JP2005144594A - アクチュエータ装置、アクチュエータ、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッド - Google Patents
アクチュエータ装置、アクチュエータ、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッド Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 高速で大きな機械的駆動変位が得られる無鉛アクチュエータがない。
【解決手段】 アクチュエータ装置は、アクチュエータ15及び駆動回路2、3を含み、アクチュエータ15は、振動板13上に、薄膜金属加熱パターン21と、無機エレクトレット層22と、エレクトレット電極23を順次積層した部材を設け、無機エレクトレット層22に対して駆動回路2によって駆動波形PV1を与え、薄膜金属加熱パターン21に対して駆動回路3によって駆動波形PV2を与えるとき、無機エレクトレット層22に対する駆動波形の印加タイミングと薄膜金属加熱パターン21に対する駆動波形の印加タイミングとを異ならせることで、高速で大きな変位量を得られる駆動を行うことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 アクチュエータ装置は、アクチュエータ15及び駆動回路2、3を含み、アクチュエータ15は、振動板13上に、薄膜金属加熱パターン21と、無機エレクトレット層22と、エレクトレット電極23を順次積層した部材を設け、無機エレクトレット層22に対して駆動回路2によって駆動波形PV1を与え、薄膜金属加熱パターン21に対して駆動回路3によって駆動波形PV2を与えるとき、無機エレクトレット層22に対する駆動波形の印加タイミングと薄膜金属加熱パターン21に対する駆動波形の印加タイミングとを異ならせることで、高速で大きな変位量を得られる駆動を行うことができる。
【選択図】 図1
Description
本発明はアクチュエータ装置、アクチュエータ、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドに関し、特に無機エレクトレット層を含むアクチュエータ装置、アクチュエータ、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドに関する。
インクジェットヘッドなどの液滴吐出ヘッド、マイクロポンプ、マイクロ光変調デバイス、光スイッチなどの光学デバイス、マイクロスイッチ(マイクロリレー)、マイクロ流量計、圧力センサ、マイクロモータなどの各種マイクロデバイスにおいては、マイクロアクチュエータが用いられる。
例えば、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置あるいは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置に使用するインクジェットヘッドでは、インク流路内のインクを加圧するエネルギーを発生するアクチュエータ手段として振動板を変形させる圧電素子などの圧電型アクチュエータや静電型アクチュエータ、あるいはインクを加熱、発泡させる発熱抵抗体を含むサーマル型アクチュエータが用いられる。
特開2001−10053号
このうち、サーマル型アクチュエータを用いる場合、発熱抵抗体に駆動波形を印加することでインクの加熱、発泡を行うために、連続的に発熱抵抗体を発熱させると、オーバーヒート状態になるので、発熱抵抗体の応答周波数が低下することがあるため、上記特許文献1に記載のものにあっては、発熱体をバイメタル構造としている。
上述したように、機械的駆動を行うことができるアクチュエータとしては、PZTを主体とする圧電型アクチュエータや静電力を用いる静電型アクチュエータがあるが、前者の圧電型アクチュエータは鉛を含むPZTが主体であり、また後者の静電型アクチュエータは発生できる駆動力がさほど大きくないという課題がある。
ところが、インクジェット記録装置においては、普通紙を使用した場合の染料系インクの問題点を改善するために、着色剤として有機顔料、カーボンブラック等を用いる顔料系インクが使用される傾向が進んでいる。顔料は、染料とは異なり水への溶解性がないため、通常は、顔料を分散剤とともに混合し、分散処理して水に安定分散させた状態の水性インクとして用いられる。
このような顔料系インクは粘度が高く、従前のアクチュエータを用いた液滴吐出ヘッドでは高速で安定して滴吐出を行うことが難しいという新たな課題を生じるようになっている。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、高速駆動で大きな変位量を得ることが可能なアクチュエータ装置、高速駆動で大きな変位量を得ることが可能なアクチュエータ、高速駆動で大きな変位量を得て高粘度液体を吐出可能な液滴吐出装置、高速駆動で大きな変位量を得て高粘度液体を吐出可能な液滴吐出ヘッドを提供することを目的とする。
本発明に係るアクチュエータ装置は、少なくとも無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材を含む変形可能な部材を有するアクチュエータを含み、前記無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを異なるタイミングで駆動する構成とした。
ここで、薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルに対して駆動波形を印加した後、予め定めた時間経過後に無機エレクトレット層に対して駆動波形を印加することができる。この場合、アクチュエータは無機エレクトレット層と薄膜金属パターン又は加熱バイメタルを挟んで対峙する無機材料膜層を有していることが好ましい。
また、無機エレクトレット層に対して駆動波形を印加した後、予め定めた時間経過後に薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルに対して駆動波形を印加することができる。この場合、アクチュエータは無機エレクトレット層と薄膜金属パターン又は加熱バイメタルを挟んで対峙する無機材料膜層を有していることが好ましい。
本発明に係るアクチュエータは、少なくとも無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材を含む変形可能な部材に設け、この変形可能な部材は周囲に屈曲部を有している構成としたものである。
ここで、無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材は屈曲部の内側に設けられていることが好ましい。
他の本発明に係るアクチュエータ装置は、上記本発明に係るアクチュエータ装置において本発明に係るアクチュエータを用いたものである。
本発明に係る液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドの液室の壁面が本発明に係るアクチュエータ装置のアクチュエータで構成されているものである。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、液室の壁面が本発明に係るアクチュエータで構成されているものである。
本発明に係るアクチュエータ装置によれば、無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを異なるタイミングで駆動するので、高速駆動で大きな変位量を得ることができる。
本発明に係るアクチュエータによれば、少なくとも無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材を含む変形可能な部材に設け、この変形可能な部材は周囲に屈曲部を有しているので、高速駆動で大きな変異量を得ることができる。
本発明に係る液滴吐出装置によれば、液滴吐出ヘッドの液室の壁面が本発明に係るアクチュエータ装置のアクチュエータで構成されているので、高速駆動で大きな変位量を得て高粘度液体を吐出することができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、液室の壁面が本発明に係るアクチュエータで構成されているので、高速駆動で大きな変位量を得て高粘度液体を吐出できる。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
先ず、本発明に係るアクチュエータ装置を含む本発明に係る液滴吐出装置の第1実施形態について図1を参照して説明する。なお、同図は同ヘッドの構成を説明する説明図である。
この液滴吐出装置は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッド1と、この液滴吐出ヘッド1に対して駆動波形PV1を与える駆動回路2及び駆動波形PV2を与える駆動回路3とを備えている。
先ず、本発明に係るアクチュエータ装置を含む本発明に係る液滴吐出装置の第1実施形態について図1を参照して説明する。なお、同図は同ヘッドの構成を説明する説明図である。
この液滴吐出装置は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッド1と、この液滴吐出ヘッド1に対して駆動波形PV1を与える駆動回路2及び駆動波形PV2を与える駆動回路3とを備えている。
液滴吐出ヘッド1は、液室11の隔壁を形成する隔壁部材12と、液室11の壁面を形成する変形可能な部材である振動板13と、液室11の他方の壁面を形成する部材を兼ねたノズル板14と、振動板13を変形させるアクチュエータ15とを有し、アクチュエータ15を駆動して振動板13を変形させることで液室11内の液体(インク)を加圧してノズル16から液滴(インク滴)17を吐出させる。
アクチュエータ15は、振動板13上に、薄膜金属加熱パターン(メタル膜ヒータ或いはマイクロヒータともいう。)21と、無機材料エレクトレット層(無機エレクトレット層)22と、エレクトレット電極23を順次積層した部材を設けたものである。なお、薄膜金属加熱パターンタ21は無機エレクトレット層22の共通電極も兼ねている。また、無機エレクトレット層22の詳細については後述する。
そして、このアクチュエータ15のエレクトレット電極23と薄膜金属加熱パターン21とを介して無機エレクトレット層22に対して駆動回路2によって駆動波形PV1を与え(パルス状電圧を印加する)、薄膜金属加熱パターン21に対して駆動回路2によって駆動波形PV2を与える。これらのアクチュエータ15と駆動回路2、3によって本発明に係るアクチュエータ装置及びこれを含む液滴吐出装置を構成している。
このように構成した液体吐出装置において、無機エレクトレット層22と薄膜金属加熱パターン21に対して異なるタイミングで駆動波形PV1、PV2を印加して駆動することで、高速駆動で大きな変位量を得ることができるようになる。
つまり、実験によると、例えば300dpiピッチアレイのアクチュエータ構成として、薄膜金属加熱パターン21のサイズを、幅55μm×長さ800μm×厚さ5μmとし、図2に示すように、この薄膜金属加熱パターン21に対して、電圧5V、突入電流約30mAの電力(駆動波形PV2)を印加する(同様に無機エレクトレット層22に対しても同じタイミングで駆動波形PV1を印加する)と、図3に示すように、薄膜金属加熱パターン21は緩やかに加熱され一定温度約250℃まで上昇するのに、230〜250μsの時間が必要であり、また、電圧をOFFした後、冷却で60℃まで低下するためにも230〜250μsの時間を必要とするので、加熱及び冷却までを1サイクルとしたとき、1サイクルの時間として500μsを見なければならない。
この場合、変位量としては、薄膜金属加熱パターン21及び無機エレクトレット層22の変形が重畳することによって、アクチュエータ15としては、1〜1.5μmの振動板変位が得られるが、2kHzを越える(周期にして500μsより短い)高速駆動を行うことは、上述したように加熱及び冷却の1サイクルとして500μsを見なければならないので、困難である。
そこで、上記実験において、図4に示すように、薄膜金属加熱パターン21に駆動波形PV2を印加して薄膜金属加熱パターン21が加熱膨張するとき、その立ち上がり途中で、薄膜金属加熱パターン21に駆動波形PV2を印加した後70〜100μsが経過した時に、無機エレクトレット層22に対して二次的に駆動波形PV1を印加すると、図5に実線で示すように、薄膜金属加熱パターン21の熱膨張と無機エレクトレット層22の機械的変位が重畳されて、アクチュエータ15は全体として、急峻に大きく変形し、加熱及び冷却までの1サイクルの時間を概ね250μsにすることができた。
したがって、薄膜金属加熱パターン21に駆動波形印加後所定時間経過した時に無機エレクトレット層22に対して駆動波形を印加する、つまり、薄膜金属加熱パターン21と無機エレクトレット層22に対する駆動波形の印加タイミングを異ならせることによって、1サイクルの時間が短くなり、上述した例では2kHzを越える(周期にして500μsより短い)駆動周波数での高速駆動を行うことができるようになる。
この構成において、無機エレクトレット層22の変位屈曲はテンシル型となるので、薄膜金属加熱パターン21が伸びる作用を助長する。すなわち、通常では2kHzであるが、この実施形態では4〜5kHzの高速駆動と大きな変位量を確保するができる。また、突入電流(電圧印加時の電流)の増加、無機エレクトレット層に対する印加電圧の増大、さらに放熱のヒートシンクを具備することによって、10〜20kHzで駆動できることが確認された。
なお、この実施形態では、無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン(マイクロヒータ)を積層した例で説明しているが、後述するように、無機エレクトレット層及び加熱バイメタルを積層した構成するとすることもでき、同様の作用が得られる。
このように、無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材を含む変形可能な部材を有するアクチュエータ備え、このアクチュエータの薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルに対して駆動波形を印加した後、予め定めた時間経過後に無機エレクトレット層に対して駆動波形を印加することで、薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルの変形に対して二次的に無機エレクトレット層の変形を重畳することができて、急峻に大きな変形を生起させることができ、アクチュエータを高速でかつ大きな変位量で駆動することができる。
また、無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層することで、アクチュエータの剛性が高くなり、振動板及びアクチュエータを含む部分の剛性が高くなり、高弾性変位駆動を行うことができ、高粘度液体を安定して吐出させることが可能になるとともに、ドット制御も容易になる。なお、この積層構造による作用効果は以下の実施形態についても同様に得られるものであるので、特に繰り返さない。
このように、アクチュエータ装置として高速で大きな変位量で駆動することができるので、液滴吐出ヘッドのアクチュエータ装置として用いた場合に、高粘度液体(例えばインク)であっても、安定して吐出することができる。
次に、本発明に係る液滴吐出装置の第2実施形態について図6をも参照して説明する。なお、同図は液滴吐出ヘッドのノズル部の拡大説明図である。
この実施形態の液滴吐出装置の構成は図1と同様であり、駆動回路2、3による無機エレクトレット層22、薄膜金属加熱パターン21に対する駆動波形PV1、PV2の印加方法が第1実施形態とは異なる。
この実施形態の液滴吐出装置の構成は図1と同様であり、駆動回路2、3による無機エレクトレット層22、薄膜金属加熱パターン21に対する駆動波形PV1、PV2の印加方法が第1実施形態とは異なる。
つまり、この実施形態では、駆動回路2からアクチュエータ15の無機エレクトレット層22に対して常時低周波の駆動波形を与えて無機エレクトレット層22を振動駆動させる。このとき、無機エレクトレット層22の変位屈曲はテンシル型となるので、オンデマンドに駆動波形を印加することで、薄膜金属加熱パターン21が伸びる作用を助長する。
液滴吐出ヘッド1の固有振動数にもよるが、無機エレクトレット層22を常時2〜18kHzの周波数で振動駆動した場合、液滴吐出ヘッド1のノズル16では図6に示すように、メニスカス面16aが微小振動する。
ここで、薄膜金属加熱パターン21に対して駆動波形を与えることによって、薄膜金属加熱パターン21が変形して振動板13が変位し、液滴が吐出される。この場合、ノズルメニスカスが微小振動していることにより、チクソインクや、ノズル近傍の高粘度化したインクは攪拌、拡散されているために、スムーズに吐出される。
つまり、チクソインク(チクソトロピー性インク)は、静的状態ではインク中の高分子と添加粒子(顔料など)の絡み合いで、見掛け粘度が大きく、流動性が小さい。このインクに対して、振動などの外力が作用すると、動的状態になって、分子の絡み合いが解かれ、見掛け粘度が小さくなって流動性が大きくなる。そこで、上述したように無機エレクトレット層22に対して常時低周波駆動波形を与えて振動を与えておくことにより、インク噴射が容易になる。
このように、顔料を含む高粘度インク(不揮発性インクが多く、また、ノズル詰まりが置きにくいという利点もある)を用いた場合でも、安定した吐出を行うことができるようになる。
次に、本発明に係る液滴吐出装置の第3実施形態について図7をも参照して説明する。なお、同図は同装置を構成する液滴吐出ヘッドの模式的説明図である。
この実施形態では、アクチュエータ15を、前記各実施形態と同様に、薄膜金属加熱パターン(メタル膜ヒータ或いはマイクロヒータともいう。)21と、無機材料エレクトレット層(無機エレクトレット層)22と、エレクトレット電極23を順次積層した部材を有するとともに、薄膜金属加熱パターン21の液室11側に変形可能な部材である振動板に相当する金属膜24及び無機材料膜層25を設けて構成し、無機材料膜層25で液室11の壁面を形成している。
この実施形態では、アクチュエータ15を、前記各実施形態と同様に、薄膜金属加熱パターン(メタル膜ヒータ或いはマイクロヒータともいう。)21と、無機材料エレクトレット層(無機エレクトレット層)22と、エレクトレット電極23を順次積層した部材を有するとともに、薄膜金属加熱パターン21の液室11側に変形可能な部材である振動板に相当する金属膜24及び無機材料膜層25を設けて構成し、無機材料膜層25で液室11の壁面を形成している。
無機材料膜層25としては、例えばSiO2(酸化珪素)、Si3N4、Ta2O5などを用いることが好ましい。また、無機エレクトレット層21の厚みは2μm、薄膜金属加熱パターン21の厚みは1μm、金属膜24の厚みは0.2〜1μm、無機材料膜層25の厚みは2μmとしている。さらに、加熱バイメタルとするときの厚みは2μmとする。
このような構成において、前述した第1実施形態と同様に、例えば300dpiピッチアレイのアクチュエータ構成として、薄膜金属加熱パターン21のサイズを、幅55μm×長さ800μm×厚さ5μmとし、この薄膜金属加熱パターン21に対して、図8に示すように、電圧5V、突入電流約30mAの駆動波形PV2を印加すると、前述した図3に示すように、薄膜金属加熱パターン21は緩やかに加熱され、加熱部分の熱伝達と熱膨張を生起するが、50〜100μsの間では、薄膜金属加熱パターン21が無機エレクトレット層22と無機材料膜層25との間に挟まれていることから、アクチュエータ15全体としての変位は小さく、0.5μm以下のコンプレッション型変形となる。しかし、このとき、加熱部の内部応力が高まる。
そこで、薄膜金属加熱パターン21に駆動波形を印加した後、図8に示すように、50〜150μs遅延させたタイミングで、無機エレクトレット層22に対して25Vの電圧(駆動波形PV1)を印加すると、急激に変位量が変化して1〜1.5μmの大きな変位が生起される。
このように、アクチュエータは無機エレクトレット層と薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを挟んで対峙する無機材料膜層を有していることによって、薄膜金属パターン又は加熱バイメタルに駆動波形を印加した後、所定時間が経過した時に無機エレクトレット層に駆動波形を印加することにより、高速駆動で大きな変位量を得ることができる。
次に、本発明に係る液滴吐出装置の第4実施形態について図9及び図10をも参照して説明する。なお、図9は同装置のアクチュエータに印加する駆動波形のタイミングの説明に供する説明図、図10は同装置の動作説明に供する模式的説明図である。
この実施形態におけるアクチュエータ装置の構成は、前述した第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
この実施形態におけるアクチュエータ装置の構成は、前述した第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
そして、この実施形態では、図10(a)に示す初期状態において、図9に示すように、駆動回路2から無機エレクトレット層22に対して25〜30Vの駆動波形(駆動電圧)を印加すると、同図(b)に示すように、無機エレクトレット層21に1〜50μsの時間経過によって0.1〜0.3μmのテンシル型屈曲が生起され、アクチュエータとしての屈曲方向が決定される(液室11側に屈曲するように構成する。)。
そこで、無機エレクトレット層22にテンシル型屈曲が生起されてアクチュエータとしての屈曲方向が決定された後、上述した例では無機エレクトレット層21に駆動波形を印加後1〜50μsを経過した時に、図9に示すように、駆動回路3から薄膜金属加熱パターン21に対して例えば5V、30mAの駆動波形を印加すると、屈曲方向が決定されて変位側が決まっているために、速やかに(50〜150μs後)に1〜1.5μmの熱膨張変位が生じる。
この場合、急激な変位量の変化は、0.01〜0.0025ms程度で生起して、所要の変位(例えば1μmの変位量と滴吐出に必要な圧力保持時間:ノズルメニスカスに圧力が伝達されるまでに要する時間)が得られる。
なお、ライン型ヘッドの場合、駆動周波数は1〜10kHzであり、シャトル型の場合に比べて、周期は1桁以上大きく(シャトル型の場合、滴量が5pl程度であれば20〜60kHzの駆動が必要になる)、しかもその印刷速度はA4サイズで100PPM程度が可能である。上述したように、振動板の変位と保持時間が必要であるが、ライン型ヘッドの場合の周期は相対的に長いために、無機エレクトレット層22と薄膜金属加熱パターン21の遅延駆動を行っても、余裕を持って振動板の変位と保持時間を確保することができる。
このように、無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材を含む変形可能な部材を有するアクチュエータ備え、このアクチュエータの無機エレクトレット層に対して駆動波形を印加した後、予め定めた時間経過後に薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルに対して駆動波形を印加することで、無機エレクトレット層の変位で変形方向が決定されているために薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルの変形が速やかに生起されて、急峻に大きな変形を生起させることができ、アクチュエータを高速でかつ大きな変位量で駆動することができる。また、薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルの変位方向が決定されていることからバラツキも低減する。
この場合、駆動周波数fに依存する周期(1/f)内で無機エレクトレット層22を駆動し、所定時間経過後薄膜金属加熱パターン22(又は加熱バイメタル)を駆動するとき、この時間内のデューティ比(駆動オン時間/駆動オフ時間の比)でみると、実験によれば、無機エレクトレット層22の駆動開始から周期の5〜10%の経過後に薄膜金属加熱パターン21を駆動し、周期の40〜60%の時間無機エレクトレット層22及び薄膜金属加熱パターン21の両者を駆動した後、周期の40〜50%の時間を駆動オフ(冷却時間)とすることの好ましいことが判明している。
次に、本発明に係る液滴吐出装置の第5実施形態について説明する。
この実施形態におけるアクチュエータ装置の構成は、前述した第3実施形態(図7)と同様であるので説明を省略する。
この実施形態におけるアクチュエータ装置の構成は、前述した第3実施形態(図7)と同様であるので説明を省略する。
そして、この実施形態では、駆動回路2から無機エレクトレット層21に対して25〜50Vの駆動波形(駆動電圧)を印加すると、無機材料膜層25によって変位が抑えられているため、無機エレクトレット層21に1〜50μsの時間経過によって0.1μm以下の微小なテンシル型屈曲が生起されるが、このとき内部応力が高まる。
そこで、無機エレクトレット層21に駆動波形を印加後1〜50μsを経過した時に、薄膜金属加熱パターン21に対して例えば5V、30mAの駆動波形を印加すると、屈曲方向が決定されて変位側が決まっているために、速やかに(50〜150μs後)に1〜1.5μmの熱膨張変位が生じる。
このように、無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材を含む変形可能な部材を有するアクチュエータ備え、このアクチュエータの無機エレクトレット層に対して駆動波形を印加した後、予め定めた時間経過後に薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルに対して駆動波形を印加することで、無機エレクトレット層の変位で変形方向が決定されているために薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルの変形が速やかに生起されて、急峻に大きな変形を生起させることができ、アクチュエータを高速でかつ大きな変位量で駆動することができる。
次に、本発明に係る液滴吐出装置の第6実施形態について図11及び図12をも参照して説明する。なお、図11は同液滴吐出装置の模式的説明図、図12は同装置の動作説明に供する模式的説明図である。
この実施形態では、振動板13に屈曲部13aを形成し、薄膜金属加熱パターン21にもこの振動板13の屈曲部13aに応じた屈曲部21aを形成したものである。
この実施形態では、振動板13に屈曲部13aを形成し、薄膜金属加熱パターン21にもこの振動板13の屈曲部13aに応じた屈曲部21aを形成したものである。
このアクチュエータ装置においては、図12(a)に示す初期状態から薄膜金属加熱パターン21及び無機エレクトレット層22に対して同時に駆動波形を印加する(駆動波形の印加タイミングとしては図2と同じである。)ことにより、薄膜金属加熱パターン21及び無機エレクトレット層22が変形して、30〜50μs後では0.1μm程度の小さな歪であるが、図12(b)に示すように屈曲部13a及び21aに応力が集中して、50〜100μs後には0.3μm以上となり、更に120〜200μs後に同図(c)に示すように急激な変形が生起されて1〜2μmの変形量が得られる。
このように、少なくとも無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材を含む変形可能な部材に設け、この変形可能な部材は周囲に屈曲部を有している構成とすることで、無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルに駆動波形を印加することによって急峻に大きく変形し、高速駆動で大きな変位量を得ることができる。
次に、本発明に係る液滴吐出装置の第7実施形態について図13をも参照して説明する。なお、図13は同液滴吐出装置の液滴吐出ヘッド部分の模式的説明図である。
この実施形態では、振動板13に屈曲部13aを形成し、薄膜金属加熱パターン21及び無機エレクトレット層22を振動板13の屈曲部13aよりも内側に設けたものである。
この実施形態では、振動板13に屈曲部13aを形成し、薄膜金属加熱パターン21及び無機エレクトレット層22を振動板13の屈曲部13aよりも内側に設けたものである。
このアクチュエータ装置においては、初期状態から薄膜金属加熱パターン21及び無機エレクトレット層22に対して同時に駆動波形を印加することにより、薄膜金属加熱パターン21及び無機エレクトレット層22が変形し、薄膜金属加熱パターン21及び無機エレクトレット層22を振動板13の屈曲部13aよりも内側に設けられていることにより、振動板13周辺に応力が集中し、振動板13の膨張と変位は10〜30μsで内部応力が大きくなり、変位は0.1μm程度の微小なものであるが、30〜50μs後には急激な変形が生起されて1〜2μmの変形量が得られる。
このように、少なくとも無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材を含む変形可能な部材に設け、この変形可能な部材は周囲に屈曲部を有し、無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材は屈曲部の内側に設けられている構成とすることで、無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルに駆動波形を印加することによって、第6実施形態よりも短い時間で急峻に大きな変形が得られて、高速駆動で大きな変位量を得ることができる。
次に、本発明に係る液滴吐出装置の第8実施形態について図14及び図15をも参照して説明する。なお、図14は同液滴吐出装置の模式的説明図、図15は同装置の動作説明に供する模式的説明図である。
この実施形態は、第1実施形態と第7実施形態とを組み合わせ、振動板13に屈曲部13aを形成し、薄膜金属加熱パターン21及び無機エレクトレット層22を振動板13の屈曲部13aよりも内側に設け、駆動回路2、3によって異なるタイミングで無機エレクトレット層22、薄膜金属加熱パターン21に駆動波形を印加するものである。
この実施形態は、第1実施形態と第7実施形態とを組み合わせ、振動板13に屈曲部13aを形成し、薄膜金属加熱パターン21及び無機エレクトレット層22を振動板13の屈曲部13aよりも内側に設け、駆動回路2、3によって異なるタイミングで無機エレクトレット層22、薄膜金属加熱パターン21に駆動波形を印加するものである。
すなわち、図15(a)に示す初期状態から駆動回路3によって薄膜金属加熱パターン21に駆動波形を印加することで、同図(b)に示すように、振動板13の屈曲部13aに応力集中が起こり、所定時間経過後に無機エレクトレット層22に対して駆動回路2によって駆動波形を印加することによって、同図(c)に示すように、急激に大きな変形が生起される。
次に、薄膜金属加熱パターン21に代えて加熱バイメタルを用いる本発明に係る液滴吐出装置の第9実施形態について図16を参照して説明する。なお、同図は同液滴吐出装置の模式的説明図である。
この場合、薄膜バイメタル30は熱膨張係数が大きく異なる2以上の薄膜(ここでは、2つの金属膜31,32)を貼り合せたものである。薄膜バイメタル30を構成する金属膜31,32の一方はヒータ(加熱電極:EL)となり、液室1形状に対応する形状にパターン加工している(マイクロヒータとしている)。また、この例では、薄膜バイメタル30が振動板を兼ねる構成としている。
この場合、薄膜バイメタル30は熱膨張係数が大きく異なる2以上の薄膜(ここでは、2つの金属膜31,32)を貼り合せたものである。薄膜バイメタル30を構成する金属膜31,32の一方はヒータ(加熱電極:EL)となり、液室1形状に対応する形状にパターン加工している(マイクロヒータとしている)。また、この例では、薄膜バイメタル30が振動板を兼ねる構成としている。
薄膜バイメタル30を構成する金属膜31、32として使用可能な金属または合金は、加熱酸化が小さな特性があり、結晶構造が使用温度範囲で変化が少ない材料、剛性が適当であること、内部応力で結晶変化や脆化が起こりにくいものが好ましく、より好ましくは半導体ホトリソ技術が精度良く実施できて微細加工が可能であることである。
例えば、Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Rh,PD,Pt,Au等は単体での貼り合わせでも用いることができる。剛性向上と耐食性向上更に電気抵抗上昇のため、Fe80B20,Fe80P20,Co80B20,Ni80P20,などの金属:非金属の合金があり、またFe90Zr10,Co60Zr40、など高剛性と非晶質金属合金等、信頼性(寿命)向上材料がある。
合金材料としては、Fe−Ni,Fe−Pt,Ni−Cu,Ni−Cr,Sn−Cu,Zn−Cu,Fe−Cr,W−Mo,Fe−Ti,Ni−Co、また3種以上の金属:非金属材料合金としては、Mn−Cu−Ni,Fe−Ni−Cr,Ni−Co−Mo,Ni−Cr−Mo−Ti,Fe−Cr−Mo,Fe−Cr−Mn等多くの組み合わせ合金がある。もちろん、低膨張材料として、インバー材との組み合わせは公知の通りである。
この場合、液体(インク)に接する金属薄膜は、クロム合金、マンガン合金、ステンレス合金組織の金属膜、ニッケル−クロム合金、ニッケル−コバルト−クロム合金、チタン−クロム合金等、金属不働態形成材料、あるいは、液体(インク)に不溶な白金、金、チタン、白金合金等、貴金属合金の金属を用いることで、直接インクへの熱拡散が作用する。また、金属不働態酸化物は接触角が小さく、インク濡れ性が良いことから、表面処理なくしてインク充填での残留気泡の発生を防止することができる。これにより、高速駆動と信頼性が大きなヘッドを得ることができる。
各金属膜は0.1〜50μm以下の膜厚であり、特に薄膜の熱蓄積と熱発散の時定数を小さくし、高速、高周波駆動を可能にするためには、金属膜は0.5〜5μm厚さで構成することが好ましい。
製法の一例を挙げると、シリコン基板(Si)に熱酸化膜(SiO2)1μmを作製し、この上にモリブデン(Mo)3μm(熱膨張係数4.5×E−6)をスパッタ製膜する。次に、白金(Pt)−ロジウム10%(Rh)(熱膨張係数8.7×E−6)を同様に3μm製膜する。そして、半導体技術のホトリソ工程で目的マイクロヒータ形状にするため、レジストパターンを焼き付け、公知のドライエッチング工法で微細加工する。このとき、振動板になる膜は熱酸化膜を介していることから、モリブデン膜は3μmから1μmまで薄膜化する。ドライエッチ法で5μm程度膜を掘り下げることになる。即ち、振動板の厚みを薄くすることで、アクチュエータ変位量を大きくし、振動子の固有駆動数を大きくすることで、高周波駆動が可能になる。
具体的には、例としてSiウエハ側を300dpiのチャンネルに異方性エッチングし、SiO2膜まで溝加工を行い、液室1を形成する。このとき、SiO2膜は薄膜バイメタル3の保護膜とすることもできるし、SiO2膜側を振動板とすることもできる。このSiO2膜上のマイクロバイモルフヒータの形状は、300dpi分割素子アクチエータでは、チャンネルピッチが84.6μmであり、支柱壁幅(隔壁幅)15μmを考慮すると、振動幅は振動素子50μmの両端に10μmが確保される。SiO2とMoで2μm厚さの10μmの振動幅を含むマイクロバイメタルアクチュエータが形成される。
この形状で個別チャンネルに3V、20μsの電圧を印加することで、Pt−Rhが約200℃に達すると、1.5mm長さのヒータの場合、約1.2μm程度Pt−Rhが伸延してする。
なお、この液滴吐出ヘッドにおける薄膜バイメタル30は振動板を兼ねているので、放熱は液体側(インク側)又は大気中側で行われる。放熱が困難な大気中側でも10kHz以上の駆動は可能である。
次に、同じく薄膜金属加熱パターン21に代えて加熱バイメタルを用いる本発明に係る液滴吐出装置の第10実施形態について図17を参照して説明する。なお、同図は同液滴吐出装置の模式的説明図である。
この実施形態では、第2実施形態とほぼ同様に、薄膜バイメタル30を無機エレクトレット層22と無機材料膜層25とで挟み、無機材料膜層25を液室1側に接する層としたものである。
この実施形態では、第2実施形態とほぼ同様に、薄膜バイメタル30を無機エレクトレット層22と無機材料膜層25とで挟み、無機材料膜層25を液室1側に接する層としたものである。
このような無機材料膜層とバイメタルとの積層構成は、無機材料であるセラミックス、SiO2、TiO2、SiON、SiNなどは、その熱膨張係数が3〜7×E−6であるが、剛性は、金属の3000〜8000kg/mm2に対して、10000〜15000kg/mm2であるため、この組み合わせにより、アクチュエータ変位量としてバイメタル構成と同等であるが、剛性が大きいことから高周波駆動と瞬時の圧力上昇が可能となって、滴噴射の高速化(Vjの向上)を図ることができる。
次に、本発明に係る液滴吐出装置の第11実施形態について図18を参照して説明する。なお、同図は同液滴吐出装置の模式的説明図である。
この実施形態は、第9実施形態において、薄膜バイメタル30を構成する金属薄膜31、32の2層間に絶縁膜33を介在したものであり、例えば、金属薄膜31は厚み1〜10μmの低膨張メタル、金属薄膜32は厚み1〜20μmの高膨張メタルで形成し、絶縁膜33としては厚み0.5〜2μmのSiO2やSiON、SiNを用いている。
この実施形態は、第9実施形態において、薄膜バイメタル30を構成する金属薄膜31、32の2層間に絶縁膜33を介在したものであり、例えば、金属薄膜31は厚み1〜10μmの低膨張メタル、金属薄膜32は厚み1〜20μmの高膨張メタルで形成し、絶縁膜33としては厚み0.5〜2μmのSiO2やSiON、SiNを用いている。
このように、薄膜バイメタル構成で、2層間に絶縁膜を介在し、ヒータ形成の1層の金属膜は目的形状にパターン化し(各チャンネルで独立させ)、絶縁膜で他層と分離することにより、印加電位はヒータパターンのみに印加されるので、電流の漏れが無く、効率良く加熱制御を行うことができ、熱効率が高い少電力素子が得られ、隣接チャンネルへの熱拡散による干渉を低減することができる。また、絶縁膜の熱伝導率と熱膨張率、比熱、膜厚を制御することによって、熱時定数や変位量の調整が可能になる。
次に、上記実施形態で説明した無機エレクトレット層について図19以降を参照して説明する。
無機エレクトレット層22は無機材料を配向分極、イオン分極、電子分極させたものである。
無機エレクトレット層22は無機材料を配向分極、イオン分極、電子分極させたものである。
無機材料は陽イオン性、負イオン性の材料、または陽極性、負極性の分子団、或いは、電気陰性度の異なるイオン元素、または原子団を含ませて結晶化させて、電界を与え配向分極、イオン分極、電子分極させて無機エレクトレット層を構成する。この無機エレクトレット層の両面の電極間に矩形波、あるいは交番電圧を印加することで、全体としてモノモルフ振動或いはモノモルフ機械的駆動が生起する。
このような無機エレクトレット層の製造工程の一例について図19及び図20を参照して説明する。
先ず、図19に示すように、例えば、コーデライトの2MgO・2Al2O3・5SiO2複合酸化物の微粉末(平均粒径0.5〜3μm)に微粉末(平均粒径0.5〜3μm)のLa2O3を0.5〜1wt%混合した材料132を、ベルト133上に供給してプレスローラ134で加圧、層厚規制をしながら厚み50μmのグリーンシート131を形成し、このグリーンシート131上にカバーシート135を供給して加圧ローラ136で加圧することで、図20(a)に示すようなグリーンシート部材を得る。
先ず、図19に示すように、例えば、コーデライトの2MgO・2Al2O3・5SiO2複合酸化物の微粉末(平均粒径0.5〜3μm)に微粉末(平均粒径0.5〜3μm)のLa2O3を0.5〜1wt%混合した材料132を、ベルト133上に供給してプレスローラ134で加圧、層厚規制をしながら厚み50μmのグリーンシート131を形成し、このグリーンシート131上にカバーシート135を供給して加圧ローラ136で加圧することで、図20(a)に示すようなグリーンシート部材を得る。
そして、図20(b)に示すようにグリーンシート131に脱水処理を施し、同図(b)に示すように400〜500℃で一次焼成を行い、更に同図(d)に示すように、850〜1200℃で焼成させると、高剛性(8000〜15000kg/mm2)の結晶歪みの大きな材料141が得られる。この材料141は結晶性と非晶体の混合組成である。
その後、同図(e)に示すように材料141の両面に金属電極142、143を付け、同図(f)に示すように大気中で、450℃雰囲気に置き、電極142、143間にDC300Vを印加させ、1時間保持した後、同(g)に示すようにDC300V電界印加のまま除冷させ室温になるまで放置する。これにより、同図(h)に示すように、配向、分極が生じて、結晶体部分は大きく歪みを保持したまま維持され、内部分極が大きい状態で無機エレクトレット化した無機エレクトレット層122が得られる。
このように、無機材料を配向分極、イオン分極、電子分極させたエレクトレット層を含むことで、無鉛の機械的強度の大きなアクチュエータを得ることができる。
ここで、無機材料には、強誘電体、誘電体、または固体電解質材料を含む、さらに、これらの粒子配向セラミックスを包含するものである。具体的な材料としては、ZrTiO4−SnO2TiO2、Fe2O3−NiO、Zn2TiO2、ZnNiTiO4、ZnFe2O4、K2OAl2O3−SiO2、CaOAl2O3、BaTiO3、Al2O3TiO2、MgOAl2O3等多くの分極性無機材料がある。
また、遷移金属系の添加により、多価原子団によるイオン化、配向分極化が可能である。結晶構造としてはスピネル構造、ペロブスカイト構造や焼結体の部分的に結晶化し、立方体、長方体、斜方体、菱面体等が存在する。
焼結温度は材料の組み合わせと組成比や、原材料の出発材料、さらに材料の粒子依存性による。200℃〜1200℃程度であるが、通常は300℃〜600℃で良い結果が得られる。吸湿性や印加電圧による強電界による分極反転が起き機能劣化が発生するが、本例の雰囲気制御条件では、材料の脱水性、高酸化物状態であり、また表面電極金属膜保護により、信頼性、寿命は満足される。
工程としては、これらの結晶の一部に歪みを形成させることが必要であるが、膜厚1μm〜300μm1μmで、300℃〜400℃の加熱温度で、印加電圧はDC50V〜500Vで十分である。
また、粒子配向セラミックスとは焼結させたイオン性の異方性微粉末を一次焼結させ、さらに高温の加圧方向性を持たせ、二次加圧焼結結晶化させると、配向性セラミックスが得られ分極した状態になる。
このように、無機材料が強誘電体、誘電体、又は固体電解質材料を含むことで、これらの材料は材料自体がダイポールモーメントを持ち分極配向性があるので、大きな変位量が得られる。
また、無機材料に目的金属イオンをイオン打ち込み装置で選択的に打ち込み組成化することもできる。
一般的には、有機材料では、コロナ放電によるものが多い。有機樹脂材料についてはフッソ樹脂系を始めナイロン(登録商標)11等、雑多のブレンド樹脂の表面に、電子打ち込みやイオン打ち込みにより結晶構造に欠陥発生を誘起させ、歪みを形成してイオン分極や電荷分極を行っている。
これに対して、無機材料ではシリコンウエハの表面熱酸化膜SiO2(結晶性酸化シリコン膜)に電子線を照射し、格子欠陥を発生させ、電荷トラップ層を形成して、エレクトレット層を作成することができる。しかしながら、無機材料では電子打ち込みによる結晶歪みは小さく、効果が殆ど無い。
そこで、ここでは、減圧中で金属イオンを打ち込むようにしている。このようなエレクトレット層の製作工程について図21を参照して説明する。
先ず、同図(a)に示すような複合酸化物151に、同図(b)に示すようにB、Sb、P、Ti、Bi、W、Mnなどの加速イオンを打ち込むと、同図(c)に示すように複合酸化物151の表面から100〜3000Å程度までイオンが入るが、ここでは、金属は混在する状態でイオン化していない結晶歪みのみである。
先ず、同図(a)に示すような複合酸化物151に、同図(b)に示すようにB、Sb、P、Ti、Bi、W、Mnなどの加速イオンを打ち込むと、同図(c)に示すように複合酸化物151の表面から100〜3000Å程度までイオンが入るが、ここでは、金属は混在する状態でイオン化していない結晶歪みのみである。
さらに、同図(d)に示すように、焼結拡散処理(加熱拡散処理)を行うことで、金属イオンは0.5〜10μmに達しイオン化する。これにより、結晶歪みとイオン効果の相効果が発揮できる。そして、同図(e)に示すように電極142,143を付してエレクトレット化を行ってエレクトレット層122を形成する。この場合、イオン分極と電荷分極、配向分極は大きいものが得られる。
このように、無機材料に目的金属イオンが選択的に打ち込まれて組成化されている構成とすることで、結晶歪みの増大と導入多価イオンの組成化でイオン配向と分極が大きくなる。
また、無機材料として、金属酸化物(TiO2、NiO、Al2O3、Fe2O3、MnO2、Co2O3/CoO、Sn2O3/SnO、ZnO等)やアルカリ土類元素化合酸化物(BaO、K2O、CaO、MgO等)と強誘電体、誘電体、または固体電解質材料を含むZrTiO4−SnO2TiO2、Fe2O3−NiO、Zn2TiO2、さらにZnNiTiO4、ZnFe2O4、K2OAl2O3−SiO2、CaOAl2O3、BaTiO3、Al2O3TiO2、MgOAl2O3等などの分極性無機材料の混合組成としたものを用いることができる。
特に、アルカリ土類元素の化合物は、その元素イオン団が陽イオンとして、他の無機材料が負イオンとして働き、その結晶性も大きく、イオン配向性が高い材料である。複合酸化物焼成時の酸化還元雰囲気制御で、イオン性の大きな材料が得られる。
この形態の概念を図22に示している。同図の例はイオン団の陰性度による分極の例であり、配向、分極が容易に起こる。実際は、Mg2Al2O4やK2SiO3、BaFe2O4等の複合塩の物質が高温と電界で分極する。
このように、無機材料が金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含む構成とすることで、イオン、電荷分極を大きくすることができる。
さらに、ZrTiO4−SnO2TiO2、Fe2O3−NiO、Zn2TiO2、さらにZnNiTiO4、ZnFe2O4、K2OAl2O3−SiO2、CaOAl2O3、BaTiO3、Al2O3TiO2、MgOAl2O3等などの分極性無機材料と、非金属元素のSiO2、B2O3、P2O5、Sb2O5、Bi2O3)の混合材料に、さらに遷移元素酸化物である(V2O5、Cr2O3、CuO、Y2O3、Zr2O3、Nb2O3、Mo2O3、PD2O3、La2O3等を混成させた複合酸化物を用いることができ、この遷移元素を含む複合酸化物の焼成状態と雰囲気により、原子価制御が容易である。これは結晶歪みの大きさを結果として制御することができる。
この形態の概念図を図23に示している。無機誘電体、多価非金属元素、遷移元素の混合酸化物は、焼成雰囲気、特に、多価原子と遷移元素は第2イオン化電位も低いことから、容易にイオン化し、加熱と電界でイオン分極、配向分極が生じる。
このように、無機材料が遷移金属酸化物を含む複合酸化物である構成とすることで、多価元素の持つ、結晶体の中で未結合イオンが保持でき、大きなイオン分極が得られる。
次に、無機エレクトレット層における無機材料の成膜には、気相成長法を用いることができる。この場合には、プラズマCVD装置を用いて、例えば図24に示すように、無機材料の昇華性の高い有機金属、塩化物を減圧、加熱により下地電極を構成する基板161を保持したチャンバー内162に導入し、プラズマや酸化反応ガスと接触させ、気相成長させる。なお、同図中、163はノズル、164はアノード、165はカソード、166はモータ、167はヒータ、168は摺動接点である。
また、蒸着法を用いることができる。この場合には、目的の無機材料や金属を加熱昇華させ、酸化性ガスをチャンバー内に導入し、蒸着法成膜で膜を形成する。
さらに、スパッタ法で金属材料はDC電源とスパッタガス(Ar,He,N2のどれかとさらにO2添加)による放電スパッタで行ない、導電性が無い無機材料は高周波電源を用いて同様のスパッタガスでRFスパッタを行なうことができる。
さらに、スパッタ法で金属材料はDC電源とスパッタガス(Ar,He,N2のどれかとさらにO2添加)による放電スパッタで行ない、導電性が無い無機材料は高周波電源を用いて同様のスパッタガスでRFスパッタを行なうことができる。
CVD装置やスパッタ装置は、薄膜形成に適しており、その膜成長10〜300Å/分程度である。また、基板加熱により結晶成長させながら成膜することが容易にできる。
これらのいずれかの方法を用いて成膜するとき、目的に合わせて、1層或いは多層成膜し、成膜時に基板加熱と反応ガスを導入し、プラズマ反応による酸化物や、チッ化物を形成させ、結晶性や非晶性を制御する。
この場合、形成される薄膜は平坦であるので、次に上電極を蒸着法やホトリソ法で形成し、加熱と電界により、無機エレクトレット層とする。
また、薄膜で分極効果が大きいことからアクチエータとして、マルチ化で各素子化するとき、電極の個別化のみで、素子分割せずとも各素子間の相互干渉は小さくなる。
このように、無機材料を気相成長法又は蒸着法製膜で基板上に1層又は多層成膜し、成膜時に基板加熱と反応ガスを導入して、酸化物又はチッ化物を形成して結晶性又は非晶性を制御してエレクトレット層を形成することで、結晶性や非晶性を容易に制御することができる。
1…液滴吐出ヘッド、2、3…駆動回路、11…液室、12…隔壁部材、13…振動板、14…ノズル板、15…アクチュエータ、16…ノズル、21…薄膜金属加熱パターン、22…無機エレクトレット層、30…薄膜バイメタル。
Claims (10)
- 少なくとも無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材を含む変形可能な部材を有するアクチュエータを含むアクチュエータ装置であって、前記無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを異なるタイミングで駆動することを特徴とするアクチュエータ装置。
- 請求項1に記載のアクチュエータ装置において、前記薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルに対して駆動波形を印加した後、予め定めた時間経過後に前記無機エレクトレット層に対して駆動波形を印加することを特徴とするアクチュエータ装置。
- 請求項2に記載のアクチュエータ装置において、前記アクチュエータは前記無機エレクトレット層と前記薄膜金属パターン又は加熱バイメタルを挟んで対峙する無機材料膜層を有していることを特徴とするアクチュエータ装置。
- 請求項1に記載のアクチュエータ装置において、前記無機エレクトレット層に対して駆動波形を印加した後、予め定めた時間経過後に前記薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルに対して駆動波形を印加することを特徴とするアクチュエータ装置。
- 請求項4に記載のアクチュエータ装置において、前記アクチュエータは前記無機エレクトレット層と前記薄膜金属パターン又は加熱バイメタルを挟んで対峙する無機材料膜層を有していることを特徴とするアクチュエータ装置。
- 少なくとも無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材を含む変形可能な部材に設け、この変形可能な部材は周囲に屈曲部を有していることを特徴とするアクチュエータ。
- 請求項6に記載のアクチュエータにおいて、前記無機エレクトレット層及び薄膜金属加熱パターン又は加熱バイメタルを積層した部材は前記屈曲部の内側に設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載のアクチュエータ装置において、前記アクチュエータが請求項6又は7に記載のアクチュエータであることを特徴とするアクチュエータ装置。
- ノズルが連通する液室の壁面を変形させることで前記ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備えた液体吐出装置において、前記液室の壁面が、請求項1ないし5及び8のいずれかに記載のアクチュエータ装置のアクチュエータの一部で構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
- ノズルが連通する液室の壁面を変形させることで前記ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドにおいて、請求項6又は7に記載のアクチュエータを備え、このアクチュエータの一部で前記液室の壁面を形成していることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
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