JP2005152754A - エポキシ化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エチレン性二重結合を少なくとも1個以上含有する化合物を過酸化水素などの酸化剤を用いて接触酸化して対応するエポキシ化合物を製造するにあたり、エポキシ化合物を高収率かつ酸化剤を有効に利用し、触媒の回収も容易であるエポキシ化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明はエチレン性二重結合を少なくとも1個含有する化合物を酸化剤により酸化するに際し、タングステン種及び/またはモリブデン種と、フッ素樹脂とを含む触媒を用いることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明はエチレン性二重結合を少なくとも1個含有する化合物を過酸化水素などの酸化剤を用いて接触酸化して、対応するエポキシ化合物を製造するための触媒およびエポキシ化合物の製造方法に関するものである。
エポキシ化合物はしばしば最終製品に変換できる中間化合物として利用される。たとえばエチレンオキシドからエチレングリコールやポリエチレングリコールに、プロピレンオキシドからはアルコールをアルコキシレート化してポリプロピレンポリエーテルのようなポリエーテルポリオール類を形成し、ポリウレタンおよび合成エラストマー類の製造において多量に消費されている。
エポキシ化合物は数多くの技術によって工業的に大規模に生産されている。例えば銀触媒を用いてエチレンを酸素酸化することによりエチレンオキシドが製造されている。また、プロピレンはクロロヒドリン法やハルコン法がよく知られている。
クロロヒドリン法は、プロピレンを塩素水溶液と反応させてプロピレンクロロヒドリン混合物を生成させ、このプロピレンクロロヒドリン類を過剰のアルカリで脱塩化水素化させてプロピレンオキサイドを製造する方法である。クロロヒドリン法は現在プロピレンオキサイドの製造方法として最も広く使用されている製造方法であるが、低濃度の塩素蒸気が発生するという問題がある。
これらの問題を回避するためには、触媒としてタングステン化合物を、酸化剤として過酸化水素を用いたエチレン性二重結合のエポキシ化反応が有用な方法であり、数多く報告されている。
エチレン性二重結合を含有する化合物を過酸化水素と反応させることによりエポキシ化合物を製造するに関し、リンタングステン酸をアルミナに担持し500℃で焼成したものを触媒として用いて、シクロヘキセン、シクロオクテンまたは1−オクテンを基質とし、基質と過酸化水素のモル比を1:1もしくは1:2とし、メタノールまたはt−ブタノール中においてエポキシ化反応を行ったことが報告されている。このエポキシ化反応においては、過酸化水素の転化率が23〜98%となり、エポキシ化合物の選択率が7〜92%となったことが記載されている。(特許文献1参照)
エチレン性二重結合を含有する化合物を過酸化水素と反応させることによりエポキシ化合物を製造するに関し、アルミナ担持タングステン触媒を用いてアリルアルコールと過酸化水素のモル比を1.5:1とし、60℃で反応を行ったことが報告されている。担持触媒の活性種としてはHWO、NaHWO、NHHWO、NaWO、ヘテロポリタングステン酸、ヘテロポリタングステン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩が挙げられ、担体としては、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、シリカアルミナ、活性炭、粘土が挙げられている。このエポキシ化反応においては、エポキシ化合物の収率が、過酸化水素に対するモル%で27〜31%となり、過酸化水素の転化率が97.8〜99.1%となったことが記載されている。(特許文献2参照)
しかしながらこれらの反応においては過酸化水素に対するエポキシ化合物の収率が低く、過酸化水素が有効に利用されていないため、触媒活性の向上という点で工夫の余地があった。
エチレン性二重結合を少なくとも1個含有する化合物を酸化剤により酸化するに際して、二欠損及び/または三欠損構造部位を有しヘテロ原子がリン原子であるヘテロポリオキソメタレートアニオン(POM)と特定の元素とを含む触媒を用いてプロピレンのエポキシ化反応を行うと、エポキシ化合物が過酸化水素に対するモル%で20%、選択率が98%で得られることが記載されている。しかしながら収率が低く、触媒活性の面で工夫の余地があった。(特許文献3参照)
またエチレン性二重結合を少なくとも1個含有する化合物を酸化剤により酸化するに際して、二欠損及び/または三欠損構造部位を有しヘテロ原子がケイ素原子であるヘテロポリオキソメタレートアニオン(POM)と特定の元素とを含む触媒を用いてプロピレンのエポキシ化反応を行うと、エポキシ化合物が高収率、高選択率で得られ、かつ酸化剤が有効に利用されることが報告されている。このエポキシ化反応においてはエポキシ化合物の収率が過酸化水素に対するモル%で6−93%、選択率が40−99%と高活性であることが記載されている。しかしながらこの反応は均一反応で行われたものであり、工業的な製造においては触媒成分の分離、再利用の面で工夫の余地があった。(特許文献4参照)
エチレン性二重結合を少なくとも1個含有する化合物を酸化剤により酸化するに際して、欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの4級アンモニウム塩を不均一触媒として使用してアリルアルコールのエポキシ化反応を行うと、エポキシ化合物が高収率、高選択率で得られ、かつ酸化剤が有効に利用されることが報告されている。このエポキシ化反応においてはエポキシ化合物の収率が過酸化水素に対するモル%で8−35%、選択率が79−95%と高活性であることが記載されている。しかしながらこの反応は水系溶媒中で行われたものであり、疎水系の有機溶媒中で実施することはできない。(特許文献5参照)
国際公開第93/00338号公報明細書 米国特許第2870171号公報明細書 特開2002−316055号公報明細書 特開2002−336698号公報明細書 特開2003−238545号公報明細書
本発明は上記現状をかんがみてなされたものであり、エチレン性二重結合を少なくとも1個含有する化合物を過酸化水素などの酸化剤を用いて接触酸化して対応するエポキシ化合物を製造するにあたり、水系溶媒中または有機溶媒中において不均一反応により該エポキシ化合物を高収率、高選択率かつ高酸化剤有効利用率で与えるための不均一触媒およびエポキシ化合物の製造方法を提供するものである。
本発明者らはエチレン性二重結合をエポキシ化する方法に関して鋭意検討した結果、例えば、エポキシ化に対して活性を持つタングステン種及び/またはモリブデン種とフッ素樹脂とを含んだ触媒を用いて、エチレン性二重結合を少なくとも1個含有する化合物と酸化剤である過酸化水素を反応させることにより、従来水準から予測される範囲を超えてエポキシ化合物が高収率、高選択率かつ高い酸化剤有効利用率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
活性成分としてタングステン種及び/またはモリブデン種とフッ素樹脂とを含んだ本発明記載のエポキシ化触媒を使用することにより、酸化剤が酸化反応に有効に使われるようになるため、高収率、高選択率かつ高酸化剤有効利用率でエポキシ化合物を製造することができ、触媒の回収も容易である。
本願発明におけるエチレン性二重結合を少なくとも1個含有する化合物を酸化剤により酸化させてエポキシ化合物を製造するための触媒は、活性成分として少なくとも1種のタングステン種及び/またはモリブデン種とフッ素樹脂とからなる触媒である。
触媒活性成分としてのタングステン種の形態としてはタングステン酸またはその塩、タングステン酸化物、タングステン原子を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンが好適である。
上記タングステン酸またはその塩としては、HWO、NaWO、KWO、CaWO、MgWO、NaHWO、(NH)WO、(NH)HWO等が、タングステン酸化物としては(NH10(W1240)、(NH10(H1242)・10HO、酸化タングステン(WO、WO)等が好適である。
触媒活性成分としてのモリブデン種の形態としてはモリブデン酸またはその塩、モリブデン酸化物、モリブデン原子を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンが好適である。
上記モリブデン酸またはその塩としては、HMoO、NaMoO、NaHMoO、(NH)MoO、(NH)HMoO、CaMoO、KMoO等が、モリブデン酸化物としては(NH(Mo24)・4HO、Na(Mo10)・7HO、酸化モリブデン(MoO、MoO)、Mo(CHCOO)、Na(Mo24)・22HO、NaMo、Na(Mo26)・12HO等が好適である。
タングステン原子及び/またはモリブデン原子を含むヘテロポリオキソメタレートアニオンとしては下記一般式(1);
(XYq- (1)
(式中Xはケイ素原子またはリン原子を、Yはタングステン原子またはモリブデン原子を表す。(n,m)は無欠損の場合は(12,40)、一欠損構造部位を有する場合は(11,39)、二欠損構造部位を有する場合は(10,36)、三欠損構造部位を有する場合は(9,34)である。qは正の整数である。)で表されるケギン型ポリオキソメタレートアニオンが好適である。なお、qは元素Xの価数によって決まる。これらの中でも(γ―SiW10368−、(SiW343−、(SiW12404−、(PW349−などが好適である。より好ましくは二欠損型ヘテロポリオキソメタレートである(γ―SiW10368−である。
また上記欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオンには、ポリ原子と異なる元素(E)を含んでいてもかまわない。元素Eはバナジウム、タンタル、ニオブ、アンチモン、ビスマス、クロム、モリブデン、セレン、テルル、レニウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、白金、イリジウム、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、ゲルマニウム、スズ及びランタノイドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素である。これらの中でも、好ましくは、V、Sb、Mo、Cr、Re、Co、Ni、Ru、Pd、Au、Zn、Y、Sn、ランタノイド元素であり、より好ましくは、V、Mo、Pd、Ru、Au、Zn、Y、ランタノイド元素である。
ヘテロポリオキソメタレートアニオンと元素(E)との存在形態としては、ともに触媒中に存在する形態となればよい。例えば以下の(1)〜(3)に記載する形態が好ましい。(1)元素(E)がヘテロポリオキソメタレートアニオンの骨格内の欠損部位に導入されて存在する形態、(2)欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオンが元素(E)に配位して存在する形態、(3)元素(E)が欠損部位を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンに担持されたり、収着されたりして存在する形態。
上記触媒における元素(E)の含有量としては、触媒中の原子Xに対して零個を超えることが望ましい。より好ましくは0.0001個以上、さらに好ましくは0.01個以上である。また6個以下であることが好ましく、より好ましくは5個以下であり、さらに好ましくは3個以下である。
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオンの対カチオンは例えばプロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、或いは第四級アンモニウム塩、第四級フォスフォニウム塩、第四級アルセン、セチルピリジニウム塩といった有機カチオンを含むいかなるカチオンも可能である。カチオンは1種類または2種類以上用いることができる。
また上記触媒活性成分は担体に担持されていても構わない。活性成分を担体に担持することにより、さらに触媒の活性や選択性が向上することがある。担体としては一般的な担体が使用できる。シリカ、マグネシア、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化ホウ素、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化バリウムなどの金属酸化物、シリカ−アルミナ、酸化タングステン−酸化スズ、酸化スズ−アルミナ、酸化スズ−シリカなどの複合酸化物、粘土、ハイドロタルサイトのような層状化合物、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の有機系担体、シリコーン樹脂、活性炭等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
活性成分およびそれを担持した担体には、活性成分構成元素や担体構成元素以外の第三元素を添加してもよい。第三元素を添加することにより、タングステン種及び/またはモリブデン種を必須成分とするエポキシ化反応において、タングステン種及び/またはモリブデン種の溶出を抑制することが可能となり、また場合によっては触媒活性を向上、維持することが可能となる。
第三元素の好ましい形態としては、2族、3族、4族、5族、7族、8族、9族、10族、11族、12族、13族、14族、15族、16族および17族からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることが挙げられる。さらに好ましくは2族、3族、4族、5族、7族、8族、12族、13族、14族、15族および17族からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。さらに好ましくは2族、3族、7族、8族、12族、13族、14族、15族からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。元素としてはMg、Ca、La、Ti、V、Nb、Re、Fe、Zn、Al、In、Sn、Pb、P、Sb、BiおよびFからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。より好ましくはLa、Zn、Al、Sn、Pb、P、SbおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。さらに好ましくはLa、Al、Zn、Sn、PbおよびPからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。なお、「族」は18族長周期型周期表における族を意味する。
活性成分もしくは活性成分を担持した担体に含ませるフッ素樹脂は、一般的に市販されている各種フッ素樹脂の粉末、分散液(ラテックス)、スプレーのいずれも使用することができる。フッ素樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)等がある。
フッ素樹脂の平均粒径は0.01μm以上にすることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上である。また、1000μm以下にすることが好ましく、より好ましくは100μm以下である。
活性成分に対するフッ素樹脂の重量比(触媒中のフッ素樹脂の重量/触媒中の活性成分または活性成分が担持されている担体の重量)は0.001以上にすることが好ましく、より好ましくは0.01以上である。また、1000以下にすることが好ましく、より好ましくは100以下であるである。
活性成分とフッ素樹脂粉末の混合方法としては、活性成分もしくは活性成分を担持した担体にフッ素樹脂を粉末として加え、乳鉢、ブレンダー、ニーダー、ロール混練機、カレンダーロール、ロール式ミル等で混練することがあげられる。またこのフッ素樹脂処理は0℃から95℃の範囲で行うのが望ましい。
活性成分とフッ素樹脂分散液の混合方法としては、活性成分もしくは活性成分を担持した担体を水中に懸濁させ、フッ素樹脂分散液を添加して攪拌する。このフッ素樹脂処理は0℃から95℃の範囲で行うのが望ましい。この懸濁液を、濾過もしくはロータリーエバポレーターなどで水を蒸発させることにより水を除去し、使用したフッ素樹脂の融点以下の温度で乾燥を行う。
得られたフッ素樹脂処理触媒は、使用したフッ素樹脂の融点以上分解点以下の温度で焼成してもよい。焼成することにより触媒の活性が向上することがある。このようにして得られた触媒は、フッ素樹脂がバインダーとしても働くため、成形性が向上する。
本願発明における反応基質は少なくとも1個のエチレン性二重結合を持っている。これらの反応基質は炭化水素、エステル、アルコール、エーテル、ハロゲン置換炭化水素などである。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、ブタジエン類、1−ヘキセン、1−ペンテン、イソプレン、ジイソブチレン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−アイコセンプロピレンのトリマー及びテトラマー類、1,3−ブタジエンといった末端の直鎖アルケンが挙げられる。
また内部アルケン、分岐アルケンとしては、2−ブテン、2−オクテン、2−メチル−2−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテンなどが挙げられる。
環式有機化合物としてはシクロペンテン、シクロヘキセン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、1−メチル−1−シクロヘキセン、シクロへプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロペンタジエン、シクロデカトリエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、メチレンシクロプロパン、メチレンシクロペンタン、メチレンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、シクロオクテン、ノルボルネンなどが挙げられる。
上記エチレン性二重結合を1個以上持つ非環式または環式有機化合物の炭素数は好ましくは2から15、更に好ましくは炭素数2から12の不飽和炭化水素である。
本発明に使用されるオレフィンは、例えば、−COOH、−CN、COOR、−OR(ここでRはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリルアルキル置換基である)のような官能基、更には、アリール、アリルアルキル、ハロゲン、ニトロ、スルホン酸、カルボニル(例えばケトン、アルデヒド)、ヒドロキシル、エーテル基を含んでもよい。
これらの官能基を含む化合物としてはアリルアルコール、塩化アリル、アリルメチルエーテル、アリルビニルエーテル、ジアリルエーテル、アリルフェニルエーテル、メタクリル酸メチル、アクリル酸などが挙げられる。
その他の少なくとも1個のエチレン性二重結合を持っている化合物としては、炭素−炭素の二重結合を含む炭素数6以上のアリール化合物を用いることができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレンのような置換スチレン類、ジビニルベンゼン類、スチルベン、アラルケン類、さらには炭素−炭素の二重結合を含むアミン類、チオール類、サルファイド類、ジサルファイド類が挙げられる。さらには炭素−炭素の二重結合を含むSe、Te、SbやAsの化合物、炭素−炭素の二重結合を含むホスフィン類、ホスファイト類が含まれる。
酸化剤としては酸素イオンや酸素ラジカル、ペルオキシドやスーパーペルオキシドを生成することができる過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、過酢酸などの有機過酸化物、酸素と水素の混合ガス、一酸化二窒素、ヨードシルベンゼン等が挙げられるが、好ましくは過酸化水素である。
過酸化水素を使用する場合は過酸化水素の形態は実用的には、0.01〜70質量%の水溶液、アルコール類の溶液が使用可能である。
酸化剤に対する少なくとも1個のエチレン性二重結合を持つ化合物のモル比(反応基質中のエチレン性二重結合のモル数/酸化剤のモル数)は、100/1以下となることが好ましい。より好ましくは10/1以下である。また、1/100以上にするのが好ましく、より好ましくは1/50以上である。
上記触媒の使用量は、触媒中の活性種に対する反応基質中のエチレン性二重結合のモル比(反応基質中のエチレン性二重結合のモル数/活性種のモル数)が100000/1以下であることが好ましく、より好ましくは10000/1以下である。また、1/10以上となることが好ましく、より好ましくは1/1以上である。
本発明においては水及び/または有機溶媒が溶媒として用いられる。有機溶媒は、反応基質であるエチレン性二重結合を少なくとも一つ含有する化合物、過酸化水素、生成したエポキシ化合物とは反応しない事が好ましい。
有機溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、ノルマルまたはイソプロパノール、第3級ブタノールなど炭素数1〜6の第1、2、3級の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのエチレンオキシド、プロピレンオキシドが開環したオリゴマー類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、ジメチルホルムアミド、ニトロメタンなどの窒素化合物、アセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオンニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ペンタンニトリル、ヘキセンニトリル、ドデカニトリル、トルニトリル等のニトリル類、リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシルなどのリン酸エステルなとのリン化合物、クロロホルム、ジクロロメタン、二塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環式炭化水素などが挙げられる。
上記溶媒の中でも、水、炭素数1〜4のアルコール類、1,2−ジクロロエタン、ヘプタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホオキシド、ジメチルホルムアミドやこれらの混合物が好適である。
上記エポキシ化反応が行われる反応系は中性ないし酸性であることが好ましい。本願発明による触媒系を用いることによっても反応系を酸性にすることはできるが、さらに反応系中に酸性物質を加えても良い。
酸性物質としてはブレンステッド酸、ルイス酸などが好ましい。ブレンステッド酸としては例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸、酢酸、安息香酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スルホン酸等の有機酸類、ゼオライト類、混合酸化物類などの無機酸類などが挙げられる。またルイス酸としては、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化ホウ素化合物、塩化アンチモン化合物、塩化第二スズ、フッ化アンチモン、亜鉛やチタンの化合物、ゼオライト類、混合酸化物などが挙げられる。さらに無機、有機酸性塩もこの反応において用いることができる。
上記エポキシ化反応の反応温度は0℃以上が好ましい。より好ましくは室温以上である。また反応温度の上限は250℃以下が好ましく、更に好ましくはから180℃以下である。反応時間は数分以上が好ましい。また、反応時間の上限は150時間以内、好ましくは48時間以内である。反応圧力は常圧以上が好ましい。
また、反応圧力の上限は2×10Pa以下、好ましくは5×10Pa以下である。さらに減圧下でも反応は実施可能である。
本発明のエポキシ化合物の製造方法は、上記触媒を用いることによりエポキシ化合物を高収率、高選択率でかつ酸化剤を有効に利用して製造する方法であり、さらには触媒の回収が容易である。各種の工業製品の製造において、中間体や原料として用いられるエポキシ化合物の製造方法として有用な方法である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
生成物の分析および定量はガスクロマトグラムで行った。収率とは反応系に供給された過酸化水素のモル数を基準とする生成物のモル%〔(エポキシ反応生成物のモル数/供給された過酸化水素のモル数)×100〕である。また選択率とは、全反応生成物のモル数を基準とする生成物のモル%〔(エポキシ反応生成物のモル数/全反応生成物のモル数)×100〕である。
(触媒調製法)
W/PTFE
タングステン酸5.0gとポリテトラフルオロエチレン(ACROS ORGANICS社製)1.0gを乳鉢で混合した。その後空気中にて350℃で1時間焼成した。これをW/PTFEとする。
W触媒
タングステン酸5.02gを空気中にて350℃で1時間焼成した。これをW触媒とする。
W/Zn−SnO
硝酸亜鉛六水和物0.39gを水50mlに溶解させ、担体であるSnO10gを加えて水を蒸発乾固させた。その後200℃で30分間乾燥し、500℃で2時間焼成した。タングステン酸1.5gに水を50ml加え、80℃に加熱した後アンモニア水を加えてpHを7に調整した。室温に戻した後、不純物をろ過した。この溶液に、先ほど得られた固体を加えて 60℃で1時間攪拌した。ろ過後、得られた固体を120℃で6時間乾燥し、空気中にて400℃で3時間焼成した。これをW/Zn−SnOとする。
W/Zn−SnO /PTFE
W/Zn−SnO5.0gとポリテトラフルオロエチレン1.0gを乳鉢で混合した。その後空気中にて350℃で1時間焼成した。これをW/Zn−SnO/PTFEとする。
二欠損型ヘテロポリオキソメタレートテトラ−n−ブチルアンモニウム塩(γ−SiW 10 36 /PTFE)
Inorganic synthesis vol.27,p.88に記載された方法で調製した二欠損ケギン型ヘテロポリオキソメタレートK〔SiW1036〕・12HOをの4.5gを 60mlのイオン交換水に室温で溶解させ、硝酸水溶液でpHを2に調整した。そこにテトラブチルアンモニウムブロミド(以下TBABrと略す)の3.3gを固体のまま加えて15分間攪拌を続けた。精製した沈殿物をろ過して、ろ過物を3時間室温で乾燥した。ろ過物の2.5gをアセトニトリル15mlに溶解させ、そこにイオン交換水300mlを加えて氷水中で30分間攪拌した。析出した沈殿物をろ過して、ろ過物を3時間室温で乾燥して精製固形物を得た。これをγ−SiW1036とする。
γ−SiW10361.0gとポリテトラフルオロエチレン0.2gを乳鉢で混合した。こうして得られた触媒をγ−SiW1036/PTFEとする。
実施例1
蓋付き試験管にベンゾニトリル6mL、1−ブテン1g、W/PTFEをタングステン原子として0.13mmolおよび60質量%過酸化水素水2mmolを加え、60℃で2時間反応させ、1−ブテンのエポキシ化反応を行った。結果を表1に示す。
実施例2および比較例1〜2
実施例1においてW/PTFEの代わりにW触媒、W/Zn−SnO、W/Zn−SnO/PTFEをそれぞれタングステン原子として0.13mmol用いて1−ブテンのエポキシ化反応を行った。結果を表1に示す。
実施例3
実施例1においてベンゾニトリルの代わりに酢酸ブチル、W/PTFEの代わりにγ−SiW1036/PTFEをタングステン原子として0.05mmol用いて1−ブテンのエポキシ化反応を行った。結果を表1に示す。
Figure 2005152754

Claims (2)

  1. エチレン性二重結合を少なくとも1個含有する化合物を、酸化剤存在下で反応させエポキシ化合物を製造する方法であって、活性成分としてタングステン種及び/またはモリブデン種と、フッ素樹脂とを含む触媒を用いることを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。
  2. さらに、担体を含む触媒であることを特徴とする請求項1記載のエポキシ化合物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111097527A (zh) * 2018-10-25 2020-05-05 中国石油化工股份有限公司 一种负载型杂多酸催化剂和制备方法及应用

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