JP2005133159A - 熱処理装置及び転がり軸受 - Google Patents

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厚 成重
Shigeru Okita
滋 沖田
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Abstract

【課題】 高い冷却能を有する加圧ガス冷却を用いた熱処理を低コストで実施することが可能な熱処理装置を提供する。
【解決手段】 熱処理装置は、同一室内で加熱及び加圧ガス冷却を行う装置であって、内部を加圧状態に保持可能な圧力室1と、圧力室1内の被処理品Wを加熱する高周波加熱部2と、圧力室1内に冷却ガスを供給し圧力室1内を加圧状態にする冷却ガス供給部3と、を備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は熱処理装置及び転がり軸受に関する。
鋼等の金属材料の焼入れにおいては、高圧状態では気体の密度が高くなり熱容量が大きくなることから、冷却剤として高圧ガスが利用される場合がある。ただし、ガスによる冷却は冷却能が十分ではない場合があるので、冷却能を高めた空気焼入れが提案されている(例えば特許文献1,2)。
特開平13−131688号公報 特開平14−155314号公報
しかしながら、特許文献1に記載のものは、被処理品の素材に焼入性の高い材料を用いることにより、空気焼入れの冷却能不足を解消しているものなので、転がり軸受の材料として最も使用されている軸受鋼に対する焼入れ方法に採用することは困難である。また、特許文献2に記載のものは、高圧ガスの圧力を高めたり、ガスの種類を変更したりして冷却ガスの熱容量を高めているが、高圧化のための設備費やガスのコストが高騰するので実用的とは言えない。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、高い冷却能を有する加圧ガス冷却を用いた熱処理を低コストで実施することが可能な熱処理装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明の熱処理装置は、同一室内で加熱及び加圧ガス冷却を行う熱処理装置であって、内部を加圧状態に保持可能な圧力室と、前記圧力室内の被処理品を加熱する高周波加熱部と、前記圧力室内に冷却ガスを供給し前記圧力室内を加圧状態にする冷却ガス供給部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の転がり軸受は、2つの軌道輪の間に複数の転動体を転動自在に配してなる転がり軸受において、肉厚比が5%以下であるとともに、前記軌道輪は請求項1に記載の熱処理装置を用いて熱処理が施されていることを特徴とする。
なお、本発明における肉厚比とは、転がり軸受の内径及び外径から下記式を用いて算出される数値である。
肉厚比(%)=(外径−内径)/2÷外径×100
本発明の熱処理装置は、高い冷却能を有する加圧ガス冷却を用いた熱処理を低コストで実施することが可能である。また、本発明の転がり軸受は、軌道輪に高い焼入性の熱処理が施されているので、優れた品質(例えば高い表面硬さ)を有している。
本発明に係る熱処理装置及び転がり軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る熱処理装置の一実施形態を説明する図である。
この熱処理装置は、同一室内で加熱及び加圧ガス冷却を行う装置であって、内部を加圧状態(常圧よりも高圧な状態)に保持可能な圧力室1と、圧力室1内の被処理品Wを加熱する高周波加熱部2と、圧力室1内に冷却ガスを供給し圧力室1内を加圧状態にする冷却ガス供給部3と、を備えている。
このような構成の熱処理装置は、被処理品Wの加熱を高周波加熱により行うようになっているので、加熱炉による加熱(雰囲気加熱方式)の場合に通常必要な熱処理治具(バスケット,トレイ等)を用いる必要がない。熱処理治具を用いると冷却時に十分な冷却能が得られない場合があるが、本実施形態の熱処理装置であれば熱処理治具を用いる必要がないので、十分な冷却能が得られ、高品質の熱処理品を得ることができる。
次に、このような熱処理装置を用いて被処理品W(例えば、転がり軸受の軌道輪のような部材)に熱処理(焼入れ)を施す手順について説明する。まず、複数の被処理品Wを入扉5から圧力室1へ装入し、熱処理前位置の昇降テーブル6Aの上に積み重ねる。入扉5を閉じた後、圧力室1に接続された真空ポンプ7を稼働して、圧力室1内を真空状態にする。さらに、圧力室1に接続された冷却ガス供給部3から、冷却ガスを圧力室1内に供給し、圧力室1内を加圧状態とする。
圧力室1内が高圧(例えば5bar以上10bar以下が好ましい)となったら、熱処理前位置の被処理品Wを搬送装置8により熱処理位置の昇降テーブル6B上に搬送し、該昇降テーブル6Bを上昇させて高周波加熱部2のコイル内に配置する。そして、被処理品Wを回転させながら、所定時間加熱する。加熱が終了したら冷却ファン9を稼働して、被処理品Wをガス冷却する。このようにして焼入れが終了したら、昇降テーブル6Bを降下させ、焼入れが施された被処理品Wを搬送装置8により熱処理後位置の昇降テーブル6C上に搬送する。そして、熱処理前位置の昇降テーブル6A上に積み重ねてある次の被処理品Wを、搬送装置8により熱処理位置の昇降テーブル6B上に搬送して、前述と同様に熱処理を施す。
このようにして、熱処理前位置の昇降テーブル6A上に積み重ねてある被処理品Wのすべてに熱処理を施したら、大気開放弁10を開状態として圧力室1内を大気圧に戻す。そして、焼入れが施された被処理品Wを出扉11から取り出す。
なお、冷却ガスの種類は特に限定されるものではなく、窒素,空気等を使用してもよいし、窒素よりも冷却能の優れるヘリウム等を使用してもよい。また、高周波加熱部2のコイル内に配置する被処理品Wの個数は1個でもよいが、複数個を同時に高周波加熱部2のコイル内に配置して被処理を施してもよい。
このような本実施形態の熱処理装置は、高い冷却能を有する加圧ガス冷却を用いた熱処理を低コストで実施することが可能である。また、油焼入れと同等の焼入れ品質が得られるので、冷却に油を使用する必要がなく環境を汚染しない。さらに、被処理品の素材の種類,冷却ガスの種類,及び冷却ガスの圧力は特殊なものではなく、通常のガス焼入れの場合と同様であるので、設備費や冷却ガスのコスト等が高騰することはなく、低コストで熱処理を行うことができる。
さらに、本実施形態の熱処理装置によれば、高周波加熱により局所的な加熱が可能であること、及び、加熱及び冷却を同一室内で行っていることから、前述のような搬送装置8や昇降テーブル6A,6B,6Cからなる被処理品の移動機構を、圧力室1内に設けることが可能である。従来の熱処理装置では、一度に1〜5個程度の被処理品にしか熱処理を施すことができなかったが、本実施形態の熱処理装置によれば、被処理品の移動機構を有しているので、一度に多量の被処理品に熱処理を施すことができる。よって、本実施形態の熱処理装置は生産性が非常に高い。
さらに、本実施形態の熱処理装置で熱処理を施した被処理品を軌道輪として転がり軸受を製造すれば、軌道輪に高い焼入性の熱処理が施されているので、優れた品質(例えば高い表面硬さ)を有する転がり軸受を得ることができる。
〔実施例〕
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。転がり軸受に最も多く使用され材料コストや流通性が良好なSUJ2鋼で構成され、肉厚比が5%以下の転がり軸受の軌道輪(内輪及び外輪)を被処理品として、3種の条件で熱処理を施した。その条件を以下に示す。
条件1:被処理品への加熱を加熱炉で行い、加圧ガス冷却を前記加熱炉内で行う(すなわち加熱室と冷却室とが同一である)熱処理装置を用いて熱処理を行った。加熱条件は真空中840℃であり、冷却条件は5〜10barの窒素雰囲気である。
条件2:被処理品への加熱を加熱炉で行い、加圧ガス冷却を前記加熱炉とは別の冷却室内で行う熱処理装置を用いて熱処理を行った。加熱条件及び冷却条件は、条件1の場合と同様である。
条件3:前述のような本実施形態の熱処理装置を用いて熱処理を行った。すなわち、高周波加熱と加圧ガス冷却とを同一室内で行う熱処理装置を用いて熱処理を行った。加熱条件は周波数25〜35kHz、電力13〜18kW、保持時間7〜15sであり、冷却条件は5〜10barの窒素雰囲気である。
各条件にて、それぞれ3個の軌道輪に熱処理を施し、表面硬さによって品質評価を行った。その結果を図2のグラフに示す。
グラフから分かるように、従来の雰囲気加熱方式である条件1,2では、転がり軸受に十分な寿命を付与するために必要な表面硬さ(Hv700以上)を得ることができなかった。それに対して、条件3では、必要な表面硬さを得ることができた。
このような結果となった理由は、以下の通りと考えられる。条件1の場合は、加熱室と冷却室とが同一であるので、高温状態で被処理品の冷却を行うこととなって、十分な冷却能が得られなかったことに加えて、被処理品及び熱処理治具を冷却する必要があるので、冷却能がさらに低下したと考えられる。条件2の場合は、加熱室と冷却室とが別室であるものの、被処理品及び熱処理治具を冷却する必要があるので、油冷却ほどの冷却能は得られなかったと考えられる。条件3の場合は、熱処理治具を用いておらず被処理品のみの冷却であるので、油冷却に匹敵するほどの冷却能が得られたと考えられる。
次に、肉厚比の種々異なるSUJ2製の転がり軸受の部品である軌道輪を用意して、前述の本実施形態の熱処理装置を用い、前記条件3と同様の条件で熱処理を施した。そして、熱処理後の軌道輪の表面硬さを測定した。その結果を図3のグラフに示す。
グラフから分かるように、肉厚比5%以下の転がり軸受の部品である軌道輪の場合は、転がり軸受に十分な寿命を付与するために必要な表面硬さ(Hv700以上)を得ることができた。これに対して、肉厚比5%超過の転がり軸受の部品である軌道輪の場合は、必要な表面硬さを得ることができなかった。
本発明の熱処理装置は、転がり軸受の軌道輪等の熱処理に好適である。
本発明の一実施形態である熱処理装置の構成を説明する概略図である。 種々の熱処理条件における被処理品の表面硬さを示すグラフである。 転がり軸受の肉厚比と表面硬さとの相関を示すグラフである。
符号の説明
1 圧力室
2 高周波加熱部
3 冷却ガス供給部
W 被処理品

Claims (2)

  1. 同一室内で加熱及び加圧ガス冷却を行う熱処理装置であって、内部を加圧状態に保持可能な圧力室と、前記圧力室内の被処理品を加熱する高周波加熱部と、前記圧力室内に冷却ガスを供給し前記圧力室内を加圧状態にする冷却ガス供給部と、を備えることを特徴とする熱処理装置。
  2. 2つの軌道輪の間に複数の転動体を転動自在に配してなる転がり軸受において、肉厚比が5%以下であるとともに、前記軌道輪は請求項1に記載の熱処理装置を用いて熱処理が施されていることを特徴とする転がり軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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