以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の磁気記録媒体の概略断面図を示しており、磁気記録媒体1は、非磁性支持体2の一方の面上に、非磁性体からなる第一磁性層(下塗り層)3a及び第二磁性層(上層)3bをこの順に塗布形成し、非磁性支持体2の他方の面に、非磁性のバックコート層4を形成して構成される。
尚、前記バックコート層4を形成することは必須事項ではない。
本発明において、磁気ヘッドと直接摺動する上層には、多数回走行で生じる摩擦の上昇をおさえる効果と、同一部分を多数回摺動した場合の耐久性(スチル)を向上させる効果を持つカーボンブラックを含有する。
なかでも、高密度記録に対応した0.1μm(100nm)以下の微粒子磁性粉を使用した磁気記録媒体では、使用される磁性粉の長軸長より大きな平均粒子径を有するカーボンブラックを使用するのがより効果的である。
ここで、平均粒径が250nm以上のカーボンブラック、例えば、MTカーボン(280nm)を使用した場合で特に上層磁性層の厚みが0.2μm以下となる磁気記録媒体では、表面粗度が悪化することで、ヘッドとのスペーシングによる電磁変換特性の劣化が著しく、高密度記録に対応出来ないことが知られている。また、一般的に使用されている20nm〜50nmといった小粒径のカーボンブラックを使用した場合、スペーシングロスによる電磁変換特性の劣化は見られないものの、スチル耐久性、走行耐久性には効果が無い。
<本発明に使用されるカーボンブラックについて>
本発明に基づく磁気記録媒体に使用できるカ−ボンブラックとしては、上層に250nm以下、好ましくは200nm以下(0.2μm)のカーボンブラックを使用する。この粒子サイズは上層磁性粉の長軸長より大きなサイズとする。
また、磁性層厚(X)に対してカーボンブラックの粒子径(α)は、1.2α≦X≦0.8αが好ましく、より好ましくは、1.2α≦X≦αすなわち、カーボンブラックの平均粒子径は磁性層厚と同等以上の大きさのものを使用する。カーボンブラックをこの大きさとすることで、磁性層表面に突起を形成することで真実接触面積を減らし、摩擦の低減並びに磁気記録媒体の走行性、耐久性、スチル耐久性を向上させる効果を持つ。
カーボンの粒子径より磁性層厚が、上層厚以上の粒子径のカーボンブラックを使用した場合であっても塗布・乾燥後、カレンダー処理などの鏡面処理時に下層に吸収される分を見込めるため、150nm程度のカーボンブラックを使用できる。この磁性層に含有されるカーボンブラックの添加量は、磁性粉重量比換算で0.1重量部〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは、0.5重量部〜1.0重量部である。当該カーボンブラックの添加量が多い場合、磁性層表面の突起が多くなりすぎ、走行性は良好となるものの、電磁変換特性(特にデジタル信号)の劣化が著しくなる。また、少ない場合、走行性が劣化し、低温・低湿度環境下の多数回走行時にハリツキなどのトラブルを発生しやすくなる。
このような上層に使用される大粒径のカーボンブラックとしては、ゴム用カーボンブラックとして、ASTMコードでN700〜N900番台が一般的に使用でき、DBP吸油量が、15〜150ml/100g、好ましくは20〜80ml/100gであり、且つ、平均粒子径が50〜200nm、好ましくは80〜180nmであり、さらにBET法による比表面積が、5〜50m2/g、好ましくは8〜30m2/gであるものが効果的である。
また、タップ密度は0.1〜1g/cc、pHは2.0〜10が好ましい。DBP吸油量がより多いカーボンブラックは、粘度が高くなり、分散性が著しく悪化する。少ない場合では、分散性が悪いため分散工程に時間がかかる。平均粒子径は、より小さいもの程分散時間がかかるが表面性が良く、大きくなる程表面性が悪くなる。このため、先述の範囲が好ましい。
以上のような条件を満たすカーボンブラックとしては、例えば非特許文献1等の参考文献に数多く記載されており、この中より、本発明の請求項の範囲にあうカーボンブラックが使用できる。なかでもより効果のあるカーボンブラックとしては、FTカーボン(Fine Thermal/微粒熱分解/N880)、MPFカーボン(Multi Purpose Furnace/N785)、SRFカーボン(Semi Reinforcing Furnace)/N760〜N774)、HMFカーボン(High Modulus Furnace/N601)、GPFカーボン(General Purpose Furnace/N660)、APFカーボン(All Purpose Furnace/N683)、FEFカーボン(Fast Extrusion Furnace/N539〜N568)などが有効である。
具体的な例としては、旭サーマル(旭カーボン社製、FTカーボン:粒径100nm、BET値24m2/g、DBP吸油量28ml/100g)、旭#15(旭カーボン社製、FTカーボン:粒径122nm、BET値12m2/g、DBP吸油量41ml/100g)、旭#35(旭カーボン社製、SRF‐LM:粒径78nm、BET値24m2/g、DBP吸油量50ml/100g)、旭#50(旭カーボン社製、SRF‐HS-HM(N762):粒径80nm、BET値23m2/g、DBP吸油量63ml/100g)、旭#55(旭カーボン社製、GPF(N660):粒径66nm、BET値26m2/g、DBP吸油量87ml/100g)、旭#60(旭カーボン社製、FEF(N550):粒径45nm、BET値40m2/g、DBP吸油量114ml/100g)、ショウブラックN762(昭和キャボット社製、SRF‐HS-HM(N762):粒径80nm、BET値22m2/g、DBP吸油量65ml/100g)、ショウブラックN550(昭和キャボット社製:FEF(N550):粒径45nm、BET値42m2/g、DBP吸油量115ml/100g)、シーストS(東海カーボン社製:SRF‐HS-HM(N762):粒径66nm、BET値27m2/g、DBP吸油量68ml/100g)、シーストV(東海カーボン社製:GPF(N660):粒径62nm、BET値27m2/g、DBP吸油量87ml/100g)、シーストFM(東海カーボン社製:FEF-HS:粒径50nm、BET値42m2/g、DBP吸油量160ml/100g)、シースト116(東海カーボン社製:MAF:粒径38nm、BET値49m2/g、DBP吸油量133ml/100g)、ダイアブラックN760M(三菱化学製:SRF-LM(N760):粒径85nm、BET値27m2/g、DBP吸油量62ml/100g)、ダイアブラックR(三菱化学製:SRF-HM(N774):粒径85nm、BET値28m2/g、DBP吸油量69ml/100g)、ダイヤブラックG(三菱化学製:GPF(N660):粒径80nm、BET値28m2/g、DBP吸油量84ml/100g)、ダイヤブラックE(三菱化学製:FEF(N550):粒径48nm、BET値41m2/g、DBP吸油量115ml/100g)、ダイヤブラックN550M(三菱化学製:MAF:粒径43nm、BET値47m2/g、DBP吸油量115ml/100g)、Furnex N774(コロンビアンカーボン社製:SRF‐HS-HM(N774):粒径66nm、BET値27m2/g、DBP吸油量72ml/100g)、Furnex N762(コロンビアンカーボン社製:SRF‐HS-HM(N762):粒径68nm、BET値23m2/g、DBP吸油量65ml/100g)、Furnex N754(コロンビアンカーボン社製:SRF‐LM(N754):粒径78nm、BET値22m2/g、DBP吸油量58ml/100g)、StatexN630(コロンビアンカーボン社製:GPF(N630):粒径66nm、BET値35m2/g、DBP吸油量78ml/100g)、Statex N550(コロンビアンカーボン社製:FEF(N550):粒径48nm、BET値41m2/g、DBP吸油量121ml/100g)などがあり、いずれも好適である。
また、上記のカーボンの他に、磁性層の電気抵抗を低減する目的で、平均粒子径が20nm〜30nmといった小粒径のカーボンブラックを適宜混合して使用してもよい。小粒径のカーボンブラックの添加量としては、磁性粉の重量当たり0〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0〜1.0重量部となる。小粒径カーボンブラックはBET値が200m2/g程度と大きいため、添加量を増やすことで、塗料の分散性低下が著しくなる。このため、必要最小限の添加量とすることが望ましい。
小粒径のカーボンブラックとしては、例えば、コロンビアンカーボン社製の商品名ラーベン(RAVEN)1250(粒径23nm、BET値135.0m2/g、DBP吸油量58.0ml/100g)、ラーベン1255(粒径23nm、BET値125.0m2/g、DBP吸油量58.0ml/100g)、ラーベン1020(粒径27nm、BET値95.0m2/g、DBP吸油量60.0ml/100g)、ラーベン1080(粒径28nm、BET値78.0m2/g、DBP吸油量65.0ml/100g)、ラーベン1035、ラーベン1040、ラーベン1060、ラーベン3300、ラーベン450、ラーベン780等、又は、コンダクテック(CONDUCTEX)社製の商品名SC(粒径20nm、BET値220.0m2/g、DBP吸油量115.0ml/100g)、旭カーボン社製の商品名#80(粒径23nm、BET値117.0m2/g、DBP吸油量113.0ml/100g)、三菱化成社製の商品名#22B(粒径40nm、BET値5.0m2/g、DBP吸油量131.0ml/100g)、同#20B(粒径40nm、BET値56.0m2/g、DBP吸油量115.0ml/100g)、キャボット社製の商品名ブラックパールズ(BLACK PEARLS)L(粒径24nm、BET値250.0m2/g、DBP吸油量60.0ml/100g)、ブラックパールズ800(粒径17.0nm、BET値240.0m2/g、DBP吸油量75.0ml/100g)、ブラックパールズ1000、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ700、ブラックパールズ905等でもよい。
本発明で使用される強磁性粉末としては、γ−FeOx(x=1.33〜1.5),Co変性ガンマ−FeOx(x=1.33〜1.5)FeまたはNiまたはCoを主成分(75%以上)とする強磁性合金、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライトなど公知の強磁性材料が使用できる。またこれらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl,Si,S,Sc,Ti,V,Cr,Cu,Y,Mo,Rh,Pd,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Ni,Ta,W,Re,Au,Hg,Pb,Bi,La,Ce,P,Mn,Zn,Co,Sr,B,Y,Nd,Co,Niなどの原子を含んでもかまわない。
本発明においてより有用な磁性粉は強磁性の微粒子メタル粉であり、σs=100Am2/kgから200Am2/kg、BET法による比表面積45から60m2/g、抗磁力100kA/m〜200kA/mで顕著な効果がみられる。
前記メタル粉の比表面積(BET)は25〜70m2/gが適当であり、より好ましくは40〜60m2/gである。25m2/g未満ではテープ化時の樹脂との相溶性が悪くなって電磁変換特性が低下する。また、70m2/gを超えるとテープ化時に分散不良を起こしてやはり電磁変換特性が低下する。
前記メタル磁性粉の結晶子は50〜250Åが適当であり、より好ましくは100〜200Åである。50Å未満では磁性粉が超常磁性となり電磁変換特性が著しく低下し、250Åを超えるとノイズが増大して電磁変換特性が低下する。
ここで、上層磁性粉としては、ビデオ特性での高出力を得るためや、長期間の保存に耐える耐候性を確保するため、Coを含有することが望ましい。Co含有量が3at.%未満ではこのような作用効果を充分に得られないことがある。従って、前記上層の前記磁性粉中に含有されるCo量は、3at.%〜50at.%、より好ましくは5〜40at.%、更に好ましくは5〜35at.%であることが好ましい。ここで、at.%は原子数の百分率である。
メタル磁性粉に含有する元素として、Alは、前記針状の微細粉の分散性(焼結防止性)の改善及び還元時の粒子の形状保持に顕著な効果を有する。Alが0.1at.%未満ではこのような効果を発揮することは難しく、20at.%を超えるような多量の含有量では前記飽和磁化σsが低下し、磁気特性が劣化するようになるので、0.1〜20at.%の範囲、好ましくは1〜15at.%、更に好ましくは5〜10at.%の範囲で含有させることがよい。なお、この含有量はAlが化合物(酸化物)として含有されている場合、化合物の量ではなく化合物中のAl元素の含有量を言う。
同様に磁性粉にはYを含む(もしくはその他の希土類元素)ことで、塗料の分散性が向上し、ビデオ出力がより向上する。Yは、該メタル粉の焼結防止ひいては分散性の改善に有効に作用する。その含有量が0.1at.%未満ではその効果が小さくて焼結し易くなり、10at.%を超えると該元素の酸化物の量が多くなって前記飽和磁化σsが小さくなり、前記第2磁性層(上層)用のメタル磁性粉として不適当なものとなる。また塗料の分散性に効果がある範囲は、0.5〜5.0at.%である。希土類元素としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Gd等が挙げられ、これらが複合して含有する場合にもその総量を0.1〜10at.%とする。なお、この含有量はこれらの元素が化合物として含有されている場合、化合物の量ではなく化合物中の当該元素の含有量を言う。
本発明の磁気記録媒体は、磁性層と非磁性支持体の間に比較的厚さの厚い下層下塗り層(図1の第一磁性層3a)を介在させることによって、磁性層の表面に非磁性支持体の表面形状が現れ難くした二層型の磁気記録媒体であり、厚さの薄い磁性層を、平滑な表面性を有するように形成できるため、短波長領域において優れた電磁変換特性が得られることになる。
一般に非磁性層の厚みを1μm〜3μmとすることにより、磁性層の厚みを0.05μm〜0.3μmのオーダーに塗布した場合であっても、磁性層を単層で薄層塗布する場合に比べ均一で安定に塗布できる。下層下塗り層に添加される粒子としては、酸化チタンや酸化鉄等の金属酸化物を挙げることができる。
このうち酸化鉄α−Fe2O3(ヘマタイト)は、γ−Fe2O3やFe3O4系と同様の表面性状を有し、以前より用いられている結合剤をそのまま用いることができ、光触媒活性が大きい酸化チタンに比べ分散が容易であるといった点で多用されている。
その他、本発明に基づく磁気記録媒体において、磁性層に混入される前記強磁性粉末以外の組成物である結合剤、研磨剤、帯電防止剤、防錆剤、或いは磁性塗料を調製するのに使用される溶剤、非磁性支持体等は従来公知のものがいずれも適応可能であり何ら限定されない。
非磁性支持体の素材としては、一般に磁気記録媒体に使用されるものを使用することができ、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネイト、ポリイミド、ポリアミドイミド、その他のプラスチック、アルミニウム、銅等の金属、アルミニウム合金、チタン合金等の軽合金、セラミックス、単結晶シリコン等である。
前記磁性層に用いる結合剤としては、いずれも公知の材料が使用できる。例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ弗化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂又はこれらの混合物などが挙げられる。
また特に、柔軟性を付与するとされているポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等、剛性を付与するとされているセルロース誘導体、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が望ましい。これらの結合剤は、イソシアネート化合物を架橋させることにより耐久性を向上させたり、或いは、適当な極性基を導入させたものであってもよい。
研磨剤としては、モース硬度6以上の非磁性体微粉末が使用できる。例えば、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、2硫化モリブデン、磁性酸化鉄の原料を脱水、アニール処理した針状α酸化鉄及び必要によりそれらをアルミ及び/又はシリカで表面処理したもの等が単独又は組み合わせて使用される。
上層磁性層並びに下層非磁性層に使用される研磨剤の粒子サイズとしては、平均粒子径が0.1〜1.0μmが適宜使用される。特に下層非磁性層に使用される研磨剤は、裁断後の端面(エッジ部)の耐久性を向上させるために添加される。
本発明で使用できる研磨剤の他の特性としては、タップ密度は、通常、0.05〜2g/cc、好ましくは0.2〜1.5g/ccである。比表面積は、通常、1〜200m2/g、望ましくは5〜100m2/g、更に望ましくは7〜80m2/gである。結晶子サイズは、通常、0.01〜2μm、好ましくは0.015〜1.00、更に好ましくは0.015〜0.50μmの範囲である。DBPを用いた吸油量は、通常、5〜100ml/100g、望ましくは10〜80ml/100g、更に望ましくは20〜60ml/100gである。比重は通常、1〜12、好ましくは2〜8である。形状は針状、球状、サイコロ状、板状のいずれでもよい。
また、上記の非磁性粉末は必ずしも100%純粋である必要はなく、目的に応じて表面を他の化合物で処理してもよい。その際、純度は通常、70%以上であれば効果を減ずることにはならない。例えば、酸化チタンを用いる場合、表面をアルミナで処理することが一般的に用いられている。強熱減量は、20%以下であることが望ましい。
本発明に用いられる研磨剤の具体的な例としては、昭和電工社製の商品名UA5600、同UA5605、住友化学社製の商品名AKP−20、同AKP−30、同AKP−50、同HIT−50、同HIT−100、同ZA−G1、日本化学工業社製の商品名G5、同G7、同S−1、戸田工業社製の商品名TF−100、同TF−120、同TF−140、同DPN250BX、同DBN270BX、石原産業社製の商品名TTO−51B、同TTO−55A、同TTO−55B、同TTO−55C、同TTO−55S、同TTO−55D、同FT−1000、同FT−2000、同FTL−100、同FTL−200、同M−1、S−1、同SN−100、チタン工業社製の商品名ECT−52、同STT−4D、同STT−30D、同STT−30、同STT−65C、三菱マテリアル社製の商品名T−1、日本触媒社製の商品名NS−O、同NS−3Y、同NS−8Y、テイカ社製の商品名MT−100S、同MT−100T、同MT−150W、同MT−500B、同MT−600B、同MT−100F、堺化学社製の商品名FINE X−25、同BF−1、同BF−10、同BF−20、同BF−1L、同BF−10P、同和鉱業社製の商品名DEFIC−Y、同DEFIC−R、チタン工業社製の商品名Y−LOPが挙げられる。
これらの研摩剤の添加量は上層磁性層の場合、磁性粉重量比で4〜15%、好ましくは5〜8%であり、下層非磁性層の場合は、同様に4〜15%である。上層磁性層の研磨剤添加量が多い場合、ヘッドウエアの増大、電磁変換特性の悪化がみられ、少ない場合、耐久性が劣化する。下層非磁性層の研摩剤量が多い場合、表面性が悪化し電磁変換特性が悪化し、少ない場合には多数回走行でのエッジ部のダメージ発生などの問題がある。
潤滑剤としては、従来公知のものがいずれも使用できる。例えば、高級脂肪酸エステル、シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコン、弗素含有シリコン、又はその他の弗素系潤滑剤、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステル及び金属塩、ポリフェニルエーテル、弗化アルキルエーテル、アルキルカルボン酸アミン塩及び弗化アルキルカルボン酸アミン塩等のアミン系潤滑剤、並びに炭素数12〜24のアルコール類(それぞれ不飽和を含んでも分岐していてもよい)、炭素数12〜24の高級脂肪酸などが使用できる。
また、上記高級脂肪酸エステル成分としては、炭素数12〜32の高級脂肪エステル類(それぞれ不飽和を含んでも分岐していてもよい)であり、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エイコ酸、エライジン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレイン酸等のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、へプチルエステル、オクチルエステル等がある。
具体的な化合物名としては、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、ミリスチン酸オクチル、ミリスチン酸イソオクチル、パルミチン酸ブチル等が挙げられる。また潤滑剤は、複数の潤滑剤と混合してもかまわない。
帯電防止剤としては、先述のカーボンブラックの他に、天然界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の公知の帯電防止剤が使用可能である。
本発明においては公知のカップリング剤を使用しても構わない。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。ここで、当該磁性粉100重量部に対するカップリング剤の添加量は、0.05〜10.00重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5.00重量部である。
シランカップリング剤としては、γ−メタクリロキシプリピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン化合物やβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物やγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメキシシランなどのアミノシラン化合物やγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン化合物などが好適に用いることができる。
チタネート系カップリング剤としては、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、ビス[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノレート][2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノレート−0](2−プロパノレート)チタニウム、トリス(イソオクタデカノエート−0)(2−プロパノレート)チタニウム、ビス(ジトリデシルホスファイト−0”)テトラキス(2−プロパノレート)ジハイドロゼンチタネート、ビス(ジオクチルホスファイト−0”)テトラキス(2−プロパノレート)ジハイドロゼンチタネート、トリス(ジオクチルホスファイト−0”)(2−プロパノレート)チタニウム、ビス(ジオクチルホスファイト−0”)[1,2−エタンジオレート(2−)−0,0’]チタニウム、トリス(ドデシルベンゼンスルフォネート−0)(2−プロパノレート)チタニウム、テトラキス[2,2−ビス[(2−プロペニルオキシ)メチル]−1−ブタノレートチタネート等が挙げられる。
具体的な商品名としては、例えば、味の素社製のプレンアクトKR TTS、KR 46B、KR 55、KR 41B、KR 38S、KR 138S、KR 238S、338X、KR 12、KR 44、KR 9SA、KR 34S等が好適に用いることができる。
アルミニウム系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられ、具体的な商品名としては、味の素社製のプレンアクトAL−M等が好適に用いることができる。
本発明では、より耐久性を持たせるため平均官能基数2以上のイソシアネート系硬化剤を含む構成としてもよい。即ち、ポリイソシアネートのポリメリック体やポリイソシアネートのポリオールアダクトは、いずれも本発明において好適に使用できる。上記の中でも、ジイソシアネートの三量体である環状の骨格を有するイソシアヌレートはより反応性に富む硬化剤であり、耐久性向上については効果的である。
また、イソシアネート硬化剤としては、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、これらと活性水素化合物との付加体が好ましい。
芳香族ポリイソシアネートとしてはトルエンジイソシアネート(TDI)、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニルジイソシアネート、m−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフチルジイソシアネート等を挙げることができる。
また、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等を挙げることができる。
さらに、これらと付加体を形成する活性水素化合物としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等があり、平均分子量は、100〜5000の範囲のものが好ましい。
硬化剤の添加量としては、バインダー樹脂の重量比で0〜20重量部が一般的であり、好ましくは0〜10重量部である。ここで、理論上は、ポリウレタン樹脂組成物(若しくは結着剤樹脂組成物)中の活性水素と当量のイソシアネート量となる硬化剤重量で、十分な添加量となる。しかしながら実際の製造上では、水分などにより硬化剤成分のイソシアネートが反応してしまうため、活性水素と当量のイソシアネート量では、不十分である場合が多く、このため活性水素当量より10%〜50%過剰量の硬化剤を添加するのが効果的である。
さらに、ポリイソシアネートからなる硬化剤を使用した場合、磁性塗料をコーティング後、40℃〜80℃の温度で数時間硬化反応を促進させることにより、より強い接着性が得られる。
また、磁性塗料を調製するための溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸エチルモノエチルエーテル等のエステル系溶媒、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のグリコールエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素系溶媒、メチレンクロリド、エチレンクロリド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロロヒドリン、ジクロロベンゼン等の塩素含有系溶媒が挙げられる。また、その他にも従来公知の有機溶媒を使用することができる。
磁性塗料を調製する方法としては、いずれも公知の方法が利用できる。例えば、ロールミル、ボールミル、サンドミル、トロンミル、高速ストーンミル、バスケットミル、ディスパー、ホモミキサー、ニーダー、連続ニーダー、エクストルーダー、ホモジナイザー及び超音波分散機等を用いることができる。
本発明に基づく磁気記録媒体において、非磁性支持体の磁性層側と反対の面に、非磁性のバックコート層(例えば図1のバックコート層4)を設けてもよい。バックコート層の厚みは0.3〜1.0μmであり、公知のものが使用できる。
磁性塗料の塗布では、非磁性支持体上に直接行う前に、接着剤層等の下塗り層や、非磁性支持体上に、コロナ放電処理や電子線照射処理等の前処理を施しても構わない。
非磁性支持体上への塗布の方法としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押し出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、グラビアコート、トランスファーロールコート、キャストコート等の方法を挙げることができ、これら以外の方法も使用でき、さらに、押し出しコート(ダイコート)による同時重層塗布でもよい。
ここで、場合によっては、接着強度を上げる等の理由で、非磁性支持体と前記第1磁性層(下層)との間に、先述した公知の結合剤を主成分とする層(下塗り層)を設けても構わない。
以下本発明のより具体的な実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
<磁性層の作製>
下記に示した組成に基づき、各磁性層を構成する各塗料を調製した。
<上層磁性層塗料の作製>
メタル磁性粉 100重量部
平均粒子径 :表中に記載
保磁力Hc :210(kA/m)
飽和磁化σs:120(Am2/kg)、
塩化ビニル系共重合体 15重量部
(日本ゼオン社製、商品名:MR−110)、
ポリエステルポリウレタン樹脂 5重量部
(イソフタル酸/テレフタル酸/ネオペンチルグリコール−MDI系ポリウレタン 分子量25000、極性基=SO3Na=0.2wt%含有)、
研磨剤 10重量部
(住友化学製アルミナ:HIT−70)、
カーボンブラック 変量
(詳細は表中に記載。)、
ポリイソシアネート 4重量部
(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL。但し、ポリイソシアネー トは塗布直前に混合した。)、
ステアリン酸 1重量部、
ステアリン酸ブチル 1重量部、
メチルエチルケトン 80重量部、
メチルイソブチルケトン 80重量部、
トルエン 80重量部。
上述した上層磁性塗料組成を三本ロールで混練した後、サンドミルを用いて分散し、ポリイソシアネート4重量部、ミリスチン酸1重量部を加え、0.5μmの平均口径を有するフィルターで濾過し、上層磁性塗料液とした。
<下層非磁性層塗料の作製>
α−Fe2O3(ヘマタイト) 100重量部
平均長軸長 :0.5μm
比表面積 :BET法で50m2/g、
塩化ビニル系共重合体 15重量部
(日本ゼオン社製、商品名:MR−110)、
ポリエステルポリウレタン樹脂 8重量部
(イソフタル酸/テレフタル酸/ネオペンチルグリコール−MDI系ポリウレタン 分子量25000、極性基=SO3Na=0.2wt%含有)、
研磨剤 10重量部
(住友化学社製アルミナ:HIT-50)、
カーボンブラック 10重量部
(昭和キャボット社製:BP-L:粒径24nm、BET値250.0m2/g、DBP吸油量60.0ml/100g)、
ポリイソシアネート 4重量部
(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL。但し、ポリイソシアネー トは塗布直前に混合した。)、
ステアリン酸 1重量部、
ステアリン酸ブチル 1重量部、
メチルエチルケトン 80重量部、
メチルイソブチルケトン 80重量部、
トルエン 80重量部。
上述した下層非磁性塗料組成を連続ニーダーで混練した後、サンドミルを用いて分散し、ポリイソシアネート4重量部、ミリスチン酸1重量部を加え、1μmの平均口径を有するフィルターで濾過し、下層非磁性塗料液とした。
また、以下に示す組成でバックコート塗料を作製した。
<バックコート用非磁性塗料の作製>
カーボンブラック 100重量部
(平均粒子経20nm)、
カーボンブラック 5重量部
(平均粒子経350nm)、
ポリウレタン樹脂 25重量部
(ポリカーボネートポリオール/ネオペンチルグリコールHDI系ポリウレ タン、分子量35000、Nーメチルジエタノールアミン=0.2wt%含 有)、
ニトロセルロース 15重量部
(旭化成社製、商品名:NC−1/2H)、
ポリイソシアネート 20重量部
(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL。但し、ポリイソシアネー トは塗布直前に混合した。)、
メチルエチルケトン 180重量部、
メチルイソブチルケトン 180重量部、
トルエン 180重量部。
上述した非磁性塗料組成を三本ロールにて混練後、サンドミルを用いて分散し、ポリイソシアネート20重量部を加え、1μmの平均口径を有するフィルターで濾過し、バックコート用非磁性塗料液とした。
上記に作製した各磁性塗料液を厚さが7.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、それぞれ表1、表2に示した上下層の厚み構成となるように同時二層塗布し、乾燥及びカレンダー処理後、硬化した。次に、上記に作製したバックコート用非磁性塗料を、上記のポリエチレンテレフタレートフィルムの磁性面と反対の面側に0.8μmの厚みで塗布、乾燥し、得られた幅広の磁性フィルムを1/2インチ幅に裁断してビデオテープを作製した。また、これをソニー製HDCAM用のカセットに組込み、実施例1〜15及び比較例1〜18のカセットテープを作製した。
<測定方法>
(電磁変換特性の測定)
HDCAMカセットに組み込んでなる上記サンプルを、SONY社製HDCAMビデオレコーダー(HDW−F500)でデジタルのビデオ信号77.33MHzと1MHz近傍でのC/Nを測定し、実施例1を0dBとして示した。
ここで、電磁変換特性の測定において、規準としたテープより−0.5dB以下では特性上劣るものと判断でき、−2.0dB以下では、各種のフォーマットでの規格を満足しないと判断できる。
(スチル耐久性の測定)
HDCAMカセットに組み込んでなる上記サンプルを、SONY社製HDCAMビデオレコーダー(HDW−F500)において、5℃、15%RHの環境においてスチルモードで100分間走行させ、テープ表面、エッジ部を目視で観察し以下の規準で評価した。
○;100分間完走し、テープエッジにダメージがないもの
△;100分間完走するものの、チャンネルコンディションエーラーの発生 が見られるもの
×;100分間走行しないもの。
(耐久性測定)
SONY社製HDCAMビデオレコーダー(HDW−M2000)で、100時間分の記録再生を行い、ビデオ信号の出力波形を測定し、以下の規準で評価した。
○;ビデオ信号で出力の劣化がないもの
△;出力が劣化するものの、回復するもの、若しくは−2.0dB以内であ るもの
×;ヘッドクロッグの発生したもの。
(摩擦の測定)
1/2インチのテープを、温度22℃湿度60%の環境下でSONY製摩擦測定器SFT−1200Sにて0.2SのSUS303(&AHS)の金属棒にサンプルを90度巻き付けて、0.37N加重にて摩擦を測定した。磁性面を1000回走行させた後の摩擦係数を求め、以下の規準で評価した。
○;1000回走行後の摩擦係数が0.3未満
△;1000回走行後の摩擦係数が0.3以上、0.45未満
×;1000回走行後の摩擦係数が0.45以上もしくは、
走行中にハリツキが発生したもの。
(テープダメージの測定)
SONY社製HDCAMビデオレコーダー(HDW−F500)で、40分のテープ長(243m)を500回のシャトル(記録再生の繰り返し走行)テスト行い、走行後の磁性面の表面を光学顕微鏡(200倍)にて目視で観察し、以下の規準で評価した。
○;500回走行後、テープに傷発生のないもの
△;500回走行後、エッジ部もしくはテープ全体にダメージの発生が見られるもの
×;摩擦の上昇によるハリツキや、ダメージによるテープ切れの発生により500回走行出来なかったもの。
結果を表1〜表2に示す。
比較例1は、磁性層に平均粒子径が250nmと大きなMTカーボンを使用した場合である。走行性、耐久性、スチルなどの実用特性は満足するものの、電磁変換特性は悪化している。
また、比較例2も同様により大粒径のカーボンブラックを使用した場合であり、比較例1と同様に電磁変換特性が満足できないことがわかる。
比較例3から比較例7は、上層磁性層に20nm程度の小粒子径のカーボンブラックを使用した場合である。この場合、電磁変換特性の悪化は見られないものの、摩擦上昇があり、スチルやダメージなど、実用特性が悪いことがわかる。
比較例8は上層磁性層にカーボンブラックがない場合であるが、小粒径のカーボンブラックを使用した場合と同様に、スチル特性の悪化や摩擦上昇が見られる。
これらに対して実施例1から5では、本発明の特許請求の範囲のカーボンブラックを0.5重量部添加した場合であるが、電磁変換特性ならびに実用特性ともに良好である。ここで、実施例5は上層磁性層厚を0.35μmとした場合であるが、磁性層が厚くなることで、厚みによる減磁の影響から出力の低下が見られることがわかる。
実施例6から9はカーボンブラックの平均粒子径αおよび磁性粉の長軸長Lをより小さくした場合であるが、磁性粉をより微粒子化することで、出力は良好となることがわかる。
また、実施例10から実施例13は、本発明におけるカーボンブラックの添加量を変化させた例であり、実施例10では添加量を0.05重量部とごく少量使用することで、実用特性は比較例8のカーボンブラック無添加に比べて格段に向上することかがわかる。さらに、摩擦上昇を押さえるためには、添加量を本発明の特許請求の範囲とすることが望ましい。比較例9はカーボンブラックの添加量を増やしすぎた場合であるが、この場合、電磁変換特性が大幅に悪化することがわかる。
実施例15は、本発明で使用されるカーボンブラックを結合剤とともに、プレ分散し、スラリー化したものを、他の磁性塗料組成混合物とは別に分散させた後に、混合する手法を用いた場合であるが、この場合も前記と同様の効果を有する。
比較例10、11は、磁性粉の長軸長が本発明の特許請求の範囲外の場合であり、この場合、電磁変換特性は悪化し、カーボンブラックとのサイズの差が近くなることで、摩擦上昇も見られることがわかる。
比較例12から15は、比較例1から5と同一径のカーボンブラックの添加量を1重量部、3重量部とした場合であるが、大粒径カーボンブラックの比較例12、13では電磁変換特性の改善効果は見られず、小粒径カーボンブラックの比較例14、15、16では、電磁変換特性がより悪化傾向となり、且つ摩擦特性やスチル特性に対しての改善効果はみられない。
比較例17、18は、磁性粉の長軸長が本発明の特許請求の範囲より大きく、且つ、カーボンブラックの平均粒子径が小さい場合である。この場合、電磁変換特性も悪く、実用特性も悪いことがわかる。
以上の実施例、比較例より、本発明の構成とすることで、短波長に対応した高密度の塗布型磁気記録媒体の電磁変換特性、耐久性、走行性、摩擦特性を向上させることができることがわかる。