I−1−D3)を重合して得られた、ガラス転移温度が50℃以上である重合体である。
さらには、下記のような構成であることが好ましい。
最内層重合体(I−1−A)は、
炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−1−A1)30〜99.7質量%、
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−1−A2)0.1〜69.8質量%、
芳香族ビニル単量体(I−1−A3)0.1〜25質量%、
多官能性単量体(I−1−A4)0.1〜10質量%、および
グラフト交叉剤(I−1−A5)0〜5質量%((I−1−A1)+(I−1−A2)+(I−1−A3)+(I−1−A4)+(I−1−A5)=100質量%)を重合して得られた、ガラス転移温度(以下、Tgと記す)が10℃以上である重合体であることが好ましい。Tgが10℃以上の場合、得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性が良好になる傾向にあるため好ましい。また、多層構造重合体(I−1)(100質量%)に占める最内層重合体(I−1−A)の量は、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性の点で2〜35質量%であることが好ましい。
第1中間層重合体(I−1−B)は、
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−1−B1)60〜99.7質量%、
芳香族ビニル単量体(I−1−B2)0.1〜39.8質量%、
多官能性単量体(I−1−B3)0.1〜10質量%、
共重合可能な二重結合を有する単量体(I−1−B4)0〜20質量%、および
グラフト交叉剤(I−1−B5)0.1〜5質量%((I−1−B1)+(I−1−B2)+(I−1−B3)+(I−1−B4)+(I−1−B5)=100質量%)を重合して得られた、Tgが0℃以下である重合体であることが好ましい。Tgが0℃以下の場合、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性が良好になる傾向にあるため好ましい。また、多層構造重合体(I−1)(100質量%)に占める第1中間層重合体(I−1−B)の量は、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性の点で5〜60質量%であることが好ましい。
第2中間層重合体(I−1−C)は、
炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−1−C1)20〜89.8質量%、
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−1−C2)10〜79.8質量%、
芳香族ビニル単量体(I−1−C3)0.1〜25質量%、および
グラフト交叉剤(I−1−C4)0.1〜5質量%((I−1−C1)+(I−1−C2)+(I−1−C3)+(I−1−C4)=100質量%)を重合して得られた重合体であることが好ましい。多層構造重合体(I−1)(100質量%)に占める第2中間層重合体(I−1−C)の量は、2〜20質量%であることが好ましい。また、多層構造重合体(I−1)の製造中における、第2中間層重合体(I−1−C)段階でのラテックス粒子径は、0.03〜0.2μmであることが好ましい。
最外層重合体(I−1−D)は、
炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−1−D1)51〜99.8質量%、
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−1−D2)0.1〜48.9質量%、および
芳香族ビニル単量体(I−1−D3)0.1〜25質量%((I−1−D1)+(I−1−D2)+(I−1−D3)=100質量%)を重合して得られた、Tgが50℃以上である重合体であることが好ましい。Tgが50℃以上の場合、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐熱性が良好になる傾向にあるため好ましい。また、多層構造重合体(I−1)(100質量%)に占める最外層重合体(I−1−D)の量は、得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐熱性の点で10〜80質量%であることが好ましい。
ここで、重合体のTgは、例えば、単量体a,b,c・・・からなる共重合体の場合、以下のFox式で求められる。
1/Tg=ma/Tga+mb/Tgb+mc/Tgc・・・
Tg:共重合体のTg[K]、ma:単量体aの質量分率、Tga:単量体aから得られるホモポリマーのTg[K]、mb:単量体bの質量分率、Tgb:単量体bから得られるホモポリマーのTg[K]、mc:単量体cの質量分率、Tgc:単量体cから得られるホモポリマーのTg[K]。
最内層重合体(I−1−A)を構成する炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−1−A1)としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、例えば、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。中でも、透明性の点からメチルメタクリエートが望ましい。
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−1−A2)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。中でも、Tgの点からブチルアクリレートが望ましい。
芳香族ビニル単量体(I−1−A3)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。中でも、経済性の点からスチレンが好ましい。
多官能性単量体(I−1−A4)は、同程度の共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体である。多官能性単量体(I−1−A4)としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートのようなアルキレングリコールジメタクリレート;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン;アルキレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。中でも、アルキレングリコールジメタクリレートが好ましく、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートがさらに好ましい。
グラフト交叉剤(I−1−A5)は、異なる共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体である。グラフト交叉剤(I−1−A5)としては、例えば、共重合性のα,β−不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸のアリルエステル、メタアリルエステル、クロチルエステル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。中でも、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレートが特に好ましい。
第1中間層重合体(I−1−B)を構成する炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−1−B1)としては、(I−1−A2)で示したアルキルアクリレートを単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
芳香族ビニル単量体(I−1−B2)としては、(I−1−A3)で示したスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
多官能性単量体(I−1−B3)としては、(I−1−A4)で示したエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートのようなアルキレングリコールジメタクリレート;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン;アルキレングリコールシアクリレート等を単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。中でも、アルキレングリコールジメタクリレートが好ましく、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートがさらに好ましい。
共重合可能な二重結合を有する単量体(I−1−B4)としては、上述の単量体以外で、かつ上述の単量体と共重合可能な単量体であり、例えば、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体、スチレン、アクリル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
グラフト交叉剤(I−1−B5)としては、(I−1−A5)で示した共重合性のα,β−不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸のアリルエステル、メタアリルエステル、クロチルエステル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。中でも、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレートが特に好ましい。
第2中間層重合体(I−1−C)および最外層重合体(I−1−D)を構成する、単量体およびグラフト交叉剤としては、最内層重合体(I−1−A)および第1中間層重合体(I−1−B)と同様のものが挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
多層構造重合体(I−1)の最終ラテックス粒子径は、0.03〜0.2μmであることが好ましく、さらに好ましい粒子径は0.04〜0.15μm、最も好ましい粒子径は0.05〜0.1μmである。最終ラテックス粒子径が大きくなり過ぎると、透明性が低下するだけでなく、温度変化により透明性が変化することがある。道路標識など屋外で再帰反射シートの表皮材として使用される場合、外気温の変化により透明性が変化すると、反射性能の低下、色相の変化を招くため好ましくない。一方、粒子径が小さくなりすぎると、耐衝撃性が低下するため好ましくない。
再帰反射シートの表皮材として使用されるアクリル樹脂は、透明性が高い方が反射性能の点で好ましく、また、道路標識など屋外で主に使用されるため、耐衝撃性が高い方が好ましい。
さらに、全光線透過率や曇価の温度依存性を少なくするためには、多層構造重合体(I−1)において各層に占める炭素数4以下のアルキルメタクリレート量が、第1中間層重合体(I−1−B)から、第2中間層重合体(I−1−C)、最外層重合体(I−1−D)に向かって単調増加し、かつ最内層重合体(I−1−A)に占めるアルキルメタクリレート量が第1中間層重合体(I−1−B)に占める量より多いことが好ましい。
多層構造重合体(I−1)の各層(I−1−A)、(I−1−B)、(I−1−C)、(I−1−D)における芳香族ビニル単量体と炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレートとの質量比(芳香族ビニル単量体/アルキルアクリレート)が5/95〜50/50であることが好ましく、10/90〜30/70であることがさらに好ましい。該質量比が、この範囲から離れるにつれて透明性が低下し、再帰反射シートの表皮材として使用した時に反射性能が低下する傾向にある。
多層構造重合体(I−1)の製造法としては、乳化重合法による逐次多段重合法が最も適した重合法である。多層構造重合体(I−1)の製造は、特にこれに制限されることはなく、例えば、乳化重合後、それぞれの最外層重合体の重合時に懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合法によっても行うことができる。
また、特に限定されるわけではないが、多層構造重合体(I−1)を乳化重合により製造する場合は、最内層重合体(I−1−A)を与える単量体混合物をあらかじめ水および界面活性剤と混合して乳化液を調製し、この乳化液を反応器に供給し重合した後、残りの各層を構成する単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法が好ましい。
最内層重合体(I−1−A)を与える単量体混合物を、あらかじめ水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合させることにより、特にアセトン中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数が多層構造重合体(I−1)100gあたり0〜50個である多層構造重合体を容易に得ることができる。こうして得られた多層構造重合体(I−1)に用いた着色アクリル樹脂フィルムは、フィルム中のフィッシュアイ数が少ないという特性を有し、外観が良好になるため好ましい。
乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、およびノニオン系の界面活性剤が使用でき、特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、ロジン石鹸;オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩等が挙げられる。このうち、特に昨今問題となっている内分泌かく乱化学物質からの生態系保全の点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩が好ましい。
上記界面活性剤の好ましい具体例としては、三洋化成工業社製のNC−718、東邦化学工業社製のフォスファノールLS−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA、フォスファノールRS−660NA、花王社製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406、ラテムルP−0407等が挙げられる。
また、乳化液を調製する方法としては、水中に単量体混合物を仕込んだ後、界面活性剤を投入する方法、水中に界面活性剤を仕込んだ後、単量体混合物を投入する方法、単量体混合物中に界面活性剤を仕込んだ後、水を投入する方法等が挙げられる。このうち、水中に単量体を仕込んだ後界面活性剤を投入する方法、および水中に界面活性剤を仕込んだ後単量体混合物を投入する方法が多層構造重合体(I−1)を得る方法としては好ましい。
また、多層構造重合体(I−1)を構成する最内層重合体(I−1−A)を与える単量体混合物を、水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を調製するための混合装置としては、攪拌翼を備えた攪拌機;ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置;膜乳化装置等が挙げられる。
また、調製する乳化液としては、W/O型、O/W型のいずれの分散構造でもよく、特に水中に単量体混合物の油滴が分散したO/W型で、分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましい。
多層構造重合体(I−1)を構成する最内層重合体(I−1−A)、第1中間層重合体(I−1−B)、第2中間層重合体(I−1−C)、および最外層重合体(I−1−D)を形成する際に使用する重合開始剤としては、公知のものが使用できる。その添加方法は、水相、単量体相のいずれか片方、または双方に添加する方法を採用できる。特に好ましい重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。この中でさらにレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
特に、上述の最内層重合体(I−1−A)を与える単量体混合物を水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合した後、第1中間層重合体(I−1−B)、第2中間層重合体(I−1−C)および最外層重合体(I−1−D)を与える単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法においては、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリットを含む水溶液を重合温度まで昇温した後、調製した乳化液を反応器に供給して重合し、次いで過酸化物等の重合開始剤を含む第1中間層重合体(I−1−B)、第2中間層重合体(I−1−C)、および最外層重合体(I−1−D)を与える単量体混合物を順次反応器に供給し、重合する方法が、多層構造重合体(I−1)を得る方法としては最も好ましい。
なお、重合温度は用いる重合開始剤の種類や量によって異なるが、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは60〜95℃である。
[多層構造重合体(I−2)]
多層構造重合体(I−2)は、中心から最内層重合体(I−2−A)、中間層重合体(I−2−B)、最外層重合体(I−2−C)の順に配置された多層構造重合体である。
最内層重合体(I−2−A)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−A1)に由来する単位およびグラフト交叉剤(I−2−A5)に由来する単位を有する重合体であり、
中間層重合体(I−2−B)は炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−B1)に由来する単位、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−2−B2)に由来する単位およびグラフト交叉剤(I−2−B5)に由来する単位を有し、かつ最内層重合体(I−2−A)とは異なる組成の重合体であり、
最外層重合体(I−2−C)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−2−C1)に由来する単位を有する重合体である。
さらには、次のような組成であることが好ましい。
最内層重合体(I−2−A)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−A1)に由来する構成単位50〜99.9質量%、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−2−A2)に由来する構成単位0〜49.9質量%、共重合可能な二重結合を有する他の単量体(I−2−A3)に由来する構成単位0〜20質量%、多官能性単量体(I−2−A4)に由来する構成単位0〜10質量%およびグラフト交叉剤(I−2−A5)に由来する構成単位0.1〜10質量%((I−2−A1)+(I−2−A2)+(I−2−A3)+(I−2−A4)+(I−2−A5)=100質量%)からなる重合体である。
中間層重合体(I−2−B)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−B1)に由来する構成単位9.9〜90質量%、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−2−B2)に由来する構成単位9.9〜90質量%、共重合可能な二重結合を有する他の単量体(I−2−B3)に由来する構成単位0〜20質量%、多官能性単量体(I−2−B4)に由来する構成単位0〜10質量%およびグラフト交叉剤(I−2−B5)に由来する構成単位0.1〜10質量%((I−2−B1)+(I−2−B2)+(I−2−B3)+(I−2−B4)+(I−2−B5)=100質量%)からなり、かつ最内層重合体(I−2−A)とは異なる組成の重合体である。
最外層重合体(I−2−C)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−2−C1)に由来する構成単位80〜100質量%、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−C2)に由来する構成単位0〜20質量%および共重合可能な二重結合を有する他の単量体(I−2−C3)に由来する構成単位0〜20質量%((I−2−C1)+(I−2−C2)+(I−2−C3)=100質量%)からなる重合体である。
最内層重合体(I−2−A)を構成する、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−A1)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、または二種以上を混合して使用することができる。これらのうち、好ましいものはn−ブチルアクリレートである。
最内層重合体(I−2−A)を構成する、炭素数1〜4のアルキルメタクリレート(I−2−A2)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で、または二種以上を混合して使用できる。これらのうち、好ましいものはメチルメタクリレートである。
最内層重合体(I−2−A)を構成する、共重合可能な二重結合を有する他の単量体(I−2−A3)としては、例えば、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体;スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が使用できる。
最内層重合体(I−2−A)を構成する、多官能性単量体(I−2−A4)は、必要に応じて用いることができる。多官能性単量体とは、同程度の共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体と定義する。その好ましい具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートが挙げられる。また、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン等も使用可能である。これらのうち、好ましいものは1,3−ブチレングリコールジメタクリレートである。
また、多官能性単量体が全く作用しない場合でも、グラフト交叉剤が存在する限り、かなり安定な多層構造重合体を与える。例えば、熱間強度等が厳しく要求されたりする場合など、その添加目的に応じて、多官能性単量体の添加を任意に行えばよい。
最内層重合体(I−2−A)を構成する、グラフト交叉剤(I−2−A5)とは、異なる共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体と定義する。その具体例としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリル、またはクロチルエステル等が挙げられる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、またはフマル酸のアクリルエステルが好ましい。これらのうち、メタクリル酸アリルエステルが優れた効果を奏し、好ましい。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。グラフト交叉剤(I−2−A5)においては、主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基、またはクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。アリル基、メタリル基、またはクロチル基の実質上、かなりの部分は、次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与える。
なお、連鎖移動剤の存在下で重合してもよい。
最内層重合体(I−2−A)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−A1)に由来する単位の含有量は、多層構造重合体(I−2)のフィルム成形性および耐衝撃性等の物性の点から50〜99.9質量%であり、より好ましくは55〜77.9質量%であり、最も好ましくは60〜69.9質量%である。
最内層重合体(I−2−A)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−2−A2)に由来する単位の含有量は、0〜49.9質量%であり、より好ましくは20質量%以上であり、最も好ましくは30質量%以上である。また、より好ましくは44.9質量%以下であり、最も好ましくは39.9質量%以下である。
最内層重合体(I−2−A)を構成する全単量体単位100質量%中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(I−2−A3)に由来する単位は、0〜20質量%であり、より好ましくは15質量%以下である。
最内層重合体(I−2−A)を構成する全単量体単位100質量%中の多官能性単量体(I−2−A4)に由来する単位の含有量は、0〜10質量%であり、より好ましくは0.1質量%以上、6質量%以下である。
最内層重合体(I−2−A)を構成する全単量体単位100質量%中のグラフト交叉剤(I−2−A5)に由来する単位の含有量は、0.1〜10質量%である。0.1質量%以上の含有量では、得られる多層構造重合体を、透明性等の光学的物性を低下させずにフィルム成形することができる。また、10質量%以下の含有量では、多層構造重合体に十分な柔軟性、強靭さを付与することができるため、好ましい。より好ましくは0.5質量%以上、2質量%以下である。
最内層重合体(I−2−A)における各構成単位の含有量は、上記範囲であることが、多層構造重合体(I−2)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性および耐衝撃性等の物性の点から好ましい。
最内層重合体(I−2−A)単独のTgは、多層構造重合体(I−2)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性の観点から、後述の中間層重合体(I−2−B)単独のTg未満であることが好ましい。より好ましくは25℃未満、さらに好ましくは10℃以下、最も好ましくは0℃以下である。
多層構造重合体(I−2)(100質量%)中の最内層重合体(I−2−A)の含有量は、多層構造重合体(I−2)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性の点で15〜50質量%が好ましく、より好ましくは15〜35質量%以下である。この場合、該多層構造重合体(I−2)を再帰反射シートの表皮材として使用した時の反射性能の点で有利である。
最内層重合体(I−2−A)は、単層でも良いが、2層からなるものがより好ましい。また、特に限定はされないが、最内層重合体(I−2−A)中の2層の単量体構成比は、それぞれ異なっていることが好ましい。
最内層重合体(I−2−A)が2層からなる場合、多層構造重合体(I−2)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性、および透明性の観点から、内側層(I−2−A1)のTgは、外側層(I−2−A2)のTgよりも低いほうが好ましい。具体的には、内側層(I−2−A1)のTgは、耐衝撃性の観点から−30℃未満が好ましく、外側層(I−2−A2)のTgは、透明性の観点から−15℃〜10℃が好ましい。
また、透明性の観点から、最内層重合体(I−2−A)(100質量%)中の内側層(I−2−A1)の含有量は1〜20質量%が好ましく、外側層(I−2−A2)の含有量は80〜99質量%が好ましい。道路標識など主に屋外で使用される再帰反射シートの表皮材として使用されるアクリル樹脂は、透明性が高いほうが好ましい。
最内層重合体(I−2−A)が2層からなる場合の好ましい多層構造重合体としては、特公昭62−19309号公報に記載の多層構造重合体等が挙げられる。
中間層重合体(I−2−B)を構成する、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−B1)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、または二種以上を混合して使用できる。これらのうち、好ましいものはメチルアクリレート、n−ブチルアクリレートである。
中間層重合体(I−2−B)を構成する、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−2−B2)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で、または二種以上を混合して使用できる。これらのうち、好ましいものはメチルメタクリレートである。
中間層重合体(I−2−B)を構成する、共重合可能な二重結合を有する他の単量体(I−2−B3)としては、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が使用できる。
中間層重合体(I−2−B)を構成する、多官能性単量体(I−2−B4)は、必要に応じて用いればよい。その好ましい具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートが挙げられる。また、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン等も使用可能である。これらのうち、好ましいものは1,3−ブチレングリコールジメタクリレートである。
多官能性単量体が全く作用しない場合でも、グラフト交叉剤が存在する限り、かなり安定な多層構造重合体を与える。例えば、熱間強度等が厳しく要求されたりする場合など、その添加目的に応じて、多官能性単量体の添加を任意に行えばよい。
中間層重合体(I−2−B)を構成する、グラフト交叉剤(I−2−B5)としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリル、またはクロチルエステル等が挙げられる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、またはフマル酸のアクリルエステルが好ましい。これらのうち、メタクリル酸アリルエステルが優れた効果を奏し、好ましい。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。グラフト交叉剤(I−2−B5)においては、主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基、またはクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。アリル基、メタリル基、またはクロチル基の実質上、かなりの部分は、次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与える。
なお、連鎖移動剤の存在下で重合してもよい。
中間層重合体(I−2−B)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−B1)に由来する単位の含有量は、9.9〜90質量%である。多層構造重合体(I−2)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性の観点から、より好ましくは19.9質量%以上、最も好ましくは29.9質量%以上である。また、より好ましくは60質量%以下、最も好ましくは50質量%以下である。
中間層重合体(I−2−B)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−2−B2)に由来する単位の含有量は、9.9〜90質量%である。多層構造重合体(I−2)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの透明性の観点から、より好ましくは39.9質量%以上、最も好ましくは49.9質量%以上である。また、より好ましくは80質量%以下、最も好ましくは70質量%以下である。
中間層重合体(I−2−B)を構成する全単量体単位100質量%中の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(I−2−B3)に由来する単位の含有量は、0〜20質量%であり、より好ましくは15質量%以下である。
中間層重合体(I−2−B)を構成する全単量体単位100質量%中の多官能性単量体(I−2−B4)に由来する単位の含有量は、0〜10質量%であり、より好ましくは6質量%以下である。
中間層重合体(I−2−B)を構成する全単量体単位100質量%中のグラフト交叉剤(I−2−B5)に由来する単位の含有量は、0.1〜10質量%である。0.1質量%以上の含有量では、得られる多層構造重合体(I−2)を、透明性等の光学的物性を低下させずに成形することができる。また、10質量%以下の含有量では、多層構造重合体(I−2)に十分な柔軟性、強靭さを付与することができるため、好ましい。より好ましくは0.5質量%以上であり、2質量%以下である。
中間層重合体(I−2−B)の組成は、最内層重合体(I−2−A)の組成と異なることが好ましい。これらの重合体の組成が異なることで、耐衝撃性等のフィルム物性および透明性等を満足することができる。
ここで、本発明で言う「異なる組成」とは、各重合体を形成するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、共重合可能な二重結合を有する他の単量体、多官能性単量体、およびグラフト交叉剤の、種類および/または量が異なることである。
中間層重合体(I−2−B)単独のTgは、25〜100℃の範囲であることが好ましい。Tgが25℃以上の場合、多層構造重合体(I−2)成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムの耐熱性、耐擦傷性、透明性が良好になるため好ましい。より好ましくは40℃以上、最も好ましくは50℃以上である。またTgが100℃以下の場合、製膜性の良好な多層構造重合体が得られるため好ましい。より好ましくは80℃以下、最も好ましくは70℃以下である。
また、特に限定されるわけではないが、多層構造重合体(I−2)(100質量%)中の中間層重合体(I−2−B)の含有量は、5〜35質量%が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。この範囲内であれば、中間層として必要な機能、例えば透明性を発現させることができる。
最外層重合体(I−2−C)を構成する、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−2−C1)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で、または二種以上を混合して使用できる。これらのうち、好ましいものはメチルメタクリレートである。
最外層重合体(I−2−C)を構成する、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−C2)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、または二種以上を混合して使用できる。これらのうち、好ましいものはメチルアクリレート、n−ブチルアクリレートである。
最外層重合体(I−2−C)を構成する、共重合可能な二重結合を有する他の単量体(I−2−C3)としては、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が使用できる。
最外層重合体(I−2−C)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−2−C1)に由来する単位の含有量は、80〜100質量%であり、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは93質量%以上である。また、より好ましくは99質量%以下である。
最外層重合体(I−2−C)を構成する全単量体単位100質量%中の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−2−C2)に由来する単位の含有量は、0〜20質量%であり、より好ましくは1質量%以上である。また、より好ましくは10質量%以下、最も好ましくは7質量%以下である。
最外層重合体(I−2−C)を構成する全単量体単位100質量%中の共重合可能な二重結合を有する単量体(I−2−C3)に由来する単位の含有量は、0〜20質量%であり、より好ましくは15質量%以下である。
また、特に限定されないが、最外層重合体(I−2−C)の重合時に連鎖移動剤を使用し、最外層重合体(I−2−C)の分子量を調整することができる。この連鎖移動剤は通常ラジカル重合に用いられるものの中から選択して用いるのが好ましく、具体例としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素等が挙げられ、これらは単独、または二種以上を混合して使用できる。連鎖移動剤の含有量は、最外層重合体(I−2−C)の単量体((I−2−C1)〜(I−2−C3))100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。より好ましくは0.2質量部以上、最も好ましくは0.4質量部以上である。
最外層重合体(I−2−C)を形成するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、共重合可能な二重結合を有する他の単量体、多官能性単量体、およびグラフト交叉剤の含有量は、上記範囲であることが、多層構造重合体(I−2)を成形して得られる着色アクリル樹脂フィルムのフィルム成形性、透明性の観点から好ましい。
最外層重合体(I−2−C)単独のTgは、60℃以上が好ましい。該Tgが60℃以上の場合、多層構造重合体(I−2)をフィルム状に成形したときの耐擦傷性等、フィルム物性の良好な着色アクリル樹脂フィルムが得られるため好ましい。より好ましくは80℃以上、最も好ましくは90℃以上である。
また、特に限定されないが、多層構造重合体(I−2)(100質量%)中の最外層重合体(I−2−C)の含有量は、フィルム物性の点で15〜80質量%が好ましく、より好ましくは45〜80質量%、最も好ましくは45〜70質量%以下である。
多層構造重合体(I−2)の製造法としては、多層構造重合体(I−1)と同様に乳化重合法による逐次多段重合法が最も適した重合法である。多層構造重合体(I−2)の製造は、特にこれに制限されることはなく、例えば、乳化重合後、それぞれの最外層重合体の重合時に懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合法によっても行うことができる。
また、特に限定されるわけではないが、多層構造重合体(I−2)を、多層構造重合体(I−1)と同様に乳化重合により製造する場合は、最内層重合体(I−2−A)を与える単量体混合物の一部または全量を、あらかじめ水および界面活性剤と混合して乳化液を調製し、この乳化液を反応器に供給し重合した後、残りの各層を構成する単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法が好ましい。
最内層重合体(I−2−A)を与える単量体混合物を、あらかじめ水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合させることにより、特にアセトン中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数が多層構造重合体(I−2)100gあたり0〜50個である多層構造重合体を容易に得ることができる。こうして得られた多層構造重合体(I−2)を原料に用いた着色アクリル樹脂フィルムは、フィルム中のフィッシュアイ数が少ないという特性を有し、外観が良好になるため好ましい。
乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、多層構造重合体(I−1)で乳化液を調整する際に使用される界面活性剤と同様のものが使用できる。
また、乳化液を調製する方法も、多層構造重合体(I−1)と同様の方法が好ましい。
また、多層構造重合体(I−2)を構成する最内層重合体(I−2−A)を与える単量体混合物を水、および界面活性剤と混合して調製した乳化液を調製するための混合装置としては、多層構造重合体(I−1)を製造する際の乳化液の調製に用いられる装置が挙げられる。
また、調製する乳化液としては、W/O型、O/W型のいずれの分散構造でもよく、特に水中に単量体混合物の油滴が分散したO/W型で、分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましい。
多層構造重合体(I−2)を構成する最内層重合体(I−2−A)、中間層重合体(I−2−B)、および最外層重合体(I−2−C)を形成する際に使用する重合開始剤としては、公知のものが使用できる。その添加方法は、水相、単量体相のいずれか片方、または双方に添加する方法を採用できる。特に好ましい重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中でさらにレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
特に、上述の最内層重合体(I−2−A)を与える単量体混合物を水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合した後、中間層重合体(I−2−B)、および最外層重合体(I−2−C)を与える単量体混合物をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法においては、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリットを含む水溶液を重合温度まで昇温した後、調製した乳化液を反応器に供給して重合し、次いで過酸化物等の重合開始剤を含む中間層重合体(I−2−B)、および最外層重合体(I−2−C)を与える単量体混合物を順次反応器に供給し、重合する方法が、多層構造重合体(I−2)を得る方法としては最も好ましい。
なお、重合温度は用いる重合開始剤の種類や量によって異なるが、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは60〜95℃である。
上述のようにして多層構造重合体(I−1)、(I−2)を乳化重合で得るときは、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を使用してもよい。連鎖移動剤は公知のものが使用でき、好ましくはメルカプタン類である。
多層構造重合体(I−1)、(I−2)は、上述の方法で製造した重合体ラテックスから多層構造重合体を回収することによって製造することができる。重合体ラテックスから多層構造重合体を回収する方法としては特に限定されないが、塩析または酸析凝固、あるいは噴霧乾燥、凍結乾燥等の方法が挙げられ、粉状で回収される。
[ゴム含有重合体(I−3)]
ゴム含有重合体(I−3)は、アクリルアクリレートをゴムの主成分として含む多層構造を有するグラフト共重合体である。アルキルアクリレート50〜99.9質量%、共重合性の架橋性単量体0.1〜10質量%および他の共重合性ビニル系単量体0〜50質量%からなる単量体混合物を少なくとも一段以上で(共)重合させて弾性体を得て、次いで、その弾性体100質量部の存在下に、アルキルメタクリレート50〜100質量%と、これと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50質量%とからなる単量体または単量体混合物10〜1000質量部を少なくとも一段以上で重合させることにより得られる。
弾性体(100質量%)中のアルキルアクリレートが50質量%未満では、耐衝撃性改良効果が少なく好ましくない。弾性体(100質量%)中の架橋性単量体が0.1質量%未満では、充分な架橋効果が得られず、また、10質量%を超えると、架橋が強すぎて弾性体の弾性的性質を損ない、耐衝撃性が低下するため好ましくない。
弾性体を得る際に用いるアルキルアクリレートとしては、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が特に好ましい。
弾性体を得る際に用いる架橋性単量体としては、特に限定はないが、好ましくは、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、アリルソルベート、マレイン酸ジアリルトリメチロールプロパントリアクリレート、アリルシンナメート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
弾性体を得るに際しては、50質量%以下の他の共重合性ビニル系単量体を共重合させることができる。他の共重合性ビニル系単量体としては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリルなどが好ましい。
ゴム含有重合体(I−3)を構成するアルキルメタクリレートを主成分とする弾性体の粒子径は、特に限定されるものではないが、0.05〜0.5μmの範囲が好ましい。粒子径が0.05μm未満では、得られる着色アクリル樹脂フィルムの靭性が低下し、一方、0.5μmを超えると、透明性が低下する傾向を示す。着色アクリル樹脂フィルムの靭性と透明性の両方を考慮すると、ゴム含有重合体(I−3)を構成するアルキルメタクリレートを主成分とする弾性体のさらに好ましい粒子径は0.07〜0.3μmである。
ゴム含有重合体(I−3)は、アルキルアクリレートを主成分とする弾性体100質量部に対し、アルキルメタクリレートを主成分とする単量体または単量体混合物10〜1000質量部を少なくとも一段以上で重合することで得ることができる。グラフト重合させる単量体または単量体混合物の量の好ましい範囲は10〜500質量部であり、より好ましい範囲は20〜200質量部である。グラフト重合させる量が10質量部未満以下では、ゴム含有重合体(I−3)を良好な粉体として回収することが難しく、また、グラフト重合させる量が1000質量部を超えると、目的とする耐衝撃性が得られないため共に好ましくない。グラフト重合させるアルキルメタクリレートは1種または2種以上混合して用いてもよい。
ここで用い得るアルキルメタクリレートとしては、前述の多層構造重合体(I−1)における最内層重合体(I−1−A1)で使用されるものと同じであり、そのうち、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等が好ましい。
アルキルメタクリレートと共重合可能な他のビニル系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート類、スチレンおよびその誘導体、アクリロニトリル、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルトルエンなどが挙げられ、好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキルアクリレート類が挙げられる。
ゴム含有重合体(I−3)は、乳化重合法で得るのが好ましく、多層構造重合体(I−1)を得るのに使用した触媒、乳化剤、連鎖移動剤と同様のものを使用することができ、また、多層構造重合体(I−1)と同様に粉体で回収することができる。
[熱可塑性重合体(II)]
熱可塑性重合体(II)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する単位50〜100質量%およびこれと共重合可能な他のビニル単量体に由来する単位0〜50質量%(これら構成単位の合計100質量%)からなり、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mlに溶解し、25℃で測定)が0.1 l/g以下である重合体である。
特に、熱可塑性重合体(II)の中で、JIS K7210に準拠して測定したメルトフローレート(230℃、37.3N)が、10g/10min〜30g/10minである熱可塑性重合体を熱可塑性重合体(II−1)とする。熱可塑性重合体のメルトフローレートが10g/10min未満では、着色アクリル樹脂フィルムをTダイ法で製造する際の樹脂温度を高くする必要が生じ、熱劣化や着色剤、添加剤の揮発を招く傾向がある。一方、熱可塑性重合体のメルトフローレートが30g/10minを超えると、得られる着色アクリル樹脂フィルムの靭性や耐薬品性が低下する傾向がある。フィルム製造時の熱安定性とフィルム靭性、耐薬品性を考慮すると熱可塑性重合体(II−1)のより好ましいメルトフローレートの範囲は、15g/10min〜25g/10minである。上記熱可塑性重合体(V)を用いると、190℃〜230℃での製膜が可能となる。
熱可塑性重合体(II)で用いられる炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレートが最も好ましい。
熱可塑性重合体(II)で用いられる、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートと共重合可能な他のビニル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等が挙げられる。
また、熱可塑性重合体(II)の還元粘度は、0.1 l/g以下である。還元粘度が0.1 l/gを超えると、流動性が悪化しフィルム成形性の点で好ましくない。
熱可塑性重合体(II)を得るための重合方法は、特に限定されるものではなく、通常公知の懸濁重合法、乳化重合法等の各種方法が適用される。
熱可塑性重合体(II)は、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBRシリーズ、三菱レイヨン(株)製アクリペットとして工業的に入手可能である。
また、熱可塑性重合体(II−1)は、熱可塑性重合体(II)のガラス転位温度の適正化、あるいは分子量、分子量分布の適正化を行うことで調製される。
例えば、本発明において多層構造重合体(I−1)および熱可塑性重合体(II)を組み合わせたアクリル樹脂を用いる場合、多層構造重合体(I−1)20〜90質量部および熱可塑性重合体(II)80〜10質量部((I−1)+(II)=100質量部)からなるものを用いることが好ましい。多層構造重合体(I−1)の割合が20質量部以上では、耐衝撃性およびフィルムの伸度が向上する傾向にあり、90質量部以下であれば、T型ダイス付き押出し機より溶融ポリマーを冷却ロールで所定の厚みまでキャスティングする方法の場合、フィルム成形性が良好になる傾向にある。
また、本発明においてゴム含有重合体(I−3)および熱可塑性重合体(II−1)を組み合わせたアクリル樹脂を用いる場合、ゴム含有重合体(I−3)5〜99.9質量部および熱可塑性重合体(II−1)0.1〜95質量部((I−3)+(II−1)=100質量部)からなるものを用いることが好ましい。ゴム含有重合体(I−3)の割合が5質量部以上では、耐衝撃性およびフィルム伸度が向上する傾向にあり、99.9質量部以下であれば、例えばT型ダイス付き押出機より溶融ポリマーを冷却ロールで所定の厚みまでキャスティングする方法の場合、フィルム成形性が良好になる傾向にある。また、ゴム含有重合体(I−3)が50質量部以下の場合、200〜230℃でフィルムを製造することができる傾向にある。得られる再帰反射シート表皮材フィルムの耐衝撃性、フィルム伸度、低温領域でのフィルム成形性を考慮すると、好ましい(I−3)の割合は5〜50質量部、さらに好ましくは15〜40質量部、より好ましくは20〜35質量部である。
<溶融粘度>
アクリル樹脂の200℃、1.22×10sec−1のせん断速度における溶融粘度が4.00×10poise以下であると、Tダイ法を用い200℃でフィルムを製造する際に、フィルムの成形性が良好になる傾向にある。さらに好ましくは、溶融粘度3.00×10poise以下である。本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムに使用されるアクリル樹脂の溶融粘度を低くし、フィルム成形温度を下げることは、アクリル樹脂に含有されるUV吸収剤や着色剤の揮発を抑制することができ、例えば、冷却ロール等へのUV吸収剤や着色剤の付着を抑制することができる。冷却ロール等のUV吸収剤や着色剤の付着物はフィルムへ転写し、フィルム外観不良の原因となる。冷却ロール等への付着物の抑制を行うことで、フィルム外観が良好になる傾向にある。
<添加剤>
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムには、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発砲剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、艶消剤、紫外線吸収剤を含むことができる。特に基材(再帰反射シート)の保護の点では、耐候性を付与するために、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。使用される紫外線吸収剤の分子量は300以上であることが好ましく、特に好ましくは400以上である。分子量が300より小さな紫外線吸収剤を使用すると、フィルム製造する際に転写ロール等に揮発し、ロール汚れを発生させることがある。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系または分子量400以上のトリアジン系のものが特に好ましく使用でき、前者の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のチヌビン234、旭電化工業社のアデカスタブLA−31等、後者の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のチヌビン1577等が挙げられる。
また、本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムを製造する際に添加する加工助剤として製膜安定化、耐薬品性向上の点から、下記熱可塑性重合体(III)を添加することが好ましい。
熱可塑性重合体(III)は、メチルメタクリレート50〜100質量%と、これと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50質量%とを重合してなり、生成重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mlに溶解し、25℃で測定)が0.2〜2 l/gとなるように重合した重合体であり、着色アクリル樹脂フィルムのフィルム成形性、耐薬品性に対し重要な役割を示す成分である。熱可塑性重合体(III)の還元粘度は重要であり、還元粘度が0.2l/g未満では、目的とするヘーズは得られにくい。さらに好ましい還元粘度は0.2〜1.2 l/gであり、特に好ましい還元粘度は0.2〜0.8 l/gである。
熱可塑性重合体(III)において、メチルメタクリレートと共重合可能な他のビニル系単量体としては、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートは直鎖状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。また、炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートは、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−置換スチレン、核置換スチレンおよびその誘導体、例えば、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。また、ビニルシアン化合物としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
上記単量体より熱可塑性重合体(III)を得るにあたり使用する重合開始剤としては、通常の過硫酸塩などの無機開始剤または有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。また、上記化合物と亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等とを組み合わせ、レドックス系開始剤として用いることもできる。重合開始剤として好ましい過硫酸塩は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。有機過酸化物としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が挙げられる。
熱可塑性重合体(III)の分子量および分子量分布は、加工性付与効果に対して重要な因子であるので、熱可塑性重合体(III)の製造の際には、目的に応じて適当な連鎖移動剤を使用することができる。
重合は、重合開始剤の分解温度以上の温度にて、通常の乳化重合の条件で行うことができ、目的に応じて一段または多段で重合することができる。重合体の回収は、通常、塩析あるいは酸析凝固後、濾過、水洗し粉末状で回収するか、あるいは噴霧乾燥、凍結乾燥を行い粉末状で回収することができる。
上記熱可塑性重合体(III)は、三菱レイヨン(株)製メタブレンPとして工業的に入手可能である。
熱可塑性重合体(III)の配合量は、多層構造重合体(I−1)、多層構造重合体(I−2)、ゴム含有重合体(I−3)および熱可塑性重合体(II)を一種類以上組み合わせたアクリル樹脂組成物100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。熱可塑性重合体(III)の配合量が0.1質量部未満では、着色アクリル樹脂フィルム製造の際の製膜安定化、着色アクリル樹脂フィルムの耐薬品性向上効果が不十分になる傾向にある。一方、熱可塑性重合体(III)の配合量が10質量部を超えると、溶融粘度が上がりフィルム成形性が低下する傾向にある。さらに好ましい熱可塑性重合体(III)の配合量は0.5〜5質量部である。
ここで述べる製膜安定性とは、均一な厚みを持つアクリルフィルムを安定して製造することを意味する。また、耐薬品性は以下に述べる試験方法を用いて評価される。
10mm幅の短冊状にカットしたアクリル樹脂フィルムの下側に規定荷重を掛け、メチルイソブチルケトン、メトキシブチルアセテート等の溶剤中に吊るし、浸漬開始からフィルムが切れるまでの時間を測定する。切れるまでの時間が長い程耐薬品性が高いと判断する。
<着色剤>
着色剤としては、アクリル樹脂をバインダーとして着色剤成分を配合した着色剤マスターバッチ、分散剤と着色剤成分とを配合したドライカラーが挙げられる。ここでいうマスターバッチとは、樹脂に着色剤成分を高濃度に配合した着色剤マスターバッチであり、形態としてはペレット状、軟らかい板状のもの等が挙げられる。また、バインダーとなる樹脂は特に限定されないが、着色アクリル樹脂フィルムに用いられるアクリル樹脂と同種、あるいは類似したものが好ましい。また、ドライカラーとは、分散剤粉末着色剤を示し、適当な分散剤を添加して機械的に微粉末状にした着色剤である。好ましい分散剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられ、これらは単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
好ましい着色剤としては、アンスラキノン、ペリノン、ジアゾ、ジケトピロロピロール構造を持つ有機系着色剤が挙げられる。
アンスラキノン系着色剤であれば、例えば、CI Pigment Red 177、CI Pigment Red 216、CI Disperse Red 22、CI Disperse Red 60、CI Solvent Red 4、CI Solvent Red 9、CI Solvent Red 11、CI Solvent Red 15、CI Solvent Red 52、CI Solvent Red 111、CI Solvent Red168、CI Solvent Red 207等が挙げられる。
ペリノン系着色剤であれば、例えば、CI Solvent Red 135、CI Solvent Red179等が挙げられる。
ジアゾ系着色剤であれば、例えば、CI Pigment Red 1、CI Pigment Red 2、CI Pigment Red 3、CI Pigment Red 4、CI Pigment Red 5、CI Pigment Red 6、CI Pigment Red7、Pigment Red 8、CI Pigment Red 9、CI Pigment Red 10、CI Pigment Red 11、CI Pigment Red 12、CI Pigment Red 14、CI Pigment Red 15、CI Pigment Red 16、CI Pigment Red 17、CI Pigment Red 18、CI Pigment Red 19、 CI Pigment Red 21、 CI Pigment Red 22、CI Pigment Red 30、CI Pigment Red 31、CI Pigment Red 32、CI Pigment Red 37、CI Pigment Red 38、CI Pigment Red 40、CI Pigment Red 41、CI Pigment Red 42、CI Pigment Red 49:2、CI Pigment Red 50:1、CI Pigment Red 52:1、CI Pigment Red 53:1、CI Pigment Red 57、CI Pigment Red 57:1、CI Pigment Red 58:2、CI Pigment Red 58:4、CI Pigment Red 60:1、CI Pigment Red 63:1、CI Pigment Red 63:2、CI Pigment Red 64:1、CI Pigment Red 114、CI Pigment Red 144、CI Pigment Red 146、CI Pigment Red 150、CI Pigment Red 151、CI Pigment Red 166、 CI Pigment Red 170、CI Pigment Red 171、CI Pigment Red 175、CI Pigment Red 176、CI Pigment Red 178、CI Pigment Red 185、CI Pigment Red 187、CI Pigment Red 193、CI Pigment Red 214、CI Pigment Red 220、CI Pigment Red 221、CI Pigment Red 243、CI Pigment Red 245、CI Solvent Red 24等が挙げられる。
ジケトピロロピロール系着色剤であれば、例えば、CI Pigment Red 254、CI Pigment Red 255、CI Pigment Red 264、CI Pigment Red 272等が挙げられる。
本発明の再帰反射シートの表皮材フィルムに含有する着色剤は、透明性、鮮明性の点で、CI Disperse Red 22、Solvent Red 52、Solvent Red 135、Solvent Red 179等が好ましく、また、耐候性の点で、特に、CI Disperse Red 22等が好ましい。
アクリルフィルムの製造法としてTダイ付き押出機より溶融ポリマーを冷却ロールで所定の厚みまでキャスティングする方法を用いた場合、再帰反射シート表皮材フィルムに含まれる着色剤は示差熱重量分析法にて昇温速度8℃/分の条件で測定した重量曲線の減量開始温度が、フィルムを製造する際の温度より低いことが好ましい。さらに、50mlガラスビーカーに資料2gを精秤し、105度で1時間乾燥し水分を測定した後、200℃で1時間熱処理後減量を測定し、次式により計算した昇華率が低い着色剤を用いることが好ましい。
昇華率(%)= (200℃1時間後の減量重量/水分測定後の試料重量)×100
好ましい昇華率は5%以下、より好ましいくは1%以下、最も好ましくは0.5%以下であり、この様な着色剤としては、例えば、Solvent Red 52、Solvent Red 135、Solvent Red 179が挙げられる。減量開始温度が低い着色剤を用いた場合、あるいは昇華率が低い着色剤を用いた場合、フィルム成形時の着色剤の揮発が抑えられる。例えばTダイ法を用いてフィルムを製造する場合、上記着色剤を用いた場合、着色剤の揮発が抑えられ、着色剤の冷却ロールへの付着が改善される傾向にある。
また、補色の目的で、ベンガラ、シュ、鉛丹、カドミウム等の無機系着色剤、キナクリドン系、ペリレン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の有機系着色剤を添加しても良い。
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムに含有される着色剤の濃度は、着色アクリル樹脂フィルムとマンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.541,0.370)、(0.629,0.21)、(0.735,0.265)、および(0.629,0.370)の範囲内に入るような濃度にすればよく、例えば、CI Disperse Red 22であれば、0.1g/m2 〜3g/m2 が好ましい範囲である。着色剤の濃度が高すぎる場合、透明性が低下し、再帰反射シートに重要な反射性能が低下する傾向がある。より好ましくは0.5g/m2 〜2g/m2 である。
<コンパウンド>
添加剤の添加方法としては、アクリル樹脂を用いてフィルムを製膜するための製膜機に、アクリル樹脂とともに供給する方法と、予めアクリル樹脂に配合剤を添加した混合物を各種混練機にて混練混合する方法がある。後者の方法に使用する混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー、ロール混練機等が挙げられる。
<着色アクリル樹脂フィルムの製造>
本発明の再帰反射シート表皮用アクリル樹脂フィルムを成形する方法としては、特に限定されるものではないが、公知の溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法等が挙げられ、このうち経済性の点でTダイ法がもっとも好ましい。
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、フィルム物性の点で10〜500μmである。10〜500μmであると、適度な剛性となるためラミネート性、二次加工性等が容易となり、さらに製膜性が安定してフィルムの製造が容易となる。さらに好ましくは15〜200μm、さらに好ましくは30〜200μmである。
<再帰反射シート>
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムを表面に有する再帰反射シートは、主に、道路標識、表示板あるいは視認性を目的とした安全器具に使用される。
再帰反射シートの種類としては、アルミニウム蒸着を施したガラスビーズを基材に埋め込んだカプセル型再帰反射シート、プリズム加工した樹脂シートを反射体として使用したプリズム型再帰反射シート等があり、いずれのタイプにおいても本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは、再帰反射シートの表面に積層されて使用される。
例えば、カプセル型再帰反射シートは以下のようにして製造される。
仮支持体層にガラスビーズの上半球部分を一旦埋め込み、ビーズの下半球部分とビーズ相互の隙間にわたって一面に金属膜を蒸着してから、これに密着して熱可塑性ポリマーからなる支持フィルムを塗布形成し、その面を更に耐熱性樹脂などからなるフィルムで被膜して反対側の上記支持体層を剥離し、露呈したガラスビーズの上半球部の上に本発明の着色アクリル樹脂フィルムを重ね、所望の独立小区画空室を作るための凸形網目パターンを有する金型によって、耐熱性樹脂などからなるフィルム側から加熱プレスし、支持フィルムを熱溶融して着色アクリル樹脂フィルムと部分的に密着させ、上記パターンどおりの連結壁を形成して独立小区画空室を形成して、カプセル型再帰反射シートが製造される。このとき、支持フィルムと着色アクリル樹脂フィルムの密着面積が大きいと、再帰反射シートとして重要な反射性能が損なわれる傾向がある。
以下、実施例により本発明を説明する。
ここで、実施例および比較例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。また、調製例中の略号は以下の通りである。
メチルメタクリレート:MMA、
n−ブチルアクリレート:BA、
メチルアクリレート:MA、
スチレン:ST、
アリルメタクリレート:AMA、
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート:BD、
t−ブチルハイドロパーオキサイド:tBH、
クメンハイドロパーオキサイド:CHP、
n−オクチルメルカプタン:n−OM。
また、実施例および比較例において、調製した多層構造重合体の評価、着色アクリル樹脂フィルムの諸物性の測定は、以下の試験法により実施した。
1)多層構造重合体の質量平均粒子径:
乳化重合にて得られた多層構造重合体のポリマーラテックスを大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定し求めた。
2)着色アクリル樹脂フィルムの全光線透過率:
JIS K7361−1に準拠して測定した。
3)着色アクリル樹脂フィルムのヘイズ:
JIS K7136に準拠して測定した。
4)着色アクリル樹脂フィルムの溶融粘度:
東洋精機(株)製のキャピログラフを用い測定した。
5)着色アクリル樹脂フィルムの色度座標(x,y)およびY値:
日本色研事業(株)の標準色カード230(マンセル記号がN5.5のねずみ色)と着色アクリル樹脂フィルムとを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した。
6)白色反射シート上での着色アクリル樹脂フィルムの色度座標(x,y)およびY値:
市販のカプセルレンズ型再帰反射シート(白)(ニッカポリマ(株)製、商品名:ニッカライトULS)上に着色アクリル樹脂フィルムをのせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した。
7)視認性:
市販のカプセルレンズ型再帰反射シート(白)(ニッカポリマ(株)製、商品名:ニッカライトULS)に着色アクリル樹脂フィルムを貼りあわせ、これから外径10cm、幅2cmのドーナツ状の再帰反射シートを切り出した。切り出した再帰反射シートを、20cm×20cmの昼白色の白紙に貼り付け、地面と垂直に設置して、再帰反射シートから約50cm離れた距離に自動車を止め、その運転席から再帰反射物を観察した。なお、切り出したドーナツ状の再帰反射シートを照明する光としては、その自動車のヘッドライトを用いた。
○:切り出したドーナツ状の円がはっきり確認できる。
△:切り出したドーナツ状の円がはっきり確認できない。
×:切り出したドーナツ状の円が確認できない。
8)ロールへの着色剤付着:
T型ダイス付き押出機より溶融ポリマーを直径約30cmの冷却ロールで所定の厚みまでキャスティングする際に、押出機スクリュー回転数45rpm、冷却ロール速度3.0rpm、溶融ポリマーが冷却ロールに触れる長さを約50cmとし、溶融ポリマーを冷却ロールでキャスティングし始めてから10分後の冷却ロールへの着色剤の付着を観察した。
○:冷却ロールへの付着がない
△:冷却ロールへの付着がややある
×:冷却ロールへの付着がかなりある
9)耐薬品性評価:
アクリル樹脂フィルムを10mm幅の短冊状にカットし、短冊の下側に規定荷重がかかった状態で溶剤に吊るす。この時使用する溶剤は、メチルイソブチルケトン、メトキシブチルアセテートである。浸漬開始からフィルムが切れるまでの時間を測定し、切れるまでの時間が長い程耐薬品性が高いと判断する。
○:浸漬開始からフィルムが切れるまでの時間が3分以上である
△:浸漬開始からフィルムが切れるまでの時間が1分以上3分未満である
×:浸漬開始からフィルムが切れるまでの時間が1分未満である
(調製例1)
多層構造重合体(I−1)の調製:
冷却器付き反応容器内にイオン交換水195部を投入し、70℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.10部、硫酸第一鉄0.0002部、EDTA0.0006部を加えて調製した混合物を一括投入した。次いで、窒素下で攪拌しながら、MMA2.3部、BA2.13部、ST0.37部、BD0.2部、CHP0.01部からなる第1の単量体混合物および乳化剤(東邦化学工業社製:フォスファノールRS610NA)1.3部からなる混合物を8分間かけて反応容器に滴下した後、15分間反応を継続させて最内層重合体(I−1−A)を得た。ここで、最内層重合体(I−1−A)のTgは13℃であった。
続いて、反応容器内に、BA24.54部、ST4.26部、BD1.2部、AMA0.225部からなる第2の単量体混合物をCHP0.03部と供に90分間かけて滴下した後、60分間反応を継続させて架橋弾性重合体を含む第1中間層重合体(I−1−B)を得た。ここで、第1中間層重合体(I−1−B)のTgは−40℃であった。
続いて、反応容器内に、MMA6部、BA3.28部、ST0.72部、AMA0.15部、およびCHP0.02部の第3の単量体混合物を30分間かけて滴下した後、60分間反応を継続させて第2中間層重合体(I−1−C)を形成させた。
次いで、反応容器内に、MMA52.25部、BA2.26部、ST0.49部、n−OM0.193部、およびtBH0.055部からなる第4の単量体混合物を130分かけて滴下した後、60分間反応を継続させて最外層重合体(I−1−D)を形成させ、多層構造重合体(I−1)を含有するアクリル樹脂ラテックスを得た。ここで、最外層重合体(I−1−D)のTgは94℃であった。重合後測定した質量平均粒子径は0.09μmであった。
得られた多層構造重合体(I−1)の重合体ラテックスを、濾材にSUS製のメッシュ(平均目開き62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用い濾過した後、酢酸カルシウム3部を含む水溶液中で塩析させ、水洗回収後、乾燥し、粉体状の多層構造重合体(I−1)を得た。
(調製例2)
多層構造重合体(I−2)の調製:
攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA0.3部、BA4.45部、BD0.2部、AMA0.05部、CHP0.025部からなる単量体混合物を投入し、室温下にて攪拌混合した。次いで、乳化剤(東邦化学工業社製:フォスファノールRS610NA)1.3部を攪拌しながら上記容器に投入し、再度攪拌を20分間継続し、乳化液を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部、EDTA0.0003部を加えて調製した混合物を該重合容器内に一括投入した。次いで、窒素下で攪拌しながら、乳化液を8分間にわたり該重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、重合を完結させて最内層重合体(I−2−A1)を得た。
続いて、MMA9.5部、BA14.25部、BD1.0部、AMA0.25部からなる単量体混合物をCHP0.016部と共に90分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、架橋弾性重合体(I−2−A2)を含む架橋ゴム弾性体を得た。ここで、最内層重合体(I−2−A1)単独のTgは−48℃、架橋弾性重合体(I−2−A2)単独のTgは−10℃であった。
続いて、MMA5.96部、MA3.97部、AMA0.07部からなる単量体混合物をCHP0.0125部と共に45分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間層重合体(I−2−B)を形成させた。ここで、中間層重合体(I−2−B)単独のTgは60℃であった。
次いで、MMA57部、MA3部、n−OM0.264部、tBH0.075部からなる単量体混合物を140分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、最外層重合体(I−2−C)を形成し、多層構造重合体(I−2)の重合体ラテックスを得た。ここで、最外層重合体(I−2−C)単独のTgは99℃であった。重合後測定した質量平均粒子径は0.11μmであった。
得られた多層構造重合体(I−2)の重合体ラテックスを、調製例1と同様の方法で濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗回収後、乾燥し、粉体状の多層構造体(I−2)を得た。
(調製例3)
ゴム含有重合体(I−3)の調製:
反応容器に脱イオン水300部、BA77部、ST22.7部、AMA0.3部、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム2部、過硫酸カリウム0.3部、リン酸二ナトリウム12水塩0.5部、リン酸水素ナトリウム2水塩0.3部を仕込み、窒素雰囲気下50℃で4時間攪拌を行いながら重合を完結させ弾性共重合体ラテックスを得た。
この弾性共重合体ラテックス100部(固形分として)を反応容器に採り、攪拌しながら窒素置換した後、80℃に昇温し、ナトリウムフォルムアルデヒドスルフォキシレート0.125部、水2部からなる水溶液を添加後、温度を80℃に保ちながらメチルメタクリレート60部、n−オクリルメルカプタン0.05部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.125部からなる混合物を2時間に渉り滴下した後、2時間保持し重合を完結させた。得られた共重合体ラテックスを調製例1と同様の方法で濾過した。これを3%食塩水溶液に添加し、塩析脱水後、水洗、乾燥を行い粉体状のゴム含有重合体(I−3)を得た。
[実施例1〜3、実施例8〜9、比較例1〜4]
調製例1で得られた多層構造重合体(I−1)60部、下記熱可塑性重合体(II)40部に、紫外線吸収剤として旭電化工業(株)製アデカスタブLA−31RG(商品名)、ヒンダードアミン系光安定剤として旭電化工業(株)製アデカスタブLA−57(商品名)、抗酸化剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガノックス1076(商品名)、ホスファイト系抗酸化剤として旭電化工業(株)製アデカスタブP(商品名)、滑剤として三菱レイヨン(株)製L1000(商品名)および着色剤を表1に示す配合量で添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製TEM−35B)に供給し、混練してペレットを得た。
ここで、熱可塑性重合体(II)としては、ダイヤナールBR−75(三菱レイヨン(株)製、還元粘度0.057 l/g、メルトフロレート5.8g/10min(230℃、37.3N))を使用した。また、着色剤としては、アンスラキノン系赤色染料(大日精化工業(株)製、商品名ダイミック(DYMIC) MBR D−09、CI Disperse Red 22)、ペリレン系赤顔料(特色化学(株)製、商品名SD17A)、キナクリドン系紫顔料(特色化学(株)製、商品名SD50A)、ジアゾ系赤顔料(山陽色素(株)製、商品名Colortex Red C306、CI Pigment Red 187)、赤染料(山陽色素(株)製、商品名Colortex Red C303)、赤顔料(山陽色素(株)製、商品名Colortex Red B1101、CI Pigment Red 177:CI Pigment Orange71=5:1(質量比))、アンスラキノン系低昇華性染料(CI Solvent Red 52)、ペリノン系低昇華性染料(CI Solvent Red 179)を使用した。
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度240℃、Tダイ温度240℃、冷却ロール温度85℃で85μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムに製膜した。
得られた着色アクリル樹脂フィルムのXYZ表色系での色度座標(x,y)、Y値、全光線透過率、ヘイズの測定結果および視認性評価結果を表1および図2に示す。
また、シリンダー温度200℃、Tダイ温度200℃、冷却ロール温度85℃で85μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムの製膜を試みたが、シリンダー内の樹脂圧力が上昇し、フィルムの成形性が低下した。
[実施例4]
アクリル樹脂として調製例3で得られたゴム含有重合体(I−3)を30部、下記熱可塑性重合体(II−1)を70部、熱可塑性重合体(III)としてメタブレンP550(三菱レイヨン(株)製)を1部、および表1に示す配合剤、着色剤を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で85μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムを得た。ここで、熱可塑性重合体(II−1)は、アクリペットSVK(三菱レイヨン(株)製、メルトフロレート20g/10min(230℃、37.3N))を使用し、紫外線吸収剤はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製チヌビン234を使用した。
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度240℃、Tダイ温度240℃、冷却ロール温度85℃で85μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムに製膜した。
得られた着色アクリル樹脂フィルムのXYZ表色系での色度座標(x,y)、Y値、全光線透過率、ヘイズの測定結果および視認性評価結果を表1および図2に示す。
[実施例5]
アクリル樹脂として調製例3で得られたゴム含有重合体(I−3)を30部、熱可塑性重合体(II−1)を70部、および表1に示す配合剤、着色剤を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で85μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムを得た。ここで、熱可塑性重合体(II−1)としては、アクリペットSVK(三菱レイヨン(株)製)を使用し、また紫外線吸収剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製チヌビン234を使用した。
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度205℃、Tダイ温度205℃、冷却ロール温度85℃で85μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムに製膜した。
[実施例6]
アクリル樹脂として調製例3で得られたゴム含有重合体(I−3)を30部、熱可塑性重合体(II−1)を70部、熱可塑性重合体(III)としてメタブレンP550(三菱レイヨン(株)製)を1部、および表1に示す配合剤、着色剤を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で85μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムを得た。ここで、熱可塑性重合体(II−1)としては、アクリペットSVK(三菱レイヨン(株)製)を使用し、また紫外線吸収剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製チヌビン234を使用した。
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度205℃、Tダイ温度205℃、冷却ロール温度85℃で85μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムに製膜した。
[実施例7]
アクリル樹脂として調製例2で得られた多層構造重合体(I−2)を60部、熱可塑性重合体(II)を40部、および表1に示す配合剤、着色剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法で85μm厚みの着色アクリル樹脂フィルムを得た。
得られた着色アクリル樹脂フィルムのXYZ表色系での色度座標(x,y)、Y値、全光線透過率、ヘイズの測定結果および視認性評価結果を表1および図2に示す。
Figure 2005154720
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
実施例1〜9における着色アクリル樹脂フィルムを用いた再帰反射シートは、JIS Z9117、ASTM D4956の両方の規格を満足するものであるため、本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは工業的利用価値が高い。特に、実施例6における着色アクリル樹脂フィルムは、製膜を行う際の製膜装置のシリンダー温度を205℃に設定することが可能であり、UV吸収剤や着色剤等の揮発によるロール汚れ等の製造上の問題が発生しにくいため、フィルムの生産性の観点より工業的利用価値が高い。
一方、比較例1における着色アクリル樹脂フィルムを用いた再帰反射シートは、全光線透過率がJIS K7361−1を満足し、ヘイズがJIS K7136を満足し、色度座標(x,y)が、JIS Z9117記載の範囲以内であるものの、Y値はASTM D4956を満足しない。また、比較例2における着色アクリル樹脂フィルムを用いた再帰反シートは、全光線透過率がJIS K7361−1を満足し、ヘイズがJIS K7136を満足し、Y値がASTM D4956を満足しているものの、色度座標(x,y)がJIS Z9117記載の範囲外である。また、比較例3における着色アクリル樹脂フィルムを用いた再帰反シートは、全光線透過率がJIS K7361−1を満足し、ヘイズがJIS K7136を満足するものの、色度座標(x,y)がJIS Z9117記載の範囲外であり、Y値はASTM D4956を満足していない。また、比較例4における着色アクリル樹脂フィルムを用いた再帰反射シートは、全光線透過率がJIS K7361−1を満足せず、ヘイズがJIS K7136を満足せず、色度座標(x,y)がJIS Z9117記載の範囲外である。これら比較例1〜4の着色アクリル樹脂フィルムを使用したものは、いずれも赤色系再帰反射シートとして必要となる高度な視認性が得られないため工業的利用価値が低い。
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムを表面に有する再帰反射シートは、JIS Z9117、ASTM D4956の規格を満足するものであり、道路標識、工事標識など、様々な表示類に使用できる。このように、本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムは、工業的利用価値が極めて高いものである。
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムが満足すべき、XYZ表色系での色度座標(x,y)の範囲を示すグラフである。 実施例および比較例における着色アクリル樹脂フィルムのXYZ表色系での色度座標(x,y)を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 再帰反射シートの表皮材として用いられる着色アクリル樹脂フィルムであり、
    該着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明および受光の幾何学的条件a(45゜照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.541,0.370)、(0.629,0.281)、(0.735,0.265)および(0.629,0.370)の範囲内にあり、Y値が2から12の範囲であることを特徴とする再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム。
  2. アンスラキノン系着色剤、ペリノン系着色剤、ジアゾ系着色剤、ジケトピロロピロール系着色剤のいずれかを含有することを特徴とする請求項1記載の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルム。
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