JP2007246996A - 保護膜及び該保護膜付き内燃機関用部品 - Google Patents

保護膜及び該保護膜付き内燃機関用部品 Download PDF

Info

Publication number
JP2007246996A
JP2007246996A JP2006072698A JP2006072698A JP2007246996A JP 2007246996 A JP2007246996 A JP 2007246996A JP 2006072698 A JP2006072698 A JP 2006072698A JP 2006072698 A JP2006072698 A JP 2006072698A JP 2007246996 A JP2007246996 A JP 2007246996A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
protective film
dlc
diamond
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2006072698A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasushi Hashimoto
靖 橋本
Yoshimi Kitahara
善見 北原
Yasuhiro Matsuba
康浩 松場
Tatsuya Ito
達也 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TDK Corp filed Critical TDK Corp
Priority to JP2006072698A priority Critical patent/JP2007246996A/ja
Publication of JP2007246996A publication Critical patent/JP2007246996A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】例えばカムに代表される内燃機関に用いられる部品の耐磨耗特性を向上させる。
【解決手段】表面保護膜としてDCL薄膜を含んだ膜を用い、該DLC薄膜を部品の表面側に形成される第一DLC層と、該第一のDLC層の表面上に形成されて前記他の部品との当接面を構成する第二のDLC層からなるものとし、第一のDLC層の厚さが前記第二のDLC層の厚さよりも厚いこととする。
【選択図】図2C

Description

本発明は、保護膜及び当該保護膜が所定の部位に付与された自動車等の内燃機関に用いられる部品に関する。より詳細には、本発明は、内燃機関において用いられるカム等の動力伝達系部材において、該部材が他の部材と当接した状態にて摺動等する領域に対して耐磨耗性を向上させるために付与される保護膜、特にダイヤモンド様表面薄膜を含む保護膜及び当該保護膜が付与された当該内燃機関用の部品に関する。
自動車のエンジン等の内燃機関においては、エンジン本体から得られるクランクシャフトの回転力を、カム(カムシャフト)、タペット等の動力伝達用の諸部材を介することによってエンジンに付随するバルブの開閉を行う駆動力としても用いている。このような動力伝達系では、カムはタペットにおけるシムと高い圧力が付加された状態で当接しており、当該状況下において各々の当接面を摺動させている。従って、各々当接し合うカムの面(以下カム面)及びシムの当接面(以下シム面)では、通常大きな磨耗損傷が生じる。磨耗損傷によってこれら面間の当接状態が損なわれると、騒音の発生、バルブの開閉タイミングの異常によるエンジンの燃費低下、更にはかじりによる使用不可状態の発生等、種々の不具合が生じる。
このため、カム面及びシム面には、表面に耐摩耗性を高める各種表面処理が通常施されている。このような表面処理の一手法として耐磨耗性を有する所謂保護膜を形成する方法があるが、近年はダイヤモンド様薄膜(以下DLC膜と述べる。)を含んだ保護膜を表面に形成する方法が多く用いられている(特許文献1参照)。DLC膜はダイヤモンド様の組織構造から得られる優れた硬度と、炭素原子より得られる高い潤滑性より摩擦損傷を好適防止するという効果を示す。
しかしながら、例えば比較的表面粗さの大きなシム面とDLC膜をコーティングしたカム面とを協働させた場合、DLC膜の基材に対する密着性が低いために膜剥離が生じ、事実上長期使用が不能となることも知られている。また、現在では更に、このような密着性を改善する方法として、特許文献2或いは3に示されるように基材とDLC膜との間に密着性を改善する中間層を形成し、該中間層を含めて保護膜として使用する方法、或いは特許文献4に示されるように異なる手法により複数層のDLC膜を重ねることにより密着性を改善した保護膜を得てこれを使用する方法が提示されている。
特開平11−280419号公報 特開平06−016499号公報 特開2002−357262号公報 特開平05−117087号公報
上述したようなカム及びシムを用いた内燃機関に関しては、好適な使用状況が確認されている。なお、この場合、当該カムが付随するカムシャフトは、約200mmの長さのものが用いられている。しかし、当該カム及びシムの組み合わせをより長い、例えば550mmの長さからなるカムシャフトに適用した場合、加速度試験等通常より厳しい負荷環境等の使用状況によってはDLC膜の剥離を生じるケースがあることが報告されている。これは、カムシャフトが長くなったことにより当該シャフトの回転時の軸ぶれが大きくなり、従来カム面とシム面との間に生じていた物理的な作用に加え、該軸ぶれに起因する該面間の衝突による振動或いは衝撃が付加されたことによると考えられる。
本発明は上記状況に鑑みて為されたものであり、カムシャフトが長くなり、カム面とシム面との間に衝突等の作用が生じた場合であっても、剥離等を生じることなく好適な耐磨耗特性を提示し続けることが可能な保護膜及び当該保護膜付きのカム、カムシャフト、シム等の内燃機関用部品の提供を目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明に係る保護膜は、内燃機関用の部品であって他の部品と当接して操作する部品における当接面に形成される表面保護用の保護膜であって、部品の表面側に形成される第一のダイヤモンド様層と、第一のダイヤモンド様層の表面上に形成されて他の部品との当接面を構成する第二のダイヤモンド様層とを有するダイヤモンド様薄膜を含み、第一のダイヤモンド様層の厚さが第二のダイヤモンド様層の厚さと同じ或いは第二のダイヤモンド様層の厚さよりも厚いことを特徴としている。
なお、上述した保護膜において、該第一のダイヤモンド様層は炭素分子の結合がsp2結合を主体とするダイヤモンド様層であり、該第二のダイヤモンド様層は炭素分子の結合がsp3結合を主体とするダイヤモンド様層であることが好ましい。また、更に、第二のダイヤモンド様層の層厚さに対する第一のダイヤモンド様層の厚さの比率が1乃至3であることが好ましい。或いは、当該薄膜の厚さが、4乃至12μmであることが好ましい。
また、この場合、該第一のダイヤモンド様層と該内燃機関用部品の表面との間に形成される、第5A族金属(V,Nb,Ta)、第6A族金属(Cr,Mo,W)、Ti、及びZrより選択された少なくとも一種を主成分とする珪化物或いは珪炭化物、第5A族金属(V,Nb,Ta)より選択された少なくとも一種を主成分とする金属膜とその上に形成されたSi膜或いはSiを主成分とする金属膜、及び第5A族金属(V,Nb,Ta)、第6A族金属(Cr,Mo,W)、Ti、及びZrより選択された少なくとも一種類の金属膜のうちの少なくとも何れかからなる層を中間層としてさらに含むことが好ましい。また、上記課題を解決するために、本発明に係る内燃機関用部品は、上述した保護膜が他の部品との当接面に形成されたカム、シム、リテーナ等であることを特徴とする。
本発明によれば、従来と比較してより過酷な条件下においても、DLC膜を含む保護膜の付与による耐磨耗性向上の効果を長期間得ることが可能となり、カム等内燃機関用部品における摺動面の寿命を延ばすことが可能となる。具体的には、従来条件によるDLC膜が形成されたカムを用いたエンジンについての走行テストを行い千キロ前後の走行距離しか特性維持をできなかった条件下において、本発明に係るDLC膜を含む保護膜を有するカムは数千キロ〜一万キロの走行距離においても特性を維持できることが確認されている。即ち、本発明により、DLC膜を含んだ保護膜の耐久性を数倍〜十倍にまで向上させることが可能となる。
また、本発明によれば、従来のDLC膜の形成に用いられた装置をそのまま用い、膜形成時の成膜条件を適宜設定することによって本発明に係るDLC膜を含む保護膜及び当該保護膜を有する内燃機関用部品を得ることが可能となる。従って、本発明は、設備上の変更、追加等、更なるコストをかけることなく実施することが可能となる。
本発明に係る保護膜の一実施形態に関して、以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る保護膜1の形成工程を模式的に示すフローチャートである。図中ステップ1において、例えばカム等の材料となる金属からなる基材3を用意する。続いて、DLC膜の密着性を高めるために、中間層5を形成する(ステップ2)。当該中間層5は、金属薄膜、珪化物薄膜、珪炭化物薄膜、等から構成されている。その後、ステップ3において、厚さt1を有した第一のDLC層7を形成する。第一のDLC層7を形成後、ステップ4において厚さt2を有した第二のDLC層9を形成する。ここで、本発明における保護膜は、当該実施形態においては中間層5、第一のDLC層7及び第二のDLC層9を含んで構成される膜のことを指す。なお、第一のDLC層の厚さt1と第二のDLC層の厚さt2との間にはt1>t2の関係が成り立つように各々の層厚さが設定されている。また、DLC層の形成条件を適当に選択することにより、第一のDLC層7は、分子の結合状態としてsp3結合が少ない(sp2結合が多い)構造とされており、第二のDLC層9は、分子の結合状態としてsp3結合が多い(sp2結合が少ない)構造とされている。このような層構成からなるDLC薄膜を形成することにより、耐磨耗材料として形成されるDLC薄膜の寿命を大幅に伸ばすことが可能となる。
次に、実際に層厚さの関係を異ならせ、実際に個々の条件に関してスクラッチテストを行った結果を、以下の表等に示す。また、実際にDLC膜に生じた傷の形状を図2A〜2Cに模式的に示す。

表1(DLC層の成膜条件)
Figure 2007246996

以上の条件により異なる2層のDLCからなるDLC薄膜について、t1=1μm、t2=2μmからなる図2Aに示す構成からなるDLC薄膜、t1=1μm、t2=5μmからなる図2Bに示す構成からなるDLC薄膜、及びt1=4μm、t2=2μmからなる図2Cに示す構成からなるDLC薄膜を作成した。更に、これらDLC薄膜に対して、SiCのサンドペーパによる所謂スクラッチテストを行った。なお、中間層はスパッタリングにより形成した金属珪化物であり厚さは0.2〜0.3μmとしているが、該中間層の厚さが当該試験に対して特に影響を与えないことは別途確認してある。また、中間層等の存在及び当該膜の破損状況も実際上保護膜の寿命という観点では考慮する必要があるが、ここで述べる保護膜の寿命はDLC薄膜の寿命によってほぼ一義的に決まることから表面のDCL薄膜の破損状況によって、保護膜としての寿命を評価することとする。
当該スクラッチテストの結果を以下の表2に示す。

表2 スクラッチテストの結果
Figure 2007246996

図に示されるように、図2A或いは図2Bに示す条件のDLC膜は表面に大きく深い傷9aが存在している。これに対して、図2Cに示す条件のDLC膜に付いた傷9aは、数も少なくまた傷自体も浅いものとなっている。
ここで、分子結合状態としてsp3が多く存在する膜は比較的硬度が大きく、少ない場合には硬度としては低下することが知られている。上記表1の結果より、第一のDLC層は第二のDLC層と比較して硬度的には低い特性を有することが理解される。通常、表面の耐久性を高めるためには、硬度の高い部分(この場合第二のDLC層)の膜厚を大きくするという手法がとられる。しかし、以上の結果から、スクラッチテスト時に受ける振動、衝撃荷重の効果と思われるが、硬度の高い層の脆性によると考えられる傷が目立つ結果となっている。また、硬度の高い層を厚くした場合、DLC薄膜全体として有する内部応力も大きくなると思われるが、該内部応力も当該傷の発生の一要因となっていると考えられる。
ここで、図2Cに示す条件下でのDLC薄膜1のテスト結果が最も良好となった理由について考察する。本発明においては、高い硬度を有する第二のDLC層9の下層に硬度を重視しないsp2結合を主体とする分子構造からなる第一のDLC層7を配置している。図3Aに示すように、当接面同士の摺動により生ずる摩擦力によって生じるせん断力P1に対しては、第一のDLC層7がせん断方向に変形して該せん断力を緩和し、且つ第二のDLC層9に該せん断力が集中することを防止していると考えられる。また、図3Bに示すように、カムシャフトの振動等に伴う膜厚方向に加えられる衝撃荷重P2に対しては、第一のDLC層7がクッションの役割を果たしていると考えられる。以上述べた効果が相乗されることにより、DLC薄膜1としての耐用寿命が延ばされると考えられる。即ち、第一のDLC層を基材側の層とし、第二のDLC層を他の部材と当接する面を構成するように配置し、同時に第一のDLC層の厚さを第二のDLC層の厚さよりも同等あるいは大きくすることにより好適な耐磨耗特性が得られる。
以上述べたように、sp2結合を主体とする分子構造を有する第一のDLC層とsp3結合を主体とする分子構造を有する第二のDLC層とをこの順序にて基材側から積層し、且つ第一のDLC層の厚さを第二のDLC層の厚さより大きくすることにより耐磨耗性により優れたDLC薄膜が得られることが確認された。しかし、実際には第一のDLC層自体の耐磨耗性は第二のDLC層の耐磨耗性と比較して大きく劣っていると考えられる。従って、実際に他の部材と当接する面にはある程度以上の厚さの第二のDLC層を形成することは必須であるとも考えられる。そこで、第一のDLC層の厚さと第二のDLC層の厚さとの比率を色々変化させた場合、及びその条件下にてDLC膜の厚さ変化させた場合について、実際に当該DLC薄膜をカム、シム等の内燃機関用部品に用いてこれら条件が耐磨耗性にどのように寄与するかについて確認を行った。
具体的には、これら条件のDLC膜をカムにおけるシムとの当接面に形成したエンジンを作成し、当該エンジンを有するレースカーを走行させてその走行距離により耐磨耗性の評価を行った。図4はその際のDLC膜形成面を示す図である。図4において、カムシャフト21に対してカム23が一体的に固定されている。なお、実際のDLC膜形成工程においては、例えば、膜厚さ6.0μmを目標として成膜操作を行った場合、カム頂部領域23aにおいては1.0μm厚いほうに厚さのばらつきが生じ易く、カムイ基部領域23bにおいては2.0μm薄いほうに厚さのばらつきが生じ易い。従って、以下に述べる評価結果に関しては、この膜厚さのばらつきを考慮した上で、目標厚さを基準としている。
図5は、DLC膜の膜厚と走行距離との関係を示したグラフである。層厚比が2の場合、1或いは3の場合何れであっても、数μmから膜厚の増加に伴って走行距離は伸び、約8.0μmで飽和し、13.0μm以上の厚さでデータが乱れ且つ急激な低下を示している。層厚比によらずある厚さ以上の膜厚においてこのような挙動を示すことは、DLC膜の内部応力によって当該厚さ以上では密着性等、他の特性において問題が生ずるためと考えられる。なお、実際に評価として走行距離が2000km以上であれば十分な耐久性が得られていると認められる。従って、DLC膜の膜厚が4.0〜12.0μmであれば、良好な耐磨耗性及び耐用寿命が得られると考えられる。なお、前述した形成膜厚のばらつきを考慮した場合、常に好適な膜厚が得られる条件として、DLC膜成膜時における目標膜厚は、5.0〜8.0μmとすることが好ましい。なお、従来構成からなるDLC膜を用いた場合には、数百kmの走行距離しか得られておらず、このようなDLC膜厚さをこのような範囲内に設定することにより、DLC膜の耐久性を数倍〜十倍にまで向上させることが可能となる。
次に、層厚比と走行距離との関係について、当該関係をグラフ化した図6を参照して述べる。なお、ここで述べる層厚比は、第一のDLC層7の厚さに対する第二のDLC層9の厚さ(t1/t2)を示している。同図によれば、DLC膜厚が12.0μmの場合及び5.0μmの場合の何れであっても、層厚比の増加と共に走行距離は伸び、比率が凡そ2.0においてピーク値を示し、その後は層厚比の増加と共に走行距離が低下している。これはピーク値以下の比率においては、第一のDLC層7の比率の増加に伴ってクッション効果等がより効果的に作用する反面、ピーク値以上の比率においては、実際に耐磨耗性を提供すべき第二のDLC層9が十分に効果を呈し得るだけの厚さを有さなくなることによると考えられる。以上の結果から、層厚比が1〜3の範囲において、良好な耐磨耗性及び耐用寿命が得られると考えられる。なお、前述した形成膜厚のばらつきを考慮した場合、常に好適な層厚比が得られる条件として、DLC膜成膜時における目標となる層厚比は、1.5〜2.5μmとすることが好ましい。
なお、上述した実施形態においては、金属珪化物をスパッタリングにより形成し、これを中間層として用いることとしている。しかしながら、本発明において中間層は必須の構成ではなく、DLC膜単体として用いた場合であっても保護膜として好適な効果が得られている。また、中間層を用いることによって本発明に係るDLC膜を含んだ保護膜の効果がより高められるが、中間層は当該金属珪化物に限定されない。具体的には、第5A族金属(V,Nb,Ta)、第6A族金属(Cr,Mo,W)、Ti、及びZrより選択された少なくとも一種を主成分とする珪化物或いは珪炭化物、第5A族金属(V,Nb,Ta)より選択された少なくとも一種を主成分とする金属膜とその上に形成されたSi膜或いはSiを主成分とする金属膜、及び第5A族金属(V,Nb,Ta)、第6A族金属(Cr,Mo,W)、Ti、及びZrより選択された少なくとも一種類の金属膜の何れかを用いることが可能である。
また、各々のDLC層はプラズマCVD法によって形成することとしている。当該方法によれば、投入電力、放電周波数、原料ガス種、成膜圧力、成膜時の基材の温度等の少なくとも何れかを変化させることにより、sp3結合等の量を容易に変化させることが可能である。しかしながら、本発明が対象とする保護膜におけるDLC層の形成法方法は当該方法に限定されず、スパッタリング等他の真空プロセス、めっき等の湿式プロセス等、DLC層の特性を改変可能な種々の方法によって形成することが可能である。また、本発明によれば、異なる特性を有するDLCからなる層を積層することで、カム等の部品表面に対して耐磨耗性を付与する単一の膜を得ることとしている。該膜は同じDLC層を重ねることにより各層間の接合性が高く、複数の層からなっているにも拘らず単一膜として機能する。また、本実施形態においては、各DLC層を各々連続的に成膜することが可能となる方法により形成していることから、製造工程上簡易な設備によってこれを得ることが可能である。
次に、本発明に係る保護膜を表面に形成した内燃機関用の諸部品を例示して、これを本発明の実施例として説明する。図7は、内燃機関におけるカム及び当該カムと当接してカムの回転運動を軸方向運動に変換する諸構成に関し、該構成の軸方向における断面図を示している。同図において、カムシャフト21の回転はカム23を同時に回転させ、当該カム23の回転運動は、アウターシム25、タペット27、インナーシム29を介して、バルブステム31に対して、該バルブステム31の往復運動として伝達される。バルブステム31は棒状の部材からなり、その外周には該バルブステム31を軸方向に付勢するバルブスプリング33が配置されている。バルブスプリング33はバルブステム31の軸方向の往復運動と共に伸縮を繰り返すが、その際の径方向の位置ずれを矯正するために、バルブスプリング33の端部には、該バルブスプリング33端部と当接するリテーナ35が配置されている。
リテーナ35は円盤状の部材であり、中央に向けられた貫通孔35aをバルブステム31が貫通している。タペット27は端部が閉鎖された円筒状の部材であって、内部にバルブステム31、バルブスプリング33、リテーナ35及びインナーシム29を収容している。バルブステム31の端部は円盤状のインナーシム29の一面と当接し、該インナーシム29の他の面はタペット7の閉鎖部27aの内部側の面と当接している。タペット27の閉鎖部27aの外部側の面にはアウターシム25が当接している。これらインナーシム29及びアウターシム25を総称してシムと呼称する。これらシムは各々の厚さを調整することによって不図示のバルブヘッドにおけるシール或いは隙間の調整を可能とする。
カム23におけるアウターシム25との当接領域に対しては、カム23の回転に伴う摺動、衝撃荷重等を受けることから対磨耗性を高めておく必要がある。従って、本発明に係る保護膜はこれら部材における当接面に対して形成されることが好ましい。また、アウターシム25とタペット27との当接面、タペット27とインナーシム29との当接面にかんしても、カム23の回転に伴って繰り返しの衝撃荷重を受ける、従って、これら各々の当接面に関しても、本発明に係る保護膜を形成することが好ましい。更には、リテーナ35とバルブスプリング33との当接面に関しても、バルブスプリング33の伸縮動作に伴う摺動、衝撃荷重を受けることから、当該当接面に対しても本発明に係る保護膜を形成することが好ましい。
本発明は、高温環境下において繰り返しの摺動、衝撃荷重等を受けることから高強度を有する耐磨耗製材料を付与すべき対象として内燃機関を例示し、当該機関に用いられる部品に対して適用されるとして述べている。しかし、本発明の産業状の利用分野は当該内燃機関に限定されず、高温環境下において摺動或いは荷重を受ける部材に対して適用することが可能である。
本発明の一実施形態に係る保護膜の形成工程であって、当該膜を厚さ方向に切断した断面にて該工程を示すフローチャートである。 特定の条件にて形成した保護膜に対してスクラッチテストを行った状態を模式的に示す図である。 特定の条件にて形成した保護膜に対してスクラッチテストを行った状態を模式的に示す図である。 特定の条件にて形成した保護膜に対してスクラッチテストを行った状態を模式的に示す図である。 第一のDLC層の作用を模式的に示す図である。 第一のDLC層の作用を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る保護膜の評価テストを行うために当該膜を形成したカムシャフトを軸と垂直な面にて切断した断面を示す図である。 DLC薄膜の厚さと保護膜の耐久性との関係を示す図である。 DLC層の比率t1/t2と当該層から構成された保護膜の耐久性との関係を示す図である。 本発明の一実施例であって、保護膜の形成対象となる内燃機関用の部品を模式的に示す図である。
符号の説明
1:保護膜、 3:基材、 5:中間層、 7:第一のDLC層、 9:第二のDLC層、 21:カムシャフト、 23:カム、 25:アウターシム、 27:タペット、 29:インナーシム、 31:バルブステム、 33:バルブスプリング、 35:リテーナ

Claims (8)

  1. 内燃機関用の部品であって他の部品と当接して操作する部品における当接面に形成される表面保護用の保護膜であって、
    前記部品の表面側に形成される第一のダイヤモンド様層と、
    前記第一のダイヤモンド様層の表面上に形成されて前記他の部品との当接面を構成する第二のダイヤモンド様層とを有するダイヤモンド様薄膜を含み、
    前記第一のダイヤモンド様層の厚さが前記第二のダイヤモンド様層の厚さと同じ或いは前記第二のダイヤモンド様層の厚さよりも厚いことを特徴とする保護膜。
  2. 前記第一のダイヤモンド様層は炭素分子の結合がsp2結合を主体とするダイヤモンド様層であり、前記第二のダイヤモンド様層は炭素分子の結合がsp3結合を主体とするダイヤモンド様層であることを特徴とする請求項1記載の保護膜。
  3. 前記第二のダイヤモンド様層の層厚さに対する前記第一のダイヤモンド様層の厚さの比率が1乃至3であることを特徴とする請求項1記載の保護膜。
  4. 薄膜の厚さが、4乃至12μmであることを特徴とする請求項1記載の保護膜。
  5. 前記第一のダイヤモンド様層と前記当接面の表面との間に、第5A族金属(V,Nb,Ta)、第6A族金属(Cr,Mo,W)、Ti、及びZrより選択された少なくとも一種を主成分とする珪化物或いは珪炭化物、第5A族金属(V,Nb,Ta)より選択された少なくとも一種を主成分とする金属膜とその上に形成されたSi膜或いはSiを主成分とする金属膜、及び第5A族金属(V,Nb,Ta)、第6A族金属(Cr,Mo,W)、Ti、及びZrより選択された少なくとも一種類の金属膜のうちの少なくとも何れかからなる層を中間層として更に含むことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の保護膜。
  6. 前記内燃機関用部品であって、請求項1乃至5何れかに記載の保護膜が前記他の部品との当接面に形成されたカム。
  7. 前記内燃機関用部品であって、請求項1乃至5何れかに記載の保護膜が前記他の部品との当接面に形成されたシム。
  8. 前記内燃機関用部品であって、請求項1乃至5何れかに記載の保護膜が前記他の部品との当接面に形成されたリテーナ。
JP2006072698A 2006-03-16 2006-03-16 保護膜及び該保護膜付き内燃機関用部品 Pending JP2007246996A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006072698A JP2007246996A (ja) 2006-03-16 2006-03-16 保護膜及び該保護膜付き内燃機関用部品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006072698A JP2007246996A (ja) 2006-03-16 2006-03-16 保護膜及び該保護膜付き内燃機関用部品

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2007246996A true JP2007246996A (ja) 2007-09-27

Family

ID=38591613

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006072698A Pending JP2007246996A (ja) 2006-03-16 2006-03-16 保護膜及び該保護膜付き内燃機関用部品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2007246996A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018019940A1 (en) * 2016-07-29 2018-02-01 Mahle Metal Leve S/A Sliding element for internal combustion engines
WO2022176113A1 (ja) * 2021-02-18 2022-08-25 Tpr株式会社 摺動被膜及び摺動部材

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06119613A (ja) * 1992-10-06 1994-04-28 Matsushita Electric Ind Co Ltd 磁気ヘッドおよびその製造方法
JPH08309100A (ja) * 1995-05-18 1996-11-26 Matsushita Electric Ind Co Ltd アイロンおよびその製造方法
JP2001107220A (ja) * 1999-09-30 2001-04-17 Osaka Shinku Kogyo Kk 硬質炭素膜を被覆した機械部品及びその製造方法
JP2002357262A (ja) * 2001-06-01 2002-12-13 Tdk Corp Dlcを施したカムおよびカムシャフト
JP2002363773A (ja) * 2001-06-12 2002-12-18 Tdk Corp Dlcを施したリテーナー
JP2004501793A (ja) * 2000-04-12 2004-01-22 ユナキス・バルツェルス・アクチェンゲゼルシャフト 滑り特性が向上したdlc層システム、およびそのような層システムを生成するためのプロセス
JP2005089735A (ja) * 2003-08-08 2005-04-07 Nissan Motor Co Ltd 摺動部材
JP2007023356A (ja) * 2005-07-19 2007-02-01 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 低摩擦摺動部材

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06119613A (ja) * 1992-10-06 1994-04-28 Matsushita Electric Ind Co Ltd 磁気ヘッドおよびその製造方法
JPH08309100A (ja) * 1995-05-18 1996-11-26 Matsushita Electric Ind Co Ltd アイロンおよびその製造方法
JP2001107220A (ja) * 1999-09-30 2001-04-17 Osaka Shinku Kogyo Kk 硬質炭素膜を被覆した機械部品及びその製造方法
JP2004501793A (ja) * 2000-04-12 2004-01-22 ユナキス・バルツェルス・アクチェンゲゼルシャフト 滑り特性が向上したdlc層システム、およびそのような層システムを生成するためのプロセス
JP2002357262A (ja) * 2001-06-01 2002-12-13 Tdk Corp Dlcを施したカムおよびカムシャフト
JP2002363773A (ja) * 2001-06-12 2002-12-18 Tdk Corp Dlcを施したリテーナー
JP2005089735A (ja) * 2003-08-08 2005-04-07 Nissan Motor Co Ltd 摺動部材
JP2007023356A (ja) * 2005-07-19 2007-02-01 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 低摩擦摺動部材

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018019940A1 (en) * 2016-07-29 2018-02-01 Mahle Metal Leve S/A Sliding element for internal combustion engines
CN109415797A (zh) * 2016-07-29 2019-03-01 马勒金属立夫有限公司 用于内燃机的滑动元件
US11466777B2 (en) 2016-07-29 2022-10-11 Mahle International Gmbh Sliding element for an internal combustion engine
WO2022176113A1 (ja) * 2021-02-18 2022-08-25 Tpr株式会社 摺動被膜及び摺動部材

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5452734B2 (ja) コーティングを有するスライド要素、特に、ピストンリング、およびスライド要素を製造するプロセス
US10458361B2 (en) Coating for metal components, method for coating a metal component, piston for internal combustion engines and motor vehicle
JP5669390B2 (ja) 耐摩耗性コーティングならびにこのための製造法
US8109248B2 (en) Valve lifter and surface treatment method thereof
US9103015B2 (en) Sliding element and method for coating a sliding element
JP5564099B2 (ja) シリンダとピストンリングの組合せ
JP6340014B2 (ja) 摺動エレメント
KR20060051087A (ko) 내마모성 코팅 및 그 제조 방법
JP2008286354A (ja) 摺動部材
KR101428600B1 (ko) 핀 또는 샤프트용 코팅재 및 이의 제조방법
JP5780689B2 (ja) Dlc被覆膜
JP5176378B2 (ja) 転がり摺動部材およびこれを用いた転動装置
CN112534084A (zh) 特别是用于配气机构系统的部件以及生产这种部件的方法
JP2007246996A (ja) 保護膜及び該保護膜付き内燃機関用部品
JP4541941B2 (ja) チタン合金製タペット等の部品とその製造方法
Araujo et al. DLC as a low friction coating for engine components
JP2007155022A (ja) 転動装置
JP4374153B2 (ja) ピストンリング
JP3147538B2 (ja) カムフォロワおよびその製造方法
JP5898092B2 (ja) 駆動カム、その製造方法、及びエンジンの動弁装置
JP2001140608A (ja) タペット
JP4374160B2 (ja) ピストンリング
US20230083774A1 (en) Piston ring, and method for manufacturing same
JP2819946B2 (ja) 内燃機関の動弁機構のカム接触部構造
JPH11294118A (ja) 内燃機関の動弁機構

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080416

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20101021

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20101025

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101217

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111031

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20120229