JP2005125543A - 平版印刷版用支持体および平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版用支持体および平版印刷版原版 Download PDF

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Abstract

【課題】高い耐キズ性を持つ皮膜を有し、平版印刷版としたときの耐汚れ性と耐刷性に優れ、かつ、現像処理後の残色現象、残膜現象の発生が抑制される平版印刷版原版およびそれに用いられる平版印刷版用支持体の提供。
【解決手段】基板上に、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および/または金属水酸化物の粒子が、金属原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる多孔質層を有する平版印刷版用支持体、および、該平版印刷版用支持体上に画像記録層を有する平版印刷版原版。
【選択図】なし

Description

本発明は、平版印刷版用支持体および平版印刷版原版に関し、特に、画像記録層にかかわらず現像後の残色等の発生が抑制される平版印刷版原版およびそれに用いられる平版印刷版用支持体に関する。
平版印刷の分野において、平版印刷版を作製するための平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体の基体として金属基板が広く使用されている。中でも、アルミニウム基体は、酸性溶液中で陽極にして直流電気を流されることにより酸化皮膜を生成させることが知られており、一般にアルマイト処理として知られている処理が可能な上、軽量、安価という様々の利点を有する。アルミニウム表面にアルマイト処理を行うと、アルミナ酸化皮膜は金属アルミニウムに比べ、耐酸性や硬度が高い上に、皮膜構造にポアと呼ばれる細孔が規則的に多数生成し、BET法(気体吸着法)による表面積が大幅に増大するので、該アルマイト処理は、平版印刷版用支持体における親水性を向上でき、また塗膜を形成する際の密着力を向上できる等の改良が可能であり、これにより、平版印刷版としたときの優れた耐汚れ性(本発明において、「汚れにくさ」をいう。)および耐刷性を両立できるという利点を有する。
また、近年、近赤外〜赤外線領域による露光で画像形成が可能で、特に該領域に発光領域を有するレーザを用いて光照射の際に発生する発熱を利用して、画像を記録することによりコンピュータ等のデジタルデータから直接製版が可能な、いわゆるヒートモード型CTP用平版印刷版用原版(以下単に、「ヒートモード型平版印刷版原版」ともいう。)が注目されている。
この平版印刷版原版においては、描画用の照射レーザ光を感光層中に含まれる光熱変換材料等により熱に変換し、発生した熱で現像液に対する感光層の溶解性を変えたり、感光層を熱分解もしくは、急激な加熱により爆発的膨張除去(アブレーション)したりする。これらのヒートモード型平版印刷版用原版の支持体として、アルミニウム等の金属基板を使用すると、該金属基板の熱伝導率が高いため、上記発生した熱が急速に支持体側に放熱されてしまって該発生した熱をロスし、平版印刷版原版の感度が低下する原因の一つになっている。逆に言えば、平版印刷版用支持体表面の断熱性を向上させ、感光層中で発生した熱の放熱現象を最小限に抑えることができれば、平版印刷版原版の感度が向上することが可能となると予想される。
平版印刷版用支持体の低断熱性を改善する手段として、平版印刷版用支持体上に形成される陽極酸化皮膜自体の熱伝導率が低いという性質を利用して該陽極酸化皮膜の膜厚を厚くする方法、陽極酸化皮膜形成後酸水溶液やアルカリ水溶液に浸漬して該皮膜中に存在するポアの径を拡大し、該皮膜の空隙率を上げる方法等が提案されている。しかしながら、該陽極酸化皮膜の膜厚を厚くすると、陽極酸化皮膜を形成させる際に多大な電気量が必要となりコストアップの要因になるという問題がある。また、該皮膜の空隙率を上げる方法においては、該皮膜の強度が低下するため皮膜にキズが付くと該キズにインクが入り込み汚れの原因となってしまう。即ち、陽極酸化皮膜を設ける方法においては、断熱性に優れ低感度を改善できるものの、コストアップや汚れの原因となる皮膜強度の強化ができず、皮膜強度と断熱性との両立が難しいという問題がある。
平版印刷版用支持体の低断熱性を改善する別の手段として、PET等、熱伝導率が低い有機素材を支持体にして、高感度化させる手法も試みられているが、金属素材に比べ、親水性が低く、印刷中に水分を吸湿して寸法精度が悪化するので、カラー印刷、高精細印刷等の高度な印刷には使用できないのが現状である。
したがって、ヒートモード型平版印刷版原版に用いる支持体として、金属基板の各種表面処理の簡便さや、親水性、寸法精度安定性等優れた点を活かしながら、金属基板の高い熱伝導率に起因する低断熱性を改善することが求められている。
その手段として、平版印刷版用支持体上に形成される、熱伝導率が低い陽極酸化被膜に代わる被膜として、例えば、アルミナ粒子を含有する親水性層を有し、該親水性層をケイ酸を含む液で処理してなることを特徴とする平版印刷版用親水性層が提案されている(特許文献1参照)。また、別の手段として、少なくとも無機非金属粒子と一塩基性リン酸塩を含むスラリーをアルミニウム表面を有する基板上に塗布し、少なくとも230℃以上の温度で十分脱水乾燥させて親水性セラミック層を形成させる工程と、該親水性セラミック層上に有機感光性層を形成させる工程とを含む感光性材料の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、上記平版印刷版用親水性層は、アルミナゾルの自己造膜性を利用して形成される層でありやはり皮膜強度が弱い。そのため、該親水性層およびそれを設けた平版印刷版用支持体は耐キズ性に劣り、また、平版印刷版としたときの耐刷性にも劣る場合がある。一方、上記親水性セラミック層を設けた平版印刷版は、十分満足できる耐汚れ性が得られない場合がある。また、上記親水性セラミック層は、230℃を超える高温での乾燥工程を行うものであり、このような高温乾燥を可能にする乾燥設備は一般に高価である。さらには、あまりに高温(例えば、260℃以上)で乾燥すると、該親水性セラミック層が設けられるアルミニウム板等の金属基板が軟化して、アルミニウム板等の金属基板が有する優れた寸法精度安定性等を損ない、特に印刷時に版伸びを起こし該基板と画像とがずれてしまうという不具合を起こす場合がある。
特開2000−169758号公報 米国特許第4,542,089号明細書
上記問題を解決する手段として、本出願人は、アルミニウム表面を有する基板上に、アルミナ粒子およびリン酸を主成分とする塗布液を塗布したことにより得られる層を有することを特徴とする平版印刷版用支持体を提案した(特開2003−145959号公報)。該平版印刷版用支持体は、平版印刷版原版としたときの感度、平版印刷版としたときの耐汚れ性および耐刷性に優れ、生産性の向上もでき、有用な支持体である。
この平版印刷版用支持体においては、表面に多数の細孔を有する、空隙率の高い層が設けられているため、感度、耐汚れ性等の印刷性能が改善される。しかし、この支持体に設けられる空隙率の高い層の上に直接画像記録層を設けて平版印刷版原版とすると、その空隙率によっては、該層の空隙部分(細孔)に画像記録層成分である染料等が入り込んで現像処理により除去されず残ってしまう残色現象や、同じく画像記録層成分であるバインダー樹脂等が現像後も残ってしまう残膜現象が見られる場合がある。
これらの現象を抑制するには、上記層の空隙部分に染料やバインダー等が入り込みにくい画像記録層を選択することになり、種々の画像記録層が開発・実用されている近年においては、上記平版印刷版用支持体の有用性が損なわれる可能性がある。
上記残色現象等は、特許文献1に記載された平版印刷版用親水性層を設けてなる平版印刷版、および、特許文献2に記載された感光性材料の製造方法により得られる印刷版においても、同様に確認されており、やはり改善が望まれている。
本発明は、上記課題を解決するものであり、具体的には、高い耐キズ性を持つ皮膜を有し、平版印刷版としたときの耐汚れ性と耐刷性に優れ、かつ、残色現象、残膜現象の発生が抑制される平版印刷版原版およびそれに用いられる平版印刷版用支持体を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討したところ、多孔質層を形成する粒子に平均粒径が異なる粒子を2種以上用いることで、該層の空隙率を低下させ画像記録層の種類等にかかわらず、残色現象等の発生を抑制できること、好ましくは、上記粒子の1種に金属水酸化物の粒子を用いることで、上記空隙率の低下を補うことができ耐汚れ性と耐刷性を維持できることを知見した。
即ち、本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下の(1)〜(9)を提供する。
(1)基板上に、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および/または金属水酸化物の粒子が、金属原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる多孔質層を有する平版印刷版用支持体。
(2)前記多孔質層が、前記基板上に、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および/または金属水酸化物の粒子と、リン酸とを含む塗布液を塗布して得られる多孔質層である上記(1)に記載の平版印刷版用支持体。
(3)前記平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および/または金属水酸化物の粒子が、平均粒径が異なる2種以上の金属水酸化物の粒子、または、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および金属水酸化物の粒子である上記(1)または(2)に記載の平版印刷版用支持体。
本発明においては、大きな粒子として金属水酸化物を用い、小さな粒子として金属酸化物を用いるのが、入手が容易で、かつ、反応促進剤の使用量を減らせる点で、好ましい。
(4)前記金属水酸化物が水酸化アルミニウムであり、前記金属酸化物が酸化アルミニウムである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
(5)前記多孔質層の層厚が5〜50μmで、該多孔質層の表面の空隙率が20%以下であり、かつ、前記平版印刷版用支持体の表面粗さRが0.5〜1.5μmである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
(6)前記多孔質層の上に封孔層を設けて、該多孔質層の表面の空隙率を15%以下に調整した上記(1)〜(5)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
(7)前記封孔層が、アルカリ金属化合物を含む水溶液中に浸せき処理して設けられる上記(6)に記載の平版印刷版用支持体。
(8)前記基板が、アルミニウム基板、あるいは、アルミニウムで被覆した紙基板、樹脂基板または金属基板である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を有する平版印刷版原版。
本発明により、高い耐キズ性を持つ皮膜を有し、平版印刷版としたときの耐汚れ性と耐刷性に優れ、かつ、残色現象、残膜現象の発生が抑制される平版印刷版原版およびそれに用いられる平版印刷版用支持体を提供できる。
以下、本発明の平版印刷版用支持体および平版印刷版原版について、詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体]
本発明の平版印刷版用支持体は、後述する基板上に、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および/または金属水酸化物の粒子が、金属原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる多孔質層(以下、「本発明の多孔質層」という。)を有する平版印刷版用支持体である。
本発明者は、多孔質層を形成する粒子に平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属水酸化物および/または金属酸化物の粒子を用いると、形成される多孔質層、好ましくはその表面の空隙率を低下させられ画像記録層の種類等にかかわらず、残色現象等の発生を抑制できることを知見した。
一方、多孔質層の空隙率を低下させると多孔質層が有する優れた断熱性を損なう場合がある。本発明者は、多孔質層を形成する粒子の少なくとも1種に金属水酸化物の粒子を用いると、形成される多孔質層の表面粗さ(平版印刷版用支持体の表面粗さR)を好適範囲に容易に調整できるため、該多孔質層を厚く設けることができ、空隙率の低下による低断熱性を補うことができることを知見した。
即ち、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属水酸化物および/または金属酸化物の粒子を用いると、好ましくは該粒子の少なくとも1種に金属水酸化物を用いると、さらに好ましくは、任意に添加される反応促進剤の使用量を減らすと、高い耐キズ性を持つ皮膜を有し、平版印刷版としたときの耐汚れ性と耐刷性に優れ、かつ、残色現象、残膜現象の発生が抑制される平版印刷版原版およびそれに用いられる平版印刷版用支持体を提供できる。
本発明において、上記課題を克服できる理由は、詳細には明らかになっていないが、発明者は以下のように考えている。
つまり、平均粒径がそれぞれ異なる粒子を2種以上用いると、平均粒径が大きな粒子により形成される空隙内に、好ましくは多孔質層の表面側に形成される空隙内に、平均粒径が小さい粒子が含有される構造の多孔質層が形成されるため、該多孔質層(好ましくはその表面近傍)の空隙率が低下し、画像記録層の種類にかかわらず、それに含まれる染料やバインダー等が該空隙に入り込みにくくなり、残色現象等の発生を抑制できる。
その一方で、該多孔質層(好ましくはその表面近傍)の空隙率が低下することにより、該多孔質層が有する高い断熱性を損なうことになる場合があるが、多孔質層を形成する粒子の少なくとも1種に金属水酸化物の粒子を用いると、該金属水酸化物とリン酸との反応が低温で起こり、多孔質層を形成する際に後述する反応促進剤、特に塩化アルミニウムとリン酸との反応により副生する塩酸ガスの発生等を十分に抑えられるため、該多孔質層の表面粗さ(本発明の平版印刷版用支持体の表面粗さR)を好適範囲に容易に収められ、該多孔質層を厚く形成させることができる。したがって、優れた耐汚れ性と耐刷性を維持でき、さらに、断熱性の低下を補うことができる。
<表面粗さR
本発明の平版印刷版用支持体は、その表面粗さ(実質的には多孔質層の表面粗さ)Rが0.5〜1.5μm以下であるのが好ましい。表面粗さRは、平版印刷版用支持体(多孔質層)の表面の大きなうねりを含む凹凸形状を表す指標である。表面粗さRを大きくしすぎると、急峻な凸部や深い凹部が形成され、耐汚れ性が低下する。表面粗さRを1.5μm以下にすると、後述する基板上に設けられた多孔質層に由来する断熱性、優れた耐キズ性、耐刷性および耐汚れ性を損なわず、さらに耐刷性、耐汚れ性およびシャイニー性をバランスよく改善できる。該効果により優れる点で、1.0μm以下であるのが好ましい。
表面粗さRを0.5μm以上にすると、表面が粗くなり平版印刷版の非画像部の保水性が大きくなるため光が正反射しにくく、その結果、印刷時に平版印刷版の非画像部の表面に湿し水が供給されても版面が光りにくくなり、供給されている湿し水の量を目視で確認してその量を調節すること(検版性)が容易になってシャイニー性に優れる。また、支持体(封孔層)上に設けられる画像記録層と密着する表面積が増大して、密着力を強固なものとできるため、耐刷性をより高い水準に改善できる。該効果により優れる点で、0.6μm以上であるのが好ましい。
したがって、表面粗さRを上記範囲にすると、耐刷性、耐汚れ性およびシャイニー性をバランスよく改善できる。
なお、多孔質層(平版印刷版用支持体)の表面粗さを上記範囲に限定しても、多孔質層中の空隙は維持され、多孔質層が硬くその層厚も厚くできるため、該多孔質層が本来有する特性である断熱性、優れた耐キズ性、耐刷性および耐汚れ性を損なうことはない。
本発明の平版印刷版用支持体において、表面の平均粗さ(表面粗さ)Rの測定方法は、以下の通りである。
触針式粗さ計(例えば、sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均粗さRを5回測定し、その平均値を平均粗さとする。
2次元粗さ測定の条件を以下に示す。
(測定条件)
カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
平版印刷版用支持体の表面粗さRを上記範囲にするには、多孔質層の表面粗さを上記範囲にすればよい。即ち、多孔質層上に設けられる後述する封孔層等の層厚は、表面粗さRにほとんど影響を与えない程度に薄く設けられることが多く、多孔質層の表面粗さと平版印刷版用支持体の表面粗さRはほぼ同じ値になる。本発明においては、多孔質層の表面粗さは、例えば、後述する多孔質層塗布液に含有させる金属水酸化物および/または金属酸化の平均粒径により多孔質層の表面粗さを調整することができる。
<多孔質層>
以下、本発明の多孔質層について説明する。
基板上に設けられる本発明の多孔質層は、多数の金属水酸化物および/または金属酸化物(以下、単に「金属水酸化物等」という場合がある。)の粒子が、金属原子とリン原子を含む化合物を介して結着してなる層であり、個々の金属水酸化物等の粒子の表面を部分的に、好ましくは全体的に該金属原子とリン原子を含む化合物が覆い、該金属原子とリン原子を含む化合物が固化し、これに覆われた複数の金属水酸化物等の粒子が凝集した状態で、該金属原子とリン原子を含む化合物を介して結着してなる層であると考えられる。
該結着された複数の粒子間には、特に平均粒径が大きい粒子同士が結着された粒子間には、空隙部分が形成され、この空隙部分は空気をとり込むことができ、これにより該多孔質層の空隙率が高くなって断熱性が向上する。その結果、該多孔質層上に設けられる画像記録層に発生した熱が熱伝導率の高い基板に拡散されず画像形成に有効に使用されるため、平版印刷版原版の感度に優れる。また、該金属原子とリン原子を含む化合物等を介して結着しているため、該多孔質層は皮膜強度が強く耐キズ性に優れ、耐刷性にも優れる。
一方、上記平均粒径が大きい粒子同士が結着して形成される空隙部分には、平均粒径が小さい粒子が入り込み、これが該空隙部分に金属原子とリン原子を含む化合物等を介して結着されるため、該空隙部分の空隙が減少する。そのため、多孔質層の上に形成される画像記録層等の成分が、多孔質層の空隙に入り込みにくくなって、残色現象、残膜現象の発生が抑制される。
このとき、多孔質層を形成する粒子として、金属水酸化物の粒子を少なくとも1種用いるのが次の理由から好ましい。即ち、金属水酸化物の粒子を用いると、後述するように、優れた耐刷性と耐汚れ性を維持したまま、層厚の厚い多孔質層を形成させることができるので、空隙率の低下による平版印刷版原版の感度の低下を抑えることができる。
該多孔質層を形成する結着された金属水酸化物等の粒子は、後述する金属水酸化物等の(表面の)一部がリン酸と反応して残存した金属水酸化物等の粒子であり、特に、その粒径を大きく減じることなく残存していると考えられる。つまり、本発明の特徴の1つは、上記金属水酸化物等の粒子の表面をリン酸により溶解(リン酸と反応)させる(全体を溶解させない)ことにある。
該表面を溶解させる方法としては、例えば、後述する塗布液(スラリー)の状態では該金属水酸化物等の粒子とリン酸との反応が起こりにくい条件(温度、pH等)とし、該塗布液の塗布中または乾燥中にpHが低下すると共に高温状態となって反応が起こる条件となるように設定する方法が挙げられる。具体的には、後述する乾燥工程における乾燥温度を特定する方法(好ましくは、さらに乾燥時間を特定する方法)、後述するリン酸と反応する該金属水酸化物量を特定する方法、触媒・反応促進剤・添加剤等を添加する方法、および、これらを適宜組み合わせる方法等が挙げられる。
該多孔質層を形成する、リン酸と反応した後の金属水酸化物等の粒子の平均粒径等は、特に限定されず、後述する塗布液に用いる金属水酸化物等の粒径により異なる。
また、リン酸と反応した後の金属水酸化物等およびその粒子に関しては、リン酸と反応したこと以外は、後述する塗布液で説明するものと基本的に同様である。
本発明の多孔質層を形成する金属原子とリン原子を含む化合物は、リン酸と金属水酸化物等との反応生成物または該リン酸と後述する添加剤との反応生成物等であり、上記金属水酸化物等の粒子同士を結着させる結着剤として機能する。
該化合物は、用いる金属水酸化物等および任意に用いられる添加剤により異なるため、一概には決定できないが、他の原子、例えば、酸素原子等を含んでいてもよい。該化合物として、例えば、金属水酸化物等としてAl(OH)、Al等のアルミニウム化合物を用いる場合には、Al(HPO、AlPO等が挙げられる。
該金属原子とリン原子を含む化合物は、上記化合物に限定されず、金属水酸化物等の粒子同士を結合する「金属原子とリン原子を含む結合基」であってもよく、該結合基は高分子量であってもよい。上記金属原子とリン原子を含む化合物および金属原子とリン原子を含む結合基の組成は特に限定されない。
本発明の多孔質層を形成させるには、後述するように、上記金属水酸化物等の金属原子と異なる金属原子を含む添加剤等を用いることができる。そのため、該金属原子とリン原子を含む化合物中の金属原子が、該添加剤に由来する金属原子であってもよい。好ましくは、金属原子とリン原子を含む化合物の金属原子は、金属水酸化物等の金属原子と同種の金属原子であり、より好ましくは、該金属水酸化物等に由来する金属原子である。
該多孔質層において、上記金属水酸化物等の粒子と金属原子とリン原子を含む化合物との存在比等は、特に限定されず、該金属原子とリン原子を含む化合物量は、少なくとも上記金属水酸化物等の粒子を結着できる量以上で、該粒子間の空隙を完全に埋めてしまう量未満であり、例えば、後述する塗布液の組成により決定される。
本発明の多孔質層には、上記した金属水酸化物等の粒子と金属原子とリン原子を含む化合物以外に、他の化合物を含有してもよい。
他の化合物としては、例えば、後述する分散剤、添加剤、反応促進剤等が挙げられ、また、これらと、上記金属水酸化物等または金属原子とリン原子を含む化合物との反応生成等も挙げられる。
本発明の多孔質層は、その表面の空隙率が、20%以下であるのが好ましく、15%以下であるのがより好ましく、10%以下であるのがさらに好ましい。該空隙率を20%以下とすると、該多孔質層の表面に存在する空隙が少なくなり、かつ、該空隙に画像記録層等の成分が入り込みにくくなって、残色現象、残膜現象の発生が抑制される。
また、該多孔質層の優れた保水性を維持するため、該表面の空隙率は、5%以上とするのが好ましい。
多孔質層の表面の空隙率の測定方法は、例えば、該多孔質層の表面を、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM、S−900、日立製作所社製)を用いて該多孔質層の表面を真上から倍率5000〜15000倍で観察して撮影する。得られた画像データ(写真)の特定の範囲(例えば、3cm×3cmの範囲)内において、空隙部分の面積割合を測定する。この作業を5〜10箇所で行い、これらの算術平均を空隙率とする。なお、観察倍率は、観測する封孔層の層厚等により適宜調整して行う。
本発明の多孔質層は、その表面の空隙率が上記範囲であれば、特に限定されないが、優れた断熱性を備えるためには、該多孔質(全体)の空隙率は30%以上であるのが好ましく、40%以上であるのがより好ましい。
該多孔質層(全体)の空隙率の測定方法は、後述する該多孔質層の層厚と乾燥後の該多孔質層の質量とから求められる。具体的には、まず、該多孔質層の密度を下記式により算出する。これには、該多孔質層の乾燥後の質量を測定し単位面積当たりの皮膜質量を求め、後述する方法により該多孔質層の層厚を測定する。
密度(g/cm)=(単位面積当たりの皮膜質量/層厚)
次に、該多孔質層の空隙率は、上記で算出された密度を基に以下の式により求められる。
空隙率(%)={1−(多孔質層の密度/D)}×100
ここで、Dは、該多孔質層の形成に用いる金属水酸化物の化学便覧による密度(g/cm)である。
本発明の多孔質層は、その層厚が、5μm以上であるのが好ましく、10μm以上であるのがより好ましく、15μm以上であるのがさらに好ましい。層厚が5μm以上であれば、該多孔質層の皮膜強度が強く耐キズ性と耐刷性に優れ、また該多孔質層の断熱性を維持できるうえ、塗布ムラを抑えられ表面粗さを調整できる。層厚が10μm以上であれば、多孔質層の耐キズ性に優れ、該多孔質層の断熱性をより高められる。該層厚の上限は、それ以上の効果が得られないためコスト上の理由で50μmであるのが好ましいが、これに限られず50μm以上としてもよい。
該多孔質層の層厚の測定方法は、まず、該多孔質層を設けた平版印刷版用支持体を折り曲げて作成した破断面を、超高分解能走査型電子顕微鏡(例えば、S−900、日立製作所社製)によって観察して撮影する。なお、観察倍率は、層厚等により適宜調整して行う。具体的には、倍率100〜10000倍であるのが好ましい。次に、得られた画像データ(写真)の該多孔質層部分の厚さを測定し、換算して求めることができる。
本発明の多孔質層の表面粗さは、上述した平版印刷版用支持体の表面粗さRの範囲になるように調整するのが好ましい。上述したように、平版印刷版用支持体の表面粗さRは、本発明の多孔質層の表面粗さとほぼ同一の値になるため、本発明の多孔質層の表面粗さを1.5μm以下にすれば、平版印刷版用支持体の表面粗さRも1.5μm以下に調整できる。
なお、本発明の多孔質層は、1層としてもよく、または、2層以上を積層(重畳)させた複数層としてもよい。複数層とする場合には、同一の多孔質層を積層させてもよく、また、異なる組成の多孔質層を積層させてもよい。
例えば、平均粒径が異なる2種以上の金属水酸化物の粒子が、それぞれ、金属原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる層を2種以上積層してなる多孔質層であってもよい。より具体的には、2種の層を積層してなる多孔質層としては、第1の金属水酸化物等の粒子が金属原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる層Iと、該第1の金属水酸化物等の粒子と異なる平均粒径を持つ第2の金属水酸化物等の粒子が金属原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる層IIとを積層してなる多孔質層が挙げられる。
この場合、積層する各層の層厚は特に限定されず、各層の層厚を一定としてもよく、異なる層厚としてもよいが、積層させた複数層全体(本発明の多孔質層)の層厚を上記範囲に調整する。
複数の層を積層して本発明の多孔質層を形成させるには、例えば、後述する塗布液を塗布する塗布工程と該塗布液を乾燥する乾燥工程を繰り返し交互に行えばよい。
本発明の多孔質層は、例えば、後述する基板上に、金属水酸化物等の粒子とリン酸とを含む塗布液を塗布して得られる。より具体的には、例えば、粒状の金属水酸化物等およびリン酸を含有する塗布液を基板に塗布する塗布工程と、該基板に塗布された塗布液を120〜500℃で加熱乾燥する乾燥工程とを含む方法である。
即ち、本発明の平版印刷版用支持体は、粒状の金属水酸化物等およびリン酸を含有する塗布液を基板に塗布し、該塗布液を120〜500℃で乾燥して得られる多孔質層を、該基板上に有する平版印刷版用支持体である。
多孔質層が形成される反応メカニズムは、詳細には分からないが、本発明者らは、以下のように考えている。金属水酸化物等が水酸化アルミニウムである場合について説明する。
水酸化アルミニウム(Al(OH))とリン酸との反応は下記式(1)で表され、該反応により生成する、AlPO・xHO、Al(HPO、AlH10等により水酸化アルミニウムの粒子同士が結着されていると考えられる。
Al(OH)+HPO → AlPO・xHO+Al(HPO+AlH10 (1)
即ち、粒状の金属水酸化物およびリン酸を含有する塗布液のpHが後述する好適範囲にあると、該酸性条件下において上記金属水酸化物の粒子の表面がわずかにリン酸と反応する。該塗布液の塗布後、好ましくは乾燥工程において、該塗布液の水が除去されリン酸の濃度が増大すると共に該塗布液および基板の温度が上昇する。そうすると、基板および金属水酸化物が、リン酸と反応し、次第に水に難溶の金属原子とリン原子を含む化合物を生成させる。ここで、金属水酸化物とリン酸との反応は比較的低温で起こり、また、上記式(1)の反応は、ガス成分が副生しないため形成される多孔質層の表面粗さに大きく影響しない。上記水に難溶の化合物が金属水酸化物の粒子同士を結着する結着剤として機能し、複数の金属水酸化物の粒子が結着した、好適量の空気をとり込んだ多孔質層が形成される。
上記水に難溶の化合物で結着された多孔質層は、好適量の空気をとり込んでいるため断熱性に優れ、また、金属水酸化物の粒子同士が該化合物により結着しているため該多孔質層の皮膜強度が強くなる。さらに、リン酸と金属水酸化物との反応は比較的低温で起こり、この反応はガス成分を副生しないため、形成される多孔質層の表面粗さを粗くすることがなく、高温乾燥に不利であるアルミニウム板を基板として用いてもアルミニウム板の軟化を抑制でき、優れた特性を持つ平版印刷版を得ることができる。
このようなメカニズムにおいて、添加剤、例えば、塩化アルミニウムを水に溶解させると微細な水酸化アルミニウムが生成し、この微細な水酸化アルミニウムはリン酸との反応性が高いため低温でも急速に反応が進行するものと推定される。
なお、このようなリン酸と金属水酸化物との反応は、「化学」、日本化学協会、第31巻第11号、p.895〜897に詳細に記載されている。
また、金属酸化物がアルミナである場合の反応メカニズム等については、上記した特開2003−145959号公報等に記載されている。
上記粒状の金属水酸化物等およびリン酸を含有する塗布液を基板に塗布する塗布工程に用いられる塗布液について説明する。
本発明においては、該塗布液には金属水酸化物等を2種以上併用する。
このとき、用いられる2種以上の金属水酸化物等は、それぞれ平均粒径が異なるものとする。平均粒径が異なる金属水酸化物等を用いることにより、平均粒径が大きな金属水酸化物等により形成される空隙部分に平均粒径が小さな金属水酸化物等が入り込み、残色現象、残膜現象の発生が抑制される。また、表面粗さを調整できる。
本発明においては、多孔質層を形成し、上記塗布液に含有される平均粒径が異なる2種以上の金属水酸化物等は、平均粒径が異なる2種以上の金属水酸化物の粒子、または、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および金属水酸化物の粒子であるのが好ましい。金属水酸化物等を少なくとも1種以上用いることにより、上記した効果を有する。
本発明においては、平均粒径が小さな金属水酸化物等の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、0.01〜5μmであるのが好ましい。この範囲であると、形成される皮膜の強度が強くなり、また多孔質層の空隙率を上記した好適な範囲に調整することが容易である。これらのより優れる点で、0.03〜3μmであるのがより好ましく、0.05〜1.5μmであるのがさらに好ましい。
平均粒径が大きな金属水酸化物等の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、平均粒径が小さな金属水酸化物等の平均粒径の2〜50倍が好ましく、3〜20倍が好ましく、4〜10倍であるのがさらに好ましい。
なお、金属水酸化物等を3種以上用いる場合には、平均粒径が最小のものと、平均粒径が最大のものとが上記範囲の平均粒径であれば、特に限定されない。
2種以上の金属水酸化物等を用いる場合には、これらの2種以上の金属水酸化物等の混合比は、特に限定されないが、例えば、平均粒径が小さな金属酸化物等より平均粒径が大きな金属酸化物等を多く配合するのが、好ましい。具体的には配合比は、例えば、平均粒径が小さな金属酸化物が、平均粒径が大きな金属酸化物等100質量部に対して50〜300質量部とするのが好ましい。
本発明においては、上記金属水酸化物等は、多孔質層が形成されたときに好適量の空気をとり込んで断熱性を向上させるため粒子状とするが、本発明の効果を奏する限り、その形状は、球状、多面体状(例えば、20面体状、12面体状等)、立方体状、4面体状、いわゆるコンペイトウ形状、板状、針状等いずれであってもよく、後述するリン酸または金属原子とリン原子を含む化合物との反応により球状になりやすく、断熱性に優れる点で、球状、多面体状、立方体状、4面体状、コンペイトウ形状が好ましく、入手が容易で断熱性により優れる点で、球状であるのが好ましい。また、これらの形状の混合物であってもよく、これらの形状を持つ中空体であってもよい。
本発明の多孔質層を形成するために用いられる塗布液に含有される金属水酸化物としては、後述するリン酸と反応して皮膜を形成するものであれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、Al(OH)、Mg(OH)、Ca(OH)等の金属水酸化物が挙げられる。これらの中でも、Al(OH)がリン酸との反応性が高いため好ましい。
金属水酸化物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記金属水酸化物の粒子として、具体的には、UFH−20(平均粒径2.0μm、アルコアケミカルズ(株)製)、Hydral1710(平均粒径1.0μm、アルコアケミカルズ(株)製)、C303(平均粒径2.5μm、住友化学工業(株)製)、C301(平均粒径1μm、住友化学工業(株)製)、C3005(平均粒径0.5μm、住友化学工業(株)製)等の市販品を利用可能である。これらの他にも、一般的に市販されているものであれば、特に制限なく使用することができる。
本発明の多孔質層を形成するために用いられる塗布液に含有される金属酸化物は、後述するリン酸と反応して皮膜を形成するものであれば、特に限定されない。例えば、「Zhurnal Prikladnoi Khimii」、Vo.38、No.7、p.1466−1472、July 1965に記載されている各金属の酸化物が挙げられる。具体的には、Al、Si、Ti、Zr、Y、Nd、La、Mg、Ca、Sr、Ba、Cr、Co、Fe、Ni、Sn、Pb、Cu、Zn、Cd、Mn等の酸化物が挙げられ、これらの中でも、Si、Mg、ZrおよびTiからなる群より選択される少なくとも1種以上の金属の酸化物または複合酸化物であるのが好ましい。
上記本発明の多孔質層を形成するために用いられる金属酸化物として、より具体的には、例えば、SiO、TiO、Al、ZrO、Y、Nd、La、MgO、CaO、SrO、BaO、MnO、CrO、Co、Fe、Mn、NiO、FeO、MnO、SnO、PbO、CuO、ZnO、CdO等の金属酸化物が挙げられる。また、例えば、SiO/Al、MgO/AlO等の上記した金属酸化物の混合酸化物が挙げられる。
さらに、複合酸化物としては、例えば、2SiO・3Al(ムライト)等が挙げられる。
上記金属酸化物の粒子として、具体的には、AKPシリーズ、AKP−Gシリーズ、HITシリーズ、AMシリーズ(住友化学工業(株)製)、ナノテック シリーズ(一般呼称:超微粒子、シーアイ化成(株))等各種アルミナ微粒子の市販品が利用可能である。
より具体的には、以下のものが挙げられる。
SiO(トワナライトFTB、平均粒径12μm、豊和直(株)製;ケイ砂SP−80、平均粒径5.5μm、三栄シリカ(株)製;SI−0010、平均粒径10μm、添川理化学(株)製試薬;;ナノテック シリーズ(一般呼称:超微粒子)SiO、平均粒径0.05μm、シーアイ化成(株)製;SO−C1(球状シリカ)、平均粒径0.2〜0.3μm、(株)アドマテックス製;SO−C3(球状シリカ)、平均粒径0.9μm、(株)アドマッテクス製)、イタリアパミス、XXX、平均粒径27μm、イタリアPUMEX社製)、Al(AKP−50、AKP−30、ともに平均粒径0.3μm、住友化学工業製)、;AM−27、平均粒径27μm、住友化学工業(株)製)、Al(HIT50、平均粒径0.25μm、住友化学工業(株)製)、Al(HIT100、平均粒径0.1μm、住友化学工業(株)製)、MgO(宇部マテリアルズ2000A、平均粒径0.2μm、宇部興産(株)製;MG−0076、平均粒径2mm、添川理化学(株)製試薬)、ZrO(商品名ジルコニア被覆球状シリカ、平均粒径0.7μm、(株)アドマテックス製;ナノテック シリーズ(一般呼称:超微粒子)ZrO、平均粒径0.03μm、シーアイ化成(株)製;ZR−0049、平均粒径8μm、添川理化学(株)製試薬)、TiO(ルチル、TI−0057、平均粒径1〜2μm、添川理化学(株)製試薬)、SiO/Al(ナノテック シリーズ(一般呼称:超微粒子)SiO/Al、平均粒径0.03μm、シーアイ化成(株)製)、MgO/Al(ナノテック シリーズ(一般呼称:超微粒子)MgO/Al、平均粒径0.05μm、シーアイ化成(株)製)、2SiO・3Al(混合酸化物ムライト(粉末)、平均粒径0.8μm、共立マテリアル(株)製;AL−0111、平均粒径5mm、添川理化学(株)製試薬;商品名アルミナ−シリカ複合酸化物、平均粒径0.6μm、(株)アドマテックス製)等が挙げられる。
また、これら上記した他にも、一般的に市販されているものであれば、特に制限なく使用することができる。
これらの粒子は、所望により粉砕等により平均粒径を調整して用いてもよい。粉砕方法としては、平均粒径を調整できるものであれば、特に限定されないが、例えば、HD A−5ポットミル(YTZ−0.2、ニッカトー(株)製)等のミルを用いて、100rpm程度の回転数で粉砕時間を1〜100時間に変更して平均粒径を調整する方法、ペイントシェーカを用いてガラスビーズ(平均粒径3mm)の水スラリー中で粉砕する方法等を挙げることができる。金属酸化物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の多孔質層および上記塗布液には、上記した金属水酸化物等以外に他の金属の水酸化物を含有していてもよい。他の金属の水酸化物としては、例えば、上記例示した以外の金属等の水酸化物が挙げられる。また、上記金属水酸化物等以外に他の金属の酸化物を含有していてもよい。他の金属の酸化物としては、例えば、上記例示した以外の金属等の水酸化物が挙げられる。
上記金属水酸化物等以外に他の金属の水酸化物または他の金属の酸化物を用いる場合の、本発明の多孔質層を形成するために用いられる金属水酸化物等の含有率は、特に限定されないが、上記他の金属の水酸化物等を含めた全金属水酸化物(金属酸化物を含む)の10〜100質量%であるのが好ましく、40〜100質量%であるのがより好ましい。
平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および金属水酸化物の粒子の組み合わせとしては、比重が同じ程度のものを組み合わせるのが、形成される多孔質層が2層に分離しにくいため好ましい。具体的には、水酸化アルミニウムとアルミナの組み合わせが好ましい。
塗布液における上記金属水酸化物等の含有量は、所望する多孔質層の空隙率、層厚、表面粗さによって適宜調整されるものであるが、一般的には、5〜60質量%であるのが好ましく、20〜50質量%であるのが好ましい。
また、該金属水酸化物の表面を溶解させるように、後述するリン酸との反応量(即ち、金属原子とリン原子を含む化合物の生成量)を計算して、上記金属水酸化物等の含有量を調整することもできる。該金属原子とリン原子を含む化合物の生成量の調整は、例えば、用いる金属水酸化物等の表面積を一定にすることにより可能になると考えられる。
即ち、平均粒径が異なる金属水酸化物等を用いて別の基板に多孔質層を形成させる場合、金属原子とリン原子を含む化合物の生成量を一定にするには、以下の方法により金属水酸化物等の表面積を一定にする。
例えば、粒子A:平均粒子半径r、密度d、質量W
粒子B:平均粒子半径r、密度d、質量Wのとき、
粒子Aの表面積Sは、3W/(r×d)、粒子Bの表面積Sは、3W/(r×d)であるから、これらの表面積SおよびSを一定とすると、粒子Bの質量(使用量)Wは、下記式で求められる。
=[(r×d)/(r×d)]×W
なお、ここで、粒子Aおよび粒子Bの各物性は、2種以上の金属酸化物等の合計量としたときのものである。
本発明の多孔質層を形成するために用いられる塗布液に含有されるリン酸の種類、濃度等は特に限定されず、一般的なもの(例えば、市販されている85%リン酸等)を用いることができる。
また、本発明においては、リン酸の代わりに、水溶液にしたときにリン酸成分が溶出するリン酸系化合物、例えば、ホスフィン酸、亜リン酸、二亜リン酸、次リン酸、リン酸(オルトリン酸等)、二リン酸、三リン酸、メタリン酸、ペルオキソリン酸、オルトリン酸、縮合リン酸等のオキソ酸、これらの酸の水素原子の1〜3個をナトリウム、カリウム塩等の金属原子で置換した塩等も用いることができる。
塗布液におけるリン酸の含有量としては、特に限定されないが、0.05〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜17質量%であるのがより好ましく、0.3〜15質量%であるのがさらに好ましい。
リン酸の含有量が、0.05質量%未満であると多孔質層の皮膜強度が弱くなる場合があり、20質量%超であると多孔質層の空隙率が低くなる場合または表面粗さが大きくなりすぎる場合がある。
上記金属水酸化物とリン酸の好ましい組み合わせは、例えば、Al(OH)、Al、Mg(OH)、Ca(OH)等の金属水酸化物等と、リン酸、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)等である。
上記塗布液には、金属水酸化物等を均一に分散させるための分散剤、添加剤、反応促進剤等を含有させるのが好ましい。
分散剤としては、特に限定されないが、一般的に金属水酸化物等の分散剤として知られている、クエン酸、ヘキサメタリン酸ソーダ等が使用できる。塗布液中の含有量は特に限定されないが、0.1〜1質量%、好ましくは0.2〜0.8質量%、さらに好ましくは0.2〜0.5質量%の範囲である。
添加剤、反応促進剤としては、特に限定されないが、例えば、塩化アルミニウム等が挙げられる。また、該添加剤等の含有量(使用量)も、特に限定されず、添加剤等を用いなくてもよい。該添加剤等の含有量は、所望する多孔質層の層厚、空隙率、表面粗さ等により適宜変更できるが、塩化アルミニウムの含有量は、少ない方が水との反応により副生する塩酸ガスの発生量を少なくできる点で好ましい。例えば、25質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下であるのがより好ましい。
該塗布液の溶剤は、水であるのが好ましい。
上記塗布液は、上記した2種以上の金属水酸化物等の粒子、リン酸、必要により分散剤、添加剤等を水に分散または溶解させて調製する。
好ましくは、分散剤を含む水溶液に、2種以上の金属水酸化物等の粒を投入して分散させ、均一に分散した後に該水溶液にリン酸および必要により添加剤を投入して撹拌して調製する。
このようにして調製した塗布液を、後述する基板に、塗布して塗布工程が完了する。
塗布方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
次に、該基板に塗布された塗布液を、120〜500℃で加熱乾燥する乾燥工程を行う。
該乾燥方法は、特に限定されず、一般的に用いられる方法を選択できる。また乾燥温度は、120〜500℃であるのが好ましい。乾燥温度は、用いる基板に応じて好適な温度に調整する。例えば、基板にアルミニウム基板を用いる場合には、該乾燥温度は、120〜220℃であるのが好ましい。この温度範囲であれば、アルミニウム板の軟化を抑制でき、優れた特性を持つ平版印刷版を得ることができる。また、基板にアルミニウム基板以外の金属基板を用いる場合には、該金属基板の軟化という問題がないため、乾燥温度は特に限定されず、120〜500℃であるのが好ましい。例えば、ステンレス鋼板等の鉄系基板の場合には、200〜400℃であるのがより好ましい。さらに、基板として、アルミニウムで被覆した紙基板、樹脂基板等を用いる場合には、120〜200℃であるのが好ましい。
上記乾燥工程を行うことにより、上記金属水酸化物等の粒子の表面をリン酸と反応させることができ、該金属水酸化物等の粒子をその平均粒径を大きく減じさせることなく残存させることができる。
乾燥時間は、塗布液の水を除去できる程度であれば、特に限定されないが、一般的には、10〜300秒であるのが好ましい。本発明者らは、多孔質層の層厚と乾燥時間を任意に組み合わせて選択し、形成される多孔質層の引っ掻き強度(耐キズ性)と、光学顕微鏡によるひび割れ状態を検討し、上記乾燥時間の中でも、多孔質層の層厚(μm)に応じて、以下のように乾燥時間を調整するのがより好ましいことを知見した。これにより、皮膜の形成が確実になり、形成された皮膜にひび割れ等の欠陥の発生を防止できる。即ち、多孔質層の層厚が20μm以下の場合は180秒、層厚が21〜40μmの場合は240秒、層厚が41〜80μmの場合は300秒である。
上記工程を行うことにより、本発明の多孔質層を基板上に形成させることができるが、上記工程以外に他の工程を行ってもよい。
上記したように本発明の多孔質層は、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および/または金属水酸化物の粒子が、金属原子とリン原子を含む化合物によって結着してなるため、多孔質層が本来有する特性を損なわず、該多孔質層(表面)の空隙率が抑えられ、残色現象、残膜現象の発生を抑制できる。
また、該多孔質層は、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および/または金属水酸化物の粒子ならびにリン酸を含有する塗布液を基板に塗布し、該塗布液を乾燥させて形成できるため、製造工程が簡易でありコストの削減ができる。また、金属水酸化物を用いることで、多孔質層の層厚を厚くできるため、例えば、金属基板自体の板厚を薄くでき、さらなる製造コストの削減が可能となる。
<封孔層>
本発明においては、上記本発明の多孔質層の上に、封孔層を設けるのが好ましい。
本発明の多孔質層は、空隙率を低下させているが、依然としてその表面に多数の細孔を有している。したがって、その空隙率によっては、該多孔質層の細孔に画像記録層成分である染料等が入り込んで現像処理により除去されずに残ってしまう残色現象、残膜現象の原因となってしまう場合がある。
そのため、好ましくは、画像記録層を設ける前に、多孔質層の細孔を封じる封孔処理を行う。つまり、本発明の平版印刷版用支持体として、上記本発明の多孔質層等の上に、封孔層を設けてなる平版印刷版用支持体であるのが好ましい。
封孔処理は、上記多孔質層が設けられた基体を、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、アルカリ金属化合物を含む水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の方法に従って行うことができる。
本発明においては、上記多孔質層が設けられた基体を、アルカリ金属化合物を含む水溶液に浸せき処理して封孔層を設けるのが好ましい。
つまり、本発明者らは、本発明の多孔質層を形成する金属水酸化物等として水酸化アルミニウムやアルミナ等のアルミニウム化合物を用いて得られる多孔質層を、アルカリ金属化合物を含む水溶液に浸せきさせると、アルミニウム化合物の水和物が生成し、該水和物により該多孔質層の表面に存在する空隙部分のみを効果的に封孔でき空隙率を下げられることを見出した。
したがって、封孔処理として、上記多孔質層が設けられた基体をアルカリ金属化合物を含む水溶液に浸せき処理すると、残色現象、残膜現象の発生をより効果的に抑制できる。
水溶液に含まれるアルカリ金属化合物は、特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等の水酸化アルカリ、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ等が挙げられる。これらの中でも、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸リチウムが空隙の封孔により有効である点で好ましく、水酸化リチウムが空隙の封孔に特に有効である点で好ましい。
アルカリ金属化合物の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.001〜10質量%であり、より好ましくは0.005〜10質量%であり、特に好ましくは0.01〜2質量%である。
水溶液の温度は、室温〜約100℃前後までが好ましく、より好ましくは40〜100℃前後であり、特に好ましくは50〜98℃である。浸せき処理時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜20分が好ましく、より好ましくは3〜15分であり、特に好ましくは5〜15分である。
本発明の多孔質層の表面の空隙率は、上記封孔処理により、15%以下に調整されるのが好ましく、10%以下に調整されるのがより好ましい。これにより、残色現象、残膜現象の発生をより効果的に抑制できる。
該空隙率の測定方法は、上記した多孔質層の表面の空隙率の測定方法と同様である。
封孔層の層厚は、上記空隙率に調整できる膜厚であれば特に限定されない。
なお、該処理により形成される封孔層は多孔質層の全面を覆ってなくてもよく、該処理により生成するアルミニウム化合物の水和物を含む部分を封孔層という。
上記多孔質層等の上に、上記封孔層を形成させることで本発明の平版印刷版用支持体として、より好ましいものが得られる。該支持体は、上記多孔質層等の特性、好ましくは上記多孔質層等と封孔層の特性を保持し、さらに、表面の空隙率が低く、耐キズ性、耐刷性に優れ、残色現象、残膜現象の発生をより効果的に抑制できる。
<基板>
本発明の平版印刷版用支持体に用いられる基板としては、特に限定されず、例えば、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分として微量の異元素を含むアルミニウム合金板(本発明においてこれらを「アルミニウム基板」という。)、アルミニウム以外の金属元素を主成分とする各種金属基板、アルミニウムで被覆(ラミネートまたは蒸着)した紙基板、樹脂基板または金属基板等が挙げられる。
アルミニウムを主成分として微量の異元素を含むアルミニウム合金板としては、後述するアルミニウム合金板が好ましく挙げられ、アルミニウム以外の金属元素を主成分とする各種金属基板としては、可撓性を有し高強度で安価であるステンレス鋼板、ニッケル板、銅板、マグネシウム合金板等が好ましく挙げられる。
アルミニウムで被覆した金属基板としては、上記合金板および各種金属板をアルミニウム原子またはアルミニウム酸化物等をスパッタリング、ラミネート等の方法により薄層にして被覆したものが好ましく挙げられる。
アルミニウムで被覆した紙基板としては、特に限定されない。
アルミニウムで被覆した樹脂基板としては、特に限定されず、該基板に用いられる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
被覆に用いられる金属酸化物またはその金属原子は、上記多孔質層等の形成に用いられる金属酸化物またはその金属原子と同種であるのがより好ましい。
これらの中でも、本発明に用いる基板として、加熱による軟化の問題がない上記各種金属基板等を、上記多孔質層の形成に用いられる金属酸化物またはその金属原子と同種の金属原子または金属酸化物をスパッタリング、ラミネート等の方法により薄層にして被覆したもの、例えば、アルミニウムで被覆した紙基板、樹脂基板または金属基板が好ましく、また、防錆性に優れ、リサイクル性が高く、比重が小さいく取扱性に優れ、安価なアルミニウム基板も好ましい。
上記各種金属板を被覆した基板は、上記したステンレス鋼板、ニッケル板等を、通常行われる条件で、スパッタリング処理して被覆すればよく、また、ラミネート処理等して被覆すればよい。
該被覆の膜厚は、特に制限されないが、一般的には、約10nm以上であればよい。好ましくは10〜100nmであり、より好ましくは25〜50nmである。ラミネート処理等して被覆する場合の被覆の膜厚は、特に制限されないが、一般的には、約1μm以上であればよい。好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜50μmである。
一般的に、被覆の膜厚が薄いと該各種金属板を十分に被覆できず本発明の多孔質層との密着性に劣る場合があり、一方、膜厚が厚いと高価になる。したがって、本発明においては、これらの観点から、適宜膜厚を選択する。
本発明に用いる各種金属板、これらを被覆した基板等は、市販品を用いてもよい。
次に、本発明に用いる基板として好ましいアルミニウム基板(アルミニウム板)について説明する。
本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JIS A3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
JIS1050材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号および特開昭62−140894号の各公報に記載されている。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載された技術も知られている。
JIS1070材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号および特開平8−92679号の各公報に記載されている。
Al−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号および特公平6−37116号の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
Al−Mn系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭60−230951号、特開平1−306288号および特開平2−293189号の各公報に記載されている。また、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号、特開平4−226394号の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記載されている。
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭62−86143号公報および特開平3−222796号公報に記載されている。また、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号、特開平1−293350号の各公報、欧州特許第223,737号、米国特許第4,818,300号、英国特許第1,222,777号の各明細書等にも記載されている。
Al−Zr系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭63−15978号公報および特開昭61−51395号公報に記載されている。また、特開昭63−143234号、特開昭63−143235号の各公報等にも記載されている。
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.6mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.6mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件については、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている。
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号、特開平4−254545号の各公報等に記載されている。
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその最終圧延工程において、積層圧延、転写等により凹凸を付けて用いることもできる。
本発明に用いられるアルミニウム板は、連続した帯状のシート材または板材である。即ち、アルミニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
本発明に用いる基板の板厚は、特に限定されないが、約0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのがさらに好ましい。
<表面処理>
本発明の平版印刷版用支持体は、上記基板の上に本発明の多孔質層を設けてなるが、必要により、平版印刷版の製造に一般的に行われる基板の表面処理(例えば、各種粗面化処理、陽極酸化処理等)を行うこともできる。本発明においては、表面処理等の製造コストを削減でき、操作性に優れる点で、基板の表面処理、特に粗面化処理は行わないのが好ましい。
本発明の平版印刷版用支持体は、塗布液の塗布、乾燥という簡易な工程で作製でき、表面処理を施さなくても、感度、耐汚れ性および耐刷性に優れるため、また、本発明の多孔質層の層厚を厚くでき基板を薄くできるため、粗面化処理を施されてなる従来の平版印刷版用支持体に対して、製造コストの大幅な削減ができる。
また、本発明の平版印刷版用支持体は、陽極酸化皮膜を形成させないため、該膜形成に必要な電解処理(多大な電気量)を必要とせず、コスト低減が可能となる。
[平版印刷版原版]
上記した本発明の平版印刷版用支持体には、以下に例示する感光層、感熱層等の画像記録層を設けて本発明の平版印刷版原版とすることができる。即ち、上記多孔質層等、好ましくはさらに封孔層を有する支持体上に、感熱型の画像記録層を設けることで、平版印刷版原版を得ることができる。この構成によれば、高い耐キズ性を持つ皮膜を有し、平版印刷版としたときの耐汚れ性と耐刷性に優れ、かつ、現像処理後の残色現象、残膜現象の発生が抑制される平版印刷版原版が得られる。
本発明においては、上記したように、上記基板上に形成された多孔質層の表面の空隙率を低く設定しているため、画像記録層の種類等は特に限定されず、いかなるタイプの画像記録層でも用いることができる。
<画像記録層>
画像記録層には、感光性組成物が用いられる。
本発明に好適に用いられる感光性組成物としては、例えば、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジ型感光性組成物(以下、この組成物およびこれを用いた画像記録層について、「サーマルポジタイプ」という。)、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルネガ型感光性組成物(以下、同様に「サーマルネガタイプ」という。)、光重合型感光性組成物(以下、同様に「フォトポリマータイプ」という。)、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有するネガ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルネガタイプ」という。)、キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルポジタイプ」という。)、特別な現像工程を必要としない感光性組成物(以下、同様に「無処理タイプ」という。)が挙げられる。以下、これらの好適な感光性組成物について説明する。
<サーマルポジタイプ>
<感光層>
サーマルポジタイプの感光性組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルポジタイプの画像記録層においては、光熱変換物質が赤外線レーザ等の光のエネルギーを熱に変換し、その熱がアルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用を効率よく解除する。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、分子中に酸性基を含有する樹脂およびその2種以上の混合物が挙げられる。特に、フェノール性ヒドロキシ基、スルホンアミド基(−SONH−R(式中、Rは炭化水素基を表す。))、活性イミノ基(−SONHCOR、−SONHSOR、−CONHSOR(各式中、Rは上記と同様の意味である。))等の酸性基を有する樹脂がアルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。
とりわけ、赤外線レーザ等の光による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましく、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂)等のノボラック樹脂が好適に挙げられる。
更に、特開2001−305722号公報(特に[0023]〜[0042])に記載されている高分子化合物、特開2001−215693号公報に記載されている一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物、特開2002−311570号公報(特に[0107])に記載されている高分子化合物も好適に挙げられる。
光熱変換物質としては、記録感度の点で、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好適に挙げられる。染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)が挙げられる。中でも、シアニン染料が好ましく、とりわけ特開2001−305722号公報に記載されている一般式(I)で表されるシアニン染料が好ましい。
サーマルポジタイプの感光性組成物中には、溶解阻止剤を含有させることができる。溶解阻止剤としては、例えば、特開2001−305722号公報の[0053]〜[0055]に記載されているような溶解阻止剤が好適に挙げられる。
また、サーマルポジタイプの感光性組成物中には、添加剤として、感度調節剤、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料等の化合物、塗布性および処理安定性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。これらについては、特開2001−305722号公報の[0056]〜[0060]に記載されているような化合物が好ましい。
上記以外の点でも、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている感光性組成物が好ましく用いられる。
また、サーマルポジタイプの画像記録層は、単層に限らず、2層構造であってもよい。
2層構造の画像記録層(重層系の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、光熱変換物質を含有する。光熱変換物質としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
<中間層>
サーマルポジタイプの画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が好適に挙げられる。
<その他>
サーマルポジタイプの画像記録層の製造方法および製版方法については、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<サーマルネガタイプ>
サーマルネガタイプの感光性組成物は、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルネガタイプの画像記録層は、赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の感光層である。
<重合層>
サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、重合型の画像記録層(重合層)が好適に挙げられる。重合層は、光熱変換物質と、ラジカル発生剤と、硬化性化合物であるラジカル重合性化合物と、バインダーポリマーとを含有する。重合層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱によりラジカル発生剤が分解してラジカルが発生し、発生したラジカルによりラジカル重合性化合物が連鎖的に重合し、硬化する。
光熱変換物質としては、例えば、上述したサーマルポジタイプに用いられる光熱変換物質が挙げられる。特に好ましいシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の[0017]〜[0019]に記載されているものが挙げられる。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩が好適に挙げられる。特に、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されているオニウム塩が好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーが好適に挙げられる。水または弱アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが好適に挙げられる。中でも、アリル基、アクリロイル基等の不飽和基またはベンジル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れている点で好適である。
ラジカル重合性化合物およびバインダーポリマーについては、特開2001−133969号公報の[0036]〜[0060]に詳細に記載されているものを用いることができる。
サーマルネガタイプの感光性組成物中には、特開2001−133969号公報の[0061]〜[0068]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤)を含有させるのが好ましい。
重合層の製造方法および製版方法については、特開2001−133969号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<酸架橋層>
また、サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、酸架橋型の画像記録層(酸架橋層)も好適に挙げられる。酸架橋層は、光熱変換物質と、熱酸発生剤と、硬化性化合物である酸により架橋する化合物(架橋剤)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうるアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する。酸架橋層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱により熱酸発生剤が分解して酸が発生し、発生した酸により架橋剤とアルカリ可溶性高分子化合物とが反応し、硬化する。
光熱変換物質としては、重合層に用いられるのと同様のものが挙げられる。
熱酸発生剤としては、例えば、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の熱分解化合物が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物;N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
<フォトポリマータイプ>
光重合型感光性組成物は、付加重合性化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する。
付加重合性化合物としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物が好適に挙げられる。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、例えば、モノマー、プレポリマー、これらの混合物等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
また、付加重合性化合物としては、ウレタン系付加重合性化合物も好適に挙げられる。
光重合開始剤としては、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を、使用する光源の波長により適宜選択して用いることができる。例えば、特開2001−22079号公報の[0021]〜[0023]に記載されている開始系が好適に挙げられる。
高分子結合剤は、光重合型感光性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、画像記録層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が用いられる。そのような有機高分子重合体としては、特開2001−22079号公報の[0036]〜[0063]に記載されているものが好適に挙げられる。
フォトポリマータイプの光重合型感光性組成物中には、特開2001−22079号公報の[0079]〜[0088]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤)を含有させるのが好ましい。
また、フォトポリマータイプの画像記録層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール、その共重合体が挙げられる。
更に、特開2001−228608号公報の[0124]〜[0165]に記載されているような中間層または接着層を設けるのも好ましい。
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物は、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有する。中でも、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物;p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体が挙げられる。具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物には、添加剤として、特開平7−281425号公報の[0014]〜[0015]に記載されている焼出し剤、染料、塗膜の柔軟性および耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物、塗布性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。
コンベンショナルネガタイプの感光層の下には、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けるのが好ましい。
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物は、キノンジアジド化合物を含有する。中でも、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂が挙げられる。
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物には、添加剤として、特開平7−92660号公報の[0024]〜[0027]に記載されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や、特開平7−92660号公報の[0031]に記載されているような塗布性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。
コンベンショナルポジタイプの感光層の下には、上述したコンベンショナルネガタイプに好適に用いられる中間層と同様の中間層を設けるのが好ましい。
<無処理タイプ>
無処理タイプの感光性組成物には、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、スルホン酸発生ポリマー含有型等が挙げられる。これらはいずれも光熱変換物質を含有する感熱型である。光熱変換物質は、上述したサーマルポジタイプに用いられるのと同様の染料が好ましい。
熱可塑性微粒子ポリマー型の感光性組成物は、疎水性かつ熱溶融性の微粒子ポリマーが親水性高分子マトリックス中に分散されたものである。熱可塑性微粒子ポリマー型の画像記録層においては、露光により発生する熱により疎水性の微粒子ポリマーが溶融し、互いに融着して疎水性領域、即ち、画像部を形成する。
微粒子ポリマーとしては、微粒子同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散しうるものがより好ましい。具体的には、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号および同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。中でも、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸メチルが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーとしては、例えば、ポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものが挙げられる。
微粒子ポリマーは、反応性官能基を有するのが好ましい。
マイクロカプセル型の感光性組成物としては、特開2000−118160号公報に記載されているもの、特開2001−277740号公報に記載されているような熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセル型が好適に挙げられる。
スルホン酸発生ポリマー含有型の感光性組成物に用いられるスルホン酸発生ポリマーとしては、例えば、特開平10−282672号公報に記載されているスルホン酸エステル基、ジスルホン基またはsec−もしくはtert−スルホンアミド基を側鎖に有するポリマーが挙げられる。
無処理タイプの感光性組成物に、親水性樹脂を含有させることにより、機上現像性が良好となるばかりか、感光層自体の皮膜強度も向上する。親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するもの、親水性のゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。
無処理タイプの画像記録層は、特別な現像工程を必要とせず、印刷機上で現像することができる。無処理タイプの画像記録層の製造方法および製版印刷方法については、特開2002−178655号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
本発明においては、これらの中でも、ヒートモード型平版印刷版原版に用いられる、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプおよび無処理タイプの画像記録層が好ましい。
<オーバーコート層>
本発明の平版印刷版原版においては、親油性物質による感熱層表面の汚染防止のため、上記画像記録層上に、水溶性のオーバーコート層を設けることができる。本発明に使用される水溶性オーバーコート層は印刷時容易に除去できるものが好ましく、水溶性の有機高分子化合物から選ばれた樹脂を含有する。
水溶性の有機高分子化合物としては、塗布乾燥によってできた被膜がフィルム形成能を有するもので、具体的には、例えば、ポリ酢酸ビニル(ただし、加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸およびそのアルカリ金属塩あるいはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリルアミドおよびその共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドンおよびその共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体およびそのアルカリ金属塩あるいはアミン塩、アラビアガム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)およびその変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。
また、オーバーコート層には、上記した光熱変換剤のうち水溶性のものを添加してもよい。さらに、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等の非イオン系界面活性剤を添加することができる。
オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜2.0g/mであるのが好ましい。この範囲内で、機上現像性を損なわず、指紋付着汚れ等の親油性物質による感熱層表面の良好な汚染防止ができる。
<バックコート>
このようにして、本発明により得られる平版印刷版用支持体上に各種の画像記録層を設けて得られる本発明の平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層を設けることができる。
[製版方法(平版印刷版の製造方法)]
本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
上記露光の後、画像記録層がサーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、コンベンショナルネガタイプ、コンベンショナルポジタイプおよびフォトポリマータイプのいずれかである場合は、露光した後、現像液を用いて現像して平版印刷版を得るのが好ましい。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液も好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできる。
実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液を用いて現像する平版印刷版原版の処理方法を用いると、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いて現像する場合における問題、即ち、SiOに起因する固形物が析出しやすいこと、現像液の廃液を処理する際の中和処理においてSiOに起因するゲルが生成すること等の問題の発生を防止することができる。
本発明の平版印刷版原版は、皮膜強度が強く耐キズ性と断熱性に優れ、その表面の空隙率が低い本発明の多孔質層を設けた平版印刷版用支持体上に、上記画像記録層を設けてなる平版印刷版原版であるため、感度に優れ、また、平版印刷版としたときの優れた耐汚れ性および耐刷性を有するとともに、現像処理後の残色現象、残膜現象の発生をより効果的に抑制できる。さらに、本発明の平版印刷版用支持体、平版印刷版原版および平版印刷版は、製造コストを削減できる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.平版印刷版用支持体の作製
<多孔質層塗布液の調製>
第1表に示す組成の各塗布液C1〜C3を以下の方法により調製した。
即ち、適当量の水に分散剤としてクエン酸を0.1g投入し、しばらく攪拌した後、第1表に示す金属水酸化物および/または金属酸化物を該表に示す使用量(g)に従って添加し、超音波分散装置(超音波ホモジナイザ、VC−130、SONICS(株)製)およびホモジナイザ(オートセルマスタ、CM−200、アズワン(株)製)を使用して、回転数10000rpmで10分程度処理して金属水酸化物および/または金属酸化物を均一に分散させた。
その後、リン酸(85%)5.4gおよび反応促進剤(塩化アルミニウム)8.0gをそれぞれ添加し、さらに水を投入して、塗布液全体の質量を100gに調整し、各塗布液C1〜C3を得た。
第1表に示す金属水酸化物および金属酸化物は、市販品をそのまま用いた。
具体的には、塗布液C1およびC3に用いた金属水酸化物は、水酸化アルミニウム(UFH−20、平均粒径2μm、アルコアケミカル(株)製)であり、塗布液C1およびC2に用いた金属酸化物は、アルミナ(AKP−30、平均粒径0.3μm、住友化学工業(株)製)、および、アルミナ(ナノテック シリーズ(一般呼称:超微粒子)Al、平均粒径0.05μm、Nanotech(株)製 シーアイ化成(株)製)である。
なお、第1表中、「−」は対応する欄の金属水酸化物または金属酸化物を用いていないことを示す。
Figure 2005125543
<基板の作製>
(基板1)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(JIS1050材(住友軽金属社製))を、液温70℃のカセイソーダ水溶液(濃度26%)中に10秒間浸せきした後水洗し、さらに、液温60℃の硫酸(濃度36%)中に60秒浸せきし水洗して、アルカリ脱脂処理して、アルミニウム基板1を作製した。
(基板2)
紙厚180μmの上質紙(王子製紙(株)製)に、多用途ボンド(コニシ(株)製)を接着層厚50μmとなるように塗布し、さらに厚さ10μmのアルミニウム箔(住友軽金属(株)製)を積層し、ラミネーターDX−700(TOLAMI製)を用いて、アルミニウムをラミネートした紙基板2を作製した。
(基板3)
厚さ220μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に、3000DXF(セメダイン(株)製)を接着層厚10μmとなるように塗布し、さらに厚さ10μmのアルミニウム箔(住友軽金属(株)製)を積層し、ラミネーターDX−700(TOLAMI製)を用いて、アルミニウムをラミネートしたPET基板3を作製した。
(基板4)
厚さ240μmの鉄鋼板(神戸製鋼(株))に、真空度10−6Torr、基板温度250℃の条件で最表層に99.9%のアルミニウムを蒸着して、基板4を作製した。
<平版印刷版用支持体の作製>
(実施例1〜21および比較例1)
第3表に示す基板と塗布液の組み合わせで、該基板に、塗布液を市販のワイヤーバーで、乾燥後の多孔質層の層厚が第3表に示す層厚になるように塗布し、第3表に示す乾燥温度で乾燥して、多孔質層を形成させた。
なお、乾燥後の多孔質層の層厚の調整は、市販のワイヤーバーのワイヤー太さを1.6番(塗布量約3cc/m)から40番(塗布量約75cc/m)まで変化させ、所望の層厚が得られるワイヤー太さを選択して行った。
また、乾燥時間は、多孔質層の層厚(μm)によって以下の時間にした。
層厚が20μm以下の場合は3分、層厚が50μmの場合は5分とした。
続いて、第2表に示す組成のアルカリ金属化合物を含有する水溶液に、第2表に示す封孔処理条件で、多孔質層が形成された基板を浸せきして封孔処理を施し、乾燥(温度140℃、90秒間)して、封孔層を形成させ、平版印刷版用支持体を得た。
Figure 2005125543
2.多孔質層および封孔層の評価
<多孔質層の表面の空隙率>
該多孔質層の表面の空隙率の測定は、該多孔質層の表面を高分解能走査型電子顕微鏡(S−900、日立製作所社製)を用いて該多孔質層の表面を真上から倍率10000倍で観察して撮影した。得られた画像データ(写真)の3cm×3cmの範囲内において、空隙部分の面積割合を測定した。この作業を5箇所で行い、これらの算術平均を空隙率とした。結果を第3表に示す。
<封孔処理後の空隙率>
封孔処理後の空隙率も、上記と同様にして算出した。結果を第3表に示す。
<耐キズ性>
上記実施例1〜21および比較例1で得られた各平版印刷版用支持体の多孔質層について、以下の方法で耐キズ性を評価した。その結果を第3表に示す。
即ち、多孔質層を引っ掻き試験して評価した。
引っ掻き試験は、連続加重式引っ掻き強度試験器SB62 TYPE18(新東科学(株)製)を用いて、サファイヤ針0.4mmφ、針の移動速度10cm/秒の条件下、加重を順に、10g、20g、25g、30g、50g、80g、100g、150gに変化させて試験した。評価は、目視で多孔質層にキズが認められた加重値で行った。
該加重値が、50g以上である場合を「○」、30gである場合を「△」、25g以下である場合を「×」で示した。
<平版印刷版用支持体の表面粗さRの測定>
実施例1〜21および比較例1で得られた各平版印刷版用支持体について、触針式粗さ計(sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均粗さRを5回測定し、その平均値を平均粗さとした。その結果を第3表に示す。2次元粗さ測定の条件を以下に示す。
<測定条件>
カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
3.平版印刷版原版の作製
上記実施例1〜21および比較例1で得られた、各平版印刷版用支持体上に、以下の組成を有する感光液塗布液を乾燥後の皮膜量が1.0g/mになるように塗布したのち、TABAI社製、PERFECT OVEN PH200にてWind Controlを7に設定して140℃で50秒間乾燥し、サーマルポジタイプの画像記録層を持つ平版印刷版原版を得た。
(感光液塗布液の組成)
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量3500、未反応クレゾール0.5質量%含有) 0.427g
・下記の合成方法により得られるシロキサン構造含有アルカリ可溶性樹脂(F−1) 0.047g
・特開平11−288093号公報記載の特定の共重合体1 2.37g
・下記式で表されるシアニン染料A 0.155g
・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)ベンゼン 0.03g
・ジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート テトラヒドロ無水フタル酸
0.19g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にしたもの 0.05g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176PF、大日本インキ化学工業(株)製) 0.035g
・フッ素系界面活性剤(メガファックMCF−312、大日本インキ化学工業(株)製) 0.05g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・ビス−p−ヒドロキシフェニルスルホン 0.063g
・ステアリル酸n−ドデシル 0.06g
・γ−ブチロラクトン 13g
・メチルエチルケトン 24g
・1−メトキシ−2−プロパノール 11g
(シロキサン構造含有アルカリ可溶性樹脂(F−1)の合成)
クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量=5200)120gをメタノール400mLに溶解し、ナトリウムメトキシド5.4gを加え、30分間攪拌した。メタノールを減圧留去し、テトラヒドロフラン400mLを加え、溶媒を置換した。エポキシ型末端反応性シリコーンMCR−E11((株)チッソ製)17gを加え、6時間、加熱、還流した。反応液を室温まで冷却し、水8000mLに注ぎ込み、分離物をろ取、水洗、乾燥することによりシロキサン構造含有アルカリ可溶性樹脂(F−1)132gを得た。
Figure 2005125543
4.平版印刷版原版および平版印刷版の評価
<耐汚れ性>
上記で得られた平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製TrendSetter3244VFSを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10W、版面エネルギー200mJ/cmで画像状に描き込みを行った。露光後、富士写真フイルム(株)製現像液DT−1(1:8で希釈したもの)および富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFP2W(1:1で希釈したもの)を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温30℃、現像時間12秒にて現像した(このときの現像液の電導度は45mS/cmであった。)。
得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、50枚印刷後、印刷機を一時停止させて、平版印刷版を印刷機から取り外し、該平版印刷版を印刷機本体の印刷済みの紙出口から約2m離れた位置に25℃、40RH%の条件下1時間放置し、再度印刷機に取り付けて、印刷を再開し、50枚印刷後、印刷機のブランケット部分のインキを日東電工製PETテープにて写し取り、非画像部のインキによる汚れ具合を目視にて、以下の基準により評価した。結果を第3表に示す。
評価基準は、汚れの発生が確認できない場合から順に、○、○△、△、△×、×の5段階で評価した。
<残色の発生>
上記で得られた平版印刷版原版をCreo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10W、版面エネルギー200mJ/cmで画像状に描き込みを行った。
上記耐汚れ性の評価の場合と同様にして得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、残色、残膜等の発生の有無を、印刷枚数200枚後の印刷物により評価した。
評価基準は、残色、残膜等の発生がまったく確認できない場合を「○」、残色、残膜等の発生がほとんど確認できない場合を「○△」、残色、残膜等の発生が少し確認できるが実用上特に問題がない場合を「△」、残色、残膜等の発生が著しい場合を「△×」、残色、残膜等の発生が非画像部の全面にわたっている場合を「×」とした。
<耐刷性>
上記残色の発生の評価の場合と同様にして印刷し、汚れのない印刷物が何枚得られるかを計測した。即ち、汚れが、印刷物許容レベル以下のなった時点で、刷了とし、その時点の枚数を印刷枚数を刷了枚数とした。
その結果、いずれの実施例においても、比較例の刷了枚数と同等以上の刷了枚数であり、実施例の平版印刷版は、比較例の平版印刷版と同等以上の優れた耐刷性を有した。
Figure 2005125543

Claims (9)

  1. 基板上に、
    平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および/または金属水酸化物の粒子が、金属原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる多孔質層を有する平版印刷版用支持体。
  2. 前記多孔質層が、
    前記基板上に、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および/または金属水酸化物の粒子と、リン酸とを含む塗布液を塗布して得られる多孔質層である請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
  3. 前記平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および/または金属水酸化物の粒子が、平均粒径が異なる2種以上の金属水酸化物の粒子、または、平均粒径がそれぞれ異なる2種以上の、金属酸化物の粒子および金属水酸化物の粒子である請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体。
  4. 前記金属水酸化物が水酸化アルミニウムであり、前記金属酸化物が酸化アルミニウムである請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
  5. 前記多孔質層の層厚が5〜50μmで、該多孔質層の表面の空隙率が20%以下であり、かつ、前記平版印刷版用支持体の表面粗さRが0.5〜1.5μmである請求項1〜4のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
  6. 前記多孔質層の上に封孔層を設けて、該多孔質層の表面の空隙率を15%以下に調整した請求項1〜5のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
  7. 前記封孔層が、アルカリ金属化合物を含む水溶液中に浸せき処理して設けられる請求項6に記載の平版印刷版用支持体。
  8. 前記基板が、アルミニウム基板、あるいは、アルミニウムで被覆した紙基板、樹脂基板または金属基板である請求項1〜7のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を有する平版印刷版原版。
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