JP2005127463A - 動力切換モジュールおよびこれを用いた動力切換システム - Google Patents
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Abstract
【課題】1つのモータの動力で多軸を効率よく回転させるようにしつつ、高速化を簡単に図り、しかも全体をコンパクトにかつ組立を容易にする。
【解決手段】動力切換システム1は、軸方向に積層配置された同じ構成の第1および第2動力切換モジュール2,3を備えている。このとき、各動力切換モジュール2,3の各入力軸6は、それぞれ各ハウジング5および各出力軸10を貫通しており、両入力軸6は軸方向に一体回転可能に連結されているとともに、1つの入力軸6がモータ476に連結されている。モータ47で両入力軸6が回転している状態で、例えば第1動力切換モジュール2の多板クラッチ7を接続してから多板ブレーキ8のブレーキ作動を解除すると、入力軸6の回転が出力軸7に伝達され、出力軸7が回転する。このとき、第2動力切換モジュール3の出力軸7は回転しない。
【選択図】 図1
【解決手段】動力切換システム1は、軸方向に積層配置された同じ構成の第1および第2動力切換モジュール2,3を備えている。このとき、各動力切換モジュール2,3の各入力軸6は、それぞれ各ハウジング5および各出力軸10を貫通しており、両入力軸6は軸方向に一体回転可能に連結されているとともに、1つの入力軸6がモータ476に連結されている。モータ47で両入力軸6が回転している状態で、例えば第1動力切換モジュール2の多板クラッチ7を接続してから多板ブレーキ8のブレーキ作動を解除すると、入力軸6の回転が出力軸7に伝達され、出力軸7が回転する。このとき、第2動力切換モジュール3の出力軸7は回転しない。
【選択図】 図1
Description
本発明は、X軸、Y軸およびZ軸方向の直線運動や回転運動等の複数の動作を行う多軸の動作を行う装置やシステムに使用される動力切換モジュールおよびこれを用いた動力切換システムの技術分野に属するものである。
従来、例えばマシニングセンタ等の複数の工作機械が配設された機械加工ラインにおいては、各工作機械に対して、機械加工する素材(以下、ワークともいう)を取り出し、搬送および載置動作を行うために走行ロボットが用いられている。また、溶接ラインやプレスライン等においても種々の作業のために多関節の産業ロボットが用いられているとともに、装置の組立ラインではワークを自動的に組み立てる自動組立機が用いられている。これらの走行ロボット、産業ロボット、あるいは自動組立機等は、X軸、Y軸およびZ軸方向の直線運動や回転運動等の多軸の動作を行うようになっている。
ところで、このような多軸の動作を行う装置やシステムにおいては、それぞれの軸を回転するためにモータを各軸毎に設けたのでは、装置のコストが高くなるばかりでなく、装置の構成が複雑かつ大型になってしまう。
そこで、1つのモータの動力を互いに並設された第1および第2伝達軸にそれぞれ切り換えて伝達することで、モータの台数を削減した多関節ロボットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示の多関節ロボットは、第1および第2伝達軸毎に、それぞれ、クラッチおよびブレーキが設けられている。また、第1伝達軸側の入力軸(クラッチより動力伝達上流側の軸)がモータの回転軸に連結されているとともに、第1および第2伝達軸側の入力軸にそれぞれ第1および第2動力分配用ギヤが設けられている。そして、第1および第2動力分配用ギヤが常時噛合されることで、モータの動力が第2伝達軸側の入力軸にも分配されるようになっている。
そこで、1つのモータの動力を互いに並設された第1および第2伝達軸にそれぞれ切り換えて伝達することで、モータの台数を削減した多関節ロボットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示の多関節ロボットは、第1および第2伝達軸毎に、それぞれ、クラッチおよびブレーキが設けられている。また、第1伝達軸側の入力軸(クラッチより動力伝達上流側の軸)がモータの回転軸に連結されているとともに、第1および第2伝達軸側の入力軸にそれぞれ第1および第2動力分配用ギヤが設けられている。そして、第1および第2動力分配用ギヤが常時噛合されることで、モータの動力が第2伝達軸側の入力軸にも分配されるようになっている。
モータが駆動することで、第1伝達軸側の入力軸が回転するとともに、第1および第2動力分配用ギヤを介して第2伝達軸側の入力軸が回転する。一方、第1および第2伝達軸側の各出力軸(クラッチより動力伝達下流側の軸)は、非作動時には両ブレーキが作動保持されかつ両クラッチが結合解除されることで回転不能となっている。
いま、第1伝達軸側のクラッチが結合されかつ第1伝達軸側のブレーキが解除されると、第1伝達軸側の入力軸の回転が結合されたクラッチを介して出力軸に伝達され、出力軸が回転する。このとき、第2伝達軸側のクラッチが結合解除されかつ第2伝達軸側のブレーキ作動が保持されているので、第2伝達軸側の出力軸は回転しない。また、第2伝達軸側のクラッチが結合されかつ第2伝達軸側のブレーキが解除されると、第2伝達軸側の入力軸の回転が結合されたクラッチを介して出力軸に伝達され、出力軸が回転する。このとき、第1伝達軸側のクラッチが結合解除されかつ第1伝達軸側のブレーキ作動が保持されているので、第1伝達軸側の出力軸は回転しない。このようにして、1つのモータで2軸の回転を行うことができる。
特開平10−315165号公報。
しかしながら、特許文献1に開示の多関節ロボットでは、2つの第1および第2伝達軸が並設されると、装置全体が大型となり、コンパクト化を効率よく図ることができないばかりでなく、第1および第2動力分配用ギヤを介する動力伝達であるため、慣性モーメントの増加により高速化を図ることは難しいという問題がある。しかも、装置の組立が面倒である。
また、入力軸側に2つの動力分配用ギヤが設けられるため、バックラッシが大きくなって動力伝達が効率よく行うことが難しいばかりでなく、2つの動力分配用ギヤの慣性モーメントが増大することからモータの容量を大きくする必要があるいう問題がある。更に、クラッチを結合してからブレーキ作動を解除するタイミングがシーケンサやリレー等による電気制御で行うため、制御間の余裕時間や機構の動作を検出するセンサのロス時間等により切換時間が長くなるという問題もある。
特に、軸が2つではなく、3つ以上の複数の軸が設けられる場合は、装置全体が更に大型となるばかりでなく動力分配用ギヤの数が多くなり、しかもバックラッシが更に増大し、そのうえ動力分配用ギヤの慣性モーメントも更に増大するため、モータを高速化する必要があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、1つのモータの動力で多軸を効率よく回転させるようにしつつ、高速化を簡単に図ることが可能であり、しかも全体をコンパクトにかつ組立を容易にすることのできる動力切換モジュールおよびこれを用いた動力切換システムを提供することである。
前述の課題を解決するために、請求項1の発明の動力切換モジュールは、支持本体と、この支持本体に回転可能に支持された入力軸と、前記支持本体に回転可能に支持された出力軸と、前記支持本体に前記入力軸と前記出力軸との間に設けられて、前記入力軸と前記出力軸との間の動力伝達を制御するクラッチと、前記支持本体に設けられて前記出力軸を停止させるブレーキと、前記支持本体に設けられて前記クラッチと前記ブレーキとを制御するクラッチ・ブレーキ作動制御手段とを備え、前記入力軸の少なくとも一端側に、他の回転軸にこの回転軸と一体回転可能に連結可能な連結部が設けられていることを特徴としている。
また、請求項2の発明の動力切換モジュールは、前記出力軸は円筒状に形成されているとともに、前記入力軸は前記出力軸内に進入して設けられていることを特徴としている。
更に、請求項3の発明の動力切換モジュールは、前記クラッチが、非作動時に結合解除状態に設定されるとともに作動時に結合状態に設定され、前記ブレーキが、非作動時にブレーキ作動保持状態に設定されるとともに作動時にブレーキ作動解除状態に設定されることを特徴としている。
更に、請求項3の発明の動力切換モジュールは、前記クラッチが、非作動時に結合解除状態に設定されるとともに作動時に結合状態に設定され、前記ブレーキが、非作動時にブレーキ作動保持状態に設定されるとともに作動時にブレーキ作動解除状態に設定されることを特徴としている。
更に、請求項4の発明の動力切換モジュールは、前記クラッチ・ブレーキ作動制御手段が、作動時前記クラッチを結合してから前記ブレーキのブレーキ作動を解除し、かつ非作動時前記ブレーキをブレーキ作動してから前記クラッチを結合解除するつかみ換え機構を有していることを特徴としている。
更に、請求項5の発明の動力切換モジュールは、前記クラッチが複数の摩擦クラッチ板を有する多板クラッチで構成されているとともに前記ブレーキが複数の摩擦ブレーキ板を有する多板ブレーキで構成されており、前記つかみ換え機構が流体圧で作動されるピストンを有し、前記流体圧でピストンを作動させることで、前記複数の摩擦クラッチ板を挟圧して前記クラッチを結合し、その後で前記複数の摩擦ブレーキ板の挟圧を解除して前記ブレーキのブレーキ作動を解除することを特徴としている。
更に、請求項6の発明の動力切換モジュールは、前記ブレーキが前記クラッチの外周側に、少なくともその一部前記クラッチの一部と径方向にオーバーラップされて配置されていることを特徴としている。
更に、請求項7の発明の動力切換システムは、請求項1ないし5のいずれか1記載の動力切換モジュールを複数個備えており、前記複数の動力切換モジュールが、第1の動力切換モジュールの入力軸の第1および第2連結部のいずれか一方にモータの回転軸を一体回転可能に連結し、前記第1の動力切換モジュールの入力軸の第1および第2連結部のいずれか他方に第2の動力切換モジュールの入力軸の第1および第2連結部のいずれか一方を一体回転可能に連結するようにして、順次各入力軸を連結することで積層配置されていることを特徴としている。
更に、請求項8の発明の動力切換システムは、前記複数の動力切換モジュールがすべて同じ動力切換モジュールで構成されているか、または、少なくとも一部の動力切換モジュールが他の動力切換モジュールと異なることを特徴としている。
このように構成された請求項1ないし6の発明の動力切換モジュールによれば、入力軸の少なくとも一端側に、他の回転軸にこの回転軸と一体回転可能に連結可能な連結部が設けられているので、複数の動力切換モジュールを積層配置することが可能となるとともに、積層配置にする組み立てが容易となる。しかも、このように複数の動力切換モジュールの積層配置が可能となることから、複数の動力切換モジュールを設けても、コンパクト化を効果的に図ることができる。
特に、請求項3ないし6の発明の動力切換モジュールによれば、クラッチが非作動時に結合解除状態に設定されるとともに作動時に結合状態に設定され、前記ブレーキが非作動時にブレーキ作動保持状態に設定されるとともに作動時にブレーキ作動解除状態に設定されるので、出力軸を動作時以外はブレーキ作動で停止保持することができる。これにより、出力軸の位相ずれをより確実に防止することができ、入力軸に対する出力軸の位相を高精度に保持することができる。したがって、動力切換を高精度で高速に行うことが可能となる。
また、請求項4ないし6の発明の動力切換モジュールによれば、クラッチ・ブレーキ作動制御手段が、作動時クラッチを結合してからブレーキのブレーキ作動を解除し、かつ非作動時ブレーキをブレーキ作動してからクラッチを結合解除するつかみ換え機構を有しているので、入力軸に対する出力軸の位相ずれを防止することができる。したがって、出力軸の位相ずれを修正する必要がなくなるので、動力切換の高速化を確実に図ることが可能となるとともに、出力軸の位置決め精度を向上することができる。特に、作動時でのクラッチ結合とその後のブレーキ作動解除および非作動時でのブレーキ作動とその後のクラッチ結合解除をクラッチ・ブレーキ作動制御手段の1アクションで行うようにすることで、動力切換制御性が向上し、動力切換の高速化および位置決めの高精度化を更に一層確実に図ることができる。
更に、請求項5および6の発明の動力切換モジュールによれば、クラッチが複数の摩擦クラッチ板を有する多板クラッチで構成されているとともにブレーキが複数の摩擦ブレーキ板を有する多板ブレーキで構成されており、つかみ換え機構が流体圧で作動されるピストンを有しているので、例えば湿式多板クラッチやブレーキが乾式単板のクラッチやブレーキに比べて、耐摩耗性に優れるとともに高荷重に耐えられる効果を有していることから、動力切換モジュールにこのような湿式多板クラッチやブレーキを用いることにより、動力切換モジュールの性能を長期にわたって確実にかつ安定して発揮させることができるとともに、径方向のコンパクト化を図ることができる。しかも、動力切換モジュールの性能を長期的に確実にかつ安定して発揮できることから、動力切換モジュールの保守管理が簡単になり、メンテナンス性が向上する。
更に、請求項6の発明の動力切換モジュールによれば、ブレーキがクラッチの外周側に、少なくともその一部前記クラッチの一部と径方向にオーバーラップされて配置されているので、クラッチおよびブレーキを内外配置することができる、これにより、動力切換モジュールを軸方向に扁平にして、軸方向のコンパクト化を効率よく図ることができる。
一方、請求項7および8の発明の動力切換システムによれば、請求項1ないし5のいずれか1記載の動力切換モジュールを複数個備えており、複数の動力切換モジュールが、第1の動力切換モジュールの入力軸の第1および第2連結部のいずれか一方にモータの回転軸を一体回転可能に連結し、前記第1の動力切換モジュールの入力軸の第1および第2連結部のいずれか他方に第2の動力切換モジュールの入力軸の第1および第2連結部のいずれか一方を一体回転可能に連結するようにして、順次各入力軸を連結することで積層配置されているので、1つのモータの動力で多軸を効率よく回転させることができるとともに、高速化を簡単に図ることが可能である。しかも、システム全体をコンパクトにかつ安価に形成することができるとともに、動力切換システムを容易に組み立てることが可能となる。
その場合、モータと動力切換モジュールとの間、あるいは互いに連結される動力切換モジュールとの間に、減速機等の他の回転装置を組み込むことも可能であり、このような他の回転装置により、例えば動力を変速させて伝達する等の動力伝達の自由度を向上させることができる。この場合には、モータの回転軸と動力切換モジュールの入力軸との間、あるいは互いに連結される動力切換モジュールの両入力軸との間に、それぞれ、他の回転装置の回転軸が連結されるようになる。
特に、請求項8の発明の動力切換システムによれば、複数の動力切換モジュールがすべて同じ動力切換モジュールで構成されているか、または、少なくとも一部の動力切換モジュールが他の動力切換モジュールと異なるようにしているので、同じ動力切換モジュールを積層配置される場合には、動力切換システムのコストダウンを図ることが可能となり、一方、異なる動力切換モジュールが積層配置される場合は、動力伝達の仕様等の種々の要求に応じて柔軟に対応することが可能となる。
以下、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明にかかる動力切換システムの実施の形態の一例を模式的に示す図、図2は図1に示す例の動力切換システムに用いられる動力切換モジュールを示す図である。なお、以下の説明において、右、左は、それぞれ対応する図において右、左を表す。
図1は、本発明にかかる動力切換システムの実施の形態の一例を模式的に示す図、図2は図1に示す例の動力切換システムに用いられる動力切換モジュールを示す図である。なお、以下の説明において、右、左は、それぞれ対応する図において右、左を表す。
図1および図2に示すように、この例の動力切換システム1は、同一軸線上に配置された所定数(図示例では2つ;以下、2つが配置されるものとして説明する)の第1および第2動力切換モジュール2,3を備えている。これらの第1および第2動力切換モジュール2,3はまったく同じ動力切換モジュール4から構成されている。
図2に示すように、この動力切換モジュール4は、大きく分けて、ハウジング(本発明の支持本体に相当)5と、入力軸6、多板クラッチ7と、多板ブレーキ8と、クラッチ・ブレーキ作動制御手段9と、出力軸10と、円環状の出力プーリ11と、無端ベルト12とから構成されている。
入力軸6は軸受け13でハウジング5に回転可能に支持されている。この入力軸6の右端部には、横断面多角形(例えば、6角形)の連結部(本発明の連結部に相当)14が突設されているとともに、入力軸6の左端部には、連結部14と同じ横断面多角形(例えば、6角形)の連結孔(本発明の連結部に相当)15が穿設されている。その場合、連結部14および連結孔15は、それぞれ、他の動力切換モジュール4の入力軸6の連結孔15および連結部14が嵌合可能とされているとともに、これらの連結部14および連結孔15がそれぞれ連結孔15および連結部14に嵌合された状態では、連結された連結部14と連結孔15は互いに一体回転するように連結される。また、連結部14および連結孔15は、例えばモータや減速機等の他の回転装置の回転軸に一体回転可能に連結可能とされている。
なお、連結部14と連結孔15との回転連結はこのような横断面多角形による連結に代えて、例えばスプライン嵌合による回転連結等の他の適宜の回転連結方法を用いることもできる。また、入力軸6の軸方向中央部分には、スプライン部16が形成されている。更に、この例の入力軸6はその両端に連結部14,15を設けているが、本発明は、入力軸6の両端のいずれか一端のみに連結部を設けることもできる。以下の説明においては、入力軸6の両端に連結部を設けるものとして説明する。
多板クラッチ7は所定数の円環状の駆動側摩擦板(本発明の摩擦クラッチ板に相当)17とこれらの間に交互に配設される所定数の円環状の受動側摩擦板(本発明の摩擦クラッチ板に相当)18を備えている。駆動側摩擦板17は、底部の一部が開口された有底円筒状の駆動側クラッチハブ19に軸方向(左右方向)に移動可能にかつこの駆動側クラッチハブ19と一体回転可能に支持されているとともに、この駆動側クラッチハブ19は駆動ホイール20に固定されている。駆動ホイール20は円筒軸状部20aとこの円筒状部20aの一端から径方向外方に延びる環状のフランジ部20bからなり、駆動側クラッチハブ19は駆動ホイール20のフランジ部20bに固定されている。駆動ホイール20の円筒軸状部20aが入力軸6のスプライン部16にスプライン嵌合されている。したがって、駆動側摩擦板17は駆動側クラッチハブ19および駆動ホイール20を介して入力軸6と一体回転可能となっている。
また、受動側摩擦板18は円筒状の受動側クラッチハブ21に軸方向(左右方向)に移動可能にかつこの受動側クラッチハブ21と一体回転可能に支持されている。更に、受動側クラッチハブ21には、駆動側摩擦板17および受動側摩擦板18を挟圧する一対の円環状の挟圧板22,23が同様に軸方向(左右方向)に移動可能にかつこの受動側クラッチハブ21と一体回転可能に支持されている。受動側ハブ21は円環状の受動ホイール24に固定されているとともに、受動ホイール24は出力軸10のスプライン部(後述)にスプライン嵌合されている。したがって、出力軸10は受動ホイール24および受動側ハブ21を介して受動側摩擦板18および挟圧板22,23と一体回転可能となっている。受動ホイール24には、挟圧板22を介して駆動側摩擦板17および受動側摩擦板18を軸方向に押圧する押圧部24aが形成されている。更に、ハウジング5には、挟圧板23を回動可能に受けるスラスト軸受け25が挟圧板23に対向して設けられている。
受動ホイール24にはスラスト軸受け26が支持されているとともに、このスラスト軸受け26を介して受動ホイール24がリターンスプリング27により常時左方、つまり非作動方向に付勢されている。
受動ホイール24にはスラスト軸受け26が支持されているとともに、このスラスト軸受け26を介して受動ホイール24がリターンスプリング27により常時左方、つまり非作動方向に付勢されている。
多板ブレーキ8は所定数の円環状の可動側摩擦板(本発明の摩擦ブレーキ板に相当)28とこれらの間に交互に配設される所定数の円環状の制動側摩擦板(本発明の摩擦ブレーキ板に相当)29を備えている。可動側摩擦板28は円筒状の可動側ブレーキハブ30に軸方向(左右方向)に移動可能にかつこの可動側ブレーキハブ30と一体回転可能に支持されている。可動側ブレーキハブ30は、多板クラッチ7の受動側クラッチハブ21の外周側に配置されて、受動ホイール24に固定されている。したがって、可動側摩擦板28は可動側ブレーキハブ30および受動ホイール24を介して出力軸10と一体回転可能となっている。
また、制動側摩擦板29は、可動側ブレーキハブ30にその外周側で対向するハウジング5の部位に軸方向(左右方向)のみに移動可能に支持されている。ハウジング5には、可動側摩擦板28および制動側摩擦板29を挟圧する一対の円環状の挟圧板31,32が同様に軸方向(左右方向)のみに移動可能に支持されている。更に、ハウジング5には、円環状のブレーキ作動プレート33が軸方向(左右方向)に移動可能に支持されている。このブレーキ作動プレート33は、挟圧板31を介して可動側摩擦板28および制動側摩擦板29を軸方向に押圧するようになっている。また、ブレーキ作動プレート33は、ハウジング5に支持されたブレーキ保持ばね34により可動側摩擦板28および制動側摩擦板29の方向、つまりブレーキ作動方向へ常時付勢されている。このブレーキ作動プレート33は、ハウジング5に支持された軸方向(左右方向)に移動可能に支持されたブレーキ解除リング35によりブレーキ保持ばね34のばね力に対抗して可動側摩擦板28および制動側摩擦板29から離間する方向、つまりブレーキ解除方向へ押圧可能にされている。更に、ハウジング5には、挟圧板32を受ける円環状のブレーキ支持板36が挟圧板32に対向して設けられている。その場合、ブレーキ解除リング35の一部がブレーキ支持板36を相対移動可能に貫通している。
このように構成された多板クラッチ7および多板ブレーキ8は、多板ブレーキ8が多板クラッチ7を囲うように径方向にオーバラップして配設される。このように多板クラッチ7および多板ブレーキ8を内外配置することにより、動力切換モジュール4は軸方向の厚みが薄く扁平化されている。
クラッチ・ブレーキ作動制御手段9は、ハウジング5に流体密に軸方向(左右方向)に設けられたピストン37を備えている。このピストン37によりハウジング5との間に流体圧室38が区画形成されており、この流体圧室38に供給される流体圧によりピストン37は右方へ移動するようにされている。その場合、流体圧としてはエア圧および液圧を使用することができる。
ピストン37には、クラッチ作動ばね39の一端側が支持されているとともに、このクラッチ作動ばね39の他端側には押し付けリング40が支持されている。クラッチ作動ばね39により、押し付けリング40は受動ホイール24をこれに支持されたスラスト軸受け41を介して右方、つまり多板クラッチ7の接続方向に押圧するようになっている。クラッチ作動ばね39のセットばね荷重は、リターンスプリング27のセットばね荷重より大きく設定されている。また、ピストン37には、ブレーキ解除リング35を右方、つまりブレーキ解除方向へ押圧する押圧部37aが設けられている。ピストン37は、ハウジング5にリテーナを介して支持されているリターンスプリング42により、常時左方、つまり非作動方向に付勢されている。
そして、クラッチ・ブレーキ作動制御手段9は、流体圧室38への流体圧供給でピストン37が右方へ移動することにより、まず受動ホイール24が作動して多板クラッチ7が結合し、その後で多板ブレーキ8がブレーキ解除するとともに、流体圧室38からの流体圧排出でピストン37が左方へ移動することにより、まず多板ブレーキ8がブレーキ作動し、その後で多板クラッチ7が結合解除するようにこれらの多板クラッチ7および多板ブレーキ8における各摩擦板のつかみ換えを制御するつかみ換え機構を構成している。このように、つかみ換え機構で各摩擦板のつかみ換えを制御することにより、入出力軸6,10の位相ずれが生じるのを防止している。
出力軸10は円筒状に形成されており、その一端側に受動ホイール24がスプライン嵌合されるスプライン部43が形成されている。この出力軸10は軸受け44によりハウジング5に回転可能に支持されている。出力軸10の他端には、出力プーリ11が図示しない例えばボルト等の固着具によって出力軸10と一体回転可能に連結されている。なお、出力軸10と出力プーリ11とはフランジ結合等の他の適宜の連結方法を用いることもできる。出力プーリ11に無端ベルト12が掛け渡されて、この無端ベルト12により動力切換モジュール4の出力が取り出されるようになっている。なお、動力切換モジュール4の出力取出しは無端ベルト12以外、例えば歯車等の他の手段を用いることもできる。
更に、入力軸6が出力軸10内に進入して設けられている。そして、入力軸6は一対の軸受け45,46により出力軸10の内周面に相対回転可能に支持されているとともに、入力軸6の左端側が円筒状の出力プーリ11の内孔を貫通している。したがって、入力軸6はハウジング5および出力軸10を軸方向に貫通する、つまり動力切換モジュール4を軸方向に貫通して設けられるようになる。
なお、入力軸6は必ずしもハウジング5および出力軸10を軸方向に貫通して設ける必要はなく、他の動力切換モジュール4の入力軸6や、あるいは例えばモータや減速機等の他の回転装置の回転軸に軸方向にハウジングどうしが干渉せずに連結可能でありさえすればよい。しかし、図1に示すように動力切換モジュール4を他の動力切換モジュール4あるいはモータ等の他の回転装置と積層配置でより簡単に組立可能にするためには、図2に示すように入力軸6はハウジング5および出力軸10を軸方向に貫通して設けられることが好ましい。
また、出力軸10は必ずしも円筒状に形成される必要はなく、中実の軸で形成することもできる。その場合、入力軸6と出力軸10とは同軸に設けることもできるし、入力軸6と出力軸10とは互いにオフセットして設けることもできる。このときには、入力軸6を他の動力切換モジュール4の入力軸6、あるいは例えばモータや減速機等の他の回転装置の回転軸に、歯車等による動力伝達機構により連結すればよい。更に、入力軸6を円筒状の軸に形成するとともに出力軸10を中実の軸に形成し、少なくとも出力軸10の一部を入力軸6内に進入させるようにすることもできる。
以下の説明においては、動力切換モジュールが図2に示す動力切換モジュール4である場合について説明する。
以下の説明においては、動力切換モジュールが図2に示す動力切換モジュール4である場合について説明する。
次に、この動力切換モジュール4の動作について説明する。
図2および図3(a)に示す非作動状態では、流体圧室38に流体圧が供給されず、リターンスプリング42によりピストン37が左限位置に設定されている。このピストン37の左限位置では、リターンスプリング27により受動ホイール24も左限位置に設定されている。この受動ホイール24の左限位置では、押圧部24aが挟圧板22から離間して挟圧板22を押圧していない。このため、押圧部24aとスラスト軸受け25との間に、駆動側摩擦板17、受動側摩擦板18および挟圧板22,23が挟圧されず、多板クラッチ7は結合していない。このとき、クラッチ作動ばね39により押し付けリング40が受動ホイール24に支持されたスラスト軸受け41に当接している。
図2および図3(a)に示す非作動状態では、流体圧室38に流体圧が供給されず、リターンスプリング42によりピストン37が左限位置に設定されている。このピストン37の左限位置では、リターンスプリング27により受動ホイール24も左限位置に設定されている。この受動ホイール24の左限位置では、押圧部24aが挟圧板22から離間して挟圧板22を押圧していない。このため、押圧部24aとスラスト軸受け25との間に、駆動側摩擦板17、受動側摩擦板18および挟圧板22,23が挟圧されず、多板クラッチ7は結合していない。このとき、クラッチ作動ばね39により押し付けリング40が受動ホイール24に支持されたスラスト軸受け41に当接している。
また、ピストン37の左限位置では、押圧部37aがブレーキ解除リング35から離間している。更に、ブレーキ保持ばね34によりブレーキ作動プレート33が左方(ブレーキ作動方向)に押圧されて、このブレーキ作動プレート33とブレーキ支持板36との間に可動側摩擦板28、制動側摩擦板29および挟圧板31,32がともに挟圧されて多板ブレーキ8が作動状態に保持されている。したがって、出力軸10はブレーキがかけられて回転不能となっている。このとき、ブレーキ解除リング35はブレーキ作動プレート33に押圧されて図示の非作動位置に設定されている。
この動力切換モジュール4の非作動状態において、入力軸6に入力が加えられて入力軸6が回転すると、この入力軸6の回転は駆動ホイール20および駆動側クラッチハブ19を介して駆動側摩擦板17に伝達され、駆動側摩擦板17が回転する。しかし、多板クラッチ7が結合していないので、駆動側摩擦板17の回転は遮断されて受動側摩擦板18に伝達されず、受動側摩擦板18は回転しない。このため、入力軸6の回転は出力軸10に伝達されないとともに多板ブレーキ8がブレーキ作動状態に保持されているので、出力軸10は回転しない。
動力切換モジュール4の非作動状態で、流体圧室38に流体圧が供給されると、図3(b)に示すようにピストン37がリターンスプリング42のばね力に抗して右方へ移動する。すると、まずクラッチ作動ばね39を介して押し付けリング40がスラスト軸受け41を介して受動ホイール24を押圧する。このため、受動ホイール24の押圧部24aが右方へ移動し、押圧部24aとスラスト軸受け25との間に、駆動側摩擦板17、受動側摩擦板18および挟圧板22,23が挟圧し、多板クラッチ7が結合される。
次いで、ピストン37が更に右方へ移動すると、図3(c)に示すようにすぐにピストン37の押圧部37aがブレーキ解除リング35を右方へ押圧するので、このブレーキ解除リング35およびブレーキ作動プレート33がブレーキ保持ばね34のばね力に抗して右方へ移動する。このとき、クラッチ作動ばね39がピストン37の右動にともなって縮小するので、多板クラッチ7が結合された後も、ピストン37が右方へ確実に移動することができる。
ブレーキ作動プレート33が右方へ移動することにより、挟圧板31,32による可動側摩擦板28および制動側摩擦板29の挟圧が解除されて、多板ブレーキ8のブレーキ作動が解除される。このようにして、各摩擦板17,18,28,29のつかみ換えが行われるが、各摩擦板17,18,28,29のつかみ換え状態は一瞬であり、図3(b)に示すつかみ換え状態では入出力軸6,10は一瞬停止する。
各摩擦板の一瞬のつかみ換え状態が終了すると、モータ47の回転で入力軸6が再び回転するので、駆動側摩擦板17が回転する。この駆動側摩擦板17の回転(つまり、動力)が受動側摩擦板18に伝達されて受動側摩擦板18が回転し、この受動側摩擦板18の回転は、受動側クラッチハブ21および受動ホイール24を介して出力軸10に伝達されて、出力軸10が回転する。更に、この出力軸10の回転で出力プーリ11が回転するとともに、無端ベルト12が回転する。こうして、動力切換モジュール4は入力軸6に加えられた入力により出力を発生し、この出力は無端ベルト12により取り出される。
入力軸6と出力軸10とが結合している状態で、流体圧室38の流体圧を排出すると、リターンスプリング42によりピストン37が左方へ移動する。すると、ブレーキ保持ばね34により、ブレーキ作動プレート33およびブレーキ解除リング35が左方へ移動し、前述のようにブレーキ作動プレート33とブレーキ支持板36との間に可動側摩擦板28、制動側摩擦板29および挟圧板31,32がともに挟圧されて多板ブレーキ8が作動する。次いで、ピストン37が更に左方へ移動すると、リターンスプリング27により受動ホイール24が左方へ移動し、押圧部24aが挟圧板22を押圧しなくなる。これにより、多板クラッチ7の結合が解除され、駆動側摩擦板17から受動側摩擦板18への回転伝達(つまり、動力伝達)が遮断されて、動力切換モジュール4は図2に示す非作動状態となる。こうして、動力切換モジュール4は出力を発生しなくなる。
この例の動力切換モジュール4によれば、流体圧を供給してピストン37を作動させる動作で、多板クラッチ7を結合してから多板ブレーキ8のブレーキ作動を解除し、かつ流体圧を排出してピストン37を作動解除させる動作で、多板ブレーキ8のブレーキ作動してから多板クラッチ7を結合解除するつかみ換え機構を有しているので、入力軸6に対する出力軸10の位相ずれを防止することができる。したがって、出力軸10の位相ずれを修正する必要がなくなるので、動力切換の高速化を確実に図ることが可能となるとともに、出力軸10の位置決め精度、つまり出力軸10に連結されてこの出力軸10の回転により移動する部材の位置決め精度を向上することができる。特に、この例の動力切換モジュール4では、作動時でのクラッチ結合とその後のブレーキ作動解除および非作動時でのブレーキ作動とその後のクラッチ結合解除、つまり動力切換を、クラッチ・ブレーキ制御手段9のピストン37の1アクションで行っているので、動力切換制御性が向上し、動力切換の高速化および位置決めの高精度化を更に一層確実に図ることができる。
また、出力軸10を、動作時以外は多板ブレーキ8のブレーキ作動で停止保持しているので、出力軸10の位相ずれをより確実に防止することができ、入力軸6に対する出力軸10の位相を高精度に保持することができる。したがって、動力切換を高精度でより高速に行うことが可能となる。
更に、入力軸6が動力切換モジュール4を軸方向に貫通しているので、例えば図1に示すように複数の動力切換モジュール4を積層配置することが可能となるとともに、積層配置にする組み立てが容易となる。しかも、このように複数の動力切換モジュール4の積層配置が可能となることから、複数の動力切換モジュール4を設けても、コンパクト化を効果的に図ることができる。
更に、複数の摩擦クラッチ板を有する多板クラッチ7、複数の摩擦ブレーキ板を有する多板ブレーキ8およびピストン37を用いているので、これらの多板クラッチ7および多板ブレーキ8を、例えば湿式多板クラッチやブレーキで構成することができる。湿式多板クラッチやブレーキは乾式単板のクラッチやブレーキに比べて、耐摩耗性に優れるとともに高荷重に耐えられる効果を有していることため、動力切換モジュール4にこのような湿式多板クラッチやブレーキを用いることにより、動力切換モジュール4の性能を長期にわたって確実にかつ安定して発揮させることができるとともに、径方向のコンパクト化を図ることができる。しかも、動力切換モジュール4の性能を長期的に確実にかつ安定して発揮できることから、動力切換モジュール4の保守管理が簡単になり、メンテナンス性が向上する。
更に、多板クラッチ7および多板ブレーキ8を径方向にオーバラップさせて内外配置しているので、動力切換モジュール4の軸方向のコンパクト化を効率よく図ることができる。
更に、多板クラッチ7および多板ブレーキ8を径方向にオーバラップさせて内外配置しているので、動力切換モジュール4の軸方向のコンパクト化を効率よく図ることができる。
なお、前述の例では、クラッチおよびブレーキにそれぞれ多板クラッチ7および多板ブレーキ8を用いるものとしているが、公知のクラッチおよびブレーキを用いることもできる。また、前述の例では、多板クラッチ7および多板ブレーキ8のつかみ換えを行うためにピストン37を流体圧で作動するようにしているが、ピストン37を電磁力で作動させることもできる。
そして、このように構成された動力切換モジュール4を用いて動力切換システムを構成することができる。例えば、図1に示すように2つの動力切換モジュール4を第1および第2動力切換モジュール2,3を軸方向に積層配置することにより、2軸の動力切換システム1を構成することができる。すなわち、第1動力切換モジュール2の入力軸6をその連結部14を介してモータ47の回転軸(不図示)に一体回転可能に連結するとともに、第2動力切換モジュール3の入力軸6の連結部14を第1動力切換モジュール2の入力軸6の連結孔15に軸方向に嵌合して、第1動力切換モジュール2の入力軸6と第2動力切換モジュール3の入力軸6とを一体回転可能に連結する。このようにして、2軸の動力切換システム1を容易に構成することができる。
次に、このように構成された2軸の動力切換システム1の動力切換動作について説明する。
動力切換システム1の非作動状態では、前述の動力切換システム4の動作に関して説明したように、第1および第2動力切換モジュール2,3の両多板クラッチ7がともに非結合状態に設定されているとともに、第1および第2動力切換モジュール2,3の両多板ブレーキ8がともにブレーキ作動状態に保持されている。
動力切換システム1の非作動状態では、前述の動力切換システム4の動作に関して説明したように、第1および第2動力切換モジュール2,3の両多板クラッチ7がともに非結合状態に設定されているとともに、第1および第2動力切換モジュール2,3の両多板ブレーキ8がともにブレーキ作動状態に保持されている。
動力切換システム1のこの非作動状態で、モータ47が駆動されると、モータ47の回転(つまり、動力)が第1動力切換モジュール2の入力軸6(第1軸として構成される)に伝達されるとともに、更に第1動力切換モジュール2の入力軸6を介して第2動力切換モジュール3の入力軸6(第2軸として構成される)に伝達される。したがって、第1および第2動力切換モジュール2,3の両入力軸6が回転する。しかし、両多板クラッチ7がともに非結合状態でかつ両多板ブレーキ8がともにブレーキ作動状態であるので、各入力軸6の回転はそれぞれ対応する各出力軸10に伝達されず、各出力軸10は回転しない。したがって、第1および第2動力切換モジュール2,3は出力しなく、モータ47の動力は両無端ベルト12によって取り出されない。
いま、第1動力切換モジュール2の流体圧室38に流体圧が供給されると、第1動力切換モジュール2のピストン37が作動(右方へ移動)するので、前述のようにまず第1動力切換モジュール2の多板クラッチ7が結合し、その後で第1動力切換モジュール2の多板ブレーキ8がブレーキ作動解除する。すると、第1動力切換モジュール2の入力軸6の回転が第1動力切換モジュール2の出力軸10に伝達され、この出力軸10が回転する。したがって、第1動力切換モジュール2が出力し、モータ47の動力が第1動力切換モジュール2の無端ベルト12から取り出される。すなわち、第1軸側においてモータ47の動力が取り出される。このとき、第2動力切換モジュール3においては多板クラッチ7が非結合状態でかつ多板ブレーキ8がブレーキ作動状態であるので、入力軸6の回転が出力軸10に伝達されず、出力軸10は回転しなく、入力軸6は空転しているだけである。
第1動力切換モジュール2の流体圧室38に供給された流体圧が排出されると、前述のように第1動力切換モジュール2のピストン37が左方に移動して非作動位置に戻り、まず第1動力切換モジュール2の多板ブレーキ8がブレーキ作動し、その後で第1動力切換モジュール2の多板クラッチ7が結合解除する。これにより、第1動力切換モジュール2の入力軸6の回転が出力軸10に伝達されず、出力軸10の回転が停止する。
また、第1および第2動力切換モジュール2,3の非作動状態で、第2動力切換モジュール3の流体圧室38に流体圧が供給されると、第2動力切換モジュール3のピストン37が作動し(右方へ移動し)するので、前述の第1動力切換モジュール2の流体圧室38に流体圧が供給された場合と同様にして、第2動力切換モジュール3の入力軸6の回転が出力軸10に伝達され、この出力軸10が回転する。したがって、第2動力切換モジュール3が出力して、モータ47の動力が第2動力切換モジュール3の無端ベルト12から取り出され、第2軸側においてモータ47の動力が取り出される。このとき、第1動力切換モジュール2においては、出力軸10が回転しなく、入力軸6は空転しているだけである。
第2動力切換モジュール3の作動解除は、前述の第1動力切換モジュール2の作動解除の場合と同様である。
第2動力切換モジュール3の作動解除は、前述の第1動力切換モジュール2の作動解除の場合と同様である。
更に、第1および第2動力切換モジュール2,3の非作動状態で、第1および第2動力切換モジュール2, 3の両流体圧室38にともに流体圧が供給されると、前述と同様に第1および第2動力切換モジュール2,3の両入力軸6の回転が出力軸10に伝達され、両出力軸10が回転する。したがって、第1および第2動力切換モジュール2,3がともに出力して、モータ47の動力が第1および第2動力切換モジュール2,3の両無端ベルト12から取り出され、第1軸および第2軸側においてともにモータ47の動力が取り出される。
第1および第2動力切換モジュール2,3の作動解除は、前述の第1動力切換モジュール2の作動解除の場合と同様である。
第1および第2動力切換モジュール2,3の作動解除は、前述の第1動力切換モジュール2の作動解除の場合と同様である。
この動力切換システム1によれば、第1動力切換モジュール2の入力軸6の連結部14にモータ47の回転軸を一体回転可能に連結し、第1動力切換モジュール2の入力軸6の連結部孔15に第2動力切換モジュール3の入力軸6の連結部14を一体回転可能に連結して、第1および第2動力切換モジュール2,3を積層配置しているので、1つのモータ47の動力で2軸を効率よく回転させることができるとともに、高速化を簡単に図ることが可能である。しかも、システム全体をコンパクトにかつ安価に形成することができるとともに、動力切換システム1を容易に組み立てることが可能となる。
特に、2つの動力切換モジュール2,3がすべて同じ動力切換モジュール4で構成されているので、動力切換システム1のコストダウンを図ることが可能となる。
特に、2つの動力切換モジュール2,3がすべて同じ動力切換モジュール4で構成されているので、動力切換システム1のコストダウンを図ることが可能となる。
なお、前述の例では、支持本体としてハウジング5を用い、多板クラッチ7、多板ブレーキ8およびクラッチ・ブレーキ制御手段9をハウジング5内に収容して被覆するとともに、入、出力軸6,10を回転可能に支持しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、支持本体として例えばフレームを用いて、多板クラッチ7、多板ブレーキ8およびクラッチ・ブレーキ制御手段9をこのフレームに被覆することなく支持するとともに、入、出力軸6,10を回転可能に支持することもできる。
また、前述の例では、2つの動力切換モジュール4を軸方向に積層配置して構成された2軸の動力切換システム1について説明しているが、本発明は、3つ以上の複数の動力切換モジュール4を軸方向に積層配置した多軸の動力切換システム1を構成することもできる。その場合、複数の動力切換モジュール4は、それらの入力軸6を前述と同様にして順次直列に一体回転可能に連結すればよい。そして、動力取り出しは、1つ以上でかつ配置順序に関係なく所望の動力切換モジュール4において、その流体圧室38に流体圧を供給することで行うことができる。その場合、図1に示す例では図において軸方向の積層配置が左右方向であるが、軸方向の積層配置は図において上下方向を始め、任意の方向に設定することもできる。
また、モータ47と第1動力切換モジュール2との間、あるいは互いに連結される第1および第2動力切換モジュール2,3との間に、減速機等の他の回転装置を組み込むことも可能である。このような他の回転装置により、例えば動力を変速させて伝達する等の動力伝達の自由度を向上させることができる。この場合には、モータ47の回転軸と第1動力切換モジュール2の入力軸6との間、あるいは互いに連結される第1および第2動力切換モジュール2,3の両入力軸6との間に、それぞれ、他の回転装置の回転軸が連結されるようになる。
更に、2軸以上の多軸の動力切換システム1に用いられる各動力切換モジュール4は、前述の例のようにまったく同じ構成である必要はなく、少なくとも一部の動力切換モジュールは、例えば摩擦板の数や摩擦板の径などが他の動力切換モジュールと異なってもよい。この場合には、動力伝達の仕様等の種々の要求に応じて柔軟に対応することが可能となる。
更に、前述の例では、第1動力切換モジュール2の入力軸6の連結部14にモータ47の回転軸を連結させているが、モータ47の回転軸は、第2動力切換モジュール3の入力軸6の連結部15にを連結させることもできる。
更に、前述の例では、第1動力切換モジュール2の入力軸6の連結部14にモータ47の回転軸を連結させているが、モータ47の回転軸は、第2動力切換モジュール3の入力軸6の連結部15にを連結させることもできる。
次に、本発明の動力切換システム1の用途例について説明する。
図4は、工作機械の汎用加工機におけるワークのハンドリングを行うための走行ロボットに本発明の動力切換システム1を適用した例を模式的に示す図である。
図4に示すように、この例の走行ロボット50は、両軸モータ51と、走行(X軸方向移動;図面に直交する方向)用動力切換モジュール52と、上下移動(Z軸方向移動)用動力切換モジュール53と、腰回転(首振り)用動力切換モジュール54と、前後移動(Y軸方向移動)用動力切換モジュール55と、機械加工されるワークをハンドリングするハンド56と、このハンド56を支持するハンド支持部材57と、ロボット本体の台車58とを備えている。その場合、各動力切換モジュール52,53,54,55は、いずれも、出力プーリ11および無端ベルト12を除いては図2に示す動力切換モジュール4と実質的に同じ構成を有している(なお、上下移動用動力切換モジュール53は出力プーリ11および無端ベルト12を備えていて、図2に示す動力切換モジュール4とまったく同じ構成である)。また、各動力切換モジュール52,53,54,55の各入出力軸6,10および両軸モータ51の回転軸がいずれも鉛直方向にかつ同軸に配置されている。すなわち、4つの動力切換モジュール52,53,54,55が上下に積層されて配設されている。
図4は、工作機械の汎用加工機におけるワークのハンドリングを行うための走行ロボットに本発明の動力切換システム1を適用した例を模式的に示す図である。
図4に示すように、この例の走行ロボット50は、両軸モータ51と、走行(X軸方向移動;図面に直交する方向)用動力切換モジュール52と、上下移動(Z軸方向移動)用動力切換モジュール53と、腰回転(首振り)用動力切換モジュール54と、前後移動(Y軸方向移動)用動力切換モジュール55と、機械加工されるワークをハンドリングするハンド56と、このハンド56を支持するハンド支持部材57と、ロボット本体の台車58とを備えている。その場合、各動力切換モジュール52,53,54,55は、いずれも、出力プーリ11および無端ベルト12を除いては図2に示す動力切換モジュール4と実質的に同じ構成を有している(なお、上下移動用動力切換モジュール53は出力プーリ11および無端ベルト12を備えていて、図2に示す動力切換モジュール4とまったく同じ構成である)。また、各動力切換モジュール52,53,54,55の各入出力軸6,10および両軸モータ51の回転軸がいずれも鉛直方向にかつ同軸に配置されている。すなわち、4つの動力切換モジュール52,53,54,55が上下に積層されて配設されている。
そして、両軸モータ51の下側の回転軸に走行用動力切換モジュール52の入力軸6が一体回転可能に連結されているとともに、走行用動力切換モジュール52の出力軸10が台車58に回転可能に支持されたピニオン59に減速機60を介して一体回転可能に連結されている。ピニオン59は、機械加工工場の床61にX軸方向に延設されたラックレール62に常時噛合している。また、台車58と床61との間には、ピニオン59とラックレール62との噛合が解除されないようにして台車58をX軸方向にガイドするガイド手段63が設けられているとともに、台車58の下面には走行車輪(ローラ)64が回転可能に支持されている。ガイド手段63は、床61に設置されたX軸方向に延びる突条からなる断面矩形状のガイドレール63aと、台車58の下面に固定されガイドレール63aに嵌合されてこのガイドレール63aに沿って案内される凹状のガイド部材63bとから構成されている。
一方、両軸モータ51の上側の回転軸には、上下移動用動力切換モジュール53の入力軸6が一体回転可能に連結されている。図示しないが、両軸モータ51、走行用動力切換モジュール52および上下移動用動力切換モジュール53はいずれもにロボット本体に支持されている。また、上下移動用動力切換モジュール53の入力軸6に、腰回転用動力切換モジュール54の入力軸6が一体回転可能に連結されている。その場合、腰回転用動力切換モジュール54が上下移動用動力切換モジュール53に対して上下方向に、ワークを上下方向に最大限移動させるために必要な所定量だけ相対移動しても両入力軸6が一体回転可能となるように、互いに連結される部分の両入力軸6の連結部14と連結孔15の各軸方向長さが設定されている。
また、上下移動用動力切換モジュール53と腰回転用動力切換モジュール54との間には、回転運動を上下方向の直線運動に変換する運動変換機構65が設けられている。この運動変換機構65は、上下移動用動力切換モジュール53の無端ベルト12によって回転される従動プーリ66と、この従動プーリ66に同軸でかつ一体回転可能に連結された雄ねじ軸67と、この雄ねじ軸67に螺合されかつ腰回転用動力切換モジュール54のハウジング5に固定されたナット部材68とを有している。なお、図示しないが、従動プーリ66の回転軸および雄ねじ軸67の回転軸はともにロボット本体に回転可能に支持されている。
更に、腰回転用動力切換モジュール54の入力軸6に、前後移動用動力切換モジュール55の入力軸6が一体回転可能に連結されているとともに、腰回転用動力切換モジュール54の出力軸10に、前後移動用動力切換モジュール55のハウジング5が減速機69を介して一体回転可能に連結されている。腰回転用動力切換モジュール54および前後移動用動力切換モジュール55はいずれもにロボット本体に上下動可能に支持されている。更に、前後移動用動力切換モジュール55の出力軸10に、ピニオン70が減速機71を介して一体回転可能に連結されており、このピニオン70はハンド支持部材57に設けられたラック部材72に常時噛合している。ハンド支持部材57は前後移動用動力切換モジュール55のハウジング5に、ピニオン70とラック部材72との噛合が解除されないようにして移動可能に設けられている。
そして、両軸モータ51、走行用動力切換モジュール52、および上下移動用動力切換モジュール53の各ハウジング5が台車58に移動不能に取り付けられているとともに、腰回転用動力切換モジュール54、前後移動用動力切換モジュール55、およびハンド支持部材57が台車58に上下動可能に取り付けられている。
そして、両軸モータ51、走行用動力切換モジュール52、および上下移動用動力切換モジュール53の各ハウジング5が台車58に移動不能に取り付けられているとともに、腰回転用動力切換モジュール54、前後移動用動力切換モジュール55、およびハンド支持部材57が台車58に上下動可能に取り付けられている。
このように構成された走行ロボット50の動作について説明する。走行ロボット50の非作動状態では、各動力切換モジュール52,53,54,55の各多板クラッチ7が結合していないとともに各多板ブレーキ8がブレーキ作動状態に保持されている。したがって、各動力切換モジュール52,53,54,55の各出力軸10は回転不能となっている。
まず、走行ロボット50をX軸方向に走行させる場合は、走行用動力切換モジュール52の流体圧室38に流体圧であるエア圧を供給する。すると、前述のように走行用動力切換モジュール52の多板クラッチ7が結合し、次いで多板ブレーキ8のブレーキ作動が解除する。これにより、両軸モータ51の回転により走行用動力切換モジュール52の入力軸6が回転し、この入力軸6の回転が出力軸10に伝達され、出力軸10が回転する。この出力軸10の回転でピニオン59が回転するので、走行ロボット50はX軸方向に走行する。
流体圧室38に供給された流体圧が排出されると、前述のように走行用動力切換モジュール52の多板ブレーキ8がブレーキ作動し、次いで多板クラッチ7の結合が解除する。そして、両軸モータ51が停止して、出力軸10の回転が停止するので、ピニオン59の回転が停止して走行ロボット50の走行が停止する。また、両軸モータ51を前述と逆方向に駆動するとともに、走行用動力切換モジュール52の流体圧室38にエア圧を供給すると、走行ロボット50はX軸方向逆向きに走行する。
また、ハンド56を上方向に移動させる場合は、上下移動用動力切換モジュール53の流体圧室38にエア圧を供給する。すると、前述のように上下移動用動力切換モジュール53の多板クラッチ7が結合し、次いで多板ブレーキ8のブレーキ作動が解除する。これにより、両軸モータ51の回転が上下移動用動力切換モジュール53の入力軸6から出力軸10に伝達され、出力軸10が回転する。この出力軸10の回転で、出力プーリ11および無端ベルト12を介して従動プーリ66が回転する。すると、雄ねじ軸67が回転するので、ナット部材68が上動し、腰回転用動力切換モジュール54も上動する。これにより、前後移動用動力切換モジュール55およびハンド支持部材57を介してハンド56が上動する。
流体圧室38に供給された流体圧が排出されると、前述のように上下移動用動力切換モジュール53の多板ブレーキ8がブレーキ作動し、次いで多板クラッチ7の結合が解除する。そして、両軸モータ51が停止して、出力軸10の回転が停止するので、出力プーリ11、無端ベルト12、従動プーリ66および雄ねじ軸67がいずれも回転停止する。これにより、ナット部材68の上動が停止するので、腰回転用動力切換モジュール54、前後移動用動力切換モジュール55およびハンド支持部材57を介してハンド56の上動が停止する。
また、ハンド56を下方向に移動させる場合は、上下移動用動力切換モジュール53の流体圧室38にエア圧を供給し、両軸モータ51を前述と逆方向に駆動すると、雄ねじ軸67が逆方向に回転する。これにより、ナット部材68、腰回転用動力切換モジュール54、前後移動用動力切換モジュール55、ハンド支持部材57およびハンド56が逆に下動する。
また、ハンド56を下方向に移動させる場合は、上下移動用動力切換モジュール53の流体圧室38にエア圧を供給し、両軸モータ51を前述と逆方向に駆動すると、雄ねじ軸67が逆方向に回転する。これにより、ナット部材68、腰回転用動力切換モジュール54、前後移動用動力切換モジュール55、ハンド支持部材57およびハンド56が逆に下動する。
更に、ハンド56を腰回転させる場合は、腰回転用動力切換モジュール54の流体圧室38にエア圧を供給する。すると、前述のように腰回転用動力切換モジュール54の多板クラッチ7が結合し、次いで多板ブレーキ8のブレーキ作動が解除する。これにより、両軸モータ51の回転が腰回転用動力切換モジュール54の入力軸6から出力軸10に伝達され、出力軸10が回転する。この出力軸10の回転で、前後移動用動力切換モジュール55が回転するので、ハンド支持部材57を介してハンド56が腰回転する。
流体圧室38に供給された流体圧が排出されると、前述のように腰回転用動力切換モジュール54の多板ブレーキ8がブレーキ作動し、次いで多板クラッチ7の結合が解除する。
そして、両軸モータ51が停止して、出力軸10の回転が停止するので、前後移動用動力切換モジュール55およびハンド支持部材57を介してハンド56の腰回転が停止する。また、腰回転用動力切換モジュール54の流体圧室38にエア圧を供給し、両軸モータ51を前述と逆方向に駆動すると、出力軸10が逆方向に回転する。この出力軸10の逆方向の回転で、前後移動用動力切換モジュール55およびハンド支持部材57を介してハンド56が逆方向に腰回転する。
そして、両軸モータ51が停止して、出力軸10の回転が停止するので、前後移動用動力切換モジュール55およびハンド支持部材57を介してハンド56の腰回転が停止する。また、腰回転用動力切換モジュール54の流体圧室38にエア圧を供給し、両軸モータ51を前述と逆方向に駆動すると、出力軸10が逆方向に回転する。この出力軸10の逆方向の回転で、前後移動用動力切換モジュール55およびハンド支持部材57を介してハンド56が逆方向に腰回転する。
更に、ハンド56を前方向に移動させる場合は、前後移動用動力切換モジュール55の流体圧室38にエア圧を供給する。すると、前後移動用動力切換モジュール55の多板クラッチ7が結合し、次いで多板ブレーキ8のブレーキ作動が解除する。これにより、両軸モータ51の回転が前後移動用動力切換モジュール55の入力軸6から出力軸10に伝達され、出力軸10が回転する。この出力軸10の回転で、ピニオン70が回転するので、ラック部材72およびハンド支持部材57を介してハンド56が前方向に移動する。
流体圧室38に供給された流体圧が排出されると、前述のように前後移動用動力切換モジュール55の多板ブレーキ8がブレーキ作動し、次いで多板クラッチ7の結合が解除する。そして、両軸モータ51が停止して、出力軸10の回転が停止するので、ピニオン70の回転が停止するので、ラック部材72およびハンド支持部材57を介してハンド56の前方向移動が停止する。
また、ハンド56を後方向に移動させる場合は、前後移動用動力切換モジュール55の流体圧室38にエア圧を供給し、両軸モータ51を前述と逆方向に駆動すると、出力軸10が逆方向に回転する。これにより、ピニオン70が逆方向に回転するので、ラック部材72およびハンド支持部材57を介してハンド56が逆に後方向に移動する。
したがって、予め設定された工程順にしたがって各動力切換モジュール52,53,54,55をシーケンス制御で作動することで、走行ロボット50は機械加工されるワークのハンドリングを効率よく行うようになる。
また、ハンド56を後方向に移動させる場合は、前後移動用動力切換モジュール55の流体圧室38にエア圧を供給し、両軸モータ51を前述と逆方向に駆動すると、出力軸10が逆方向に回転する。これにより、ピニオン70が逆方向に回転するので、ラック部材72およびハンド支持部材57を介してハンド56が逆に後方向に移動する。
したがって、予め設定された工程順にしたがって各動力切換モジュール52,53,54,55をシーケンス制御で作動することで、走行ロボット50は機械加工されるワークのハンドリングを効率よく行うようになる。
なお、各動力切換モジュール52,53,54,55のうち、少なくとも2つ以上の動力切換モジュールを作動させることにより、走行ロボット50に、走行、上下移動、腰回転および前後移動の少なくとも2つ以上の複合動作を行わせることもできる。
図5は、ワークの自動組立を行うための、インデックステーブルを備えた自動組立機に本発明の動力切換システム1を適用した例を模式的に示す図である。
図5に示すように、この例の自動組立機73は、モータ74と、上下移動(Z軸方向移動)用動力切換モジュール75と、回転用動力切換モジュール76と、組み立てられるワーク77を上動するための所定の上動位置に回転により搬送するインデックステーブル78と、上動位置に搬送されたワーク77を上動させるワーク上動機構79とを備えている。その場合、上下移動用動力切換モジュール75は出力プーリ11および無端ベルト12を備えていて、図2に示す動力切換モジュール4とまったく同じ構成であり、また、回転用動力切換モジュール76は出力プーリ11および無端ベルト12を除いては図2に示す動力切換モジュール4と実質的に同じ構成を有している。また、各動力切換モジュール75,76の各入出力軸6,10およびモータ74の回転軸がいずれも鉛直方向にかつ同軸に配置されている。すなわち、2つの上下移動用動力切換モジュール75および回転用動力切換モジュール76が上下に積層されて配設されている。
図5に示すように、この例の自動組立機73は、モータ74と、上下移動(Z軸方向移動)用動力切換モジュール75と、回転用動力切換モジュール76と、組み立てられるワーク77を上動するための所定の上動位置に回転により搬送するインデックステーブル78と、上動位置に搬送されたワーク77を上動させるワーク上動機構79とを備えている。その場合、上下移動用動力切換モジュール75は出力プーリ11および無端ベルト12を備えていて、図2に示す動力切換モジュール4とまったく同じ構成であり、また、回転用動力切換モジュール76は出力プーリ11および無端ベルト12を除いては図2に示す動力切換モジュール4と実質的に同じ構成を有している。また、各動力切換モジュール75,76の各入出力軸6,10およびモータ74の回転軸がいずれも鉛直方向にかつ同軸に配置されている。すなわち、2つの上下移動用動力切換モジュール75および回転用動力切換モジュール76が上下に積層されて配設されている。
そして、モータ74の回転軸に、上下移動用動力切換モジュール75の入力軸6が一体回転可能に連結されている。また、上下移動用動力切換モジュール75の入力軸6に、回転用動力切換モジュール76の入力軸6が一体回転可能に連結されている。詳細に図示しないが、モータ74、上下移動用動力切換モジュール75および回転用動力切換モジュール76はいずれもに装置本体80に支持されている。
また、ワーク上動機構79は装置本体80に設けられて、回転運動を上下方向の直線運動に変換する運動変換機構を備えている。この運動変換機構は、上下移動用動力切換モジュール75の無端ベルト12によって回転される従動プーリ81と、この従動プーリ81に同軸でかつ一体回転可能に連結されかつ装置本体80に回転可能に支持された雄ねじ軸82と、この雄ねじ軸82に螺合されたナット部材83とを有している。更に、ワーク上動機構79は、ナット部材83に固定されてワーク77を載置して上下動するワーク載置台84を備えている。
更に、回転用動力切換モジュール76の出力軸10に、インデックステーブル78の回転軸78aが一体回転可能に連結されている。
更に、回転用動力切換モジュール76の出力軸10に、インデックステーブル78の回転軸78aが一体回転可能に連結されている。
このように構成された自動組立機73の動作について説明する。
自動組立機73の非作動状態では、各動力切換モジュール75,76の各多板クラッチ7が結合していないとともに各多板ブレーキ8がブレーキ作動状態に保持されている。したがって、各動力切換モジュール75,76の各出力軸10は回転不能となっている。
自動組立機73の非作動状態では、各動力切換モジュール75,76の各多板クラッチ7が結合していないとともに各多板ブレーキ8がブレーキ作動状態に保持されている。したがって、各動力切換モジュール75,76の各出力軸10は回転不能となっている。
自動組立機73によりワーク77を組み立てる場合は、回転用動力切換モジュール76の流体圧室38に流体圧であるエア圧を供給する。すると、前述のように回転用動力切換モジュール76の多板クラッチ7が結合し、次いで多板ブレーキ8のブレーキ作動が解除する。これにより、モータ74の回転が回転用動力切換モジュール76の入力軸6から出力軸10に伝達され、出力軸10が回転する。この出力軸10の回転でインデックステーブル78が回転し、このインデックステーブル78に載置されているワーク77(最も右側に示されているワーク)が所定の上動位置(ワーク77がワーク載置台84で搬送可能な位置)に搬送される。ワーク77が所定の上動位置にくると、流体圧室38に供給されたエア圧が排出され、回転用動力切換モジュール76の多板ブレーキ8がブレーキ作動し、次いで多板クラッチ7が結合解除する。そして、両軸モータ51が停止し、回転用動力切換モジュール76は出力軸10が停止して出力を生じなく、インデックステーブル78の回転が停止する。
次に、上下移動用動力切換モジュール75の流体圧室38に流体圧であるエア圧を供給する。すると、前述と同様にして上下移動用動力切換モジュール75の出力軸10が回転する。この出力軸10の回転が出力プーリ11および無端ベルト12を介して従動プーリ81に伝達され、従動プーリ81が回転する。これにより雄ねじ軸82が回転してワーク上動機構79が作動するので、ナット部材83が上動する。すると、ワーク載置台84が上動して所定の上動位置にあるワーク77を載置し、更にこのワーク77を載置したまま上動する。ワーク77が組み立てられる装置85の被組み付け部材86の組み付け位置にくると、流体圧室38に供給されたエア圧が排出され、上下移動用動力切換モジュール75の多板ブレーキ8がブレーキ作動し、次いで多板クラッチ7が結合解除する。これにより、上下移動用動力切換モジュール75は出力軸10が停止して出力を生じなく、ワーク上動機構79の作動が停止して、ワーク77が組み付け位置に停止する。このとき、同時にモータ74の駆動が停止する。そして、ワーク77が図示しない組み付け手段で被組み付け部材86に組み付けられる。
その後、上下移動用動力切換モジュール75の流体圧室38にエア圧を供給し、モータ74を前述と逆方向に駆動すると、前述と同様にして上下移動用動力切換モジュール75の出力軸10が逆方向に回転する。この出力軸10の逆回転で従動プーリ81が逆回転するので、雄ねじ軸82が逆回転してナット部材83およびワーク載置台84が下動する。ワーク載置台84が非作動位置にくると、流体圧室38に供給されたエア圧が排出され、前述と同様にして上下移動用動力切換モジュール75の出力軸10が停止し、ワーク載置台84が非作動位置に停止する。
図6は、本発明の動力切換モジュールの実施の形態の他の例におけるピストンを示す図である。
前述の例の動力切換モジュール4では、多板クラッチ7および多板ブレーキ8を作動制御するために1つのピストン37、クラッチ作動ばね39および押し付けリング40を用いているが、図6に示すようにこの例の動力切換モジュール4では、多板クラッチ7および多板ブレーキ8を作動制御するために2つのクラッチ作動ピストン37aとブレーキ解除ピストン37bを用いているだけで、クラッチ作動ばね39および押し付けリング40は用いていない。
前述の例の動力切換モジュール4では、多板クラッチ7および多板ブレーキ8を作動制御するために1つのピストン37、クラッチ作動ばね39および押し付けリング40を用いているが、図6に示すようにこの例の動力切換モジュール4では、多板クラッチ7および多板ブレーキ8を作動制御するために2つのクラッチ作動ピストン37aとブレーキ解除ピストン37bを用いているだけで、クラッチ作動ばね39および押し付けリング40は用いていない。
クラッチ作動ピストン37aは多板クラッチ7を結合するためのピストンであり、また、ブレーキ解除ピストン37bは多板ブレーキ8のブレーキ作動を解除するためのピストンである。クラッチ作動ピストン37aはブレーキ解除ピストン37bより小径に形成されており、ハウジング5に摺動可能に嵌合されるとともにブレーキ解除ピストン37bを流体密にかつ摺動可能に貫通している。このクラッチ作動ピストン37aには多板クラッチ7のスラスト軸受け41を押圧する押圧部37a1を有している。一方、ブレーキ解除ピストン37bはハウジング5に流体密にかつ摺動可能に嵌合されている。このブレーキ解除ピストン37bには、ブレーキ解除リング35を押圧する押圧部37b1を有している。
このように構成されたこの例の動力切換モジュール4においては、流体圧が流体圧室38に供給されると、まずこの流体圧でクラッチ作動ピストン37aが作動して、その押圧部37a1がスラスト軸受け41を押圧して多板クラッチ7が結合する。その後、流体圧はブレーキ解除ピストン37bにも作用するようになるので、ブレーキ解除ピストン37bが作動して、その押圧部37b1がブレーキ解除リング35を押圧して多板ブレーキ8のブレーキ作動が解除する。このとき、多板クラッチ7が結合しても、ブレーキ解除ピストン37bがクラッチ作動ピストン37aに対して移動可能であるの、ブレーキ解除ピストン37bによるブレーキ作動の解除は確実に行うことができるようになる。
この例の動力切換モジュール4の他の構成および他の作用効果は、前述の例の動力切換モジュール4と同じである。
この例の動力切換モジュール4の他の構成および他の作用効果は、前述の例の動力切換モジュール4と同じである。
図7は、図6に示す例の変形例におけるピストンを示し、(a)は図6(a)と同様の図、(b)は図6(b)の中央の図と同様の図である。
前述の図6(a)および(b)に示す例では、クラッチ作動ピストン37aがハウジング5の孔から脱出した後、エアーがブレーキ解除ピストン37bに作用するようになっているが、図7に(a)および(b)示すように、この例の動力切換モジュール4では、クラッチ作動ピストン37aがハウジング5の孔から脱出しなくても、エアーがブレーキ解除ピストン37bに作用するようにしている。
前述の図6(a)および(b)に示す例では、クラッチ作動ピストン37aがハウジング5の孔から脱出した後、エアーがブレーキ解除ピストン37bに作用するようになっているが、図7に(a)および(b)示すように、この例の動力切換モジュール4では、クラッチ作動ピストン37aがハウジング5の孔から脱出しなくても、エアーがブレーキ解除ピストン37bに作用するようにしている。
すなわち、ハウジング5に径方向に所定幅を有する軸方向の溝5aが形成されており、この溝5aは、クラッチ作動ピストン37aが摺動するハウジング5の孔と、ブレーキ解除ピストン37bで区画される流体圧室38とを連通している。
この変形例では、クラッチ作動ピストン37aで区画される流体圧室38にエアーが供給されると、図6に示す例と同様にまずクラッチ作動ピストン37aが作動する。そして、図7(b)に示すように、クラッチ作動ピストン37aの上面が溝5aの上端より下方に位置する。これにより、エアーがブレーキ解除ピストン37bで区画される流体圧室38にも供給され、ブレーキ解除ピストン37bが作動する。このとき、クラッチ作動ピストン37aはハウジングの孔から脱出しない。
このように、この例では、クラッチ作動ピストン37aがハウジングの孔から脱出しないので、クラッチ作動ピストン37aの作動がより一層確実なものとなる。この例の動力切換モジュール4の他の構成および他の作用効果は、前述の例の動力切換モジュール4と同じである。
この変形例では、クラッチ作動ピストン37aで区画される流体圧室38にエアーが供給されると、図6に示す例と同様にまずクラッチ作動ピストン37aが作動する。そして、図7(b)に示すように、クラッチ作動ピストン37aの上面が溝5aの上端より下方に位置する。これにより、エアーがブレーキ解除ピストン37bで区画される流体圧室38にも供給され、ブレーキ解除ピストン37bが作動する。このとき、クラッチ作動ピストン37aはハウジングの孔から脱出しない。
このように、この例では、クラッチ作動ピストン37aがハウジングの孔から脱出しないので、クラッチ作動ピストン37aの作動がより一層確実なものとなる。この例の動力切換モジュール4の他の構成および他の作用効果は、前述の例の動力切換モジュール4と同じである。
なお、本発明の動力切換モジュール4および動力切換システム1は、前述の2つの用途例に限定されることはなく、複数の軸を1つのモータで回転して複数の動作を行うものであれば、どのような多軸の装置および多軸のシステムにも適用することができる。
本発明にかかる動力切換モジュールおよびこれを用いた動力切換システムは、例えば機械加工ラインにおけるマシニングセンタ等の設備に対するワークの搬送、ワークの取り出し、ワークの載置等を行う走行ロボット、自動組立機におけるインデックステーブル等のワークの搬送を行う装置、多関節ロボット等の複数の軸を1つのモータで回転して複数の動作を行う多軸の装置および多軸のシステムに好適に利用することが可能である。
1…動力切換システム、2…第1動力切換モジュール、3…第2動力切換モジュール、4…動力切換モジュール、5…ハウジング、6…入力軸、7…多板クラッチ、8…多板ブレーキ、9…クラッチ・ブレーキ制御手段、10…出力軸、11…出力プーリ、12…無端ベルト、14…連結部、15…連結孔、24…受動ホイール、33…ブレーキ作動プレート、34…ブレーキ保持ばね、35…ブレーキ解除リング、37…ピストン、38…流体圧室、39…クラッチ作動ばね、40…押し付けリング、47…モータ
Claims (8)
- 支持本体と、この支持本体に回転可能に支持された入力軸と、前記支持本体に回転可能に支持された出力軸と、前記支持本体に前記入力軸と前記出力軸との間に設けられて、前記入力軸と前記出力軸との間の動力伝達を制御するクラッチと、前記支持本体に設けられて前記出力軸を停止させるブレーキと、前記支持本体に設けられて前記クラッチと前記ブレーキとを制御するクラッチ・ブレーキ作動制御手段とを備え、
前記入力軸の少なくとも一端側に、他の回転軸にこの回転軸と一体回転可能に連結可能な連結部が設けられていることを特徴とする動力切換モジュール。 - 前記出力軸は円筒状に形成されているとともに、前記入力軸は前記出力軸内に進入して設けられていることを特徴とする請求項1記載の動力切換モジュール。
- 前記クラッチは、非作動時に結合解除状態に設定されるとともに作動時に結合状態に設定され、前記ブレーキは、非作動時にブレーキ作動保持状態に設定されるとともに作動時にブレーキ作動解除状態に設定されることを特徴とする請求項1または2記載の動力切換モジュール。
- 前記クラッチ・ブレーキ作動制御手段は、作動時前記クラッチを結合してから前記ブレーキのブレーキ作動を解除し、かつ非作動時前記ブレーキをブレーキ作動してから前記クラッチを結合解除するつかみ換え機構を有していることを特徴とする請求項3記載の動力切換モジュール。
- 前記クラッチは複数の摩擦クラッチ板を有する多板クラッチで構成されているとともに前記ブレーキは複数の摩擦ブレーキ板を有する多板ブレーキで構成されており、前記つかみ換え機構は流体圧で作動されるピストンを有し、
前記流体圧でピストンを作動させることで、前記複数の摩擦クラッチ板を挟圧して前記クラッチを結合し、その後で前記複数の摩擦ブレーキ板の挟圧を解除して前記ブレーキのブレーキ作動を解除することを特徴とする請求項4記載の動力切換モジュール。 - 前記ブレーキは前記クラッチの外周側に、少なくともその一部が前記クラッチの一部と径方向にオーバーラップされて配置されていることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1記載の動力切換モジュール。
- 請求項1ないし6のいずれか1記載の動力切換モジュールを複数個備えており、
前記複数の動力切換モジュールは、第1の動力切換モジュールの入力軸の第1および第2連結部のいずれか一方にモータの回転軸を一体回転可能に連結し、前記第1の動力切換モジュールの入力軸の第1および第2連結部のいずれか他方に第2の動力切換モジュールの入力軸の第1および第2連結部のいずれか一方を一体回転可能に連結するようにして、順次各入力軸を連結することで積層配置されていることを特徴とする動力切換システム。 - 前記複数の動力切換モジュールはすべて同じ動力切換モジュールで構成されているか、または、少なくとも一部の動力切換モジュールが他の動力切換モジュールと異なることを特徴とする請求項7記載の動力切換システム。
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- 2003-10-27 JP JP2003365730A patent/JP2005127463A/ja active Pending
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