JP2005132922A - 耐熱性エラストマー材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低融点の成分と高融点の成分を含んでいるにもかかわらず均一に混練することができ、低硬度で、耐熱性にも優れている耐熱性エラストマー材料を提供すること。
【解決手段】 本発明の耐熱性エラストマー材料は、スチレン系エラストマー100重量部に対して、少なくともスチレン系樹脂材料を含む2種以上の樹脂材料をアロイ化してなる融点150〜250℃のポリマーアロイ10〜1000重量部と、軟化剤20〜2000重量部とを混合してなる組成物を主成分とする。スチレン系樹脂材料を含むポリマーアロイは、スチレン系エラストマーとの相溶性が高く、融点250℃以下のものなので、過剰に高温にしなくてもスチレン系エラストマーと混練することができる。また、ポリマーアロイは融点150℃以上のものなので、このポリマーアロイを混練することで、スチレン系エラストマー単独の場合より耐熱性が高い材料となる。
【選択図】 なし


Description

本発明は、耐熱性が改善された耐熱性エラストマー材料に関する。
従来、緩衝材などを製造するための材料として、低硬度エラストマー材料が利用されている。この種の低硬度エラストマー材料は、例えば、スチレン系エラストマーなどのベースポリマーに対して鉱物油などの軟化剤を加えて、加熱溶融、混練することによって製造されるもので、軟化剤の添加量をコントロールすることにより、きわめて低硬度の材料を得ることができた。
しかし、この種のエラストマー材料は、一般に、耐熱性の低いものが多く、例えば、スチレン系エラストマーをベースとする低硬度エラストマー材料の場合、スチレン系エラストマーの物理架橋サイトであるスチレンブロック部分の軟化点が約80℃程度であるため、この温度を超えるような耐熱性を有する低硬度エラストマー材料にはならなかった。
一方、ポリスチレン(PS)樹脂材料を対象にして、この対象樹脂材料に高融点の樹脂材料(例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)、シンジオタクティックポリスチレン(SPS)等)を溶融ブレンドすることにより、対象樹脂材料の耐熱性を向上させる手法が知られている。
上記のような低硬度エラストマー材料についても、ポリフェニレンエーテル(PPE)をブレンドすることは既に提案されており、例えば、下記特許文献1には、スチレン系エラストマー、ポリフェニレンエーテル、および軟化剤を含有する低硬度材料が開示されている。
特開平9−263702号公報
しかしながら、上記特許文献1を参考にして、スチレン系エラストマー、ポリフェニレンエーテル、および軟化剤を混合して、加熱溶融、混練してみたところ、スチレン系エラストマーと軟化剤の混合物が比較的低温(例えば140℃程度)で溶融するのに対し、ポリフェニレンエーテルは比較的高温(例えば290℃程度)にならないと十分に溶融しないため、これらを容易には混練することができなかった。
具体的には、比較的低温条件下で混練した場合、融点の低いスチレン系エラストマーおよび軟化剤の混合物と融点の高いポリフェニレンエーテルとでは、溶融粘度に差がありすぎ、スチレン系エラストマーおよび軟化剤の液状化した低粘度混合物中にポリフェニレンエーテルの固形部分が散在する状態になってしまうため、均一に混練された低硬度エラストマー材料を得ることができなかった。
また、ポリフェニレンエーテルの融点を超える高温条件下(例えば300℃以上)で混練した場合、耐熱性の低いスチレン系エラストマーや軟化剤が分解、変質したり、場合によっては発火したりするため、やはり期待するような低硬度エラストマー材料を得ることはできなかった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、低融点の成分と高融点の成分を含んでいるにもかかわらず均一に混練することができ、低硬度で、耐熱性にも優れている耐熱性エラストマー材料を提供することにある。
以下、本発明の特徴的構成について詳述する。
本発明の耐熱性エラストマー材料は、スチレン系エラストマー100重量部に対して、少なくともスチレン系樹脂材料を含む2種以上の樹脂材料をアロイ化してなる融点150〜250℃のポリマーアロイ10〜1000重量部と、軟化剤20〜2000重量部とを混合してなる組成物を主成分とすることを特徴とする。
この耐熱性エラストマー材料において、スチレン系エラストマーとしては、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、およびスチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)の中から選ばれる一種または二種以上の混合物を用いると好ましい。
前記ポリマーアロイとしては、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレンアロイ(PPS/PSアロイ)、およびシンジオタクティックポリスチレン/ポリスチレンアロイ(SPS/PSアロイ)の中から選ばれる一種または二種の混合物を用いると好ましい。このポリマーアロイは、融点が150〜250℃となるように調製されたものである。例えば、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレンアロイ(PPS/PSアロイ)、およびシンジオタクティックポリスチレン/ポリスチレンアロイ(SPS/PSアロイ)の場合、ポリスチレンの含有率が過剰に低いとポリマーアロイの融点が250℃を超えるおそれがある一方、ポリスチレンの含有率が過剰に高いとポリマーアロイの融点が150℃を下回って耐熱性を向上させる効果が弱くなるが、ポリスチレン含有率を適宜増減調節することにより、融点を150〜250℃の範囲内に収めることができる。
前記軟化剤としては、パラフィン系プロセスオイル、およびナフテン系プロセスオイルの中から選ばれる一種または二種の混合物を用いると好ましい。
以上のような組成を持つ耐熱性エラストマー材料は、ポリマーアロイが少なくともスチレン系樹脂材料を含むものなので、このポリマーアロイとスチレン系エラストマーとの相溶性は高く、しかも、ポリマーアロイは融点250℃以下のものなので、スチレン系エラストマーとポリフェニレンエーテルとをブレンドするような従来技術に比べると、より低温条件下であっても均一な混練が可能である。そのため、本発明の耐熱性エラストマー材料であれば、スチレン系エラストマーとポリフェニレンエーテルとをブレンドした従来品に比べ、より容易に製造できる材料となる。また、上記ポリマーアロイは融点150℃以上のものであり、この融点はスチレン系エラストマーの融点よりも高いので、本発明の耐熱性エラストマー材料は、従来のスチレン系の低硬度エラストマー材料よりも耐熱性が高いものとなる。
このように構成された本発明の耐熱性エラストマー材料は、例えば、モーターその他の振動源を内蔵する機器や、外部からの振動の伝達を遮断したい精密部品を内蔵する機器において利用される緩衝材、防振・制振材、気密性・液密性が要求される箇所に適用されるパッキンその他の封止材等を成形するための材料として利用できる。特に、上述の通り、従来のエラストマー材料よりも耐熱性が高いので、高出力モーター、自動車の車載機器、その他近傍に熱源がある機器において利用される部品など、従来のエラストマー材料では対応できない程度の高温環境下で連続使用されるような部品であっても、上記耐熱性エラストマー材料であれば対応部品を製造できる。
ところで、本発明の耐熱性エラストマー材料は、前記スチレン系エラストマー100重量部に対して、さらに、多孔性吸着フィラー5〜1000重量部を混合してなる組成物を主成分としてもよい。
この場合、前記多孔性吸着フィラーとしては、活性炭、ゼオライト、およびシリカゲルの中から選ばれる一種または二種以上の混合物を用いると好ましい。
このように構成された耐熱性エラストマー材料によれば、耐熱性エラストマー材料中に含まれる低分子量の成分が、多孔性吸着フィラーに吸着されて、本耐熱性エラストマー材料の外部へ放出されにくくなるので、本耐熱性エラストマー材料から発生する臭気や、材料表面におけるオイルブリードが抑制される。特に、多孔性吸着フィラーとして活性炭を用いた場合は、活性炭が、吸着剤として機能する他に、紫外線吸収剤としても機能するので、耐候性が大幅に向上するという利点がある。
また、このような多孔性吸着フィラーを用いる場合、多孔性吸着フィラーが、疎水性であると好ましい。疎水性の多孔性吸着フィラーは、親水性のものに比べ、耐熱性エラストマー材料中に含まれる有機物系の成分との親和性が高く、有機物系の成分を効果的に吸着することができる。また、親水性のものに比べ、添加前に空気中の水分を吸着しにくく、添加後の加熱混練時に水蒸気を放出しないので、耐熱性エラストマー材料内部の発泡を抑制することができる。なお、耐熱性エラストマー材料を発泡させたい場合は、親水性の多孔性吸着フィラーを用いるとよい。
さらに、低硬度の成形品を製造するためには、本発明の耐熱性エラストマー材料は、アスカーFP硬度が、20〜95を示す低硬度材料であると望ましい。耐熱性エラストマー材料の硬度は、軟化剤の添加量を増大させるほど低下するので、軟化剤の配合比を調節することで上記硬度を実現できる。
アスカーFP硬度が20を下回ると軟化剤を多量に加えることになるため、圧縮永久歪みが大きくなりやすい。また、アスカーFP硬度が95を上回ると衝撃吸収能力が低下したり成形性が悪くなったりするなど、用途によっては使いにくいものになるおそれがある。なお、アスカーFP硬度は、高分子計器株式会社製のアスカーFP型硬度計により測定可能な硬度である。比較的一般的な硬度に関する規格の一つとしては「JIS K6253」のJIS A硬度が知られているが、アスカーFP硬度は、JIS A硬度では有意差のある測定値を得難いような低硬度材料の硬度を測定する際に用いられている規格である。
一般的なゴム系材料においても軟化剤の添加量を増大させればある程度までは低硬度になるが、軟化剤の配合比を過大にすると、材料表面における過剰なオイルブリードが発生しやすくなったり、経時変化に伴ってオイル成分が揮発ないし流出して硬度上昇を招いたりすることがある。この点、本発明の耐熱性エラストマー材料は、アスカーFP硬度が20〜95を示す程度まで低硬度にしても、材料表面におけるオイルブリードは抑制されており、経時変化に伴う硬度上昇も抑制されているので、実用上十分に長期間にわたって低硬度状態を維持することができる。
なお、本発明の耐熱性エラストマー材料は、上記のような主成分を含有することが必須であるが、目標とする各種物性(硬度、圧縮特性等)が損なわれない範囲であれば、上記主成分以外の成分がいくらか含まれていても構わない。主成分以外の成分としては、例えば、可塑剤、滑剤、難燃剤、粘着付与剤、加硫剤、加硫助剤、安定剤、亀裂防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、防カビ剤、防鼠剤、分散剤、着色剤、耐電防止剤、充填剤、流動改質剤等を挙げることができる。これらは、公知のエラストマー材料にも添加されているものであり、その添加方法や添加量も常法に従ったものとすればよい。
以上説明したように、本発明によれば、低融点の成分と高融点の成分を含んでいるにもかかわらず均一に混練することができ、低硬度で、耐熱性にも優れている耐熱性エラストマー材料を提供することができる。
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
(1)耐熱性エラストマー材料の製造手順
下記表1に示す配合比(単位は重量部)で原料を混練し、耐熱性エラストマー材料を製造した。
Figure 2005132922
混練に当たっては、まず、これらの原料を十分に予備混合した。具体的には、最初に活性炭を除く原料を混練機(例えば、ヘンシェルミキサー等)に投入して、温度条件60℃で混合を行い、混合開始から5分が経過したところで活性炭を添加し、さらに5分間混合を続けた。ここで、活性炭を後から添加するのは、オイルをポリマーに優先的に吸着させることで、活性炭に吸着されるオイルの量を抑制し、十分なオイルをポリマーに吸着させるためである。
そして、予備混合された原料を、2軸押出機(φ28mm)を利用して、温度条件260℃で溶融混練押出しして、ペレット化した。なお、ポリマーアロイは、粒径50〜200μmのパウダー化したものを使用すると、溶け残りが無く、2軸押出機からの吐出量を上げることができた。
(2)材料硬度の測定
上記(1)の手順で製造した実施例1,2の耐熱性エラストマー材料を用い、□100mm×厚さ10mmのシートを200℃にてコンプレッション成形し、このシート2枚を積層して厚さ20mmにしたものを、硬度測定用サンプル(下記試料1,2)とした。
そして、これら試料1,2の硬度を、アスカーFP型硬度計を用いて測定した。その結果、試料1の硬度は90、試料2の硬度は80であった。
これらの測定結果からは、これらの試料1,2がきわめて低硬度の材料で成形されたものであることがわかる。また、試料1よりも試料2の方が低硬度であることから、軟化剤の添加量を増大させることにより、硬度を低下させることができることがわかる。
なお、エラストマー材料の硬度は軟化剤の添加量を調節することによって変えることができ、実験的に確認した範囲では、アスカーFP硬度を20〜95程度に調節することが可能であった。
(3)耐熱老化試験
上記(2)と同様の試料1,2を用いて、115℃/1800hの耐熱老化試験を実施した。
具体的には、280℃程度の樹脂温度で、2.5型HDD用の緩衝部材を成形した。この成形品を115℃のオーブンで1800時間にわたって加熱し、経過を観察した。
上記試験の結果、試料1,2ともに、外観上は、変色、ヒビ、割れ、変形、溶融、ブリードなどの劣化現象は皆無であった。また、成形加工時の都合で、成形品表面の一部に肌荒れ部分ができたが、その肌荒れ部分も特に拡大していない様子であった。
上記試験を実施する前後に、アスカーC型硬度計を用いて試料1,2の平坦部分の硬度を測定したところ、試験前:38に対し、試験後:40との測定結果が得られ、試験前後において著しい硬度上昇も見られなかった。
また、上記試験を実施する前後に、各試料の重量を測定したところ、試験前後における重量減少率は1.2%と優れた結果を示した。
(4)耐候性試験
上記(2)と同様の試料1,2に対し、キセノンアーク照射試験を実施した。
具体的には、JIS K 7350に準拠し、照度0.50W/m2(340nm)のキセノンアーク灯を用い、ブラックパネル温度63℃、水スプレーサイクルを18分間/120分間中とした。光フィルターは、ボロシリケイトを用いた。
この試験を実施する前後に、各試料の引張破壊強さ、引張破壊伸びを、JIS K 6251に準拠して測定、引き裂き強さをJIS K 6252に準拠して測定した。
以上の測定の結果、引張破壊強さ、引張破壊伸び、引き裂き強さとも5%以内の変化率に収まっていた。したがって、上記試料1,2は、良好な耐候性を有するものと考えられる。
なお、比較のため、スチレン系樹脂材料をベースとする低硬度エラストマーに対して、上記同様の試験を実施したが、溶融軟化して元の形をとどめなかった。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態では、本発明の必須成分として、いくつかの具体的物質を組み合わせて耐熱性エラストマー材料を製造する例を示したが、各必須成分とも先に列挙した複数の物質の中から選んだ物質を用いれば、所期の耐熱性エラストマー材料を製造することができる。

Claims (8)

  1. スチレン系エラストマー100重量部に対して、少なくともスチレン系樹脂材料を含む2種以上の樹脂材料をアロイ化してなる融点150〜250℃のポリマーアロイ10〜1000重量部と、軟化剤20〜2000重量部とを混合してなる組成物を主成分とすることを特徴とする耐熱性エラストマー材料。
  2. 前記スチレン系エラストマーが、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、およびスチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)の中から選ばれる一種または二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性エラストマー材料。
  3. 前記ポリマーアロイが、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレンアロイ(PPS/PSアロイ)、およびシンジオタクティックポリスチレン/ポリスチレンアロイ(SPS/PSアロイ)の中から選ばれる一種または二種の混合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐熱性エラストマー材料。
  4. 前記軟化剤が、パラフィン系プロセスオイル、およびナフテン系プロセスオイルの中から選ばれる一種または二種の混合物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の耐熱性エラストマー材料。
  5. 前記スチレン系エラストマー100重量部に対して、さらに、多孔性吸着フィラー5〜1000重量部を混合してなる組成物を主成分とすることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の耐熱性エラストマー材料。
  6. 前記多孔性吸着フィラーが、活性炭、ゼオライト、およびシリカゲルの中から選ばれる一種または二種以上の混合物であることを特徴とする請求項5に記載の耐熱性エラストマー材料。
  7. 前記多孔性吸着フィラーが、疎水性であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の耐熱性エラストマー材料。
  8. アスカーFP硬度が、20〜95を示す低硬度材料であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の耐熱性エラストマー材料。
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