〔第1の実施の形態〕
本発明の第1の実施の形態による磁気光学光部品について図1乃至図12を用いて説明する。図1は、本実施の形態による磁気光学光部品として透過型光スイッチ1の構成を模式的に示している。図1(a)、(b)では、光の進行方向にZ軸をとり、Z軸に直交する面内で互いに直交する2方向にX軸及びY軸をとっている。図1(a)は光スイッチ1を−Y方向に見た構成を示し、図1(b)は光スイッチ1を−X方向に見た構成を示している。
図1(a)、(b)に示すように、透過型光スイッチ1は、−Z方向側に配置された4本の光ファイバ41、42、43、44と、+Z方向側に配置された4本の光ファイバ45、46、47、48とに接続されている。光ファイバ41、42、43、44は、XZ面に平行な面内で−X方向に向かって所定ピッチPでこの順に隣り合って配置されている。光ファイバ41、42、43、44の−Z側の端部は、それぞれ外部から光が入射する光入射ポートP1、P2、P3、P4(図ではそれぞれ(1)、(2)、(3)、(4)と示している)になっている。また、光ファイバ45、46、47、48は、XZ面に平行な面内で−X方向に向かって所定ピッチPでこの順に隣り合って配置されている。出力側の光ファイバ45は入力側の光ファイバ41に対して1ピッチP分だけ−X方向及び−Y方向にずれて位置している。光ファイバ45、46、47、48の+Z側の端部は、光出射ポートP11、P12、P13、P14(図ではそれぞれ(11)、(12)、(13)、(14)と示している)になっている。光ファイバ41〜44の+Z方向には、光ファイバ41〜44から出射した発散光を平行光に変換するレンズ51〜54がそれぞれ配置されている。レンズ51〜54の+Z方向には複屈折板11、ファラデー回転子(磁気光学結晶)21、複屈折板12、ファラデー回転子22、複屈折板13がこの順に配置されている。複屈折板11、12、13、及びファラデー回転子21、22は平行平板型の光学素子であり、XY面にほぼ平行な光入出射面を有している。複屈折板13の+Z方向には、複屈折板13から出射した平行光を収束光に変換して光ファイバ45〜48に入射させるレンズ55〜58が配置されている。
光スイッチ1やそれを収容する装置を小型化するには、レンズ51〜58の小型化が重要になる。図2(a)は、小型化が可能なレンズの構成の例を示している。図2(a)に示すように、シングルモードの光ファイバ40の先端部には、光ファイバ40と同軸の円柱形状を有する屈折率分布レンズ(GI(Gradient Index)レンズ)50が融着されている。GIレンズ50は、シングルモードの光ファイバ40の直径とほぼ等しい直径(例えば125μm)を有している。光ファイバ40及びGIレンズ50は、互いに一体化されてレンズ付き光ファイバとして機能する。GIレンズ50は、その円柱軸に垂直な端面50aを有している。光ファイバ40からGIレンズ50に入射した光は平行光に変換され、端面50aから端面50aに垂直な方向(光ファイバ40及びGIレンズ50の円柱軸に平行な方向)に出射する。GIレンズ50は、球面レンズ等と比較して外径を小さくできるため、図1に示す本実施の形態の光スイッチ1のレンズ51〜58として用いるのに適している。
図2(b)は、レンズの構成の変形例を示している。図2(b)に示すように、GIレンズ50の代わりに小型の球レンズ59を光ファイバ40に固着したレンズ付き光ファイバも本実施の形態に好適である。
次に、図3を用いて複屈折板の光学軸について説明する。図3(a)は図1のXYZ座標系に複屈折板BPを配置して−Z方向に見た状態を示し、図3(b)は複屈折板11を−X方向に見た状態を示している。図3(a)、(b)に示すように、複屈折板BPの光学軸OAはYZ面に平行に配置されている。光学軸OAとXZ平面とのなす角度は、−X方向に見てX軸について時計回りに約45°になっている。光入出射面(本例ではXY面に平行)BPa、BPbに垂直に入射した光は、常光と異常光とに分離して、互いに異なる光路上に出射する。このとき、異常光は常光に対して例えば図3(b)に示すように下方(−Y方向)に軸ずれする。以下、図3(a)のように複屈折板BPを−Z方向に見た図では、+Z方向に入射した光の異常光が下方(−Y方向)に軸ずれすることを下向きの片矢印Cで表すことにする。
図1に示す複屈折板11の光学軸OA11(不図示)を図3に示す複屈折板BPに即して説明すると、光学軸OA11は−Z方向に見てZ軸について反時計回りに複屈折板BPの光学軸OAを45°回転した方向に向いている。光学軸OA11とXZ平面とのなす角度は、−X方向に見てX軸について時計回りに約45°になっている。これにより、異常光は常光に対して−X方向及び−Y方向の双方に軸ずれするようになっている。
複屈折板12は、図3において、Z軸を回転軸として−Z方向に見て複屈折板BPを反時計回りに90°回転させた状態の光学軸を有している。複屈折板12の光学軸OA12(不図示)はXZ面に平行に配置されている。光学軸OA12とYZ平面とのなす角度は、+Y方向に見てY軸について時計回りに約45°になっている。光入出射面に垂直に入射した光は、常光と異常光とに分離して、互いに異なる光路上に出射する。このとき、異常光は常光に対して−X方向に軸ずれする。
複屈折板13は、複屈折板11と同じ光学軸の方向を有している。複屈折板11と13は、例えば同一の結晶から同一形状に切り出した同一仕様の素子である。複屈折板11〜13を構成する結晶としては、ルチル(TiO2)やイットリウム・バナデート(YVO4)等が用いられる。なお、複屈折性結晶の光学特性により、図3(b)に示す光学軸OAの配置で図中上方に軸ずれする複屈折板11〜13を組み合わせて用いるようにしてもよい。
図1に戻り、例えば光入射ポートP1(1)に入射して+Z方向に進む光は、複屈折板11に入射すると、常光と異常光とに分離して出射する。常光は軸ずれせずにファラデー回転子21の+Y側の領域に入射する。異常光は、−X方向及び−Y方向の双方向に軸ずれし、ファラデー回転子21の−Y側の領域に入射する。複屈折板12の光学軸は、XZ面に平行である。+Z方向に進む光が複屈折板12に入射したときの異常光の軸ずれする方向は−X方向である。複屈折板13の光学軸は、複屈折板11の光学軸に平行である。したがって、複屈折板13に+Z方向に入射した光の異常光が軸ずれする方向は、複屈折板11に+Z方向に入射した光の異常光の軸ずれする方向と同方向である。
非相反光学素子であるファラデー回転子21、22は、例えば液相エピタキシャル(LPE)法により育成され、膜成長面に垂直な方向に磁化容易軸が現れる垂直磁化性を備えた磁性ガーネット単結晶膜で形成されている。ファラデー回転子21、22の−Y方向には、磁界印加機構61が配置され、+Y方向には磁界印加機構62が配置されている。磁界印加機構61は、コイル61aと、コイル61aを貫通して一体となる半硬質磁石61b、61cとを有している。半硬質磁石61b、61cの他端で形成されるギャップ間にファラデー回転子21、22の−Y側が挟まれるように位置している。
半硬質磁石61b、61cは、永久磁石より保磁力が小さく、コイル61aに通電して逆方向の磁界を印加することにより磁化を反転できるようになっている。半硬質磁石61b、61cは、コイル61aの通電を止めて印加磁界をゼロにしてもコイル61a通電時の磁化状態を保持する自己保持型の特性を有している。従って、所定の電流レベル(例えば、100(mA)程度)で所定の時間長(例えば、1(ms)程度)の電流パルスをコイル61aに供給し、当該電流を流す方向を切替えることにより半硬質磁石61b、61cのギャップ間の磁界の向きを切替えることができるようになっている。
同様に、磁界印加機構62は、コイル62aとコイル62aを貫通して一体となる半硬質磁石62b、62cとを有している。半硬質磁石62b、62cの他端で形成されるギャップ間にファラデー回転子21、22の+Y側が挟まれるように位置している。
図1(b)は、コイル61aに所定の電流パルスを供給して、半硬質磁石61b、61cのギャップ間に、矢印αで示すように向きが+Z方向の磁界を生じさせた状態を示している。また、コイル62aに所定の電流パルスを供給して、半硬質磁石62b、62cのギャップ間に、矢印βで示すように向きが−Z方向の磁界を生じさせた状態を示している。
ファラデー回転子21、22のほぼ中央から−Y側の領域に印加される磁界は、半硬質磁石61b、61cによる+Z方向の磁界成分が支配的になる。一方、ファラデー回転子21、22のほぼ中央から+Y側の領域に印加される磁界は、半硬質磁石62b、62cによる−Z方向の磁界成分が支配的になる。双方の領域に印加する磁界の強さをファラデー回転子21、22の飽和磁界以上にすることにより、+Z方向の磁界が印加されている領域には磁化を一様に一方向にした磁区Aが形成され、−Z方向の磁界が印加されている領域には磁化を磁区Aとは逆方向に一様にした磁区Bが形成される。磁区Aと磁区Bとの間には、XZ面にほぼ平行な境界面の磁壁Iが形成されている。本例での磁区Aのファラデー回転角は、例えば−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°であり、磁区Bのファラデー回転角は、同様にして反時計回りに45°である。ファラデー回転子21、22は非相反性を有しているので、ファラデー回転子21、22の2つの光入出射面のいずれから光が入射しても上記回転角の条件は保たれる。
このように互いに逆向きの磁界を生じる半硬質磁石61b、61cと、半硬質磁石62b、62cとを用い、ファラデー回転子21、22に対して所定の強さ及びその勾配を有する磁界を印加することによって、ファラデー回転子21、22にそれぞれ2磁区構造を形成できる。図1(b)では、2つのファラデー回転子21、22の−Y側の領域にそれぞれ磁区Aが形成され、+Y側の領域にそれぞれ磁区Bが形成されている。この状態においてファラデー回転子21の磁区A、B及び磁壁Iは、Z方向に見ると、ファラデー回転子22の磁区A、B及び磁壁Iにそれぞれ重なるように配置されている。
ここで、ファラデー回転子21、22の磁区Aと磁区Bとの境界面である磁壁Iについて説明する。図4は、ファラデー回転子21、22をZ方向に見た磁区構造を示している。図4に示すように、ファラデー回転子21、22の磁壁Iは直線状(平面状)になっている。本例では、複屈折板11により分離した常光及び異常光のうち一方を磁区Aに入射させ、他方を磁区Bに入射させる必要がある。図5(a)は直線状の磁壁Iが形成されたファラデー回転子FR1を示し、図5(b)は非直線状の磁壁Iが形成されたファラデー回転子FR2を示している。図5(a)、(b)に示すように、磁区Aに入射する一方の光L31と磁区Bに入射する他方の光L32との間の分離距離を比較すると、非直線状の磁壁Iが形成されたファラデー回転子FR2の分離距離d2は、直線状の磁壁Iが形成されたファラデー回転子FR1の分離距離d1より長くする必要がある。分離距離は複屈折板11、13の厚さに比例するため、分離距離を長くするためには複屈折板11の厚さを厚くする必要がある。また、複屈折板11の厚さが厚くなるとビーム径をより大きくする必要があり、これに伴いレンズ51〜54が大型化してしまう。したがって、光スイッチ1の小型化のためには、図4及び図5(a)に示すように磁壁Iを直線状にすることが望ましい。磁壁Iを直線状にするには、十分な大きさの勾配を有する磁界を印加する必要がある。例えば、磁界の勾配を徐々に変化させることにより、磁壁Iがほぼ直線状になる条件を見出すことができる。
本実施の形態の光スイッチ1は半硬質磁石61b、61c及び半硬質磁石62b、62cを有しているが、保持力の比較的高い材料を用いてラッチングタイプのファラデー回転子21、22を作製して予め2磁区構造を形成することにより、半硬質磁石61b、61c及び半硬質磁石62b、62cを用いずに光スイッチ1を構成してもよい。
また、ファラデー回転子21、22の2磁区構造を安定化させるために、特許文献3に記載されているように磁区A、Bの境界部分に切欠きなどを形成してもよい。このように、保持力の高い材料を用いてファラデー回転子21、22を作製して磁区構造を形成することにより、半硬質磁石61b、61c及び半硬質磁石62b、62cを用いないようにすることも可能である。なお、この場合には、コイル61a、62aを貫通して一体となる、半硬質磁石61b、61c及び半硬質磁石62b、62cと同様の形状をした電磁ヨークを設けるようにする。
実際に外部磁界無しで2磁区構造を実現した磁気光学結晶の磁区構造を図6に示す。厚さが0.3mmの磁気光学結晶の磁壁となる部分に、幅0.03mm、深さ0.15mmの溝部を形成した。磁区は溝部にピン止めされるので、溝部を挟んだ2磁区構造が外部磁界無しで実現できる。2磁区構造は、溝部の幅が広い程、深さが深い程、外部から加わる磁界に対して安定になる。しかし、幅が広いと図5で説明した分離距離を長くする必要があり、また深さが深すぎると結晶が割れやすくなるという問題もあるので、適切な溝の条件を決める必要がある。
再び図1に戻り、コイル61aに図1(b)の状態を形成したときと逆方向の電流パルスを供給すると、半硬質磁石61b、61cのギャップ間に、矢印αと逆向きの−Z方向の磁界を生じさせることができる。また、コイル62aに図1(b)の状態を形成したときと逆方向の電流パルスを供給すると、半硬質磁石62b、62cのギャップ間に、矢印βと逆向きの+Z方向の磁界を生じさせることができる。
これにより、ファラデー回転子21、22のほぼ中央から−Y側の領域は、磁界印加機構61により−Z方向の磁界成分が支配的になる。一方、ファラデー回転子21、22のほぼ中央から+Y側の領域は、磁界印加機構62により+Z方向の磁界成分が支配的になる。双方の領域に印加する磁界の強さをファラデー回転子21、22の飽和磁界以上にすることにより、ファラデー回転子21、22のほぼ中央から+Y側の領域に磁区A(+Z方向の磁界が印加されて磁化を一様に一方向にした磁区)が形成され、磁壁Iを挟んでファラデー回転子21、22のほぼ中央から−Y側の領域に磁区B(−Z方向の磁界が印加されて磁化を磁区Aとは逆方向に一様にした磁区)が形成される。
さらに、コイル61a、62aに流す電流パルスを制御することにより、ファラデー回転子21、22のほぼ中央から−Y側の領域を磁区Aから磁区Bにさせることができ、これにより、ファラデー回転子21、22のほぼ全領域を磁区Bにすることができる。同様にして、ファラデー回転子21、22のほぼ中央から+Y側の領域を磁区Bから磁区Aにさせることができ、これにより、ファラデー回転子21、22のほぼ全領域を磁区Aにすることができる。
本実施の形態では、プリズムや複合素子を用いず、5枚の平行平板型の光学素子(2枚のファラデー回転子21、22、及び3枚の複屈折板11、12、13)を用いて透過型光スイッチ1を構成できる。また、ファラデー回転子21、22や複屈折板11、13として、それぞれ同一の結晶から切り出された同一仕様の素子を使用できる。このため、仕様としては3種の光学素子を用いて透過型光スイッチ1を構成できることになる。したがって本実施の形態によれば、光スイッチ1の素子構成が極めて簡素になり小型化及び低価格化が容易になる。
次に、本実施の形態による透過型光スイッチ1の動作について図7乃至図10を用いて説明する。図7乃至図10は、光スイッチ1を構成する各光学素子を通過する光の偏光状態を−Z方向に見た図である。図7乃至図10では、4つある光入射ポートP1、P2、P3、P4のうち、光入射ポートP1、P2(図ではそれぞれ(1)、(2)と示している)から入射した光を例にして示している。図7乃至図10の(a)は、図1に示す複屈折板11の−Z側の光入射面Z1での光の偏光状態を示し、図7乃至図10の(b)は複屈折板11の+Z側の光出射面Z2での光の偏光状態を示している。図7乃至図10の(c)は複屈折板12の−Z側の光入射面Z3での光の偏光状態を示し、図7乃至図10の(d)は複屈折板12の+Z側の光出射面Z4での光の偏光状態を示している。図7乃至図10の(e)は複屈折板13の−Z側の光入射面Z5での光の偏光状態を示し、図7乃至図10の(f)は複屈折板13の+Z側の光出射面Z6での光の偏光状態を示している。なお、図7乃至図10では、理解を容易にするために、複屈折板11、ファラデー回転子21、複屈折板12、ファラデー回転子22、及び複屈折板13を−Z方向に見た状態も模式的に図示している。また、各(a)〜(f)には各光の位置を示すために仮想方眼を示している。また、各光の偏光方位は両矢印で示している。
まず、図1(a)、(b)の実線及び破線による図示と共に、図7(a)〜(f)を用いて、磁界印加機構61、62により、2つのファラデー回転子21、22の−Y側の領域(第1領域及び第3領域)にそれぞれ磁区A(第1の磁区)が形成され、+Y側の領域(第2領域及び第4領域)にそれぞれ磁区B(第2の磁区)が形成されている状態(第1の状態)における光入射ポートP1、P2から入射した光の状態について説明する。
まず、光入射ポートP1から入射した光の状態について説明する。
図7(a)に示すように、光入射ポートP1(1)から入射した光L11は、複屈折板(第1の複屈折板)11に入射する。複屈折板11に入射した光L11は、図7(b)に示すように、常光L12a(第2の光)と異常光L12b(第1の光)とに分離して複屈折板11から出射する。常光成分の光L12aは複屈折板11を直進してファラデー回転子(第1の磁気光学結晶)21の+Y側の領域(第2領域)の磁区Bに入射し、異常光成分の光L12bは複屈折板11で矢印C1方向に軸ずれしてファラデー回転子21の−Y側の領域(第1領域)の磁区Aに入射する。ファラデー回転子21の磁区Aのファラデー回転角は例えば−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°であり、磁区Bのファラデー回転角は例えば−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°である。図7(c)に示すように、光L12aは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°回転した光L13a(第2の光)としてファラデー回転子21から出射し、光L12bは偏光方位が時計回りに45°回転した光L13b(第1の光)としてファラデー回転子21から出射する。これにより、光L13a、L13bの偏光方位は互いにY軸に平行になり、光L13a、L13bの進行方向に平行な直線と複屈折板(第2の複屈折板)12の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面(XZ面)に共に垂直になる。
このため、光L13a、L13bは複屈折板12の一方の表面に入射して共に常光となり、矢印C2方向への軸ずれをせずにそのまま直進して、図7(d)に示すように、複屈折板12の他方の表面から光L14a(第4の光)、L14b(第3の光)として出射する。次に、光L14aはファラデー回転子(第2の磁気光学結晶)22の+Y側の領域(第4領域)の磁区Bに入射し、光L14bはファラデー回転子22の−Y側の領域(第3領域)の磁区Aに入射する。ファラデー回転子22の磁区Aのファラデー回転角は例えば−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°であり、磁区Bのファラデー回転角は例えば−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°である。図7(e)に示すように、光14aは−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°回転した光L15a(第4の光)としてファラデー回転子22から出射し、光L14bは偏光方位が時計回りに45°回転した光L15b(第3の光)としてファラデー回転子22から出射する。光L15aの偏光方位と光L15bの偏光方位は、互いにほぼ直交している。光L15aは偏光方位が複屈折板(第3の複屈折板)13の光学軸に平行なので複屈折板13に入射して異常光となり矢印C3方向に軸ずれする。光L15bは偏光方位が複屈折板13の光学軸に直交するので複屈折板13に入射して常光となり、軸ずれせずにそのまま直進する。図7(f)に示すように、光L15a(第4の光)は軸ずれして光L15b(第3の光)と合波し、光L16として複屈折板13から出射する。光L16は、光出射ポートP11(11)に入射して外部に出射する。光入射ポートP1(1)に入射した光は、偏光に依存せずに全て光出射ポートP11(11)から出射することになる。
次に、第1の状態において光入射ポートP2(2)から入射した光の状態について説明する。光入射ポートP2(2)は、光入射ポートP1(1)に対してXZ面に平行な面内で−X方向に所定ピッチPだけ移動した位置に配置されている。一方、光出射ポートP12(12)は、光出射ポートP11(11)に対してXZ面に平行な面内で−X方向に所定ピッチPだけ移動した位置に配置されている。従って、光入射ポートP2(2)から入射した光L21は、図7(a)〜(f)に示すように、光入射ポートP1(1)から入射した光L11と同様の偏光状態変化及び光路変化を経て、光L26となって光出射ポートP12(12に入射して外部に出射する。光入射ポートP2(2)に入射した光は、偏光に依存せずに全て光出射ポートP12(12)から出射することになる。
このように、本実施の形態による光スイッチ1では、第1の状態において、光入射ポートP1(1)からの入力光は光出射ポートP11(11)から出力し、光入射ポートP2(2)からの入力光は光出射ポートP12(12)から出力するようになっている。同様にして、光入射ポートP3(3)からの入力光は光出射ポートP13(13)から出力する。
次に、磁界印加機構61、62により、2つのファラデー回転子21、22の+Y側の領域にそれぞれ磁区Aが形成され、−Y側の領域にそれぞれ磁区Bが形成されている状態(第2の状態)における光入射ポートP1、P2から入射した光の状態について、図1(a)、(b)の実線及び破線による図示と共に、図8(a)〜(f)を用いて説明する。
まず、光入射ポートP1から入射した光の状態について説明する。
図8(a)に示すように、光入射ポートP1(1)から入射した光L11は、複屈折板11に入射する。複屈折板11に入射した光L11は、図8(b)に示すように、常光L12aと異常光L12bとに分離して複屈折板11から出射する。常光成分の光L12aは複屈折板11を直進してファラデー回転子21の磁区Aに入射し、異常光成分の光L12bは複屈折板11で矢印C1方向に軸ずれしてファラデー回転子21の磁区Bに入射する。図8(c)に示すように、光L12aは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°回転した光L13aとしてファラデー回転子21から出射し、光L12bは偏光方位が反時計回りに45°回転した光L13bとしてファラデー回転子21から出射する。これにより、光L13a、L13bの偏光方位は互いにX軸に平行になり、光L13a、L13bの進行方向に平行な直線と複屈折板12の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面(XZ面)に共に平行になる。
このため、光L13a、L13bは複屈折板12の一方の表面に入射して共に異常光となり、矢印C2方向へ軸ずれして、図8(d)に示すように、複屈折板12の他方の表面から光L14a、L14bとして出射する。次に、光L14aはファラデー回転子22の磁区Aに入射し、光L14bはファラデー回転子22の磁区Bに入射する。図8(e)に示すように、光14aは−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°回転した光L15aとしてファラデー回転子22から出射し、光L14bは偏光方位が反時計回りに45°回転した光L15bとしてファラデー回転子22から出射する。光L15aの偏光方位と光L15bの偏光方位は、互いにほぼ直交している。光L15aは偏光方位が複屈折板13の光学軸に平行なので複屈折板13に入射して異常光となり矢印C3方向に軸ずれする。光L15bは偏光方位が複屈折板13の光学軸に直交するので複屈折板13に入射して常光となり、軸ずれせずにそのまま直進する。図8(f)に示すように、光L15aは軸ずれして光L15bと合波し、光L16として複屈折板13から出射する。光出射ポートP12(12)は、光出射ポートP11(11)に対してXZ面に平行な面内で−X方向に所定ピッチPだけ移動した位置に配置されている。光L16は、光出射ポートP12(12)に入射して外部に出射する。光入射ポートP1(1)に入射した光は、偏光に依存せずに全て光出射ポートP12(12)から出射することになる。
次に、第2の状態において光入射ポートP2(2)から入射した光の状態について説明する。光入射ポートP2(2)は、光入射ポートP1(1)に対してXZ面に平行な面内で−X方向に所定ピッチPだけ移動した位置に配置されている。一方、光出射ポートP13(13)は、光出射ポートP12(12)に対してXZ面に平行な面内で−X方向に所定ピッチPだけ移動した位置に配置されている。従って、光入射ポートP2(2)から入射した光L21は、図8(a)〜(f)に示すように、光入射ポートP1(1)から入射した光L11と同様の偏光状態変化及び光路変化を経て、光L26となって光出射ポートP13(13に入射して外部に出射する。光入射ポートP2(2)に入射した光は、偏光に依存せずに全て光出射ポートP13(13)から出射することになる。
このように、本実施の形態による光スイッチ1では、第2の状態において、光入射ポートP1(1)からの入力光は光出射ポートP12(12)から出力し、光入射ポートP2(2)からの入力光は光出射ポートP13(13)から出力するようになっている。同様にして、光入射ポートP3(3)からの入力光は光出射ポートP14(14)から出力する。
以上説明した本実施の形態による透過型光スイッチ1を第1及び第2の状態で用いることにより、種々の入出力ポートの組合せによる透過型光スイッチを実現できる。例えば、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP11(11)及びP12(12)を用いることにより1×2光スイッチを実現できる。この場合には、第1の状態において、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP11(11)とが光学的に接続され、第2の状態において、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP12(12)に光学的に接続される。
また、光入射ポートP1(1)及びP2(2)と光出射ポートP12(12)を用いることにより2×1光スイッチを実現できる。この場合には、第1の状態において、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP12(12)とが光学的に接続され、第2の状態において、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP12(12)とが光学的に接続される。
また、光出射ポートP14(14)を光入射ポートP1(1)に接続すると共に、光入射ポートP2(2)及び光入射ポートP3(3)と光出射ポートP12(12)及びP13(13)を用いることにより2×2光スイッチを実現できる。この場合には、第1の状態において、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP12(12)とが光学的に接続され、また、光入射ポートP3(3)と光出射ポートP13(13)とが光学的に接続され、第2の状態において、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP13(13)が光学的に接続され、光入射ポートP3(3)は光出射ポートP14(14)及び光入射ポートP1(1)を介して光出射ポートP12(12)とが光学的に接続される。
本実施の形態では、互いに同一の光学特性を有する複屈折板11、13のうち一方を常光として通過した光は他方を異常光として通過し、逆に複屈折板11、13のうち一方を異常光として通過した光は他方を常光として通過する。また、第1のファラデー回転子21を通過した後、第2のファラデー回転子22に入射するまでの間は、分離した2つの光の偏光方位は同一になっている。したがって、本実施の形態による光スイッチ1では、2つの偏光成分の光路長が等しいため、偏波モード分散(PMD;Polarization Mode Dispersion)値がゼロになる。
次に、磁界印加機構61、62により、2つのファラデー回転子21、22の+Y側の領域の磁区を磁区Bから磁区Aに変換して、2つのファラデー回転子21、22の光入出射面のほぼ全面に磁区Aだけが形成されている状態(第3の状態)における光入射ポートP1、P2から入射した光の状態について、図9(a)〜(f)を用いて説明する。
まず、光入射ポートP1から入射した光の状態について説明する。
図9(a)に示すように、光入射ポートP1(1)から入射した光L11は、複屈折板11に入射する。複屈折板11に入射した光L11は、図9(b)に示すように、常光L12aと異常光L12bとに分離して複屈折板11から出射する。常光成分の光L12aは複屈折板11を直進してファラデー回転子21に入射し、異常光成分の光L12bは複屈折板11で矢印C1方向に軸ずれしてファラデー回転子21に入射する。ファラデー回転子21はほぼ全体が磁区Aであり、磁区Aのファラデー回転角は−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°である。従って、図9(c)に示すように、2つの光L12a、L12bは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°回転した光L13a、L13bとしてファラデー回転子21から出射する。これにより、光L13aの偏光方位は、光L13a、L13bの進行方向に平行な直線と複屈折板12の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面(XZ面)に平行になる。一方、光L13bの偏光方位は、XZ面に垂直になる。
このため、光L13aは複屈折板12の一方の表面に入射して異常光となり、矢印C2方向へ軸ずれして、図9(d)に示すように、複屈折板12の他方の表面から光L14aとして出射する。光L13bは複屈折板12の一方の表面に入射して常光となり、矢印C2方向へ軸ずれせずにそのまま直進して、図9(d)に示すように、複屈折板12の他方の表面から光L14bとして出射する。ファラデー回転子22はほぼ全体が磁区Aである。従って、図9(e)に示すように、2つの光L14a、L14bは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°回転した光L15a、L15bとしてファラデー回転子22から出射する。光L15aの偏光方位と光L15bの偏光方位は、互いにほぼ直交している。光L15aは偏光方位が複屈折板13の光学軸に平行なので複屈折板13に入射して異常光となり矢印C3方向に軸ずれする。光L15bは偏光方位が複屈折板13の光学軸に直交するので複屈折板13に入射して常光となり、軸ずれせずにそのまま直進する。図9(f)に示すように、光L15aは軸ずれして光L16aとなって複屈折板13から出射して光出射ポートP12(12)に入射して外部に出射する。また、軸ずれせずに複屈折板13を透過する光L15bは、そのまま光L16bとして光出射ポートP11(11)に入射して外部に出射する。このように、第3の状態での動作によれば、光入射ポートP1(1)に入射した光を、−Z方向に見てZ軸について時計回りにY軸から45°回転した偏光方位を有する光L16bと、同反時計回りに45°回転した偏光方位を有する光L16aとに分離して、光L16bを光出射ポートP11(11)に出力し、光L16aを光出射ポートP12(12)に出力することができる。
次に、第3の状態において光入射ポートP2(2)から入射した光の状態について説明する。光入射ポートP2(2)は、光入射ポートP1(1)に対してXZ面に平行な面内で−X方向に所定ピッチPだけ移動した位置に配置されている。一方、光出射ポートP13(13)は、光出射ポートP12(12)に対してXZ面に平行な面内で−X方向に所定ピッチPだけ移動した位置に配置されている。従って、光入射ポートP2(2)から入射した光L21は、図9(a)〜(f)に示すように、光入射ポートP1(1)から入射した光L11と同様の偏光状態変化及び光路変化を経て、一部は光L26aとなって複屈折板13から出射して光出射ポートP13(13)に入射して外部に出射する。また、残余は光L26bとして光出射ポートP12(12)に入射して外部に出射する。この場合も、光入射ポートP2(2)に入射した光を、−Z方向に見てZ軸について時計回りにY軸から45°回転した偏光方位を有する光L26bと、同反時計回りに45°回転した偏光方位を有する光L26aとに分離して、光L26bを光出射ポートP12(12)に出力し、光L26aを光出射ポートP13(13)に出力することができる。
以上説明した本実施の形態による透過型光スイッチ1を第3の状態で用いることにより、偏光分離機能や偏光合成機能を併せ持つ磁気光学光部品を実現できる。例えば、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP11(11)及びP12(12)を用いることにより上述のような偏光分離機能を実現できる。また、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP12(12)及びP13(13)の組み合わせでも同様の偏光分離機能が得られる。同様にして、光入射ポートP3(3)と光出射ポートP13(13)及びP14(14)の組み合わせでも同様の偏光分離機能が得られる。
また、例えば、光入射ポートP1(1)に入射した光のうち−Z方向に見てZ軸について反時計回りにY軸から45°回転した偏光方位を有する光L16a(第4の光)と、光入射ポートP2(2)に入射した光のうち−Z方向に見てZ軸について時計回りにY軸から45°回転した偏光方位を有する光L26b(第6の光)とを合波して光出射ポートP12(12)に出力する偏光合成機能を実現できる。
次に、磁界印加機構61、62により、2つのファラデー回転子21、22の−Y側の領域の磁区を磁区Aから磁区Bに変換して、2つのファラデー回転子21、22の光入出射面のほぼ全面に磁区Bだけが形成されている状態(第4の状態)における光入射ポートP1、P2から入射した光の状態について、図10(a)〜(f)を用いて説明する。
まず、光入射ポートP1から入射した光の状態について説明する。
図10(a)に示すように、光入射ポートP1(1)から入射した光L11は、複屈折板11に入射する。複屈折板11に入射した光L11は、図10(b)に示すように、常光L12aと異常光L12bとに分離して複屈折板11から出射する。常光成分の光L12aは複屈折板11を直進してファラデー回転子21に入射し、異常光成分の光L12bは複屈折板11で矢印C1方向に軸ずれしてファラデー回転子21に入射する。ファラデー回転子21はほぼ全体が磁区Bであり、磁区Bのファラデー回転角は−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°である。従って、図10(c)に示すように、2つの光L12a、L12bは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°回転した光L13a、L13bとしてファラデー回転子21から出射する。これにより、光L13aの偏光方位は、光L13a、L13bの進行方向に平行な直線と複屈折板12の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面(XZ面)に垂直になる。一方、光L13bの偏光方位は、XZ面に平行になる。
このため、光L13aは複屈折板12の一方の表面に入射して常光となり、軸ずれせずにそのまま直進して、図10(d)に示すように、複屈折板12の他方の表面から光L14aとして出射する。光L13bは複屈折板12の一方の表面に入射して異常光となり、矢印C2方向へ軸ずれして、図10(d)に示すように、複屈折板12の他方の表面から光L14bとして出射する。ファラデー回転子22はほぼ全体が磁区Bである。従って、図10(e)に示すように、2つの光L14a、L14bは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°回転した光L15a、L15bとしてファラデー回転子22から出射する。光L15aの偏光方位と光L15bの偏光方位は、互いにほぼ直交している。光L15aは偏光方位が複屈折板13の光学軸に平行なので複屈折板13に入射して異常光となり矢印C3方向に軸ずれする。光L15bは偏光方位が複屈折板13の光学軸に直交するので複屈折板13に入射して常光となり、軸ずれせずにそのまま直進する。図10(f)に示すように、光L15aは軸ずれして光L16aとなって複屈折板13から出射して光出射ポートP11(11)に入射して外部に出射する。また、軸ずれせずに複屈折板13を透過する光L15bは、そのまま光L16bとして光出射ポートP12(12)に入射して外部に出射する。このように、第4の状態での動作によれば、光入射ポートP1(1)に入射した光を、−Z方向に見てZ軸について反時計回りにY軸から45°回転した偏光方位を有する光L16aと、時計回りに45°回転した偏光方位を有する光L16bとに分離することができ、さらに、光L16aを光出射ポートP11(11)に出力し、光L16bを光出射ポートP12(12)に出力することができる。
次に、第4の状態において光入射ポートP2(2)から入射した光の状態について説明する。光入射ポートP2(2)は、光入射ポートP1(1)に対してXZ面に平行な面内で−X方向に所定ピッチPだけ移動した位置に配置されている。一方、光出射ポートP13(13)は、光出射ポートP12(12)に対してXZ面に平行な面内で−X方向に所定ピッチPだけ移動した位置に配置されている。従って、光入射ポートP2(2)から入射した光L21は、図10(a)〜(f)に示すように、光入射ポートP1(1)から入射した光L11と同様の偏光状態変化及び光路変化を経て、一部は光L26aとなって複屈折板13から出射して光出射ポートP12(12)に入射して外部に出射する。また、残余は光L26bとして光出射ポートP13(13)に入射して外部に出射する。この場合も、光入射ポートP2(2)に入射した光を、−Z方向に見てZ軸について反時計回りにY軸から45°回転した偏光方位を有する光L26aと、同時計回りに45°回転した偏光方位を有する光L26bとに分離することができ、さらに、光L26aを光出射ポートP12(12)に出力し、光L26bを光出射ポートP13(13)に出力することができる。
以上説明した本実施の形態による透過型光スイッチ1を第4の状態で用いることにより、偏光分離機能や偏光合成機能を併せ持つ磁気光学光部品を実現できる。例えば、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP11(11)及びP12(12)を用いることにより上述のような偏光分離機能を実現できる。また、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP12(12)及びP13(13)の組み合わせでも同様の偏光分離機能が得られる。同様にして、光入射ポートP3(3)と光出射ポートP13(13)及びP14(14)の組み合わせでも同様の偏光分離機能が得られる。
また、例えば、光入射ポートP1(1)に入射した光のうち−Z方向に見てZ軸について時計回りにY軸から45°回転した偏光方位を有する光L16b(第3の光)と、光入射ポートP2(2)に入射した光のうち−Z方向に見てZ軸について反時計回りにY軸から45°回転した偏光方位を有する光L26a(第6の光)とを合波して光出射ポートP12(12)に出力する偏光合成機能を実現できる。
次に、図11及び図12を用いて、磁界印加機構の変形例について説明する。図11に示す磁界印加機構63は、ファラデー回転子21、22の−Y方向に配置され、磁界印加機構64は+Y方向に配置されている。磁界印加機構63は、コイル63aと、コイルを貫通して一体となる電磁ヨーク70a、70bと、半硬質磁石63b、63cとを有している。電磁ヨーク70a、70bの他端には半硬質磁石63b、63cの一端がそれぞれ接続されている。半硬質磁石63b、63cの他端で形成されるギャップ間にファラデー回転子21、22の−Y側が挟まれるように位置している。同様に、磁界印加機構64は、コイル64aと、コイルを貫通して一体となる電磁ヨーク71a、71bと、半硬質磁石64b、64cとを有している。電磁ヨーク71a、71bの他端には半硬質磁石64b、64cの一端がそれぞれ接続されている。半硬質磁石64b、64cの他端で形成されるギャップ間にファラデー回転子21、22の+Y側が挟まれるように位置している。本変形例による磁界印加機構63、64の構成によっても図1(b)に示した磁界印加機構61、62と同様の動作及び効果を得ることができる。
図12に示す磁界印加機構65は、コイル65aと、電磁ヨーク72a、72b、72cと、半硬質磁石65b、65c、65d、65eとを有している。コイルを貫通して一体となる電磁ヨーク72a、72bの他端には半硬質磁石65b、65eの一端がそれぞれ接続されている。半硬質磁石65b、65eの他端側には、半硬質磁石65c、65dが対向して配置されている。半硬質磁石65cと65dは、電磁ヨーク72cで接続されている。
半硬質磁石65d、65eで形成されるギャップ間にファラデー回転子21、22の−Y側が挟まれるように位置している。半硬質磁石65b、65cで形成されるギャップ間にファラデー回転子21、22の+Y側が挟まれるように位置している。本変形例による磁界印加機構65の構成は、ファラデー回転子21、22を全体として磁区A又は磁区Bにすることはできない。従って、上記第3及び第4の状態を実現できないため偏光分離/合成機能は得られないが、光スイッチ機能としての構成を簡素化して低コストで磁界印加機構を実現できる。
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態による磁気光学光部品について図13乃至図17を用いて説明する。図13は、本実施の形態による磁気光学光部品として反射型光スイッチ10の構成を模式的に示している。図13では、光の進行方向にZ軸をとり、外部からの光が反射型光スイッチ10の備える2面反射体(反射部)32に向かう方向を+Z方向としている。また、Z軸に直交する面内で互いに直交する2方向にX軸及びY軸をとっている。図13(a)は反射型光スイッチ10を−Y方向に見た構成を示し、図13(b)は反射型光スイッチ10を−X方向に見た構成を示している。
図13(a)、(b)に示すように、反射型光スイッチ10は、例えば7本の光ファイバ41、42、43、45、46、47、48に接続されている。光ファイバ41、42、43は、XZ面に平行な面内で+X方向に所定ピッチPでこの順に隣り合って配置されている。各光ファイバ41、42、43の−Z側の端部は、それぞれ外部から光が入射する光入射ポートP1、P2、P3(図ではそれぞれ(1)、(2)、(3)と示している)になっている。また、光ファイバ45、46、47、48は、XZ面に平行な面内で−X方向に向かって所定ピッチPでこの順に隣り合って配置されている。入力側の光ファイバ41に対し出力側の光ファイバ45は、所定ピッチ数分だけ−X方向及び−Y方向にずれて位置している。光ファイバ45、46、47、48の−Z側の端部は、光出射ポートP11、P12、P13、P14(図ではそれぞれ(11)、(12)、(13)、(14)と示している)になっている。光ファイバ41〜43の+Z方向には、光ファイバ41〜43から出射した発散光を平行光に変換するレンズ51〜53がそれぞれ配置されている。光ファイバ45〜48の+Z方向には、光ファイバ45〜48に入射する平行光を集束光に変換するレンズ55〜58がそれぞれ配置されている。反射型光スイッチ10やそれを収容する装置を小型化するためには、レンズ51〜53、及びレンズ55〜58の小型化が重要になる。本実施の形態においても、図2(a)、(b)に示す小型化が可能なレンズが用いられている。
レンズ51〜53の+Z方向には複屈折板14が配置され、レンズ55〜58の+Z方向には複屈折板16が配置されている。2つの複屈折板14、16はXY面に平行に隣接配置されて、Z軸に垂直な光入出射面を有している。
複屈折板14の光学軸OA14(不図示)の向き及び異常光の軸ずれの方向は、図3に示した複屈折板BPのそれらと同じである。また、複屈折板16の光学軸OA16(不図示)の向き及び異常光の軸ずれの方向は、複屈折板14をZ軸回りに180°回転した状態に等しい。
複屈折板14、16の+Z方向には、ファラデー回転子21が配置されている。ファラデー回転子21の−Y方向には、第1の実施の形態の図1に示しているのと同様の磁界印加機構61が配置され、+Y方向には磁界印加機構62が配置されている。また、磁界印加機構61、62に代えて、第1の実施の形態で説明した図11及び図12に示す磁界印加機構を用いることももちろん可能である。
図13(b)は、コイル62aに所定の電流パルスを供給して、半硬質磁石62b、62cのギャップ間に、矢印αで示すように向きが+Z方向の磁界を生じさせた状態を示している。また、コイル61aに所定の電流パルスを供給して、半硬質磁石61b、61cのギャップ間に、矢印βで示すように向きが−Z方向の磁界を生じさせた状態を示している。
ファラデー回転子21のほぼ中央から+Y側の領域に印加される磁界は、半硬質磁石62b、62cによる+Z方向の磁界成分が支配的になる。一方、ファラデー回転子21のほぼ中央から−Y側の領域に印加される磁界は、半硬質磁石61b、61cによる−Z方向の磁界成分が支配的になる。双方の領域に印加する磁界の強さをファラデー回転子21の飽和磁界以上にすることにより、+Z方向の磁界が印加されている領域には磁化を一様に一方向にした磁区Aが形成され、−Z方向の磁界が印加されている領域には磁化を磁区Aとは逆方向に一様にした磁区Bが形成される。磁区Aと磁区Bとの間には、XZ面にほぼ平行な境界面の磁壁Iが形成されている。本例での磁区Aのファラデー回転角は、例えば−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°であり、磁区Bのファラデー回転角は、同様にして反時計回りに45°である。ファラデー回転子21は非相反性を有しているので、ファラデー回転子21の光入出射面のいずれから光が入射しても上記回転角の条件は保たれる。
コイル61aに図13(b)の状態を形成したときと逆方向の電流パルスを供給すると、半硬質磁石61b、61cのギャップ間に、矢印βと逆向きの+Z方向の磁界を生じさせることができる。また、コイル62aに図13(b)の状態を形成したときと逆方向の電流パルスを供給すると、半硬質磁石62b、62cのギャップ間に、矢印αと逆向きの−Z方向の磁界を生じさせることができる。
これにより、ファラデー回転子21のほぼ中央から−Y側の領域は、半硬質磁石61b、61cによる+Z方向の磁界成分が支配的になる。一方、ファラデー回転子21のほぼ中央から+Y側の領域は、半硬質磁石62b、62cによる−Z方向の磁界成分が支配的になる。双方の領域に印加する磁界の強さをファラデー回転子21の飽和磁界以上にすることにより、ファラデー回転子21のほぼ中央から−Y側の領域に磁区Aが形成され、磁壁Iを挟んでファラデー回転子21のほぼ中央から+Y側の領域に磁区Bが形成される。
さらに、コイル61a、62aに流す電流パルスを制御することにより、ファラデー回転子21のほぼ中央から−Y側の領域を磁区Bから磁区Aにさせることができ、これにより、ファラデー回転子21のほぼ全領域を磁区Aにすることができる。同様にして、ファラデー回転子21のほぼ中央から+Y側の領域を磁区Aから磁区Bにさせることができ、これにより、ファラデー回転子21のほぼ全領域を磁区Bにすることができる。
ファラデー回転子21の+Z方向には、複屈折板15が配置されている。複屈折板15は例えば複屈折板11、12と同一の結晶を用いて作製されている。複屈折板15の光学軸OA15(不図示)は、図13に示す座標系を用いて示すと、−Z方向に見てZ軸について反時計回りにY軸から45°回転した方向に向いている。光学軸OA15とXZ平面とのなす角度は、−X方向に見てX軸について時計回りに約45°になっている。また、異常光は常光に対して−X方向及び−Y方向の双方に軸ずれするようになっている。
複屈折板15の+Z側には、例えば直角プリズム等の2面反射体32が配置されている。2面反射体32は、2面反射により光路を変更する機能を有する。2面反射体32は、図13に示すような直角プリズム以外に、2枚の反射鏡を組み合わせた構造でもよい。
本実施の形態では、4枚の光学素子(3枚の複屈折板14、15、16、及び1枚のファラデー回転子21)を用いて反射型光スイッチ10を構成できる。したがって本実施の形態によれば、反射型光スイッチ10の素子構成が単純になり小型化及び低価格化が容易になる。
次に、本実施の形態による反射型光スイッチ10の動作について図14乃至図17を用いて説明する。図14乃至図17は、反射型光スイッチ10を構成する各光学素子を通過する光の偏光状態を−Z方向に見た図である。図14乃至図17では、3つある光入射ポートP1、P2、P3のうち、光入射ポートP1(図では(1)と示している)から入射した光を例示している。図14乃至図17の(a)は、図13に示すように、複屈折板14、16の−Z側の光入出射面Z1での光の偏光状態を示している。図14乃至図17の(b)は、複屈折板14、16の+Z側の光入出射面Z2での光の偏光状態を示している。図14乃至図17の(c)は、複屈折板15の−Z側の光入出射面Z3での光の偏光状態を示している。図14乃至図17の(d)は、複屈折板15の+Z側の光入出射面Z4での光の偏光状態を示している。
図14乃至図17では、理解を容易にするために、複屈折板14、16、ファラデー回転子21、及び複屈折板15を−Z方向に見た状態と、2面反射体32を−Y方向に見た状態とを併せて模式的に図示している。また、各(a)〜(d)には各光の位置を示すために仮想方眼を示している。また、各光の偏光方位は両矢印で示している。
まず、図14を用いて、磁界印加機構61、62により、ファラデー回転子21の+Y側の領域(第1領域)に磁区A(第1の磁区)が形成され、−Y側の領域(第2領域)に磁区B(第2の磁区)が形成されている状態(第1の状態)における光入射ポートP1から入射した光の状態について説明する。図14は、図1(a)の実線及び破線で示す光線のように、光入射ポートP1(1)から入射して光出射ポートP11(11)から外部に出射する光を示している。図14(a)の左側に示すように、光入射ポートP1から入射した光L1は、複屈折板(第1の複屈折板)14に入射して、図14(b)の左側に示すように、常光L2a(第1の光)と矢印C1方向へ軸ずれした異常光L2b(第2の光)とに分離し、複屈折板14から出射する。次いで、常光成分の光L2aはファラデー回転子21の磁区Aに入射し、異常光成分の光L2bはファラデー回転子21の磁区Bに入射する。図14(c)の左側に示すように、光L2aは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°回転した光L3a(第1の光)としてファラデー回転子21から出射し、光L2bは偏光方位が反時計回りに45°回転した光L3b(第2の光)としてファラデー回転子21から出射する。これにより、光L3a、L3bの偏光方位は、光L3a、L3bの進行方向に平行な直線と複屈折板(第2の複屈折板)15の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面に平行になる。次いで、図14(d)の左側に示すように、光L3a、L3bは複屈折板15の一方の表面に入射して異常光となって、それぞれ矢印C2方向へ軸ずれして複屈折板15の他方の表面から光L4a(第3の光)、L4b(第4の光)として出射する。光L4a、L4bは2面反射体32で反射して、図14(d)の右側に示すように、それぞれ光路が変更された光L5a(第3の光)、L5b(第4の光)として複屈折板15の他方の表面に入射する。
図14(c)の右側に示すように、光L5a、L5bはそれぞれ矢印C2と逆方向へ軸ずれして複屈折板15の一方の表面から光L6a(第3の光)、L6b(第4の光)として出射する。光L6aはファラデー回転子21の磁区Aに入射し、光L6bは磁区Bに入射する。図14(b)の右側に示すように、光L6aは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°回転した光L7a(第3の光)としてファラデー回転子21から出射し、光L6bは偏光方位が反時計回りに45°回転した光L7b(第4の光)としてファラデー回転子21から出射する。光L7aは複屈折板(第3の複屈折板)16に入射して異常光となり、光L7bは複屈折板12に入射して常光となる。図14(a)の右側に示すように、光L7aは矢印C3の逆方向へ軸ずれして光L7bと合波し、光L8として複屈折板16から出射する。光L8は、光出射ポートP11(11)に入射して外部に出射する。光入射ポートP1(1)に入射した光は、偏光に依存せずに全て光出射ポートP11(11)から出射することになる。
このように、本実施の形態による反射型光スイッチ10では、第1の状態において、光入射ポートP1(1)からの入力光は光出射ポートP11(11)から出力し、光入射ポートP2(2)からの入力光は光出射ポートP12(12)から出力するようになっている。同様にして、光入射ポートP3(3)からの入力光は光出射ポートP13(13)から出力する。
次に、磁界印加機構61、62により、ファラデー回転子21の+Y側の領域に磁区Bが形成され、−Y側の領域に磁区Aが形成されている状態(第2の状態)における光入射ポートP1から入射した光の状態について図15(a)〜(d)を用いて説明する。図15は、光入射ポートP1(1)から入射して光出射ポートP12(12)から外部に出射する光を示している。図15(a)の左側に示すように、光入射ポートP1から入射した光L1は、複屈折板14に入射して、図15(b)の左側に示すように、常光L2aと矢印C1方向へ軸ずれした異常光L2bとに分離し、複屈折板14から出射する。次いで、常光成分の光L2aはファラデー回転子21の磁区Bに入射し、異常光成分の光L2bはファラデー回転子21の磁区Aに入射する。図15(c)の左側に示すように、光L2aは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°回転した光L3aとしてファラデー回転子21から出射し、光L2bは偏光方位が時計回りに45°回転した光L3bとしてファラデー回転子21から出射する。これにより、光L3a、L3bの偏光方位は、光L3a、L3bの進行方向に平行な直線と複屈折板15の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面に垂直になる。次いで、図15(d)の左側に示すように、光L3a、L3bは複屈折板15の一方の表面に入射して常光となって、軸ずれせずに直進して複屈折板15の他方の表面から光L4a、L4bとして出射する。光L4a、L4bは2面反射体32で反射して、図15(d)の右側に示すように、それぞれ光路が変更された光L5a、L5bとして複屈折板15の他方の表面に入射する。
図15(c)の右側に示すように、光L5a、L5bは軸ずれせずに直進して複屈折板15の一方の表面から光L6a、L6bとして出射する。光L6aはファラデー回転子21の磁区Bに入射し、光L6bは磁区Aに入射する。図15(b)の右側に示すように、光L6aは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°回転した光L7aとしてファラデー回転子21から出射し、光L6bは偏光方位が時計回りに45°回転した光L7bとしてファラデー回転子21から出射する。光L7aは複屈折板16に入射して異常光となり、光L7bは複屈折板12に入射して常光となる。図15(a)の右側に示すように、光L7aは矢印C3の逆方向へ軸ずれして光L7bと合波し、光L8として複屈折板16から出射する。光L8は、光出射ポートP12(12)に入射して外部に出射する。光入射ポートP1(1)に入射した光は、偏光に依存せずに全て光出射ポートP12(12)から出射することになる。
このように、本実施の形態による反射型光スイッチ10では、第2の状態において、光入射ポートP1(1)からの入力光は光出射ポートP12(12)から出力し、光入射ポートP2(2)からの入力光は光出射ポートP13(13)から出力するようになっている。同様にして、光入射ポートP3(3)からの入力光は光出射ポートP14(14)から出力する。
以上説明した本実施の形態による反射型光スイッチ10を第1及び第2の状態で用いることにより、種々の入出力ポートの組合せによる反射型光スイッチを実現できる。例えば、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP11(11)及びP12(12)を用いることにより1×2光スイッチを実現できる。この場合には、第1の状態において、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP11(11)とが光学的に接続され、第2の状態において、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP12(12)とが光学的に接続される。
また、光入射ポートP1(1)及びP2(2)と光出射ポートP12(12)を用いることにより2×1光スイッチを実現できる。この場合には、第1の状態において、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP12(12)とが光学的に接続され、第2の状態において、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP12(12)とが光学的に接続される。
また、光出射ポートP14(14)を光入射ポートP1(1)に接続すると共に、光入射ポートP2(2)及び光入射ポートP3(3)と光出射ポートP12(12)及びP13(13)を用いることにより2×2光スイッチを実現できる。この場合には、第1の状態において、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP12(12)とが光学的に接続され、また、光入射ポートP3(3)と光出射ポートP13(13)とが光学的に接続され、第2の状態において、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP13(13)が光学的に接続され、光入射ポートP3(3)は光出射ポートP14(14)及び光入射ポートP1(1)を介して光出射ポートP12(12)とが光学的に接続される。
本実施の形態では、互いに同一の光学特性を有する複屈折板14、16のうち一方を常光として通過した光は他方を異常光として通過し、逆に複屈折板14、16のうち一方を異常光として通過した光は他方を常光として通過する。また、ファラデー回転子21を通過した後、再びファラデー回転子21に入射するまでの間は、分離した2つの光の偏光方位は同一になっている。したがって、本実施の形態による透過型光スイッチ10では、2つの偏光成分の光路長が等しいため、PMD値がゼロになる。
次に、磁界印加機構61、62により、ファラデー回転子21の−Y側の領域の磁区を磁区Bから磁区Aに変換して、ファラデー回転子21の光入出射面のほぼ全面に磁区Aだけが形成されている状態(第3の状態)における光入射ポートP1から入射した光の状態について、図16(a)〜(d)を用いて説明する。
図16(a)の左側に示すように、光入射ポートP1(1)から入射した光L1は、複屈折板14に入射して、図16(b)の左側に示すように、常光L2aと矢印C1方向へ軸ずれした異常光L2bとに分離し、複屈折板14から出射してファラデー回転子21に入射する。ファラデー回転子21はほぼ全体が磁区Aであり、磁区Aのファラデー回転角は−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°である。従って、図16(c)の左側に示すように、2つの光L2a、L2bは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°回転した光L3a、L3bとしてファラデー回転子21から出射する。これにより、光L3aの偏光方位は、光L3a、L3bの進行方向に平行な直線と複屈折板15の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面に平行になる。一方、光L3bの偏光方位は、光L3a、L3bの進行方向に平行な直線と複屈折板15の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面に垂直になる。このため、図16(d)の左側に示すように、光L3aは複屈折板15の一方の表面に入射して異常光となり、矢印C2方向へ軸ずれして、図16(d)に示すように、複屈折板15の他方の表面から光L14aとして出射する。光L13bは複屈折板15の一方の表面に入射して常光となり、矢印C2方向へ軸ずれせずにそのまま直進して、図16(d)に示すように、複屈折板15の他方の表面から光L14bとして出射する。光L4a、L4bは2面反射体32で反射して、図16(d)の右側に示すように、それぞれ光路が変更された光L5a、L5bとして複屈折板15の他方の表面に入射する。
図16(c)の右側に示すように、光L5aは複屈折板15の他方の表面に入射して異常光となり、矢印C2の逆方向へ軸ずれして、図16(d)に示すように、複屈折板15の一方の表面から光L6aとして出射する。光L5bは複屈折板15の他方の表面に入射して常光となり、矢印C2方向へ軸ずれせずにそのまま直進して、図16(d)に示すように、複屈折板15の一方の表面から光L6bとして出射する。光L6a、6bはファラデー回転子21の磁区Aに入射する。図16(b)の右側に示すように、光L6a、L6bは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°回転した光L7a、L7bとしてファラデー回転子21から出射する。光L7aは複屈折板16に入射して異常光となり、光L7bは複屈折板12に入射して常光となる。図16(a)の右側に示すように、光L7aは矢印C3の逆方向へ軸ずれして複屈折板16から出射して光L8aとして、光出射ポートP11(11)に入射して外部に出射する。
また、軸ずれせずに複屈折板16を透過する光L7bは、そのまま光L8bとして光出射ポートP12(12)に入射して外部に出射する。このように、第3の状態での動作によれば、光入射ポートP1(1)に入射した光を、Y軸に平行な偏光方位を有する光L8aと、それと直交するX軸に平行な偏光方位を有する光L8bとに分離して、光L8aを光出射ポートP11(11)に出力し、光L8bを光出射ポートP12(12)に出力することができる。
以上説明した本実施の形態による反射型光スイッチ10を第3の状態で用いることにより、偏光分離機能や偏光合成機能を併せ持つ磁気光学光部品を実現できる。例えば、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP11(11)及びP12(12)を用いることにより上述のような偏光分離機能を実現できる。また、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP12(12)及びP13(13)の組み合わせでも同様の偏光分離機能が得られる。同様にして、光入射ポートP3(3)と光出射ポートP13(13)及びP14(14)の組み合わせでも同様の偏光分離機能が得られる。
また、例えば、光入射ポートP1(1)に入射した光のうちX軸に平行な偏光方位を有する光L8bと、光入射ポートP2(2)に入射した光のうちY軸に平行な偏光方位を有する光とを合波して光出射ポートP12(12)に出力する偏光合成機能を実現できる。
次に、磁界印加機構61、62により、ファラデー回転子21の+Y側の領域の磁区を磁区Aから磁区Bに変換して、ファラデー回転子21の光入出射面のほぼ全面に磁区Bだけが形成されている状態(第4の状態)における光入射ポートP1から入射した光の状態について、図17(a)〜(d)を用いて説明する。
図17(a)の左側に示すように、光入射ポートP1(1)から入射した光L1は、複屈折板14に入射して、図17(b)の左側に示すように、常光L2aと矢印C1方向へ軸ずれした異常光L2bとに分離し、複屈折板14から出射してファラデー回転子21に入射する。ファラデー回転子21はほぼ全体が磁区Bであり、磁区Bのファラデー回転角は−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°である。従って、図17(c)の左側に示すように、2つの光L2a、L2bは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°回転した光L3a、L3bとしてファラデー回転子21から出射する。これにより、光L3aの偏光方位は、光L3a、L3bの進行方向に平行な直線と複屈折板15の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面に垂直になる。一方、光L3bの偏光方位は、光L3a、L3bの進行方向に平行な直線と複屈折板15の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面に平行になる。このため、図17(d)の左側に示すように、光L3aは複屈折板15の一方の表面に入射して常光となり、軸ずれせずに直進して、図17(d)に示すように、複屈折板15の他方の表面から光L14aとして出射する。光L13bは複屈折板15の一方の表面に入射して異常光となり、矢印C2方向へ軸ずれして、図17(d)に示すように、複屈折板15の他方の表面から光L14bとして出射する。光L4a、L4bは2面反射体32で反射して、図17(d)の右側に示すように、それぞれ光路が変更された光L5a、L5bとして複屈折板15の他方の表面に入射する。
図17(c)の右側に示すように、光L5aは複屈折板15の他方の表面に入射して常光となり、軸ずれせずに直進して、図17(d)に示すように、複屈折板15の一方の表面から光L6aとして出射する。光L5bは複屈折板15の他方の表面に入射して異常光となり、矢印C2方向へ軸ずれして、図17(d)に示すように、複屈折板15の一方の表面から光L6bとして出射する。光L6a、6bはファラデー回転子21の磁区Bに入射する。図17(b)の右側に示すように、光L6a、L6bは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°回転した光L7a、L7bとしてファラデー回転子21から出射する。光L7aは複屈折板16に入射して異常光となり、光L7bは複屈折板12に入射して常光となる。図17(a)の右側に示すように、光L7aは矢印C3の逆方向へ軸ずれして複屈折板16から出射して光L8aとして、光出射ポートP12(12)に入射して外部に出射する。
また、軸ずれせずに複屈折板16を透過する光L7bは、そのまま光L8bとして光出射ポートP11(11)に入射して外部に出射する。このように、第4の状態での動作によれば、光入射ポートP1(1)に入射した光を、Y軸に平行な偏光方位を有する光L8bと、それと直交するX軸に平行な偏光方位を有する光L8aとに分離して、光L8aを光出射ポートP12(12)に出力し、光L8bを光出射ポートP11(11)に出力することができる。
以上説明した本実施の形態による反射型光スイッチ10を第4の状態で用いることにより、偏光分離機能や偏光合成機能を併せ持つ磁気光学光部品を実現できる。例えば、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP11(11)及びP12(12)を用いることにより上述のような偏光分離機能を実現できる。また、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP12(12)及びP13(13)の組み合わせでも同様の偏光分離機能が得られる。同様にして、光入射ポートP3(3)と光出射ポートP13(13)及びP14(14)の組み合わせでも同様の偏光分離機能が得られる。
また、例えば、光入射ポートP1(1)に入射した光のうちX軸に平行な偏光方位を有する光L8bと、光入射ポートP2(2)に入射した光のうちY軸に平行な偏光方位を有する光とを合波して光出射ポートP12(12)に出力する偏光合成機能を実現できる。
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態による反射型光スイッチ10’について図18乃至図20を用いて説明する。図18は、本実施の形態による反射型光スイッチ10’の構成を模式的に示している。図18では図13と同様に座標系をとっている。図18(a)は反射型光スイッチ10’を−Y方向に見た構成を示し、図18(b)は反射型光スイッチ10’を−X方向に見た構成を示している。図18(a)、(b)に示すように、本実施の形態による反射型光スイッチ10’は、例えば6本の光ファイバ41、42、43、45、46、47に接続されている。光ファイバ41、42、43は、XZ面に平行な面内で+X方向に所定ピッチPでこの順に隣り合って配置されている。各光ファイバ41、42、43の−Z側の端部は、それぞれ外部から光が入射する光入射ポートP1、P2、P3(図ではそれぞれ(1)、(2)、(3)と示している)になっている。また、光ファイバ45、46、47は、XZ面に平行な面内で−X方向に向かって所定ピッチPでこの順に隣り合って配置されている。入力側の光ファイバ41に対し出力側の光ファイバ45は、所定ピッチ数分だけ−X方向にずれて位置している。光ファイバ45、46、47の−Z側の端部は、光出射ポートP11、P12、P13(図ではそれぞれ(11)、(12)、(13)と示している)になっている。光ファイバ41〜43の+Z方向には、光ファイバ41〜43から出射した発散光を平行光に変換するレンズ51〜53がそれぞれ配置されている。光ファイバ45〜47の+Z方向には、光ファイバ45〜47に入射する平行光を集束光に変換するレンズ55〜57がそれぞれ配置されている。反射型光スイッチ10’やそれを収容する装置を小型化するためには、レンズ51〜53、及びレンズ55〜57の小型化が重要になる。本実施の形態においても、図2(a)、(b)に示す小型化が可能なレンズが用いられている。
レンズ51〜53、55〜57の+Z方向には複屈折板17が配置されている。複屈折板17はZ軸に垂直な光入出射面を有している。複屈折板17の光学軸OA17(不図示)は、図18に示す座標系を用いて示すと、−Z方向に見てZ軸について反時計回りにY軸から45°回転した方向に向いている。光学軸OA17とXZ平面とのなす角度は、−X方向に見てX軸について時計回りに約45°になっている。また、異常光は常光に対して−X方向及び−Y方向の双方に軸ずれするようになっている。
複屈折板17の+Z方向であって光出射ポートP11、P12、P13に対応する位置には、光の偏光方位を90°回転させるように1/2波長板20が配置されている。1/2波長板20の+Z方向には、ファラデー回転子21が配置されている。ファラデー回転子21の−Y方向には、第1の実施の形態の図1に示しているのと同様の磁界印加機構61が配置され、+Y方向には磁界印加機構62が配置されている。また、磁界印加機構61、62に代えて、第1の実施の形態で説明した図11及び図12に示す磁界印加機構を用いることももちろん可能である。なお、図18では、磁界印加機構61及び磁界印加機構62の詳細構成は省略して示している。
本実施形態では、図18(b)中の矢印αで示すように、磁界印加機構61により、半硬質磁石61b、61cのギャップ間の磁界の向きは+Z方向である。また、図18(b)中の矢印βで示すように、磁界印加機構62により、半硬質磁石62b、62cのギャップ間の磁界の向きは−Z方向である。ファラデー回転子21のほぼ中央から−Y側の領域に印加される磁界は、半硬質磁石61b、61cによる+Z方向の磁界成分が支配的になる。一方、ファラデー回転子21のほぼ中央から+Y側の領域に印加される磁界は、半硬質磁石62b、62cによる−Z方向の磁界成分が支配的になる。双方の領域に印加する磁界の強さをファラデー回転子21の飽和磁界以上にすることにより、+Z方向の磁界が印加されている領域には磁化を一様に一方向にした磁区Aが形成され、−Z方向の磁界が印加されている領域には磁化を磁区Aとは逆方向に一様にした磁区Bが形成される。磁区Aと磁区Bとの間には、XZ面にほぼ平行な境界面の磁壁Iが形成されている。本例での磁区Aのファラデー回転角は、例えば−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°であり、磁区Bのファラデー回転角は、同様にして反時計回りに45°である。ファラデー回転子21は非相反性を有しているので、ファラデー回転子21の光入出射面のいずれから光が入射しても上記回転角の条件は保たれる。
コイル61aに図18(b)の状態を形成したときと逆方向の電流パルスを供給すると、半硬質磁石61b、61cのギャップ間に、矢印αと逆向きの−Z方向の磁界を生じさせることができる。また、コイル62aに図18(b)の状態を形成したときと逆方向の電流パルスを供給すると、半硬質磁石62b、62cのギャップ間に、矢印βと逆向きの+Z方向の磁界を生じさせることができる。
これにより、ファラデー回転子21のほぼ中央から−Y側の領域は、半硬質磁石61b、61cによる−Z方向の磁界成分が支配的になる。一方、ファラデー回転子21のほぼ中央から+Y側の領域は、半硬質磁石62b、62cによる+Z方向の磁界成分が支配的になる。双方の領域に印加する磁界の強さをファラデー回転子21の飽和磁界以上にすることにより、ファラデー回転子21のほぼ中央から+Y側の領域に磁区Aが形成され、磁壁Iを挟んでファラデー回転子21のほぼ中央から−Y側の領域に磁区Bが形成される。
ファラデー回転子21の+Z方向には、複屈折板18が配置されている。複屈折板18は例えば複屈折板17と同一の結晶を用いて作製されている。複屈折板18の光学軸OA18(不図示)は、図18に示す座標系を用いて示すと、XZ面に平行である。複屈折板18に+Z方向に入射した光の異常光は、+X方向に軸ずれするようになっている。
複屈折板18の+Z方向には、反射部としてレンズ34及び反射鏡36が配置されている。レンズ34には、屈折率分布型のロッドレンズ、球レンズ、非球面レンズなどが用いられる。反射鏡36は、ガラス板に全反射膜を形成して作製され、レンズ34の+Z方向に配置されている。反射鏡36は、平行光がレンズ34に入射した場合の焦点を含み、平行光の進行方向に垂直な面内に配置される。これにより、ある光路上を通る平行光がレンズ34及び反射鏡36に入射すると、反射光の光路は、上記の焦点を含み平行光の進行方向に平行な直線に対して対称な位置に変換される。反射鏡36に代えて、レンズ34に直接全反射膜を形成してもよい。
本実施の形態では、4枚の光学素子(2枚の複屈折板17、18、1枚の1/2波長板20、及び1枚のファラデー回転子21)を用いて反射型光スイッチ10’を構成できる。したがって本実施の形態によれば、反射型光スイッチ10’の素子構成が単純になり小型化及び低価格化が容易になる。
また、本実施の形態では6つの光入出射ポートP1〜P3、P11〜P13(光ファイバ41〜43、45〜47)を一列に配置できるため、組立てが容易になるという利点がある。
次に、本実施の形態による反射型光スイッチ10’の動作について説明する。図19乃至図22は、反射型光スイッチ10’を構成する各光学素子を通過する光の偏光状態を−Z方向に見た図である。図19乃至図22では、3つある光入射ポートP1、P2、P3のうち、光入射ポートP1(図では(1)と示している)から入射した光を例示している。図19乃至図22の(a)は、図18に示す複屈折板17の−Z側の光入出射面Z1での光の偏光状態を示している。図19乃至図22の(b)は、複屈折板17の+Z側の光入出射面Z2での光の偏光状態を示している。図19乃至図22の(c)は、複屈折板18の−Z側の光入出射面Z3での光の偏光状態を示している。図19乃至図22の(d)は、複屈折板18の+Z側の光入出射面Z4での光の偏光状態を示している。図19乃至図22では、理解を容易にするために、複屈折板17、1/2波長板20、ファラデー回転子21、複屈折板18、及び反射部(レンズ34及び反射鏡36)を−Z方向に見た状態を併せて模式的に図示している。また、各(a)〜(d)には各光の位置を示すために仮想方眼を示している。また、各光の偏光方位は両矢印で示している。
まず、図19を用いて、磁界印加機構61、62により、ファラデー回転子21の+Y側の領域(第2領域)に磁区B(第2の磁区)が形成され、−Y側の領域(第1領域)に磁区A(第1の磁区)が形成されている状態(第1の状態)における光入射ポートP1から入射した光の状態について説明する。図19は、図18(a)の実線で示す光線のように、光入射ポートP1(1)から入射して光出射ポートP11(11)から外部に出射する光を示している。図19(a)の左側に示すように、光入射ポートP1から入射した光L1は、複屈折板(第1の複屈折板)17に入射して、図19(b)の左側に示すように、常光L2aと矢印C1方向へ軸ずれした異常光L2bとに分離し、複屈折板17から出射する。次いで、常光成分の光L2a(第2の光)はファラデー回転子21の磁区Bに入射し、異常光成分の光L2b(第1の光)はファラデー回転子21の磁区Aに入射する。図19(c)の左側に示すように、光L2aは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°回転した光L3aとしてファラデー回転子21から出射し、光L2bは偏光方位が時計回りに45°回転した光L3bとしてファラデー回転子21から出射する。これにより、光L3a、L3bの偏光方位は、光L3a、L3bの進行方向に平行な直線と複屈折板(第2の複屈折板)18の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面に垂直になる。従って、光L3a、L3bは複屈折板18の一方の表面に入射して常光となり、図19(d)の左側に示すように、軸ずれせずに複屈折板18の他方の表面から光L4a(第4の光)、L4b(第3の光)として出射する。光L4a、L4bはレンズ34を通過して反射鏡36で反射し、図19(d)の右側に示すように光路が変換された光L5a(第4の光)、L5b(第3の光)として複屈折板18の他方の表面に入射する。
光L5a、L5bは、複屈折板18の他方の表面に入射して常光となり、図19(c)の右側に示すように、軸ずれせずに複屈折板18の一方の表面から光L6a(第4の光)、L6b(第3の光)として出射する。光L6aはファラデー回転子21の磁区Aに入射し、光L6bは磁区Bに入射する。光L6aは、偏光方位が−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°回転した光としてファラデー回転子21から出射し、さらに1/2波長板20に入射して、図19(b)の右側に示すように偏光方位がZ軸について90°回転した光L7a(第4の光)として出射する。光L6bは、偏光方位が反時計回りに45°回転した光としてファラデー回転子21から出射し、さらに1/2波長板20に入射して、偏光方位がZ軸について90°回転した光L7b(第3の光)として出射する。光L7aは複屈折板(第3の複屈折板)17に入射して異常光となり、光L7bは複屈折板17に入射して常光となる。図19(a)の右側に示すように、光L7aは矢印C1と逆方向に軸ずれして光L7bと合波し、光L8として複屈折板17から出射する。光L8は、光出射ポートP11(11)に入射して外部に出射する。光入射ポートP1(1)に入射した光は、偏光に依存せずに全て光出射ポートP11(11)から出射することになる。
このように、本実施の形態による反射型光スイッチ10’では、第1の状態において、光入射ポートP1(1)からの入力光は光出射ポートP11(11)から出力し、光入射ポートP2(2)からの入力光は光出射ポートP12(12)から出力するようになっている。同様にして、光入射ポートP3(3)からの入力光は光出射ポートP13(13)から出力する。
次に、図20を用いて、磁界印加機構61、62により、ファラデー回転子21の+Y側の領域に磁区Aが形成され、−Y側の領域に磁区Bが形成されている状態(第2の状態)における光入射ポートP1から入射した光の状態について説明する。図20は、図18(a)の破線で示す光線のように、光入射ポートP1(1)から入射して光出射ポートP12(12)から外部に出射する光を示している。図20(a)の左側に示すように、光入射ポートP1から入射した光L1は、複屈折板17に入射して、図20(b)の左側に示すように、常光L2aと矢印C1方向へ軸ずれした異常光L2bとに分離し、複屈折板17から出射する。次いで、常光成分の光L2aはファラデー回転子21の磁区Aに入射し、異常光成分の光L2bはファラデー回転子21の磁区Bに入射する。図20(c)の左側に示すように、光L2aは偏光方位が−Z方向に見てZ軸について時計回りに45°回転した光L3aとしてファラデー回転子21から出射し、光L2bは偏光方位が反時計回りに45°回転した光L3bとしてファラデー回転子21から出射する。これにより、光L3a、L3bの偏光方位は、光L3a、L3bの進行方向に平行な直線と複屈折板18の光学軸に平行な直線とが交差して形成される平面に平行になる。従って、光L3a、L3bは複屈折板18の一方の表面に入射して異常光となり、図20(d)の左側に示すように、矢印C2方向に軸ずれして複屈折板18の他方の表面から光L4a、L4bとして出射する。光L4a、L4bはレンズ34を通過して反射鏡36で反射し、図20(d)の右側に示すように光路が変換された光L5a、L5bとして複屈折板18の他方の表面に入射する。
光L5a、L5bは、複屈折板18の他方の表面に入射して異常光となり、図20(c)の右側に示すように、矢印C2と逆方向に軸ずれして複屈折板18の一方の表面から光L6a、L6bとして出射する。光L6aはファラデー回転子21の磁区Bに入射し、光L6bは磁区Aに入射する。光L6aは、偏光方位が−Z方向に見てZ軸について反時計回りに45°回転した光としてファラデー回転子21から出射し、さらに1/2波長板20に入射して、図20(b)の右側に示すように偏光方位がZ軸について90°回転した光L7aとして出射する。光L6bは、偏光方位が時計回りに45°回転した光としてファラデー回転子21から出射し、さらに1/2波長板20に入射して、偏光方位がZ軸について90°回転した光L7bとして出射する。光L7aは複屈折板(第3の複屈折板)17に入射して異常光となり、光L7bは複屈折板17に入射して常光となる。図20(a)の右側に示すように、光L7aは矢印C1と逆方向に軸ずれして光L7bと合波し、光L8として複屈折板17から出射する。光L8は、光出射ポートP12(12)に入射して外部に出射する。光入射ポートP1(1)に入射した光は、偏光に依存せずに全て光出射ポートP12(12)から出射することになる。
このように、本実施の形態による反射型光スイッチ10’では、第2の状態において、光入射ポートP1(1)からの入力光は光出射ポートP12(12)から出力し、光入射ポートP2(2)からの入力光は光出射ポートP13(13)から出力するようになっている。
以上説明した本実施の形態による反射型光スイッチ10’を第1及び第2の状態で用いることにより、種々の入出力ポートの組合せによる反射型光スイッチを実現できる。例えば、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP11(11)及びP12(12)を用いることにより1×2光スイッチを実現できる。この場合には、第1の状態において、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP11(11)とが光学的に接続され、第2の状態において、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP12(12)とが光学的に接続される。
また、光入射ポートP1(1)及びP2(2)と光出射ポートP12(12)を用いることにより2×1光スイッチを実現できる。この場合には、第1の状態において、光入射ポートP2(2)と光出射ポートP12(12)とが光学的に接続され、第2の状態において、光入射ポートP1(1)と光出射ポートP12(12)とが光学的に接続される。
本実施の形態では、レンズ34及び反射鏡36による光路変換によって、ファラデー回転子21の磁区A及び磁区Bのうち一方を通過した入射光は、反射鏡36で反射して反射光として戻るときに他方を通過する。両ファラデー回転子21のファラデー回転角は大きさが同じで符号が互いに異なるので、光の偏光方位は結局元に戻ることになる。複屈折板17とファラデー回転子21との間の入射光路上又は反射光路上のいずれかには1/2波長板20が配置されているため、複屈折板17から出射する光L2a(又は光L2b)の偏光方位と複屈折板17に入射する光L7a(又は光L7b)の偏光方位とはそれぞれ互いに直交する。したがって、複屈折板17を常光として通過した光は、反射鏡36で反射して戻るときに異常光として通過し、逆に複屈折板17を異常光として通過した光は、反射鏡36で反射して戻るときに常光として通過する。また、ファラデー回転子21を通過した後、反射鏡36で反射してファラデー回転子21に再度入射するまでの間は、分離した2つの光の偏光方位は同一になっている。したがって、本実施の形態による反射型光スイッチ10’によれば、PMD値をゼロにすることができる。なお1/2波長板20は、複屈折板17とファラデー回転子21との間ではなくファラデー回転子21と複屈折板18との間に配置してもよい。また1/2波長板20は、図18(a)に示すように、光出射ポートP11〜P13側に配置されているが、光入射ポートP1〜P3側に配置してもよい。
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記第1の実施の形態では光入射ポート及び光出射ポートをそれぞれ4つ設け、上記第2の実施の形態では光入射ポートが3つで光出射ポートが4つ設けており、上記第3の実施の形態では光入射ポート及び光出射ポートをそれぞれ3つ設けているが、本発明はこれらに限らず、光入射ポート及び光出射ポートの本数や組み合わせは用途に応じて種々選択することが可能である。
また、上記各実施の形態の説明では各光学素子に光を垂直入射させているが、各境界面からの反射光が元に戻るのを防止するため、実際には光学素子の光入射面が入射光に対して斜めになるように配置するのが望ましい。また、各複屈折板の軸ずれ量は互いに独立に設定可能である。