JP2005126333A - 有機金属化合物及び該化合物を含む溶液原料並びに金属酸化膜薄膜 - Google Patents

有機金属化合物及び該化合物を含む溶液原料並びに金属酸化膜薄膜 Download PDF

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Abstract

【課題】気化安定性に優れ、高い成膜速度を有する有機金属化合物及び該化合物を含む溶液原料並びに金属酸化膜薄膜を提供することにある。
【解決手段】本発明の有機金属化学蒸着用有機金属化合物は、一般式M(OR)n(L)3-nで示される化合物である。但し、式中のMはプラセオジム又はイットリウムであり、Rは炭素数が3又は4の直鎖又は分岐状アルキル基であり、Lは、ジピバロイルメタナート又はジメチルヘプタンジオナートであり、nは1又は2である。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、以下、MOCVD法という。)により成膜され、ゲート酸化膜として有用な金属酸化物薄膜の原料として好適な有機金属化合物及び該化合物を含む溶液原料並びに該化合物により成膜された金属酸化物薄膜に関するものである。
高誘電体ゲート絶縁膜としてシリコン酸化膜が使用されているが、近年LSIの高集積化に伴って、シリコン酸化膜の薄膜化が進んでいる。膜厚が100nm以下の薄さとなった薄膜にはトンネル電流が流れて絶縁効果が低下してしまうため、シリコン酸化膜でのこれ以上の薄膜化は限界となっている。
そのためシリコン酸化膜に代わるゲート絶縁膜が要望されており、その候補としてHf酸化物やZr酸化物、Al酸化物、Pr酸化物、Y酸化物等を単独又は組合せた薄膜が注目されている。これら薄膜の製造方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、塗布熱分解、ゾルゲル等のMODが挙げられるが、組成制御性、段差被覆性に優れること、半導体製造プロセスとの整合性等からMOCVD法が最適な薄膜製造プロセスとして検討されている。
Pr酸化物含有薄膜やY酸化物含有薄膜を成膜するための材料としては、Ln(C5425)3で表されるトリス(エチルシクロペンタジエニル)ランタノイド(以下、Ln(EtCp)3という。)が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。ここで、LnはLa、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yから選ばれた元素である。上記特許文献1に示される化合物は、50℃〜95℃の融点と170℃〜190℃で約1Torr(133Pa)の蒸気圧を有しているのでCVD装置への供給が容易であり、Ln23含有薄膜をCVDで容易に製造できる。
特開2002−338590号公報(請求項1、段落[0029])
しかし上記特許文献1に示されるLn(EtCp)3は経時劣化が激しく、またこれらの化合物を用いてCVD法により成膜する際に成膜速度が遅い問題があった。
本発明の目的は、気化安定性に優れ、高い成膜速度を有する有機金属化合物及び該化合物を含む溶液原料並びに金属酸化膜薄膜を提供することにある。
請求項1に係る発明は、次の式(1)に示される有機金属化学蒸着用有機金属化合物である。
M(OR)n(L)3-n ……(1)
但し、式中のMはプラセオジム又はイットリウムであり、Rは炭素数が1〜4の直鎖又は分岐状アルキル基であり、Lは、ジピバロイルメタナート(以下、DPMという。)又はジメチルヘプタンジオナート(以下、DMHDという。)であり、nは1又は2である。
請求項1に係る発明では、基本構造の異なるアルコキシド構造とβジケトン構造の配位子をそれぞれ配位させることにより、嵩高い構造を有することで化合物同士が多量体を形成し難くなるとともに、熱的安定性に優れた効果を有する。その結果、上記構造の化合物を用いてMOCVD法により成膜したとき、従来の構造を有する化合物に比べて気化安定性に優れ、高い成膜速度が得られる。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の有機金属化合物を有機溶媒に溶解したことを特徴とする溶液原料である。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明であって、有機溶媒がテトラヒドロフラン(以下、THFという。)、メチルテトラヒドロフラン、n-オクタン、イソオクタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ピリジン、ルチジン、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸メチル及び酢酸エチルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒である溶液原料である。
請求項4に係る発明は、請求項1記載の有機金属化合物、又は請求項2又は3記載の溶液原料を用いて成膜された金属酸化物薄膜である。
本発明の有機金属化合物、即ち上記式(1)に示される構造を有する有機プラセオジム化合物及び有機イットリウム化合物は、従来の構造を有する有機金属化合物に比べて気化安定性に優れ、高い成膜速度を有する。また上記化合物を有機溶媒に溶解した溶液原料は、成膜速度を制御し易い。
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の有機金属化合物は、次の式(1)に示される化合物である。
M(OR)n(L)3-n ……(1)
但し、式中のMはプラセオジム又はイットリウムであり、Rは炭素数が1〜4の直鎖又は分岐状アルキル基であり、Lは、DPM又はDMHDであり、nは1又は2である。
上記式(1)に示される有機金属化合物は、プラセオジム又はイットリウムを中心金属とし、炭素数が1〜4の直鎖又は分岐状アルキル基のアルコキシドと、DPM又はDMHDのβジケトンを配位させた化合物であり、常温常圧で固体を示す。基本構造の異なるアルコキシド構造とβジケトン構造の配位子をそれぞれ配位させることで、嵩高い構造を有することで化合物同士が多量体を形成し難くなるとともに、熱的安定性に優れた効果を有する。その結果、従来の構造を有する化合物に比べて安定性に優れた有機プラセオジム化合物又は有機イットリウム化合物を得ることができる。従って、上記構造の化合物を用いてMOCVD法により成膜したとき、従来の構造を有する化合物に比べて気化安定性に優れ、高い成膜速度が得られる。
本発明の有機有機化合物、例えば上記式(1)のMをプラセオジム、Rをイソプロピル基、LをDPM、nを1とした化合物であるPr(OiC37)(DPM)2を製造する方法としては、先ず、Pr(OiC37)3を用意し、このPr(OiC37)3を不活性気流下にて所定量の有機溶媒に懸濁させて懸濁液を調製する。有機溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n-オクタン等が挙げられる。次いで、この懸濁液にHDPMをゆっくり滴下する。HDPMの滴下量は、有機金属化合物の配位子となるOiC37とDPMとのモル比が1:2となるように調整する。次に、HDPMを滴下した懸濁液を所定の温度に保温し、HDPMを滴下した懸濁液を所定時間加熱還流して反応させる。加熱還流後は反応液から溶媒を減圧留去することで、生成物であるPr(OiC37)(DPM)2が得られる。
また、本発明の溶液原料は、本発明の上記式(1)に示される有機金属化合物を有機溶媒に溶解することで調製される。有機溶媒と上記式(1)の有機金属化合物との混合割合は特に規定されず、MOCVDに用いる際に十分な溶解がされればよい。有機溶媒としては、THF、Me−THF、n-オクタン、イソオクタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ピリジン、ルチジン、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸メチル及び酢酸エチルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒が挙げられる。
このようにして得られた有機金属化合物又は溶液原料は、MOCVD法を用いることで基体上、例えばシリコン基板上にプラセオジム酸化物薄膜やイットリウム酸化物薄膜等の金属酸化物薄膜を形成する。
次に、有機プラセオジム化合物を用いたプラセオジム酸化物薄膜の形成方法をMOCVD法を用いて形成する方法を例にとって説明する。
図1に示すように、MOCVD装置は、成膜室10と蒸気発生装置11を備える。成膜室10の内部にはヒータ12が設けられ、ヒータ12上には基板13が保持される。この成膜室10の内部は圧力センサー14、コールドトラップ15及びニードルバルブ16を備える配管17により真空引きされる。成膜室10にはニードルバルブ36、ガス流量調節装置34を介してO2ガス導入管37が接続される。蒸気発生装置11には、本発明の有機プラセオジム化合物又は溶液原料を原料として貯留する原料容器18が備えられる。原料容器18にはガス流量調節装置19を介して加圧用不活性ガス導入管21が接続され、また原料容器18には供給管22が接続される。供給管22にはニードルバルブ23及び流量調節装置24が設けられ、供給管22は気化室26に接続される。気化室26にはニードルバルブ31、ガス流量調節装置28を介してキャリアガス導入管29が接続される。気化室26は更に配管27により成膜室10に接続される。また気化室26には、ガスドレイン32及びドレイン33がそれぞれ接続される。
この装置では、加圧用不活性ガスが導入管21から原料容器18内に導入され、原料容器18に貯蔵されている原料液を供給管22により気化室26に搬送する。気化室26で気化されて蒸気となった有機プラセオジム化合物は、更にキャリアガス導入管29から気化室26へ導入されたキャリアガスにより配管27を経て成膜室10内に供給される。成膜室10内において、有機プラセオジム化合物の蒸気を熱分解させ、O2ガス導入管37より導入されたO2ガスと反応させることにより、生成したプラセオジム酸化物を加熱された基板13上に堆積させてプラセオジム酸化物薄膜を形成する。加圧用不活性ガス、キャリアガスには、アルゴン、ヘリウム、窒素等が挙げられる。
このように気化安定性に優れ、高い成膜速度を有する本発明の有機プラセオジム化合物を用いて成膜すると、従来のプラセオジム酸化物よりも気化安定性に優れ、成膜速度が高い成膜を行うことができる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、出発原料としてPr(OiC37)3を22g用意し、このPr(OiC37)3を不活性気流下にてn−ヘキサン200mlに懸濁させた。次いで、この懸濁液にHDPMを30gゆっくり滴下した。次に、オイルバスの温度を70℃に保持し、滴下液を24時間加熱還流して反応させた。加熱還流後、反応液から溶媒を減圧留去し、生成物を18g得た。
得られた生成物を1H-NMR(C66)分析により測定した結果では、δ=5.4ppm(DPM)、1.2ppm(CH3)、5.1ppm(C37)及び2.8ppm(C37)であった。上記分析結果より得られた生成物はPr(OiC37)(DPM)2であると同定された。
<実施例2>
HDPMの滴下量を15gとした以外は実施例1と同様の方法を用いて生成物を得た。得られた生成物を1H-NMR(C66)分析により測定した結果では、δ=5.4ppm(DPM)、1.1ppm(CH3)、5.3ppm(C37)及び3.2ppm(C37)であった。上記分析結果より得られた生成物はPr(OiC37)2(DPM)であると同定された。
<実施例3>
Pr(OiC37)3の代わりにPr(OtC49)3を用いた以外は実施例1と同様の方法を用いて生成物を得た。得られた生成物を1H-NMR(C66)分析により測定した結果では、δ=5.3ppm(DPM)、1.3ppm(C49)及び1.1ppm(C49)であった。上記分析結果より得られた生成物はPr(OtC49)(DPM)2であると同定された。
<実施例4>
Pr(OiC37)3の代わりにPr(OtC49)3を用い、HDPMの滴下量を10gとした以外は実施例1と同様の方法を用いて生成物を得た。得られた生成物を1H-NMR(C66)分析により測定した結果では、δ=5.4ppm(DPM)、1.2ppm(C49)及び1.0ppm(C49)であった。上記分析結果より得られた生成物はPr(OtC49)2(DPM)であると同定された。
<実施例5>
HDPMの代わりにHDMHDを用いた以外は実施例1と同様の方法を用いて生成物を得た。得られた生成物を1H-NMR(C66)分析により測定した結果では、δ=6.3ppm(DMHD)、3.2ppm(DMHD)、1.0ppm(CH3)、5.4ppm(C37)及び2.0ppm(C37)であった。上記分析結果より得られた生成物はPr(OiC37)(DMHD)2であると同定された。
<実施例6>
HDPMの代わりにHDMHDを用い、HDMHDの滴下量を18gとした以外は実施例1と同様の方法を用いて生成物を得た。得られた生成物を1H-NMR(C66)分析により測定した結果では、δ=6.4ppm(DMHD)、3.1ppm(DMHD)、1.0ppm(CH3)、5.2ppm(C37)及び3.4ppm(C37)であった。上記分析結果より得られた生成物はPr(OiC37)2(DMHD)であると同定された。
<実施例7>
Pr(OiC37)3の代わりにPr(OtC49)3を用い、HDPMの代わりにHDMHDを用いた以外は実施例1と同様の方法を用いて生成物を得た。得られた生成物を1H-NMR(C66)分析により測定した結果では、δ=6.2ppm(DMHD)、3.4ppm(DMHD)、1.1ppm(C49)及び1.2ppm(C49)であった。上記分析結果より得られた生成物はPr(OtC49)(DMHD)2であると同定された。
<実施例8>
Pr(OiC37)3の代わりにPr(OtC49)3を用い、HDPMの代わりにHDMHDを用い、HDMHDの滴下量を10gとした以外は実施例1と同様の方法を用いて生成物を得た。得られた生成物を1H-NMR(C66)分析により測定した結果では、δ=6.1ppm(DMHD)、3.2ppm(DMHD)、1.3ppm(C49)及び1.2ppm(C49)であった。上記分析結果より得られた生成物はPr(OtC49)2(DMHD)であると同定された。
<実施例9〜16>
出発原料の中心金属をPrからYに代えた以外は実施例1〜8と同様にして生成物をそれぞれ得た。
<比較例1>
先ず、K(EtCp)をTHF溶媒に溶解させて、K(EtCp)の濃度が約2mol/lのTHF溶液を調製した。次いで、THF溶液に無水PrCl3粉末を分散させて分散液を調製した。次に、この分散液を−78℃に冷却し、攪拌しながらK(EtCp)のTHF溶液を添加した。添加した液は攪拌しながら室温にまで自然昇温させ、室温で一昼夜攪拌し続けて反応を完結させた。次に反応液をデカンテーションやろ過、単蒸留分離、減圧加熱して反応液中の未反応物、THF、副反応生成物を留去した。更に留分を真空蒸留して生成物を得た。得られた生成物を1H-NMR(C66)分析により測定した結果では、δ=5.5ppm(Cp)、2.4ppm(C25)及び1.8ppm(C25)であった。上記分析結果より得られた生成物はPr(EtCp)3であると同定された。
<比較例2>
無水PrCl3粉末の代わりに無水YCl3粉末を用いた以外は比較例1と同様にして生成物を得た。得られた生成物を1H-NMR(C66)分析により測定した結果では、δ=5.4ppm(Cp)、2.8ppm(C25)及び1.5ppm(C25)であった。上記分析結果より得られた生成物はY(EtCp)3であると同定された。
<比較試験1>
実施例1〜16及び比較例1、2でそれぞれ得られた有機金属化合物を用いて次のような試験を行った。
先ず、基板として表面に厚さ5000ÅのSiO2を形成したSi基板を5枚ずつ用意し、基板を図1に示すMOCVD装置の成膜室に設置した。次いで、基板温度を250℃、気化温度を100℃、圧力を約266Pa(2torr)にそれぞれ設定した。反応ガスとしてO2ガスを用い、その分圧を500ccmとした。次に、キャリアガスとしてHeガスを用い、有機金属化合物を0.05cc/分の割合でそれぞれ供給し、成膜時間が1分、5分、10分、20分及び30分となったときにそれぞれ1枚ずつ成膜室より取出し、成膜を終えた基板上の金属酸化物薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から膜厚を測定した。得られた成膜時間あたりの膜厚の結果を表1にそれぞれ示す。
Figure 2005126333
表1より明らかなように、比較例1及び2の有機金属化合物を用いて得られた薄膜は、時間が進んでも膜厚が厚くならず、成膜の安定性が悪いことが判る。これに対して実施例1〜16の有機金属化合物を用いて得られた薄膜は、比較例1及び2の有機金属化合物を用いた場合に比べて非常に成膜速度が高く、また成膜時間あたりの膜厚が均等になっており、成膜安定性が高い結果が得られた。
MOCVD装置の概略図。

Claims (4)

  1. 次の式(1)に示される有機金属化学蒸着用有機金属化合物。
    M(OR)n(L)3-n ……(1)
    但し、式中のMはプラセオジム又はイットリウムであり、Rは炭素数が1〜4の直鎖又は分岐状アルキル基であり、Lは、ジピバロイルメタナート又はジメチルヘプタンジオナートであり、nは1又は2である。
  2. 請求項1記載の有機金属化合物を有機溶媒に溶解したことを特徴とする溶液原料。
  3. 有機溶媒がテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、n-オクタン、イソオクタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ピリジン、ルチジン、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸メチル及び酢酸エチルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒である請求項2記載の溶液原料。
  4. 請求項1記載の有機金属化合物、又は請求項2又は3記載の溶液原料を用いて成膜された金属酸化物薄膜。
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