JP2005127933A - 湿り度指示素子及びこれを具備する吸収性物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 湿潤の有無が視覚によって明確に認識可能な湿り度指示素子を提供すること、及び体液が排出されたことが、外部から明確に識別可能な吸収性物品を提供すること。
【解決手段】 本発明の湿り度指示素子は、湿潤することによって無色から白色に変化する高分子フィルムを備えている。高分子フィルムは、酢酸ビニルを含有する共重合体又は単独重合体からなることが好ましい。高分子フィルムは、ポリマーエマルジョンから造膜したフィルムであることも好ましい。本発明の吸収性物品は、裏面シートと吸収体との間に湿り度指示素子を具備している。
【選択図】 図1

Description

本発明は湿り度指示素子に関する。また本発明はこの湿り度指示素子を具備するおむつ、失禁パッド、汗パッド、母乳パッド等の吸収性物品に関する。本発明の吸収性物品は、排尿があったことが外部から認識可能なものである。
従来、おむつの交換時期を外部から認識する手段としては、水等に接触すると溶解して流れ出す水溶性塗料を、おむつの液不透過性裏面シートの内側に印刷するものが知られている。しかしこの手段は、描いた印刷模様等が汚く滲むため見映えが悪い。また水に接触する前後での変化が鮮明でないため認識しにくい。更に、体を着色してしまう危険性があった。
水溶性塗料に代えて、水分と非接触状態では不透明であるが、水分と接触すると透明化する変色層を利用した吸収性物品が提案されている(特許文献1及び2参照)。この変色層によれば、描いた印刷模様等が汚く滲むことはないものの、認識のし易さという点では未だ不充分である。
実開平3−58416号公報 特開平9−140742号公報
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する不都合を解消することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の高分子フィルムを用いることによって、前記目的を達成し得ることを知見した。即ち本発明は、湿潤することによって無色から白色に変化する高分子フィルムを備えた湿り度指示素子を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有する吸収性物品において、前記裏面シートと前記吸収体との間に、湿潤することによって無色から白色に変化する高分子フィルムを備えた湿り度指示素子を具備する吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
本発明の湿り度指示素子によれば、湿潤の有無が視覚によって明確認識可能となる。また見映えのよい表示が可能となる。この湿り度指示素子を具備した本発明の吸収性物品は、体液が排出されたことが、外部から明確に識別可能となり、吸収性物品の交換を適切な時期に行うことが可能となる。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の湿り度指示素子は、高分子フィルムを備えている。高分子フィルムは、水等と非接触の乾燥状態ではほぼ無色透明であり、水等と接触し湿潤状態となると白色に変化するものである。
湿潤による色の変化は、大きい程湿潤の有無を明確に認識することが可能になる。乾燥状態における高分子フィルムの波長500nmの光に対する吸光度A1は0.3以下であり、且つ湿潤後の高分子フィルムの同波長の光に対する吸光度A2は0.8以上であることが好ましい。更に好ましくは、A1が0.2以下であり且つA2が1.2以上である。A1及びA2がそれぞれ上記の値以下及び値以上であることによって、湿潤による色の変化が十分に大きくなり、湿潤の有無を一層明確に認識することが可能になる。「乾燥状態」とは常温(25℃)、常湿(65%RH)の環境に1日以上放置した状態をいい、「湿潤後」とは高分子フィルムを水(イオン交換水)中に5分間浸漬した後の状態をいう。
湿潤に起因する高分子フィルムの無色から白色への変化(白化)の速度は素早いほど好ましい。湿潤したことを観者が迅速に且つ明確に認識できるからである。この観点から、高分子フィルムは湿潤後に、波長500nmの光に対する吸光度が10分以内に、特に5分以内に0.3以下から0.8以上に変化することが好ましい。特に、おむつ等の吸収性物品に用いる場合には、3分以内が更に好ましく、1分以内であることが一層好ましい。
高分子フィルムは、湿潤によって無色から白色に変化するものであれば、形状、材質に関して制限はない。高分子フィルムの湿潤による白化現象は、高分子内部に進入した水が、高分子内部において多数の微細な水もしくは水リッチのドメインを形成し、このドメインがポリマーマトリックスと屈折率が異なることから光を乱反射させるために起こると考えられる。従って、高分子フィルムが均一に吸水するのでなく、多数の微細なドメインを形成して吸水する性質を有するものであれば高分子の種類、構造等に関係なく好適に用いることができる。
高分子フィルムの白化現象は、特にポリマーエマルジョンから造膜されたフィルムにおいて顕著であり、一般的な現象とされている。この現象は、ポリマーの種類や粒子の形状だけでなく、造膜条件(温度等)、乳化重合時に使用した活性剤や保護コロイド、塩等の低分子水溶性物質の種類や量等に大きく影響を受ける(例えば、室井宗一著、「高分子ラテックスの化学」、高分子刊行会、1987年11月10日 第11刷、第235〜280頁参照)。従来、高分子フィルムの白化現象は、高分子フィルムにとって不利なものであると考えられてきた。本発明は、その不利な点を逆に積極的に利用している点が特徴の一つになっている。
高分子フィルムの白化現象は、ポリマーエマルジョンフィルムだけでなく、例えば親水性高分子と疎水性高分子とからなるグラフトポリマーやブロックポリマーのフィルム、塩などの親水性物質が微細に分散しているポリマーのフィルム等においてもよく観察される。
本発明の湿り度指示素子に用いることができる高分子としては例えば、酢酸ビニルを40〜100重量%含有する共重合体又は単独重合体、ポリエチレングリコールとポリ酢酸ビニルのブロック共重合体、グラフト共重合体等を挙げることができる。酢酸ビニルの共重合体における他の共重合体成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、アクリルアミド及びスチレンなど、酢酸ビニルと共重合可能なモノマーを広く使用することができる。これらの高分子はあくまでも例示であり、湿潤の有無が視覚によって認識可能な白化を生じる高分子であれば、その種類、組成、構造等に制限はない。
本発明の湿り度指示素子は、例えば前述した高分子フィルムを所定の形状に切り出して(例えば短冊状等)そのまま用いてもよい。或いは本発明の湿り度指示素子は、所定の色(但し白色以外)に着色した基材(以下、着色基材ともいう)と該基材の一面上に配された高分子フィルムとを具備するものであってもよい。後者の場合、水等と非接触の乾燥状態では高分子フィルムがほぼ無色透明であるため、着色基材の色、形状、模様等を識別することができる。水等と接触し湿潤状態となると、高分子フィルムが白色に変化し着色基材を遮蔽するため着色基材の色、形状等を識別することができない。このように、着色基材の色、形状等が認識できるか否かによって湿潤の有無を識別することが可能となる。
高分子フィルムは着色基材上に配置されていればよく、両者が互いに接合されていても、単に重ね合わされた状態でもよい。湿り度指示素子を取り付ける側に着色基材に相当する模様や着色が施されていれば、湿り度指示素子は着色基材を有していなくてもよい。また、高分子フィルムを湿潤させるものが有色の場合、例えば湿り度指示素子をおむつに組み込み、これを軟便や黄色の尿等で湿潤させる場合には、着色基材は必ずしも必要でない。
高分子フィルムを着色基材上に配する位置や面積に関しては特に制限はない。高分子フィルムを着色基材全面に配することも可能である。或いは、部分的に配することで、湿潤により文字、記号又は絵柄が現れるようにすることも可能である。また、湿潤による白化度合いの異なる高分子フィルムを複数用いることにより、色の濃淡をつけることもできる。
着色基材の色は白色以外であれば特に制限はない。着色基材を着色する色材は、湿潤によって溶出するものでないことが好ましい。色材が溶出すると湿潤の有無の識別が困難になる場合ある。着色基材の形状や材質等に関しても特に制限はない。例えば水不溶性の染料で染色した紙、布、不織布や、顔料が分散した樹脂フィルム、板等が好適に用いられる。
高分子フィルムの形状、大きさ、厚みに関して特に制限はない。後述するようにおむつ等に使用する場合には、厚すぎると装着時に違和感があることから、厚みは0.01〜1mmであることが好ましい。
高分子フィルムのハンドリング性や強度、また物品への取り付けのため、無色透明のフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等を支持体として用い、該支持体と高分子フィルムとを単に重ね合わせて或いは接合して用いてもよい。
次に本発明の湿り度指示素子を備えた吸収性物品について図1を参照しながら説明する。図1には、吸収性物品の一例としての使い捨ておむつが示されている。図1では、使い捨ておむつを裏面シート側からみている。おむつ1は、液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3及びこれら両シート2,3間に介在される吸収体4を有し、実質的に縦長に形成されている。裏面シート3の外側(吸収体側とは反対側)の面には、不織布からなる外装カバーシート7が配されている。外装カバーシート7はおむつ1の外縁をなしている。おむつ1は、股下部B並びに股下部Bから前後に延びる腹側部C及び背側部Aを備えている。背側部Aは、おむつ使用時に着用者の背中側に位置する部位である。腹側部Cは、おむつ使用時に着用者の腹側に位置する部位である。背側部Aの左右両側縁にはファスニングテープ8,8が設けられている。ファスニングテープ8は、おむつ着用時に腹側部Cの外装カバーシート7上に設けられたランディングテープ9に止着される。
吸収体4は、表面シート2及び裏面シート3によって挟持・固定されている。吸収体4の前後端縁から前後方向に延出するウエスト部5,5及び左右側縁から横方向に延出するレッグ部6,6には、おむつ着用者に各部を着用者にフィットさせるためのウエスト部弾性部材51及びレッグ弾性部材61がそれぞれ設けられている。また、おむつ1の表面シート側における長手方向左右両側には、それぞれ立体ガードが形成されている(図示せず)。立体ガードの自由端には立体ガード弾性部材が配されて、ギャザーが形成されている。
おむつ1を構成する以上の各部材としては当該技術分野において従来公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば表面シート2としては親水性の不織布や開孔フィルムなどを用いることができる。裏面シート3としては液不透過性のフィルムなどを用いることができる。吸収体4としては、フラッフパルプと高吸収性ポリマーの粒子との積繊体を用いることができる。弾性伸縮部材61,71としては各種エラストマー材料を用いることができる。
而して本実施形態の使い捨ておむつ1では、裏面シート3と吸収体4との間に、着色基材及び高分子フィルムを有する湿り度指示素子10が配されている。本実施形態においては、湿り度指示素子10における高分子フィルムが裏面シート3に、着色基材が吸収体4に臨むようになっている。つまり、湿り度指示素子10は、高分子フィルムにおける吸収体側に着色基材を具備している。
湿り度指示素子10は細幅帯状であり、おむつ幅方向の中央部分において、おむつの背側部A、股下部B及び腹側部Cにわたって配されている。より具体的には、おむつ幅方向に3本の湿り度指示素子10が並列するように配されている。本実施形態の使い捨ておむつ1のように、湿り度指示素子10が股下部Bに存在していることで、尿が吸収体4に吸収され裏面シート3にまで到達した時に湿り度指示素子10が視覚的に変化し、おむつ1の取り替え時期を知らせることができる。詳細には、尿により湿り度指示素子10が湿潤し、高分子フィルムが無色から白色に変化することで、それまで認識していた着色基材の色が高分子フィルムによって隠蔽され、着色が消えることで、湿り度指示素子の視覚的変化が起こり、おむつの湿潤を認識することができる。
本実施形態においては、湿り度指示素子10のすべてがおむつ長手方向の全域にわたって配されているが、本発明の目的を最低限達成するためには股下部Bに湿り度指示素子10が配されていれば良い。この理由は、着用者の排尿部は股下部Bに存在することから、当該部分での排尿量がおむつ1の交換時期を知る上で最も重要となるからである。
本実施形態においては、湿り度指示素子10を、腹側部Cから背側部Aにわたり、おむつ長手方向に沿って設けることにより、股下部Bでの湿り度指示素子10の視覚的変化を、視覚的変化の比較的起きにくい背側部Aや腹側部Cとの比較によって明確に認識できるようにしている。しかも、湿り度指示素子10を細幅帯状の形態にしておむつ幅方向に複数本(本実施形態では3本)並列させているので、視覚的変化が一層認識し易い。
湿り度指示素子10は、裏面シート3を通じておむつ外部から認識される。従って裏面シート3としては、視認性を良くするため透明度が高いものを用いることが好ましい。しかし余りに透明度が高いと、おむつ外部から排泄物が透けて見えてしまう場合がある。このような見地から、裏面シート3の光透過率は30〜80%、特に35〜80%であることが好ましい。
裏面シート3の光透過率は以下のようにして測定される。
<光透過率の測定方法>
(株)村上色彩研究所製、商品名「HR−100」で、測定光源A光源を使用して全光透過率Ttの値を測定する。裏面シート上の任意の10点を測定し、その平均値をもって光透過率の値とする。
前記の光透過率を有することに加えて裏面シート3は液不透過性でかつ透湿性を有するものであることが好ましい。裏面シート3の透湿度は、JIS Z0208に準じ、32℃で1時間保存後の試料についての値で、0.5〜4.0g/(100cm2・hr)であることが、おむつ内部の適度な湿度調整によって快適な履き心地が得られる点、及び体液の漏れを防止する点から好ましい。
このような液不透過性及び透湿性を有する裏面シート3に用いられる素材としては例えば多孔性フィルムが挙げられる。多孔性フィルムは例えば、疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微細な無機フィラー又は該樹脂と相溶性のない有機高分子等とを溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又はニ軸延伸して得られる。熱可塑性樹脂としては例えばポリオレフィンが挙げられる。ポリオレフィンとしては高〜低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用することができる。
裏面シート3の素材として坪量10〜40g/m2の多孔性フィルムを使用すると、変化剤10の視覚的変化がおむつ外部から認識し易くなると共に、柔軟な感触が得られるので好ましい。
外装カバーシート7は、湿り度指示素子10の視覚的変化が認識し易いように、所定の光透過率を有するものが好ましい。外装カバーシート7の光透過率は50%以上であることが好ましく、55%以上、特に60%以上であることが好ましい。光透過率の測定方法は前述した通りである。
湿り度指示素子10がおむつ外部から透けて見えるように、外装カバーシート7としては前記光透過率が得られる坪量及び/又は厚さの不織布を用いることが好ましい。該不織布はその坪量が5〜45g/m2、特に10〜40g/m2であることが、湿り度指示素子10の視覚的変化の認識性と風合いや手触りなどの官能的な性能とを両立する点から好ましい。
外装カバーシート7に用いられる不織布としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルからなる熱可塑性樹脂単独の繊維や、これらの樹脂の2種以上を用いてなる芯鞘型やサイドバイサイド型の構造を有する複合繊維から構成される不織布等が挙げられる。外装カバーシート7に用いられる不織布としては、その地色の透明度が高く且つ白色度が高いものを用いることが、湿り度指示素子10の視覚的変化の認識性が高まるので好ましい。但し外装カバーシート7は、おむつ厚み方向に関して、湿り度指示素子10を配した領域との重なり部分において、当該重なり部分の大部分が白色であれば良く、当該重なり部分以外の領域に、湿り度指示素子10の視覚的変化の認識性を妨げない範囲で印刷を施しても構わない。
本実施形態においては、湿り度指示素子10を細幅帯状の形態でおむつ幅方向に3本並列させているが、本発明はこれに限定されず、変化剤の本数は1本でも4本以上でもよい。これに加えて、水分と接触しても視覚的に変化しない模様を、湿り度指示素子10と重ならないように裏面シート3や外装カバーシート7に設けることも可能である。このような模様を設ける場合には例えば、湿り度指示素子10が水分との接触の前後で変色するものである場合には、湿り度指示素子10の変化前の色又は変化後の色と略同じ色の模様を設けると、色の変化を一層認識し易くなるので好ましい。
本発明の吸収性物品は、前述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば前述した実施形態では、背側部Aの左右両側縁にファスニングテープ8,8を設けたが、これに代えて背側部Aの左右両側縁に、側方に延出する一対のウエストバンドをそれぞれ設けてもよい。そして、一方のウエストバンドの先端部にバンド止着部を設け、この止着部によって左右のウエストバンドを、着用者の腹側又は背側において止着するようにしてもよい。また前記実施形態は展開型の使い捨ておむつに係るものであったが、本発明は他の吸収性物品、例えばパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ等にも同様に適用可能である。
以下、実施例により本発明を更に説明する。しかし、本発明の範囲はかかる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
酢酸ビニルポリマーエマルジョンを次の方法で合成した。花王(株)製のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルであるエマルゲン950(商品名):0.5g、日本合成化学(株)製のポリビニルアルコールであるゴーセノールNH−18(商品名):8g、炭酸ナトリウム:1.25gを溶解した水溶液:150gと、酢酸ビニル:10gとを、還流冷却管、攪拌棒、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた500mlフラスコに加え、攪拌しながらフラスコ内を窒素置換した。70℃に昇温し、2,2’−アゾビス(2−アジミノプロパン)二塩酸塩:0.15gを含む水溶液10gを添加して重合を開始した。そこに、酢酸ビニル:90gを約100分かけて滴下し、更に、酢酸ビニル添加後、80℃にて1時間攪拌を行うことにより反応を完結させ、酢酸ビニルポリマーエマルジョンを得た。
厚み約10μmの無色透明のポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体とし、その上に、得られたポリマーエマルジョンを、アプリケーターを使用して塗り広げ均一な薄膜とし、温度25℃、湿度65%RHの環境にて1日間乾燥した。こうして得られた高分子フィルム(厚さ約50μm)が形成された支持体と、高分子フィルムがない元の支持体とを用い、調製した高分子フィルムの波長500nmの光に対する吸光度を測定した。測定は、紫外−可視分光光度計(島津製作所製UV−2200)を用いた。まず水に浸漬させずそのままの状態で測定し、続いてイオン交換水に浸漬させて吸光度の変化を追跡した。結果を以下の表1に示す。
〔実施例2〕
アクリル酸メチル−ポリオキシエチレングラフト共重合体を次の方法で合成した。還流冷却管、攪拌棒、及び窒素導入管を備えた500mlフラスコに、新中村化学(株)製のポリオキシエチレンメタクリレートであるNKエステル38G(商品名):15g、アクリル酸メチル(和光純薬(株)製):45g、メタノール:100gを取り、攪拌しながらフラスコを窒素置換した。フラスコの内容物が溶解したのを確認した後、60℃に昇温した。これに、2,2’−アゾビス(イソブチルニトリル):0.3gを溶解したメタノール溶液10gを加え、攪拌しながら60℃で20時間反応を行い、アクリル酸メチル−ポリオキシエチレングラフト共重合体のメタノール溶液を得た。
得られたアクリル酸メチル−ポリオキシエチレングラフト共重合体のメタノール溶液を用いて実施例1と同様の方法で、厚み約10μmの無色透明のポリエチレンテレフタレートフィルム支持体上に高分子フィルムを調製し、その吸光度を測定した。結果を以下の表1に示す。
〔実施例3〕
セメダイン(株)製の酢酸ビニル樹脂系エマルジョン型接着剤(木工用605)を用いて実施例1と同様の方法で高分子フィルムを調製し、その吸光度を測定した。結果を以下の表1に示す。
〔比較例1〕
実施例1のポリマーエマルジョンの代わりに、ポリメタクリル酸メチル(和光純薬(株)製)の20重量%アセトン溶液を用いて実施例1と同様の方法で高分子フィルムを調製し、その吸光度を測定した。結果を以下の表1に示す。
〔比較例2〕
実施例1のポリマーエマルジョンの代わりに、日本合成化学(株)製のポリビニルアルコールであるゴーセノールGL−05(商品名)の15重量%水溶液を用いて実施例1と同様の方法で高分子フィルムを調製し、その吸光度を測定した。結果を以下の表1に示す。
Figure 2005127933
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の高分子フィルムを水に浸漬させることにより吸光度が上昇することが判る。また、表には示していないが、目視においても無色のフィルムが白色に変化する様子が観察された。これに対して比較例1では吸光度の変化は認められなかった。比較例2では、水に浸漬することでフィルムが溶解してしまった。
〔実施例4〕
実施例1で得られたポリマーエマルジョンを用い、湿潤によって色材が溶出しない紺色の紙(坪量50g/m2)上に、実施例1と同様な方法で約50μmの高分子フィルムを調製し、湿り度指示素子を得た。色差計(ミノルタ(株)製、色形色差計CR−210)を用いてこの指示素子の乾燥状態と水に5分間浸漬させた後の色を測定した。あわせて、高分子フィルムのない元の色紙の色を測定した。ハンターLab表色系で表した測定値及び色差を以下の表2に示す。
〔実施例5〕
実施例1で用いたポリマーエマルジョンの代わりに、実施例2のポリマー溶液を用い、実施例4と同様にして湿り度指示素子を得た。得られた湿り度指示素子について、実施例4と同様な方法で湿潤による色の変化を測定した。結果を以下の表2に示す。
〔実施例6〕
実施例1で用いたポリマーエマルジョンの代わりに、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン型接着剤(木工用605、セメダイン(株)製)を用い、実施例4と同様にして湿り度指示素子を得た。得られた湿り度指示素子について、実施例4と同様な方法で湿潤による色の変化を測定した。結果を以下の表2に示す。
〔比較例3〕
実施例1で用いたポリマーエマルジョンの代わりに、ポリメタクリル酸メチルの20重量%アセトン溶液を用い、実施例4と同様にして湿り度指示素子を得た。得られた湿り度指示素子について、実施例4と同様な方法で湿潤による色の変化を測定した。結果を以下の表2に示す。
〔比較例4〕
実施例1で用いたポリマーエマルジョンの代わりに、日本合成化学(株)製のポリビニルアルコールであるゴーセノールGL−05(商品名)の15重量%水溶液を用い、実施例4と同様にして湿り度指示素子を得た。得られた湿り度指示素子について、実施例4と同様な方法で湿潤による色の変化を測定した。結果を以下の表2に示す。
Figure 2005127933
表2に示す結果から明らかなように、各実施例の指示素子は、乾燥状態では高分子フィルムのない元の色紙とぼ同じ色であるのに対して、水に5分間浸漬させた後ではa値、b値が低下しており、白くなっていることを示している。これに対して比較例3では湿潤前後で色の変化は認められなかった。比較例4では水に浸漬することによりフィルムが溶解してしまった。
〔実施例7〕
実施例4の湿り度指示素子を具備する使い捨ておむつを次の方法で製造した。三井化学(株)製の透湿シートであるエスポアールN−20(商品名)を裏面シートとして用いた。裏面シートの一面に、パルプ100%で坪量19g/m2のティッシュペーパーをホットメルト接着剤を用いて貼り合わた。貼り合わせにあたり、裏面シートとティッシュペーパーとの間に実施例4の湿り度指示素子を固定した。このとき、湿り度指示素子における高分子フィルムが裏面シート側になるようにした。ティッシュペーパー上にフラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物からなる吸収体を積繊した。その上をポリプロピレン繊維のサクションヒートボンド不織布からなる表面シートで被覆した。裏面シートと表面シートとの周縁部に弾性伸縮部材を介在させてこれらを接合・固定することよって図1に示す使い捨ておむつを製造した。
このおむつを裏面シート側から観察したところ、湿り度指示素子が紺色に明確に確認できた。次に、このおむつの表面シート側から生理食塩水を注入した。注入量は5gとした。また、これとは別に注入量40gのものもを用意した。注入後5分間放置し、湿り度指示素子の色の変化を目視により観察した。注入量が5g、40gどちらの場合も紺色が消失していた。
〔比較例5〕
実施例4の湿り度指示素子の代わりに、比較例3の指示素子を用いる以外は実施例7と同様にして使い捨ておむつを得た。得られたおむつについて、実施例7と同様にして生理食塩水注入前後での指示素子の色を観察した。その結果、生理食塩水注入前後で色の変化は観察されなかった。
本発明の吸収性物品の一例としての使い捨ておむつを裏面シート側からみた一部破断平面図である。
符号の説明
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 ウエスト部
6 レッグ部
7 外装カバーシート
8 ファスニングテープ
9 ランディングテープ
10 湿り度指示素子

Claims (8)

  1. 湿潤することによって無色から白色に変化する高分子フィルムを備えた湿り度指示素子。
  2. 前記高分子フィルムの湿潤前後の吸光度A1、A2が、以下の式(I)、(II)を同時に満たす請求項1記載の湿り度指示素子。
    A1≦0.3 (I)
    A2≧0.8 (II)
    式中、A1は乾燥状態での波長500nmの光に対する吸光度を表し、A2は水中に5分間浸漬した後の波長500nmの光に対する吸光度を表す。
  3. 前記A1、A2が以下の式(III)、(IV)を同時に満たす請求項2記載の湿り度指示素子。
    A1≦0.2 (III)
    A2≧1.2 (IV)
  4. 前記高分子フィルムが、酢酸ビニルを40〜100重量%含有する共重合体又は単独重合体からなる請求項1〜3の何れかに記載の湿り度指示素子。
  5. 前記高分子フィルムが、ポリマーエマルジョンから造膜したフィルムである請求項1〜4の何れかに記載の湿り度指示素子。
  6. 着色基材を更に具備する請求項1〜5の何れかに記載の湿り度指示素子。
  7. 液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有する吸収性物品において、前記裏面シートと前記吸収体との間に、湿潤することによって無色から白色に変化する高分子フィルムを備えた湿り度指示素子を具備する吸収性物品。
  8. 前記湿り度指示素子は、前記高分子フィルムにおける前記吸収体側に着色基材を更に具備する請求項7記載の吸収性物品。
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