JP2005143979A - 神経再生用チューブ - Google Patents
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Abstract
【課題】外部から圧迫を受けやすい部位に供することができる耐キンキング(折れる現象に耐える)を有し、術後に取り出す必要がない神経再生チューブを提供する。
【解決手段】生体吸収性高分子から成る管状体の管腔内に合成生体吸収性高分子から成るファイバーを含み、その湾曲率が50〜80%の範囲にある耐キンキング性を有する神経再生用チューブ。
但し、湾曲率は、サンプルを3cmの長さに切断し、このサンプルの両端から徐々に力を加えてチューブ体をU字状に湾曲させていき、完全に折れ曲がった時のサンプル両端の距離(Wcm)を測定し、これを以下の計算式にあてはめたものである。
湾曲率(%)=(1−W/3)×100
【選択図】図1
【解決手段】生体吸収性高分子から成る管状体の管腔内に合成生体吸収性高分子から成るファイバーを含み、その湾曲率が50〜80%の範囲にある耐キンキング性を有する神経再生用チューブ。
但し、湾曲率は、サンプルを3cmの長さに切断し、このサンプルの両端から徐々に力を加えてチューブ体をU字状に湾曲させていき、完全に折れ曲がった時のサンプル両端の距離(Wcm)を測定し、これを以下の計算式にあてはめたものである。
湾曲率(%)=(1−W/3)×100
【選択図】図1
Description
本発明は、特に外部から圧迫を受けやすい部位に供することができる耐キンキング(折れる現象に耐える)を有する神経再生用チューブに関し、生体吸収性材料のみからなっているので、術後に取り出す必要がない神経再生チューブを提供するものである。
末梢神経の再生に関し、1982年に報告されたLundbergらによるシリコーンチューブモデルの発表以来、シリコーンチューブを用いて再生可能な断端間距離を延長するための試みがなされてきた。しかしながら、シリコーンチューブには毛細血管が生成することができず、また、シリコーンチューブの壁は栄養分が透過することができないため、神経細胞には栄養分が十分に補給されない。よって、シリコーンチューブでは満足のいく神経再生は得られておらず、さらに神経が再生した後も異物として残るため、臨床では成功していない。
これに対し、生体吸収性高分子を用いる神経欠損の再生に関する研究開発が進められ、多くの技術が開示されている。
例えば、特開平5−237139号公報(特許文献1)には、ラミニン及びフィブロネクチンをコーティングしたコラーゲンファイバーの束からなる神経再生補助材を開示している。
WO98/22155号公報(特許文献2)には、生体分解吸収性材料のチューブと、その内腔に該チューブの軸線にほぼ平行に沿って該チューブを貫通する空隙を有するコラーゲン体からなり、該空隙がコラーゲン、ラミニン等を含むマトリックスゲルで充填されている人工神経管を開示している。
特開2000−325463号公報(特許文献3)には、生体内にて吸収性を有する材料よりなる繊維を束ねたことを特徴とする神経再建用基材を開示している。
特開2001−70436号公報(特許文献4)には、スポンジ、チューブ、コイル等のコラーゲン支持体を用いる技術を開示している。
特開2002−320630号公報(特許文献5)には、生体分解性材料または生体吸収性材料で形成された支持体が、生体分解性材料または生体吸収性材料で形成されたスポンジ状の微細なマトリックスおよび直線状の生体組織または器官誘導経路を備えてなることを特徴とする生体組織または器官再生用器具を開示している。
更に、本出願人の出願に係る特開2003−19196号公報(特許文献6) には、分解吸収期間のことなる生体吸収性高分子から成るスポンジと筒状強化材より成る神経再生チューブが開示される。
例えば、特開平5−237139号公報(特許文献1)には、ラミニン及びフィブロネクチンをコーティングしたコラーゲンファイバーの束からなる神経再生補助材を開示している。
WO98/22155号公報(特許文献2)には、生体分解吸収性材料のチューブと、その内腔に該チューブの軸線にほぼ平行に沿って該チューブを貫通する空隙を有するコラーゲン体からなり、該空隙がコラーゲン、ラミニン等を含むマトリックスゲルで充填されている人工神経管を開示している。
特開2000−325463号公報(特許文献3)には、生体内にて吸収性を有する材料よりなる繊維を束ねたことを特徴とする神経再建用基材を開示している。
特開2001−70436号公報(特許文献4)には、スポンジ、チューブ、コイル等のコラーゲン支持体を用いる技術を開示している。
特開2002−320630号公報(特許文献5)には、生体分解性材料または生体吸収性材料で形成された支持体が、生体分解性材料または生体吸収性材料で形成されたスポンジ状の微細なマトリックスおよび直線状の生体組織または器官誘導経路を備えてなることを特徴とする生体組織または器官再生用器具を開示している。
更に、本出願人の出願に係る特開2003−19196号公報(特許文献6) には、分解吸収期間のことなる生体吸収性高分子から成るスポンジと筒状強化材より成る神経再生チューブが開示される。
一般に、神経繊維が切断されると、ワーラー変性によりシュワン管という細胞柱が形成され、中枢側からの軸索が伸びやすい環境が形成される。すなわち、神経損傷の再生には、断端間を貫通する空間が必要とされる。ところが、体には屈曲運動や筋肉活動などにより外部から圧迫を受けやすい部位が多数存在する。例えば関節は外部から屈曲作用を受ける部位であり、このような体の部位は、神経繊維が再生するまでの間に、外部から屈曲作用を頻繁に受ける環境となる。
先に開示された技術では、生体吸収性の神経再生基材は管構造あるいは断端間を貫通する空間を持っているものの、外部からの圧迫に対して十分な強度を有しているとは言えない。よって、これらの生体吸収性基材を関節など外部から圧迫を受けやすい部位に供した場合、基材がキンキング(折れる現象)を起こして閉塞部位が生じ、神経細胞の伸長に必要な貫通空間の確保が困難となり、神経の十分な伸長が起こらなくなることが懸念される。
先に開示された技術では、生体吸収性の神経再生基材は管構造あるいは断端間を貫通する空間を持っているものの、外部からの圧迫に対して十分な強度を有しているとは言えない。よって、これらの生体吸収性基材を関節など外部から圧迫を受けやすい部位に供した場合、基材がキンキング(折れる現象)を起こして閉塞部位が生じ、神経細胞の伸長に必要な貫通空間の確保が困難となり、神経の十分な伸長が起こらなくなることが懸念される。
本発明は、耐キンキング性に優れ、外部から圧迫を受けやすい部位にも供することができる神経再生チューブを提供することを目的とする。さらに、生体吸収性材料のみから成っているので、術後に取り出す必要がない神経再生チューブを提供することを目的とする。
上記課題を鋭意研究した結果、生体吸収性高分子から成る筒状体の管腔に、合成生体吸収性高分子から成るファイバー束を含むことにより、適度な強度と柔軟性を有することができ、その結果、耐キンキング性に優れ、外部から圧迫を受けやすい部位にも供することができるとともに、術後に取り出す必要がない神経再生チューブを完成した。
すなわち、本発明は、以下の構成を特徴とする。
項1.生体吸収性高分子から成る管状体の管腔内に合成生体吸収性高分子から成るファイバーを含み、その湾曲率が50〜80%の範囲にある耐キンキング性を有する神経再生用チューブ。
但し、湾曲率は、サンプルを3cmの長さに切断し、このサンプルの両端から徐々に力を加えてチューブ体をU字状に湾曲させていき、完全に折れ曲がった時のサンプル両端の距離(Wcm)を測定し、これを以下の計算式にあてはめたものである。
湾曲率(%)=(1−W/3)×100
項2.管状体に対するファイバーの占有率を10〜70%の範囲とした項1記載の神経再生用チューブ。
但し、占有率は以下の計算式による。
ファイバー占有率(%)
=(ファイバー総断面積÷チューブ管腔断面積)×100(%)
項3.生体吸収性高分子から成る管状体が、スポンジ、組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュ、フィルムの少なくとも1つから構成される項1または、2に記載の神経再生用チューブ。
項4.生体吸収性高分子から成るファイバーがモノフィラメント、マルチフィラメント、スリットヤーン、紐である項1または2に記載の神経再生用チューブ。
項5.管状体が、生体吸収性高分子から成る被覆層と複合化されたものである項3に記載の神経再生用チューブ。
項6.さらに細胞接着性因子を含む項1〜4のいずれかに記載の神経再生用チューブ。
項7.さらに細胞成長因子を含む項1〜5のいずれかに記載の神経再生用チューブ。
項8.シュワン細胞がチューブの内面に播種されたことを特徴とする項1〜6のいずれかに記載の神経再生用チューブ。
すなわち、本発明は、以下の構成を特徴とする。
項1.生体吸収性高分子から成る管状体の管腔内に合成生体吸収性高分子から成るファイバーを含み、その湾曲率が50〜80%の範囲にある耐キンキング性を有する神経再生用チューブ。
但し、湾曲率は、サンプルを3cmの長さに切断し、このサンプルの両端から徐々に力を加えてチューブ体をU字状に湾曲させていき、完全に折れ曲がった時のサンプル両端の距離(Wcm)を測定し、これを以下の計算式にあてはめたものである。
湾曲率(%)=(1−W/3)×100
項2.管状体に対するファイバーの占有率を10〜70%の範囲とした項1記載の神経再生用チューブ。
但し、占有率は以下の計算式による。
ファイバー占有率(%)
=(ファイバー総断面積÷チューブ管腔断面積)×100(%)
項3.生体吸収性高分子から成る管状体が、スポンジ、組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュ、フィルムの少なくとも1つから構成される項1または、2に記載の神経再生用チューブ。
項4.生体吸収性高分子から成るファイバーがモノフィラメント、マルチフィラメント、スリットヤーン、紐である項1または2に記載の神経再生用チューブ。
項5.管状体が、生体吸収性高分子から成る被覆層と複合化されたものである項3に記載の神経再生用チューブ。
項6.さらに細胞接着性因子を含む項1〜4のいずれかに記載の神経再生用チューブ。
項7.さらに細胞成長因子を含む項1〜5のいずれかに記載の神経再生用チューブ。
項8.シュワン細胞がチューブの内面に播種されたことを特徴とする項1〜6のいずれかに記載の神経再生用チューブ。
本発明の神経再生チューブは、生体吸収性高分子から成る筒状体、およびその管腔に、合成生体吸収性高分子から成るファイバー束を含むことにより、耐キンキング性に優れ、外部から圧迫を受けやすい部位にも供することができるとともに、術後に取り出す必要がない特徴を有する。
本発明において、管状体を成す生体吸収性高分子としては、合成生体吸収性高分子と天然生体吸収性高分子のいずれも使用することができる。合成生体吸収性高分子としては、脂肪族ポリエステル(ポリグリコール酸、ポリ乳酸(D体、L体、DL体)、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ-p-ジオキサノン、ポリトリメチレンカーボネート及びそれらの共重合体、例えば乳酸−ε−カプロラクトン共重合体、乳酸−グリコール酸共重合体、グリコール酸−トリメチレンカーボネート共重合体、グリコール酸−トリメチレンカーボネート-p-ジオキサノン共重合体、グリコール酸−トリメチレンカーボネート−ε−カプロラクトン共重合体など)、ポリエステルエーテル(ポリ−1,4−ジオキサノン−2−オン、ポリ−1,5−ジオキセパン−2−オン、エチレングリコール−前記脂肪族エステル共重合体や、前記脂肪族ポリエステルとポリエステルエーテルとの共重合体)が挙げられる。天然生体吸収性高分子としては、コラーゲン、ゼラチン、キチン、アルギン酸等が例示される。
これらの生体吸収性高分子は、その特性に応じて、スポンジ、組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュ、フィルムに成形加工することができ、この中から少なくとも1つの形態により、管状体を構成する。
特に、好ましい態様としては、フレキシブルで適度な伸びと空隙を有することから組紐が例示できる。
なお、該組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュを構成する糸条としては、直径10〜2000μm程度、好ましくは50〜500μm程度のモノフィラメント、マルチフィラメントを用い、これらから構成される管状体の厚みは10〜2000μm程度、好ましくは50〜500μm程度とする。
該管状体を構成する糸条として、好ましい合成生体吸収性高分子としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンおよびそれらの共重合体などが例示される。特に、比較的分解速度が遅く、適度な硬さを有するポリ乳酸(D体、L体、DL体)が好ましい例として例示できる。
一方、スポンジを形成する好ましい合成生体吸収性高分子としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンおよびそれらの共重合体などが例示される。
該スポンジの厚みは0.005〜5mm程度、好ましくは0.02〜2mm程度であり、スポンジの孔径は1〜500μm程度、好ましくは10〜200μm程度とする。また、スポンジの空隙率は、50〜99%程度、好ましくは80〜98%程度とする。
なお、該スポンジは、それ単独で管状体を構成することもできるが、これを前記組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュ、フィルム等で形成された管状体と一体化、即ち、浸透、被覆、貼付け、皮膜形成等して複合化することもでき、これにより、柔軟性、強度の付与、或いは、細胞接着性等に寄与するため好ましい形態である。
本発明はこれらのスポンジ、組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュ、フィルムの中から少なくとも1つの形態、あるいは複数の形態を複合化することにより管状体を構成する。
また、かかる管状体は、更に、下記のファイバー束と共に、コラーゲンによる皮膜形成を行う構成としてもよい。
これらの生体吸収性高分子は、その特性に応じて、スポンジ、組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュ、フィルムに成形加工することができ、この中から少なくとも1つの形態により、管状体を構成する。
特に、好ましい態様としては、フレキシブルで適度な伸びと空隙を有することから組紐が例示できる。
なお、該組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュを構成する糸条としては、直径10〜2000μm程度、好ましくは50〜500μm程度のモノフィラメント、マルチフィラメントを用い、これらから構成される管状体の厚みは10〜2000μm程度、好ましくは50〜500μm程度とする。
該管状体を構成する糸条として、好ましい合成生体吸収性高分子としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンおよびそれらの共重合体などが例示される。特に、比較的分解速度が遅く、適度な硬さを有するポリ乳酸(D体、L体、DL体)が好ましい例として例示できる。
一方、スポンジを形成する好ましい合成生体吸収性高分子としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンおよびそれらの共重合体などが例示される。
該スポンジの厚みは0.005〜5mm程度、好ましくは0.02〜2mm程度であり、スポンジの孔径は1〜500μm程度、好ましくは10〜200μm程度とする。また、スポンジの空隙率は、50〜99%程度、好ましくは80〜98%程度とする。
なお、該スポンジは、それ単独で管状体を構成することもできるが、これを前記組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュ、フィルム等で形成された管状体と一体化、即ち、浸透、被覆、貼付け、皮膜形成等して複合化することもでき、これにより、柔軟性、強度の付与、或いは、細胞接着性等に寄与するため好ましい形態である。
本発明はこれらのスポンジ、組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュ、フィルムの中から少なくとも1つの形態、あるいは複数の形態を複合化することにより管状体を構成する。
また、かかる管状体は、更に、下記のファイバー束と共に、コラーゲンによる皮膜形成を行う構成としてもよい。
ファイバー束を成す好ましい合成生体吸収性高分子としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンおよびそれらの共重合体などが例示される。特に、その共重合比により、柔軟性の調整が可能な乳酸とε−カプロラクトンとの共重合体が好ましい例として例示できる。
本発明のファイバー束の構成要素としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、紐などの繊維が例示され、その形態は、ストレート(直線型)でもウーリング(捲縮型)でもよい。該繊維の直径は10〜300μm程度、好ましくは15〜150μm程度である。チューブ管腔断面積当たりのファイバー断面積合計の占める割合をファイバー占有率とすると、ファイバー束を挿入したチューブ管腔のファイバー占有率は10〜70%程度、好ましくは20〜50%、より好ましくは、30〜45%程度であり、耐キンキング性と細胞増殖のバランスをとることが重要である。
本発明のファイバー束の構成要素としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、紐などの繊維が例示され、その形態は、ストレート(直線型)でもウーリング(捲縮型)でもよい。該繊維の直径は10〜300μm程度、好ましくは15〜150μm程度である。チューブ管腔断面積当たりのファイバー断面積合計の占める割合をファイバー占有率とすると、ファイバー束を挿入したチューブ管腔のファイバー占有率は10〜70%程度、好ましくは20〜50%、より好ましくは、30〜45%程度であり、耐キンキング性と細胞増殖のバランスをとることが重要である。
本発明の神経再生チューブの内径は0.1〜10mm程度、好ましくは0.5〜8mm程度とする。また、その長さは所望により、数ミリから数センチ程度にして用いる。
細胞接着性因子としては、コラーゲン(I型、IV型など)、ラミニン、フィブロネクチン、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸ペプチド)などが挙げられる。
細胞成長因子としては、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子(BDNF、CNTF、NT-3)、神経突起進展因子、などが挙げられる。
細胞接着性因子及び細胞成長因子は、管状体の内部に含まれていてもよく、管状体の表面にコーティングされていてもよい。また細胞接着性因子及び細胞成長因子は、ファイバー束の表面にコーティングされているのが好ましい。
シュワン細胞は、管状体内面およびファイバー束に接着させるため、管腔内全体に播種するのが好ましい。
本発明は、かかる構成において、湾曲率を50〜80%の範囲としたことに特徴を有する。即ち、この範囲にあることが、生体の姿勢変化に対応でき、また、組織再生も阻害しないため好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
細胞接着性因子としては、コラーゲン(I型、IV型など)、ラミニン、フィブロネクチン、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸ペプチド)などが挙げられる。
細胞成長因子としては、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子(BDNF、CNTF、NT-3)、神経突起進展因子、などが挙げられる。
細胞接着性因子及び細胞成長因子は、管状体の内部に含まれていてもよく、管状体の表面にコーティングされていてもよい。また細胞接着性因子及び細胞成長因子は、ファイバー束の表面にコーティングされているのが好ましい。
シュワン細胞は、管状体内面およびファイバー束に接着させるため、管腔内全体に播種するのが好ましい。
本発明は、かかる構成において、湾曲率を50〜80%の範囲としたことに特徴を有する。即ち、この範囲にあることが、生体の姿勢変化に対応でき、また、組織再生も阻害しないため好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
ポリ乳酸繊維(396dtx、96フィラメント)から構成される24口の組紐を、直径2mmの金属製ロッドに装着した。これを、乳酸−ε−カプロラクトン共重合体(ラクチド/カプロラクトン=50/50モル比)のジオキサン溶液(5重量%)に浸漬後、−40℃にて凍結してから30℃で24時間凍結乾燥し、さらに、金属製ロッドを取り外してから、チューブを反転した。このようにして、内層に乳酸−ε−カプロラクトン共重合体スポンジ、外層にポリ乳酸組紐からなる外径2.5mm、内径1.8mmの管状体を得た。
このスポンジ複合体にコラーゲン(Type I、豚腱由来アテロコラーゲン)の0.1%溶液を十分に浸透させ、60℃にて3時間風乾し、内面を含む全体にType Iコラーゲンがコーティングされたチューブを得た(チューブA)。
乳酸−ε−カプロラクトン共重合体(ラクチド/カプロラクトン=75/25モル比)からなる直径80μmのモノフィラメント糸を108本、216本、および324本の束とし、コラーゲン(Type I、豚腱由来アテロコラーゲン)の0.1%溶液に十分浸漬した後、室温にて3時間風乾した。これらをチューブAに挿入し、全体にType Iコラーゲンがコーティングされたファイバー束108本、216本、および324本を含むチューブを得た(それぞれ、チューブB、チューブC、チューブD)。この時のチューブ管腔のファイバー占有率は、チューブBでは21.3%、チューブCでは、42.5%、チューブDでは63.8%であった。
表1のように、ファイバー束を挿入することにより、湾曲率は増加し、耐キンキング性の向上が確認できた。また、ファイバー挿入数が216本以上では、湾曲率はほぼ平衡に達した。
このスポンジ複合体にコラーゲン(Type I、豚腱由来アテロコラーゲン)の0.1%溶液を十分に浸透させ、60℃にて3時間風乾し、内面を含む全体にType Iコラーゲンがコーティングされたチューブを得た(チューブA)。
乳酸−ε−カプロラクトン共重合体(ラクチド/カプロラクトン=75/25モル比)からなる直径80μmのモノフィラメント糸を108本、216本、および324本の束とし、コラーゲン(Type I、豚腱由来アテロコラーゲン)の0.1%溶液に十分浸漬した後、室温にて3時間風乾した。これらをチューブAに挿入し、全体にType Iコラーゲンがコーティングされたファイバー束108本、216本、および324本を含むチューブを得た(それぞれ、チューブB、チューブC、チューブD)。この時のチューブ管腔のファイバー占有率は、チューブBでは21.3%、チューブCでは、42.5%、チューブDでは63.8%であった。
表1のように、ファイバー束を挿入することにより、湾曲率は増加し、耐キンキング性の向上が確認できた。また、ファイバー挿入数が216本以上では、湾曲率はほぼ平衡に達した。
なお、湾曲率は、サンプルを3cmの長さに切断し、このサンプルの両端から徐々に力を加えてチューブ体をU字状に湾曲させていき、完全に折れ曲がった時のサンプル両端の距離(Wcm)を測定し、これを以下の計算式にあてはめたものである。
湾曲率(%)=(1−W/3)×100
また、ファイバー占有率は以下の計算式によった。
ファイバー占有率(%)
=(ファイバー総断面積÷チューブ管腔断面積)×100(%)
湾曲率(%)=(1−W/3)×100
また、ファイバー占有率は以下の計算式によった。
ファイバー占有率(%)
=(ファイバー総断面積÷チューブ管腔断面積)×100(%)
ポリ乳酸繊維(110dtx、32フィラメント)から構成される24口の組紐を内径2.5mmのガラス管の管腔に装着した。さらにガラス管腔内に、乳酸−ε−カプロラクトン共重合体(ラクチド/カプロラクトン=50/50モル比)のジオキサン溶液(5重量%)を注入し、直径1mmの金属製ロッドをガラス管腔の中心に位置するよう挿入した後、−40℃にて凍結してから30℃で24時間凍結乾燥した。このようにして、内層に乳酸−ε−カプロラクトン共重合体スポンジ、外層にポリ乳酸組紐からなる外径2.2mm、内径1.5mmの管状体を得た。
コラーゲン(Type I、豚腱由来アテロコラーゲン)の0.1%溶液を上記スポンジ複合体に十分に浸透させ、60℃にて3時間風乾した。内面を含む全体にType Iコラーゲンがコーティングされたチューブ(A)を得た。
乳酸−ε−カプロラクトン共重合体(ラクチド/カプロラクトン=75/25モル比)からなる直径80μmのモノフィラメント糸を108本の束とし、コラーゲン(Type I、豚腱由来アテロコラーゲン)の0.1%溶液に十分浸漬した後、室温にて3時間風乾した。これを先のチューブに挿入し、全体にType Iコラーゲンがコーティングされたファイバー束を含むチューブ(B)を得た。この時のチューブ管腔のファイバー占有率は、30.5%であった。
得られたチューブは、図1(チューブの横断面の35倍拡大写真)に示すように、チューブ管腔にファイバー束を含有する。
表2のように、ファイバー束を挿入することにより、湾曲率が向上した。また、ファイバー束を含まないチューブは、一度キンキングを起こすとその部分が折れ曲がりやすくなるため、繰り返し力を加えて湾曲させると閉塞部位が生じやすくなり、湾曲率はさらに16.8%まで低下する。一方、ファイバー束を含むチューブBは、湾曲率の低下は見られず、外部からの頻繁な屈曲作用に耐性を有することが確認された。
コラーゲン(Type I、豚腱由来アテロコラーゲン)の0.1%溶液を上記スポンジ複合体に十分に浸透させ、60℃にて3時間風乾した。内面を含む全体にType Iコラーゲンがコーティングされたチューブ(A)を得た。
乳酸−ε−カプロラクトン共重合体(ラクチド/カプロラクトン=75/25モル比)からなる直径80μmのモノフィラメント糸を108本の束とし、コラーゲン(Type I、豚腱由来アテロコラーゲン)の0.1%溶液に十分浸漬した後、室温にて3時間風乾した。これを先のチューブに挿入し、全体にType Iコラーゲンがコーティングされたファイバー束を含むチューブ(B)を得た。この時のチューブ管腔のファイバー占有率は、30.5%であった。
得られたチューブは、図1(チューブの横断面の35倍拡大写真)に示すように、チューブ管腔にファイバー束を含有する。
表2のように、ファイバー束を挿入することにより、湾曲率が向上した。また、ファイバー束を含まないチューブは、一度キンキングを起こすとその部分が折れ曲がりやすくなるため、繰り返し力を加えて湾曲させると閉塞部位が生じやすくなり、湾曲率はさらに16.8%まで低下する。一方、ファイバー束を含むチューブBは、湾曲率の低下は見られず、外部からの頻繁な屈曲作用に耐性を有することが確認された。
なお、湾曲率、ファイバー占有率は実施例1と同じ方法により求めた。
本発明の神経再生チューブは、外部から圧迫を受けやすい部位にも供することができるとともに、生体吸収性材料のみからなっているので、術後に取り出す必要がない。
Claims (8)
- 生体吸収性高分子から成る管状体の管腔内に合成生体吸収性高分子から成るファイバーを含み、その湾曲率が50〜80%の範囲にある耐キンキング性を有する神経再生用チューブ。
但し、湾曲率は、サンプルを3cmの長さに切断し、このサンプルの両端から徐々に力を加えてチューブ体をU字状に湾曲させていき、完全に折れ曲がった時のサンプル両端の距離(Wcm)を測定し、これを以下の計算式にあてはめたものである。
湾曲率(%)=(1−W/3)×100 - 管状体に対するファイバーの占有率を10〜70%の範囲とした請求項1記載の神経再生用チューブ。
但し、占有率は以下の計算式による。
ファイバー占有率(%)
=(ファイバー総断面積÷チューブ管腔断面積)×100(%) - 生体吸収性高分子から成る管状体が、スポンジ、組紐、編物、織物、不織布、スパイラルメッシュ、フィルムの少なくとも1つから構成される請求項1または、2に記載の神経再生用チューブ。
- 生体吸収性高分子から成るファイバーがモノフィラメント、マルチフィラメント、スリットヤーン、紐である請求項1または2に記載の神経再生用チューブ。
- 管状体が、生体吸収性高分子から成る被覆層と複合化されたものである請求項3に記載の神経再生用チューブ。
- さらに細胞接着性因子を含む請求項1〜4のいずれかに記載の神経再生用チューブ。
- さらに細胞成長因子を含む請求項1〜5のいずれかに記載の神経再生用チューブ。
- シュワン細胞がチューブの内面に播種されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の神経再生用チューブ。
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