JP2005146153A - 蓄熱材用エマルションの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】油性物質の乳化時に油相分離しないように油性物質を充分に分散させて、熱貯蔵システムに好適なエマルションを製造する方法を提供する。
【解決手段】水性媒体、相変化により蓄熱性を有する油性物質、分散剤及び発核剤を含有する組成物に対して、高速せん断力を付与して蓄熱材用エマルションを製造する方法であって、(1)先端周速度が2〜30m/sで回転する撹拌羽根で高速せん断力を付与する装置、(2)3〜100MPaの吐出圧の高圧下で液体と液体とを互いに衝突させることによって高速せん断力を付与する装置及び(3)0.1〜10MPaの吐出圧で静止型混合器に送液することにより高速せん断力を付与する装置からなる群より選択される少なくとも一種の装置を用いて高速せん断力を付与する工程を、水性媒体中に分散された油性物質の液滴の平均粒子径が0.01〜50μmになるまで行う蓄熱材用エマルションの製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、蓄熱材用エマルションの製造方法に関する。より詳しくは、オフィスビルや工場等の大型建造物用や家庭用等の冷暖房装置における熱貯蔵システムに用いることができる蓄熱材用エマルションを製造する方法に関する。
潜熱を利用した蓄熱性を有する油性物質は、固体から液体への相変化時に放熱し、液体から固体への相変化時に吸熱するという特性を有するものであり、脂肪族炭化水素、脂肪酸、脂肪酸エステルが知られている。近年では、このような油性物質を熱貯蔵システムに利用して冷暖房エネルギーの省力化や効率化、環境保護等の目的のために活かそうとする技術が注目されている。例えば、油性物質を含む蓄熱材を用いた蓄熱装置としては、蓄熱材を蓄熱槽と冷凍機との間で循環させることにより蓄熱材を冷却固化し、その融解時の吸熱効果を冷房に活かそうとするものが利用されている。
このような油性物質を有効に利用するために、油性物質と水との水中油型エマルションを調製して使用することが提案されている。例えば、水、パラフィン、界面活性剤及び凍結防止剤からなるエマルジョン蓄熱材、エマルジョン蓄熱材を蓄える蓄熱槽、エマルジョン蓄熱材を搬送する配管、エマルジョン蓄熱材を製造したときのインペラ周速度と同じインペラ周速度を持った循環ポンプ及びエマルジョン蓄熱材を冷却するヒートポンプから構成された蓄冷システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この蓄冷システムは、一旦製造されたパラフィンを含むエマルジョンが油相と水相とに分離して破壊したときに再乳化することを可能とするための技術である。よって当該蓄熱材用エマルションを原料から製造する場合について、特にパラフィンを界面活性剤により乳化して水中油型エマルションを調製する際におけるパラフィンの分散性や、特に乳化時に付与すべき高速せん断力に関しては何も検討されていない。したがって、当該蓄熱材用エマルションを原料から製造するときに、パラフィンの乳化時に油相分離しないようにパラフィンを充分に分散させて、熱貯蔵システムに好適なエマルションを製造できるようにするための工夫の余地があった。
パラフィンワックスを、金属脂肪酸塩、アミド含有化合物、ベントン又はシリカから選ばれる1種以上の物質からなるマトリックスに、70〜95wt%含有してなる蓄熱材(例えば、特許文献2参照。)、融点が30℃以下のn−パラフィンと炭化水素系有機高分子の固体状混合物からなり、その炭化水素系有機高分子としてゴム質ポリマーと、融点が100℃以上で分子量が3000以上のワックスを用いた蓄熱材(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。
しかしながら、これらの蓄熱材は、ゲル状又は固体状のものであり、本件が対象とする水中油型の蓄熱材用エマルションではなく、熱貯蔵システムに好適なエマルションとすることについては何も検討されておらず、この点において工夫の余地があった。
ところで、エマルションの製造方法に関して、水とポリウレタン樹脂との予備乳化混合液を加圧下でチャンバー内の流路に導入して、該流路内の平面部に、或いは、該混合液同士を衝突させることにより乳化させる装置を用いて予備乳化混合液を乳化するポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法(例えば、特許文献4参照。)がある。上記特許文献4に記載されている技術は、ポリウレタンを含む樹脂分散体を製造する方法である。確かに予備乳化混合後の液体を加圧下でチャンバー内に導入する技術で、その衝突時の圧力が記載された文献である。多量の乳化剤の使用を制限する目的で、従来の高速せん断力を付与する撹拌装置よりもせん断力を高くし、加圧下でチャンバー内の流路にポリウレタン樹脂予備混合物を導入して流路内の壁に衝突させる、という方式でせん断力を与える、という技術である。しかしながら、本件にかかる、発核剤を必須成分とし油性物質が水性媒体に分散された蓄熱材という具体的な対象物は記載されていないばかりか、本件が目的とする、適度な粒子径を保ち、かつ安定な蓄熱性を発揮させる目的で特定のせん断力に着目すること等の目的は記載されていない。
また水、ロジン系物質及び乳化剤からなる予備混合液をチャンバー内の流路に導入し、該流路内の平面部に、または、該予備混合液同士を衝突させることにより乳化させる装置を使用するロジン系物質の水性エマルションの製造法(例えば、特許文献5参照。)がある。この特許文献5にも、従来の高速せん断力を付与する撹拌装置よりもせん断力を高くし、加圧下でチャンバー内の流路に水性混合物を導入して分散体を製造する技術が記載されている。しかし、この特許文献5の製造方法の目的物はロジンを含むエマルジョンであり、本件の発核剤を必須成分とし油性物質が水性媒体に分散された蓄熱材ではなく、特許文献4と同様に、本件が目的とする、適度な粒子径を保ち、かつ安定な蓄熱性を発揮させる目的で特定のせん断力に着目すること等の目的は記載されていない。
更に油相を分散質とするO/W型エマルションに油相の融点以下の温度で粘土鉱物を混合分散するO/W型エマルションタイプの乳化液体の製造方法(例えば、特許文献6参照。)が開示されている。この特許文献6も、本件の目的物とはまったく異なる粘土鉱物を含む乳化液体を製造対象としており、パドル式撹拌機を使用して製造する技術である。対象が皮膚用洗浄剤やヘアケア製品であるために本文には、確かに油性成分の開示はある。また分散剤として界面活性剤の記載も見受けられる。しかし、本件が目的とする、適度な粒子径を保ち、かつ安定な蓄熱性を発揮させる目的で特定のせん断力に着目すること等の目的は記載されていないし、発核剤を必須とする油性物質にせん断力を付与する技術に関しては何も記載されてはいない。
つまり、これらは、本件とは異なる目的物である水分散体の製造方法を開示するものでしかなく、蓄熱材に好適に用いることができるエマルションを製造することについては検討されていない。よって、油性物質の乳化時に油相分離しないように油性物質を充分に分散させて、熱貯蔵システムに好適なエマルションを製造できるようにするための工夫の余地があった。
特開平6−249587号公報(第2頁) 特開平5−32964号公報(第2頁) 特開平6−17041号公報(第2頁) 特開平5−132567号公報(第2頁) 特開平7−155576号公報(第2頁) 特開平11−180849号公報(第2頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、油性物質の乳化時に油相分離しないように油性物質を充分に分散させて、熱貯蔵システムに好適なエマルションを製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、蓄熱材に用いられるエマルションを製造する方法について種々検討した結果、まずエマルションを製造するときのせん断力の程度に着目した。そして、特定の度合いのせん断力を当該エマルションに付与することにより、水性媒体、相変化により蓄熱性を有する油性物質及び分散剤を含有するエマルションが蓄熱材用途に好適なものとできることに着目した。そして、発核剤を含有させることにより、更に熱貯蔵システムに好適なエマルションとすることができること、そして本件で着目するせん断力とは、(1)先端周速度が特定された撹拌羽根で高速せん断力を付与する装置、(2)特定された吐出圧で液体と液体とを互いに衝突させることによって高速せん断力を付与する装置及び(3)特定された吐出圧で静止型混合器に送液することにより高速せん断力を付与する装置からなる群より選択される少なくとも一種の装置を用いて付与されるものであり、それぞれ特定範囲の高速せん断力を付与することにより、油性物質が水性媒体中に油滴として充分に分散され、エマルションが蓄熱材として好適なものとなることを見いだしたものである。更に、上記高速せん断力を付与する前工程として、油性物質を含む水性媒体に対して予備分散を行うことにより、油性物質が水性媒体中に油滴として存在する状態で分散剤が作用するようにすると、油滴に対して分散剤が充分に作用して、あとで作用させる高速せん断力と相まって油性物質の分散性が向上することを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。分散剤が作用するときに、油性物質が水性媒体中に油滴として分散された状態でないと、分散剤の作用が充分に発揮されず、油性物質の乳化時に油相分離しないように油性物質を充分に分散させることができないが、特定の度合いの高速せん断力を付与する高速せん断工程を行うことにより、また、高速せん断力を付与する前に予備分散工程を行うことにより、分散剤の油性物質に対する作用が充分に発揮され、油性物質の分散性が向上し、熱貯蔵システムに好適なエマルションを簡便に製造することが可能となる。
すなわち本発明は、水性媒体、相変化により蓄熱性を有する油性物質、分散剤及び発核剤を含有する組成物に対して、高速せん断力を付与して、水性媒体に油性物質の液滴が分散した状態である蓄熱材用エマルションを製造する方法であって、(1)先端周速度が2〜30m/sで回転する撹拌羽根で高速せん断力を付与する装置、(2)3〜100MPaの吐出圧下で液体と液体とを互いに衝突させることによって高速せん断力を付与する装置及び(3)0.1〜10MPaの吐出圧で静止型混合器に送液することにより高速せん断力を付与する装置からなる群より選択される少なくとも一種の装置を用いて高速せん断力を付与する工程を、水性媒体中に分散された油性物質の液滴の平均粒子径が0.01〜50μmになるまで行って蓄熱材用エマルションを製造する蓄熱材用エマルションの製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の蓄熱材用エマルションの製造方法では、高速せん断工程において、水性媒体、相変化により蓄熱性を有する油性物質、分散剤及び発核剤を含有する混合物に高速せん断力を付与することになる。高速せん断工程では、油性物質が水性媒体中に油滴として存在し、分散剤により分散するのに適した状態とすることができる高速せん断力を混合物に付与する。
このような高速せん断力を付与する装置において、(1)の装置は、液体どうしを、又は、固体と液体とを高速回転する羽根でせん断しながら混合する装置であり、(2)の装置は、液体どうしを、又は、固体と液体とを高圧下で互いに衝突させることによって混合する装置であり、(3)の装置は、邪魔板や突起、拡大縮小された流路の設置により流れに乱れを生じさせる機能を持つ槽内に、液体どうしを、又は、固体と液体とを供給ポンプ等で圧送して強制循環又は送液することにより混合する装置である。また、供給ポンプ等の流体を高速で送液することが可能である装置も高速せん断力を付与することが可能であり、本発明における高速せん断工程に好適に用いることができる装置である。
上記(1)の装置において、高速回転する羽根としては、先端周速度が2〜30m/s以下であるが、好ましくは、5m/s以上である。
上記先端周速度は、下記式;
先端周速度(m/s)=羽根直径(m)×π×撹拌回転数(rpm)/60
により求めることができる。
また羽根の直径をrとし、撹拌混合槽において混合する場合には、撹拌混合槽の内径をR1とし、また、筒状のケーシング内で羽根が回転する装置の場合には、ケーシング内径をR2とする場合において、r/R1、又は、r/R2で表される比を、0.2以上、1未満とすることが好ましい。より好ましくは、0.4以上であり、更に好ましくは、0.6以上であり、特に好ましくは、0.8以上であり、最も好ましくは、0.9以上である。上記比を大きくすることで、粗大粒子が少なく、粒子径分布が整い、標準偏差が小さいような粒子状態をより安定的に得ることができる。
上記(1)の装置としては、ホモミキサー、TKホモミキサー(機種名;特殊機化工業社製、撹拌羽根の形状はタービン型)、高速ディスパー、ホモディスパー、TKラボディスパー(機種名;特殊機化工業社製、撹拌羽根の形状はタービン型)、エバラマイルザー(機種名;荏原製作所社製、撹拌羽根の形状はスット型タービン)、撹拌駆動部を有するラインミキサー、BIO MIXER(機種名;日本精機製作所社製)等が好適である。
上記撹拌駆動部を有するラインミキサーは、ミキサー自体に油性物質を分散できるモーター等の撹拌駆動部を有するものである。ラインミキサーとは、槽中の製造原料等を直接撹拌するものではなく、槽中の製造原料等が通過する配管の途中に設置される邪魔板、突起物、機械的撹拌によって分散を行う分散装置である。また、このような撹拌駆動部を有するラインミキサーは、ミキサーとしてだけでなく、供給ポンプとしての能力も有するものが好適であり、この場合、配管に供給ポンプを設置する必要がなく、製造設備の簡略化の点で好適であるが、供給ポンプとしての能力が不足する場合には、追加的に供給ポンプを設置してもよい。このようなラインミキサーを用いて高速せん断工程を行う場合に、ラインミキサーの設置数や設置位置としては、製造規模、製造原料の特性、配管を通過する製造原料等の速度や単位時間あたりの流量等によって適宜設定すればよい。
上記撹拌駆動部を有するラインミキサーとしては、高速で回転するローターを備えたインラインミキサー450LS型(商品名、シルバーソン社製)、T.K.パイプラインホモミキサーPL−2S型(商品名、特殊機化工業社製)等が好適である。このようなラインミキサーは、例えば、ローターが高速で回転することによる強力な吸引力、遠心力及び高速せん断力により、製造原料等を撹拌及び分散することとなる。
上記BIO MIXER(機種名;日本精機製作所社製)において、ジェネレーターシャフトは、両端にナイフ状の刃が付いた回転内刃と、一定間隔に開けられた窓及びその下に切り込まれた鋸歯状の刃が付けられた固定外刃よりなる。図1は、液中で内刃が高速回転した場合における流体の流れを示す概念図であり、このように高速回転することによって液を下から吸い込み、窓から激しく噴出する。図2は、原料が微細化される様子を示す概念図であるが、図1のような流体の流れにより、試料が砕かれ微細化され、これが繰り返されることによって分散されることになる。
上記BIO MIXERにおいては、所望する蓄熱材エマルションにより、適宜ジェネレーターシャフトの回転内刃寸法やシャフトの長さを選択することができる。
上記(2)の装置においては、高圧下で液体どうしを、又は、固体と液体とを衝突させることになるが、これらを衝突させる場合における吐出圧としては、3〜100MPaであるが、好ましくは、5MPa以上である。より好ましくは、20MPa以上である。(2)の装置としては、高圧ホモジナイザー(機種名;イズミフードマシナリ社製)、マイクロフルイダイザー(機種名;みづほ工業社製)、T.K.ナノマイザー(機種名;特殊機化工業社製)等が好適である。
上記マイクロフルイダイザー(機種名;みづほ工業社製)においては、試料がチャンバー内にポンプにて供給され、供給された試料は、流体として、図3に示す概念図のようにチャンバー内を流れる。チャンバー内部においては、チャンバーのオリフィス径とポンプの供給エネルギーとの相関により差圧が発生し、これに起因して試料が放出されることによりキャビテーション(圧力降下)を生じ、試料が流体として高速で流れることによりせん断力を生じ、流体がぶつかることにより衝撃力が生じる。マイクロフルイダイザーは、このような3つの複合した力によって、乳化、分散及び粉砕を行うことになる。
上記T.K.ナノマイザー(機種名;特殊機化工業社製)は、高圧で処理物を圧送し、これを2つの流路に分け、高速流に変換し、処理物を互いに衝突させることにより、超高圧乳化、分散等を行うものである。図4は、T.K.ナノマイザーの原理を表す概念図であり、その主要部はディスクa(フロント)、ディスクb(リア)、フロント側抑えc、リア側抑えdよりなる。このようなT.K.ナノマイザーにおいては、図4におけるAの部分で原料を圧送し、Bの部分で流路が2分割され、最大流速を与えられた原料同士が衝突し、乳化、分散、粉砕を行い、Cの部分で衝突によりエネルギーを放出して流体を排出し、Dの部分で調製された原料を排出することになる。
上記(3)の装置においては、液体どうしを、又は、固体と液体とを供給ポンプ等で圧送することになるが、圧送する場合における吐出圧としては、0.1〜10MPaであるが、好ましくは、0.4MPa以上である。
上記(3)の装置としては、静止型混合器(駆動部を持たない管型混合器)と供給ポンプとを組み合わせた装置等が好適である。静止型混合器としては、ミキサー自体に撹拌駆動部を有さないタイプのラインミキサーが好ましい。このようなラインミキサーを用いて高速せん断工程を行う場合に、ラインミキサーの設置数や設置位置としては、製造規模、製造原料の特性、配管を通過する製造原料等の速度や単位時間あたりの流量等によって適宜設定すればよい。
上記撹拌駆動部を有しないタイプのラインミキサーとしては、供給ポンプ等により生じる流体の流れを利用して撹拌するものが好適である。このようなラインミキサーとしては、スタティック型ミキサーであるOHR(Original Hydrodynamic Reaction)ラインミキサーMX−8型(商品名、西華産業社製)、スタティックミキサー(商品名、ノリタケカンパニーリミテド社製)、分散君(商品名、フジキン社製)、ラインミキサーSMX型、SMV型(商品名、コークグリッジ社製)等が挙げられる。このようなラインミキサーは、例えば、長方形の板を180°ねじった形をしたエレメントや、きのこ状の衝突体あるいは拡大・縮小された流路を持つエレメントをラインミキサー内に有し、これらのエレメントや衝突体の作用により、製造原料等を撹拌及び分散することとなる。
上記ラインミキサーを用いる場合において、スタティック型ミキサーである分散君(商品名、フジキン社製)を用い、エレメントを2枚一組で使用して、上流側に穴2.5φ、下流側に4φのものを使用し、供給ポンプ吐出圧0.4〜0.5MPaで送液することは、本発明の好ましい実施形態の一つである。また、流量をエレメント孔部断面積で乗じた流速を20m/s以上とすることが好ましい。図5に、エレメントの孔中での流体の流れを示す。図5における矢印は、流体の流れを示すものである。パス回数は、水性媒体、油性物質、分散剤及び発核剤を含有する混合物の全量がラインミキサー等を通過した回数であり、該混合物が循環する循環方式においては混合物の量(a)とラインミキサー等を通過した混合物の全量(b)から計算した回数(b/a)でもよいし、該混合物を分散君に通して全てドラム等に受けるまでを1回とする1パス方式における回数でもよい。
本発明においては高速せん断工程が、水性媒体中に分散された油性物質の液滴の平均粒子径が0.01〜50μm以下になるまで行って蓄熱材用エマルションを製造することとなる。
上記高速せん断工程において、油性物質の液滴の平均粒子径が50μmを超えると、繰り返し行われる蓄熱サイクルにおいて、充分な耐久性を有する蓄熱材用エマルションが得られないおそれがある。より好ましくは、10μm以下である。更に好ましくは、0.5μm以上、5μm以下である。すなわち、本発明の製造方法により製造される蓄熱材用エマルションは、油性物質の液滴の平均粒子径が上述の範囲内のものであることが好ましい。
上記油性物質の液滴の平均粒子径は、島津製作所社製のレーザー回折式粒度分布計測定装置SALD−3000(商品名)を用いて測定を行うことができる。この場合、測定用媒体としては、イオン交換水を使用する。
本発明においては、高速せん断力を付与する工程の前に、発核剤が配合された油性物質と、分散剤が配合された水性媒体とを混合する予備分散工程を行うことが好ましい。このような蓄熱材用エマルションの製造方法は、本発明の好ましい実施形態の一つである。このように、油性物質に発核剤が混入されており、分散剤が配合された水性媒体中に該油性物質の液滴が分散した状態を形成する予備分散工程を、高速せん断力を付与する工程の前に行うことにより、本発明の作用効果が充分に発揮されることとなる。このような予備分散工程を行う場合、本発明の高速せん断力を付与する工程では、通常、予備分散工程において得られる油性物質の液滴の平均粒子径よりも小さい液滴を得ることになる。
また本発明においては、予備分散工程が、撹拌槽において行われ、該撹拌槽における撹拌動力が0.1〜100kW/mであることが好ましい。より好ましくは、0.5kW/m以上、2.0kW/m以下である。
上記予備分散工程における混合方法としては、撹拌混合槽等において撹拌翼、ホモミキサー、ホモジナイザー等を用いて混合することが好適である。また、上述の静止型混合器を用いることもできる。
なお、本件の形態は、ホモミキサーのような高速せん断装置を使用して、そのせん断力を調整することにより、後述する羽根撹拌等の通常の予備分散工程と同様な効果も得ることができる。具体的には、表1で記載した槽のみの形態と循環型の形態を組み合わせた変更形態に相当するが、この場合、予備分散工程においてせん断力が充分にエマルションに付与されるので、予備分散工程の段階で非常に平均粒子径を小さくして乳化させることができる。所望の蓄熱特性により、当該蓄熱材用エマルションの予備分散工程における平均粒子径を調整すればよい。例えばホモミキサーのような高速せん断装置を予備分散工程に使用することで、予備分散工程で平均粒子径が0.01〜10μmの範囲、より好ましくは、0.01〜5μmの範囲まで小さくした蓄熱材用エマルションの予備乳化物を得ることができる。この予備乳化物は、良好な蓄熱特性を有しており、所望される蓄熱性能や使用形態によってはそのまま蓄熱材用エマルションとして製品とすることもできる。
また得られた蓄熱材用エマルションを更に細かい粒子径のエマルションにして、あわせて安定化させるために、更に、本件で規定するような高速せん断力を当該エマルションに付与することもできる。具体的には、ホモミキサーのような高速せん断装置を使用して、蓄熱材用エマルションを平均粒子径が0.01〜10μmの範囲まで予備乳化し、次に、3〜100MPaの吐出圧下で液体と液体とを互いに衝突させる高速せん断力を付与する装置、又は、0.1〜10MPaの吐出圧で静止型混合器に送液することにより高速せん断力を付与する装置を介して更に高速せん断力を付与することにより、平均粒子径が、0.01〜10μm、更に好ましくは0.01〜5μm、更に好ましくは0.01〜3μmの範囲の細かい平均粒子径を持つ蓄熱材用エマルションを得ることができる。
このようにして得られたエマルションの蓄熱特性は、平均粒子径が小さくかつ安定であるので蓄熱特性、あるいは、融解凍結特性の安定性、更にはポンプ循環で送液された場合の安定性が非常に良好なものとなる。
上記予備分散工程においては、少なくとも分散剤を含有する水性媒体及び発核剤を含有する油性物質を混合することになればよい。また、予備分散工程においては、油性物質が水性媒体中に油滴として存在する状態とし、この状態で分散剤が作用するようにすることが好ましい。また、予備分散工程の後に実施する高速せん断工程において、予備分散工程よりも高いせん断力が付与されるようにすることが好ましい。予備分散工程の実施形態としては、(A)最初に油相(油性物質)と水相(水性媒体)とが分離した状態より混合を開始する形態、(B)水相を撹拌したところに油相を添加し混合を開始する形態、(C)撹拌動力0.1〜100kW/mで混合する形態、(D)1〜10分の混合時間で油性物質の粒子を形成する形態、(E)予備分散工程により得られる分散された油性物質の液滴の平均粒子径を3〜200μmとする形態、(F)予備分散工程により得られる粒子を静置しても油相分離しない形態とすることが好ましく、特に、(A)の形態を含むように予備分散工程を行うことにより、本発明の効果を充分に発揮することができる。
上記(A)の形態としては、分散剤を水性媒体に混合し、この混合物を撹拌混合槽中の発核剤を含有する油性物質に添加して予備分散を開始する形態であることが好ましい。より好ましい形態は、水性媒体と分散剤の混合物を添加後、二層分離した状態とした後に予備分散する形態である。あるいは上記(A)の形態は、発核剤を油性物質に混合し、この混合物を撹拌混合槽中の分散剤を含有する水性媒体に添加して予備分散を開始する形態であることが好ましい。より好ましい形態は、発核剤と油性物質の混合物を添加後、二層分離した状態とした後に予備分散する形態である。
具体的には、本発明の予備分散形態における原料である油性物質と水性媒体との配合形態としては、(i)油相である油性物質の中に、水相である水性媒体を添加して混合する形態と、(ii)水相である水性媒体の中に、油相である油性物質を添加して混合する形態との両方があり、どちらの配合形態を採用することもできる。
ただし、(ii)の形態の方が安定なエマルションになりやすい。その理由は、既に水の中に分散剤が充分な量存在している系内に、油を添加して混合し分散させる形態になるので、水と油の接触面において充分な界面活性作用が発現すると考慮できるからである。また、(i)であると、初期に水が添加された形態では、大量の油の中に少量の水が配合されることになり、含まれる分散剤の量が充分でなくなるため安定な分散ができにくいと考慮できる。よって、(i)であれば、油と水の界面で充分な量の分散剤が存在している状態を擬似的に作ることになる、油相と水相とが二層に分離する状態を経由して予備分散を開始する形態が良好な分散状態が得られる形態となる。つまり(i)の混合形態をとった場合、油相と水相の二層分離状態を経由後、予備分散を開始する形態が好ましい。
また、(ii)であれば必ずしも二層分離させずに予備分散を行っても安定なエマルションとすることができる。もちろん、(ii)であっても必要であれば両者を添加後、油相と水相の二層分離状態を経由して予備分散を開始してもよい。
また必要であれば、油相に事前に所定の界面活性剤を配合しておいてもよい。また、油相と水相の両者を同時に供給して混合する形態であっても、油相を充分に分散できるだけの量の分散剤が介在できるのであれば安定な混合状態となすこともできる。
また(E)のより好ましい形態としては、油性物質の液滴の平均粒子径を3μm以上、150μm以下であり、更に好ましい形態としては、5μm以上、100μm以下である。
本発明における予備分散工程を行う場合の実施形態及びその分類の一例を、下記表1に示す。なお、1パス型(III)の予備分散工程においては、高速せん断工程で用いる装置の直前の配管内で予備分散が行われることになってもよい。また、高速せん断工程で用いられる装置として、供給ポンプ等の流体を高速で送液することが可能である装置を用いることも可能である。
Figure 2005146153
以下に、本発明における予備分散工程を行う場合の実施形態の一例を詳しく説明する。
本発明の実施形態においては、例えば、(a)撹拌混合槽中において予備分散工程を行い、ラインミキサー等の高速せん断力を付与することができる装置に送液することにより高速せん断工程を行う形態、(b)撹拌混合槽において予備分散工程を行い、これと同じ撹拌混合槽において高速せん断工程を行う形態が挙げられる。また、(c)蓄熱材用エマルションの各原料をそれぞれの供給ラインから送液し、ラインミキサー等により予備分散工程を行い、更に高速せん断力を付与することができる装置に送液することにより高速せん断工程を行う形態を挙げることもできる。(c)の形態においては、予備分散工程を行うラインミキサー等の装置に各原料が一定の比率で供給されるようにすることが好ましい。
上記予備分散工程を行う場合においては、高速せん断工程が、予備分散工程で製造される予備分散エマルションに対して繰り返し行われることが好ましく、このような蓄熱材用エマルションの製造方法は、本発明の好ましい実施形態の一つである。このような形態においては、油性物質の平均粒子径が上述のような範囲になるまで高速せん断工程が繰り返し行われることが好ましい。
このように高速せん断工程を繰り返し行う場合において、上記(a)の形態では、一度、高速せん断力を付与された混合物をドラム等にすべて回収し、撹拌混合槽に戻して、又は、他の高速せん断力を付与することができる装置に投入して、再び高速せん断力を付与するという操作を繰り返す形態、高速せん断力を付与することができるラインミキサー等の装置をラインに複数設置して、高速せん断工程を繰り返し行う形態、循環形式にすることで高速せん断工程を繰り返し行う形態等が好適である。また、上記(b)及び(c)の形態においても、上記(a)の形態と同様にして高速せん断工程を繰り返し行うことができる。
以下に図6〜8を用いて、本発明における予備分散工程を行う場合の実施形態の一例について更に詳しく説明する。
図6は、上記(a)の形態であって混合物が循環する形態の装置の一例を示す概念図である。このような装置は、撹拌混合槽1、供給ポンプ2、ラインミキサー3等を備えてなり、これらがライン4等により連結されている。
上記撹拌混合槽1は、撹拌翼7を備えており、原料ドラム8よりライン9を通って投入された原料を予備分散することとなる。この場合における好ましい形態としては、油性物質に発核剤を添加し、発核剤の融点以上の温度で撹拌及び混合した後、該撹拌を止めて静置して、そこに、分散剤と水性媒体とを分散剤の融点以上の温度で混合して得られる混合溶液を添加する形態である。予備分散により得られる混合物は、供給ポンプ2によりライン4及びライン5を通ってラインミキサー3に送液される。送液された混合物は、供給ポンプ2及びラインミキサー3によって高速せん断力を付与されることにより、平均粒子径がより小さくなるように分散され、ライン6を通って撹拌混合槽1に戻ることとなる。撹拌混合槽1に戻った混合物は、再びライン4及びライン5を通ってラインミキサー3に送液されることとなり、高速せん断工程が繰り返し行われることになる。なお、得られた蓄熱材用エマルションは、ライン10より抜出ドラム11に回収することができる。
図7は、上記(b)の形態であって一つの撹拌混合槽で混合及び分散を行う形態の装置の一例を示す概念図である。このような装置は、撹拌混合槽12、ホモミキサー13等を備えてなる。この場合においては、油性物質と水性媒体とを撹拌混合槽12に投入し、二層分離状態とした後に、ホモミキサー13で予備分散を行い、その後に撹拌動力を上昇させて高速せん断力を付与することにより、蓄熱材用エマルションを得ることができる。なお、予備分散工程において用いる混合装置と高速せん断工程において用いる混合装置が異なるものであってもよい。
図8は、上記(c)の形態であって油性物質及び水性媒体が別々のラインからラインミキサーに供給される形態の装置の一例を示す概念図である。このような装置は、水性媒体貯留槽14、油性物質貯留槽15、供給ポンプ16及び17、ラインミキサー18及び19等を備え、これらがライン20等により連結されている。
上記装置においては、水性媒体が供給ポンプ16により、水性媒体貯留槽14からライン20を通ってライン22に投入され、油性物質が供給ポンプ17により、油性物質貯留槽15からライン21を通ってライン22に投入される。ライン22に投入された水性媒体及び油性物質は、ラインミキサー18に供給されて予備分散されることとなる。なお、ライン22において水性媒体及び油性物質が予備分散されることとなってもよい。予備分散により得られる混合物は、ラインミキサー19に供給されて高速せん断力が付与されることとなる。ラインミキサー19で高速せん断力を付与されることにより得られる混合物や蓄熱材用エマルションは、ライン23から回収等することができる。ライン23から得られる混合物等は、再びラインミキサー等の高速せん断力を付与することができる装置により分散されることが好ましい。
上記(c)の形態における油性物質と水性媒体とを送液する割合としては、油性物質(重量部)/水性媒体(重量部)とすると、100/900以上、100/5以下が好ましい。より好ましくは、100/600以上、100/25以下である。
本発明の製造方法により得られる蓄熱材用エマルションは、相変化により蓄熱性を有する油性物質、分散剤及び発核剤を含有する組成物に対して、高速せん断力を付与することにより、水性媒体に油性物質の液滴が分散した状態としたものであるが、分散した油性物質に、相変化による凝固/融解の繰り返しを100回実施した後の体積平均粒子径の変化量が、凝固/融解繰り返し実施前の体積平均粒子径と比べて、±50%以内であることが好ましい。より好ましくは、凝固/融解の繰り返し回数が200回以上において体積平均粒子径変化量が±50%以内であることである。上記水性媒体に油性物質を分散させた組成物の凝固/融解の繰り返し試験において、分散させた組成物中の油性物質の体積平均粒子径の変化量が小さくなるほど、分散体中の油性物質の破壊が抑えられ、長期的に安定に使用できることとなる。より好ましくは400回以上、更に好ましくは500回以上である。特に好ましくは800回以上、最も好ましくは1000回以上である。
上記水性媒体に油性物質を分散させた組成物の凝固/融解の繰り返しを行う場合の試験方法としては、蓄熱材用エマルションをサンプル瓶に入れ、相変化による凝固/融解の繰り返しが行える温度において、繰り返し試験を行うことが好適である。例えば、油性物質として融点10℃のペンタデカンを用いた場合、相変化による凝固を行う場合には、蓄熱材用エマルションを5〜7℃に調整することで実施できる。次に融解を行う場合には、蓄熱材用エマルションを12〜15℃に調整することで実施できる。つまり、上記水性媒体に油性物質を分散させた組成物の凝固/融解の繰り返しを行う試験方法としては、使用する油性物質の融点(いくつかの油性物質が混合されている場合には、混合された油性物質が示す融点)をX℃とした場合、凝固させるときの相変化を(X−5)℃で行い、融解させるときの相変化を(X+5)℃で行うことが好ましい。
上記水性媒体に油性物質を分散させた組成物中の油性物質の体積平均粒子径の変化量(%)は、次のようにして算出することができる。
当該油性物質の体積平均粒子径の変化量(%)=(凝固/融解繰り返し実施後の体積平均粒子径−凝固/融解繰り返し実施前の体積平均粒子径)÷(凝固/融解繰り返し実施前の体積平均粒子径)×100
また当該油性物質の体積平均粒子径としては、島津製作所社製のレーザー回折式粒度分布計測定装置SALD−3000を用いて測定を行うことができる。また、測定用媒体としては、イオン交換水を使用することが好ましい。
本発明の製造方法により得られる蓄熱材用エマルションは、水性媒体に油性物質の液滴が分散した状態のものであるが、融解潜熱量が大きいほど蓄熱材用のエマルションとして好適なものとなる。蓄熱材用エマルションの融解潜熱量を上げる方法としては、融解潜熱量の高い油性物質を使用する方法、エマルション中の油性物質の含有量を多くする方法、油性物質に発核剤を添加することで油性物質の過冷却を防止して油性物質の凝固を容易にする方法、これらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。蓄熱材用エマルションの融解潜熱量は、10cal/g以上が好ましく、20cal/g以上であることがより好ましい。
上記蓄熱材用エマルションの融解潜熱量は、示差走査熱量測定(DSC;differential scanning calorimetry)を行うことにより求めることができる。示差走査熱量測定には、マックサイエンス社製の示差走査熱量計DSC−3100Sを使用して行うことができる。測定条件としては、例えば、油性物質として融点10℃のペンタデカンを用いた場合、25℃から−20℃まで20℃/分の速度で冷却した後、−20℃から25℃まで2℃/分の速度で昇温する。−20℃から25℃までの2℃/分の速度での昇温過程で得られた融解潜熱量のピーク面積により融解潜熱量を求める。通常の示差走査熱量測定装置であれば上記測定を行うことができる。
以下に、水性媒体、相変化により蓄熱性を有する油性物質、分散剤及び発核剤等についてより詳しく説明する。
上記水性媒体とは、水を必須成分とするものであるが、水と水に溶解する溶媒との混合物を用いることができ、例えば、水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、エチレングリコール、ジエチレングリコール等との混合溶媒が好適である。水性媒体中の水の割合は、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、80質量%以上である。更に好ましくは、水のみを用いることである。
上記水性媒体の使用量としては、相変化により蓄熱性を有する油性物質100質量%に対して、5.0質量%以上、900質量%以下とすることが好ましい。
上記油性物質は、相変化により蓄熱性を有するものである。すなわち相変化又は相転移の際の潜熱を利用する潜熱蓄熱を蓄熱性として有し、蓄熱密度が高く、一定温度付近での蓄熱や放熱が可能なものである。これにより、例えば、顕熱蓄熱、潜熱蓄熱、化学反応蓄熱等の熱エネルギーを貯蔵し、放出することが可能となる。
上記油性物質を構成する成分としては、パラフィン及び/又はα−オレフィン等の炭化水素化合物;高級脂肪酸類;高級脂肪酸エステル類;高級アルコール類等の化合物等を含むことが好適であり、具体的には、C14パラフィン、C15パラフィン、C16パラフィン等の常温で液体である中級パラフィン;C17パラフィン、C18パラフィン、C19パラフィン、C20パラフィン、C21パラフィン、C22パラフィン、C23パラフィン、C24パラフィン、C25パラフィン等の常温付近で固体である高級パラフィン;1−デカノール等の高級アルコールが好適である。これらの中でも、取り扱いが便宜であることから、空調用の冷熱用途に使用する蓄熱材の場合、常温(25℃)及び常圧(約101.3kPa)において液体であるものを、相変化により蓄熱性を有する油性物質を構成する成分として用いることが好ましい。また、容易に入手でき、また、広い温度範囲に用いることができる蓄熱材を簡便にかつ安定的に製造することができることから、パラフィンが好ましく、空調用の冷熱用途に用いる場合、パラフィンの中でもペンタデカンを含むことが好ましい。より好ましくは、上記油性物質がパラフィン及び/又はα−オレフィンである場合である。
なお、蓄熱特性及びその安定性を考慮し、本発明の蓄熱材用エマルションに含まれる油性物質を100質量%とした場合、上記のパラフィン及び/又はα−オレフィンの含有量は、50〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、更には70〜100質量%の範囲が好ましい。また、より好ましくは80〜100質量%の範囲であり、更には90〜100質量%の範囲が好ましい。
上記油性物質としては、単独成分のものを使用してもよいが、相変化により蓄熱性を有する油性物質の種類と配合比率を任意に調整することで、使用する蓄熱温度に融点を合わせることができる。冷房用途として使用する場合、約5〜20℃に融点を持つ相変化により蓄熱性を有する油性物質を選択すればよい。また暖房用途として使用する場合には、約40〜60℃に融点を持つ相変化により蓄熱性を有する油性物質を選択すればよい。
上記油性物質の使用量としては、相変化により蓄熱性を有する油性物質の種類や蓄熱材の使用形態、要求される蓄熱効率に応じて適宜設定すればよいが、蓄熱材100質量%中10質量%以上、100質量%以下とすることが好ましい。10質量%未満であると、蓄熱効率や蓄熱性能が低下するおそれがある。より好ましくは、20質量%以上、75質量%以下である。
上記分散剤としては、ノニオン系界面活性剤を必須成分としてなるものであることが好ましく、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等のソルビタンエステル系化合物;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエステル;ポリグリセリンアルキルエステル;脂肪酸エステル;脂肪酸石鹸;アルキルアミンエチレンオキサイド付加体;コレステロール等のステロール類が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20以上)アルキル(総炭素数15以上)エーテル及びポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20以上)ソルビタンアルキル(総炭素数15以上)エステルを必須成分としてなるものであることが好ましい。このような必須成分において、エチレンオキサイドの付加モル数は20以上で、好ましくは、100以下、より好ましくは、50以下である。また総炭素数は15以上で、好ましくは、40以下、より好ましくは、30以下である。またポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20以上)ソルビタンアルキル(総炭素数15以上)エステルの場合、モノアルキルエステル体がより好ましい。
上記分散剤としてはまた、両性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン−アニオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤を適宜使用してもよい。それら界面活性剤として、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸及びその塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル塩;テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のα−オレフィンスルホン酸塩;スルホコハク酸塩;エーテルスルホン酸塩;エーテルカルボン酸及びその塩;ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のベタイン類;ジアルキルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウムが好ましい。
更にその他の分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルスルホン、マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリジアリルアミン、ポリエチレンイミン、カルボキシルメチセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キトサン、寒天、ゼラチン、大豆カゼイン、ポリビニルスルホン酸、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を用いることもできる。
上記分散剤の使用量としては、相変化により蓄熱性を有する油性物質100質量%に対して、0.1質量%以上、30質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、1.0質量%以上、20質量%以下である。
上記発核剤は、本発明における蓄熱材用エマルションに含有していればよく、好ましい形態としては、相変化により蓄熱性を有する油性物質が発核剤を含有する形態であり、油性物質に添加して溶解混合しておくことが好ましい。
上記発核剤としては、蓄熱材用エマルションを凝固させる際に結晶核となり得る物質であればよいが、相変化により蓄熱性を有する油性物質と結晶構造の似た物質であることが好ましく、また、油性物質より融点が高く、早い段階から凝固が起こる物質であることが好ましい。更に、油性物質の融点よりも10〜100℃高い相変化温度を有する物質であることがより好ましい。発核剤の融点が油性物質の融点よりも10℃未満であっても100℃を超えても、発核剤としての機能が低下し、蓄熱材用エマルションとして好適に用いることができないおそれがある。
上記発核剤としては、相変化により蓄熱性を有する油性物質としてノルマルペンタデカンを用いた場合には、ノルマルヘプタデカン、ノルマルオクタデカン、ノルマルノナデカン、ノルマルエイコサン、ノルマルドコサン、ノルマルトリコサン、ノルマルテトラコサン、ノルマルペンタコサン等の飽和炭化水素、1−オクタデセン等の不飽和炭化水素、ステアリン酸等の高級脂肪酸、オクタデカノール等の高級アルコール、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、トリステアリン等のグリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド等が挙げられる。これらの中でもショ糖脂肪酸エステル、飽和炭化水素が好ましい。これらの発核剤は、必要により2種類以上組み合わせて使用してもよい。
上記発核剤の添加量としては、油性物質100質量%に対して、0.5質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。0.5質量%未満であると、蓄熱材用エマルションを充分には凝固させることができないおそれがあり、20質量%を超えると、蓄熱材用エマルションに占める蓄熱性を有する油性物質の含有量が低下するので、蓄熱効率を充分には向上できないおそれがある。より好ましくは、1質量%以上、10質量%以下である。
本発明による蓄熱材用エマルションには、更に、以下に記載する機能を有する添加剤を含有させることもできる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(1)伝熱向上用:鉄、銅等の金属粉:金属繊維;金属酸化物;カーボン;カーボンファイバー等。
(2)比重調整用:砂;粘土;石;鉛、鉄等の金属粉等。
(3)難燃性付与用:水;水ゲル;金属粉;炭酸カルシウム等の無機化合物;臭素系、塩素系、リン系等の難燃剤等。なお、難燃性には、燃焼性の低減、延焼防止、水蒸気による引火点の消滅、燃焼熱量低減効果等を含む。
(4)過冷却防止用:金属粉、高分子パラフィン(ワックス)等。
(5)凝固点調整用:ワックス類等。
(6)酸化防止や経時的な劣化防止用:フェノール系、チオ系、リン系等の酸化防止剤等。
(7)その他:着色剤、顔料、帯電防止剤、防菌剤等。
上記添加剤の使用量としては、例えば、燃焼性を低減させるために、炭酸カルシウムを用いる場合には、相変化により蓄熱性を有する油性物質に対して、10〜40質量%とすることが好ましい。
上記油性物質には、潜熱性を調整するための包接化合物を添加してもよい。
上記包接化合物としては、C・O・17HO、(CHN・10.25HO、(CNCHO・32HO、(CNCHCO・32HOが好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において製造される蓄熱材用エマルションは、蓄熱材に用いることができるものであり、その使用形態としては、乳化物状の水分散体の形態とすることが好ましく、また、包装材に充填された形態の蓄熱材として用いてもよい。このような本発明の製造方法によって得られる蓄熱材は、本発明の好ましい実施形態の一つである。
上記蓄熱材は、乳化物状や包装状態等の形態で各種の蓄熱装置に用いられるものであるが、このような蓄熱装置としては、(1)蓄熱材が熱搬送媒体となって熱交換を行うものや、(2)蓄熱材が貯留される蓄熱槽を備えてなり、熱媒体の熱交換を行うことができるもの等が挙げられる。
上記(1)の蓄熱装置としては、水分散した蓄熱材を用いた蓄熱装置が好ましく、蓄熱材が蓄熱槽と熱交換器との間を循環することにより、又は、蓄熱槽の外部を循環することにより熱交換する蓄熱装置等が挙げられ、このような蓄熱装置により地域冷暖房システム用や、ビル空調システム用の熱搬送媒体システムである蓄熱システムが形成されることになる。
上記(2)の蓄熱装置は、蓄熱材が貯留される蓄熱槽を備えてなり、熱媒体の熱交換を行うことができるものであるが、蓄熱材を貯留してなる蓄熱装置が好ましく、このような蓄熱装置によっても蓄熱システムが形成されることになる。
上記蓄熱材を貯留してなる蓄熱装置としては、蓄熱槽に熱交換手段を備えることで蓄熱装置の外部で循環する熱媒体に対して熱エネルギーを授受できるようにしたものが好適であり、例えば、蓄熱材が貯留する蓄熱槽中に熱媒体の熱交換を行う熱交換器を備えたものや、蓄熱槽中に乳化物状の水分散体が貯留したまま熱媒体のみが蓄熱槽を通過するようにしたもの等が挙げられる。
このような蓄熱材を用いてなる蓄熱装置又は蓄熱システムは、本発明の好ましい実施形態の一つである。
本発明は、パラフィンの乳化時に油相分離しないようにパラフィンを充分に分散させて、熱貯蔵システムに好適なエマルションを製造できることから、冷暖房エネルギーの省力化や効率化、環境保護等の目的のために好適に用いることができる蓄熱装置又は蓄熱システムを構成する蓄熱材に用いることができる蓄熱材用エマルションを製造する方法として優れたものである。
本発明の蓄熱材用エマルションの製造方法は、上述のような構成よりなり、油性物質の乳化時に油相分離しないように油性物質を充分に分散させて、熱貯蔵システムに好適なエマルションを製造できるものであり、オフィスビルや工場等の大型建造物用や家庭用等の冷暖房エネルギーの省力化や効率化、環境保護の目的のための蓄熱装置や蓄熱システムを構成する材料の製造方法として優れたものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
以下のエマルションにおける油滴の平均粒子径は、島津製作所社製のレーザー回折式粒度分布計測定装置SALD−3000(商品名)を用いて測定した。この場合、測定用媒体としては、イオン交換水を使用した。
製造例1
撹拌翼を備えた撹拌混合槽に、純水81.6kg、ノニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20)ステアリルエーテル(日本油脂社製:ノニオンS−220)2.55kgを投入し、内温50℃で撹拌して界面活性剤溶液を調製し、ケミドラムに抜き出した。一方、該撹拌混合槽に、油性物質として灯油より蒸留したパラフィン(テトラデカン:融点6℃ 19.4質量%、ペンタデカン:融点10℃ 73.5質量%、ヘキサデカン:融点18℃ 6.9質量%、ヘプタデカン:融点22℃ 0.2質量%)85kg、発核剤としてショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬社製:シュガーワックスA−10E:融点47℃)0.85kgを投入し、内温40℃以上、68rpmで10分間撹拌して、発核剤が事前に配合された油性物質としてのパラフィン溶液を調製した。撹拌を停止して、ケミドラムに抜き出した分散剤を含む水性媒体としての界面活性剤溶液を上記パラフィン溶液の中に投入した。投入後10分静置した後、100rpm(撹拌動力1.0kW/m)で5分間撹拌したところ、分散状態が良好な予備分散液が得られた。得られた予備分散液中の油性物質の平均粒子径の測定には、島津製作所のレーザー回折式粒度分布計測定装置SALD−3000を使用した。以後、同様平均粒子径の測定には本装置を使用した。その結果、平均粒子径は80μmであった。上記製造例は、油相の中に水相を配合して二層分離させた後予備分散させた形態である。
実施例1
循環槽を備えた循環ラインにおいて(表1 循環型I及びII)、製造例1で得られた予備分散液を、ポンプ(テイコクモーターポンプ、帝国社製、全揚程50m、流量5m/h、定格出力3kW)のみでラインを循環させた場合(吐出圧0.1MPa)と、該ポンプと分散君(商品名、ラインミキサー、フジキン社製)とを備えたラインを循環させた場合(吐出圧0.46MPa)との油性物質の平均粒子径を測定した。結果を図9のグラフに示す。
図9のグラフにおいて、Pass回数(パス回数)は、予備分散液の量をaとし、循環して循環槽に戻った予備分散液の全循環量をbとした場合に、b/aにより計算することができる。
図9のグラフより、ポンプのみの高速せん断力でもある程度は、粒径(平均粒子径)が小さくなることが確認できた。また、ラインミキサーを用いることにより、パス回数4回で蓄熱材用途には好適な3μm粒径のエマルションを得ることができた。
実施例1でラインミキサーを用いて得られた粒子径3μmエマルションについて、所定の条件下で示差走査熱量測定(DSC;differential scanning calorimetry)を行うことにより、凝固温度、融解温度、融解潜熱量を求めた。示差走査熱量測定には、マックサイエンス社製の示差走査熱量計DSC−3100Sを使用した。測定条件としては、25℃から−20℃まで20℃/分の速度で冷却した後、−20℃から25℃まで2℃/分の速度で昇温した。その結果、凝固温度(凝固開始温度)は、7.6℃、融解温度(融解ピーク温度)は、8.4℃、融解潜熱量は、21cal/gであった。また、このエマルションの4℃での流動性は良好であった。また水性媒体に油性物質を分散させた組成物の凝固/融解の繰り返し試験を250回行った後の当該組成物中の油性物質の体積平均粒子径の変化量は、33%であった。
実施例2
循環槽を備えた循環ラインにおいて(表1 1パス型I)、製造例1で得られた予備分散液を、ポンプ(テイコクモーターポンプ、帝国社製、全揚程50m、流量5m/h、定格出力3kW)と分散君(商品名、ラインミキサー、フジキン社製)とを備えたラインを循環させる循環方式を用いた場合(吐出圧0.46MPa)と、予備分散液を分散君に通してすべてドラム等に回収するまでを1回として分散を繰り返す1Pass(1パス)方式を用いた場合(吐出圧0.47MPa)における油性物質の平均粒子径を測定した。結果を図10のグラフに示す。
実施例2でラインミキサーを用いて得られた粒子径3μmエマルションについて、所定の条件下で示差走査熱量測定(DSC;differential scanning calorimetry)を行うことにより、凝固温度、融解温度、融解潜熱量を求めた。示差走査熱量測定には、マックサイエンス社製の示差走査熱量計DSC−3100Sを使用した。測定条件としては、25℃から−20℃まで20℃/分の速度で冷却した後、−20℃から25℃まで2℃/分の速度で昇温した。その結果、凝固温度(凝固開始温度)は、7.9℃、融解温度(融解ピーク温度)は、8.4℃、融解潜熱量は、21cal/gであった。また、このエマルションの4℃での流動性は良好であった。また水性媒体に油性物質を分散させた組成物の凝固/融解の繰り返し試験を250回行った後の当該組成物中の油性物質の体積平均粒子径の変化量は、33%であった。
また融解潜熱量21cal/gは、蓄熱材に用いる場合には充分な値であり、良好で安定な蓄熱材用エマルションが得られることがわかった。
本発明の製造方法で得られるエマルションの融解潜熱量は、好ましくは10cal/g以上、より好ましくは20cal/g以上である。また得られたエマルションの蓄熱材としての安定性であるが、水性媒体に油性物質を分散させた組成物の凝固/融解の繰り返し試験において評価した。詳細な試験方法は、上述の通りである。そして得られたエマルション組成物中の油性物質の体積平均粒子径の変化量(%)は次のようにして算出した。
当該油性物質の体積平均粒子径の変化量(%)=(凝固/融解繰り返し実施後の体積平均粒子径−凝固/融解繰り返し実施前の体積平均粒子径)÷(凝固/融解繰り返し実施前の体積平均粒子径)×100
また上記の体積平均粒子径としては、島津製作所社製のレーザー回折式粒度分布計測定装置SALD−3000を用いて測定を行った。また、測定用媒体としては、イオン交換水を使用した。
上記実施例で得られた油性物質を含むエマルションは、いずれも、上記繰り返し試験を250回行っても、油相と水相の分離等もなく安定であった。また得られたエマルション組成物中の油性物質の体積平均粒子径の変化量も少なく、本発明の製造方法で得られた油性物質と発核剤を含むエマルションの蓄熱材としての安定性は良好なものであった。
製造例2
製造例1で得られたパラフィン溶液に撹拌を停止して、界面活性剤溶液を投入した。投入後すぐに100rpm(撹拌動力1.0kW/m)で5分間撹拌したところ、分散状態が良好な予備分散液が得られた。得られた予備分散液中の油性物質の平均粒子径は、112μmであった。
比較例1
製造例1で得られたパラフィン溶液を134rpm(撹拌動力2.5kW/m)で撹拌しながら界面活性剤溶液を投入し、5分間撹拌を行ったところ、予備分散液は得られず油相分離した液が得られた。そして実施例1と同様のせん断力を付与したが、水性媒体中に油性物質が安定に分散されたエマルションにはできなかった。
製造例3
容器に、ノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20)ソルビタンモノステアレート(花王社製;レオドールTW−S120)1.5部と水48.0部とを投入し、内温50℃で攪拌して界面活性剤水溶液を作製した。界面活性剤水溶液を作製したものとは別の容器に、製造例1で使用したパラフィン50.0部に、発核剤としてショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬社製;シュガーワックスA−10E)0.5部を投入し、内温45℃で撹拌して、発核剤が事前に配合された油性物質としてパラフィン溶液を調製した。このパラフィン溶液を、先に作製した界面活性剤水溶液に投入した。
投入後、攪拌機(特殊機化社製;TKホモミキサー)を用いて予備分散(撹拌動力0.4kW/m)を行ったところ、分散状態が良好な予備分散液が得られた。得られた予備分散液の油性物質の体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は7μmであった。
実施例3
製造例3で得られた予備分散液を攪拌機(特殊機化社製;TKホモミキサー)を用いて更分散を行った(回転数12000rpm;撹拌羽根の先端周速度15.7m/s、表1 槽のみ(I))。実施例3で得られた分散液の油性物質の体積平均粒子径を同様に測定したところ、3μmであった。
実施例3でホモミキサーを用いて得られた粒子径3μmエマルションについて、同様の条件下で示差走査熱量測定を行った。その結果、凝固温度(凝固開始温度)は6.8℃、融解温度(融解ピーク温度)は8.2℃、融解潜熱量は18cal/gであった。また、このエマルションの4℃での流動性は良好であった。また、当該エマルション中の油性物質の、水性媒体に油性物質を分散させた組成物の凝固/融解の繰り返し試験を120回行った後の体積平均粒子径の変化量は、−2%であった。
製造例4
撹拌混合槽に界面活性剤としてポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20)ステアリルエーテル(日本油脂社製;ノニオンS−220)2.4部を水55.6部に添加し、加熱溶解した水溶液と、製造例1で使用したパラフィン40.0部に発核剤であるパラフィンワックス(日本精鑞社製;パラフィンワックスFNP−0085、融点86℃)2.0部を加熱溶解した液を投入した。攪拌機(特殊機化社製;TKホモミキサー)を用いて予備分散(撹拌動力1.3kW/m)を行ったところ、分散液が良好な予備分散液が得られた。得られた予備分散液中の油性物質の体積平均粒子径は、31μmであった。
実施例4
製造例4で得られた予備分散液を高速せん断力を付与する装置であるマイクロフルイダイザー(みずほ工業社製;マイクロフルイダイザー)に送液して分散を行い(吐出圧45MPa)、1パスで蓄熱材用エマルションを得た(表1 1パス型(II))。
実施例4で得られた分散液の油性物質の体積平均粒子径を同様に測定したところ、0.6μmであった。同様の条件下で示差走査熱量測定を行った。その結果、凝固温度(凝固開始温度)は8.4℃、融解温度(融解ピーク温度)は7.9℃、融解潜熱量は16cal/gであった。また、このエマルションの4℃での流動性は良好であった。
図1は、BIO MIXERのジェネレーターシャフトの内刃が、液中で高速回転した場合における流体の流れを示す概念図である。 図2は、BIO MIXERにより原料が微細化される様子を示す概念図である。 図3は、マイクロフルイダイザーのチャンバー内での流体の流れ示す概念図である。 図4は、T.K.ナノマイザーの原理を表す概念図である。 図5は、エレメントの孔中での流体の流れを示す概念図である。 図6は、本発明の製造方法における、混合物が循環する形態の装置の一例を示す概念図である。 図7は、本発明の製造方法における、一つの撹拌混合槽で混合及び分散を行う形態の装置の一例を示す概念図である。 図8は、本発明の製造方法における、油性物質及び水性媒体が別々にラインミキサーに供給される形態の装置の一例を示す概念図である。 図9は、実施例1における油性物質の平均粒子径の測定結果を示すグラフである。 図10は、実施例2における油性物質の平均粒子径の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1、12 撹拌混合槽
2、16、17 供給ポンプ
3、18、19 ラインミキサー
4〜6、9、10、20〜23 ライン
7 撹拌翼
8 原料ドラム
11 抜出ドラム
13 ホモミキサー
14 水性媒体貯留槽
15 油性物質貯留槽

Claims (5)

  1. 水性媒体、相変化により蓄熱性を有する油性物質、分散剤及び発核剤を含有する組成物に対して、高速せん断力を付与して、水性媒体に油性物質の液滴が分散した状態である蓄熱材用エマルションを製造する方法であって、
    (1)先端周速度が2〜30m/sで回転する撹拌羽根で高速せん断力を付与する装置、(2)3〜100MPaの吐出圧下で液体と液体とを互いに衝突させることによって高速せん断力を付与する装置及び(3)0.1〜10MPaの吐出圧で静止型混合器に送液することにより高速せん断力を付与する装置からなる群より選択される少なくとも一種の装置を用いて高速せん断力を付与する工程を、水性媒体中に分散された油性物質の液滴の平均粒子径が0.01〜50μmになるまで行って蓄熱材用エマルションを製造する
    ことを特徴とする蓄熱材用エマルションの製造方法。
  2. 前記高速せん断力を付与する工程の前に、発核剤が配合された油性物質と、分散剤が配合された水性媒体とを混合する予備分散工程を行う
    ことを特徴とする請求項1記載の蓄熱材用エマルションの製造方法。
  3. 前記油性物質は、パラフィン及び/又はα−オレフィンを含むものである
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の蓄熱材用エマルションの製造方法。
  4. 前記予備分散工程により得られる油性物質の液滴の平均粒子径は、3〜200μmである
    ことを特徴とする請求項2又は3記載の蓄熱材用エマルションの製造方法。
  5. 前記予備分散工程は、撹拌槽において行われ、該撹拌槽における撹拌動力が0.1〜100kW/mである
    ことを特徴とする請求項2、3又は4記載の蓄熱材用エマルションの製造方法。
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