JP2005147941A - 機械部品の製造方法、機械部品、およびこの機械部品を備えた時計 - Google Patents

機械部品の製造方法、機械部品、およびこの機械部品を備えた時計 Download PDF

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Abstract

【課題】 製造の迅速化を図れるとともに、耐磨耗性および耐衝撃性の向上を促進して長期信頼性を確保できかつ、円滑な駆動が可能となる機械部品の製造方法、機械部品、およびこの機械部品を備えた時計を提供する。
【解決手段】時計1を構成する切換部10の機械部品としてのかんぬき12は、おしどり11の回動に応じて該おしどり11と衝突および摺接する衝突摺接面12Bを有する。この衝突摺接面12Bには、脆性材料微粒子を不活性ガス雰囲気中に分散し、不活性ガスをキャリアガスとして脆性材料微粒子が衝突固着された衝突摺接層12Cが形成されている。脆性材料微粒子は、所定の平均粒径寸法を有し、少なくとも酸化ジルコニウムを含む脆性材料からなる第1粒径微粒子と、この第1粒径微粒子よりも大きい平均粒径寸法を有する第2粒径微粒子とが混合されたものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、機械部品の製造方法、機械部品、およびこの機械部品を備えた時計に関する。
従来、機械部品の耐久性を向上させることで、機械部品の耐衝撃性の向上を図るいくつかの方法が提案、実用化されている。
例えば、機械部品の形状を変更して該機械部品の強度を向上させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この方法は、機械部品における衝撃が加わる部位の厚みを増加させるものである。
また、例えば、機械部品自体の硬度を高くしかつ、表面を硬度の高い被膜で被覆することで、機械部品の耐久性を向上させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
この方法は、機械部品の母材を焼き入れ・焼き戻しを行う炭素鋼で形成するとともに、衝突摺接面を無電解Ni-Pメッキの被膜で被覆し、さらに被覆した状態で熱処理するものである。
さらに、例えば、機械部品の表面に脆性材料からなる微粒子を衝突固着することで、該表面の耐久性を向上させる方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
この方法は、酸化アルミニウムの脆性材料微粒子(平均粒径寸法:0.5μm)がガス中に分散されているエアロゾルを、高速で機械部品の母材に衝突させる。そして、この衝突により、脆性材料微粒子の1次粒子が破砕した微細断片粒子を生成し、該微細断片粒子の母材への接着あるいは微細断片粒子同士の接合により母材の摺接面に緻密質の脆性材料からなる摺接層を形成するものである。
特開2001−108765号公報 特開2002−266078号公報 特開2002−348677号公報
しかしながら、特許文献1ないし特許文献3のいずれの方法も、直接的に機械部品の耐衝撃性を向上させるものではなく、機械部品の耐衝撃性の向上を耐久性を上げることで代用しているため、機械部品の耐衝撃性を完全に向上させているとは言えない。
また、特許文献1に記載の方法では、機械部品表面の硬度を向上させているわけではないので、機械部品における耐磨耗性の向上を図れない。したがって、機械部品の長期信頼性を確保することが困難である。また、機械部品における衝撃が加わる部位全体の設計変更を実施することは容易ではない。
さらに、特許文献2に記載の方法では、摺接面に無電解Ni-Pメッキの被膜で被覆するウェット処理による煩雑な処理工程を実施する必要があり、機械部品の製造の迅速化が図れない。
さらにまた、特許文献3に記載の方法では、脆性材料微粒子の平均粒径寸法が比較的小さいため、摺接層の表面粗さが小さくなり、摺接面の摩擦係数を大きくしてしまう。このため、例えば、精密でかつ、低い駆動力で駆動する精密機器の構成部品として前記機械部品を採用した場合には、当該精密機器を円滑に駆動させることが困難となる。
本発明の目的は、製造の迅速化を図れるとともに、耐磨耗性および耐衝撃性の向上を促進して長期信頼性を確保できかつ、円滑な駆動が可能となる機械部品の製造方法、機械部品、およびこの機械部品を備えた時計を提供することにある。
本発明の機械部品の製造方法は、他の部材と衝突および摺接する衝突摺接面を有する機械部品を製造するために、前記衝突摺接面に脆性材料からなる微粒子を衝突固着させる機械部品の製造方法であって、前記脆性材料微粒子は、所定の平均粒径寸法を有する第1粒径微粒子と、前記第1粒径微粒子よりも大きい平均粒径寸法を有する第2粒径微粒子とが混合されたものであり、前記第1粒径微粒子は、少なくとも酸化ジルコニウムを含む脆性材料から構成され、前記脆性材料微粒子を不活性ガス雰囲気中に分散し、前記不活性ガスをキャリアガスとして前記脆性材料微粒子を前記機械部品の衝突摺接面に衝突固着させることを特徴とする。
本発明では、脆性材料微粒子は第1粒径微粒子と第2粒径微粒子とが混合されたものであり、第2粒径微粒子は第1粒径微粒子の平均粒径寸法よりも大きい平均粒径寸法を有する。このような脆性材料微粒子を不活性ガス雰囲気中に分散し、不活性ガスをキャリアガスとして脆性材料微粒子を機械部品の衝突摺接面に衝突固着させる場合には、脆性材料微粒子のうち、第2粒径微粒子の一部は、衝突摺接面上で相互に固着することなく、局部的に堆積しやすい。このように局部的に堆積した一部の第2粒径微粒子は、衝突摺接層から剥離されやすい。このため、衝突摺接面上には、少なくとも酸化ジルコニウムを含む第1粒径微粒子が主に固着した緻密質の固着領域内に第2粒径微粒子の一部が剥離された複数の没入部がランダムに配置した衝突摺接層が形成されることとなる。このことにより、少なくとも酸化ジルコニウムを含む固着領域の形成により機械部品における摺接面の十分な耐衝撃性を得ることができるとともに、前記没入部の形成により衝突摺接面と該衝突摺接面に接触する他部材との接触面積を低減して機械部品の摩擦係数の低減を図れる。したがって、機械部品の耐衝撃性および耐磨耗性の向上を促進して機械部品の長期信頼性を確保できるとともに、精密機器の構成部品として本発明の機械部品を採用すれば、当該精密機器の円滑な駆動が可能となる。
また、脆性材料微粒子を衝突摺接面に衝突固着させて衝突摺接層を形成するので、従来の衝突摺接面にメッキ等の被膜で被覆するウェット処理等の煩雑な処理工程を実施することなく、機械部品を迅速に製造できる。
本発明の機械部品の製造方法では、前記第1粒径微粒子は、前記酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムおよび/または炭化ケイ素とが混合された脆性材料から構成されていることが好ましい。
本発明によれば、第1粒径微粒子を酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムおよび/または炭化ケイ素とが混合された脆性材料から構成することで、衝撃が加わる部位である、主に第1粒径微粒子が衝突固着することにより形成される衝突摺接層の固着領域を強固なものにすることができ、衝突摺接面の十分な耐衝撃性を得ることができる。
また、第1粒径微粒子を酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムおよび/または炭化ケイ素とが混合された脆性材料から構成することで、材料の入手が容易にできるとともに、材料の安全性も高い。また、材料のコストが低いことにより、機械部品の製造コストも低減できる。
本発明の機械部品の製造方法では、前記第1粒径微粒子は、前記酸化ジルコニウムが10重量%以上含有していることが好ましい。
ところで、第1粒径微粒子において、酸化ジルコニウムが10重量%未満で含有している場合には、酸化ジルコニウムの含有量が少ないため、主に第1粒径微粒子が固着した固着領域による衝突摺接面の十分な耐衝撃性を得ることが難しい。
本発明によれば、第1粒径微粒子において、酸化ジルコニウムの含有量を上記範囲内とすることで、衝突摺接層による衝突摺接面の十分な耐衝撃性を得ることができる。
本発明の機械部品の製造方法では、前記脆性材料微粒子は、前記第1粒径微粒子が50重量%以上含有し、前記第2粒径微粒子が50重量%以下含有することが好ましい。
ところで、脆性材料微粒子において、第1粒径微粒子が50重量%未満含有し、第2粒径微粒子が50重量%超含有するように混合した場合には、主に第1粒径微粒子が衝突固着することにより形成される衝突摺接層の固着領域内に、第2粒径微粒子の一部が剥離することによる複数の没入部が必要以上に多く配置形成されてしまう。このため、衝突摺接層による衝突摺接面の十分な耐衝撃性を得ることが難しい。
本発明によれば、上記含有量で第1粒径微粒子および第2粒径微粒子を混合させることで、衝突摺接層の固着領域内に複数の没入部を適切な密度でランダムに配置形成することができる。したがって、衝突摺接層における固着領域により衝突摺接面の十分な耐衝撃性を得ることができるとともに、適切な密度で配置形成される複数の没入部により衝突摺接面に接触する他部材との接触面積を低減でき、機械部品の耐磨耗性の向上を促進できる。
本発明の機械部品の製造方法では、前記第1粒径微粒子は、0.2μm以上1.0μm未満の平均粒径寸法を有し、前記第2粒径微粒子は、1.0μm以上5.0μm以下の平均粒径寸法を有していることが好ましい。
ところで、第1粒径微粒子が0.2μm未満の平均粒径寸法を有する場合には、衝突摺接層の固着領域表面の摩擦係数が大きくなりやすい。また、第1粒径微粒子が1.0μm以上の平均粒径寸法を有する場合には、第2粒径微粒子の一部と同様に、第1粒径微粒子の一部が衝突摺接面上に局部的に堆積しやすくなる。このため、衝突摺接層に複数の没入部が配置形成される密度が大きくなり、衝突摺接層による衝突摺接面の十分な耐衝撃性を得ることが難しい。
また、第2粒径微粒子が1.0μm未満の平均粒径寸法を有する場合には、第1粒径微粒子と同様に、衝突摺接面上に衝突固着しやすくなり、衝突摺接層に複数の没入部が配置形成される密度が小さくなり、衝突摺接面に接触する他部材との接触面積の低減を図り難い。第2粒径微粒子が5.0μmを超える平均粒径寸法を有する場合には、該第2粒径微粒子の一部が剥離されることによる複数の没入部の寸法が大きくなってしまい、衝突摺接層による衝突摺接面の十分な耐衝撃性を得ることが難しい。
本発明によれば、第1粒径微粒子および第2粒径微粒子がそれぞれ上記範囲内の平均粒径寸法を有する構成とすることで、上述した問題点を回避でき、機械部品の耐衝撃性および耐磨耗性の向上を促進できる。
本発明の機械部品は、上述した機械部品の製造方法により製造されたことを特徴とする。
本発明によれば、機械部品は、上述した機械部品の製造方法により製造されるので、上述した機械部品の製造方法と同様の作用・効果を享受できる。
本発明の機械部品は、他の部材と衝突および摺接する衝突摺接面を有する機械部品であって、前記衝突摺接面には、少なくとも酸化ジルコニウムを含む脆性材料からなる多数の微粒子が衝突固着されて衝突摺接層が形成され、前記衝突摺接層には、前記多数の微粒子の一部が剥離されることで複数の没入部が形成されていることが好ましい。
ここで、複数の微粒子の一部が剥離されることで複数の没入部が形成されるとは、例えば、上記機械部品の製造方法と同様に、脆性材料微粒子を、平均粒径寸法の異なる2つの第1粒径微粒子および第2粒径微粒子を混合させた構成とし、第2粒径微粒子の一部を剥離することにより複数の没入部を形成する方法等を採用できる。また、この方法に限らず、例えば、脆性材料微粒子を衝突摺接面に衝突固着させて衝突摺接層を形成した後、該衝突摺接層表面を研磨等により複数の没入部を形成してもよい。
本発明によれば、衝突摺接層における少なくとも酸化ジルコニウムを含む脆性材料微粒子の固着領域、および複数の微粒子の一部が剥離されることによる複数の没入部により、上記機械部品の製造方法と同様の作用・効果を享受できる。
本発明の機械部品では、前記没入部は、0.1μm以上5.0μm以下の深さ寸法を有していることが好ましい。
ところで、衝突摺接層に形成される没入部の深さ寸法が0.1μm未満である場合には、例えば、衝突摺接層の表面に潤滑油を塗布した際、衝突摺接層による潤滑油の保持機能の向上を図り難い。また、没入部の深さ寸法が5.0μmを超える場合には、没入部の寸法が大きくなってしまい、衝突摺接層による衝突摺接面の十分な耐衝撃性を得ることが難しい。
本発明によれば、没入部が上記範囲内の深さ寸法を有しているので、上述した問題点を回避できる。また、没入部が上記範囲内の深さ寸法を有しているので、例えば、粘性の異なる種々の潤滑油に対応して該潤滑油の保持機能の向上を図れる。
本発明の機械部品では、前記衝突摺接層の表面には、潤滑油が塗布されていることが好ましい。
本発明によれば、衝突摺接層の表面に潤滑油が塗布されているので、衝突摺接層に形成される複数の没入部により、衝突摺接層における潤滑油の保持機能が向上する。したがって、このように衝突摺接層の表面に潤滑油を塗布した構成では、機械部品の耐磨耗性をさらに向上させるとともに、潤滑油の保持機能の向上により機械部品の長期信頼性をさらに確保できる。
本発明の時計は、上述した機械部品を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、時計は、上述した機械部品を備えているので、上述した機械部品と同様の作用・効果を享受できる。
また、機械部品の衝突摺接面に形成される衝突摺接層は、潤滑油の保持機能を有しているので、衝突摺接層に潤滑油を塗布した場合には、機械部品の円滑な駆動が長期的に可能になり、メンテナンスフリーの時計を提供できる。
上述のように、本発明の機械部品の製造方法、機械部品、およびこの機械部品を備えた時計によれば、機械部品の製造の迅速化を図れるとともに、機械部品の耐磨耗性および耐衝撃性の向上を促進して長期信頼性を確保できかつ、円滑な駆動が可能となる。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態における時計1の切換部10の要部を模式的に示す平面図である。
切換部10は、一端に竜頭が取り付けられる巻真を操作することで、例えば、時計1の時刻修正、日、曜日等のカレンダ修正を実施する部分である。この切換部10は、図1に示すように、おしどり11と、かんぬき12とを含んで構成される。
おしどり11は、図1に示すように、回動軸11Aを中心に回動自在に軸支されるとともに、一端11Bが図示しない巻真に係合され、他端11Cがかんぬき12に当接する。
かんぬき12は、ばね性を有する部材から構成され、図示しない回動軸を中心に回動自在に軸支され、おしどり11の回動に連動して前記回動軸を中心に回動する。このかんぬき12には、図1に示すように、おしどり11の回動位置を規制する回動規制部12Aが形成されている。
そして、前記巻真を時計1の外部に向けて引き出すことで、おしどり11が回動軸11Aを中心として時計回りに回動する。おしどり11が回動することで、おしどり11の他端11Cがかんぬき12を図1中、下方向に押圧しながら、かんぬき12の外周面に沿って摺動する。おしどり11がさらに回動すると、おしどり11の他端11Cがかんぬき12の回動規制部12Aに衝突し、おしどり11の回動位置、すなわち、前記巻真の引き出し位置が規制される。この状態で、時計機能の修正が実施可能となる。
すなわち、かんぬき12が本発明に係る機械部品に相当し、かんぬき12におけるおしどり11の他端11Cと衝突および摺接する部位が衝突摺接面12Bとなる。
なお、かんぬき12の材料としては、ばね性を有する部材であればよく、例えば、MX−96(商品名)を採用できる。また、おしどり11の材料としては、例えば、炭素鋼に焼入れを施したものを採用できる。
このような切換部10では、おしどり11の図1中、矢印R1方向の動作によるかんぬき12に与えられる衝撃および摺動摩擦により、かんぬき12の衝突摺接面12Bが磨耗しやすい。このため、本実施形態では、以下に示すように、製造装置によりかんぬき12の衝突摺接面12Bに脆性材料からなる衝突摺接層12Cを形成する。
衝突摺接層12Cを形成するための製造装置は、具体的な図示は省略するが、真空ポンプにより内部が所定の圧力とされる成膜室と、脆性材料からなる微粒子をエアロゾル化するエアロゾル化室とを備える。
前記成膜室内には、時計1を構成するかんぬき12を固定するためのホルダと、かんぬき12の衝突摺接面12Bに対応する位置に開口を有するマスクとが設置されている。
前記エアロゾル化室では、不活性ガスが内部に充填されるとともに、脆性材料からなる微粒子を不活性ガス雰囲気中に分散させることで、前記微粒子がエアロゾル化される。このエアロゾル化室は、該室内で精製されたエアロゾルが前記成膜室内に搬送可能とするように前記成膜室と搬送管にて接続される。そして、前記搬送管の先端は、前記マスクを介して前記ホルダに設置されるかんぬき12の衝突摺接面12Bに対向配置され、例えば5mm×1mmの開口を有するノズル状に形成されている。
本実施形態では、前記エアロゾル化室にてエアロゾル化する脆性材料微粒子として、所定の平均粒径寸法を有する第1粒径微粒子と、この第1粒径微粒子よりも平均粒径寸法の大きい平均粒径寸法を有する第2粒径微粒子とが混合されたものを採用する。
また、第1粒径微粒子の材料としては、少なくとも酸化ジルコニウムを含んだ脆性材料を採用する。
ここで、第1粒径微粒子を構成する脆性材料としては、酸化ジルコニウムが10重量%以上含有していることが好ましい。酸化ジルコニウムの含有量は前記範囲内において、かんぬき12の衝突摺接面12Bへのおしどり11の他端11Cの衝撃度および摺動摩擦の度合いに応じて変化させればよい。
また、第1粒径微粒子の平均粒径寸法が0.2μm以上1.0μm未満の範囲内にあり、第2粒径微粒子の平均粒径寸法が1.0μm以上5.0μm以下の範囲内にあることが好ましい。
さらに、第1粒径微粒子が50重量%以上で含有され、第2粒径微粒子が50重量%以下で含有されていることが好ましく、第1粒径微粒子が90重量%以上で含有され、第2粒径微粒子が10重量%以下で含有されていることがより好ましい。
なお、第1粒径微粒子の材料としては、酸化ジルコニウムと、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化クロム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の酸化ジルコニウムを除く酸化物、炭化ケイ素、炭化硼素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化クロム、炭化タングステン等の炭化物、窒化硼素、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ニオブ等の窒化物、あるいは、硼化アルミニウム、硼化ケイ素、硼化チタン、硼化ジルコニウム、硼化クロム等の硼化物とを混合させた脆性材料を採用できる。
また、第2粒径微粒子の材料としては、酸化ジルコニウムと、上述した酸化物、炭化物、窒化物、あるいは硼化物とを混合した脆性材料を採用してもよく、酸化ジルコニウム、上述した酸化物、炭化物、窒化物、あるいは硼化物等の脆性材料を単体で用いてもよい。
さらに、前記エアロゾル化室に充填される不活性ガスとしては、N,He,Ne,またはAr等が例示できる。
次に、上述した製造装置による衝突摺接層12Cの形成方法(以下では、ジェットモールディング法と記載する)を説明する。
先ず、衝突摺接層を形成する対象部品となる時計1のかんぬき12を前記ホルダに設置する。また、前記エアロゾル化室内に不活性ガスを充填させ、第1粒径微粒子および第2粒径微粒子と不活性ガスとが適当な比率で混合されたエアロゾルを生成させる。さらに、前記真空ポンプにより前記成膜室内を所定の圧力で真空状態とし、前記成膜室および前記エアロゾル化室に差圧を生じさせる。
このように差圧が生じることにより、前記エアロゾル化室内にて生成したエアロゾルが前記搬送管を通して加速され、前記ノズルからエアロゾルが音速前後の速度で噴霧される。噴霧されたエアロゾルは、前記マスクを介してかんぬき12の衝突摺接面12Bにのみ衝突固着され、衝突摺接面12Bに衝突摺接層12Cが形成される。
なお、この衝突摺接層12Cの厚み寸法は、0.1μm以上であればよいが、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。
図2は、形成された衝突摺接層12Cの表面状態を示す模式図である。具体的に、図2(A)は、衝突摺接層12Cの断面構造を示す図であり、図2(B)は、衝突摺接層12Cの一部を上方から見た図である。
上述したジェットモールディング法により形成された衝突摺接層12Cの表面は、図2に示すように、所定の平均表面粗さを有する領域内に、複数の没入部12Dがランダムに形成されている。本実施形態では、衝突摺接層12Cの表面に形成される複数の没入部12Dは、0.1μm以上5.0μm以下の範囲内の深さ寸法を有している。このように衝突摺接層12Cの表面に複数の没入部12Dが形成されるのは、第2粒径微粒子の平均粒径寸法が第1粒径微粒子よりも大きいため、第2粒径微粒子の一部が衝突摺接面12B上で相互に固着せずに衝突摺接面12B上に局部的に堆積する。そして、前記ノズルから噴霧される第1粒径微粒子および第2粒径微粒子が局部的に堆積した一部の第2粒径微粒子に衝突した際に剥離され、該剥離された部分が没入部12Dとなったものである。また、没入部12D以外の領域は、主に第1粒径微粒子が衝突摺接面12B上で相互に固着した緻密質の固着領域である。
上述したようにかんぬき12の衝突摺接面12Bに衝突摺接層12Cを形成した後、衝突摺接層12Cの表面に、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を適量塗布する(図2(A)中、2点鎖線で示す)。そして、この状態のかんぬき12を切換部10に設置する。
〔第1実施形態の効果〕
上述した第1実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)衝突摺接層12Cにおける少なくとも酸化ジルコニウムを含む固着領域によりかんぬき12の衝突摺接面12Bの十分な耐衝撃性を得ることができるとともに、衝突摺接層12Cにおける複数の没入部12Dにより衝突摺接面12Bとおしどり11の他端11Cとの接触面積を低減して衝突摺接面12Bの摩擦係数の低減を図れる。したがって、かんぬき12における衝突摺接面12Bの耐衝撃性および耐磨耗性が向上し、衝突摺接面12Bに衝撃疲労および磨耗により磨耗粉が生じにくくなるため該磨耗粉が例えば輪列等の他の部位に転位することがなく、時計1の長期信頼性を確保できる。また、竜頭の操作による巻真の切換操作を円滑に実施でき、ユーザに巻真の良好な操作感を与えることができる。
(2)衝突摺接層12Cをジェットモールディング法により形成するので、従来のように衝突摺接面にメッキ等の被膜で被覆するウェット処理等の煩雑な処理工程を実施することなく、かんぬき12を迅速に製造できる。
(3)衝突摺接層12Cには、複数の没入部12Dが形成されることにより、衝突摺接層12Cにおける時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」の保持機能が向上し、おしどり11の高速移動によるかんぬき12の衝突摺接面12Bへの衝突衝撃にも前記潤滑油が衝突摺接層12Cから飛散することを回避できる。これにより、必要以上の前記潤滑油を衝突摺接層12Cに塗布することもなく、他の部位に飛散して流れ出ることも回避できる。また、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を衝突摺接層12Cの表面に塗布することで、かんぬき12における衝突摺接面12Bの耐磨耗性をさらに向上させるとともに、竜頭の操作による巻真のより円滑な切換操作が長期的に可能になり、メンテナンスフリーの時計1とすることができる。したがって、切換部10の不具合により部品交換やメンテナンスをすることがなく、ユーザや時計店またはメーカー側に余計な負担を負わせることがない。
(4)脆性材料微粒子を構成する第1粒径微粒子の材料として、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムおよび/または炭化ケイ素とが混合された脆性材料から構成すれば、おしどり11の他端11Cにより衝撃が加わる部位である、主に第1粒径微粒子が衝突固着することにより形成される衝突摺接層12Cの固着領域を強固なものにすることができ、衝突摺接面12Bの十分な耐衝撃性を得ることができる。
(5)また、第1粒径微粒子の材料として、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムおよび/または炭化ケイ素とが混合された脆性材料から構成すれば、材料の入手が容易にできるとともに、材料の安全性も高い。また、材料のコストが低いことにより、かんぬき12の製造コストも低減できる。
(6)第1粒径微粒子において、酸化ジルコニウムの含有量を10重量%以上とすれば、衝突摺接層12Cによる衝突摺接面12Bの十分な耐衝撃性を得ることができる。
(7)脆性材料微粒子を、第1粒径微粒子が50重量%以上含有し、第2粒径微粒子が50重量%以下含有する構成とすれば、衝突摺接層12Cの固着領域内に複数の没入部12Dを適切な密度でランダムに配置形成することができる。したがって、衝突摺接層12Cにおける固着領域によりかんぬき12における衝突摺接面12Bの十分な耐衝撃性を得ることができるとともに、適切な密度で配置形成される複数の没入部12Dにより衝突摺接面12Bとおしどり11の他端11Cとの接触面積を低減でき、衝突摺接面12Bの耐磨耗性を向上できる。
(8)第1粒径微粒子の平均粒径寸法が0.2μm以上1.0μm未満の範囲内にあり、第2粒径微粒子の平均粒径寸法が1.0μm以上5.0μm以下の範囲内にある構成とすれば、衝突摺接層12Cの固着領域表面の摩擦係数を大きくすることがなく、また、固着領域と没入部12Dとの形成密度、および没入部12Dの寸法を適切にでき、衝突摺接層12Cによるかんぬき12の衝突摺接面12Bの耐衝撃性および耐磨耗性を向上できる。
(9)複数の没入部12Dは、0.1μm以上5.0μm以下の範囲内の深さ寸法を有しているので、該没入部12Dを適切な寸法として衝突摺接層12Cによるかんぬき12の衝突摺接面12Bの十分な耐衝撃性を得ることができるとともに、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」の保持機能を確実に向上できる。また、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」に限らず、粘性や温度特性などの性質の異なる種々の時計専用潤滑油に対応して該時計専用潤滑油の保持機能を確実に向上できる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の説明では、前記第1実施形態と同様の構造および同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
前記第1実施形態では、脆性材料からなる衝突摺接層12Cを、時計1の切換部10を構成するかんぬき12に形成している。
これに対して第2実施形態では、脆性材料からなる衝突摺接層を、時計2の切換部20を構成するかんぬき押さえ22の一部に形成する。
図3は、第2実施形態における時計2の切換部20の要部を模式的に示す平面図である。
切換部20は、第1実施形態で説明した切換部10と同様に、時計2の時刻修正、日、曜日等のカレンダ修正を実施する部分であり、図3に示すように、おしどり21と、図示しないかんぬきと、かんぬき押さえ22とを含んで構成される。
おしどり21は、図3に示すように、回動軸21Aを中心に回動自在に軸支され、図示しない巻真の操作により一端21Bが連動し、他端21Cが図示しないかんぬきを回動させる。また、このおしどり21には、かんぬき押さえ22と当接するおしどりピン21Dを備える。
かんぬき押さえ22は、ばね性を有する部材から構成され、おしどり21の回動位置、すなわち、前記巻真の位置を0,1,2の3段階に規制する回動規制部22A,22B,22Cを有している。
そして、前記巻真の位置が0の状態から、前記巻真を時計2の外部に向けて引き出すことで、おしどり21が回動軸21Aを中心として時計回りに回動する。おしどり21が回動することで、おしどり21のおしどりピン21Dがかんぬき押さえ22を図3中、下方向に押圧しながら回動規制部22Aの外周面に沿って摺動する。おしどりピン21Dが回動規制部22Aを越えると、おしどりピン21Dは、かんぬき押さえ22の外周面に沿って高速摺動して回動規制部22Bに衝突し、おしどり21の回動位置、すなわち、前記巻真の位置が1に変更される。この状態で、例えば、時計2のカレンダ修正が実施可能となる。
また、前記巻真の位置が1の状態から、前記巻真を時計2の外部に向けてさらに引き出すことで、おしどり21がさらに回動し、おしどりピン21Dがかんぬき押さえ22を図3中、下方向に押圧しながら回動規制部22Bの外周面に沿って摺動する。そして、おしどりピン21Dが回動規制部22Bを越えると、おしどりピン21Dは、かんぬき押さえ22の外周面に沿って高速摺動して回動規制部22Cに衝突し、おしどり21の回動位置、すなわち、前記巻真の位置が2に変更される。この状態で、例えば、時計2の時刻修正が実施可能となる。
すなわち、かんぬき押さえ22が本発明に係る機械部品に相当し、かんぬき押さえ22におけるおしどり21のおしどりピン21Dと衝突および摺接する部位が衝突摺接面22Dとなる。
なお、かんぬき押さえ22の材料としては、ばね性を有する部材であればよく、例えば、炭素鋼に焼入れを施したもの(S70CR)を採用できる。
また、おしどり21のおしどりピン21Dの材料としては、例えば、炭素鋼に焼入れを施し、その表面にNi-Pメッキを施した材料を採用できる。
このような切換部20では、おしどり21の図3中、矢印R2方向の動作によるかんぬき押さえ22に与えられる衝撃および摺動摩擦により、かんぬき押さえ22の衝突摺接面22Dが磨耗しやすい。このため、本実施形態では、かんぬき押さえ22の衝突摺接面22Dに脆性材料からなる衝突摺接層22Eを形成する。なお、衝突摺接層22Eは、第1実施形態で説明したジェットモールディング法にて形成でき、その形成方法についての説明を省略する。また、形成した衝突摺接層22Eの表面には、第1実施形態で説明した衝突摺接層12Cの表面と同様に没入部が形成されている。
そして、かんぬき押さえ22の衝突摺接面22Dに衝突摺接層22Eを形成した後、第1実施形態と同様に、衝突摺接層22Eの表面に、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名」を適量塗布する。この状態で、かんぬき押さえ22を切換部20に設置する。
〔第2実施形態の効果〕
上述した第2実施形態によれば、上記(1)〜(9)と略同様の効果の他、以下の効果がある。
(10)かんぬき押さえ22の衝突摺接面22Dに衝突摺接層22Eを形成することで、衝突摺接面22Dの耐衝撃性および耐磨耗性を向上できるとともに、竜頭の操作による巻真の3段階の切換操作を円滑に実施でき、ユーザに巻真の良好な操作感を与えることができる。また、衝突摺接層22Eは、潤滑油の保持機能を有しているので、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を衝突摺接層22Eの表面に塗布することで、衝突摺接面22Dの耐磨耗性をさらに向上させるとともに、竜頭の操作による巻真のより円滑な切換操作が長期的に可能になる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の説明では、前記第1実施形態と同様の構造および同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
前記第1実施形態では、脆性材料からなる衝突摺接層12Cを、時計3の切換部10を構成するかんぬき12に形成している。
これに対して第2実施形態では、脆性材料からなる衝突摺接層を、時計3の日修正部30を構成する日ジャンパ31の一部に形成する。
図4は、第3実施形態における時計3の日修正部30の要部を模式的に示す平面図である。
日修正部30は、日車32が回転することで、表示する日付の修正を実施する部分である。この日修正部30は、図4に示すように、日ジャンパ31と、日車32とを含んで構成される。
日ジャンパ31は、日車32の回転動作を規制するものであり、ばね性を有する部材から構成され、図4に示すように、一端31Aが地板の所定位置に固定され、他端31Bが日車32の内周部分を外側に向けて付勢しながら、日車32の内周部分に形成された突起部32A間に係合する。この日ジャンパ31の他端31Bには、日車32の突起部32A間の溝部に対応して互いのなす角が鈍角となるように傾斜面31Cが形成されている。
日車32が回転した際は、突起部32Aが他端31Bの傾斜面31Cを日ジャンパ31の付勢方向と逆方向に押圧しながら、他端31Bの傾斜面31Cに沿って摺動する。そして、日車32がさらに回転すると、傾斜面31Cを押圧するものがなくなるので、日ジャンパ31が元の状態に戻り、他端31Bの傾斜面31Cに日車32の突起部32Aが衝突し、他端31Bが突起部32A間の溝部に係合する。
すなわち、日ジャンパ31が本発明に係る機械部品に相当し、傾斜面31Cが本発明に係る衝突摺接面に相当する。
なお、日ジャンパ31の材料としては、ばね性を有する部材であればよく、例えば、燐青銅、黄銅等の銅合金(PBR)を採用できる。また、日車32の材料としては、例えば、表面にアルマイト処理を施したアルミニウム等を採用できる。
このような日修正部30では、日ジャンパ31の傾斜面31Cには、日車32の突起部32Aのうちのいずれかが常に接するとともに、日車32の回転時に日ジャンパ31の付勢力による突起部32Aの衝撃が加わるため、日車32の各突起部32Aに対して約30倍程度の負荷がかかることとなる。このため、日ジャンパ31の傾斜面31Cが磨耗しやすい。本実施形態では、日ジャンパ31の傾斜面31Cに脆性材料からなる衝突摺接層31Dを形成する。なお、衝突摺接層31Dの形成方法は、第1実施形態で説明した形成方法と同様であり、説明を省略する。また、形成した衝突摺接層31Dの表面には、第1実施形態で説明した衝突摺接層12Cの表面と同様に没入部が形成されている。
そして、日ジャンパ31の傾斜面31Cに衝突摺接層31Dを形成した後、第1実施形態と同様に、衝突摺接層31Dの表面に、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を適量塗布する。この状態で、日ジャンパ31を日修正部30に設置する。
〔第3実施形態の効果〕
上述した第3実施形態によれば、上記(1)〜(9)と略同様の他、以下の効果がある。
(11)日ジャンパ31の傾斜面31Cに衝突摺接層31Dを形成することで、傾斜面31Cの耐衝撃性および耐磨耗性を向上できるとともに、日修正時のトルクが低減してユーザに竜頭の良好な操作感を与えることができかつ、時計3自体の駆動時に負荷をかけることがない。また、衝突摺接層31Dは、潤滑油の保持機能を有しているので、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を衝突摺接層31Dの表面に塗布することで、傾斜面31Cの耐磨耗性をさらに向上させるとともに、日車32のより円滑な駆動が長期的に可能になる。時計3の長期使用により、日修正時のトルクが、例えばクオーツ時計における磁気モータの保有トルクを超えることがなく、また、例えば機械式時計でもぜんまいの保有トルクを超えることがないので、時計3自体が駆動を停止するという危険性がない。
〔実施形態の変形〕
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更が可能である。
前記各実施形態では、衝突摺接層12C,22E,31Dの複数の没入部12Dは、脆性材料微粒子を平均粒径寸法の異なる2つの第1粒径微粒子および第2粒径微粒子を混合させた構成とし、第2粒径微粒子の一部を剥離することにより形成していたが、これに限らない。例えば、脆性材料微粒子を衝突摺接面に衝突固着させて衝突摺接層を形成した後、該衝突摺接層表面を研磨等により複数の没入部を形成してもよい。すなわち、没入部の形状は、前記各実施形態で説明した略半球状の形状に限らず、研磨方向に延びる溝形状でもよい。
前記各実施形態では、衝突摺接層12C,22E,31Dを形成する際、ノズルから噴霧されるエアロゾルの速度を音速前後としたが、これに限らず、成膜室およびエアロゾル化室に生じる差圧を変化させて音速前後以外の速度でエアロゾルをノズルから噴霧させるように構成してもよい。
前記各実施形態において、衝突摺接層12C,22E,31Dが形成されるかんぬき12、かんぬき押さえ22、および日ジャンパ31の母材としては、前記各実施形態で説明した材料に限らず、他の金属、セラミックス、半金属、あるいは有機化合物等のその他の部材も採用できる。このように母材として種々の材料を用いることができるので、機械部品の設計の自由度を向上できる。
前記各実施形態では、本発明の機械部品を、時計1,2,3の構成部品であるかんぬき12、かんぬき押さえ22、および日ジャンパ31とする構成を説明したが、これに限らず、衝突摺接面を有する構成部品であれば、いずれの部品でも構わない。また、機械部品を時計1,2,3に採用した構成を説明したが、時計以外の精密機器に本発明の機械部品を採用してもよい。
次に、本発明の効果を具体的な実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
本実施例1は、第1実施形態に基づくジェットモールディング法にて、切換部10を構成するかんぬき12の衝突摺接面12Bに以下に示す成膜条件で膜厚5μmの衝突摺接層を形成した。また、形成した衝突摺接層の表面に、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を適量塗布した。なお、かんぬき12の材料としては、ばね性を有するMX−96(商品名)を用いた。
(成膜条件)
成膜室内圧力:70Pa
エアロゾル化室内圧力:70kPa
搬送ガス種類:He
成膜時温度:常温
ノズル−ワーク間距離:4mm
第1粒径微粒子の材料:酸化アルミニウム60重量%(第1粒径微粒子100
重量%に対する)および酸化ジルコニウム40重量%
(第1粒径微粒子100重量%に対する)の混合
第1粒径微粒子の平均粒径寸法:0.3μm〜1.0μm
第2粒径微粒子の材料:酸化アルミニウム
第2粒径微粒子の平均粒径寸法:2μm〜3μm
第2粒径微粒子の含有量:10重量%(脆性材料微粒子全体100重量%に対す
る)
[実施例2]
本実施例2は、前記実施例1と同様のジェットモールディング法および成膜条件にて、切換部20を構成するかんぬき押さえ22の衝突摺接面22Dに膜厚5μmの衝突摺接層を形成した。また、形成した衝突摺接層の表面に、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を適量塗布した。なお、かんぬき押さえ22の材料としては、ばね性を有する部材である、炭素鋼に焼入れを施した材料(S70CR)を用いた。
[実施例3]
本実施例3は、前記実施例1と同様のジェットモールディング法および成膜条件にて、日修正部30を構成する日ジャンパ31の傾斜面31Cに膜厚5μmの衝突摺接層を形成した。また、形成した衝突摺接層の表面に、時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を適量塗布した。なお、日ジャンパ31の材料としては、ばね性を有するMX−96(商品名)を用いた。
実施例1ないし実施例3において、上記成膜条件で衝突摺接層を形成した結果、衝突摺接層に形成される没入部の深さ寸法は平均して約2μm程度であった。
[比較例1]
本比較例1は、前記実施例1と同様のMX−96(商品名)からなるかんぬき12の表面に、Ni電解メッキにて被覆処理を施した。この状態の表面硬度(ビッカース硬度)は、300〜400である。また、Niメッキ処理を施した表面に、前記実施例1と同様の時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を適量塗布した。
[比較例2]
本比較例2は、前記実施例2と同様の炭素鋼に焼入れを施した材料から構成されるかんぬき押さえ22の表面に、Ni-Pメッキにて被覆処理を施した。この状態の表面硬度(ビッカース硬度)は、650である。また、Ni-Pメッキ処理を施した表面に、前記実施例2と同様の時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を適量塗布した。
[比較例3]
本比較例3は、前記実施例3と同様のMX−96(商品名)から構成される日ジャンパ31の表面に、Ni電解メッキにて被覆処理を施した。この状態の表面硬度(ビッカース硬度)は、300〜400である。また、Niメッキ処理を施した表面に、前記実施例3と同様の時計専用潤滑油「シンタVルーベ(商品名)」を適量塗布した。
そして、上記実施例1ないし実施例3、および比較例1ないし比較例3の機械部品を以下の評価方法にて評価した。
(評価1)
実施例1および比較例1のかんぬき12を時計1内に設置し、各時計1における切換部10の切換耐久試験を実施する。具体的に、切換耐久試験とは、手動にて竜頭を操作して巻真の引き出しおよび押し込みの切換動作を連続して実施することでおしどり11を連続して回動させ、かんぬき12の衝突摺接面12Bの磨耗状態を確認する。この際、おしどり11の材料としては、炭素鋼に焼入れをした材料を採用する。
結果として、比較例1は、切換連続動作50回程度(概ね1年相当分)からかんぬき12の衝突摺接面12Bに磨耗が確認され、切換連続動作50回以降、金属疲労度、およびその疲労に起因する局所的な磨耗と摺動摩擦とによる磨耗量は増加していく傾向にあった。また、磨耗が確認された耐久試験1年相当分以降、竜頭による巻真の円滑な切換操作の感覚が損なわれていく傾向にあった。
一方、実施例1は、切換連続動作50回程度(概ね1年相当分)および切換連続動作500回以上(概ね10年相当分)でも、かんぬき12の衝突摺接面12Bに磨耗は確認されなかった。また、耐久試験10年相当分を実施している際、竜頭による巻真の切換操作を円滑に実施でき、その操作感覚も持続した。
(評価2)
実施例2および比較例2のかんぬき押さえ22を時計2内に設置し、各時計2における切換部20の切換耐久試験(評価1と同様)を実施し、かんぬき押さえ22の衝突摺接面22Dの磨耗状態を確認する。この際、おしどり21のおしどりピン21Dの材料としては、炭素鋼に焼入れを施し、その表面にNi-Pメッキを施した材料を採用する。この状態でのおしどりピン21Dの表面硬度(ビッカース硬度)は、650である。
結果として、比較例2は、切換連続動作50回程度(概ね1年相当分)からかんぬき押さえ22の衝突摺接面22Dに磨耗が確認され、切換連続動作50回以降、金属疲労度、およびその疲労に起因する局所的な磨耗と摺動摩擦とによる磨耗量は増加していく傾向にあった。また、磨耗が確認された耐久試験1年相当分以降、竜頭による巻真の円滑な切換操作の感覚が損なわれていく傾向にあった。
一方、実施例2は、切換連続動作50回程度(概ね1年相当分)および切換連続動作500回以上(概ね10年相当分)でも、かんぬき押さえ22の衝突摺接面22Dに磨耗は確認されなかった。また、耐久試験10年相当分を実施している際、竜頭による巻真の切換操作を円滑に実施でき、その操作感覚も持続した。
(評価3)
実施例3および比較例3の日ジャンパ31を時計3内に設置し、各時計3における日修正部30の日修正加速試験を実施する。具体的に、日修正加速試験とは、手動にて竜頭を回して日車32を回転させ、日ジャンパ31における傾斜面31Cの磨耗状態を確認する。この際、日車32の材料としては、表面にアルマイト処理が施されたアルミニウムを採用する。
結果として、比較例3は、日修正連続動作100周程度(概ね一般的な時計保証年数相当分)でも、日ジャンパ31における傾斜面31Cに磨耗は確認されなかったが、加速試験の時計保証年数相当分以降、傾斜面31Cが磨耗し、加速試験の耐久年数に準じて金属疲労度、およびその疲労に起因する局所的な磨耗と摺動摩擦とによる磨耗量は増加していく傾向にあった。また、加速試験の耐久年数に準じて竜頭の回転操作の感覚が損なわれていく傾向にあった。
一方、実施例3は、日修正連続動作200周以上(概ね17年相当分)でも、傾斜面31Cに磨耗は確認されなかった。また、加速試験17年相当分を実施している際、竜頭の回転操作を円滑に実施でき、その操作感覚も持続した。
以上のように、実施例1、実施例2、または実施例3では、比較例1、比較例2、または比較例3に対して飛躍的に耐久保証年数を延ばすことができるとともに、長期的なメンテナンスフリーを実現することができる。また、高級品とされるような高価な時計においても差別化を図ることができる。
第1実施形態における時計の切換部の要部を模式的に示す平面図。 前記実施形態における形成された衝突摺接層の表面状態を示す模式図。 第2実施形態における時計の切換部の要部を模式的に示す平面図。 第3実施形態における時計の日修正部の要部を模式的に示す平面図。
符号の説明
1・・・時計、12・・・かんぬき(機械部品)、12B,22D・・・衝突摺接面、12C,22E,31D・・・衝突摺接層、22・・・かんぬき押さえ(機械部品)、31・・・日ジャンパ(機械部品)、31C・・・傾斜面(衝突摺接面)。

Claims (10)

  1. 他の部材と衝突および摺接する衝突摺接面を有する機械部品を製造するために、前記衝突摺接面に脆性材料からなる微粒子を衝突固着させる機械部品の製造方法であって、
    前記脆性材料微粒子は、所定の平均粒径寸法を有する第1粒径微粒子と、前記第1粒径微粒子よりも大きい平均粒径寸法を有する第2粒径微粒子とが混合されたものであり、
    前記第1粒径微粒子は、少なくとも酸化ジルコニウムを含む脆性材料から構成され、
    前記脆性材料微粒子を不活性ガス雰囲気中に分散し、前記不活性ガスをキャリアガスとして前記脆性材料微粒子を前記機械部品の衝突摺接面に衝突固着させることを特徴とする機械部品の製造方法。
  2. 請求項1に記載の機械部品の製造方法において、
    前記第1粒径微粒子は、前記酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムおよび/または炭化ケイ素とが混合された脆性材料から構成されていることを特徴とする機械部品の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の機械部品の製造方法において、
    前記第1粒径微粒子は、前記酸化ジルコニウムが10重量%以上含有していることを特徴とする機械部品の製造方法。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の機械部品の製造方法において、
    前記脆性材料微粒子は、前記第1粒径微粒子が50重量%以上含有し、前記第2粒径微粒子が50重量%以下含有することを特徴とする機械部品の製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の機械部品の製造方法において、
    前記第1粒径微粒子は、0.2μm以上1.0μm未満の平均粒径寸法を有し、
    前記第2粒径微粒子は、1.0μm以上5.0μm以下の平均粒径寸法を有していることを特徴とする機械部品の製造方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の機械部品の製造方法により製造されたことを特徴とする機械部品。
  7. 他の部材と衝突および摺接する衝突摺接面を有する機械部品であって、
    前記衝突摺接面には、少なくとも酸化ジルコニウムを含む脆性材料からなる多数の微粒子が衝突固着されて衝突摺接層が形成され、
    前記衝突摺接層には、前記多数の微粒子の一部が剥離されることで複数の没入部が形成されていることを特徴とする機械部品。
  8. 請求項7に記載の機械部品において、
    前記没入部は、0.1μm以上5.0μm以下の深さ寸法を有していることを特徴とする機械部品。
  9. 請求項7または請求項8に記載の機械部品において、
    前記衝突摺接層の表面には、潤滑油が塗布されていることを特徴とする機械部品。
  10. 請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の機械部品を備えていることを特徴とする時計。
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