JP2005142440A - 光電変換装置の製造方法及び光電変換装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 光電変換層が微結晶シリコン薄膜によって構成される光電変換素子を用いた薄膜型光電変換装置を、圧電素子光熱分光法を用いて同定した前記微結晶シリコン薄膜のバンドギャップが1.0eV以上1.5eV以下という第1選別条件、及び/または圧電素子光熱分光法を用いて同定した前記微結晶シリコン薄膜のバンドギャップよりも低エネルギー側に、バンドテイルTが生じていないという第2選別条件を満たす光電変換素子を得るように前記光電変換素子の選別を行い、この光電変換素子を用いて前記薄膜型光電変換装置を製造する。
【選択図】 図6
Description
基板上に形成されるシリコン薄膜としては、結晶シリコン薄膜やアモルファスシリコン薄膜、もしくは微結晶シリコン薄膜がある。
これらシリコン薄膜のうち、結晶シリコン薄膜及びアモルファスシリコン薄膜の品質評価については研究が進んでおり、その物性と変換効率との関係が明らかにされつつある。
このため、結晶シリコン薄膜及びアモルファスシリコン薄膜については、実際に光電変換装置に組み込まなくても、その物性に基づいて変換効率を推定することができ、シリコン薄膜を製造した段階で、高効率薄膜と低効率薄膜との選別を行うことができる。
このような構造から、微結晶シリコン薄膜における物性と変換効率との関係は、結晶シリコン薄膜とアモルファスシリコン薄膜とのどちらとも異なっていると推測される。
また、アモルファス部分はその性質上、複数種類の構造欠陥を有しているので、微結晶シリコン薄膜の物性を測定しても、アモルファス部分の各構造欠陥の影響が重畳的に検出されてしまい測定結果から欠陥を特定することができない可能性がある。
また、実際に、微結晶シリコン薄膜について、電子スピン共鳴法を用いてその物性を検査したところ、高効率薄膜と低効率薄膜との間には、結晶シリコン薄膜やアモルファスシリコンにおいてみられるような明確な物性の差を見つけることはできなかった。
このことから、微結晶シリコン薄膜の変換効率の決定には、製膜速度以外の他の要素も大きく関与していると考えられるが、これまで、その要素を特定することはできなかった。
このため、微結晶シリコン薄膜は、他のシリコン薄膜に比べて生産効率及び歩留まりが低く、微結晶シリコン薄膜を用いた光電変換装置はその製造コストが高かった。
すなわち、本発明にかかる光電変換装置の製造方法は、単層または複数層の光電変換層を有しかつ少なくとも一層以上の前記光電変換層が微結晶シリコン薄膜によって構成される光電変換素子を用いた薄膜型光電変換装置の製造方法であって、圧電素子光熱分光法を用いて同定した前記微結晶シリコン薄膜のバンドギャップが1.0eV以上1.5eV以下という第1選別条件を満たす光電変換素子を得るように前記光電変換素子の選別を行い、この光電変換素子を用いて前記薄膜型光電変換装置を製造することを特徴とする。
Photo-Thermal Spectroscopy:以下「PPTS」と呼ぶ)を用いて、非発光再結合の検出による光学的特性の高精度な測定を行った。
この結果、微結晶シリコン薄膜において、変換効率の高い高効率薄膜と変換効率の低い低効率薄膜とでは、膜の光学的特性に明確な差が生じているということを発見した。
上記のバンドギャップの差及びバンドギャップの値の範囲は、従来結晶シリコン薄膜の物性測定に用いられていた手法では、測定誤差の範囲内に埋もれてしまう程度の微小な差である。すなわち、上記の知見は、今までの測定方法を用いた計測では見落とされていて、本発明者らの行った高精度の測定によって初めて得られた、全く新規の知見である。
このため、従来直接的に光電変換素子の作製後に変換効率を測定することによってのみ可能であった、微結晶シリコン薄膜を有する光電変換素子の選別を、シリコン薄膜を製造した段階で行うことができる。
具体的には、微結晶シリコン薄膜において、高効率薄膜は、バンドギャップよりも低エネルギー側にバンドテイルが生じていないという知見を得た。
このため、従来直接的に変換効率を測定することによってのみ可能であった、微結晶シリコン薄膜を有する光電変換素子の選別を、シリコン薄膜を製造した段階で行うことができる。
すなわち、この薄膜型光電変換装置の製造方法では、光電変換素子の選別段階で高効率の光電変換素子をより確実に選別することができるので、高効率の薄膜型光電変換装置を容易に製造することができる。
また、本発明にかかる光電変換装置は、変換効率が高い。
まず、光電変換装置の構成について説明する。
光電変換装置は、光を吸収することによって内部に電荷を発生させる光電変換素子を有しており、光電変換素子に光をあてることにより、光電変換素子に接続された外部回路に電流を生じさせるものである。
光電変換素子は、ガラス基板等の基板上に、水素ガスによって希釈したシランガスを用いたプラズマCVD等の成膜処理を施して、複数層の薄膜を形成したものである。このような光電変換素子の代表的な構成を、図1、図2に示す。なお、ここでは、光電変換素子として、pin構造を有する基板側光入射型のものを示しているが、nip構造を有する膜面側光入射型としてもよい。
この第2下部電極層4上には、n型微結晶シリコン層5(第1導電型半導体層)、光電変換層(i層)となる真性微結晶シリコン層6、及びp型微結晶シリコン層7(第2導電型半導体層)とが、この順番で形成されている。
さらに、p型微結晶シリコン層7上には、透明電極材料からなる透明導電体層8と金属材料からなる集電電極9とが、この順番に形成されている。
ここで、第2下部電極層4や透明導電体層8を構成する透明電極材料としては、酸化亜鉛(ZnO)や酸化第二錫(SnO2)、あるいはITO(Indium Tin Oxide)等が用いられる。
この光電変換素子1は、第1下部電極層3と集電電極9とは、それぞれ外部負荷10に接続されるようになっており、このように上記pin構造中に電子と正孔との対が発生することで、外部負荷10に電流が流れる。
光電変換素子11は、p型微結晶シリコン層7上に、n型アモルファスシリコン層12、i層となるアモルファスシリコン層13、及びp型アモルファスシリコン層14とを、この順番で形成し、p型アモルファスシリコン層14上に、透明導電体層8と集電電極9とを、この順番で形成したものである。
すなわち、光電変換素子11は、入射した光が各pin構造でそれぞれ吸収されて、各pin構造でそれぞれ電子と正孔の対が発生させられるので、光電変換素子1に比べて、総合的な変換効率が高い。
具体的には、光電変換装置21は、PPTSを用いて同定した微結晶シリコン薄膜のバンドギャップが1.0eV以上1.5eV以下という第1選別条件、PPTSを用いて同定した微結晶シリコン薄膜のバンドギャップよりも低エネルギー側に、バンドテイルが生じていないという第2選別条件とのうちの少なくともいずれか一方を満たす光電変換素子を得るように光電変換素子の選別を行い、この選別を経て得た光電変換素子を用いて製造されるものである。
以下、PPTSの原理について説明する。
測定試料にある程度以上の強度の光を照射すると、測定試料に取り込まれた照射光の光子エネルギーにより励起された、電子・正孔の一部が非発光再結合過程によって熱エネルギーに変換されて、測定試料の周辺の媒質(周辺雰囲気等)に伝達される。この熱エネルギーの大きさは、測定試料が吸収した光子エネルギーの大きさに比例する。
ここで、測定試料に対して光をパルス状に照射すると、測定試料中での熱の発生も断続的となるので、測定試料の周辺の媒質に疎密波が発生する。そして、測定試料に圧電素子を取り付けた状態で、測定試料にパルス状の光を照射すると、圧電素子には疎密波が入力されることとなり、圧電素子は、疎密波と同じ周期でかつ疎密波の強度に比例した強度の電気信号を発する。
PPTS装置31は、連続的に発光する光源32と、光源32が発する光を周期的に遮断してパルス状の光に変換するチョッパー33と、チョッパー33を通過した光を分光して所望の波長の単色光のみ出力するモノクロメータ34とを有している。
光源としては、例えばハロゲンランプや水銀ランプ等が用いられるが、測定範囲の波長域で均一かつ十分な強度の光を発するものであれば他の任意の光源を使用することができる。
測定試料Pの膜成長面側には、シリコングリースによって圧電素子36が貼り付けられており、測定試料Pが光子エネルギーを吸収することによって生じた疎密波を検出して、疎密波と同じ周期でかつ疎密波の強度に比例した強度の電気信号を発する。
ここで、このPPTS装置31では、測定試料Pは、クライオスタットC内に設置されていて、例えば液体窒素等によって173K程度の低温に冷却することで、測定試料Pに生じる熱ノイズを低減することができるようになっている。
ロックインアンプ37には、圧電素子36の出力が入力されるとともに、参照信号としてチョッパー33の動作タイミング信号が入力されている。すなわち、ロックインアンプ37は、圧電素子36に光が照射された時点での圧電素子36の出力のみを検出するようになっている。
演算装置38には、ロックインアンプ37の出力信号が入力されるとともに、モノクロメータ34の出力する単色光の波長の情報が信号として入力されている。
演算装置38は、モノクロメータ34の出力する単色光の波長の情報から測定試料Pに照射された光の光子エネルギーhν(eV)を算出し、この光子エネルギーhνと、この照射光が照射された時点におけるロックインアンプ37の出力信号の強度PPTSをもとに間接遷移半導体やアモルファスシリコンのバンドギャップ算出に用いられるTaucプロットと呼ばれる(hνPPTS)0.5とを記録するものである。
また、測定試料P照射光の膜内干渉が生じるので、圧電素子36の測定値には、この膜内干渉による影響が含まれる。
圧電素子36の出力信号のバックグラウンドは、測定試料Pを設けずに圧電素子36に直接照射光を照射した際に圧電素子36が発する信号強度から求めることができる。
しかし、ロックインアンプ37の出力信号の強度(hνPPTS)0.5は、測定条件(例えば測定試料Pに対する圧電素子36の取付具合等)によって変動するものであるので、測定試料Pの品質を評価する絶対的な指標としては用いることはできない。このPPTSの結果において重要なのは、光吸収スペクトルのグラフの形状である。
この測定では、プラズマCVDによってガラス基板(成膜時基板温度約200°C)上に形成された単層の微結晶シリコン薄膜として、高効率薄膜(一般に低速成膜によって得られる)と低効率薄膜(一般に高速成膜によって得られる)とを用意し、これらそれぞれについてPPTSによって光吸収スペクトルを求めた。
また、この測定では、光源32としてハロゲンランプを用い、演算装置38によって、モノクロメータ34の出力する単色光を、400〜1400nmの波長範囲で走査させて、この波長領域での測定試料Pの光吸収スペクトルを求めた。
そして、測定試料は常温下(297K)に保った状態で測定を行った。
また、この測定では、高効率薄膜と低効率薄膜とのそれぞれについて、基板厚み及び膜厚がそれぞれ0.5μmの測定試料と、基板厚み及び膜厚がそれぞれ1.0μmの測定試料と、基板厚み及び膜厚がそれぞれ1.5μmの測定試料とを用意した。
ここで、膜厚が1.0μmの測定試料は、高効率薄膜と低効率薄膜とのそれぞれについて、測定試料を二つずつ(AグループとBグループ)用意した。
ここで、図4は高効率薄膜(膜厚0.5μm)の光吸収スペクトル、図5は低効率薄膜(膜厚0.5μm)の光吸収スペクトルを示している。
図6は高効率薄膜(膜厚1.0μm、Aグループ)の光吸収スペクトル、図7は低効率薄膜(膜厚1.0μm、Aグループ)の光吸収スペクトルを示している。
図8は高効率薄膜(膜厚1.0μm、Bグループ)の光吸収スペクトル、図9は低効率薄膜(膜厚1.0μm、Bグループ)の光吸収スペクトルを示している。
図10は高効率薄膜(膜厚1.5μm)の光吸収スペクトル、図11は低効率薄膜(膜厚1.5μm)の光吸収スペクトルを示している。
なお、これらのグラフは、微結晶シリコン薄膜の光学遷移が間接バンド間遷移であると想定してプロットしたものであり、Taucプロットと呼ばれる。
このバンドギャップEgの差が生じた理由としては、高効率薄膜では、アモルファス部分の占める割合が低効率薄膜よりも少ないか、もしくは水素含有量が増加していてダングリングボンドが低効率薄膜よりも少なくなっていて、欠陥によるキャリア(自由電子や正孔)の吸収が起こりにくくなっているためと考えられる。
ここで、ラマン分光法による解析では、製膜速度による微結晶シリコン薄膜の結晶化率に大きな差が見られなかったことから、このバンドギャップEgの差は、主に水素含有量の増加が原因と推測される。
一方、低効率薄膜では、いずれの膜厚においても、バンドギャップEgよりも低エネルギー側に、大きなバンドテイルTが形成されている。
ここで、微結晶シリコン薄膜の製膜速度には直接関係するものではないから、製膜条件を調整することで、改善可能であると思われる。
そして、この測定試料を、PPTSによって分析して、上記選別条件を満たす光電変換素子1または11のみを用いて光電変換装置を作成する。
このため、本実施形態にかかる光電変換装置の製造方法によれば、高効率の光電変換装置を、確実かつ容易に製造することができる。
また、本発明にかかる光電変換装置は、上記の製造方法によって高性能な光電変換素子が組み込まれるので、変換効率が高い。
これらの条件を適切に設定することで、膜質の向上と成膜速度の向上とを図ることができる。
6 真性微結晶シリコン層(光電変換層)
13 アモルファスシリコン層(光電変換層)
Eg バンドギャップ
T バンドテイル
Claims (8)
- 単層または複数層の光電変換層を有しかつ少なくとも一層以上の前記光電変換層が微結晶シリコン薄膜によって構成される光電変換素子を用いた薄膜型光電変換装置の製造方法であって、
圧電素子光熱分光法を用いて同定した前記微結晶シリコン薄膜のバンドギャップが1.0eV以上1.5eV以下という第1選別条件を満たす光電変換素子を得るように前記光電変換素子の選別を行い、
この光電変換素子を用いて前記薄膜型光電変換装置を製造することを特徴とする薄膜型光電変換装置の製造方法。 - 単層または複数層の光電変換層を有しかつ少なくとも一層以上の前記光電変換層が微結晶シリコン薄膜によって構成される光電変換素子を用いた薄膜型光電変換装置の製造方法であって、
圧電素子光熱分光法を用いて同定した前記微結晶シリコン薄膜のバンドギャップよりも低エネルギー側に、バンドテイルが生じていないという第2選別条件を満たす光電変換素子を得るように前記光電変換素子の選別を行い、
この光電変換素子を用いて前記薄膜型光電変換装置を製造することを特徴とする薄膜型光電変換装置の製造方法。 - 単層または複数層の光電変換層を有しかつ少なくとも一層以上の前記光電変換層が微結晶シリコン薄膜によって構成される光電変換素子を用いた薄膜型光電変換装置の製造方法であって、
前記光電変換素子の選別を、請求項1に記載の第1選別条件及び請求項2に記載の第2選別条件に基づいて行い、
この選別によって得た光電変換素子を用いて、前記薄膜型光電変換装置を製造することを特徴とする薄膜型光電変換装置の製造方法。 - アモルファスシリコン薄膜によって形成された光電変換層と、微結晶シリコン薄膜によって形成された光電変換層とが積層された光電変換素子を用いた薄膜型光電変換装置の製造方法であって、
前記光電変換素子の選別を、前記第1選別条件及び/または第2選別条件に基づいて行い、
この選別によって得た光電変換素子を用いて、前記薄膜型光電変換装置を製造することを特徴とする薄膜型光電変換装置の製造方法。 - 単層または複数層の光電変換層を有しかつ少なくとも一層以上の前記光電変換層が微結晶シリコン薄膜によって構成される光電変換素子を用いた薄膜型光電変換装置であって、
前記光電変換素子は、圧電素子光熱分光法を用いて同定した前記微結晶シリコン薄膜のバンドギャップが1.0eV以上1.5eV以下であることを特徴とする薄膜型光電変換装置。 - 単層または複数層の光電変換層を有しかつ少なくとも一層以上の前記光電変換層が微結晶シリコン薄膜によって構成される光電変換素子を用いた薄膜型光電変換装置であって、
前記光電変換素子は、圧電素子光熱分光法を用いて同定した前記微結晶シリコン薄膜のバンドギャップよりも低エネルギー側に、バンドテイルが生じていないことを特徴とする薄膜型光電変換装置。 - 単層または複数層の光電変換層を有しかつ少なくとも一層以上の前記光電変換層が微結晶シリコン薄膜によって構成される光電変換素子を用いた薄膜型光電変換装置であって、
前記光電変換素子は、圧電素子光熱分光法を用いて同定した前記微結晶シリコン薄膜の特徴が請求項5及び/または請求項6記載の特徴をもつ薄膜型光電変換装置。 - アモルファスシリコン薄膜によって形成された光電変換層と、微結晶シリコン薄膜によって形成された光電変換層とが積層された光電変換素子を用いた薄膜型光電変換装置であって、
前記光電変換素子は、圧電素子光熱分光法を用いて同定した前記微結晶シリコン薄膜の特徴が請求項5及び/または請求項6記載の特徴をもつ薄膜型光電変換装置。
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